説明

生体情報処理装置および自動取引装置

【課題】利用者の利便性を向上し、かつ認証時の条件変化に対応できる生体情報処理装置および自動取引装置を提供する。
【解決手段】生体情報処理装置に、照合対象者の生体情報を取得生体情報として取得する生体情報取得手段と、記憶部に記憶された登録生体情報と前記取得生体情報とに基づいて本人か否か照合手段で照合した照合率が所定の基準値より低い照合率不足か否か判定する判定手段と、少なくとも前記照合率不足の場合の前記取得生体情報を蓄積生体情報として記憶部に記憶させる記憶指示手段と、前記照合率不足であると判定した回数が所定回数に達した場合に前記蓄積生体情報に基づいて前記記憶部の登録生体情報を更新させる更新指示手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関に設置される自動取引装置および該自動取引装置に設けられる生体情報処理装置に関するものであり、特に、利用者の生体情報の更新処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金融機関と利用者との間で行われる金融取引の際、金融機関は、利用者の本人認証を行った上で取引を開始する。例えば、自動取引装置(ATM)による取引の場合であれば、自動取引装置は、キャッシュカードと暗証番号とにより本人確認を行っている。
【0003】
このキャッシュカードや通帳等の媒体は、工業規格等に基づいて金融機関が発行した安定品質の媒体である。また、暗証番号は、入力速度や入力時に押下する強さなどによって影響を受けない安定した情報である。このため、自動取引装置は、媒体に書き込まれている暗証番号などの情報を高い信頼度で取得することができ、利用者に入力された暗証番号と完全一致するか否かで本人認証を行うことができる。
【0004】
近年、金融機関での取引において、盗難カードや偽造カード等の使用による被害が増加している。このため、特に自動取引装置は、セキュリティの向上が強く求められている。
【0005】
このようなセキュリティ向上の要望に応えるシステムとして、利用者の指紋データや指静脈データ等の生体情報を利用する生体認証システムが実用化され始めている。この生体認証システムは、金融機関のサーバや金融機関が発行したICカードのICチップに、利用者の指紋データや指静脈データ等の生体情報を登録生体情報として登録しておき、この登録生体情報と利用者から取得した取得生体情報との照合により、本人を確認して認証するものである。
【0006】
この生体認証システムは、生体情報取得装置に対して利用者が生体をセットする際に、生体の位置(前後、左右、上下)を一義的に固定できる訳ではない。また、生体情報は、怪我や病気、年齢変化によって変化することがある。このため、従来の暗証番号などの安定した情報と異なり、ICカード発行時に登録した登録生体情報と、自動取引装置による実際の取引時に該自動取引装置に設けられた生体情報取得装置で取得する取得生体情報とが必ずしも一致しないという問題点がある。
【0007】
このようなことから、自動取引装置は、登録生体情報と取得生体情報との一致度があらかじめ定めた閾値以上であれば本人であると認証する方式を採用し、閾値以下となって生体情報の照合率が不足する場合や照合不一致の場合に、本人でないとして取引の受付を拒否するようにしている。
【0008】
一方、怪我などによる生体情報の変化やセット位置の変化といった認証時の条件変化に対応し、認証精度を向上させようとすれば、登録生体情報を更新することが考えられる。
登録している生体情報を更新する方法として、生体情報による本人認証装置の保守方法が提案されている(特許文献1参照)。この本人認証装置は、ICカードに登録されている生体情報と、生体情報取得装置から読み取った生体情報との照合により本人認証を実行するものである。そしてその保守方法は、代替の生体情報を代替生体情報としてサーバに登録しておき、利用者の要求に応じて、ICカードに登録されている生体情報をサーバに登録している代替生体情報に更新するものである。
【0009】
しかし、この保守方法では、利用者が任意に生体情報を更新する必要があり、わずらわしさが生じるという問題点がある。
また、生体情報を登録する時の諸条件(生体情報取得装置のばらつき、利用者の体調など)と、実際に自動取引装置を利用する場合の諸条件が必ずしも一致するわけではない。このため、生体情報登録時の登録生体情報と、取引時に生体情報取得装置で読み取った取得生体情報とは必ずしも一致せず、生体情報を更新することで必ず認証精度が高まるとは言えないという問題点がある。
【0010】
【特許文献1】特開2002−63141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上述の問題に鑑み、利用者の利便性を向上し、かつ認証時の条件変化に対応できる生体情報処理装置および自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、照合対象者の生体情報を取得生体情報として取得する生体情報取得手段と、記憶部に記憶された登録生体情報と前記取得生体情報とに基づいて本人か否か照合手段で照合した照合率が所定の基準値より低い照合率不足か否か判定する判定手段と、少なくとも前記照合率不足の場合の前記取得生体情報を蓄積生体情報として記憶部に記憶させる記憶指示手段と、前記照合率不足であると判定した回数が所定回数に達した場合に前記蓄積生体情報に基づいて前記記憶部の登録生体情報を更新させる更新指示手段とを備えた生体情報処理装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明により、利用者の利便性を向上し、かつ認証時の条件変化に対応できる生体情報処理装置および自動取引装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、照合対象者としての利用者(金融機関の顧客)MがATM2を利用する際の金融機関システム(生体情報処理システム)1のシステム構成図を示す。
この金融機関システム1は、自動取引装置としてのATM2とホストコンピュータ5とがネットワーク回線3に互いに通信可能に接続されて構成されている。
【0016】
ATM2は、生体情報取得手段としての指静脈リーダ16が設けられており、この指静脈リーダ16によって利用者Mの生体情報としての生体画像情報を取得し、本人認証を行って、接続されているホストコンピュータ5と通信しつつ各種の取引を処理することができる。
ホストコンピュータ5は、データベース6が設けられており、このデータベース6に記憶されている利用者情報などの各種情報を利用して取引の可否を決定する。
【0017】
なお、本実施の形態でいう生体情報は、生体に基づく情報という意味であり、利用者Mの生体をスキャニングして取得した画像情報である生体画像情報と、この生体画像情報から特徴点を抽出してこの特徴点に基づいて作成した生体特徴情報との両方を含む概念である。
【0018】
図2は、ATM2の構成を示すブロック図である。
ATM2には、利用者への取引案内を表示する液晶などの表示部(出力手段)11と、取引操作するため入力するタッチパネルなどの入力部(入力手段)12と、挿入されたICカードを処理するカード処理部13と、利用者の生体画像情報を取得するための指静脈リーダ16と、紙幣入出金等の紙幣の処理を行う紙幣入出金部(貨幣処理手段の一つ)17と、硬貨入出金等の硬貨の処理を行う硬貨入出金部(貨幣処理手段の一つ)18と、明細票の印字処理を行う明細票印字部19と、通帳の印字処理を行う通帳印字部20と、ATM2全体の動作を制御する主制御部(制御手段)21とにより構成されている。
【0019】
カード処理部13には、利用者が挿入したICカードC(図3参照)の磁気ストライプ43に対して読み書きするための磁気ストライプリードライト部14と、記憶部としてのICチップ41に対して読み書きするためのICチップリードライト部15とが設けられている。
【0020】
主制御部21には、各処理を制御するCPU22と、各処理を実行するためのプログラムや取引情報等を記憶するメモリ23と、ネットワーク回線3を介してホストコンピュータ5とデータを送受信するための通信部24と、利用者Mとの取引情報等を逐次記録していく記録部25と、各部に電力供給を行う電源26とが設けられている。
【0021】
このカード処理部13と主制御部21とにより、生体情報処理装置が構成されている。
【0022】
図3は、ICカードCの外観図である。
ICカードCには、磁気ストライプ43と接触式のICチップ41が搭載されている。またICカードCには、更に非接触式ICチップ42を搭載することも可能である。この場合は、非接触で通信するために図示省略するアンテナを設けると良い。
【0023】
図4は、ICカードCの内部構成を示すブロック図であり、図5はICカードCに記憶するサービス機能を示す構成図であり、図6はICカードCに記憶する更新パラメータの構成図である。
【0024】
ICカードCには、ICチップの各制御を行なうCPU51と、生体情報としての生体特徴情報を記録するためのメモリ部61と、更新パラメータ53(図6参照)の設定に従い、メモリ内部の生体特徴情報(登録データ)の更新等の制御を行なう登録データ演算処理部52とが設けられている。
【0025】
前記更新パラメータ53は、ホストコンピュータ5からの指示により、ホストコンピュータ5と接続されるATM2全てに対して一括管理されている。なお、ATM2ごとに個別に設定できるように構成し、金融機関の各支店の環境に合わせて設定を変更できるようにしてもよい。
【0026】
メモリ部61には、登録生体情報としてのマスタ登録データ63、および退避された生体情報である退避登録データ64を記録するための登録ファイル62と、蓄積生体情報としての取得データ66を複数記録するための取得ファイル65とが設けられている。ここで、前記マスタ登録データ63は、ATM2の取引時に利用者Mの本人認証に使用するための生体情報である。前記取得データ66は、取引における本人認証時に指静脈リーダ16にて取得生体情報として読み取った生体情報であり、ATM2の指静脈リーダ16にて当該生体情報が取得された取得日時とともに取得ファイル65に蓄積生体情報として記憶される。これらのマスタ登録データ63、退避登録データ64、および取得データ66は、いずれも生体特徴情報により構成されている。この生体特徴情報は、利用者Mから生体画像情報として取得した指静脈画像から特徴点を抽出し、この特徴点に基づいて作成した本人認証用のデータである。
【0027】
登録データ演算処理部52は、更新パラメータ53(図6参照)に該当する項目があれば取得ファイル65に記録された取得データ66を演算処理し、新たに登録ファイル62にマスタ登録データ63として登録することで更新を行う。また登録データ演算処理部52は、それまでの古いマスタ登録データ63を退避登録データ64として退避する。
【0028】
図5は、ICチップ41に記憶されるサービス機能の一例を示している。ICチップ41には、発行元の金融機関がサポートするキャッシュカード、デビットカード、クレジットカード、ローンカード、振込カード、電子マネー、電子通帳、および社員カード等の口座情報と、マスタ登録データ63(図4参照)や更新パラメータ53等で構成される生体関連情報が登録されている。
【0029】
図6は、ICチップ41に記録された生体特徴情報や、指静脈リーダ16によって取得された生体画像情報を基に、当初登録されたマスタ登録データ63を更新するためのパラメータ類を示す更新パラメータ53の構成図である。
【0030】
このパラメータは、大きく5つの項目に分かれており、更新可否情報としての更新許可指定71は、指静脈リーダ16によって取得された生体画像情報から作成した生体特徴情報のうち照合率不足の生体特徴情報である取得データ66を基に、予め登録された生特徴体情報であるマスタ登録データ63を更新する機能の有効または無効の指定をするパラメータである。
【0031】
取得データ数指定72は、前記取得データ66のうち照合率不足の取得データ66を基に、予め登録されたマスタ登録データ63を更新するタイミングの基準となる取得回数(Na回)を指定するパラメータである。この取得回数は、取得データ66が照合率不足であると判定した回数を記憶している。
【0032】
取得期間指定73は、取得データ数指定72にて規定された基準の取得回数を、どの時点を起算日として計数するのかを指定するパラメータである。通常は前回の更新日時が起算日となる。
【0033】
生体情報取得データフォーマット74は、指静脈リーダ16によって取得された取得データ66のほかに付加する情報について規定するものである。これにより、取得日時およびデータ有効期間など、マスタ登録データ63を更新するために必要な情報を付加することができる。
【0034】
生体情報照合率別取得回数75は、指静脈リーダ16によって取得された生体画像情報に基づく生体特徴情報である取得データ66と、ICカードCに登録された生体特徴情報であるマスタ登録データ63との照合結果を、照合率別に計数するパラメータである。この生体情報照合率別取得回数75は、照合率満足(照合率95%以上)の回数であるNd回、所定回数としての照合率不足(照合率80%〜95%未満)の回数であるNe回、および不一致の回数であるNf回の3パターンに分けて計数する。なお、照合率不足(80%〜95%未満)とは、一応本人であろうと判定できる数値であるが、取引を許可するためには照合率が不足しているケースを指す。また、不一致は、本人であると確認できないケースを指す。
【0035】
図7は、ATM2のCPU22が実行する動作を示すフローチャートである。
CPU22は、取引選択処理として、ATM2の表示部11に画面案内を行い、利用者Mに希望する取引を選択させ、この選択を入力部12で受け付ける(ステップS1)。
【0036】
CPU22は、カード受入処理として、利用者Mに対してATM2のカード処理部13にICカードCを挿入させ、磁気ストライプリードライト部14にて磁気ストライプ43の口座情報を読み取り、ICチップリードライト部15でICチップ41の口座情報を読み取る(ステップS2)。
CPU22は、本人確認処理として、ATM2の指静脈リーダ16に利用者M自身の指をセットさせ、指静脈リーダ16によって利用者Mの生体画像情報(指静脈画像データ)を取得する(ステップS3)。
【0037】
CPU22は、照合処理として、取得した生体画像情報から生体特徴情報として取得データ66を作成し、この取得データ66をICカードCのICチップ41に登録されているマスタ登録データ63と照合する(ステップS4)。このステップS4で、CPU22は照合手段として機能する。
【0038】
取得データ66とマスタ登録データ63との照合率が95%(所定の基準値)以上であれば、認証がOKとなり、正当な本人であることが証明される(ステップS5:YES)。従って、本発明の照合率不足の取得データを取得ファイルに登録する必要はなく、更新パラメータ53(図6参照)の照合率満足に1加算して更新(カウントアップ)する(ステップS6)。
そして、CPU22は、取引を継続して実行し(ステップS7)、ICカードCを排出して(ステップS20)、取引を終了する。
【0039】
認証がNGであれば(ステップS5:NO)、CPU22は、照合率不足判定処理として、照合率が不足しているためにNGになったのか(照合率が80%から95%未満の状態か、それとも照合率不足ではなかったのか)を判定する(ステップS8)。このステップS8を実行するCPU22は、判定手段として機能する。
【0040】
照合率不測が原因でなければ、すなわち不一致であれば(ステップS8:NO)、正当な本人であることが確認できないので照合率不足の取得データを取得ファイル65に登録する必要はなく、CPU22は、更新パラメータ53(図6参照)の不一致に1加算して更新(カウントアップ)する(ステップS9)。このステップS9で、CPU22は計数指示手段として機能する。そして、CPU22は、ICカードCを排出して(ステップS20)、取引を終了する。
【0041】
前記ステップS8で照合率不足が原因と判定した場合(照合率80%から95%未満の場合)であれば(ステップS8:NO)、CPU22は、生体情報蓄積処理として、前記ステップS3にて取得した指静脈画像データに基づく画像特徴情報を、ICカードCのメモリ部61にある取得ファイル65に取得データ66として記録する(ステップS10)。この記憶の際に、CPU22は、更新パラメータ53の生体情報取得データフォーマット74(図6参照)に従い、取得した生体画像情報に基づく生体特徴情報のほかに、取得日時、およびデータ有効期間の項目を付加する。
【0042】
CPU22は、所定条件として期限切れの取得データ66や退避登録データ64が存在するという条件を満たすか否か各データの取得日時により判定し、なければステップS14に処理を進める(ステップS11:NO)。
【0043】
期限切れの取得データ66や退避登録データ64が存在すれば(ステップS11:YES)、CPU22は、期限切れの取得データ66や退避登録データ64をICカードCのメモリ部61から削除し(ステップS12)、必要に応じて更新パラメータ53(図6参照)の照合率不足に1減算して更新(カウントダウン)する(ステップS13)。このときのステップS12で、CPU22は削除手段として機能する。
【0044】
CPU22は、更新パラメータ53(図6参照)の生体情報照合率別取得回数75の照合率不足(80%から95%未満)の回数に1加算して更新(カウントアップ)する(ステップS14)。
【0045】
CPU22は、更新パラメータ53の更新許可指定71の設定を確認し、この設定が「無効」に設定されていれば(ステップS15:NO)、更新は不可能となり、ステップ19に処理を進める。「有効」に設定されていれば(ステップS15:YES)、マスタ登録データ63の更新が可能であり、ステップS16に処理を進める。
【0046】
CPU22は、更新パラメータ53の取得データ数指定72に設定されている取得回数(Na回)を確認し、ICカードCのメモリ部61に記憶されている取得データ66の数がこの取得回数(Na回)に満たなければ(ステップS16:NO)、登録データの更新は不可能となり、ステップS19に処理を進める。取得データ66の数が基準の取得回数を満たしていれば(ステップS16:YES)、マスタ登録データ63の更新が可能となり、マスタ登録データ63の更新処理に処理を進める。
【0047】
更新処理でCPU22は、ICカードCのメモリ部61の取得ファイル65に複数記録された照合率不足の取得データ66を集めてこれ基に登録データ演算処理部52にて演算処理を行い、この演算処理により作成した集算生体特徴情報を登録ファイル62に新たにマスタ登録データ63として登録する(ステップS17)。この集算生体特徴情報は、取得ファイル65に記憶されていて取得時期等の異なる複数(n個)の取得データ66を集めてこれの加重平均を求め、標準偏差の中心を演算する演算処理により算出するものである。このように直近の照合率不足の取得データ66を演算に利用することで、怪我などによる生体情報の変化やセット位置の変化といった認証時の条件変化に対応してマスタ登録データ63を機動的に更新できるようにしている。このステップS17で、CPU22は更新指示手段として機能する。
【0048】
CPU22は、これまで本人認証に使用していた古いマスタ登録データ63を、退避登録データ64として登録ファイル62に記憶させて退避する(ステップS18)。
【0049】
CPU22は、取引不成立と判定して取引不成立である旨を表示部11に表示出力し(ステップS19)、ICカードCを排出し(ステップS20)、取引を終了する。
【0050】
以上の構成および動作により、利用者Mの利便性を向上し、かつ認証時の条件変化に対応できる。
すなわち、更新許可指定71の設定を「有効」にしておけば、利用者Mが特別な処理を特に行わずともマスタ登録データ63が適宜更新されるため、利用者Mは更新のためのわずらわしさを感じることなく快適に利用することができる。
【0051】
また、本人確認のために使用するマスタ登録データ63を、直近の複数の取得データ66に基づいて算出した集算生体特徴情報に更新できるため、次回の取引からは本人認証において認証率不足となることを防止できる。したがって、本人の正当性を確保しながら、認証率の改善を図ることが可能となる。
【0052】
また、外的な条件(気候)などにより日々変化する利用者の体調や認証装置固有のばらつきについても、マスタ登録データ63の更新によって対応することができ、本人認証率の向上を図ることができる。
【0053】
また、登録ファイル62、取得ファイル65といったように生体特徴情報を記録するためのメモリエリアを複数設け、取引の都度生体特徴情報を取得ファイル65として記録し、更新パラメータ53の条件に達した際に蓄積された複数の取得ファイル65に基づいてマスタ登録データ63を自動更新することにより、生体認証精度を高レベルに維持し、かつ十分なセキュリティを確保したATM2を提供することができる。
【実施例2】
【0054】
図8は、実施例2の金融機関システム90のシステム構成図を示す。
この実施例2の金融機関システム90は、生体特徴情報をICカードCに登録していた実施例1と異なり、上位センタのホストコンピュータ5に登録する構成にしたものである。
【0055】
この場合、ホストコンピュータ5に、登録データ演算処理部52および記憶部としてのメモリ部61を設け、登録データ演算処理部52内に更新パラメータ53を記憶し、メモリ部61内に登録ファイル62と取得ファイル65とを備え、登録ファイル62にマスタ登録データ63および退避登録データ64を記憶し、取得ファイル65内に取得データ66を複数記憶する構成にするとよい。
【0056】
また、ICカードCには、認証ファイル91に認証用のマスタ認証データ92やマスタ認証データ92を退避した退避認証データ93を記憶しておき、取得データ66は記憶しない構成にするとよい。
また、この場合のATM2の動作は、実施例1での動作における情報の記憶先や読取元をICカードCではなくホストコンピュータ5とすればよく、それ以外は実施例1と同一である。
【0057】
その他の構成および動作は、実施例1と同一であるので、同一要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
この場合も、実施例1と同一の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
実施形態は、自動取引装置としてのATM2に実装された指静脈認証装置について説明したが、生体情報を指静脈に限定するものではなく、生体情報として手のひら静脈や指紋、虹彩、顔画像を使用しても同様の効果が得られる。
【0059】
また、生体情報の登録はICカードCに搭載されたICチップ41で説明したが、携帯端末、例えば携帯電話に指情報を登録しておく構成にしても同様の効果が得られる。この場合、ATM2のICチップリードライト部15を、接触式だけでなく非接触式にも対応可能として構成することで、携帯電話に登録された指情報を無線で取得ることができる。
【0060】
また、利用者への指示は、ATM2の表示部11や音声ガイダンスを使用する構成としたが、生体情報の登録装置や認証装置となる指静脈リーダ16自身に液晶表示部等を実装して、この液晶表示部等から利用者に指示するように構成してもよい。
【0061】
また、照合率は、95%以上であれば照合率を満足、80%から95%未満であれば照合率が不足、それ以下の場合は不一致とたが、この比率について限定するものではなく、適宜の比率に設定することができる。
【0062】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】金融機関システムのシステム構成図。
【図2】ATMの構成を示すブロック図。
【図3】ICカードの外観図。
【図4】ICカードの内部構成を示すブロック図。
【図5】ICカードに記憶するサービス機能を示す構成図。
【図6】ICカードに記憶する更新パラメータの構成図。
【図7】ATMのCPUが実行する動作を示すフローチャート。
【図8】実施例2の金融機関システムのシステム構成図。
【符号の説明】
【0064】
2…ATM
11…表示部
12…入力部
16…指静脈リーダ
17…紙幣入出金部
18…硬貨入出金部
21…主制御部
52…登録データ演算処理部
53…更新パラメータ
61…メモリ部
63…マスタ登録データ
64…退避登録データ
66…取得データ
71…更新許可指定
72…取得データ数指定
75…生体情報照合率別取得回数
C…ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照合対象者の生体情報を取得生体情報として取得する生体情報取得手段と、
記憶部に記憶された登録生体情報と前記取得生体情報とに基づいて本人か否か照合手段で照合した照合率が所定の基準値より低い照合率不足か否か判定する判定手段と、
少なくとも前記照合率不足の場合の前記取得生体情報を蓄積生体情報として記憶部に記憶させる記憶指示手段と、
前記照合率不足であると判定した回数が所定回数に達した場合に前記蓄積生体情報に基づいて前記記憶部の登録生体情報を更新させる更新指示手段とを備えた
生体情報処理装置。
【請求項2】
前記更新指示手段を、前記記憶部に記憶されている更新可否情報が更新可であった場合は登録生体情報を更新し、該更新可否情報が更新不可であった場合は登録生体情報を更新しない構成にした
請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記照合率不足と判定した場合に前記記憶部に記憶している照合率不足の回数を増加させる計数指示手段を備え、
前記更新指示手段は、前記記憶部に記憶されている照合率不足の回数に基づいて前記所定回数に達したか否か判定する構成にした
請求項1または2記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記記憶部に記憶した前記蓄積生体情報が所定条件に達した場合に古い前記蓄積生体情報を削除する削除手段を備えた
請求項1、2または3記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の生体情報処理装置と、
貨幣を処理する貨幣処理手段と、
取引に関する入力操作を許容する入力手段と、
取引結果を出力する出力手段と、
前記生体情報処理装置による照合で本人であると照合できた場合に前記入力手段による取引内容の入力、前記貨幣処理手段による貨幣の投入または払い出し、および前記出力手段による取引結果の出力を制御する制御手段とを備えた
自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−183798(P2007−183798A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1397(P2006−1397)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】