説明

画像形成方法

【課題】視野を移動させながら、目的の領域の画像を画像のぶれなどの劣化無く取得する。
【解決手段】視野を移動させながら目的の領域の前後で複数枚の画像を取得し、それらを数枚ごとのグループに分けて各グループの積算画像を作成し、積算画像同士を比較することで算出した像移動量と撮像枚数との関係式を算出する。その関係式より取得した複数枚の画像間の移動量を算出して、その移動量だけ画像を補正し積算することで、目的の領域の画像を再構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法に関し、特に走査型電子顕微鏡などで視野を停止させることなく視野移動しながら画像取得を行う画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ上の異物、欠陥を詳細に観察する装置として、レビュー装置が知られている。これは、他の装置(SEM式、光学式等の外観検査装置など)で異物、欠陥の位置を特定したウェーハを、測定した位置情報を元に欠陥の場所に移動し詳細な像を観察(レビュー)する装置であり、半導体チップ製造工程での異物、欠陥発生の原因究明や歩留まり向上のために主に用いられる。このような装置では、大量のウェーハ、大量の異物又は欠陥を短時間で効率よく検査する必要があり、そのためにレビュー装置も観察上の無駄を極力排除し、効率の良いレビューを行う必要がある。以下、本明細書では、異物又は欠陥を総じて欠陥と称する。
【0003】
レビュー装置では、ウェーハを載せたステージを光学顕微鏡、電子顕微鏡などの観察系の観察装置の視野中心まで移動させ、観察系が撮像している内容をコンピュータ内のメモリ又は記憶装置に記憶し、取得する。取得した画像を画像処理にかけ、欠陥の正確な位置を特定し、その位置を拡大する、又は拡大画像を取得することで欠陥の検出、撮像を行う。欠陥検出のために、欠陥のあるチップより1つ隣のチップの欠陥と同じチップ内座標の位置まで移動し、参照画像と呼ばれる比較のための画像を取得することもある。この際、通常は画像取得位置まで移動し、そこでステージを停止させて画像取得を行う。電子顕微鏡など比較的S/Nの悪い画像では、複数枚の画像を積算してS/Nの向上を図る必要があり、ステージを停止させることなく画像取得すれば、移動方向にぼけた画像になる。そのため、従来は画像取得位置で停止し、複数枚の画像を取得する必要があった。
【0004】
ステージを移動させながら画像を取得する方法として、特開2002−310962号公報に記載の方法が知られている。この方法は、ステージの移動速度を決定しておき、ステージの移動量にあわせてスキャンする場所を変化させ、ステージが移動してもスキャン領域が移動しないようにする方法である。
【0005】
【特許文献1】特開2002−310962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステージの移動量にあわせてスキャンする場所を変化させる方法では、ステージの熱変形、測定位置の高さ誤差、ステージの剛性による誤差など、ステージの物理的要因に起因する誤差、またステージ移動中のウェーハの移動、回転などにより、ステージの位置座標と実際観察している場所の座標とは必ずしも一致しない場合があり、これらの誤差は1μmほどになる場合もある。近年、検出する欠陥の微細化が進み、高倍率での観察が必要となってきており、例えば45nm以下の欠陥を観察するには1μm程度の視野範囲を高精細に観察する必要がある。このように倍率が高くなるにつれ、上に挙げたような誤差が無視できなくなり、視野の移動に追随して同じ場所にビームを照射することが難しくなる。
【0007】
本発明の目的は、視野の移動中に、目的の領域の画像を像移動によるぶれなどの劣化なしに取得できる画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ステージ移動中に特定の点での静止画像を取得するために、本発明では移動中に取得した画像から移動量、つまり取得した画像間の像のずれ量を算出し、そのずれ量を補正して積算することにより、画像の再構成を行う。
【0009】
すなわち、本発明による画像形成方法は、試料上を視野移動しながら複数枚の試料画像を取得する工程と、前記複数枚の試料画像をそれぞれ連続して取得した複数枚の試料画像からなる複数のグループに分け、各グループ毎に当該グループに属する試料画像を積算してグループの数だけの積算画像を作成する工程と、前記積算画像間における像の移動量を算出する工程と、前記算出結果から試料画像取得時間と像の移動量の関係を求める工程と、求めた関係を適用して、前記複数枚の試料画像それぞれに対する像の移動量を算出する工程と、算出した像の移動量に基づいて前記複数枚の試料画像を位置補正したのち、積算して画像を再構成する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
試料画像取得時間と像の移動量の関係を求める工程では、像の移動量を試料画像取得時間の関数として求めることができる。複数枚の試料画像は、典型的には一定の時間間隔で取得する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、視野の移動を完全に停止させること無く、目的の範囲の画像を像のぶれなどの劣化なく取得することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の原理を説明する図である。図1に矢印で示すような視野移動中に、ウェーハ101上にある点Aの縦横2aの範囲104を画像取得する場合、点Aの前後で104より広い範囲105の複数枚の画像を取得する。それらの画像から、各画像間の像移動量を算出し、算出した移動量分だけ像をずらし、画像を積算し画像を再構成することで、視野移動しながらでも目的の範囲の画像を取得することが出来る。なお、図1において、範囲103は範囲102の拡大図である。
【0014】
画像再構成の手順について、図2を用いて説明する。201の画像の大きさで、移動しながら画像を取得する。202〜205は取得した画像を示している。これらの画像の移動量a1,a2,a3を算出し、209に示すように移動量分だけ画像をずらして画像を重ね合わせ、画像を再構成する。206〜208は移動量を説明するための模式図であり、簡単のため、水平方向に移動している場合を示している。
【0015】
しかし、電子顕微鏡画像のように画像1フレーム(1枚)あたりのS/Nが極めて悪い場合、像の形状を把握することが難しく、画像1フレーム同士を比較して移動量を算出するのは困難である場合が多い。そこで、図6のように取得した画像(602a,602b,602c,603a,…,605b,605c)を複数枚ごとのグループ(602,603,604,605)に分け、グループごとにそのまま積算画像(606,607,608,609)を作成し、作成した積算画像を元に像移動量を算出する。各積算画像には多少、像移動によるぼけが見られるが、積算によりS/Nは向上するため、像移動量の算出に十分な画質は得ることができる。
【0016】
各積算画像間の像移動量が算出できれば、図7(b)に示す積算画像と画像取得開始時からの画像枚数との関係式を最小二乗法などで導くことができる。図7(b)において、横軸は時間と読み替えることもできる。この関係式より、積算前の各画像の像移動量が算出できるため、各画像の像移動量を求め、その量だけ画像を補正して積算して画像を再構成すれば、所望の画像を得ることができる。
【0017】
この方法の場合、像移動量を、取得した画像から算出するため、予め像ずれの傾向を求めておく必要が無く、また様々な要因により像移動の挙動が変化する場合にも対応できる。さらに数枚ごとに積算した画像を元に像移動量を算出するため、電子顕微鏡のような画像一枚あたりのS/Nが低い画像の場合にも適用できる。なお、図1に示すように再構成後の画像の領域は取得画像より狭くなるため、目的の領域を複数回に分けて取るのでなければ、必要とする画像の大きさよりも広い領域を画像取得しておく必要がある。
【0018】
以下、走査型電子顕微鏡に本発明を適用した場合の実施例について述べる。なお、本発明は、他の荷電粒子を用いた顕微鏡にも同様に適用することができる。また、レーザ走査型共焦点顕微鏡のような光学式の走査型顕微光学系にも同様に適用できる。通常の光学系(特に顕微光学系)についても、発明自体は同様に適用できるが、走査型電子顕微鏡のような画像一枚あたりのS/Nが低い画像についてとくに有効である。また、複数の撮像装置を組み合わせて用いることも可能である。
【実施例1】
【0019】
図3は、本発明の画像形成方法によって画像を形成する走査型電子顕微鏡の構成例を示す模式図である。この走査型電子顕微鏡は、電子銃301、電子レンズ302、偏向器303、対物レンズ304、試料台306、レンズ制御回路309、偏向制御回路310、二次粒子検出器320、アナログ/デジタル変換器311、アドレス制御回路312、画像メモリ313、制御部314、ディスプレイ315、コンピュータ316、画像処理手段317、キーボード318、マウス319、移動ステージ321等で構成されている。322は高さセンサである。なお、図では、電子光学系を真空に維持するためのカラムは図示省略されている。
【0020】
電子銃301から放射された電子線307は、レンズ302で収束され、偏向器303で2次元的に走査偏向されたのち、対物レンズ304で収束されて試料305に照射される。ここで言う対物レンズとは励磁型でも、静電型のものでもよく、荷電粒子の軌道を偏向し、試料表面に収束する機構であれば他の機構でもかまわない。
【0021】
試料305に電子線307が照射されると、試料の形状や材質に従った反射電子や二次電子等の二次粒子308が発生する。この二次粒子308を二次粒子検出器320で検出、増幅し、アナログ/デジタル変換器311でデジタル値に変換する。デジタル値に変換されたデータは画像メモリ313に記憶される。この時の画像メモリ313のアドレスとして、アドレス制御回路312が電子線の走査信号に同期したアドレスを生成する。また、画像メモリ313は、記憶したSEM像の画像データを随時、画像処理手段317に転送する。画像処理手段317は、コンピュータ316の表示メモリの画面データに画像データを合成してディスプレイ315にリアルタイムで表示する。その他、画像の切り出し、移動量算出などの様々な画像処理手段を有し、演算結果(画像、数値データなど)をコンピュータ316に出力する。
【0022】
走査型電子顕微鏡で観察される試料305は試料台306によって保持されている。また、移動ステージ321は制御部314からの制御信号により試料台を2次元的に平行移動させることができ、それにより試料305に対する電子線307が走査する位置を変えることができる。
【0023】
レビューSEMでは他装置で取得した欠陥の座標値などを記録したデータをコンピュータ316より読み取り、座標データを自身のステージ座標データに変換する。欠陥の場所に移動する際にはこのステージ座標データを用いてステージを制御し、目的の場所までウェーハを移動させる。ステージ座標はレーザ干渉計などを利用したセンサにより、リアルタイムに測定することが出来る。なお、ここでは視野を移動させる手段としてステージ移動を用いるが、ウェーハ等の試料に対し視野を移動させることができれば他の方法でもかまわない。
【0024】
本発明を用いた画像取得シーケンスについて、以下に説明する。なお、以下では説明を簡潔にするために正方形の画像を考えるが、画像の形状は長方形など、他の形状でもかまわない。図1に矢印で示す経路を通り、移動中に画像を取得し、最終的に点Aを中心とした長さ2aの正方形の領域104の画像を出力するシーケンスを考える。
【0025】
一連の処理のフローを図4に示す。ステップ11で、ステージを移動させ、領域104が画像取得範囲に完全に含まれた時点から画像取得を開始する。取得する画像の大きさ105は、後で画像を再構成する際に画像の重複した部分を抜き出すことから、ここでは領域104より大きく取得する。例えば領域104の2倍の大きさで取得すると、領域104の大きさ分移動しても画像を再構成することが出来る。この大きさは必要に応じて変更することが出来、また予めステージの移動速度が予測できる場合には必要な大きさを見積もることが出来る。また、画像取得範囲を広く取る方法については電子線のスキャン範囲を広げるのが最も容易なやり方であるが、複数の撮像系を設けるなど、方法は限定しない。画像取得範囲内に目的の領域が全て含まれるかどうかは、図5に示すように、画像取得範囲105の大きさW、点Aのステージ座標(DFX,DFY)、画像取得範囲105左上の点のステージ座標(SX,SY)より、以下の式(1)を満たすか否かで判断できる。
【0026】
【数1】

【0027】
また、ステージの誤差などの影響を考慮し、画像取得範囲より狭い領域を条件にしても良い。以下の式(2)は、誤差分をEX,EYとして、領域501内に領域104が含まれることを条件とした、画像取得範囲に含まれる条件をより厳しくした場合であるが、このように条件を決めることで、何らかの要因で取得した画像に領域104の一部が欠けることを防ぐことが出来る。なお、誤差分を考慮した範囲501はここでは正方形の領域を仮定しているが、領域の形にはとらわれない。
【0028】
【数2】

【0029】
なお、式(1)、式(2)が示す範囲の前後の大きさの領域で画像を取得しても構わない。必要に応じて、図1の点Aの位置に来る際に、画像取得に必要な程度にまでステージ移動速度を減速させる。画像取得は、領域104が画像取得範囲105又は範囲501から外れる、つまり式(1)又は式(2)を満たさなくなるまで、一定時間間隔で続ける。画像取得間隔は必ずしも一定間隔でなくても良いが、その場合、画像取得間隔を移動距離、移動時間など、何らかのパラメータ、又は数式で把握しておく必要がある。ここでは、一定時間間隔で画像取得を行ったものとして実施例を説明する。
【0030】
取得した画像は、順次、画像メモリ13に転送し保存する。ステップ12で画像取得を停止した後、ステップ13において、取得した画像を複数枚ごとのグループに分け、グループごとに積算画像を作成する。図6は、グループ分けの一例を説明した図である。ここでは取得した画像(602a,602b,602c,603a,…,605b,605c)を3枚ずつのグループ602,603,604,605に分けて各々積算する例を示しているが、分け方はこれに限らない。また、グループ内の画像の数は任意に変化させても良い。
【0031】
次にステップ14で、作成した積算画像606,607,608,609より移動量を算出する。ここで言う移動量とは、画像が視野内で移動した移動距離のことで、図7でいう距離b1〜b3のことを示す。図7(a)は、視野を水平に移動させた場合の一例を示している。積算画像606の位置S1を基準に取り、積算画像607では位置S2まで像が移動したとすると、その差にあたる距離b1が像移動量になる。積算画像608,609についても、位置S3,S4まで移動したとして、移動量b2,b3が算出される。移動量の算出方法は様々あるが、例えば次に述べる相関係数を利用した方法がある。すなわち、一方の画像を(u,v)だけ動かし、画像のマッチングを取る、つまりF(X,Y)、G(X,Y)を画像、nを画像の縦(又は横)の長さ(単位:ピクセル)としたとき、次式(3)のδを計算し、相関係数δが最も大きくなるときの(u,v)を移動量として算出する。
【0032】
【数3】

【0033】
移動量の算出に関しては、これ以外の手法を用いてもかまわない。次にステップ15において、算出した移動量から、算出した移動量と取得開始時からの画像枚数(経過時間)との関係式を求める。関係式は、図7(b)のような縦軸を移動量、横軸を取得開始時からの画像枚数(経過時間)としたグラフを想定し、仮定した関係式の係数を最小二乗法により算出する。積算したグループの座標、つまり図7(b)の横軸の画像枚数はグループの画像取得順番の平均をとる。座標の取り方はこの方法に限らず、例えばグループの一番若い順番番号をグループの画像取得順番とするなどの取り方があるが、平均の場合、グループに含まれる画像枚数を変化させた場合に誤差が少ない。以下に、一例として、一定加速度で減速する場合について説明すると、速度v(t)の式は、初速度をv、加速度をα、時間をtとして以下のようになる。
【0034】
【数4】

【0035】
この式から、画像取得開始時からのステージ移動量x(n)は以下のようになる。
【0036】
【数5】

【0037】
移動量の関係式は、この式(5)に従うことが想定される。この式の係数を、算出した移動量や画像枚数のデータより最小二乗法を用いて算出することで、関係式を得ることが出来る。関係式は上式に限らず、他の式を仮定しても良い。また、関係式を求める手法もこの方法に限らない。なお、最小二乗法を用いた場合、作成式との分散(誤差係数)を算出することが出来るが、この値が高い場合、移動式が実際の様相にそぐわない場合が想定されるため、この場合には画像取得した場所に移動し、再度画像取得を行うことで、必要な画像を取り逃すことをなくすことが出来る。この行程は必須ではない。また、複数の式を用意し、一番分散値が小さい式、つまり誤差が少ない式を採用することも出来る。ちなみに、ここでは説明を簡潔にするために一方向(水平方向)への移動のみを考えているが、複数の方向について同じことを行っても良く、また変数を増やして複数の方向を同時に取り扱っても良い。
【0038】
関係式を算出後、ステップ16に移り、関係式を用いてグループ分けする前の各画像(602a,602b,602c,603a,…,605b,605c)間のずれ量を算出する。関係式が式(5)の場合、n枚目の画像はn−1枚目より、式(6)で表されるΔx(n)だけずれていることが分かる。
【0039】
【数6】

【0040】
このずれ量を元に、目的の領域が各画像のどの部分に相当するかをステップ17において計算し、画像を再構成する。図8に、取得した一辺の大きさがWの画像を801,802,803、各取得画像内の目的の領域に相当する範囲を804,805,806とした例を示し、説明する。1枚目の画像801内での点Aの座標を(X1,Y1)とすると、2枚目の画像802内の像の移動量を(dx1,dy1)としたとき、2枚目の画像内の点Aの座標は(X1+dx1,Y1+dy1)となるため、目的の領域に相当する範囲805は式(7) となり、この領域を切り出すことになる。
【0041】
【数7】

【0042】
以後、全ての画像について同様の処理を行い、画像を生成する。切り出した画像群807を画像処理手段317で積算し、目的の画像808を得る。ステップ18において、再構成した画像は、コンピュータ316を通じ、ディスプレイ315に出力する、又はコンピュータ316内部の記憶装置内に保存する。
【0043】
画像取得、画像のグループ分け、積算、移動量算出、移動量関係式算出、移動量関係式に基づいた画像の切り出し、切り出した画像の積算、出力は、図4に挙げたフロー以外にも、ステージ移動や各々の作業と干渉しあわない条件で並列に行うことができる。例えば、画像取得と並行して、すでに取得した画像をグループ分けし、積算演算、移動量算出を行っておくと、撮像終了から画像出力までの時間を短くすることができる。なお、ここでは各画像の移動量を元に切り出す範囲を求め、画像を切り出してから積算する方法を説明したが、図に示すように、取得した画像901,902,903を移動量分ずらして画像をそのまま積算しておき、最後に目的の部分904を切り出して画像905として出力しても良い。
【実施例2】
【0044】
同じ観察領域を複数回通過して画像を取得し、その画像を元に再構成を行う実施例について説明する。例えば図11(a)に示すように、初めは領域1101の前後を撮影しておき、後から領域1102の前後の画像をもう一度取得する。最後に結合することを考慮し、領域1101は領域1102と少し重複するように取る。この重複部分で各領域の結合時のマッチングを取る。画像取得後、図11(c)に示すように、取得した画像を各領域で再構成し、それらを結合して目的の画像を得る。この実施例の場合、画像取得範囲が目的の領域より十分に広くなくても撮像できるため、スキャン範囲を拡大することによる画像の劣化を防ぎ、画像を再構成できる。
【0045】
図10に、本実施例のフローチャートを示す。ステップ21において、領域iについて、領域iの前後の画像を取得する。iは1、2、…といった領域識別用の数字を表す。ステップ22において領域iを含む画像を取得し終えたら、ステップ23に移り、全ての領域を取得し終えたかを確認する。本実施例では図11に従い、領域1101、1102の2つの領域の画像取得を行うことを考える。領域1101、1102の再構成に必要な画像を取得し終えるまで、ステップ21、ステップ22を繰り返す。なお、領域の数や形状、分割数は任意であるが、あまり多くの領域に分割したり、複雑な形状を取ると画像取得に時間がかかるため、出来るだけ少ない領域に分割し、各領域の形状も長方形のような単純な形状にするのが望ましい。また、各領域は図11に示すように少し重複した部分1113を設けておくことが望ましい。これは上にも述べたように、画像を結合する際のマッチング領域を作るためである。
【0046】
全ての領域についての画像取得が終了したら、ステップ24、ステップ25に移り、領域ごとに、取得した画像を複数枚のグループに分配し、各グループで積算画像を作成する。領域ごとに行う以外は実施例1のステップ13と同様に実施できる。ステップ26からステップ28の移動量算出、関係式算出、画像再構成についても、領域が複数あることを除けば、手順自体は実施例1のステップ14からステップ17の該当する部分と同様に実施できる。図11を参照すると、積算画像1103〜1106から画像1111を再構成し、積算画像1107〜1110から画像1112の画像を再構成する部分に相当する。次に、ステップ29において、作成した各領域の画像1111,1112を組み合わせて画像を結合し、目的の画像1114を完成させる。結合の際には組み合わせ画像1115の互いに重複する領域1113を使用して各画像1111,1112を結合させる。結合の方法は他の手段を用いても良い。結合が終了した画像は必要な部分を切り出し、ステップ30で出力する。
【0047】
ステップ21、ステップ22の画像取得、およびステップ24からステップ28は、お互いが干渉しあわない範囲で並列に行うことが出来る。また、本実施例では画像取得範囲を目的の領域と異なる、長方形の領域としているが、任意に変える事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の原理を示し、ウェーハ上で視野を移動させる様子を説明するウェーハの平面図。
【図2】本発明の原理を示し、視野移動中に画像を取得し、各画像間の像移動量を算出し、その値を元に画像を補正し積算する方法を説明する図。
【図3】走査型電子顕微鏡の主要な構成を示す縦断面図。
【図4】ウェーハ上の画像取得手順を説明するフローチャート。
【図5】視野内に画像取得領域が含まれる条件を説明する図。
【図6】視野移動中に取得した画像を複数枚ごとのグループに分け、グループごとに積算画像を作成することを説明する図。
【図7】積算画像間の像移動量の算出と、その像移動量と画像枚数との関係式を算出することを説明した図。
【図8】算出した像移動量から、各画像の中で目的の領域に相当する部分を算出する方法と、目的の領域を再構成する方法を説明する図。
【図9】目的の領域を再構成する方法を説明する図。
【図10】ウェーハ上の画像取得手順を説明するフローチャート。
【図11】複数回に分けて画像を取得する方法を説明する図。
【符号の説明】
【0049】
301…電子銃、302…電子レンズ、303…偏向器、304…対物レンズ、305…試料、306…試料台、307…電子線、308…二次粒子、309…レンズ制御回路、310…偏向制御回路、311…アナログ/デジタル変換器、312…アドレス制御回路、313…画像メモリ、314…制御部、315…ディスプレイ、316…コンピュータ、317…画像処理手段、318…キーボード、319…マウス、320…二次粒子検出器、321…移動ステージ、322…高さセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上を視野移動しながら複数枚の試料画像を取得する工程と、
前記複数枚の試料画像をそれぞれ連続して取得した複数枚の試料画像からなる複数のグループに分け、各グループ毎に当該グループに属する試料画像を積算してグループの数だけの積算画像を作成する工程と、
前記積算画像間における像の移動量を算出する工程と、
前記算出結果から試料画像取得時間と像の移動量の関係を求める工程と、
求めた関係を適用して、前記複数枚の試料画像それぞれに対する像の移動量を算出する工程と、
算出した像の移動量に基づいて前記複数枚の試料画像を位置補正したのち、積算して画像を再構成する工程と
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成方法において、前記試料画像取得時間と像の移動量の関係を求める工程では、像の移動量を試料画像取得時間の関数として求めることを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
請求項1記載の画像形成方法において、前記複数枚の試料画像を一定の時間間隔で取得することを特徴とする画像形成方法。
【請求項4】
請求項1記載の画像形成方法において、前記試料画像は走査型電子顕微鏡の出力画像であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
請求項1記載の画像形成方法において、前記試料画像の取得範囲が、前記再構成後の画像範囲と異なることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
請求項1記載の画像形成方法において、前記複数枚の試料画像を位置補正したのち、積算して画像を再構成する工程では、各試料画像から目的とする領域を切り出し、切り出した複数の部分画像を積算することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
請求項1記載の画像形成方法において、前記複数枚の試料画像を位置補正したのち、積算して画像を再構成する工程では、各試料画像をその移動量分だけずらして積算し、そののち目的とする領域を切り出すことを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項1記載の画像形成方法において、前記視野移動を試料を保持しているステージの移動によって行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
請求項1記載の画像形成方法において、前記視野移動を、当該視野移動の方向と直交する方向にずらして複数回行い、目的の領域の再構成画像を分割して取得することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−308471(P2006−308471A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132677(P2005−132677)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】