説明

現像剤容器及び画像形成装置

【課題】コストを抑制し、容器内に現像剤が凝集して残存することを防止できる現像剤容器及び画像形成装置の提供。
【解決手段】トナーボトル200では、トナーを収納する円筒部の内周面に、円筒部内側へ隆起した突条201a…が設けられているとともに、円筒部がその中心軸回りに回転駆動されることにより、トナーが排出口から排出される。ここで、上記中心軸に対して垂直な円筒部の断面を円筒部の長手方向から投影すると、円筒部の内周に突条201aが投影されない領域201bが1以上存在し、かつある突条201aが上記円筒部の長手方向の占有する領域が隣接する突条201aが長手方向の占有する領域とオーバーラップしている。トナーと突条201aとの接触を適度に保持するため、トナーを搬送する際、トナーと突条201aとの抵抗をあまり上昇させることなく、摩擦熱の発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤を収容する現像剤容器及び該現像剤容器を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体表面に形成された静電潜像を現像装置がトナーによって顕像化する。静電潜像の顕像化に用いられるトナーはトナー容器(トナーカートリッジやトナーボトル)に収納され、このトナー容器から現像装置に対して逐次トナーの供給が行われる。
【0003】
高速機の画像形成装置においては多くのトナーを消費するため、容量の大きいトナー容器が使用される。その中で、回転型のトナーボトルは、トナーの排出量が精度よく制御できるため、従来から用いられている。多くの場合、トナーボトルは中空の円筒形状に形成され、一方の端部が閉塞されるとともに他方の端部付近に排出口が設けられている。また、トナーボトルは、画像形成装置に装着される際、円筒形状部の軸が水平になるように配置される。さらに、トナーボトルの内周面にはスパイラル状の突状部が設けられているものもある。このトナーボトルでは、軸を中心に回転駆動すると、内周面に設けられた突状部がトナーを排出口の方向へ案内しながら搬送し、回転に応じた分量のトナーが排出口から排出される。
【0004】
近年、画像形成装置の低消費電力化に向けて、トナーの低融点化が図られている。それに伴い、トナーの流動性が微妙に変化し、トナー容器の中でトナー凝集が起こりやすくなっており、特に高温高湿条件下においては、その傾向が顕著に現れやすい。その結果、トナー容器の中の凝集したトナーをうまく排出できずに、それらがトナー容器の中に留まってしまう。最終的には、トナー容器にはトナーが残留しているにもかかわらず、トナー容器は「トナーなし」と判断され、トナー容器の交換信号が発信されてしまう。そうなると、トナーを全部消費していないにもかかわらず、「トナー交換」を余儀なくされるため、非常に不経済な状況を来たしてしまう。
【0005】
このような状況への対策として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、トナー容器内部にかきとり部材などを設けて強制的に凝集トナーを起こさせないようにする、もしくは凝集トナーを排出する技術がある。また、トナーと接触する部分であるトナー容器内面に、トナーのすべり性を向上させるため、フッ素などのコートを行う技術ある。また、樹脂中にフッ素などの材料成分を混合し、それら混合材料を用いてトナー容器を成型する技術がある。
【特許文献1】特開2005−140908号公報
【特許文献2】特開2006−71762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術は、かきとり部材などを設けているため、コストアップとなる。他方、トナー容器の内側にフッ素などをコートしたり、樹脂中にフッ素などの材料成分を混合したものでトナー容器を形成したりしても、顕著な効果が得られていないというのが実情である。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、コストを抑制し、容器内に現像剤が凝集して残存することを防止できる現像剤容器およびこの現像剤容器を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る現像剤容器は、現像剤が収容され、内周面に複数の突条が設けられた円筒体を有する容器本体と、該容器本体の軸方向の一端側に設けられた排出口とを備え、前記容器本体の中心軸回りの回転によって収容された現像剤を前記一端側へ搬送し、搬送した現像剤を前記排出口から排出する現像剤容器において、前記円筒体の軸長方向の全長に渡って前記突条が設けられていない領域が前記円筒体の周方向の1又は複数箇所に形成されており、前記円筒体の周方向に隣接する2つの突条が前記軸長方向にて重複する領域を有することを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、現像剤を搬送するために円筒体内側へ隆起した複数の突条が設けられた円筒体を、回転の中心軸に対して垂直に切断して、円筒体の長手方向から投影すると、円筒体の内周に突条が投影されない領域が1以上設けられている。つまり、現像剤を搬送するための円筒体の内側へ隆起した複数の突条は、上記のように投影してみると、円筒体の内周全域には形成されておらず、突条は途切れている。そのため、現像剤と複数の突条との接触を抑えられるため、現像剤を搬送する際、現像剤と突条との抵抗を減少させることができる。また、隣接する突条と円筒部の軸長方向でオーバーラップしているため、トナーの搬送力も低下させずに摩擦熱の発生を抑制できる。このように、熱の発生を抑えられるので、現像剤の凝集の発生を抑制でき、現像剤の搬送性を安定して確保することができる。また、従来のように凝集した現像剤をかき出すための部材は必要ないため、コストを抑制することができる。
【0010】
本発明に係る現像剤容器は、前記突条が、前記軸長方向に垂直な方向から前記一端側へ傾けてあることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、複数の突条が回転面から現像剤搬送方向に向かって傾斜している。しかも、各突条は互いに延長上で繋がらないように配備される。このように突条が設けられていることにより、突条に接触する現像剤に摩擦熱が集中しないようにすることができる。よって、より効果的にトナー凝集を抑えることができる。
【0012】
本発明に係る現像剤容器は、前記突条の傾きを20°以上、40°以下としてあることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、突条が円筒体の中心軸に垂直な方向から現像剤搬送方向に向かって20°以上40°以下の角度を有して設けられる。よって、円筒部の回転による力を現像剤の搬送力として効率的に利用することができる。
【0014】
本発明に係る現像剤容器は、前記突条の高さを前記円筒体の内径の5.8〜9.2%の範囲としてあることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、突条の高さが円筒体の内径の5.8%〜9.2%の範囲で設けられる。この範囲であると、現像剤の搬送性が適度に確保できる。よって、効率よく現像剤を搬送させることができる。
【0016】
本発明に係る現像剤容器は、前記円筒体の内周に対する前記突条が設けられていない領域の割合が17〜37%の範囲であることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、突条が投影される領域が円筒体の内周の全長に対して17%未満であると、現像剤の凝集が発生しやすくなる。反対に、83%を超えると現像剤の搬送性能が低下する。よって、突条が投影されない領域が円筒部の内周全長に対して、17%以上27%以下であると、凝集を抑制し効率よく現像剤を搬送させることができる。
【0018】
本発明に係る現像剤容器は、前記突条は前記円筒体の一端側から他端側まで一定形状にて周期的に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、複数の突条が、円筒体の排出口と反対の端部から排出口が設けられた現像剤排出部手前まで、一定形状にて繰り返して配置されていることで、円筒部の排出口と反対の端部から排出口が設けられた現像剤排出部手前までの間で、現像剤に加えられる摩擦熱が変更されることはない。よって、現像剤の凝集が起こりにくくなる。
【0020】
本発明に係る現像剤容器は、前記円筒体に収容する現像剤が、平均粒子径が4〜8μmのトナーを含むことを特徴とする。
【0021】
平均粒子径が小さくなるとトナーは凝集しやすくなる傾向を示す。平均粒子径が4〜8μmという凝集しやすいトナーであっても、本発明にあっては、トナーの凝集を抑制し、効果的にトナーを搬送させることができる。
【0022】
本発明に係る画像形成装置は、前述した発明の何れか1つに記載の現像剤容器と、該現像剤容器に収容された現像剤を用いて感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部と、該現像部により現像された画像をシート上に転写する転写部とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、現像剤の補給が的確に行われるため、印字画質の品位を保つことができる。また、従来は、現像剤の凝集により現像剤が現像剤容器に残っているにもかかわらず現像剤容器を交換するための信号が発信される場合があったが、上記構成によると、これを防ぐことができ、適切な時期に交換信号の発信を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による場合は、現像剤を搬送するために円筒体の内側へ隆起した複数の突条は、中心軸に対して垂直な断面を円筒体の長手方向から投影してみると、円筒体の内周の全部には形成されておらず、突条は途切れている。そのため、現像剤と突条との接触を抑えられるため、現像剤を搬送する際、現像剤と突条との抵抗を減少させることができる。また、隣接する突条同士は円筒体の長手方向でオーバーラップしているため、トナーの搬送力も低下させずに、摩擦熱の発生を抑制できる。このように、熱の発生を抑えられるので、現像剤の凝集の発生を抑制でき、トナーの搬送性を確保することができる。また、従来のように凝集した現像剤をかき出すための部材は必要ないため、コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。本実施形態では、画像形成装置として複合機を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されず、プリンタ、ファクシミリ機、又は複写機などの画像形成を行う装置であればよい。
【0026】
本実施形態の画像形成装置101は、外部接続されたパーソナルコンピュータ等の情報処理装置(図示せず)から送信された印刷ジョブに基づいて、又は原稿読取ユニット110によって原稿を読み取って得た画像データに基づいて、多色画像又は単色画像を電子写真方式により記録用紙上に形成するものである。
【0027】
画像形成装置101は、図1に示すように、主として、原稿読取ユニット110、画像形成ユニット120、給紙ユニット130からなる。給紙ユニット130は、記録用紙を収納する4つの用紙カセット142a〜142dを備える。画像形成ユニット120は、給紙ユニット130の何れかの用紙カセットから給紙された記録用紙に対して、カールソンプロセスによって画像を形成する。原稿読取ユニット110は、原稿台に載置された原稿をスキャンし、画像データを作成する。
【0028】
画像形成ユニット120は、より詳細には、ブラック(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の各色のトナー像を重ね合わせることにより、多色画像を形成する。このため、画像形成ユニット120は、BK,C,M,Yにそれぞれ対応する4つの感光体ドラム21a〜21dを備えるとともに、感光体ドラム21a〜21dの周囲には、感光体ドラムごとに、それぞれ帯電器、現像装置、転写ローラ、およびクリーニング部材などが設けられている。画像形成ユニット120は、タンデム式のカラー画像形成ユニットとなっている。
【0029】
画像形成ユニット120は、さらに露光ユニット10、中間転写ベルト31、転写ローラ36、および定着器27などを備えている。
【0030】
感光体ドラム21a〜21dは、例えば、有機光導電体(OPC)を用いた有機感光体である。露光ユニット10は、レーザスキャニングユニット、ポリゴンミラー、fθレンズおよび反射ミラーなどを有している。露光ユニット10では、レーザスキャニングユニットから発せられたレーザ光が、ポリゴンミラー及びfθレンズにより色分解された後、反射ミラーで反射され、色ごとにそれぞれの感光体ドラム21a〜21d上に照射される。
【0031】
現像装置23a〜23dは、現像槽、攪拌ローラ、現像ローラおよびドクタブレードなどを有している。現像装置23a〜23dは、トナーにキャリアが混合された2成分系現像剤を用いて現像を行う。現像装置23a〜23dでは、現像槽内に供給されたトナーを攪拌ローラでキャリアと混合し、ドクタブレードによって適切な穂高に調節された磁気ブラシを現像ローラ上に形成し、この磁気ブラシを現像バイアスの元で感光体ドラム21a〜21dに接触させることにより、現像が行われる。
【0032】
なお、現像装置23a〜23dに各色のトナーを補給するために、画像形成装置101は、現像装置23a〜23dの上方にトナー補給装置100a〜100dを有している。トナー補給装置100a〜100dは、それぞれブラック(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のトナーを収納するトナーボトルを有している。各トナーボトルはトナーが消耗した際に交換可能となっている。このトナーボトルの詳細については後述する。ここで、画像形成装置101は、消費量の多いブラックトナーのトナー補給装置100aを2つ有している。また、各トナー補給装置100a〜100dのトナーボトルには、各色のトナーに加えて適量のキャリアが含まれているものとする。
【0033】
中間転写ベルト31は、駆動ローラおよび従動ローラによって張架された無端ベルトであり、感光体ドラム21a〜21dのそれぞれの表面と接している。また、中間転写ベルト31は用紙搬送路とも接している。中間転写ベルト31と用紙搬送路とが接している場所には、転写ローラ36が中間転写ベルト31に対向するよう設けられている。
【0034】
定着器27は、定着ローラおよび加圧ローラを有しており、これら2つのローラがトナー像の転写された記録用紙を挟持することにより、記録用紙にトナー像を定着させる。
【0035】
次に、画像形成装置101における画像形成プロセスについて説明する。まず、感光体ドラム21a〜21dの表面が帯電器によって均一に帯電される。次に、感光体ドラム21a〜21d表面の均一に帯電した領域が、露光ユニット10によって露光されることにより、感光体ドラム21a〜21d表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、画像に含まれる各色成分ごとに作成される。
【0036】
そして、感光体ドラム21a〜21d表面上に形成された各色成分の静電潜像は、現像装置23a〜23dによってそれぞれ現像される。これにより、感光体ドラム21a〜21d表面には、それぞれBK,C,M,Yのトナー像が形成される。感光体ドラム21a〜21d表面に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト31上に重ねて転写される。これにより、中間転写ベルト31には、所望の多色画像がトナー像として形成される。
【0037】
一方、給紙ユニット130の何れかの用紙カセットからは、記録用紙が1枚ピックアップされ、用紙搬送路を搬送される。搬送された記録用紙は、転写ローラ36が設けられている地点に到達し、転写ローラ36によって中間転写ベルト31に圧接される。ここで、転写ローラ36と中間転写ベルト31との間には転写電界が形成されており、この電界の作用により、中間転写ベルト31上に形成されたトナー像が記録用紙に転写される。
【0038】
トナー像が転写された記録用紙はさらに搬送され、定着器27によって記録用紙に対するトナー像の定着が行われる。そして、記録用紙は排紙トレイに排紙され、画像形成プロセスが終了する。
【0039】
次に、本実施形態の現像装置23a〜23d及びトナー補給装置100a〜100dの構成について詳細に説明する。現像装置23a〜23dは、基本的にはそれぞれ同一の構造となっており、以下では、現像装置23a〜23dをまとめて現像装置23と称する。また、トナー補給装置100a〜100d、感光体ドラム21a〜21dについても同様であり、以下では、トナー補給装置100a〜100dをトナー補給装置100、感光体ドラム21a〜21dを感光体ドラム21と称する。
【0040】
図2は本実施の形態に係る現像装置23及びトナー補給装置100の概略構造を示す横断面図である。現像装置23は、図2に示すように、現像ローラ231、第1及び第2トナー搬送ローラ232,233、トナー槽234、トナー濃度センサ235、並びにドクタブレード236を有している。
【0041】
トナー槽234は、現像装置23の外装部を形成するものであり、上部に現像剤を導入するためのトナー導入口234aが開口形成されている。また、トナー槽234の感光体ドラム21に面する側には、開口部234bが形成されている。トナー槽234の内部には、現像ローラ231、第1トナー搬送ローラ232、及び第2トナー搬送ローラ233が配設されている。
【0042】
現像ローラ231は、トナー槽234に形成された上記開口部234b付近に設けられており、開口部234bから露出して感光体ドラム21と当接または近接している。この現像ローラ231は、上述した磁気ブラシを形成するためのマグネットローラとなっている。
【0043】
第1トナー搬送ローラ232および第2トナー搬送ローラ233は、トナー槽234の底部側で現像ローラ231と平行になるように配置され、トナー槽234内に供給されたトナーをキャリアとともに撹拌しながら現像ローラ231に搬送する。また、トナー槽234の底部には、トナー濃度センサ235が設けられている。このトナー濃度センサ235は透磁率センサであり、トナー槽234内のトナーとキャリアとの割合を検知する。
【0044】
このように構成された現像装置23の上方には、トナー補給装置100が配設されている。トナー補給装置100は、図2に示すように、主として、トナーを供給するトナー補給部500、このトナー補給部500を支持する支持部材600、トナー補給部500から供給されたトナーを現像装置23に導くためのトナー搬送路612、及び図示しない駆動装置からなる。
【0045】
図3は本実施の形態に係るトナーボトル200の一部を示す側面図である。現像剤であるトナーを内部に収納するトナーボトル(現像剤容器)200と、このトナーボトル200を一端部側で回動可能に保持する図示しないボトル保持部材とを有している。
【0046】
トナーボトル200は、略円筒状に形成された円筒部201を有している。円筒部201の外周面には、円筒部201の内側に向かって窪んだ複数の溝201c,201c,…が形成されている。
【0047】
図4は、図3におけるIV−IV線の断面を円筒部201の軸長方向から投影した図である。円筒部201の内周面では、図4に示すように、溝部201c,201c,…に対応する領域が、回転軸(中心軸)Y側に突出した形状の突条201a,201a,…となっている。ここで、中心軸Yに垂直な円筒部201断面を円筒部201の長手方向から投影すると、円筒部201の内周に突条201aが投影されない領域201b,201b…が存在していることがわかる。すなわち、円筒部201の軸長方向の全長に渡って突条201aが設けられていない領域(201b,201b,…)が円筒部201の周方向に形成されていることがわかる。
【0048】
図3に示すように、突条201aは、中心軸Yに垂直な方向から現像剤搬送方向に向かってθ1傾斜するように延設されている。かつ、各突条201a,201a,…は互いに延長上で繋ながらないように配備される。つまり、突条201aは連続ではなく、円筒部201内面に周期的に多数設けられている。ここで、本実施形態では、θ1は約30°とする。θ1は20〜40°の範囲であるのが好ましい。また、突条201aは、後端部にトナー排出部手前まで、一定形状にて繰り返して設けられている。また、それぞれが互いに平行になるように、円筒部201の中心軸Yに沿って複数設けられている。
【0049】
また、図4からわかるように、中心軸Yに対して垂直な円筒部201の断面を円筒部201長手方向から投影すると、突条201aは円筒部201の内周の全部には形成されていない。つまり、突条201aは円筒部201の内周のどこかで途切れている。このため、トナーと突条201aとの接触を抑えることができるため、トナーを搬送する際、トナーと突条201aとの抵抗を減少させることができ、摩擦熱の発生を抑制できる。このように、熱の発生を抑えることができるので、トナー凝集の発生を抑制でき、トナーの搬送性を確保することができる。従って、凝集を起こしやすいトナー(例えば、ワックス成分の多いトナー)の場合には、突条201aによる熱の発生を極力抑えることでトナー凝集の発生をなくすことが可能となる。
【0050】
ここで、円筒部201の内周において、突条201aが投影されない領域201b,201b,…ではトナーの搬送性は若干低下することになるが、互いに隣接する2つの突条201a,201aが回転方向でオーバーラップしており、トナー搬送時には円筒部201が回転することから後続の突条201a,201a…によるフォローを受け、大きな搬送力の低下は起こさない。
【0051】
なお、これらの突条201a,201a…(溝部201c,201c…)を有するトナーボトル200は、例えばPE樹脂やABS樹脂を金型成型することによって作成することができる。
【0052】
トナーボトル200は、画像形成装置101に装着される際に、円筒部201の中心軸Yが水平となるように設置される。また、トナーボトル200は、円筒部201の中心軸Yを中心に、図2に示すZ方向に回転駆動される。
【0053】
トナーボトル200が回転駆動されると、円筒部201に収納されたトナーは、突条201a,201a…によって案内されながら、後端部側から排出口側へと搬送される。そして、排出口に達したトナーがトナーボトル200から排出される。
【0054】
駆動モータを用いて中心軸Yを中心にZ方向に回転すると、その回転力が接続部を介してトナーボトル200に伝達され、トナーボトル200が中心軸Yを中心にZ方向に回転駆動される。
【0055】
トナーボトル200を、中心軸Yを中心にZ方向に回転駆動すると、トナーボトル200の円筒部201の内周面に設けられた突条201a,201a,…によって、トナーボトル200内のトナーが先端部側に搬送され、排出口からボトル保持部材内に排出される。そして、ボトル保持部材内に排出されたトナーは、さらに、シャッタが設けられたボトル保持部材のトナー排出部から排出され、トナー搬送路612を経由して現像装置23に供給される。
【0056】
図5はトナー補給部500a〜500dを支持部材600に装着した様子を示す斜視図である。図5に示すように、支持部材600には、BKのトナー補給部500a,500a、Cのトナー補給部500b、Mのトナー補給部500c、Yのトナー補給部500dを装着することができるようになっている。
【0057】
ここで、トナーボトル200は、保持ベルト603によって支持部材600に装着される。なお、保持ベルト603は、トナーボトル200が回転できるように、適切な強さでトナーボトル200を支持部材600に装着している。
【0058】
図6はトナーボトル200を支持する支持部材600の構成を示す斜視図である。なお、図6では、説明の便宜上、BKのトナー補給部500aに対応する装着台の一部を省略して記載している。
【0059】
支持部材600は、主として、装着台(基台)602と2つの板状部材614,615とからなる。図6に示すように、支持部材600のうち、トナー補給部500が搭載される装着台602は、上面のトナー補給部500のボトル保持部材300が装着される一端側で、ボトル保持部材300に設けられたシャッタ400に対応する箇所に、トナー供給口611(611a,611b,611c,611d)が形成されている。このトナー供給口611の下方には現像装置23に連通するトナー搬送用のトナー搬送路612(612a,612b,612c,612d)が配設されている。
【0060】
板状部材614,615は、装着台602の上面と略垂直で、かつ、トナーボトル200の中心軸Yと平行になるように、装着台602に立設されている。そして、2つの板状部材614,615は互いに平行になるように対向して配置されている。
【0061】
上述した本発明の効果を検証するために行った実験について以下に説明する。以下の実験では、トナーボトル200として、既存のトナーボトル(シャープ株式会社製MX−5500N;外径89mm、内径86.6mm、長さ470mm、ボトルの原料はHDPE(高密度ポリエチレン))に対して、突条201aの形状を以下の実験結果に示すように変更して形成したトナーボトルを用いた。また、各実験の初期状態において、トナーボトル200には、主樹脂がポリエステル、体積平均粒子径が6.0μm、ガラス転移点が59℃のトナーを734g収納させた。
【0062】
1つめの実験(以下、実験1とする)では、中心軸Yに対して垂直な円筒部201の断面を円筒部201長手方向から投影した場合、円筒部201の内周の全長に対して、突条201aが投影されない領域201b(周)のトナーボトル(一つの突条201aが投影される角度をθ2とする)を用い、トナーボトル長手方向で見たときに隣接する突条201aとの重複量(オーバーラップ量)、すなわち、突条201aの中心軸Yに対する傾きθ1とトナー搬送性能との関係について検証した。ここでは、円筒部201の断面の内周での突条201aの数を3とし、突条201aの円周方向で成す角度θ2を全て83°とした。なお、中心軸Yに対する傾きθ1を変更する際に、突条201aの長さを変更し、常に突条201aの円周方向で成す角度θ2が83°となるようにした。その結果(突条201aの傾きθ1とトナーの搬送性との関係を示す実験結果)を図7の図表により示す。
【0063】
図7からわかるように、突条201aの中心軸Yに対する傾きθ1は、20°以上40°以下の角度であると、トナー搬送性が良好であることが明らかになった。なお、実験1では、突条201aの高さは7mmのトナーボトルを用いた。具体的には、図3で点線で示す溝201c(突条201a)をベースにして、各突条201aを中心軸Yに対して傾けていく実験を行った。隣接する2つの突条201a,201aのオーバーラップ量が小さい場合には、トナー運搬性能が小さい。この理由としては、突条201aが投影されない領域201bから前の突条201aで搬送されたトナーが横方向(中心軸Y方向)にすり抜けてしまうからであると考えられる。突条201aをさらに傾けていくと、隣接する突条201a,201aの重なりが大きくなり、前の突条201aで搬送されたトナーを次の突条201aでうまく捉えることができるため、トナー搬送力が向上するようになる。さらに、突条201aを傾けていくと、回転による中心軸Y方向に対する搬送力が低下するため、逆にトナー搬送力が低下してしまう。
【0064】
2つめの実験(以下、実験2とする)では、突条201aの高さとトナー搬送性能との関係について検証した。ここでは、円筒部201の断面の内周での突条201aの数を同様に3とし、突条201aの円周方向で成す角度θ2を全て83°として、突条201aの高さを変えてトナーを搬送した。その結果(すなわち、突条201aの高さとトナー搬送性との関係を示す実験結果)を図8の図表に示す。なお、実験2では、突条201aの中心軸Yに対する傾きθ1は30°のトナーボトルを用いた。
【0065】
図8からわかるように、実験2の結果により、突条201aの高さが5〜8mm、すなわち突条201aの高さは、円筒部201の内径の5.8%〜9.2%の範囲であると、トナー搬送性が良好であることが明らかになった。
【0066】
3つめの実験(以下、実験3とする)では、中心軸Yに対して垂直な円筒部201の断面を円筒部201長手方向から投影した場合、円筒部201の内周の全長に対して突条201aが投影されない領域201bの割合(%)とトナー搬送性能との関係について検証した。ここでは、突条201aの中心軸Yに対する傾きθ1は30°とし、高さは7mmとした。その結果(すなわち、突条201aが形成されない領域201bの内周に対する全割合とトナー搬送性との関係を示す実験結果)を図9の図表に示す。
【0067】
突条201aの円周方向で成す角度が小さいほど、断面における突条201a同士の重なりは無く、円筒部201の内周の全長に対し、突条201aが投影されない領域201bが占める全割合(突条201aを形成しない割合)は、多くなる。他方、突条201aの円周方向で成す角度が120°より大きくなるにつれて、断面における突条201a同士の重なりが発生し、突条201aが投影されない領域201bは無くなる。
【0068】
図9からわかるように、円筒部201の内周の全長に対して、突条201aが投影されない領域201bが占める全割合(%)が、17%以上37%以下であると、トナー搬送性が良好であることが明らかになった。
【0069】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る現像装置及びトナー補給装置の概略構造を示す横断面図である。
【図3】本実施の形態に係るトナーボトルの一部を示す側面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線の断面を円筒部の軸長方向から投影した図である。
【図5】トナー補給部を支持部材に装着した様子を示す斜視図である。
【図6】トナーボトルを支持する支持部材の構成を示す斜視図である。
【図7】突条の傾きとトナーの搬送性との関係を示す図表である。
【図8】突条の高さとトナー搬送性との関係を示す図表である。
【図9】突条が形成されない領域の内周に対する全割合とトナー搬送性との関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0071】
200 トナーボトル
201a 突条
201b 領域
201c 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤が収容され、内周面に複数の突条が設けられた円筒体を有する容器本体と、該容器本体の軸方向の一端側に設けられた排出口とを備え、前記容器本体の中心軸回りの回転によって収容された現像剤を前記一端側へ搬送し、搬送した現像剤を前記排出口から排出する現像剤容器において、
前記円筒体の軸長方向の全長に渡って前記突条が設けられていない領域が前記円筒体の周方向の1又は複数箇所に形成されており、前記円筒体の周方向に隣接する2つの突条が前記軸長方向にて重複する領域を有することを特徴とする現像剤容器。
【請求項2】
前記突条は、前記軸長方向に垂直な方向から前記一端側へ傾けてあることを特徴とする請求項1に記載の現像剤容器。
【請求項3】
前記突条の傾きを20°以上、40°以下としてあることを特徴とする請求項2に記載の現像剤容器。
【請求項4】
前記突条の高さを前記円筒体の内径の5.8〜9.2%の範囲としてあることを特徴とする請求項1に記載の現像剤容器。
【請求項5】
前記円筒体の内周に対する前記突条が設けられていない領域の割合が17〜37%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤容器。
【請求項6】
前記突条は前記円筒体の一端側から他端側まで一定形状にて周期的に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の現像剤容器。
【請求項7】
前記円筒体に収容する現像剤は、平均粒子径が4〜8μmのトナーを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の現像剤容器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の現像剤容器と、該現像剤容器に収容された現像剤を用いて感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部と、該現像部により現像された画像をシート上に転写する転写部とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−292952(P2008−292952A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140950(P2007−140950)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】