説明

物理量センサーの製造方法

【課題】信頼性を向上させることが可能な物理量センサーの製造方法の提供。
【解決手段】物理量センサーの製造方法は、ベース基板に溝部を形成し、溝部内に配線を設けるベース基板配線形成工程S1と、センサー基板に導電性を有する突起部を設けるセンサー基板突起部形成工程S2と、配線と突起部とが、平面視において、互いに重なるようにベース基板とセンサー基板とを位置合わせする位置合わせ工程S3と、ベース基板とセンサー基板とを接合し、配線と突起部とを接続する接合工程S4と、センサー基板をエッチングしてセンサー素子を形成するセンサー素子形成工程S5と、を含み、配線の厚さ寸法t1を溝部の深さ寸法dよりも小さく、且つ、配線の厚さ寸法t1と突起部の厚さ寸法t2との和を、溝部の深さ寸法dよりも大きくすることを特徴とする(d>t1、且つ、d<(t1+t2))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物理量センサーの1つである加速度センサーとして、絶縁基板と、この絶縁基板の表面に陽極接合されたシリコン板をエッチング加工することにより、互いに分離して形成された固定部と可動部とを備え、固定部には固定電極を一体に形成し、可動部には固定電極に微小隙間を介して対向するように配置された可動電極を備えた構成の加速度センサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の加速度センサーの固定電極は、絶縁基板に形成された電極パターンと接続され、可動電極は、支持部を介して絶縁基板に形成された電極パターンと接続されている構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−15308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で述べられている加速度センサー(以下、物理量センサーという)の製造方法によれば、凹部内に各電極パターンを形成した絶縁基板(絶縁性基板)としてのガラス基板と、後に固定電極、可動電極などに形成されるシリコン板と、を陽極接合法(ガラス基板とシリコン板とを密着させ、約400℃の温度下で約1KVの電圧を印加し、両者の境界面近傍に静電引力を生じさせて両者を化学結合によって接合する方法)で接合するとある。
【0005】
しかしながら、シリコン板は、他の材料と比較して表面に酸化膜(SiO2)が生成され易い性質を有する。
このことから、上記物理量センサーは、ガラス基板とシリコン板との陽極接合時に、シリコン板の固定電極及び可動電極におけるガラス基板の電極パターンとの接続部と、ガラス基板の電極パターンとの電気的な接続が、上記酸化膜によって阻害され、不十分となる虞がある。これにより、上記物理量センサーは、信頼性が損なわれる虞がある。
また、ガラス基板とシリコン板とは、平板同士であることから、位置ずれが生じやすく、陽極接合時における両者の位置合わせが容易に行えないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる物理量センサーの製造方法は、主面に溝部が形成され、且つ前記溝部内に配線が形成されたベース基板を用意する工程と、センサー基板に導電性を有する突起部を設ける工程と、前記配線と前記突起部とが、平面視において、互いに重なるように前記ベース基板と前記センサー基板とを位置合わせする工程と、前記ベース基板と前記センサー基板とを接合し、前記配線と前記突起部とを接続する工程と、前記センサー基板をエッチングし、センサー素子を形成する工程と、を含み、前記配線の厚さ寸法を前記溝部の深さ寸法よりも小さく、且つ、前記配線の厚さ寸法と前記突起部の厚さ寸法との和を、前記溝部の深さ寸法よりも大きくすることを特徴とする。
【0008】
これによれば、物理量センサーの製造方法は、センサー基板に導電性を有する突起部を設ける工程を含むことから、例えば、センサー基板にシリコン板(以下、シリコン基板ともいう)を用いた場合でも、センサー基板の準備作業(例えば、表面のクリーニング作業)から引き続いて突起部をスパッタリング法などにより設ければ、シリコンの酸化膜によるセンサー基板と突起部との接合の阻害を回避できる。
この結果、物理量センサーの製造方法は、ベース基板とセンサー基板とを接合し、配線(電極パターンに相当)と突起部とを接続する工程において、配線と突起部を介したセンサー基板(固定電極及び可動電極に相当)との電気的な接続を確実に行うことができる。
これにより、物理量センサーの製造方法は、物理量センサーの信頼性を向上させることができる。
【0009】
また、物理量センサーの製造方法は、配線の厚さ寸法を溝部の深さ寸法よりも小さく、且つ、配線の厚さ寸法と突起部の厚さ寸法との和を、溝部の深さ寸法よりも大きくすることから、ベース基板にセンサー基板を載置したときに、センサー基板の突起部がベース基板の溝部に入り込むことになる。
これにより、物理量センサーの製造方法は、センサー基板の突起部が位置決めの機能を果たし得ることから、特許文献1の従来構成と比較して、ベース基板(ガラス基板に相当)とセンサー基板(シリコン板に相当)との位置合わせを容易に行うことができる。
【0010】
また、物理量センサーの製造方法は、ベース基板に溝部を形成し溝部内に配線を設ける工程と、センサー基板に導電性を有する突起部を設ける工程とを、それぞれ別ラインで同時進行で行うことが可能である。
これにより、物理量センサーの製造方法は、例えば、ベース基板に配線を形成し、その後、配線上に突起部を設ける方法と比較して、製造時間を短縮できることから、物理量センサーの生産性を向上させることができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例にかかる物理量センサーの製造方法において、前記センサー基板に導電性を有する前記突起部を設ける工程の前に、前記センサー基板の表面をクリーニングする工程を含むことが好ましい。
【0012】
これによれば、物理量センサーの製造方法は、センサー基板に導電性を有する突起部を設ける工程の前に、センサー基板の表面をクリーニングする工程を含むことから、センサー基板の表面の酸化膜などの異物が除去され、異物によるセンサー基板と突起部との接合の阻害を回避できる。
【0013】
[適用例3]上記適用例にかかる物理量センサーの製造方法において、前記ベース基板には絶縁性基板を用い、前記センサー基板には半導体基板を用いることが好ましい。
【0014】
これによれば、物理量センサーの製造方法は、ベース基板には絶縁性基板を用い、センサー基板には半導体基板を用いることから、ベース基板と、半導体基板から形成されるセンサー素子との間の絶縁分離を容易に行うことができる。
この結果、物理量センサーの製造方法は、物理量センサーの信頼性を向上させることができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例3にかかる物理量センサーの製造方法において、前記絶縁性基板はガラス基板であり、前記半導体基板はシリコン基板であることが好ましい。
【0016】
これによれば、物理量センサーの製造方法は、絶縁性基板がガラス基板であり、半導体基板がシリコン基板であることから、このような一般的な材料を用いることによってベース基板とセンサー素子との間の絶縁分離を、容易に且つ確実に行うことができる。
この結果、物理量センサーの製造方法は、物理量センサーの信頼性を向上させることができる。
【0017】
[適用例5]上記適用例4にかかる物理量センサーの製造方法において、前記突起部にはAuを用いたことが好ましい。
【0018】
これによれば、物理量センサーの製造方法は、突起部にAuを用いたことから、シリコン基板であるセンサー基板との相性がよく、センサー基板に導電性を有する突起部を設ける工程において、突起部とセンサー基板との接合を確実に行うことができる。
この結果、物理量センサーの製造方法は、物理量センサーの信頼性を向上させることができる。
【0019】
[適用例6]上記適用例4または適用例5にかかる物理量センサーの製造方法において、前記ベース基板と前記センサー基板とを接合し、前記配線と前記突起部とを接続する工程では、陽極接合法を用いることが好ましい。
【0020】
これによれば、物理量センサーの製造方法は、ガラス基板であるベース基板と、シリコン基板であるセンサー基板とを接合し、配線と突起部とを接続する工程では、陽極接合法を用いることから、その特性によって、ベース基板とセンサー基板との接合、及び配線と突起部との電気的な接続を確実に行うことができる。
この結果、物理量センサーの製造方法は、物理量センサーの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の物理量センサーの概略構成を示す模式平面図。
【図2】図1のA−A線での模式断面図。
【図3】図1のB−B線での模式断面図。
【図4】物理量センサーの主要な製造工程を示すフローチャート。
【図5】(a)〜(e)は物理量センサーの製造工程を説明する模式断面図。
【図6】(f)〜(h)は物理量センサーの製造工程を説明する模式断面図。
【図7】物理量センサーの製造工程を説明する模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
(実施形態)
最初に、本実施形態にかかる、例えば、加速度や角速度などの物理量を検出する物理量センサーの構成について説明する。
図1は、物理量センサーの概略構成を示す模式平面図であり、図2は、図1のA−A線での模式断面図であり、図3は、図1のB−B線での模式断面図である。なお、説明の便宜上、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。また、図1では、蓋部材を破線にて記載してある。
【0024】
なお、以下では、説明の便宜上、図1中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」という。また、図1〜図3では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸及びZ軸が図示されている。また、以下では、X軸に平行な方向(左右方向)を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向(上下方向)を「Z軸方向」という。
【0025】
図1〜図3に示すように、物理量センサー1は、ベース基板2と、ベース基板2に支持されたセンサー素子3と、センサー素子3を覆うように設けられた蓋部材5と、を備えている。
【0026】
ベース基板2は、センサー素子3を支持する機能を有する。
ベース基板2は、板状をなし、その上面(一方の面)には、凹部21が設けられている。この凹部21は、ベース基板2を平面視したときに、後述するセンサー素子3の可動部33、可動電極部36,37及び連結部34,35が収まるように形成されている。
凹部21は、センサー素子3の可動部33、可動電極部36,37及び連結部34,35がベース基板2に接触することを回避する逃げ部を構成する。これにより、ベース基板2は、センサー素子3の可動部33の変位を許容することができる。
なお、この逃げ部は、凹部21に代えて、ベース基板2をその厚さ方向に貫通する貫通孔であってもよい。また、本実施形態では、凹部21の平面視形状は、四角形(具体的には長方形)をなしているが、これに限定されるものではない。
【0027】
また、ベース基板2の上面には、前述した凹部21の外側に、その外周に沿って、溝部22,23,24が設けられている。この溝部22,23,24は、平面視で配線に対応した形状をなしている。具体的には、溝部22は、後述する配線41及び電極44に対応した形状をなし、溝部23は、後述する配線42及び電極45に対応した形状をなし、溝部24は、後述する配線43及び電極46に対応した形状をなしている。
【0028】
ここで、溝部22,23,24の深さ寸法は、それぞれ配線41,42,43の厚さ寸法よりも大きくなっている。
また、溝部22,23,24の電極44,45,46が設けられた部位の深さは、それぞれ配線41,42,43が設けられた部位よりも深くなっている。
このように溝部22,23,24の一部の深さを深くすることにより、後述する物理量センサー1の製造時において、電極44,45,46と、後にセンサー素子3となるセンサー基板との接合を回避することができる。
【0029】
ベース基板2の構成材料としては、具体的には、絶縁性を有する、高抵抗なシリコン材料、ガラス材料を用いるのが好ましく、特に、センサー素子3がシリコン材料を主材料としたシリコン基板で構成されている場合、アルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックス(登録商標)ガラスのような硼珪酸ガラス)を用いるのが好ましい。
これにより、物理量センサー1は、ベース基板2(ガラス基板)とセンサー素子3(シリコン基板)とを陽極接合することができる。
【0030】
また、ベース基板2の構成材料は、センサー素子3の構成材料との熱膨張係数差ができるだけ小さいことが好ましく、具体的には、ベース基板2の構成材料とセンサー素子3の構成材料との熱膨張係数差が3ppm/℃以下であることが好ましい。これにより、物理量センサー1は、ベース基板2とセンサー素子3との接合時などにおいて、高温下にさらされても、ベース基板2とセンサー素子3との間の残留応力(熱応力)を低減することができる。
【0031】
センサー素子3は、固定部31,32と、可動部33と、連結部34,35と、可動電極部36,37と、固定電極部38,39と、を備えている。
センサー素子3は、例えば、加速度や角速度などの物理量の変化に応じて、可動部33及び可動電極部36,37が、連結部34,35を弾性変形させながら、X軸方向(+X方向または−X方向)に変位する。物理量センサー1は、このような変位に伴って、可動電極部36と固定電極部38との間の隙間、及び可動電極部37と固定電極部39との間の隙間の大きさがそれぞれ変化する。
すなわち、物理量センサー1は、このような変位に伴って、可動電極部36と固定電極部38との間の静電容量、及び可動電極部37と固定電極部39との間の静電容量の大きさがそれぞれ変化する。したがって、物理量センサー1は、これらの静電容量に基づいて、加速度や角速度などの物理量を検出することできる。
【0032】
この固定部31,32、可動部33、連結部34,35及び可動電極部36,37は、例えば、一枚のシリコン基板から一体的に形成されている。
固定部31,32は、それぞれ、前述したベース基板2の上面に接合されている。具体的には、固定部31は、ベース基板2の上面の凹部21に対して−X方向側(図中左側)の部分に接合され、固定部32は、凹部21に対して+X方向側(図中右側)の部分に接合されている。また、固定部31,32は、平面視したときに、それぞれ、凹部21と凹部21の外周縁部とに跨るように設けられている。
【0033】
なお、固定部31,32の位置及び形状などは、連結部34,35や配線41,42,43の位置及び形状などに応じて決められるものであり、上述した構成に限定されない。
2つの固定部31,32の間には、可動部33が設けられている。本実施形態では、可動部33は、X軸方向に延びる長手形状をなしている。なお、可動部33の形状は、センサー素子3を構成する各部の形状、大きさなどに応じて決められるものであり、上述した構成に限定されない。
【0034】
可動部33は、固定部31に対して連結部34を介して連結され、固定部32に対して連結部35を介して連結されている。より具体的には、可動部33の左側の端部が連結部34を介して固定部31に連結されるとともに、可動部33の右側の端部が連結部35を介して固定部32に連結されている。
この連結部34,35は、可動部33を固定部31,32に対して変位可能に連結している。本実施形態では、連結部34,35は、図1にて矢印aで示すように、X軸方向(+X方向または−X方向)に可動部33を変位し得るように構成されている。
【0035】
具体的に説明すると、連結部34は、2つの梁341,342で構成されている。そして、梁341,342は、それぞれ、Y軸方向に蛇行しながらX軸方向に延びる形状をなしている。換言すると、梁341,342は、それぞれ、Y軸方向に複数回(本実施形態では3回)折り返された形状をなしている。なお、各梁341,342の折り返し回数は、1回または2回であってもよいし、4回以上であってもよい。
同様に、連結部35は、Y軸方向に蛇行しながらX軸方向に延びる形状をなす2つの梁351,352で構成されている。
【0036】
このように、ベース基板2に対してX軸方向に変位可能に支持された可動部33の幅方向での一方側(+Y方向側)には、可動電極部36が設けられ、他方側(−Y方向側)には、可動電極部37が設けられている。
可動電極部36は、可動部33から+Y方向に突出し、櫛歯状をなすように並ぶ複数の可動電極指361〜365を備えている。この可動電極指361,362,363,364、365は、―X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。同様に、可動電極部37は、可動部33から−Y方向に突出し、櫛歯状をなすように並ぶ複数の可動電極指371〜375を備えている。この可動電極指371,372,373,374,375は、―X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。
【0037】
複数の可動電極指361〜365及び複数の可動電極指371〜375は、それぞれ、可動部33の変位する方向(すなわちX軸方向)に並んで設けられている。
これにより、後述する固定電極部38の固定電極指382,384,386,388と可動電極部36との間の静電容量、及び固定電極指381,383,385,387と可動電極部36との間の静電容量を可動部33の変位に応じて効率的に変化させることができる。
同様に、後述する固定電極部39の固定電極指392,394,396,398と可動電極部37との間の静電容量、及び固定電極指391,393,395,397と可動電極部37との間の静電容量を可動部33の変位に応じて効率的に変化させることができる。
可動電極部36は、固定電極部38に対して間隔を隔てて対向している。また、可動電極部37は、固定電極部39に対して間隔を隔てて対向している。
【0038】
固定電極部38は、前述した可動電極部36の複数の可動電極指361〜365に対して間隔を隔てて噛み合う櫛歯状をなすように並ぶ複数の固定電極指381〜388を備えている。固定電極指381〜388の可動部33側とは反対側の端部は、それぞれ、ベース基板2の上面の凹部21に対して+Y方向側の部分に接合されている。そして、各固定電極指381〜388は、その固定された側の端を固定端とし、自由端が−Y方向へ延びている。
【0039】
固定電極指381〜388は、―X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。そして、固定電極指381,382は、対をなし、前述した可動電極指361,362の間に設けられ、固定電極指383,384は、対をなし、可動電極指362,363の間に設けられ、固定電極指385,386は、対をなし、可動電極指363,364の間に設けられ、固定電極指387,388は、対をなし、可動電極指364,365の間に設けられている。
【0040】
ここで、固定電極指382,384,386,388は、それぞれ、第1固定電極指であり、固定電極指381,383,385,387は、それぞれ、ベース基板2上で第1固定電極指に対して空隙(間隙)を介して配置された第2固定電極指である。
このように、複数の固定電極指381〜388は、交互に並ぶ複数の第1固定電極指及び複数の第2固定電極指で構成されている。
【0041】
第1固定電極指382,384,386,388と第2固定電極指381,383,385,387とは、ベース基板2上で互いに分離している。これにより、第1固定電極指382,384,386,388と第2固定電極指381,383,385,387とを電気的に絶縁することができる。そのため、第1固定電極指382,384,386,388と可動電極部36との間の静電容量、及び第2固定電極指381,383,385,387と可動電極部36との間の静電容量を別々に測定し、それらの測定結果に基づいて、高精度に物理量を検出することができる。
【0042】
同様に、固定電極部39は、前述した可動電極部37の複数の可動電極指371〜375に対して間隔を隔てて噛み合う櫛歯状をなすように並ぶ複数の固定電極指391〜398を備えている。固定電極指391〜398の可動部33とは反対側の端部は、それぞれ、ベース基板2の上面の凹部21に対して−Y方向側の部分に接合されている。そして、各固定電極指391〜398は、その固定された側の端を固定端とし、自由端が+Y方向へ延びている。
【0043】
固定電極指391〜398は、―X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。そして、固定電極指391,392は、対をなし、前述した可動電極指371,372の間に設けられ、固定電極指393,394は、対をなし、可動電極指372,373の間に設けられ、固定電極指395,396は、対をなし、可動電極指373,374の間に設けられ、固定電極指397,398は、対をなし、可動電極指374,375の間に設けられている。
【0044】
ここで、固定電極指392,394,396,398は、それぞれ、第1固定電極指であり、固定電極指391,393,395,397は、それぞれ、ベース基板2上で第1固定電極指に対して空隙(間隙)を介して配置された第2固定電極指である。
このように、複数の固定電極指391〜398は、交互に並ぶ複数の第1固定電極指及び複数の第2固定電極指で構成されている。
【0045】
第1固定電極指392,394,396,398と第2固定電極指391,393,395,397とは、前述した固定電極部38と同様、ベース基板2上で互いに分離している。これにより、第1固定電極指392,394,396,398と可動電極部37との間の静電容量、及び、第2固定電極指391,393,395,397と可動電極部37との間の静電容量を別々に測定し、それらの測定結果に基づいて、高精度に物理量を検出することができる。
【0046】
センサー素子3の構成材料としては、前述したような静電容量の変化に基づく物理量の検出が可能であれば、特に限定されないが、半導体が好ましく、具体的には、例えば、単結晶シリコン、ポリシリコンなどのシリコン材料を用いるのが好ましい。
すなわち、固定部31,32、可動部33、連結部34,35、複数の固定電極指381〜388,391〜398及び複数の可動電極指361〜365,371〜375は、それぞれ、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
【0047】
シリコンは、エッチングにより高精度に加工することができる。そのため、センサー素子3をシリコンを主材料として構成することにより、センサー素子3の寸法精度を優れたものとし、その結果、物理量センサー1の高感度化を図ることができる。また、シリコンは疲労が少ないため、物理量センサー1の耐久性を向上させることもできる。
また、センサー素子3を構成するシリコン材料には、リン、ボロンなどの不純物がドープされていることが好ましい。これにより、物理量センサー1は、センサー素子3の導電性を優れたものとすることができる。
【0048】
また、センサー素子3は、前述したように、ベース基板2の上面に固定部31,32及び固定電極部38,39が接合されることにより、ベース基板2に支持されている。
このようなセンサー素子3とベース基板2との接合方法は、特に限定されないが、陽極接合法を用いることが好ましい。
【0049】
配線41,42,43は、前述したベース基板2の上面(固定電極部38,39側の面)に設けられている。
詳述すると、配線41は、前述したベース基板2の凹部21の外側に設けられ、凹部21の外周に沿うように溝部22内に形成されている。そして、配線41の一端部は、ベース基板2の上面の外周部(ベース基板2上の蓋部材5の外側の部分)上において、電極44に接続されている。
【0050】
配線41は、前述したセンサー素子3の第1固定電極指である各固定電極指382,384,386,388及び各固定電極指392,394,396,398に電気的に接続されている。
また、配線42は、前述した配線41の内側、且つ、前述したベース基板2の凹部21の外側でその外周縁に沿って溝部23内に設けられている。そして、配線42の一端部は、前述した電極44に対して間隔を隔てて並ぶようにベース基板2の上面の外周部(ベース基板2上の蓋部材5の外側の部分)上において、電極45に接続されている。
【0051】
配線43は、ベース基板2上の固定部31との接合部から、ベース基板2の上面の外周部(ベース基板2上の蓋部材5の外側の部分)上に延びるように溝部24内に設けられている。そして、配線43の固定部31側とは反対側の端部は、前述した電極44,45に対して間隔を隔てて並ぶようにベース基板2の上面の外周部(ベース基板2上の蓋部材5の外側の部分)上において、電極46に接続されている。
【0052】
このような配線41〜43の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In23、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnOなどの酸化物(透明電極材料)、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
配線41〜43の構成材料としては、透明電極材料(特にITO)を用いるのが好ましい。配線41,42がそれぞれ透明電極材料で構成されていると、ベース基板2が透明基板である場合、ベース基板2の固定電極部38,39側の面上に存在する異物などをベース基板2の固定電極部38,39とは反対の面側から容易に視認することができる。
【0054】
また、電極44〜46の構成材料としては、それぞれ、前述した配線41〜43と同様、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができる。本実施形態では、電極44〜46の構成材料として、後述する突起部471,472,481、482,50の構成材料と同じものが用いられている。
【0055】
そして、センサー素子3の固定電極指382,384,386,388の配線41に対する対向面の、平面視において、配線41と重なる部分には、それぞれ導電性を有する突起部481が設けられ、固定電極指392,394,396,398の配線41に対する対向面の、平面視において、配線41と重なる部分には、それぞれ導電性を有する突起部482が設けられている。
そして、突起部481を介して固定電極指382,384,386,388と配線41とが電気的に接続されるとともに、突起部482を介して固定電極指392,394,396,398と配線41とが電気的に接続されている。
【0056】
同様に、センサー素子3の固定電極指381,383,385,387の配線42に対する対向面の、平面視において、配線42と重なる部分には、それぞれ導電性を有する突起部471が設けられ、固定電極指391,393,395,397の配線42に対する対向面の、平面視において、配線42と重なる部分には、それぞれ導電性を有する突起部472が設けられている。
そして、突起部471を介して固定電極指381,383,385,387と配線42とが電気的に接続されるとともに、突起部472を介して固定電極指391,393,395,397と配線42とが電気的に接続されている。
【0057】
同様に、センサー素子3の固定部31の配線43に対する対向面の、平面視において、配線43と重なる部分には、導電性を有する突起部50が設けられている。
そして、突起部50を介して固定部31と配線43とが電気的に接続されている。
【0058】
ここで、物理量センサー1は、配線41,42,43の厚さ寸法が、溝部22,23,24の深さ寸法よりも小さく、且つ、配線41,42,43の厚さ寸法と突起部471,472,481,482,50の厚さ寸法との和が、溝部22,23,24の深さ寸法よりも大きくなっている(但し、電極44〜46部分は除く)。
これにより、物理量センサー1は、ベース基板2とセンサー素子3との接合時に、ベース基板2とセンサー素子3とが密着することで、配線41,42,43と突起部471,472,481,482,50とが押圧され、上述した電気的な接続が確実になされている。
【0059】
物理量センサー1は、電極44(配線41)及び電極46(配線43)を用いることにより、第1固定電極指382,384,386,388と可動電極部36との間の静電容量及び第1固定電極指392,394,396,398と可動電極部37との間の静電容量を測定できる。
そして、物理量センサー1は、電極45(配線42)及び電極46(配線43)を用いることにより、第2固定電極指381,383,385,387と可動電極部36との間の静電容量及び第2固定電極指391,393,395,397と可動電極部37との間の静電容量を測定できる。
【0060】
突起部471,472,481,482,50の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Alなどの金属単体またはこれらを含む合金などの金属が好適に用いられる。このような金属を用いて突起部471,472,481,482,50を構成することにより、配線41,42,43と固定電極部38,39、固定部31との間の接触抵抗を小さくすることができる。
【0061】
蓋部材5は、前述したセンサー素子3を保護する機能を有する。
蓋部材5は、板状をなし、その一方の面(下面)に凹部51が設けられている。この凹部51は、センサー素子3の可動部33及び可動電極部36,37などの変位が可能なようにセンサー素子3との間に空隙を設けて形成されている。
【0062】
そして、蓋部材5の下面は、前述したベース基板2の上面に接合されている。蓋部材5とベース基板2との接合方法としては、特に限定されず、例えば、接着剤を用いた接合方法、陽極接合法、直接接合法などを用いることができる。
また、蓋部材5の構成材料としては、前述したような機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン材料、ガラス材料などを好適に用いることができる。
【0063】
次に、物理量センサー1の製造方法の一例について説明する。
図4は、物理量センサーの主要な製造工程を示すフローチャートであり、図5、図6の(a)〜(h)、図7は、物理量センサーの製造工程を説明する模式断面図である。
【0064】
図4に示すように、物理量センサー1の製造方法は、ベース基板配線形成工程S1と、センサー基板突起部形成工程S2と、位置合わせ工程S3と、接合工程S4と、センサー素子形成工程S5と、蓋部材接合工程S6と、分割工程S7と、を含んでいる。
なお、ここでは、複数個取りを前提として説明するが、個別に製造しても構わない。
【0065】
[ベース基板配線形成工程S1]
まず、図5(a)に示すように、後に個片化することでベース基板2となるウエハー状の基板102を用意し、基板102の上面をエッチングすることにより、凹部21、溝部22,23を形成する。このとき、図5(a)では図示しないが、溝部24も一括して形成する。
【0066】
凹部21、溝部22〜24の形成方法(エッチング方法)としては、特に限定されないが、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチングなどの物理的エッチング法、ウェットエッチングなどの化学的エッチング法などのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
【0067】
また、上述したようなエッチングに際しては、例えば、フォトリソグラフィー法により形成されたマスクを好適に用いることができる。また、マスク形成、エッチング、マスク除去を複数回繰り返し、凹部21と溝部22〜24とを順に形成することができる。そして、このマスクは、エッチング後に、除去される。このマスクの除去方法としては、例えば、マスクがレジスト材料で構成される場合には、レジスト剥離液、マスクが金属材料で構成される場合には、リン酸溶液のようなメタル剥離液などを用いることができる。
なお、マスクとして、例えば、グレースケールマスクを用いることにより、凹部21と溝部22〜24と(深さの異なる複数の凹部)を一括形成してもよい。
【0068】
次に、図5(b)に示すように、基板102の溝部22内に配線41を形成するとともに、溝部23内に配線42を形成する。このとき、図5(b)では図示しないが、溝部24内に配線43を配線41,42と一括して形成する。
この際、配線41,42,43の厚さ寸法が、溝部22,23,24の深さ寸法よりも小さくなるように形成する。
配線41,42,43の形成方法(成膜方法)としては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティングなどの乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキなどの湿式メッキ法、溶射法、薄膜接合法などが挙げられる。なお、以下の各工程における成膜においても、同様の方法を用いることができる。この後、図5(b)では図示しないが、電極44〜46を同様に形成する。
【0069】
なお、基板102には、絶縁性を有する絶縁性基板を用いることが好ましく、絶縁性基板として透明基板を用いることがより好ましい。具体的には、基板102には、アルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックス(登録商標)ガラスのような硼珪酸ガラス)を用いたガラス基板を用いることが好ましい。
また、配線41〜43の構成材料としては、透明電極材料(特にITO)を用いることが好ましい。
なお、配線41〜43、電極44〜46形成後、後述する突起部471,472,481,482,50との接続領域を除いた配線41〜43及び基板102の上面(凹部21含む)に、絶縁性を有する各種材料からなる絶縁膜を形成してもよい。これにより、基板102とセンサー基板103との絶縁分離を確実に行うことができる。
【0070】
[センサー基板突起部形成工程S2]
次に、図5(c)に示すように、後に複数のセンサー素子3となるウエハー状のセンサー基板103を用意し、表面を予め、例えば、逆スパッタリング法などでクリーニングし、酸化膜などの異物を除去しておく。
引き続いて、センサー基板103の上面の、反転したときに、平面視において、配線42と重なる位置に導電性を有する突起部471,472をスパッタリング法、真空蒸着法などで形成(成膜)する。
このとき、図5(c)では図示しないが、同様に、配線41と重なる位置に導電性を有する突起部481,482を、配線43と重なる位置に導電性を有する突起部50を、一括して形成する。
この際、配線41,42,43の厚さ寸法と突起部471,472,481,482,50の厚さ寸法との和が、溝部22,23,24の深さ寸法よりも大きくなるように形成する。
【0071】
ここで、センサー基板103は、センサー素子3の厚さより厚くしておくことが好ましい。これにより、センサー基板103の取り扱い性を向上させることができる(例えば、搬送時、段取り時などにおける破損低減など)。なお、センサー基板103の厚さは、センサー素子3の厚さと同じであってもよい。
センサー基板103には、半導体基板であるシリコン基板を用いることが好ましく、突起部471,472,481,482,50の構成材料としては、Auを用いることが好ましい。
なお、センサー基板突起部形成工程S2は、ベース基板配線形成工程S1と、別ラインを用いての同時進行が可能である。
【0072】
[位置合わせ工程S3]
次に、図7に示すように、センサー基板103を反転して基板102に載置し、配線42と突起部471,472とが、平面視において、互いに重なるように、また、図7では図示しないが、配線41と突起部481,482とが、平面視において、互いに重なるように、及び配線43と突起部50とが、平面視において、互いに重なるように、基板102とセンサー基板103とを位置合わせする。
【0073】
この際、前述したように、配線41,42,43の厚さ寸法t1が、溝部22,23,24の深さ寸法dよりも小さく、且つ、配線41,42,43の厚さ寸法t1と突起部471,472,481,482,50の厚さ寸法t2との和が、溝部22,23,24の深さ寸法よりも大きくなっている(d>t1、且つ、d<(t1+t2))。
これにより、基板102にセンサー基板103を載置して位置合わせするときに、センサー基板103の突起部471,472,481,482,50が、基板102の溝部22,23,24に入り込むことになる。
これにより、突起部471,472,481,482,50が、基板102とセンサー基板103との位置決めの機能を果たし得ることになる。
【0074】
また、この際、透明なガラス基板を用いた基板102側から透明電極材料(特にITO)を用いた配線41,42,43を介してセンサー基板103のAuを用いた突起部471,472,481,482,50を視認することで、突起部471,472,481,482,50を目印にして、基板102とセンサー基板103との位置合わせ状態を確認することができる。なお、配線41,42,43は、基板102の溝部22,23,24に形成されていることから、周囲と見え方が異なり、その位置を認識することが十分に可能な状態にある。
【0075】
[接合工程S4]
図5に戻って、次に、図5(d)に示すように、基板102とセンサー基板103とを接合し、配線42と突起部471,472とを接続する。このとき、図5(d)では図示しないが、配線41と突起部481,482とを、及び配線43と突起部50とを、一括して接続する。なお、基板102とセンサー基板103との接合には、陽極接合法を用いることが好ましい。
【0076】
ここで、前述したように、配線41,42,43の厚さ寸法t1が、溝部22,23,24の深さ寸法dよりも小さく、且つ、配線41,42,43の厚さ寸法t1と突起部471,472,481,482,50の厚さ寸法t2との和が、溝部22,23,24の深さ寸法dよりも大きくなっている(d>t1、且つ、d<(t1+t2))。
これにより、基板102とセンサー基板103との接合時に、基板102とセンサー基板103とを加圧して密着させることで、配線41,42,43と突起部471,472,481,482,50とが互いに押圧され、両者の電気的な接続が確実になされる。
【0077】
次に、図5(e)に示すように、センサー基板103をセンサー素子3の厚さまで肉薄化する。肉薄化の方法は、特に限定されないが、例えば、CMP法、ドライポリッシュ法を好適に用いることができる。
なお、センサー基板103の厚さが、当初からセンサー素子3の厚さと同じであれば、この肉薄化は必要ない。
【0078】
[センサー素子形成工程S5]
次に、図6(f)に示すように、センサー基板103をエッチングすることによりセンサー素子3を形成する。
【0079】
[蓋部材接合工程S6]
次に、図6(g)に示すように、基板102の上面に、複数の凹部51を有し個片化することにより蓋部材5となるウエハー状の基板105を接合する。これにより、基板102と基板105とで各センサー素子3を各凹部51内に収容する。
なお、基板102と基板105との接合方法としては、特に限定されず、例えば、接着剤を用いた接合方法、陽極接合法、直接接合法などを用いることができる。
【0080】
[分割工程S7]
次に、図6(h)に示すように、センサー素子3を収容し一体となった基板102及び基板105を、図示しない分割装置(ダイシング装置)などを用いてセンサー素子3毎の個片に分割することにより、物理量センサー1を得る。
なお、分割により、基板102はベース基板2となり、基板105は蓋部材5となる。
【0081】
上述したように、物理量センサー1の製造方法は、センサー基板103に導電性を有する突起部471,472,481,482,50を設けるセンサー基板突起部形成工程S2を含む。
このことから、物理量センサー1の製造方法は、センサー基板103にシリコン基板を用いた場合でも、センサー基板103の表面を予め、例えば、逆スパッタリング法などによりクリーニングし、引き続いて(直後に)突起部471,472,481,482,50をスパッタリング法などにより設ければ、シリコンの酸化膜によるセンサー基板103と突起部471,472,481,482,50との接合の阻害を回避できる。
この結果、物理量センサー1の製造方法は、基板102(ベース基板2)とセンサー基板103とを接合し、配線41,42,43と突起部471,472,481,482,50とを接続する接合工程S4において、配線41,42,43と、突起部471,472,481,482,50を介したセンサー基板103との電気的な接続を確実に行うことができる。
これにより、物理量センサー1の製造方法は、物理量センサー1の信頼性を向上させることができる。
【0082】
また、物理量センサー1の製造方法は、配線41,42,43の厚さ寸法t1を溝部22,23,24の深さ寸法dよりも小さく、且つ、配線41,42,43の厚さ寸法t1と突起部471,472,481,482,50の厚さ寸法t2との和を、溝部22,23,24の深さ寸法dよりも大きくしている(d>t1、且つ、d<(t1+t2))。
このことから、物理量センサー1の製造方法は、基板102にセンサー基板103を載置したときに、センサー基板103の突起部471,472,481,482,50が、基板102の溝部22,23,24に入り込むことになる。
これにより、物理量センサー1の製造方法は、センサー基板103の突起部471,472,481,482,50が、位置決めの機能を果たし得ることから、特許文献1の従来構成と比較して、基板102とセンサー基板103との位置合わせを容易に行うことができる。
【0083】
また、物理量センサー1の製造方法は、基板102に溝部22,23,24を形成し、溝部22,23,24内に配線を設けるベース基板配線形成工程S1と、センサー基板103に導電性を有する突起部471,472,481,482,50を設けるセンサー基板突起部形成工程S2とを、それぞれ別ラインで同時進行で行うことができる。
これにより、物理量センサー1の製造方法は、例えば、基板102に配線41,42,43を形成し、その後配線41,42,43上に突起部471,472,481,482,50を設ける方法と比較して、製造時間を短縮できることから、物理量センサー1の生産性を向上させることができる。
【0084】
また、物理量センサー1の製造方法は、センサー基板103に導電性を有する突起部471,472,481,482,50を設ける工程の前に、センサー基板103の表面をクリーニングする工程を含むことから、センサー基板103の表面の酸化膜などの異物が除去され、異物によるセンサー基板103と突起部471,472,481,482,50との接合の阻害を回避できる。
この結果、物理量センサー1の製造方法は、物理量センサー1の信頼性を向上させることができる。
【0085】
また、物理量センサー1の製造方法は、基板102には絶縁性基板を用い、センサー基板103には半導体基板を用いることから、ベース基板2とセンサー素子3との間の絶縁分離を容易に行うことができる。
この結果、物理量センサー1の製造方法は、物理量センサー1の信頼性を向上させることができる。
【0086】
また、物理量センサー1の製造方法は、上記絶縁性基板がガラス基板であり、上記半導体基板がシリコン基板であることから、基板102及びセンサー基板103に、このような一般的な材料を用いることによってベース基板2とセンサー素子3との間の絶縁分離を容易に行うことができる。
この結果、物理量センサー1の製造方法は、物理量センサー1の信頼性を向上させることができる。
【0087】
また、物理量センサー1の製造方法は、突起部471,472,481,482,50にAuを用いたことから、シリコン基板からなるセンサー基板103との相性がよく、突起部471,472,481,482,50とセンサー基板103との接合を確実に行うことができる。
この結果、物理量センサー1の製造方法は、物理量センサー1の信頼性を向上させることができる。
【0088】
また、物理量センサー1の製造方法は、ガラス基板からなる基板102と、シリコン基板からなるセンサー基板103とを接合し、配線41,42,43と突起部471,472,481,482,50とを接続する接合工程S4では、陽極接合法を用いることから、その特性によって、基板102とセンサー基板103との接合を確実に行うことができる。
【0089】
加えて、物理量センサー1の製造方法は、上述したように、配線41,42,43の厚さ寸法t1を、溝部22,23,24の深さ寸法dよりも小さく、且つ、配線41,42,43の厚さ寸法t1と突起部471,472,481,482,50の厚さ寸法t2との和を、溝部22,23,24の深さ寸法dよりも大きくしている(d>t1、且つ、d<(t1+t2))。
これにより、物理量センサー1の製造方法は、基板102とセンサー基板103との陽極接合時に、基板102とセンサー基板103とを加圧して密着させることで、配線41,42,43と突起部471,472,481,482,50とが互いに押圧され、両者の電気的な接続を確実に行うことができる。
この結果、物理量センサー1の製造方法は、物理量センサー1の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0090】
1…物理量センサー、2…ベース基板、3…センサー素子、5…蓋部材、21…凹部、22,23,24…溝部、31,32…固定部、33…可動部、34,35…連結部、36,37…可動電極部、38,39…固定電極部、41〜43…配線、44〜46…電極、50…突起部、51…凹部、102…基板、103…センサー基板、105…基板、341,342,351,352…梁、361〜365,371〜375…可動電極指、381〜388,391〜398…固定電極指、471,472,481,482…突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に溝部が形成され、且つ前記溝部内に配線が形成されたベース基板を用意する工程と、
センサー基板に導電性を有する突起部を設ける工程と、
前記配線と前記突起部とが、平面視において、互いに重なるように前記ベース基板と前記センサー基板とを位置合わせする工程と、
前記ベース基板と前記センサー基板とを接合し、前記配線と前記突起部とを接続する工程と、
前記センサー基板をエッチングし、センサー素子を形成する工程と、を含み、
前記配線の厚さ寸法を前記溝部の深さ寸法よりも小さく、且つ、前記配線の厚さ寸法と前記突起部の厚さ寸法との和を、前記溝部の深さ寸法よりも大きくすることを特徴とする物理量センサーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の物理量センサーの製造方法において、前記センサー基板に導電性を有する前記突起部を設ける工程の前に、前記センサー基板の表面をクリーニングする工程を含むことを特徴とする物理量センサーの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の物理量センサーの製造方法において、前記ベース基板には絶縁性基板を用い、前記センサー基板には半導体基板を用いることを特徴とする物理量センサーの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の物理量センサーの製造方法において、前記絶縁性基板はガラス基板であり、前記半導体基板はシリコン基板であることを特徴とする物理量センサーの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の物理量センサーの製造方法において、前記突起部にはAuを用いたことを特徴とする物理量センサーの製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の物理量センサーの製造方法において、前記ベース基板と前記センサー基板とを接合し、前記配線と前記突起部とを接続する工程では、陽極接合法を用いることを特徴とする物理量センサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−15477(P2013−15477A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149800(P2011−149800)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】