説明

画像の診断的評価を支援する装置及び方法

本発明は、例えば腫瘍である潜在的病理組織を評価する装置及び方法に係る。これに関しては、寸法又はエッジコントラスト等の特性パラメータは、組織の三次元画像からデータ処理装置において確定される。更には、記録された例に関連する特性パラメータ及び診断的追加情報を有するデータレコードは、データベースモジュールにおいて格納される。データベースモジュールにおいては、続いて、特性パラメータに関連して考慮される組織に類似するデータレコードを確立することが可能である。これらのデータレコードは、モニタ上に表示され得、現在の画像の評価をする医師へ支援を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば腫瘍である潜在的病理組織の画像の診断的評価を支援する装置及び方法に係る。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータトモグラフィ又は磁気共鳴映像法(MRI)等の現代の撮像方法は、増大する範囲において、高品質の二次元及び三次元の画像を体内から作り得る。これらの画像においては、例えば腫瘍である潜在的に病理学的に変性した組織は、初期の段階で検出され得る。しかしながら、これは、放射線技師に、典型的には小さな組織の鑑別診断を行うこと、及び、更なる診断又は治療の段階を計画する必要があることという困難な職務を与える。これに関しては、米国特許第6 430 430 B1号明細書(特許文献1)より、特定の病理変質を検出するよう自動化された画像分析方法を用いて脳の断面図を評価することが既知である。それにもかかわらず、かかる方法は、鑑別診断及び場合によっては更なる処置に関する決定に対する支援とはならない。
【特許文献1】米国特許第6 430 430 B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この背景に対して、本発明は、潜在的病理組織の画像の診断的評価を支援する手段を与えることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1記載の機構を有する装置によって、及び、請求項10記載の機構を有する方法によって達成される。有利な実施例は、従属請求項において有される。
【0005】
本発明に従った装置は、潜在的病理組織を示す患者の体内からの画像の診断的評価を支援するよう使用される。画像は、(望ましくは三次元である)X線画像、MRI画像、又は超音波画像等であり得る。潜在的病理組織は、原理上は、ここで考慮されるいかなる体内組織又は体器官でもあり得、特には潜在的腫瘍であり得る。該装置は、次の部品、
a) 分析モジュール、
b) データベースモジュール、及び、
c) 出力モジュール、
を有する。a)を使用して、一式の特性パラメータは潜在的病理組織の与えられた画像から確立され得、該パラメータは該組織に関連される。該分析モジュールは、例えばデータ処理機器上のソフトウェアプログラムの形状で実行され得る。特定パラメータは、特には、組織及び画像から導き出され得る組織を取り囲む範囲の幾何学的特性、及び、撮像された身体の範囲及び患者に関連する追加的情報であり得る。b)は、同一の種類の組織に関する格納されたデータレコード(及び、該当する場合は、他の組織のデータレコード)を有する。各データレコードは、医療例を有する。該例は、組織に関連し、関連付けられた組織に関する特性パラメータ(段階a)の通り)及び追加的な情報を有する個別の例を記録される。該追加的情報は、特には、関連する例の診断的結果、即ち生体検査結果又は疾病経過等を有し得る。特性パラメータの所定の一式に対して、該データベースモジュールは、メモリからそれらのデータレコードを確定するよう更に設計される。該レコードの関連付けられた特性パラメータは、特性パラメータの所定の一式に対して近接して位置する。前出のc)を有して、段階b)において確定されたデータレコードは、ディスプレイ機器上で読み出され得る等の更なる処理をなされ得る。
【0006】
説明された装置は、格納されている記録された例の供給から類似する状況を有するデータレコードを医師に対して選択及び表示することによって、潜在的病理組織の診断的評価において医師を非常に支援することができる。例の類似性は、分析モジュールを有して確立された特性パラメータを用いてここで測定される。このような状況において、確立された例が疾病の更なる経過又は更なる診断段階の結果等を記録する追加的情報を有することが、医師にとっては重要なことである。したがって医師は、観察されている組織の場合における疾病の典型的な経過に関する考えを迅速に得ることができる。
【0007】
組織に関連されるパラメータは、例えば自動化された画像処理方法を(部分的に)用いて分析モジュールによって確立され、各データレコードと共に格納される。該パラメータは、望ましくは、次の可変のもの、
特には三次元画像の場合に確定可能である組織の体積;組織のコンパクト性、偏心、針状、エッジコントラスト、均質性及び/又は不透明性の分布;(実質)組織を取り囲む細胞組織のテクスチャ;組織が接続されている血管の数;組織が位置決めされている体内領域(脳、肺、腸等);患者の年齢、性別又はリスクグループ等の患者関連のデータ、
のうち少なくとも1つであり得る。組織の一式の指紋は、選択された可変のものから作られ得るが、どの可変のものが組織の分類に極めて重要であるか及びその理由を詳細に知る必要はない。
【0008】
考慮される組織の特性パラメータと格納されたデータレコードを比較することができるよう、パラメータの(多次元)範囲上のメトリックが望ましくは定義付けられる。これに関連して、特性パラメータの機能についての可能な限り多くの先験的な情報は、有利に実施され、メトリックを有して確定された結果は最大限に可能な妥当性を有する。例えば、組織のエッジコントラクトが腫瘍の評価に対する大きな重要性を有すると判っている場合、該メトリックは、これらのパラメータを相応して強く重くする。更には、メトリックは、非線形、特には非並進不変であり得る。例えば、「体内領域」のパラメータによってメトリックを変化させることによって、体内領域(肺、腸等)に依存して、疑わしい組織の特定の特性パラメータが異なる意味を与えられ得るという事実を考慮に入れることができる。
【0009】
本発明の更なる面によれば、個々の関連付けられた組織の画像はまた、データベースモジュールのデータレコードにおいて有される。これらの画像によって、医師は、現在観察している組織とその目的に対して確立されたデータレコードとの間の直接的な目視比較をすることができる。
【0010】
該装置は、例えば組織の画像を表示する及び/又は確立されたデータレコードから情報を表示する、モニタ等のディスプレイ機器を追加的に有する。
【0011】
該装置の他の面によれば、これは、キーボード又はマウス等の入力手段を有する。該手段を用いて、分析モジュールにおける組織の相互分析が可能である。このようにして、例えば、医師は、画像上の疑わしき組織の中心又は端部に印をつけることができ、続いて分析モジュールは自動的にこの組織の更なるパラメータを確定する。
【0012】
本発明は、潜在的病理組織の画像の診断的評価を支援する方法に更に係る。該方法は、次の、
a) データベースを設定する段階と;
b) 画像に示された組織に関連される特性パラメータの一式を確立する段階と;
c) データベースからデータレコードを確立し、望ましくは表示する段階と、
を有する。段階a)は、同一の種類の組織に関連し、組織及び追加的情報の関連付けられた特性パラメータを有する個別の例を記録するデータレコードを有する。段階c)において、関連付けられた特性パラメータはデータレコードが段階b)において確立された特性パラメータの一式に近接して位置する。
【0013】
該方法は、上述された種類の装置を有して実行され得る段階を一般的な形で有する。従って、該方法の詳細、有利点、及び更なる面に関しては、読者は上記を参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のこれらの及び他の面は、以下に説明される実施例を参照して非制限的な例によって明らかに説明される。
【0015】
装置は、データ処理ユニット1(ワークステーション)によって略形成され、多種のモジュールを有する。これらのモジュールは、典型的には、(電子)メモリ及び関連付けられたプログラム(ソフトウェア)によって実行される。
【0016】
特に具体的に図示されていないX線CT又はMRI装置等の撮像装置から、対応するデータセットの形状における三次元画像7が、データ処理ユニット1に対して与えられる。例えば肺又は腸の写真であり得るこの画像には、腫瘍と確認された疑わしき組織8がある。かかる状況において、担当の放射線技師は、所見の鑑別診断、及び更なる診断又は治療段階についての決定をしなければならない。以下に説明される方法を介して、データ処理ユニット1は、該技師をこの件において支援する。
【0017】
該方法に関して、まず最初に、腫瘍8の画像7は、データ処理ユニット1の分析モジュール6において完全に自動的に又は半自動的に分析される。半自動的分析においては、放射線技師は、コンピュータのマウス(図示せず)を用いて、例えば関心の腫瘍8の領域を選択する。続いて腫瘍は、既知の画像処理のアルゴリズムを使用して、分析モジュール6によって三次元的に自動的に分割される。分析モジュール6は、腫瘍の特性パラメータp,p,...の一式9を定量的に更に確定する。該パラメータは、例えば、その体積、コンパクト性、偏心、針状、エッジコントラスト、均質性、不透明性分布、取り囲む実質組織の組織、腫瘍に供給する血管の数等であり、更には、撮像された体内領域、及び、患者の年齢、性別及びリスクグループ等の関連付けられる背景情報である。上述された全ての情報より、分析モジュール6は、腫瘍8の特性パラメータの一式9を作る。
【0018】
データ処理ユニット1は、データモジュール3を追加的に有し、該モジュールには、多数の記録された腫瘍のデータレコードが格納される。各データレコード4は、本願では、関連する腫瘍の(三次元)画像、その取り囲む細胞組織、及び関連付けられる特性パラメータの一式を有し、それらは分析モジュールに対して上述された通り定義付けられる。更には、各データレコード4は、現在検査されている腫瘍8の場合には(まだ)示されていない追加的な情報を有する。この追加的情報は、例えば、記録された腫瘍の確認済みの鑑別診断、その生体検査結果、疾病の更なる経過を有する。
【0019】
分析モジュール6において確定された現在考慮されている腫瘍8の特性パラメータp,p,...の一式9は、データベースモジュール3に送信され、これは、データベースにおいて、記録された例のデータレコード4を確認する。記録された例の関連付けられた特性パラメータは、供給された(図中点線で囲まれている)一式9の近隣に置かれる。特性パラメータのセットの間隔は、パラメータ範囲のメトリックを用いて確定される。このメトリックは、適切な手法で定義付けられ、臨床上の重要性に関連する腫瘍の類似及び相違を確定する。該メトリックは、本願では、特には異なる種類の腫瘍又は異なる体内領域に対して、異なって定義付けられ得る。該メトリックは、例えば多次元のパラメータ範囲においてユークリッド空間を用いて定義付けられ得、異なる軸は夫々(局所的に)異なって重くされる。
【0020】
現在の腫瘍8に類似するデータベースによって確認された、例えば10である適切な数の例4は、最終的に出力モジュール2に移される。(これらのデータレコード中3つのみが図中示されている。)出力モジュール2は、モニタ5上にこれらのデータレコードに属する画像を、例えば鑑別診断及び問題となっている患者の性別である関心の(追加的)情報と共に表示し得る。現在の腫瘍8の画像は、望ましくは同時にモニタ5に表示され、放射線技師が直接目視比較をできるようにする。更には、放射線技師は、確立された類似の場合の大半において、例えば良性又は悪性の腫瘍と診断されているか否かを、及び個々の疾病の更なる経過がどのようなものであるかを、容易に確認することができる。これは、医師の診断及び更なるアクション(生体検査、フォローアップ、切除等)の方針についての決断において、大きな支援となるが、該システム自体は、評価又は提案を行うものではなく、故に自主性のある医療判断に害を与えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】画像の診断的評価を支援する本発明に従った装置を概略的に図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在的病理組織の画像の診断的評価を支援する装置であって:
a) 分析モジュールと;
b) データベースモジュールと;
c) 出力モジュールと、
を有し、
前記a)を使用して、特性である組織に関連するパラメータの一式が、前記組織の画像から確立され得、
前記b)は、同一の種類の組織に関する格納されたデータレコードを有し、前記データレコードは、前記データレコードの関連付けられた特性パラメータ及び追加的な情報を有する個別の例を記録し、特性パラメータの所定の一式に対して、前記データベースモジュールは、特定パラメータが前記所定の一式に近接して位置する前記データレコードのそれらを確立することができる、
前記c)は、前記確立されたデータレコードの更なる処理に対するものである、
装置。
【請求項2】
前記組織の前記画像は、X線画像、MRI画像、又は超音波画像である、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記組織は、潜在的腫瘍である、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記組織に関連する前記パラメータは、次の可変のもの、
体積、コンパクト性、偏心、針状、エッジコントラスト、均質性、不透明性分布、取り囲む実質組織のテクスチャ、供給する血管の数、撮像される体内領域、及び、年齢、性別及び/又はリスクグループ等の患者関連のデータ、
のうち少なくとも1つを有する、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記追加的情報は、特には生体検査である診断結果及び/又は疾病経過を有する、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項6】
メトリックは、前記特性パラメータの範囲上で定義付けられる、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記データレコードは、前記関連付けられた組織の少なくとも1つの画像を有する、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記組織の画像及び/又はデータレコードからの情報を表示するディスプレイ機器を有する、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記分析モジュールにおいて前記組織の前記画像の相互分析に対する入力手段を有する、ことを特徴とする、
請求項1記載の装置。
【請求項10】
潜在的病理組織の画像の前記診断的評価を支援する方法であって、次の段階:
a) データベースを設定する段階と;
b) 前記潜在的病理組織に関連付けられる特性パラメータの一式を確立する段階と;
c) 前記データベースからデータレコードを確立する段階と、
を有し、
前記段階a)は、かかる組織に関連し且つ前記組織及び追加的情報の関連付けられた特性パラメータを有する個別の例を記録するデータレコードを有し、
前記段階c)では、付随する特性パラメータはデータレコードが段階b)において確立された特性パラメータの一式に近接して位置する、
方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−514464(P2007−514464A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539037(P2006−539037)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052322
【国際公開番号】WO2005/048162
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】