説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】現像ローラの端部に現像後残留したトナーを回収し、良好な画像を得られる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置は、回転スリーブ73に保持される磁気ブラシを現像ローラ72に接触させるとともに磁気ローラ71にバイアス電圧を印加することにより、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーを現像ローラ72に供給し、該トナーによって感光体上の潜像を現像する。回転スリーブ73外周面には、回転スリーブ73の軸方向に沿って延びる複数の溝73aが形成され、この複数の溝73aの軸方向長さをL、磁極部材74の軸方向長さをM、現像ローラ72の軸方向長さをNで表すとき、L>M≧Nである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、トナーをトナー担持体から現像剤担持体へ回収可能である現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を利用した画像形成装置における現像方式には、絶縁トナーや導電トナーを用いた1成分現像方式、トナーと磁性キャリアを用いた2成分現像方式などがある。
【0003】
2成分現像方式として、例えば特許文献1では、現像装置は、トナーと磁性キャリアとからなる現像剤を磁気的に吸引して磁気ブラシを表面に形成する現像剤担持体と、この現像剤担持体上の現像剤量を規制する規制部材と、トナーのみを付着して回転する円筒状のトナー担持体とを有している。つまり現像剤担持体は、回転スリーブの内側に固定された磁極部材が配置され、回転スリーブの表面に現像剤を磁気的に吸着して磁気ブラシを形成するとともに、回転スリーブが回転して現像剤を搬送する。この現像剤担持体は、バイアス電圧を印加されると、回転スリーブとトナー担持体との対向位置で、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーをトナー担持体に供給し、トナー担持体上にトナーの薄層が形成される。そして、トナー担持体上のトナー層によって像担持体上の潜像が現像される。
【0004】
現像が行われた後、残留トナー層を有するトナー担持体は、回転して現像剤担持体との対向位置において、磁気ブラシを形成した現像剤担持体と最接近し、この対向位置で、トナー担持体上のトナー層が磁気ブラシによる機械的な力によって掻き取られる。このようにトナー担持体上の残留トナーを回収することにより、現像履歴がトナー担持体に残存しないようにして、次回現像時の画像に影響を及ぼさないようにしている。
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、現像剤担持体の軸方向端部では、内包する磁極部材の磁力が中央部に対して小さくなり、磁気ブラシの回転スリーブ上での保持力が弱くなる。したがって、回転スリーブの端部では、磁気ブラシがトナー担持体に接触しても、磁気ブラシによってトナー担持体上の残留トナー層を掻き取り難くなり、トナー担持体の端部にトナーが残留し、固着するという問題があった。
【特許文献1】特開2005−274924号公報(段落[0018]〜[0020]、[0024]、[0025]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、トナー担持体の端部に現像後残留したトナーを回収し、良好な画像を得られる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、磁性キャリアとトナーからなる現像剤を担持する回転スリーブを有し前記回転スリーブの内側に磁極部材を支持し、前記現像剤を磁気ブラシとして搬送する現像剤担持体と、前記回転スリーブ上の現像剤量を規制する規制部材と、潜像を形成した像担持体に対向して配置されるトナー担持体とを備え、前記回転スリーブに保持される前記磁気ブラシを前記トナー担持体に接触させるとともに前記現像剤担持体にバイアス電圧を印加することにより、トナーを前記トナー担持体に供給し、前記トナーによって前記像担持体上の潜像を現像する現像装置において、前記回転スリーブ外周面には、前記回転スリーブの軸方向に沿って延びる複数の溝が形成され、前記複数の溝の軸方向長さをL、前記磁極部材の軸方向長さをM、前記トナー担持体の軸方向長さをNで表すとき、
L>M≧N
であることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、磁極部材の軸方向長さ(M)がトナー担持体の軸方向長さ(N)と同等以上の長さで構成されるので、トナー担持体の端部で磁極部材の磁力が小さくなるおそれがなく、トナー担持体端部において、磁気ブラシの回転スリーブ上の保持力が弱くなるおそれがない。さらに、磁気ブラシが複数の溝に入り込んだ状態で回転スリーブ外周面に形成されると、磁気ブラシの保持力が強化されるが、複数の溝の軸方向長さ(L)が磁極部材の軸方向長さ(M)より長いので、トナー担持体端部において、磁気ブラシの回転スリーブ上の保持力も強化される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、前記トナー担持体の軸方向の両端部には、前記回転スリーブ外周面に当接するシール部材が設けられ、前記シール部材間の軸方向長さをSで表すとき、
S>L
であることを特徴としている。この構成によれば、バイアス電圧を印加されると、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーが回転スリーブからトナー担持体に供給される。このとき、シール部材間の軸方向長さ(S)が複数の溝の軸方向長さ(L)より長いので、トナー担持体に接触しない磁気ブラシから供給されるトナーが装置外に飛散するのを抑える。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、上記の構成の現像装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、磁極部材の軸方向長さ(M)がトナー担持体の軸方向長さ(N)と同等以上の長さで構成されるので、トナー担持体の端部で磁極部材の磁力が小さくなるおそれがなく、トナー担持体端部においても、磁気ブラシの回転スリーブ上の保持力が弱くなるおそれがない。さらに、磁気ブラシが複数の溝に入り込んだ状態で回転スリーブ外周面に形成されると、磁気ブラシの保持力が強化されるが、複数の溝の軸方向長さ(L)が磁極部材の軸方向長さ(M)より長いので、トナー担持体端部においても、磁気ブラシの回転スリーブ上の保持力も強化される。従って、現像が行われた後、トナー担持体の端部に残留するトナーは、回転スリーブに保持された磁気ブラシによる機械的な力によって掻き取られ、トナー担持体の端部まで現像履歴が残存しないようになり、良好な画像を得られる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、バイアス電圧を印加されると、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーが回転スリーブからトナー担持体に供給される。このとき、シール部材間の軸方向長さ(S)が複数の溝の軸方向長さ(L)より長いので、トナー担持体に接触しない磁気ブラシから供給されるトナーが装置外に飛散するのを抑えることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によれば、トナー担持体の端部に現像後残留したトナーを回収し、良好な画像を得られる現像装置を備える画像形成装置にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。本発明の実施形態は発明の最も好ましい形態を示すものであり、また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示すタンデム型カラープリンタの概略構成図である。図1において、画像形成装置1は、用紙11を収容する給紙部10と、給紙部10の上方に配される4個の画像形成部30a〜30dと、画像形成部30a〜30dの上方に配される露光器33a〜33dと、画像形成部30a〜30dの左方に配される定着部40と、給紙部10の右方に配される用紙搬送路20と、画像形成装置1の上部に用紙11を排出する排出部50とを備えている。
【0016】
給紙部10は、給紙カセット13内に積層載置された用紙11を1枚ずつ給紙カセット13の出口側(図1の右側)に繰り出すフィードローラ21を備え、繰り出した用紙11を用紙搬送路20に給紙する。用紙搬送路20は搬送ローラ対及び搬送ガイド等を備えてなり、繰り出された用紙を画像形成部30a〜30dに向けて搬送するものである。また、手差しトレイ23は、給紙部10に載置されていないサイズの用紙等を別途供給するもので、フィードローラ22を備え、用紙を1枚ずつ用紙搬送路20に給紙する。
【0017】
画像形成部30a〜30dは、上流側(図1の右側)から搬送方向に沿って、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のトナーに応じて設けられており、装置の水平方向に直列に配置されている。各画像形成部30a〜30dは、円筒状の感光体31a〜31dを有するとともに、その回転方向の周囲に上流側から順に、帯電器32a〜32dと、現像装置34a〜34dと、転写ローラ35a〜35dと、クリーナー36a〜36dが配設されている。
【0018】
回転自在である感光体31a〜31dは、感光層を形成する感光材料として、アモルファスシリコン感光体が用いられ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応させて配される。感光層は有機感光体(OPC感光体)でもよい。現像装置34a〜34dは、感光体31a〜31dの右方に配され、現像ローラとトナーの収容部等を有し、感光体31a〜31dにトナーを供給する。帯電器32a〜32dは感光体31a〜31d表面を一様に帯電させる。
【0019】
露光器33a〜33dは、パーソナルコンピュータ等から画像入力部(図略)に入力された原稿画像データに基づいて、各感光体31a〜31d表面に図1の破線で示すようにレーザ光を照射する。照射されたレーザ光により、各感光体31a〜31d表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が各現像装置34a〜34dにより現像される。
【0020】
用紙搬送ベルト38は、駆動ローラ62及び従動ローラ61間に張架されるとともに、感光体31a〜31dと転写ローラ35a〜35dとの間に、用紙を搬送するベルト走行路が形成されている。各転写ローラ35a〜35dは、用紙搬送ベルト38を挟んで各感光体31a〜31dと対向して用紙搬送転写ベルト38に圧接し、転写ニップ部を形成する。この各転写ニップ部において、用紙搬送ベルト38の回転とともに所定のタイミングで、用紙搬送路20から搬送される用紙11に、各感光体31a〜31dのトナー像が順次転写されることにより、用紙11にはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされ、カラートナー像が形成される。
【0021】
トナータンク39a〜39dは、画像形成部30a〜30dの上方に配され、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのいずれかの色のトナーを収容する。各色のトナーが対応する現像装置34a〜34dに供給される。
【0022】
定着部40は、画像形成部30aの下流側に配され、画像形成部30a〜30dにおいてトナー像が転写された用紙11を加熱及び加圧して用紙11にトナー像を溶融定着させる。定着部40を通過した用紙11は、用紙搬送路15を介して排出部50へ排出される。
【0023】
次に、現像装置34a〜34dについて図2〜図4に基づいて説明する。図2は上述の画像形成装置1に用いられる現像装置34a〜34dの構成を示す断面図であり、図3は現像ローラと一部断面した磁気ローラとを示す平面図であり、図4は回転スリーブの要部を示す断面図である。なお、以下の説明では、図1の感光体31aと対向する現像装置34aの構成及び動作について説明するが、現像装置34b〜34dの構成及び動作については現像装置34aと同様であり説明を省略し、また各色の現像装置及び感光体を示すa〜dの符号を省略し、必要な場合には、a〜dの符号を付与して説明する。
【0024】
図2に示すように、現像装置34は、トナー担持体としての現像ローラ72と、現像剤担持体としての磁気ローラ71と、パドルミキサー82と、撹拌スクリュー83、及び規制部材84等により構成されている。
【0025】
撹拌スクリュー83は、磁性体のキャリアとトナーからなる現像剤を撹拌して、現像剤中のトナーを所定のレベルに帯電させる。これによりトナーは、キャリアに保持される。また、撹拌スクリュー83が回転すると、現像剤がパドルミキサー82に搬送され、撹拌スクリュー83とパドルミキサー82とを循環する。パドルミキサー82が回転して、現像剤を磁気ローラ71に搬送する。
【0026】
磁気ローラ71は、非磁性の金属材料で円筒状に形成される回転スリーブ73と、その内側に配置された磁極部材74とを備える。
【0027】
磁極部材74は、フェライト系の磁石からなり、複数の磁極が配設されて、その磁石の磁力によって、現像剤に含まれるキャリアを引き付けて、磁気ブラシを回転スリーブ73の外周面に形成する。
【0028】
回転スリーブ73は、磁極部材74の外周面と所定の間隔を設けて、回転可能に支持され、現像剤を磁気ブラシとして図2の矢印方向に回転搬送する。規制部材84はこの磁気ブラシを所定の層厚になるように規制する。そして回転スリーブ73には、直流電源88aと交流電源88bが接続され、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が印加される。一方、現像ローラ72には、直流電源87aと交流電源87bが接続され、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が印加される。
【0029】
現像ローラ72と回転スリーブ73間には、これらのバイアスによる電界が形成される。この電界によって、回転スリーブ73と現像ローラ72との近接位置Tで、回転スリーブ73外周面に保持された磁気ブラシが現像ローラ72表面に接触し、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーが現像ローラ72表面に移動してトナー層を形成する。
【0030】
現像ローラ72は、磁気ローラ71から供給されたトナー薄層を担持し、図示しないモータとギヤからなる駆動機構により、回転スリーブ73と同方向に回転(図2の矢印方向)することにより、トナー薄層を感光体31側に搬送する。また、現像ローラ72には、直流電源87aと交流電源87bによるバイアスが印加され、一方、像担持体としての感光体31上には、露光器33(図1参照)からレーザ光Pを照射された露光部に静電電位が形成されている。現像ローラ72のバイアス電位と感光体31上の露光部の電位との電位差により、帯電したトナー薄層が現像ローラ72から感光体31に飛翔する。飛翔したトナーが感光体31上の露光部に付着し、静電潜像が現像される。
【0031】
現像が行われた後、現像に供されないトナー層が現像ローラ72表面に残留する。現像ローラ72表面の残留トナー層は、現像ローラ72の図2に示す矢印方向の回転によって、近接位置Tまで搬送され、近接位置Tにおいて、回転スリーブ73に保持された磁気ブラシに当接すると、磁気ブラシによる機械的な力によって掻き取られ、磁気ローラ71側に回収される。
【0032】
上述の現像及びトナー回収において、トナーはプラス帯電を用いるのが好ましく、その帯電量は10〜20μC/gが好ましい。帯電量が10μC/gより小さくなると、磁気ブラシからトナーが離脱し周辺に散乱するおそれがあり、逆に、帯電量が20μC/gより大きくなると、現像ローラ72へのトナー薄層が形成され難くなる。
【0033】
また、キャリアは、フェライトのコアを用いて、その表面に樹脂のコーティングを施すのがよい。キャリアの粒径は30〜60μmのサイズが好ましい。キャリアの粒径が30μmより小さくなると、現像剤の流動性が悪くなり、トナーとの撹拌混合時に、均一に分散するのが困難になり、逆に、キャリアの粒径が60μmより大きくなると、現像ローラ72へのトナー薄層が形成され難くなる。
【0034】
さらに、キャリアの飽和磁化は35〜90emu/gであることが好ましい。キャリアの飽和磁化が35emu/gより小さくなると、著しくキャリア飛びが悪くなり、逆に、キャリアの飽和磁化が90emu/gより大きくなると、磁気ブラシが疎になり、均一なトナー薄層を現像ローラ72上に形成することができなくなる。
【0035】
現像ローラ72と磁気ローラ71の回転スリーブ73との近接位置Tのギャップは、0.2〜0.6mmであるのが好ましい。ギャップがこの範囲にあると、現像ローラ72上にトナー薄層を瞬時に形成することができる。ギャップが0.2mmより小さくなると、規制部材84と磁気ローラ71間を通過する磁気ブラシがギャップを通過できずにトナー薄層を乱してしまうおそれがあり、逆にギャップが0.6mmより大きくなると、トナー薄層を形成する効率が低下し、現像ゴーストが発生する。
【0036】
直流バイアスは、磁気ローラ71に300〜500Vを印加して、現像ローラ72に100Vを印加するのがよい。トナー薄層を現像ローラ72上に形成する電位差は、200〜400Vが適正で、トナーの帯電量とのバランスで調整すればよい。フィードバック制御等を用いることで、トナー薄層の層厚を一定にすることが可能である。交流バイアスについては、磁気ローラ71は、ピーク交流バイアスVp−pは0.5〜2.5kV、周波数は2〜4kHz、デューティ比は20〜40%とするのが好ましく、また、現像ローラ72は、ピーク交流バイアスVp−pは0.5〜2.0kV、周波数は2〜4kHz、デューティ比は20〜40%とするのが好ましい。ピーク交流バイアスを大きくすると、現像ローラ72上で、トナー薄層の形成がより瞬時に行われるが、リーク耐性が弱くなり、ノイズ発生の原因になる。ノイズの発生については、磁気ローラ71や現像ローラ72の表面にアルマイト処理を施し、絶縁性を高めると、マージンが広がるので好ましい。周波数については、トナーの帯電量で調整すればよい。ピーク交流バイアスのデューティ比は、40%より小さくすると、トナー薄層を形成しながら、短時間に高い電位差でトナーを磁気ブラシに回収する作用をもたらし、現像ローラ72へのトナーの固着を抑制する効果がある。
【0037】
感光体31にOPC感光体を用いると、全露光で70〜120Vが得られ、感光体31にアモルファスシリコン感光体を用いると、10〜50Vの露光後電位となる。磁気ブラシは、規制部材84と磁気ローラ71間の通過量(流量)が、18〜40mg/cm2となるように調整するのがよい。通過量(流量)が、18mg/cm2より小さくなると、現像ローラ72上でトナー薄層の形成と剥ぎ取り性とが極端に悪くなり、逆に、通過量(流量)が、40mg/cm2より大きくなると、磁気ブラシが磁気ローラ71と現像ローラ72間を通過することができずに、磁気ローラ71と現像ローラ72間からあふれ出るといった不具合が生じる。
【0038】
次に、図3を用いて磁気ローラ71の詳しい構成を説明する。図3に示すように、磁気ローラ71は、前述の回転スリーブ73と磁極部材74の他に、磁極部材74を固設する支軸部材75と、回転スリーブ73の両端を支持するフランジ79、80、及びフランジ80に固設される支軸部材76とを備える。
【0039】
支軸部材75は、その一端側(図3の左側)で断面小判形状の切り欠きによって、図示しないハウジングに対して回転しないように支持される。
【0040】
回転スリーブ73の一方を固定支持するフランジ79の内周部には、軸受け77が固着され、回転スリーブ73の他方を固定支持するフランジ80の内周部には、軸受け78が固着される。各軸受け77、78を介して、フランジ79、80は支軸部材75に対して回転可能になる。またフランジ79、80の各側面部において、磁極部材74は軸方向に移動しないように規制されている。フランジ80には、支軸部材76が支軸部材75と同軸に設けられている。支軸部材76は、図示しないハウジングに回転可能に支持され、図示しないモータ、ギヤ等の駆動源よって回転する。支軸部材76の回転により、回転スリーブ73はフランジ80を介して回転することになる。
【0041】
回転スリーブ73の外周面には、回転スリーブ73の軸方向に沿って延びる複数の溝73aが全周面に亘って等間隔に形成されている。溝73aの形状は、図4に示すように、断面三角形状である。つまり、溝73aは、周方向の幅Aが深さBより大きい2等辺三角形状である。具体的には、幅Aは0.2mm、深さBは0.1mmであり、溝73aは回転スリーブ73の外周面に80本設けられている。複数の溝73a間には円周状平坦面が設けられている。
【0042】
回転スリーブ73外周面に複数の溝73aを設けることにより、現像剤が複数の溝73aに入り込み、回転スリーブ73による現像剤の搬送量を確保することができ、また複数の溝73aと円周状平坦面に形成される磁気ブラシの回転スリーブ73への保持力を強化することができる。この複数の溝73aと円周状平坦面にブラスト加工を施すと、磁気ブラシの保持力等の搬送性が一層向上する。
【0043】
ここで、磁極部材74の軸方向長さMが現像ローラ72の軸方向長さNと同等以上の長さ(M≧N)で構成され、また複数の溝73aの軸方向長さLが磁極部材74の軸方向長さMより長く(L>M)構成される。
【0044】
M≧Nの関係で構成することにより、現像ローラ72の軸方向の端部で磁極部材74の磁力が小さくなるおそれがなく、現像ローラ72端部に対して、磁気ブラシの回転スリーブ73上の保持力が弱くなるおそれがない。従って、現像剤が回転スリーブ73の中央部から端部までを安定して搬送され、回転スリーブ73上に保持された磁気ブラシが現像ローラ72に接触すると、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーが現像ローラ72端部においても供給される。また、現像が行われた後、現像ローラ72端部に残留するトナーは、回転スリーブ73に保持された磁気ブラシに当接すると、磁気ブラシによる機械的な力によって掻き取られ、磁気ローラ71側に回収される。
【0045】
また、L>Mの関係で構成することにより、現像ローラ72端部に対しても、複数の溝73aによって、磁気ブラシの回転スリーブ73上の保持力が強化される。従って、現像剤が回転スリーブ73の中央部から端部までを安定して搬送され、回転スリーブ73上に保持された磁気ブラシが現像ローラ72に接触すると、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーが現像ローラ72端部においても十分に供給される。また、現像が行われた後、現像ローラ72端部に残留するトナーは、回転スリーブ73に保持された磁気ブラシに当接すると、磁気ブラシによる機械的な力によって掻き取られ、磁気ローラ71側に回収される。
【0046】
複数の溝73aは磁極部材74に対して軸方向の両側に均等な長さに延びて形成され、複数の溝73aの軸方向長さLは、磁極部材74の軸方向長さMより1〜10mm長くするのが好ましい。複数の溝73aの軸方向長さLが、磁極部材74の軸方向長さMに対して1mmより短くなると、現像ローラ72端部の残留トナーを磁気ブラシにより十分に剥ぎ取れないおそれがある。複数の溝73aの軸方向長さLが、磁極部材74の軸方向長Mに対して10mmより長くなると、現像ローラ72に接触しない磁気ブラシから供給されるトナーが飛散するおそれがあり、また装置が大型化する。
【0047】
複数の溝73aの軸方向長さLは、磁極部材74の軸方向長さMより2〜6mm長くすると、一層好ましい。
【0048】
上記第1実施形態によれば、現像装置34は、磁性キャリアとトナーからなる現像剤を担持する回転スリーブ73を有しこの回転スリーブ73の内側に磁極部材74を支持し、現像剤を磁気ブラシとして搬送する磁気ローラ71と、この回転スリーブ73上の現像剤量を規制する規制部材84と、潜像を形成した感光体31に対向して配置される現像ローラ72とを備える。また、現像装置34は、回転スリーブ73に保持される磁気ブラシを現像ローラ72に接触させるとともに磁気ローラ71にバイアス電圧を印加することにより、磁気ブラシを形成する現像剤中のトナーを現像ローラ72に供給し、該トナーによって感光体31上の潜像を現像する。回転スリーブ73外周面には、回転スリーブ73の軸方向に沿って延びる複数の溝73aが形成され、この複数の溝73aの軸方向長さをL、磁極部材74の軸方向長さをM、現像ローラ72の軸方向長さをNで表すとき、
L>M≧N
である。
【0049】
この構成によると、M≧Nの関係で構成することにより、現像ローラ72端部で磁極部材74の磁力が小さくなるおそれがなく、現像ローラ72端部においても、磁気ブラシの回転スリーブ73上の保持力が弱くなるおそれがない。さらに、磁気ブラシが複数の溝73aに入り込んだ状態で回転スリーブ73外周面に形成されると、磁気ブラシの保持力が強化されるが、L>Mの関係で構成することにより、現像ローラ72端部においても、磁気ブラシの回転スリーブ73上の保持力も強化される。従って、現像が行われた後、現像ローラ72端部に残留するトナーは、回転スリーブ73に保持された磁気ブラシによる機械的な力によって掻き取られ、現像ローラ72端部まで現像履歴が残存しないようになり、良好な画像を得られる。
【0050】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る現像装置のシール部材を示す図である。第1実施形態と異なる、シール部材について説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。尚、図5(a)はシール部材を備えた現像装置の要部を示す平面図であり、図5(b)はシール部材を備えた現像装置の要部を示す側面図である。
【0051】
図5(a)に示すように、磁気ローラ71と、現像ローラ72及び感光体31は第1実施形態と略同じ構成を備える。
【0052】
現像ローラ72の近傍には一対のシール部材91が取り付けられている。シール部材91は、スポンジ状のゴムを図5(b)に示すように円板状に形成され、磁気ローラ71の外周面に弾性的に当接し、また感光体31の表面に弾性的に当接している。これにより、シール部材91は、現像ローラ72端部の周辺から装置外にトナーが飛散することを抑えている。
【0053】
一対のシール部材91間の軸方向長さSは、磁気ローラ71に設けた複数の溝73aの軸方向長さLより長く(S>L)構成される。
【0054】
S>Lの関係で構成することにより、磁気ローラ71に印加されるバイアス電圧より、現像ローラ72に接触しない磁気ローラ71上の磁気ブラシから供給されるトナーが現像ローラ72端部の近傍で散乱するが、一対のシート部材91によって装置外に飛散するのを抑えることができる。また、S>Lの関係で構成することにより、現像ローラ72の回転により発生する空気流や現像装置内を冷却するファンによる空気流によって、散乱するトナーを装置外に飛散するのを抑えることができる。さらに、S>Lの関係で構成することにより、シール部材91が複数の溝73aに当接することがなく、磁気ローラ71の端部のシール性を損なうことがなく、またシール部材91の耐久性が向上する。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施形態をさらに具体化した実施例1〜3と、比較例4〜6を表1に示す。尚、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【表1】

【0056】
実施例1〜3及び比較例1〜3に用いる磁気ローラ71は、外径が20mmであり、溝73aの幅Aが0.2mm、深さBが0.1mmの三角形状で、溝73aの本数が80本であり、各溝73aの軸方向長さL、及び各磁極部材74の軸方向長さMは、表1に示す長さに設定した。実施例1〜3及び比較例4〜6に用いた現像ローラ72は、外径が16mmであり、各現像ローラ72の軸方向長さNは、表1に示す長さに設定した。
【0057】
現像剤は装置内に250g収容した。キャリアは平均粒径35μmで、飽和磁化50emu/gのフェライトキャリアを用いた。現像ローラ72への近接位置Tでの磁気ローラ71の磁力は、軸方向の平均で75mTに設定した。このとき現像ローラ72端部での磁力は75mTになるよう調整した。尚、磁力はテスラメータHGM8300L(日本電磁測器社製)を用いて、プローブを測定対象物表面に接触させて測定した。トナーは平均粒径6.5μmの非磁性トナーを用いた。
【0058】
次に、以上のように構成された実施例1〜3及び比較例1〜3について、画像濃度と、トナー付着(現像後の現像ローラ上のトナー残留)及びキャリア重量変化(現像後の現像装置に回収されないキャリア重量)を評価した。評価結果を表2に示す。
【表2】

【0059】
尚、画像形成には、カラー複合機KM−C3232(京セラミタ製)の現像装置を使用した。評価方法および評価基準は以下に示すとおりである。
【0060】
(a)画像濃度
感光体を露光してソリッド画像(100%印字画像)を形成して、現像ローラ72の端部における画像濃度を測定した。画像濃度は、ポータブル反射濃度計RD−19(グレタグマクベス社製)を使用して測定し、1枚の形成画像につき6箇所、つまりA3サイズの用紙の搬送方向に平行な両端部に沿って均等間隔に上流端、中央、下流端3点の合計6点で測定した値の平均値を、画像濃度の測定値とした。評価基準として、画像濃度が1.2以上であれば、良(表2では○)とした。
(b)トナー付着の有無
印字率5%の原稿を印刷後に0〜−200Vのバイアスを現像ローラ72と磁気ローラ71間に印加して、画像形成動作が停止した後、現像ローラ72表面に残留するトナーの有無を目視により評価した。評価基準は次のとおりである。表2の○は、トナー付着が確認できない、×は完全にトナーが付着している。
(c)キャリア重量変化
印字率5%の原稿を5万枚印刷した後、現像装置内のキャリア重量の減少量を測定した。つまり現像後の現像装置に回収されないキャリア重量を測定した。尚、キャリア重量の減少量は以下の手順で測定した。
(1)あらかじめ、トナーとキャリアからなる現像剤の入っていない現像装置の重量を測定して、5万枚印刷後の現像剤の入った現像装置の重量を測定し、現像装置に残っている現像剤の重量を測定する。
(2)印刷後の現像装置内の現像剤から約10g測定して取り出し、この現像剤を625メッシュ(目開き20μmオープン)の篩に載せてトナーを吸引し、篩上に残ったキャリアの重量を測定する。篩を吸引する前の現像剤重量と篩上に残ったキャリア重量との割合によって、トナー濃度を算出する。
(3)(1)の印刷後の現像装置に残っている現像剤の重量と、(2)で算出したトナー濃度より、印刷後の現像装置内に残るキャリアの重量を算出する。
(4)印刷前に現像装置に収容した現像剤中のキャリア重量をトナー濃度より算出する。この印刷前のキャリア重量と、上記(3)の印刷後のキャリア重量との差から印刷後のキャリアの減少量を算出し、このキャリア減少量を現像装置に回収されないキャリア重量とする。
【0061】
結果は、表2に示すように、比較例1〜3は画像濃度が低下していた。またトナー付着について、比較例1は現像ローラ72端部へのトナー5の付着が観察された。これは、現像ローラ72の軸方向長さNに対して、磁極部材74の軸方向長さMが短く、複数の溝73aの軸方向長さLが同等であることによる。またキャリアの減少について、比較例1〜3は、5万枚の印刷後において、現像装置からのキャリアの減少量が大きく、特に比較例2、3では、現像装置に回収されないキャリアが、感光体31に飛散し、用紙搬送ベルト38、定着部40のローラを汚染し、また用紙の端部にキャリアが見受けられて、印字の汚れが発生していた。さらに比較例2では、シール部材91間の軸方向長さSが複数の溝73aの軸方向長さLと同等であり、5万枚の印刷ではシール部材91が破損した。
【0062】
実施例1〜3は、画像濃度の低下はなく、またキャリアの減少が僅かであり、現像装置に殆ど回収され、キャリアの飛散がなく、良好な画像形成が行われた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、トナーをトナー担持体から現像剤担持体へ回収可能である現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に用いる現像装置の概略構成図である。
【図3】は、本発明の第1実施形態に係る現像装置の現像ローラと一部断面した磁気ローラとを示す平面図である。
【図4】は、本発明の第1実施形態に係る現像装置の回転スリーブの要部を示す断面図である。
【図5】は、本発明の第2実施形態に係る現像装置のシール部材を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
31a〜31d 感光体(像担持体)
34a〜34d 現像装置
71 磁気ローラ(現像剤担持体)
72 現像ローラ(トナー担持体)
73 回転スリーブ
73a 溝
74 磁極部材
75、76 支軸部材
77、78 軸受け
79、80 フランジ
82 パドルミキサー
83 撹拌スクリュー
84 規制部材
87a、88a 直流電源
87b、88b 交流電源
91 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性キャリアとトナーからなる現像剤を担持する回転スリーブを有し前記回転スリーブの内側に磁極部材を支持し、前記現像剤を磁気ブラシとして搬送する現像剤担持体と、前記回転スリーブ上の現像剤量を規制する規制部材と、潜像を形成した像担持体に対向して配置されるトナー担持体とを備え、
前記回転スリーブに保持される前記磁気ブラシを前記トナー担持体に接触させるとともに前記現像剤担持体にバイアス電圧を印加することにより、トナーを前記トナー担持体に供給し、前記トナーによって前記像担持体上の潜像を現像する現像装置において、
前記回転スリーブ外周面には、前記回転スリーブの軸方向に沿って延びる複数の溝が形成され、前記複数の溝の軸方向長さをL、前記磁極部材の軸方向長さをM、前記トナー担持体の軸方向長さをNで表すとき、
L>M≧N
であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー担持体の軸方向の両端部には、前記回転スリーブ外周面に当接するシール部材が設けられ、前記シール部材間の軸方向長さをSで表すとき、
S>L
であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の現像装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−128191(P2010−128191A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302805(P2008−302805)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】