説明

現像装置およびこれを備えた画像形成装置

【課題】 マグネットローラの振れを抑制するとともに、感光体と現像ローラとの間の現像ギャップを一定に保持することが可能な現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 現像スリーブ49は、その軸線方向一端部において、マグネットローラ50のシャフト51の軸線まわりに回転可能に支持され、軸受部材である現像ギャップ調整部材60は、画像形成装置本体1Aに形成される嵌合部62に、その軸線方向に沿って嵌合保持されるよう構成されている。現像ギャップ調整部材60は、円筒部70と、円筒部70の一方側端部において半径方向外方に突出する取付部71とを有する。円筒部70の外周の軸中心と、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの軸中心とを偏心させ、円筒部70をその中心軸線まわりに角変位させることで、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの位置を変位させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置およびこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に備えられる現像装置には、現像剤(トナー)を担持して感光体表面の静電潜像にトナーを供給するための現像ローラが組み込まれる。この現像ローラは、現像スリーブと、この現像スリーブに同軸に挿通されるマグネットローラとによって構成される。マグネットローラは、固定シャフト(マグネットローラシャフト)を介して現像装置のハウジングに固定され、現像スリーブはマグネットローラの軸線まわりに回転可能に支持される。そのため、現像スリーブは、現像装置のハウジングに対して軸受部材を介して支持され、現像スリーブに対して、画像形成装置の本体内に設置される駆動源から駆動伝達手段を介して回転駆動力が伝達されるよう構成される。このような現像装置の典型的な従来技術は特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1に示される現像装置においては、その図2に示されるように、マグネットローラは、その芯金部(固定シャフト)を現像器本体(ハウジング)に固定されるホルダに支持させることによって現像器本体に固定されている。また、現像スリーブは、回転駆動伝達用ギヤが取付けられる駆動側の端部に装着されたフランジ部材を、現像器本体に取付けられた軸受部材に枢支させ、また、回転駆動伝達ギヤが取付けられない非駆動側の端部に装着されたフランジ部材を、前記ホルダに形成された軸部に係合させることによって、現像器本体に支持されている。前記軸部は軸受部材と同様に機能するものとされ、駆動側の軸受部材とともに、現像スリーブを、マグネットローラの軸線まわりに回転可能に支持している。前記軸部は、前記芯金の非駆動側端部を係合固定し、その外周部に前記非駆動側のフランジ部材を回転可能に係合支持している。
【0004】
しかし、特許文献1に示される現像装置の場合、マグネットローラの芯金部は、その両端部が現像器本体に固定されるホルダに固定されているだけなので、マグネットローラの芯金部に振れが発生した時、現像器全体にその振れが伝わり、延いては本現像器本体を含むプロセスカートリッジ全体に振れが振動となって伝播することになる。その結果、プロセスカートリッジに装備される感光体ドラムとマグネットローラとの間隙が不安定となり、画像濃度むらなどの不具合が発生する。
【0005】
さらに他の従来技術は、特許文献2に記載されている。この従来技術では、本体側面板にD穴とも呼ばれる断面D字状の軸孔が形成されたホルダを設け、またマグネットローラの軸の軸線方向一端部をDカットとも呼ばれる断面D字状に形成して、前記軸の軸線方向一端部におけるD字状断面部を、前記ホルダの軸孔に差込んで支持させることによって、前記軸のD字状断面を成す部分の軸線方向長さを短くし、現像ユニット筐体からマグネットローラへの振動の伝達を防止し、感光体と現像ローラとの間の現像ギャップの変動を防止して、現像濃度むらを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−137369号公報
【特許文献2】特開2007−140091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2記載の画像形成装置では、マグネットローラの軸の軸線方向一端部のみをホルダによって固定しているため、マグネットローラの軸に回転駆動力が加わった場合、マグネットローラの軸の軸線方向他端部が感光体から離れ、感光体と現像ローラとの間の現像ギャップが変動するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、マグネットローラの振れを抑制するとともに、感光体と現像ローラとの間の現像ギャップを一定に保持することが可能な現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置本体内に設置され、現像装置ハウジングと、前記現像装置ハウジングに組み込まれる現像ローラとを含む現像装置であって、
前記現像ローラは、
前記現像装置ハウジングに回転可能に支持される円筒状の現像スリーブと、
前記現像スリーブに同軸に挿通されるシャフトを有し、前記現像装置ハウジング内に固定状態で支持されるマグネットローラと、
前記マグネットローラのシャフトを軸支する軸受部材とを含み、
前記軸受部材は、前記マグネットローラのシャフトの位置を変位させる位置調整部材を備え、前記画像形成装置本体に形成される嵌合部に、その軸線方向に沿って嵌合保持されることを特徴とする現像装置である。
【0010】
また本発明は、前記軸受部材は、前記マグネットローラのシャフトが挿通される円筒部と、円筒部の一方側端部において半径方向外方に突出する取付部とを有し、
前記取付部によって、前記軸受部材が前記現像装置ハウジングに取り付けられ、
前記取付部の取り付け位置を変更することで前記円筒部がその中心軸線まわりに角変位され、前記円筒部の角変位によって前記円筒部を挿通する前記マグネットローラのシャフトの位置が変位するように構成されることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記軸受部材の円筒部が、銅系焼結含油軸受からなることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記軸受部材の円筒部が、ころ軸受からなることを特徴とする。
また本発明は、電子写真方式の画像形成装置であって、
装置本体内の所定位置に、電子写真プロセス部を構成する現像装置が着脱自在に設置され、
前記現像装置は、前記現像装置からなり、
前記装置本体には、前記現像装置が前記所定位置に設置されたとき、前記軸受部材を嵌合保持する嵌合部が形成されていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現像装置は、電子写真方式の画像形成装置本体内に設置されて、画像形成のプロセス部を構成し、この画像形成プロセス部によって所定の画像形成が成される。現像ローラを構成する現像スリーブは、円筒状で現像装置ハウジングに回転可能に支持され、この現像スリーブにはマグネットローラが挿通されており、マグネットローラの磁気吸引力により吸引された現像剤(トナー)が現像スリーブの表面に担持される。現像スリーブの回転に伴い、現像スリーブに近接配置されて前記プロセス部を構成する感光体の表面に形成される静電潜像が、現像スリーブの表面に担持される現像剤によって現像される。マグネットローラのシャフトは、マグネットローラと共に現像装置ハウジングに固定状態で支持されている。マグネットローラのシャフトを軸支する軸受部材は、前記画像形成装置本体に形成される嵌合部に、その軸線方向に沿って嵌合保持される。
【0014】
これにより、現像スリーブに付加される回転動力による振動は、前記軸受部材を介して、現像装置ハウジングおよび画像形成装置本体に伝播され、これによって分散されるから、前記シャフトの振れが抑制され、延いてはマグネットローラの周方向の振れも抑制される。特に、周方向の振れが抑制されることで、画像形成時における画像濃度むらの発生が防止され、画像品質の優れた画像形成が可能となる。
【0015】
さらに、軸受部材は前記マグネットローラのシャフトの位置を変位させる調整部材を備えているので、この調整部材により、前記マグネットローラのシャフトの位置を変位させ、感光体と現像ローラとの間の現像ギャップを一定に保持することができる。
【0016】
また本発明によれば、前記軸受部材は、前記マグネットローラのシャフトが嵌挿される円筒部と、円筒部の一方側端部において半径方向外方に突出する取付部とで構成される。
【0017】
前記軸受部材は、前記取付部によって、前記現像装置ハウジングに取り付けられる。前記取付部の取り付け位置を変更することで、前記円筒部がその中心軸線まわりに角変位され、前記円筒部を嵌挿する前記マグネットローラのシャフトの位置が変位するように構成される。
【0018】
これにより、円筒部の角変位を前記マグネットローラのシャフトの変位に変換することで、手作業であっても前記マグネットローラのシャフトの移動量を正確に調整することができる。
【0019】
また本発明によれば、前記軸受部材の円筒部が、銅系焼結含油軸受、または、ころ軸受からなるので、マグネットローラのシャフトが安定的に支持され、振れの抑制作用がより顕著となる。特に、銅系焼結含油軸受は、その特性により給油が不要とされ、常時適正な潤滑状態に維持され、潤滑油切れによる回転不調や振動発生の懸念もない。
【0020】
また本発明によれば、電子写真方式によって画像形成が成される。また、電子写真プロセス部を構成する現像装置は、装置本体内の所定位置に着脱自在に設置されるから、交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。そして、この現像装置は、前記のように構成され、画像形成装置の装置本体内の所定位置に設置されたときには、マグネットローラのシャフトが、軸受部材を介して装置本体に形成された嵌合部に嵌合保持されるから、現像スリーブの回転に伴うマグネットローラの振れ、特に周方向の振れが抑制される。また、調整部材により、感光体と現像ローラとの間の現像ギャップを一定に保持することができる。
【0021】
これによって、前記画像形成時における画像濃度むらの発生が防止され、高品位の画像形成が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る現像装置を備える画像形成装置1の構成を示す概略図である。
【図2】黄色画像形成ステーション9の現像装置29の概略縦断面図である。
【図3】現像装置29を画像形成装置1の装置本体1Aに設置した状態を示す部分的に切欠いた断面図である。
【図4】非駆動側から見た現像装置29の斜視図である。
【図5】現像ギャップ調整部材60によるギャップ調整機構を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る現像装置を備える画像形成装置1の構成を示す概略図である。図1に示す構成は、本実施形態の画像形成装置1の主な構成要素を中心に簡略化して記載された一例であって、本発明に係る現像装置を備える画像形成装置の構成を何ら限定するものではない。
【0024】
図1に示す画像形成装置1は、静電潜像担持体となる感光体を複数個(本実施の形態では、黄色画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用、および黒色画像用の4つ)備えるカラー画像を形成可能とするタンデム方式のカラー画像形成装置である。このような画像形成装置1は、ネットワークを介して接続されたPC(Personal Computer)などの各種端末装置から送信される画像データや、スキャナなどの原稿読み取り装置によって読み取られた画像データに基づいて、被転写材(記録媒体)となる記録紙Pに対して、カラー画像を形成するプリンタ機能を有するものである。
【0025】
本実施形態の画像形成装置1は、図1に示すように、中間転写ベルト2に画像を形成する機能を有する画像形成プロセス部としての画像形成ステーション部(Y,M,C,Bk)3、当該画像形成ステーション部3で中間転写ベルト2に形成されたトナー像を記録紙Pに転写させる機能を有する2次転写ステーション部4、記録紙Pに転写された記録画像を定着させる機能を有する定着装置5、記録紙Pを載置する供給トレイ(給紙カセット)6から2次転写ステーション部4および定着装置5へと記録紙Pを搬送する機能を有する紙搬送部7、2次転写後の中間転写ベルト2から転写残りトナーを除去するベルトクリーナ部8を備えている。
【0026】
画像形成ステーション部3は、黄色(Y)画像用、マゼンタ(M)画像用、シアン(C)画像用および黒色(Bk)画像用のそれぞれ4つの画像形成ステーション9,10,11,12から構成されている。中間転写ベルト2の走行方向(矢印2A方向)に沿って、黄色画像形成ステーション9、マゼンタ画像形成ステーション10、シアン画像形成ステーション11、および黒色画像形成ステーション12がこの順に並設されている。各画像形成ステーション9,10,11,12には、それぞれの現像装置に対応する色のトナーを収容するトナーボトル13,14,15,16が設置されており、図示を省略する供給手段、制御手段によってそれぞれの現像装置に対応するトナーが供給されるよう構成されている。
【0027】
これら各色の画像形成ステーション9,10,11,12は、それぞれ、実質的に同一の構成を有しており、各色に対応する画像データに基づいて、黄色、マゼンタ、シアン、および黒色の画像を形成して、中間転写ベルト2上で重ね合わせて4色のトナーからなる画像を形成し、2次転写ステーション部4で被転写材(記録媒体)となる記録紙P上に転写するものである。そして、記録紙P上のトナー像を定着装置5で加熱加圧することにより、記録紙P上にフルカラー画像が形成される。
【0028】
各画像形成ステーション9,10,11,12は、それぞれ静電潜像が形成される潜像担持体となる感光体ドラム17,18,19,20を備え、これらの感光体ドラム17,18,19,20の周囲には、周方向に帯電器21,22,23,24、信号光光路25,26,27,28、現像装置29,30,31,32、転写器(一次転写ローラ)33,34,35,36、および感光体クリーナ37,38,39,40がそれぞれ配置されている。
【0029】
感光体ドラム17,18,19,20は、OPC(Organic Photoconductor;有機光導電体)などの感光性材料を表面に有する略円筒のドラム形状を呈し、露光ユニット41の上方に配設され、駆動手段42と図示を省略する制御手段によって、所定方向(図中矢印17A,18A,19A,20A方向)に回転駆動するように制御される。一次転写ローラからなる転写器33,34,35,36は、中間転写ベルト2を挟んで各感光体ドラム17,18,19,20に近接配置されている。
【0030】
帯電器21,22,23,24は、感光体ドラム17,18,19,20の表面を所定の電位に均一に帯電するためのスコロトロン方式の帯電手段であって、感光体ドラム17,18,19,20の外周面に近接して配置されている。露光ユニット41は、画像処理部から出力された画像データに基づいて、帯電器21,22,23,24によって帯電される感光体ドラム17,18,19,20の表面にレーザ光を照射して露光することにより、露光部の電位を低下させ当該表面に画像データに応じた静電潜像を書込み形成する機能を有する。
【0031】
露光ユニット41は、各画像形成ステーション9,10,11,12に応じて、黄色、マゼンタ、シアン、または黒色に対応する画像データが入力されることにより、対応する画像データに応じた光を信号光光路25,26,27,28に出射し、感光体ドラム17,18,19,20の表面に静電潜像を形成するようになっている。露光ユニット41としては、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)の他、ELやLEDなどの発光素子をアレイ状に並べた書込み装置(例えば、光書込みヘッド)を使用することができる。
【0032】
現像装置29,30,31,32は、トナーを担持する現像剤担持体となる現像ローラ43,44,45,46を有している。現像ローラ43,44,45,46は、トナーが感光体ドラム17,18,19,20へ移動し得る現像領域へトナーを搬送するように構成されている。この現像装置29,30,31,32は、本実施形態では、トナーとキャリアとを含む2成分系の現像剤を用いて、露光ユニット41によって感光体ドラム17,18,19,20の表面に形成された静電潜像を当該トナーにて反転現像してトナー像(可視像)を形成する。
【0033】
現像装置29,30,31,32は、各色のトナーとキャリアとを含む2成分系の現像剤を収容する現像剤槽290,300,310,320を備える。この現像剤槽290,300,310,320は、前記現像ローラ43,44,45,46および後記する他の現像機構部が組み込み支持される現像装置ハウジングを構成し、各画像形成ステーション9,10,11,12の画像形成に応じて、黄色、マゼンタ、シアン、または黒色の現像剤が収容されている。この現像剤は、感光体ドラム17,18,19,20に帯電される表面電位と同極性に帯電されるトナーを含んでいる。なお、感光体ドラム17,18,19,20に帯電される表面電位の極性および使用するトナーの帯電極性は、ここでは、いずれも負(マイナス)極性とされている。
【0034】
転写器33,34,35,36は、感光体ドラム17,18,19,20上のトナー像を中間転写ベルト2上に転写するものであり、トナーの帯電極性とは、逆極性(ここでは、正極性)のバイアス電圧が印加される一次転写ローラによって構成されている。感光体クリーナ37,38,39,40は、中間転写ベルト2への画像転写後に、感光体ドラム17,18,19,20の外周面上に残存しているトナーを除去・回収するものであり、ウレタンゴムからなり、感光体ドラム17,18,19,20の表面に当接するクリーニングブレードを有している。
【0035】
中間転写ベルト2は半導電性のポリイミドからなり、駆動ローラ2aおよび従動ローラ2bに掛け渡され、駆動ローラ2aの回転により矢印2A方向に回転走行する。この中間転写ベルト2は、各色の画像形成ステーション9,10,11,12における感光体ドラム17,18,19,20の表面上に形成されたトナー像を位置を合わせて重ね合わせることにより、表面に4色のトナーからなるトナー像を担持する。そして、中間転写ベルト2が矢印2A方向に回転走行することにより4色のトナー像は2次転写ステーション部4へ搬送される。2次転写ステーション部4では、トナー像の搬送とタイミングを合わせて搬送される記録紙Pを介して、2次転写ローラ4aが中間転写ベルト2に圧接する。このとき、2次転写ローラ4aにはトナーを引きつける正電位が印加され、中間転写ベルト2上のトナー像を記録紙Pへ転写させる。
【0036】
ベルトクリーナ部8は被転写材となる記録紙Pへの画像転写後に、中間転写ベルト2の外周面上に残存しているトナーを除去・回収するものであり、感光体クリーナ37,38,39,40と同様に、ウレタンゴムからなり、中間転写ベルト2に当接するクリーニングブレードを有している。紙搬送部7は、供給トレイ6から、分離給紙ローラ6aによって1枚ずつ繰出された記録紙Pの搬送タイミングを制御するレジストローラ対7a、用紙の搬送経路を規定する用紙ガイド7bおよび用紙搬送ローラ対7cを備え、中間転写ベルト2上の4色トナー像が記録紙Pに転写されるよう、記録紙Pをタイミングをとって2次転写ステーション部4に搬送導入するものである。定着装置5は、加熱ローラ5aおよび加圧ローラ5bを備え、両ローラ5a,5bのニップ部に記録紙Pを搬送することで、記録紙P上に転写されたトナー像を熱圧着して、当該記録紙P上にトナー像を永久画像として定着させるものである。
【0037】
このように構成された画像形成装置1においては、紙搬送部7によって搬送される記録紙Pは、中間転写ベルト2と2次転写ローラ4aとの対向位置を通過する際に、2次転写ローラ4aによる転写電界の作用によって、中間転写ベルト2上の4色のトナー像が一括して記録紙P上に転写される。これによって、記録紙P上に4色のトナー画像が形成される。こうしてトナー像が転写された被転写材となる記録紙Pは、定着装置5によってトナー像の定着処理が行われた後に、図示を省略する排紙トレイに送出される。
【0038】
次に、本実施形態の現像装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図2は図1における黄色画像形成ステーション9の現像装置29の概略縦断面図を示している。図3は現像装置29を画像形成装置1の装置本体1Aに設置した状態を示す部分的に切欠いた断面図であり、他の現像装置30,31,32も同様に構成されるので、ここでは、黄色画像形成用の現像装置29の構成について説明し、他の現像装置30,31,32についてはその説明を省略する。図4は、非駆動側から見た現像装置29の斜視図である。
【0039】
現像装置29は、現像装置筐体としての現像剤槽290(以下、現像装置ハウジング290と言う)に、現像ローラ43、現像剤攪拌搬送スクリュー47,48を組み込み支持させて現像器ユニットとして構成される。現像剤攪拌搬送スクリュー47,48は、現像装置ハウジング290に収容される二成分現像剤(トナーとキャリア)を攪拌搬送して現像ローラ43に供給するべく機能する。現像ローラ43は、前記現像装置ハウジング290に回転可能に支持される円筒状現像スリーブ49と、前記現像スリーブ49の筒内に同軸に挿通され、かつ、前記現像装置ハウジング290内に固定状態で支持されるマグネットローラ50とを含む。
【0040】
現像ローラ43は、現像装置ハウジング290に形成される開口部291において、現像スリーブ49が感光体ドラム17の表面に所定の間隙(DSD)をもって近接するよう配置されている。現像装置ハウジング290内には二成分現像剤が収容され、前記トナーボトル13(図1参照)から現像剤攪拌搬送スクリュー47,48によって構成される撹拌部に補給用トナーが補給され、この撹拌部で二成分現像剤と撹拌混合の後、攪拌された現像剤が現像スリーブ49の表面上に前記マグネットローラ50の磁力によって吸引搬送される。その後、図示しない現像剤層厚規制板(ドクターブレード)によって、所望の現像剤層厚に設定され、感光体ドラム17の静電潜像を摺擦することによって、当該静電潜像がトナーで可視像化される。
【0041】
マグネットローラ50は、マグネットローラシャフト51に一体に固定されており、マグネットローラシャフト51は、現像装置ハウジング290に固定状態で支持されている。現像スリーブ49の両端部にはフランジ部材52,53が一体に装着され、マグネットローラシャフト51の軸線まわりに回転可能に支持されている。現像スリーブ49を回転させるための回転動力が伝達される側(以下、駆動側と言う)のフランジ部材52は、マグネットローラシャフト51と同軸のギヤ軸54に一体に固着され、ギヤ軸54は、2個の軸受部材55,56を介して前記現像装置ハウジング290にマグネットローラシャフト51の軸線まわりに回転可能に支持されている。2個の軸受部材55,56のうち現像装置ハウジング290の側壁部側に位置する軸受部材55は、現像ギャップ(DSD)調整用軸受であって、現像装置ハウジング290の側壁部に形成される軸受保持部に装着され、ギヤ軸54の端部を回転可能に支持する。軸受部材55,56は、その詳細構造の図示を省略するが、いずれも内輪部と、外輪部と、両者の間に介在される滑動部とからなり、内輪部がギヤ軸54に一体に固定され、外輪部が現像装置ハウジング290に一体に固定される。
【0042】
前記ギヤ軸54には、被駆動伝達部材としての回転駆動伝達用ギヤ57が固着されている。回転駆動伝達用ギヤ57は、CリングまたはEリング58によってギヤ軸54の所定位置に位置決めされ、前記駆動手段42(図1参照)から駆動伝達される感光体ドラム17の回転駆動伝達用ギヤ(図示せず)に噛み合っている。前記回転駆動伝達用ギヤ57と、感光体ドラム17の回転駆動伝達用ギヤとの噛み合いによって、モータを駆動源とする駆動手段42との駆動伝達系が確立され、現像スリーブ49がマグネットローラ50の軸線まわりに回転するよう構成される。
【0043】
マグネットローラシャフト51の駆動側端部51aには、前記現像スリーブ49の駆動側フランジ部材52が、シール機能を持った摺接部材59を介して支持されている。また、非駆動側(駆動側と反対側)端部51bには、銅系焼結含油軸受またはころ軸受からなる軸受部材61が固定されている。さらに、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bには、軸受部材である現像ギャップ調整部材60が設けられ、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bは、現像ギャップ調整部材60を介して現像装置ハウジング290の非駆動側側壁部に軸支される。
【0044】
前記現像スリーブ49の駆動側フランジ部材52および非駆動側フランジ部材53のマグネットローラシャフト51に対するこのような支持関係によって、現像スリーブ49がマグネットローラシャフト51の軸線まわりに回転可能に支持される。
【0045】
現像器ユニットとして構成される現像装置29は、図3の白抜矢印方向(マグネットローラシャフト51の軸線方向)に沿って操作されて、画像形成装置本体1Aの所定位置に装着される。画像形成装置本体1Aにおける本体フレーム1Bの所定部位には、現像ギャップ調整部材60をマグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bとともに嵌合保持し得る嵌合穴(嵌合部)62を有するブロック状の嵌合基部63が形成されており、現像ギャップ調整部材60は、前記現像装置29の装着操作の際に、この嵌合穴62に嵌挿される。
【0046】
また、前記回転駆動伝達用ギヤ57は、現像装置29が画像形成装置本体1Aの所定位置に装着されたときには、画像形成装置本体1A内に設置される前記駆動手段42との駆動伝達系が、感光体ドラム17の回転駆動伝達用ギヤ(図示せず)を介して確立されるよう構成されている。
【0047】
図3に示すように画像形成装置本体1A内の所定位置に現像装置29が設置された状態においては、現像ローラ43が、現像ギャップ調整部材60の嵌合穴62に対する嵌合保持によって、本体フレーム1Bに固定される。したがって、現像スリーブ49に付加される回転動力による振動は、現像ギャップ調整部材60を介して、現像装置ハウジング290および画像形成装置本体1Aに伝播され、これによって分散されるから、マグネットローラシャフト51の振れが抑制され、延いてはマグネットローラ50の周方向の振れも抑制される。
【0048】
図5は、現像ギャップ調整部材60によるギャップ調整機構を示す概念図である。
現像ギャップ調整部材60は、円筒部70と、円筒部70の一方側端部において半径方向外方に突出する取付部71とを有する。円筒部70の外周の軸中心と、内周面70aの軸中心とが偏心して構成され、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの軸中心と内周面70aの軸中心とが一致するので、円筒部70の外周の軸中心と、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの軸中心とが偏心することとなる。したがって、円筒部70をその中心軸線まわりに角変位させることで、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの位置を変位させることができる。
【0049】
取付部71には、長穴71aが設けられており、取り付け用のビス72を長穴71aに挿通し、現像装置ハウジング290の側壁部に螺結される。円筒部70には、同一形状の取付部71が複数設けられており、取付部71の現像装置ハウジング290に対する螺結位置を長穴71aによって許容される範囲内で変更することにより、円筒部70をその中心軸線まわりに角変位させることができる。
【0050】
上記のように、現像ギャップ調整部材60の円筒部70によって、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bが軸支された状態で、円筒部70の外周の中心軸線と、マグネットローラシャフト51の中心軸線とが偏心する。
【0051】
マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bは、偏心した状態であるので、円筒部70を外周の中心軸線まわりに角変位させることで、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bを移動させることができる。マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの移動は、すなわち現像ローラ43全体の移動であり、非駆動側端部51bの移動によって、感光体ドラム17と現像ローラ43との間隙である現像ギャップGを所望の大きさに調整することができる。
【0052】
現像ギャップGの調整量は、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの移動量により、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの移動量は、円筒部70の角変位量による。現像ギャップGの調整量としては、少なくとも0.2〜0.6mmを確保する必要があるので、たとえば、マグネットローラシャフト51の非駆動側端部51bの直径および円筒部70の内周面の直径を6mmとし、円筒部70の外周の中心軸線に対するマグネットローラシャフト51の中心軸線のオフセット量を1.3mmとし、円筒部70の角変位量を20°とする。
【0053】
現像ギャップGの調整量は、微少量であるので、手作業で調整することは困難である。調整量を誤って、現像ギャップGが小さくなり過ぎると、現像ローラ43と感光体ドラム17とが接触してしまい、感光体ドラム17の表面に傷が付くなどの問題が生じる。
【0054】
本発明の現像ギャップ調整部材60は、円筒部70の角変位をマグネットローラシャフト51の移動に変換することで、マグネットローラシャフト51の移動量に対する円筒部70の角変位量の比率を大きくしている。
【0055】
円筒部70を角変位させることで、手作業であってもマグネットローラシャフト51の移動量を正確に調整することができる。
【0056】
なお、上記の実施形態においては、タンデム方式のカラー画像形成装置を例示したが、その他の方式のカラー画像形成装置や、モノクロ画像形成装置であっても良い。また、現像装置として二成分現像剤を用いる現像装置を例示したが、非磁性一成分などによる現像方式の現像装置であっても良い。さらに、現像装置が、現像器ユニットとして画像形成装置の本体に対して着脱自在に設置し得る例について述べたが、感光体ドラム、帯電器および感光体クリーニング部をも組み込んだプロセスカートリッジ(プロセスユニット)の一部を構成するものとしても良い。
【符号の説明】
【0057】
30 現像装置
43 現像ローラ
51 マグネットローラシャフト
55 軸受部材
60 現像ギャップ調整部材
70 円筒部
71 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置本体内に設置され、現像装置ハウジングと、前記現像装置ハウジングに組み込まれる現像ローラとを含む現像装置であって、
前記現像ローラは、
前記現像装置ハウジングに回転可能に支持される円筒状の現像スリーブと、
前記現像スリーブに同軸に挿通されるシャフトを有し、前記現像装置ハウジング内に固定状態で支持されるマグネットローラと、
前記マグネットローラのシャフトを軸支する軸受部材とを含み、
前記軸受部材は、前記マグネットローラのシャフトの位置を変位させる位置調整部材を備え、前記画像形成装置本体に形成される嵌合部に、その軸線方向に沿って嵌合保持されることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記軸受部材は、前記マグネットローラのシャフトが挿通される円筒部と、円筒部の一方側端部において半径方向外方に突出する取付部とを有し、
前記取付部によって、前記軸受部材が前記現像装置ハウジングに取り付けられ、
前記取付部の取り付け位置を変更することで前記円筒部がその中心軸線まわりに角変位され、前記円筒部の角変位によって前記円筒部を挿通する前記マグネットローラのシャフトの位置が変位するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記軸受部材の円筒部が、銅系焼結含油軸受からなることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記軸受部材の円筒部が、ころ軸受からなることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項5】
電子写真方式の画像形成装置であって、
装置本体内の所定位置に、電子写真プロセス部を構成する現像装置が着脱自在に設置され、
前記現像装置は、請求項1〜4のいずれか1つに記載された現像装置からなり、
前記装置本体には、前記現像装置が前記所定位置に設置されたとき、前記軸受部材を嵌合保持する嵌合部が形成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−75729(P2011−75729A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225575(P2009−225575)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】