説明

現像剤担持体及び現像装置

【課題】多様な環境下においても安定してトナーに摩擦電荷を付与することのできる現像剤担持体に関する。
【解決手段】該現像剤担持体は、基体及び該基体表面に形成された表面層としての樹脂層を有しており、該樹脂層は、結着樹脂としての熱硬化性樹脂、特定の構造を有する2つのユニットを有するアクリル樹脂、及び導電性粒子を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像剤担持体及び現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真画像形成装置の使用環境が従来以上に多様化しつつある。そのため、多様な環境の下でも長期に亘って安定してトナーに対して摩擦電荷を付与することのできる現像剤担持体の提供が重要となってきている。特開2001−312136号公報には、4級アンモニウム塩基含有共重合体を含有する表面層を備えたトナー担持体を開示している。そして、かかるトナー担持体はトナーに対して優れた負帯電性を付与できること、残像の発生が防止でき、また電子写真画像へのカブリを改善できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−312136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、上記のトナー担持体について検討した。その結果、高湿度の環境下でのトナーに対する摩擦電荷の付与性能が未だ十分でないとの認識を得た。また、長期に亘って停止状態に置かれた電子写真画像形成装置を、再び稼動させた直後におけるトナーに対する帯電付与能力についても改善の余地があるとの認識を得た。さらに、現像剤担持体の表面は、トナーが過剰に帯電(チャージアップ)し、現像剤担持体の表面に鏡映力によって固着してしまうことを避けるために、適度な導電性を有することが好ましい。多様な環境下で安定した性能を発揮する現像剤担持体を得るためには、これらの特性をバランスよ
く担持させることが重要である。
【0005】
そこで本発明の目的は、多様な環境下においても安定してトナーに摩擦電荷を付与することのできる現像剤担持体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、多様な環境下でも安定して高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像形成装置および現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる現像剤担持体は、基体及び表面層としての樹脂層を有しており、
該樹脂層は、結着樹脂としての熱硬化性樹脂、下式(1)及び(2)に示されるユニットを有するアクリル樹脂、及び導電性粒子を含有していることを特徴とする:
【0007】
【化1】

【0008】
[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数8乃至18のアルキル基を示す。]
【0009】
【化2】

【0010】
[式(2)中、R3は水素原子またはメチル基を示し、R4は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R5、R6およびR7からなる群から選ばれる一つ、二つまたは三つの基は炭素数4乃至18のアルキル基であり、その他の基は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。A-はアニオンを示す。]。
【0011】
本発明に係る現像装置は、現像剤容器に収容されている、トナー粒子を有する現像剤と、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像剤担持体とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記した特定の構造を有するアクリル樹脂を含有する表面層を備えた現像剤担持体は、トナーに対して安定して均一な摩擦電荷を迅速に付与することができる。また、トナーが過剰に帯電されること(チャージアップ)を抑制できる。更に、高湿条件下であってもトナーに対する摩擦帯電付与性が変化しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の現像方法に使用される現像装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の現像方法に使用される現像装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の現像方法に使用される現像装置の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の現像方法に使用される現像装置の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の現像方法に使用される現像装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<現像剤担持体>
本発明に係る現像剤担持体について説明する。
【0015】
現像剤担持体は図1に示したように、基体506と、表面層としての樹脂層507とを有している。樹脂層507は結着樹脂としての熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、および導電性微粒子を含有している。
【0016】
<<熱硬化性樹脂>>
樹脂層507が結着樹脂として熱硬化性樹脂を含有していることにより、樹脂層の耐久性、環境安定性が良好となる。熱硬化性樹脂としては、特に、強靭性・耐久性の面から、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。中でも、樹脂層の耐摩耗性、環境安定性、及び後述するアクリル樹脂との相溶性の観点から、フェノール樹脂が特に好ましい。また、これら熱硬化性樹脂の中でもアルコール、特にメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールの如き低級アルコールに可溶なタイプが、本発明に用いるアクリル樹脂との相溶性が良好なために好ましい。
【0017】
<<アクリル樹脂>>
アクリル樹脂は、下式(1)で示されるエステルユニット、及び下式(2)で示されるカチオンユニットを少なくとも含有する。
【0018】
【化3】

【0019】
上記式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数8乃至18のアルキル基を示す。上記式(1)で示されるエステルユニットとしてより好ましい形態は、R1がメチル基であって、R2がデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基の中から選ばれる長鎖アルキル基である。
【0020】
そして、式(1)中のR2を炭素数8乃至18の長鎖アルキル基とすることにより、熱硬化性樹脂に対するアクリル樹脂の相溶性が向上し、アクリル樹脂が結着樹脂中に均一に存在し易くなる。これにより、本発明に係る現像剤担持体は、トナーをより均一に摩擦帯電させることが可能となる。また、結着樹脂中への導電性粒子等の顔料分散性が向上し、現像剤担持体の表面の電気抵抗ムラを小さくできる。このことも、トナーの摩擦帯電の均一化に有効に作用する。
【0021】
2の炭素数7以下の低級アルキル基である場合、アクリル樹脂の極性が高くなっていく。つまり、熱硬化性樹脂との間での極性差が拡大していく。そのため、熱硬化性樹脂に対するアクリル樹脂の相溶性が低下していき、樹脂層中でアクリル樹脂が偏在しやすくなる。これは、トナーへの均一な摩擦電荷の付与に不利に作用する。また、導電性粒子も樹脂層中で凝集し易くなるため、トナーの帯電分布の均一化に不利に作用する。一方、R2が炭素数19以上の長鎖アルキル基である場合、アクリル樹脂の結晶性が高まっていき、熱硬化性樹脂とアクリル樹脂とが相分離し易くなる。この場合、樹脂層中にアクリル樹脂が偏在しやすくなり、トナーへの均一な摩擦電荷の付与に不利となる。
【0022】
【化4】

【0023】
上記式(2)中、R3は水素原子またはメチル基を示し、R4は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R5乃至R7からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基は炭素数4乃至18のアルキル基であり、他は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。また、A-はアニオンを示す。式(2)で表されるカチオンユニットとして、次の構造を有するものがより好ましい。
【0024】
R3:メチル基;
R4:メチレン基またはエチレン基;
5、R6、及びR7からなる群から選ばれる少なくとも一つが、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基の中から選ばれる長鎖アルキル基;
R5乃至R7の上記長鎖アルキル基でない基が炭素数1〜3のアルキル基。
【0025】
式(2)中、R5、R6及びR7から選ばれる少なくとも1つとして炭素数が4乃至18の長鎖アルキル基を導入することにより、トナーに対する帯電付与能が向上する。かつ、第4級アンモニウム塩基が樹脂層中でイオン解離することにより樹脂層の導電性を向上させる。これによって、トナーが過剰に帯電されること、即ち、トナーのチャージアップ現象を抑制できる。
【0026】
5〜R7の具体的な組み合わせとして、R5がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基からなる群から選ばれるいずれかであり、かつ、R6、及びR7が各々独立に、メチル基、エチル基、またはプロピル基であるカチオンユニットが好ましい。上記式(1)の存在とも相まって、樹脂層のトナーに対する摩擦帯電付与性能のより一層の向上およびより一層の均一化が図られる。また、R5〜R7から選ばれる少なくとも1つの置換基を、炭素数4乃至18の長鎖アルキル基とすることによって、式(2)のユニットは樹脂層の表面側により多く存在し易くなる。式(2)のユニットはカチオン性を有することから、結果的に樹脂層表面にカチオン性ユニットが増加し、トナーに対する負帯電付与能が向上する。
【0027】
-は、ハロゲン類、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸類、カルボン酸、スルホン酸の如き有機酸類におけるアニオンである。好ましくは、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含むアニオンであり、熱硬化性樹脂との相溶性が良いことからBr-、Cl-の如きハロゲンであることがより好ましい。
【0028】
上記式(1)及び(2)で示されるユニットを有するアクリル樹脂は、下記式(3)で示されるアクリル系モノマー、および下記式(4)で示される第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系モノマーを共重合させることにより製造可能である。
アクリル系モノマーとしては、下記式(3)に示すモノマーが挙げられる。
【0029】
【化5】

【0030】
上記式(3)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数8乃至18のアルキル基を示す。式(3)で表されるモノマーとして、R1が水素原子であるアクリレート類、R1がメチル基であるメタクリレート類であって、R2がデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、R1がメチル基であるものが好ましい。
【0031】
第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系モノマーとしては、下記式(4)に示すモノマーが挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
上記式(4)中、R3は水素原子またはメチル基を示す。R5、R6、R7のからなる群から選ばれる一つ、二つまたは三つの基が炭素数4乃至18のアルキル基であり、その他の基は炭素数1乃至3のアルキル基である。R4は炭素数1乃至4のアルキレン基である。さらに、A-はアニオンを示す。
【0034】
式(4)で表されるモノマーとして、R5、R6、R7からなる群から選ばれる一つ、二つまたは三つの基がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基のいずれかであり、R4がメチレン基またはエチレン基であるものが好ましい。特に、R5がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基のいずれかであり、R6、R7がメチル基、エチル基、プロピル基の中から選ばれるアルキル基であるものが好ましい。A-は、ハロゲン類、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸類、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸類におけるアニオンである。好ましくは、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含むアニオンであり、Br-、Cl-等のハロゲンであることがより好ましい。
【0035】
アクリル樹脂の製造方法としては公知の重合方法を用いることができる。その方法としては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、等が挙げられるが、反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましい。溶液重合法で使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。その他、必要に応じてキシレン、トルエン等を混合して使用してもよい。但し、本発明で用いる熱硬化性結着樹脂との相溶性を向上する点において、主に低級アルコールを溶媒として使用することが好ましい。その溶媒と共重合モノマー成分の比は、溶媒100質量部に対して共重合モノマー成分30質量部以上400質量部以下で行うのが好ましい。
【0036】
モノマー混合物の重合は、例えば、モノマー混合物を重合開始剤の存在下で不活性ガス雰囲気下、50以上100℃以下に加熱することにより、行うことができる。重合するために使用する重合開始剤の例としては、以下のものが挙げられる。t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)。
【0037】
重合開始剤は単独で、または2種以上のモノマーを組み合わせて用いることができる。通常は重合開始剤をモノマー溶液に添加して重合を開始するが、未反応モノマーを低減するために重合開始剤の一部を重合の途中に添加しても良い。また、紫外線や電子線の照射によって重合を促進させる方法も使用することが可能であり、これらの手法を組み合わせても構わない。重合開始剤の使用量は、共重合モノマー成分100質量部に対し0.05質量部以上30質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。重合反応の温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、共重合モノマー成分の組成に応じて設定することができるが、40℃以上150℃以下で行うのが好ましい。
【0038】
式(4)のモノマーは、下式(5)で表されるモノマーを4級化剤を用いて4級化させ生成したものを用いることができる。
【0039】
【化7】

【0040】
式(5)中の、R3は、水素原子、またはメチル基を示し、R5、R6はアルキル基を示し、R4は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。4級化剤として用い得る化合物としては、アルキルハライドや有機酸化合物が挙げられる。
【0041】
アルキルハライドの例を以下に示す。ブチルブロマイド、2エチルヘキシルブロマイド、オクチルブロマイド、ラウリルブロマイド、ステアリルブロマイド、ブチルクロライド、2エチルヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ラウリルクロライド、ステアリルクロライド等。有機酸化合物の例を次に示す。p−トルエンスルホン酸メチル、ジメチル硫酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸メチル等。
【0042】
4級化剤の使用量は、式(5)で表される単量体1モルに対して、0.8モル以上1.0モル以下が好ましい。かかるモノマーの4級化は、例えば、モノマーと4級化剤とを、溶媒中60℃以上90℃以下に加熱することにより行うことができる。
【0043】
また、上記(3)式のモノマーと(5)式のモノマーを共重合させた後に、さらに前記の4級化剤で4級化させることによって、所望の4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体を得ることも可能である。その他に、例えば、(5)式で表される単量体をメチルクロライドの如きアルキルハライドで4級化を行った後、(3)式のモノマーと共重合させる。得られた第4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体を、p−トルエンスルホン酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸の如き酸で処理して対イオン交換を行い、目的のアニオン種とした第4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体とすることも可能である。
【0044】
上記アクリル樹脂中の各ユニットの組成比率は、アクリル樹脂中のユニット(1)のユニット組成比をa、ユニット(2)のユニット組成比をbとした時、b/(a+b)が0.5以上0.9以下であることが好ましい。b/(a+b)を0.5以上とすることにより、アクリル樹脂の負帯電付与特性が向上し、また、第4級アンモニウム塩構造によるイオン導電性の効果を高めやすい為、トナーへの迅速帯電性が向上する。b/(a+b)を0.9以下とすることにより、結着樹脂に対し均一存在することが可能となる。結着樹脂との相溶性が良好となってアクリル樹脂が樹脂層中で均一に存在しやすくなる。更に、樹脂層中に存在する導電性粒子の分散性も良好になる。なお、本発明では、上記(1)、(2)各ユニットの構成を満たすユニットがアクリル樹脂中に複数種含有される場合は、(1)の構造を満たす複数種のユニット組成比の合計をa、(2)の構造を満たす複数種のユニット組成比の合計をbとする。
【0045】
アクリル樹脂はユニット(1)、(2)以外の他のユニットを含んでいてもよい。アクリル樹脂中に含有する他のユニットの含有率としては、アクリル樹脂を構成するユニット総数[mol]の30mol%以下であることが好ましい。他のユニットの含有率を30mol%以下とすることで、ユニット(1)、(2)の導入による効果を得やすい。
【0046】
上記(1)及び(2)に示されるユニットを少なくとも含有するアクリル樹脂の添加量は、結着樹脂としての熱硬化性樹脂100質量部に対して1質量部以上40質量部以下とすることが好ましい。この範囲とすることによって、添加による帯電制御効果を発揮することができ、かつ、結着樹脂中へ均一に存在することができるため被膜強度を保持することができる。
【0047】
樹脂層の抵抗値を調整するために、下記に挙げる導電性粒子を樹脂層中に含有させる。導電性粒子の例を以下に示す。金属(アルミニウム、銅、ニッケル、銀等)の微粉末、導電性金属酸化物(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等)の粒子、結晶性グラファイト、各種カーボンファイバー、導電性カーボンブラック。これらのうち、分散性に優れ、電気伝導性に優れることから、特に導電性カーボンブラック、結晶性グラファイトが好ましい。上記の導電性粒子は2種以上混合して使用してもよい。また、導電性粒子の配合量は、結着樹脂に対して20質量部以上100重量部以下が好ましい。この範囲とすることで樹脂層の強度を損なう事無く、抵抗値を所望のレベルとすることが可能となる。
【0048】
本発明における現像剤担持体表面の樹脂層の体積抵抗は、10-1Ω・cm以上102Ω・cm以下であることが好ましい。この値の範囲とすることで、チャージアップによる現像剤の現像剤担持体上への固着や、現像剤のチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面から現像剤への摩擦帯電付与不良を防ぐことができる。
【0049】
また、本発明においては、樹脂層中に表面粗さを均一にし、且つ適切な表面粗さを維持するために、凹凸形成の為の粗し粒子を添加することにより更に好ましい結果が得られる。本発明に使用される凹凸形成の為の粗し粒子としては、球状のものが好ましい。球状粒子であることにより、不定形粒子に比べ、より少ない添加量で所望の表面粗さが得られるとともに、表面形状の均一な凹凸面が得られる。さらに、樹脂層の表面が摩耗した場合でも樹脂層の表面粗さの変化が少なく、現像剤担持体上のトナー層厚の変化が起きにくい。このことから、トナーの帯電を均一化し、スリーブゴーストが良好で、スジ・ムラが発生しにくく、また現像剤担持体上でトナーによるスリーブ汚染及び融着の発生をしにくくするという効果を、長期に渡り発揮させることができる。
【0050】
<<基体>>
基体は、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材の如き部材を用いることができる。ドラムに非接触の現像方法に用いる現像剤担持体の場合、金属のような剛体の円筒管もしくは中実棒が好ましく用いられる。このような基体はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属または合金を円筒状あるいは円柱状に成型し、研磨、研削の如き処理を施したものが好適に用いられる。
【0051】
また、感光ドラムに直接接触させる現像方法に用いる現像剤担持体の場合、金属製のマンドレルの周面にウレタン、EPDM、シリコーンの如きゴムやエラストマーを含む層構成を有する円柱状の基体が好ましく用いられる。また、磁性現像剤を用いる現像方法においては、現像剤を現像剤担持体に磁気的に吸引し、保持するために、円筒状の基体を用いて、該基体の内部にマグネットローラを配置する。
【0052】
<<樹脂層>>
樹脂層の形成方法は、例えば、樹脂層用の各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、基体上に塗工し、乾燥固化あるいは硬化することにより形成可能である。各成分の塗料液中への分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能である。
【0053】
本発明では、樹脂層の表面粗さとして、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)が0.3μm以上2.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。樹脂層表面のRaを上記の範囲内とすることで、現像剤担持体による現像剤の搬送量がより安定化する。また、樹脂層の耐摩耗性及び耐現像剤汚染性も良好となる。樹脂層の厚さは、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは4μm以上20μm以下であることが、均一な膜厚を得るために好ましいが、特にこの厚さに限定されるものではない。
【0054】
<現像装置>
次に、本発明に係る現像剤担持体が組み込まれた現像装置について説明する。図1は、本発明に係る現像装置の断面図である。図1において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を保持する静電潜像担持体、例えば、電子写真感光ドラム501は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体508は、現像剤を収容している現像剤容器としてのホッパー503によって供給された、磁性トナーを有する一成分系現像剤504を担持して矢印A方向に回転する。それによって、現像剤担持体508と感光ドラム501とが対向している現像領域Dに現像剤504を搬送する。図1に示すように、現像スリーブ508内には、現像剤504を現像剤担持体508上に磁気的に吸引且つ保持するために、磁石が内接されているマグネットローラ505が配置されている。
【0055】
現像剤担持体508は、基体としての金属円筒管(基体)506を被覆している表面層としての樹脂層507を有する。ホッパー503中には、現像剤504を攪拌するための攪拌翼510が設けられている。513は、現像剤担持体508とマゲネットローラ505とが非接触状態にあることを示す間隙である。現像剤504は、現像剤を構成する磁性トナー相互間及び現像剤担持体508上の樹脂層507との摩擦により、感光ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図1の例では、現像領域Dに搬送される現像剤504の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード502を使用している。現像剤担持体508の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像担持体508に臨むように、ブレード502をホッパー503から垂下している。マグネットローラ505の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像担持体508上に現像剤504の薄層が形成される。本発明においては、この磁性規制ブレード502に代えて非磁性ブレードを使用することもできる。
【0056】
このようにして、現像担持体508上に形成される現像剤504の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像担持体508と感光ドラム501との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。本発明の現像剤担持体は、以上のような現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効である。現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像担持体508と感光ドラム501との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち、接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記したような非接触型現像装置を例に採って行う。
【0057】
上記現像担持体508に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤504を飛翔させるため、上記現像担持体508には、バイアス手段としての現像バイアス電源509により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(現像剤504が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像担持体508に印加するのが好ましい。
【0058】
また、高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用する。高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。ここで、高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤504は少なくとも現像担持体508との摩擦により帯電する。
【0059】
図2は、本発明の現像装置における他の実施形態を示す構成模式断面図、図3は、本発明の現像装置の更に他の実施形態を示す構成模式断面図である。図2及び図3の現像装置では、現像担持体508上の現像剤504の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、弾性規制ブレード511を使用している。この弾性規制ブレード511は、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或いはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料からなる。この弾性規制ブレード511を図2の現像装置では現像スリーブ508の回転方向と逆方向の向きで圧接させており、図3の現像装置では、この弾性規制ブレード511を現像担持体508の回転方向と順方向の向きで圧接させているのが特徴である。これらの現像装置では、現像担持体508に対して、現像剤層を介して現像剤層厚規制部材を弾性的に圧接することによって、現像担持体508上に現像剤の薄層を形成する。よって、現像担持体508上に、上記した図1の引用例の場合よりも更に薄い現像剤層を形成することができる。図2は、トナー504として非磁性一成分現像剤を用いる場合の現像装置を表しており、ここにおいて、トナーは非磁性であるため、現像担持体508内の磁石は存在せず、中実の金属棒514が用いられている。非磁性トナーは層厚規制ブレード511、或いは樹脂層517との摩擦により摩擦帯電され、現像担持体508の表面上に担持され搬送される。
【0060】
図3においては、上記に加えて剥ぎ取り部材512が設置されている。剥ぎ取り部材としては樹脂、ゴム、スポンジ等の如きローラ形状の部材や更に、ベルト状、及びブラシ状の部材が用いられる、図3においてローラ状の剥ぎ取り部材512は、現像担持体508とは反対方向に回転されている。剥ぎ取り部材512は、静電潜像担持体501に移行しなかった現像剤を現像剤担持体508の表面から剥ぎ取り、また、現像剤の帯電を均一化する。なお、以降、静電潜像担持体を「感光体」或いは「電子写真感光体」ともいう。また、図3に示した例では、現像剤担持体508の基材として金属製の円筒管506が用いられている。
【0061】
図2及び図3の現像装置において、上記した以外の構成は、図1に示した現像装置と同じであり、同符号のものは、基本的には同一の部材を示す。図4及び図5は、磁性トナーを用いる現像装置において、弾性規制部材が備わった構成を示す模式断面図である。図1〜5は、あくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、現像剤容器(ホッパー503)の形状、攪拌翼510の有無、磁極の配置に様々な形態があることは言うまでもない。
【0062】
<現像剤>
現像剤(トナー)について説明する。トナーの粒子は、粉砕法、或いは重合法によって製造することができる。粉砕法により製造する場合は、公知の方法が用いられる。例えば、結着樹脂、磁性体、離型剤、荷電制御剤、場合によって着色剤等の磁性トナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて熔融混練し、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得ることが出来る。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率向上の為、多分割分級機を用いることが好ましい。粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式の如き公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。このようなトナーは、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いることで、粉砕トナー粒子に比べ、磁性体を内包化しやすいことが観察される。このことから、現像剤の転写性が向上し、その効果によって現像剤の消費量を抑制することが可能である。そのような方法としては、攪拌羽根又はブレードなど、及びライナー又はケーシングなどを有する装置で、例えば、現像剤をブレードとライナーの間の微小間隙を通過させる際に、機械的な力により表面を平滑化したりトナーを球形化したりする方法等がある。また、球状のトナーを直接作る方法としては、水中にトナー結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。一般的な方法としては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、離形剤、その他の添加剤を均一に溶解又は分散せしめて単量体組成物とする。その後、この単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続層、例えば、水相中に適当な攪拌機を用いて適度な粒径に分散し、さらに重合反応を行わせ、所望の粒径を有する現像剤を得る方法である。
【0063】
球形化度が高いトナー粒子としては、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下のトナー粒子における平均円形度が0.970以上であることが好ましい。平均円形度を0.970以上とすることによって、個々のトナー粒子表面を均一に摩擦帯電させることが容易になり、帯電均一性のより一層の向上に資する。一方、球形化度を高めたトナーの粒子は過剰帯電されやすい。しかし、本発明に係る現像剤担持体は、このようなトナーであって、使用初期から多数枚の画像形成後を通じて、過剰帯電をより良く抑制できる。これは、現像剤担持体の樹脂層がユニット(2)を有するアクリル樹脂を含むことによって良好な導電性を有するためであると考えられる。
【0064】
トナーの重量平均粒径は、3μm以上、10μm以下とすることが好ましい。重量平均粒径を上記の数値範囲とすることで、感光体上の転写残トナーの量を少なくすることができる。また、粉体としての流動性及び攪拌性の低下を抑制できるため、個々のトナー粒子を均一に帯電させ易くなる。
【0065】
現像剤(トナー)には摩擦帯電特性を向上させるために、荷電制御剤をトナーの粒子に包含させ(内添)、又はトナーの粒子と混合して用いる(外添)ことができる。正の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料及び脂肪酸金属塩による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、負の荷電制御剤としては、有機金属化合物、キレート化合物が有効である。その例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロムがある。特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体又は塩が好ましい。
【0066】
現像剤(トナー)が、磁性現像剤(トナー)である場合、磁性材料を配合する。磁性材料としては、次のようなものを用いることができる。
【0067】
・酸化鉄系金属酸化物(マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等);
・磁性金属(Fe、Co、Ni等);
・上記磁性金属と、Al、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、WおよびVから選ばれる何れか1つまたは2つ以上の金属との合金。
【0068】
上記の磁性材料は、着色剤と兼用させてもよい。現像剤(トナー)に配合する着色剤として、従来からこの分野で使用している顔料、染料を使用することが可能であり、適宜選択して使用すればよい。
【0069】
現像剤(トナー)には離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、モンタンワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。
【0070】
さらに、現像剤(トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナの如き無機微粉体を外添すること、すなわち現像剤表面近傍に存在させていることが好ましい。
【0071】
無機微粒子の添加量は、トナー中に0.1質量%乃至5.0質量%、好ましくは0.5質量%乃至4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。無機微粉体以外の外添剤をさらに加えて用いても良い。無機微粉体以外の外添剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのような滑剤(中では、ポリフッ化ビニリデン)、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウムが挙げられる。
【実施例】
【0072】
次に、以下に本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
【0073】
(1)現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)の測定
現像剤担持体表面の粗さの測定は、JIS B0601(2001)の表面粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE−3500を用い、測定条件としてはカットオフ0.8mm、評価長さ8mm、送り速度0.5mm/sにて実施した。測定位置は、現像剤担持体の幅方向の中央部及び両端部の3箇所と、当該測定位置から当該現像剤担持体を90°回転させた位置における幅方向の中央部及び両端部の3箇所、並びに当該現像剤担持体を更に90°回転させた位置における幅方向の中央部及び両端部の3箇所の合計9箇所とした。そしてそれら測定値の算術平均値を現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)とした。
【0074】
(2)現像剤担持体の樹脂層の体積抵抗の測定
100μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に、7μm〜20μmの樹脂層を形成し、抵抗率計ロレスタAP(三菱化学社製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。測定環境は、温度20〜25℃、湿度50〜60%RHである。
【0075】
(3)現像剤担持体に添加する粒子の体積平均粒径
レーザー回折型粒度分布計「コールターLS−230型粒度分布計」(商品名、ベックマン・コールター株式会社製)を用いた。測定には、少量モジュールを用い、測定溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)を使用した。まず、IPAにて測定装置の測定系内を約5分間洗浄し、洗浄後バックグラウンドファンクションを実行した。次にIPA50ml中に、測定試料約10mgを加える。試料を懸濁した溶液を超音波分散機で約2分間分散処理し、試料液を得た後、測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%乃至55%になるように測定系内の試料濃度を調整した。その後に測定を行い、体積分布から算術した体積平均粒径を求めた。
【0076】
(4)導電性微粒子の体積抵抗の測定
粒子を40mmφのアルミリングに入れ、2500Nで加圧成型し、低抵抗領域では抵抗率計ロレスタAP(三菱化学製)にて4端子プローブを用い、中・高抵抗領域ではハイレスタIP(三菱化学製)にてリング電極プローブを用いて体積抵抗値を測定する。なお、測定環境は、20〜25℃、50〜60%RHとする。
【0077】
(5)トナーの粒径測定
測定装置としては、コールターマルチサイザーII(いずれもべックマン・コールター社製)を用いた。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。測定方法としては、前記電解水溶液100ml中に分散剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.5ml加え、さらに測定試料を10mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャー或いは30μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。この結果より、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
【0078】
(6)トナー粒子の平均円形度
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。本発明では東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群について測定された各粒子の円形度(Ci)を下式によりそれぞれ求めた。
【0079】
円形度(Ci)=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長)
更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義した。
【0080】
【数1】

【0081】
測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及びモード円形度の算出に当たり、次のような方法を用いている。粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を0.010間隔で61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う方法である。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視出来る程度のものである。よって、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いている。本発明における平均円形度とは、粒子の凹凸度合いの指標であり、粒子が完全な球形の場合1.000を示し、現像剤の表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
【0082】
具体的な測定方法としては、界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mlに現像剤約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射する。分散液濃度を5000個/μl〜2万個/μlとして、前記装置により測定を行い、3μm以上の円相当径を有する粒子の平均円形度を求めた。測定の概略は、東亜医用電子社(株)発行のFPIA−1000のカタログ(1995年度6月版)、測定装置のマニュアルに記載されているが、以下のとおりである。
【0083】
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子における2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子における2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
【0084】
なお、本測定で3μm以上の円相当径の粒子群のみの円形度を測定する理由は、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群の円形度が正確に見積もれないからである。
【0085】
(7)樹脂の分析方法
アクリル樹脂のポリマーの構造は、現像剤担持体の樹脂層を削り取った試料を熱分解GC/MS装置「Voyager」(商品名、サーモエレクトロン社製)で分析して求めた。なお、熱分解温度:600℃、カラム:HP−1(15m×0.25mm×0.25μm)、Inlet:300℃、Split:20.0、注入量:1.2ml/min、昇温:50℃(4min)−300℃(20℃/min)の条件で行った。
【0086】
<アクリル樹脂(AC−1)溶液の製造例>
撹拌機、冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを付した4つ口セパラブルフラスコ内で、以下の表1の材料を混合した。
【0087】
【表1】

【0088】
70℃に昇温して5時間攪拌してモノマーA−1の4級化を行い、4級アンモニウム塩基含有モノマーである、(2−メタクリロイロキシエチル)ラウリルジメチルアンモニウムブロマイドを得た。得られた反応溶液を冷却した後、共重合成分として、トリデシルメタクリレート(モノマーA−2)28.3質量部、溶媒としてエタノール50部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0部を仕込み、系が均一になるまで撹拌した。撹拌を続けながら、反応系内の温度が70℃になるまで昇温し、滴下ロートに仕込んだ分を1時間かけて添加した。滴下終了後、窒素導入下還流状態で更に5時間反応させ、さらにAIBNを0.2部添加した後1時間反応させた。更に、この溶液をエタノールで希釈して固形分40%のアクリル樹脂溶液AC−1を得た。
【0089】
<アクリル樹脂(AC−2〜24)溶液の製造例>
以下使用する共重合成分を表2〜3に示した成分としたこと以外は、AC−1製造例と同様にして、アクリル樹脂溶液AC−2〜AC−24を得た。なお、AC−10はアクリル樹脂溶液生成後、イオン交換樹脂によりアニオンを臭素イオンからp-トルエンスルホン酸イオンへのイオン交換を行った。
【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
<導電性粒子>
【0093】
【表4】

【0094】
<結着樹脂>
【0095】
【表5】

【0096】
<現像剤製造例1>
以下の表6の材料の混合物を用意した。
【0097】
【表6】

【0098】
この混合物に対し、ポリビニルアルコール部分ケン化物0.8質量部を溶解した水180質量部を加え、激しく攪拌させて懸濁分散液とした。この懸濁分散液を、水40質量部を入れ窒素置換した反応器に入れ、反応温度85℃にて10時間懸濁重合した。反応終了後、ろ過、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ビニル系樹脂を得た。
【0099】
次いで、以下の表7の材料の混合物を用意した。
【0100】
【表7】

【0101】
この混合物を130℃に加熱した2軸混練押し出し機にて混練した。得られた混練物を冷却した後、ハンマーミルで粗粉砕し得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製)を用いて微粉砕を行なった後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行なった微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(エルボジェット分級機、日鉄鉱業社製)で、超微粉および粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒径(D4)6.0μm、円形度が0.963であるトナー粒子を得た。このトナー粒子100質量部に疎水性コロイダルシリカ1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることで、一成分磁性現像剤T−1を得た。
【0102】
<現像剤製造例2>
下記の表8のモノマーをエステル化触媒とともに5リットルオートクレーブに仕込み、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管,温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂C−1を得た。
【0103】
【表8】

【0104】
また、下記の表9のモノマーをエステル化触媒とともに5リットルオートクレーブに仕込み、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管,温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂C−2を得た。
【0105】
【表9】



【0106】
次に下記の表10の材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。
【0107】
【表10】

【0108】
この時、混練された樹脂の温度が150℃になるように滞留時間をコントロールした。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.9μmの負摩擦帯電性のトナー粒子E−1を得た。この磁性トナー100部に対して、疎水性シリカ微粉体(BET180m2/g)1.2部をヘンシェルミキサー「FM−75型」(商品名、三井三池化工機株式会社製)にて外添して円形度0.940の現像剤T−2を得た。
【0109】
<現像剤製造例3>
60℃に加温したイオン交換水900gに、リン酸三カルシウム3部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を作製した。また、下記の表11の処方をホモジナイザー(日本精機社製)に投入し、60℃に加温した後、用いて、9,000rpmにて攪拌し、溶解、分散した。
【0110】
【表11】

【0111】
これに、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0112】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーを用いて8,000rpmで攪拌し、造粒した。その後、プロペラ式攪拌装置に移して攪拌しつつ、2時間かけて70℃に昇温し、更に4時間後、昇温速度40℃/Hrで80℃まで昇温し、80℃で5時間反応を行い、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してシアントナーの母体粒子(重量平均径6.6μm、平均円形度0.973)を得た。この母体粒子100質量部に対して、シリカ(アエロジル社製R812)1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合して、重量平均粒径6.7μm、平均円形度0.974の非磁性一成分現像剤T−3を得た。
【0113】
<実施例1>
下記の表12の材料を混合し、直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として用いたサンドミルにて2時間分散して塗料中間体M−1を得た。
【0114】
【表12】

【0115】
次に、上記の塗料中間体M−1に、結着樹脂R−1を固形分として58.3質量部、アクリル樹脂AC−1を固形分として10.0質量部、凹凸付与球状粒子(日本カーボン社製、商品名:ICB1020)11.1質量部混合した。この混合物を、直径1.5mmのガラスビーズをメディア粒子としたサンドミルにて40分分散した。更に、エタノールを添加して固形分濃度を35%に調整して塗工液B1を得た。
【0116】
外径16mmφ、算術平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製の円筒管を回転台に立てて回転させ、両端部にマスキングを施し、エアスプレーガンを一定速度で下降させながら、塗工液B1を円筒管表面に塗工した。この工程により樹脂層を形成した。なお、塗工条件は30℃/35%RHの環境下にて、塗工液の温度は恒温槽で28℃に制御した状態で塗工を実施した。続いて熱風乾燥炉により150℃で30分間加熱して当該塗料の塗膜を硬化させて樹脂層を形成した。そして、表面粗さ(Ra)が1.19μmである現像剤担持体S−1を作製した。該現像剤担持体(現像スリーブ)S−1の樹脂層の処方と物性を表13に示す。
【0117】
現像剤担持体S−1を、レーザビームプリンタ(商品名:LaserJetP3005、ヒューレット・パッカード社製)用のカートリッジの現像ローラとして取り付け、また、そのカートリッジのトナー容器に、トナーT−1を充填した。このカートリッジを上記レーザビームプリンタに装填した。このレーザビームプリンタを用いて下記(1)〜(6)の評価を行った。なお、各評価は、15℃/10%RHの低温/低湿環境(L/L)下、23℃/50%RHの常温/常湿環境(N/N)下、及び30℃/85%RHの高温/高湿環境(H/H)下の各環境の下で行った。
【0118】
具体的には、1枚/5秒の間欠モードで印字比率が1%の文字パターンにて15000枚の画像出力を行い、以下の項目(1)〜(6)について評価した。また、これらの評価は、結果を表14〜16に示す。
(1)現像剤担持体上のトナー帯電量(Q/M)およびトナー搬送量(M/S)
現像剤担持体の帯電付与能力を評価するために以下の実験を行なった。
上記のレーザビームプリンタを電源をカットした状態でL/L環境に24時間置いた。その後、電源を投入して黒ベタ画像を出力した。このときの現像剤担持体に担持されているトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナーの質量M、およびトナーを吸引した面積(S)とから、単位質量当たりのトナーの帯電量Q/M(mC/kg)、トナー搬送量M/S(g/m2)を計算した。この値を各々「Q/M(1)」、「M/S(1)」とする。
【0119】
次いで、L/L環境下で、1枚/5秒の間欠モードで印字比率が1%の文字パターンの画像を15000枚出力し、引き続いて黒ベタ画像を出力した。このとき現像剤担持体に担持されているトナーについて上記と同様にしてQ/M、M/Sを計算した。この値を「Q/M(2)」、「M/S(2)」とする。更にこの後、レーザビームプリンタの電源をカットした状態でL/L環境に5日間置き、電源を再度投入して黒ベタ画像を出力した。このとき現像剤担持体に担持されているトナーのQ/Mを上記と同様にして算出した。この値を「Q/M(3)」、「M/S(3)」とする。
【0120】
上記の一連の評価をN/N環境およびH/H環境の下で行なった。各環境下での「Q/M(1)」、「Q/M(2)」、「Q/M(3)」ならびに「Q/M(2)」および「Q/M(3)」の「Q/M(1)」に対する変化率(1)〜(2)を表14〜16に示す。同様に、「M/S(1)」、「M/S(2)」、「M/S(3)」ならびに「M/S(2)」および「M/S(3)」の「M/S(1)」に対する変化率を表14〜16に示す。
(2)画像濃度
上記文字パターンで画像出力前、及び上記文字パターンの画像を15000枚出力後にベタ黒画像を出力した。また、摩擦帯電の立ち上がりを評価するために上記文字パターンの画像を15000枚出力した後、レーザビームプリンタを電源をカットした状態で常温常湿環境に5日間置いた。その後にベタ黒画像を出力した。こうして得られた3枚のベタ黒画像の各々について画像濃度を測定し、下記の基準で評価した。測定には反射濃度計(商品名:RD918、マクベス社製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
【0121】
A:1.40以上、
B:1.35以上、1.40未満、
C:1.30以上、1.35未満、
D:1.25以上、1.30未満、
E:1.00以上、1.25未満、
F:1.00未満。
(3)ゴースト
トナーの過剰な帯電やトナーの帯電量分布が不均一なことより発生しやすい、スリーブ周期のゴーストについて評価を行った。プリンタの出力画像(複写機の場合には画像チャート)において、画像先端の現像剤担持体一周分に相当する領域を白地にベタ黒の正方形(一辺20mm)画像を等間隔で配置し、それ以外の部分をハーフトーンとしたものを用いた。そして、ハーフトーン上に正方形画像のゴーストがどのように出現するかによりランク付けを行った。
【0122】
A:濃淡差が全く見られない。
【0123】
B:見る角度によってわずかな濃淡差が確認できる程度。
【0124】
C:ゴーストが目視で明確に確認される。
【0125】
D:ゴーストが反射濃度計で濃度差が測定可能な程度に、明確に濃淡として現れる。
【0126】
E:ゴーストが明確に濃淡として現れ、現像剤担持体二周分以上の濃淡差が確認される。
(4)ブロッチ
ハーフトーンとベタ黒画像を出力した。このときに、現像剤担持体上のトナー像、これを紙に転写した画像上でのブロッチの有無および程度について目視で観察し、下記の基準で評価した。なお、ブロッチはトナーが過剰に帯電したときに生じやすい。そのため、ブロッチの有無、その程度は、トナーが過剰に帯電されたことの目安となる。
【0127】
A:ハーフトーン画像にも現像剤担持体上にも全く確認できない。
【0128】
B:現像剤担持体上にはわずかに確認されるが、画像上には影響が出ないレベル。
【0129】
C:ハーフトーン画像上の一部に僅かにブロッチが確認できる。
【0130】
D:ハーフトーン画像上に目視で濃度差が確認されるが、ベタ黒では確認できない。
【0131】
E:ハーフトーン画像上、ベタ黒画像上でも明確な濃度差が確認できる。
(5)カブリ
適正画像におけるベタ白画像の反射率を測定し、更に未使用の転写紙の反射率を測定し、トナーの過剰帯電や不均一な帯電によって起こりやすいカブリについて評価した。(ベタ白画像の反射率における最悪値−未使用転写紙の反射率における平均値)をカブリ濃度として求めた。評価結果を下記の指標にて示した。但し、反射率の測定はランダムに10点の測定を行った。反射率はTC−6DS(東京電色製)を用いて測定した。
【0132】
A:0.5%未満
B:0.5%以上、1.0%未満、
C:1.0%以上、2.0%未満、
D:2.0%以上、3.0%未満、
E:3.0%以上、4.0%未満、
F:4.0%以上。
(6)画質
画質の評価は、グラフィカルな画像の画質に関わる微細な細線での飛び散り評価とした。文字ラインにおける飛び散りよりも、より飛び散りやすい1ドットライン画像をプリントアウトした際のラインの再現性とライン周辺部のトナーの飛び散りを、ルーペを用いて30倍に拡大して評価した。
【0133】
A:飛び散りがほとんど発生せず、良好なライン再現性を示す。
【0134】
B:軽微な飛び散りが見られる。
【0135】
C:飛び散りが見られるがライン再現性に対する影響は少ない。
【0136】
D:顕著な飛び散りが見られ、ライン再現性に劣る。
【0137】
<実施例2〜19、比較例1〜11>
表13に挙げた処方にて実施例1と同様にS−2〜S−19、S−29〜S−39を作成し評価を行った。評価結果は表14〜16に示した。
【0138】
【表13】

【0139】
【表14】

【0140】
【表15】

【0141】
【表16】

【0142】
上記の表14〜表16の結果から、本発明に係る現像剤担持体の効果の顕著性を理解することができる。即ち、各実施例については、現像剤担持体の樹脂層が、アクリル樹脂を構成するエステルユニット(1)に炭素数8〜18、カチオンユニット(2)に炭素数4〜18の長鎖アルキル基を導入したことにより、樹脂層の疎水性が高まった。そのため、H/H環境下においても安定して高い画像濃度の電子写真画像を得られた。一方、樹脂層中に、カチオンユニット及びエステルユニットに長鎖アルキル基を有しないアクリル樹脂を含有させた現像ローラを用いた比較例5及び比較例7においては、H/H環境下での画像濃度の顕著な低下が見られた。また、耐久試験終了後5日後に出力したベタ画像についても画像濃度が低かった。
【0143】
エステルユニット(1)への長鎖アルキル基の導入により、結着樹脂である熱硬化性樹脂との相溶性が高まった。そのため、トナーへの均一な摩擦帯電付与が可能となり、過帯電トナーや低帯電トナーの発生が抑制された。これらの結果より、多様な環境下においても、ゴーストはレベルC以上を、ブロッチについてはレベルB以上を、そしてカブリについてはレベルC以上を達成できた。一方、長鎖アルキルを有しないエステルユニットを含むアクリル樹脂を用いた点で実施例1と相違する比較例1、2においては、アクリル樹脂の熱硬化性樹脂に対する分散性が不十分であった。そのため、L/L環境での出力画像に、レベルDのブロッチ、及びカブリが認められた。
【0144】
更に、カチオンユニット(2)中の4級アンモニウム塩基に長鎖アルキル基を導入した事により、トナーに対する帯電付与性能がより一層向上した。その結果、初期、15000枚出力後後、及び15000枚を出力した後の5日目に出力した画像は、その評価基準に照らしてレベルC以上を、各環境下で安定して達成できた。一方、比較例3,5,7に係る現像剤担持体は、樹脂層中のアクリル樹脂のカチオンユニットが、長鎖アルキル基を有さないため、十分な帯電付与能を得ることができなかった。そのため、15000枚を出力した後、5日目に出力したベタ画像の濃度は、いずれもレベルE以下であった。
【0145】
比較例9に係る現像剤担持体は、樹脂層がアクリル樹脂を含まないため、帯電付与能が低く、15000枚の耐久評価終了後、5日後に出力したベタ画像の濃度は、いずれもレベルFであった。
【0146】
また、比較例10はアクリル樹脂のみの構成で有るため耐久性に劣り、耐久後半の現像性が悪化した。比較例11は負帯電付与性の荷電制御剤を添加して帯電付与能を向上させようとしたが、耐久が進むに従って帯電過多となり特にL/L環境でチャージアップ気味となって現像性が低下した。
【0147】
<実施例20>
以下の材料の混合物を用意した。前記塗料中間体M−1の170.6質量部(固形分として79.6部)に、以下の表17の材料を混合した。
【0148】
【表17】

【0149】
この混合物を、直径1.5mmのガラスビーズをメディア粒子としたサンドミルにて40分分散して塗工液を得た。この塗工液を、垂直に立てられた、上下端部にマスキングを施され、一定速度で回転している外径24.5mmφのアルミニウム製円筒管上に、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗布することによって樹脂層を形成した。続いて150℃の熱風乾燥炉中で40分間加熱して樹脂層を硬化して現像剤担持体S−20を作製した。表18に現像剤担持体S−20の樹脂層の構成を示す。
【0150】
得られた現像剤担持体S−20にマグネットローラを挿入し、デジタル複合機(商品名:iR5075N、キヤノン株式会社製)の現像器に現像ローラとして装着した。なお、感光体ドラムの周速に対する現像剤担持体の周速を125%になるようにギア比を変更し、また磁性ドクターブレードと現像剤担持体との間隙を280μmとした。また、現像剤には、先に調製した現像剤T−2を用いた。
(1)現像剤担持体上のトナー帯電量(Q/M)およびトナー搬送量(M/S)
上記のデジタル複合機を電源をカットした状態で常温低湿度環境(23℃、10%RH;N/Lに24時間置いた。その後、電源を投入して黒ベタ画像を出力した。このときの現像剤担持体に担持されているトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナーの質量M、およびトナーを吸引した面積(S)とから、単位質量当たりのトナーの帯電量Q/M(mC/kg)、トナー搬送量M/S(g/m2)を計算した。この値を各々「Q/M(1)」、「M/S(1)」とする。
【0151】
次いで、N/L環境下で印字比率が4%の文字画像をA4横送りで50万枚出力し、引き続いて黒ベタ画像を出力した。このとき現像剤担持体に担持されているトナーについて上記と同様にしてQ/M、M/Sを計算した。この値を「Q/M(2)」、「M/S(2)」とする。更にこの後、デジタル複合機の電源をカットした状態でN/L環境に5日間置き、電源を再度投入して黒ベタ画像を出力した。このとき現像剤担持体に担持されているトナーのQ/Mを上記と同様にして算出した。この値を「Q/M(3)」、「M/S(3)」とする。
【0152】
上記の一連の評価を常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)および高温高湿度環境(32℃、85%RH;H/H)の下で行なった。各環境下での「Q/M(1)」、「Q/M(2)」、「Q/M(3)」ならびに「Q/M(2)」および「Q/M(3)」の「Q/M(1)」に対する変化率(1)〜(2)を表19に示す。同様に、「M/S(1)」、「M/S(2)」、「M/S(3)」ならびに「M/S(2)」および「M/S(3)」の「M/S(1)」に対する変化率を表19に示す。
(2)画像濃度
上記文字パターンで画像出力前、及び上記文字画像を50万枚出力後にベタ黒画像を出力した。また、摩擦帯電の立ち上がりを評価するために上記文字画像を50万枚出力した後、デジタル複合機を電源をカットした状態で常温常湿環境に5日間置いた。その後にベタ黒画像を出力した。こうして得られた3枚のベタ黒画像の各々について画像濃度を測定し、実施例1と同様の基準で評価した。
(3)ゴースト
デジタル複合機の出力画像において、画像先端の現像剤担持体一周分に相当する領域を白地にベタ黒の正方形(一辺20mm)画像を等間隔で配置し、それ以外の部分をハーフトーンとしたものを用いた。そして、ハーフトーン上に正方形画像のゴーストがどのように出現するかによりランク付けを行った。評価基準は、実施例1と同様とした。
(4)カブリ
実施例1と同様の方法、基準にて評価した。
(5)画質
実施例1と同様の方法、基準にて評価した。
【0153】
<実施例21〜24、比較例12〜15>
表18に挙げた処方にて実施例20と同様にS−21〜S−24、S−40〜S−43を作成し、実施例20と同様にして評価した。
【0154】
実施例20〜24及び比較例12〜15の結果を表19に示す。
【0155】
【表18】

【0156】
【表19】

【0157】
表19に示したように、実施例20〜24に関しては良好な結果であった。比較例12,14は十分な帯電付与能を得ることができず、特に比較例14はアクリル樹脂を添加していないため帯電付与能が低く、H/Hの現像性が悪化傾向であった。逆に、比較例13はトナーに対する帯電付与能は良好なものの、導電性粒子の分散性が悪くN/L環境での現像性が悪化した。比較例15はアクリル樹脂のみの構成で有るため耐久性に劣り、耐久後半の現像性が悪化した。
【0158】
<実施例25>
下記の表20の材料を混合し、直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として用いたサンドミルにて2時間分散して塗料中間体M−2を得た。
【0159】
【表20】

【0160】
次に、塗料中間体M−2に、結着樹脂R−1を固形分として72.7質量部、アクリル樹脂AC−1を固形分として8.2質量部、凹凸付与球状粒子(日本カーボン社製、商品名:ICB0520)1.8質量部混合した。この混合物を、直径1.5mmのガラスビーズをメディア粒子としたサンドミルにて40分分散して塗工液を得た。この塗工液を、直径16.0mmのアルミニウム製円筒管上にスプレーガンを用いて塗布し、150℃の熱風乾燥炉中で40分間加熱して現像剤担持体S−25を作製した。表21に現像剤担持体S−25の樹脂層の構成を示す。この現像剤担持体S−25を、シアンカートリッジ「EP−83」(商品名、キヤノン株式会社製)に装着すると共に、現像剤T−3を充填した。次に、このシアンカートリッジをカラーレーザプリンタ(商品名:LBP−2040、キヤノン株式会社製)のシアンステーションに装着し、その他のステーションにはダミーカートリッジを装着して評価機とした。
(1)現像剤担持体上のトナー帯電量(Q/M)およびトナー搬送量(M/S)
上記のレーザビームプリンタを電源をカットした状態で低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)に24時間置いた。その後、電源を投入して黒ベタ画像を出力した。このときの現像剤担持体に担持されているトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナーの質量M、およびトナーを吸引した面積(S)とから、単位質量当たりのトナーの帯電量Q/M(mC/kg)、トナー搬送量M/S(g/m2)を計算した。この値を各々「Q/M(1)」、「M/S(1)」とする。
【0161】
次いで、L/L環境下で、1枚/10秒の間欠モードで印字比率が2%の横線画像を15000枚出力し、引き続いて黒ベタ画像を出力した。このとき現像剤担持体に担持されているトナーについて上記と同様にしてQ/M、M/Sを計算した。この値を「Q/M(2)」、「M/S(2)」とする。更にこの後、レーザビームプリンタの電源をカットした状態でL/L環境に5日間置き、電源を再度投入して黒ベタ画像を出力した。このとき現像剤担持体に担持されているトナーのQ/Mを上記と同様にして算出した。この値を「Q/M(3)」、「M/S(3)」とする。上記の一連の評価を常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、及び高温高湿度環境(32℃、85%RH;H/H)の下で行なった。各環境下での「Q/M(1)」、「Q/M(2)」、「Q/M(3)」ならびに「Q/M(2)」および「Q/M(3)」の「Q/M(1)」に対する変化率(1)〜(2)を表22に示す。同様に、「M/S(1)」、「M/S(2)」、「M/S(3)」ならびに「M/S(2)」および「M/S(3)」の「M/S(1)」に対する変化率を表22に示す。
【0162】
(2)画像濃度
画出し試験において、初期と耐久評価終了時、及び、摩擦帯電の立ち上がりを評価すべく耐久評価終了後5日後にベタ画像を出力し、その濃度を測定することにより評価した。画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
【0163】
A:1.40以上、
B:1.35以上、1.40未満、
C:1.30以上、1.35未満、
D:1.25以上、1.30未満、
E:1.00以上、1.25未満、
F:1.00未満。
【0164】
(3)ハーフトーン(HT)均一性
トナーの帯電量分布が不均一なことやトナーが過剰に帯電した際に発生しやすい、ハーフトーン画像に発生するモヤ状の濃淡ムラについて、目視による観察を行い下記基準に評価した。
A:画像にもスリーブ上にも全く確認できない。
B:ハーフトーン画像上で軽微な濃度差が確認されるが、一見では殆ど確認できない。
C:ハーフトーン画像上では濃度差が確認できるが、ベタ黒画像上では問題ないレベル。D:ハーフトーン画像上に目視で濃度差のわかる帯が確認できるが、ベタ黒画像上では軽微な濃度差である。
E:ハーフトーン画像上に反射濃度計で明確に測定できる濃度差が現れ、ベタ黒画像上でも目視で濃度差が確認できる。
【0165】
(4)カブリ
適正画像におけるベタ白画像の反射率を測定し、更に未使用の転写紙の反射率を測定し、トナーの過剰帯電や不均一な帯電によって起こりやすいカブリについて評価した。(ベタ白画像の反射率における最悪値−未使用転写紙の反射率における平均値)をカブリ濃度として求めた。評価結果を下記の指標にて示した。但し、反射率の測定はランダムに10点の測定を行った。反射率はTC−6DS(東京電色製)によって測定を行った。
【0166】
A:0.5%未満、
B:0.5%以上、1.0%未満、
C:1.0%以上、2.0%未満、
D:2.0%以上、3.0%未満、
E:3.0%以上、4.0%未満、
F:4.0%以上。
【0167】
(5)画質
画質の評価は、グラフィカルな画像の画質に関わる微細な細線での飛び散り評価とした。文字ラインにおける飛び散りよりも、より飛び散りやすい1ドットライン画像をプリントアウトした際のラインの再現性とライン周辺部のトナーの飛び散りを、ルーペを用いて30倍に拡大して評価した。
【0168】
A:飛び散りがほとんど発生せず、良好なライン再現性を示す。
【0169】
B:軽微な飛び散りが見られる。
【0170】
C:飛び散りが見られるがライン再現性に対する影響は少ない。
【0171】
D:顕著な飛び散りが見られ、ライン再現性に劣る。
【0172】
<実施例26〜28、比較例16〜18>
表21に挙げた処方にて実施例25と同様にして現像剤担持体S−26〜S−28、S−44〜S−46を作成し評価を行った。評価結果を表22に示す。
【0173】
【表21】

【0174】
【表22】

【0175】
実施例25〜28に関しては良好な結果であった。また、比較例17,18は十分な帯電付与能を得ることができず、特に比較例18はアクリル樹脂を添加していないため帯電付与能が低く、H/Hの現像性が悪化傾向であった。逆に、比較例16はトナーに対する帯電付与能は良好なものの、導電性粒子の分散性が悪くL/L環境での現像性が悪化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体及び表面層としての樹脂層を有しており、
該樹脂層は、結着樹脂としての熱硬化性樹脂、下式(1)及び(2)に示されるユニットを有するアクリル樹脂、及び導電性粒子を含有していることを特徴とする現像剤担持体:
【化1】

[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数8乃至18のアルキル基を示す。]
【化2】

[式(2)中、R3は水素原子またはメチル基を示し、R4は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R5、R6およびR7からなる群から選ばれる一つ、二つまたは三つの基は炭素数4乃至18のアルキル基であり、その他の基は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。A-はアニオンを示す。]。
【請求項2】
前記アクリル樹脂中に含有している前記ユニット(1)及び(2)のユニット組成比をそれぞれa、b、とした時、b/(a+b)が0.5以上0.9以下である請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記アクリル樹脂が前記熱硬化性樹脂100質量部に対して1質量部以上40質量部以下で添加されている請求項1または2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項5】
現像剤容器に収容されている、トナー粒子を有する現像剤と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像剤担持体とを有していることを特徴とする現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−170105(P2010−170105A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275418(P2009−275418)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【特許番号】特許第4494518号(P4494518)
【特許公報発行日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】