説明

画像処理装置および画像処理方法、並びに表示システム

【課題】補正処理に要する時間や計算量、および補正処理後の画像のぼけを軽減することができるようにした画像処理装置および方法、並びに表示システムを提供する。
【解決手段】互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて第1の方向にのみ画像補正を行う。補正用データは例えば、表示装置において生ずる表示画像の歪みを補正するためのデータである。第1の方向にのみ画像補正を行うので、例えば2次元画像の各ピクセルに対してX方向(横方向)およびY方向(縦方向)の2つの方向の画素情報を用いて補正を行う場合に比べて、補正処理に要する時間や計算量、および補正処理後の画像のぼけを従来よりも軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像の歪みを補正することができる画像処理装置および画像処理方法、並びに表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2次元画像の歪みを補正する方法として、例えばバイリニア補間やバイキュービック補間といった画素補間処理を利用する方法が知られている。バイリニア補間やバイキュービック補間では、2次元画像のX方向(横方向)およびY方向(縦方向)の2つの方向の画素情報を用いて画素補間を行うので、X方向およびY方向のどちらの方向に歪みがある場合であっても歪みを補正することができる。
【0003】
特許文献1には、レンズによってもたらされる画像の歪みを補正する方法が開示されている。特許文献1では、GPU(Graphics Processing Unit)のピクセルシェーダの機能を利用してピクセルごとに画像の歪みを補正する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像補正手法では、2次元画像の各ピクセル(ラスタ画像(ビットマップ画像)の各ピクセル)に対してX方向およびY方向の2つの方向の画素情報を用いて画素補間を行うので、補正のための画像処理に時間が掛かり、さらに、補正後の画像になまり(ぼけ)が発生しやすいという問題がある。特許文献1においても、ピクセルシェーダの機能を利用して、ラスタライズ処理後の画像に対してピクセルごとに画像の歪みを補正するので、同様の問題がある。
【0006】
本開示の目的は、補正処理に要する時間や計算量、および補正処理後の画像のぼけを軽減することができるようにした画像処理装置および画像処理方法、並びに表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による画像処理装置は、互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて第1の方向にのみ画像補正を行う補正部を備えたものである。
【0008】
本開示による画像処理方法は、互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて第1の方向にのみ画像補正を行うようにしたものである。
【0009】
本開示による表示システムは、画像処理装置と、画像処理装置から供給された画像データに基づいて画像表示を行う表示装置とを備え、画像処理装置として、上記本開示による画像処理装置を用いるようにしたものである。
【0010】
本開示の画像処理装置もしくは画像処理方法、または表示システムでは、互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて第1の方向にのみ画像補正が行われる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の画像処理装置もしくは画像処理方法、または表示システムによれば、第1の方向にのみ画像補正を行うようにしたので、補正処理に要する時間や計算量、および補正処理後の画像のぼけを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る全周囲立体画像表示装置10の構成例を示す部分破断斜視図である。
【図2】全周囲立体画像表示装置10の組立例を示す分解斜視図である。
【図3】2次元発光素子アレイ101の発光面の形状算出例(その1)を示す説明図である。
【図4】2次元発光素子アレイ101の発光面の形状算出例(その2)を示す説明図である。
【図5】2次元発光素子アレイ101の形状例(その1)を示す斜視図である。
【図6】2次元発光素子アレイ101の形状例(その2)を示す斜視図である。
【図7】2次元発光素子アレイ101の形状例(その3)を示す斜視図である。
【図8】2次元発光素子アレイ101におけるレンズ部材の機能例を示す回転軸方向から見下ろした模式図である。
【図9】全周囲立体画像表示装置10の動作例を示す回転軸方向から見下ろした模式図である。
【図10】視点pから観察される発光点の軌跡例(その1)を示す説明図である。
【図11】視点pから観察される発光点の軌跡例(その2)を示す説明図である。
【図12】視点pから観察される発光点の軌跡例(その3)を示す説明図である。
【図13】複数の視点に対してスリット102を介して光線を出力する様子(その1)を示す説明図である。
【図14】複数の視点に対してスリット102を介して光線を出力する様子(その2)を示す説明図である。
【図15】複数の視点に対してスリット102を介して光線を出力する様子(その3)を示す説明図である。
【図16】複数の視点に対してスリット102を介して光線を出力する様子(その4)を示す説明図である。
【図17】撮影データ/放射光データの変換例を示すデータフォーマットの説明図である。
【図18】全周囲立体画像表示装置10の制御系の構成例を示すブロック図である。
【図19】1個の1次元発光素子基板#1等の構成例を示すブロック図である。
【図20】全周囲立体画像表示装置10における立体画像表示例を示す流れ図である。
【図21】(A)及び(B)は、全周囲立体画像表示装置10における立体画像の視聴例を示す説明図である。
【図22】(A)及び(B)は、全周囲立体画像表示装置10における任意の視点pから観測される表示面の画素配列の例を示す説明図である。
【図23】全周囲立体画像表示装置10における任意の視点pから観測される画像の歪みの状態についての説明図である。
【図24】全周囲立体画像表示装置10における画像の歪み量の算出例を示す説明図である。
【図25】本開示の第2の実施の形態に係る画像処理装置の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図26】バイキュービック補間についての説明図である。
【図27】一方向のみのキュービック補間についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための最良の形態(以下、単に実施の形態という)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順番で行う。
1.第1の実施の形態(全周囲立体画像表示装置10の説明)

2.第2の実施の形態(画像の歪み補正を行うための画像処理装置および方法の説明)
【0014】
<第1の実施の形態>
[全周囲立体画像表示装置10の構成例]
図1は、第1の実施の形態としての全周囲立体画像表示装置10の構成例を示す部分破断斜視図である。図1に示す全周囲立体画像表示装置10は光線再生方式の立体画像表示装置の一例を構成し、2次元発光素子アレイ101、スリット付きの回転部104及び駆動機構付きの設置架台105を備えている。全周囲立体画像表示装置10は、被写体を全周囲に渡って撮像したり、コンピュータにより作成された立体画像表示用の2次元映像情報等(以下単に映像データDinという)に基づいて被写体の全周囲に渡る立体画像を再生するものである。
【0015】
回転部104はスリット付きの外装体41及び、吸気口付きのターンテーブル42を有して構成される。ターンテーブル42上には外装体41が取り付けられる。ターンテーブル42は円盤状を成しており、その中心位置には回転軸103が設けられている。回転軸103は、ターンテーブル42の回転中心となされると共に、外装体41の回転中心となされ、以下で、回転部104の回転軸103ともいう。ターンテーブル42の所定の位置には吸気口106が設けられ、外装体41の内側へ空気を取り込むようになされる。
【0016】
ターンテーブル42上の外装体41の内側には、所定の形状を有した1以上の2次元発光素子アレイ101が備えられている。2次元発光素子アレイ101は、例えば、m行×n列個の発光素子をマトリクス状に配列したものである。発光素子には、発光ダイオードや、レーザダイオード、有機ELなどの自発光素子が使用される。2次元発光素子アレイ101は、回転部104の回転に応じて複数の発光素子が発光し、かつ、立体画像用の映像データDinに基づいて発光制御されるようになっている。この発光制御は、後述する表示制御部15(図18)によって行われる。
【0017】
もちろん、発光素子は、自発光素子に限られることはなく、光源と変調素子を組み合わせた発光装置でもよい。視点p(図3参照)に対するスリット回転走査時、回転部104の変調速度に追従できる発光素子であれば、どんな形態の発光素子や発光装置であってもよい。2次元発光素子アレイ101には、発光素子の他に、当該発光素子を駆動するための駆動回路(ドライバ)が実装されている。
【0018】
2次元発光素子アレイ101は、例えば、プリント配線基板を湾曲状(例えば円弧状)に切り欠いた小口面に、複数の発光素子をライン状に配設(実装)した1次元発光素子基板#1(図5〜図7参照)を回転軸103に沿って複数枚積層した積層構造を有する。このように構成すると、曲面形状(例えば円弧状)の発光面を有した2次元発光素子アレイ101を容易に構成できるようになる。
【0019】
ターンテーブル42上の2次元発光素子アレイ101を覆うように取り付けられた外装体41は、所定の口径φ及び所定の高さHを有した円筒状を成している。外装体41の口径φは100mm乃至200mm程度であり、その高さHは400mm乃至500mm程度である。外装体41の周面の所定の位置にはスリット102が設けられる。スリット102は、外装体41の周面において、回転軸103に平行する方向に穿設され、2次元発光素子アレイ101の発光面の前方に固定され、光の放射角度を所定の範囲に制限する。
【0020】
もちろん、スリット102は開孔部に限られることはなく、光が透過する透明部材から構成される窓部であってもよい。この例で、外装体41の周面のスリット102と、その内側の2次元発光素子アレイ101とにより1組単位の発光ユニットUi(i=1,2,3・・・)が構成される。
【0021】
上述の2次元発光素子アレイ101は曲面形状となっている部分を有し、その曲面形状の凹面側が発光面とされている。そして、その曲面形状の発光面がスリット102に向くように回転部104の回転軸103とそのスリット102との間に配置されている。このように構成すると、平坦状の発光面に比べて曲面形状の発光面から出射した光をスリット102に導き(集光し)易くなる。外装体41は、鉄板やアルミニウム板をプレス加工や、ロール加工等を施して筒状体に形成したものを使用する。外装体41の内外部は、好ましくは、光を吸収するように黒色に塗布される。なお、外装体41のスリット102の上部の開孔部は、センサ用の孔部108である。
【0022】
外装体41の天板部位はファン構造となされ、ターンテーブル42の吸気口106から取り入れた冷却用の空気を外部へ排気するようになされる。例えば、外装体41の天板部位(上部)に、冷却用の羽根部材の一例となるブレード等のわずかなファン部107(排気口)を設け、回転動作を利用して空気の流れを作り出し、2次元発光素子アレイ101やその駆動回路から発生する熱を強制排気する。ファン部107は外装体41の上部を切り欠いて天板部位と兼用するようにしてもよい。天板部位と兼用することで、外装体41が強固になる。
【0023】
ファン部107は、回転部104の回転軸103の上部に限られることはなく、その外装体41の下部の回転軸103の付近に取り付けてもよい。羽根部材の羽根の向きにもよるが、回転部104が回転すると、回転部104の上部から下部へ向かう空気の流れ、又は、回転部104の下部から上部へ向かう空気の流れを作り出すことができる。いずれの場合も、回転部104の上部又は下部に空気の吸い込み口や、その排気口を設けて置くとよい。
【0024】
このように、回転軸103に羽根部材を取り付けたので、回転部104の回転動作を利用して空気の流れを作り出すことができる。従って、ファンモータなどを新たに追加せずに、2次元発光素子アレイ101から発生する熱を外部へ排気できるようになる。これによるファンモータが不要になることから、全周囲立体画像表示装置60のコストダウンを図ることができる。
【0025】
設置架台105は、ターンテーブル42を回転自在に支持する部分である。設置架台105の上部には、図示しない軸受け部が設けられる。軸受け部は回転軸103を回転自在に係合する共に、回転部104を支持する。設置架台105の内部にはモータ52(駆動部)が設けられ、ターンテーブル42を所定の回転(変調)速度で回転するようになされる。例えば、回転軸103の下端には、直結方式のACモータ等が係合される。モータ52は回転力を回転軸103に直接伝達し、回転軸103が回転することで、回転部104が所定の変調速度で回転する。
【0026】
この例で、回転部104に対して電力や映像データDinを送る際に、スリップリング51を介して送る方法が採られる。この方法によれば、回転軸103に電力及び映像データDinを伝送するスリップリング51が設けられる。スリップリング51は固定側部品と回転側部品とに区分される。回転側部品は回転軸103に取り付けられる。固定側部品にはハーネス53(配線ケーブル)が接続される。
【0027】
回転側部品には他のハーネス54を介して2次元発光素子アレイ101が接続される。固定側部品と回転側部品との間は、図示しない摺動子が環状体に電気的に接触する構造となされている。摺動子は固定側部品又は回転側部品を構成し、環状体は回転側部品又は固定側部品を構成する。この構造により、設置架台105内において、外部から供給される電力や映像データDinをスリップリング51を介して2次元発光素子アレイ101に伝送できるようになる。
【0028】
[全周囲立体画像表示装置10の組立例]
続いて、図2〜図8を参照して全周囲立体画像表示装置10の組立方法及び各部材の製造方法について説明する。図2は全周囲立体画像表示装置10の組立例を示す分解斜視図である。全周囲立体画像表示装置10の組立方法によれば、まず、図2に示すようなスリット付きの外装体41及び吸気口付きのターンテーブル42を準備して、回転部104を形成する。例えば、所定の口径の筒素材を所定の長さに切削加工して、所定の口径及び所定の長さを有した円筒状の外装体41を形成する。この例で、外装体41には鉄板やアルミニウム板を筒状体にしたものを使用する。
【0029】
その後、外装体41の周面の所定の位置にスリット102及びセンサ用の孔部108を形成する。この例でスリット102は、回転軸103及び筒素材の周面の当該回転軸103に平行する方向に穿設する。孔部108は、スリット102の上部に開孔する。外装体41はターンテーブル42上に取り付けて使用される。外装体41の内外部は光を吸収するように黒色に塗布するとよい。
【0030】
次に、所定の厚みを有した円盤状の金属素材を使用してターンテーブル42を形成する。ターンテーブル42の中心位置に回転軸103を形成する。回転軸103は、ターンテーブル42の回転中心となると共に、外装体41の回転中心となる。この例では、ターンテーブル42上に突出するように、図示しない位置決め用の1対の棒状部材(以下位置決めピン83という)を形成する。この位置決めピン83は、1次元発光素子基板#1等を積層する際に使用する。
【0031】
また、上述の回転軸103にスリップリング51を設けて、その回転側部品からハーネス54を引き出す。ターンテーブル42の所定の位置に吸気口106を形成する。吸気口106は、外装体41の内側へ空気を取り込む際の空気取り入れ口となる。ターンテーブル42も光を吸収するように黒色に塗布するとよい。
【0032】
一方で、立体画像結像用の所定形状を有する2次元発光素子アレイ101を形成する。この例では、曲面形状の発光面を成すように2次元発光素子アレイ101を形成する。図3は、2次元発光素子アレイ101の発光面の形状算出例(その1)を示す説明図である。
【0033】
この例では、図3に示すx−y座標平面(回転軸103に直交する平面)において、2次元発光素子アレイ101の発光面の形状は、以下の式で表される点(x(θ),y(θ))が描く曲線になる。2次元発光素子アレイ101を形成する際に、回転部104の回転軸103から任意の視点pに至る線分の距離をL1とする。回転軸104から2次元発光素子アレイ101までの最短距離をL2とする。なお、この全周囲立体画像表示装置10では、任意の視点pから装置を観測したときに、2次元発光素子アレイ101による発光点の軌跡、すなわち観測される画像表示面が例えば平面となるような画像表示がなされる。この場合、L2は、回転軸103から複数の発光素子による発光点の軌跡によって形成される平面までの距離に等しい。
【0034】
更に、回転部104の回転軸103からスリット102に至る線分の距離をrとし、距離L1の線分と距離rの線分とが成す角度であって、当該距離L1の線分に対するスリット102の位置を示す角度θとする。そして、2次元発光素子アレイ101の発光面の湾曲形状を成すx軸座標値をx(θ)とし、2次元発光素子アレイ101の発光面の湾曲形状を成すy軸座標値をy(θ)とする。x軸座標値x(θ)は、(1)式、すなわち、
x(θ)=r(L2−L1)sinθcosθ/(L1−r cosθ)+L2sinθ …(1)
となる。
y軸座標値y(θ)は、(2)式、すなわち、
y(θ)=r(L2−L1)sin2θ/(L1−rcosθ)−L2cosθ …(2)
となる。このx軸座標値x(θ)及びy軸座標値y(θ)により、当該2次元発光素子アレイ101の発光面の形状を決定する。ただし、図中、(x1、y1)はスリット102の座標である。(x2、−L2)は、視点pからスリット102を介して実際に観測される発光点の座標である。
【0035】
これにより、視点pからスリット102を介して観測される発光点の軌跡が、平面を成して見える2次元発光素子アレイ101の発光面の形状を決定できるようになる。発光面の形状が決定したら、プリント配線基板を湾曲形状に切り欠いて形成すればよい。
【0036】
図4は、前述の式(1),(2)で求めた2次元発光素子アレイ101の発光面の形状の算出例を示す説明図である。図4に示す発光面形状の算出例によれば、図3に示した回転部104の回転軸103から任意の視点pに至る線分の距離L1が90mmである。回転部104の回転軸103から仮想直線に至る距離L2は10mmである。回転部104の回転軸103からスリット102に至る線分の距離rは30mmである。距離L1の線分と距離rの線分とが成す角度であって、当該距離L1の線分に対するスリット102の位置を示す角度θが−33°≦θ≦33°の場合を示している。
【0037】
図5〜図7は、2次元発光素子アレイ101の形成例(その1〜3)を示す斜視図である。図5は1次元発光素子基板#1の形成例を示す分解斜視図である。この例では、2次元発光素子アレイ101を形成する際に、まず、1次元発光素子基板#1を形成する。1次元発光素子基板#1は、図示しない銅箔基板をパターニングして配線パターンを形成し、配線パターンが形成されたプリント配線基板31の外観をY形状に切断し、上述した式(1)及び(2)に基づいてその内側を湾曲状(例えば円弧状)に切り欠く。この例では、湾曲状部位の反対側に配線構造のコネクタ34を形成する。
【0038】
更に、1次元発光素子基板#kのプリント配線基板31の両辺に位置決め用の孔部32,33を形成する。外観がY形状に、その内側が湾曲状に切り欠かれたプリント配線基板31にシリアルパラレル変換用とドライバ用のIC35(半導体集積回路装置)を実装する。次いで、IC35が実装されたプリント配線基板31の湾曲状の縁部又は小口面に、j行個の発光素子20jをライン状に配設する。更にライン状のレンズ部材109を発光素子20jの前面に配設して1次元発光素子基板#1(基板)を形成する(図6参照)。
【0039】
図6は1次元発光素子基板#1の構成例を示す斜視図である。この例では、図6に示すような1次元発光素子基板#1をn枚分だけ準備する。n枚の1次元発光素子基板#1を積層してm行×n列の2次元発光素子アレイ101を形成するためである。
【0040】
なお、曲面形状を有した2次元発光素子アレイ101としては、フレキシブルなフラット・パネル・ディスプレイをU形状に折り曲げて発光面を曲面形状に製造した物や、予め曲面形状を成しているフラット・パネル・ディスプレイを使用してもよい。一般的な構造のフラット・パネル・ディスプレイをそのまま本開示の2次元発光素子アレイ101に用いるのは困難である。因みに、汎用のフラット・パネル・ディスプレイは、配線がマトリックス状に配置されており、m行やn列単位で順々に発光素子を走査して点灯するダイナミック点灯方式が採用される。
【0041】
このため、画像の更新に時間がかかり、更新レートは速くても240〜1000Hz程度である。そこで、1000Hzよりも十分に速く画像を更新する必要がある。この例では、高速応答する発光素子20jを用い、発光素子20jの駆動回路を大幅に高速化するか、あるいは、一度に駆動する発光素子20jの数を大幅に増やしてダイナミック点灯の走査線数を減らす工夫がなされる。
【0042】
一度に駆動する発光素子20jの数を大幅に増やすには、マトリックス状の配線パターンを細かく分割し、分割した配線パターン数分の小さなマトリックスを個別に並列駆動するか、又は、全ての発光素子20jを同時に駆動するスタティック点灯を行えばよい。
【0043】
図7はk枚の1次元発光素子基板#k(k=1〜n)の積層例を示す斜視図である。この例では、1次元発光素子基板#kを必要な枚数だけ積層して、j行個の発光素子20jをライン状に配設した曲面形状の2次元発光素子アレイ101を製造するようになされる。
【0044】
図7に示すような積層構造を成す2次元発光素子アレイ101によれば、まず、各々の1次元発光素子基板#kのプリント配線基板の位置決め用の孔部32,33を揃えて積み重ねる。この積み重ねで、ターンテーブル42上に突出した棒状の位置決めピン83に嵌め込み易くなる。その結果、k枚の1次元発光素子基板#1〜#kを自己整合的に積層できるようになる。このような形成順序を経ると、曲面形状の発光面を有した2次元発光素子アレイ101を容易に製造できるようになる。
【0045】
この例で、最初からパラレルに映像データDinを1次元発光素子基板#kに伝送すると、配線パターンの本数が大幅に増加する。このため、1次元発光素子基板#kには、IC35として、発光素子20jを駆動するためのドライバ用のIC(駆動回路)の他に、シリアルパラレル変換用のIC(ASIC回路)が実装される。シリアルパラレル変換用のICは、シリアル伝送されてきた映像データDinをパラレル変換するように動作する。
【0046】
このように1次元発光素子基板#kを積層した構造とし、情報伝送方法を工夫することで、発光素子20jの直近までシリアルの配線パターンで映像データDinを伝送できようになる。この結果、パラレルで映像データDinを1次元発光素子基板#kに伝送する場合に比べて配線パターンの本数を大幅に削減できるようになる。しかも、組立性及びメンテナンス性に優れた2次元発光素子アレイ101を歩留まり良く形成できるようになる。これにより、曲面形状を有した2次元発光素子アレイ101を製造することができる。
【0047】
図3〜図7に示したような2次元発光素子アレイ101が準備できたら、図2に示した回転部104の所定の位置、この例では、ターンテーブル42上に2次元発光素子アレイ101を取り付ける。このとき、ターンテーブル42上に突出する棒状の位置決めピン83に、k枚の1次元発光素子基板#kのプリント配線基板の孔部を差し込むと、各々の1次元発光素子基板#kが自己整合的に位置決めされた状態となされる。この状態を維持するように、k枚の1次元発光素子基板#1〜#nを回転軸103に沿って積層するように取り付ける。
【0048】
この例では、所定の基板に実装された接続基板11をターンテーブル42上に立設する。接続基板11には、1次元発光素子基板#1〜#nの配線構造のコネクタと接続するための差し込み構造のコネクタを設ける。上述の接続基板11の差し込み構造のコネクタに1次元発光素子基板#1〜#nの配線構造のコネクタを嵌合してk枚の1次元発光素子基板#1〜#nを接続基板11に接続する。
【0049】
また、曲面形状の発光面(凹面側)がスリット102の位置に向くように、回転部104の回転軸103と、外装体41のスリット102との間に2次元発光素子アレイ101を配置するようにする。例えば、回転部104の回転軸103と2次元発光素子アレイ101の中央部とスリット102とが一直線上に並ぶ位置に当該2次元発光素子アレイ101を取り付ける。2次元発光素子アレイ101は、スリップリング51の回転側部品からのハーネス54に接続する。
【0050】
この例で、観察者検出部の一例を構成する視聴者検出センサ81が、外装体41の内部から外部を見通せる位置に取り付けられる。視聴者検出センサ81は、アーム部材82を介して上述の接続基板11に取り付けられる。視聴者検出センサ81はアーム部材82の一端に取り付けられ、モータ52によって回転される回転部104の外部で、当該立体画像を視聴する視聴者を検出して、視聴有無を判別する際に使用される。視聴者検出センサ81には、光位置センサ(Position Sensitive Detector:PSDセンサ)や超音波センサ、赤外線センサ、顔認識カメラなどが使用される。
【0051】
視聴者検出センサ81は、全周囲を細かな角度分解能で検出できることが望まれる。この例では、回転部104と共に視聴者検出センサ81が回転して、視聴者の検出を行うので、1個の視聴者検出センサ81で全周囲を検出でき、角度分解能の高いシステムを作ることができる。この結果、センサの数が大幅に削減でき、高分解能でありながら低コスト化を図られる。
【0052】
視聴者検出センサ81に高速度カメラを適用した場合、当該カメラは回転部104の回転軸103に取り付けられる。このような高速度カメラを回転部104の回転軸103に取り付け、回転動作することで、360度全領域の観察者の有無を検出できるようになる。
【0053】
ターンテーブル42上に2次元発光素子アレイ101を取り付けたら、ターンテーブル42上の2次元発光素子アレイ101を覆うように外装体41を取り付ける。このとき、2次元発光素子アレイ101の発光面の前方にスリット102を固定することで、光の放射角度を所定の範囲に制限できるようになる。これにより、外装体41の周面のスリット102と、その内側の2次元発光素子アレイ101とにより発光ユニットU1を構成できるようになる。
【0054】
他方で、ターンテーブル42を回転自在に支持するための設置架台105を作成する。この例で、設置架台105の上部にスリップリング51を設けると共に、図示しない軸受け部を実装する。軸受け部は回転軸103を回転自在に係合する共に、回転部104を支持するようになる。設置架台105内にはスリップリング51の他に、モータ52や制御部55、I/F基板56、電源部57等を実装する(図18参照)。モータ52は回転軸103に直結する。
【0055】
制御部55及び電源部57はハーネス53を介してスリップリング51の固定側部品に接続する。これにより、設置架台105内において、外部から供給される電力や映像データDinをスリップリング51を介して2次元発光素子アレイ101に伝送できるようになる。設置架台105が準備できたら、2次元発光素子アレイ101が取り付けられた回転部104を設置架台105に取り付ける。これにより、全周囲立体画像表示装置10が完成する。
【0056】
[2次元発光素子アレイ101におけるレンズ部材109の機能例]
図8は、2次元発光素子アレイ101におけるレンズ部材109の機能例を示す回転軸方向から見下ろした模式図である。この例では、図8に示す2次元発光素子アレイ101は、複数の1次元発光素子基板#1が積層して構成される。便宜上、例えば、第1列目にm=12個の発光素子20j(j=1〜m)が配置されている。図5〜図7で示した例では発光素子がm=59個の場合である。
【0057】
発光素子201〜212から出射した光の多くは、スリット102の付近に届くことなく、外装体41内部で散乱して熱になる。そこで、2次元発光素子アレイ101によれば、各々の発光素子201〜212の発光面に、所定の形状を有したレンズ部材109を取り付けている。この例では、発光素子20j毎にレンズ部材109を取り付けることで、各々の発光素子201〜212から発散して出射された各光束がそれぞれ、平行光束とされている。これにより、発光素子201〜212からの各光束がスリット102の付近に集光できるようになる。
【0058】
レンズ部材109には、マイクロレンズやセルフォックレンズが使用される。もちろん、生産コストを抑えるため、発光素子201〜212毎にレンズ部材109を取付けるのではなく、マイクロレンズアレイや、セルフォックレンズアレイ等のシート状のレンズや板状のレンズを2次元発光素子アレイ101に取り付けてもよい。
【0059】
左右方向のみを集光するのであれば、レンチキュラーレンズを用いてもよい。このようなレンズ部材109を取り付けることで、散乱光を可能な限り抑えることができ、効率よく光を利用できるばかりか、全周囲立体画像表示装置10としての輝度やコントラストを得る点でも有利になり、電力効率の向上を見込めるようになる。
【0060】
[全周囲立体画像表示装置10の動作原理]
続いて、図9〜図17を参照して全周囲立体画像表示装置10の動作原理について説明する。図9は、全周囲立体画像表示装置10の動作例を示す回転軸方向から見下ろした模式図である。図中、レンズ部材109は省略している。
【0061】
図9に示す全周囲立体画像表示装置10は光線再生方式を採用しており、回転部104が回転軸103を回転中心として矢印R(図1参照)の方向に、あるいは、その逆の方向に回転する構造となっている。
【0062】
全周囲立体画像表示装置10では、2次元発光素子アレイ101の発光面の前方の外装体41に、回転軸103に平行なスリット102が設けられ、2次元発光素子アレイ101から出射した光が、このスリット部位以外から漏れない構造を採っている。このスリット構造により、2次元発光素子アレイ101の各発光素子201〜212から出射された光がスリット102より左右方向の放射角度が大きく制限される。
【0063】
この例では、発光素子201〜212の数をm=12行個としているが幾つでもよい。この12個の発光素子201〜212によって、回転軸103を基準にして結像する立体画像の光は、回転部104の内部からスリット102を介して外部へ漏れ出るようになる。ここで、12個の発光素子201〜212の各々と、スリット102と結んだ各々の方向をベクトルで示すことにする。
【0064】
発光素子201とスリット102と結んだ線分が示す方向を、当該発光素子201からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。以後、この方向を”ベクトル201V方向”と記述する。以下、同様にして、発光素子202とスリット102と結んだ線分が示す方向を、発光素子202からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。この方向を”ベクトル202V方向”と記述する。同様に、発光素子212とスリット102と結んだ線分が示す方向を、発光素子212からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。この方向を”ベクトル212V方向”と記述する。
【0065】
例えば、発光素子201から出力された光は、スリット102を通過してベクトル201V方向に放射される。発光素子202から出力された光は、スリット102を通過してベクトル202V方向に放射される。同様に発光素子202〜212から出力された光もスリット102を通過してベクトル203V〜212V方向に放射される。このように、各発光素子201〜212の光が各々違った方向に放射されるため、スリット102で規制される縦1ライン分の光線再生が可能となっている。
【0066】
こうしたスリット構造の回転部104を視点pに対して回転走査することで、円筒形状の光線再生面を形成できるようになる。更に、視点pに対する回転走査の角度に応じて、外部からの映像データDin、あるいは、回転部内部のROM等の記憶装置からの映像データDinを2次元発光素子アレイ101の発光ユニットU1に反映することで、任意の再生光線を出力することが可能となる。
【0067】
[発光点の軌跡例]
続いて、視点pから観察される発光点の軌跡例について説明する。
この全周囲立体画像表示装置10では、2次元発光素子アレイ101において、回転軸103に直交する平面内には、上述したように例えばm=12個の発光素子が互いに異なる位置に配置されている。m個の発光素子はそれぞれ、スリット102を介して回転部104の回転に応じてそれぞれ異なる視点位置用の光を外部に向けて放射する。ここで、回転部104が回転している状態において、回転部104の周囲における任意の1つの視点位置から回転軸103の方向を観測したとする。このとき、後述する表示制御部15(図18)は、複数の発光素子による発光点の軌跡によって、回転部104の内部に任意の視点位置に応じた例えば平面状の画像が形成されるように複数の発光素子の発光制御を行う。各視点位置ではその視点位置に応じた少しずつ視差のある例えば平面状の画像が観測される。従って、両眼の位置に相当する任意の2つの視点位置から観測したときには、各視点位置に応じた互いに視差のある例えば平面状の画像が観測される。これにより、観測者は回転部の周囲の任意の位置において、立体画像を認識することができる。
【0068】
図10〜12は、視点pから観察される発光点の軌跡例を示す説明図である。図10A〜Dに示すように、発光ユニットU1を有する回転部104が等速で回転され、視点p=300に対して回転走査される場合、視点300から観測される発光素子が時間Tの間隔で発光素子201から順に発光素子202,203,・・・212と移って行く。
【0069】
発光点の軌跡(図中の黒小丸印)が例えば平面を成して見える構造は、2次元発光素子アレイ101の発光面形状とスリット102の位置を調整することで実現される。例えば、図10Aに示す時刻t=0において、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0070】
図10Bに示す時刻t=Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図中の右側から第1番目の白抜きの小丸印は、発光素子201の発光点を示している。図10Cに示す時刻t=2Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図10Cにおける第2番目の小丸印は、発光素子202の発光点を示している。
【0071】
図10Dに示す時刻t=3Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。図10Dにおける第3番目の小丸印は、発光素子203の発光点を示している。
【0072】
また、図11Aに示す時刻t=4Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図11Aにおける第4番目の小丸印は、発光素子204の発光点を示している。図11Bに示す時刻t=5Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。図11Bにおける第5番目の小丸印は、発光素子205の発光点を示している。
【0073】
図11Cに示す時刻t=6Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図11Cにおける第6番目の小丸印は、発光素子206の発光点を示している。図11Dに示す時刻t=7Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。図11Dにおける第7番目の小丸印は、発光素子207の発光点を示している。
【0074】
図12Aに示す時刻t=8Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図12Aにおける第8番目の小丸印は、発光素子208の発光点を示している。図12Bに示す時刻t=9Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。図12Bにおける第9番目の小丸印は、発光素子209の発光点を示している。
【0075】
図12Cに示す時刻t=10Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図12Cにおける第10番目の小丸印は、発光素子210の発光点を示している。図12Dに示す時刻t=11Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。図12Dにおける第11番目の小丸印は、発光素子211の発光点を示している。図12Dにおける第12番目の黒小丸印は、発光素子212の発光点を示している。
【0076】
[光線を出力する様子]
続いて、複数の視点に対してスリット102を介して光線を出力する様子について説明する。図13〜図16は、複数の視点pに対してスリット102を介して光線を出力する様子(その1〜4)を示す説明図である。この例では、発光ユニットU1の全周囲(360°)に対して、6°置きに60箇所の視点p=300〜359を設定した場合であって、回転部104が任意の基準位置から30°回転する、時刻t=0〜t=5T(1/12周)に至る区間の様子を示している。
【0077】
このような発光ユニットU1によれば、図13A,B、図14A,B及び図15A,Bに示すように発光素子201〜212の数だけ、一度に複数(12箇所)の視点pに対して光線を出力する。この出力で、視点p=300だけでなく、別の視点p=349〜359に対しても発光点の軌跡が平面を成して観測される。
【0078】
例えば、図13Aに示す時刻t=0において、視点300(pを省略する)でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。この例では、回転部104を時計方向に回転し、視点300を基準にして角度6°ずつ視点をシフトした場合である。図13Aに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。
【0079】
図13Aに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0080】
図13Aに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0081】
図13Aに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0082】
図13Aに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度54°だけ反時計方向に存在する視点351で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0083】
図13Aに示す視点300から角度60°だけ反時計方向に存在する視点350で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度66°だけ反時計方向に存在する視点349で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0084】
また、図13Bに示す時刻t=Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0085】
図13Bに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0086】
図13Bに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0087】
図13Bに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0088】
図13Bに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0089】
図13Bに示す視点300から角度54°だけ反時計方向に存在する視点351で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度60°だけ反時計方向に存在する視点350で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0090】
また、図14Aに示す時刻t=2Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。
【0091】
図14Aに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0092】
図14Aに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0093】
図14Aに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0094】
図14Aに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0095】
図14Aに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度54°だけ反時計方向に存在する視点351で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0096】
また、図14Bに示す時刻t=3Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。
【0097】
図14Bに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度18°だけ時計方向に存在する他の視点303で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0098】
図14Bに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0099】
図14Bに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0100】
図14Bに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0101】
図14Bに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0102】
更に、図15Aに示す時刻t=4Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図15Aに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0103】
図15Aに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図15Aに示す視点300から角度18°だけ時計方向に存在する他の視点303で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。
【0104】
図15Aに示す視点300から角度24°だけ時計方向に存在する他の視点304で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。図15Aに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0105】
図15Aに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図15Aに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0106】
図15Aに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図15Aに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0107】
図15Aに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図15Aに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0108】
また、図15Bに示す時刻t=5Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。図15Bに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。
【0109】
図15Bに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。図15Bに示す視点300から角度18°だけ時計方向に存在する他の視点303で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。
【0110】
図15Bに示す視点300から角度24°だけ時計方向に存在する他の視点304で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図15Bに示す視点300から角度30°だけ時計方向に存在する他の視点305で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0111】
図15Bに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図15Bに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0112】
図15Bに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図15Bに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0113】
図15Bに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図15Bに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0114】
なお、時刻t=6T〜11Tについても、同様に12個の発光素子201〜212から漏れ出る光が1ずつシフトして観測される。この間、回転部104は角度30°から60°へ至り回転する。従って、回転部104が全周(1周)、すなわち、360°回転すると、12個の発光素子201〜212による時刻t=0〜59Tに係る発光が観測される。このようにして、視点300から角度6°を基準にして時計方向又は及び反時計方向に存在する他の視点で、スリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察する。この結果、12個の発光素子201〜212から漏れ出る光が1ずつシフトして観測できるようになる(図16参照)。
【0115】
図16は、2次元発光素子アレイ101による発光点の全軌跡例を示す図である。図16に示す2次元発光素子アレイ101による発光点の軌跡例によれば、全て(60箇所)の視点300〜359で、時刻t=0〜59Tの発光点の軌跡が平面を成して観測される。この例では、観測視点は60箇所(角度6°の配置ピッチ)である。上述した発光ユニットU1の構造は、60箇所の視点300〜359から観測される再生画像が平面であるので、撮影データを一定の順序で放射光データに変換する処理等に軽減され、光線再生のための画像データを生成する際に極めて有利になっている。
【0116】
[立体画像表示用の画像データの生成例]
続いて、全周囲立体画像表示装置10に適用可能な立体画像表示用の画像データの生成例について説明する。図17は撮影データ/放射光データの変換例を示すデータフォーマットである。
【0117】
この例では、図16に示した全周囲立体画像表示装置10で表示させたい物体(被写体)を全周囲から撮影する。例えば、物体を撮影中心に配置し、物体の配置中心部位を回転中心にして全周囲に6°置きに60箇所の撮影点(各視点300〜359に相当)を設定する。
【0118】
次に、実際にカメラを使用して、各視点300〜359から物体撮影中心位置(回転軸103に相当)に向かって物体の画像を各々撮影する。この撮影によって、物体の光線再生に必要な全周囲に渡る撮影データを収集できるようになる。
【0119】
その後、図17で示すように収集した撮影データが2次元発光素子アレイ101における12行の発光素子201〜212の発光タイミング毎の放射光データとなるように、スリット方向(縦方向)のラインデータ単位で、配列操作処理を実行する。
【0120】
ここで、撮影点300で撮影して得た画像(0°)の撮影データを次のように示す。撮影点300は撮影データ(300−201,300−202,300−203,300−204,300−205,300−206,300−207,300−208,300−209,300−210,300−211,300−212)である。
【0121】
また、撮影点301で撮影して得た画像(6°)の撮影データを次のように示す。撮影点301は、撮影データ(301−201,301−202,301−203,301−204,301−205,301−206,301−207,301−208,301−209,301−210,301−211,301−212)である。
【0122】
撮影点302で撮影して得た画像(12°)の撮影データを次のように示す。撮影点302は撮影データ(302−201,302−202,302−203,302−204,302−205,302−206,302−207,302−208,302−209,302−210,302−211,302−212)である。
【0123】
撮影点303で撮影して得た画像(18°)の撮影データを次のように示す。撮影点303は撮影データ(303−201,303−202,303−203,303−204,303−205,303−206,303−207,303−208,303−209,303−210,303−211,303−212)である。
【0124】
撮影点304で撮影して得た画像(24°)の撮影データを次のように示す。撮影点304は撮影データ(304−201,304−202,304−203,304−204,304−205,304−206,304−207,304−208,304−209,304−210,304−211,304−212)である。同様にして、撮影点358で撮影して得た画像(348°)の撮影データを次のように示す。撮影点358は撮影データ(358−201,358−202,358−203,358−204,358−205,358−206,358−207,358−208,358−209,358−210,358−211,358−212)とする。
【0125】
そして、撮影点359で撮影して得た画像(354°)の撮影データを次のように示す。撮影点359は撮影データ(359−201,359−202,359−203,359−204,359−205,359−206,359−207,359−208,359−209,359−210,359−211,359−212)である。
【0126】
上述で得られた撮影データを次のような配列操作を実行して、時刻t=0〜t=59Tに係る放射光データに変換処理する。まず、時刻t=0の発光素子201の放射光データについては、物体の画像(0°)の撮影データ(300−201)を配列する。同時刻t=0の発光素子202の放射光データについては、物体の画像(354°)の撮影データ(359−202)を配列する。同時刻t=0の発光素子203の放射光データについては、物体の画像(348°)の撮影データ(358−203)を配列する。
【0127】
同時刻t=0の発光素子204の放射光データについては、物体の画像(342°)の撮影データ(357−204)を配列する。同時刻t=0の発光素子205の放射光データについては、物体の画像(336°)の撮影データ(356−205)を配列する。同時刻t=0の発光素子206の放射光データについては、物体の画像(330°)の撮影データ(355−206)を配列する。
【0128】
同時刻t=0の発光素子207の放射光データについては、物体の画像(324°)の撮影データ(354−207)を配列する。同時刻t=0の発光素子208の放射光データについては、物体の画像(318°)の撮影データ(353−208)を配列する。同時刻t=0の発光素子209の放射光データについては、物体の画像(312°)の撮影データ(352−209)を配列する。
【0129】
同時刻t=0の発光素子210の放射光データについては、物体の画像(306°)の撮影データ(351−210)を配列する。同時刻t=0の発光素子211の放射光データについては、物体の画像(300°)の撮影データ(350−211)を配列する。同時刻t=0の発光素子212の放射光データについては、物体の画像(294°)の撮影データ(349−212)を配列する。
【0130】
この配列操作によって、時刻t=0の発光素子201〜212の放射光データを生成することができる。生成データは放射光データ(300−201,359−202,358−203,357−204,356−205,355−206,354−207,353−208,352−209,351−210,350−211,349−212)である。
【0131】
次に、時刻t=Tの発光素子201の放射光データについては、物体の画像(6°)の撮影データ(301−201)を配列する。同時刻t=Tの発光素子202の放射光データについては、物体の画像(0°)の撮影データ(300−202)を配列する。同時刻t=Tの発光素子203の放射光データについては、物体の画像(354°)の撮影データ(359−203)を配列する。同時刻t=Tの発光素子204の放射光データについては、物体の画像(348°)の撮影データ(358−204)を配列する。
【0132】
同時刻t=Tの発光素子205の放射光データについては、物体の画像(342°)の撮影データ(357−205)を配列する。同時刻t=Tの発光素子206の放射光データについては、物体の画像(336°)の撮影データ(356−206)を配列する。同時刻t=Tの発光素子207の放射光データについては、物体の画像(330°)の撮影データ(355−207)を配列する。同時刻t=Tの発光素子208の放射光データについては、物体の画像(324°)の撮影データ(354−208)を配列する。
【0133】
同時刻t=Tの発光素子209の放射光データについては、物体の画像(318°)の撮影データ(353−209)を配列する。同時刻t=Tの発光素子210の放射光データについては、物体の画像(312°)の撮影データ(352−210)を配列する。同時刻t=Tの発光素子211の放射光データについては、物体の画像(306°)の撮影データ(351−211)を配列する。同時刻t=Tの発光素子212の放射光データについては、物体の画像(300°)の撮影データ(350−212)を配列する。
【0134】
この配列操作によって、時刻t=Tの発光素子201〜212の放射光データを生成することができる。生成データは放射光データ(301−201,300−202,359−203,358−204,357−205,356−206,355−207,354−208,353−209,352−210,351−211,350−212)である。
【0135】
次に、時刻t=2Tの発光素子201の放射光データについては、物体の画像(12°)の撮影データ(302−201)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子202の放射光データについては、物体の画像(6°)の撮影データ(301−202)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子203の放射光データについては、物体の画像(0°)の撮影データ(300−203)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子204の放射光データについては、物体の画像(354°)の撮影データ(359−204)を配列する。
【0136】
同時刻t=2Tの発光素子205の放射光データについては、物体の画像(348°)の撮影データ(358−205)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子206の放射光データについては、物体の画像(342°)の撮影データ(357−206)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子207の放射光データについては、物体の画像(336°)の撮影データ(356−207)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子208の放射光データについては、物体の画像(330°)の撮影データ(355−208)を配列する。
【0137】
同時刻t=2Tの発光素子209の放射光データについては、物体の画像(324°)の撮影データ(354−209)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子210の放射光データについては、物体の画像(318°)の撮影データ(353−210)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子211の放射光データについては、物体の画像(312°)の撮影データ(352−211)を配列する。同時刻t=2Tの発光素子212の放射光データについては、物体の画像(306°)の撮影データ(351−212)を配列する。
【0138】
この配列操作によって、時刻t=2Tの発光素子201〜212の放射光データを生成することができる。生成データは放射光データ(302−201,301−202,300−203,359−204,358−205,357−206,356−207,355−208,354−209,353−210,352−211,351−212)である。
【0139】
次に、時刻t=3Tの発光素子201の放射光データについては、物体の画像(18°)の撮影データ(303−201)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子202の放射光データについては、物体の画像(12°)の撮影データ(302−202)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子203の放射光データについては、物体の画像(6°)の撮影データ(301−203)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子204の放射光データについては、物体の画像(0°)の撮影データ(300−204)を配列する。
【0140】
同時刻t=3Tの発光素子205の放射光データについては、物体の画像(354°)の撮影データ(359−205)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子206の放射光データについては、物体の画像(348°)の撮影データ(358−206)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子207の放射光データについては、物体の画像(342°)の撮影データ(357−207)を配列する。
【0141】
同時刻t=3Tの発光素子208の放射光データについては、物体の画像(336°)の撮影データ(356−208)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子209の放射光データについては、物体の画像(330°)の撮影データ(355−209)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子210の放射光データについては、物体の画像(324°)の撮影データ(354−210)を配列する。
【0142】
同時刻t=3Tの発光素子211の放射光データについては、物体の画像(318°)の撮影データ(353−211)を配列する。同時刻t=3Tの発光素子212の放射光データについては、物体の画像(312°)の撮影データ(352−212)を配列する。
【0143】
この配列操作によって、時刻t=3Tの発光素子201〜212の放射光データを生成することができる。生成データは放射光データ(303−201,302−202,301−203,300−204,359−205,358−206,357−207,356−208,355−209,354−210,353−211,352−212)である。
【0144】
次に、時刻t=4Tの発光素子201の放射光データについて、物体の画像(24°)の撮影データ(304−201)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子202の放射光データについては、物体の画像(18°)の撮影データ(303−202)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子203の放射光データについては、物体の画像(12°)の撮影データ(302−203)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子204の放射光データについては、物体の画像(6°)の撮影データ(301−204)を配列する。
【0145】
同時刻t=4Tの発光素子205の放射光データについては、物体の画像(0°)の撮影データ(300−205)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子206の放射光データについては、物体の画像(354°)の撮影データ(359−206)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子207の放射光データについては、物体の画像(348°)の撮影データ(358−207)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子208の放射光データについては、物体の画像(342°)の撮影データ(357−208)を配列する。
【0146】
同時刻t=4Tの発光素子209の放射光データについては、物体の画像(336°)の撮影データ(356−209)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子210の放射光データについては、物体の画像(330°)の撮影データ(355−210)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子211の放射光データについては、物体の画像(324°)の撮影データ(354−211)を配列する。同時刻t=4Tの発光素子212の放射光データについては、物体の画像(318°)の撮影データ(353−212)を配列する。
【0147】
この配列操作によって、時刻t=4Tの発光素子201〜212の放射光データを生成することができる。生成データは、放射光データ(304−201,303−202,302−203,301−204,300−205,359−206,358−207,357−208,356−209,355−210,354−211,353−212)である。
【0148】
同様にして、時刻t=58Tの発光素子201の放射光データについて、物体の画像(348°)の撮影データ(358−201)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子202の放射光データについては、物体の画像(342°)の撮影データ(357−202)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子203の放射光データについては、物体の画像(336°)の撮影データ(356−203)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子204の放射光データについては、物体の画像(330°)の撮影データ(355−204)を配列する。
【0149】
同時刻t=58Tの発光素子205の放射光データについては、物体の画像(324°)の撮影データ(354−205)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子206の放射光データについては、物体の画像(318°)の撮影データ(353−206)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子207の放射光データについては、物体の画像(312°)の撮影データ(352−207)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子208の放射光データについては、物体の画像(306°)の撮影データ(351−208)を配列する。
【0150】
同時刻t=58Tの発光素子209の放射光データについては、物体の画像(300°)の撮影データ(350−209)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子210の放射光データについては、物体の画像(294°)の撮影データ(349−210)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子211の放射光データについては、物体の画像(288°)の撮影データ(348−211)を配列する。同時刻t=58Tの発光素子212の放射光データについては、物体の画像(282°)の撮影データ(347−212)を配列する。
【0151】
この配列操作によって、時刻t=58Tの発光素子201〜212の放射光データを生成することができる。生成データは放射光データ(358−201,357−202,356−203,355−204,354−205,353−206,352−207,351−208,350−209,349−210,348−211,347−212)である。
【0152】
そして、時刻t=59Tの発光素子201の放射光データについて、物体の画像(354°)の撮影データ(359−201)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子202の放射光データについては、物体の画像(348°)の撮影データ(358−202)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子203の放射光データについては、物体の画像(342°)の撮影データ(357−203)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子204の放射光データについては、物体の画像(336°)の撮影データ(356−204)を配列する。
【0153】
同時刻t=59Tの発光素子205の放射光データについては、物体の画像(330°)の撮影データ(355−205)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子206の放射光データについては、物体の画像(324°)の撮影データ(354−206)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子207の放射光データについては、物体の画像(318°)の撮影データ(353−207)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子208の放射光データについては、物体の画像(312°)の撮影データ(352−208)を配列する。
【0154】
同時刻t=59Tの発光素子209の放射光データについては、物体の画像(306°)の撮影データ(351−209)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子210の放射光データについては、物体の画像(300°)の撮影データ(350−210)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子211の放射光データについては、物体の画像(294°)の撮影データ(349−211)を配列する。同時刻t=59Tの発光素子212の放射光データについては、物体の画像(288°)の撮影データ(348−212)を配列する。
【0155】
この配列操作によって、時刻t=59Tの発光素子201〜212の放射光データ(359−201,358−202,357−203,356−204,355−205,354−206,353−207,352−208,351−209,350−210,349−211,348−212)を生成することができる。
【0156】
こうした配列操作処理だけで、全周囲立体画像表示装置10に適用可能な立体画像表示用の放射光データ(以下映像データDinともいう)を容易に生成できるようになる。しかも、発光ユニットU1を映像データDinの生成を考慮した内部構造とすることで、小規模な信号処理回路で短時間に立体画像表示用の映像データDinを生成することができる。
【0157】
上述の例では、実際の被写体(物体)をカメラで撮影する方法について説明したが、これに限られることはなく、コンピュータグラフィックスにより、立体画像表示用の映像データDinを生成してもよい。コンピュータグラフィックスによる仮想物体の表示においても、60箇所の各視点300〜359から回転軸103の方向の画像をレンダリングし、同様の処理を行うことで映像データDinを容易に生成できる。
【0158】
ここにレンダリングとは、数値データとして与えられた物体や図形等に関する情報を計算によって画像化することをいう。3次元グラフィックスのレンダリングでは、視点の位置や、光源の数や位置、種類、物体の形状や頂点の座標、材質を考慮して陰面消去や、陰影付けなどを行って画像を作成する。レンダリングの手法としてはレイトレーシング法や、ラジオシティ法等がある。
【0159】
[制御系の構成例]
続いて、全周囲立体画像表示装置10の制御系の構成例について説明する。図18は、全周囲立体画像表示装置10の制御系の構成例を示すブロック図である。この例の全周囲から視聴可能な立体画像表示装置によれば、視聴者がいない多くの領域に対しても、光線を出力する構造のため電力効率の点で無駄が多くなることが懸念される。そこで、視聴者検出による電力効率の改善及び情報量の削減を図っている。
【0160】
図18に示す全周囲立体画像表示装置10には映像ソース送出装置90が接続され、シリアルの立体画像表示用の映像データDinが入力される。全周囲立体画像表示装置10の制御系は、回転部104と設置架台105とに区分され、2つの制御系間がスリップリング51を介して電気的に接続される。
【0161】
回転部104の内部の制御系は接続基板11を有している。接続基板11には、nラインを構成するk枚の1次元発光素子基板#k(k=1〜n)と、1個の視聴者検出センサ81とが接続される。1次元発光素子基板#1〜#nは、シリアルのnラインの立体画像表示用の映像データDinに基づいてm行個の発光素子を順に発光するようになされる(図19参照)。
【0162】
接続基板11には表示制御部15が実装される。表示制御部15は、立体画像用の映像データDinを1画素単位に入力し、当該映像データDinに基づいて1画素単位に発光素子の発光強度を制御する。図5に示した1次元発光素子基板#1のシリアルパラレル変換用とドライバ用のIC35等へ1画素単位に発光強度を調整したシリアルの映像データDinを伝送する。この制御によって、2次元発光素子アレイ101の発光強度を1画素単位に制御できるようになる。
【0163】
この例で、全周囲立体画像表示装置10が光線再生方式の表示装置であることから、全周囲への表示を行うために、膨大な映像データDinを1次元発光素子基板#1のIC35等へ伝送するようになされる。しかし、視聴されない映像データDinを伝送するのは、伝送帯域や画像生成の点で無駄である。そこで、視聴者がいる領域のみに、ピンポイントで光線を出力するようになされる。
【0164】
接続基板11には視聴者検出センサ81が接続され、図1に示したモータ52によって回転される回転部104の外部で、当該立体画像を視聴する視聴者(例えば、視聴者の瞳孔)を検出して、視聴者検出信号S81を発生する。視聴者検出信号S81は表示制御部15に出力され、視聴有無を判別する際に使用される。
【0165】
表示制御部15は、視聴者検出センサ81から視聴者検出信号S81を入力して観察者検出値を取得し、この観察者検出値と、所定の観察者判別値とを比較し、その比較の結果に応じて発光素子の発光強度を制御する。具体的には、観察者判別値以上の観察者検出値が検出されている区間は、2次元発光素子アレイ101を動作させる。表示制御部15は、観察者判別値未満の観察者検出値が検出されている区間は、2次元発光素子アレイ101を停止するように1次元発光素子基板#1〜#nの発光強度を制御する。
【0166】
このように、視聴者がいる領域にのみ光線を出力する構造を採用し、視聴者検出センサ81によって観察者の有無を検出し、観察者が存在する領域において、1次元発光素子基板#1〜#nの発光強度を制御することができる。それ以外の領域は1次元発光素子基板#1〜#nを停止できるので、消費電力を削減できるようになる。従って、従来の平面ディスプレイよりも遥かに良い電力効率で、立体画像を表示できるようになる。また、伝送する情報を大幅に削減できるため、伝送回路や画像生成回路が小規模になりコストダウンを図れる。
【0167】
一方、設置架台105の内部には駆動制御系が設けられ、この駆動制御系は、制御部55、I/F基板56、電源部57及びエンコーダ58を有して構成される。I/F基板56は双方向高速シリアルインターフェース(I/F)を介して外部の映像ソース送出装置90に接続される。映像ソース送出装置90は、双方向高速シリアルI/F規格に基づくシリアルの立体画像表示用の映像データDinをI/F基板56及びスリップリング51を介して接続基板11に出力する。
【0168】
例えば、全周囲立体画像表示装置10は、視聴者検出センサ81で検出した視聴者の領域を映像ソース送出装置90に逐次伝達する。映像ソース送出装置90は対応する領域映像のみを全周囲立体画像表示装置10に送出する。この例で、当該全周囲立体画像表示装置10の周囲で複数人の視聴者が立体映像を視聴する場合、視聴領域毎に違った映像ソースの再生を行ってもよい。この場合、各々の視聴者が自ら再生する映像ソースを選択してもよいし、カメラによる顔認識で視聴者を特定し、あらかじめ設定しておいた映像ソースを再生してもよい(図21B参照)。これをデジタル・サイネージ用途に用いれば、一台の全周囲立体画像表示装置10で複数の違った情報を発信できるようになる。
【0169】
ここにデジタル・サイネージとは、電子データによる各種情報表示をいい、デジタル・サイネージ用途によれば、店舗/商業施設、交通施設等におけるパブリックディスプレイとして設置される集客・広告・宣伝・販促のための表示に適している。例えば、全周囲立体画像表示装置10による一周360°の表示領域を120°ずつ3つの視聴領域を分割し、各々の表示領域で異なる映像データを再生すると、3つの視聴領域で異なった表示情報を視聴できるようになる。
【0170】
例えば、全周囲立体画像表示装置10の正面の表示領域(0°〜120°)で第1のキャラクタの前面側の立体画像を表示すると、その正面に位置する視聴者は、第1のキャラクタの前面側の立体画像を視聴できるようになる。同様にして、その右側面の表示領域(121°〜240°)で第2のキャラクタの前面側の立体画像を表示すると、その右側面に位置する視聴者は、第2のキャラクタの前面側の立体画像を視聴できるようになる。同様にして、その左側面の表示領域(241°〜360°)で第3のキャラクタの前面側の立体画像を表示すると、その左側面に位置する視聴者は、第3のキャラクタの前面側の立体画像を視聴できるようになる。これにより、一台の全周囲立体画像表示装置10等で複数の違った表示情報を発信できるようになる。
【0171】
I/F基板56には制御部55が接続される。上述の映像ソース送出装置90は、同期信号SsをI/F基板56を介して制御部55に出力する。制御部55にはモータ52、エンコーダ58及びスイッチ部60が接続される。エンコーダ58(回転検出部)は、モータ52に取り付けられ、モータ52の回転速度を検出して回転部104の回転速度を示す速度検出信号S58を制御部55に出力する。スイッチ部60は、電源がオンされると制御部55にスイッチ信号S60を出力する。スイッチ信号S60は、電源オフ又は電源オン情報を示すものである。スイッチ部60は、ユーザによってオン又はオフ操作される。
【0172】
制御部55は同期信号Ss及び速度検出信号S58に基づいてモータ52を所定の回転(変調)速度で回転するように制御する。電源部57はスリップリング51、制御部55及びI/F基板56に接続され、接続基板11、制御部55及びI/F基板56に各基板駆動用の電源を供給するようになされる。
【0173】
この例で、制御部55は、回転部104の回転制御を行っているサーボ制御系のエラー量が一定値を超えて、回転ムラが発生した場合、速やかに、回転動作を停止するように回転部104を制御する。エンコーダ58は、モータ52によって回転される回転部104の回転を検出する。
【0174】
制御部55は、エンコーダ58から得られた回転検出値と、所定の回転基準値とを比較し、その比較の結果に応じてモータ52を制御する。具体的には、回転基準値以上の回転検出値が検出された場合は、回転部104の回転動作を停止するようにモータ52を制御する。このように全周囲立体画像表示装置10によれば、回転部104の回転制御を行っているサーボ制御系のエラー量が一定値を超えたら、速やかに回転動作を停止できるようになる。従って、回転部104の回転暴走を未然に防止し、安全を確保できるようになる。これにより、全周囲立体画像表示装置10の破壊を防止できるようになる。
【0175】
図19は、1個の1次元発光素子基板#1等の構成例を示すブロック図である。図19に示す1次元発光素子基板#1等は、1個のシリアルパラレル変換部12、m個のドライバDRj(j=1〜m)及びm個の発光素子20j(j=1〜m)を有して構成される。この例ではm=12個(行)の場合について説明する。シリアルパラレル変換部12は接続基板11に接続され、シリアルの第1ライン目の立体画像表示用の映像データDinを第1〜第12行分のパラレルの立体画像表示用の映像データD#j(j=1〜m)に変換する。
【0176】
シリアルパラレル変換部12には12個のドライバDR1〜DR12(駆動回路)が接続される。ドライバDR1には第1行目の発光素子201が接続される。発光素子201は、立体画像表示用の第1行目の映像データD#1に基づいて発光する。ドライバDR2には第2行目の発光素子202が接続される。発光素子202は、立体画像表示用の第2行目の映像データD#2に基づいて発光する。
【0177】
同様にして、ドライバDR3〜DR12には第3行目〜第12行目の発光素子203〜212が各々接続される。発光素子203〜212は、立体画像表示用の第3行目〜第12行目の映像データD#3〜D#12に基づいて各々発光する。これにより、シリアルの第1ライン目の立体画像表示用の映像データDinに基づいて12個の発光素子201〜212が順に発光するようになる。この例で、1個のシリアルパラレル変換部12及びm個のドライバDRjは、図5に示したシリアルパラレル変換用とドライバ用のIC35を構成する。他の1次元発光素子基板#2〜#nについても、1次元発光素子基板#1の構成及び機能を有するので、その説明を省略する。
【0178】
[立体画像表示例]
続いて、本開示に係る立体画像表示方法について、全周囲立体画像表示装置10の動作例を説明する。図20は、全周囲立体画像表示装置10における立体画像表示例を示す動作フローチャートである。この全周囲立体画像表示装置10によれば、図1に示したように回転部104が所定の口径及び所定の長さを有し、かつ、回転軸103に平行する周面の方向にスリット102を有している。この例では、回転部104には2次元発光素子アレイ101が取り付けられ、この回転部104を回転して立体画像を表示する場合を前提とする。
【0179】
この際に適用される立体画像用の映像データDinは、例えばm行×n列個の撮像素子を有する1個の撮像系で任意の被写体を全周囲に渡って等間隔にN箇所分を撮像して得たものである。この撮像によって得られたN箇所×m行分の2次元の映像データDinを入力する。そして、2次元発光素子アレイ101及びスリット102から成る1個の発光ユニットU1により、被写体の全周囲に渡る立体画像を再生する。表示制御部15は、N箇所の撮像位置のいずれかに相当する任意の1つの視点位置から回転軸103の方向を観測したときに、複数の発光素子による発光点の軌跡によって、回転部104の内部に2次元の映像データDinに基づく例えば平面状の画像が形成されるように複数の発光素子の発光制御を行う。
【0180】
これらを動作条件にして、全周囲立体画像表示装置10は、まず、ステップST1で制御部55は、電源がオンされたか否を検出する。このとき、ユーザは、立体画像を視聴する場合はスイッチ部60をONする。スイッチ部60は電源がオンされると、制御部55に電源オン情報を示すスイッチ信号S60を出力する。制御部55はスイッチ信号S60に基づく電源オン情報を検出すると、立体画像表示処理を実行する。
【0181】
次に、ステップST2で接続基板11は、回転部104に取り付けられた2次元発光素子アレイ101に供給するための立体画像用の映像データDinを入力する。この映像データDinは、図16に示したように、2次元発光素子アレイ101のm=12行個の発光素子201〜212がN=60箇所の撮像位置を連続して再生する順序であって、かつ、60箇所の撮影位置が連続する順序である。映像ソース送出装置90では60箇所×12行分の2次元の映像データDinから該当する立体画像表示用の映像データDinが抽出される。
【0182】
映像ソース送出装置90は、図17に示したスリット方向(縦方向)のラインデータ単位でデータの配列を並べ換える配列操作処理を実行する。そして、映像ソース送出装置90は、収集した撮影データを2次元発光素子アレイ101における12行の発光素子201〜212の発光タイミング毎の放射光データに変換する。これによって得られた時刻t=0乃至t=59Tで再生する放射光データが立体画像用の映像データDinとなる。映像データDinは、映像ソース送出装置90から設置架台105内へ供給され、設置架台105内において、スリップリング51を介して電力と共に回転部104の2次元発光素子アレイ101へ伝送される。
【0183】
次に、ステップST3で発光素子201〜212は映像データDinに基づいて発光する。この例で、2次元発光素子アレイ101には円弧状の発光面が設けられているので、発光面から出射した光がスリット102の方向に集光する(図16参照)。発光素子201〜212から出力された光が回転部104のスリット102付近に集光する。
【0184】
これに並行して、ステップST4で2次元発光素子アレイ101が取り付けられた回転部104を所定の速度で回転する。このとき、設置架台105の内部のモータ52が、ターンテーブル42を所定の回転(変調)速度で回転する。ターンテーブル42が回転することで、回転部104が回転する。
【0185】
モータ52に取り付けられたエンコーダ58は、モータ52の回転速度を検出して回転部104の回転速度を示す速度検出信号S58を制御部55に出力する。制御部55は速度検出信号S58に基づいてモータ52を所定の回転(変調)速度で回転するように制御する。これにより、回転部104を所定の変調速度で回転できるようになる。全周囲立体画像表示装置10では回転部104の回転軸103を基準にして結像した立体画像の光が、回転部104の内部からスリット102を介して外部へ漏れ出る。この外部へ漏れ出た光は、複数の視点に対して立体画像を提供するようになる。
【0186】
なお、ステップST5で制御部55は立体画像表示処理を終了するか否かを判別する。例えば、制御部55は、スイッチ部60からスイッチ信号S60に基づく電源オフ情報を検出して立体画像表示処理を終了する。スイッチ部60からの電源オフ情報が検出されない場合は、ステップST2及びST4に戻って立体画像表示処理を継続する。
【0187】
このように第1の実施の形態としての全周囲立体画像表示装置10によれば、発光素子201〜212から出力される光を回転部104のスリット102付近に集光している。この集光によって、回転部104の回転軸103を基準にして結像する立体画像の光が当該回転部104の内部からスリット102を介して外部へ漏れ出るようになる。
【0188】
従って、観察者の視点を基準にして2次元発光素子アレイ101の発光面を回転走査できるので、回転軸103を基準にして結像した立体画像を回転部104の外部で視認できるようになる。これにより、従来方式の立体画像表示機構に比べて簡単な構造で、しかも、電力効率の良い全周囲から視聴可能な全周囲立体画像表示装置10を容易に実現できるようになった。また、従来の平面ディスプレイではできなかった様々な3Dポリゴンを表示できるので、立体キャラクタ商標サービースを提供できるようになった。
【0189】
上述の実施の形態では、スリップリング51を介して電力と共に映像データDinを2次元発光素子アレイ101に伝送する場合について説明したが、これに限られることはない。無線通信システムを利用して設置架台105から回転部104へ電力と共に映像データDinを伝送してもよい。
【0190】
例えば、回転部104内に受電用のコイルや、画像信号用の無線受信装置を各々設ける。設置架台105内には、送電用のコイルや、画像信号用の無線送信装置を各々設ける。無線受信装置及び無線送信装置には、アンテナを各々有したものを使用する。受電用のコイルには給電線を接続し、この給電線を2次元発光素子アレイ101に接続する。無線受信装置には信号線を接続し、この信号線を2次元発光素子アレイ101に接続する。
【0191】
設置架台105内において、送電用のコイルは、回転部104の受電用のコイルと鎖交する位置に配設するようにする。送電用のコイルには、給電用のケーブルを接続し、外部から電力を供給する。同様にして、無線送信装置は、回転部104の無線受信装置と通信可能な位置に配設する。無線送信装置には、画像信号用のケーブルを接続し、映像ソース送出装置90等から映像データDinを供給する。
【0192】
これにより、外部から供給される電力を電磁誘導により取り込んで、2次元発光素子アレイ101へ伝送できるようになる。また、映像ソース送出装置90から供給される映像データDinを電磁波を介して2次元発光素子アレイ101へ伝送できるようになる。なお、無線受信装置のアンテナと受電用のコイルとを兼用し、無線送信装置のアンテナと送電用のコイルとを兼用してもよい。この場合、電磁誘導に供される電圧(電流)の周波数を電磁波の搬送周波数とするとよい。もちろん、回転部104内にバッテリーや映像データ等を内蔵してもよい。映像データDinは記憶装置に書き込んで、回転部104の内部で2次元発光素子アレイ101に読み出すようにすればよい。
【0193】
なお、発光ユニットU1が1個の場合は、偏芯を原因として自ら振動する現象が考えられるので、バランサを設けて、回転軸103と重心とを一致させるとよい。バランサは、2次元発光素子アレイ101とほぼ同じ重さで、その配置位置から180°だけずらした位置に配設するとよい。もちろん、バランサは1個に限られることはなく、120°置きに1個づつ配置してもよい。このように構成すると、回転部104を円滑に回転できるようになる。
【0194】
また、全周囲立体画像表示装置10を回転動作させている最中に、例えば、バランサが外れて、偏芯を原因として自ら振動し始めた場合や、外部から大きな振動等が加わった場合が想定される。このような場合、回転軸103と重心とが一致しない状態で、回転部104が回転することで、回転部104や2次元発光素子アレイ101を所定の形状に維持できない事態(破損)が懸念される。
【0195】
そこで、加速度センサや振動センサ等の振動検出部59を設置架台105に取り付け、制御部55が、定められた値以上の振動を検出した場合に、速やかに回転動作を停止するように回転部104を制御すればよい。
【0196】
図18に示した全周囲立体画像表示装置10によれば、制御部55及び振動検出部59を備える。振動検出部59は、設置架台105において、モータ52により回転される回転部104の振動を検出して振動検出信号S59を出力する。制御部55は、振動検出部59から得られた振動検出信号S59に基づく振動検出値と、定められた所定の振動基準値とを比較し、その比較の結果に応じてモータ52を制御する。具体的には、振動基準値以上の振動検出値が検出された場合は、回転部104の回転動作を停止するようにモータ52を制御する。
【0197】
このように加速度センサ等の振動検出部59で設置架台105の振動を検出し、振動量が一定値を超えたら、速やかに回転動作を停止できるようになる。従って、回転部104の回転暴走を未然に防止し、安全を確保できるようになる。これにより、全周囲立体画像表示装置10の破壊を防止できるようになる。
【0198】
[立体画像の視聴例]
図21A及びBは、全周囲立体画像表示装置10における立体画像の視聴例を示す説明図である。図21Aに示す立体画像の視聴例によれば、全周囲立体画像表示装置10により立体表示されるキャラクタ(男子の人形)を4名の視聴者H1〜H4により視聴する場合である。この場合は、キャラクタ全周囲の立体画像が表示されるので、視聴者H1(男性)は、キャラクタの左面側の立体画像を視聴できるようになる。視聴者H2(男性)は、キャラクタの前面側の立体画像を視聴できるようになる。視聴者H3(男性)は、キャラクタの右面側の立体画像を視聴できるようになる。視聴者H4(女性)は、キャラクタの背面側の立体画像を視聴できるようになる。
【0199】
図21Bに示す立体画像の視聴例によれば、視聴者が居ると判断された領域にのみ映像を出力し、視聴者がいないと判断された領域には、立体映像を出力しない立体画像表示方式を採っている。例えば、図中、全周囲立体画像表示装置10の周囲に4名の視聴者H1〜H4が居る。3名の視聴者H1〜H3は、目をそらさずに、じっと全周囲立体画像表示装置10を見ているが、視聴者H4は、全周囲立体画像表示装置10を見ることなく、そっぽを向いているような場合である。この場合、図18に示した全周囲立体画像表示装置10によれば、視聴者検出センサ81が、3名の視聴者H1〜H3の瞳孔を検出して視聴者検出信号S81を発生する。
【0200】
全周囲立体画像表示装置10は、視聴者検出センサ81から出力される視聴者検出信号S81に基づいて3名の視聴者H1〜H3の視聴領域を映像ソース送出装置90に逐次伝達する。映像ソース送出装置90は3名の視聴者H1〜H3の視聴領域に対応する領域映像のみを全周囲立体画像表示装置10に送出する。この結果、3名の視聴者H1〜H3が存在する視聴領域のみ表示情報を再生できるようになる。
【0201】
この例では目をそらさずに、じっと全周囲立体画像表示装置10を見ている視聴者H1は、キャラクタの左面側の立体画像を視聴できるようになる。同様にして、視聴者H2は、キャラクタの前面側の立体画像を視聴できるようになる。同様にして、視聴者H3は、キャラクタの右面側の立体画像を視聴できるようになる。しかし、そっぽを向いている視聴者H4の視聴領域には、立体画像が表示されない。
【0202】
図中に示す破線部分は、視聴者H1〜H3の顔に表示光が当たっている状態である。視聴者H4に表示光が当たっていないのは、視聴者H4の目線が全周囲立体画像表示装置10に向いていないため視聴者として判断されなかったためである。視聴者H1と視聴者H2との間の視聴領域に対応する領域映像も出力されないので、この間の視聴領域においても、立体画像が表示されない。これにより、ユニークな立体画像表示方法を提供できるようになる。
【0203】
<第2の実施の形態>
[全周囲立体画像表示装置10における表示画像の歪みの説明]
上記第1の実施の形態で説明したように、全周囲立体画像表示装置10では、例えば60箇所の視点p=300〜359のそれぞれに対して、2次元発光素子アレイ101による発光点の軌跡、すなわち観測される画像表示面が例えば平面となるような画像表示がなされる。ここで、2次元発光素子アレイ101において、複数の発光素子が曲面形状の面内において等間隔で配置され、かつ、複数の発光素子がすべて同一のタイミングで画像更新(発光制御)がなされるものとする。この場合、任意の視点pから観測される表示面120は、例えば図22(A)のようになる。図中の黒い点は、画素(発光点の軌跡)に相当する。この場合、観測される表示面120は、中央部の画素間幅w0に比べて、横方向の左右端部の画素間幅w1が縮んで見える問題がある。しかしながら理想的には、図22(B)のように中央部と左右端部で画素間幅wが同一となる(発光点が一定間隔となる)ことが好ましい。
【0204】
図23は、全周囲立体画像表示装置10における任意の視点pから観測される画像の歪みの状態を模式的に示している。図23に示した矢印の向きおよび矢印の長さは、画像内の各画素点が、理想的な画像表示状態(図22(B)参照)での各画素点からどのようにずれて表示されるかを模式的に示している。図23に示したように、全周囲立体画像表示装置10では、理想的な画像表示状態に対して主に水平方向(横方向)に歪みが生じ、垂直方向(縦方向)には歪みは少ない。この画像の歪みは、全周囲立体画像表示装置10における2次元発光素子アレイ101の曲面形状やスリット102の位置などにより幾何学的に決定される。
【0205】
本実施の形態は、全周囲立体画像表示装置10において、図22(B)のような理想的な画像表示を実現する手法を提供するものであるが、まず、図24を参照して、全周囲立体画像表示装置10で発生する画像の歪み量の算出例を説明する。
【0206】
図24に付した符号の意味は、基本的には上述の図3と同様である。図24において、視点pからスリット102を介して実際に観測される発光点(図22(B)に示した画素に相当する)を、y=−L2上の点(x2,−L2)とする。発光点(x2,−L2)が観測できるスリット102の通過点は(x1,y1)となる。視点pの座標は(0,L1)、回転部104の回転中心は(0,0)、視点pから観測される画像は、y=−L2の仮想平面となる。発光点(x2,−L2)のx座標x2を求めると、以下の式(11)のようになる。
ただし、
x1=−rsinθ,y1=−rcosθ
【0207】
【数1】

【0208】
q番目の発光タイミングに対応するθを、
θq=q×θstep
とし、そのタイミングでの発光位置のx座標x2をx2qとした場合、以下の式(12)のようになる。
【0209】
【数2】

【0210】
qが、s,s−1,・・・,1,0,−1,・・・,−s+1,−sの(2s+1)個の値をとったときのx2qの値の列が、実際の画素の輝点のx座標の列になる(2s+1が横方向の画素数)。
【0211】
ここで、(2s+1)個の画素を等間隔に並べた場合のx座標の列をxbqとすると、
xbq=(x2s/s)×q
となる。この等間隔に並べた場合のx座標の列xbqと上記式(12)で表される座標列の各々の要素の差分を取って、画素幅で割った次の式(13)のデータ列が歪み量を表すデータ(歪量テーブル)となる。
(x2q−xbq)×(s/x2s) ……式(13)
【0212】
画像の歪みを補正するためには、上述の歪量テーブルとは逆方向に画像を補正してやれば良い。このような画像の歪みを補正するための補正用データは、上述の歪量テーブルの各々の要素に−1を掛けた、次の式(14)のデータ列となる。
(xbq−x2q)×(s/x2s) ……式(14)
【0213】
[画像処理装置の構成例]
上述したように全周囲立体画像表示装置10の各視点pで観測される画像の歪みを補正するためには、あらかじめ、全周囲立体画像表示装置10に供給する画像を補正しておけば良い。図25は、そのような画像の歪み補正を行うための画像処理装置の構成例を示している。この画像処理装置は、例えば、全周囲立体画像表示装置10に立体画像表示用の映像データDinを入力する映像ソース送出装置90(図18)内に設けられる。本開示の表示システムは、例えば図25の回路を内蔵した映像ソース送出装置90と全周囲立体画像表示装置10とで構成することができる。なお、本実施の形態では、立体画像表示用の映像データDinをCG(コンピュータグラフィックス)によって生成するものであっても良いし、実際の被写体(物体)をカメラで撮影することによって得られた撮影データであっても良い。
【0214】
この画像処理装置は、立体画像データ生成部91と、補正前画像バッファ92と、画像補正部93と、補正後画像バッファ94と、補正用データ記憶部111とを備えている。
【0215】
立体画像データ生成部91は、全周囲立体画像表示装置10で立体画像表示するための各視点p用の画像データを生成するものである。各視点pごとの画像データは、互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する2次元画像データとなっている。立体画像データ生成部91で生成する画像データは、CG画像であっても良いし。実際の撮影画像であっても良い。補正前画像バッファ92は、立体画像データ生成部91から画像補正部93へと供給される補正前の画像データを一時的に記憶するものである。補正後画像バッファ94は、画像補正部93から出力された各視点pに対応した補正後の画像データを一時的に記憶するものである。
【0216】
補正用データ記憶部111は、立体画像データ生成部91で生成された画像データを全周囲立体画像表示装置10に表示した場合に生ずる、表示画像の歪みを補正するための補正用データを記憶するものである。補正用データは、上述した式(14)で表されるようなデータであり、全周囲立体画像表示装置10において各視点位置で観測される表示画像の歪みを補正するためのデータである。
【0217】
画像補正部93は、補正用データ記憶部111に記憶された補正用データに基づいて、全周囲立体画像表示装置10において各視点位置で観測される、上述の表示画像の歪みが補正されるように、画像データを補正する処理を行うようになっている。上述したように、全周囲立体画像表示装置10で発生する画像の歪みは主として第1の方向(横方向)のみであるので、画像補正部93では、画像の補正を第1の方向(横方向)にのみ行うようになっている。
【0218】
[補正処理の具体例]
画像補正部93では、上述の表示画像の歪みを補正するための処理を行う。画像補正部93では、例えば、第1の方向のみの画素情報を参照するキュービック補間によって画像補正を行う。この際、画像データの第1の方向(横方向)の座標成分(x成分)の値に対応した歪み補正量を、補正用データ記憶部111に記憶された補正用データから取得する。そして、取得した歪み補正量の分だけ、画像データの横方向の座標成分(x成分)の値をずらす処理を行う。
【0219】
ここで、図26を参照して、従来の歪み補正で用いられる画素補間の例として、バイキュービック補間について説明する。従来の歪み補正処理では、補正画像を作成するにあたり、画素ごとに歪み方向と逆側にずらした位置から画素値を取得して補正画像を作成する。その際、画素値の取得位置がサブピクセル座標になるため、バイキュービックなどで補間して画素値を得ていた。バイキュービック補間では、図26に示したように、上下2画素、左右2画素の、合計16画素を補間演算に利用することが多い。図26では、4タップのバイキュービック補間の例を示している。図26において、Dst(x,y)は補間画素(座標(x,y))の画素値(輝度値)を表している。Src(i,j)は、補間画素周辺の画素(座標(i,j))の画素値(輝度値)を表している。[ ]は、小数部分の切り捨てを表す。画素値Dst(x,y)は、以下の式(A)で求めることができる。
【0220】
【数3】

【0221】
ここで、x1〜x4,y1〜y4は、求める位置から参照する画素までの距離を表す。
x1=1+x−[x]
x2=x−[x]
x3=[x]+1−x
x4=[x]+2−x
y1=1+y−[y]
y2=y−[y]
y3=[y]+1−y
y4=[y]+2−y
【0222】
関数h(t)はsinc関数(sinc(t)=sin(πt)/πt)をテイラー展開により三次の項まで近似した以下の関数で表される。aの値は−1が用いられることが多い。
【0223】
【数4】

【0224】
図26に対して、図27は画像補正部93での補正処理で用いられる、一方向のみのキュービック補間の例を表している。図26の例のように、補間画素(座標(x,y))の画素値Dst(x,y)を、一方向に存在する4つの周辺画素(座標(−1,0),(0,0),(1,0),(2,0))の画素値(輝度値)Src(i,j)から求める。画素値Dst(x,y)は、以下の式(B)で求めることができる。
【0225】
【数5】

【0226】
ここで、x1〜x4は、求める位置から参照する画素までの距離を表す。関数h(t)は、上述のsinc関数を用いる。
x1=1+x−[x]
x2=x−[x]
x3=[x]+1−x
x4=[x]+2−x
【0227】
なお、以上の説明では、バイキュービック補間の代わりに、水平方向のみのキュービック補間を用いる例を示したが、バイキュービック以外の補間演算方法に対しても同様に、水平方向のみの補間演算へと変換とすることで適用可能である。また、タップ数についても4タップの場合を例に挙げたが、他のタップ数でも適用可能である。
【0228】
[効果]
この画像処理装置によれば、第1の方向にのみ画像補正を行うようにしたので、例えば2次元画像の各ピクセルに対してX方向およびY方向の2つの方向の画素情報を用いて補正を行う場合に比べて、補正処理に要する時間や計算量、および補正処理後の画像のぼけを従来よりも軽減することができる。例えば、バイキュービック補間(図26)をX方向のみのキュービック補間(図27)に置き換えた場合には、計算量を1/5に減らすことができる。
【0229】
<その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、図1および図2に示した全周囲立体画像表示装置10において、回転部104の外側に、回転部104を保護等するための固定部材が設けられていても良い。この場合、例えばスリット102が設けられた外装体41の外周を間隔を空けて覆うように、回転しない固定部材を設けると良い。固定部材は、例えば全体が筒状の透明部材で構成することができる。また固定部材として、網状に加工された筒状の部材を用いるようにしても良い。例えば、パンチングメタル等の網状に加工した金属等による部材を用いるようにしても良い。
【0230】
また、上記第2の実施の形態で説明した画像の歪みを補正する方法は、全周囲立体画像表示装置10に限らず、他の方式の立体画像表示装置に表示する画像データに対しても適用可能である。また、立体画像表示装置に限らず、2次元表示装置に表示する画像データに対しても適用可能である。本技術による画像の歪みを補正する方法は、第1および第2の方向に画素情報を有する画像において、1つの方向にのみ画像の歪みがあるような場合に広く適用可能である。
【0231】
また、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて前記第1の方向にのみ画像補正を行う補正部
を備えた画像処理装置。
(2)
前記補正用データは、表示装置において生ずる表示画像の歪みを補正するためのデータである
上記(1)に記載の画像処理装置。
(3)
前記補正用データは、複数の視点に対応した画像を表示する表示装置において各視点位置で観測される表示画像の歪みを補正するためのデータであり、
前記補正部は、前記表示装置において前記各視点位置で観測される表示画像の歪みが補正されるように、前記表示装置用の画像データに対して画像補正を行う
上記(1)または(2)に記載の画像処理装置。
(4)
前記表示装置は、
内部に回転軸を有し、前記回転軸を回転中心として回転する円筒状の回転部と、
前記回転部の内部に取り付けられ、複数の発光素子が配設されることにより形成された発光面を有する発光素子アレイと、
前記回転部の周面に設けられ、前記発光面からの光を前記回転部の外部に放射するスリットと、
前記スリットを介して放射された光によって前記回転部の周囲において画像が表示されるように、入力された画像データに基づいて、前記複数の発光素子の発光制御を行う表示制御部と
を有する上記(3)に記載の画像処理装置置。
(5)
前記補正部は、前記第1の方向のみの画素情報を参照するキュービック補間によって画像補正を行う
上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【符号の説明】
【0232】
10…全周囲立体画像表示装置、11…接続基板、12…シリアルパラレル変換部、15…表示制御部、31…プリント配線基板、32,33…位置決め用の孔部、34…コネクタ、35…IC、41…外装体、42…ターンテーブル、51…スリップリング、52…モータ、53,54…ハーネス、55…制御部、56…I/F基板、57…電源部、58…エンコーダ、59…振動検出部、60…スイッチ部、81…視聴者検出センサ、82…アーム部材、83…位置決めピン、90…映像ソース送出装置、91…立体画像データ生成部、92…補正前画像バッファ、93…画像補正部、94…補正後画像バッファ、101…2次元発光素子アレイ、102…スリット、103…回転軸、104…回転部、105…設置架台、106…吸気口、107…ファン部品、108…センサ用の孔部、109…レンズ部材、111…補正用データ記憶部、120…表示面、201〜212…発光素子、300〜359…視点、#1〜#n…1次元発光素子基板、U1…発光ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて前記第1の方向にのみ画像補正を行う補正部
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記補正用データは、表示装置において生ずる表示画像の歪みを補正するためのデータである
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正用データは、複数の視点に対応した画像を表示する表示装置において各視点位置で観測される表示画像の歪みを補正するためのデータであり、
前記補正部は、前記表示装置において前記各視点位置で観測される表示画像の歪みが補正されるように、前記表示装置用の画像データに対して画像補正を行う
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示装置は、
内部に回転軸を有し、前記回転軸を回転中心として回転する円筒状の回転部と、
前記回転部の内部に取り付けられ、複数の発光素子が配設されることにより形成された発光面を有する発光素子アレイと、
前記回転部の周面に設けられ、前記発光面からの光を前記回転部の外部に放射するスリットと、
前記スリットを介して放射された光によって前記回転部の周囲において画像が表示されるように、入力された画像データに基づいて、前記複数の発光素子の発光制御を行う表示制御部と
を有する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記第1の方向のみの画素情報を参照するキュービック補間によって画像補正を行う
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて前記第1の方向にのみ画像補正を行う
画像処理方法。
【請求項7】
画像処理装置と、
前記画像処理装置から供給された画像データに基づいて画像表示を行う表示装置と
を備え、
前記画像処理装置は、
互いに方向の異なる第1および第2の方向に画素情報を有する画像に対して、補正用データに基づいて前記第1の方向にのみ画像補正を行う補正部
を有する表示システム。
【請求項8】
前記表示装置は、
内部に回転軸を有し、前記回転軸を回転中心として回転する円筒状の回転部と、
前記回転部の内部に取り付けられ、複数の発光素子が配設されることにより形成された発光面を有する発光素子アレイと、
前記回転部の周面に設けられ、前記発光面からの光を前記回転部の外部に放射するスリットと、
前記スリットを介して放射された光によって前記回転部の周囲において画像が表示されるように、入力された画像データに基づいて、前記複数の発光素子の発光制御を行う表示制御部と
を有する請求項7に記載の表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−175369(P2012−175369A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34957(P2011−34957)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】