説明

画像形成装置、画像形成方法、有機感光体及びプロセスカートリッジ

【課題】 本発明の目的は、面発光レーザアレイの露光手段で形成される静電潜像に発生しやすい文字太りや、筋状濃度ムラを防止し、高速で鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することであり、その為の画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジ及び有機感光体を提供することである。
【解決手段】 露光手段は縦横、各々3本以上のレーザビーム発光点を有する面発光レーザアレイを露光光源として備え、前記レーザビーム発光点を前記有機感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式を採用する構成を有しており、前記有機感光体の導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であり、現像手段に、軟化点が75〜120℃であるトナーを具備することを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる画像形成装置及び画像形成方法に関するものであり、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる画像形成装置及び画像形成方法、該画像形成装置に用いられる有機感光体及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンタを使用される機会が増加している。該印刷分野やカラー印刷の分野においては、高画質のデジタルのモノクロ画像或いはカラー画像を求める傾向が強い。このような要求に対し、露光光源の露光ビームを小さくし、高精細のデジタル画像を形成することが提案されている。このような露光方法において、感光体上に細密のドット露光によるドット潜像を形成する場合に、単一の露光ビームを用いると、1ページ分の露光を完了する為に、多大の時間を要することから、多数本のレーザビームで同時に露光する露光手段が検討されている。
【0003】
これらの同時露光の多数本レーザビームに関する公知例としては、面発光レーザアレイを用いた画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、該面発光レーザアレイは、キャビティの容量が小さく、各発光点の露光強度にバラツキが出やすく、これらのバラツキを反映した静電潜像では、文字太りや筋状濃度ムラ(細い線幅の筋状濃度ムラ)が発生しやすい。更に、面発光レーザビームは主走査方向の隣接する境界領域には、露光過不足が発生しやすく、上記文字太りや筋状濃度ムラを増幅するけいこうにある。更に、面発光レーザアレイに短波長レーザを用いて、細密なドット画像を形成すると、これらの文字太りや筋状濃度ムラ(以下、単に筋ムラとも云う)はより目立ちやすい。
【0005】
又、近年、各種の画像形成装置に対する一層の省エネルギー化が要請される中、最も電力を消費する定着工程(定着プロセス)において電力の消費を少なくするために、低温で定着できるような低温定着トナーが提案されている(特許文献2)。
【0006】
この低温定着トナーは、従来のトナーよりも低温で転写材へ定着できる反面、トナー自身が融着を起こしやすいほか、装置内部の熱に対する耐久性が劣るという欠点を抱えている。具体的には、感光体上の転写残トナーをクリーニングブレードでクリーニングするときトナーが感光体表面に融着しやすく、低温定着トナーと前記面発光レーザアレイを併用すると、前記した文字太りや筋状濃度ムラが発生しやすく、重大な画像品質問題になりやすい。
【特許文献1】特開2005−10662号公報
【特許文献2】特開2004−157423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の前記課題は、面発光レーザアレイの露光手段で形成される静電潜像の小さなバラツキを修正し、なめらかなトナー画像に再現するためには、小さな静電潜像の変化を均一にならすことができる表面特性の有機感光体及びトナーを用いることが有効であることを見出し、本発明を完成した。即ち、低表面エネルギーの有機感光体を面発光レーザアレイの露光手段と共に採用することにより、小さな静電潜像の変化を均一にならすことができる軟化点が低いトナーを用いることにより、本発明の目的を達成することができる。
【0008】
即ち、本発明の目的は、前記した面発光レザアレイで発生している諸問題を解決することであり、面発光レーザアレイの露光手段で形成される静電潜像に発生しやすい文字太りや、筋ムラを防止し、高速で、良好な電子写真画像を提供することであり、その為の画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジ及び有機感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記課題は、面発光レーザアレイの露光手段で形成され易い筋ムラを防止するためには、低表面エネルギーの有機感光体と共に、現像剤に用いるトナーの軟化点を75〜120℃にすることが効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の目的は以下のような構成を有することにより達成される。
(請求項1)
導電性支持体上に感光層を有する有機感光体と、前記有機感光体を帯電させる帯電手段と、前記帯電手段により帯電された有機感光体に露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記有機感光体から中間転写体(中間転写媒体)を介してあるいは介さずして転写材に転写する転写手段とを少なくとも備えている画像形成装置において、前記露光手段は縦横、各々3本以上のレーザビーム発光点を有する面発光レーザアレイを露光光源として備え、前記レーザビーム発光点を前記有機感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式を採用する構成を有しており、前記有機感光体の導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であり、現像手段に、軟化点が75〜120℃であるトナーを具備することを特徴とする画像形成装置。
(請求項2)
前記トナーの体積平均粒径が3〜8μmであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
(請求項3)
前記トナーが重合法から作られた重合トナーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
(請求項4)
前記表面層の水に対する接触角のバラツキの範囲が±3°以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(請求項5)
前記有機感光体は中間層、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に設けた積層型感光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(請求項6)
前記面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発光点が2次元的に配置された構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(請求項7)
導電性支持体上に感光層を有する有機感光体と、前記有機感光体を帯電させる帯電工程と、前記帯電工程により帯電された有機感光体に露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像工程と、前記トナー像を前記有機感光体から中間転写体(中間転写媒体)を介してあるいは介さずして転写材に転写する転写工程とを少なくとも備えている画像形成方法において、前記露光工程は縦横、各々3本以上のレーザビーム発光点を有する面発光レーザアレイを露光光源として備え、前記レーザビーム発光点を前記有機感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式を採用する構成を有しており、前記有機感光体の導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であり、現像工程に、軟化点が75〜120℃であるトナーを具備することを特徴とする画像形成方法。
(請求項8)
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられる有機感光体において、導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であることを特徴とする有機感光体。
(請求項9)
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくとも何れか1つと、導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上である有機感光体を一体化し、画像形成装置本体に対し一体的に出し入れ可能に形成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置等を用いることにより、面発光レーザアレイを用いた場合に発生していた文字画像の文字太り、筋状濃度ムラを改善でき、中間転写媒体を有する電子写真方式の画像形成装置で、高速で、色再現性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の画像形成装置は、導電性支持体上に感光層を有する有機感光体と、前記有機感光体を帯電させる帯電手段と、前記帯電手段により帯電された有機感光体に露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記有機感光体から中間転写体(中間転写媒体)を介してあるいは介さずして転写材に転写する転写手段とを少なくとも備えている画像形成装置において、前記露光手段は縦横、各々3本以上のレーザビーム発光点を有する面発光レーザアレイを露光光源として備え、前記レーザビーム発光点を前記有機感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式を採用する構成を有しており、前記有機感光体の導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であり、現像手段に、軟化点が75〜120℃であるトナーを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の画像形成装置は、上記構成を有することにより、高速で電子写真画像を作製でき、マルチビーム露光方式で発生しやすい文字太りや筋状濃度ムラを防止でき、色再現性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【0014】
本発明に係わる面発光レーザアレイは、発光面に複数のレーザ発光点を有し、一回の露光走査で同時に多数本のレーザ露光を完了できることから、露光時間の大幅な短縮が可能となる。
【0015】
しかしながら、面発光のレーザアレイは、各発光点のレーザ強度がバラツキ易く、この為、筋状の濃度ムラが発生しやすいこと、及び面発光レーザビームは主走査方向の隣接する境界領域が、露光過不足のライン潜像を形成しやすく、その跡に不要なライン画像が発生しやすい等の問題が解決されていない。
【0016】
本発明は、このような面発光レーザアレイを用いた場合に発生しやすい画像欠陥の発生を、表面層を低表面エネルギー状態に構成した有機感光体を用いることにより、防止することができる。以下に、本発明に用いられる有機感光体について記載する。
【0017】
本発明の有機感光体は、導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であることを特徴とする。このような有機感光体を用いることにより、面発光レーザアレイを用いた場合に発生しやすい筋状濃度ムラや文字太りの発生を目立たなくし、色再現性が良好な電子写真画像を作製することができる。
【0018】
本発明に係わる有機感光体は、水に対する接触角が90°以上の低表面エネルギーの表面層を有する。更に、該接触角は95°〜115°がより好ましい。
【0019】
静電潜像の微細なバラツキが接触角90°以上の有機感光体を用いるとなめらかなトナー画像に修正される理由は明白ではないが、このような低表面エネルギーの有機感光体は表面が荒れにくく、更に表面がスベリ易いことから、現像時にトナー像が均一に均されると考えている。
【0020】
ここで、有機感光体の接触角の測定法について記載する。
【0021】
接触角及び接触角のバラツキ測定
感光体の表面の接触角は、純水(20℃で抵抗率5〜20MΩ・cmの純水)に対する接触角を全自動接触角計(CA−W型ロール特型:協和界面科学社製)を用いて20℃50%RHの環境下で測定する。水の蒸発による測定値の変化と測定の安定性を両立させる為、水滴滴下後5秒から30秒以内に測定を終了させる。測定はθ/2法による。通常の水滴量範囲内では接触角の値は変化しないが、感光体ドラムの場合軸方向に対して直角の方向からの測定とし、ドラムの曲率に対する偏差を無視するものとする為、滴下量は70μlに設定する。
【0022】
測定個所は円筒状感光体の中央部、左右端部から5cmの位置の3カ所について、それぞれ円周方向90°づつの4カ所、計12カ所を測定し、この平均値を本発明の接触角とし、この平均値から最も大きく正又は負にずれた値をバラツキの値とする。
【0023】
上記のような接触角の表面層を形成するには、平均一次粒径0.02μm以上、0.20μm未満で且つ結晶化度が90%未満の含フッ素樹脂微粒子を表面層に含有させることが好ましい。結晶化度が90%以上では、含フッ素樹脂微粒子の分散性は向上するが、含フッ素樹脂微粒子自体の延展性が小さくなり、接触角のバラツキが大きくなりやすい。また前記結晶化度の下限値は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、含フッ素樹脂微粒子の結晶化度が小さくなりすぎと延展性が過大になり、分散性が劣化しやすいことから、40%以上の結晶化度の含フッ素樹脂微粒子が好ましい。
【0024】
含フッ素樹脂微粒子の結晶化度の測定は広角X線回折測定により、発生した回折ピークを結晶質と非晶質に分離し、ベースライン補正を行なった後、結晶質と非晶質の全X線積分強度(分母)に対する結晶質のX線積分強度(分子)の百分率(%)で表示する。
【0025】
本発明では広角X線回折測定装置及び測定条件を下記のようにして測定したが、同じ結果が得られれば、他の測定装置等を用いてもよい。
【0026】
X線発生装置:Rigaku RU−200B
出力:50kV,150mA
モノクロメータ:グラファイト
線源:CuKα(0.154184nm)
走査範囲:3°≦2θ≦60°
走査方法:θ−2θ
走査速度:2°/min
含フッ素樹脂微粒子の構成材料は含フッ素重合性モノマーの単独重合体または共重合体、または含フッ素重合性モノマーとフッ素フリー重合性モノマーとの共重合体である。含フッ素重合性モノマーは一般式(1);
【0027】
【化1】

【0028】
(一般式(1)中、R4〜R7のうち少なくとも1つの基はフッ素原子であり、残りの基はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、メチル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、またはトリフルオロメチル基である)で表されるモノマーである。好ましい含フッ素重合性モノマーとして、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、二フッ化二塩化エチレン等が挙げられる。含フッ素重合性モノマーとして、2種類以上のモノマーが使用されてもよい。
【0029】
フッ素フリー重合性モノマーとして、例えば、塩化ビニル等が挙げられる。フッ素フリー重合性モノマーとして、2種類以上のモノマーが使用されてもよい。
【0030】
含フッ素樹脂微粒子はいずれも、上記構成材料の中で、含フッ素重合性モノマーの単独重合体または共重合体からなることが好ましく、より好ましくはポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、特にポリ四フッ化エチレンである。
【0031】
含フッ素樹脂微粒子を構成する重合体の平均分子量は本発明の目的を達成できる限り特に制限されないが、通常はいずれも1万から100万の範囲が好適である。
【0032】
本発明に係わる含フッ素樹脂微粒子の結晶化度は含フッ素樹脂微粒子の構成材料によっても変わるが、含フッ素樹脂微粒子を熱処理することによっても変えられる。例えば、平均一次粒径0.12μmおよび結晶化度91.3のPTFE微粒子(ポリエチレンテレフタレート微粒子)を250℃で65分間加熱処理すると、結晶化度を82.8に低下させることができる。熱処理手段は特に制限されず、公知の乾燥機または加熱炉を使用できる。
【0033】
又、上記含フッ素樹脂微粒子を用いて水に対する接触角が90°以上の表面層を形成するためには、表面層中の含フッ素樹脂微粒子の比率を高くすることが好ましく、質量比でバインダー樹脂100質量部に対し、少なくとも20質量部以上200質量部以下の量で用いることが好ましい。20質量量部未満では接触角の90°以上の表面層を形成するのが難しく、200質量部より多いと表面層が脆弱な膜となり、擦り傷等が発生しやすい。
【0034】
又、接触角のバラツキの範囲が±3.0°以内(より好ましくは±2.0°以内)の表面層を形成するためにも、上記表面層中の含フッ素樹脂微粒子の比率が有効である。
【0035】
又、接触角を90°以上にするには、表面層中のバインダー樹脂としては、ポリシロキサン基を部分構造に有するポリカーボネートやポリアリレートを用いてもよい。特に、下記に示すシロキサン基を部分構造に有するシロキサン変成ポリカーボネートが好ましい。
【0036】
【化2】

【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
分子量は10,000〜100,000が好ましい。
【0041】
上記ポリシロキサン部分構造を有するポリカーボネートとは、ポリカーボネートの基本構造の中に、部分構造としてポリシロキサンを含有するものであり、このようなポリカーボネートを用いた有機感光体は、接触角が90°以上の低表面エネルギーの均一な表面層を形成でき、クリーニング部材等との摩擦により発生しやすい表面層の凹凸を防止し、筋状濃度ムラの発生を目立たなくしたハーフトーン画像を形成することができる。その結果、文字太りや筋状濃度ムラ或いは画像ムラが防止された電子写真画像を作製することができる。
【0042】
上記ポリシロキサン部分構造を有するポリカーボネートは表面層を形成する主要バインダー樹脂として用いられ、表面層の全樹脂中に占める割合が50質量%以上であることが好ましい。
【0043】
又、上記含フッ素樹脂微粒子とポリシロキサン部分構造を有するポリカーボネートを併用するとより接触角のバラツキを小さくすることに効果的である。
【0044】
上記シロキサン部分構造を有するポリカーボネート以外にも、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等を併用して用いることもできる。
【0045】
上記表面層の作製に用いられるシロキサン部分構造を持つポリカーボネートの濃度は表面層全質量の10〜70質量%が好ましい。10質量%未満だと安定した低表面エネルギーの表面層が得られず、70質量%より多いと表面層の電荷輸送性が低下し、電位安定性が失われる。
【0046】
次に、本発明の電子写真感光体の構成について記載する。
【0047】
本発明の電子写真感光体は有機感光体が好ましい。本発明の表面層は、有機感光体の表面層を形成する電荷輸送層、或いは保護層等に適用することが好ましい。以下、本発明の表面層を用いた有機感光体を中心に説明する。
【0048】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能のいずれか一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0049】
有機感光体の層構成は、特に限定はないが、電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層とその上に必要により、保護層を塗設した構成をとるのが好ましい。
【0050】
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0051】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真円度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0052】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0053】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0054】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0055】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0056】
又本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0057】
又、本発明に好ましく用いられる中間層としては疎水化表面処理を行った酸化チタン微粒子(平均粒径が0.01〜1μm)をポリアミド樹脂等のバインダーに分散させた中間層が挙げられる。該中間層の膜厚は、1〜15μmが好ましい。
【0058】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0059】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0060】
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0061】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θで、少なくとも7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.1°の位置に特徴的な回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、同2θで、少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に特徴的な回折ピークを有するクロルガリウムフタロシアニン顔料、同2θで、少なくとも6.8°、12.8°、15.8°、26.6°の位置に特徴的な回折ピークを有するガリウムフタロシアニン顔料、同2θで、12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0062】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0063】
電荷輸送層
電荷輸送層が有機感光体の表面層となる場合は、電荷輸送層に本発明の表面層を適用することが好ましい。
【0064】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。該バインダー樹脂として、本発明のシロキサン部分構造を持つポリカーボネートと重合性官能基を有する化合物から得られた重合体溶液を塗布液成分として用い、その他の物質として、酸化防止剤等の添加剤を必要により含有させてることが好ましい。
【0065】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.25(eV)以下である。
【0066】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0067】
電荷輸送層が表面層とならない場合は、電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂とうが挙げられる。又、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。特にポリカーボネートが電子写真特性(帯電性、感度等)を良好に保つ上で好ましい。
【0068】
表面層(保護層)
前記した表面層を有機感光体の表面に形成する。又、該表面層に電荷輸送物質、酸化防止剤、塗布助剤等の添加剤を加えて調製し、表面層を形成してもよい。電子写真特性(帯電性、感度等)を良好に維持する為には、表面層にも電荷輸送層、酸化防止剤等を存在させる方がより好ましい。
【0069】
又、表面層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0070】
【化6】

【0071】
【化7】

【0072】
【化8】

【0073】
【化9】

【0074】
中間層、感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0075】
次に本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお本発明の樹脂層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0076】
以下、本発明に用いられるトナーについて記載する。
【0077】
〔トナー〕
本発明に用いられるトナーは、軟化点が75〜120℃のもので、好ましくは80〜110℃である。
【0078】
トナーの軟化点をこの範囲にすることにより、本発明の目的、即ち、文字太りや筋状濃度ムラの改善を達成できると共に、トナーの保存安定性を達成でき、且つ定着時の熱供給を少なくすることができる。
【0079】
即ち、トナーの軟化点が75℃未満では、定着時にトナーが膨張しやすく、文字太りが発生しやすく、又、トナーの軟化点が120℃より高いと、定着性が不十分となり、面発光レーザの隣接する境界領域で筋状濃度ムラが発生しやすい。
【0080】
(トナーの軟化点)
トナーの軟化点の測定方法について説明する。
【0081】
20±1℃、50±5%RH環境下において、トナー1.10gをシャーレに入れ平にならし、12時間放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所製)にて3×100Mpaの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製する。
【0082】
24±5℃、50±20%RH環境下において、フローテスタ「CFT−500D」(島津製作所製)により、上記成型サンプルを、荷重180N、開始温度40℃、予熱時間300秒、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm型×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱時間終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetを、トナーの軟化点とする。
【0083】
(トナーの粒径)
本発明に係るトナーの粒径は、3.0〜8.0μmのものが好ましい。トナーの粒径をこの範囲にすることにより、高濃度で高鮮鋭度の無いトナー画像が得られる。
【0084】
尚、本発明においては、トナーの粒径とは体積基準のメディアン粒径(D50)のことである。
【0085】
トナーの粒径は、コールターマルチサイザー(コールター社製)で測定する。本発明においてはコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用する。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上のトナーの体積分布を測定して体積基準のメディアン粒径(D50)を算出する。
【0086】
(トナーの作製)
上記軟化点を示すトナーは、粉砕法或いは重合法等の作製方法により作製することができる。
【0087】
トナーの軟化点は、樹脂粒子形成に用いる樹脂を構成するモノマーの種類や共重合体のモノマー組成比をコントロール、連鎖移動剤の量をコントロールして重合度を制御、或いはトナーに添加する離型剤等、定着助剤の種類や量を調整する方法等により制御することができる。
【0088】
トナーの粒径は、重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、又は融着時間、さらには重合体自体の組成によって制御することができる。又、粉砕法によりとなー粒子を形成する場合には、粉砕条件と分級条件を制御することができる。
【0089】
以下、粉砕法によるトナーの作製と重合法によるトナーの作製について具体的に説明する。
【0090】
〈粉砕法によるトナー粒子の作製〉
粉砕法によるトナーは、
1.上記軟化点を有するバインダー樹脂(結着樹脂)、顔料粒子、離型剤とを非加圧下で混合する工程
2.混合した結着樹と該顔料粒子を溶融混練して混練物を得る工程
3.得られた混練物を粉砕する工程
4.得られた粉砕物を分級して目的の粒径のトナー粒子とする工程
を経て作製することができる。
【0091】
上記の素材を混合、混練する工程に於いては、エクストルーダー型の混練装置を好ましく用いることができ、その混練温度をトナー各々に好適な温度範囲に制御することにより、得られるトナーに対し上記軟化点を付与することが可能である。混練温度を制御する為には混練装置に於ける混練ゾーンの温度を熱媒体、或いは電熱ヒーター等を用いて制御することで達成しうる。尚、混練時に混練物の自己発熱が生じるため、バインダー樹脂構造、混練トルクことを考慮した上で温度制御を行う必要がある。
【0092】
バインダー樹脂としては、従来より公知のものを使用することが可能であるが、従来のトナーに適用されているバインダー樹脂の軟化点より低めの樹脂が好ましく、特に離型剤との併用によるトナー自身の離型性の効果をより有効に発揮し得ると共に、混練条件によるトナーの軟化点の可変域が広くなるために好ましい。即ちこの様な好ましい樹脂としては適度な架橋、或いは二山以上の分子量分布を有する構造のものであり、若干の不溶分を有するものが該当する。
【0093】
離型剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アミド系ワックス、多価アルコールエステル等を用いることができる。又、離型剤の添加量としてはトナー中に1〜10質量%であることが好ましい。
【0094】
黒色トナーの着色剤としては、チャネルブラック・ファーネスブラック・アセチレンブラック・サーマルブラック・ランプブラック等のカーボンブラック、磁性体、チタンブラック等の黒色顔料、ニグロシン等の染料等が使用可能である。
【0095】
イエロートナーの着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等の染料、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同93、同94、同138等の顔料等を上げることができる。
【0096】
マゼンタトナーの着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等の染料、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43等の顔料等を用いることができる。
【0097】
シアントナーの着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等の染料、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等の顔料等を用いることができる。
【0098】
また、特別色のトナーの着色剤としては、上記着色剤の混合物を用いることも可能である。染料、顔料の数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね数平均粒径が10〜200nm程度が好ましい。
【0099】
又、必要に応じ荷電制御剤を添加することができる。
【0100】
荷電制御剤としては、カラートナーに適用する場合は無色、又は白色のものが好ましく、具体的にはサリチル酸又はサリチル酸誘導体の亜鉛塩等を挙げることができる。
【0101】
〈重合法によるトナー粒子の製造〉
重合法によるトナーの製造としては、懸濁重合法又は乳化重合法が利用される。
【0102】
重合法によるトナーの製造では、化合物として重合性単量体、重合開始剤及び着色剤を用いる。また必要に応じて、離型剤、帯電制御剤等を用いることができる。
【0103】
重合性単量体は、特に限定されないが、好ましい例としては、モノビニル系単量体を挙げることができる。具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物;等のモノビニル系単量体が挙げられる。これらのモノビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル系単量体のうち、スチレン系単量体や、スチレン系単量体とアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体との併用などが、好適に用いられる。
【0104】
また、重合性単量体と共に、架橋性単量体及び重合体を用いるとホットオフセット改善に有効である。架橋性単量体は、2以上の重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等の2個のビニル基を有する化合物、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルやトリメチロールプロパントリアクリレート等の3個以上のビニル基を有する化合物等を挙げることができる。架橋性重合体は、重合体中に2個以上のビニル基をゆうする重合体のことであり、具体的には、分子内に2個以上の水酸基を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリエチレングリコールとアクリル酸やメタクリル酸のエステル等を挙げることができる。これらの架橋性単量体及び架橋性重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。使用量は、重合性単量体100質量部当たり、通常10質量部以下、好ましくは、0.1〜2質量部である。
【0105】
更に、保存性と低温での定着性とのバランスを良くするためにマクロモノマーを単量体として用いることが好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が小さいものを用いると、重合体粒子の表面部分が柔らかくなり、保存性が低下するようになる。逆に数平均分子量が大きいものを用いると、マクロモノマーの溶融性が悪くなり、定着性および保存性が低下するようになる。クロモノマー分子鎖の末端に有するビニル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、共重合のしやすさの観点からメタクリロイル基が好適である。
【0106】
マクロモノマーは、前記モノビニル系単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有するものが好適である。モノビニル系単量体を重合して得られる重合体とマクロモノマーとの間のガラス転移温度(Tg)の高低は、相対的なものである。例えば、モノビニル系単量体がTg=70℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、Tgが70℃を越えるものであればよい。モノビニル系単量体がTg=20℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、例えば、Tg=60℃のものであってもよい。なお、マクロモノマーのTgは、通常の示差熱計(DSC)等の測定機器で測定される値である。
【0107】
マクロモノマーの具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体、ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマー、特開平3−203746号公報の第4頁〜第7頁に開示されているものなどを挙げることができる。これらマクロモノマーのうち、親水性のもの、特にメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独でまたはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が、本発明に好適である。マクロモノマーを使用する場合、その量は、モノビニル系単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好適には0.03〜5質量部、さらに好適には0.05〜1質量部である。マクロモノマーの量が少ないと、保存性が向上しない。マクロモノマーの量が極端に多くなると定着性が低下するようになる。
【0108】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーブチルネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1’,3,3’−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。このうち、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の重合開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜15質量部、更に好ましくは0.5〜10質量部用いる。重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することが好ましいが、場合によっては、造粒工程終了後の懸濁液に添加することもできる。
【0109】
着色剤としては、カーボンブラック、チタンホワイトの他、あらゆる顔料及び/又は染料を用いることができる。黒色のカーボンブラックは、一次粒径が20〜40nmであるものを用いる。20nmより小さいとカーボンブラックの分散が得られず、かぶりの多いトナーになる。一方、40nmより大きいと、多価芳香族炭化水素化合物の量が多くなって、安全上の問題が起こる。
【0110】
フルカラー用トナーを得る場合、通常、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を使用する。イエロー着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、83、90、93、97、120、138、155、180および181等が挙げられる。マゼンタ着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド48、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物等が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、および60等が挙げられる。
【0111】
離型剤としては、低軟化温度物質のものが用いられ、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス類や分子末端酸化低分子量ポリプロピレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量末端変性ポリプロピレンおよびこれらと低分子量ポリエチレンのブロックポリマー、分子末端酸化低分子量ポリエチレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量ポリエチレンおよびこれらと低分子量ポリプロピレンのブロックポリマーなどの末端変性ポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;モンタン、セレシン、オゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトララウレートなどのペンタエリスリトールエステル;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサラウレートなどのジペンタエリスリトールエステル;等が挙げられ、これらは1種あるいは2種以上が併用しても構わない。
【0112】
これらの内、合成ワックス(特にフィッシャートロプシュワックス)、合成ポリオレフィン、低分子量ポリプロピレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが好ましい。なかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜200℃、好ましくは50〜180℃、60〜160℃の範囲にあるペンタエリスリトールエステルや、同吸熱ピーク温度が50〜80℃の範囲にあるジペンタエリスリトールエステルなどの多価エステル化合物が定着−剥離性バランスの面で特に好ましい。とりわけ分子量が1000以上であり、スチレン100質量部に対し25℃以下で5質量部以上溶解し、酸価が10mg/KOH以下であるジペンタエリスリトールエステルは、定着温度低下に著効を示す。トナーとしての吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。上記低軟化温度物質は、重合性単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部(更には1〜15質量部)用いることが好ましい。
【0113】
帯電制御剤は、生成するトナーの帯電性を向上させるために、重合性単量体組成物中に含有させることが好ましく、各種の正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を用いることができる。具体的には、ボントロンN01(オリエント化学社製)、ニグロシンベースEX(オリエント化学社製)、スピロブラックTRH(保土ケ谷化学社製)、T−77(保土ケ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)、ボントロンE−81(オリエント化学社製)、ボントロンE−84(オリエント化学社製)、ボントロンE−89(オリエント化学社製)、ボントロンF−21(オリエント化学社製)、COPY CHRGE NX(クラリアント社製)、COPY CHRGE NEG(クラリアント社製)、TNS−4−1(保土ケ谷化学社製)、TNS−4−2(保土ケ谷化学社製)、LR−147(日本カーリット社製)等の帯電制御剤、特開平11−15192号公報、特開平3−175456号公報、特開平3−243954号公報などに記載の4級アンモニウム(塩)基含有共重合体、特開平3−243954号公報、特開平1−217464号公報、特開平3−15858号公報などに記載のスルホン酸(塩)基含有共重合体等の帯電制御剤(帯電制御樹脂)を用いることができる。帯電制御樹脂は、高速連続印刷においても帯電性が安定したトナーを得ることができる点で好ましい。帯電制御剤は、重合性単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜7質量部の割合で用いられる。
【0114】
懸濁重合法又は乳化重合法でトナー粒子を作製する場合、生成する粒子の安定化のために分散安定剤を使用することができる。
【0115】
用いられる分散安定剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;などの金属化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。
【0116】
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸物のコロイドを用いることが好ましい。
【0117】
難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する。
【0118】
分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の割合で使用する。この割合が少ないと充分な重合安定性や分散安定性を得ることが困難であり、凝集物が生成し易くなる。この割合が多いと微粒子増加により粒径分布が広がり易い。
【0119】
重合性単量体組成物は、前記の着色剤、重合性単量体、重合開始剤などを均一に混合することによって得られる。均一混合する方法は特に限定されないが、例えばボールミルなどのメディア型分散機を用いることができる。重合性単量体組成物を得るための混合方法は特に制限されないが、以下の方法を用いることが好ましい。重合開始剤は、後記の水分散媒に組成物を分散させる前に、着色剤等と一緒に重合性単量体と混合してもよいが、分散時の発熱により重合開始剤がラジカルを発生し、重合性単量体が予期せずに重合してしまい、トナー特性のばらつきを誘発することに恐れがある。そこで、着色剤や帯電制御剤などの添加剤を重合性単量体に加え、水分散媒に添加し、組成物が粗分散液滴になった後、重合開始剤を添加して、組成物に重合開始剤を吸収させ、分散機を用いて組成物を分散液滴にする方法が好適である。
【0120】
分散機は、高速回転剪断ミキサーが好ましく、高速回転する特殊形状のタービンと放射状のバッフルをもつステーターにより構成され、タービンの高速回転により生じる、タービン底部と上部の間の圧力差で吐出作用をすることを利用して、処理液をステーターの吸入孔より吸入し、高速回転するタービンの間で生じるせん断、衝撃、キャビテーションなどの作用を受けて、ステーターの吐出孔より吐き出させる構造の高速回転せん断型撹拌機、具体的には、エムテクニック社製の「クレアミックス」(商品名)や、荏原製作所社製の「エバラマイルダー」(商品名)などが挙げられる。この分散段階において、重合性単量体組成物は、滴下された重合開始剤と接触することによって、液滴内に重合開始剤を取り込み、重合性単量体組成物の液滴を形成する。
【0121】
重合開始剤を水系分散媒体中に添加する時期は、重合性単量体組成物の投入後であって、かつ、重合性単量体組成物の造粒工程の途中であることが好ましい。重合性単量体組成物を水系分散媒体中で所望の粒径の微細な液滴粒子にまで造粒した後に、重合開始剤を添加すると、当該重合開始剤の液滴粒子への均一な混合が困難となる。重合開始剤を添加する時期は、目的とするトナー粒子により異なるが、重合性単量体組成物の投入後、撹拌により形成される一次液滴の粒径(体積平均粒径)が、通常50〜1000μm、好ましくは100〜500μmとなった時点である。また、重合性単量体組成物の投入から重合開始剤の添加までの時間が長いと、造粒が完了してしまい、重合性単量体組成物と重合開始剤とが均一に混合せず、トナー粒子ごとの重合度や架橋度等の樹脂特性を均一にすることが困難となる。このため油溶性重合開始剤の添加時期は、反応スケールや粒径により多少差異はあるものの、一般的には重合性単量体組成物の投入後、プラント等の大型スケールでは、通常24時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは3時間以内であり、実験室レベルの小スケールでは、通常5時間以内、好ましくは3時間以内、より好ましくは1時間以内である。
【0122】
重合開始剤の添加した時から、その後の造粒工程(即ち重合開始前)での水系分散媒体の温度は、通常10〜40℃、好ましくは20〜30℃の範囲内に調整する。この温度が高すぎると系内で部分的に重合反応が開始してしまう。逆にこの温度が低すぎると撹拌により造粒する場合、系の流動性が低下して、造粒に支障が帰すおそれが生じる。重合性単量体組成物の液滴と重合開始剤の液滴を接触させて、重合開始剤を含有する重合性単量体組成物の液滴を形成させた後、さらに撹拌を継続して、所望の粒径の二次液滴粒子を造粒し、しかる後、懸濁重合する。造粒工程での二次液滴粒子の粒径は、その後の懸濁重合によって、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜30μm程度の体積平均粒径の重合トナーが生成する程度にまで微細化する。造粒時間は、重合性単量体、添加剤、重合開始剤等の種類と添加量、造粒温度、造粒機の種類、所望の粒径などにあわせて、任意に設定することができる。本発明に用いる水分散液は、前記組成物を水分散媒に分散したものである。水分散媒は、水だけでもよいが、通常、水に分散剤を含有させたものが好適である。
【0123】
重合性単量体組成物の分散液は、重合性単量体組成物の液滴の体積平均粒径が、通常2.0〜10.0μm、好ましくは2.0〜9.0μm、より好ましくは3.0〜8.0μmの状態である。液滴の粒径が大きすぎると、重合中の液滴が不安定となったり、得られるトナー粒子が大きくなり、画像の解像度が低下するようになる。液滴の体積平均粒径/数平均粒径は、通常1〜3、好ましくは1〜2である。該液滴の粒径分布が広いと定着温度のばらつきが生じ、かぶり、すじ故障、フィルミングなどの不具合が生じるようになる。液滴は、好適には、その体積平均粒径±1μmの範囲に30体積%以上、好ましくは60体積%以上存在する粒径分布のものである。
【0124】
(トナーの調製)
本発明に用いられるトナーは、上記で作製したトナー粒子をそのまま用いることもできるが、外添剤と混合して用いることが好ましい。外添剤としては、無機粒子や有機樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられる。有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、コアがスチレン重合体ででシェルがメタクリル酸エステル共重合体で形成されたコアシェル型粒子などが挙げられる。これらのうち、無機酸化物粒子、特に二酸化ケイ素粒子が好適である。また、これらの粒子表面を疎水化処理することができ、疎水化処理された二酸化ケイ素粒子が特に好適である。外添剤の量は、特に限定されないが、トナー粒子100質量部に対して、通常、0.1〜6質量部である。
【0125】
外添剤は2種以上を組み合わせて用いても良い。外添剤を組み合わせて用いる場合には、平均粒子径の異なる無機粒子同士または無機粒子と有機樹脂粒子を組み合わせる方法が好適である。外添剤の付着は、通常、外添剤とトナー粒子とを「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工社製)などの混合機に入れて攪拌して行う。
【0126】
〔現像剤〕
現像工程で用いる現像剤は、1成分現像剤でも2成分現像剤でも良い。
【0127】
1成分現像剤場合は、非磁性1成分現像剤、或いはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性1成分現像剤としたものが挙げられ、何れも使用することができる。
【0128】
又、2成分現像剤は、キャリア100質量部にトナー3〜20質量部を混合して調製したものである。キャリアの磁性粒子としては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものが良い。
【0129】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0130】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、或いは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。又、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0131】
次に、本発明の画像形成装置について説明する。
【0132】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0133】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0134】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0135】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0136】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0137】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0138】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成する像露光光源の面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビームの発光点を有している。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径が10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0139】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0140】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e2以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0141】
ここで、上記600dpi〜2500dpiの電子写真画像を得る為には、トナーの粒径は、体積平均粒径で3〜8μmが好ましい。このトナーの体積平均粒径は、コールターカウンターTAII、コルターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所製レーザー回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。コールターカウンターTAII及びコールターマルチサイザーではアパーチャー径=100μmのアパーチャーを用いて2.0〜40μmの範囲における粒径分布を用いて測定されたものを示す。
【0142】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0143】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0144】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0145】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0146】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0147】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0148】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0149】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0150】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0151】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体(中間転写媒体)ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0152】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0153】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0154】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0155】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0156】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0157】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
【0158】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0159】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0160】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0161】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0162】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0163】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0164】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0165】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0166】
次に図3は本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0167】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0168】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0169】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0170】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0171】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0172】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0173】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0174】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0175】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0176】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0177】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0178】
本発明の画像形成方法は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0179】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。又、文中の「部」は質量部を表す。
【0180】
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0181】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、十点表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0182】
〈中間層〉
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルター)し、中間層塗布液を作製した。
【0183】
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製) 1部
無機粒子:酸化チタン(数平均一次粒径35nm:シリカ・アルミナ処理及びメチルハイドロジェンポリシロキサン処理の酸化チタン) 3部
メタノール 10部
を混合し、分散機としてサンドミルを用い、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層分散液を作製した。
【0184】
上記塗布液を用いて前記支持体上に、乾燥膜厚1.0μmとなるよう塗布した。
【0185】
〈電荷発生層:CGL〉
電荷発生物質(CGM):前記CGM1 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0186】
〈電荷輸送層:CTL〉
電荷輸送物質(前記CTM1) 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚20.0μmの電荷輸送層1を形成した。
【0187】
〈ポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子(PTFE粒子)分散液の調製〉
PTFE粒子(平均一次粒径0.12μmおよび結晶化度91.3のPTFE粒子)を250℃で40分間加熱処理し、結晶化度を82.8にしたPTFE粒子を用い、下記のPTFE粒子分散液を調製した。
【0188】
PTFE粒子(PT1:平均一次粒径0.12μm、結晶化度を82.8)200部
トルエン 600部
シロキサン変性ポリカーボネート樹脂(Po−1:粘度平均分子量:4万)15部を混合した後ガラスビーズを用いたサンドグラインダー((株)アメックス製)にて分散し、PTFE粒子分散液を調製した。
【0189】
〈表面層:OCL〉
PTFE粒子分散液 815部
電荷輸送物質(前記CTM1) 150部
シロキサン変性ポリカーボネート樹脂(Po−1) 150部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 150部
酸化防止剤(AO2−1) 12部
THF:テトラヒドロフラン 2800部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 4部
を混合し、溶解して表面層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形スライドホッパ型塗布機で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚5.0μmの表面層を形成し、感光体1を作製した。
【0190】
感光体2〜5の作製
感光体1の作製において、電荷発生層の電荷発生物質、電荷輸送層及び表面層の電荷輸送物質、表面層のフッ素系樹脂粒子の種類と添加量を表1のように変化させた以外は感光体1と同様にして感光体2〜5を作製した。
【0191】
感光体6の作製
下記のようにして感光体6を作製した。
【0192】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、十点表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体上に、下記の中間層を形成した。
【0193】
〈中間層〉
ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 10.0部
酸化チタン「SMT500SAS」(テイカ社製) 30.0部
メタノール 100.0部
上記を循環式湿式分散機(デイスパーマットSLC12EX;VMA GETZMANN社製)を用いて分散した中間層塗布液を浸漬塗布して、乾燥膜厚4.0μmの中間層を形成した。
【0194】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質(CGM):前記CGM1 32部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製)
24.0部
酢酸t−ブチル 300.0部
上記を混合しサンドグラインダーにて分散し、電荷発生層塗布液を作製し、前記中間層上に該電荷発生層塗布液を浸漬塗布して、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0195】
〈電荷輸送層〉
CTM:CTM1 200.0部
ポリカーボネート「ユーピロンZ300」(三菱瓦斯化学社製)
300.0部
2,6−ジ−t−ブチル−4−フェニルフェノール 5.0部
1,2−ジクロロエタン 2000.0部
上記組成物を加熱溶解して、電荷輸送層塗布液を作製し、電荷輸送層塗布液を電荷発生層上に円形スライドホッパーにて塗布して、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0196】
〈表面層〉
(a)溶液
ポリカーボネート(Po−10:粘度平均分子量4万) 100部
1,2−ジクロロエタン 1200部
(b)
CTM:CTM1 4部
上記(a)溶液を加熱溶解して、表面層の塗布母液を作製し、次に該塗布母液を放冷した後、(b)の電荷輸送物質と酸化防止剤をさらに加えて固形分濃度10質量%になるように調製して、表面層塗布液を作製した。
【0197】
次に、前記電荷輸送層上に上記の表面層塗布液を円形スライドホッパーにて塗布して、110℃;60分加熱硬化し、乾燥膜厚5.0μmの表面層を形成し、感光体6を作製した。
【0198】
感光体7〜10の作製
感光体6の作製において、電荷発生層のCGM、電荷輸送層及び表面層のCTM、表面層の(a)溶液のポリカーボネートの種類、量を表2のように代えた以外は感光体6と同様にして感光体7〜10を作製した。
【0199】
感光体11の作製
感光体6の作製において、表面層を設けないで、電荷輸送層の乾燥膜厚を25μmとした以外は、感光体6と同様にして感光体11を作製した。
【0200】
【表1】

【0201】
【表2】

【0202】
表1中、
PTFEは、ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子
又、表1、表2中、
CGM1はCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン
CGM2はCu−Kαの特性X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において、少なくとも7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.1°の位置に特徴的な回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料
CGM3はCu−Kαの特性X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において、少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に特徴的な回折ピークを有するクロルガリウムフタロシアニン顔料
CGM4はCu−Kαの特性X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において、少なくとも6.8°、12.8°、15.8°、26.6°の位置に特徴的な回折ピークを有するガリウムフタロシアニン顔料
表1、表2中、CTM1、CTM2は下記構造の電荷輸送物質を表す。
【0203】
尚、表1中の表面層の接触角及び接触角のバラツキは、下記のカラー画像の評価終了時に測定した。
【0204】
【化10】

【0205】
以下に本発明に用いるトナーを作製した。
【0206】
〔トナーの作製〕
〈トナー粒子の作製〉
《トナー粒子1Bkの製造》
バインダー樹脂としてその軟化点が104℃、ガラス転移温度(Tg)が64℃のポリエステル樹脂;100質量部、離型剤として低分子量ポリプロピレン;3質量部、カーボンブラック;10質量部を予備混合した後に、2軸エクストルーダーにより混練温度105℃にて溶融混練し、冷却固化後に粉砕、分級して粒径(体積基準のメディアン粒径(D50))7.8μmの「トナー粒子1Bk」を得た。このトナー粒子の軟化点は102℃であった。尚、トナーの粒径と軟化点は、前記の測定方法で測定して得られた値である。
【0207】
《トナー粒子2Bkの製造》
バインダー樹脂としてその軟化点が85℃であり、二山の分子量分布を有するスチレン−アクリル樹脂;100質量部、離型剤として低分子量ポリプロピレン;4質量部、カーボンブラック;10質量部を予備混合した後に、2軸エクストルーダーにより混練温度90℃にて溶融混練し、冷却固化後に粉砕、分級して粒径7.7μmの「トナー粒子2Bk」を得た。このトナー粒子の軟化点は82℃であった。
【0208】
《トナー粒子3Bkの製造》
バインダー樹脂としてその軟化点が125℃のポリエステル樹脂;100質量部、離型剤として低分子量ポリエチレン;3質量部、カーボンブラック;10質量部を予備混合した後に、2軸エクストルーダーにより混練温度140℃にて溶融混練し、冷却固化後に粉砕、分級して粒径7.5μmの「トナー粒子3Bk」を得た。このトナー粒子の軟化点は118℃であった。
【0209】
《トナー粒子4Bkの製造》
バインダー樹脂としてその軟化点が83℃のポリエステル樹脂;100質量部、離型剤として低分子量ポリエチレン;3質量部、カーボンブラック;10を予備混合した後に、2軸エクストルーダーにより混練温度90℃にて溶融混練し、冷却固化後に粉砕、分級して粒径7.6μmの「トナー粒子4Bk」を得た。このトナー粒子の軟化点は77℃であった。
【0210】
《トナー粒子5Bkの製造》
スチレン90質量部に離型剤「FT−100」(日本精蝋社製)10質量部を入れ、ビーズミルを用いて、平均粒径は2μmになるように湿式粉砕した。スチレン67質量部、n−ブチルアクリレート13質量部、ジビニルベンゼン0.5質量部、t−ドデシルメカプタン1質量部、前記湿式粉砕で得られた離型剤のスチレン溶液20質量部(スチレン18質量部と離型剤2質量部)、カーボンブラック「#25」(三菱化学社製)7質量部、及び帯電制御剤「スピロンブラックTRH」(保土ケ谷化学社製)1質量部を室温下でビーズミルで分散し、単量体組成物を得た。
【0211】
一方、イオン交換水250質量部に塩化マグネシウム9.8質量部を溶解した水溶液に、イオン交換水50質量部に水酸化ナトリウム6.9質量部を溶解した水溶液を撹拌下で、徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド分散液を調整した。
【0212】
上述により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記単量体組成物及び重合開始剤のt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5質量部を投入し、プロペラ式撹拌機を用いて撹拌混合して、組成物分散液を得、次いで、500ml加圧真空アタッチメント、回転子(ロータR−2)、及び固定子(スクリーンS−1.0−24)を装着し(回転子と固定子との間隙は0.2mm)、回転子回転数21,000rpmで稼働している造粒装置「クレアミックスCLM−0.8S」(エムテクニック社製)に、ポンプを用いて、前記混合液を30kg/hrの流量で供給し、トナー用単量体組成物の液滴を造粒した。液滴の平均粒径は約5.0μmであった。
【0213】
この造粒した組成物水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に移した。組成物水分散液を加熱し、水分散液温度が室温から70℃まで水分散液温度を平均約50℃/時間の加温速度で昇温させ、70℃で温度一定となるように制御した。重合転化率が50%になった時点で昇温を再開し、水分散液温度が95℃になるまで水分散液温度を平均40℃/時間の速度で昇温させ、水分散液温度が95℃になった時点で一定温度となるよう制御した。水分散液温度は、重合反応器ジャケット温度と重合反応溶液内温度とを測定し、カスケード制御法などを用いてジャケット温度をコントロールして前記履歴を実現させた。水分散液温度が95℃に達した後、水分散液温度は94〜97℃の間で推移した。重合反応終了後、組成物水分散液を冷却し、トナー用重合体粒子の水分散液を得た。
【0214】
上記により得たトナー用重合体粒子の水分散液を撹拌しながら、硫酸により系のpHを7以下にして酸洗浄(25℃、10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500質量部を加えて再スラリー化し、水洗浄を行った。その後、再度、脱水と水洗浄を数回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥機にて45℃で2昼夜乾燥を行い「トナー粒子5Bk」を作製した。
【0215】
《トナー粒子5Yの製造》
トナー5Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントイエロー185を8部使用した以外同様にして「トナー5Y」を得た。
【0216】
《トナー粒子5Mの製造》
トナー5Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントレッド122を10部使用した以外同様にして「トナー5M」を得た。
【0217】
《トナー粒子5Cの製造》
トナー5Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントブルー15:3を5部使用した以外同様にして「トナー5C」を得た。
【0218】
《トナー粒子6Bkの製造》
「トナー粒子5Bk」の作製において、スチレン90質量部に離型剤「FT−100」(日本精蝋社製)10質量部を入れ、ビーズミルを用いて、平均粒径は2μmになるように湿式粉砕した。スチレン70質量部、n−ブチルアクリレート14質量部、ジビニルベンゼン1.0質量部、t−ドデシルメカプタン1質量部、前記湿式粉砕で得られた離型剤のスチレン溶液20質量部(スチレン18質量部と離型剤2質量部)、カーボンブラック「#25」(三菱化学社製)7質量部、及び帯電制御剤「スピロンブラックTRH」(保土ケ谷化学社製)1質量部を室温下でビーズミルで分散し、単量体組成物を得た以外は「トナー粒子5Bk」の作製と同様にして「トナー粒子6Bk」を作製した。
【0219】
《トナー粒子7Bkの製造》
「トナー粒子5Bk」の作製において、スチレン90質量部に離型剤「FT−100」(日本精蝋社製)10質量部を入れ、ビーズミルを用いて、平均粒径は2μmになるように湿式粉砕した。スチレン73質量部、n−ブチルアクリレート14質量部、ジビニルベンゼン1.0質量部、t−ドデシルメカプタン1質量部、前記湿式粉砕で得られた離型剤のスチレン溶液20質量部(スチレン18質量部と離型剤2質量部)、カーボンブラック「#25」(三菱化学社製)7質量部、及び帯電制御剤「スピロンブラックTRH」(保土ケ谷化学社製)1質量部を室温下でビーズミルで分散し、単量体組成物を得た以外は「トナー粒子5」の作製と同様にして「トナー粒子7Bk」を作製した。
【0220】
《トナー粒子8Bkの製造》
「トナー粒子5Bk」の作製において、スチレン90質量部に離型剤「FT−100」(日本精蝋社製)10質量部を入れ、ビーズミルを用いて、平均粒径は2μmになるように湿式粉砕した。スチレン75質量部、n−ブチルアクリレート8質量部、ジビニルベンゼン1.8質量部、t−ドデシルメカプタン1質量部、前記湿式粉砕で得られた離型剤のスチレン溶液20質量部(スチレン18質量部と離型剤2質量部)、カーボンブラック「#25」(三菱化学社製)7質量部、及び帯電制御剤「スピロンブラックTRH」(保土ケ谷化学社製)1質量部を室温下でビーズミルで分散し、単量体組成物を得た以外は「トナー粒子Bk」の作製と同様にして「トナー粒子8Bk」を作製した。
【0221】
〈トナーの調製〉
上記で作製した「トナー粒子1Bk〜8Bk」の各々100質量部に対し、疎水性シリカ0.5質量部、疎水性チタニア1.0質量部を添加し、混合処理して「トナー1Bk〜8Bk」を調製した。
【0222】
表3、上記で得られた「トナー1Bk〜8Bk、5Y、5M、5C」の軟化点、粒径(体積基準のメディアン粒径D50)を示す。
【0223】
【表3】

【0224】
〔現像剤の調製〕
上記で作製したトナーの各々に、シリコン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを、前記トナーの濃度が5質量%になるよう撹拌混合機を用い混合し、「現像剤1Bk〜7Bk、5Y、5M、5C」を調製した。
【0225】
評価1
感光体及び現像剤を表4のように組み合わせて、基本的に図2の構成を有する市販の中間転写媒体を有するフルカラー複合機8050(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)社製)改造機(露光手段を下記面発光レーザアレイに変更)に搭載し、カラー画像の評価を行った。
【0226】
画像形成のその他の条件
プロセススピード:220mm/sec
現像剤:前記キャリア及びトナーを含有する二成分現像剤を用いた。
【0227】
感光体のクリーニング装置:ゴム弾性のクリーニングブレードを(線荷重:18N/m)の当接条件で用いた。
【0228】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
図4に例示したような面発光レーザアレイを用いた。面発光レーザアレイは、縦(副走査方向)及び横(主走査方向)で、各発光点が重ならないように、配置されている。
【0229】
面発光レーザアレイは、縦横各々、6×6マトリックスの36個の発光点を有するものを用いた。実際に使用する場合にはコンピュータでの制御条件の制約[2のn乗(この場合は25)]による。そのため、36本ではなく、32本を使用している。
【0230】
評価の環境条件;10万枚プリント後、高温高湿(30℃80%RH)の環境で作製したプリント等で評価した。
【0231】
評価項目及び評価基準
カブリ
スタート時、10万枚目について濃度計「RD−918」(マクベス社製)を使用し、カブリ濃度についてはA4紙の反射濃度を0.000とした相対濃度で測定した。
【0232】
◎:0.010未満(非常に良好)
○:0.010以上0.020未満(実用上問題ないレベル)
×:0.020以上(実用上問題あり)
画像濃度
スタート時、10万枚目について濃度計「RD−918」(マクベス社製)を使用し、プリンター用紙の濃度を0.0とした相対濃度で測定した。
【0233】
◎:1.3以上/良好
○:1.0以上〜1.3未満/実用上問題ないレベル
×:1.0未満/実用上問題あり
(文字太りの評価)
文字太りは、3ポイント及び5ポイントの文字をプリントし、文字太りを目視で評価した。
【0234】
◎:面発光レーザアレイの発光点光量バラツキによる文字太りの発生が全くなく、3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能(良好)
○:面発光レーザアレイの発光点光量バラツキによる文字太りの発生が少なく、3ポイントは一部判読不能、5ポイントは明瞭であり容易に判読可能(実用上問題ないレベル)
×:面発光レーザアレイの発光点光量バラツキによる文字太りの発生が著しく、3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部或いは全部が判読不能(実用上問題あり)
筋状濃度ムラの評価
面発光レーザアレイの発光点光量のバラツキによる筋状濃度ムラの評価を下記基準により評価した。
【0235】
◎:ハーフトーン画像に筋状濃度ムラが全く発生していない。(良好)
○:ハーフトーン画像の一部に筋状濃度ムラが発生しているが、注意しないと気がつかない(実用上問題ないレベル)
×:ハーフトーン画像に筋状濃度ムラが発生しているのが、容易に発見できる。(実用上問題あり)
膜厚減耗量の評価
上記評価において、10万枚プリントのスタート時と終了時の膜厚差を測定した。
【0236】
膜厚測定法
感光層の膜厚は均一膜厚部分をランダムに10ケ所測定し、その平均値を感光層の膜厚とする。膜厚測定器は渦電流方式の膜厚測定器EDDY560C(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いて行い、実写試験前後の感光層膜厚の差を膜厚減耗量とする。
【0237】
評価結果を表4に示した。
【0238】
【表4】

【0239】
表4から明らかなように、水に対する接触角が90°以上の表面層を有する有機感光体を用い、トナーの軟化点が75〜120℃である現像剤の組み合わせ1〜3、5〜10は、カブリ、画像濃度、文字太り、筋状濃度ムラの各評価で良好な結果をを得ているが、トナーの軟化点が73℃の現像剤の組み合わせ4及びトナーの軟化点が72℃の現像剤の組み合わせ11は文字太りの為、文字太りの劣化が大きく、トナーの軟化点が72℃の現像剤の組み合わせ12では、筋状濃度ムラが発生している。又、表面層の接触角が83°の感光体11を用いた組み合わせ13は、文字太り及び筋状濃度ムラの劣化が大きい。
【0240】
評価2
表5のように感光体及びトナーを組み合わせ(組み合わせNo.21)を用いた以外は、評価1と同様な市販のフルカラー複合機8050に、感光体及び現像剤を搭載し、カラー画像の評価を行った。評価は、白地部、べた黒部、及びレッド、グリーン、ブルーのソリッド画像部、文字画像部を有するオリジナル画像を用いて、A4紙に複写し評価した。詳しくは、スタート時及び5000枚毎に、文複写画像を計10万枚印刷して評価した。評価項目は、評価1で行った評価の他に、下記の色再現性を追加して行った。
【0241】
色再現性の評価
1枚目の画像および100枚目の画像のY、M、C各トナーにおける二次色(レッド、ブルー、グリーン)のソリッド画像部(ハーフトーンソリッド画像部:反射濃度0.50)の色を「MacbethColor−Eye7000」により測定し、CMC(2:1)色差式を用いて各ソリッド画像の1枚目と100枚目の色差を算出した。
【0242】
◎:面発光レーザアレイの発光点光量バラツキが全く見られず、色むらが全く発生していない。ハーフトーンソリット画像の場所による色差の変化がが1未満。(良好)
○:面発光レーザアレイの発光点光量バラツキによる色むらの発生が少なく、ハーフトーンソリット画像の場所による色差の変化が3未満(実用上問題ないレベル)
×:面発光レーザアレイの発光点光量バラツキによる色むらの発生が著しく、ハーフトーンソリット画像の場所による色差の変化が3以上(実用上問題あり)
結果を表5に示す。
【0243】
【表5】

【0244】
表5より明らかなように、水に対する接触角が90°以上の表面層を有する有機感光体を用い、トナーの軟化点が75〜120℃である現像剤の組み合わせNo.21は、カブリ、画像濃度、文字太り、筋状濃度ムラ及び色再現性の各評価で良好な結果をを得ている。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【図4】面発光レーザアレイを説明した図である。
【符号の説明】
【0246】
1 画像形成装置
21 感光体
22 帯電手段
23 現像手段
24 転写極
25 分離極
26 クリーニング装置
30 露光光学系
45 転写搬送ベルト装置
50 定着手段
250 分離爪ユニット
L 発光点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層を有する有機感光体と、前記有機感光体を帯電させる帯電手段と、前記帯電手段により帯電された有機感光体に露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記有機感光体から中間転写体(中間転写媒体)を介してあるいは介さずして転写材に転写する転写手段とを少なくとも備えている画像形成装置において、前記露光手段は縦横、各々3本以上のレーザビーム発光点を有する面発光レーザアレイを露光光源として備え、前記レーザビーム発光点を前記有機感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式を採用する構成を有しており、前記有機感光体の導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であり、現像手段に、軟化点が75〜120℃であるトナーを具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナーの体積平均粒径が3〜8μmであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーが重合法から作られた重合トナーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記表面層の水に対する接触角のバラツキの範囲が±3°以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記有機感光体は中間層、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に設けた積層型感光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発光点が2次元的に配置された構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
導電性支持体上に感光層を有する有機感光体と、前記有機感光体を帯電させる帯電工程と、前記帯電工程により帯電された有機感光体に露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像工程と、前記トナー像を前記有機感光体から中間転写体(中間転写媒体)を介してあるいは介さずして転写材に転写する転写工程とを少なくとも備えている画像形成方法において、前記露光工程は縦横、各々3本以上のレーザビーム発光点を有する面発光レーザアレイを露光光源として備え、前記レーザビーム発光点を前記有機感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式を採用する構成を有しており、前記有機感光体の導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であり、現像工程に、軟化点が75〜120℃であるトナーを具備することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられる有機感光体において、導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上であることを特徴とする有機感光体。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくとも何れか1つと、導電性支持体から最も離れた位置にある表面層の水に対する接触角が90°以上である有機感光体を一体化し、画像形成装置本体に対し一体的に出し入れ可能に形成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−3674(P2007−3674A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181812(P2005−181812)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】