説明

画像処理装置、画像出力装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】色圧縮を行う場合に、画像のディテールの見えを改善する画像処理装置等を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、入力画像の色域と画像出力装置の色域とに基づいて、画像データの色相成分に対応した明度成分の圧縮率及び彩度成分の圧縮率で明度成分及び彩度成分を圧縮する色圧縮部と、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、明度成分の補正量を明度成分の圧縮率に応じて算出する明度成分補正量算出部と、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、彩度成分の補正量を彩度成分の圧縮率に応じて算出する彩度成分補正量算出部と、明度成分の補正量を用いて、圧縮された明度成分を補正する明度成分補正部と、彩度成分の補正量を用いて、圧縮された彩度成分を補正する彩度成分補正部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像出力装置、画像処理方法及びプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像出力装置としての画像表示装置や画像印刷装置は、出力できる色の範囲が制限される。そのため、画像出力装置は、人間の眼で認識可能なすべての色を再現することができない。この色の範囲である色域は、画像出力装置の種類等によっても異なり、sRGB(standard RGB)やAdobeRGB等の種々の色域の画像が画像出力装置に対して入力され得る。従って、入力画像の色域と画像出力装置の色域とが異なる場合があり、画像出力装置の色域が入力画像の色域より狭いとき、色圧縮と呼ばれる処理により、画像出力装置の色域内に色を圧縮することが行われる。また、画像出力装置の色域が入力画像の色域より広いとき、色伸張と呼ばれる処理により、画像出力装置の色域内に色を伸張することが行われる。
【0003】
この色圧縮処理及び色伸張処理については、特許文献1に開示されている。この特許文献1には、入力画像の色域と画像出力装置の色域とを比較し、画像出力装置の色域より入力画像の色域が大きい色相は色圧縮を行い、画像出力装置の色域より入力画像の色域が小さい色相は色圧縮とは逆の色伸張を行う画像処理方法が記載されている。この画像処理方法では、入力画像が複数の領域に分割されている場合には、領域毎に上記の処理を行い、高彩度領域ほど、色圧縮時の圧縮率及び色伸張時の伸張率が高くなるように処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−83177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、高彩度領域ほど色圧縮時の圧縮率及び色伸張時の伸張率が高くなる。そのため、一般的な色圧縮処理と同様に、高彩度領域では、色圧縮時に色の変化が小さくなってしまい、画像のディテールが潰れたまま表現されてしまうという問題がある。また、特許文献1に開示された技術では、高明度領域では部分的に圧縮率が高くなる領域があり、その領域では色圧縮時に画像のディテールが潰れたまま表現されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明に係る幾つかの態様によれば、色圧縮を行う場合に、画像のディテールの見えを改善する画像処理装置、画像出力装置、画像処理方法及びプログラム等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、画像出力装置に対して供給される画像データを補正する画像処理装置が、入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記画像データの色相成分に対応した前記画像データの明度成分の圧縮率で前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記色相成分に対応した前記画像データの彩度成分の圧縮率で前記画像データの彩度成分を圧縮する色圧縮部と、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの明度成分の補正量を、前記明度成分の圧縮率に応じて算出する明度成分補正量算出部と、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの彩度成分の補正量を、前記彩度成分の圧縮率に応じて算出する彩度成分補正量算出部と、前記明度成分の補正量を用いて、前記色圧縮部によって圧縮された前記画像データの明度成分を補正する明度成分補正部と、前記彩度成分の補正量を用いて、前記色圧縮部によって圧縮された前記画像データの彩度成分を補正する彩度成分補正部とを含む。
【0008】
本態様においては、入力画像の色域と画像出力装置の色域とに基づいて、画像データの色相成分に対応した圧縮率で、画像データの明度成分及び彩度成分を圧縮する。この際、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの明度成分を上記の圧縮処理の際の圧縮率に応じて補正するようにしたので、明度成分の圧縮によって失われた部分を補正して、色圧縮の際に高明度側で失われる画像のディテール部の見えを改善することができるようになる。また、同様に、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの彩度成分を上記の圧縮処理の際の圧縮率に応じて補正するようにしたので、彩度成分の圧縮によって失われた部分を補正して、色圧縮の際に高彩度側で失われる画像のディテール部の見えを改善することができるようになる。
【0009】
(2)本発明の他の態様に係る画像処理装置は、前記入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記色相成分に応じて前記明度成分の圧縮率及び前記彩度成分の圧縮率を算出する圧縮率算出部を含み、前記色圧縮部が、前記圧縮率算出部によって算出された前記明度成分の圧縮率で、前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記圧縮率算出部によって算出された前記彩度成分の圧縮率で、前記画像データの彩度成分を圧縮する。
【0010】
本態様によれば、入力画像の色域と画像出力装置の色域とに基づいて圧縮率を算出するようにしたので、上記の効果に加えて、入力された画像データの明度成分及び彩度成分に対して最適な補正を行うことができ、色圧縮後の画像の高画質化に寄与できるようになる。
【0011】
(3)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記圧縮率算出部が、色圧縮前の明度成分Linと色圧縮後の明度成分Loutとの関係を示す明度補正カーブにおいて、前記明度成分の圧縮率として、前記明度成分Linにおける傾きの逆数ΔLin/ΔLoutを算出する。
【0012】
本態様によれば、明度補正カーブに従って行われる色圧縮処理における圧縮率を、実際に行われる色圧縮処理に忠実に反映させることができるので、上記の効果に加えて、色圧縮後の明度成分を高精度で補正することができるようになる。
【0013】
(4)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記圧縮率算出部が、色圧縮前の彩度成分Cinと色圧縮後の彩度成分Coutとの関係を示す彩度補正カーブにおいて、前記彩度成分の圧縮率として、前記彩度成分Cinにおける傾きの逆数ΔCin/ΔCoutを算出する。
【0014】
本態様によれば、彩度補正カーブに従って行われる色圧縮処理における圧縮率を、実際に行われる色圧縮処理に忠実に反映させることができるので、上記の効果に加えて、色圧縮後の彩度成分を高精度で補正することができるようになる。
【0015】
(5)本発明の他の態様に係る画像処理装置は、前記明度成分から所与の明度ノイズ成分を除去する明度ノイズ除去部を含み、前記明度成分補正部は、前記明度成分の補正量を用いて、前記明度ノイズ除去部によって前記明度ノイズ成分が除去された前記画像データの明度成分を補正する。
【0016】
本態様によれば、明度ノイズが除去された明度成分に対して補正量を用いて補正するようにしたので、上記の効果に加えて、ディテールと明度ノイズとを区別する画像信号の補正を高精度に行うことができるようになる。
【0017】
(6)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記明度成分補正量算出部が、前記明度ノイズ除去部によって除去される前記明度ノイズ成分の量が少ないほど、前記明度成分の増幅量が大きくなるように前記明度成分の補正量を算出する。
【0018】
本態様によれば、上記の効果に加えて、明度ノイズを増幅する事態を回避し、色圧縮による画像のディテール部の見えを確実に改善することができるようになる。
【0019】
(7)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、色圧縮前の明度成分をLin、色圧縮後の明度成分Loutとすると、前記明度成分補正量算出部が、前記明度の圧縮率が大きいほど前記明度成分の増幅量が大きくなるように前記明度成分の補正量を算出する。
【0020】
本態様によれば、上記の効果に加えて、色圧縮によって失われる画像のディテール部の見えを確実に改善することができるようになる。
【0021】
(8)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記明度成分補正量算出部が、前記空間周波数帯域において、低周波領域より高周波領域の前記明度成分の増幅量が大きくなるように前記明度成分の補正量を算出する。
【0022】
本態様によれば、上記の効果に加えて、明度ノイズを増幅することなく、色圧縮によって失われる画像のディテール部の見えを確実に改善することができるようになる。
【0023】
(9)本発明の他の態様に係る画像処理装置は、前記彩度成分から所与の彩度ノイズ成分を除去する彩度ノイズ除去部を含み、前記彩度成分補正部は、前記彩度成分の補正量を用いて、前記彩度ノイズ除去部によって前記彩度ノイズ成分が除去された前記画像データの彩度成分を補正する。
【0024】
本態様によれば、彩度ノイズが除去された彩度成分に対して補正量を用いて補正するようにしたので、上記の効果に加えて、ディテールと彩度ノイズとを区別する画像信号の補正を高精度に行うことができるようになる。
【0025】
(10)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記彩度成分補正量算出部が、前記彩度ノイズ除去部によって除去される前記彩度ノイズ成分の量が少ないほど、前記彩度成分の増幅量が大きくなるように前記彩度成分の補正量を算出する。
【0026】
本態様によれば、上記の効果に加えて、彩度ノイズを増幅する事態を回避し、色圧縮による画像のディテール部の見えを確実に改善することができるようになる。
【0027】
(11)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、色圧縮前の彩度成分をCin、色圧縮後の彩度分Coutとすると、前記彩度成分補正量算出部が、前記彩度の圧縮率が大きいほど前記彩度成分の増幅量が大きくなるように前記彩度成分の補正量を算出する。
【0028】
本態様によれば、上記の効果に加えて、色圧縮によって失われる画像のディテール部の見えを確実に改善することができるようになる。
【0029】
(12)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記彩度成分補正量算出部が、前記空間周波数帯域において、低周波領域より高周波領域の前記彩度成分の増幅量が大きくなるように前記彩度成分の補正量を算出する。
【0030】
本態様によれば、上記の効果に加えて、彩度ノイズを増幅することなく、色圧縮によって失われる画像のディテール部の見えを確実に改善することができるようになる。
【0031】
(13)本発明の他の態様は、画像データに基づいて画像を出力する画像出力装置が、上記のいずれか記載の画像処理装置と、前記画像処理装置によって補正された画像データに基づいて画像を出力する画像出力部とを含む。
【0032】
本態様によれば、色圧縮を行う場合に、画像のディテールの見えを改善する画像処理装置が適用された画像出力装置を提供できるようになる。
【0033】
(14)本発明の他の態様は、画像出力装置に対して供給される画像データを補正する画像処理方法が、入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記画像データの色相成分に対応した前記画像データの明度成分の圧縮率で前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記色相成分に対応した前記画像データの彩度成分の圧縮率で前記画像データの彩度成分を圧縮する色圧縮ステップと、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの明度成分の補正量を、前記明度成分の圧縮率に応じて算出する明度成分補正量算出ステップと、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの彩度成分の補正量を、前記彩度成分の圧縮率に応じて算出する彩度成分補正量算出ステップと、前記明度成分の補正量を用いて、前記色圧縮ステップにおいて圧縮された前記画像データの明度成分を補正する明度成分補正ステップと、前記彩度成分の補正量を用いて、前記色圧縮ステップにおいて圧縮された前記画像データの彩度成分を補正する彩度成分補正ステップとを含む。
【0034】
本態様においては、入力画像の色域と画像出力装置の色域とに基づいて、画像データの色相成分に対応した圧縮率で、画像データの明度成分及び彩度成分を圧縮する。この際、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの明度成分を上記の圧縮処理の際の圧縮率に応じて補正するようにしたので、明度成分の圧縮によって失われた部分を補正して、色圧縮の際に高明度側で失われる画像のディテール部の見えを改善することができるようになる。また、同様に、所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの彩度成分を上記の圧縮処理の際の圧縮率に応じて補正するようにしたので、彩度成分の圧縮によって失われた部分を補正して、色圧縮の際に高彩度側で失われる画像のディテール部の見えを改善することができるようになる。
【0035】
(15)本発明の他の態様に係る画像処理方法は、前記入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記色相成分に応じて前記明度成分の圧縮率及び前記彩度成分の圧縮率を算出する圧縮率算出ステップを含み、前記色圧縮ステップが、前記圧縮率算出ステップにおいて算出された前記明度成分の圧縮率で、前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記圧縮率算出ステップにおいて算出された前記彩度成分の圧縮率で、前記画像データの彩度成分を圧縮する。
【0036】
本態様によれば、入力画像の色域と画像出力装置の色域とに基づいて圧縮率を算出するようにしたので、上記の効果に加えて、入力された画像データの明度成分及び彩度成分に対して最適な補正を行うことができ、色圧縮後の画像の高画質化に寄与できるようになる。
【0037】
(16)本発明の他の態様は、プログラムが、上記のいずれか記載の画像処理方法を、コンピューターに実行させる。
【0038】
本態様によれば、画像のディテールの見えを改善し、コンピューターが実行可能なプログラムを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る一実施形態における画像表示システムの構成例のブロック図。
【図2】図1の画像処理部において行われる補正処理の説明図。
【図3】図1の画像処理部のハードウェア構成例のブロック図。
【図4】図3の圧縮率算出回路の動作説明図。
【図5】図5(A)、図5(B)は色圧縮処理の際に参照される明度補正カーブ及び彩度補正カーブの説明図。
【図6】図6(A)、図6(B)は色圧縮回路の動作説明図。
【図7】図3のディテール強調回路の構成例のブロック図。
【図8】図7のノイズ抽出・除去回路の構成例のブロック図。
【図9】ディテール強調回路におけるHPF回路、LPF回路のフィルター特性の一例を示す図。
【図10】重み付け算出回路の動作説明図。
【図11】図10で説明した重み付け算出回路が出力する重み付け係数の説明図。
【図12】図7の多段フィルター回路の構成例のブロック図。
【図13】図7の明度信号補正量算出回路の構成例のブロック図。
【図14】図13の重み付け算出回路の動作説明図。
【図15】図14の明度ゲイン算出回路の動作説明図。
【図16】明度ゲイン算出回路によって算出される明度ゲインの説明図。
【図17】本実施形態における画像処理部のディテール強調処理の効果の説明図。
【図18】本実施形態における画像処理部の処理例のフロー図。
【図19】本実施形態における画像処理部の図18のディテール強調処理の処理例のフロー図。
【図20】本実施形態における画像処理部の図18のディテール強調処理の処理例のフロー図。
【図21】図1又は図3の投射部の構成例の図。
【図22】本実施形態の第1の変形例における明度信号補正量算出回路の構成例のブロック図。
【図23】図23(A)、図23(B)、図23(C)は図22の第1〜第3のLUTの動作説明図。
【図24】本実施形態の第2の変形例における明度信号補正量算出回路の構成例のブロック図。
【図25】図24のLUTの動作説明図。
【図26】本実施形態の第3の変形例におけるディテール強調回路におけるHPF回路、LPF回路のフィルター特性の一例を示す図。
【図27】本実施形態の第3の変形例における画像処理部のディテール強調処理の効果の説明図。
【図28】本実施形態の第4の変形例におけるプリンターの構成例のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0041】
また、以下の実施形態では、本発明に係る画像出力装置として画像表示装置を例に説明するが、本発明に係る画像出力装置が画像表示装置に限定されるものではない。同様に、本発明に係る画像出力装置が適用された画像出力システムとして画像表示システムを例に説明するが、本発明に係る画像出力装置が適用された画像出力システムが画像表示システムに限定されるものではない。また、この画像表示装置として画像投射装置であるプロジェクターを例に説明するが、本発明に係る画像表示装置がプロジェクターに限定されるものではない。
【0042】
1. 画像表示システム
図1に、本発明に係る一実施形態における画像表示システムの構成例のブロック図を示す。
【0043】
画像表示システム(広義には画像出力システム)10は、画像表示装置であるプロジェクター(広義には画像出力装置)20と、スクリーンSCRとを含む。プロジェクター20は、入力画像データに基づいて図示しない光源からの光を変調し、変調後の光をスクリーンSCRに投射することで画像を表示する。ここで、入力画像データにより表される入力画像の色域は、プロジェクター20(投射部100)の色域より部分的に広いところがあり、プロジェクター20は、入力画像データに対して色圧縮又は色伸張を行い、色圧縮後又は色伸張の画像データに基づいて画像を表示する。
【0044】
このプロジェクター20は、画像処理部30(広義には画像処理装置)と、投射部100(広義には画像出力部)とを含む。画像処理部30は、補正対象外の明度領域及び彩度領域に影響を与えることなく表示画像の低明度部や高明度部のディテール、低彩度部や高彩度部のディテールを表現できるように入力画像データを補正し、補正後の画像データを投射部100に出力する。投射部100は、画像処理部30からの画像データに基づいて変調した光をスクリーンSCRに投射する。このとき、画像処理部30は、入力画像データの色域と投射部100の色域とに基づいて色圧縮又は色伸張を行った場合でもディテールが強調されるように、圧縮率に応じて画像データを補正する。
【0045】
なお、図1では、画像処理部30がプロジェクター20の内部に設けられる例を示したが、画像処理部30は、プロジェクター20の外部に設けられたり、投射部100の内部に設けられたりしてもよい。
【0046】
2. 画像処理部
2.1 処理の概要
本実施形態では、画像データの明度成分及び彩度成分のそれぞれに対して、以下の補正処理を行うことで、入力画像のディテール部の明度変化及び彩度変化を増幅して、画像の見えを改善する。以下では、色伸張処理が色圧縮処理の圧縮方向が異なるものであるため、「色圧縮」に統一して説明することとする。従って、「伸張率」も「圧縮率」の1つとし、「1より小さい圧縮率」は「伸張率」と同じ意味を指す。
【0047】
図2に、図1の画像処理部30において行われる補正処理の説明図を示す。図2は、画像データの明度成分に対する色圧縮による補正処理の概要を表す。図2において、補正処理中の各画像データにより表される画像の特性として、横軸に画像の水平方向の位置、縦軸に明度レベルを模式的に表している。なお、図2では、後述する明度ノイズについては図示を省略している。
【0048】
入力画像IMGinは、例えば左側が低明度で、右側が高明度の画像であり、低明度領域においても微小な変化を有し、高明度領域においても微小な変化を有する。色圧縮手段C1は、色圧縮前の入力画像IMGinの明度成分と色圧縮後の明度成分との関係を示す明度補正カーブに従って色圧縮を行い、色圧縮後の出力画像IMG1を生成する。色圧縮手段C1は、例えば図2に示すような明度補正カーブに従って色圧縮を行う。その結果、出力画像IMG1では、高明度側でディテール部の情報が失われることになる。
【0049】
そこで、本実施形態では、色圧縮手段C1で行われた色圧縮処理における圧縮率を用いて、高明度側で失われたディテール部を強調する処理を行う。そのため、信号抽出手段L1は、色圧縮手段C1による色圧縮後の出力画像IMG1の画像データの明度成分のうち、所与の空間周波数帯域の明度成分の信号Lを抽出する。図2では、空間周波数に対応してゲインが設定されており、信号抽出手段L1はこのゲインが大きい空間周波数帯域の明度成分の信号Lを抽出する。
【0050】
明度ゲイン生成手段G1は、色圧縮手段C1で行われた圧縮率に対応したゲインgを生成する。明度ゲイン生成手段G1は、低明度側で小さく、明度度側になるほど大きくなるように、ゲインgを生成する。明度ゲイン生成手段G1は、例えば色圧縮手段C1で行われる色圧縮処理における明度補正カーブの傾きに対応してゲインgを生成する。乗算器M1は、信号抽出手段L1によって抽出された信号Lとゲインgとを乗算して、圧縮率に対応した補正量である補正データD1を生成する。この補正データD1は、低明度側では補正量が小さく、高明度側で補正量が大きくなるデータである。
【0051】
加算器A1は、色圧縮手段C1による色圧縮後の出力画像IMG1(明度成分)と補正データD1とを加算して、補正後の画像データを構成する明度信号(明度成分)Loutを出力する。
【0052】
なお、図示を省略するが、図2の入力画像IMGinの彩度成分についても、明度成分と同様に補正処理が行われる。この場合、彩度ゲイン生成手段は、明度補正カーブとは別の彩度補正カーブの傾きに対応してゲインを生成し、信号抽出手段によって抽出された信号Cと該ゲインとを乗算する。こうして得られた補正データは、低彩度側では補正量が小さく、高彩度側で補正量が大きくなるデータとなる。そして、色圧縮後の出力画像(彩度成分)と該補正データとを加算して、補正後の画像データを構成する彩度信号(彩度成分)Coutを出力する。
【0053】
こうして、明度成分及び彩度成分が補正された画像データが投射部100に対して出力される。これにより、色圧縮を行う場合に、画像のディテール部の見えを改善することができるようになる。
【0054】
2.2 構成例
〔全体構成〕
図3に、図1の画像処理部30のハードウェア構成例のブロック図を示す。図3は、入力画像データを模式的に表すと共に、投射部100もあわせて示している。なお、以下では、入力画像データにおいて、各画素の画素値がRGB表色系で表され、各画素がR成分、G成分及びB成分の画像データにより構成されるものとする。
【0055】
画像処理部30には、図示しない画像生成装置によって生成された入力画像データ2が入力される。画像処理部30は、入力画像データ2を用いて上記のように補正し、補正後の画像データを投射部100に対して出力する。このとき、入力元の入力画像の色域データと、出力先である投射部100の色域データとを取得し、両色域データに基づき色圧縮を行うと共に、この色圧縮処理の際の圧縮率に応じて画像データを補正する。
【0056】
ここで、画像生成装置の機能は、例えばパーソナルコンピューター(Personal Computer:PC)によって実現される。入力画像データ2は、各画素がR成分、G成分及びB成分の画像データにより構成される画像データ4と、画像データ4に対応した色域データ6とを含む。色域データ6は、画像データ4により表される入力画像の色空間の色域、又は該入力画像内の色の分布を内包するCIELAB色空間上の閉曲面のデータである。この色域データ6は、ICC(International Color Consortium)プロファイルやGamutID等の公知のデータ形式を有する。
【0057】
投射部100の色域データ8もまた、投射部100の内部又は外部に予め設けられており、画像処理部30が任意の手段によって取得できるようになっている。この色域データ8も、色域データ6と同じデータ形式であり、ICCプロファイルやGamutID等の公知のデータ形式を有する。なお、色域データ8のデータ形式が色域データ6のデータ形式と異なる場合には、例えば画像処理部30の内部又は外部において公知のデータ形式の変換処理により、両色域データのデータ形式を一致させる。また、色域データ8は、実際に投射部100により表示させた画像の測定データに基づいて生成されてもよい。
【0058】
このような色域データ6、8が入力される画像処理部30は、入力画像色域データ保存部32、表示装置色域データ保存部34、圧縮率算出回路(圧縮率算出部)36、RGB→L変換回路40、色圧縮回路(色圧縮部)50、ラインメモリー60、L→RGB変換回路70、ディテール強調回路(ディテール強調部)200L、200Cを含む。
【0059】
入力画像色域データ保存部32は、画像生成装置からの入力画像データ2を構成する色域データ6を保存する。表示装置色域データ保存部34は、投射部100等に対して読み出し制御を行うことで取得された色域データ8を保存する。
【0060】
圧縮率算出回路36は、入力画像色域データ保存部32に保存された色域データと表示装置色域データ保存部34に保存された色域データとに基づいて、入力画像の色域内の色を投射部100の色域内の色に対応付ける処理を行う。なお、入力画像色域データ保存部32に保存された色域データのデータ形式が、表示装置色域データ保存部34に保存された色域データのデータ形式と異なる場合には、圧縮率算出回路36において、両色域データのデータ形式を一致させる変換処理を行う。
【0061】
図4に、図3の圧縮率算出回路36の動作説明図を示す。図4は、横軸にCIELAB色空間における彩度C、縦軸にCIELAB色空間における明度Lをとり、入力画像データの色域と投射部100の色域とを2次元的に表したものである。
【0062】
例えば入力画像データの色域と投射部100の色域とが異なるとき、その色を投射部100の色域内の色に圧縮又は伸張する必要がある。より具体的には、入力画像データの色域内の色が投射部100の色域外の色であるとき、その色を投射部100の色域内の色に圧縮する必要があり、例えば図4に示すように、明度成分が圧縮又は伸張され、彩度成分が圧縮される。このとき、圧縮率算出回路36は、例えば入力画像データの色域の境界上の座標(Cin_0,Lin_0)を圧縮又は伸張して投射部100の色域の境界上の座標(Cout_0,Lout_0)となるように明度補正カーブ及び彩度補正カーブを、色相(色相成分)毎に生成する。
【0063】
図5(A)、図5(B)に、色圧縮処理の際に参照される明度補正カーブ及び彩度補正カーブの説明図を示す。図5(A)は、横軸に色圧縮前の明度、縦軸に色圧縮後の明度をとり、明度補正カーブの一例を表したものである。図5(B)は、横軸に色圧縮前の彩度、縦軸に色圧縮後の彩度をとり、彩度補正カーブの一例を表したものである。図5(A)、図5(B)において、図4に対応する部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0064】
図5(A)に示すように、対象画素の色圧縮前の明度をLin、対象画素の色圧縮後の明度をLoutとすると、圧縮率算出回路36は、例えばLin_0で傾きが変化するが、リニアに変化する明度補正カーブを色相毎に生成する。この明度補正カーブに従って、入力画像の色域内の色が、投射部100の色域内の色に1対1に対応付けられる。そして、圧縮率算出回路36は、いくつかのLinにおける傾きの逆数(=ΔLin/ΔLout)を圧縮率αとして求める。
【0065】
同様に、図5(B)に示すように、対象画素の色圧縮前の彩度をCin、対象画素の色圧縮後の彩度をCoutとすると、圧縮率算出回路36は、リニアに変化する彩度補正カーブを色相毎に生成する。この彩度補正カーブに従って、入力画像の色域内の色が、投射部100の色域内の色に1対1に対応付けられる。そして、圧縮率算出回路36は、いくつかのCinにおける傾きの逆数(=ΔCin/ΔCout)を圧縮率αとして求める。
【0066】
図3において、RGB→L変換回路40は、画像データ4を構成する各画素の画素値をRGB表色系からCIELAB色空間におけるL表色系に変換し、各画素値をL表色系における明度信号(明度成分)L、彩度信号(彩度成分)C、及び色相信号(色相成分)hに変換する。なお、本実施形態では、画像データ4の各画素の画素値のデータ形式がRGB形式であり、画像処理部30内で明度信号L、彩度信号C、及び色相信号hで処理するものとして説明するが、本実施形態は、画像データ4のデータ形式や画像処理部30内での信号形式に限定されるものではない。
【0067】
RGB→L変換回路40によって変換された色相信号hはラインメモリー60に供給され、ラインメモリー60は、RGB→L変換回路40からの色相信号hを保存する。
【0068】
RGB→L変換回路40によって変換された明度信号L、彩度信号C及び色相信号hは、色圧縮回路50に供給される。色圧縮回路50は、圧縮率算出回路36によって生成された明度補正カーブのうち、色相信号hに対応した明度補正カーブ(例えば、図5(A)参照)に従って、明度信号Lに対して色圧縮処理を行う。また、色圧縮回路50は、圧縮率算出回路36によって生成された彩度補正カーブのうち、色相信号hに対応した彩度補正カーブ(例えば、図5(B)参照)に従って、彩度信号Cに対して色圧縮処理を行う。
【0069】
図6(A)、図6(B)に、色圧縮回路50の動作説明図を示す。図6(A)は、明度信号Lに対して色圧縮処理を色圧縮回路50の動作説明図を表す。図6(B)は、彩度信号Cに対して色圧縮処理を色圧縮回路50の動作説明図を表す。
【0070】
色圧縮回路50は、圧縮率算出回路36によって算出された情報を、例えばルックアップテーブル(LookUp Table:以下、LUTと略す)形式で保存する。そして、色圧縮回路50は、このLUT形式で保存された情報を参照して、RGB→L変換回路40からの明度信号Lに基づき色圧縮後の明度信号を出力すると共に、RGB→L変換回路40からの彩度信号Cに基づいて色圧縮後の彩度信号を出力する。より具体的には、色圧縮回路50には、色相信号h毎に、圧縮率算出回路36によって算出された明度補正カーブ上の複数のサンプリング点における入力値Linと出力値Lout、各サンプリング点における圧縮率αがLUT形式で保存される。また、色圧縮回路50には、色相信号h毎に、圧縮率算出回路36によって算出された彩度補正カーブ上の複数のサンプリング点における入力値Cinと出力値Cout、各サンプリング点における圧縮率αがLUT形式で保存される。そして、RGB→L変換回路40からの明度信号Lが入力されたとき、色圧縮回路50は、RGB→L変換回路40からの色相信号hに対応する明度信号Lを入力値Linとして、これに対する出力値Loutを出力する。また、RGB→L変換回路40からの彩度信号Cが入力されたとき、色圧縮回路50は、RGB→L変換回路40からの色相信号hに対応する彩度信号Cを入力値Cinとして、これに対する出力値Coutを出力する。
【0071】
なお、色圧縮回路50は、入力値Linに応じて、LUTに記憶された2つのサンプリング点の情報を用いた公知の補間方法によって補間演算を行い出力値Loutを求める。これにより、色圧縮回路50は、サンプリング点以外の明度信号Lに対して、圧縮率算出回路36で生成された明度補正カーブに従った色圧縮後の明度信号を出力できる。色圧縮回路50は、図2の色圧縮手段C1の機能を実現する。同様に、色圧縮回路50は、入力値Cinに応じて、LUTに記憶された2つのサンプリング点の情報を用いた公知の補間方法によって補間演算を行い出力値Coutを求める。これにより、色圧縮回路50は、サンプリング点以外の彩度信号Cに対して、圧縮率算出回路36で生成された彩度補正カーブに従った色圧縮後の彩度信号を出力できる。
【0072】
色圧縮回路50は、出力値Lout、Coutが求められると、これに対応する圧縮率α、αも出力する。ラインメモリー60は、RGB→L変換回路40からの色相信号h、色圧縮回路50からの色圧縮後の明度信号、彩度信号及び圧縮率α、αを、互いに関連付けて保存する。なお、色圧縮回路50は、入力値Linに応じて、LUTに記憶された2つのサンプリング点における圧縮率を用いた公知の補間方法によって補間演算を行い、入力値Linに対応した圧縮率αを求める。また、色圧縮回路50は、入力値Cinに応じて、LUTに記憶された2つのサンプリング点における圧縮率を用いた公知の補間方法によって補間演算を行い、入力値Cinに対応した圧縮率αを求める。
【0073】
ディテール強調回路200Lは、ラインメモリー60に保存された色圧縮後の明度信号に対してディテール強調処理を行う。このディテール強調処理は、色圧縮後の明度信号の特定周波数成分に対してのみ、圧縮率に応じてそのディテール部(細部)の変化を増幅することで、他の部分に影響を与えることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善する処理である。また、このディテール強調処理では、ノイズを抽出して、抽出されたノイズ量に応じてディテール部を強調することで、ノイズを増幅させることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善する。
【0074】
ディテール強調回路200Cは、ラインメモリー60に保存された色圧縮後の彩度信号に対してディテール強調処理を行う。このディテール強調処理は、色圧縮後の彩度信号の特定周波数成分に対してのみ、そのディテール部(細部)の変化を増幅することで、他の部分に影響を与えることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善する処理である。また、このディテール強調処理では、ノイズを抽出して、抽出されたノイズ量に応じてディテール部を強調することで、ノイズを増幅させることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善する。
【0075】
ディテール強調回路200Lによってディテール強調処理が行われた明度信号及びディテール強調回路200Cによってディテール強調処理が行われた彩度信号は、これらに対応してラインメモリー60に保存される色相信号hと共に、L→RGB変換回路70に供給される。L→RGB変換回路70は、入力された明度信号、彩度信号、及び色相信号hに対して、各画素をRGB表色系の画素値に変換する。このL→RGB変換回路70によって変換されたRGB表色系の画素値が、投射部100に対して出力される。
【0076】
2.3 詳細な構成例
2.3.1 ディテール強調回路
ディテール強調回路200Lとディテール強調回路200Cは同様の構成を有しているため、以下ではディテール強調回路200Lについて説明する。なお、ディテール強調回路200Lの説明において「明度」の文言を「彩度」に置換することで、ディテール強調回路200Cについての説明とする。
【0077】
図7に、図3のディテール強調回路200Lの構成例のブロック図を示す。なお、図7には、図3のラインメモリー60、ディテール強調回路200C及びL→RGB変換回路70もあわせて図示している。
【0078】
ディテール強調回路200Lは、ノイズ抽出・除去回路(明度ノイズ除去部)210L、多段フィルター回路(信号抽出部)230L、明度信号補正量算出回路(明度成分補正量算出部)250L、明度信号補正回路(明度成分補正部)270Lを含む。
【0079】
ノイズ抽出・除去回路210Lは、ラインメモリー60に格納されている明度信号の空間周波数を解析する。より具体的には、ノイズ抽出・除去回路210Lは、明度信号の高周波成分を抽出すると共に、ラインメモリー60からの明度信号から明度ノイズを除去することができる。ノイズ抽出・除去回路210Lによって抽出された明度信号の高周波成分の絶対値である出力highLは、ノイズ抽出・除去回路210Lの解析結果として明度信号補正量算出回路250Lに供給される。ノイズ抽出・除去回路210Lによって明度ノイズが除去された明度信号は、明度信号NRとして明度信号補正回路270Lに供給される。
【0080】
多段フィルター回路230Lは、ラインメモリー60に格納された明度信号(色圧縮後の明度信号)から所与の空間周波数帯域の信号を抽出する。この多段フィルター回路230Lは、図2の信号抽出手段L1の機能を実現する。
【0081】
明度信号補正量算出回路250Lは、多段フィルター回路230Lの出力と、ラインメモリー60に保存されている圧縮率と、ノイズ抽出・除去回路210Lの解析結果とに基づいて、明度信号の補正量に対応する補正データVAを算出する。即ち、明度信号補正量算出回路250Lは、出力highL(ノイズ抽出・除去回路210Lの解析結果)及び圧縮率αに応じて、多段フィルター回路230Lによって抽出された所与の空間周波数帯域の明度信号に対する補正量を算出することができる。この明度信号補正量算出回路250Lは、図2の明度ゲイン生成手段G1の機能を実現することができる。
【0082】
明度信号補正回路270Lは、明度信号補正量算出回路250Lによって算出された補正データを用いて、ノイズ抽出・除去回路210Lによって明度ノイズが除去された明度信号NRを補正し、ディテール強調処理後の明度信号として出力する。
【0083】
同様に、ディテール強調回路200Cは、ノイズ抽出・除去回路(彩度ノイズ除去部)210C、多段フィルター回路(信号抽出部)230C、彩度信号補正量算出回路(彩度成分補正量算出部)250C、彩度信号補正回路(彩度成分補正部)270Cを含む。彩度信号補正量算出回路260Cは、彩度ゲイン算出回路260Cを含む。そして、ディテール強調回路200Cを構成する各部は、ディテール強調回路200Lの対応する各部と同様に動作する。
【0084】
こうしてディテール強調回路200Lによりディテール強調処理が行われた明度信号と、同様にディテール強調回路200Cによりディテール強調処理が行われた彩度信号と、該明度信号及び彩度信号に対応してラインメモリー60に保存される色相信号hとが、L→RGB変換回路70に供給される。
【0085】
以下では、ディテール強調回路200Lを構成する各部について詳細に説明する。
【0086】
〔ノイズ除去・抽出回路〕
図8に、図7のノイズ抽出・除去回路210Lの構成例のブロック図を示す。図8は、ラインメモリー60をあわせて図示している。なお、図8において、図7と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0087】
ノイズ抽出・除去回路210Lは、高周波成分抽出回路(高周波成分抽出部)212Lと、明度ノイズ除去回路(明度ノイズ除去部)220Lとを含む。高周波成分抽出回路212Lは、ラインメモリー60に保存された明度信号から、明度ノイズが含まれる所与の高周波成分を抽出して、その絶対値を出力highLとして出力する。明度ノイズ除去回路220Lは、ラインメモリー60に保存された明度信号から、明度ノイズを除去した明度信号NRを生成する。この際、明度ノイズ除去回路220Lは、高周波成分抽出回路212Lによって抽出された高周波成分を用いて、明度信号NRを生成する。
【0088】
高周波成分抽出回路212Lは、高域通過型フィルター(High Pass Filter:以下、HPFと略す)回路214Lを含む。HPF回路214Lには、ラインメモリー60から明度信号が入力され、該明度信号の高周波成分の絶対値を出力highLとして、明度信号補正量算出回路250Lや明度ノイズ除去回路220Lに出力する。このようなHPF回路214Lは、公知のHPF処理により、次式に従って出力highLを、高周波成分の絶対値として出力する。
【数1】

【0089】
ここで、highLはHPF回路214Lの出力、Lは入力明度信号、(x,y)は対象画素の座標であり、aHPFはフィルター係数、(u,v)は対象画素を中心とした相対座標系で上記の範囲をとり、sはフィルターのサイズを表す。sは、例えば「3」とすることができるが、「3」以外であってもよい。
【0090】
明度ノイズ除去回路220Lは、低域通過型フィルター(Low Pass Filter:以下、LPFと略す)回路222L、重み付け算出回路224L、乗算器226L、227L、加算器228Lを含む。LPF回路222Lには、ラインメモリー60から明度信号が入力され、該明度信号の低周波成分を通す。このようなLPF回路222Lは、公知のLPF処理により、次式に従って出力lowLを出力する。
【数2】

【0091】
ここで、lowLはLPF回路222Lの出力、Cは入力明度信号、(x,y)は対象画素の座標であり、aLPFはフィルター係数、(u,v)は対象画素を中心とした相対座標系で上記の範囲をとり、sはフィルターのサイズを表す。sは、例えば「5」とすることができるが、「5」以外であってもよく、HPF回路214Lのフィルターサイズより大きいことが望ましい。
【0092】
なお、図8のHPF回路214Lのフィルター特性とLPF回路222Lのフィルター特性とは、次のような関係を有することが望ましい。また、ディテール強調回路200LにおけるHPF回路214L及びLPF回路222Lと、ディテール強調回路200CにおけるHPF回路214C及びLPF回路222C(図示せず)とは、次のような関係を有することが望ましい。
【0093】
図9に、ディテール強調回路200L、200CにおけるHPF回路、LPF回路のフィルター特性の一例を示す。図9は、横軸に明度信号及び彩度信号の周波数、縦軸にゲインを表す。
【0094】
HPF回路214Lの出力は、明度信号の空間周波数が低い領域では小さくなり、明度信号の空間周波数が高い領域では大きくなる(図9のT1)。このHPF回路214Lのカットオフ周波数は、ωLHPFである。一方、LPF回路222Lの出力は、明度信号の空間周波数が低い領域では大きくなり、明度信号の空間周波数が高い領域では小さくなる(図9のT2)。このLPF回路222Lのカットオフ周波数は、ωLLPFである。ここで、HPF回路214Lのカットオフ周波数とLPF回路222Lのカットオフ周波数とは等しいことが望ましい(ωLHPF=ωLLPF=ωcut0)。これにより、元の明度信号の情報を欠落させることなく、明度信号を補正することができるようになる。
【0095】
同様に、ディテール強調回路200CのHPF回路(214C)の出力は、彩度信号の空間周波数が低い領域では小さくなり、彩度信号の空間周波数が高い領域では大きくなる(図9のT3)。このHPF回路のカットオフ周波数は、ωCHPFである。一方、ディテール強調回路200CのLPF回路(222C)の出力は、彩度信号の空間周波数が低い領域では大きくなり、彩度信号の空間周波数が高い領域では小さくなる(図9のT4)。このLPF回路のカットオフ周波数は、ωCLPFである。ここで、HPF回路のカットオフ周波数とLPF回路のカットオフ周波数とは等しいことが望ましい(ωCHPF=ωCLPF=ωcut0)。これにより、元の彩度信号の情報を欠落させることなく、彩度信号を補正することができるようになる。
【0096】
更に、ディテール強調回路200LにおけるHPF回路214LとLPF回路222Lのカットオフ周波数ωcut0は、ディテール強調回路200CにおけるHPF回路214CとLPF回路222Cのカットオフ周波数ωcut0と等しいことが望ましい。こうすることで、後段の処理において、明度信号及び彩度信号のそれぞれに対して所望の信号成分を抽出して、最適なディテール強調ができるようになる。
【0097】
図8に戻って説明を続ける。重み付け算出回路224Lは、高周波成分抽出回路212Lからの出力に応じて、重み付け量を算出する。重み付け算出回路224Lは、HPF回路214Lの出力highL対応した重み付け量をLUT形式で保存しており、HPF回路214Lからの出力に対応した値を読み出したり、HPF回路214Lからの出力に対応した複数の値を用いた公知の補間演算により得られた値を出力したりできるようになっている。
【0098】
図10に、重み付け算出回路224Lの動作説明図を示す。
【0099】
重み付け算出回路224Lは、HPF回路214Lの出力に応じて、乗算器226Lに対して重み付け係数KLPFを出力すると共に、乗算器227Lに対して重み付け係数KHPFを出力する。より具体的には、重み付け算出回路224Lは、HPF回路214Lからの出力に対応した重み付け係数KHPF、KLPFを予めLUT形式により記憶されている。即ち、重み付け算出回路224Lには、予めHPF回路214Lの出力に対応した重み付け係数(KHPFa,KLPFa)、(KHPFb,KLPFb)、(KHPFc,KLPFc)、・・・が記憶されており、HPF回路214Lの出力highLが入力されたとき、これに対応した重み付け係数KHPF、KLPFを出力するようになっている。
【0100】
図11に、図10で説明した重み付け算出回路224Lが出力する重み付け係数KHPF、KLPFの説明図を示す。図11は、横軸にHPF回路214Lの出力、縦軸に重み付け算出回路224Lが出力する重み付け量としての重み付け係数KHPF、KLPFを表す。
【0101】
重み付け算出回路224Lは、HPF回路214Lの出力highLが大きくなるに従って、値が大きくなる重み付け係数KHPFを記憶する(図11のT10)と共に、HPF回路214Lの出力highLが大きくなるに従って、値が小さくなる重み付け係数KLPFを記憶する(図11のT11)。なお、図11では、HPF回路214Lの出力highLに応じて重み付け係数KHPF、KLPFがリニアに増加又は減少しているが、所与の関数に従って重み付け係数KHPF、KLPFが増加又は減少していてもよい。
【0102】
図8において、乗算器226Lは、LPF回路222Lの出力と重み付け算出回路224Lからの重み付け係数KLPFとの乗算結果を出力し、加算器228Lに出力する。乗算器227Lは、HPF回路214Lの出力と重み付け算出回路224Lからの重み付け係数KHPFとの乗算結果を出力し、加算器228Lに出力する。加算器228Lは、乗算器226Lの乗算結果と乗算器227Lの乗算結果とを加算し、明度ノイズを除去した後の明度信号NRとして出力する。即ち、HPF回路214Lの出力をhighL、LPF回路222Lの出力をlowLとすると、明度ノイズ除去回路220Lは、次の式に従って明度信号NRを出力する。
【数3】

【0103】
上記のように、重み付け算出回路224Lが、図11に示すように重み付け係数KHPF、KLPFを出力するため、明度信号NRは、高周波の明度ノイズが除去された信号となる。HPF回路214Lの出力highLが小さい領域は、低周波成分が多い領域である。このような領域における微少な高周波成分はノイズである可能性が高いため、重み付け係数KHPFを小さくしてノイズを除去する。つまり、重み付け係数KHPFを小さくし、重み付け係数KLPFを大きくすることで、明度ノイズを強調させることなく、所望の明度信号NRを得ることができる。一方、HPF回路214Lの出力highLが大きい領域は、高周波成分が多い領域である。このような領域における高周波成分は本来の画像データである可能性が高いため、重み付け係数KHPFを大きくする。つまり、重み付け係数KHPFを大きくし、重み付け係数KLPFを小さくすることで、所望の明度信号NRを得ることができる。
【0104】
なお、図8では、ノイズ抽出・除去回路210Lが、高周波成分抽出回路212L及び明度ノイズ除去回路220Lを含む構成を有しているものとして説明したが、ノイズ抽出・除去回路210Lが高周波成分抽出回路212Lのみを含む構成を有し、ラインメモリー60に保存された明度信号をそのまま明度信号NRとして明度信号補正回路270Lに出力するようにしてもよい。
【0105】
〔多段フィルター回路〕
図12に、図7の多段フィルター回路230Lの構成例のブロック図を示す。図12は、ラインメモリー60もあわせて図示している。なお、図12において、図7と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0106】
多段フィルター回路230Lは、互いにフィルターサイズが異なる第1のフィルター回路232L、第2のフィルター回路234L、及び第3のフィルター回路236Lを含む。図12では、多段フィルター回路230Lが、3種類のフィルター回路でフィルター処理を行う例を説明するが、フィルター回路の数に本実施形態が限定されるものではない。即ち、多段フィルター回路230Lは、それぞれが抽出する信号の周波数帯域が異なる複数のフィルター回路を有し、各フィルター回路は、画像の水平方向及び垂直方向に並ぶ画素の画素値と、フィルター係数行列との畳み込み演算結果を出力できればよい。
【0107】
第1のフィルター回路232Lは、次の式に従ってフィルター処理された結果を出力することができる。
【数4】

【0108】
上式において、第1のフィルター回路232Lの出力をFO1、座標(x,y)の明度信号をL(x,y)、フィルター係数をa、(i,j)は対象画素を中心とした相対座標で上式の範囲をとり、フィルターサイズをsとする。各フィルター回路には、フィルターサイズに対応したライン数(垂直走査ライン数)の明度信号が入力される。
【0109】
なお、上式では、第1のフィルター回路232Lの出力について示したが、第2のフィルター回路234L及び第3のフィルター回路236Lも、フィルターサイズを除いて同様のフィルター処理結果を出力することができる(出力FO2、FO3)。
【0110】
本実施形態では、第1のフィルター回路232Lのフィルターサイズを「3」、第2のフィルター回路234Lのフィルターサイズを「5」、第3のフィルター回路236Lのフィルターサイズを「7」とする。しかしながら、第1のフィルター回路232L、第2のフィルター回路234L及び第3のフィルター回路236Lの各フィルター回路のフィルターサイズに本実施形態が限定されるものではない。
【0111】
〔明度信号補正量算出回路〕
図13に、図7の明度信号補正量算出回路250Lの構成例のブロック図を示す。図13において、図7と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。また、図13では、ラインメモリー60、多段フィルター回路230L、及びノイズ抽出・除去回路210Lをあわせて図示している。
図14に、図13の重み付け算出回路252Lの動作説明図を示す。
図15に、図13の明度ゲイン算出回路260Lの動作説明図を示す。
【0112】
明度信号補正量算出回路250Lは、重み付け算出回路252L、乗算器254L〜254L、加算器256L、乗算器258L、明度ゲイン算出回路260Lを含む。
【0113】
重み付け算出回路252Lには、ノイズ抽出・除去回路210Lの高周波成分抽出回路212LのHPF回路214Lによって生成された出力highLが入力される。そして、重み付け算出回路252Lは、図14に示すように、HPF回路214Lからの出力highLに応じて、重み付け係数g〜gを算出する。このような重み付け算出回路252Lは、入力をHPF回路214Lからの出力highLとし、出力を重み付け係数g〜gとするLUTにより実現される。そのため、重み付け算出回路252Lには、予めHPF回路214Lからの出力highLに対応した重み付け係数(ga,ga,ga)、(gb,gb,gb)、(gc,gc,gc)、・・・が記憶されており、HPF回路214Lから出力highLが入力されたとき、これに対応した重み付け係数を出力するようになっている。
【0114】
例えば、重み付け算出回路252Lは、HPF回路214Lの出力highLにより明度ノイズ成分の量が少ないほど、その値が大きくなる重み付け係数を出力することが望ましい。これにより、明度成分補正量算出回路250Lは、ノイズ抽出・除去回路210Lによって除去される明度ノイズ成分の量が少ないほど、明度成分の補正量(増幅量)を大きくすることができる。
【0115】
加算器256Lは、乗算器254L〜254Lの各乗算結果を加算し、その加算結果を乗算器258Lに出力する。この乗算器258Lには、更に、明度ゲイン算出回路260Lによって算出された明度ゲイン係数hが入力されている。
【0116】
明度ゲイン算出回路260Lには、ラインメモリー60に保存された圧縮率αが入力される。そして、明度ゲイン算出回路260Lは、図15に示すように、ラインメモリー60からの圧縮率αに応じて、明度ゲインhを算出する。
【0117】
このような明度ゲイン算出回路260Lは、入力をラインメモリー60からの圧縮率αとし、出力を明度ゲインhとするLUTにより実現される。そのため、明度ゲイン算出回路260Lには、予めラインメモリー60からの圧縮率αに対応した明度ゲインha、hb、hc、・・・が記憶されており、ラインメモリー60から圧縮率αが入力されたとき、これに対応した明度ゲインを出力するようになっている。
【0118】
図16に、明度ゲイン算出回路260Lによって算出される明度ゲインhの説明図を示す。
【0119】
明度ゲイン算出回路260Lが算出する明度ゲインhは、圧縮率αに対して、次の式で表されることが望ましい。
【数5】

【0120】
圧縮率αが1より大きい領域では、明度信号に対して色圧縮を行うことを意味し、圧縮率αが1より小さい領域では、明度信号対に対して色伸張を行うことを意味する。この明度ゲインhにより、圧縮率αが大きいほど、明度成分の補正量(増幅量)が大きくすることができる。これにより、色圧縮によってディテール部が潰れた場合でも、それに応じて補正データVAが大きくなり、ディテールの見えを改善することができるようになる。これに対して、圧縮率α<1のとき、明度ゲインhが0となるため、低明度側において補正量が大きくなることなく、低明度側の見えを維持できる。
【0121】
なお、彩度信号の圧縮率αについても、明度ゲインと同様に算出される彩度ゲインにより、圧縮率αが大きいほど、彩度成分の補正量(増幅量)が大きくすることができる。即ち、色圧縮によってディテール部が潰れた場合でも、それに応じて補正データが大きくなり、ディテールの見えを改善することができるようになる。
【0122】
図13において、乗算器258Lは、加算器256Lの加算結果に、明度ゲイン算出回路260Lからの明度ゲインhを乗算し、その乗算結果を、明度信号の補正量に対応した補正データVAとして出力する。この補正データVAは、明度信号補正回路270Lに入力される。明度信号補正回路270Lは、ノイズ抽出・除去回路210Lによって明度ノイズ成分が除去された明度信号NRに、この補正データVAを加算して、補正後の明度信号として出力する。
【0123】
このように、明度信号補正量算出回路250Lは、多段フィルター回路230L(広義には信号抽出回路)によって抽出された所与の空間周波数帯域の信号と、色圧縮処理における圧縮率αに対応して明度ゲイン算出回路260Lによって算出された明度ゲイン係数とに基づいて、明度信号の補正量を算出することができる。
【0124】
ディテール強調回路200Cを構成する各部も、図8〜図16と同様であり、圧縮率αを圧縮率αに、HPF回路の出力highLを出力highC等に置き換えることができる。従って、彩度信号補正量算出回路は、多段フィルター回路(広義には信号抽出回路)によって抽出された所与の空間周波数帯域の信号と、色圧縮処理における圧縮率αに対応して彩度ゲイン算出回路によって算出された彩度ゲイン係数とに基づいて、彩度信号の補正量を算出することができる。
【0125】
なお、明度信号補正量算出回路250Lは、図13に示す構成に限定されるものではない。例えば、図13において、重み付け算出回路252Lに多段フィルター回路230LからのFO1〜FO3を入力させるようにしてもよい。
【0126】
図17に、本実施形態における画像処理部30のディテール強調処理の効果の説明図を示す。図17は、横軸にディテール強調回路200LのHPF回路214L及びディテール強調回路200CのHPF回路214Cの出力レベル、縦軸に明度信号及び彩度信号の空間周波数を表している。
【0127】
本実施形態では、図17の明度信号補正領域LA1及び彩度信号補正領域CA1が示すように、明度信号及び彩度信号の低周波領域については、そのまま明度及び彩度が維持される。これに対して、明度信号及び彩度信号の高周波領域にかけて補正を行うことで、画像のディテール部の見えを改善する。このとき、明度信号及び彩度信号のそれぞれの高周波領域においてHPF回路の出力レベルが大きい領域ほど明度ノイズや彩度ノイズが多いと判断して、HPF回路の出力レベルが小レベルから中レベルである明度成分の所与のレベル範囲Lar、彩度成分の所与のレベル範囲Carの信号に対して補正を行う。
【0128】
従って、図17に示すように、HPF回路の出力レベルが大きい領域では、明度信号及び彩度信号の補正を行わないようにして明度ノイズ及び彩度ノイズを増幅することを避ける一方、HPF回路の出力レベルが中レベルから小レベルの領域にかけて、明度信号及び彩度信号を補正する。ここで、低周波領域より高周波領域の明度信号及び彩度信号の補正量(増幅量)が大きくなるように補正することで、色圧縮が行われた画像のディテール部の見えを改善することができる。
【0129】
また、本実施形態では、明度信号補正領域LA1の方が、彩度信号補正領域CA1より高周波側で補正が行われる。これにより、高彩度側より高明度側でディテールが潰れてしまう画像の見えを改善することができる。更に、明度信号補正領域LA1に比べて、彩度信号補正領域CA1は、HPF回路の出力レベルが大きい領域まで及ぶ。これにより、明度信号に比べて彩度信号の高周波成分についても補正することができ、明度ノイズを増幅することなく画像のディテール部の見えを改善することができる。
【0130】
以上のような構成を有する画像処理部30の処理は、ソフトウェア処理によって実現することもできる。この場合、画像処理部30は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:以下、CPUと略す)、読み出し専用メモリー(Read Only Memory:以下、ROMと略す)又はランダムアクセスメモリー(Random Access Memory:以下、RAMと略す)を有し、ROM又はRAMに格納されたプログラムを読み込んだCPUが、該プログラムに対応した処理を実行することで乗算器や加算器等のハードウェアを制御して、上記の彩度成分の補正処理を行う。
【0131】
図18に、本実施形態における画像処理部30の処理例のフロー図を示す。図18の処理をソフトウェアで実現する場合、画像処理部30が内蔵するROM又はRAMに図18に示す処理を実現するプログラムが格納される。
【0132】
まず、画像処理部30は、色域データ取得ステップとして、入力画像の色域データと投射部100の色域データを取得する(ステップS10)。ステップS10において取得された色域データは、画像処理部30が内蔵するRAMに格納される。このとき、両色域データのデータ形式は、ICCプロファイルやGamutID等の公知のデータ形式を有し、互いに異なるデータ形式の場合には、両色域データのデータ形式を一致させる変換処理を行う。
【0133】
次に、画像処理部30は、明度補正カーブ生成ステップ又は彩度補正カーブ生成ステップとして、図5(A)及び図5(B)で説明したように、色相毎に明度補正カーブ及び彩度補正カーブを生成する(ステップS12)。即ち、画像処理部30は、ステップS10において取得された入力画像の色域データと投射部100の色域データとに基づいて、入力画像データの色域の境界上の明度を圧縮又は伸張して投射部100の色域の境界上の明度となるように明度補正カーブを生成する。また、画像処理部30は、ステップS10において取得された入力画像の色域データと投射部100の色域データとに基づいて、入力画像データの色域の境界上の彩度を圧縮して投射部100の色域の境界上の彩度となるように彩度補正カーブを生成する。
【0134】
その後、画像処理部30は、圧縮率算出ステップとして、ステップS12において生成された各明度補正カーブについて圧縮率α、各彩度補正カーブについて圧縮率αを算出する(ステップS14)。この圧縮率αは、各明度補正カーブにおいて、いくつかのLinにおける傾きの逆数(=ΔLin/ΔLout)に相当する。また、圧縮率αは、各彩度補正カーブにおいて、いくつかのCinにおける傾きの逆数(=ΔCin/ΔCout)に相当する。
【0135】
続いて、画像処理部30は、入力画像データ受付ステップとして、入力画像に対応した入力画像データの受け付けを開始する(ステップS16)。ここでは、各画素の画素値がRGB表色系で表されているものとする。ステップS16において入力画像データが受け付けられると、画像処理部30は、RGB表色系で表される入力画像データの各画素の画素値をL表色系に変換し、明度信号L、彩度信号C及び色相信号hを算出する(ステップS18)。
【0136】
そして、画像処理部30は、色圧縮ステップとして、ステップS12において生成した明度補正カーブのうち、ステップS18において変換された色相信号hに対応した明度補正カーブに従って、ステップS18において変換された明度信号Lに対して色圧縮処理を行う。更に画像処理部30は、ステップS12において生成した彩度補正カーブのうち、ステップS18において変換された色相信号hに対応した彩度補正カーブに従って、ステップS18において変換された彩度信号Cに対して色圧縮処理を行う(ステップS20)。これにより、ステップS18において変換された明度信号Lを色圧縮処理(色伸張処理)した明度信号と、この色圧縮処理で用いた明度補正カーブ上での傾きに相当する圧縮率とが取得される。また、ステップS18において変換された彩度信号を色圧縮処理した彩度信号と、この色圧縮処理で用いた彩度補正カーブ上での傾きに相当する圧縮率とが取得される。
【0137】
画像処理部30は、ディテール強調処理ステップとして、ステップS20の色圧縮処理の結果として得られた色圧縮処理後の明度信号と、この色圧縮処理で用いた明度補正カーブ上での傾きに相当する圧縮率とを用いて、明度信号のディテール強調処理を行う。更に画像処理部30は、明度信号のディテール強調処理と同時に又はこれに続いて、ディテール強調処理ステップとして、ステップS20の色圧縮処理の結果として得られた色圧縮処理後の彩度信号と、この色圧縮処理で用いた彩度補正カーブ上での傾きに相当する圧縮率とを用いて、彩度信号のディテール強調処理を行う(ステップS22)。
【0138】
その後、画像処理部30は、ディテール強調処理後の明度信号及び彩度信号を、該明度信号及び該彩度信号に対応する色相信号hと共にRGB表色系に変換し(ステップS24)、投射部100にRGB表色系の画素値を出力する(ステップS26)。
【0139】
ここで、終了のとき(ステップS28:Y)、画像処理部30は、一連の処理を終了し(エンド)、終了ではないとき(ステップS28:N)、ステップS16に戻って、処理を継続する。
【0140】
図19に、本実施形態における画像処理部30の図18のディテール強調処理の処理例のフロー図を示す。図19に示す処理は、図18のステップS22において明度成分のディテール強調処理として行われる。図19の処理をソフトウェアで実現する場合、画像処理部30が内蔵するROM又はRAMに図19に示す処理を実現するプログラムが格納される。
【0141】
画像処理部30は、ステップS22においてディテール強調処理が行われると、まず、信号抽出ステップとして、明度信号の特定の空間周波数帯域を抽出する(ステップS40)。例えば、多段フィルター回路230Lにより所与の空間周波数帯域の明度信号を抽出したり、或いは、ソフトウェア処理で実現する場合には、CPUが多段フィルター回路230Lの機能を実現する乗算器や加算器を制御して上記の空間周波数帯域の明度信号を抽出したりする。
【0142】
その後、画像処理部30は、明度信号の空間周波数を解析する(ステップS42、ステップS44)。より具体的には、ステップS42では、画像処理部30は、高周波成分抽出ステップとして、色圧縮後の明度信号から所与の高周波成分の明度信号を抽出する。そして、ステップS44では、画像処理部30は、明度ノイズ除去ステップとして、色圧縮後の明度信号から明度ノイズ成分を除去する。
【0143】
そして、画像処理部30は、明度ゲイン算出ステップとして、図18のステップS14で算出された圧縮率αに対応した明度ゲインを算出する(ステップS46)。次に、画像処理部30は、明度成分補正量算出ステップとして、ステップS46で算出された明度ゲインを用いて、明度信号の補正量に対応する補正データを算出する(ステップS48)。即ち、ステップS48では、画像処理部30は、所与の空間周波数帯域の信号を、ステップS42で抽出された高周波成分の明度信号(HPF回路214Lの出力highL)に応じた係数で重み付けした後、ステップS46で算出された明度ゲインを乗算して補正データVAを生成する。或いはソフトウェア処理で実現する場合には、CPUが、信号抽出処理により抽出した信号に対して、ステップS42で抽出された高周波成分の明度信号に応じた係数で重み付けした後、ステップS46で算出された明度ゲインが乗算されて補正データVAとして出力する。
【0144】
そして、画像処理部30は、明度成分補正ステップとして、ステップS48で算出された補正量に対応した補正データVAを用いて、ステップS44において明度ノイズが除去された明度信号を補正し(ステップS50)、補正後の明度信号を出力して(ステップS52)、一連の処理を終了する(エンド)。即ち、ステップS50では、明度信号補正回路270Lが、色圧縮処理後の明度信号に、補正データVAに対応した補正信号を加算して、補正後の明度信号を生成する。或いは、ソフトウェア処理で実現する場合には、CPUが、色圧縮処理後の明度信号に、補正データVAに対応した補正信号を加算して、補正後の明度信号を生成する。
【0145】
図20に、本実施形態における画像処理部30の図18のディテール強調処理の処理例のフロー図を示す。図20に示す処理は、図20のステップS22において彩度成分のディテール強調処理として行われる。図20の処理をソフトウェアで実現する場合、画像処理部30が内蔵するROM又はRAMに図20に示す処理を実現するプログラムが格納される。
【0146】
画像処理部30は、ステップS22においてディテール強調処理が行われると、まず、信号抽出ステップとして、彩度信号の特定の空間周波数帯域を抽出する(ステップS60)。例えば、多段フィルター回路により所与の空間周波数帯域の彩度信号を抽出したり、或いは、ソフトウェア処理で実現する場合には、CPUが多段フィルター回路の機能を実現する乗算器や加算器を制御して上記の空間周波数帯域の彩度信号を抽出したりする。
【0147】
その後、画像処理部30は、彩度信号の空間周波数を解析する(ステップS62、ステップS64)。より具体的には、ステップS62では、画像処理部30は、高周波成分抽出ステップとして、色圧縮後の彩度信号から所与の高周波成分の彩度信号を抽出する。そして、ステップS64では、画像処理部30は、彩度ノイズ除去ステップとして、色圧縮後の彩度信号から彩度ノイズ成分を除去する。
【0148】
そして、画像処理部30は、彩度ゲイン算出ステップとして、図18のステップS14で算出された圧縮率αに対応した彩度ゲインを算出する(ステップS66)。次に、画像処理部30は、彩度成分補正量算出ステップとして、ステップS66で算出された彩度ゲインを用いて、彩度信号の補正量に対応する補正データを算出する(ステップS68)。即ち、ステップS68では、画像処理部30は、所与の空間周波数帯域の信号を、ステップS62で抽出された高周波成分の彩度信号(HPF回路の出力highC)に応じた係数で重み付けした後、ステップS66で算出された彩度ゲインを乗算して補正データを生成する。或いはソフトウェア処理で実現する場合には、CPUが、信号抽出処理により抽出した信号に対して、ステップS62で抽出された高周波成分の彩度信号に応じた係数で重み付けした後、ステップS66で算出された彩度ゲインが乗算されて補正データとして出力する。
【0149】
そして、画像処理部30は、彩度成分補正ステップとして、ステップS68で算出された補正量に対応した補正データを用いて、ステップS64において彩度ノイズが除去された彩度信号を補正し(ステップS70)、補正後の彩度信号を出力して(ステップS72)、一連の処理を終了する(エンド)。即ち、ステップS70では、ディテール強調回路200Cの彩度信号補正回路が、色圧縮処理後の彩度信号に、補正データに対応した補正信号を加算して、補正後の彩度信号を生成する。或いは、ソフトウェア処理で実現する場合には、CPUが、色圧縮処理後の彩度信号に、補正データに対応した補正信号を加算して、補正後の彩度信号を生成する。
【0150】
なお、図18、図19又は図20に示す処理において、各ステップの順序を適宜入れ替えても、同様の処理を実現できる。
【0151】
このように各画素の画素値が補正されたRGB表色系の画像データは、投射部100に対して出力される。投射部100は、この画像処理部30からの画像データに基づいて、光源からの光を変調し、変調後の光をスクリーンSCRに投射する。
【0152】
3. 投射部
図21に、図1又は図3の投射部100の構成例の図を示す。図21では、本実施形態における投射部100が、いわゆる3板式の液晶プロジェクターにより構成されるものとして説明するが、本発明に係る画像出力装置としての投射部がいわゆる3板式の液晶プロジェクターにより構成されるものに限定されるものではない。即ち、以下では、1画素がR成分のサブ画素、G成分のサブ画素、及びB成分のサブ画素により構成されるものとして説明するが、1画素を構成するサブ画素数(色成分数)に限定されるものではない。
【0153】
投射部100は、光源110、インテグレーターレンズ112、114、偏光変換素子116、重畳レンズ118、R用ダイクロイックミラー120R、G用ダイクロイックミラー120G、反射ミラー122、R用フィールドレンズ124R、G用フィールドレンズ124G、R用液晶パネル130R(第1の光変調素子)、G用液晶パネル130G(第2の光変調素子)、B用液晶パネル130B(第3の光変調素子)、リレー光学系140、クロスダイクロイックプリズム160、投射レンズ170を含む。R用液晶パネル130R、G用液晶パネル130G及びB用液晶パネル130Bとして用いられる液晶パネルは、透過型の液晶表示装置である。リレー光学系140は、リレーレンズ142、144、146、反射ミラー148、150を含む。
【0154】
光源110は、例えば超高圧水銀ランプにより構成され、少なくともR成分の光、G成分の光、B成分の光を含む光を射出する。インテグレーターレンズ112は、光源110からの光を複数の部分光に分割するための複数の小レンズを有する。インテグレーターレンズ114は、インテグレーターレンズ112の複数の小レンズに対応する複数の小レンズを有する。重畳レンズ118は、インテグレーターレンズ112の複数の小レンズから射出される部分光を液晶パネル上で重畳する。
【0155】
また偏光変換素子116は、偏光ビームスプリッターレイとλ/2板とを有し、光源110からの光を略一種類の偏光光に変換する。偏光ビームスプリッターレイは、インテグレーターレンズ112により分割された部分光をp偏光とs偏光に分離する偏光分離膜と、偏光分離膜からの光の向きを変える反射膜とを、交互に配列した構造を有する。偏光分離膜で分離された2種類の偏光光は、λ/2板によって偏光方向が揃えられる。この偏光変換素子116によって略一種類の偏光光に変換された光が、重畳レンズ118に照射される。
【0156】
重畳レンズ118からの光は、R用ダイクロイックミラー120Rに入射される。R用ダイクロイックミラー120Rは、R成分の光を反射して、G成分及びB成分の光を透過させる機能を有する。R用ダイクロイックミラー120Rを透過した光は、G用ダイクロイックミラー120Gに照射され、R用ダイクロイックミラー120Rにより反射した光は反射ミラー122により反射されてR用フィールドレンズ124Rに導かれる。
【0157】
G用ダイクロイックミラー120Gは、G成分の光を反射して、B成分の光を透過させる機能を有する。G用ダイクロイックミラー120Gを透過した光は、リレー光学系140に入射され、G用ダイクロイックミラー120Gにより反射した光はG用フィールドレンズ124Gに導かれる。
【0158】
リレー光学系140では、G用ダイクロイックミラー120Gを透過したB成分の光の光路長と他のR成分及びG成分の光の光路長との違いをできるだけ小さくするために、リレーレンズ142、144、146を用いて光路長の違いを補正する。リレーレンズ142を透過した光は、反射ミラー148によりリレーレンズ144に導かれる。リレーレンズ144を透過した光は、反射ミラー150によりリレーレンズ146に導かれる。リレーレンズ146を透過した光は、B用液晶パネル130Bに照射される。
【0159】
R用フィールドレンズ124Rに照射された光は、平行光に変換されてR用液晶パネル130Rに入射される。R用液晶パネル130Rは、光変調素子(光変調部)として機能し、R用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従って、R用液晶パネル130Rに入射された光(第1の色成分の光)は、R用画像信号に基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0160】
G用フィールドレンズ124Gに照射された光は、平行光に変換されてG用液晶パネル130Gに入射される。G用液晶パネル130Gは、光変調素子(光変調部)として機能し、G用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従って、G用液晶パネル130Gに入射された光(第2の色成分の光)は、G用画像信号に基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0161】
リレーレンズ142、144、146で平行光に変換された光が照射されるB用液晶パネル130Bは、光変調素子(光変調部)として機能し、B用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従って、B用液晶パネル130Bに入射された光(第3の色成分の光)は、B用画像信号に基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0162】
R用液晶パネル130R、G用液晶パネル130G、B用液晶パネル130Bは、それぞれ同様の構成を有している。各液晶パネルは、電気光学物質である液晶を一対の透明なガラス基板に密閉封入したものであり、例えばポリシリコン薄膜トランジスターをスイッチング素子として、各サブ画素の画像信号に対応して各色光の通過率を変調する。
【0163】
本実施形態では、1画素を構成する色成分毎に光変調素子としての液晶パネルが設けられ、各液晶パネルの透過率がサブ画素に対応した画像信号により制御される。即ち、R成分のサブ画素用の画像信号が、R用液晶パネル130Rの透過率(通過率、変調率)の制御に用いられ、G成分のサブ画素用の画像信号が、G用液晶パネル130Gの透過率の制御に用いられ、B成分のサブ画素用の画像信号が、B用液晶パネル130Bの透過率の制御に用いられる。
【0164】
クロスダイクロイックプリズム160は、R用液晶パネル130R、G用液晶パネル130G及びB用液晶パネル130Bからの入射光を合成した合成光を出射光として出力する機能を有する。投射レンズ170は、出力画像をスクリーンSCR上に拡大して結像させるレンズである。
【0165】
本実施形態における画像処理部30によって補正された画像データに基づいて、上記のような構成を有する投射部100により画像を表示するようにしたので、色圧縮を行った場合でも、色圧縮により失われたディテール部の見えを改善することができる。また、色圧縮後の明度信号及び彩度信号の特定周波数成分に対してのみ、そのディテール部の変化を増幅することで、他の部分に影響を与えることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。また、ノイズを抽出して、抽出されたノイズ量に応じてディテール部を強調することで、ノイズを増幅させることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができるようになる。
【0166】
また、本実施形態における明度信号及び彩度信号の補正処理を行った後に、画像表示ステップとしてこのような投射部100を制御して、上記の補正処理後の画像データに基づいて画像を表示することで、補正対象外の明度領域及び彩度領域に影響を与えることなく画像のディテールの表現を改善する画像表示方法を提供できる。
【0167】
4. 変形例
4.1 第1の変形例
本実施形態における画像処理部30では、明度信号補正量算出回路250L及び彩度信号補正量算出回路250Cが、図13に示すように、重み付け算出回路と彩度ゲイン算出回路とを有し、重み付け係数や彩度ゲイン係数を乗算する乗算器により補正データを生成する構成となっていたが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0168】
以下では、図7のディテール強調回路200Lの明度信号補正量算出回路の変形例について説明する。しかしながら、ディテール強調回路200Cの彩度信号補正量算出回路も同様であり、ディテール強調回路200Lの明度信号補正量算出回路及びディテール強調回路200Cの彩度信号補正量算出回路の少なくとも一方を、次のような補正量算出回路に置き換えることができる。
【0169】
図22に、本実施形態の第1の変形例における明度信号補正量算出回路250Laの構成例のブロック図を示す。例えば本実施形態における明度信号補正量算出回路250Lに代えて、図22に示す明度信号補正量算出回路250Laが図7のディテール強調回路200Lに内蔵される。
【0170】
明度信号補正量算出回路250Laは、第1〜第3のLUT302L〜302L、乗算器304L〜304L、加算器306Lを含む。この明度信号補正量算出回路250Laは、第1〜第3のLUT302L〜302Lの各LUTからの明度ゲイン係数を、多段フィルター回路230Lの各出力に乗算した後、各乗算結果を加算して補正データVAとして出力する。
【0171】
図23(A)、図23(B)、図23(C)に、図22の第1〜第3のLUT302L〜302Lの動作説明図を示す。図23(A)は、図22の第1のLUT302Lの動作説明図を表す。図23(B)は、図22の第2のLUT302Lの動作説明図を表す。図23(C)は、図22の第3のLUT302Lの動作説明図を表す。
【0172】
第1のLUT302Lには、HPF回路214Lからの出力highL及びラインメモリー60からの圧縮率αが入力され、出力highL及び圧縮率αに対応した明度ゲイン係数jを出力する。そのため、第1のLUT302Lには、予め出力highL及び圧縮率αに対応した明度ゲイン係数ja、jb、jc・・・が記憶されており、出力highL及び圧縮率αが入力されたとき該出力highL及び圧縮率αの組み合わせに対応した明度ゲイン係数を明度ゲイン係数jとして出力するようになっている。
【0173】
第2のLUT302Lには、HPF回路214Lからの出力highL及びラインメモリー60からの圧縮率αが入力され、出力highL及び圧縮率αに対応した明度ゲイン係数jを出力する。そのため、第2のLUT302Lには、予め出力highL及び圧縮率αに対応した明度ゲイン係数ja、jb、jc・・・が記憶されており、出力highL及び圧縮率αが入力されたとき該出力highL及び圧縮率αの組み合わせに対応した明度ゲイン係数を明度ゲイン係数jとして出力するようになっている。
【0174】
第3のLUT302Lには、HPF回路214Lからの出力highL及びラインメモリー60からの圧縮率αが入力され、出力highL及び圧縮率αに対応した明度ゲイン係数jを出力する。そのため、第3のLUT302Lには、予め出力highL及び圧縮率αに対応した明度ゲイン係数ja、jb、jc・・・が記憶されており、出力highL及び圧縮率αが入力されたとき該出力highL及び圧縮率αの組み合わせに対応した明度ゲイン係数を明度ゲイン係数jとして出力するようになっている。
【0175】
図22において、乗算器304Lは、多段フィルター回路230Lを構成する第1のフィルター回路232Lの出力FO1と第1のLUT302Lからの明度ゲイン係数jとを乗算し、乗算結果を加算器306Lに出力する。乗算器304Lは、多段フィルター回路230Lを構成する第2のフィルター回路234Lの出力FO2と第2のLUT302Lからの明度ゲイン係数jとを乗算し、乗算結果を加算器306Lに出力する。乗算器304Lは、多段フィルター回路230Lを構成する第3のフィルター回路236Lの出力FO3と第3のLUT302Lからの明度ゲイン係数jとを乗算し、乗算結果を加算器306Lに出力する。
【0176】
加算器306Lは、乗算器304L〜304Lの各乗算結果を加算し、加算結果を補正データVAとして出力する。
【0177】
以上のように、本実施形態の第1の変形例における画像処理部において、明度信号補正量算出回路250Laは、多段フィルター回路230Lの出力毎に設けられ、HPF回路214Lの出力highL及び圧縮率αに対応したゲインを出力する複数のテーブルと、多段フィルター回路230Lの出力毎に設けられ多段フィルター回路230Lの各出力と上記の複数のテーブルを構成する各テーブルの出力とを乗算する複数の乗算器と、複数の乗算器の乗算結果を加算する加算器とを含み、加算器の出力を明度成分の補正量として算出することができる。また、彩度信号補正算出回路も、上記と同様に、彩度成分の補正量を算出することができる。
【0178】
このような本実施形態の第1の変形例によれば、実施形態1と同様に、所与の空間周波数帯域の明度信号のみを、色圧縮時の圧縮率αに応じて補正できる。また、実施形態1と同様に、所与の空間周波数帯域の彩度信号のみを、色圧縮時の圧縮率αに応じて補正できる。その結果、他の部分に影響を与えることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。更に、ノイズを抽出して、抽出されたノイズ量に応じてディテール部を強調することで、ノイズを増幅させることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。更に、本実施形態の第1の変形例によれば、実施形態1と比較して、明度信号補正量算出回路及び彩度信号補正量算出回路に内蔵される乗算器の数を減らすことができるので、低消費電力化及び低コスト化が可能となる。
【0179】
4.2 第2の変形例
本実施形態の第1の変形例における明度信号補正量算出回路250Laは、図22に示すように、第1〜第3のLUT302L〜302Lと、乗算器304L〜304Lと、加算器306Lとを有し、第1〜第3のLUT302L〜302Lからの明度ゲイン係数を用いた乗算器の乗算結果を加算する構成であったが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0180】
以下では、図7のディテール強調回路200Lに内蔵される明度信号補正量算出回路の変形例について説明する。しかしながら、ディテール強調回路200Cの彩度信号補正量算出回路も同様であり、ディテール強調回路200Lの明度信号補正量算出回路及びディテール強調回路200Cの彩度信号補正量算出回路の少なくとも一方を、次のような補正量算出回路に置き換えることができる。
【0181】
図24に、本実施形態の第2の変形例における明度信号補正量算出回路250Lbの構成例のブロック図を示す。例えば本実施形態における明度信号補正量算出回路250Lに代えて、図24に示す明度信号補正量算出回路250Lbが図7のディテール強調回路200Lに内蔵される。
【0182】
明度信号補正量算出回路250Lbは、LUT352を含む。この明度信号補正量算出回路250Lbは、LUT352Lからの出力を補正データVAとして出力する。
【0183】
図25に、図24のLUT352Lの動作説明図を示す。
【0184】
LUT352Lには、HPF回路214Lからの出力highL及びラインメモリー60からの圧縮率αと、多段フィルター回路230Lを構成する第1のフィルター回路232L〜第3のフィルター回路236Lの各フィルター回路の出力FO1〜FO3が入力され、出力highL、圧縮率α及び各フィルター回路の出力との組み合わせに対応した補正データを出力する。この補正データが、補正データVAとして出力される。そのため、LUT352Lには、予めhighL、圧縮率α及び各フィルター回路の出力FO1〜FO3との組み合わせに対応した補正データVAa、VAb、・・・、VAc、VAd、・・・、VAe、VAf、・・・、VAj・・・が記憶されており、highL、圧縮率α及び各フィルター回路の出力FO1〜FO3が入力されたとき、これらの組み合わせに対応した補正データを出力するようになっている。
【0185】
以上のように、本実施形態の第2の変形例における画像処理部では、明度信号補正量算出回路250Lbは、多段フィルター回路230Lの出力とHPF回路214Lの出力highLと圧縮率αとに対応した明度成分の補正データを出力するテーブルを含むことができる。そして、このテーブルが出力する補正データを補正データVAとして出力する。また、彩度信号補正算出回路も、上記と同様に、彩度成分の補正量を出力することができる。
【0186】
本実施形態の第2の変形例によれば、本実施形態又は本実施形態の第1の変形例と同様に、所与の空間周波数帯域の明度信号のみを、色圧縮時の圧縮率αに応じて補正できる。その結果、他の部分に影響を与えることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。また、所与の空間周波数帯域の彩度信号のみを、色圧縮時の圧縮率αに応じて補正できる。その結果、他の部分に影響を与えることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。更に、ノイズを抽出して、抽出されたノイズ量に応じてディテール部を強調することで、ノイズを増幅させることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。更に、本実施形態の第2の変形例によれば、実施形態1又は実施形態1の第1の変形例と比較して、明度信号補正量算出回路及び彩度信号補正量算出回路に内蔵される乗算器及び加算器を無くすことができるので、大幅な低消費電力化及び低コスト化が可能となる。
【0187】
4.3 第3の変形例
本実施形態又はその変形例では、図9に示すHPF回路及びLPF回路のゲインで、図17で示す補正領域内で補正するようにしていたが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0188】
本実施形態の第3の変形例では、ディテール強調回路200LのHPF回路214Lのフィルター特性とLPF回路222Lのフィルター特性とは、次のような関係を有することが望ましい。同様に、ディテール強調回路200CのHPF回路214Cのフィルター特性とLPF回路222C(図示せず)のフィルター特性とは、次のような関係を有することが望ましい。また、ディテール強調回路200LにおけるHPF回路214L及びLPF回路222Lと、ディテール強調回路200CにおけるHPF回路214C及びLPF回路222Cとは、次のような関係を有することが望ましい。
【0189】
図26に、本実施形態の第3の変形例におけるディテール強調回路200L、200CにおけるHPF回路、LPF回路のフィルター特性の一例を示す。図26は、横軸に明度信号及び彩度信号の周波数、縦軸にゲインを表す。
【0190】
HPF回路214Lの出力は、明度信号の空間周波数が低い領域では小さくなり、明度信号の空間周波数が高い領域では大きくなる(図26のT21)。このHPF回路214Lのカットオフ周波数は、ωLHPFである。一方、LPF回路222Lの出力は、明度信号の空間周波数が低い領域では大きくなり、明度信号の空間周波数が高い領域では小さくなる(図26のT22)。このLPF回路222Lのカットオフ周波数は、ωLLPFである。ここで、HPF回路214Lのカットオフ周波数とLPF回路222Lのカットオフ周波数とは等しいことが望ましい(ωLHPF=ωLLPF=ωcut0)。
【0191】
同様に、ディテール強調回路200CのHPF回路(214C)の出力は、彩度信号の空間周波数が低い領域では小さくなり、彩度信号の空間周波数が高い領域では大きくなる(図26のT23)。このHPF回路のカットオフ周波数は、ωCHPFである。一方、ディテール強調回路200CのLPF回路(222C)の出力は、彩度信号の空間周波数が低い領域では大きくなり、彩度信号の空間周波数が高い領域では小さくなる(図26のT4)。このLPF回路のカットオフ周波数は、ωCLPFである。ここで、HPF回路のカットオフ周波数とLPF回路のカットオフ周波数とは等しいことが望ましい(ωCHPF=ωCLPF=ωcut1)。これにより、元の彩度信号の情報を欠落させることなく、彩度信号を補正することができるようになる。
【0192】
更に、ディテール強調回路200LにおけるHPF回路214LとLPF回路222Lのカットオフ周波数ωcut0は、ディテール強調回路200CにおけるHPF回路214CとLPF回路222Cのカットオフ周波数ωcut1より低い。このとき、明度信号補正領域及び彩度信号補正領域が、次のような関係とすることで、彩度成分より目立ちやすい明度成分のディテールの見えを改善することができる。
【0193】
図27に、本実施形態の第3の変形例における画像処理部のディテール強調処理の効果の説明図を示す。図27において、図17と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0194】
図27に示す明度信号補正領域LA2及び彩度信号補正領域CA2が、図17の明度信号補正領域LA1及び彩度信号補正領域CA1と異なる点は、明度信号補正領域LA2と彩度信号補正領域CA2とが、HPF回路の出力レベルが同じ領域まで及ぶ点である。これにより、図26で示すように、彩度ノイズ成分に比べて明度ノイズ成分をより多く除去することで、明度信号及び彩度信号の補正領域についてそれほど考慮することなく、画像のディテール部の見えを改善することができるようになる。
【0195】
4.4 第4の変形例
本実施形態又はその変形例では、画像出力装置としてプロジェクターを例に説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、画像出力装置がプリンターであってもよい。
【0196】
図28に、本実施形態の第4の変形例におけるプリンターの構成例のブロック図を示す。図28において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0197】
プリンター(画像印刷装置)400は、画像処理部30と、画像出力部としての印刷部410とを含む。画像処理部30には、入力画像の色域データと印刷部410の色域データとが入力される。そして、画像処理部30は、明度補正カーブ及び圧縮率、彩度補正カーブ及び圧縮率を生成し、入力画像データが入力されたとき、色圧縮処理を行って、色圧縮後の画像データを印刷部410に対して出力する。印刷部410は、画像処理部30からの画像データに基づいて印刷する。
【0198】
本実施形態の第4の変形例における画像処理部30は、本実施形態の第1の変形例〜第3の変形例のいずれかの画像処理部に置き換えることができる。
【0199】
本実施形態の第4の変形例によれば、本実施形態又はその変形例と同様に、所与の空間周波数帯域の明度信号のみを、色圧縮時の圧縮率αに応じて補正できる。また、所与の空間周波数帯域の彩度信号のみを、色圧縮時の圧縮率αに応じて補正できる。その結果、他の部分に影響を与えることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。更に、ノイズを抽出して、抽出されたノイズ量に応じてディテール部を強調することで、ノイズを増幅させることなく、色圧縮時に失われるディテール部の見えを改善することができる。
【0200】
以上、本発明に係る画像処理装置、画像出力装置、画像処理方法及びプログラムを上記の実施形態又はその変形例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態又はその変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0201】
(1)上記の各実施形態又はその変形例では、CIELAB色空間において色圧縮処理を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、CIELUV色空間やその他の色空間において色圧縮処理を行う場合にも適用できる。
【0202】
(2)上記の各実施形態又はその変形例では、画像処理部が画素値をRGB表色系に変換してから出力する例を説明したが本発明はこれに限定されるものではない。画像処理部が、RGB表色系以外の表色系(例えばCMYK表色系)に変換してから出力してもよい。
【0203】
(3)上記の各実施形態又はその変形例では、明度補正カーブ、彩度補正カーブの形状に限定されるものではない。
【0204】
(4)上記の各実施形態又はその変形例では、ノイズ抽出・除去回路によって明度ノイズ及び彩度ノイズを除去してから明度信号彩度信号の補正処理を行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7においてノイズ抽出・除去回路210Lを省略した構成を採用し、彩度ノイズを除去することなく彩度信号の補正処理を行うようにしてもよい。
【0205】
(5)上記の各実施形態又はその変形例では、画像表示装置としてプロジェクターを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る画像表示装置は、液晶表示装置やプラズマディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等の画像表示を行う装置全般に適用できる。
【0206】
(6)上記の各実施形態又はその変形例では、光変調素子として透過型の液晶パネルを用いたライトバルブを用いるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。光変調素子として、例えばDLP(Digital Light Processing)(登録商標)、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を採用してもよい。
【0207】
(7)上記の各実施形態又はその変形例では、光変調素子として、いわゆる3板式の透過型の液晶パネルを用いたライトバルブを例に説明したが、単板式の液晶パネルや2板又は4板式以上の透過型の液晶パネルを用いたライトバルブを採用してもよい。
【0208】
(8)上記の各実施形態では、1画素を3つの色成分のサブ画素で構成されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。1画素を構成する色成分数が2、又は4以上であってもよい。
【0209】
(9)上記の各実施形態又はその変形例において、本発明を、画像処理装置、画像出力装置、画像処理方法及びプログラムとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記の画像処理装置や画像出力装置を含む画像表示システムであってもよい。或いは、例えば、本発明を実現するための画像処理装置の処理方法(画像処理方法)、又は本発明を実現するための画像表示装置の処理方法(画像表示方法)の処理手順が記述されたプログラムや、該プログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0210】
2…入力画像データ、 4…画像データ、 6,8…色域データ、
10…画像表示システム、 20…プロジェクター、 30…画像処理部、
32…入力画像色域データ保存部、 34…表示装置色域データ保存部、
36…圧縮率算出回路、 40…RGB→L変換回路、 50…色圧縮回路、
60…ラインメモリー、 70…L→RGB変換回路、 100…投射部、
110…光源、 112,114…インテグレーターレンズ、 116…偏光変換素子、
118…重畳レンズ、 120R…R用ダイクロイックミラー、
120G…G用ダイクロイックミラー、 122,148,150…反射ミラー、
124R…R用フィールドレンズ、 124G…G用フィールドレンズ、
130R…R用液晶パネル、 130G…G用液晶パネル、
130B…B用液晶パネル、 140…リレー光学系、
142,144,146…リレーレンズ、 160…クロスダイクロイックプリズム、
170…投射レンズ、 200C,200L…ディテール強調回路、
210C,210L…ノイズ抽出・除去回路、 212L…高周波成分抽出回路、
214L…HPF回路、 220L…明度ノイズ除去回路、 222L…LPF回路、
224L,252L…重み付け算出回路、 226L,227L,254L,254L,254L,258L,304L,304L,304L,M1…乗算器、
228L,256L,306L,A1…加算器、
230C,230L…多段フィルター回路、 232L…第1のフィルター回路、
234L…第2のフィルター回路、 236L…第3のフィルター回路、
250C,250L,250La,250Lb…彩度信号補正量算出回路、
260C,260L…明度ゲイン算出回路、 270C,270L…明度信号補正回路、
302L…第1のLUT、 302L…第2のLUT、
302L…第3のLUT、 352L…LUT、 400…プリンター、
410…印刷部、 C1…色圧縮手段、 L1…信号抽出手段、
G1…明度ゲイン生成手段、 SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像出力装置に対して供給される画像データを補正する画像処理装置であって、
入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記画像データの色相成分に対応した前記画像データの明度成分の圧縮率で前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記色相成分に対応した前記画像データの彩度成分の圧縮率で前記画像データの彩度成分を圧縮する色圧縮部と、
所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの明度成分の補正量を、前記明度成分の圧縮率に応じて算出する明度成分補正量算出部と、
所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの彩度成分の補正量を、前記彩度成分の圧縮率に応じて算出する彩度成分補正量算出部と、
前記明度成分の補正量を用いて、前記色圧縮部によって圧縮された前記画像データの明度成分を補正する明度成分補正部と、
前記彩度成分の補正量を用いて、前記色圧縮部によって圧縮された前記画像データの彩度成分を補正する彩度成分補正部とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記色相成分に応じて前記明度成分の圧縮率及び前記彩度成分の圧縮率を算出する圧縮率算出部を含み、
前記色圧縮部が、
前記圧縮率算出部によって算出された前記明度成分の圧縮率で、前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記圧縮率算出部によって算出された前記彩度成分の圧縮率で、前記画像データの彩度成分を圧縮することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記圧縮率算出部が、
色圧縮前の明度成分Linと色圧縮後の明度成分Loutとの関係を示す明度補正カーブにおいて、前記明度成分の圧縮率として、前記明度成分Linにおける傾きの逆数ΔLin/ΔLoutを算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記圧縮率算出部が、
色圧縮前の彩度成分Cinと色圧縮後の彩度成分Coutとの関係を示す彩度補正カーブにおいて、前記彩度成分の圧縮率として、前記彩度成分Cinにおける傾きの逆数ΔCin/ΔCoutを算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記明度成分から所与の明度ノイズ成分を除去する明度ノイズ除去部を含み、
前記明度成分補正部は、
前記明度成分の補正量を用いて、前記明度ノイズ除去部によって前記明度ノイズ成分が除去された前記画像データの明度成分を補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記明度成分補正量算出部が、
前記明度ノイズ除去部によって除去される前記明度ノイズ成分の量が少ないほど、前記明度成分の増幅量が大きくなるように前記明度成分の補正量を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記明度成分補正量算出部が、
前記明度の圧縮率が大きいほど前記明度成分の増幅量が大きくなるように前記明度成分の補正量を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記明度成分補正量算出部が、
前記空間周波数帯域において、低周波領域より高周波領域の前記明度成分の増幅量が大きくなるように前記明度成分の補正量を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記彩度成分から所与の彩度ノイズ成分を除去する彩度ノイズ除去部を含み、
前記彩度成分補正部は、
前記彩度成分の補正量を用いて、前記彩度ノイズ除去部によって前記彩度ノイズ成分が除去された前記画像データの彩度成分を補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記彩度成分補正量算出部が、
前記彩度ノイズ除去部によって除去される前記彩度ノイズ成分の量が少ないほど、前記彩度成分の増幅量が大きくなるように前記彩度成分の補正量を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記彩度成分補正量算出部が、
前記彩度の圧縮率が大きいほど前記彩度成分の増幅量が大きくなるように前記彩度成分の補正量を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかにおいて、
前記彩度成分補正量算出部が、
前記空間周波数帯域において、低周波領域より高周波領域の前記彩度成分の増幅量が大きくなるように前記彩度成分の補正量を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
画像データに基づいて画像を出力する画像出力装置であって、
請求項1乃至12のいずれか記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置によって補正された画像データに基づいて画像を出力する画像出力部とを含むことを特徴とする画像出力装置。
【請求項14】
画像出力装置に対して供給される画像データを補正する画像処理方法であって、
入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記画像データの色相成分に対応した前記画像データの明度成分の圧縮率で前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記色相成分に対応した前記画像データの彩度成分の圧縮率で前記画像データの彩度成分を圧縮する色圧縮ステップと、
所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの明度成分の補正量を、前記明度成分の圧縮率に応じて算出する明度成分補正量算出ステップと、
所与の空間周波数帯域の画像データに対して、該画像データの彩度成分の補正量を、前記彩度成分の圧縮率に応じて算出する彩度成分補正量算出ステップと、
前記明度成分の補正量を用いて、前記色圧縮ステップにおいて圧縮された前記画像データの明度成分を補正する明度成分補正ステップと、
前記彩度成分の補正量を用いて、前記色圧縮ステップにおいて圧縮された前記画像データの彩度成分を補正する彩度成分補正ステップとを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記入力画像の色域と前記画像出力装置の色域とに基づいて、前記色相成分に応じて前記明度成分の圧縮率及び前記彩度成分の圧縮率を算出する圧縮率算出ステップを含み、
前記色圧縮ステップが、
前記圧縮率算出ステップにおいて算出された前記明度成分の圧縮率で、前記画像データの明度成分を圧縮すると共に、前記圧縮率算出ステップにおいて算出された前記彩度成分の圧縮率で、前記画像データの彩度成分を圧縮することを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
請求項14又は15記載の画像処理方法を、コンピューターに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−77775(P2011−77775A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226396(P2009−226396)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】