説明

画像プローブの校正方法とタッチプローブ

【課題】簡易的な構成で画像プローブの校正を高精度に行いながら画像プローブによる被測定物の対象拡大と画像プローブの使い勝手の向上が可能となる。
【解決手段】撮像方向(光軸Dの方向)を垂直方向に保持し画像プローブデータを取得する工程(ステップS2)と、撮像方向を所望角度に傾斜させ傾斜角度データを取得する工程(ステップS8)と、プローブ交換工程(ステップS10)と、撮像方向を垂直方向に保持した際の初期角度でタッチプローブ118を保持しタッチプローブデータを取得する工程(ステップS12)及び位置関係データを取得する工程(ステップS16)と、傾斜角度データでタッチプローブ118を傾斜させ傾斜タッチプローブデータを取得する工程(ステップS20)と、画像プローブデータ等に基づいて、所望角度への傾斜後の画像プローブ116の焦点位置及び光軸D周りの回転角を校正する工程(ステップS22)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像プローブの校正方法とタッチプローブに係り、特に、簡易的な構成で画像プローブの校正を高精度に行いながら画像プローブによる被測定物の対象拡大と画像プローブの使い勝手の向上を可能とする画像プローブの校正方法とその校正のために使用されるタッチプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物を撮像する画像プローブと、該被測定物が載置されるテーブルと、を有する三次元測定機では、画像プローブの撮像方向が被測定物を載置するテーブルに対する垂直方向に固定されていた。しかし、近年、三次元測定機の被測定物の対象拡大を目的として、撮像方向を垂直方向から傾斜させて使用したいという要望が出てきた。しかしながら、撮像方向を所望角度に変更すると、その所望角度においてその都度校正を行う必要が出てくる。
【0003】
そこで、特許文献1に示すような三次元測定機では、図9に示す如く、画像プローブ16の対物レンズ16Aの焦点深度DF以下の半径寸法に形成された球部22Bを有する基準球22に、前記所望角度に撮像方向(光軸Dの方向)を傾斜した状態で対物レンズ16Aの焦点距離FLを合わせることで、画像プローブ16の校正を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−139139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、撮像方向の垂直方向からの傾斜角度についての校正はできるものの、光軸D周りの回転角(画像プローブの傾斜角度変更時のヨーイングの角度とも称す)については何ら情報を得ることができず、光軸D周りの回転角を校正することはできなかった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、簡易的な構成で画像プローブの校正を高精度に行いながら画像プローブによる被測定物の対象拡大と画像プローブの使い勝手の向上を可能とする画像プローブの校正方法とその校正のために使用されるタッチプローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、被測定物を撮像する画像プローブと、該被測定物が載置されるテーブルと、前記画像プローブに接続されて該画像プローブの撮像方向を前記テーブルに対する垂直方向から所望角度に傾斜させる傾斜機構と、を有する三次元測定機において、前記撮像方向を前記所望角度に傾斜させて用いるために、前記画像プローブを校正するために前記テーブルに配置されるとともに中心軸を有し平面視直線部と該中心軸を中心とした平面視円弧部とを備える校正ゲージと、前記傾斜機構に接続され傾斜可能とされるとともにスタイラス先端となるチップを少なくとも2つ備えるタッチプローブと、該タッチプローブを校正するために前記テーブルに配置された基準球と、を使用する画像プローブの校正方法であって、前記撮像方向を前記垂直方向に保持し、前記校正ゲージを前記画像プローブで撮像し、この撮像結果である画像プローブデータを取得する画像プローブデータ取得工程と、前記撮像方向を前記所望角度に傾斜させ、その際の前記傾斜機構の傾斜角度データを取得する傾斜角度データ取得工程と、前記傾斜機構に接続された前記画像プローブを前記タッチプローブに交換するプローブ交換工程と、前記撮像方向を前記垂直方向に保持した際の前記傾斜機構による初期角度で前記タッチプローブを保持し、該タッチプローブの前記チップそれぞれで前記基準球を測定し、この測定結果であるタッチプローブデータを取得するタッチプローブデータ取得工程と、前記初期角度で前記タッチプローブを保持し、前記チップの1つで前記校正ゲージを測定し、この測定結果である位置関係データを取得する位置関係データ取得工程と、前記傾斜角度データで前記タッチプローブを傾斜させ、前記チップそれぞれで前記基準球を測定し、この測定結果である傾斜タッチプローブデータを取得する傾斜タッチプローブデータ取得工程と、前記画像プローブデータと前記タッチプローブデータと前記位置関係データと前記傾斜タッチプローブデータとに基づいて、前記撮像方向の前記所望角度への傾斜後の該画像プローブの焦点位置及び光軸周りの回転角を校正するプローブ校正工程と、を含むようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0008】
本願の請求項2に係る発明は、更に、前記画像プローブデータ取得工程の直後に、前記画像プローブデータから前記校正ゲージの中心位置と該校正ゲージの前記平面視直線部の傾きとを求める初期画像解析工程を含むようにしたものである。
【0009】
本願の請求項3に係る発明は、更に、前記初期画像解析工程の直後に、前記校正ゲージの中心位置と該校正ゲージの前記平面視直線部の傾きとから、前記所望角度への傾斜前の前記焦点位置及び前記光軸周りの回転角を校正する初期画像プローブ校正工程を含むようにしたものである。
【0010】
本願の請求項4に係る発明は、更に、前記タッチプローブデータ取得工程の直後に、前記タッチプローブデータに基づいて前記チップそれぞれの位置及び大きさを求め、該位置及び大きさを校正する初期タッチプローブ校正工程を含むようにしたものである。
【0011】
本願の請求項5に係る発明は、更に、前記位置関係データ取得工程の直後に、前記位置関係データに基づいて前記所望角度への傾斜前の前記画像プローブの前記焦点位置に対する前記校正ゲージの測定に用いた前記チップの座標計測位置のオフセット値を求めるオフセット値取得工程を含むようにしたものである。
【0012】
本願の請求項6に係る発明は、請求項5に記載の画像プローブの校正方法に用いられるタッチプローブであって、前記タッチプローブが前記傾斜機構に接続された状態で前記傾斜機構の前記垂直方向から該タッチプローブを傾斜させるための軸中心から前記タッチプローブの前記校正ゲージの測定に用いた前記チップまでの距離を、前記画像プローブが前記傾斜機構に接続された状態で前記軸中心から前記画像プローブの焦点位置までの距離と等しくしたものである。なお、ここでの距離の関係は必ずしも厳密でなくてもよく、相応に等しいとみなせる程度の差を許容する。
【0013】
本願の請求項7に係る発明は、更に、前記タッチプローブの重心位置を前記画像プローブの重心位置と等しくしたものである。なお、ここでの重心位置の関係は必ずしも厳密でなくてもよく、相応に等しいとみなせる程度の差を許容する。
【0014】
本願の請求項8に係る発明は、更に、前記タッチプローブの質量を前記画像プローブの質量と等しくしたものである。なお、ここでの質量の関係は必ずしも厳密でなくてもよく、相応に等しいとみなせる程度の差を許容する。
【0015】
本願の請求項9に係る発明は、前記タッチプローブを構成し前記チップを備えるスタイラスを、十字型スタイラス、L字型スタイラス、若しくはT字型スタイラスとしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易的な構成で画像プローブの校正を高精度に行いながら画像プローブによる被測定物の対象拡大と画像プローブの使い勝手の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る三次元測定機を示す斜視図
【図2】同じく三次元測定機の画像プローブ(A)、タッチプローブ(B)、基準球(C)、そして校正ゲージ(D)を示す斜視図
【図3】同じく三次元測定機の画像プローブの校正のための処理手順を示すフローチャート図
【図4】同じく画像プローブの校正方法の画像プローブデータ取得を示す斜視図(A)と画像プローブで得られる校正ゲージの画像を示す図(B)
【図5】同じく画像プローブの校正方法の傾斜角度データ取得工程を示す斜視図
【図6】同じく画像プローブの校正方法のタッチプローブデータ取得工程及び位置関係データ取得工程を示す斜視図
【図7】同じく画像プローブの校正方法の傾斜タッチプローブデータ取得工程を示す斜視図
【図8】タッチプローブのバリエーションを示す斜視図
【図9】従来技術における画像プローブの校正方法を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0019】
最初に、本実施形態に係る三次元測定機の構成について、主に図1、図2を用いて説明する。
【0020】
三次元測定機100は、図1、図2に示す如く、テーブル102と移動機構104と傾斜機構114と画像プローブ116とタッチプローブ118とプローブ交換機120と基準球122と校正ゲージ124と制御部とデータ処理部(図示せず)を備える。
【0021】
前記テーブル102は、図1に示す如く、平板状であり上面が水平(XY平面と平行)に保たれている。そして、テーブル102は上記三次元測定機100の構成要素を支持しており、図示せぬ被測定物がテーブル102上に載置される。
【0022】
前記移動機構104は、図1に示す如く、コラム106とビーム108とXスライダ110とZスライダ112とを有する。コラム106は、テーブル102上のX軸方向両端にそれぞれ立設され、Y軸方向に沿って移動可能とされている。ビーム108は、2つのコラム106の上端間に架け渡された梁である。Xスライダ110は、ビーム108に支持され、ビーム108上でX軸方向に沿って移動可能とされている。Zスライダ112は、Xスライダ110に支持され、テーブル102に対する垂直方向(Z軸方向)に移動可能とされている。このため、Zスライダ112に支持される傾斜機構114や画像プローブ116等は、XYZ空間で自在に位置を変更することができる。
【0023】
前記傾斜機構114は、図1に示す如く、Zスライダ112に支持され、その下端で画像プローブ116やタッチプローブ118を支持している。そして、傾斜機構114は、Z軸方向に沿った回転軸Aと、Z軸方向と直交する方向に沿った回転軸Bと、接続される画像プローブ116やタッチプローブ118(単にプローブとも称する)の方向を定めるプローブ軸Cと、を備えている。このため、傾斜機構114は、回転軸A、Bにおける回転角を変更することで、プローブ軸Cを自在に傾斜させることができる。即ち、傾斜機構114は、プローブ軸Cを傾斜させることで、画像プローブ116の撮像方向(光軸Dの方向)を、テーブル102に対する垂直方向から任意の角度(所望角度)に傾斜させることができる。なお、傾斜機構114には、接続された画像プローブ116を取り外して、画像プローブ116の取り付けられていた部分にタッチプローブ118を接続することができる。
【0024】
前記画像プローブ116は、図2(A)に示す如く、対物レンズ116Aを備え、焦点距離FLにくる撮像対象(被測定物など)を明瞭な画像として撮像することができる。対物レンズ116Aにより画像プローブ116の撮像方向(光軸Dの方向)と光軸D上に来る焦点位置が定められている。対物レンズ116Aの周囲には、リングライト116Bが設けられている。リングライト116Bは、複数の発光ダイオードを備えて、撮像対象を照明する。
【0025】
前記タッチプローブ118は、図2(B)に示す如く、円筒形状で傾斜機構114に接続され傾斜可能とされており、プローブモジュール118Aと、プローブモジュール118Aの先端に接続されるスタイラス118Bと、を備える。ここで、プローブモジュール118Aの軸方向が軸E方向とされている。スタイラス118Bは、十字型スタイラスであり、3つの軸部118C(1つの軸部が軸E方向に伸び、残り2つの軸部は1直線に連結され、その中央で該1つの軸部と直交して連結されている)と、軸部118Cのそれぞれ先端に球部118Dと、を備える。球部118Dは、スタイラス先端となるチップと称される(なお、便宜上、軸E上の球部118Dを標準チップ118E、その他の2つの球部118Dを補助チップ118Fと称する)。スタイラス118Bは、傾斜機構114による傾斜方向と直角に交わる方向(軸E方向に対して横方向)かつ回転軸Bと同位置平面内で平行に設けるのが好ましい。具体的な材質として、軸部118Cにはステンレス、超硬、セラミックス、カーボンファイバなどを用いることができ、球部118Dにはルビー、窒化珪素、ジルコニア等を用いることができる。
【0026】
なお、タッチプローブ118が傾斜機構114に接続された状態で傾斜機構114のテーブル102に対する垂直方向(Z方向)からタッチプローブ118を傾斜させるための軸(回転軸B)中心からタッチプローブ118の標準チップ118E(の先端)までの距離L2は、画像プローブ116が傾斜機構114に接続された状態で回転軸B中心から画像プローブ116の焦点位置までの距離L1と等しくされている。また、タッチプローブ118の重心位置G2は画像プローブ116の重心位置G1と等しくされている。更に、タッチプローブ118の質量は画像プローブ116の質量と等しくされている。このため、質量に依る傾斜機構114による傾斜角度の誤差が画像プローブ116とタッチプローブ118とで等価となり、画像プローブ116をより高精度に校正することができる。これらの関係は、厳密であるほど校正精度が向上するが、必ずしも厳密でなくてもよく、相応に等しいとみなせる程度の差(2割程度の違い)を許容する。最低限、重心位置G1、G2や質量を把握していなくても距離L1、L2の長さを把握しておくだけでも、その長さの比率から相応に高い精度の校正が可能である。なお、距離L1、L2を等しくするために、例えばタッチプローブに延長用の筒状部材(エクステンション)を組み合わせることで実現するようにしてもよい。
【0027】
前記プローブ交換機120は、テーブル102上に配置・固定され、傾斜機構114に接続されていないブローブ(図1では、タッチプローブ118)を保持している。例えば移動機構104により画像プローブ116をプローブ交換機120の所定の場所まで移動させることで、傾斜機構114に接続された画像プローブ116を取り外して、傾斜機構114の画像プローブ116の取り付けられていた部分にタッチプローブ118を自動的に接続することができる。同様にして、タッチプローブ118から画像プローブ116への自動交換も行うことができる。
【0028】
前記基準球122は、図2(C)に示す如く、軸部122Aと球部122Bとを有し、タッチプローブ118を校正するためにテーブル102に配置されている。軸部122Aは、図示せぬ固定部に立設され、固定部によりテーブル102に固定・配置される。球部122Bは、軸部122Aの先端に設けられた球体である。
【0029】
前記校正ゲージ124は、図2(D)に示す如く、画像プローブ116を校正するためにテーブル102に配置されるとともに中心軸Fを有する略円柱形状とされている。具体的には、校正ゲージ124は、中心軸Fを中心とした平面視円弧部124Aと平面視直線部124Bとからなる外側面を有した平面視D字の柱部材124Dと、柱部材124Dを支持しテーブル102に配置・固定される円柱部材124Eと、を有する。なお、柱部材124Dの上面124Cは、平坦にされている。また、平面視直線部124Bは、Y軸方向と平行となるようにされている。
【0030】
前記制御部とデータ処理部(併せて制御部とも称する)は、三次元測定機100全体を制御する。具体的には、移動機構104や傾斜機構114等を制御し、画像プローブ116やタッチプローブ118からの信号を処理する。なお、制御部には、記憶部が備えられており、移動機構104における移動データや傾斜機構114における傾斜角度データや画像プローブ116及びタッチプローブ118からの出力データ等を記憶することも可能とされている。
【0031】
次に、画像プローブ116を所望角度に傾斜させて用いる画像プローブ116の校正方法について、図3のフローチャートに従い説明する。
【0032】
最初に、図1、図4に示す如く、傾斜機構114に画像プローブ116を取り付ける。そして、図4(A)に示す如く、撮像方向(光軸Dの方向)をテーブル102に対する垂直方向に保持し、校正ゲージ124を画像プローブ116で撮像する。そして、この撮像結果である画像プローブデータを取得する(画像プローブデータ取得工程;図3のステップS2)。このとき、画像プローブ116は、移動機構104で校正ゲージ124の真上に移動される。なお、画像プローブ116で撮像されるのは、図4(B)に示す如く、校正ゲージ124の平面視円弧部124Aと平面視直線部124Bと柱部材124Dの上面124Cとである。また、このとき(撮像方向をテーブル102に対する垂直方向に保持した際)の傾斜機構114によるプローブ軸Cの角度は初期角度(データ)として図示せぬ記憶部に記憶される。
【0033】
次に、初期画像の解析を行う(初期画像解析工程;図3のステップS4)。具体的には、画像プローブデータから校正ゲージ124の中心位置(x0、y0、z0)と校正ゲージ124の平面視直線部124Bの傾きとを求める。平面視直線部124Bの傾きは、図4(B)の画面で示されるクロスラインCLからの傾斜角として求められる。
【0034】
次に、初期画像プローブ116の校正を行う(初期画像プローブ校正工程;図3のステップS6)。具体的には、校正ゲージ124の中心位置(x0、y0、z0)と校正ゲージ124の平面視直線部124Bの傾きとから、所望角度への傾斜前の画像プローブ116の焦点位置及び画像プローブ116の光軸D周りの回転角を校正する。この校正データ及び中心位置(x0、y0、z0)は、第1校正データとして図示せぬ記憶部に記憶される。
【0035】
次に、画像プローブ116の撮像方向を所望角度に傾斜し、その際の傾斜機構114によるプローブ軸Cの傾斜角度データを取得する(傾斜角度データ取得工程;図3のステップS8)。具体的には、図5に示す如く、テーブル102上に載置された被測定物WKに対して、移動機構104により画像プローブ116を移動させる。そして、被測定物WKの測定部位に従い、傾斜機構114により画像プローブ116の撮像方向(光軸Dの方向)を所望角度に傾斜させる。その際のプローブ軸Cの実際の傾斜角度データを図示せぬ記憶部に記憶する。
【0036】
次に、傾斜機構114に接続された画像プローブ116をタッチプローブ118に交換する(プローブ交換工程;図3のステップS10)。具体的には、傾斜機構114の撮像方向をテーブル102に対する垂直方向に戻し、移動機構104により画像プロープ116をプローブ交換機120の場所に移動させる。そして、傾斜機構114に接続された画像プローブ116を取り外して、画像プローブ116の取り付けられていた部分にタッチプローブ118を接続する。
【0037】
次に、撮像方向を垂直方向に保持した際の傾斜機構114による初期角度(データ)を読み出し、その初期角度とされたプローブ軸Cの傾斜機構114でタッチプローブ118を保持する。そして、タッチプローブ118のチップそれぞれで基準球122を測定し、この測定結果であるタッチプローブデータを取得する(タッチプローブデータ取得工程;図3のステップS12)。具体的には、図6に示す如く、タッチプローブ118を移動機構104で移動させ、基準球122を測定する。本実施形態では、基準球122の測定は、1つの標準チップ118Eと2つの補助チップ118Fで行われる。
【0038】
次に、タッチプローブデータに基づいて標準チップ118E、補助チップ118Fそれぞれの位置及び大きさを求め、それぞれの位置及び大きさを校正する(初期タッチプローブ校正工程;図3のステップS14)。この校正データは、第2校正データとして図示せぬ記憶部に記憶される。
【0039】
次に、前記初期角度でタッチプローブ118を保持したまま、標準チップ118Eで校正ゲージ124を測定し、この測定結果である位置関係データを取得する(位置関係データ取得工程;図3のステップS16)。具体的には、図6に示す如く、タッチプローブ118を移動機構104で移動させ、校正ゲージ124の平面視円弧部124Aと柱部材124Dの上面124Cとを測定する。
【0040】
次に、位置関係データに基づいて前記所望角度への傾斜前の画像プローブ116の焦点位置に対する標準チップ118Eの座標計測位置のオフセット値を求める(オフセット値取得工程;図3のステップS18)。具体的には、位置関係データから、校正ゲージ124の中心位置(x1、y1、z1)を求める。そこで、記憶部より画像プローブ116で測定した校正ゲージ124の中心位置(x0、y0、z0)を読み出し、その差分を求める。即ち、所望角度への傾斜前において、画像プローブ116で測定される座標とタッチプローブ118の標準チップ118Eで測定される座標との差分(画像プローブ116とタッチプローブ118との交換で生じるオフセット値)を求めることが可能となる。求められたオフセット値は、オフセットデータとして図示せぬ記憶部に記憶される。
【0041】
次に、傾斜角度データでタッチプローブ118を傾斜させ、標準チップ118E、補助チップ118Fそれぞれで基準球122を測定し、この測定結果である傾斜タッチプローブデータを取得する(傾斜タッチプローブデータ取得工程;図3のステップS20)。具体的には、記憶部から傾斜角度データを読み出して、その傾斜角度データに基づき傾斜機構114のプローブ軸Cを傾斜させる。そして、移動機構104でタッチプローブ118を移動させ、基準球122を全てのチップで測定する。
【0042】
次に、画像プローブデータとタッチプローブデータと位置関係データと傾斜タッチプローブデータ等とに基づいて、撮像方向(光軸Dの方向)の所望角度への傾斜後の画像プローブ116の焦点位置及び光軸D周りの回転角を校正する(プローブ校正工程;図3のステップS22)。具体的には、記憶部から第1校正データ、第2校正データ、オフセットデータ等を読み出す。そして、これらのデータに基づいて、標準チップ118Eで測定した傾斜タッチプローブデータから所望角度への傾斜後の画像プローブ116の焦点位置を求める。同時に、補助チップ118Fで測定した傾斜タッチプローブデータから光軸D周りの回転角(ヨーイングの角度)を求める。
【0043】
このように画像プローブ116を校正することで、画像プローブ116を所望角度に傾斜させて用いることが可能となる。
【0044】
本実施形態では、画像プローブ116を校正するためにタッチプローブ118を用いるが、タッチプローブ118は画像プローブ116と交換して傾斜機構114に接続される。このため、傾斜機構114にタッチプローブ118が継続的に接続された状態とはならず、例えばタッチプローブ118の存在で画像プローブ116の対物レンズ116Aの作動距離を短くすることや画像プローブ116の移動を制限するといったことを回避することが可能となる。同時に、画像プローブ116とタッチプローブ118の両方を同時に傾斜機構114に接続していないので、画像プローブ116の傾斜に際して傾斜機構114への大きな負荷を低減でき、傾斜機構114の傾斜機能の精度低下を防止することができる。
【0045】
また、距離L1、L2は必ずしも等しい必要はなく画像プローブ116の校正が可能であるので、従来のタッチプローブを校正用のタッチプローブとして流用することができる。そして、基準球122や校正ゲージ124も従来のものを流用できるので、画像プローブ116の校正に係るコストアップを最小限にすることができる。
【0046】
また、記憶部に記憶するのは、第1校正データ、第2校正データなどであり、計測結果そのままのデータ量に比べてデータ量が少ないので、記憶部の容量を低減でき、三次元測定機100の低コスト化も促進することができる。
【0047】
即ち、本実施形態では、画像プローブ116をどのように傾斜させても、簡易的な構成で画像プローブ116の校正を高精度に行いながら画像プローブ116による被測定物の対象拡大と画像プローブ116の使い勝手の向上が可能となる。
【0048】
本発明について本実施形態を挙げて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことはいうまでもない。
【0049】
例えば、本実施形態においては、タッチプローブ118のスタイラス118Bは、図8(A)に示す十字型スタイラスであったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図8(B)で示すL字型スタイラスであってよいし、図8(C)で示すT字型スタイラス等であってもよい。このとき、いずれのスタイラス先端を標準チップとしてもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、校正データを求めて記憶部に記憶してから次の計測(データ取得)を行っていたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、次の計測と同時にデータの処理を行いその結果を記憶部に記憶してもよい。或いは、計測結果をそのまま記憶部に記憶して、処理を最後に一括して行い、校正を行ってもよい。この場合には、画像プローブやタッチプローブによる計測をより迅速に行うことができ、画像プローブの校正を高速に行うことも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、三次元測定機において画像プローブを傾斜させて使用する場合の画像プローブの校正をするのに好適である。
【符号の説明】
【0052】
16、116…画像プローブ
22、122…基準球
100…三次元測定機
102…テーブル
104…移動機構
106…コラム
108…ビーム
110…Xスライダ
112…Zスライダ
114…傾斜機構
116…画像プローブ
118、218、318…タッチプローブ
120…プローブ交換機
124…校正ゲージ
A、B…傾斜機構の回転軸
C…傾斜機構のプローブ軸
D…画像プローブの光軸
E…タッチプローブの軸
F…校正ゲージの中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を撮像する画像プローブと、該被測定物が載置されるテーブルと、前記画像プローブに接続されて該画像プローブの撮像方向を前記テーブルに対する垂直方向から所望角度に傾斜させる傾斜機構と、を有する三次元測定機において、前記撮像方向を前記所望角度に傾斜させて用いるために、前記画像プローブを校正するために前記テーブルに配置されるとともに中心軸を有し平面視直線部と該中心軸を中心とした平面視円弧部とを備える校正ゲージと、前記傾斜機構に接続され傾斜可能とされるとともにスタイラス先端となるチップを少なくとも2つ備えるタッチプローブと、該タッチプローブを校正するために前記テーブルに配置された基準球と、を使用する画像プローブの校正方法であって、
前記撮像方向を前記垂直方向に保持し、前記校正ゲージを前記画像プローブで撮像し、この撮像結果である画像プローブデータを取得する画像プローブデータ取得工程と、
前記撮像方向を前記所望角度に傾斜させ、その際の前記傾斜機構の傾斜角度データを取得する傾斜角度データ取得工程と、
前記傾斜機構に接続された前記画像プローブを前記タッチプローブに交換するプローブ交換工程と、
前記撮像方向を前記垂直方向に保持した際の前記傾斜機構による初期角度で前記タッチプローブを保持し、該タッチプローブの前記チップそれぞれで前記基準球を測定し、この測定結果であるタッチプローブデータを取得するタッチプローブデータ取得工程と、
前記初期角度で前記タッチプローブを保持し、前記チップの1つで前記校正ゲージを測定し、この測定結果である位置関係データを取得する位置関係データ取得工程と、
前記傾斜角度データで前記タッチプローブを傾斜させ、前記チップそれぞれで前記基準球を測定し、この測定結果である傾斜タッチプローブデータを取得する傾斜タッチプローブデータ取得工程と、
前記画像プローブデータと前記タッチプローブデータと前記位置関係データと前記傾斜タッチプローブデータとに基づいて、前記撮像方向の前記所望角度への傾斜後の該画像プローブの焦点位置及び光軸周りの回転角を校正するプローブ校正工程と、
を含むことを特徴とする画像プローブの校正方法。
【請求項2】
更に、前記画像プローブデータ取得工程の直後に、前記画像プローブデータから前記校正ゲージの中心位置と該校正ゲージの前記平面視直線部の傾きとを求める初期画像解析工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像プローブの校正方法。
【請求項3】
更に、前記初期画像解析工程の直後に、前記校正ゲージの中心位置と該校正ゲージの前記平面視直線部の傾きとから、前記所望角度への傾斜前の前記焦点位置及び前記光軸周りの回転角を校正する初期画像プローブ校正工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の画像プローブの校正方法。
【請求項4】
更に、前記タッチプローブデータ取得工程の直後に、前記タッチプローブデータに基づいて前記チップそれぞれの位置及び大きさを求め、該位置及び大きさを校正する初期タッチプローブ校正工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像プローブの校正方法。
【請求項5】
更に、前記位置関係データ取得工程の直後に、前記位置関係データに基づいて前記所望角度への傾斜前の前記画像プローブの前記焦点位置に対する前記校正ゲージの測定に用いた前記チップの座標計測位置のオフセット値を求めるオフセット値取得工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像プローブの校正方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像プローブの校正方法に用いられるタッチプローブであって、
前記タッチプローブが前記傾斜機構に接続された状態で前記傾斜機構の前記垂直方向から該タッチプローブを傾斜させるための軸中心から前記タッチプローブの前記校正ゲージの測定に用いた前記チップまでの距離は、前記画像プローブが前記傾斜機構に接続された状態で前記軸中心から前記画像プローブの焦点位置までの距離と等しくされていることを特徴とするタッチプローブ。
【請求項7】
更に、前記タッチプローブの重心位置は前記画像プローブの重心位置と等しくされていることを特徴とする請求項6に記載のタッチプローブ。
【請求項8】
更に、前記タッチプローブの質量は前記画像プローブの質量と等しくされていることを特徴とする請求項6又は7に記載のタッチプローブ。
【請求項9】
前記タッチプローブを構成し前記チップを備えるスタイラスは、十字型スタイラス、L字型スタイラス、若しくはT字型スタイラスとされていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のタッチプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145422(P2012−145422A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3441(P2011−3441)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】