説明

画像形成装置

【課題】 複数のユーザアカウントによって処理を中断させずに多重にログインできる技術を提供する。
【解決手段】 画像形成装置1の記憶部20には、ユーザを識別するユーザIDとそのユーザに許可されたサービスIDとが対応付けて記憶されている。また、ユーザIDとそのユーザIDに対する課金情報が対応付けて記憶されている。ログイン中のユーザIDに許可されていないサービスを実行する旨の指示が入力されると、画像形成装置1の制御部10は、その旨を表示し、他のユーザIDを所持しているかを確認する画面を表示部50に表示させる。ユーザが他のユーザIDを入力すると、画像形成装置1の制御部10は、ログインユーザIDリストL1に、入力されたユーザIDを追加する。このように、複数のユーザIDによって多重にログインできるようにすることによって、画像形成装置1のユーザや管理者の利便性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ認証を行ってログイン処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ、FAX、コピー等の複数の機能(サービス)を兼ね備えた画像形成装置が普及している。このような画像形成装置では、例えばユーザIDとパスワード等によってユーザ認証を行って複数の利用者(ユーザ)による利用を可能とするものがある。ユーザ認証を行うことによって、利用可能なサービスをユーザ毎に設定したり、課金情報をユーザ毎に管理したりすることが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の認証/課金システムを、複数の複合機や複数のサービスに対して使用できるシステムが公開されている。具体的には、あるサービスに対して、そのサービスに適用する一つまたは複数の認証/課金システムを選択できるようになっている。このようなシステムにおいては、認証システムを複数の複合機やサービスで共有することが可能であり、また、1つの複合機またはサービスで複数の認証システムを用いることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−129247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなユーザ認証を行う画像形成装置においては、1台の装置にログインできるのは1つのユーザアカウントであることが一般的である。すなわち、他のユーザアカウントでログインしたい場合は、現状ログインしているユーザアカウントを一旦ログオフして、他のユーザアカウントでログインし直さなければならず、画像形成装置の管理者やユーザにとっての利便性が悪いという問題がある。
【0005】
具体的には、例えば、画像形成装置の動作中に障害が発生した場合、管理者権限を有するユーザアカウントでログインしていなければ障害状況の確認を行うことはできず、管理者権限のないユーザアカウントでログインしていた場合は、一旦ログオフしてしまうと、その時点での障害状況を示すデータが消えてしまい、障害状況を確認することが出来ないという問題がある。
また、例えば、あるユーザが、白黒コピー用、カラーコピー用等のサービス毎に複数のユーザアカウントを所持している場合がある。このような場合に、白黒原稿とカラー原稿とが混ざった原稿をコピーしたい場合には、そのユーザは、白黒コピー用のユーザアカウントでその画像形成装置にログインして複写を行った後、一旦ログオフしてカラーコピー用のユーザアカウントで再度ログインしなければカラー複写を行うことができない。つまり、操作の途中で他のサービスを使用したくてもできず、他のサービスを使用したい場合は、一旦ログオフしてその処理を中断させなければならなかった。
【0006】
特許文献1に記載のシステムは、1つのサービスに対して複数の認証システムを用いることができるが、他のサービスを利用したい場合には、一旦ログオフした後、異なるユーザアカウントで再度ログインし直さなければならず、ユーザの利便性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のユーザアカウントによって処理を中断させずに多重にログインできるようにすることによって、ユーザや管理者の利便性を向上させることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、1または複数の画像処理を実行する画像処理手段と、ユーザを識別するユーザアカウントと、前記画像処理の処理種別を示す処理種別情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、ユーザ認証を行う認証手段と、前記認証手段によるユーザ認証が行われたことを条件として、最初のユーザアカウントをログインさせる第1のログイン手段と、前記第1のログイン手段によって前記最初のユーザアカウントがログインされた後、前記認証手段によるユーザ認証が行われたことを条件として、2番目以降のユーザアカウントを多重にログインさせる第2のログイン手段と、前記最初のユーザアカウントと前記2番目以降のユーザアカウントとが多重にログインされている状態において、前記記憶手段に記憶された処理種別情報の示す画像処理であって、ログインされているすべてのユーザアカウントに対応する画像処理の実行を、ログインされているいずれのユーザアカウントに対しても、許可する処理実行許可手段とを備えることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0009】
本発明の好ましい態様において、前記ユーザアカウントと、課金の内容を示す課金情報とが対応付けて記憶される課金情報記憶手段と、前記画像処理手段による画像処理の内容に応じて課金処理を行う課金手段とを備え、前記課金手段は、前記最初のユーザアカウントと前記2番目以降のユーザアカウントとが多重にログインされた場合に、前記最初のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報または、前記2番目以降のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報のうちのいずれか一つを用いて課金処理を行うようにしてもよい。
また、更に好ましい態様において、前記最初のユーザアカウントと前記2番目以降のユーザアカウントとが多重にログインされた場合に、前記最初のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報または、前記2番目以降のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報のうちのいずれか一つを選択する選択手段を備え、前記課金手段は、前記画像処理手段による画像処理の内容に応じて、前記選択手段によって選択された課金情報を用いて課金処理を行うようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の好ましい態様において、前記認証手段は、プリペイドカード、接触型カード、非接触型カードの少なくともいずれか一つを用いてユーザ認証を行うようにしてもよい。
また、本発明の別の好ましい態様において、前記ユーザアカウントと、多重ログインを許可するか否かを示す許可情報とが対応付けて記憶される許可情報記憶手段を備え、前記第2のログイン手段は、前記許可情報記憶手段内の許可情報を参照して、多重ログインが許可されていないユーザアカウントに対しては多重ログインを許可しないようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様において、前記第1のログイン手段と前記第2のログイン手段とによって、複数の前記ユーザアカウントが多重にログインされている状態において、ログインされている複数のユーザアカウントを一括してログオフさせるログオフ手段を備えるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様において、前記第1のログイン手段と前記第2のログイン手段とによって複数の前記ユーザアカウントが多重にログインされている状態において、ログインされている複数のユーザアカウントのうちのいずれか一つが選択される選択手段と、前記選択手段によって選択されたユーザアカウントをログオフするログオフ手段とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のユーザアカウントを用いて処理を中断させずに多重にログインすることができ、ユーザや管理者の利便性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A:構成>
図1は、この発明の実施形態である画像形成装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。この画像形成装置1は、例えばカラープリンタやカラー複写機、或いはこれらの複数の機能(サービス)を兼ね備えた複合機等である。図において、10は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置を備えた制御部である。20は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、あるいはハードディスク等の記憶装置を備える記憶部であり、画像形成装置1の各部を動作させるための各種プログラムを記憶している。制御部10は、記憶部20に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、バスを介して画像形成装置1の各部を制御する。
【0015】
30は、原稿を光学的に読み取って原稿の画像を表す画像データを生成する画像読取部である。画像読取部30は、CCD(Charge Coupled Device)等により構成される光学系部材(図示略)を備えており、載置された原稿の画像を光学系部材によって読み取り、読み取った画像を表す画像データを生成する。40は、画像読取部30が読み取った画像データや、他の装置から通信ネットワークを介して受信される画像データに基づいてシート(用紙)に画像を形成する画像形成部である。画像形成部40は、画像読取部30から供給される画像データからY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の感光体ドラム(図示略)上に像光を照射して感光体ドラムの表面に静電電位の差による潜像を形成し、この潜像をトナーの選択的な付着によって可視化してトナー像とし、このトナー像をシートに転写してシートに画像を形成する。
【0016】
50は、液晶ディスプレイ等の表示装置を備えた表示部である。表示部50は、制御部10の制御の下、ユーザに操作を促すメッセージや処理状況を示す情報等を表示する。60は、ユーザが各種の操作を行うための操作部である。この操作部60は、タッチパネルとして機能する液晶ディスプレイを備えており、ユーザはこの液晶ディスプレイに触れることで各種操作を行うことができるようになっている。70は、各種通信装置等を備える通信部であり、制御部10の制御の下、通信ネットワークを介して他の装置とデータの授受を行う。
【0017】
記憶部20は、図1に示すように、ユーザ情報管理テーブルTBL1と、ユーザ権限管理テーブルTBL2とサービス課金情報テーブルTBL3と、課金情報管理テーブルTBL4と、ログインユーザIDリストL1とを備えている。ユーザ情報管理テーブルTBL1は、画像形成装置1のユーザ情報を管理するためのテーブルである。図2は、ユーザ情報管理テーブルTBL1のデータ構造の一例を示す図である。図示のように、このテーブルは、「ユーザID」と「パスワード」と「連絡先情報」と「併用許可フラグ」の各項目が互いに関連付けられている。これらの項目のうち、「ユーザID」は、ユーザを識別するための識別情報を意味している。本実施形態においては、このユーザIDが画像形成装置にログインするためのユーザアカウントとして用いられる。「パスワード」の項目は、ユーザが予め指定したパスワードである。「連絡先情報」は、ユーザのメールアドレス等の連絡先を示す情報を意味している。「併用許可フラグ」は、対応するユーザIDの併用を許可するか否かを示すものであり、予めユーザによって設定される。ユーザは、そのユーザIDを併用されたくない場合は、ユーザは、このユーザ情報管理テーブルTBL1の併用許可フラグを「F」に設定しておく。それ以外の場合は、ユーザはこの併用許可フラグを「T」に設定しておく。
【0018】
次に、ユーザ権限管理テーブルTBL2は、ユーザ毎の利用できるサービス(機能)を管理するためのテーブルである。図3は、ユーザ権限管理テーブルTBL2のデータ構造の一例を示す図である。図示のように、このテーブルは、「ユーザID」と「サービスID」と「許可フラグ」の各項目が互いに関連付けられている。これらの項目のうち、「ユーザID」は、上述したように、ユーザを識別するための識別情報を意味している。「サービスID」は、例えばコピーやFAX等、画像形成装置1が提供する機能(サービス)を識別する識別情報を意味している。「許可フラグ」は、ユーザがそのサービスを使用することができるか否かを示すものである。許可フラグに「T」が設定されている場合は、ユーザはそのサービスを使用することができる。逆に、許可フラグに「F」が設定されている場合は、そのそのユーザはそのサービスを使用することができない。
【0019】
次に、サービス課金情報テーブルTBL3は、画像形成装置1が提供するサービス毎の課金情報を管理するためのテーブルである。図4は、サービス課金情報テーブルTBL3のデータ構造の一例を示す図である。図示のように、このテーブルは、「サービスID」と「サービス名」と「課金単位」との各項目が互いに関連付けて記憶される。これらの項目のうち、「サービスID」の項目は、コピーやFAX等の画像形成装置1が提供するサービスを識別する識別情報を意味している。「サービス名」の項目は、例えば「白黒コピー」や「カラーコピー」、「FAX送信」等、サービスIDと対応するサービスの名称を意味している。「課金単位」の項目は、課金対象となるサービスの課金単位を示す情報を意味している。
【0020】
次に、課金情報管理テーブルTBL4には、ユーザID毎の課金情報が記憶される。画像形成装置1の制御部10は、画像形成装置1の提供するサービスが利用される毎に、上述したサービス課金情報テーブルTBL3を参照して課金額を算出し、この課金情報管理テーブルTBL4に記憶された課金情報に対して課金額を加算または減算することによって課金情報を更新していく。
【0021】
ログインユーザIDリストL1には、画像形成装置1にログイン中のユーザIDが記憶される。本実施形態である画像形成装置1は、複数のユーザIDで多重にログインすることが可能であり、多重にログインされている場合は、ログイン中の複数のユーザIDがこのログインユーザIDリストL1に記憶される。
【0022】
次に、この実施形態の機能構成について、図5を参照しつつ説明する。図5は、この実施形態の機能構成を概略的に示すブロック図である。なお、図5に示すユーザ認証部11と、サービス制御部12と、コピーサービス実行部13aと、プリントサービス実行部13bと、課金管理部14とは、画像形成装置1の制御部10が記憶部20に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0023】
ユーザ認証部11は、ユーザIDとパスワードとを照合することによってユーザ認証を行う。具体的には、画像形成装置1の操作部60または通信部70を介してユーザIDとパスワードとが入力されると、ユーザ認証部11は、入力されたユーザIDとパスワードと一致するものをユーザ情報管理テーブルTBL1から検索し、一致するものが検索されたか否かによって認証できたか否かを判定する。一致するものが検索された場合には、入力されたユーザIDによるログインを許可し、ログインユーザIDリストL1に入力されたユーザIDを登録する。一致するものが検索されなかった場合は、そのユーザIDによるログインを拒否する。また、ユーザ認証部11は、操作部60または通信部70を介してユーザIDとログオフする旨の指示が入力されると、そのユーザIDをログインユーザIDリストL1から削除してログオフ処理を行う。
【0024】
また、ユーザ認証部11は、複数のユーザIDを多重にログインさせることができるようになっている。最初のユーザIDがログオンされた後、更に他のユーザIDとパスワードとが入力されると、ユーザ認証部11は、入力された2番目以降のユーザIDとパスワードとによってユーザ認証を行い、認証されると、その2番目以降のユーザIDをログインユーザIDリストL1に追加する。このように、ログインユーザIDリストには、複数のユーザIDが登録できるようになっている。なお、以下の説明においては、複数のユーザIDによるログインを「多重ログイン」と称して説明する。
【0025】
図5に示すサービス制御部12は、どのような画像形成を行うかを示す指示情報に基づいて各種のサービスを実行させる。サービス制御部12は、操作部60または通信部70を介して指示情報が入力されると、指示されたサービスとログインユーザIDリストL1に登録されているユーザIDとをユーザ権限管理テーブルTBL2から検索し、指示されたサービスが許可されているか否かを判定する。許可されている場合は、その指示内容を、コピーサービス実行部13aや、プリントサービス実行部13b等に通知してサービスを実行させる。許可されていない場合は、その旨を表示部50に表示させる。
【0026】
複数のユーザIDが多重にログインされている場合は、サービス制御部12は、ログインされたいずれのユーザIDに対しても、ユーザ権限管理テーブルTBL2に記憶されたサービスIDの示すサービスであって、ログインされているすべてのユーザIDに対応するサービスの実行を許可する。例えば、図3に示す例において、「0001」のユーザIDのみがログインされている場合は、「02」のサービスIDの示すサービスの実行は許可されないが、「0001」と「0002」との2つのユーザIDが多重にログインされている場合は、「01」と「02」と「03」のサービスIDの示す全てのサービスの実行が許可される。
【0027】
コピーサービス実行部13aは、サービス制御部12からコピーを行う旨の指示を通知されると、画像読取部30および画像形成部40を制御して、コピー処理を実行させる。また、プリントサービス実行部13bは、サービス制御部12から印刷処理を行う旨の指示を通知されると、指示された画像データを画像形成部40に供給し、画像形成部40を制御して用紙(シート)に画像を形成させる。なお、この他にもFAXサービス実行部やスキャナサービス実行部等、各種のサービスを実行する実行部が、画像形成装置1の制御部10によって実現されるが、説明を簡潔にするため、図5には、コピーサービス実行部13aおよびプリントサービス実行部13bのみを表記している。なお、以下の説明においては、コピーサービス実行部13aやプリントサービス実行部を各々区別する必要がない場合には、これらを「サービス実行部13」と称することとする。
【0028】
次に、図5に示す課金管理部14は、課金情報管理テーブルTBL4の更新処理等を行って課金情報を管理するものである。サービス制御部12は、指示情報が入力されると、その指示情報の内容に基づいてサービス実行部13にサービスの実行を指示するとともに、指示情報の内容とログインされているユーザIDとを課金管理部に通知する。課金管理部14は、通知されたサービスIDとユーザIDと、サービス課金情報テーブルTBL3に基づいて課金額を算出し、課金情報管理テーブルTBL4に記憶された課金情報を更新する。
【0029】
複数のユーザIDが多重にログインされている場合は、課金管理部14は、どのユーザIDに対して課金するかを選択させる画面を表示部50に表示させ、ユーザによって選択されたユーザIDに対して課金処理を行う。即ち、課金管理部14は、選択されたユーザIDと対応する課金情報を更新する。
【0030】
<B:動作>
次に、この実施形態の動作について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。図6は、画像形成装置1の処理を示すフローチャートである。図において、まず、画像形成装置1のユーザ認証部11は、操作部60または通信部70を介してユーザ認証情報(ユーザIDとパスワード)とが入力されたことを検知すると(ステップS1;YES)、入力されたユーザIDとパスワードとの対をユーザ情報管理テーブルTBL1から検索してユーザ認証を行う(ステップS2)。認証された場合は(ステップS3;YES)、ユーザ認証部11は、入力されたユーザIDをログインユーザIDリストL1に登録することによってログイン処理を行う(ステップS4)。ステップS3において、認証されなかった場合は(ステップS3;NO)、その旨を表示部50に表示する等の処理を行った後、処理を終了する。
【0031】
ログイン処理が行われると(ステップS4)、次に、画像形成装置1のサービス制御部12は、操作部60または通信部70を介して入力された指示情報を判定する(ステップS5)。指示情報がサービスを実行する旨の指示である場合は、サービス制御部12は、ユーザ権限管理テーブルTBL2を参照して、指示されたサービスが許可されているか否かを判定する(ステップS6)。そのサービスが許可されていないと判断された場合は(ステップS6;NO)、サービス制御部12は、表示部50にその旨を示すメッセージを表示させる(ステップS8)。このとき、他のユーザユーザIDを所持しているかを確認するメッセージや、他のユーザIDの入力を促すメッセージを表示することが好ましい。メッセージを表示した後、画像形成装置1の制御部10は、ステップS1の処理に戻り、ユーザIDとパスワードの入力を待機する(ステップS1;NO)。そのユーザが別のユーザIDを所持している場合には、ユーザはその別のユーザIDとパスワードとを入力する。ユーザIDとパスワードとが入力されると、画像形成装置1のユーザ認証部11は、上述したステップS1〜ステップS4の処理を実行して、ログインユーザIDリストL1に入力されたユーザIDを追加してログイン処理を行う。即ち、本実施形態においては、複数のユーザIDによる多重ログインが可能となっている。
【0032】
ステップS6において、複数のユーザIDによって多重ログインされている場合は、サービス制御部12は、ログインしている複数のユーザID群に許可されたサービスのOR集合に含まれるサービスを許可する。具体的には、例えば、多重ログインされた一方のユーザIDには白黒コピーサービスが許可されており、他方のユーザIDに対してはカラーコピーサービスが許可されている場合は、サービス制御部12は、白黒コピーサービスとカラーコピーサービスとの両方のサービスを許可する。このようにすることによって、画像形成装置1のユーザは、複数のユーザIDで多重ログインすることによって、複数のサービスを連続して使用する場合であっても、ログオフやログインをその都度行う必要がないため、処理を中断させることなく複数のサービスを連続して使用することができる。
【0033】
ステップS6において、そのサービスが許可されている場合は(ステップS6;YES)、コピーサービス実行部13aやプリントサービス実行部13b等のサービス実行部13に指示を通知してそのサービスを実行させる(ステップS7)。
【0034】
次に、画像形成装置1の課金管理部14は、多重ログインされているか否かを判定し(ステップS9)、多重ログインされていない場合、即ち1つのユーザIDでのみログインされている場合は(ステップS9;NO)、そのユーザIDに対して課金処理を行う(ステップS10)。多重ログインされている場合、即ち複数のユーザIDによってログインされている場合は(ステップS9;YES)、いずれのユーザIDに対して課金するかを選択させる画面を表示部50に表示させ(ステップS11)、操作部60を介して選択されると(ステップS12;YES)、選択されたユーザIDに対して課金を行う(ステップS10)。課金処理を終えると、ステップS5の処理に戻り、入力される指示情報に応じた処理を実行する。加えて、ユーザIDと対応する連絡先情報が記憶されている場合には、その連絡先情報に使用内容を示す情報を送信するようにしてもよい。
【0035】
ステップS5において、ユーザIDとログオフを行う旨の指示が入力された場合は、ユーザ認証部11は、入力されたユーザIDをログインユーザIDリストL1から削除してログオフ処理を行う(ステップS13)。なお、多重ログインされている場合は、複数のユーザIDをまとめてログオフするようにしてもよく、どのユーザIDをログオフするかを選択させる旨のメッセージを表示部50に表示させてユーザに選択させるようにしてもよい。
【0036】
<C:動作例>
続いて、この実施形態の動作例について説明する。この動作例においては、あるユーザAは、「0001」と「0003」との2つのユーザIDを割り当てられているものとする。「0001」のユーザIDでは、白黒コピーサービスが許可されているが、カラーコピーサービスは許可されておらず、「0003」のユーザIDにはカラーコピーサービスが許可されているものとする。
【0037】
ユーザAは、まず、「0001」のユーザIDで画像形成装置1にログインする。すなわち、ユーザAは、ユーザID「0001」とそのユーザIDに対応するパスワードとを、操作部60を用いて画像形成装置1に入力する。画像形成装置1のユーザ認証部11は、図6のステップS1→S2→S3→S4の処理を実行してユーザID「0001」によるログイン処理を行う。
【0038】
続けて、ユーザAは、操作部60を操作して、白黒コピーを行う旨の指示情報を入力する。指示情報が入力されると、画像形成装置1の制御部10は、ステップS5→S6→S7→S9→S10の処理を実行して、白黒コピー処理を実行し、その処理に対応する課金処理を行う。この課金は、「0001」のユーザIDに対して行われる。
【0039】
次に、ユーザAは、操作部60を操作して、カラーコピーを行う旨の指示情報を入力する。画像形成装置1の制御部10は、ステップS5→S6→S8の処理を行う。すなわち、「0001」のユーザIDにはカラーコピーサービスは許可されていないため、制御部10は、その旨を表示部50に表示させる。
【0040】
ユーザAが「0003」のユーザIDを画像形成装置1に入力すると、画像形成装置1の制御部10は、ステップS1→S2→S3→S4の処理を行ってユーザID「0003」のログイン処理を行う。これにより、2つのユーザIDが多重にログインされる。続けて、制御部10は、ステップS5→S6→S7の処理を実行してカラーコピーを実行する。その後、画像形成装置1の制御部10は、ステップS9→S11→S12→S10の処理を行って、課金処理を行う。
【0041】
このように、白黒原稿とカラー原稿とが混ざった原稿をコピーしたい場合でも、本実施形態においては、ユーザAは、複数のユーザIDで多重に画像形成装置1にログインすることができるため、白黒原稿のコピーとカラー原稿のコピーとの間にログインやログオフの操作を行う必要がない。つまり、一方のユーザIDを一旦ログオフして処理を中断させることなく、コピーを連続して実行することが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0042】
また、上述した動作例以外にも、例えば管理者権限のないユーザIDでログイン中に障害が発生した場合であっても、管理者が管理権限を持つユーザIDで多重にログインすることができ、一旦ログオフする必要がないため、その障害状況を確認することが可能となる。
【0043】
また、例えばあるユーザIDで許されているサービスを使いたいが残金が小額である場合であっても、そのサービスの実行は許可されていないが残金は十分にある他のユーザIDによって多重ログインを行うことによって、一方の残金を用いて他方のサービスを使用することが可能となる。
【0044】
また、例えばあるユーザIDでログインして操作している途中で、課金額が切れた場合や別のユーザIDでしか許可されていない処理を途中で実行したい場合でも、ログオフせずに多重ログインして操作を継続することが可能となる。
【0045】
また、例えば、コンビニエンスストアなどに設置された画像形成装置を用いてスキャンサービスを利用している場合に、途中の数ページだけカラーでスキャンしたい場合がある。このとき、カラースキャンが利用可能な他のユーザIDを持っている場合は、作業を中断せず、2番目のユーザIDで多重にログインして作業を進めることができる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、あるユーザIDでログインした後、異なるユーザIDを用いて多重にログインすることが可能となり、画像形成装置1のユーザや管理者の利便性を向上させることが可能となる。
【0047】
<D:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。
(1)上述した実施形態では、パスワードとユーザIDとを用いてユーザ認証を行うようにしたが、認証方法はこれに限定されるものではなく、例えばプリペイドカード、接触型/非接触型カード等、好適にユーザを認証できる方法であればどのようなものであってもよい。例えばプリペイドカード等のカードを用いて認証を行う場合は、画像形成装置にカードリーダを設けて、カードリーダがカードの情報を読み取って認証するようにすればよい。また、カードが挿入される挿入口を備え、挿入口に挿入されたカードによって認証を行うようにしてもよい。
また、認証機構が挿入型カード認証の場合は、挿入したカードを抜いてもログオフされないようにしてもよい。このようにすれば、1枚目のカードを挿入した後、そのカードを抜いて、2枚目のカードを挿入すると、1枚目のカードと対応するユーザアカウントがログオフされることなく、2枚目のカードと対応するユーザアカウントを多重にログインすることが可能となる。なお、この場合は、操作画面上でユーザが最後のログオフを指示した時点で一括してログオフするようにしてもよい。
【0048】
(2)上述した実施形態においては、ユーザ情報管理テーブルTBL1に記憶された「併用許可フラグ」を用いて多重ログインをするか否かの判定を行うようになっていなかったが、この併用許可フラグ(許可情報)を用いて多重ログインを行う否かを判定するようにしてもよい。具体的には、画像形成装置1のユーザ認証部11は、画像形成装置1に入力されたユーザIDとパスワードとを用いてユーザ認証を行う際に、この併用許可フラグを参照して、多重ログインが許可されていないユーザIDに対しては多重ログインを許可しないようにする。
【0049】
(3)上述した実施形態では、プリンタやFAX等の複数のサービスを兼ね備えた画像形成装置1が、各サービスの実行処理や認証処理、課金処理等を行うようになっていた。これに対し、通信ネットワークで接続された2以上の複数の装置が上記実施形態に係る機能を分担するようにし、それら複数の装置を備えるシステムが同実施形態の画像形成装置1を実現させるようにしてもよい。
例えば、各種サービスの実行および認証処理を行う画像形成装置と、課金情報を管理するサーバ装置とが通信ネットワークで接続されたシステムとして構成されていてもよい。この場合は、画像形成装置1が、実行したサービスの内容とユーザIDとをサーバ装置に送信し、サーバ装置が課金額を算出して課金情報を所定の記憶領域に記憶するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態である画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係るユーザ情報管理テーブルのデータ構造を示す図である。
【図3】同実施形態に係るユーザ権限管理テーブルのデータ構造を示す図である。
【図4】同実施形態に係るサービス課金情報テーブルのデータ構造を示す図である。
【図5】同実施形態の機能構成を示すブロック図である。
【図6】同時実施形態の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1…画像形成装置、10…制御部、20…記憶部、30…画像読取部、40…画像形成部、50…表示部、60…操作部、70…通信部、11…ユーザ認証部、12…サービス制御部、13a…コピーサービス実行部、13b…プリントサービス実行部、14…課金管理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の画像処理を実行する画像処理手段と、
ユーザを識別するユーザアカウントと、前記画像処理の処理種別を示す処理種別情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、
ユーザ認証を行う認証手段と、
前記認証手段によるユーザ認証が行われたことを条件として、最初のユーザアカウントをログインさせる第1のログイン手段と、
前記第1のログイン手段によって前記最初のユーザアカウントがログインされた後、前記認証手段によるユーザ認証が行われたことを条件として、2番目以降のユーザアカウントを多重にログインさせる第2のログイン手段と、
前記最初のユーザアカウントと前記2番目以降のユーザアカウントとが多重にログインされている状態において、前記記憶手段に記憶された処理種別情報の示す画像処理であって、ログインされているすべてのユーザアカウントに対応する画像処理の実行を、ログインされているいずれのユーザアカウントに対しても、許可する処理実行許可手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ユーザアカウントと、課金の内容を示す課金情報とが対応付けて記憶される課金情報記憶手段と、
前記画像処理手段による画像処理の内容に応じて課金処理を行う課金手段と
を備え、
前記課金手段は、前記最初のユーザアカウントと前記2番目以降のユーザアカウントとが多重にログインされた場合に、前記最初のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報または、前記2番目以降のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報のうちのいずれか一つを用いて課金処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記最初のユーザアカウントと前記2番目以降のユーザアカウントとが多重にログインされた場合に、前記最初のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報または、前記2番目以降のユーザアカウントと対応付けて前記記憶手段に記憶された課金情報のうちのいずれか一つを選択する選択手段を備え、
前記課金手段は、前記画像処理手段による画像処理の内容に応じて、前記選択手段によって選択された課金情報を用いて課金処理を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記認証手段は、プリペイドカード、接触型カード、非接触型カードの少なくともいずれか一つを用いてユーザ認証を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ユーザアカウントと、多重ログインを許可するか否かを示す許可情報とが対応付けて記憶される許可情報記憶手段を備え、
前記第2のログイン手段は、前記許可情報記憶手段内の許可情報を参照して、多重ログインが許可されていないユーザアカウントに対しては多重ログインを許可しない
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1のログイン手段と前記第2のログイン手段とによって、複数の前記ユーザアカウントが多重にログインされている状態において、ログインされている複数のユーザアカウントを一括してログオフさせるログオフ手段
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1のログイン手段と前記第2のログイン手段とによって複数の前記ユーザアカウントが多重にログインされている状態において、ログインされている複数のユーザアカウントのうちのいずれか一つが選択される選択手段と、
前記選択手段によって選択されたユーザアカウントをログオフするログオフ手段と
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−58589(P2007−58589A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243254(P2005−243254)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】