説明

画像処理装置、画像形成装置、及び画像処理方法

【課題】透明トナーによる光沢ムラを抑制する。
【解決手段】画像処理装置10では、スキャナ400で読み取られた画像データを構成する各画素に付与する透明トナー量の最大値を示す最大光沢付加量として、網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度の少なくとも一方が低いほど、高い最大光沢付加量を設定する。そして、地肌領域を構成する各地肌画素毎に、各地肌画素と各地肌画素の周辺画素とのばらつきを算出する。そして、地肌画素におけるばらつきが小さいほど、設定された最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を地肌画素毎に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置として、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の有色トナーに加えて、透明トナーを用いた画像形成装置が知られている。
【0003】
ここで、記録媒体上に載せることの出来るトナー量には制限があることが知られている。このため、有色トナーの載り量によって、透明トナーの載り量が不均一となり、光沢にムラが生じる場合がある。
【0004】
そこで、この光沢ムラを抑制する技術が開示されている。例えば、特許文献1には、画像データを構成する各画素について、画像領域を構成する画素か、テキスト領域を構成する画素かを判別する技術が開示されている。そして、特許文献1では、画像領域については有色トナーを転写及び定着した後に、画像領域以外の領域に透明トナーを転写及び定着している。また、テキスト領域について、有色トナーと透明トナーの双方を転写及び定着することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像の形成された記録媒体を読み取ることによって画像データを取得し、取得した画像データに基づいて有色トナー及び透明トナーによる画像を形成する場合には、画像データにおける網点領域を構成する画素や該画素の周辺等において、透明トナーによる光沢ムラが発生していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、透明トナーによる光沢ムラを抑制することができる画像処理装置、画像形成装置、及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像データを取得する取得手段と、前記画像データにおける網点領域及び地肌領域を判定する判定手段と、前記画像データを構成する各画素に付与する透明トナー量の最大値を示す最大光沢付加量として、前記網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度の少なくとも一方が低いほど、高い最大光沢付加量を設定する第1設定手段と、前記地肌領域を構成する各地肌画素毎に、各地肌画素と各地肌画素の周辺画素とのばらつきを示す第1の値を算出する算出手段と、前記地肌画素における前記第1の値が小さいほど、設定された前記最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を前記地肌画素毎に設定する第2設定手段と、前記地肌画素毎に設定された光沢付加量を含む印刷用画像データを、透明トナー及び有色トナーを用いて画像を形成する画像形成手段に出力する出力手段と、を備えた画像処理装置である。
【0008】
また、本発明は、該画像処理装置を備えた画像形成装置である。
【0009】
また、本発明は、画像データを取得するステップと、前記画像データにおける網点領域及び地肌領域を判定するステップと、前記画像データを構成する各画素に付与する透明トナー量の最大値を示す最大光沢付加量として、前記網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度の少なくとも一方が低いほど、高い最大光沢付加量を設定するステップと、前記地肌領域を構成する各地肌画素毎に、各地肌画素と各地肌画素の周辺画素とのばらつきを示す第1の値を算出するステップと、前記地肌画素における前記第1の値が小さいほど、設定された前記最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を前記地肌画素毎に設定するステップと、前記地肌画素毎に設定された光沢付加量を含む印刷用画像データを、透明トナー及び有色トナーを用いて画像を形成する画像形成手段に出力するステップと、を備えた画像処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明トナーによる光沢ムラを抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態に適用可能な画像形成装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、色補正処理を説明するための色空間の図である。
【図3】図3は、色相領域を説明するための色空間の図である。
【図4】図4は、各色相評価値Fxと各色相領域とを対応付けた色相領域コードテーブルを示す略線図である。
【図5】図5は、色相領域の判定処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、カラー画像データを写像すべき2次元平面を示す略線図である。
【図7】図7は、各色相評価値Fx’と各色相領域とを対応付けた色相領域コードテーブルを示す略線図である。
【図8−1】図8−1は、マスキング係数の算出方法を説明するための略線図である。
【図8−2】図8−2は、スキャナによって読み取られる原稿と該原稿を読み取ることによって得られる画像データの一例を示模式図であり、(A)は記録媒体に形成した画像を示す模式図であり、(B)及び(D)は読み取り対象の原稿を示す模式図であり、(C)は原稿の読み取り値を示す模式図である。
【図9】図9は、像域分離・ACS判定(1)回路の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、像域分離・ACS判定(2)回路の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、像域分離部の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、光沢付加部が実行する光沢付加量生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、光沢付加部が実行する光沢付加量[タイプ1]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、地肌領域を構成する画素の画素データの不偏分散V(地肌)と、光沢付加量Tと、の関係を示す模式図である。
【図15】図15は、透明トナーの付着量(M/A)Tと、画像濃度D(有色トナーの付着量(M/A)Color,Color=Y,M,C,orK)との関係を示す図である。
【図16】図16は、光沢付加部が実行する光沢付加量[タイプ2]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、注目画素の画像濃度と光沢付加量Tとの関係の一例を示す模式図である。
【図18】図18は、光沢付加部が実行する光沢付加量[タイプ3]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】図19は、網点画素間の間隔を示す概念図である。
【図20】図20は、光沢付加部が実行する光沢付加量[タイプ4]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】図21は、地肌データから求められる移動平均値及びばらつきに対応する、原稿で使用されたと推定される用紙の種類を示す図である。
【図22】図22は、光沢付加量Tと、原稿で使用された用紙の種類と、を対応づけたテーブルの一例を示す模式図である。
【図23】図23は、光沢付加部が実行する光沢付加量生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図24】図24は、読み取り原稿における地肌領域のヒストグラムの一例を示す模式図である。
【図25】図25は、光沢付加部が実行する、ばらつきの第1の評価方法の手順を示すフローチャートである。
【図26】図26は、光沢付加部が実行する、画像データのばらつき・滑らかさの判定処理1の処理手順を示すフローチャートである。
【図27】図27は、光沢付加部が実行する、ばらつきの第2の評価方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像処理装置の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施の形態の画像処理装置を備えた画像形成装置の構成の一例を示した。
【0014】
画像形成装置10は、スキャナ400、画像処理部480、及びプリンタ415を備える。
【0015】
スキャナ400は、スキャナCCD400a及びスキャナCIS400bを備えている。スキャナCCD400aは、画像の形成された記録媒体(以下、原稿と称する)に光を照射して反射光を読取り、読み取り信号をR、G、B、各々の色に色分解した10ビット信号による画像データを画像処理部480へ出力する。なお、ユーザにより原稿の両面の読み取りが指示された場合には、スキャナCCD400aで原稿の一方の面である表面を読取り、スキャナCIS400bで原稿の他方の面である裏面を読み取る。この場合には、スキャナ400では、原稿の1回の搬送により原稿の両面を同時に読み取ることができる。
【0016】
画像処理部480は、スキャナ400から読み込まれた画像データに対して画像処理を行い、画像処理後の画像データをプリンタ415へ出力する。
【0017】
なお、本実施の形態では、画像処理部480は、画像の形成された原稿を読み取ることによって得られた画像データをスキャナ400から受けつける場合を説明する。しかし、画像処理部480は、原稿の読み取りによって得られた画像データをハードディスクなどの記録媒体(図示省略)に予め記憶しておき、この記録媒体に記憶されている画像データを読み取ることによって、該画像データを取得してもよい。なお、この画像データは、上述のように、例えばR(赤色)、G(Green)およびB(青色)の三原色からなるカラーの画像データである場合を説明する。
【0018】
プリンタ415は、有色トナー及び透明トナーを用いて、記録媒体に画像を形成する。なお、プリンタ415は、画像処理部480から、有色画像の画像データと、該画像データの各画素への光沢付加量Tを示すデータと、を含む印刷画像データを受け付ける。そして、有色画像の画像データに応じた有色画像を有色トナーを用いて記録媒体に形成するとともに、各画素毎の光沢付加量Tを示すデータに応じた量の透明トナーを各画素に対応する該記録媒体上の領域に付与して該記録媒体に光沢を付与する。プリンタ415としては、公知の電子写真方式のプリンタが挙げられる。
【0019】
画像処理部480は、IPU(画像処理ユニット)(1)450、IPU(2)460、マルチレイヤバス(Multilayer BUS)412、パターン生成(3)回路413、γ変換(3)回路414、圧縮・伸張処理回路416、HDD I/F418、HDD(Hard Disk Drive)419、回転処理回路420、I/F421、CPU(CentrAl Processing Unit)438、ROM(ReAd Only Memory)490、メモリコントローラ(2)回路436、オペレーションパネル495(図1中、OP495参照)およびメインメモリ437などを備えている。
【0020】
CPU438は、画像処理部480全体を制御する。ROM490およびメインメモリ437は、各種情報及びプログラムを記憶する。オペレーションパネル495は、各種情報の表示や、ユーザの操作指示による入力の受け付け等を行う。例えば、オペレーションパネル495としては、公知のタッチパネル等が挙げられる。そして、このオペレーションパネル495には、例えば、ユーザによる操作によって指示された、該オペレーションパネル495の表示位置に対応する信号等が入力される。
【0021】
IPU(1)450は、シェーディング補正回路401a、401b、FL補正処理回路446、チップ間画素補間回路447、メモリコントローラ(1)回路448、画像メモリ449、像域分離・ACS判定(1)回路403、スキャナγ変換回路402、MTFフィルタ(1)回路404、自動濃度調整レベル(ADS)検出・除去回路405、色相判定処理(1)回路406、色補正・UCR処理(1)回路407、変倍処理(1)回路408、総量規制(1)回路439、特徴量抽出(1)回路440、γ変換(1)回路409、二値階調処理回路410、および編集(1)処理回路411などを備えている。
【0022】
シェーディング補正回路401aは、スキャナCCD400a用のシェーディング補正回路であり、スキャナCCD400aから読み取られた画像信号に対して主走査方向のムラを補正し、R、G、Bそれぞれの8ビットデータを出力する。シェーディング補正回路401bは、スキャナCIS400b用のシェーディング補正回路であり、スキャナCIS400bから読み取られた画像信号に対して主走査方向のムラを補正し、R、G、Bそれぞれの8ビットデータを出力する。
【0023】
FL補正処理回路446は、スキャナCCD400a用のFL補正処理回路であり、主走査方向に並べた2組のCCDの感度差(階調性の差)を補正する。チップ間画素補間回路447は、スキャナCIS400b用のチップ間画素補間回路であり、主走査方向に並べられたCISデバイスのチップ間の間隙の画像データを両隣の画素から補間する。
【0024】
メモリコントローラ(1)回路448は、スキャナCCD400aによって読み取られた画像データに対して、シェーディング補正回路401aとFL補正処理回路446とにより処理を行った後の画像データ、あるいは、スキャナCIS400bに読み取られた画像データに対して、シェーディング補正回路401bとチップ間画素補間回路447とにより処理を行った後の画像データを、一時的にDDRメモリなどを使用した画像メモリ449に記憶させておくためのDDRメモリコントローラである。
【0025】
像域分離・ACS判定(1)回路403は、上記の画像データについて、文字領域、網点領域、及び地肌領域等を判定し、領域判定結果を示す領域判定結果Xを示す信号(7ビット)、カラー判定結果を示すカラー判定信号(ACS Result)、及び透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを示す信号(8ビット)を出力する。なお、この像域分離・ACS判定(1)回路403については、詳細を後述する。
【0026】
スキャナγ変換回路402は、スキャナ400からの読み取り信号であるRGBの画像データについて、公知のγ変換を行なう。画像メモリ449は、γ変換の施された画像データを記憶する。
【0027】
MTFフィルタ(1)回路404は、シャープな画像やソフトな画像などユーザの好みに応じてエッジ強調や平滑化等、画像データの周波数特性を変更する処理に加えて、画像データのエッジ度に応じたエッジ強調処理(適応エッジ強調処理)を行う。例えば、文字エッジにはエッジ強調を行い、網点画像にはエッジ強調を行わないという所謂適応エッジ強調をR、G、B信号それぞれに対して行う。
【0028】
色相判定処理(1)回路406は、読み取った画像データがどの色相に判別するかを判定する。判定した結果に基づいて、色相毎の色補正係数が選択される。
【0029】
色補正・UCR処理(1)回路407は、スキャナ400により読み取られた画像データを、C、M、Y、Kの画像データに変換した後に、メモリコントローラ(2)回路436を通じてメインメモリ437に保管する。また、色補正・UCR処理(1)回路407は、得られたC、M、Y、Kの画像データを、変倍処理(1)回路408へ出力する。
【0030】
変倍処理(1)回路408では、主走査、副走査変倍が行われる。総量規制(1)回路439は、色補正・UCR処理(1)回路407でCMYK信号に変換された画像データの画像を記録媒体に形成したときの、該記録媒体上におけるYMCKトナーの総量を規制する。特徴量抽出(1)回路440は、画像のエッジ、非エッジ、エッジと非エッジの中間の弱エッジなどの判定処理を行う。γ変換(1)回路409では、エッジ、非エッジ、弱エッジなどの判定結果に応じてγ変換処理を行う。
【0031】
階調処理回路410では、二値あるいは多値のディザ処理、二値あるいは多値の誤差拡散処理、二値あるいは多値の変動閾値誤差拡散処理などの階調処理を行う。この階調処理は、ユーザによるオペレーションパネル495の操作指示によって入力された指示信号や、I/F421に接続したLANを介してコンピュータ(PC)等から入力された指示信号に基づいて行う。編集(1)処理回路411では、端部マスク処理、論理反転などの編集処理を行う。
【0032】
編集(1)処理回路411で編集処理された画像データや、領域判定結果X及び光沢付加量Tは、マルチレイヤバス412を介してIPU(2)460やγ変換(3)回路414等に出力される。
【0033】
圧縮・伸張処理回路416は圧縮・伸長処理を行う。画像データ保管時には、圧縮・伸長処理回路416は、マルチレイヤバス412を経由して得た画像データについて圧縮処理を行う。そして、圧縮された画像データは、HDD I/F418を介して、HDD(Hard Disk Drive)419内に保管される。保管される画像データは、使用目的に応じて、RGB信号、K(GrAy)信号、CMYK信号、RGBX信号(X信号は像域分離結果)として保管される。RGB信号は配信用、K(GrAy)信号は配信やFAX送信用、CMYK信号は紙への印刷用、RGBX信号は、CMYKデータ生成、もしくは、sRGB信号に色空間変換を行い配信するなどの再処理用として保管する。
【0034】
IPU(2)460は、像域分離・ACS判定(2)回路441、グレー/RGB変換回路425、RGB合成回路426、パターン生成(1)回路427、MTFフィルタ(2)回路428、ADS除去回路429、色相判定処理(2)回路430、色補正・UCR処理(2)回路431、パターン生成(2)回路432、変倍処理(2)回路433、総量規制(2)回路434、特徴量抽出(2)回路422、γ変換(2)回路423、階調処理回路424、および編集(2)処理回路435などを備えている。
【0035】
像域分離・ACS判定(2)回路441は、マルチレイヤバス412を介して、メインメモリ437等の記憶媒体に格納されている、原稿の読み取り結果である画像データを受け付けると共に、領域判定結果X(7ビット)及び光沢付加量T(8ビット)を受け付ける。像域分離・ACS判定(2)回路441は、画像データと共に領域判定結果X及び光沢付加量Tを受け付けた場合には、これらのデータをグレー/RGB変換回路425へ出力する。一方、像域分離・ACS判定(2)回路441は、画像データを受け付け、領域判定結果X及び光沢付加量Tを受け付けなかった場合には、像域分離・ACS判定(1)回路403と同様にして、画像データについて、ユーザによるオペレーションパネル495の操作指示によって入力された指示信号に応じて、文字領域、網点領域、及び地肌領域等を判定し、領域判定結果を示す領域判定結果X、カラー判定結果を示すカラー判定信号、及び透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを出力する。なお、この像域分離・ACS判定(2)回路441についても、詳細は後述する。
【0036】
グレー/RGB変換回路425は、転写紙に印刷出力する場合には、マルチレイヤバス412を経由して、RGB画像データから必要に応じてGrAy信号を生成する。その際、Green信号をR=G=BとしてGrAy化する処理を必要に応じて行う。
【0037】
RGB合成回路426は、必要に応じてRGB画像データの上書き合成や透かし合成を行う。パターン生成(1)回路427は、必要に応じてACC(自動階調補正)パターンや登録色パターンなどを発生する。MTFフィルタ(2)回路428は、必要に応じてエッジ強調や平滑化処理などの空間フィルタ処理を行う。
【0038】
ADS除去回路429は、必要に応じて原稿追従型の地肌除去処理を行う。色相判定処理(2)回路430の機能は、色相判定処理(1)回路406と同様であって、読み取った画像データがどの色相に判別するかを判定する。判定した結果に基づいて、色相毎の色補正係数が選択される。
【0039】
色補正・UCR処理(2)回路431の機能は、色補正・UCR処理(1)回路407と同様であって、スキャナ400により読み取られた画像データをFAX送信、あるいはスキャナ送信用に使用される場合には、s−RGBもしくはK(GrAy)信号に変換した後、メモリコントローラ(2)回路436を通じてメインメモリ437に保管する。変倍処理(2)回路433の機能は、変倍処理(1)回路408と同様であって、主走査や副走査変倍を行う。
【0040】
総量規制(2)回路434は、色補正・UCR処理(2)回路431でCMYK信号に変換された際に、記録媒体上のYMCKトナーの総量を規制する。色補正・UCR処理(2)回路431でCMYKデータに変換され、特徴量抽出(2)回路422にて、画像のエッジ、非エッジ、エッジと非エッジの中間の弱エッジなどの判定処理がなされ、γ変換(2)回路423で、エッジ、非エッジ、弱エッジなどの判定結果に応じてγ変換処理を行い、階調処理回路424で、二値あるいは多値のディザ処理、二値あるいは多値の誤差拡散処理、二値あるいは多値の変動閾値誤差拡散処理などの階調処理を行う。編集(2)処理回路435は、画像追加/削除、枠消去、センターマスクなどのマスク処理、白黒(論理)反転などを必要に応じて行う。
【0041】
メインメモリ437は、画像処理前画像データ、ディスクリプタ情報、およびレジスタ・イメージなどを備えている。画像処理前画像データは、複数の画像処理前画像データなどからなる。また、ディスクリプタ情報は、複数のディスクリプタ情報などからなる。
【0042】
画像処理前画像データ、ディスクリプタ情報、レジスタ・イメージ(画像処理パラメータ)は、電源投入時やメモリの初期化時などではメインメモリ437の中には必ずしも存在せず、画像処理の必要に応じてメインメモリ437の中から必要とするメモリ量が確保される。画像処理前画像データは、ある場合にはスキャナCCD400a、スキャナCIS400bのいずれかから読み込まれて画像データが保持され、ある場合にはHDD419に保持されている画像データがHDD I/F418、マルチレイヤバス412、メモリコントローラ(2)回路436を介して転送されてきた画像データである。また、ある場合にはI/F421を介して外部のコンピュータ(PC)からLAN回線を通じて送信されてきたプリンタデータであり、また、ある場合には図示しない電話回線を通じて送られてきたFAXデータである。レジスタ・イメージ(画像処理パラメータ)は、各画像処理モジュールに設定するための画像処理パラメータを保持している。
【0043】
<色補正処理、及び色相判定処理について>
次に、色補正・UCR処理(1)回路407および色補正・UCR処理(2)回路431における色補正処理と、色相判定処理(1)回路406および色相判定処理(2)回路430による色相判定処理について説明する。
【0044】
色補正・UCR処理(1)回路407および色補正・UCR処理(2)回路431では、入力系の色分解特性と出力系の色材の分光特性の違いを補正し、忠実な色再現に必要な色材YMCの量を計算する色補正処理部と、YMCの3色が重なる部分をBk(ブラック)に置き換えるためのUCR処理部からなる。その処理の方法について、図2および図3の色空間の図を用いて説明する。
【0045】
図2に示すように、色補正処理は、無彩色軸(R=G=B(≡N軸))を中心として放射状に広がる平面で、色空間(R,G,B)を分割して行われる。彩度は、N軸に垂直に設けられたT軸に沿って変化する。また、色相は、T軸に平行な平面においてN軸を中心とした回転方向Uに沿って変化する。すなわち、所定の回転方向UにおいてN軸に平行に形成された面上のすべての点は、回転方向Uによって定まる色相を示す色の点である。
【0046】
また、点C、M、Yは、それぞれプリンタの一次色であるCMYにおいて、彩度が最大となる点である。また、点R、G、Bは、それぞれプリンタの2次色であるRGBにおいて、彩度が最大となる点である。プリンタ色再現領域672は、これらの点C、M、Y、R、G、Bと、点Wおよび点Kを曲線で結ぶことによって形成された略球面状の領域である。すなわち、このプリンタ色再現領域672の内側がプリンタにおいて出力可能な色の領域である。また、信号色領域660は、カラー画像データに対する信号色が取り得る色の領域である。
【0047】
なお、以下では、この色空間において信号色を補正する場合に、処理を簡単にするために、プリンタ色再現領域670をプリンタ色再現領域672とみなす。ここで、プリンタ色再現領域670は、8色の最大値に対応する点C、M、Y、R、G、B、点Wおよび点Kを直線で結ぶことによって形成された12面体状の領域である。なお、このように、プリンタ色再現領域670を、プリンタ色再現領域672とみなすことにより、補正量Xに実質的な誤差は生じない。
【0048】
次に、図3に基づいて色相領域について説明する。図3は、複数の色相領域に分割された色空間を示している。C境界面633は、点C、W、Kにより定まる平面である。同様に、i境界面634〜638(i=M、Y、R、G、B)は、それぞれ、点C、W、K(i=M、Y、R、G、B)により定まる平面である。色空間は、これらの境界面633〜638によって分割される。これら境界面633〜638によって分割された色空間には、CB色相領域640、BM色相領域641、MR色相領域642、RY色相領域643、YG色相領域644、GC色相領域645が形成されている。
【0049】
色相判定処理(1)回路406および色相判定処理(2)回路430による画像データの色相判定方法について説明する。先ず、3次元空間の色相判定の方法を説明し、次に2次元平面における色相判定の方法について説明する。
【0050】
3次元空間の色相判定においては、画像データから各色相評価値Fxを算出し、色相評価値Fxに基づいて、信号色を含む色相領域の色相領域コードを決定する。
【0051】
色相評価値Fxの理論的な導出方法について説明する。図3に示した点C、M、Y、R、G、B、W、Kを示す色座標をそれぞれ(Dir,Dig,Dib)(i=c、m、y、r、g、b、w、k)と示すことにする。例えば、点Cに対応する色座標は、(Dcr,Dcg,Dcb)である。
【0052】
この場合、例えばC境界面633は次式(1)で表される。
【0053】
(Dcg−Dcb)・Dr+(Dcb−Dcr)・Dg+(Dcr−Dcg)・Db=0 …(1)
【0054】
同様に、境界面634〜638は、それぞれ次式(2)〜(6)で表される。
(Dmg−Dmb)・Dr+(Dmb−Dmr)・Dg+(Dmr−Dmg)・Db=0 …(2)
(Dyg−Dyb)・Dr+(Dyb−Dyr)・Dg+(Dyr−Dyg)・Db=0 …(3)
(Drg−Drb)・Dr+(Drb−Drr)・Dg+(Drr−Drg)・Db=0 …(4)
(Dgg−Dgb)・Dr+(Dgb−Dgr)・Dg+(Dgr−Dgg)・Db=0 …(5)
(Dbg−Dbb)・Dr+(Dbb−Dbr)・Dg+(Dbr−Dbg)・Db=0 …(6)
【0055】
色空間は、例えば、C境界面633によって、CB色相領域640を含む領域とGC色相領域645を含む領域との2つの領域に分割される。同様に、色空間は、各i境界面634〜638によって2つの領域に分割される。そこで、カラー画像データがいずれの色相領域に含まれるかは、カラー画像データが各境界面633〜638によって形成される2つの領域のうちいずれの領域に含まれるかに基づいて判定することができる。すなわち、式(1)〜式(6)のそれぞれにカラー画像データ(Dr,Dg,Db)を代入して得られた値の正負に基づいて、カラー画像データが含まれる色相領域を判定することができる。
【0056】
そこで、上述の式(1)〜式(6)に基づいて色相評価値Fxを定める。すなわち、式(1)〜式(6)の左辺をそれぞれFc、Fm、Fy、Fr、Fg、Fbとする。
c=(Dcg−Dcb)・Dr+(Dcb−Dcr)・Dg+(Dcr−Dcg)・Db …(7)
m=(Dmg−Dmb)・Dr+(Dmb−Dmr)・Dg+(Dmr−Dmg)・Db …(8)
y=(Dyg−Dyb)・Dr+(Dyb−Dyr)・Dg+(Dyr−Dyg)・Db …(9)
r=(Drg−Drb)・Dr+(Drb−Drr)・Dg+(Drr−Drg)・Db …(10)
g=(Dgg−Dgb)・Dr+(Dgb−Dgr)・Dg+(Dgr−Dgg)・Db …(11)
b=(Dbg−Dbb)・Dr+(Dbb−Dbr)・Dg+(Dbr−Dbg)・Db …(12)
【0057】
すなわち、3次元空間の色相判定においては、式(7)〜式(12)において定められた各色相評価値Fxを算出する。例えば、色空間における任意の点(Dr,Dg,Db)から算出されたFc、Fが、「Fc≦0 And Fb>0」を満たす場合、この点はCB色相領域に含まれる。
【0058】
図4は、各色相評価値Fxと各色相領域とを対応付けた色相領域コードテーブルを示す。この色相領域コードテーブルにおいて、各色相領域が0〜5のコードで表されている。すなわち、Fc、Fbが「Fc≦0 And Fb>0」を満たす場合、この点は、コード=0のCB色相領域に含まれる。Fc、Fmが「Fc≦0 And Fm>0」を満たす場合、この点は、コード=1のBM色相領域に含まれる。Fm、Frが「Fm≦0 And Fr>0」を満たす場合、この点は、コード=2のMR色相領域に含まれる。Fr、Fyが「Fr≦0 And Fy>0」を満たす場合、この点は、コード=3のRY色相領域に含まれる。Fy、Fgが「Fy≦0 And Fg>0」を満たす場合、この点は、コード=4のYG色相領域に含まれる。また、Fg、Fgが「Fg≦0 And Fg>0」を満たす場合、この点は、コード=5のGC色相領域に含まれる。このように、各色相領域は、色相評価値Fxにより定義される。
【0059】
すなわち、図4に示した色相領域コードテーブルにおいて色相領域コードに対応付けられている色相評価値Fxの条件は、以上の式から定められた条件である。
【0060】
なお、図4に示した色相領域コードテーブルにおいては、便宜的にN軸上の色座標をGC色相領域に含めているが、他の色相領域に含めてもよい。また色相評価値Fxは、(Dir,Dig,Dib)(i=c、m、y、r、g、b、w、k)の実際の値によって変化する。したがって、図4に例示する色相領域コードテーブルにおいて各色相領域コードに対応付けるべき色相評価値の条件は、色相評価値の値に応じて変更してもよい。
【0061】
次に、3次元の色空間を2次元平面に写像し、2次元平面におけるカラー画像データの色座標を利用して、カラー画像データが含まれる色相領域を判定する方法について説明する。図5は、色相領域の一例の判定処理を示すフローチャートである。この色相領域の判定処理は、例えば図1における色相判定処理(1)回路406や色相判定処理(2)回路430において行われる。以下では、色相領域の判定処理を、色相判定処理(1)回路406で行うものとして説明する。
【0062】
図5において、先ず、色相判定処理(1)回路406は、カラー画像データが入力されると、カラー画像データの値を2次元化する(ステップS1000)。すなわち、カラー画像データの値を下記の式(13)および式(14)に代入して差分GRおよび差分BGを得る。これにより、カラー画像データの色空間における値(Dr,Dg,Db)が、色平面における値(GR,BG)に変換される。
【0063】
図6は、カラー画像データを写像すべき2次元平面を示している。この2次元平面において、「Dg−Dr」に相当する直線をGR軸とし、「Db−Dg」に相当する直線をBG軸とする。GR軸とBR軸とは互いに直交している。
【0064】
色空間上の点(Dr,Dg,Db)は、次に示す式(13)および式(14)により、図6に示す色平面に写像される。
GR=Dg−Dr …(13)
BG=Db−Dg …(14)
【0065】
また、色空間におけるN軸上の点(Dnr,Dng,Dnb)は、色平面における点(Dng−Dnr,Dnb−Dng)に写像される。Dnr=Dng=Dnbであるから、点(Dng−Dnr,Dnb−Dng)は、次式(15)に示されるようになる。
(Dng−Dnr,Dnb・Dng )=(0,0) …(15)
【0066】
すなわち、N軸上の全ての点は、図6に示す平面における原点Nに写像される。また、色空間における点C、M、Y、R、G、Bは、原点Nの周囲に、図6に示すように配置される。したがって、図3に示した6つの色相領域640〜645は、色平面においてN軸と点C、M、Y、R、G、Bとをそれぞれ結んだ直線で分割された領域740〜745にそれぞれ写像される。
【0067】
図5の説明に戻り、次に、入力されたカラー画像データの各色の値から差分GR、差分BG、および各色相評価値Fx’(x=c、m、y、r、g、b)を算出する(ステップS1010)。そして、次のステップS1020で、各色相評価値Fx’、差分GR、および差分BGに基づいて、色相領域コードテーブルを利用して、信号色を含む色相領域の色相領域コードを決定する。図7は、この、色相評価値Fx’の条件と色相領域コードcodeとを対応付ける色相領域コードテーブルの例を示す。なお、色相評価値Fx’の条件については後述する。
【0068】
色相評価値Fx’の導出方法について説明する。図6に示した色平面において、点Nと、点C、M、Y、R、G、Bとをそれぞれ結んだ直線、すなわち、直線NC、直線NM、直線NY、直線NR、直線NG、および直線NBはそれぞれ以下に示す式(16)〜式(21)のように表される。
BG=(Dcb−Dcg)/(Dcg−Dcr)・GR (但し、Dcg−Dcr≠0) …(16)
BG=(Dmb−Dmg)/(Dmg−Dmr)・GR (但し、Dmg−Dmr≠0) …(17)
BG=(Dyb−Dyg)/(Dyg−Dyr)・GR (但し、Dyg−Dyr≠0) …(18)
BG=(Drb−Drg)/(Drg−Drr)・GR (但し、Drg−Drr≠0) …(19)
BG=(Dgb−Dgg)/(Dgg−Dgr)・GR (但し、Dgg−Dgr≠0) …(20)
BG=(Dbb−Dbg)/(Dbg−Dbr)・GR (但し、Dbg−Dbr≠0) …(21)
【0069】
これら式(16)〜式(21)のそれぞれに、カラー画像データのGR値を代入して得られるBG値と、実際のカラー画像データのBG値との大小関係から、各式によって定まる直線と、カラー画像データに対応する点との位置関係がわかる。したがって、カラー画像データが、何れの色相領域に含まれるかは、式(16)〜式(21)にカラー画像データのGR値を代入して得られるBG値と、カラー画像データのBG値との大小関係に基づいて、判定することができる。
【0070】
そこで、式(16)〜式(21)に基づいて、以下に示す式(22)〜式(27)のようにして、色相評価値Fx’を定める。すなわち、式(16)〜式(21)の左辺をそれぞれFc’、Fm’、Fy’、Fr’、Fg’、Fb’とする。なお、式(22)〜式(27)において、分母側の条件は、上述の式(16)〜式(21)と同様である。
【0071】
c’=(Dcb−Dcg)/(Dcg−Dcr)・GR …(22)
m’=(Dmb−Dmg)/(Dmg−Dmr)・GR …(23)
y’=(Dyb−Dyg)/(Dyg−Dyr)・GR …(24)
r’=(Drb−Drg)/(Drg−Drr)・GR …(25)
g’=(Dgb−Dgg)/(Dgg−Dgr)・GR …(26)
b’=(Dbb−Dbg)/(Dbg−Dbr)・GR …(27)
【0072】
例えば、色平面における任意の点(GR,BG)から算出されたFc’およびFb’が、「BG≦Fc’ And BG>Fb’」を満たす場合、この点は、CB色相領域に含まれることがわかる。この場合、このCB色相領域はCB部分色空間と呼ばれ、色相領域コードcode=0とされる。
【0073】
同様にして、図7に示されるように、Fb’、Fm’が「BG≦Fb’ And BG<Fm’」を満たす場合、この点は、色相領域コードcode=1のBM部分色空間に含まれる。Fm’、Fr’が「BG≧Fm’ And BG<Fr’」を満たす場合、この点は、色相領域コードcode=2のMR部分色空間に含まれる。Fr’、Fy’が「BG≧Fr’ And BG<Fy’」を満たす場合、この点は、色相領域コードcode=3のRY部分色空間に含まれる。Fy’、Fg’が「BG≧Fy’ And BG>Fg’」を満たす場合、この点は、色相領域コードcode=4のYG部分色空間に含まれる。Fg’、Fc’が「BG≦Fg’ And BG≧Fc’」を満たす場合、この点は、色相領域コードcode=5のGC部分色空間に含まれる。
【0074】
すなわち、図7に示した色相領域コードテーブルにおいて色相領域コードに対応付けられている色相評価値Fx’の条件は、以上の式から定められた条件である。
【0075】
このように、図7に示した色相領域コードテーブルに、色相評価値Fx’の条件が予め設定されている。したがって、色相判定処理(1)回路406は、図7の色相領域コードテーブルのように、各色相領域コードに対応付けられている色相評価値Fx’の条件の中から、BGおよび色相評価値Fx’が満たす条件を特定し、当該色相領域コードテーブルにおいて、この条件に対応付けられている色相領域コードを選択すればよい。
【0076】
なお、図7に示した色相領域コードテーブルにおいては、N軸上の色座標をGC色相領域に含めているが、他の色相領域に含めてもよい。また色相評価値Fx’は、(Dir,Dig,Dib)(i=c、m、y、r、g、b、w、k)の実際の値によって変化する。したがって、図7の色相領域コードテーブルにおいて各色相領域コードに対応付けるべき色相評価値の条件は、色相評価値Fx’の値に応じて変更してもよい。
【0077】
なお、上述では、式(13)および式(14)に示した変換式によりカラー画像データ(Dr,Dg,Db)を色平面における値(GR,BG)に変換したが、これはこの例に限定されるものではない。例えば、式(13)および式(14)に替えて、以下の式(28)および式(29)に示す変換式により、変換を行ってもよい。
【0078】
GR=Ri・Dr+Gi・Dg+Bi・Db …(28)
BG=Rj・Dr+Gj・Dg+Bj・Db …(29)
ここで、Ri=Gi=Bi=0,Rj=Gj=Bj=0
【0079】
次に、色補正・UCR処理(1)回路407および色補正・UCR処理(2)回路431で行われる色補正処理について説明する。この色補正処理の応用で、原稿上において第1色を使用する色相域の色を、指定された第1色に変換する変換処理を行うことができる。
【0080】
入力されたカラー画像データ(R,G,B)が分割された空間の何処に属するかを、上述したように色相判定処理(1)回路406にて判定し、その後、各空間毎に予め設定しておいたマスキング係数を用いて、次式(30)を用いて色補正処理を行う。その際、濃度調整やカラーバランス調整など、必要に応じてマスキング係数の線形処理等を行う。なお、以下で分割点とは、例えば図2における点G(Green)のように、境界面と辺が交わった点である。
【0081】
【数1】

【0082】
色相hueをG(Green)とした場合は、式(30)は、次式(31)のようになる。
【数2】

【0083】
ここで、左辺P(hue):(P=C、M、Y、K;hue=色相R、G、B、Y、M、C、K、Wなど)をプリンタベクトル、右辺S(hue):(S=B、G、R;hue=色相R、G、B、Y、M、C、K、Wなど)をスキャナベクトル、APS(hue):(P=C、M、Y、K;S=B、G、R)を各色相毎の線形マスキング係数(マスキング係数)と呼ぶ。プリンタベクトルは、変換後の画像データの色を示す。また、スキャナベクトルは、変換前の画像データの色を示す。
【0084】
上述の式(30)において、マスキング係数を、想定される第1色(または第2色)と、第1色(または第2色)に変換される元の色とを用いて求める。これにより、元の色の彩度(濃度)などを変換後の第1色に反映させた変換処理を行うことができる。
【0085】
マスキング係数の算出方法について説明する。通常、各空間の線形マスキング係数APS(色相)(P=Y、M、C、K;S=R、G、B、定数)は、図8−1に示すような無彩色軸上の異なる2点(R1,G1,B1)および(R2,G2,B2)と、無彩色軸上に無い2境界面上の2点(R3,G3,B3)および(R4,G4,B4)の計4点のR、G、Bの値と、その色再現に最適な現像部C、M、YおよびKの記録値(C1,M1,Y1,K1)、(C2,M2,Y2,K2)、(C3,M3,Y3,K3)および(C4,M4,Y4,K4)を予め決めておき、以下の式(32)〜式(35)に示す演算により求める。
【0086】
【数3】

【0087】
式(32)より、両辺に、式(33)の逆行列である式(34)を掛けて両辺を入れ替えて、式(35)として、マスキング係数を得る。
【数4】

【数5】

【数6】

【0088】
以上により、線形マスキング係数APS(色相)(P=Y、M、C、K;S=R、G、B)が得られる。ここで、AXY(3−4)は、色相(3)と色相(4)との間の色領域で成り立つマスキング係数を表す。このような演算を、色相環において互いに隣り合う全ての色相の組についてそれぞれ行う。
【0089】
図3のように6つの境界面で色空間(R,G,B)を分割する場合、少なくとも各境界面上の6点と無彩色軸上の2点の、計8点のR,G,Bの値と、その色の再現に最適な現像部のC、M、Y及びKの記録値を予め決めておき、これらに基づいて各空間のマスキング係数を求める。なお、上述のように各空間のマスキング係数を予め求めてROM、RAM等に記憶しておき、色補正処理において、色相判定で判定された色に応じて適切なマスキング係数を選択し、色補正を行うことができる。
【0090】
ここで説明した色補正処理を、色補正・UCR処理(1)回路407および色補正・UCR処理(2)回路431における色変換処理に適用するには、例えば、第1色の変換の場合、スキャナベクトルとして第1色への変換を想定する色のデータを用い、プリンタベクトルとして第1色の色のデータを用いて式(35)によりマスキング係数を求める。こうして求めたマスキング係数を式(30)に適用する。これにより、変換前の色の彩度などを変換後の色に反映させることができる。
【0091】
図8−2には、画像形成装置10のスキャナ400によって読み取られる原稿と、該原稿を読み取ることによって得られる画像データの一例を示した。
【0092】
図8−2(D)及び図8−2(B)に示すように、普通紙上に、コート紙が貼りつけられており、このコート紙上に光沢のあるボールの写真画像が形成されていたとする。このような画像の形成された読み取り原稿をスキャナ400で読み取ると、図8−2(C)に示す反射率で原稿が読み取られ(原稿の読み取り値)て、画像処理装置450に画像データが入力される。本実施の形態では、図8−2(A)に示すように、該画像データに基づいて、画像形成対象の記録媒体である転写紙上に、有色トナーと透明トナーを用いて画像を形成する。
【0093】
<像域分離・ACS判定(1)回路、像域分離・ACS判定(2)回路について>
次に、図1における、像域分離・ACS判定(1)回路403、及び像域分離・ACS判定(2)回路441について、図9及び図10を用いて詳細に説明する。
【0094】
像域分離・ACS判定(1)回路403は、上述のように、原稿の読み取りによって得られた画像データについて、文字領域、網点領域、及び地肌領域等を判定し、領域判定結果を示す領域判定結果X(7ビット)、カラー判定結果を示すカラー判定信号(ACS Result)、及び透明トナーの付加量を示す光沢付加量T(8ビット)を出力する。
【0095】
なお、カラー判定結果とは、原稿媒体の読み取りによって得られた画像データが、カラーの画像データ(すなわち、カラー原稿)であるか、白黒の画像データ(すなわち、白黒原稿)であるか、の判定結果を示す。
【0096】
図9に示すように、像域分離・ACS判定(1)回路403は、入力画像I/F(インターフェース)501A、遅延調整メモリ部502A、出力画像I/F(インターフェース)506A、像域分離部503A、光沢付加部504A、ACS(自動カラー選択)部505Aを備える。
【0097】
入力画像I/F(インターフェース)501Aは、画像データ(信号R,G,B)の論理反転を行う。遅延調整メモリ部502Aは、入力画像I/F501Aから受け付けた画像データについて遅延調整を行い、出力画像I/F506A、像域分離部503A、光沢付加部504A、及びACS部505Aの各々へ出力する。
【0098】
像域分離部503Aは、受け付けた画像データを解析し、画像データを構成する各画素について、文字領域を構成する画素であるか、網点領域を構成する画素であるか、地肌領域を構成する画素であるか、等を判定する。そして、像域分離部503Aは、判定結果を、上記領域判定結果を示す領域判定結果Xとして、出力画像I/F506A及び光沢付加部504Aへ出力する。なお、像域分離部503Aの詳細は後述する。
【0099】
光沢付加部504Aは、遅延調整メモリ部502AからRGBの画像データを受け付けると共に、像域分離部503Aから領域判定結果Xを受け付ける。そして、光沢部付加部504Aでは、RGBの画像データ、及び領域判定結果Xに基づいて、各画素に付加する光沢トナーの量を示す光沢付加量Tを決定する(詳細後述)。そして、光沢付加部504Aは、光沢付加量Tを出力画像I/F506Aへ出力する。
【0100】
ACS部505Aは、画像データが白黒の画像データ(白黒画像)であるか、カラーの画像データであるかを判定する。そして、ACS部505Aは、カラー判定結果を示すカラー判定信号(ACS Result)を出力画像I/F506Aへ出力する。
【0101】
出力画像I/F506Aは、入力画像I/F501Aから遅延調整メモリ部502Aを介して受け付けた画像データに対し、論理判定を行う。そして、出力画像I/F506Aは、論理判定結果と、像域分離・ACS判定(1)回路403で受け付けた画像データと、の白黒の論理(白が“0”であるか、黒が“0”であるか)を一致させる処理を行う。そして、出力画像I/F506Aは、該論理を一致させた後のRGBの画像データをスキャナγ変換回路402に出力する。また、出力画像I/F506Aは、受け付けた領域判定結果X及び光沢付加量Tを、スキャナγ変換回路402に出力する。
【0102】
次に、像域分離・ACS判定(2)回路441について詳細に説明する。
【0103】
図10に示すように、像域分離・ACS判定(2)回路441は、入力画像I/F(インターフェース)501A、遅延調整メモリ部502A、出力画像I/F(インターフェース)506B、像域分離部503B、光沢付加部504B、ACS部505Aを備える。なお、図9に示す像域分離・ACS判定(1)回路403と異なる点は、像域分離部503A及び光沢付加部504Aに代えて、像域分離部503B及び光沢付加部504Bを備える点である。
【0104】
像域分離部503Bは、画像データ及び領域判定結果X、または画像データを受け付ける。像域分離部503Bは、画像データと共に領域判定結果Xを受け付けた場合には、受け付けた画像データと領域判定結果Xを、出力画像506Aへ出力する。一方、像域分離部503Bは、画像データを受け付け且つ領域判定結果Xを受け付けなかった場合には、像域分離部503Aと同様にして領域判定結果Xを作成する(詳細後述)。そして、像域分離部503Bは、受け付けた画像データと、作成した領域判定結果Xと、を出力画像506Aへ出力する。
【0105】
光沢付加部504Bは、遅延調整メモリ部502AからRGBの画像データを受け付けると共に、像域分離部503Bから領域判定結果Xを受け付ける。また、光沢付加部504Bでは、光沢付加量Tを受け付ける。
【0106】
光沢付加部504Bでは、光沢付加量Tを受け付けた場合には、受け付けた光沢付加量Tと、遅延調整メモリ部502Aから受け付けたRGBの画像データと、を出力画像I/F506Aへ出力する。一方、光沢付加部504Bでは、光沢付加量Tを受け付けなかった場合には、光沢付加部504Aと同様にして、RGBの画像データ、及び領域判定結果Xに基づいて、各画素に付加する光沢トナーの量を示す光沢付加量Tを決定する(詳細後述)。そして、光沢付加部504Bは、光沢付加量Tを出力画像I/F506Aへ出力する。
【0107】
次に、像域分離・ACS判定(1)回路403、及び像域分離・ACS判定(2)回路441における、像域分離部503A及び像域分離部503Bについて詳細に説明する。
【0108】
図11には、像域分離部503Bの構成を示すブロック図を示した。なお、像域分離部503Aは、領域判定結果Xを受け付けない以外は、像域分離部503Bと同じ構成である。
【0109】
像域分離部503B(503A)は、MTF補正部511、エッジ分離部512、白背景分離部513、網点分離部514、色判定部515、パターン検出部516、総合判定部517、像域分離結果生成部518である。
【0110】
MTF(Modulation Transfer Function)補正部511は、RGBの画像データの内、Gの画像データを受け付ける。そして、受け付けたG(Green)の画像データについて、エッジや白地を検出するために、エッジ協調処理を行い、MTF特性の劣化を補正する。そして、MTF補正部511は、補正したGの画像データを、エッジ分離部512及び白背景分離部513へ出力する。
【0111】
エッジ分離部512は、MTF補正されたN画像データを受け付け、白画素、黒画素の連続性から、文字領域を構成する画素と、写真領域(高線数網点なども含む)を構成する画素と、を分離し、エッジ判定を行う。そして、エッジ分離部512は、得られたエッジ判定結果を、像域分離結果生成部518及び総合判定部517へ出力する。
【0112】
白背景分離部513は、MTF補正部511からMTF補正されたGの画像データを受け付けると共に、RGBの画像データを受け付ける。そして、白背景分離部513は、白画素が周囲に存在するか否かに基づいて、白背景画素を判定する。これによって、白背景分離部513は、画像データにおける各画素について、地肌領域を構成する画素であるか否かを判定する。そして、白背景分離部513は、地肌領域を構成する画素であるか否かを示す白背景判定結果を総合判定部517へ出力する。
【0113】
網点分離部514は、RGBの画像データを受け付ける。そして、網点分離部514は、受け付けた画像データを解析し、画像データのピークの有無により網点を分離する。これによって、網点分離部514は、画像データにおける各画素について、網点領域を構成する画素であるか否かを判定する。そして、網点分離部514は、網点領域を構成する画素であるか否かを示す網点判定結果を示す情報を、総合判定部517及び像域分離結果生成部518へ出力する。
【0114】
色判定部515は、RGBの画像データを受け付ける。そして、色判定部515は、受け付けたRGBの画像データにおける、同一の画素におけるRGB信号の差の大小により、公知の方法により、無彩色の画素か有彩色の画素かを判定する。色判定部515は、判定結果を像域分離結果生成部518へ出力する。
【0115】
総合判定部517は、エッジ分離部512からエッジ判定結果を受け付けると共に、白背景分離部513から白背景判定結果を受け付ける。また、総合判定部517は、網点分離部514から網点判定結果を受け付ける。そして、総合判定部517は、これらの判定結果から、文字エッジの内部を解析し、絵柄の線である場合には非文字と判定し、それ以外については文字と判定する。そして、文字であるか非文字であるかを示す信号を像域分離結果生成部518へ出力する。
【0116】
パターン検出部516は、RGBの画像データを受け付ける。そして、パターン検出部516は、背景上の所定パターンを検出し、パターン検出結果を像域分離結果生成部518へ出力する。
【0117】
像域分離結果生成部518は、エッジ分離部512からエッジ判定結果を受け付け、総合判定部517から文字であるか非文字であるかを示す信号を受け付ける。また、像域分離結果生成部518は、白背景分離部513から白背景判定結果を受け付ける。また、像域分離結果生成部518は、網点分離部514から網点分離結果を受け付け、色判定部515から色判定結果を受け付け、パターン検出部516からパターン検出結果を受け付ける。
【0118】
そして、像域分離結果生成部518は、これらの受け付けた判定結果や信号を、対応した所定ビットに反映し、画像データを構成する各画素について、文字領域、網点領域、及び地肌領域等を構成する画素であるか否かを示す領域判定結果Xを示す信号を、出力する。
【0119】
次に、光沢付加部504Aで実行する、光沢付加量Tの生成処理について説明する。光沢付加部504Aは、RGBの画像データ、及び領域判定結果Xに基づいて、各画素に付加する光沢トナーの量を示す光沢付加量Tを決定する光沢付加量生成処理を実行する。図12は、光沢付加部504Aが実行する光沢付加量生成処理の手順を示すフローチャートである。
【0120】
光沢付加部504Aは、まず、遅延調整メモリ部502Aから受け付けたRGBの画像データを読み出す(ステップS101)。
【0121】
なお、光沢付加部504Aは、受け付けた画像データを構成する各画素を順次注目画素として設定し、各処理を行う。
【0122】
光沢付加部504Aは、注目画素の画素データと、注目画素に連続する周囲の画素の画素データと、の各々における、領域判定結果Xを取得する(ステップS102)。すなわち、光沢付加部504Aは、注目画素と周囲の画素の各々が、文字領域、網点領域、及び地肌領域等の何れを構成する画素であるかを取得する。
【0123】
次いで、光沢付加部504Aは、注目画素が地肌領域を構成する画素であるか否かを判別する(ステップS103)。そして、注目画素が地肌領域を構成する画素であると判別した場合には(ステップS103:Yes)、ステップS104へ進む。そして、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が、予め定めた地肌濃度閾値より小さい(すなわち明るい)か否かを判別する(ステップS104)。なお、この地肌濃度閾値は、予め設定されて光沢付加部504Aに記憶されている。
【0124】
このステップS104の判断について詳細に説明する。
【0125】
光沢付加部504Aは、注目画素(x0,y0)が、地肌データと判定する方法を、記載する。
【0126】
例えば、注目画素(x0,y0)の画素データS(x0,y0)が、信号(R(x0,y0)、G(x0,y0)、B(x0,y0))からなるとする。すなわち、S(x0,y0)=(R(x0,y0)、G(x0,y0)、B(x0,y0))の関係を示すとする。この場合、注目画素の画素データS(x0,y0)が、反射率に比例するか、もしくは、明度に比例する場合には、その値が大きいほど“明るい”と言うことができる。このため、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データS(x0,y0)を、地肌判定閾値Sgth=(Rgth,Ggth,Bght)と比較する。
【0127】
そして、光沢付加部504Aは、下記式(40)〜式(43)が成り立つときに、ステップS104で肯定判断する。
【0128】
(S(x0,y0)≧Sgth …式(40)
R(x0,y0)≧Rgth …式(41)
G(x0,y0)≧Ggth …式(42)
B(x0,y0)≧Bgth …式(43)
【0129】
注目画素の画素データによって示される濃度値が地肌濃度閾値より小さい(明るい)場合には(ステップS104:Yes)、光沢付加部504Aは、該注目画素を光沢付加画素[タイプ1]と判定する(ステップS112)。そして、光沢付加部504Aは、光沢付加画素[タイプ1]に応じた、該注目画素における透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを示す信号(8ビット)を決定する光沢付加量T[タイプ1]取得処理を実行する(詳細後述)(ステップS113)。
【0130】
一方、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が、予め定めた地肌濃度閾値より大きい(すなわち暗い)場合には(ステップS104:No)、ステップS114へ進む。そして、光沢付加部504Aは、該注目画素を光沢付加画素[タイプ2]と判定する(ステップS114)。そして、光沢付加部504Aは、光沢付加画素[タイプ2]に応じた、該注目画素における透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを示す信号(8ビット)を決定する光沢付加量T[タイプ2]取得処理を実行する(詳細後述)(ステップS115)。
【0131】
一方、上記ステップS103において、光沢付加部504Aは、注目画素が地肌領域を構成する画素(地肌判定画素)ではないと判別した場合には(ステップS103:No)、ステップS105へ進む。そして、光沢付加部504Aでは、注目画素が網点領域を構成する画素(網点判定画素)であるか否かを判別する(ステップS105)。
【0132】
そして、注目画素が網点領域を構成する画素であると判断した場合(ステップS105:Yes)、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が、予め定めた地肌濃度閾値より小さい(すなわち明るい)か否かを判別する(ステップS106)。
【0133】
注目画素の画素データによって示される濃度値が地肌濃度閾値より小さい(明るい)場合には(ステップS106:Yes)、光沢付加部504Aは、該注目画素を光沢付加画素[タイプ3]と判定する(ステップS116)。そして、光沢付加部504Aは、光沢付加画素[タイプ3]に応じた、該注目画素における透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを示す信号(8ビット)を決定する光沢付加量T[タイプ3]取得処理を実行する(詳細後述)(ステップS117)。
【0134】
一方、ステップS106の判断において、注目画素の画素データによって示される濃度値が、予め定めた地肌濃度閾値より大きい(すなわち暗い)場合には(ステップS106:No)、上記ステップS114へ進む。
【0135】
また、上記ステップS105の判断において、注目画素が網点領域を構成する画素ではないと判断した場合(ステップS105:No)、光沢付加部504Aは、注目画素が文字領域を構成する画素(文字判定画素)であるか否かを判別する(ステップS107)。
【0136】
そして、注目画素が文字領域を構成する画素である場合には(ステップS107:Yes)、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が、予め定めた地肌濃度閾値より小さい(すなわち明るい)か否かを判別する(ステップS108)。
【0137】
注目画素の画素データによって示される濃度値が地肌濃度閾値より小さい(明るい)場合には(ステップS108:Yes)、上記ステップS112へ進む。一方、注目画素の画素データによって示される濃度値が地肌濃度閾値より大きい(暗い)場合には(ステップS108:No)、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が予め定めた文字画素濃度閾値より小さい(明るい)か否かを判別する(ステップS109)。そして、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が文字画素濃度閾値より小さい場合には(ステップS109:Yes)、該注目画素を光沢付加画素[タイプ4]と判定する(ステップS118)。そして、光沢付加部504Aは、光沢付加画素[タイプ4]に応じた、該注目画素における透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを示す信号(8ビット)を決定する光沢付加量T[タイプ4]取得処理を実行する(詳細後述)(ステップS119)。
【0138】
一方、ステップS109の判断において、注目画素の画素データによって示される濃度値が、文字画素濃度閾値より大きい(すなわち暗い)場合には(ステップS109:No)、光沢付加部504Aは、光沢付加を行わない画素と判定する(ステップS120)。そして、光沢付加部504Aは、該注目画素の光沢付加量Tを“0”に設定する(すなわち、透明トナーの付加をしない画素として設定する)(ステップS121)。
【0139】
また、上記ステップS107の判断において、注目画素が文字領域を構成する画素ではない場合には(ステップS107:No)、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が、予め定めた地肌濃度閾値より小さい(すなわち明るい)か否かを判別する(ステップS110)。
【0140】
注目画素の画素データによって示される濃度値が地肌濃度閾値より小さい(明るい)場合には(ステップS110:Yes)、上記ステップS112へ進む。一方、注目画素の画素データによって示される濃度値が地肌濃度閾値より大きい(暗い)場合には(ステップS110:No)、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が予め定めた写真画素濃度閾値より小さい(明るい)か否かを判別する(ステップS111)。そして、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が写真画素濃度閾値より小さい場合には(ステップS111:Yes)、上記ステップS118へ進む。一方、光沢付加部504Aは、注目画素の画素データによって示される濃度値が写真画素濃度閾値より大きい場合には(ステップS111:No)、上記ステップS120へ進む。
【0141】
なお、上記判断基準に用いた、地肌濃度閾値、文字画素濃度閾値、及び写真画素濃度閾値は、予め設定されて光沢付加部504A(光沢付加部504B)に格納されている。地肌濃度閾値は、地肌領域(背景領域)を構成する画素であると判断するときの閾値を示す濃度値である。文字画素濃度閾値は、文字領域を構成する画素であると判断するときの閾値を示す濃度値である。また、写真画素濃度閾値とは、写真領域を構成する画素であると判断するときの閾値を示す濃度値である。
【0142】
これらの濃度閾値は、地肌濃度閾値<文字画素濃度閾値<写真画素濃度閾値の関係を示す。
【0143】
これらの濃度閾値を用いて、像域分離部503A(503B)によって判断された領域判定結果Xで分類された地肌領域、文字領域、網点領域の各々を形成する画素について、更に、濃度閾値に応じた分類を行い、透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを設定することができる。
【0144】
次に、光沢付加部504Aが実行する、光沢付加量T[タイプ1]取得処理(図12中、ステップS113参照)について詳細に説明する。
【0145】
図13は、光沢付加部504Aが実行する光沢付加量T[タイプ1]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【0146】
まず、光沢付加部504Aでは、注目画素(x0,y0)と周辺画素とから、移動平均を求める(ステップS130)。
【0147】
詳細には、まず、光沢付加部504Aでは、注目画素(x0,y0)と周辺画素(x,y)から移動平均(下記のSave(x0,y0))を求める。注目画素(x0,y0)の画素データS(x0,y0)(上述のように、画素データS(x0,y0)=R(x0,y0),G(x0,y0),B(x0,y0))の、RGB成分のそれぞれについて、注目領域A(x,y)(一例として、主走査方向Px画素×副走査方向Py画素とする)の画像データS(x,y)について、移動平均Save(x0,y0)を求める(式(50)参照)。
【0148】
SAve(x0,y0)=(Rave(x0,y0),Gave(x0,y0),Bave(x0,y0)) …式(50)
【0149】
なお、Save(x0,y0)は、下記式(51)で表記される。
【0150】
Save(x0,y0)={1/(px・py)}・Σ{ΣS(x,y)}
x∈A y∈A
={1/(px・py)}・ΣS(x,y)
x,y∈A
…式(51)
【0151】
ここで、Σ x,y∈Aは、注目領域Aに含まれる画素の座標(x,y)の和を表す。また、x,y∈Aは、領域Aに含まれる画素を示し、Σはx∈A、y∈Aのそれぞれの和を表す。
【0152】
画素数px、pyを奇数として、座標(x0,y0)を、領域Aの中心画素とすると、領域Aに含まれる座標(x,y)は、一例として、下記式(52)の範囲に含むとしてもよい。
【0153】
x0−(px/2)≦x≦x0+(px/2)
y0−(py/2)≦y≦y0+(py/2)
…式(52)
【0154】
なお、画像データの端部領域を、注目画素とした場合には、式(52)に示す範囲に限定されず、注目画素(x0,y0)が、注目領域Sの中心画素であるとしなくてもよい。
【0155】
また、pxとpyは、下記式(53)で表すことができる。
【0156】
px=Σ1 x∈A
py=Σ1 y∈A
…式(53)
【0157】
なお、上記式(50)で示される移動平均Save(x0,y0)の値は、注目領域A(x,y)内のすべての画素が地肌データである場合には該式(52)で求められる値を用いる。一方、注目領域A(x,y)内に、地肌データ以外の画素が含まれる場合には、地肌データ以外の画素を除外して、平均値を求める。地肌データを除外した注目領域A(地肌)(x,y)は、下記式(54)の関係を有する。
【0158】
A(地肌)(x,y) ⊆ A(x,y) …式(54)
【0159】
なお、式(54)中、A(地肌)⊆Aは、地肌データのみの領域A(地肌)が領域Aと等しい、または領域A(地肌)が領域Aに含まれることを表す。
【0160】
そして、上記式(51)から、注目画素(x0,y0)を含む領域Aの地肌データのみの平均値Save(地肌)(x0,y0)を、上記式(53)及び式(54)に基づいて、下記式(55)により求める。
【0161】
Save(地肌)(x0,y0)={1/(Σ1・Σ1)}・Σ{ΣS(x,y)}
x∈A(地肌) y∈A(地肌) x∈A(地肌) y∈A(地肌)
={1/Σ1}・ΣS(x,y)
x,y∈A(地肌) x,y∈A(地肌)
…式(55)
【0162】
次に、光沢付加部504Aは、注目画素と移動平均との差、不偏分散を求める(ステップS131)。
【0163】
具体的には、光沢付加部504Aは、まず、注目画素(x0,y0)の画像データS(x0,y0)と移動平均Save(地肌)(x0,y0)と差から不偏分散V(地肌)(x0,y0)を求める。
【0164】
詳細には、光沢付加部504Aは、下記式(56)を用いて、注目領域A(地肌)(x0,y0)の各画素と、平均値Save(地肌)(x0,y0)とから、不偏分散V(地肌)(x0,y0)を求める。
【0165】
なお、不偏分散V(地肌)とは、地肌領域を構成する画素のばらつきを示し、不偏分散V(地肌)の値が大きいほど、ばらつきが大きいことを示す。
【0166】
[V(地肌)(x0,y0)]
={1/(Σ1−1)}・Σ[S(x,y)−Save(地肌)(x0,y0)]
x,y∈A(地肌) x,y∈A(地肌) …(56)
【0167】
なお、式(56)では、A(地肌)を満たす画素が2画素以上存在しないと、有効な値が得られない。また、地肌データのバラつきを求める上では、注目領域A(x0,y0)内の地肌データの画素数p(A(地肌))が、2より大きな所定画素数Pthであることが必要である(式(57)参照)。
【0168】
p(A(地肌))≧pth
p(A(地肌))=Σ1 x,y∈A(地肌)
…式(57)
【0169】
次に、光沢付加部504Aは、上記ステップS131で算出した不偏分散V(地肌)(x0,y0)が、所定値Vth以下か否かを判定する(ステップS132)。
【0170】
この所定値Vthは、原稿として使用される種々の紙種を区別するための地肌部の不偏分散という値であればよい。具体的には、原稿として使用される種々の紙種の地肌部の不偏分散を、V(地肌)(紙種)と表記して、図21に示す表において、光沢紙の地肌部の不偏分散V(地肌)(光沢紙)、光沢印画紙の地肌部の不偏分散V(地肌)(光沢印画紙)、マット印画紙の地肌部の不偏分散V(地肌)(マット印画紙)、コート紙の地肌部の不偏分散V(地肌)(コート紙)、普通紙の地肌部の不偏分散V(地肌)(普通紙)、再生紙の地肌部の不偏分散V(地肌)(再生紙)、の値を予め求めておく。それぞれの紙種に対しても、メーカーや製造国、表面処理、再生紙に対しては古紙の使用率などに応じて複数種類が存在するので、各国で流通量が多い紙に対して測定しておき、他の紙種と区別できる境界値を、紙種毎の所定値Vth(紙種)とする。
【0171】
一例として、上記の値の大小関係が下記式(A)の関係である場合を考える。
【0172】
V(地肌)(光沢紙)≦V(地肌)(コート紙)<V(地肌)(普通紙)<V(地肌)(再生紙) …式(A)
【0173】
そして、光沢紙またはコート紙が使用された原稿領域について、印刷する転写紙上の領域に透明トナーにより光沢付加を行い、且つ普通紙または再生紙が使用された原稿領域について、印刷する転写紙上の領域に透明トナーを付加させない場合には、この所定値Vthを、コート紙と普通紙を区別するための所定値Vth(コート紙)などと表記して、下記式(B)として決めることなどによって特定の値を定める。
【0174】
V(地肌)(光沢紙)≦V(地肌)(コート紙)<Vth(コート紙)<V(地肌)(普通紙)<V(地肌)(再生紙) …式(B)
【0175】
この閾値Vthとしては、例えば、光沢紙またはコート紙が使用された原稿領域について、印刷する転写紙上の領域に透明トナーにより光沢付加を行い、且つ普通紙または再生紙が使用された原稿領域について、印刷する転写紙上の領域に透明トナーを付加させない場合には、この所定値Vthを、下記式(C)としてコート紙または光沢紙であるかと、普通紙あるいは再生紙であるかを区別するための閾値とする。しかしながら、普通紙に分類される紙種でも、コート紙に近い。
【0176】
V(地肌)(光沢紙)≦V(地肌)(コート紙)<Vth(コート紙)<V(地肌)(普通紙)<V(地肌)(再生紙) …式(C)
【0177】
ステップS132の判断によって、注目画素の領域が滑らかであるか(すなわち、ばらつきが小さい)否かを判断する。
【0178】
光沢付加部504Aは、上記ステップS131で算出した不偏分散Vが所定値を超える場合(ステップS132:No)、光沢付加量T(x0,y0)を“0”に決定する(ステップS134)。
【0179】
一方、光沢付加部504Aは、上記ステップS131で算出した不偏分散Vが所定値以下である場合(ステップS132:Yes)、不偏分散V(地肌)(x0,y0)の値に基づいて、光沢付加量T(x0,y0)を決定する(ステップS133)。
【0180】
詳細には、不偏分散V(地肌)(x0,y0)が所定値Vth以下である場合(ステップS132:Yes)には、光沢付加部504Aでは、注目画素(x0,y0)はバラつきの少ない地肌領域内の画素データであると判断する。このため、この画素データに、透明トナーを使用する。一方、不偏分散V(地肌)(x0,y0)が所定値Vthを超える場合(ステップS132:No)には、光沢付加部504Aでは、注目画素(x0,y0)はバラつきの大きい地肌領域内の画素データであると判断し、透明トナーを付加しない。
【0181】
また、ステップS133では、光沢付加部504Aは、光沢付加量の最大値Tmaxを条件として、不偏分散V(地肌)(x0,y0)の値、またはV(地肌)(x0,y0)の値が小さいほど、最大値Tmaxに近づくように、光沢付加量Tを決定する。
【0182】
なお、光沢付加量の最大値Tmaxは、記録媒体に透明トナーを転写及び定着させることによって得られる最大光沢を実現するために必要な光沢付加量、または、該光沢付加量と、プリンタ415で提供可能な光沢付加量の最大値と、の内の小さい方の値を用いればよい。そして、本実施の形態では、光沢付加部504Aは、網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度(網点間隔)の少なくとも一方が低いほど、高い最大値Tmaxの値を設定する。
【0183】
図14には、地肌領域を構成する画素の画素データ(地肌データと称する場合がある)の不偏分散V(地肌)(地肌データのばらつきと称する場合がある)と、光沢付加量Tと、の関係を示した。
【0184】
なお、図14では、横軸を地肌データのばらつき(不偏分散V(地肌)(x0,y0))または、不偏分散の二乗値[V(地肌)(x0,y0)]としている。また、図14では、縦軸は、光沢付加量Tを示す。なお、不偏分散V(地肌)または不偏分散の二乗値の値が小さいほど、地肌データのバラつきは小さい。このため、不偏分散V(地肌)または不偏分散の二乗値の値が小さいほど、画像データの平滑性が高い、あるいは、地肌データが滑らかである。
【0185】
一方、不偏分散V(地肌)または不偏分散の二乗値の値が大きいほど、地肌データのばらつきは大きい。このため、不偏分散V(地肌)または不偏分散の二乗値の値が大きいほど、地肌データの平滑性が低い、あるいは、ざらついている(滑らかでない)。
【0186】
光沢付加部504Aは、上記ステップS133の処理において、図14に示すように、上限値Tmax(最大光沢付加量)を設定し、設定した最大光沢付加量を上限として、地肌データの不偏分散V(地肌)が大きくなるにつれて、光沢付加量Tが少なくなるように、光沢付加量Tを決定する。
【0187】
このように、本実施の形態では、スキャナ400で読み取られた画像データを構成する各画素に付与する透明トナー量の最大値を示す最大光沢付加量として、網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度の少なくとも一方が低いほど、高い最大光沢付加量を設定する。そして、地肌領域を構成する各地肌画素毎に、各地肌画素と各地肌画素の周辺画素とのばらつきを算出する。そして、地肌画素におけるばらつきが小さいほど、設定された最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を地肌画素毎に設定する。
【0188】
図15には、透明トナーの付着量(M/A)Tと、画像濃度D(有色トナーの付着量(M/A)Color,Color=Y,M,C,orK)との関係を示した。
【0189】
図15では、横軸は、画像濃度D、あるいは、有色トナー(KCMY)の単位面積あたりの付着量(M/A)を示す。また、図15では、縦軸は、透明トナーの単位面積あたりの付着量(M/A)Tを示す。
【0190】
図15に示すように、光沢付加部504Aは、画像形成対象の記録媒体上のある領域に載せる有色トナーの付着量が多くなるほど、該領域に載せる透明トナーの付着量を減らすように、光沢付加量Tを設定する。
【0191】
また、光沢付加部504Aは、注目画素(x0,y0)が地肌データでない場合でも、隣接画素に透明トナーが使用されている場合には、透明トナーを使用すると判定する。
【0192】
そして、光沢付加部504Aは、X軸、Y軸、Z軸に直交する軸として、地肌データのバラつきをX軸に、有色トナーの塗布量をY軸に、透明トナーの塗布量(または付着量)をZ軸に割り当て、地肌データのバラつきと、トナー付着量に応じて、透明トナーの塗布量を決定する。
【0193】
なお、透明トナーの塗布量(付着量)は、光沢付加量Tと同じ意味である。
【0194】
次に、光沢付加量T[タイプ2]取得処理(図12中、ステップS115参照)について詳細に説明する。
【0195】
図16は、光沢付加部504Aが実行する光沢付加量[タイプ2]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【0196】
まず、光沢付加部504Aでは、注目画素(x0,y0)と周辺画素とから、網点画素の間隔を取得する(ステップS140)。
【0197】
光沢付加部504Aは、例えば、この網点画素の間隔として、600dpi〜1200dpiの読取解像度で、例えば、50線〜300線程度について網点画素の間隔を検出する。
【0198】
次に、光沢付加部504Aは、網点画素を除外した周辺画素の画素数を求める(ステップS141)。この網点画素を除外した周辺画素の画素数とは、地肌部のばらつき(分散)の算出に用いることの可能な画素の画素数、すなわち、地肌濃度を示す画素の画素数を示す。
【0199】
次に、光沢付加部504Aは、ステップS141で求めた画素数の数が、予め定めた所定値以上であるか否かを判断する(ステップS142)。該所定値は、下記の差あるいは不偏分散を評価するのに十分な数の画素数が定められる。
【0200】
次に、光沢付加部504Aは、ステップS141で求めた画素数の数が、予め定めた所定値以上である場合には(ステップS142:Yes)、ステップS143へ進み、注目画素の周辺画素における、網点画素を除外した周辺画素から移動平均を求める(ステップS143)。
【0201】
次に、光沢付加部504Aは、上記ステップS143の処理で移動平均の算出に用いた画素と移動平均との差、あるいは該差から不偏分散を、上記ステップS131と同様にして求める(ステップS144)。
【0202】
次に、上記ステップS144で求めた差、あるいは不偏分散が、予め定めた所定値以下であるか否かを判別する(ステップS145)。なお、このステップS145の判断に用いる「所定値」としては、上記ステップS132で用いた所定値(図13参照)を用いる。
【0203】
ステップS145で肯定判断すると(ステップS145:Yes)、光沢付加部504Aは、ステップS144で求めた差または不偏分散に基づいて、上記ステップS133と同様にして光沢付加量Tを算出する。
【0204】
次に、光沢付加部504Aは、上記ステップS140で取得した網点画素間の間隔が、予め定めた所定値以下であるか否かを判断する(ステップS147)。ステップS147の判断では、光沢付加部504Aは、所定値として、転写紙上に付着したトナーを付着させるための書込解像度、および、転写・定着後のトナー像の広がりと、スキャナの読み取り解像度で識別可能な網点線数の上限値を考慮して決定された値を用いる。
【0205】
一例として、スキャナの読み取り解像度が600dpiの場合には、原稿に対して識別可能な線数は300線が上限となり、300線以上の原稿に対して正確な線数を識別できない。同様に、スキャナの読み取り解像度が1200dpiの場合には、識別可能な線数は600線が上限となる。実際の機械では、MTF(Modulation Transfer Function:伝達関数)特性により、上記の線数よりも更に識別可能な線数が300線から200線などに低下する。
【0206】
転写紙上にトナーを付着させるための書込み解像度600dpiである場合には、転写紙上に形成可能な線数は300線が上限で、書込み解像度が1200dpiである場合には、形成可能な線数は600線が上限になる。実際の機械では、MTF(Modulation Transfer Function:伝達関数)特性により、上記の線数よりも更に識別可能な線数が低下する。転写紙上に形成するトナー像に対するMTF特性としては、静電特性による感光体上へのトナー付着時、感光体から転写ベルトへの転写時のトナー像の広がり、定着器による定着時のトナー像の広がりにより、MTF特性の低下が発生し、転写紙上に形成されるトナー像の実質的な印刷解像度としては、書込み解像度よりも、実施的に300線から200数十線相当に低下する。
【0207】
上記の実質的なスキャナの読み取り解像度と、トナー像の印刷解像度を考慮して、一例として、200線相当(トナー間隔として2〜数画素程度)の値を用いる。
【0208】
そして、光沢付加部504Aは、ステップS147で肯定判断すると(ステップS147:Yes)、網点画素の間隔に応じて、光沢付加量Tを決定する(ステップS148)。
【0209】
詳細には、ステップS148において、光沢付加部504Aは、網点画素の間隔が短いほど、光沢付加量Tが少なくなるように、光沢付加量Tを決定する(上記図14参照)。これによって、有色トナーと透明トナーとを重ねて転写及び定着させることによって、記録媒体に付着される総トナー量の増加を防ぎ、転写時におけるチリ等の紙粉の発生を抑制することができる。
【0210】
一方、光沢付加部504Aは、ステップS147で否定判断すると(ステップS147:No)、光沢付加量Tを上記ステップS146で決定された値とする(図示省略)。
【0211】
一方、上記ステップS145の判断において、上記ステップS144で求めた差、あるいは不偏分散が、予め定めた所定値以下でない場合には(ステップS145:No)、光沢付加部504Aは、光沢付加量Tを“0”に設定する(ステップS149)。
【0212】
さらに、上記ステップS142において、地肌濃度の画素数の数が所定値未満である場合には(ステップS142:No)、光沢付加部504Aは、バラつきの評価に用いる地肌領域の画素数が少なく、紙種を判定するための精度が十分な画素数が存在しないと判別し、ステップS142で否定判断する。
【0213】
そして、光沢付加部504Aは、注目画素の周辺の画素に光沢付加されているか否かを調査し、周辺画素の光沢付加量T、及び周辺画素の座標を用いて、注目画素の座標位置に対して外挿、あるいは、内挿により、注目画素の光沢付加量Tを取得する(ステップS150)。
【0214】
このとき、周辺画素が地肌データの場合には、光沢付加部504Aは、位置的な内挿あるいは外挿を行う。
【0215】
次に、光沢付加部504Aは、注目画素の画像濃度に応じて、注目画素の光沢付加量Tを決定する(ステップS151)。
【0216】
例えば、光沢付加されている周辺画素が地肌濃度でない場合には、光沢付加量T(画像濃度)が付加されている周辺画素の画像濃度IDから、図17の関係を元にして、地肌濃度時の光沢付加量T(周辺画素)(地肌濃度)を推測し、注目画素の光沢付加量T(注目画素)(地肌濃度)を求める。
【0217】
一方、周辺画素の地肌濃度の光沢付加量T(周辺画素)(地肌濃度)が取得できない場合には、光沢付加部504Aは、周辺画素の網点濃度の光沢付加量T(周辺画素)(網点濃度)から推測する。具体的には、注目画素(x0,y0)の光沢付加量T(x0,y0)として、主走査方向を横軸として、左右の画素の座標をそれぞれ、(x0−1,y0)、(x0+1,y0)とする。この場合、光沢付加部504Aは、下記式(60)を用いて重み付平均処理等を行い、注目画素(x0,y0)の光沢付加量T(x0,y0)を取得する。
【0218】
なお、重みつき平均処理には、式(60)を用いればよい。
【0219】
T(x0,y0)={w(−1,0)×T(x0−1,y0)+w(+1,0)×T(x0+1,y0)/{w(−1,0)+w(1,0)} …式(60)
【0220】
一方、副走査方向を縦軸として、時間軸に沿って、前後の画素の座標を、それぞれ、(x0,y0−1)、(x0,y0+1)として、注目画素(x0,y0)の周囲の8画素の座標(x0−1,y0−1)〜(x0+1,y0+1)を注目領域Sとして、それぞれの画素の光沢付加量T(x0−1,y0−1)〜T(x0+1,y0+1)が求められる場合には、下記式(61)を用いて、周囲の画素を重み付き平均により、注目画素(x0,y0)の光沢付加量T(x0,y0)を取得する。
【0221】
T(x0,y0)=Σ{w(x,y)×T(x,y)/Σw(x,y) …式(61)
【0222】
次に、光沢付加量T[タイプ3]取得処理(図12中、ステップS117参照)について詳細に説明する。図18は、光沢付加部504Aが実行する光沢付加量[タイプ3]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【0223】
まず、光沢付加部504Aでは、網点画素の間隔を取得する(ステップS160)。光沢付加部504Aは、例えば、この網点画素の間隔として、600dpi〜1200dpiの読取解像度で、例えば、50線〜300線程度について網点画素の間隔を検出する。
【0224】
次に、光沢付加部504Aは、網点画素を除外した周辺画素から移動平均を求める(ステップS161)。
【0225】
そして、光沢付加部504Aは、上記ステップS161で取得した移動平均と、該移動平均の取得に用いた画素との差、あるいは該差から、不偏分散を上記ステップS131と同様にして求める(ステップS162)。
【0226】
そして、光沢付加部504Aは、上記ステップS161で求めた差、あるいは不偏分散が、予め定めた所定値以下であるか否かを判別する(ステップS163)。なお、このステップS163の判断に用いる「所定値」としては、上記ステップS132で用いた所定値(図13参照)を用いる。
【0227】
ステップS163で肯定判断すると(ステップS163:Yes)、光沢付加部504Aは、ステップS162で求めた差または不偏分散に基づいて、上記ステップS133と同様にして光沢付加量Tを算出する。
【0228】
ここで、光沢付加部504Aは、網点画素の間隔が短いほど、光沢付加量Tを少なくする。図19には、網点画素間の間隔を示す概念図を示した。図19に示すように、網点領域を構成する画素である注目画素と、該注目画素に対して主走査方向に隣接する周辺画素(網点領域を構成する画素)との間隔を、網点画素間の間隔と称する。
【0229】
図18に戻り、説明を続ける。
【0230】
光沢付加部504Aは、上記ステップS160で取得した網点画素間の間隔が、予め定めた所定値以下であるか否かを判断する(ステップS165)。ステップS165の判断では、光沢付加部504Aは、所定値として、上記ステップS147で用いた所定値を用いる。
【0231】
そして、光沢付加部504Aは、ステップS165で肯定判断すると(ステップS165:Yes)、網点画素の間隔に応じて、光沢付加量Tを決定する(ステップS166)。
【0232】
詳細には、ステップS166において、光沢付加部504Aは、網点画素の間隔が短いほど、光沢付加量Tが少なくなるように、光沢付加量Tを決定する(上記図14参照)。これによって、有色トナーと透明トナーとを重ねて転写及び定着させることによって、記録媒体に付着される総トナー量の増加を防ぎ、転写時におけるチリ等の紙粉の発生を抑制することができる。
【0233】
一方、光沢付加部504Aは、ステップS165で否定判断すると(ステップS165:No)、光沢付加量Tを上記ステップS164で決定された値とする(図示省略)。
【0234】
また、上記ステップS163の判断において、上記ステップS162で求めた差、あるいは不偏分散が、予め定めた所定値以下でない場合には(ステップS163:No)、光沢付加部504Aは、光沢付加量Tを“0”に設定する(ステップS167)。
【0235】
次に、光沢付加量T[タイプ4]取得処理(図20中、ステップS119参照)について詳細に説明する。図20は、光沢付加部504Aが実行する光沢付加量T[タイプ4]取得処理の手順を示すフローチャートである。
【0236】
まず、光沢付加部504Aでは、注目画素(x0,y0)の周辺画素の光沢付加量Tから、注目画素の光沢付加量Tを算出する(ステップS170)。
【0237】
詳細には、光沢付加部504Aでは、まず、注目画素の周辺の周辺画素に光沢付加されているか否かを検索し、周辺画素の各々の光沢付加量Tを、各周辺画素の座標を用いて、注目画素の座標位置に対して外挿、あるいは、内挿により、注目画素の光沢付加量Tを取得する。なお、注目画像の周辺の周辺画素が地肌領域を構成する画素(地肌データ)である場合には、位置的な内挿あるいは外挿をする。
【0238】
また、周辺画素の濃度が地肌濃度(図12中、上記ステップS104参照)における判断に用いた地肌濃度閾値より低い場合には、光沢付加部504Aは、光沢付加量Tの設定されている周辺画素の画像濃度IDから、地肌濃度の光沢付加量(周辺画素)(地肌濃度)を推定することで、注目画素の光沢付加量T(注目画素)(地肌濃度)を求める。
【0239】
次に、光沢付加部504Aは、光沢付加量T(注目画素)(地肌濃度)から、注目画素の網点濃度が小さいほど高い値の光沢付加量Tを設定する(ステップS171)。
【0240】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置10では、スキャナ400で読み取られた画像データを構成する各画素に付加する透明トナー量の最大値を示す最大光沢付加量として、網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度の少なくとも一方が低いほど、高い最大光沢付加量を設定する。そして、地肌領域を構成する各地肌画素毎に、各地肌画素と各地肌画素の周辺画素とのばらつきを算出する。そして、地肌画素におけるばらつきが小さいほど、設定された最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を地肌画素毎に設定する。
【0241】
従って、本実施の形態の画像形成装置10では、透明トナーによる光沢ムラを抑制することができる。
【0242】
なお、上記図12におけるフローで用いた、地肌濃度閾値、写真画素濃度閾値、及び文字濃度閾値を、印刷原稿、トナーを使用した原稿、インクジェットプリンタで使用されるインクなどの種類によって切り替えてもよい。この指定は、画像形成装置10におけるオペレーションパネル495のユーザによる操作指示によって行うようにすればよい。
【0243】
また、印刷原稿であっても、地図などでは、通常使用されるプロセスインクとは異なるインクが使用される。このため、ユーザは、オペレーションパネル495の操作指示によって、地図や特色インク等に応じて、上記各種閾値を切り替えてもよい。このようすれば、より使用者の好みに調整することが可能である。
【0244】
なお、本実施の形態では、さらに、スキャナ400で読み取る画像の形成された記録媒体(原稿で使用された用紙)に応じて、光沢付加量Tをさらに調整してもよい。
【0245】
この場合には、画像処理部480では、例えば、銀塩写真で使用する印画紙の光沢紙またはマット紙、インクジェットプリンタで使用するインクジェットプリンタ用の光沢紙またはマット紙、コピー用普通紙、再生紙、印刷で使用するコート紙、光沢紙などと、画像データから抽出した地肌データのRGB値に応じて、原稿に用いられた用紙の種類を判別する。
【0246】
この用紙の種類の判別として、例えば、画像処理部480は予め図21に示すテーブルを記憶すればよい。図21には、地肌データから求められる移動平均値及びばらつきに対応する、原稿で使用されたと推定される用紙の種類を示した。そして、画像処理部480では、地肌データから求めた移動平均値及びばらつきに対応する、用紙の種類を読み取ることによって、原稿に用いられた用紙の種類を判別すればよい。
【0247】
そして、さらに、例えば、図22に示すように、光沢付加量Tと、原稿で使用された用紙の種類と、を対応づけてテーブルを予め記憶する。そして、画像処理部480では、この原稿で使用された用紙の種類の判別結果に対応する光沢付加量Tを読み取ることによって、光沢付加量Tを設定すればよい。
【0248】
すなわち、原稿で使用された用紙について、光沢性や表面の平滑性が高く、すなわち光沢度の高いほど、画像記録時に用いる透明トナーの付加量を示す光沢付加量Tを多くすればよい。
【0249】
なお、図22中、設定1および設定2は、ユーザによって、光沢付加の有無を設定可能であることを示す。すなわち、これらのデータは、ユーザによるオペレーションパネル495の操作指示によって設定可能とすればよい。
【0250】
なお、本実施の形態では、図14に示すように、地肌データのばらつきが小さいほど、光沢付加量Tを多くするように設定する場合を説明したが、ユーザによるオペレーションパネル495を介した操作指示によって、変更可能としてもよい。例えば、ユーザの操作指示によって、地肌データのばらつきが小さいほど、光沢付加量Tを少なくするように設定してもよい。
【0251】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、第1の実施の形態における光沢付加部504Aとは異なる方法で、光沢付加量Tを設定する場合を説明する。
【0252】
本実施の形態において、光沢付加部504Aで実行する、光沢付加量Tの生成処理について説明する。図23は、光沢付加部504Aが実行する光沢付加量生成処理の手順を示すフローチャートである。
【0253】
まず、光沢付加部504Aは、所定領域内で、地肌領域を構成する画素の画素データ(地肌データ)のRGB成分それぞれについてヒストグラムを求める(ステップS200)。
【0254】
次に、光沢付加部504Aは、ステップS200で求めたヒストグラムから、画素数で規格化したピーク値、ピークの幅(例えば、半値幅)、及びピーク数を求める(ステップS201)。
【0255】
次に、光沢付加部504Aは、以下の少なくとも1つが成立するか否かを判定する(ステップS202)。詳細には、光沢付加部504Aは、ステップS201で求めたピーク値が予め定めた所定値以下であるか(1)、ステップS201で求めたピークの幅が予め定めた所定値より大きいか(2)、及び複数のピークが存在するか(3)の少なくとも1つが成立するか否かを判定する。
【0256】
なお、ステップS202において、”ピーク値が予め定めた所定値以下か”との判断に用いる”所定値”とは、予め定められ、具体的には、原稿に使用される種々の紙種の地肌部の画素のRGB成分のそれぞれについて求めたヒストグラムの特性Hist(紙種)(色成分)(特性:ピーク値)として、光沢紙のヒストグラム:Hist(光沢紙)(色成分)(特性:ピーク値)、コート紙のヒストグラム:Hist(コート紙)(色成分)(特性:ピーク値)、普通紙のヒストグラム:Hist(普通紙)(色成分)(特性:ピーク値)、再生紙のヒストグラム:Hist(再生紙)(色成分)(特性:ピーク値)、とする。
【0257】
このときの一例として、値が大きいほど明度が明るいとして、下記式(F)に示される値が得られたとする。
【0258】
Hist(光沢紙)(Blue成分)(特性:ピーク値)≧Hist(コート紙)(Blue成分)(特性:ピーク値)>Hist(普通紙)(Blue成分)(特性:ピーク値)>Hist(再生紙)(Blue成分)(特性:ピーク値) …式(F)
【0259】
この場合、原稿の画像領域が光沢紙、あるいはコート紙が使用された画像領域には、対応する印刷領域に透明トナーを使用し、原稿の画像領域に普通紙と再生紙が使用された画像領域に、対応する印刷領域に透明トナーを使用するには、所定値Hist(Thres)(特性:ピーク値)として下記式(G)を示す値が定められている。
【0260】
Hist(光沢紙)(Blue成分)(特性:ピーク値)
≧Hist(コート紙)(Blue成分)(特性:ピーク値)
>Hist(Thres)
>Hist(普通紙)(Blue成分)(特性:ピーク値)
>Hist(再生紙)(Blue成分)(特性:ピーク値) …式(G)
【0261】
また、ステップS202において、”ピークの幅が予め定めた所定値以下であるか”との判断に用いる”所定値”とは、予め定められる。
【0262】
具体的には、原稿に使用される種々の紙種の地肌部の画素のRGB成分のそれぞれについて求めたヒストグラムの特性 Hist(紙種)(色成分)(特性:ピーク幅(半値幅))として、光沢紙のヒストグラム:Hist(光沢紙)(色成分)(特性:ピーク幅(半値幅))、コート紙のヒストグラム:Hist(コート紙)(色成分)(特性:ピーク幅(半値幅))、普通紙のヒストグラム:Hist(普通紙)(色成分)(特性:ピーク幅(半値幅))、再生紙のヒストグラム:Hist(再生紙)(色成分)(特性:ピーク幅(半値幅))とする。
【0263】
このとき、一例として、値が小さいほど画素値のバラつきが小さいとして、下記式(H)に示す値が得られたとする。
【0264】
Hist(光沢紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
≦Hist(コート紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
<Hist(普通紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
<Hist(再生紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
…式(H)
【0265】
この場合、原稿の画像領域が光沢紙、あるいはコート紙が使用された画像領域には、対応する印刷領域に透明トナーを使用し、原稿の画像領域に普通紙と再生紙が使用された画像領域に、対応する印刷領域に透明トナーを使用するには、所定値Hist(Thres)(特性:ピーク幅(半値幅))として、下記式(I)を示す値が予め設定される。
【0266】
Hist(光沢紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
≦Hist(コート紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
<Hist(Thres)(特性:ピーク幅(半値幅))
<Hist(普通紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
<Hist(再生紙)(Blue成分)(特性:ピーク幅(半値幅))
…式(I)
【0267】
光沢付加部504Aは、ステップS202で否定判断すると(ステップS202:No)、画像がばらついていない、として、ステップS203へ進み、透明トナーを使用する(すなわち光沢付加量Tが0を超える値)と設定する(ステップS203)。
【0268】
一方、光沢付加部504Aは、ステップS202で肯定判断すると(ステップS202:Yes)、画像がばらついている、として、ステップS204へ進み、透明トナーを使用しない(すなわち、光沢付加量Tが0である)と設定する(ステップS204)。
【0269】
図24には、読み取り原稿における地肌領域のヒストグラムの例を示した。
【0270】
図24中、横軸は画像データ(RGB成分)の反射率リニアのデータで、値が大きいほど明るく、値が小さいほど暗い。図24中、縦軸はヒストグラムの頻度を表す。
【0271】
なお、図24には、サンプルとして、ピーク値、半値幅、平均値(図ではピーク値と一致している)を図示した。また、図24には、原稿a、原稿bの同一の画素数の地肌領域に対するRGB成分それぞれのヒストグラムを、原稿aに対してRA,GA,BAとし、原稿bに対してRb,Gb,Bbとして示した。
【0272】
なお、図24に示すように、原稿aは、Ra<Ga<Ba、原稿bは、Bb<Gb<Rbの関係を図示している。原稿aのヒストグラムのピークは、原稿bに比べて高く、半値幅についても、原稿aの方が原稿bより小さい。このことから、光沢付加部504Aは、原稿aの地肌のバラつきが、原稿bの地肌のバラつきよりも大きいという判断する。また、光沢付加部504A、原稿aの方が原稿bに比べて、平滑性が高い、あるいは、滑らかであると判断し、透明トナーの付着量を多く設定する。
【0273】
なお、光沢付加部504Aでは、スキャナ400で読み取った原稿に記録された画像データのばらつきを、第1の評価方法または第2の評価方法で評価すればよい。
【0274】
印刷原稿に対する(原稿)画像データのバラつきの第1の評価方法について説明する。図25には、光沢付加部504Aが実行する、ばらつきの第1の評価方法の手順を示すフローチャートを示した。
【0275】
まず、光沢付加部504Aは、原稿画像データから、低濃度の網点を構成する画素を抽出する(ステップS210)。
【0276】
低濃度の網点を構成する画素とは、2つの場合があり、1つには、印刷機で使用されるYMCKのプロセスインクに対して、濃度が半分以下となるインクを使用した場合と、2つ目には、網点画素の間隔が広く、スキャナ読み取り解像度600dpiで、書込み解像度600dpiに対して、原稿の印刷物の線数が100線以下があるが、いずれも、原稿の印刷物の線数が100線程度以下の画素である。
【0277】
次に、光沢付加部504Aは、ステップS210で低濃度の網点が検出されたか否かを判別する(ステップS211)。
【0278】
次いで、光沢付加部504Aは、ステップS211で肯定判断すると(ステップS211:Yes)、ステップS212へ進む。そして、光沢付加部504Aは、低濃度の網点を構成すると判断された画素について、網点の周波数成分を検出し、検出した網点の周波数成分を除去する(ステップS212、ステップS213)。
【0279】
次に、光沢付加部504Aは、注目画素と周辺画素とから移動平均を求める(ステップS214)。そして、光沢付加部504Aは、注目画素と移動平均との差、または該差から不偏分散を求める(ステップS215)。なお、これらの移動平均及び不偏分散の算出は、第1の実施の形態と同様である。
【0280】
次に、光沢付加部504Aは、上記ステップS215で求めた差または不偏分散が、予め定めた所定値以下であるか否かを判定する(ステップS216)。なお、このステップS216で用いる所定値としては、上記ステップS132で用いた所定値Vthを用いる。
【0281】
ステップS216で肯定判断すると、光沢付加部504Aは、画像が滑らかであるとして、透明トナーを使用するように光沢付加量Tを設定する(ステップS217)。一方、ステップS216で否定判断すると、注目画素に隣接する隣接画素で透明トナーが使用されているか否かを判断する(ステップS218)。そして、ステップS218で肯定判断すると(ステップS218:Yes)、光沢付加部504Aは、ステップS217へ戻る。一方、ステップS218で否定判断すると(ステップS218:No)。ステップS219へ進み、透明トナーを使用しない(すなわち、光沢付加量Tを0に設定)設定とする(ステップS219)。
【0282】
一方、上記ステップS211で否定判断すると(ステップS211:No)、光沢付加部504Aは、画像データのばらつき・滑らかさの判定処理1を実行する(ステップS220)。
【0283】
このステップS220における、画像データのばらつき・滑らかさの判定処理1について説明する。
【0284】
図26には、光沢付加部504Aが実行する、画像データのばらつき・滑らかさの判定処理1の処理手順を示した。
【0285】
図26に示すように、光沢付加部504Aは、注目画素と周辺画素とから移動平均を求める(ステップS230)。次いで、光沢付加部504Aは、ステップS230で求めた注目画素と周辺画素から移動平均を求める(ステップS230)。
【0286】
次に、光沢付加部504Aは、注目画素と移動平均との差、あるいは該差から不偏分散を求める(ステップS231)。これらの移動平均と不偏分散は、第1の実施の形態で説明したため詳細を省略する。
【0287】
次に、光沢付加部504Aは、上記ステップS132(図13参照)と同様にして、ステップS231で算出した差または不偏分散は所定値以下であるか否かを判断する(ステップS232)。そして、ステップS232で肯定判断すると、ステップS231で算出した差あるいは不偏分散に基づいて、上記ステップS133(図13参照)と同様にして、光沢付加量Tを設定する(ステップS233)。
【0288】
一方、ステップS232で否定判断すると、光沢付加部504Aは、光沢付加量Tを0に設定する(ステップS234)。
【0289】
次に、光沢付加部504Aが実行する、ばらつきの第2の評価方法の手順を説明する。
【0290】
図27には、光沢付加部504Aが実行する、ばらつきの第2の評価方法の手順を示すフローチャートを示した。
【0291】
図27に示すように、光沢付加部504Aは、まず、注目画素と周辺画素とから移動平均を算出する(ステップS240)。この移動平均の算出は、第1の実施の形態と同様にして行う。
【0292】
次に、光沢付加部504Aは、注目画素と移動平均との差を用いて、公知の方法により自己相関関数を求める(ステップS241)。次に、光沢付加部504Aは、求めた自己相関関数についてフーリエ変換を行うことによって、パワースペクトルを求める(ステップS242)。
【0293】
次に、光沢付加部504Aは、網点の周波数成分を除去する(ステップS243)。そして、光沢付加部504Aは、ステップS242で求めたパワースペクトルを積分する(ステップS244)。
【0294】
次に、光沢付加部504Aは、ステップS244における積分値があらかじめ定めた所定値以下であるか否かを判断する(ステップS245)。ステップS245の判断に用いる所定値は、以下とする。
【0295】
原稿として使用される”種々の紙種の地肌部のパワースペクトルの積分値”を、”ΣP(地肌)(紙種)”と表記して、光沢紙の地肌部のΣP(地肌)(光沢紙)、コート紙の地肌部のΣP(地肌)(コート紙)、普通紙の地肌部のΣP(地肌)(普通紙)、再生紙の地肌部のΣP(地肌)(再生紙)、の値を予め求めておく。
【0296】
一例として、上記の値の大小関係が、ΣP(地肌)(光沢紙)≦ΣP(地肌)(コート紙)<ΣP(地肌)(普通紙)<ΣP(地肌)(再生紙)である場合を考える。
【0297】
光沢紙またはコート紙が使用された原稿領域を、印刷する転写紙上の領域に透明トナーにより光沢付加を行い、普通紙または再生紙が使用された原稿領域を、印刷する転写紙上の領域に透明トナーを付加させない場合には、この所定値Vthを、ΣP (地肌)(光沢紙)≦ΣP(地肌)(コート紙)<所定値ΣPth<ΣP(地肌)(普通紙)<ΣP(地肌)(再生紙)、として決める。このため、ステップS245の判断によって、画像が滑らかであるか否かを判別することができる。
【0298】
そして、ステップS245で肯定判断すると(ステップS245:Yes)、画像が滑らかであるとして、ステップS246へ進み、透明トナーを使用する設定とする(光沢付加量Tが0を超える値)(ステップS246)。一方、ステップS245で否定判断すると(ステップS245:No)、透明トナーを使用しない設定(光沢付加量Tを0に設定)する(ステップS247)。
【0299】
<他の実施形態>
上述の実施の形態では、画像処理部480がハードウェア的に構成されるように説明したが、これはこの例に限定されず、ソフトウェア的に構成することも可能である。このソフトウェアを実現するための画像処理プログラムは、例えば図1を用いて説明した各部を含むモジュール構成となっており、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0300】
これに限らず、当該画像処理プログラムをインターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該画像処理プログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。さらに、当該画像処理プログラムをROMなどに予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0301】
実際のハードウェアとしては、CPU(プロセッサ)が上述の記録媒体から当該画像処理プログラムを読み出して実行することにより、上述の各部が主記憶装置上にロードされ、図1を用いて説明した各部を含むモジュールが主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0302】
10 画像形成装置
403 像域分離ACS判定(1)回路
441 像域分離ACS判定(2)回路
480 画像処理部
503A、503B 像域分離部
504A、504B 光沢付加部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0303】
【特許文献1】特開2009−69312号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する取得手段と、
前記画像データにおける網点領域及び地肌領域を判定する判定手段と、
前記画像データを構成する各画素に付与する透明トナー量の最大値を示す最大光沢付加量として、前記網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度の少なくとも一方が低いほど、高い最大光沢付加量を設定する第1設定手段と、
前記地肌領域を構成する各地肌画素毎に、各地肌画素と各地肌画素の周辺画素とのばらつきを示す第1の値を算出する算出手段と、
前記地肌画素における前記第1の値が小さいほど、設定された前記最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を前記地肌画素毎に設定する第2設定手段と、
前記地肌画素毎に設定された光沢付加量を含む印刷用画像データを、透明トナー及び有色トナーを用いて画像を形成する画像形成手段に出力する出力手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記第2設定手段は、前記第1の値が予め定めた第2の値より大きい場合、前記光沢付加量を0に設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の値をユーザが指示するための指示手段を更に備えた請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記画像データにおける文字領域をさらに判定し、
前記算出手段は、前記画像データにおける、前記網点領域、前記地肌領域、及び前記文字領域以外の領域を構成する領域外画素の濃度が、前記地肌領域の濃度であるときに、該領域外画素と該領域外画素の周辺画素とのばらつきを示す第3の値を算出し、
前記第2設定手段は、該領域外画素における前記第3の値が小さいほど、設定された前記最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を前記領域外画素毎に設定し、
前記印刷用画像データは、前記領域外画素毎に設定された光沢付加量をさらに含む、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2設定手段は、前記領域外画素の濃度が前記地肌領域の濃度を示す第4の値より高いときに、該領域外画素の光沢付加量を0に設定する、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記密度は、前記網点画素の間隔を示す、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像処理装置を備えた画像形成装置。
【請求項8】
画像データを取得するステップと、
前記画像データにおける網点領域及び地肌領域を判定するステップと、
前記画像データを構成する各画素に付与する透明トナー量の最大値を示す最大光沢付加量として、前記網点領域を構成する網点画素の濃度及び密度の少なくとも一方が低いほど、高い最大光沢付加量を設定するステップと、
前記地肌領域を構成する各地肌画素毎に、各地肌画素と各地肌画素の周辺画素とのばらつきを示す第1の値を算出するステップと、
前記地肌画素における前記第1の値が小さいほど、設定された前記最大光沢付加量に向かって高い光沢付加量を前記地肌画素毎に設定するステップと、
前記地肌画素毎に設定された光沢付加量を含む印刷用画像データを、透明トナー及び有色トナーを用いて画像を形成する画像形成手段に出力するステップと、
を備えた画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−61613(P2013−61613A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245749(P2011−245749)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】