説明

画像処理装置

【課題】 メモリに記憶されているデータが確実に消去されたか否かを確認することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 プリンタは、各種データを記憶するハードディスク、第1のフラッシュメモリ、及び第2のフラッシュメモリに記憶されているデータの消去を行うメモリ消去部202と、このメモリ消去部202によるデータの消去処理の終了後、少なくともメモリ消去部202による消去処理の方法及び消去結果を含む消去処理に関する情報を消去レポートとして出力する機器制御部201とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力されたデータに対して所定の画像処理を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に対して画像を形成する画像形成装置においては、入力された画像データや当該画像形成装置が処理可能な形式に画像データを変換した中間データ等の各種データをメモリに記憶している。また、画像形成装置においては、メモリに記憶された機密性の高い情報からなるデータ等の復元を困難なものとするために、これらデータをメモリから消去する機能を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
具体的には、この特許文献1には、所定情報を格納領域に格納する格納手段と、所定情報が格納された格納領域上の位置を特定する管理情報を記憶する管理情報記憶手段と、記憶された管理情報によって特定される格納領域上の位置に格納された所定情報を読み出す読み出し手段と、格納領域に格納された所定情報を消去する消去手段とを備える装置が開示されている。この装置においては、所定情報の消去が実行されると、当該装置の表示部に消去終了の旨を表示させることにより、ユーザに消去終了を確認させる構成となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−223061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1をはじめとする従来の画像処理装置においては、メモリに記憶されているデータに対して消去を行った場合であっても、そのデータが確実に消去されたか否かを確認するための手段がなかった。そのため、画像処理装置においては、機密性の観点から、メモリに記憶されているデータが確実に消去されたか否かを確認するための改善の要求が高まりつつある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、メモリに記憶されているデータが確実に消去されたか否かを確認することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成する本発明にかかる画像処理装置は、各種データを記憶するメモリと、前記メモリに記憶されているデータの消去を行うメモリ消去部と、前記メモリ消去部によるデータの消去処理の終了後、少なくとも前記メモリ消去部による消去処理の方法及び消去結果を含む消去処理に関する情報を出力する出力制御部とを備えることを特徴としている。
【0008】
このような本発明にかかる画像処理装置においては、少なくともメモリ消去部による消去処理の方法及び消去結果を含む消去処理に関する情報を出力する。そのため、本発明にかかる画像処理装置においては、消去処理を実行したユーザやそれ以外の第三者が、メモリに記憶されているどのデータに対してどのような消去処理が実行されたのか、又は消去処理が実行されなかったのかを、容易且つ確実に確認することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、メモリに記憶されているデータが確実に消去されたか否かを確認することができ、結果として、データの機密性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
この実施の形態は、入力された画像データに対して所定の記録媒体への印刷出力等の処理を行う画像処理装置としてのプリンタである。特に、このプリンタは、メモリに記憶されているデータを消去する機能を備えるものであり、実行した消去処理に関する情報からなる消去レポートを出力することにより、そのデータが確実に消去されたか否かを確認することができるものである。
【0012】
まず、本発明の第1の実施の形態として示すプリンタについて説明する。
【0013】
図1に示すように、プリンタ100は、各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)101と、ワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)102と、各種情報を読み出し及び/又は書き込み可能に記憶するメモリとしてのハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び第2のフラッシュメモリ105と、ユーザインターフェースとしての操作部106と、印刷処理を行う印刷部107と、外部機器との間で行う通信を制御するインターフェース部108とを備える。
【0014】
CPU101は、第2のフラッシュメモリ105等に格納されている各種プログラムを実行し、各部を統括的に制御しながら数値の計算や比較等の処理を行う。
【0015】
RAM102は、CPU101が各種処理を実行する際のワークエリアとして機能し、CPU101の制御のもとに、インターフェース部108を介して入力された画像データや印刷部107が処理可能な形式に画像データを変換した中間データ等の各種データを揮発的に記憶する。このRAM102に記憶されている各種データは、CPU101の制御のもとに読み出される。
【0016】
記憶部103は、CPU101の制御のもとに、データを不揮発的に記憶するものであり、特に印刷に使用する画像データやフォントデータ等の大容量データを記憶する。この記憶部103に記憶されている各種データは、CPU101の制御のもとに読み出される。
【0017】
第1のフラッシュメモリ104及び第2のフラッシュメモリ105は、CPU101の制御のもとに、データを不揮発的に記憶するものである。第1のフラッシュメモリ104は、ユーザの電子メールアドレスや当該プリンタ100に対する設定値等を記憶する。一方、第2のフラッシュメモリ105は、当該プリンタ100にて動作する各種プログラムを記憶する。これら第1のフラッシュメモリ104及び第2のフラッシュメモリ105に記憶されている各種データは、CPU101の制御のもとに読み出される。特に、第2のフラッシュメモリ105に記憶されているプログラムは、当該プリンタ100の起動時にRAM102にコピーされ、このコピーされたデータに基づいてCPU101が処理を実行することになる。
【0018】
操作部106は、各種情報を入力する入力部106aと、各種情報を表示する表示部106bとを有する。これら入力部106a及び表示部106bは、例えば、圧力検知によって押下された旨を検出する複数のボタンや液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)等からなるタッチパネルといったユーザインターフェースとしての図示しない所定の操作・表示デバイスからなる。ユーザは、表示部106bに表示される情報を確認しながら入力部106aを操作することにより、当該プリンタ100に対する命令を入力する。操作部106は、CPU101の制御のもとに、このようにして入力されたユーザからの命令を受け付け、その命令内容を示す制御信号をCPU101に供給したり、CPU101の制御のもとに、当該プリンタ100の状態を表示部106bに表示したりする。
【0019】
印刷部107は、CPU101の制御のもとに、例えばインターフェース部108を介して入力された画像データからビットマップイメージを生成してRAM102上に展開し、用紙等の記録媒体への印刷出力を行う。例えば、印刷部107は、電子写真方式の印刷処理を行うものである場合には、帯電させたトナーを用いた記録媒体に対する画像形成を行い、当該記録媒体上に形成されたトナー像を熱定着することによって印刷物を作製する一連の部材として構成される。また、印刷部107は、インクジェット方式の印刷処理を行うものである場合には、記録媒体に対してインク液滴を吐出することによって印刷物を作製する一連の部材として構成される。
【0020】
インターフェース部108は、例えば、いわゆるイーサネット(登録商標)等から構成される有線LAN(Local Area Network)やIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11に準拠した無線LAN等の各種通信方式に基づいて、パーソナルコンピュータ等の上位装置150に接続するためのインターフェースであり、CPU101の制御のもとに、上位装置150との間で行う通信を制御する。プリンタ100は、このインターフェース部108を介して、上位装置150から画像データを入力し、印刷処理を行うことになる。
【0021】
このようなプリンタ100は、図2に示すような構成からなるソフトウェアプログラムを第2のフラッシュメモリ105に記憶している。すなわち、プリンタ100は、機器制御部201と、メモリ消去部202と、画像変換部203と、乱数生成器204とからなるソフトウェアプログラムを第2のフラッシュメモリ105に記憶している。
【0022】
機器制御部201は、メモリ消去部202、画像変換部203、及び乱数生成器204を用いて、当該プリンタ100の動作全般の制御を行う。
【0023】
メモリ消去部202は、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104及び第2のフラッシュメモリ105に記憶されているデータの消去を行う。このとき、メモリ消去部202は、データの管理領域のみならず、データを記憶していた領域の上書きを行うことにより、データの復元の困難化を図る。なお、プリンタ100においては、このメモリ消去部202によって上書きを行う回数を増やすことにより、データの復元をより困難なものとすることができるが、消去に要する時間とデータを記憶していたメモリの消耗とが増加することになる。
【0024】
画像変換部203は、例えばページ記述言語(Page Description Language;PDL)やプレインテキストで記述された画像データを、印刷部107が処理可能な形式のデータに変換する。また、画像変換部203は、バイナリデータをヘキサダンプと称されるデータのアドレスとデータの中身を16進数表記の文字列に変換して出力する機能も有する。
【0025】
乱数生成器204は、乱数列を生成する。例えば、乱数生成器204は、擬似乱数生成アルゴリズムの1つであるメルセンヌ・ツイスタ(MT19937)を用いて乱数列を生成する。乱数生成器204が生成する乱数列の内容は、当該乱数生成器204に与えられる初期値によって一意に定められる。
【0026】
プリンタ100は、このような構成からなるソフトウェアプログラムを起動時に第2のフラッシュメモリ105からRAM102にコピーし、動作可能となる。
【0027】
さて、このようなプリンタ100において、メモリ消去部202は、以下の2種類の消去モードを有する。
【0028】
まず、メモリ消去部202は、第1の消去モードを有する。この第1の消去モードは、所定の記憶領域に対して固定値"0x00"を1回書き込むことにより、データの消去を行うものである。
【0029】
また、メモリ消去部202は、第2の消去モードを有する。この第2の消去モードは、
a)所定の記憶領域に対して固定値"0x00"を1回書き込む
b)所定の記憶領域に対して固定値"0xff"を1回書き込む
c)所定の記憶領域に対して乱数生成器204によって生成された乱数列を1回書き込む
の3つの手順で合計3回の上書きを行うことにより、データの消去を行うものである。
【0030】
さらに、メモリ消去部202は、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104及び第2のフラッシュメモリ105に記憶されているデータに対して、以下の3種類の削除方式による消去処理を実行することが可能に構成される。
【0031】
まず、メモリ消去部202は、"レベル低"の削除方式として、ハードディスク103及び第1のフラッシュメモリ104に対して、第1の消去モードによる消去を行う。換言すれば、メモリ消去部202は、この"レベル低"の削除方式を実行する場合には、第2のフラッシュメモリ105に記憶されているデータは消去しない。
【0032】
また、メモリ消去部202は、"レベル中"の削除方式として、ハードディスク103及び第1のフラッシュメモリ104に対して、第2の消去モードによる消去を行う。この場合にも、メモリ消去部202は、第2のフラッシュメモリ105に記憶されているデータは消去しない。
【0033】
さらに、メモリ消去部202は、"レベル高"の削除方式として、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び第2のフラッシュメモリ105に対して、第2の消去モードによる消去を行う。
【0034】
プリンタ100においては、このような2種類の消去モードと3種類の削除方式とに基づいて、メモリ消去部202によるデータの消去を行う。そして、プリンタ100においては、メモリ消去部202によるデータの消去処理の終了後、機器制御部201の制御のもとに、例えば図3に示すように、実行した消去処理に関する情報からなる消去レポートを出力する。
【0035】
具体的には、消去レポートには、同図に示すように、消去レポート番号と、削除方式と、プログラムバージョンと、プリンタシリアル番号と、実行日時と、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び第2のフラッシュメモリ105のそれぞれについて適用した消去モード及びその結果とが記載され、プリンタ100においては、かかる情報が記載されたものを印刷出力したり、表示出力したりする。
【0036】
消去レポート番号は、実行したデータの消去処理を特定するための番号であり、消去処理毎に固有に割り当てられた番号を示すものである。例えば、消去レポート番号としては、当該プリンタ100を識別する番号と印刷部107にて使用した消耗品のカウント値との和からなる数字列のうち下5桁の数字列を用いることができる。
【0037】
削除方式は、メモリ消去部202によって実行した削除方式を示すものであり、上述した"レベル低"、"レベル中"、"レベル高"等の文字列が記載される。
【0038】
プログラムバージョンは、メモリ消去部202が含まれるソフトウェアプログラムの名称及びバージョンを示すものである。
【0039】
プリンタシリアル番号は、プリンタ100を特定するために固有に割り当てられた番号を示すものである。
【0040】
実行日時は、データの消去処理を実行した日時を示すものである。
【0041】
消去モード及びその結果は、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び第2のフラッシュメモリ105のそれぞれについて適用した消去モードとその結果を示すものである。なお、消去結果としては、データの消去を行わなかった場合にも、その旨が記載される。
【0042】
プリンタ100においては、このような情報が記載された消去レポートを、印刷部107によって印刷出力したり、表示部106bに表示出力させたり、インターフェース部108を介して上位装置150に出力し、当該上位装置150の表示部に表示出力させたりする。また、プリンタ100においては、後述するように、操作部106における表示部106bに消去レポート番号を表示する。これにより、ユーザは、消去レポートに記載された消去レポート番号と、表示部106bに表示された消去レポート番号との一致を確認することにより、消去レポートに記載された内容の消去処理がプリンタ100に対して実行されたことを確認することができる。
【0043】
具体的には、プリンタ100においては、図4に示すような一連の手順にしたがって、データの消去処理を実行する。
【0044】
まず、機器制御部201は、同図に示すように、ステップS1において、操作部106を介したユーザによるデータ消去要求が入力されると、必要に応じて、データの消去処理に対する認証処理を行った後、ステップS2において、操作部106を介したユーザによる削除方式の入力を受け付ける。なお、データの消去要求の入力は、例えば図5(a)に示すように、"データの消去"メニューを表示部106bに表示させ、このメニューを、入力部106aを介して選択することによって行われる。この選択が行われると、表示部106bの表示内容は、図5(b)に示すような表示となる。その後、削除方式を指定するため、入力部106aを介して、このメニューの中から所望の削除方式が選択される。
【0045】
これに応じて、メモリ消去部202は、図4中ステップS3において、指定された削除方式にしたがって、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び/又は第2のフラッシュメモリ105に記憶されているデータの消去を実行する。例えば、メモリ消去部202は、削除方式として"レベル中"が入力された場合には、ハードディスク103及び第1のフラッシュメモリ104に対して、第2の消去モードによる消去(3回上書き)を行う。
【0046】
そして、消去処理が終了すると、機器制御部201は、ステップS4において、実行した削除方式及びデータの消去結果をメモリ消去部202から読み取り、消去レポートを印刷するための消去レポートの原稿情報を生成する。機器制御部201は、生成した原稿情報を画像変換部203に供給して画像データに変換させた上で、印刷部107、表示部106b、又はインターフェース部108に供給する。プリンタ100においては、画像データが印刷部107に供給された場合には、印刷部107により、画像データに基づいて消去レポートを記録媒体に印刷して出力する。また、プリンタ100においては、画像データが表示部106bに供給された場合には、画像データに基づいて消去レポートを表示部106bに表示して出力する。さらに、プリンタ100においては、画像データがインターフェース部108に供給された場合には、インターフェース部108を介して画像データを上位装置150に出力し、当該上位装置150の表示部に消去レポートを出力させる。また、機器制御部201は、例えば図5(c)に示すように、消去処理が完了した旨と、消去レポートに記載した消去レポート番号と同じ番号からなる消去レポート識別情報とを表示部106bに表示させ、一連の処理を終了する。これに応じて、機器制御部201は、プリンタ100の電源が一度切断されて再投入されるまで、以後の動作を禁止する。
【0047】
プリンタ100においては、このような一連の手順にしたがって、データの消去処理を実行し、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び/又は第2のフラッシュメモリ105の各メモリについて適用した削除方式と、データの消去を行わなかったメモリに対する情報を表示することにより、ユーザが意図しない形でデータがメモリに残存していることを確認することが可能となる。また、プリンタ100においては、データの消去実行後に動作を禁止することにより、消去レポートに記載された消去処理が実行された以降に、他のデータがメモリに書き込まれていないことを保証することができ、不注意によるデータの書き込みを防止することができる。
【0048】
なお、プリンタ100においては、実行した削除方式に応じて、次回の電源投入時の動作を異なるものとするのが望ましい。
【0049】
具体的には、機器制御部201は、"レベル低"の削除方式が実行された後に当該プリンタ100の電源が切断された場合には、電源の投入に応じて、上位装置150との通信が可能な通常のオンラインモードとして動作させるように制御する。なお、機器制御部201は、"レベル低"の削除方式によるデータの消去処理の終了時にオンラインモードへと移行させてもよい。
【0050】
また、機器制御部201は、"レベル中"の削除方式が実行された後に当該プリンタ100の電源が切断された場合には、電源の投入後にも、先に図5(c)に示したような情報を表示部106bに表示させた状態を維持し、所定のリセット操作が行われた場合にのみ、オンラインモードへと移行させる。なお、所定のリセット操作とは、入力部106aを構成する複数のボタンの押下を組み合わせることによって実行される。
【0051】
さらに、機器制御部201は、"レベル高"の削除方式が実行された後に当該プリンタ100の電源が切断された場合には、電源の投入後にも、先に図5(c)に示したような情報を表示部106bに表示させた状態を維持するが、所定のリセット操作によっても、オンラインモードへと移行させない。そして、機器制御部201は、消去レポートの出力を要求する操作に応じて、表示部106bに表示されている消去レポート識別情報に対応する消去レポートを再出力することが可能な状態で待機する。なお、この場合、データの消去処理によって第2のフラッシュメモリ105に記憶されているソフトウェアプログラムも消去されてしまうが、かかる消去レポートの再出力処理等を行うために、第2のフラッシュメモリ105には、少なくとも、表示部106bに対する情報の表示処理、消去レポート再出力処理、及びソフトウェアプログラムのダウンロード処理に関するプログラムについては消去されずに記憶されたままとする。
【0052】
また、プリンタ100においては、データの消去処理を実行した場合には、当該プリンタ100のメンテナンス等の用に供するために、例えば図6に示すように、データの消去処理が実行された旨をログとして第2のフラッシュメモリ105等に記憶してもよい。
【0053】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態として示すプリンタ100においては、消去レポートを出力することにより、消去処理を実行したユーザやそれ以外の第三者が、当該プリンタ100のメモリに記憶されているどのデータに対してどのような消去処理が実行されたのか、又は消去処理が実行されなかったのかを、容易且つ確実に確認することができる。
【0054】
つぎに、第2の実施の形態として示すプリンタについて説明する。
【0055】
この第2の実施の形態として示すプリンタは、第1の実施の形態として示したプリンタが出力する消去レポートの内容を改良したものである。したがって、この第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0056】
プリンタ100は、先に図1に示した構成からなり、第2のフラッシュメモリ105に先に図2に示した構成からなるソフトウェアプログラムを記憶している。
【0057】
このようなプリンタ100においては、データの消去処理の終了後、例えば図7に示すような消去レポートを出力する。
【0058】
具体的には、消去レポートには、先に図3に示した消去レポートに記載された情報、すなわち、消去レポート番号、削除方式、プログラムバージョン、プリンタシリアル番号、実行日時、並びに、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び第2のフラッシュメモリ105のそれぞれについて適用した消去モード及びその結果に加え、データの消去処理の際に最終的にメモリに書き込んだデータと、消去処理後にメモリから読み出したデータとが記載される。データの消去処理の際に最終的にメモリに書き込んだデータとは、上述した第1の消去モードによる消去処理を行った場合には、所定の記憶領域に対して書き込まれた固定値であり、第2の消去モードによる消去処理を行った場合には、所定の記憶領域に対して書き込まれた乱数列である。したがって、消去処理後にメモリから読み出したデータとは、第1の消去モードによる消去処理後に読み出されたものにあっては、所定の記憶領域に対して書き込まれていた固定値であり、第2の消去モードによる消去処理後に読み出されたものにあっては、所定の記憶領域に対して書き込まれていた乱数列である。プリンタ100においては、これら2つのデータを同一区間についてサンプリングし、消去レポートに追加して出力する。このとき、プリンタ100においては、これら2つのデータを画像変換部203によってヘキサダンプ形式に変換して消去レポートを作成する。
【0059】
なお、図7においては、ハードディスク103に記憶されていたデータの消去処理の際に最終的に当該ハードディスク103に書き込んだデータと、消去処理後にハードディスク103から読み出したデータとが記載されている様子を示しているが、プリンタ100においては、他のメモリ、すなわち、第1のフラッシュメモリ104及び第2のフラッシュメモリ105についても同様のデータを消去レポートに記載する。また、プリンタ100においては、消去レポートに記載するデータをサンプリングする際に、例えば、アドレス200からアドレス300までのデータと、アドレス1200からアドレス1300までのデータと、アドレス2200からアドレス2300までのデータといったように、離散した複数のアドレスを起点とした複数の区間についてサンプリングするようにしてもよい。さらに、プリンタ100においては、上述した第2の消去モードによる消去処理を行った場合には、最終的にメモリに書き込んだデータのみならず、3回の上書きを行ったデータのそれぞれについて消去レポートに記載するようにしてもよい。
【0060】
プリンタ100においては、このような情報が記載された消去レポートを、印刷部107によって印刷出力したり、表示部106bに表示出力させたり、インターフェース部108を介して上位装置150に出力し、当該上位装置150の表示部に表示出力させたりする。なお、プリンタ100においては、消去レポートを表示部106bに表示出力させる場合には、当該消去レポートの長さが長くなることから、例えばリアルタイムにスクロールさせながら表示させる等の処理を行ってもよい。
【0061】
具体的には、プリンタ100においては、図8に示すような一連の手順にしたがって、データの消去処理を実行する。
【0062】
まず、機器制御部201は、同図に示すように、ステップS11において、操作部106を介したユーザによるデータ消去要求が入力されると、必要に応じて、データの消去処理に対する認証処理を行った後、ステップS12において、操作部106を介したユーザによる削除方式の入力を受け付ける。これらの処理は、先に図4に示したステップS1及びステップS2の処理と同様である。
【0063】
これに応じて、メモリ消去部202は、図8中ステップS13において、入力された削除方式により、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び/又は第2のフラッシュメモリ105に記憶されているデータの消去を実行する。このとき、メモリ消去部202は、メモリに書き込んだデータの一部と、そのデータの先頭からのアドレスとをRAM102に記憶させる。例えば、メモリ消去部202は、削除方式として"レベル中"が入力された場合には、ハードディスク103及び第1のフラッシュメモリ104に対して3回目の上書き処理にて書き込んだ乱数列からなるデータの一部と、そのデータの先頭からのアドレスとをRAM102に記憶させる。
【0064】
そして、消去処理が終了すると、機器制御部201は、ステップS14において、実行した削除方式及びデータの消去結果をメモリ消去部202から読み取るとともに、ステップS13にてRAM102に記憶させたデータに対応する記憶領域に記憶されたメモリ上のデータを読み出し、この読み出したデータと、ステップS13にてRAM102に記憶させたデータとを追加した消去レポートを印刷するための消去レポートの原稿情報を生成する。機器制御部201は、生成した原稿情報を画像変換部203に供給して画像データに変換させた上で、印刷部107、表示部106b、又はインターフェース部108に供給して出力させ、一連の処理を終了する。
【0065】
プリンタ100においては、このような一連の手順にしたがって、データの消去処理を実行する。これにより、ユーザは、消去レポートに記載された2つのデータの一致を確認することにより、消去レポートに記載された内容の消去処理がプリンタ100に対して実行されたことを確認することができるとともに、上書き処理によるメモリに対するデータの書き込みが正しく行われたことを確認することができる。
【0066】
なお、プリンタ100においては、データの消去処理の際にメモリに書き込んだデータそのものと、消去処理後にメモリから読み出したデータそのものとを消去レポートに記載するようにしているが、その代わりに、これらのデータを入力としたSHA(Secure Hash Algorithm)−256等の出力を消去レポートに記載してもよい。ここで、SHA−256とは、メッセージ要約関数の一種であり、任意長のデータ(原文)を入力すると256ビットのハッシュ値を生成して出力するものである。この出力は、入力が1ビットでも異なれば異なる値となるため、データの一致の確認に使用することができる。したがって、プリンタ100においては、かかるSHA−256等、データの一致の確認に使用することができるアルゴリズムを利用して生成したデータを消去レポートに記載することによっても、上書き処理によるメモリに対するデータの書き込みが正しく行われたことを確認することができる。また、乱数生成器204が生成する乱数列の内容は、そのアルゴリズムと当該乱数生成器204に与えられる初期値とを特定することによって一意に求めることができることから、プリンタ100においては、データの消去処理の際にメモリに書き込んだデータの代わりに、乱数生成器204によって生成した乱数列を用いてもよい。
【0067】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態として示すプリンタ100においては、データの消去処理の際にメモリに書き込んだデータと、消去処理後にメモリから読み出したデータとを消去レポートに記載することにより、第1の実施の形態にて説明した効果に加え、上書き処理によるメモリに対するデータの書き込みが正しく行われたことを確認することができる。
【0068】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、ハードディスク103、第1のフラッシュメモリ104、及び第2のフラッシュメモリ105の3つのメモリを備えるプリンタ100について説明したが、本発明は、かかるメモリの個数に限定されるものではない。
【0069】
また、上述した実施の形態では、第1の消去モード及び第2の消去モードの2つの消去モードがあり、且つ、レベル低、レベル中、及びレベル高の3つの削除方式があるものとして説明したが、本発明は、かかる消去モードや削除方式の種類数や内容も任意のものとすることができる。
【0070】
さらに、上述した実施の形態では、入力された画像データに対して所定の記録媒体への印刷出力等の処理を行うプリンタ100を用いて説明したが、本発明は、画像処理を行う機器であればいかなるものであっても適用することができ、例えば、スキャナ、ファクシミリ装置、複写機、又は他の機能を複合的に備える装置に適用して好適であり、また、ハードディスクや不揮発性のメモリを備える電子装置に適用することもできる。
【0071】
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタの構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタに記憶されているソフトウェアプログラムの構成を説明するブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタによって出力される消去レポートの具体例を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタにおいてデータの消去処理を実行する際の一連の処理を説明するフローチャートである。
【図5(a)】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタにおける表示部に表示される情報の具体例を説明する図であり、データの消去メニューが表示されている様子を説明する図である。
【図5(b)】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタにおける表示部に表示される情報の具体例を説明する図であり、削除方式を指定するためのメニューが表示されている様子を説明する図である。
【図5(c)】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタにおける表示部に表示される情報の具体例を説明する図であり、消去処理が完了した旨と、消去レポートに記載した消去レポート番号と同じ番号からなる消去レポート識別情報とが表示されている様子を説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態として示すプリンタに記憶される、データの消去処理が実行された旨を示すログの具体例を説明する図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態として示すプリンタによって出力される消去レポートの具体例を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態として示すプリンタにおいてデータの消去処理を実行する際の一連の処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
100 プリンタ
101 CPU
102 RAM
103 ハードディスク
104 第1のフラッシュメモリ
105 第2のフラッシュメモリ
106 操作部
106a 入力部
106b 表示部
107 印刷部
108 インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種データを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶されているデータの消去を行うメモリ消去部と、
前記メモリ消去部によるデータの消去処理の終了後、少なくとも前記メモリ消去部による消去処理の方法及び消去結果を含む消去処理に関する情報を出力する出力制御部とを備えること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
ユーザに消去処理の方法を指定させる指定部を備え、
前記メモリ消去部は、消去処理の方法として複数の方法を実行することが可能に構成され、前記指定部を介して指定された方法にしたがって、前記メモリに記憶されているデータの消去を行うこと
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記メモリ消去部は、前記メモリに記憶されているデータの消去を行う際に、当該データを記憶していた領域に所定のデータの上書きを行うこと
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
乱数列を生成する乱数生成部を備え、
前記メモリ消去部は、前記メモリに記憶されているデータの消去を行う際に、当該データを記憶していた領域に、固定値及び/又は前記乱数生成部によって生成された乱数列の上書きを行うこと
を特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記消去処理に関する情報として、前記メモリ消去部による消去処理の方法及び消去結果に加え、前記メモリ消去部によるデータの消去処理の際に前記メモリに書き込んだデータと、消去処理後に前記メモリから読み出したデータとを出力すること
を特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記メモリに記憶されているデータを他のデータ形式に変換する変換部を備え、
前記出力制御部は、前記消去処理に関する情報として、前記メモリ消去部による消去処理の方法及び消去結果に加え、前記メモリ消去部によるデータの消去処理の際に前記メモリに書き込んだデータを前記変換部によって変換したデータと、消去処理後に前記メモリから読み出したデータを前記変換部によって変換したデータとを出力すること
を特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記消去処理に関する情報は、前記メモリ消去部によって実行したデータの消去処理を特定するための情報、当該画像処理装置を特定するための情報、前記メモリ消去部が含まれるソフトウェアプログラムを特定するための情報、又は前記メモリ消去部によってデータの消去処理を実行した日時を示す情報のうちいずれかを含むこと
を特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記出力制御部は、前記メモリに記憶されているデータの消去を行わなかった場合には、その旨を前記消去結果として出力すること
を特徴とする請求項7記載の画像処理装置。
【請求項9】
所定の記録媒体への印刷出力を行う印刷部を備え、
前記出力制御部は、前記消去処理に関する情報を前記印刷部に印刷出力させること
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
各種情報を表示する表示部を備え、
前記出力制御部は、前記消去処理に関する情報を前記表示部に表示出力させること
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項11】
外部機器との間で行う通信を制御するインターフェース部を備え、
前記出力制御部は、前記消去処理に関する情報を前記インターフェース部を介して前記外部機器に出力すること
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記出力制御部は、前記メモリ消去部によって実行した消去処理の方法に応じて、当該画像処理装置の次回の電源投入時の動作を異なるものとすること
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−9692(P2008−9692A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179176(P2006−179176)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】