説明

現像装置、及び画像形成装置

【課題】小粒径重合トナーよりなる一成分現像剤が用いられる場合において、安定したトナーの帯電立ち上がりによって高画質が得られるとともに耐久性の高い現像装置、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】外周部にトナーTを保持可能とされ、外周部の表面にめっき層315が形成された現像ローラ54と、現像ローラ510の外周部に保持するトナーTの量を規制するとともに規制時の摩擦によりトナーを帯電させる規制ブレード560と、規制ブレード560により帯電されたトナーTを付与する感光体20と、を備えた現像装置54である。また、めっき層315はCrCめっきであり、一部が結晶化した状態に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置において、潜像を担持した感光ドラムに非磁性一成分現像剤を供給し、感光ドラム上に形成された潜像を可視画像化する現像方式がある。一成分現像剤を使用する現像方式では、一成分現像剤であるトナーを担持した現像ローラを感光ドラム等の潜像を担持した潜像担持体に対向させ、トナーを潜像担持体上の潜像に付着させて現像を行う。そして、一成分現像剤による画像形成では、キャリアが不要であるため、装置の簡素化、小型化が容易であるとともに、フルカラーのトナー画像を容易に作成することができるというメリットを有する。
【0003】
ところで、近年では樹脂粒子を水系媒体中で凝集させる工程を経てトナーを作製する、いわゆる重合トナーの開発がめざましく、小粒径でその形状や粒度分布の揃ったトナーの作製が可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−214629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した重合トナーはトナー画像の高画質化に起因する一方、例えば摩擦帯電用のキャリアを使用しない一成分現像剤に適用した場合、帯電立ち上がりの遅れが顕著に現れ、高速での画像形成が困難となる。そのため、一成分現像剤を用いた画像形成では、帯電立ち上がりの遅れたトナーが混在することで形成されるトナー画像上に濃度ムラを発生させるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、小粒径重合トナーよりなる一成分現像剤が用いられる場合において、安定したトナーの帯電立ち上がりによって高画質が得られるとともに耐久性の高い現像装置、及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の現像装置は、外周部にトナーを保持可能とされ、前記外周部の表面にめっき層が形成された現像ローラと、該現像ローラの前記外周部に保持する前記トナーの量を規制するとともに規制時の摩擦により前記トナーを帯電させる規制ブレードと、該規制ブレードにより帯電された前記トナーを付与する感光体と、を備え、前記めっき層はCrCめっきであり、一部が結晶化した状態に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の現像装置によれば、一部が結晶化した状態からなるCrCめっき層の働きにより、後述する実験結果に示されるように、トナーの帯電立ち上がりを安定させることで高画質を得るとともに高い耐久性を得ることができる。
【0008】
また、上記現像装置においては、前記CrCめっきが、Cr元素を主成分とし、C元素を1wt%〜10wt%の割合で含むのが好ましい。
このようにC元素を所定の割合で含むCrCめっき層を用いることで、上述したように高画質化、及び高耐久性を実現可能となる。
【0009】
また、上記現像装置においては、前記CrCめっきは、250℃〜350℃で焼鈍処理が施されてなるのが好ましい。
このような温度で焼鈍処理を行うことで、上述のようにめっき層の一部が結晶化した状態とすることができ、上述したような高画質化、及び高耐久性を実現可能となる。また、めっき層の硬度を向上させることでローラの耐久性を向上できる。
【0010】
また、上記現像装置においては、前記現像ローラは、少なくとも外周部が金属材料で構成され、前記外周部に転造加工を用いて形成された凹凸部に前記トナーが保持可能とされるのが好ましい。
このように現像ローラの外周部の凹凸部が転造加工により形成されている場合、上記CrCめっき層による効果が顕著となる。
【0011】
本発明の画像形成装置は、上記現像装置を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成装置によれば、上述したように高画質が得られるとともに高い耐久性を得る現像装置を備えているので、画像形成装置自体も高品質で信頼性の高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の現像装置及び画像形成装置に係る一実施形態について図面を用いながら説明する。
(画像形成装置)
まず、本発明の画像装置を備える画像形成装置の一実施形態として、レーザビームプリンタ(以下、「プリンタ」と称す。)について説明する。
【0014】
図1は、本発明の画像形成装置の概略構成を示す模式的断面図である。なお、図1には、矢印にて上下方向を示している。
図1に示すように、かかるプリンタ10は、潜像を担持し図示矢印方向に回転する感光体20を有し、その回転方向に沿って帯電ユニット30、露光ユニット40、現像ユニット50、一次転写ユニット60および中間転写体70、クリーニングユニット75が順に配設されている。また、プリンタ10は、図1の下部に、紙などの記録媒体P1を給紙する給紙トレイ92を有し、該給紙トレイ92からの記録媒体P1の搬送方向下流に、二次転写ユニット80、定着ユニット90が順次配設されている。
【0015】
感光体20は、円筒状の導電性基材と、その外周面に形成された感光層とを有し、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。帯電ユニット30は、コロナ帯電などにより感光体20の表面を一様に帯電するための装置である。
露光ユニット40は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受けこれに応じて、一様に帯電された感光体20に、レーザを照射することによって、静電的な潜像を担持させる装置である。
【0016】
現像ユニット50は、ブラック現像装置51と、マゼンタ現像装置52と、シアン現像装置53と、イエロー現像装置54、すなわち、4つの現像装置を有し、これらの現像装置を感光体20上の潜像に対応して選択的に用いて、前記潜像を感光体20上においてトナー像として可視化する装置である。ブラック現像装置51はブラック(K)トナー、マゼンタ現像装置52はマゼンタ(M)トナー、シアン現像装置53はシアン(C)トナー、イエロー現像装置54はイエロー(Y)トナーを用いてそれぞれ現像を行う。なお、これら各現像装置51,52,53,54は、本発明の現像装置の一実施例にかかるものである。
【0017】
本実施形態における現像ユニット50は、前述の4つの現像装置51、52、53、54を選択的に感光体20に対向することができるように、回転可能となっている。具体的には、この現像ユニット50では、軸50aを中心として回転可能な保持体の4つの保持部55a、55b、55c、55dにそれぞれ4つの現像装置51、52、53、54が保持されており、前記保持体の回転により、各現像装置51、52、53、54が相対位置関係を維持したまま、感光体20に選択的に対向するようになっている。なお、各現像装置の詳細な構成については後述する。
【0018】
一次転写ユニット60は、感光体20に形成されたトナー像を中間転写体70に転写するための装置である。
中間転写体70は、エンドレスのベルトであり、図1に示す矢印方向に、感光体20とほぼ同じ周速度にて回転駆動される。中間転写体70上には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのうちの少なくとも1色のトナー像が担持され、例えばフルカラー画像の形成時に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が形成される。
【0019】
二次転写ユニット80は、中間転写体70上に形成された単色やフルカラーなどのトナー像を、紙、フィルム、布等の記録媒体P1に転写するための装置である。
定着ユニット90は、前記トナー像の転写を受けた記録媒体P1を加熱および加圧することにより、前記トナー像を記録媒体P1に融着させて永久像として定着させるための装置である。
クリーニングユニット75は、一次転写ユニット60と帯電ユニット30との間で感光体20の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード76を有し、一次転写ユニット60によって中間転写体70上にトナー像が転写された後に、感光体20上に残存するトナーをクリーニングブレード76により掻き落として除去するための装置である。
【0020】
(現像装置)
次に、現像ユニット50の現像装置51、52、53、54について詳細に説明するが、これらは、ほぼ同一の構成であるため、以下、図2に基づき、イエロー現像装置54を代表的に説明する。なお、本発明の現像装置は、潜像を担持した感光体に非磁性一成分現像剤(トナー)を供給し、感光体上に形成された潜像を可視画像化する現像方式のものである。このような非磁性一成分現像剤による画像形成では、キャリアが不要となっている。
【0021】
図2は、本発明の現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。
図2に示すイエロー現像装置54は、イエロートナーであるトナーTを収容するハウジング540と、トナー担持体たる現像ローラ510と、この現像ローラ510にトナーTを供給するトナー供給ローラ550と、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制するとともに、トナーTを規制時の摩擦によって帯電させる規制ブレード560とを有している。
【0022】
ハウジング540は、その内部空間として形成された収容部530内にトナーTを収容する。ハウジング540では、収容部530の下部に形成された開口およびその近傍において、トナー供給ローラ550および現像ローラ510が互いに圧接回転可能に支持されている。また、ハウジング540には、規制ブレード560が取り付けられていて、これが現像ローラ510に圧接されている。さらに、ハウジング540には、前記開口におけ
るハウジング540と現像ローラ510との間からのトナーの漏れを防止するためのシール部材520が取り付けられている。
【0023】
現像ローラ510は、外周部にトナーTを保持(担持)して、該保持されたトナーTを感光体20へ付与する、すなわち、保持されたトナーTを感光体20と対向する現像位置に搬送するものである。また、現像ローラ510は、軸線まわりに回転可能な円柱状物であり、本実施形態では、感光体20の回転方向と逆の方向に回転する。
【0024】
次に、図3〜5に基づき、現像ローラ510の構成について詳細に説明する。この現像ローラ510は、アルミ合金、鉄合金等からなる部材である。現像ローラ510は、その中央部510aの表面に、後述するような転造加工により形成された凸部512及び非凸部513を有している。この非凸部513は、側部514及び凹部515を備えている。
【0025】
凸部512は、中央部510aの中で最も高い部分であり、図5(A)に示すように、正方形状の平坦な頂面となっている。正方形の当該凸部512の一辺の長さL1(図5(B)参照)は、約80μmである。凸部512は、正方形の二つの対角線の各々が、それぞれ現像ローラ510の回転軸方向及び周方向に沿うように、中央部510aの表面に形成されている。
【0026】
非凸部513は、本実施の形態において、互いに巻き方向の異なる第一溝部516及び第二溝部518となっている。ここで、第一溝部516は、その長手方向が図4中記号Xで示された方向に沿った螺旋状の溝であり、第二溝部518は、その長手方向が図4中記号Yで示された方向に沿った螺旋状の溝である。なお、いずれの溝部についても、その長手方向と現像ローラ510の回転軸方向との成す鋭角は約45度となっている(図4参照)。また、溝部の溝幅L2(換言すると、互いに隣り合う凸部512間距離。図5(B)参照)は、凸部512の一辺の長さL1と同様、約80μmである。
【0027】
側部514は、凸部512と凹部515とを繋ぐ斜面であり、図5(A)に示すように、前述した正方形状の凸部512の各辺に対応して4つ設けられている。そして、図3〜図5(A)に示すように、凸部512及び4つの側部514(の組)は、現像ローラ510の中央部510aの表面に、規則的、かつ、網目状に、多数配置されている。
【0028】
凹部515は、非凸部513(すなわち、第一溝部516又は第二溝部518)の底部に相当し、中央部510aの中で最も低い部分である。この凹部515は、図3〜図5に示すように、凸部512及び4つの側部514の四方を囲うように、規則的、かつ、網状に、形成されている。なお、図5に示すように、凸部512を基準とした凹部515(非凸部513)の深さd(現像ローラ510の径方向における凸部512から凹部515までの長さ)は、約9μmである。現像ローラ510には、当該深さdが現像ローラ510に備えられた全ての凹部515間で均一となるように、凸部512及び凹部515が形成されている。本実施の形態においては、トナーTは粒状(粒子状)をなし、トナーTの体積平均粒径は、例えば約4.6μmであるため、トナーTの体積平均粒径の大きさは凹部515の深さdよりも小さくなっている。なお、このトナーTは樹脂粒子を水系媒体中で凝集させる工程を経て作製された、所謂、重合トナーから構成されている。
【0029】
ところで、このような重合トナーから構成されるトナーにおいて上述のようにキャリアを使用しない場合(一成分現像剤として利用)、帯電立ち上りに遅れが生じることで高速での画像形成が困難となる可能性がある。帯電立ち上りが遅れたトナーが画像形成時に混在すると、トナー画像上に濃度ムラが発生し、画像品位を低下させるおそれもある。
【0030】
これに対し、本実施形態においては、上述した凸部512、側部514、及び、凹部515が備えられた中央部510aの表面に膜厚3μmのめっき層315を備えている(図5(B)参照)。このめっき層315は、Cr元素(クロム元素)を主成分とし、C元素(炭素元素)を1wt%〜10wt%の割合で含むめっきであり、硬度がHV1500となっている。具体的なめっき層315としては、CrCめっきを例示することができる。このめっき層315は電解めっき法により形成することができる。また、本実施形態におけるめっき層315(CrCめっき)はC含有量が1%とされる。また、めっき層315は、250℃〜350℃の温度条件下で焼鈍処理が施されている(具体的に本実施形態では、300℃の温度条件下で焼鈍処理を行った)。なお、CrCにおける結晶化温度は400℃であり、上記焼鈍温度はこれよりも低い範囲に設定される。
【0031】
このめっき層315が形成された現像ローラ510は、後述する実験結果に示されるように良好なトナー帯電性を有するとともに、高い耐久性を備えたものとすることができる。
【0032】
めっき層315(CrCめっき)は、焼鈍処理前においてはアモルファス状態とされるが、上記温度範囲における焼鈍処理時によって、CrとCとがアモルファス状態を保ち難くなって次第に結晶化が進む。結晶化の進行に伴ってめっき層315の硬度が上昇する。これにより、めっき層315は一部Crが結晶化した状態に形成されたものとなっている。このように結晶化温度に到達する前の状態(一部結晶化状態;遷移状態)は、表面が非常に活性化することでトナーの帯電性を高めることができる。
【0033】
なお、本発明は、上記めっき層315に限定されることはなく、後述する実験結果に示されるようなC元素を1wt%〜10wt%の割合で含み、一部が結晶化した状態に形成されためっき層を外周部に形成した現像ローラにおいても同様に、上述のように良好なトナー帯電性及び耐久性を得ることができる。
【0034】
図2に示したように、イエロー現像装置54は、現像時に、現像ローラ510と感光体20とが微小間隙をもって、非接触状態で対向する。そして、現像ローラ510と感光体20との間に電界を印加することにより、トナーTを現像ローラ510上から感光体20へ飛翔させて、感光体20上の潜像についての現像が行われる。
【0035】
トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する。このトナー供給ローラ550は、ポリウレタンフォーム等からなり、弾性変形された状態で現像ローラ510に圧接している。本実施形態では、トナー供給ローラ550は、現像ローラ510の回転方向と逆の方向に回転する。なお、トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する機能を有するだけでなく、現像後に現像ローラ510に残存しているトナーTを現像ローラ510から剥ぎ取る機能も有している。
【0036】
規制ブレード560は、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制するとともに、その規制時における摩擦帯電により、現像ローラ510に担持されたトナーTに電荷を付与する。この規制ブレード560は、現像ローラ510の回転方向にて現像位置の上流側のシール部材としても機能している。この規制ブレード560は、現像ローラ510の軸方向に沿って当接される当接部材としてのゴム部560aと、このゴム部560aを支持する支持部材としてのゴム支持部560bとを有している。ゴム部560aは、シリコンゴム、ウレタンゴム等を主材料として構成され、ゴム支持部560bは、ゴム部560aを現像ローラ510側に付勢する機能も有するため、リン青銅、ステンレス等のバネ性(弾性)を有するシート状の薄板が用いられる。ゴム支持部560bは、その一端がブレード支持板金562に固定されている。ブレード支持板金562は、ハウジング540に取り付けられ、シール部材520もハウジング540に取り付けられる。さらに現像ローラ510が取り付けられた状態で、ゴム部560aは、ゴム支持部560bの撓みによる弾性力によって、現像ローラ510に押しつけられている。
【0037】
また、本実施形態では、規制ブレード560の現像ローラ510側とは逆側には、ブレード裏部材570が設けられ、ゴム支持部560bとハウジング540との間にトナーTが入り込むことを防止するとともに、ゴム部560aを現像ローラ510へ押圧して、ゴム部560aを現像ローラ510に押しつけている。
本実施形態では、規制ブレード560の自由端部、すなわち、ブレード支持板金562に支持されている側とは逆側の端部は、その端縁で現像ローラ510に接触せずに、端縁から若干離れた部位で現像ローラ510に接触している。また、規制ブレード560は、その先端が現像ローラ510の回転方向の上流側に向くように配置されており、いわゆるカウンタ当接している。
【0038】
(現像装置の製造方法)
続いて、現像装置の製造方法について説明する。なお、本説明においても、イエロー現像装置54を製造する方法について説明する。図6(A)乃至図6(E)は、現像ローラ510の製造工程における、現像ローラ510の変遷を示した模式図である。図7は、現像ローラ510の転造加工を説明するための説明図である。なお、現像装置を製造する際には、前述したハウジング540、現像ローラ510、トナー供給ローラ550、規制ブレード560等がそれぞれ製造された後に、これらの部材を用いて現像装置の組み立てが実施される。本説明では、これらの部材の製造方法のうち現像ローラ510の製造方法を中心に説明する。
【0039】
先ず、図6(A)に示すように、現像ローラ510の基材としてのパイプ材600を準備する。このパイプ材600の肉厚は0.5〜3mmである。
次に、図6(B)に示すように、このパイプ材600の長手方向両端部にフランジ圧入部602を作る。このフランジ圧入部602は、切削加工により作られる。
次に、図6(C)に示すように、このフランジ圧入部602にフランジ604を圧入する。フランジ604のパイプ材600への固定を確実にするために、フランジ604の圧入後、フランジ604をパイプ材600へ接着又は溶接するようにしてもよい。
次に、図6(D)に示すように、フランジ604が圧入されたパイプ材600の表面にセンタレス研磨を施す。このセンタレス研磨は、この表面の全面に亘って実施され、センタレス研磨後の表面の十点平均粗さRzは、1.0μm以下となる。
次に、図6(E)に示すように、フランジ604が圧入されたパイプ材600に、転造加工を施す。本実施の形態においては、2つの丸ダイス650、652を用いた所謂スルーフィード転造(歩み転造、通し転造とも呼ばれている)加工が実施される。
【0040】
すなわち、図7に示すように、ワークとしてのパイプ材600を挟むように配置された二つの丸ダイス650、652、をパイプ材600に所定の圧力(圧力の方向を、図7中記号Pで示す)で押し付けた状態で、二つの丸ダイス650、652を同方向(図7参照)に回転させる。スルーフィード転造においては、丸ダイス650、652が回転することにより、パイプ材600が丸ダイス650、652の回転方向とは逆方向(図7参照)に回転しながら、図7中記号Hで示した方向に移動する。丸ダイス650、652の表面には、溝680を形成するための凸部650a、652aが備えられており、この凸部650a、652aがパイプ材600を変形させることにより、パイプ材600に溝680(第一溝516、第二溝518に相当)が形成される。
【0041】
そして、転造加工の終了後に、中央部510aの表面に上記めっき層315を形成する。本実施形態においては、電解めっき法によりCrCめっき層を形成した後、300℃で焼鈍処理を行う。これにより、CrCめっき層はアモルファス状態から次第に結晶化に向かい、一部が結晶化されてなる上記めっき層315となる。以上の工程により、現像ローラ510が製造される。
このようにして製造した現像ローラ510および規制ブレード560をハウジング540に取り付けることにより、イエロー現像装置54の組み立てが完了する。
【0042】
(プリンタの動作)
次に、このように構成されたプリンタ10の動作を説明する。
まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体20、現像ユニット50の各現像装置51、52、53、54に対応して設けられた上記現像ローラ510、および中間転写体70が回転を開始する。そして、感光体20は、回転することによって帯電ユニット30により順次帯電される。
【0043】
感光体20上の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光ユニット40と対向する露光位置に至り、露光ユニット40によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像装置54によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体20上にイエロートナー像が形成される。なお、現像ユニット50は、イエロー現像装置54が、前記現像位置にて感光体20と対向している(図1参照)。このとき、上記イエロー現像装置54は上述したようにローラ表面にCrCめっき(めっき層315)が形成されているため、イエロートナーにおける帯電立ち上がりが優れたものとなる。よって、感光体20上に形成されるイエロートナー像は、帯電立ち上がりの遅れたトナーが混在して形成される濃度ムラが生じることが防止されたものとなる。
【0044】
感光体20上に形成されたイエロートナー像は、感光体20の回転に伴って一次転写位置に至り、一次転写ユニット60によって、中間転写体70に転写される。具体的には、一次転写ユニット60には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加されているため、該一時転写電圧によって感光体20上に形成されたイエロートナー像が中間転写体70に吸着される。なお、この間、二次転写ユニット80は、中間転写体70から離間している。
【0045】
前述の処理と同様の処理が、第2色目、第3色目および第4色目について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写体70に重なり合って転写される。なお、第2色目、第3色目および第4色目に関する各色のトナー像も帯電立ち上がりに優れたものとなるので、濃度ムラの発生が防止されたものとなる。これにより、中間転写体70上には、フルカラートナー像が形成される。
一方、記録媒体P1は、給紙トレイ92から、給紙ローラ94、レジローラ96によって二次転写ユニット80へ搬送される。
【0046】
中間転写体70上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写体70の回転に伴って二次転写ユニット80が配置された二次転写位置に至り、二次転写ユニット80によって記録媒体P1に転写される。具体的には、二次転写ユニット80は、中間転写体70に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加されているので、該二次転写電圧によって中間転写体70上に形成されたフルカラートナー像が、中間転写体70および二次転写ユニット80の間に介在する記録媒体P1に吸着されて転写される。
【0047】
記録媒体P1に転写されたフルカラートナー像は、定着ユニット90によって加熱および加圧されて記録媒体P1に融着される。したがって、本実施形態に係るプリンタ10によれば、ローラ表面にCrCめっき(めっき層315)が形成さてなる現像装置51,52,53,54を備えているので、濃度ムラの無いフルカラートナー像によって記録媒体P1上に高画質の印字を行うことができる。また、上記めっき層315(CrCめっき)の働きにより、優れた耐久性を得ることができる。
【0048】
一方、感光体20は、一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット75のクリーニングブレード76によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット75内の残存トナー回収部(図示しない)に回収される。
【0049】
(実験例)
次に、外周部表面に種々のめっきを施した現像ローラを備えたプリンタについて、印字処理を実行し、初期画質、5千枚印字後の画質、1万枚印字後の画質、5万枚印字後の画質を測定することで濃度ムラの発生の有無を判定し、経時的な画質の劣化、すなわち印字耐久性を調べ、得た結果を図8の表に示した。なお、上述した実施形態で用いためっきを同一条件で形成したもの、すなわち上記現像ローラ510を実施例1とした。
【0050】
実施例1に対し、CrCめっきのC含有量(単位は、wt%)または焼鈍条件(温度:℃)を変化させた現像ローラをそれぞれ実施例2〜4とした。また、実施例2〜4についても実施例1と同様に、印字耐久性を調べ、得られた結果を図8の表に示した。なお、実施例1〜4は転造加工により現像ローラの本体の外周面に凹凸部を形成した後、めっき層が形成されている。
【0051】
比較のため、上記実施形態におけるCrCめっきの結晶状態を変化させたものを比較例1、2とした。また、比較のため、上記実施例1〜4とは別のめっきであって、従来から用いられているNiPめっきが形成された現像ローラを比較例3〜7とし、NiBめっきが形成された現像ローラを比較例8とし、NiBWめっきが形成された現像ローラを比較例9、10とした。そして、このような比較例1〜10についても上記実施例1〜4と同様に、印字耐久性を調べて得られた結果を図8の表に示した。
【0052】
なお、図8の表においては、濃度ムラの度合いに応じて、4段階の判定を行った。図8の表中における、◎で示されるものは濃度ムラが発生していない、すなわち高品質な画質が得られることを意味している。また、図8の表中における、○で示されるものは濃度ムラが多少発生する(実使用上において問題がないレベル)ことを意味している。また、図8の表中における、△で示されるものは濃度ムラが目立つため画質に影響が及ぶ(画像品質が低い)ことを意味している。また、図8の表中における、×で示されるものは画質不良(試験不可)となることを意味している。
【0053】
図8の表に示されるように、現像ローラの本体の外周面にCr元素を主成分とし、C元素を1wt%〜10wt%の割合で含み、一部が結晶化した状態に形成されているCrCめっきが形成される場合(実施例1〜4)、比較例1〜10に比べ、優れた初期画質を得られることが確認できた。すなわち、実施例1〜4に係るCrCめっきは、良好なトナー帯電の立ち上がり性を備えることが確認できた。
【0054】
一方、CrCめっきはアモルファス状態(比較例1参照)、或いは完全に結晶化した状態(比較例2参照)では、良好な初期画質が得られないことが確認できる。
よって、本発明に係るCrCめっきとして上述のような効果(良好なトナー帯電性)を得るためには、焼鈍処理によって一部が結晶化された状態とすることが必須であることが分かる。
【0055】
また、実施例に係るCrCめっきは、5万枚印字後であっても濃度ムラに起因する画質劣化が生じることが無いことが確認された。すなわち、所定の温度(250〜350℃)で焼鈍処理を行うことで一部が結晶化した状態に形成されてなるめっき層を備えた現像ローラ(実施例1〜4)は、安定したトナーの帯電立ち上がりによって高画質が得られるとともに耐久性に優れたものとすることができる。
【0056】
また、比較例3に示されるNiPめっきは、焼鈍処理を行わず、アモルファス状態となっている。また、比較例4に示されるNiPめっきは、焼鈍処理(250℃)により一部Niが結晶化したアモルファス状態となっている。また、比較例5に示されるNiPめっきは、焼鈍処理(400℃)により後述のように合金結晶が形成されている。
【0057】
比較例3〜5からは、焼鈍処理の温度が高くなるとNiPめっきの硬度が増して耐久性が向上することが確認できる。しかしながら、NiPめっきの場合、初期のアモルファス状態(比較例3参照)から焼鈍処理によって次第に結晶化が進むと、250℃付近(比較例4参照)で一部Niが結晶化する。しかしながら、250℃付近において、NiとPとが化学反応してNiPが形成される。よって、比較例4に示されるNiPは、上記実施形態に係るCrCめっきと同様、一部Niが結晶化した状態となるものの、上記化合物(NiP)が形成されるため、トナーの帯電性が低下することで初期画質が低下してしまう。また、比較例5に示されるように、NiPめっきについて400℃で焼鈍処理を行うと、硬度は上昇するもののNiとNiPとの合金結晶が形成されることにより、初期画質がさらに低下してしまう。
【0058】
比較例6に示されるNiPめっきは、初期から微結晶状態となっている。比較例7に示されるNiPめっきは、初期から結晶状態となっている。比較例6,7に示されるように、初期状態から微結晶化又は結晶化しているNiPめっきは、初期画質が低く、かつ耐久性も低くなってしまう。
【0059】
比較例8に示されるNiBめっきは、初期からNiが結晶状態となっている。比較例9に示されるNiBWめっきは、Niがアモルファス状態となっており、比較例10に示されるNiBWめっきは、初期からNiが結晶化状態となっている。
比較例8〜10に示されるように、初期状態から微結晶化又は結晶化しているNiBめっき又はNiBWめっきは、初期画質が低く、かつ耐久性も低くなってしまう。
【0060】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
なお、上記実施形態では、転造加工により現像ローラの本体の外周面に凹凸部を形成した後、めっき層を形成することで現像ローラを形成しているが、本発明はこれに限定されない。例えばサンドブラスト処理(ブラスト処理)により現像ローラの本体の外周面に細かな凹凸部を形成し、上述のように所定温度で焼鈍処理をすることで一部を結晶化させたCrCめっきを形成した現像ローラにおいても上述のようにトナーの帯電立ち上がりを安定させることで高画質を得るとともに高い耐久性を備えたプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】現像ローラの斜視模式図である。
【図4】現像ローラの正面模式図である。
【図5】凸部、凹部等の形状を示した模式図である。
【図6】現像ローラの製造工程における現像ローラの変遷を示した図である。
【図7】現像ローラの転造加工を説明するための図である。
【図8】実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10…プリンタ(画像形成装置)、20…感光体、51…ブラック現像装置(現像装置)、52…マゼンタ現像装置(現像装置)、53…シアン現像装置(現像装置)、54…イエロー現像装置(現像装置)、315…めっき層、510…現像ローラ、512…凸部(凹凸部)、515…凹部(凹凸部)、560…規制ブレード、T…トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部にトナーを保持可能とされ、前記外周部の表面にめっき層が形成された現像ローラと、
該現像ローラの前記外周部に保持する前記トナーの量を規制するとともに規制時の摩擦により前記トナーを帯電させる規制ブレードと、
該規制ブレードにより帯電された前記トナーを付与する感光体と、を備え、
前記めっき層はCrCめっきであり、一部が結晶化した状態に形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記CrCめっきが、Cr元素を主成分とし、C元素を1wt%〜10wt%の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記CrCめっきは、250℃〜350℃で焼鈍処理が施されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像ローラは、少なくとも外周部が金属材料で構成され、前記外周部に転造加工を用いて形成された凹凸部に前記トナーが保持可能とされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−97046(P2010−97046A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268450(P2008−268450)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】