説明

生体情報演算装置、生体情報演算方法、プログラム、および記録媒体

【課題】 従来の局所皮下脂肪厚などを測定する光式生体情報測定装置として、生体表面に光源と受光部を配置し拡散反射光から脂肪厚を測定しているものがあった。しかしながら、従来の構成では、受光素子は、送光素子からの光だけではなく、生体表面を照らして生体内を透過してきた太陽光や照明器具からの照明光である外乱光も受光してしまう。そして、外乱光が受光されてしまうために、局所皮下脂肪厚などの測定精度が悪化してしまうことがあった。
【解決手段】 測定面14に設けられた、生体に対して光を発光する光源部16と、測定面14に設けられた、生体を通過した光を受光する受光部15と、光源部16および受光部15を実質的に取り囲むように設けられた突起部17と、受光された光の量に基づいて、生体に関する情報を演算する演算部19とを備えた、光式脂肪厚計である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、光を利用して局所皮下脂肪厚などを測定する生体情報演算装置、生体情報演算方法、プログラム、および記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の局所皮下脂肪厚などを測定する光式生体情報測定装置としては、生体表面に光源と受光部を配置し拡散反射光から脂肪厚を測定しているものがあった(たとえば、特許文献1などを参照)。
【0003】
図11は、そのような従来の光式脂肪厚計の模式的な断面図である。
【0004】
CPU1からの指令により駆動回路2によって送光素子3が駆動され、駆動された送光素子3が近赤外光を発する。
【0005】
この近赤外光は、皮下脂肪4を通り散乱吸収を受けるとともに、アナログスイッチ8で選択される腕、足、腹に対応した受光素子5、6、7の内のいずれか一つによって受光され、AMP9を介してCPU1に取り込まれる。
【0006】
ここに、CPU1は、測定部位選択入力部10でいずれかのボタンが選択されているかに応じて受光素子5、6、7の内のいずれの出力を利用するかを決定し、アナログスイッチ8を動作させる。
【0007】
なお、他の従来技術として、さらに複数の異なる光路長が得られるように送光素子と受光素子とを配置し、得られた受光量から皮膚の色等のばらつき補正を行うものがあった
(例えば、特許文献2などを参照)。
【特許文献1】特開平11−239573号公報(例えば、第4頁、図6)
【特許文献2】特開2000−155091号公報(例えば、第5頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術における光式脂肪厚計は、現在までのところ、主として実験レベルのものが作製されているに過ぎず、実験室内部など不要な光が少ない環境で使用されているのが普通である。
【0009】
しかしながら、このような光式脂肪厚計では、不要な光が多い環境で使用されると、受光素子5、6、7は、送光素子3からの光だけではなく、生体表面を照らして生体内を透過してきた太陽光や照明器具からの照明光である外乱光11も受光してしまう(図11参照)ことに、本発明者は気付いた。
【0010】
そして、外乱光11が受光されてしまうためにS/N比(信号雑音比)が小さくなってしまい、実用レベルの光式脂肪厚計においては局所皮下脂肪厚などの測定精度が悪化してしまう恐れがあることを、本発明者は見抜いた。
【0011】
また、このような光式脂肪厚計は、実用化に向けて装置の小型化を目指す傾向が顕著になってきている。
【0012】
しかしながら、このような光式脂肪厚計では、装置の小型化が進むにつれて、送光素子3や受光素子5、6、7を含む測定面の大きさも小さくなってきている(図11参照)ことに、本発明者は気付いた。
【0013】
そして、受光される外乱光の影響が測定面の大きさが小さくなるにともなって大きくなるとS/N比が小さくなってしまい、測定精度が悪化してしまう恐れがあることを、本発明者は見抜いた。
【0014】
本発明は、上記従来のこのような課題を考慮し、たとえば、局所皮下脂肪厚などの測定精度をより向上させることができる生体情報演算装置、生体情報演算方法、プログラム、および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の本発明は、
測定面に設けられた、生体に対して光を発光する光源と、
前記測定面に設けられた、前記生体を通過した光を受光する受光器と、
前記光源および前記受光器を実質的に取り囲むように設けられた突起部と、
前記受光された光の量に基づいて、前記生体に関する情報を演算する生体情報演算部とを備えた、生体情報演算装置である。
【0016】
第2の本発明は、
前記受光器は、前記光が発光されている状態で前記光を受光するとともに、前記光が発光されていない状態でも前記光を受光し、
前記生体情報演算部は、前記光が発光されていない状態で受光された前記光の量と前記光が発光されている状態で受光された前記光の量とに基づいて、前記生体に関する情報を演算する第1の本発明の、生体情報演算装置である。
【0017】
第3の本発明は、
前記突起部は、前記測定面の外周に沿って連続的に設けられている第1の本発明の、生体情報演算装置である。
【0018】
第4の本発明は、
前記測定面の外周は、実質的に円周であり、
前記受光器は、前記円周の実質的な中央に配置されている第3の本発明の、生体情報演算装置である。
【0019】
第5の本発明は、
前記突起部に架橋するように設けられた凸部をさらに備え、
前記光源は、前記凸部に配置されており、
前記受光器は、前記凸部に配置されている第1の本発明の、生体情報演算装置である。
【0020】
第6の本発明は、
前記測定面の外周は、実質的に円周であり、
前記凸部は、前記円周の実質的な中央を横切るように設けられている第5の本発明の、生体情報演算装置である。
【0021】
第7の本発明は、
前記凸部が前記生体の表面に押し当てられている押力を測定する凸部押力測定部をさらに備え、
前記生体情報演算部は、前記測定された押力による前記生体の表面の変形を考慮して、前記生体に関する情報を演算する第5の本発明の、生体情報演算装置である。
【0022】
第8の本発明は、
前記受光器は、前記光を受光する第一の受光素子と前記光を受光する第二の受光素子とを有し、
前記生体情報演算部は、前記第一の受光素子によって受光された光の量と前記第二の受光素子によって受光された光の量とに基づいて、前記生体に関する情報を演算する第1の本発明の、生体情報演算装置である。
【0023】
第9の本発明は、
前記光源は、前記光を発光する発光素子を有し、
前記発光素子と前記第一の受光素子との間の距離は、実質的に15mm以上25mm以下であり、
前記発光素子と前記第二の受光素子との間の距離は、実質的に35mm以上50mm以下である第8の本発明の、生体情報演算装置である。
【0024】
第10の本発明は、
前記測定面が前記生体の表面に押し当てられている押力を測定する測定面押力測定部と、
前記測定された押力の大きさが規定値を越えているか否かを判断する判断部とをさらに備え、
前記生体情報演算部は、前記測定された押力の大きさが規定値を越えていると判断された場合に、前記生体に関する情報を演算する第1の本発明の、生体情報演算装置である。
【0025】
第11の本発明は、
突起部によって実質的に取り囲まれるように測定面に設けられた、生体に対して光を発光する光源を利用して発光を行う発光ステップと、
前記突起部によって実質的に取り囲まれるように前記測定面に設けられた、前記生体を通過した光を受光する受光器を利用して受光を行う受光ステップと、
前記受光された光の量に基づいて、前記生体に関する情報を演算する生体情報演算器を利用して演算を行う生体情報演算ステップとを備えた、生体情報演算方法である。
【0026】
第12の本発明は、
第11の本発明の生体情報演算方法の、前記受光された光の量に基づいて、前記生体に関する情報を演算する生体情報演算器を利用して演算を行う生体情報演算ステップをコンピュータに実行させるための、プログラムである。
【0027】
第13の本発明は、
第12の本発明のプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能な、記録媒体である。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、局所皮下脂肪厚などの測定精度をより向上させることができるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態1)
はじめに、図1、2を主として参照しながら、本実施の形態の光式脂肪厚計の構成について説明する。
【0031】
なお、図1は、本発明の実施の形態1の光式脂肪厚計の模式的な断面図である。また、図2は、本発明の実施の形態1の光式脂肪厚計の外観図である(図2においては、突起部17の最も突出している部分に補助的な線を記入した)。
【0032】
ここに、図1は、受光部15と光源部16とを含む、測定面14が押し当てられていない生体表面13の平坦部分に垂直な平面に関する断面図である。
【0033】
測定面14は生体表面13に密着する直径100mm程度の円盤状の面であり、そのほぼ中央に光センサであるホトダイオードを含んだ受光部15が配置されている。
【0034】
測定面14上の受光部15から45mmの距離に波長850nm付近の近赤外光を発光するLEDを含んだ光源部16が配置されている。
【0035】
ここに、たとえば日本人の皮下脂肪厚は0〜60mm程度の範囲にあることが多いため、皮下脂肪厚計測を行うためには、受光部15と光源部16との間の距離が35〜50mm程度の範囲にあることが好ましい。
【0036】
測定面14の周囲には、高さ5mmの突起部17が、装置が使用時にぐらついて安定性が損なわれることがないよう円周状に配置されている。
【0037】
突起部17は、生体にあたっても痛くないように丸みがついている。
【0038】
なお、突起部17の材質は、生体にあたっても痛くないように適度な柔軟性を有することが好ましい。また、光源部16が含むLEDの発光する波長850nm付近の近赤外光を吸収できるように低い反射率を有することが好ましい。このような柔軟性および低反射率を有する材質の具体例としては、黒ABS樹脂などがある。
【0039】
押力検知部18は、測定面14を生体表面13に押し付ける力を検知する手段である。
【0040】
押力検知部18は、センサにロードセルやひずみゲージを用いたフォースゲージの構成や、バネと押しボタンスイッチとを組み合わせた構成を有している。
【0041】
演算部19は、光源部16を制御し、受光部15から得られた信号から皮下脂肪厚などの局所生体情報を演算する手段である。
【0042】
また、演算部19は、入力部22から入力された情報と局所生体情報から、生体の肥満度合いなどの健康状態情報を演算する手段である。
【0043】
表示部20は、算出された局所生体情報などを表示する手段である。
【0044】
通信部21は、性別情報、年齢情報、計測部位情報などを外部機器との間で送受信する手段である。
【0045】
また、通信部21は、演算部19によって演算された局所生体情報や健康状態情報などを外部機器に対して送信する手段である。
【0046】
入力部22は、性別、年齢、計測部位情報などを入力する手段である。
【0047】
音発生部23は、測定の開始から終了までを使用者に音声で知らせる手段である。
【0048】
振動発生部24は、測定の開始から終了までを使用者に振動で知らせる手段である。
【0049】
なお、突起部17は本発明の突起部に対応し、光源部16は本発明の光源に対応し、受光部15は本発明の受光器に対応し、演算部19は本発明の生体情報演算部に対応する。また、押力検知部18は、本発明の測定面押力測定部および本発明の判断部を含む手段に対応する。また、本実施の形態の光式脂肪厚計は、本発明の生体情報演算装置に対応する。
【0050】
つぎに、本実施の形態の光式脂肪厚計の動作について説明する。なお、本実施の形態の光式脂肪厚計の動作について説明しながら、本発明の生体情報演算方法の一実施の形態についても説明する(以下の実施の形態においても同様である)。
【0051】
使用者は、測定部位に測定面14を押し当てる。
【0052】
押力検知部18は、規定値以上の押力が印加されているか否かを判定する。
【0053】
ここに、規定値とは、あらかじめ求めておいた脂肪がそれ以上つぶれなくなるときの測定面14を押し当てる力の値である。
【0054】
演算部19は、押力検知部18が規定値以上の押力が印加されていると判定すると、受光部15での受光量にもとづいて外乱光11が伝播してきた成分に対応する信号Vを演算する。
【0055】
つぎに、光源部16が、発光する。
【0056】
そして、演算部19は、このときの受光部15での受光量にもとづいて信号Vを演算する。
【0057】
演算部19は、光源部16の発光による光が受光部15に伝播してきた受光量に対応する信号
(数1)
W=V−V
を演算する。
【0058】
近赤外光は、皮膚25、筋肉26に比べると、皮下脂肪4では強く散乱され吸収が少ない。
【0059】
そのため、近赤外光は脂肪内部を良く伝播し、Wは皮下脂肪厚が厚いほど増加する。
【0060】
演算部19は、そのような原理を利用し、光源部16の発光による光が受光部15に伝播してきた受光量に対応する信号Wにもとづいて皮下脂肪厚Xを演算する。
【0061】
表示部20は、演算された皮下脂肪厚Xを表示する。
【0062】
以上においては、本実施の形態の光式脂肪厚計の構成および動作について説明した。
【0063】
このように、生体表面13に測定面14を押し付けて測定を開始することで、測定ごとの押力の変動を抑制することができる。
【0064】
また、測定面14を押し当てると、皮下脂肪4は皮膚25や筋肉26と比較して柔らかいので、突起部17の直下にある皮下脂肪が局所的につぶれ薄くなる。
【0065】
すると、突起部17の直下では光が伝播しにくくなるため、太陽や照明光からの外乱光11が減少し、Vも減少する。
【0066】
結果的に、Vの影響によるWの測定誤差が減少し、皮下脂肪厚Xの測定精度も向上することとなる。
【0067】
(実施の形態2)
はじめに、図3、4を主として参照しながら、本実施の形態の光式脂肪厚計の構成について説明する。
【0068】
なお、図3は、本発明の実施の形態2の光式脂肪厚計の模式的な断面図である。また、図4は、本発明の実施の形態2の光式脂肪厚計の外観図である(図4においても、突起部17の最も突出している部分に補助的な線を記入した)。
【0069】
ここに、図3は、光源部16と第一の受光素子27と第二の受光素子28とを含む、測定面14が押し当てられていない生体表面13の平坦部分に垂直な平面に関する断面図である。
【0070】
本実施の形態の光式脂肪厚計の構成は、前述した実施の形態1の光式脂肪厚計の構成と類似している。
【0071】
ただし、本実施の形態の光式脂肪厚計は、受光部15(図1参照)の代わりに第一の受光素子27、および第二の受光素子28を備えている。
【0072】
第二の受光素子28は測定面14′のほぼ中央に配置されており、第一の受光素子27は第二の受光素子28と光源部16との間に配置されている。
【0073】
本実施の形態においては、第一の受光素子27と光源部16との間の距離は23mmであり、第二の受光素子28と光源部16との間の距離は45mmである。
【0074】
ここに、たとえば日本人の皮下脂肪厚は前述したように0〜60mm程度の範囲にあることが多く、皮膚の個体差の影響が顕著に現れる受光素子と光源部との間の距離は15〜25mm程度の範囲にあり、皮膚の個体差の影響および皮下脂肪厚の影響が顕著に現れる受光素子と光源部との間の距離は35〜50mm程度の範囲にあることが多いため、皮膚の個体差のばらつき補正を行うためには、第一の受光素子27と光源部16との間の距離が15〜25mm程度の範囲にあり、第二の受光素子28と光源部16との間の距離が35〜50mm程度の範囲にあることが好ましい。
【0075】
なお、第一の受光素子27、および第二の受光素子28を含む手段は本発明の受光器に対応し、演算部19′は本発明の生体情報演算部に対応する。また、押力検知部18は、本発明の測定面押力測定部および本発明の判断部を含む手段に対応する。また、本実施の形態の光式脂肪厚計は、本発明の生体情報演算装置に対応する。
【0076】
つぎに、本実施の形態の光式脂肪厚計の動作について説明する。
【0077】
使用者は、測定部位に測定面14′を押し当てる。
【0078】
押力検知部18は、規定値以上の押力が印加されているか否かを判定する。
【0079】
演算部19′は、押力検知部18が規定値以上の押力が印加されていると判定すると、第一の受光素子27での受光量にもとづいて外乱光11が伝播してきた成分に対応する信号V′を演算する。
【0080】
同様に、演算部19′は、第二の受光素子28での受光量にもとづいて外乱光11が伝播してきた成分に対応する信号V′を演算する。
【0081】
つぎに、光源部16が、発光する。
【0082】
そして、演算部19′は、このときの第一の受光素子27での受光量にもとづいて信号V′を演算する。演算部19′は、光源部16の発光による光が第一の受光素子27に伝播してきた受光量に対応する信号
(数2)
′=V′−V
を演算する。
【0083】
同様に、演算部19′は、このときの第二の受光素子28での受光量にもとづいて信号V′を演算する。演算部19′は、光源部16の発光による光が第二の受光素子28に伝播してきた受光量に対応する信号
(数3)
′=V′−V
を演算する。
【0084】
演算部19′は、光源部16の発光による光が第一の受光素子27に伝播してきた受光量に対応する信号W′、光源部16の発光による光が第二の受光素子28に伝播してきた受光量に対応する信号W′にもとづいて、皮膚25の個体差のばらつき補正を行って皮下脂肪厚X′を演算する。
【0085】
表示部20は、演算された皮下脂肪厚X′を表示する。
【0086】
以上においては、本実施の形態の光式脂肪厚計の構成および動作について説明した。
【0087】
このように、光源部16から生体内を伝播して第一の受光素子27、第二の受光素子28で受光された光の受光量に対応する2つの信号の比から皮下脂肪厚を算出することで、皮膚25の色および厚みの個体差ばらつきが補正された皮下脂肪厚計測が可能となる。
【0088】
(実施の形態3)
はじめに、図5、6、7を主として参照しながら、本実施の形態の光式脂肪厚計の構成について説明する。
【0089】
なお、図5は、本発明の実施の形態3の光式脂肪厚計の模式的な断面図(その1)である。また、図6は、本発明の実施の形態3の光式脂肪厚計の模式的な断面図(その2)である。また、図7は、本発明の実施の形態3の光式脂肪厚計の外観図である。
【0090】
ここに、図5は、光源部16と第一の受光素子27と第二の受光素子28とを含む、測定面14″が押し当てられていない生体表面13の平坦部分に垂直な第一の平面に関する断面図であり、図6は、第二の受光素子28を含む、測定面14″が押し当てられていない生体表面13の平坦部分と第一の平面とに垂直な第二の平面に関する断面図である。
【0091】
本実施の形態の光式脂肪厚計の構成は、前述した実施の形態2の光式脂肪厚計の構成と類似している。
【0092】
ただし、本実施の形態の光式脂肪厚計は、光源部16、第一の受光素子27、第二の受光素子28を有する、測定面14″の中央に突起部17″に架橋するように設けられた高さ5mm横幅5mmの細長い突起形状29を備えている。
【0093】
第二の受光素子28は突起形状29のほぼ中央に配置されており、第一の受光素子27は第二の受光素子28と光源部16との間に配置されている。
【0094】
本実施の形態においては、第一の受光素子27と光源部16との間の距離は23mmであり、第二の受光素子28と光源部16との間の距離は45mmである。
【0095】
ここに、前述した理由により、皮膚の個体差のばらつき補正を行うためには、第一の受光素子27と光源部16との間の距離が15〜25mm程度の範囲にあり、第二の受光素子28と光源部16との間の距離が35〜50mm程度の範囲にあることが好ましい。
【0096】
なお、突起部17″は本発明の突起部に対応し、第一の受光素子27、および第二の受光素子28を含む手段は本発明の受光器に対応し、演算部19″は本発明の生体情報演算部に対応する。また、突起形状29は、本発明の凸部に対応する。また、押力検知部18は、本発明の凸部押力測定部に対応する。また、本実施の形態の光式脂肪厚計は、本発明の生体情報演算装置に対応する。
【0097】
つぎに、本実施の形態の光式脂肪厚計の動作について説明する。
【0098】
使用者は、測定部位に測定面14″を押し当てる。
【0099】
押力検知部18は、規定値以上の押力が印加されているか否かを判定する。
【0100】
演算部19″は、押力検知部18が規定値以上の押力が印加されていると判定すると、第一の受光素子27での受光量にもとづいて外乱光11が伝播してきた成分に対応する信号V″を演算する。
【0101】
同様に、演算部19″は、第二の受光素子28での受光量にもとづいて外乱光11が伝播してきた成分に対応する信号V″を演算する。
【0102】
つぎに、光源部16が、発光する。
【0103】
そして、演算部19″は、このときの第一の受光素子27での受光量にもとづいて信号V″を演算する。演算部19″は、光源部16の発光による光が第一の受光素子27に伝播してきた受光量に対応する信号
(数4)
″=V″−V
を演算する。
【0104】
同様に、演算部19″は、このときの第二の受光素子28での受光量にもとづいて信号V″を演算する。演算部19″は、光源部16の発光による光が第二の受光素子28に伝播してきた受光量に対応する信号
(数5)
″=V″−V
を演算する。
【0105】
演算部19″は、光源部16の発光による光が第一の受光素子27に伝播してきた受光量に対応する信号W″、光源部16の発光による光が第二の受光素子28に伝播してきた受光量に対応する信号W″にもとづいて、皮膚25の個体差のばらつき補正を行って皮下脂肪厚X″を演算する。
【0106】
表示部20は、演算された皮下脂肪厚X″を表示する。
【0107】
以上においては、本実施の形態の光式脂肪厚計の構成および動作について説明した。
【0108】
このように、前述した実施の形態2の場合と同様、光源部16から生体内を伝播して第一の受光素子27、第二の受光素子28で受光された光の受光量に対応する2つの信号の比から皮下脂肪厚を算出することで、皮膚25の色および厚みの個体差ばらつきが補正された皮下脂肪厚計測が可能となる。
【0109】
また、演算部19″が、押力検知部18によって検知された押力による生体表面13の変形を考慮して、突起形状29によって圧縮されて測定された皮下脂肪厚を本来の皮下脂肪厚に換算するため、より厚い皮下脂肪厚も計測することが可能となる。なお、このような換算は、押力によって圧縮された皮下脂肪厚と圧縮されない本来の皮下脂肪厚との間の関係を超音波診断装置などで調べることによってあらかじめ導出しておいた換算式を利用して行えばよい。
【0110】
(A)なお、本発明の突起部は、本発明の実施の形態の突起部117を有する光式脂肪厚計の模式的な断面部分図である図8に示されているような、測定面114の外周に沿って設けられた、突起形状29に向かって曲がり具合が緩やかに変化する曲面部分Sをその内側に有する突起部117であってもよい。
【0111】
曲面部分Sの曲がり具合が緩やかに変化するため、突起部117が皮膚25に押し当てられる際に使用者が感じる違和感は低減され、曲面部分Sに埃などが溜まることもほとんどない。
【0112】
もちろん、曲面部分Sが突起部117の外側ではなく突起部117の内側に設けられているため、太陽や照明光からの外乱光の受光は前述した実施の形態における場合と同様に抑制される。
【0113】
なお、突起部117は、本発明の突起部に対応する。
【0114】
(B)また、本発明の突起部は、本発明の実施の形態の突起部217を有する光式脂肪厚計の模式的な下平面図である図9に示されているように、測定面214の外周に沿ってではなく、測定面214の外周とはある程度の距離をおいて設けられていてもよい。
【0115】
突起部217は、光源部16および受光部15を取り囲むように設けられているため、太陽や照明光からの外乱光の受光は前述した実施の形態における場合と同様に抑制され、局所皮下脂肪厚などの測定精度をより向上させることができる。
【0116】
なお、突起部217は、本発明の突起部に対応する。
【0117】
(C)また、本発明の突起部は、本発明の実施の形態の突起部317a、317b、317c、317dを有する光式脂肪厚計の模式的な下平面図である図10に示されているように、連続的にではなく間欠的に設けられていてもよい。
【0118】
突起部317a、317b、317c、317dは、光源部16および受光部15を実質的に取り囲むように設けられているため、太陽や照明光からの外乱光の受光は前述した実施の形態における場合と同様に抑制され、局所皮下脂肪厚などの測定精度をより向上させることができる。
【0119】
もちろん、突起部間の間欠の大きさが大きすぎると、外乱光の受光を抑制しにくくなるが、そのような間欠の大きさが適切であると、外乱光の受光を抑制しつつ、使用者が感じる違和感を低減することができる。
【0120】
なお、突起部317a、317b、317c、317dは、本発明の突起部に対応する。
【0121】
以上においては、本発明の実施の形態について詳細に説明した。
【0122】
このように、本発明にかかる光式生体情報測定装置は、たとえば、周囲に突起部を有する測定面を生体に押し当てて、突起部直下の皮下脂肪層を圧縮し、外乱光を減少させることができる。
【0123】
そのため、本発明にかかる光式生体情報測定装置は、局所脂肪厚等の局所生体情報を測定する光式生体情報測定装置として有用である。
【0124】
また、本発明にかかる光式生体情報測定装置は、光式局所組織酸素濃度計等の用途にも応用できる。
【0125】
なお、本発明のプログラムは、上述した本発明の生体情報演算方法の全部または一部のステップの動作をコンピュータにより実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0126】
また、本発明の記録媒体は、上述した本発明の生体情報演算方法の全部または一部のステップの全部または一部の動作をコンピュータにより実行させるためのプログラムを担持した記録媒体であり、コンピュータにより読み取り可能かつ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協動して前記動作を実行する記録媒体である。
【0127】
なお、本発明の上記「一部のステップ」とは、それらの複数のステップの内の、一つまたは幾つかのステップを意味する。
【0128】
また、本発明の上記「ステップの動作」とは、前記ステップの全部または一部の動作を意味する。
【0129】
また、本発明のプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0130】
また、本発明のプログラムの一利用形態は、伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0131】
また、記録媒体としては、ROM等が含まれ、伝送媒体としては、インターネット等の伝送媒体、光・電波・音波等が含まれる。
【0132】
また、上述した本発明のコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
【0133】
なお、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の生体情報演算装置、生体情報演算方法、プログラム、および記録媒体は、局所皮下脂肪厚などの測定精度をより向上させることができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施の形態1の光式脂肪厚計の模式的な断面図
【図2】本発明の実施の形態1の光式脂肪厚計の外観図
【図3】本発明の実施の形態2の光式脂肪厚計の模式的な断面図
【図4】本発明の実施の形態2の光式脂肪厚計の外観図
【図5】本発明の実施の形態3の光式脂肪厚計の模式的な断面図(その1)
【図6】本発明の実施の形態3の光式脂肪厚計の模式的な断面図(その2)
【図7】本発明の実施の形態3の光式脂肪厚計の外観図
【図8】本発明の実施の形態の突起部117を有する光式脂肪厚計の模式的な断面部分図
【図9】本発明の実施の形態の突起部217を有する光式脂肪厚計の模式的な下平面図
【図10】本発明の実施の形態の突起部317a、317b、317c、317dを有する光式脂肪厚計の模式的な下平面図
【図11】従来の光式脂肪厚計の模式的な断面図
【符号の説明】
【0136】
1 CPU
2 駆動回路
3 送光素子
4 皮下脂肪
5 受光素子
6 受光素子
7 受光素子
8 アナログスイッチ
9 AMP
10 測定部位選択入力部
11 外乱光
13 生体表面
14、14′、14″ 測定面
15 受光部
16 光源部
17、17″ 突起部
18 押力検知部
19、19′、19″ 演算部
20 表示部
21 通信部
22 入力部
23 音発生部
24 振動発生部
25 皮膚
26 筋肉
27 第一の受光素子
28 第二の受光素子
29 突起形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定面に設けられた、生体に対して光を発光する光源と、
前記測定面に設けられた、前記生体を通過した光を受光する受光器と、
前記光源および前記受光器を実質的に取り囲むように設けられた突起部と、
前記受光された光の量に基づいて、前記生体に関する情報を演算する生体情報演算部とを備えた、生体情報演算装置。
【請求項2】
前記受光器は、前記光が発光されている状態で前記光を受光するとともに、前記光が発光されていない状態でも前記光を受光し、
前記生体情報演算部は、前記光が発光されていない状態で受光された前記光の量と前記光が発光されている状態で受光された前記光の量とに基づいて、前記生体に関する情報を演算する請求項1記載の、生体情報演算装置。
【請求項3】
前記突起部は、前記測定面の外周に沿って連続的に設けられている請求項1記載の、生体情報演算装置。
【請求項4】
前記測定面の外周は、実質的に円周であり、
前記受光器は、前記円周の実質的な中央に配置されている請求項3記載の、生体情報演算装置。
【請求項5】
前記突起部に架橋するように設けられた凸部をさらに備え、
前記光源は、前記凸部に配置されており、
前記受光器は、前記凸部に配置されている請求項1記載の、生体情報演算装置。
【請求項6】
前記測定面の外周は、実質的に円周であり、
前記凸部は、前記円周の実質的な中央を横切るように設けられている請求項5記載の、生体情報演算装置。
【請求項7】
前記凸部が前記生体の表面に押し当てられている押力を測定する凸部押力測定部をさらに備え、
前記生体情報演算部は、前記測定された押力による前記生体の表面の変形を考慮して、前記生体に関する情報を演算する請求項5記載の、生体情報演算装置。
【請求項8】
前記受光器は、前記光を受光する第一の受光素子と前記光を受光する第二の受光素子とを有し、
前記生体情報演算部は、前記第一の受光素子によって受光された光の量と前記第二の受光素子によって受光された光の量とに基づいて、前記生体に関する情報を演算する請求項1記載の、生体情報演算装置。
【請求項9】
前記光源は、前記光を発光する発光素子を有し、
前記発光素子と前記第一の受光素子との間の距離は、実質的に15mm以上25mm以下であり、
前記発光素子と前記第二の受光素子との間の距離は、実質的に35mm以上50mm以下である請求項8記載の、生体情報演算装置。
【請求項10】
前記測定面が前記生体の表面に押し当てられている押力を測定する測定面押力測定部と、
前記測定された押力の大きさが規定値を越えているか否かを判断する判断部とをさらに備え、
前記生体情報演算部は、前記測定された押力の大きさが規定値を越えていると判断された場合に、前記生体に関する情報を演算する請求項1記載の、生体情報演算装置。
【請求項11】
突起部によって実質的に取り囲まれるように測定面に設けられた、生体に対して光を発光する光源を利用して発光を行う発光ステップと、
前記突起部によって実質的に取り囲まれるように前記測定面に設けられた、前記生体を通過した光を受光する受光器を利用して受光を行う受光ステップと、
前記受光された光の量に基づいて、前記生体に関する情報を演算する生体情報演算器を利用して演算を行う生体情報演算ステップとを備えた、生体情報演算方法。
【請求項12】
請求項11記載の生体情報演算方法の、前記受光された光の量に基づいて、前記生体に関する情報を演算する生体情報演算器を利用して演算を行う生体情報演算ステップをコンピュータに実行させるための、プログラム。
【請求項13】
請求項12記載のプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能な、記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−81892(P2006−81892A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216434(P2005−216434)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】