説明

画像処理装置

【課題】形成された画像から、不正な手段により形成された画像であるか否かを判別することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】デジタル複合機は、所定の像が埋め込まれた地紋を含む画像を読取る読取り手段(S12)と、正規のユーザであるか否かを判断する判断手段(S13、S14)と、判断手段が正規のユーザであると判断すれば、読取り手段により読取った画像から所定の像を形成しないように画像を処理する画像処理手段(S15)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置に関し、特に、所定の像が埋め込まれた地紋を含む画像を形成する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置を例えば複写機として使用する際には、原稿の画像を読取り、この読取った画像を基に画像形成部によって静電潜像を形成し、トナー等の現像剤によって可視化した後、この可視像を用紙に転写して出力する。
【0003】
ここで、オリジナルの原稿の画像と複写した画像とを判別する技術として、地紋印刷技術がある。地紋印刷技術の一例について簡単に説明すると、まず、オリジナルの原稿の画像の中に、例えば、隠し文字等の所定の像を形成し、埋め込んでおく。この場合、隠し文字については、ドットサイズの小さい小ドットで形成し、オリジナルの原稿の画像については、ドットサイズの大きい大ドットで形成する。このような原稿を複写すると、オリジナルの原稿の画像を読み込む際に、小ドットで形成された部分については読み込まれず、大ドットで形成された部分のみが読み込まれる。そうすると、小ドットで形成される隠し文字が複写した画像の中に浮かび上がる。このような地紋印刷技術により浮かび上がった隠し文字の有無から、オリジナルの原稿の画像と複写した画像とを判別可能とし、不正な複写や出力等を抑制することにしている。
【0004】
なお、このような地紋印刷技術を含む技術は、例えば、特開2006−166139号公報(特許文献1)に開示されている。
【特許文献1】特開2006−166139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、不正な出力をしない正規のユーザについては、隠し文字が埋め込まれた地紋を含む画像を複写等する際に、隠し文字を浮かび上がらせず、オリジナルの原稿と同じように複写したい場合もある。しかし、正規のユーザであるか否かに関わらず、オリジナルの原稿から複写する際に、隠し文字が浮かび上がった複写しかできないのであれば、形成された画像から、不正な手段により形成された画像であるか否かを判別することができない。すなわち、形成された画像から、正規のユーザによって複写された画像と正規のユーザでない者によって複写された画像とを判別することができない。
【0006】
この発明の目的は、形成された画像から、不正な手段により形成された画像であるか否かを判別することができる画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る画像処理装置は、所定の像が埋め込まれた地紋を含む画像を読取る読取り手段と、正規のユーザであるか否かを判断する判断手段と、判断手段が正規のユーザであると判断すれば、読取り手段により読取った画像から所定の像を形成しないように画像を処理する画像処理手段とを備える。
【0008】
好ましくは、画像処理手段は、判断手段が正規のユーザでないと判断すれば、読取り手段により読取った画像から所定の像を形成するように画像を処理する。
【0009】
さらに好ましくは、画像処理手段は、画像において、連続して検出される白値が所定の値以上であれば、画像に所定の像の画像データを上書きして画像を処理する。
【0010】
さらに好ましくは、画像処理手段は、画像において、連続して検出される白値が所定の値よりも小さければ、画像に所定の像データを上書きせずに画像を処理する。
【0011】
さらに好ましくは、地紋を含む画像は、第一のドットで形成されており、所定の像は、第一のドットよりもドットサイズの小さい第二のドットで形成されており、画像処理手段は、第二のドットで上書きして画像を処理する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、正規のユーザであると判断された場合には、所定の像が埋め込まれた地紋を含む画像を読取って画像を形成するに際し、所定の像を形成しないように画像を処理して、画像を形成することができる。そうすると、形成された画像に含まれる所定の像の有無により、正規のユーザによって形成された画像であるか否かを判別することができる。したがって、形成された画像から、不正な手段により形成された画像であるか否かを判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施形態に係る画像処理装置をデジタル複合機10に適用した場合のデジタル複合機10の構成を示すブロック図である。図1を参照して、デジタル複合機10は、デジタル複合機10全体を制御する制御部11と、画像データ等の書き込みや読み出しを行うためのDRAM12と、デジタル複合機10の有する情報を表示する表示画面を含み、デジタル複合機10におけるユーザとのインターフェースとなる操作部13と、原稿を自動的に所定の原稿読取り位置へ搬送する原稿送り装置14と、原稿送り装置14によって搬送されてきた原稿の画像を所定の読取り位置でスキャナで読取る画像読取り部15と、画像読取り部15で読取られた原稿等からその画像を形成する画像形成部16と、画像データ等を格納するハードディスク17と、公衆回線20に接続されるFAX通信部18と、ネットワーク21と接続するためのネットワークIF(インターフェース)部19とを備える。
【0014】
制御部11は、画像読取り部15から与えられる原稿データをDRAM12に圧縮符号化して書き込み、DRAM12に書き込んだデータを読み出し、伸張符号化して画像形成部16により出力する。
【0015】
デジタル複合機10は、画像読取り部15により読取られた原稿を用いて、DRAM12を介して画像形成部16において画像を形成することにより、複写機として作動する。また、デジタル複合機10は、ネットワークIF部19を通じて、ネットワーク21に接続されたパソコン22から送信された画像データを用いて、DRAM12を介して画像形成部16において画像を形成することにより、プリンターとして作動する。さらに、デジタル複合機10は、FAX通信部18を通じて、公衆回線20から送信された画像データを用いて、DRAM12を介して画像形成部16において画像を形成することにより、また、画像読取り部15により読取られた原稿の画像データを、FAX通信部18を通じて公衆回線20に画像データを送信することにより、ファクシミリ装置として作動する。
【0016】
なお、図1において太線の矢印は画像データの流れを示しており、細線の矢印は制御信号または制御データの流れを示している。
【0017】
また、デジタル複合機10は、正規のユーザであるか否かを判断するパスワードを入力させる入力手段を備える。入力されたパスワードにより、正規のユーザであるか否かを判断することができる。入力手段は、図2に示すように、操作部13の表示画面24において、入力可能なパスワード入力部25を備える。こうすることにより、より容易に、かつ、簡易な構成で、複写等の画像形成を行う者が正規のユーザであるか否かを判断することができる。
【0018】
図3は、所定の像が埋め込まれた地紋を含む画像を有する原稿を複写する場合の制御部11の動作を示すフローチャートである。図1〜図3を参照して、所定の像が埋め込まれた地紋を含む画像を有する原稿を複写する場合について説明する。なお、ここでは、所定の像を隠し文字とする。また、オリジナルの原稿の画像については、ドットサイズの大きい第一のドットで形成されており、隠し文字については、第一のドットよりもドットサイズの小さい第二のドットで形成されているものとする。さらに、画像読取り部15は、第一のドットは読取ることが可能であるが、第二のドットを読取ることができないものとする。
【0019】
まず、デジタル複合機10に、隠し文字が埋め込まれた地紋を含む画像を有する原稿がセットされる(図3において、ステップS11、以下、ステップを省略する)。次に、セットされた原稿の画像、すなわち、隠し文字が埋め込まれた地紋を含む画像を画像読取り部15によって読取る(S12)。ここで、制御部11および画像読取り部15は、読取り手段として作動する。その後、パスワードの入力を検出すると(S13)、入力されたパスワードが正規のユーザのものであるか否かを判断する(S14)。具体的には、例えば、予め正規のユーザのパスワードとして登録されているパスワードと入力されたパスワードとを照合して、正規のユーザのパスワードであるか否かを判断する。ここで、制御部11は、判断手段として作動する。
【0020】
次に、入力されたパスワードが正規のユーザのものであると判断した場合(S14において、YES)、読取った画像から隠し文字を形成しないように画像を処理する(S15)。ここで、制御部11および画像形成部16は、画像処理手段として作動する。そして、画像を形成し(S17)、形成された画像を出力する(S18)。
【0021】
ここで、S15に示すステップ、すなわち、隠し文字が埋め込まれた地紋を含む画像から隠し文字を形成しないように画像を処理する方法について説明する。図4は、この場合の制御部11の動作を示すフローチャートである。図4を参照して、まず、画像読取り部15によって読取った画像をDRAM12上に展開し、全画素数をカウントする(S21)。次に、読取った画像において、連続して検出された白値をカウントする(S22)。そして、連続して検出された白値のカウント数が所定の値以上であるか否かを判断する(S23)。こうすることにより、画像読取り部15によって読取られなかった白値の部分を識別することができる。
【0022】
白値のカウント値が所定の値以上であれば(S23において、YES)、白値の部分を上書きして画像を処理する(S24)。この場合、上書きはドットサイズの小さい第二のドットで行う。一方、白値のカウント値が所定の値よりも小さければ(S23において、NO)、そのまま白値として残し、上書きしない(S25)。こうすることにより、画像読取り部15によって読取られず、隠し文字として浮き出る部分に相当する部分を第二のドットで上書きすることができる。このようにして、隠し文字を形成しないように画像を処理する。
【0023】
なお、所定の値については、例えば、地紋に埋め込まれた隠し文字のタイプ、第一および第二のドットの大きさ、第一のドットと第二のドットの存在比率、画像読取り部15によって読取り可能なドットの大きさ等によって決められる。また、このような所定の値は、隠し文字を埋め込んで地紋を含む画像を形成した者等により、容易に規定することができる。
【0024】
一方、入力されたパスワードが正規のユーザのものでないと判断した場合(S14において、NO)、隠し文字を形成するように画像を処理する(S16)。そして、画像を形成し(S17)、形成した画像を出力する(S18)。この場合、上記した図4に示すステップを踏まず、通常通り、すなわち、画像読取り部15によって読取った画像を基に画像を処理し、画像を形成することにより、隠し文字を浮かび上がるようにして画像を形成することができる。
【0025】
このように構成することにより、正規のユーザであると判断された場合には、隠し文字が埋め込まれた地紋を含む画像を読取って画像を形成するに際し、隠し文字を形成しないように画像を処理して、画像を形成することができる。そうすると、形成された画像に含まれる隠し文字の有無により、正規のユーザによって形成された画像であるか否かを判別することができる。したがって、形成された画像から、不正な手段により形成された画像であるか否かを判断することができる。
【0026】
また、このようにして隠し文字を形成しないように画像を処理することにより、隠し文字が埋め込まれた地紋を含むオリジナルの原稿の画像と同じ画像を形成することができる。すなわち、上書きされた部分が第二のドットで形成されているため、新たにこの原稿を用いて正規のユーザが複写等する際に、隠し文字を形成しないようにして画像を処理して、画像を形成することができる。
【0027】
なお、上記したパスワードが正規のユーザによるものでない場合には、即時に「パスワードが誤っています」等の表示画面を操作部13に表示すると共に、画像形成を中止することにしてもよい。また、正規のユーザであるか否かを入力されたパスワードによって判断することにしたが、これに限らず、他の方法、例えば、IDカードや生体認証により正規のユーザであるか否かを判断することにしてもよい。
【0028】
また、上記の実施の形態においては、隠し文字を形成しないように画像を処理するに際し、図4に示すステップで画像を処理することにしたが、これに限らず、他の方法、例えば、予め登録された隠し文字がDRAM12上に形成された場合には、正規のユーザであれば、その隠し文字に対応する部分を第二のドットで上書きして、画像を処理することにしてもよい。また、上書きについては、種々のドットサイズのものが適用される。
【0029】
なお、上記の実施の形態においては、地紋に埋め込まれる所定の像として隠し文字の像とすることにしたが、これに限らず、特殊な模様の像であってもよいし、オリジナルの原稿の画像を破壊するような像であってもよい。
【0030】
なお、上記の実施の形態においては、デジタル複合機10によって複写する場合について説明したが、これに限らず、デジタル複合機10によるプリンター機能、FAX機能、スキャナ機能等を使用する場合についても適用される。
【0031】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態に係るデジタル複合機の全体構成を示すブロック図である。
【図2】パスワードを入力させる表示画面を表示した操作部の一例を示す図である。
【図3】地紋を含む画像から画像を形成する場合の制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】隠し文字を形成しないように画像を処理する場合の制御部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
10 デジタル複合機、11 制御部、12 DRAM、13 操作部、14 原稿送り装置、15 画像読取り部、16 画像形成部、17 ハードディスク、18 FAX通信部、19 ネットワークIF部、20 公衆回線、21 ネットワーク、22 パソコン、24 表示画面、25 パスワード入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の像が埋め込まれた地紋を含む画像を読取る読取り手段と、
正規のユーザであるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が前記正規のユーザであると判断すれば、前記読取り手段により読取った前記画像から前記所定の像を形成しないように前記画像を処理する画像処理手段とを備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記判断手段が前記正規のユーザでないと判断すれば、前記読取り手段により読取った前記画像から前記所定の像を形成するように前記画像を処理する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記画像において、連続して検出される白値が所定の値以上であれば、前記画像に前記所定の像の画像データを上書きして前記画像を処理する、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記画像において、連続して検出される前記白値が前記所定の値よりも小さければ、前記画像に前記所定の像データを上書きせずに前記画像を処理する、請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記地紋を含む画像は、第一のドットで形成されており、
前記所定の像は、前記第一のドットよりもドットサイズの小さい第二のドットで形成されており、
前記画像処理手段は、前記第二のドットで上書きして前記画像を処理する、請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−154141(P2008−154141A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342294(P2006−342294)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】