説明

現在位置出力装置、現在位置出力方法及び現在位置出力プログラム

【課題】階層化したエリアにおいても、利用者の所在を、より正確に特定することができる現在位置出力装置、現在位置出力方法及び現在位置出力プログラムを提供する。
【解決手段】制御部11は、定期的に、基地局に対して基準気圧情報取得要求を実行し、この基地局から、基地局の気圧及び標高を含む基準気圧情報を取得して、データ記憶部15に記憶する。制御部11は、定期的に、圧力センサ16から取得した気圧の測定値と、基準気圧情報を含めた標高算出式とを用いて、現在位置の標高を算出して、データ記憶部15に記録する。非常ボタンが押下された場合、制御部11は、このとき算出してデータ記憶部15に記憶した現在標高又は既にデータ記憶部15に記録されている標高を含む緊急通知を緊急連絡先に対して行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の現在位置の高さに関する情報を出力する現在位置出力装置、現在位置出力方法及び現在位置出力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の普及に伴って、携帯電話端末からの緊急通報が増加している。そこで、近年、GPS機能を搭載した「緊急通知位置通知」対応の携帯電話端末では、GPS測位による位置情報を警察や消防に提供することができる。また、GPS機能を搭載しない携帯電話端末では、基地局の場所や電波到達範囲などから算出される位置情報が提供される。
【0003】
一方、現在の標高を特定するために、高度を測定する機能を備えた携帯電話端末が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の携帯電話端末では、GPSにより確定された位置情報と、地図情報記憶手段に記憶されている地図情報とから、位置情報が示す位置の高度を算出する。この算出した位置の高度と、気圧測定手段により測定された気圧とを用いて、携帯電話端末は、気圧を高度に変換する換算テーブルを補正する。携帯電話端末は、補正した換算テーブルを用いて、測定した気圧を高度に変換して、この高度を表示する。このため、天候によらずに、より正確な高度を測定できる。
【特許文献1】特開2006−145340号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、平面的な地図情報からだけでは、高さ方向を含めた利用者の現在位置を一意に特定できない。例えば、利用者が高層ビル内にいる場合、GPS機能により、高層ビルにいることは把握できても、高層ビルのどの階にいるかを把握することは難しい。このような高層ビルの中にいる利用者が緊急通知を行なった場合、利用者の所在を特定できない。また、自動車を運転する場合、カーナビゲーション装置を利用することが多くなってきている。しかし、階層化された道路(例えば、高速道路及びその側道)を走行している場合には、いずれの道路を走行しているかを、平面的な地図情報だけでは判断が困難である。上述した文献の技術においては、階層化された建造物における所在の特定は考慮されていない。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされ、その目的は、階層化したエリアにおいても、利用者の所在を、より正確に特定することができる現在位置出力装置、現在位置出力方法及び現在位置出力プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明は、気圧を測定するための圧力センサと、この圧力センサを用いて測定した気圧を記憶する気圧データ記憶手段と、制御手段とを備えた現在位置出力装置であって、前記制御手段が、階層化したエリアへの進入を検知する検知手段と、前記階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を取得して前記気圧データ記憶手段に記録する基準気圧記録手段と、前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧とを比較し、この比較した結果に応じて、前記気圧を測定した現在位置の高さを特定する高さ特定手段と、特定した現在位置の高さに関する情報を出力する出力手段とを備えたことを要旨とする。気圧は、高さに応じて変化するが、天候によっても変化する。このため、階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を用いて現在位置の高さを特定することにより、階層化したエリアにおいても、より正確に現在位置の高さを特定することができる。
【0007】
本発明は、基地局と通信を行なう無線通信部を備えており、前記基準気圧記録手段は、前記無線通信部が通信を行なう基地局から前記基準高さ及び前記基準気圧に関する情報を定期的に取得し、前記高さ特定手段は、前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧との圧力差及び前記基準高さから、現在位置の高さを算出することを要旨とする。このため、基地局から基準高さ及び基準気圧を定期的に取得するので、気圧を測定する平面的な位置に応じた基準高さ及び基準気圧を効率よく取得することができる。
【0008】
本発明は、前記制御手段は、屋外から屋内に入ったことを検出するための屋内検出条件を記憶しており、前記検知手段は、前記気圧データ記憶手段に記録された圧力が前記屋内検出条件を満たすことを検出することにより、前記階層化したエリアへの進入を検知し、前記制御手段は、前記階層化したエリアへの進入を検知した場合には、検出の前後の気圧差を用いて前記基準気圧の補正を行なう補正手段を更に備えたことを要旨とする。屋内の場合には、屋外に比べて気圧が高くなることがある。検出条件を用いて、屋内に入ったときを検出して、標高によらない気圧上昇を考慮した補正を行なうので、屋内においても、従来よりも正確に現在位置の高さを特定することができる。
【0009】
本発明は、前記制御手段は、一度に表示される所定範囲の利用者の進路方向の地図情報を取得する地図情報取得手段を更に備え、前記検知手段は、前記地図情報において階層化したエリアがあることを検出し、前記基準気圧記録手段は、階層化したエリアを検出したときに測定された気圧を基準気圧とし、このときの高さを基準高さとして取得し、前記高さ特定手段は、前記階層化したエリアに進入した後に測定した気圧と前記基準気圧とが同じ場合には、前記階層化したエリアに進入する前の高さと同じ高さを現在位置の高さとして特定し、前記階層化したエリアに進入した後に測定した気圧と前記基準気圧とが異なる場合には、これらの気圧の大小関係に応じて、前記階層化したエリアに入る前の高さより低い位置又は高い位置を現在位置の高さとして特定し、前記出力手段は、前記特定した現在位置の高さに応じた利用者の現在位置と、前記地図情報取得手段が取得した地図情報とを含むナビゲーション情報を出力することを要旨とする。このため、天候による気圧変化の距離に比べて、階層化したエリアを予定進路上に検出してから進入するまでの距離は長くない。従って、階層化したエリアに進入した後に測定された気圧は、基準気圧に対して天候による気圧変化の影響をほとんど受けないので、階層化したエリアにおいても、利用者の現在位置の高さを、より正確に特定して、より正確なナビゲーションを行なうことができる。
【0010】
上記問題点を解決するために、本発明は、気圧を測定するための圧力センサと、この圧力センサを用いて測定した気圧を記憶する気圧データ記憶手段と、制御手段とを備えた現在位置出力装置における方法であって、前記制御手段が、階層化したエリアへの進入を検知する検知段階と、前記階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を取得して前記気圧データ記憶手段に記録する基準気圧記録段階と、前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧とを比較し、この比較した結果に応じて、前記気圧を測定した現在位置の高さを特定する高さ特定段階と、特定した現在位置の高さに関する情報を出力する出力段階とを実行することを要旨とする。気圧は、高さに応じて変化するが、天候によっても変化する。このため、階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を用いて現在位置の高さを特定することにより、階層化したエリアにおいても、より正確に現在位置の高さを特定することができる。
【0011】
上記問題点を解決するために、本発明は、気圧を測定するための圧力センサと、この圧力センサを用いて測定した気圧を記憶する気圧データ記憶手段と、制御手段とを備えた現在位置出力装置におけるプログラムであって、前記制御手段を、階層化したエリアへの進入を検知する検知手段、前記階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を取得して
前記気圧データ記憶手段に記録する基準気圧記録手段、前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧とを比較し、この比較した結果に応じて、前記気圧を測定した現在位置の高さを特定する高さ特定手段、及び特定した現在位置の高さに関する情報を出力する出力手段として機能させることを要旨とする。気圧は、高さに応じて変化するが、天候によっても変化する。このため、階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を用いて現在位置の高さを特定することにより、階層化したエリアにおいても、より正確に現在位置の高さを特定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、階層化したエリアにおいても、利用者の現在位置の高さを、より正確に特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について図1〜図7を用いて説明する。本実施形態では、例えば、消防や警察に緊急連絡をする場合等に、利用者の現在位置を出力する現在位置出力装置として説明する。この場合、利用者がビル内のどの階にいるかを特定するために役立つ現在位置の標高を含む情報を通知する。
【0014】
図1に示すように、現在位置出力装置としての携帯電話端末10は、公知のように、基地局20とデータの送受信を行なう。基地局20は、ネットワークを介して消防や警察の緊急連絡先に接続されている。
【0015】
本実施形態においては、基地局20には、気圧を測定する気圧測定装置が設けられている。更に、基地局20には、基準気圧情報を記憶する基準データ記憶部21が設けられている。基準気圧情報は、気圧測定装置が設置された標高(基地局20の標高)と、基地局20において測定された気圧とが含まれる。なお、本実施形態では、この基地局20の標高が基準高さであり、基地局20において測定された気圧が基準気圧に該当する。基地局20は、定期的に、気圧測定装置で測定された気圧を取得して、基準気圧情報の気圧として基準データ記憶部21に記録して更新する。そして、基地局20は、携帯電話端末10の要求に応じて、基準データ記憶部21に記憶された基準気圧情報を定期的に携帯電話端末10に送信する。
【0016】
次に、図2を用いて、携帯電話端末10の内部構成について説明する。
携帯電話端末10は、制御部11、無線通信部12、操作部13、表示部14、気圧データ記憶手段としてのデータ記憶部15及び圧力センサ16を備えている。
【0017】
制御部11は、制御手段として機能し、図示しないCPU、RAM及びROM等を有し、後述する処理(検知段階、基準気圧記録段階、高さ特定段階及び出力段階等を含む処理)を行なう。制御部11は、通信制御手段111、IF制御手段112、緊急連絡手段113、位置情報取得手段114、高度算出手段115、屋内外特定手段116及びタイマ117として機能する。
【0018】
通信制御手段111は、基地局20とデータの送受信を行なうために、無線通信部12の制御を行なう。
IF制御手段112は、操作部13及び表示部14等のインターフェースに対する制御を行なう。具体的には、IF制御手段112は、操作部13を介して取得した指示データに応じて、通信制御手段111及び緊急連絡手段113を制御する。また、IF制御手段112は、表示画面データを生成して、表示部14に表示画面を表示する。
【0019】
緊急連絡手段113は、基準気圧記録手段及び出力手段として機能し、IF制御手段112からの指示に応じて緊急連絡を行なう処理を実行する。
位置情報取得手段114は、GPS信号受信部を備えており、受信したGPS信号から携帯電話端末10の位置を特定し、平面的な位置情報としてデータ記憶部15に記録する。
【0020】
高度算出手段115は、基準気圧記録手段及び高さ特定手段として機能し、現在位置の標高を算出する標高算出処理を実行する。具体的には、高度算出手段115は、データ記憶部15に記録された標高算出関数としての標高算出式を用いて、現在位置の標高を算出してデータ記憶部15に記憶する。また、高度算出手段115は、後述する標高算出式更新処理において、定期的に基準気圧情報を取得して、標高算出式の更新を行なう。更に、高度算出手段115は、階層移動検出パターンを記憶している。この階層移動検出パターンは、一定時間以上、なだらかな圧力上昇又は圧力降下が連続するパターンである。高度算出手段115は、データ記憶部15に記憶された所定期間における気圧測定値の変動が、この階層移動検出パターンと一致する場合には、1階分のフロアを移動したと特定する。そして、高度算出手段115は、圧力下降の階層移動検出パターンを検出する度に、データ記憶部15から後述する移動階数データを取得し、これに対して「1」を加算して、この更新された移動階数データをデータ記憶部15に記録する。また、高度算出手段115は、圧力上昇の階層移動検出パターンを検出する度に、データ記憶部15から移動階数データを取得し、これに対して「1」を減算して、この更新された階層移動検出データをデータ記憶部15に記録する。例えば、図7に示すように、エスカレータで利用者が5階まで移動する場合、1階から2階、2階から3階、3階から4階、4階から5階のそれぞれの移動において、高度算出手段115が圧力下降の階層移動検出パターンを検出する。このため、利用者がエスカレータで5階まで上昇した場合には、データ記憶部15の移動階数データとして、合計された「5」(=5階分)が記録される。
【0021】
屋内外特定手段116は、検知手段及び補正手段として機能し、屋内に入ったこと又は屋外に出たことを検出し、それに応じて屋内補正値に対して処理を実行する。通常、屋内に入ったときには、急激に気圧が変動して、気圧が高くなる。そこで、屋内外特定手段116は、屋内外の移動を検出するための屋内外気圧変化しきい値に関するデータを屋内検出条件として記録している。そして、屋内外特定手段116は、圧力センサ16から取得した気圧の微分値が屋内外気圧変化しきい値以上の場合には、屋内に入ったこと又は屋外に出たことを検出する。更に、屋内外特定手段116は、屋内に入ったことを検出した場合には、このときの屋外との気圧差を算出して、標高算出式に含まれる屋内補正値としてデータ記憶部15に記憶する。また、屋内外特定手段116は、屋外に出たことを検出した場合には、記憶していた屋内補正値を「0」にリセットする。
タイマ117は、時間情報を高度算出手段115に提供する。
【0022】
一方、操作部13は、制御部11に対して利用者からの指示を受け付ける。本実施形態では、この操作部13は、非常ボタンを含む各種操作ボタンである。制御部11のIF制御手段112は、この操作部13における各種操作ボタンの押下から利用者の指示データを特定する。
【0023】
表示部14は、利用者が操作指示やデータ入力等を行なうための表示画面を表示する。本実施形態では、この表示部14は、ディスプレイである。制御部11のIF制御手段112は、この表示部14に表示画面を表示する。
【0024】
データ記憶部15は、各種データを記憶する。本実施形態では、緊急連絡先、現在位置、屋内外フラグ、気圧測定値及び標高算出式に関するデータが記憶される。
緊急連絡先データ領域には、緊急連絡先(警察や消防のアドレス情報)に関するデータ
が記録されている。
【0025】
現在位置データ領域には、携帯電話端末10の現在位置を特定するためのデータが記録される。この現在位置には、平面的な位置情報(平面位置)と、標高の位置情報(現在位置の標高)と、フロア情報(移動階数)とが含まれている。このため、現在位置データ領域にはそれぞれのデータ領域が設けられている。平面位置データ領域には、位置情報取得手段114においてGPS信号から算出された平面的な位置を特定するためのデータが記録される。現在位置の標高データ領域には、高度算出手段115が算出した標高に関するデータが記録される。更に、移動階数データ領域には、階層移動検出パターンの検出に応じた移動階数に関するデータが記録される。
【0026】
屋内外フラグデータ領域には、携帯電話端末10の現在位置が屋内又は屋外のいずれであるかを特定するためのフラグが記録される。この屋内外フラグデータ領域に屋内フラグデータが記録された場合には、利用者は屋内にいることを示す。また、この屋内外フラグデータ領域に屋外フラグデータが記録された場合には、利用者は屋外にいることを示す。
【0027】
気圧測定値データ領域には、圧力センサ16が測定した気圧の測定値が記録される。本実施形態では、この気圧測定値は、制御部11が圧力センサ16から取得した時刻に関連付けて気圧測定値データ領域に記録される。
【0028】
標高算出式データ領域には、携帯電話端末10の現在位置の標高を算出する式に関するデータが記憶される。本実施形態では、この標高算出式として、次式を用いる。
現在位置の標高={基準気圧−(測定気圧−屋内補正値)}×100/12+基準標高
この標高算出式において、基準気圧とは、本実施形態では基地局20において測定された気圧(基準気圧情報の気圧)である。また、測定気圧とは、圧力センサ16で測定した気圧である。屋内補正値とは、屋内と屋外との気圧差である。図6に示すように、屋内の気圧P1は、屋外の気圧P2よりが高くなるので、屋内外の気圧差ΔPを屋内補正値として用いる。なお、利用者が屋外にいる場合には、この屋内補正値を「0」とした標高算出式を用いる。基準標高とは、基地局20の標高である。
【0029】
圧力センサ16は、携帯電話端末10における気圧を測定し、この測定した気圧に関するデータを制御部11に供給する。
次に、以上の構成を有する携帯電話端末10を用いて、利用者の現在位置を通知する処理について説明する。ここでは、標高算出処理、屋内外処理、標高算出式更新処理、緊急通知処理の順番に説明する。
【0030】
(標高算出処理)
まず、標高算出処理について説明する。
制御部11は、定期的に、測定された気圧の取得処理を実行する。具体的には、制御部11の高度算出手段115は、圧力センサ16の気圧測定値を定期的に取得し、データ記憶部15の気圧測定値データ領域に記録する。
【0031】
次に、制御部11は、現在位置の高さ算出処理を実行する。具体的には、制御部11の高度算出手段115は、圧力センサ16から取得した気圧測定値を、測定気圧として標高算出式に代入して、現在位置の標高を算出する。そして、高度算出手段115は、現在位置情報の現在位置の標高としてデータ記憶部15に記録する。
【0032】
更に、高度算出手段115は、データ記憶部15の気圧測定値データ領域に記憶された気圧測定値の変化が、階層移動検出パターンを含むか否かを判断する。この場合、階層移動検出パターンを含んでいる場合には、高度算出手段115は、データ記憶部15の移動
階数データ領域から移動階数データを取得し、検出した階層移動検出パターンに応じた演算を行なって新たな移動階数を算出して、データ記憶部15の移動階数データ領域に記録する。そして、階層移動検出パターンを検出しない場合又は移動階数を記録した場合には、標高算出処理を終了する。
【0033】
(屋内外特定処理)
次に、屋内外特定処理について、図3を用いて説明する。
この処理において、制御部11が圧力センサ16から新たな気圧測定値を取得した場合、まず、気圧微分値の算出処理を実行する(ステップS101)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、新たに取得した気圧測定値(変化後気圧測定値)と、この直前にデータ記憶部15に記憶された気圧測定値(変化前気圧測定値)との差分から気圧微分値を算出する。
【0034】
次に、制御部11は、直近の所定時間における気圧微分値が屋内外気圧変化しきい値以上の変動があるか否かを判断する(ステップS102)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、ステップS101で算出した気圧微分値と、屋内外特定手段116に記憶している屋内外気圧変化しきい値とを比較する。ここで、気圧微分値が屋内外気圧変化しきい値より小さい場合(ステップS102において「NO」の場合)には、屋内外特定処理を終了する。
【0035】
一方、気圧微分値が屋内外気圧変化しきい値以上の場合(ステップS102において「YES」の場合)には、制御部11は、気圧が上昇しているか否かを判断する(ステップS103)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、変化後気圧測定値と変化前気圧測定値とを比較し、変化後気圧測定値が大きいか否かを判断する。
【0036】
ここで、気圧が上昇している場合(ステップS103において「YES」の場合)には、制御部11は、変化前が屋外であったか否かを判断する(ステップS104)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、屋内外フラグデータ領域に屋外フラグが記録されている場合には、変化前は屋外と判断する。
【0037】
ここで、変化前が屋外と判断された場合(ステップS104において「YES」の場合)には、制御部11は、屋内フラグの記録処理を実行する(ステップS105)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、データ記憶部15の屋内外フラグデータ領域に屋内フラグを記録する。
【0038】
次に、制御部11は、屋内補正値の記録処理を実行する(ステップS106)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、変化後気圧測定値から変化前気圧測定値を減算した屋内補正値を算出し、標高算出式の屋内補正値としてデータ記憶部15に記録する。そして、屋内補正値の記録処理(ステップS106)が終了すると、又は変化前が屋内であった場合(ステップS104において「NO」の場合)、には、制御部11は、屋内外特定処理を終了する。
【0039】
一方、気圧微分値が屋内外気圧変化しきい値以上で気圧が下降した場合(ステップS103において「NO」の場合)には、制御部11は、変化前が屋内であったか否かを判断する(ステップS107)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、屋内外フラグデータ領域に屋内フラグが記録されている場合には、変化前は屋内と判断する。
【0040】
ここで、変化前が屋内と判断された場合(ステップS107において「YES」の場合)には、制御部11は、屋外フラグの記録処理を実行する(ステップS108)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、データ記憶部15の屋内外フラグデータ領
域に屋外フラグを記録する。
【0041】
次に、制御部11は、屋内補正値のリセット処理を実行する(ステップS109)。具体的には、制御部11の屋内外特定手段116は、データ記憶部15に記録された標高算出式の屋内補正値として「0」に記録する。更に、この場合、制御部11は、データ記憶部15の移動階数データ領域に記録された移動階数も「0」に補正する。
【0042】
そして、屋内補正値のリセット処理(ステップS109)が終了すると、又は変化前が屋外の場合(ステップS107において「NO」の場合)には、制御部11は、屋内外特定処理を終了する。
【0043】
(標高算出式更新処理)
次に、標高算出式更新処理について、図4を用いて説明する。
先の基準気圧情報を取得した時刻からの経過時間が基準気圧情報取得間隔を経過すると(ステップS201において「YES」)、制御部11は、基準気圧情報取得要求を実行する(ステップS202)。具体的には、制御部11の高度算出手段115は、タイマ117を用いて、先の基準気圧情報を取得した時刻からの時間経過情報を取得し、基準気圧情報取得間隔に達した場合、通信制御手段111に対して、基地局20から基準気圧情報を取得する指示を供給する。通信制御手段111は、無線通信部12を介して、携帯電話端末10の所在位置をカバーしている基地局20に対して、基準気圧情報要求を送信する。この基準気圧情報要求を受信した基地局20は、基準気圧情報を携帯電話端末10に提供する。
【0044】
ここで、基準気圧情報を取得できなかった場合(ステップS203において「NO」の場合)には、制御部11は、次の基準気圧情報取得間隔が経過するまで待機する。なお、本実施形態において、制御部11は、携帯電話端末10が基地局20の圏外に位置している等、通常の通信に要する時間以上待機しても、基地局20からデータを受信しなかった場合には、基準気圧情報を取得できなかったと判断する。
【0045】
一方、基準気圧情報を取得した場合(ステップS203において「YES」の場合)には、制御部11は、標高算出式の更新処理を実行する(ステップS204)。具体的には、制御部11の高度算出手段115は、無線通信部12及び通信制御手段111を介して、基地局20から基準気圧情報を取得する。更に、高度算出手段115は、取得した基準気圧情報の基準気圧及び基準標高のそれぞれの値を、標高算出式の基準気圧及び基準標高としてデータ記憶部15に記録する。そして、制御部11は、次の基準気圧情報取得間隔が経過するまで待機する。
【0046】
(緊急通知処理)
次に、警察又は消防に緊急通知を行なうための緊急通知処理について、図5を用いて説明する。
【0047】
緊急通知を行なうために、非常ボタンが押された場合、携帯電話端末10の制御部11は、非常ボタンの押下の検知処理を実行する(ステップS301)。具体的には、制御部11のIF制御手段112は、操作部13から非常ボタンが押下された信号を取得すると、緊急連絡手段113に緊急連絡処理を実行する指示を供給する。
【0048】
制御部11は、基準気圧情報取得要求処理を実行する(ステップS302)。具体的には、制御部11の緊急連絡手段113は、緊急連絡処理の実行指示を取得すると、通信制御手段111に対して、基地局20から基準気圧情報を取得する指示を供給する。通信制御手段111は、無線通信部12を介して、データの送受信をしている基地局20に対し
て、基準気圧情報要求を送信する。この要求を受信した基地局20は、基準データ記憶部21に記憶している基準気圧情報を携帯電話端末10に送信する。
【0049】
ここで、基準気圧情報を取得できた場合(ステップS303において「YES」の場合)、制御部11は、現在標高の算出処理を実行する(ステップS304)。具体的には、制御部11の緊急連絡手段113は、無線通信部12及び通信制御手段111を介して、基地局20から基準気圧情報を取得する。更に、緊急連絡手段113は、取得した基準気圧情報の基準気圧及び基準標高のそれぞれの値を、標高算出式の基準気圧及び基準標高としてデータ記憶部15に記録する。そして、緊急連絡手段113は、高度算出手段115に、上述した標高算出処理を実行させる指示を供給する。具体的には、高度算出手段115は、圧力センサ16の気圧測定値を取得し、この気圧測定値を用いて現在位置の標高を算出し、この現在位置の標高をデータ記憶部15に記録する。そして、緊急連絡手段113は、データ記憶部15に記録された現在位置データを取得する。この場合、現在位置データには、平面位置と現在位置の標高とが含まれる。なお、データ記憶部15に移動階数が「0」でない場合には、この現在位置データには移動階数に関するデータも含まれる。
【0050】
一方、基準気圧情報を取得できなかった場合(ステップS303において「NO」の場合)、制御部11は、データ記憶部15に記録された標高の取得処理を実行する(ステップS305)。具体的には、制御部11の緊急連絡手段113は、通常の通信に要する時間以上待機しても、基地局20からデータを受信しなかった場合には、緊急連絡手段113は、データ記憶部15に記録された現在位置データを取得する。
【0051】
そして、制御部11は、緊急連絡先への通知処理を実行する(ステップS306)。具体的には、制御部11の緊急連絡手段113は、緊急連絡先データをデータ記憶部15から取得する。更に、緊急連絡手段113は、データ記憶部15に記憶された現在位置情報を取得し、これを含めた緊急通知を生成する。そして、この緊急通知を、基地局20を介して緊急連絡先に送信する。この現在位置情報には、ステップS304において算出した現在標高、又はステップS305において取得した標高に関するデータを含む現在標高と、GPS信号から特定した平面的な位置情報と、データ記憶部15に移動階数に関する情報が記録されている場合にはこの移動階数に関する情報とが含まれる。以上により、緊急通知処理が完了する。
【0052】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、制御部11は、先の基準気圧情報を取得した時刻からの経過時間が基準気圧情報取得間隔を経過すると、基準気圧情報取得要求を実行する(ステップS202)。制御部11は、データの送受信を行なう基地局20から基準気圧情報を取得して(ステップS203において「YES」の場合)、この基準気圧情報をデータ記憶部15に記憶する標高算出式の更新処理を実行する(ステップS204)。一方で、制御部11は、定期的に、測定された気圧の取得処理を実行し、現在位置の高さ算出処理を実行する。この場合、制御部11は、圧力センサ16から取得した気圧測定値を、測定気圧として標高算出式に代入して現在位置の標高を算出して、データ記憶部15に記録する。非常ボタンが押下された場合には、制御部11は、緊急連絡先への通知処理を実行する(ステップS306)。この場合、制御部11は、データ記憶部15に記録された現在位置データを取得し、この現在位置データに含まれる平面位置と現在位置の標高と(場合によっては移動階数と)を基地局20を介して緊急連絡先に送信する。気圧は、標高に応じて変化するが、地域の天候によっても変化する。本実施形態では、携帯電話端末10の制御部11は、データ送受信する基地局20から定期的に取得した基準気圧情報を用いて標高算出式の更新を行なう。このため、基地局20がカバーする通話範囲において、より適切な基準気圧情報で定期的に標高算出式を更新しながら、現在位置の標高を算出するので、階層化したエリアであっても、利用者の現在位置をより正確に把握することができる。よって、
緊急通知を受けた緊急連絡先は、地図情報から利用者の現在位置を一意に特定できない場合であっても、利用者の現在位置(通報場所)をより正確に把握することができる。
【0053】
・ 本実施形態では、制御部11は、データの送受信を行なう基地局20において測定された気圧及びこの基地局20の標高を含む基準気圧情報を取得して、標高算出式の更新処理を実行する(ステップS204)。天候による気圧変化が生じる距離に比べて、基地局20が携帯電話端末10とデータ送受信する範囲は狭い。このため、利用者の現在位置と、天候による気圧がほぼ同じである基地局20における標高及び気圧を基準気圧情報として用いて補正が行なえるので、より正確に利用者の現在標高を算出することができる。
【0054】
・ 本実施形態では、圧力センサ16から新たな気圧測定値を取得すると、制御部11は、気圧微分値の算出処理を実行し(ステップS101)、気圧微分値が屋内外気圧変化しきい値以上である場合(ステップS102において「YES」の場合)には、気圧が上昇したか否かを判断する(ステップS103)。気圧が上昇しており、変化前が屋外であった場合(ステップS104において「YES」の場合)には、制御部11は、屋内フラグの記録処理を実行し(ステップS105)、屋内補正値の記録処理を実行する(ステップS106)。一方、気圧が下降しており、変化前が屋内であった場合(ステップS107において「YES」の場合)には、制御部11は、屋外フラグの記録処理を実行し(ステップS108)、屋内補正値のリセット処理を実行する(ステップS109)。このため、制御部11は、ビル等の屋内に入って気圧が急激に上昇した場合、屋内補正値を記録するので、屋内に入ったために気圧が上昇した場合には、これを考慮して利用者の現在標高を算出することができ、利用者の現在位置の標高をより正確に算出することができる。
【0055】
・ 本実施形態では、緊急連絡先への通知処理(ステップS306)において、制御部11は、データ記憶部15に記憶された現在位置情報を含む緊急通知を緊急連絡先に対して行なう。この現在位置情報には、GPS信号から特定した平面的な位置情報が含まれる。このため、緊急連絡先においては、平面的な位置情報と利用者の現在標高とが把握できるので、通報場所をより効率よく把握することができる。
【0056】
・ 本実施形態では、標高算出処理の現在位置の高さ算出処理において、制御部11は、現在位置の標高を算出してデータ記憶部15に記録するとともに、階層移動検出パターンに一致している場合には、その階層移動検出パターンに対応する移動階数を特定して、データ記憶部15の現在位置データ領域に記録する。そして、緊急通知処理の緊急連絡先への通知処理(ステップS306)において、制御部11は、データ記憶部15に記憶された現在位置に関するデータを取得し、これを含む緊急通知を緊急連絡先に対して行なう。この現在位置に関するデータには、データ記憶部15に移動階数に関する情報が記録されている場合には、この移動階数データが含まれる。1階分の高さは、建物によってまちまちなので、この移動階数データを用いることにより、利用者の現在位置(現在の階数)を、より正確に特定することができる。
【0057】
・ 本実施形態では、緊急連絡処理において、制御部11は、非常ボタンの押下を検出すると、基準気圧情報取得要求処理を実行する(ステップS302)。基準気圧情報を取得できた場合(ステップS303において「YES」の場合)、制御部11は、現在の標高の算出処理を実行する。このため、利用者の現在位置を通報する場合には、基準気圧情報取得要求を行なうので、通報しようとする現在位置に対応する基準気圧情報を新たに取得して、この基準気圧情報を用いて補正することができるので、より正確に利用者の現在位置を特定することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図9及び図10を用いて説明する。本
実施形態では、利用者が乗車している車の現在位置を出力する現在位置出力装置としてのナビゲーション装置として説明する。
【0059】
図9に示すように、車に搭載されるナビゲーション装置40は、制御部41、GPS受信部42、操作部43、表示部44、地図データ記憶部45及び圧力センサ46を備えている。
【0060】
制御部41は、制御手段として機能し、図示しないCPU、RAM及びROM等を有し、後述する処理(検知段階、基準気圧記録段階、高さ特定段階及び出力段階等を含む処理)を行なう。制御部41は、ナビゲーション表示制御手段410、IF制御手段411及び高さ検出手段412として機能する。
【0061】
ナビゲーション表示制御手段410は、地図情報取得手段、検知手段、基準気圧記録手段及び出力手段として機能し、利用者を目的地に案内(ナビゲーション)するための表示処理を制御する。具体的には、ナビゲーション表示制御手段410は、GPS受信部42から特定される利用者の位置情報を算出する。更に、ナビゲーション表示制御手段410は、利用者の現在位置の周囲の地図情報を地図データ記憶部45から取得し、目的地に向かう進路を示すナビゲーション画面を生成して、表示部44に表示する。また、階層化したエリアとしてのインターチェンジを走行する場合、ナビゲーション表示制御手段410は、高さ検出手段412からの走行している階層を特定する情報を取得し、これに応じた現在位置を特定する。
【0062】
IF制御手段411は、各種操作ボタンの操作部43を介して利用者からの指示を取得し、ディスプレイの表示部44に表示を行なう。
高さ検出手段412は、高さ特定手段として機能し、圧力センサ46が測定した気圧に関するデータを取得して、インターチェンジにおいてどの階層を走行しているかを特定し、この走行層特定情報をナビゲーション表示制御手段410に供給する。更に、高さ検出手段412は、インターチェンジにおいて、同じ階層を進行しているときの気圧の変動を許容する許容変化圧力値を記憶している。
【0063】
GPS受信部42は、受信したGPS信号から、ナビゲーション装置40を搭載した車の位置を特定する。
地図データ記憶部45は、地図情報に関するデータが記録されている。
圧力センサ46は、ナビゲーション装置40が設けられた車の気圧を測定し、この測定した気圧に関するデータを制御部41に供給する。
【0064】
次に、上述したナビゲーション装置40を用いた場所特定処理について、図10を用いて説明する。なお、ナビゲーション装置40を利用する場合には、公知のように、利用者は、操作部43を介して制御部41に目的地を特定する情報を入力しておく。
【0065】
まず、制御部41は、現在地の特定処理を実行する(ステップS401)。具体的には、制御部41のナビゲーション表示制御手段410は、GPS受信部42から車の位置を特定するためのGPS情報を取得する。そして、ナビゲーション表示制御手段410は、GPS情報を用いて、この車が走行している位置についての地図情報を地図データ記憶部45から取得する。ナビゲーション表示制御手段410は、地図情報に、現在位置と目的地への進行方向とを含めたナビゲーション画面を生成し、IF制御手段411を介して表示部44に表示する。
【0066】
そして、制御部41は、予定進路上にインターチェンジがあるか否かを判断する(ステップS402)。具体的には、制御部41のナビゲーション表示制御手段410は、地図
データ記憶部45から取得した地図情報から、表示部に表示する範囲内の進路上にインターチェンジの表示を検出した場合には、予定進路上にインターチェンジが存在しているか否かを特定する。
【0067】
ここで、予定進路上にインターチェンジがある場合(ステップS402において「YES」の場合)、制御部41は、気圧測定処理を実行する(ステップS403)。具体的には、制御部41の高さ検出手段412は、圧力センサ46が測定した気圧測定値を取得し、制御部41のRAMに記録する。本実施形態では、このとき測定された気圧測定値を基準気圧情報の基準気圧として用いる。また、このときの標高を、基準高さの「0」として用いる。
【0068】
その後、インターチェンジに進入した場合(ステップS404において「YES」の場合)、制御部41は、再び、気圧測定処理を実行する(ステップS405)。具体的には、制御部41の高さ検出手段412は、圧力センサ46が測定した気圧測定値を取得し、制御部41のRAMに記憶する。
【0069】
そして、制御部41は、気圧変化があったか否かを判断する(ステップS406)。具体的には、制御部41の高さ検出手段412は、ステップS403においてRAMに記録した気圧測定値と、ステップS405においてRAMに記録した気圧測定値とを比較し、両者の気圧測定値が許容変化圧力値以上、異なる場合には、気圧変化ありと判断する。
【0070】
ここで、許容変化圧力値以上の圧力変化がないことにより、気圧変化がなかったと判断した場合(ステップS406において「NO」の場合)には、制御部41は、同じ層の進路上を進行していると特定する(ステップS407)。具体的には、制御部41の高さ検出手段412は、インターチェンジに進入する前に走行していた階層と同じ階層を走行しているという階層特定情報をナビゲーション表示制御手段410に提供する。
【0071】
一方、気圧変化があったと判断した場合(ステップS406において「YES」の場合)には、制御部41は、気圧が上昇したか否かを判断する(ステップS408)。
ここで、気圧の上昇を検知した場合(ステップS408において「YES」の場合)、制御部41は、下階層に移動したと判断する(ステップS409)。具体的には、制御部41の高さ検出手段412は、ステップS405で測定した圧力がステップS403で測定した圧力よりも高くなっている場合には、下階層に移動したと判断する。この場合、制御部41の高さ検出手段412は、インターチェンジに進入する前に走行していた階層の下階層を走行しているという階層特定情報をナビゲーション表示制御手段410に提供する。
【0072】
一方、気圧の下降を検知した場合(ステップS408において「NO」の場合)、制御部41は、上階層に移動したと判断する(ステップS410)。具体的には、制御部41の高さ検出手段412は、ステップS405で測定した圧力がステップS403で測定した圧力よりも低くなっている場合には、上階層に移動したと判断する。この場合、制御部41の高さ検出手段412は、インターチェンジに進入する前に走行していた階層の上階層を走行しているという階層特定情報をナビゲーション表示制御手段410に提供する。
【0073】
そして、制御部41は、取得した階層特定情報を用いて現在地の特定処理を実行する(ステップS401)。具体的には、ナビゲーション表示制御手段410は、車の位置を特定する情報と、この車の位置に対応する地図情報とを取得し、これらと高さ検出手段412から取得した階層特定情報とを用いて、地図情報に現在位置と目的地への進行方向とを含めたナビゲーション画面を生成し、IF制御手段411を介して表示部44に表示する。そして、予定進路上にインターチェンジがあった場合(ステップS402において「Y
ES」の場合)には、ステップS403以降の処理が繰り返して実行される。
【0074】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、表示部に表示する範囲内の進路上にインターチェンジがある場合(ステップS402において「YES」の場合)、制御部41は、圧力センサ46が測定した気圧測定値を取得し、制御部41のRAMに記録する(ステップS403)。その後、インターチェンジに進入した場合(ステップS404において「YES」の場合)、制御部41は、再び、圧力センサ46が測定した気圧測定値を取得し、制御部41のRAMに記憶する(ステップS405)。制御部41は、気圧変化がなかったと判断した場合(ステップS406において「NO」の場合)には、同じ階層の進路上を進行していると特定する(ステップS407)。気圧が上昇した場合(ステップS408において「YES」の場合)、制御部41は、下階層に移動したと特定する(ステップS409)。気圧が下降した場合(ステップS408において「NO」の場合)、制御部41は、上階層に移動したと特定する(ステップS410)。制御部41は、特定した階層(インターチェンジに進入する前に走行していた階層と同じ階層、その階層の下階層、又は上階層)を走行しているという階層特定情報を用いて現在地の特定処理を実行する(ステップS401)。このため、平面的な位置情報では特定が困難なインターチェンジに進入する前後において測定された気圧測定値を比較して、走行する階層を特定する。この場合、地図情報からインターチェンジを検出した場所から利用者の現在位置までの距離は、天候による気圧変化が生じる距離に比べて小さい。従って、インターチェンジに進入する前後の天候による気圧はほぼ同じとみなせるので、天候による気圧変化の影響をほとんど受けずに、インターチェンジにおいて、車が走行している現在位置をより正確に特定して、その現在位置に応じたより正確なナビゲーションを行なうことができる。
【0075】
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記第1実施形態においては、携帯電話端末10の制御部11は、データの送受信を行なう基地局20の標高と基地局20で測定された気圧とを含む基準気圧情報を用いて標高算出式を更新した。この場合、携帯電話端末10が標高算出式を更新するために用いる基準気圧情報は、これに限られない。例えば、基地局20は、携帯電話端末10の現在位置に近い基準気圧情報提供局の気圧と標高を提供してもよい。具体的には、図8に示すように、この基準気圧情報提供局として、基地局20が通話範囲としてカバーする場所にある百葉箱30や気象庁地域観測システムのアメダス(AMeDAS=Automated Meteorological Data Acquisition System)等から基準気圧情報を取得してもよい。この場合、基準気圧情報提供局に、気圧を測定する圧力センサと、標高と気圧測定値とを含む基準気圧情報を記憶するメモリと、データ更新制御手段と、通信制御手段とを設ける。基準気圧情報提供局のデータ更新制御手段は、定期的に、圧力センサが測定した気圧を、メモリに記録された基準気圧情報の気圧測定値として更新する。基地局20はデータ記憶部を備える。このデータ記憶部には、各基準気圧情報提供局を識別する提供局識別子と、その位置情報とを関連付けたデータが記憶されている。
【0076】
携帯電話端末10は、基準気圧情報取得要求を行なう場合、この基準気圧情報取得要求に、データ記憶部15の現在位置データに記憶されている平面位置を含ませる。基地局20は、受信した基準気圧情報取得要求に含まれる平面位置と基準気圧情報提供局の位置情報とを比較し、携帯電話端末10に最も近い基準気圧情報提供局を特定する。基地局20は、この基準気圧情報提供局に対して基準気圧情報送信要求を行なう。基準気圧情報提供局の通信制御手段は、これに対応してメモリに記録された基準気圧情報を基地局20に送信する。基地局20は、取得した基準気圧情報を携帯電話端末10に送信する。この場合には、携帯電話端末10の現在位置により近い場所における基準気圧及び基準標高を取得することができる。更に、各基地局20に、圧力センサを設ける必要もなく、基準気圧情報を記憶しなくてもよい。
【0077】
また、基地局20は、基準情報管理サーバを介して各基準気圧情報局に接続してもよい。この場合、例えば、基準情報管理サーバは、提供局識別子とその位置情報とを記憶する。そして、基地局20から、携帯電話端末10の平面位置を含む基準気圧情報送信要求を取得した基準情報管理サーバは、基準気圧情報取得要求に含まれる平面位置と基準気圧情報提供局の位置情報とを比較し、携帯電話端末10の平面位置に最も近い基準気圧情報を有する基準気圧情報提供局を特定する。基準情報管理サーバは、特定した基準気圧情報提供局から基準気圧情報を取得して、基地局20を介して携帯電話端末10に送信する。また、基準情報管理サーバが、地域毎に用いる基準気圧情報を保持してもよい。具体的には、基準情報管理サーバは、各基準気圧情報提供局から気圧を定期的に取得する。更に、基準情報管理サーバは、低気圧や高気圧の移動状態に応じて、地域毎の所定時間内に適用される基準気圧と基準標高とを算出し、これらを含む基準気圧情報と、各地域を特定する位置情報に関連付けて記憶しておく。基準情報管理サーバは、基準気圧情報取得要求に含まれる平面位置と地域の位置情報とを比較して携帯電話端末10の平面位置を含む地域を特定し、この地域の基準気圧情報を取得して、基地局20を介して携帯電話端末10に送信する。
【0078】
○ 上記第1実施形態において、制御部11は、緊急連絡先への通知処理を実行する場合(ステップS306)において、現在位置情報を含む緊急通知を緊急連絡先に対して行なった。また、上記第2実施形態において、制御部41は、特定した階層を走行しているという階層特定情報を用いて現在地の特定処理を実行した(ステップS401)。これに限らず、出力する現在位置に関する情報は、他の情報であってもよい。例えば、第1実施形態においては、制御部11に「1階の平均高さ」を記憶しておく。制御部11は、標高算出式を用いて算出した現在位置の標高を、記憶している「1階の平均高さ」で除算して、利用者がいるおよそのフロア(階)情報を、現在位置情報を含めて緊急通知を行なってもよい。
【0079】
○ 上記第1実施形態において、制御部11は、標高算出式更新処理又は緊急通知処理において、基地局20に対して基準気圧情報取得要求を行なって、基地局20から基準気圧情報を取得した。これに代えて、基地局20が、定期的に、制御部11に対して、基準気圧情報を送信してもよい。
【0080】
○ 上記第1実施形態において、屋内検出条件として、屋内外の移動を検出するための屋内外気圧変化しきい値に関するデータを用いた。屋外から屋内に入ったことを検出するための屋内検出条件は、これに限られない。例えば、屋内に入った場合に、気圧が所定のパターンで変動する場合には、このパターンを屋内検出条件として、制御部11の屋内外特定手段116に記憶させておいてもよい。
【0081】
○ 上記第2実施形態においては、制御部11は、地図情報においてインターチェンジがある場合に、場所特定処理を実行した。インターチェンジに限らず、平面的な地図情報から利用者の現在位置が一意に特定できない階層化されたエリアであれば、場所特定処理を行なってもよい。また、上記第2実施形態では、車についてのナビゲーション装置40について説明したが、人をナビゲーションする場合について適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の現在位置出力装置としての携帯電話端末を説明する説明図。
【図2】第1実施形態の携帯電話端末の内部構成を説明するブロック図。
【図3】第1実施形態の屋内外特定処理の処理手順を説明する流れ図。
【図4】第1実施形態の標高算出式更新処理の処理手順を説明する流れ図。
【図5】第1実施形態の緊急通知処理の処理手順を説明する流れ図。
【図6】第1実施形態の屋内補正値を説明する説明図。
【図7】第1実施形態の階層移動検出パターンを説明する流れ図。
【図8】第1実施形態の変更例を説明する説明図。
【図9】本発明の現在位置出力装置としてのナビゲーション装置の内部構成を説明するブロック図。
【図10】第2実施形態の場所特定処理の処理手段を説明する流れ図。
【符号の説明】
【0083】
ΔP…気圧差、P1,P2…気圧、10…携帯電話端末、11,41…制御部、12…無線通信部、13,43…操作部、14,44…表示部、15…データ記憶部、16,46…圧力センサ、20…基地局、40…ナビゲーション装置、42…GPS受信部、45…地図データ記憶部、111…通信制御手段、112…IF制御手段、113…緊急連絡手段、114…位置情報取得手段、115…高さ算出手段、116…屋内外特定手段、117…タイマ、410…ナビゲーション表示制御手段、411…IF制御手段、412…高さ検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気圧を測定するための圧力センサと、この圧力センサを用いて測定した気圧を記憶する気圧データ記憶手段と、制御手段とを備えた現在位置出力装置であって、
前記制御手段が、
階層化したエリアへの進入を検知する検知手段と、
前記階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を取得して前記気圧データ記憶手段に記録する基準気圧記録手段と、
前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧とを比較し、この比較した結果に応じて、前記気圧を測定した現在位置の高さを特定する高さ特定手段と、
特定した現在位置の高さに関する情報を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする現在位置出力装置。
【請求項2】
基地局と通信を行なう無線通信部を備えており、
前記基準気圧記録手段は、前記無線通信部が通信を行なう基地局から前記基準高さ及び前記基準気圧に関する情報を定期的に取得し、
前記高さ特定手段は、前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧との圧力差及び前記基準高さから、現在位置の高さを算出することを特徴とする請求項1に記載の現在位置出力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、屋外から屋内に入ったことを検出するための屋内検出条件を記憶しており、
前記検知手段は、前記気圧データ記憶手段に記録された圧力が前記屋内検出条件を満たすことを検出することにより、前記階層化したエリアへの進入を検知し、
前記制御手段は、前記階層化したエリアへの進入を検知した場合には、検出の前後の気圧差を用いて前記基準気圧の補正を行なう補正手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の現在位置出力装置。
【請求項4】
前記制御手段は、一度に表示される所定範囲の利用者の進路方向の地図情報を取得する地図情報取得手段を更に備え、
前記検知手段は、前記地図情報において階層化したエリアがあることを検出し、
前記基準気圧記録手段は、階層化したエリアを検出したときに測定された気圧を基準気圧とし、このときの高さを基準高さとして取得し、
前記高さ特定手段は、
前記階層化したエリアに進入した後に測定した気圧と前記基準気圧とが同じ場合には、前記階層化したエリアに進入する前の高さと同じ高さを現在位置の高さとして特定し、
前記階層化したエリアに進入した後に測定した気圧と前記基準気圧とが異なる場合には、これらの気圧の大小関係に応じて、前記階層化したエリアに入る前の高さより低い位置又は高い位置を現在位置の高さとして特定し、
前記出力手段は、前記特定した現在位置の高さに応じた利用者の現在位置と、前記地図情報取得手段が取得した地図情報とを含むナビゲーション情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の現在位置出力装置。
【請求項5】
気圧を測定するための圧力センサと、この圧力センサを用いて測定した気圧を記憶する気圧データ記憶手段と、制御手段とを備えた現在位置出力装置における方法であって、
前記制御手段が、
階層化したエリアへの進入を検知する検知段階と、
前記階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を取得して前記気圧データ記憶手段に記録する基準気圧記録段階と、
前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧とを比較し、この比較した結果に
応じて、前記気圧を測定した現在位置の高さを特定する高さ特定段階と、
特定した現在位置の高さに関する情報を出力する出力段階とを実行することを特徴とする現在位置出力方法。
【請求項6】
気圧を測定するための圧力センサと、この圧力センサを用いて測定した気圧を記憶する気圧データ記憶手段と、制御手段とを備えた現在位置出力装置におけるプログラムであって、
前記制御手段を、
階層化したエリアへの進入を検知する検知手段、
前記階層化したエリアに応じた基準高さ及び基準気圧を取得して前記気圧データ記憶手段に記録する基準気圧記録手段、
前記圧力センサを用いて測定した気圧と前記基準気圧とを比較し、この比較した結果に応じて、前記気圧を測定した現在位置の高さを特定する高さ特定手段、及び
特定した現在位置の高さに関する情報を出力する出力手段として機能させることを特徴とする現在位置出力プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−281741(P2009−281741A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131190(P2008−131190)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】