説明

画像形成装置

【課題】 トナーホッパ内に配した第1の湿度センサが故障した場合でも、機器の稼動を中止することなく、ほぼ故障前の画像品位で機器の動作を継続出来るようにする。
【解決手段】 任意の閉空間に配され、閉空間の温度または湿度を測定する第1のセンサと、前記閉空間の外部に配され、該個所の温度または湿度を測定する第2のセンサを具備した画像形成装置に、前述の第1のセンサが故障した際に、第2のセンサの出力結果によって第1のセンサの出力予測を行う出力予測手段を具備し、前記出力予測手段の予測結果に応じて装置の動作をなすように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタなどの画像形成装置に関し、特に電子写真技術を用いた複写機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複写機に構成されているプリンタエンジン部では、例えば特許文献1のように現像器近傍に湿度検知器を設け、現像器内の現像剤のトナー濃度を一定に保つための動作制御系の中で現像剤の湿度による透磁率の変化を補正する電子写真複写機が提案されている。
【0003】
即ち、電子写真方式のプリンタでは、例えば正電位に帯電したトナーを負電位に帯電させた感光ドラムに静電吸着させて像形成を行うのであるが、例えば感光ドラムの電位が一定であってもトナーの電位が高ければ感光ドラムにより多くのトナーが付着するし、逆にトナーの電位が低ければより少ないトナーが付着するので、濃度に起因する画像品位に大きく影響する。トナーの帯電電位と湿度には密接な関係があることは良く知られており、特許文献1では、湿度検知器によってトナーの帯電電位を予測し、帯電電位が不足していると判断された場合は、トナーを攪拌するなどしてトナー同士の接触によってトナーの帯電電位を持ち上げる動作制御を行う必要がある。トナーの帯電電位が低いと判断された場合には、一般的には感光ドラムの帯電電位を下げる手法がとられる。
【0004】
一方、センシリオン(SENSIRION)社製の温湿度センサSHT1Xに代表されるように、耐水性および化学変化に影響されない小型のデジタルセンサが一般的に販売されている。このようなデジタル温湿度センサは、センサが検出する温度または湿度をシリアルデータで出力するとともに、チェックサムを送信する機能を有している。即ち、送信したデータに対応するチェックサムをチェックすることによって、送信したデータが正しいかどうかを確認することができる。
【0005】
従来、温湿度を測定には、TDK社製CHSシリーズに代表される抵抗変化型のセンサが用いられていた。この種のセンサは、感湿素子による湿度の変化に応じて抵抗値が変化する特性を利用し、抵抗値を湿度に換算する仕組みである。即ち、アナログ的な挙動を一方的に出力する構成であり、故障の検出は出力抵抗値が明らかに異常であるときに故障していると判断するしかなく、想定される抵抗値の出力のまま故障した場合は故障かどうか判断するすべはなかった。
【特許文献1】特開昭61−098370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で述べられているように、現像器外部に湿度検知器を設けても、現像器自体がトナーが充填される一種の閉空間であり、現像器外部の環境条件が急激に変化した場合現像器内部は急激な環境条件に追従できず、徐々に現像器外部の環境になじんでいく挙動を示す。従って、現像器外部に設けられた湿度検知器の検知結果では充分な現像剤の透磁率の変化を補正することができない。また、該湿度検知器が故障した場合は、現像剤の透磁率の補正が実施できなくなるので、著しい画像品位の低下を黙認したまま装置の稼動を続けるか、故障した湿度検知器を交換するまで装置の稼動を停止せざるを得なかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
任意の閉空間に配され、閉空間の温度または湿度を測定する第1のセンサと、前記閉空間の外部に配され、該個所の温度または湿度を測定する第2のセンサを具備した画像形成装置に、前述の第1のセンサが故障した際に、第2のセンサの出力結果によって第1のセンサの出力予測を行う出力予測手段を具備し、前記出力予測手段の予測結果に応じて装置の動作をなすように構成した。
【0008】
また、前述の任意の閉空間は、画像形成装置の現像材が充填された閉空間とした。
【0009】
また、前述の第1のセンサには、温度または湿度データの送信の他にコマンドに対するステータスを返す機能を有しており、第1のセンサの故障をセンサから返すステータスの異常により判断するようにした。
【発明の効果】
【0010】
任意の閉空間に配され、閉空間の温度または湿度を測定する第1のセンサと、前記閉空間の外部に配され、該個所の温度または湿度を測定する第2のセンサを具備した画像形成装置に、前述の第1のセンサが故障した際に、第2のセンサの出力結果によって第1のセンサの出力予測を行う出力予測手段を具備し、前記出力予測手段の予測結果に応じて装置の動作をなすように構成したので、複写になどに応用した場合、トナーホッパ内に配した第1の湿度センサが故障した場合でも、用紙カセットなどに設けられた第2湿度センサの出力により第1の湿度センサの出力を予測できるので、機器の稼動を中止することなく、ほぼ故障前の画像品位で機器の動作を継続することができる。
【0011】
また、前述の任意の閉空間は、画像形成装置の現像材が充填された閉空間としたので、トナーホッパなどに湿度センサを配した場合に、直接トナーの湿度を測定できるので、従来のようにトナーホッパ外に設けられた湿度センサによるトナーホッパ内の湿度予測よりも精度よくトナーの湿度を検出することができる。
【0012】
また、前述の第1のセンサには、温度または湿度データの送信の他にコマンドに対するステータスを返す機能を有し、第1のセンサの故障をセンサから返すステータスの異常により判断するようにしたので、従来の湿度センサの湿度を判定するデータそのものの挙動でセンサの故障を判断するより、より高精度に故障の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
図2は本発明を実施した画像形成装置の要部断面図である。本実施例の画像形成装置は電子写真方式とし、画像読み取り装置1Rにて原稿の画像を読み取り、画像出力部1Pにて画像読み取り装置1Rからの画像情報より画像を転写材Pに形成し、更に、画像出力部1Pに本発明が特に有効であると考えられる複数の画像形成部を並列に配し、且つ、中間転写方式を採用したカラー画像出力装置として説明していく。
【0016】
以下、画像出力部1Pについて概略を説明する。
【0017】
図2中、画像出力部1Pは大別して、画像形成部10、給紙ユニット20、中間転写ユニット30、定着ユニット40、及びDCコントローラ100から構成される。
【0018】
更に、個々のユニットについて詳しく説明する。画像形成部10は次に述べるような構成になっている。像担持体としての感光ドラムがその中心で軸支され、矢印方向に回転駆動される。感光ドラム11の外周面に対向して、その回転方向に一次帯電器12、露光部である光学系の露光部13、折り返しミラー16、現像装置14が配置されている。
【0019】
一次帯電器12において、感光ドラム11の表面に均一な帯電量の電荷を与える。次いで、露光部13により、記録画像信号に応じて変調した、例えばレーザービームなどの光線を、折り返しミラー16を介して感光ドラム11上に露光させることによって、そこに静電潜像を形成する。
【0020】
更に、現像剤(以下、これを「トナー」と称する)をそれぞれ収納した現像装置14によって上記静電潜像を顕像化する。顕像化された可視画像(現像像)を、中間転写体である中間転写ベルト31の画像転写領域Tに転写する。
【0021】
感光ドラム11が回転して、画像転写領域Tを通過した下流で、クリーニング装置15により、中間転写ベルト31に転写されずに感光ドラム11上に残されたトナーを掻き落としてドラム表面の清掃を行う。以上に示したプロセスにより、各トナーによる画像形成が順次行われる。
【0022】
給紙ユニット20は、転写材Pを収納するためのカセット21、カセット21より転写材Pを一枚ずつ送り出すためのピックアップローラ22、ピックアップローラ22から送り出された転写材Pをレジストローラ25a、25bまで搬送するための給紙ローラ対23及び給紙ガイド24、及び、画像形成部の画像形成タイミングに合わせて転写材Pを二次転写領域Teへ送り出すためのレジストローラ25a、25bで構成される。
【0023】
カセット21近傍には、環境センサ60が配されている。環境センサ60は周囲の温度と湿度を検出するセンサであって、温度および湿度によって変動する抵抗値を検出し、温度と湿度を得る。
【0024】
図8を用いて、環境センサ60の構成について説明する。
【0025】
図8は、環境センサ60のブロック図である。
【0026】
801は湿度センサであり、ここでは抵抗変化型のセンサが用いられている。
【0027】
湿度センサ801は図9のような構造であり、例えばTDK社CHSシリーズの湿度センサが製品化されている。
【0028】
図9中、901はアルミナ基板であり、アルミナ基板901上に高分子感湿膜902が構成してある、高分子感湿膜902上にはくし型電極903が構成してある。
【0029】
高分子感湿膜902は、水分子の吸着により高分子感湿膜902中の可動イオンが自由に動き回るようになることによって、くし型電極903間のインピーダンスが変化することによって、インピーダンスに対する湿度を検出できる。
【0030】
即ち、湿度センサ801は一種の可変抵抗器であるといえる。
【0031】
図8に戻り説明を続ける。
【0032】
湿度センサ801の出力(即ち抵抗値)は電圧変換回路803に入力する。電圧変換回路803では、入力する抵抗値を電圧に変換し、端子Houtに出力する。Houtから出力された湿度に対応する電圧は、不図示のCPUまたはA/D変換器などに入力され、デジタル湿度データとして取り扱われる。
【0033】
一方、温度センサ802は一般的なサーミスタに代表される温度変動に追従して湿度センサ801と同様、抵抗値が変化するセンサが用いられている。サーミスタについては、周知のセンサであり詳細な説明は割愛する。温度センサ802の出力(即ち抵抗値)は電圧変換回路804に入力する電圧変換回路804の構成は電圧変換回路803と同様の構成である。電圧変換回路804では、入力する抵抗値を電圧に変換し、端子Toutに出力する。Toutから出力された温度に対応する電圧は、不図示のCPUまたはA/D変換器などに入力され、デジタル湿度データとして取り扱われる。
【0034】
環境センサ60の環境センサの配置目的は、カセット21内の転写材Pの温度または湿度を把握し、後述する中間転写プロセスにおける中間転写ベルトに印加する帯電電圧の電圧値を調整することにある。
【0035】
一般的に、温度情報と湿度情報により、絶対水分量が算出できることは広く知られている。
【0036】
例えば、転写材Pの絶対水分量が大きければ、中間転写ベルトに帯電した静電気が放電されやすく、転写が不十分になる。この場合、例えば中間転写ベルトに帯電させる帯電電圧を高めに設定する必要がある。
【0037】
逆に、転写材Pの絶対水分量が小さければ、中間転写ベルトに帯電した静電気が放電されにくく、転写が過剰になるので、例えば中間転写ベルトに帯電させる帯電電圧を低めに設定する必要がある。
【0038】
このように、現像プロセスにおいては絶対水分量に応じた各パラメータの調整が不可欠であり、適切なパラメータ調整を実施しないと画像形成された画像品位が安定しない。
【0039】
続いて、中間転写ユニット30について詳細に説明する。中間転写ベルト31は、巻架ローラとして、中間転写ベルト31に駆動を伝達する駆動ローラ32、中間転写ベルト31の回動に従動する従動ローラ33、ベルト31を挟んで二次転写領域Teに対向する二次転写対向ローラ34に巻架される。これらのうち駆動ローラ32と従動ローラ33との間に一次転写平面Aが形成される。駆動ローラ32は、金属ローラの表面に数mm厚のゴム(ウレタンまたはクロロプレン)をコーティングしてベルト31とのスリップを防いでいる。駆動ローラ32はパルスモータ(不図示)によって矢印B方向へ回転駆動される。
【0040】
一次転写平面Aは各画像形成部10に対向し、各感光ドラム11が中間転写ベルト31の一次転写面Aに対向するようにされている。よって一次転写面Aに一次転写領域Tが位置することになる。感光ドラム11と中間転写ベルト31が対向する一次転写領域Tには、中間転写ベルト31の裏に一次転写用帯電器35が配置されている。二次転写対向ローラ34に対向して二次転写ローラ36が配置され、中間転写ベルト31とのニップによって二次転写領域Teを形成する。二次転写ローラ36は中間転写ベルト31に対して適度な圧力で加圧されている。又、中間転写ベルト31上の二次転写領域Teの下流には、中間転写ベルト31の画像形成面をクリーニングするためのクリーニングブレード51、及び廃トナーを収納する廃トナーボックス52が設けられている。
【0041】
定着ユニット40は、内部にハロゲンヒーターなどの熱源を備えた定着ローラ41aと、そのローラ41aに加圧される41b(このローラ41bにも熱源を備える場合もある)、及び上記ローラ対41のニップ部へ転写材Pを導くためのガイド43、また、上記ローラ対41から排出されてきた転写材Pをさらに装置外部に導き出すための内排紙ローラ44、外排紙ローラ45等から構成される。
【0042】
次に装置の動作に即して説明を加える。
【0043】
DCコントローラ100より画像形成動作開始信号が発せられると、まずピックアップローラ22により、カセット21から転写材Pが一枚ずつ送り出される。そして給紙ローラ対23によって転写材Pが給紙ガイド24の間を案内されてレジストローラ25a、25bまで搬送される。その時レジストローラ25a、25bは停止されており、紙先端はニップ部に突き当たる。その後、画像形成部10が画像の形成を開始するタイミングに合わせてレジストローラ25a、25bは回転を始める。レジストローラ25a、25bの回転は、転写材Pと、画像形成部10より中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー画像とが、二次転写領域Teにおいてちょうど一致するようにそのタイミングが設定されている。
【0044】
一方、画像形成部10では、DCコントローラ100からの画像形成動作開始信号が発せられると、前述したプロセスにより中間転写ベルト31の回転方向Bにおいて、感光ドラム11上に形成されたトナー像(現像像)が、高電圧が印加された一次転写用帯電器35によって一次転写領域Tにおいて中間転写ベルト31に一次転写される。
【0045】
その後転写材Pが二次転写領域Teに進入、中間転写ベルト31に接触すると、転写材Pの通過タイミングに合わせて二次転写ローラ36に、高電圧を印加させる。そして、前述したプロセスにより中間転写ベルト31上に形成されたトナー像が転写材Pの表面に転写される。その後転写材Pは搬送ガイド43によって、定着ローラ対41のニップ部まで正確に案内される。そして定着ローラ対41の熱及びニップの圧力によってトナー画像が紙表面に定着される。その後、内外排紙ローラ44、45により搬送され、転写材Pは機外に排出される。
【0046】
この種の画像形成装置における、各感光ドラム11間の機械的取り付け誤差および各露光部13によって発生するレーザービーム光の光路長誤差、光路変化、LEDの環境温度による反り等の理由により感光ドラム11上で形成された画像のレジストレーションのずれを補正するために、転写領域A面上で、画像形成部10の下流の位置で、駆動ローラ32にてベルト31が折り返される前の位置に、レジずれを検知するレジセンサ60が設けられている。
【0047】
このように構成された複写機の一次帯電気12及び現像装置14の詳細構成を図3に示す。
【0048】
画像形成装置は、像担持体として回転ドラム型の電子写真感光体(感光ドラム)11を有する。本実施例では、感光ドラム11は有機光導電体(OPC)ドラムであり、中心支軸を中心に所定周速度をもって図中矢印A方向に回転駆動される。
【0049】
本実施例では、画像形成装置は、帯電手段として、接触帯電器である帯電ローラ309を有する。帯電ローラ309に所定の条件の電圧を印加することで、感光ドラム11を一様に負極性に帯電させる。帯電ロ一ラ309は、芯金310の両端部をそれぞれ軸受け部材により回転自在に保持させると共に、押圧ばねによって感光ドラム11方向に付勢して、感光ドラム11の表面に対して所定の押圧力をもって圧接させている。又、帯電ローラ309は、感光ドラム11の回転に従動して回転する。そして、電圧印加手段としての不図示の電源から、直流電圧に所定周波数の交流電圧を重畳した所定の振動電圧(帯電バイアス電圧Vdc+Vac)が、芯金310を介して帯電ローラ309に印加され、回転する感光ドラム11の周面が所定の電位に帯電処理される。
【0050】
又、帯電ローラ309に対して、帯電ローラクリーニング部材308が設けられている。本実施例では、帯電ローラクリーニング部材308は、可撓性を持つクリーニングフィルムであり、このクリーニングフィルム308は、帯電ローラ308の長手方向に対し平行に配置され、帯電ローラ308の表層がクリーニングフィルム308で摺擦される。これにより、帯電ローラ308の表層の付着汚染物(微粉トナー、外添剤など)の除去がなされる。
【0051】
感光ドラム11は、帯電ローラ309により所定の極性・電位に一様に帯電処理された後、画像露光手段(画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームを出力するレーザスキャンによる走査露光系など)による画像露光を受ける。これにより、目的画像の画像形成部に対応した静電潜像が形成される。本実施例では露光手段として、半導体レーザを用いたレーザビームスキャナ13を用いた(図2参照)。レーザビームスキャナ13は、画像読み取り装置1Rなどのホスト装置から画像形成装置1Pに送られた画像信号に対応して変調されたレーザ光を出力して、回転する感光ドラム11の一様帯電処理面をレーザ走査露光(イメージ露光)する。このレーザ走査露光により、感光ドラム11面のレーザ光で照射されたところの電位が低下することで、回転する感光ドラム11面には、走査露光した画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0052】
感光ドラム11に形成された静電潜像は、現像手段としての現像器14でトナーにより現像される。本実施例において、301はトナー補給口であり、ここからトナーが供給される。従って、現像装置14はトナーホッパの役割も有していることになる。現像器14は2成分接触現像器(2成分磁気ブラシ現像器)である。現像器14は、内部に固定配置されたマグネットローラを有する現像剤担持体としての現像スリーブ302、現像剤規制部材としての現像剤規制ブレード305、現像器14に収容した主に樹脂トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)との混合物である二成分現像剤(現像剤)304、現像器14内に配設した現像剤攪拌部材303などを具備する。
【0053】
現像スリーブ302は、その外周面の一部を外部に露呈させて現像器14内に回転可能に配設されており、現像スリーブ302と微少間隙を有して現像剤規制ブレード305が対向されており、現像スリーブ302の図中矢印B方向の回転に伴い、現像スリーブ302上に現像剤薄層を形成する。又、現像スリーブ302は感光ドラム11の進行方向とは逆方向に、感光ドラム11に対して所定周速比の速度で回転駆動される。現像スリーブ302上の現像剤薄層は、感光ドラム11の面に対して接触して、感光ドラム11を適度に摺擦する。現像スリーブ302には電圧印加手段としての不図示の電源から所定の現像バイアス電圧が印加される。本実施例では、現像スリーブ302に印加する現像バイアス電圧は、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。
【0054】
而して、現像剤が回転する現像スリーブ302の表面に薄層としてコーティングされ、現像部(現像スリーブ302表面と感光ドラム11表面の距離が最短距離となるポイント)に搬送された現像剤304中のトナーが、現像バイアス電圧による電界によって感光ドラム11に形成された静電潜像に対応して選択的に付着することで、静電潜像がトナー像として現像される。本実施例では、感光ドラム11上の露光明部にトナーが付着して静電潜像が反転現像される。即ち、先に述べたレーザビームスキャナによるレーザ光が負極性に帯電した感光ドラム11に照射されると、レーザ光が照射された個所は電荷が除去されるので、その個所にはやはり負極性に帯電したトナーが付着し、レーザ光に照射されなかった個所は、感光ドラム、トナーともに負極性であるため反発しあってトナーは付着しない。このようなプロセスにより画像形成が行われる。現像部を通過した現像スリーブ302上の現像剤薄層は、引き続く現像スリーブ302の回転に伴い現像器14内の現像剤溜り部に戻される。
【0055】
更に、現像器14内には、現像剤攪拌部材としての撹拌スクリュー303が設けられている。攪拌スクリュー303は、現像スリーブ302の回転と同期して回転し、補給されたトナーをキャリアと攪拌・混合して、トナーに所定の負極性帯電電荷を与える機能を有する。又、攪拌スクリュー303は、それぞれ長手方向において反対方向に現像剤304を搬送し、現像剤304を現像スリーブ302に供給すると共に、現像工程によりトナー濃度(現像剤中のトナーの割合)の薄くなった現像剤304をトナー補給部に搬送し、現像剤304を現像器14内で循環させる機能を有する。
【0056】
現像器14中に配された306は、本発明の重要な構成要件であるデジタル温湿度センサである。
【0057】
デジタル温湿度センサ306を現像装置14内に配置する理由は、現像装置14内のトナー304の温湿度を検出することにある。先に説明した環境センサ60配置理由と類似しているが、デジタル温湿度センサ306の配置により、現像装置14内の温度または湿度を把握し、前述の現像プロセスにおける感光ドラム11に印加する帯電電圧と現像スリーブ302に印加する帯電電圧(現像バイアス)の電圧差を調整することにある。
【0058】
ここでは現像スリーブ302に印加する現像バイアス側のみ帯電電圧を調整する手法について説明するが、もちろん感光ドラム11に印加する帯電電圧のみを調整しても良いし、両方の帯電電圧を調整しても良い。
【0059】
一般的に、温度情報と湿度情報により、絶対水分量が算出できることは広く知られている。また、トナーが擁する電荷量と感光ドラムに印加する帯電電圧のバランスによって形成される画像品位に多大な影響を与えることが広く知られてもいる。
【0060】
例えば、トナー304の絶対水分量が大きければ、トナー304が擁している電荷量は小さく、感光ドラム11に吸着するトナー量が少なくなり、画像が薄くなる傾向がある。また、トナーと感光ドラムの電気的極性による反発力も弱くなり、本来トナーが吸着しない中間調を表現する個所にトナーが吸着することもあり、そのような個所は画像が濃くなる傾向がある。
【0061】
この場合、感光ドラム11に帯電させる帯電電圧を高めに設定するか、もしくは現像スリーブ302に帯電させる帯電電圧を高めに設定する必要がある。さらには現像装置14内に設けてある不図示のスクリューを回動させてトナー304を攪拌し、トナー同士の摩擦により静電気を発生させ、トナーが擁する電荷を増大させる必要がある。
【0062】
逆に、トナー304の絶対水分量が小さければ、トナー304が擁している電荷量は大きく、感光ドラム11に吸着するトナー量が多くなり、画像が濃くなる傾向がある。また、トナーと感光ドラムの電気的極性による反発力が強くなり、本来トナーが吸着するべき中間調を表現する個所にトナーが吸着しないこともあり、そのような個所は画像が薄くなる傾向がある。
【0063】
このように、現像プロセスにおいては絶対水分量に応じた各パラメータの調整が不可欠であり、適切なパラメータ調整を実施しないと画像形成された画像品位が安定しない。
【0064】
従来の画像形成装置では、先に説明した環境センサ60を利用して現像装置14内の温湿度を検出し、絶対水分量を求めていた。しかしながら、環境センサ60近傍の絶対水分量は必ずしも現像装置14内の絶対水分量と一致せず、むしろ画像形成装置の様々な動作状況により絶対水分量が異なることが多い。
【0065】
例えば、環境センサ60は本実施例ではカセット21の近傍に配置されているが、カセット21近傍には用紙の搬送の駆動源であるステッピングモータ程度の発熱部材程度しか配置されておらず。大きな環境変動はない。これに対して、現像装置14はそれ自体がひとつの閉空間に構成されており、現像装置14の外部雰囲気と内部雰囲気は特に外部雰囲気が急激に変動する、即ち画像形成装置が動作開始してしばらくの時間比較的大きな差を発生する。また、画像形成装置の構成上、現像装置14は画像形成装置内で最も発熱する定着ユニット40の比較的近傍に配置され、現像装置14が熱の影響を受けやすい。従って、環境センサ60によって検出される絶対水分量は、現像装置内14の絶対水分量と一致しない場合が多くあり、本発明では環境センサ60と別個に現像装置14内にデジタル温湿度センサ306を配している。
【0066】
さらには、本発明では現像装置が1個のモノクロ画像形成装置について実施例を説明しているが、カラー画像形成装置については通常4個の現像装置が構成されている。各々の現像装置ももちろん閉空間の構成をとっているし、各々の現像装置は配置位置が異なっているので、それぞれの現像装置にデジタル温湿度センサを設けて、個々の現像装置内の絶対水分量を検出する構成が望ましい。それぞれの現像装置内の環境が異なっている場合があるためであることは言うまでもない。
【0067】
ここでまず、デジタル温湿度センサ306の詳細について説明する。
【0068】
デジタル温湿度センサは、例えばセンシリオン社のSHT1xシリーズやSHT7xシリーズなどの温湿度センサを用いる。図7に本発明に用いるデジタル温湿度センサのブロック図を示す。
【0069】
図7は、デジタル温湿度センサ306の内部ブロック図であり、701は湿度センサ、702は温度センサであり、それぞれ湿度または温度の変化に応じたアナログ信号を出力する。ふたつのセンサの出力は、アンプ703に入力し、所定のゲインで信号が増幅される。増幅された信号は、10ビットのA/D変換器704に入力され、デジタル信号に変換される。変換されたデジタル信号は、デジタル2線インターフェース及びキャラクタコード発生器705に入力する。
【0070】
デジタル2線インターフェース及びキャラクタコード発生器705では、入力するデジタル信号を、所定の温度または湿度に対応したデジタル値に変換し、外部からのコマンドに応じて温度及び湿度データを送出する。706はキャリブレーションメモリであり、定期的または外部からのコマンドによってキャリブレーションを行い、湿度センサ701や温度センサ702で検出された湿度または温度の補正を行う。補正値はキャリブレーションメモリ706に記憶され。キャリブレーションメモリ706より出力される補正値は、A/D変換器704に入力し、A/D変換器704にて検出された湿度または温度データに対して補正がかけられる。
【0071】
707はSCK端子であり、外部からあらかじめ決められた周波数のクロックパルスが入力する。708は双方向のDATA端子であり、外部からコマンドが入力する場合は、SCK端子707に入力するクロックパルスに同期してコマンドデータが入力する。また、温湿度センサ306から温湿度データを外部に送出する場合は、SCK端子707に入力するクロックパルスに同期させて温湿度データを出力する。
【0072】
また、温湿度データのほかにチェックサムデータを出力する。チェックサムデータは、例えば検出した温度データと湿度データを足し合わせたデータを出力する。
【0073】
データを受信する不図示のCPUなどでは、温湿度データを受信すると温度データと湿度データを加算し、同時に受信するチェックサム値と比較を行う。
【0074】
比較の結果、値が一致すれば受信した温湿度データが正しいと判断する。値が一致しない場合は、温湿度センサ306が故障した可能性もあるが、瞬間的な外来ノイズでデータが化けた可能性もあるので、例えば複数回コマンドを送出して温湿度データとチェックサムを受信しチェックサムの不一致が低い頻度であればチェックサムが一致したデータを正しいデータとして取り扱ってもよい。毎回チェックサムが一致しないような場合は、温湿度センサ306が故障したと判断する。
【0075】
温湿度センサ306が故障した場合の制御については、本発明の本質であり詳しく後述する。
【0076】
709はGND端子であり、710はセンサチップを駆動する電源電圧の入力端子である。
【0077】
以上説明したデジタル温湿度センサ306は、トナー補給口301より供給されたトナーが充填された個所に設けてあり、トナーに直接触れ、トナーの温度及び湿度をデジタルデータとして図2で示したDCコントローラ100に送信する。送信の際には、温度及び湿度データの他にチェックサムデータを併送する。チェックサムデータとは、前述のように例えば温度データと湿度データを足し算したデータであり、受信側(DCコントローラ100)では温度データと湿度データを受信するとともに、両データを足し算しチェックサムデータと比較することによって、受信したデータが正しいかどうかをチェックできる。
【0078】
図5及び図6は、デジタル温湿度センサ306から送信するシリアルデータの一例である。DCコントローラ100より、温湿度データを送信するコマンドがデジタル温湿度センサ306へ送信されると、デジタル温湿度センサ306は図5(a)の定常状態から、図5(b)のようにシリアルクロックSCLKを送出する。このとき、シリアルデータSDATAはH(ハイ)固定である。デジタル温湿度センサ306よりデータ送出の準備が整うと、デジタル温湿度センサ306は、図5(c)のようにシリアルデータSDATAを4ビットだけL(ロー)にする。DCコントローラ100は、4ビットのLデータを受信し、これをスタートビットと認識し、以降の20ビットを温湿度データとしてデータサンプルする。
【0079】
20ビットのデータのうち最初の10ビットは温度データ(図6(a))であり、続く10ビットは湿度データ(図6(b))である。20ビットデータに続く10ビットデータはチェックサム(図6(c))であり、温湿度センサ306が温度データと湿度データを加算したデータを送出する。
【0080】
図6(a)の例では、温度データは2値データで1001110101となる。同様に図6(b)の例では湿度データは1110010001となる。図6(c)に示すチェックサムは1001110101+1110010001=11000000110のLSBである「1」を削除し、下位の10ビット、即ち1000000110となっていることがわかる。
【0081】
ところで、温度データは0000000000〜1111111111のデータで0℃〜100℃を、湿度データは0000000000〜1111111111のデータで0%〜100%を表す。つまり、デジタル温湿度センサが出力した温度データは61.48℃、湿度データは89.25%となるが、DCコントローラ100により計算された温度データと湿度データの加算値がチェックサムと一致することを確認した上で上記データを有効とする。
【0082】
DCコントローラ100は、得られた温湿度データより、環境センサ60と同様に絶対水分量を導き、感光ドラムに対する最適な帯電電位を設定して、一連の画像形成プロセスを実行する。
【0083】
一方、データが受信できないかもしくはチェックサムが一致しない場合は、データを無視し温湿度センサ306が故障したものと判断する。
【0084】
温湿度センサ306が故障したと判断された場合は、DCコントローラ100は、環境センサ60から得られる温湿度データより、温湿度センサ306の出力予測を行い、装置の動作を継続する。
【0085】
DCコントローラ100は、あらかじめ決められたタイミングで環境センサ60と温湿度センサ306の温湿度データを記憶している。
【0086】
図1は、例えば1分毎の環境センサ60と温湿度センサ306各々の温湿度データである。図1(a)は、各々のセンサの温度データの推移を示しており、横軸の単位は時間である。同様に図1(b)は、各々のセンサの湿度データの推移を示しており、横軸の単位は時間である。図1で明らかなように、温湿度センサ306の挙動は、センサが現像装置14の閉空間内に配置されているため、閉空間外に配置されている環境センサ60の挙動に対して反応が鈍い挙動を示している。
【0087】
それゆえ、本発明を説明する画像形成装置においては、前述のように温湿度センサ306と環境センサ60を別個に設け、温湿度センサ306ではトナーの温湿度を、環境センサ60では転写材Pの温湿度を別個に検出している。
【0088】
ある程度環境が安定している状態(例えば図1における時間t1)においては、環境センサ60の出力だけでもトナーの温湿度と差がなく、あえて温湿度センサ306の出力を求める必要はないように思われるが、環境が急激に変動している状態(例えば図1における時間t2)においては、環境センサ60のプロファイルと温湿度センサ306のプロファイルが異なるので、環境センサ60のみでトナーの絶対水分量を把握することはできず、別個に各センサを設ける構成が画像形成に有利なことは言うまでもない。
【0089】
このことは、例えば温湿度センサ306で、環境センサ60の動作を賄えないことも意味している。
【0090】
図1に戻り説明を続ける。
【0091】
図1では、平衡した環境下で本来同じ温度または湿度を示すはずなのであるが、ΔTまたはΔHの誤差が発生している。これは、センサ毎の精度ばらつき、及び経年劣化による精度のばらつきがあることを示している。本発明の手法によれば、例えば5分毎のデータをサンプルして温湿度センサ306の出力を予測するので、これらの誤差をキャンセルすることができる。
【0092】
図1(a)を用いて、温湿度センサ306が故障した際の環境センサ60による温度予測制御についての説明を行う。
【0093】
時間t1の間は、温度が平衡状態にあり、1分毎に環境センサ60の温度情報がサンプルされており、温度が平衡状態にあることがわかっている。この間に温湿度センサ306が故障した場合は、環境センサ60で検出された温度に対して、ΔTを加味すればよい。具体的には環境センサ60で検出された温度は20℃なので、故障した温湿度センサ306の温度出力は18℃であると予測する。即ちΔT=2degである。
【0094】
時間t2の間は、温度が徐々に上がっている状態であり、1分毎にサンプルされる環境センサ60から得られる温度データから、温度上昇率が例えば1℃/分だったとすると、過去のこのような環境変化に対する環境センサ60の温度上昇率に対する温湿度センサ306の温度上昇率のデータがDCコントローラ100に記憶されている。記憶された温湿度センサの温度上昇率が0.6℃/分だったとすると、環境センサ60より得られた温度データを0.6℃/分の温度上昇率で計算し、計算結果にΔTを減算して故障した温湿度センサ306の温度出力を予測する。
【0095】
具体的な数値を用いて再度説明を行うと、環境センサ60の定期的な温度検出により、t2初期から1分後の温度が21℃、2分後の温度が22℃になっていることが検出され、温度上昇率が1℃/分であることが検出される。
【0096】
DCコントローラ100に記憶されている過去の温湿度センサ306の温度サンプル結果により、環境センサ60の1℃/分に対する温湿度センサ306の温度上昇率は0.6℃/分であることがわかっているので温湿度センサ306の1分後の温度と2分後の温度はそれぞれ18+0.6=18.6℃、18+0.6×2=19.2℃であることが予測される。
【0097】
同様に5分後、7分後はそれぞれ21℃、22.8℃であると予測される。
【0098】
時間t3の間は、温度が平衡状態になり、1分毎に環境センサ60の温度情報がサンプルされており、温度が平衡状態にあることがわかっている。しかし、温湿度センサ306で検出される温度データは、前半部分でなお上昇状態にある。環境センサ60では、温度が平衡状態にあるので、故障した温湿度センサ306が何℃で平衡状態になるのか判断が可能である。従って、平衡状態になると予測される温度までは、時間t2で実施した0.6℃/分の温度上昇率で計算を続け、故障した温湿度センサ306の温度出力を予測する。具体的には、0.6℃/分の温度上昇率で28℃になるまでは、t2で実施した計算による出力予測を行う。
【0099】
具体的な数値を用いて再度説明を行うと、環境センサ60の定期的な温度検出により、t3で環境センサ60は30℃で熱的に安定したことが検出される。一方、温湿度センサ306では、ΔT=2degであることがわかっているので、温湿度センサ306は28℃で安定することが予測される。
【0100】
一方、環境センサ60では、t2の時間内に30−20=10℃の温度上昇が発生したわけであるから、t2=10分であることは容易に算出される。また、温湿度センサ306は温度上昇が0.6℃/分であるので、18℃から28℃まで温度上昇するのに要する時間は、(28−18)/0.6=16.7分であることも容易に算出される。即ち、t3初期から6.7分の間はt2で実施していた温度予測と同様の演算方法で温湿度センサ306の温度出力を予測する。また、t3初期から6.7分後に温湿度センサ306の温度出力は28℃となって熱的に安定すると予測する。
【0101】
以上の説明では、温度が上昇する場合における温湿度センサ306の故障時の制御について説明したが、温度が下降する場合も同様の制御を行う。
【0102】
また、図1(b)のように湿度が下降する場合も同様の制御を行う。
【0103】
即ち、時間t1の間は、湿度が平衡状態にあり、1分毎に環境センサ60の湿度情報がサンプルされており、温度が平衡状態にあることがわかっている。この間に温湿度センサ306が故障した場合は、環境センサ60で検出された湿度に対して、ΔHを加味すればよい。具体的には環境センサ60で検出された湿度は61%なので、故障した温湿度センサ306の温度出力は65%であると予測する。即ちΔH=4%である。
【0104】
時間t2の間は、湿度が徐々に下がっている状態であり、1分毎にサンプルされる環境センサ60から得られる湿度データから、湿度下降率が例えば3%/分だったとすると、過去のこのような環境変化に対する環境センサ60の湿度下降率に対する温湿度センサ306の湿度下降率のデータがDCコントローラ100に記憶されており、記憶された温湿度センサの湿度下降率が2%/分だったとすると、環境センサ60より得られた湿度データを3%/分の湿度上昇率で計算し、計算結果にΔHを加算して故障した温湿度センサ306の湿度出力を予測する。
【0105】
具体的な数値を用いて再度説明を行うと、環境センサ60の定期的な湿度検出により、t2初期から1分後の温度が58%、2分後の温度が55%になっていることが検出され、湿度下降率が3%/分であることが検出される。
【0106】
過去の温湿度センサ306の湿度サンプル結果により、環境センサ60の3%/分に対する温湿度センサ306の湿度下降率は2%/分であることがわかっているので温湿度センサ306の1分後の温度と2分後の温度はそれぞれ65−2=63%、65−2×2=61%であることが予測される。
【0107】
同様に5分後、7分後はそれぞれ55%、51%であると予測される。
【0108】
時間t3の間は、湿度が平衡状態になり、1分毎に環境センサ60の湿度情報がサンプルされており、温度が平衡状態にあることがわかっている。しかし、温湿度センサ306で検出される湿度データはなお下降状態にある。環境センサ60では、湿度が平衡状態にあるので、故障した温湿度センサ306が何%で平衡状態になるのか判断が可能である。従って、平衡状態になると予測される温度までは、時間t2で実施した2%/分の湿度下降率で計算を続け、故障した温湿度センサ306の湿度出力を予測する。具体的には、2%/分の湿度下降率で12%になるまでは、t2で実施した計算による出力予測を行う。
【0109】
具体的な数値を用いて再度説明を行うと、環境センサ60の定期的な湿度検出により、t3で環境センサ60は8%で湿度的に安定したことが検出される。一方、温湿度センサ306では、ΔH=4%であることがわかっているので、温湿度センサ306は12%で安定することが予測される。
【0110】
一方、環境センサ60では、t2の時間内に61−8=53%の湿度下降が発生したわけであるから、t2=17.7分であることは容易に算出される。また、温湿度センサ306は湿度下降率が2%/分であるので、65%から12%まで湿度下降するのに要する時間は、(65―12)/2=26.5分であることも容易に算出される。即ち、t3初期から8.8分の間はt2で実施していた湿度予測と同様の演算方法で温湿度センサ306の湿度出力を予測する。また、t3初期から8.8分後に温湿度センサ306の湿度出力は12%となって湿度的に安定すると予測する。
【0111】
以上の説明では、湿度が下降する場合における温湿度センサ306の故障時の制御について説明したが、湿度が上昇する場合も同様の制御を行う。
【0112】
また、上記の説明では環境センサ60の温度上昇率が1℃/分、あるいは湿度下降率が3%/分に対する温湿度センサ306の温度上昇率、湿度下降率がそれぞれ0.6℃/分、2%/分であることをDCコントローラ100に記憶する旨説明したが、画像形成装置の様々な動作状況に対応すべく、1℃/分から10℃/分までの環境センサ60に対する1℃刻みの温湿度センサ306の温度変化率、1%/分から10%/分までの環境センサ60に対する1%刻みの温湿度センサ306の湿度変化率についてもDCコントローラ100が記憶している。もちろん、製品により画質に対する要求は異なるので高画質にそれほどの要求がなければ刻みステップを2℃/分や2%/分のようにしても良いし、高画質要求がある場合や、DCコントローラ100の記憶領域に余裕があれば0.5℃/分、0.5%/分のように刻みステップを変更しても良い。
【0113】
DCコントローラ100は、温湿度センサ306が故障した後、環境センサ60から得られる温度変動率や湿度変動率に対し、最適と判断された変動率が選択される。
【0114】
以下、温湿度センサ306により検出された温湿度より得られる絶対水分量に対する具体的な制御について説明する。
【0115】
先に述べたように、現像装置14内の温度または湿度を把握し、前述の現像プロセスにおける感光ドラム11に印加する帯電電圧と現像スリーブ302に印加する帯電電圧(現像バイアス)の電圧差を調整することが目的であるが、ここでは現像スリーブ302に印加する現像バイアス側のみ帯電電圧を調整する手法について説明する。もちろん感光ドラム11に印加する帯電電圧のみを調整しても良いし、両方の帯電電圧を調整しても良い。
【0116】
図10は、画像形成装置がスタンバイの状態から画像形成を終了するまでの、温湿度検知及び検知結果による現像バイアスへのフィードバック制御に関する簡易動作フロー図である。各ステップごとに詳述し、適宜、図11を用いて説明する。
(S701)
画像形成装置は、スタンバイ状態にてユーザによる操作又はネットワークにて接続された外部ホストからのプリント要求の待機状態である。また、低電力モード及びスリープモードも本フローのスタンバイと動作状態を置き換えても、本実施例と略同一の制御フローが実施される。
(S702)
ユーザ操作又は外部ホストからのプリント要求信号1101が入力されると(図11参照)、画像形成装置はスタンバイ状態から復帰され、各画像形成ユニットの起動制御が実施される。本制御フローでは現像器内部の温湿度センサ及びそれに伴うバイアス制御に関する起動制御について詳述する。スタンバイ復帰後、現像器14内部に配置された温湿度センサ306から温湿度検知信号がDCコントローラ100内のCPU1102に入力される(図11参照)。
(S703)
入力された温湿度情報を取得する。
(S704)
絶対水分量の演算は図11中のCPU1102によって実施される。
【0117】
CPU1102は画像形成における制御を統合して処理している集積回路である。
【0118】
CPU1102に入力したシリアルデータは、図11中のROM403に有された検知温度または検知湿度の変換テーブルにより、温湿度センサ306の温湿度が認識される。変換テーブルは、予め温湿度検知センサユニットの温湿度−シリアルデータの検知仕様に基づきROM403内に格納されており、その変換テーブルはシリアルデータに応じた絶対水分量で表される。これにより、現像器内部の絶対水分量情報が認識される。
(S705)
S704で検知された絶対水分量情報を元にして、絶対水分量情報に応じてHV(高電圧)制御部1105へ現像バイアス電圧の設定を行う。絶対水分量情報による現像バイアス電圧の設定は、図4aにある絶対水分量−トナー帯電量の関係に基づき決定される。トナー帯電量は図4aにあるように絶対水分量が低い環境においては、帯電量が高くなる傾向があるため現像バイアス電圧を印加した際に、その電気的影響が大きくなる為、常湿環境と同一の現像バイアス電圧を印加すると常湿環境時と比して、感光ドラム上に現像されるトナー量が過多となり高濃度となってしまう。そこで図4bにあるようにトナー帯電量に応じた現像バイアス電圧にて制御する必要がある。つまり、具体的には、常湿環境(50%RH)において現像バイアス電圧であるVDC=−500Vであるのに対して、低湿環境(5%RH)においては現像バイアス電圧VDC=−350Vとする。トナー帯電量は常湿時に比して高いため、トナーが受ける電気的総影響力は、常湿時と同等となるため、トナーが感光ドラムトナー濃度の過多を防止することができる。反対に高湿環境(80%RH)においては、常湿環境に比してトナー帯電量が低下する傾向があるため、常湿環境と同一の現像バイアス電圧を印加した場合、所定のトナー濃度に対して薄くなってしまう。よって、具体的にはVDC=―600Vとする。これにより低湿時同様に、トナーが受ける電気的総影響力は常湿時と略同一となる。このように各色の現像器内部絶対水分量を元にトナー帯電量を推定し、推定されたトナー帯電量から基準となる常湿環境と同等となるよう設定された現像バイアス電圧は、検知結果に対して設定値としてCPU1102にてRAM1104内に一時格納される。
(S706)
外部ホスト及びユーザによる画像形成動作が実行されない場合は、前述S703〜S705のフローが所定時間ごとに繰り返されることで、現像器内部環境の変化に応じた適正な現像バイアス電圧設定値がRAM1104内に記憶更新される。
(S707)
画像形成動作が実行されると、DCコントローラ100に対し、画像形成スタート信号が入力される。画像形成スタート信号の入力後、所定の制御タイミングにて各制御因子が実行され画像形成が実施される。前述した画像形成制御である感光ドラムに対する帯電制御及び露光制御による潜像形成の後、現像制御タイミングにおいて、CPU1102よりHV制御部1105に対し、前述S705にてRAM1104内に格納された現像バイアス電圧の設定情報を参照する。
(S708〜S710)
CPU1102による所定の制御タイミングに応じて現像バイアス電圧がHV制御部1105より各現像器へ現像バイアス電圧(現像HV1106)として出力される。
【0119】
次にデジタル温湿度センサ306が故障した際の制御アルゴリズムについて図12を用いて説明する。
【0120】
図12中スタートは、図10中のS703におけるデジタル温湿度センサ306の温湿度情報取得がトリガとなる。
(S1201)
デジタル温湿度センサより温湿度情報を取得する。
(S1202)
温湿度情報に付随して取得されるチェックサムデータをチェックする。
(S1203)
チェックサムに異常があるかどうかをチェックする。
【0121】
異常があった場合はS1204に遷移し、異常がなかった場合はそのまま図10のS704に戻る。
(S1204)
デジタル温湿度センサが故障したと判断し、環境センサより温湿度情報をリアルタイムに取得する。
(S1206)
環境センサの温湿度変動をチェックする。
(S1207)
環境センサの温湿度変動率より、DCコントローラに記憶されているいくつかの変動率データのうち最も適切なデジタル温湿度センサ変動データを選択する。
(S1208)
DCコントローラに記憶されている最新のΔTとΔHを取得する。
(S1209)
デジタル温湿度センサの温湿度をリアルタイムに予測する。
【0122】
S1209の処理が終わると、図10のS704に戻る。
【0123】
以上の様に、画像形成動作直前に現像器内部のトナー帯電量を推定し、その精度の高い推定結果に応じた現像バイアス電圧出力が得られるため、低湿度環境又は高湿度環境といった環境変動に左右されることなく常に安定し、且つ適正な出力値の現像制御が可能となる為、良質な出力画像を得ることが出来る。
【0124】
また、現像器内部の温湿度センサが故障した場合でも、画像形成装置内部に別途設けられた環境センサの出力により、現像器内部の温湿度を高精度に予測できるので、故障以前同等の良質な出力画像を得ることができる。
【0125】
また、現像バイアス電圧のみへのフィードバック制御を述べたが、帯電制御(帯電AC及び帯電DC)及び現像バイアス電圧(現像AC)等の種々のバイアス値または、画像形成制御因子に対しフィードバック制御を行っても同様の効果は得られる。また、本実施例では2成分現像剤によるタンデム方式のカラー画像形成装置を例として述べたが、一成分現像剤によるタンデム方式及び1ドラム方式のカラー画像形成装置に対しても本発明を適用しても十分な効果があり、安定した画像形成による高品位な画像を得ることができる。
【0126】
さらに、ここでの説明は、ΔT=2deg、ΔH=5%で説明してきたが、画像形成装置を長期間に渡って使用すると、温湿度センサ306及び環境センサ60の検出結果に多少の誤差が発生することが考えられるが、温湿度センサ306が故障する寸前まで、両センサの挙動をサンプルし続けることにより、ΔTおよびΔHの値は最新の値に更新されている。
【0127】
同様に、温度上昇率または温度下降率、及び湿度上昇率または下降率も同様で、経年劣化による誤差発生は、故障直前までのセンサ挙動をサンプルし続けることにより、不図示のシステムが常に最新の温度プロファイル及び湿度プロファイルを記憶しているので最適な出力予測を行うことができる。
【0128】
本実施例の説明では、各センサの検出タイミングを1分としたが、温度または湿度の急激な変動は画像形成装置の駆動開始直後に発生するので、画像形成装置駆動後から画像形成装置駆動終了までの間は検出タイミングを例えば30秒にする等検出タイミングを短く変更しても良い。
【0129】
以上説明したように、本発明によれば、トナーの温度または湿度を直接検知することができる第1のセンサを構成した装置において、該センサが故障した場合には、装置内の別の温度または湿度を検知する第2のセンサにより、故障した第1のセンサの出力予測を行うので装置の稼動を中止することなく、装置を稼動し続けることができる。
【0130】
この間、装置は第1のセンサが故障していることを操作部などの表示部に表示をし、ユーザに交換を促すよう動作するにしてもよい。
【0131】
本発明は、モノクロの画像形成装置について説明してきたが、もちろん複数色のカラートナーを搭載したカラー画像形成装置についても応用可能である。しかしながら、画像形成装置の構成によっては、温湿度センサが故障した際に、環境センサによる温湿度予測では充分な画像品位が保てない場合がある。その場合には、例えば、カラーの画像形成を許可しないようにし、モノクロの画像形成のみ許可するような制御を選択しても良い。
【0132】
カラー画像の画像品位の安定化は困難であっても、モノクロ画像の画像品位の安定化の可能性は高いからである。一般オフィスでは、カラー画像出力よりモノクロ画像出力の比率が高い部署が多く、モノクロ画像だけでも出力が可能であれば、画像形成装置の可動率は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】温湿度センサの温度特性及び湿度特性
【図2】複写機の一般的な構成を示す図
【図3】現像装置の詳細図
【図4】トナーの構造図
【図5】本発明に用いたデジタル温湿度センサのシリアルデータ通信例
【図6】本発明に用いたデジタル温湿度センサのシリアルデータ通信例
【図7】デジタル温湿度センサ306の内部ブロック図
【図8】環境センサ60のブロック図
【図9】湿度センサ
【図10】画像形成装置がスタンバイの状態から画像形成を終了するまでの、温湿度検知及び検知結果による現像バイアスへのフィードバック制御に関する簡易動作フロー図
【図11】ブロック図
【図12】デジタル温湿度センサ306が故障した際の制御アルゴリズム
【符号の説明】
【0134】
14 現像装置
301 トナー補給口
302 現像スリーブ
303 磁石ロール
304 トナー
305 穂切り板
306 デジタル温湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の閉空間に配され、閉空間の温度または湿度を測定する第1のセンサと、前記閉空間の外部に配され、該個所の温度または湿度を測定する第2のセンサを具備した画像形成装置であって、
前述の第1のセンサが故障した際に、第2のセンサの出力結果によって第1のセンサの出力予測を行う出力予測手段を具備し、前記出力予測手段の予測結果に応じて装置の動作をなすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
任意の閉空間は、画像形成装置の現像材が充填された閉空間であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
第1のセンサには、温度または湿度データの送信の他に付帯情報を返す機能を有しており、第1のセンサの故障をセンサから返す付帯情報の異常により判断することを特徴とする請求項1に記載の画像形性装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−122444(P2009−122444A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296806(P2007−296806)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】