説明

現像ローラ、その製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】本発明は、生産の際に導電性や硬度などの経時変化が小さく、かつ画像耐久性に優れる高品位の現像ローラの製造方法及び画像耐久性に優れる高品位の現像ローラを提供すること。
【解決手段】軸芯体の周囲に設けられた弾性層の外周に少なくとも導電性樹脂層を有する現像ローラを製造するに際し、導電性樹脂層をポリウレタンポリオールプレポリマーとイソシアネート化合物を反応させて得られるポリウレタンを含有するものとし、かつ、該ポリウレタンポリオールプレポリマーをa)ポリエーテルポリオールとイソホロンジイソシアネート(IPDI)とから製造されたプレポリマーA及びb)ポリエーテルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とから製造されたプレポリマーBを、それぞれの固形分量(質量部)をa、bとした時に、0.2≦a/b≦4.0の範囲で併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリの受信装置等の電子写真方式を採用した装置に組み込まれる感光体に接触させて使用される現像ローラの製造方法、該製造方法で製造された現像ローラ及び該現像ローラを組み込んだプロセスカートリッジ又は電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機やファクシミリ、プリンターにおいては、感光体が帯電ローラにより均一に帯電され、レーザー等により静電潜像を形成し、次に、現像容器内のトナーがトナー塗布ローラ及びトナー規制部材により適正電荷で均一に現像ローラ上に塗布され、感光体と現像ローラとの接触部で静電潜像へトナーの転写(現像)が行われ、その後、感光体上のトナーは、転写ローラにより記録紙に転写され、熱と圧力により記録紙に定着され、一方、感光体上に残留したトナーはクリーニングブレードによって除かれて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0003】
これらの画像形成装置には、感光体を帯電させたり、静電潜像を顕像化したりするために、103〜1010Ω・cmの半導電性領域でその目的にあった導電性(電気抵抗)を有する弾性ローラが一般に用いられている。
【0004】
例えば、非磁性一成分接触現像方式の画像形成装置では、互いに接している現像ローラから感光体へトナーを移動させて静電潜像を顕像化し、トナー像が形成される。
【0005】
このような画像形成装置に用いられる弾性ローラとして、より高いレベルの要求品質を満たすために、導電性ゴム(弾性)層上に機能付与のための樹脂層を単層あるいは複数層形成した半導電性ローラが多く用いられている。
【0006】
例えば、複数の樹脂層のうち最外層に弾性を有する高分子微粒子を含有させ、ローラ表面に粗面を形成する方法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
これらの構成部材を形成する高分子弾性材料としては、ゴム弾性を有する高分子エラストマーや高分子フォームが用いられており、これらは、低硬度で、感光体や転写部材を汚染することがなく、かつトナーと融着しない特性を有することが求められる。
【0008】
ここで、高分子エラストマーや高分子フォームを構成する材料としては、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アルクリロニトリルブタジエンゴム等を加硫した固形ゴム加硫物、ポリオール等の活性水素含有化合物とポリイソシアネートを反応硬化させたポリウレタン等が用いられている。これらの材料からなる画像形成装置部材は、導電性を有することが求められる場合もあり、例えばカーボンブラック、金属酸化物等の導電性付与剤を混合したり、電解質を添加したりして、所定の電気抵抗値に調整される。
【0009】
これらの中で、導電性付与剤によっても電解質によっても導電性を付与することができ、電解質を液状原料に溶解して使用できる利点があり、必要に応じてフォームとすることもできるので、ポリオールとポリイソシアネートを主原料として生成されるポリウレタンが一般的に使用される。
【0010】
また、現像ローラとして用いる場合、特に表面層がトナーや感光体に与える影響は大きく、材料物性の選択が非常に重要な役割を持っている。例えば、感光体汚染や削れ、さらにトナーの付着を防止するためにウレタン変性アクリル樹脂及びフッ素系樹脂を用いる方法(特許文献2)、高温高湿環境下での帯電付与性のために、表面層の成分に鎖伸長剤やポリシロキサン骨格を導入する方法(特許文献3)等が開発されている。
【0011】
しかし、近年、複写機、プリンターあるいはファクシミリなど、電子写真方式を採用した装置に使用される現像ローラに必要とされる性能はより高度になっており、高画質化、省エネの観点から、より柔軟で低融点のトナーが用いられるようになっている。そのために、前述したような高画質化と画像耐久性の両立が求められ、柔軟性を持ちトナーに対して与えるストレスがさらに小さくなるような特性が特に要求されるようになっている。
【0012】
また、最外層の形成は通常樹脂溶液にカーボンブラック等の導電性付与剤を分散した分散液を塗布乾燥することにより行われるが、その原材料によっては、現像ローラの製造時に導電性付与剤の分散状態が変動し、連続して製造される現像ローラの最外層の導電性や硬さが変動してしまい、所望の物性の製品が安定して得られない。
【特許文献1】特許第3112489号公報
【特許文献2】特開2003−50492号公報
【特許文献3】特開平11−212354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
すなわち、本発明の課題は、現像ローラ生産の際に、導電性、硬さ等の経時変化が小さく、かつ画像耐久性に優れる、高品位の現像ローラを製造する方法及び画像耐久性に優れる、高品位の現像ローラを提供すること、さらに、高画質化と画像耐久性の両立したプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究し、特定のポリウレタンポリオールプレポリマーを使用するならば、生産上の不具合が発生せず、かつ得られる現像ローラも要求される特性を満たしたものが得られることを見出し、ついに本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、軸芯体の周囲に設けられた弾性層の外周に少なくとも導電性樹脂層を有する現像ローラの製造方法であって、該導電性樹脂層が、ポリウレタンポリオールプレポリマーとイソシアネート化合物を反応させて得られるポリウレタンを含有するものであり、かつ、該ポリウレタンポリオールプレポリマーが、a)ポリエーテルポリオールとイソホロンジイソシアネート(IPDI)とから製造されたプレポリマーA及びb)ポリエーテルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とから製造されたプレポリマーBを、それぞれの固形分量(質量部)をa、bとした時、0.2≦a/b≦4.0の範囲で併用したものであることを特徴とする現像ローラの製造方法である。
【0016】
また、本発明は、ポリウレタンポリオールプレポリマーを製造する際に使用されたポリエーテルポリオールが、ポリテトラメチレングリコールである上記の現像ローラの製造方法である。
【0017】
そして、本発明は、ポリウレタンポリオールプレポリマーの平均官能基数FOHが2.0〜3.0の範囲にある上記の現像ローラの製造方法である。
【0018】
さらに、本発明は上記いずれかの現像ローラの製造方法で製造されたものであることを特徴とする現像ローラである。
【0019】
さらに、また、本発明は、現像ローラが装着された電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、該現像ローラが上記の現像ローラであることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0020】
また、本発明は、静電潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持する現像ローラを備え、該現像ローラが該感光体にトナーを付与して該静電潜像を可視化する電子写真装置において、現像ローラが上記現像ローラであることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、画像耐久性に優れた現像ローラを、物性変化させずに安定して連続して生産でき、生産された現像ローラもプロセスカートリッジや画像形成装置用に現像ローラとして極めて高品位であり、この現像ローラを組み込んでなるプロセスカートリッジや画像形成装置では極めて優れた性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明が対象とする現像ローラの一例の断面図を図1に示す。
【0023】
本発明の現像ローラ1は、少なくとも表面が導電性である円柱状又は中空円筒状の導電性軸芯体2、弾性層3及び導電性樹脂層4がこの順で積層された構成を有する。
【0024】
導電性軸芯体2は、現像ローラ1の電極及び支持部材として機能するもので、その表面が少なくとも導電性であることが必要であり、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂などの導電性の材質で構成されている。なお、軸芯体の外径は通常4〜10mmの範囲とされる。
【0025】
弾性層3は、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧されるような硬度や弾性を現像ローラに付与する。この弾性層3は、通常ゴム材の成型体である。
【0026】
ここでゴム材として、従来から導電性ゴムローラに用いられている種々のゴム材を用いることができる。ゴム材に使用するゴム原料として、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム等のゴムを単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。この中でも、特にセット性能等の観点からシリコーンゴムが好ましい。
【0027】
シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等が挙げられる。
【0028】
弾性層3には、ゴム原料にもよるが通常導電性付与剤が配され、さらに、非導電性充填剤、架橋剤、触媒等の各種添加剤が適宜配合される。
【0029】
好ましい導電性付与剤としては、グラファイト、カーボンブラック等の炭素粉末;アルミニウム、銅等の導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン等の導電性金属酸化物などの微粒子が挙げられる。このうち、カーボンブラックは比較的容易に入手でき、良好な帯電性が達成できるので好ましい。
【0030】
非導電性充填剤として、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられ、また、架橋剤として、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等が挙げることができる。
【0031】
弾性層3は、体積固有抵抗値が、100Vの直流電圧印加時で、103〜108Ω・cmの範囲にあることが好ましい。例えば、導電性付与剤としてカーボンブラックを用いる場合は、ゴム材中のゴム原料100質量部に対して15〜80質量部配合される。
【0032】
また、弾性層3の厚さは、弾性層の柔軟性のもよるが、通常2.0〜6.0mmの範囲にあることが好ましく、3.0〜5.0mmの範囲にあることがより好ましい。
【0033】
本発明の現像ローラにおいては、導電性樹脂層4がポリウレタンポリオールプレポリマーとイソシアネート化合物を反応させて得られるポリウレタンを有すること、該ポリウレタンポリオールプレポリマーがa)ポリエーテルポリオールとイソホロンジイソシアネート(IPDI)とから製造されたプレポリマー(以下、「プレポリマーA」という)及びb)ポリエーテルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とから製造されたプレポリマー(以下、「プレポリマーB」という)を、それぞれの固形分量(質量部)をa、bとした時、0.2≦a/b≦4.0の範囲で併用したものであることが必須である。
【0034】
プレポリマーA及びプレポリマーBは、これらのいずれかと他のポリイソシアネートを用いて製造されたポリウレタンポリオールプレポリマー(以下、「プレポリマーC」という)と併用した場合に比べ、これらを併用した時は相互溶解性が高く、相分離を生じにくいため、導電性付与剤の局在化や分散性の低下によるゴースト等の画像品質上の問題が起こりにくい。また、柔軟な設計が可能で導電性付与剤の分散性に富むプレポリマーAと溶剤への溶解性が高いプレポリマーBを併用することで、トナーに対して与えるストレスが小さく、カブリのない画像耐久性に優れた現像ローラが得られる。
【0035】
また、プレポリマーA及びプレポリマーBを、それぞれの固形分使用量(質量部)をa、bとした時、固形分質量比(a/b)0.2〜4.0の範囲で混合使用することで、カーボンブラック等の導電性付与剤が導電性樹脂層用塗料中で安定性して分散可能となり、現像ローラの導電性樹脂層形成時に発生する導電性付与剤等の分散不良から引き起こされる導電性や膜硬度等の物性の経時変化を小さくすることができ、生産安定性にも優れることとなる。
【0036】
また、ポリウレタンポリオールプレポリマーの原料ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等が表面層の物理的強度と柔軟性のバランスに優れ、好適に用いられる。中でもPTMGは、ポリオール自身が強い分子結晶性を有するので、適度な被膜硬度と柔軟性を持ち得ることができ、現像ローラの導電性樹脂層の形成に用いられると、画像濃度の確保、及び長期画像形成時の画像品質上の観点からより好ましい。
【0037】
これらのポリウレタンポリオールプレポリマーには、必要に応じて2価又は3価の短鎖ポリオールが含まれていてもよい。2価の短鎖ポリオール、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等を含む場合、ポリウレタンポリオールプレポリマーのみであるときと比べより柔軟な分子設計が可能となる。また、3価の短鎖ポリオールを含ませると、導電性樹脂層の架橋密度を上げることができるので、ローラ表面の物理的強度が必要な場合に有用である。
【0038】
ポリウレタンポリオールプレポリマーの平均官能基数FOHは、3次元架橋反応時の反応性と架橋後の被膜硬度のバランスを考慮すると、2.0〜3.0の範囲にあることが望ましい。平均官能基数FOHが著しく高い(3.0超)と、ローラ表面の硬度が上昇し、トナーに対して過剰なストレスを与えてしまう場合がある。また逆に平均官能基数FOHが低すぎる(2.0未満)と、被膜の硬度が低下し、画像濃度が低下してしまう場合がある。
【0039】
ポリウレタンポリオールプレポリマーの平均官能基数FOHの調整は、該プレポリマー製造に当たり、適当な官能基数を有するポリエーテルポリオールを使用する、該ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートを反応させる際に3価の短鎖ポリオール、例えば1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン等を適量添加するあるいはポリイソシアネートに3価の変性物を適量使用することで調整することが可能である。
【0040】
なお、本発明における平均官能基数FOHとは、ポリウレタンポリオールプレポリマーが有する1分子あたりの水酸基の平均値である。
【0041】
ポリウレタンポリオールプレポリマーは、ポリエーテルポリオール及び短鎖ポリオールのOHモル量に対し原料ポリイソシアネートをイソシアネートとして0.2〜0.8モル量、好ましくは0.4〜0.6モル量使用し、有機溶媒中、必要により触媒の存在下で反応させて得られる。なお、ポリウレタンポリオールプレポリマーの分子量としては1000〜100000、好ましくは2000〜80000、より好ましくは5000〜20000が適当である。
【0042】
本発明のポリウレタンポリオールプレポリマーとして、原料ポリイソシアネートがイソホロンジイソシアネート(IPDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるプレポリマーA、プレポリマーBを必須成分として混合したものが使用される。
【0043】
本発明では、上記ポリウレタンポリオールプレポリマーにイソシアネート化合物が、導電性付与剤等と共に配され、適宜溶媒等を用いて塗料とされ、軸芯体上に弾性層が設けられたローラの弾性層上に塗布乾燥されて、導電性樹脂層が形成される。
【0044】
ポリウレタンポリオールプレポリマーと反応させるイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物や、そのブロック体を用いることができる。
【0045】
導電性樹脂層には、導電性を付与するため導電性付与剤が含有されることが好ましい。導電性付与剤としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの導電性樹脂層中の含有量は、導電性樹脂層を形成する基体樹脂分100質量部に対して、10〜50質量部であることが、現像ローラとしての導電性を好ましい範囲にすることができるため好ましい。使用するカーボンブラックの平均粒径及びDBP吸油量に特に制限はないが、皮膜強度と導電付与性の点から、平均粒径15〜50nm、DBP吸油量70〜150ml/100gであることが好ましい。
【0046】
導電性樹脂層にはローラ表面の粗さ制御のために微粒子を添加してもよい。粗さ制御用微粒子としては、体積平均粒径が8〜30μmであることが好ましい。また、樹脂層に添加する粒子添加量が、樹脂層の樹脂固形分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。
【0047】
粗さ制御用微粒子として、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂製の微粒子を用いることができる。
【0048】
導電性樹脂層の形成方法としては特に限定されるものではないが、スプレー、浸漬、ロールコート等の方法が適当であり、上記塗料を弾性層上に塗工し、塗膜を形成し、溶媒を乾燥したのち、加熱硬化する方法が取られる。
【0049】
なお、塗膜形成が浸漬塗工による場合、特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる方法は、簡便で生産安定性に優れているので好ましい。
【0050】
例えば、塗膜形成が浸漬塗工による場合、塗工装置として図2に概略図を示すような塗料を循環させる構造のものが好ましい。
【0051】
図2において、30は原料弾性ローラ31の外径よりわずかに大きな内径であり、ローラの軸方向長さより大きな深さをしている円筒形の浸漬槽であり、該浸漬槽30の上縁外周には環状の液受け部32が設けられており、撹拌タンク33と管34により接続されている。また浸漬槽30の底部には塗料35を輸送するためのポンプ36を介して撹拌タンク33と管37、38により接続されている。なお、撹拌タンク33には塗料35を撹拌するために撹拌翼39が設けられている。
【0052】
撹拌タンク33の塗料35は、液送ポンプ36によって管37、38を経て、浸漬槽30の底部に送り込まれる。浸漬槽30の上端部30aからは、塗料35がオーバーフローしており、浸漬槽30の上縁外周の液受け部32を介して撹拌タンク33に戻る。一方、軸芯体2上に弾性層3が設けられた原料弾性ローラ31は、軸芯体2の一端が昇降装置40の昇降板41に垂直に固定され、次いで、浸漬槽30中で塗料35に浸漬され、引き上げられることで導電性樹脂層用塗料の塗膜が弾性層3上に形成される。なお、被塗工ローラ31の浸漬に連れて、塗料35は浸積槽30の上端部30aから押しのけられた分も溢れでる。塗膜が形成された被塗工ローラは、昇降装置40から取り外された後、塗膜が乾燥硬化されて、導電性樹脂層が形成された現像ローラとなる。
【0053】
上記本発明の現像ローラは、複写機、ファクシミリ、プリンターなどの画像形成装置に現像ローラとして、また、プロセスカートリッジタイプの画像形成装置においてはプロセスカートリッジの現像ローラとして有用である。
【0054】
本発明の現像ローラを搭載したプロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図3に模式図と示した。この図3により以下説明する。
【0055】
なお、本画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット10a〜10dが4個あり、タンデム方式で設けられている。そして、感光体11、帯電装置12(図では帯電ローラ)、画像露光装置13(図では書き込みビーム)、現像装置14、クリーニング装置15、画像転写装置16(図では転写ローラ)等の仕様が各色トナー特性に応じて少し調整に差異があるものの、基本的構成においてこれら4個の画像形成ユニット10a〜10dは同じである。また、感光体11、帯電装置12、現像装置14及びクリーニング装置15が一体となり、プロセスカートリッジを形成している。
【0056】
現像装置14には、非磁性一成分トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光体11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光体11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に非磁性一成分トナー5を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ1に担持されている非磁性一成分トナー5を現像ローラ1から掻き取るトナー供給ローラ7及び現像ローラ1上の非磁性一成分トナー5の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード8が設けられている。
【0057】
感光体11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が加増露光装置13からビームとして、帯電された感光体5の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に本発明の現像ローラ6を有する現像装置14から非磁性一成分トナーが供給され、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像は感光体11の回転に伴って、画像転写装置16と対向する場所に来たときにその回転と同期して供給されてきた紙等の転写部材Pに転写される。
【0058】
なお、本図では4つの画像形成ユニット10a〜10dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写部材P上に重ねて形成されている。したがって、転写部材Pをそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる、つまり、画像形成が転写部材Pの挿入と同期している。そのために、転写部材Pを輸送するための転写搬送ベルト17が感光体11と画像転写装置16との間に挟まれるように、転写搬送ベルト17の駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされ、転写部材Pは転写搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写部材Pを供給するための供給ローラである。
【0059】
画像が形成された転写部材Pは、転写搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー像は転写部材Pに定着されて、印画が完了する。一方、トナー像の転写部材Pへの転写が終わった感光体11はさらに回転して、クリーニング装置15により感光体11表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光体11は次の画像形成に供される。なお、図において、16a、21aはそれぞれ画像転写装置(転写ローラ)16、吸着ローラ21へのバイアス電源を示す。
【0060】
なお、ここでは、タンデム型の転写部材上へ直接各色のトナー像を転写する装置で説明したが、現像ローラとして本発明の現像ローラを使用する装置であればいずれでもよく、白黒の単色画像形成装置、転写ローラや転写ベルトに一旦各色のトナー像を重ねてカラー画像を形成し、それを転写部材へ一括して転写する画像形成装置、また、各色の現像ユニットがロータ上に配置されたり、感光体に並列して配置されたりした画像形成装置等が挙げられる。また、プロセスカートリッジではなく、感光体、帯電装置、現像装置等が直接画像形成装置に組み込まれていても構わない。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0062】
まず、以下の実施例、比較例中での重量平均分子量等の測定方法を示す。
【0063】
(重量平均分子量)
GPCカラム「TSKgel SuperHM−M」(商品名、東ソー株式会社製)2本を直列につないだ高速液体クロマトグラフ分析装置「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー株式会社製)を用い、溶媒THF、温度40℃、流速0.6ml/min、RI(屈折率)検出器にて、測定サンプルを0.1質量%のTHF溶液として測定した。検量線作成用の標準試料として数種の単分散標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて検量線の作成を行い、これを基に得られた測定サンプルの保持時間から重量平均分子量を求めた。
【0064】
(ポリウレタンポリオールプレポリマーの平均水酸基価FOH
JIS K−1557(1970)に記載の方法により測定した。
【0065】
(導電性樹脂層の体積抵抗率)
導電性樹脂層形成用塗料を粘度15cpsに調整し、膜厚200μmになるようにアルミ型にキャストし、サンフラワー架台に載せ塗料が表面に膜を形成しない程度の粘度に上昇するまで乾燥させた。その後、水平台に載せて室温下で1日放置した。次いで、140℃で2時間加熱硬化し、室温まで冷却した後、アルミ型から剥がし、膜厚約200μmの導電性樹脂層のシートを作製した。このようにして作製したシートを直径5cmの円形に打ち抜き、両面に白金蒸着を施し、得られた白金蒸着されたシートを気温25℃、相対湿度50%RH環境下に24時間放置した。このシートを、抵抗測定機「エレクトロメータR8340A」(商品名、株式会社アドバンテスト製)にて、100Vの電圧負荷で体積抵抗率を測定した。数値はn=3で測定した平均値を用いた。
【0066】
(ローラの表面硬度)
ゴム硬さ計「マイクロゴム硬度計MD−1」(商品名、高分子計器株式会社製)によって、気温25℃、相対湿度50%RH環境下で、導電性樹脂層形成した後のローラの硬さを中央部及び両端から2cmに位置の3点で測定し、その平均値をローラの表面硬度とした。
【0067】
(参考例1) 原料弾性ローラの製造
軸芯体として、φ8mmのSUS製丸棒にニッケルメッキを施し、その上にプライマー“DY35−051”(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を塗布焼付けしたものを用い、これを金型に配置し、液状シリコーンゴム材料“SE6724A/B”(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)100質量部に対し、カーボンブラック“トーカブラック#7360SB”(商品名、東海カーボン株式会社製)35質量部、耐熱性付与剤としてシリカ粉体0.2質量部、及び白金触媒0.1質量部を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを150℃で15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに180℃で1時間加熱し硬化反応を完結させ、表面を研磨して、厚み4mmの弾性層を軸芯体の外周に設けた原料弾性ローラを作製した。
【0068】
(参考例2) プレポリマーA−1の製造
ポリテトラメチレングリコール(PTMG)“PTG1000SN”(商品名、保土谷化学株式会社製)100質量部に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)“タケネートD140N”(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)22質量部をメチルエチルケトン(MEK)中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて5時間反応させ、重量平均分子量(Mw)10000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーA−1を得た。
【0069】
(参考例3) プレポリマーA−2の製造
PTMGに代えて、ポリプロピレングリコール(PPG)“アクトコールDiol−1000”(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)を用いる他は参考例2と同様にして、Mw=10000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーA-2を得た。
【0070】
(参考例4) プレポリマーA−3の製造
PTMGに代えて、ポリエチレングリコール(PEG)“PEG−1000”(三洋化成工業株式会社製)100質量部を用いる他は、参考例2と同様にして、Mw=10000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーA−3を得た。
【0071】
(参考例5) プレポリマーA−4の製造
IPDIの配合量を28質量部に増やす他は参考例2と同様にして、Mw=12500、水酸基価25、平均官能基数1.8のプレポリマーA-4を得た。
【0072】
(参考例6) プレポリマーA−5の製造
PTMG“PTG1000SN”(商品名)100質量部に、IPDI“タケネートD140N”(商品名)21質量部、エチレングリコール(EG)6質量部及び1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)1.5質量部をMEK中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて5時間反応させてMw=12500、水酸基価35、平均官能基数2.4のプレポリマーA−5を得た。
【0073】
(参考例7) プレポリマーA−6の製造
EGを8質量部に、TMPを4質量部に増やす他は参考例6と同様にして、Mw=10500、水酸基価38、平均官能基数3.0のプレポリマーA−6を得た。
【0074】
(参考例8) プレポリマーA−7の製造
EGを4質量部に減らし、TMPを8質量部に増やす他は参考例6と同様にして、Mw=10000、水酸基価40、平均官能基数3.8のプレポリマーA−7を得た。
【0075】
(参考例9) プレポリマーB−1の製造
IPDIに代えて、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)“コスモネートM−100”(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)25質量部を用いる他は参考例2と同様にして、Mw=10000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーB−1を得た。
【0076】
(参考例10) プレポリマーB−2の製造
IPDIに代えて、MDI“コスモネートM−100”(商品名)25質量部を用いる他は参考例3と同様にして、Mw=10000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーB−2を得た。
【0077】
(参考例11) プレポリマーB−3の製造
IPDIに代えて、MDI“コスモネートM−100”(商品名)25質量部を用いる他は参考例4と同様にして、Mw=10000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーB−3を得た。
【0078】
(参考例12) プレポリマーB−4の製造
IPDIに代えて、MDI“コスモネートM−100”(商品名)31質量部を用いる他は参考例5と同様にして、Mw=12000、水酸基価26、平均官能基数1.6のプレポリマーB−4を得た。
【0079】
(参考例13) プレポリマーB−5の製造
IPDIに代えて、MDI“コスモネートM−100”(商品名)23質量部を用いる他は参考例6と同様にして、Mw=11800、水酸基価28、平均官能基数2.1のプレポリマーB−5を得た。
【0080】
(参考例14) プレポリマーB−6の製造
IPDIに代えて、MDI“コスモネートM−100”(商品名)23質量部を用いる他は参考例7と同様にして、Mw=11000、水酸基価30、平均官能基数2.8のプレポリマーB−6を得た。
【0081】
(参考例15) プレポリマーB−7の製造
IPDIに代えて、MDI“コスモネートM−100”(商品名)23質量部を用いる他は参考例8と同様にして、Mw=10900、水酸基価34、平均官能基数3.6のプレポリマーB−7を得た。
【0082】
(参考例16) プレポリマーC−1の製造
IPDIに代えて、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HDI)“タケネート700”(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)16質量部を用いる他は参考例2と同様にして、Mw=10000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーC−1を得た。
【0083】
(参考例17) プレポリマーC−2の製造
IPDIに代えて、トリレンジイソシアネート(TDI)“コスモネートT−80”(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)17質量部を用いる他は参考例2と同様にして、Mw=9800、水酸基価33、平均官能基数2.0のプレポリマーC−2を得た。
【0084】
(参考例18) プレポリマーC−3の製造
IPDIに代えて、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)“コスモネートND”(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)21質量部を用いる他は参考例2と同様にして、Mw=10000、水酸基価31、平均官能基数2.0のプレポリマーC−3を得た。
【0085】
(参考例19) プレポリマーC−4の製造
IPDIに代えて、キシリレンジイソシアネート(XDI)“タケネート500”(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)17質量部を用いる他は参考例2と同様にして、Mw=9800、水酸基価33、平均官能基数2.0のプレポリマーC−4を得た。
【0086】
(参考例20) プレポリマーC−5の製造
IPDIに代えて、TDI“コスモネートT−80”(商品名)17質量部を用いる他は参考例3と同様にして、Mw=11000、水酸基価30、平均官能基数2.0のプレポリマーC−5を得た。
【0087】
(参考例21) プレポリマーC−6の製造
IPDIに代えて、HDI“タケネート700”(商品名)16質量部を用いる他は参考例4と同様にして、Mw=9800、水酸基価33、平均官能基数2.0のプレポリマーC−6を得た。
【0088】
上記プレポリマーA−1〜7、B−1〜7及びC−1〜6の原料組成、得られた物性を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
(実施例1)
導電性樹脂層形成用塗料として、プレポリマーA−1(参考例2で作成)とプレポリマーB−1(参考例9で作成)を質量比16.7:83.3で混合した混合物100質量部に対し、ポリイソシアネート“コロネート2521”(商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)33.4質量部、カーボンブラック“MA230”(商品名、三菱化学株式会社製)40質量部及び樹脂微粉末“バーノックCFB100”(商品名、大日本インキ株式会社製)40質量部を、総固形分30質量%になるようにMEKに溶解混合し、サンドミルにて均一に分散して得た塗料を用いた。なお、この塗料の膜厚約200μmのシートでの体積抵抗率は3.5×106Ω・cmであった。
【0091】
得られた塗料について、粘度10〜13cpsになるようにMEKで希釈した後、図2に示す液循環型浸漬塗工装置に入れ、液温20〜24℃、液流量400ml/minとした状態で、参考例1で作製した原料弾性ローラの弾性層上に浸漬塗工した後、乾燥し、次いで150℃で2時間加熱処理して、弾性層外周に膜厚約15μmの導電性樹脂層を有する現像ローラ1を得た。なお、この現像ローラ1の表面硬度は39.2であった。
【0092】
現像ローラ1製造に供した後、液循環型浸漬塗工装置中で、そのまま塗料を、液温度20〜24℃、液流量400ml/minで14日間、溶剤の揮発分を適宜補い、粘度10〜13cpsに保ちつつ連続循環させた。その後、再び浸漬塗工により現像ローラ1(経時)を作製した。また、現像ローラ1(経時)の作製に供した14日間の連続循環させた塗料から体積抵抗率測定用シート(経時)を作製した。
【0093】
(実施例2)
プレポリマーA−1とプレポリマーB−1の質量比を50:50に変更した以外は実施例1と同様にして、体積抵抗率用測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ2と現像ローラ2(経時)を得た。
【0094】
(実施例3)
プレポリマーA−1とプレポリマーB−1の質量比を80:20に変更した以外は実施例1と同様にして、体積抵抗率用測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ3と現像ローラ3(経時)を得た。
【0095】
(実施例4)
ポリウレタンポリオールプレポリマーとして、参考例3で作製したプレポリマーA−2と参考例10で作製したプレポリマーB−2を質量比16.7:83.3で混合したものを用いる他は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート〈経時)及び現像ローラ4と現像ローラ4(経時)を得た。
【0096】
(実施例5)
プレポリマーA−2とプレポリマーB−2の質量比を50:50に変更した以外は実施例4と同様にして、体積抵抗率用測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ5と現像ローラ5(経時)を得た。
【0097】
(実施例6)
プレポリマーA−2とプレポリマーB−2の質量比を80:20に変更した以外は実施例4と同様にして、体積抵抗率用測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ6と現像ローラ6(経時)を得た。
【0098】
(実施例7)
ポリウレタンポリオールプレポリマーとして、参考例4で作製したプレポリマーA−3と参考例11で作製したプレポリマーB−3を質量比16.7:83.3で混合したものを用いる他は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート〈経時)及び現像ローラ7と現像ローラ7(経時)を得た。
【0099】
(実施例8)
プレポリマーA−3とプレポリマーB−3の質量比を50:50に変更した以外は実施例7と同様にして、体積抵抗率用測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ8と現像ローラ8(経時)を得た。
【0100】
(実施例9)
プレポリマーA−3とプレポリマーB−3の質量比を80:20に変更した以外は実施例7と同様にして、体積抵抗率用測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ9と現像ローラ9(経時)を得た。
【0101】
(実施例10)
導電性樹脂層形成用塗料として、プレポリマーA−4(参考例5で作成)とプレポリマーB−4(参考例12で作成)を質量比25:75で混合した混合物100質量部に対し、ポリイソシアネート“コロネート2521”(商品名)31.1質量部、カーボンブラック“MA230”(商品名)40質量部及び樹脂微粉末“バーノックCFB100”(商品名)40質量部を、総固形分30質量%になるようにMEKに溶解混合し、サンドミルにて均一に分散して得た塗料を用いる他は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート〈経時)及び現像ローラ10と現像ローラ10(経時)を得た。
【0102】
(実施例11)
導電性樹脂層形成用塗料として、プレポリマーA−5(参考例6で作成)とプレポリマーB−5(参考例13で作成)を質量比25:75で混合した混合物100質量部に対し、ポリイソシアネート“コロネート2521”(商品名)31.1質量部、カーボンブラック“MA230”(商品名)40質量部及び樹脂微粉末“バーノックCFB100”(商品名)40質量部を、総固形分30質量%になるようにMEKに溶解混合し、サンドミルにて均一に分散して得た塗料を用いる他は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート〈経時)及び現像ローラ10と現像ローラ10(経時)を得た。
【0103】
(実施例12)
導電性樹脂層形成用塗料として、プレポリマーA−6(参考例7で作成)とプレポリマーB−6(参考例14で作成)を質量比25:75で混合した混合物100質量部に対し、ポリイソシアネート“コロネート2521”(商品名)35質量部、カーボンブラック“MA230”(商品名)40質量部及び樹脂微粉末“バーノックCFB100”(商品名)40質量部を、総固形分30質量%になるようにMEKに溶解混合し、サンドミルにて均一に分散して得た塗料を用いる他は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート〈経時)及び現像ローラ12と現像ローラ12(経時)を得た。
【0104】
(実施例13)
導電性樹脂層形成用塗料として、プレポリマーA−7(参考例8で作成)とプレポリマーB−7(参考例15で作成)を質量比16.7:83.3で混合した混合物100質量部に対し、ポリイソシアネート“コロネート2521”(商品名)38質量部、カーボンブラック“MA230”(商品名)40質量部及び樹脂微粉末“バーノックCFB100”(商品名)40質量部を、総固形分30質量%になるようにMEKに溶解混合し、サンドミルにて均一に分散して得た塗料を用いる他は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート〈経時)及び現像ローラ13と現像ローラ13(経時)を得た。
【0105】
(比較例1)
プレポリマーB−1に代えて、プレポリマーC−1(参考例16で作成)を用いる他は実施例2と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ14と現像ローラ14(経時)を得た。
【0106】
(比較例2)
プレポリマーB−1に代えて、プレポリマーC−2(参考例17で作成)を用いる他は実施例2と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ15と現像ローラ15(経時)を得た。
【0107】
(比較例3)
プレポリマーB−1に代えて、プレポリマーC−3(参考例18で作成)を用いる他は実施例2と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ18と現像ローラ18(経時)を得た。
【0108】
(比較例4)
プレポリマーB−1に代えて、プレポリマーC−4(参考例19で作成)を用いる他は実施例2と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ19と現像ローラ19(経時)を得た。
【0109】
(比較例5)
プレポリマーB−2に代えて、プレポリマーC−5(参考例20で作成)を用いる他は実施例5と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ20と現像ローラ20(経時)を得た。
【0110】
(比較例6)
プレポリマーB−3に代えて、プレポリマーC−6(参考例21で作成)を用いる他は実施例8と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ21と現像ローラ21(経時)を得た。
【0111】
(比較例7)
プレポリマーA−1とプレポリマーB−1の質量比を10:90に変更した以外は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ22と現像ローラ22(経時)を得た。
【0112】
(比較例8)
プレポリマーA−1とプレポリマーB−1の質量比を85:15に変更した以外は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ23と現像ローラ23(経時)を得た。
【0113】
(比較例9)
プレポリマーA−2とプレポリマーB−2の質量比を10:90に変更した以外は実施例4と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ24と現像ローラ24(経時)を得た。
【0114】
(比較例10)
プレポリマーA−2とプレポリマーB−2の質量比を85:15に変更した以外は実施例4と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ25と現像ローラ25(経時)を得た。
【0115】
(比較例11)
プレポリマーA−3とプレポリマーB−3の質量比を10:90に変更した以外は実施例7と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ26と現像ローラ26(経時)を得た。
【0116】
(比較例12)
プレポリマーA−3とプレポリマーB−3の質量比を85:15に変更した以外は実施例1と同様にして、体積抵抗率測定用シートとシート(経時)及び現像ローラ27と現像ローラ27(経時)を得た。
【0117】
以上のようにして得られた実施例1〜13及び比較例1〜12のシートについて、体積抵抗率を測定した。また得られた現像ローラの表面硬度を測定した。これらデータから導電性樹脂層形成用塗料の体積低効率及びローラ表面硬度からの経時変化を調べ、下記評価基準で評価した。その結果を表2に示した。
【0118】
[体積抵抗率からの経時変化評価]
◎:シート及びシート(経時)で測定した体積抵抗率の差が10%未満。
○:シート及びシート(経時)で測定した体積抵抗率の差が10%以上30%未満。
△:シート及びシート(経時)で測定した体積抵抗率の差が30%以上。
【0119】
[ローラ表面硬度からの経時変化評価]
◎:現像ローラと現像ローラ(経時)で測定した表面硬度の差が2%未満。
○:現像ローラと現像ローラ(経時)で測定した表面硬度の差が2%以上5%未満。
△:現像ローラと現像ローラ(経時)で測定した表面硬度の差が5%以上。
【0120】
一方、実施例1〜13及び比較例1〜12で作製した現像ローラ1〜25を市販のレーザービームプリンタ“LBP5500”(商品名、キヤノン株式会社製)の現像ローラとして装着し、気温25°、相対湿度50%RHの環境下に、非磁性一成分ブラックトナーで印字率2%にて1万枚連続印刷後に、(1)カブリ、(2)ゴースト及び(3)画像濃度を調べ、それぞれを下記にて評価し、それらの結果から、現像ローラの画像耐久性の総合評価をした。
【0121】
(1)カブリ
連続1万枚の印刷後に白ベタ画像を出力し、その出力中にプリンタを停止し、感光体上に付着したトナーを粘着テープで剥がし採り、該粘着テープの粘着面の反射率を測定し、反射率の低下具合から、カブリを評価した。なお、反射率の測定には、反射濃度計“TC−6DS/A”(商品名、東京電色社製)を用いた。
◎:反射率の低下が3%未満。
○:反射率の低下が3%以上5%未満。
△:反射率の低下が5%以上。
【0122】
(2)ゴースト
カブリを調べた後、画像パターンとして、1枚内で先端部に15mm角のベタ黒、その後が全面ハーフトーンである画像を出力し、ハーフトーン部分に現れる現像ローラ周期の濃度ムラを目視で評価し、ゴーストの評価とした。
◎:ハーフトーン部に濃度ムラが全く認められない。
○:ハーフトーン部に極軽微な濃度ムラが認められる。
△:ハーフトーン部に顕著な濃度ムラが認められる。
【0123】
(3)画像濃度
ゴースト用画像を出力した後、全面クロベタ画像を出力し、紙面上9ヶ所で反射濃度計“GretagMacbeth RD918”(商品名、マクベス社製)により濃度を測定し、その平均値から下記基準で評価した。
◎:濃度が1.3以上。
○:濃度が1.1以上1.3未満。
△:濃度が1.1未満。
【0124】
(4)画像耐久性の総合評価
以上の(1)〜(3)の評価結果から、下記基準で総合評価した。
◎:問題がなく非常に良好な画像耐久性。
○:軽微な問題はあるが、問題ないレベル。
△:実際の使用上問題となるレベル。
【0125】
【表2】

【0126】
実施例1〜13は、ポリウレタンポリオールプレポリマーがIPDIを用いたプレポリマーAとMDIを用いたプレポリマーBが0.2≦a/b≦4.0の比率で用いられており、導電性樹脂層用塗料の経時変化が小さく、また製造された現像ローラも画像耐久性に優れている。特にポリオール成分がポリテトラメチレングリコール(PTMG)であり、かつポリウレタンポリオールプレポリマーの平均官能基数が2.0〜3.0である実施例1〜3、11及び12は経時安定性と画像耐久性が高次元で両立されている。それに対し、イソシアネートとしてHDI、TDI、NDIあるいはXDIを用いたポリウレタンポリオールプレポリマーを、IPDIを用いたプレポリマーAと併用してさえ、導電性樹脂層用塗料中で導電性付与剤の分散が不安定であり、物性が大きく変化したり、長期の画像形成の際トナーに対するストレスが増大したりして画像品質の低下が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の現像ローラの一例の断面図である。
【図2】導電性樹脂層形成に使用する液循環型浸漬塗工装置の模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0128】
1 現像ローラ
2 導電性軸芯体
3 弾性層
4 導電性樹脂層
5 非磁性一成分トナー
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a〜d 画像形成ユニット
11 感光体
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 画像露光装置(書き込みビーム)
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
16a バイアス電源
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
21a バイアス電源
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
30 浸漬槽
30a 浸漬槽30の上端部
31 原料弾性ローラ(被塗工ローラ)
32 液受け部
33 撹拌タンク
34 管
35 塗料
36 ポンプ
37、38 管
39 撹拌翼
40 昇降装置
41 昇降板
P 転写部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体の周囲に設けられた弾性層の外周に少なくとも導電性樹脂層を有する現像ローラの製造方法であって、
該導電性樹脂層が、ポリウレタンポリオールプレポリマーとイソシアネート化合物を反応させて得られるポリウレタンを含有するものであり、
かつ、該ポリウレタンポリオールプレポリマーが、a)ポリエーテルポリオールとイソホロンジイソシアネート(IPDI)とから製造されたプレポリマーA及びb)ポリエーテルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とから製造されたプレポリマーBを、それぞれの固形分量(質量部)をa、bとした時、0.2≦a/b≦4.0の範囲で併用したものである
ことを特徴とする現像ローラの製造方法。
【請求項2】
ポリウレタンポリオールプレポリマーを製造する際に使用されたポリエーテルポリオールが、ポリテトラメチレングリコールである請求項1に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項3】
ポリウレタンポリオールプレポリマーの平均官能基数FOHが2.0〜3.0の範囲にある請求項1又は2に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像ローラの製造方法で製造されたものであることを特徴とする現像ローラ。
【請求項5】
現像ローラが装着された電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、該現像ローラが請求項4に記載の現像ローラであることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
静電潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持する現像ローラを備え、該現像ローラが該感光体にトナーを付与して該静電潜像を可視化する電子写真装置において、現像ローラが請求項4に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−163860(P2007−163860A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360333(P2005−360333)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】