説明

画像形成装置

【課題】使用頻度が互いに異なる作像ユニットを複数備える画像形成装置であっても、作像ユニット毎の構成を大幅に変更することなく、使用頻度の高い作像ユニットの寿命を他の作像ユニットよりも延ばすことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】使用頻度の高いブラック用作像ユニット10Kに配設された保護層形成ユニット7Kには圧縮成型された保護剤ブロック14Kを用い、使用頻度の低いカラー用作像ユニット10C、10Y、10Kに配設された保護層形成ユニット7C、7Y、7Kには溶融成型された保護剤ブロック14C、14Y、14Kを用い、且つ圧縮成型された保護剤ブロック14Kは、溶融成型された保護剤ブロック14C、14Y、14Kに比べ窒化ホウ素の含有率が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置であって、像担持体、転写手段、保護層形成装置をそれぞれ有する作像ユニットを複数備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置のカラー化が進んではいるが、実際に出力される画像の多くはモノクロ画像である。最も多くの出力がなされているオフィスにおいては、カラー画像の占める割合は2割以下となっている。これは、決してカラー画像へのニーズが低いわけではなく、必ずしもカラー画像でなくてもよい場合は、コストを下げるためにモノクロ画像を出力しているためである。このような実情においては、カラー画像を形成するためのカラーユニット(例えば、シアン、イエロー、マゼンタのトナー像を形成するための3つの作像ユニット)よりもモノクロ画像を形成するためのブラックユニット(ブラックトナー像を形成するための一つの作像ユニット)の方が圧倒的に多く使用されることになる。このため、一般に、ブラックユニットの像担持体が早期に寿命に達してしまう。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、ブラックユニットとカラーユニットで、像担持体の帯電方式と像担持体への保護層形成条件とが異なるようにした画像形成装置が提案されている。ブラックユニットではDC帯電方式とし、カラーユニットではAC+DC帯電方式とし、ブラックユニットではステアリン酸亜鉛からなる像担持体保護剤の塗布量をカラーユニットよりも少なくしている。ブラックユニットではDC帯電方式を採用することで像担持体の長寿命化を図り、像担持体保護剤の塗布量も少ないことから保護層形成装置の長寿命化も図ることが可能である。カラーユニットでは、AC+DC帯電方式を採用しているが、像担持体保護剤の塗布量を多くすることでACハザードによる像担持体の摩耗を抑制している。
【0004】
なお、特許文献2には、後述する課題を解決するための手段における像担持体保護剤と同様に、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩に無機添加剤として窒化ホウ素を配合してなる像担持体保護剤が記載されている。そして、この特許文献2には、像担持体保護剤の成型方法として、粉体状の潤滑剤を型に入れ型内で圧力をかけて成型する圧縮成型や、粉体状の潤滑剤を加熱して溶融しこれを型の中に流し込み、次いでこれを冷却して成型する溶融成型が記載されている。しかしながら、特許文献2では、どのような場合にどの成型方法を採用するかについては述べられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、像担持体の長寿命化を図るために、特許文献1のようにブラックユニットとカラーユニットとで異なる帯電方式を採用すると、帯電装置のために複数種の電源を備えなければならず全体としてのコストが上がってしまう。また、特許文献1のように、異なる保護層塗布条件を採用すると、最適な保護層塗布装置の構成も異なる場合が多く、やはり全体としてのコストが上がってしまう。このように、ブラックユニットとカラーユニットとで異なる帯電方式や保護層塗布条件を採用する場合には、量産によるコスト低減が見込めない。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものである。その目的は、使用頻度が互いに異なる作像ユニットを複数備える画像形成装置であっても、作像ユニット毎の構成を大幅に変更することなく、使用頻度の高い作像ユニットの寿命を他の作像ユニットよりも延ばすことができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、トナー像を担持する像担持体と、該像担持体上のトナー像を転写媒体に転写する転写手段と、トナー像が該転写媒体に転写された後の該像担持体表面に少なくとも脂肪酸金属塩と無機添加剤とを含む像担持体保護層を形成する保護層形成手段とがそれぞれ配設される作像ユニットを複数備え、該作像ユニットの使用頻度が互いに異なる画像形成装置において、使用頻度の高い作像ユニットに配設された保護層形成手段には圧縮成型された像担持体保護剤を用い、使用頻度の低い作像ユニットに配設された保護層形成手段には溶融成型された像担持体保護剤を用い、且つ圧縮成型された像担持体保護剤は、溶融成型された像担持体保護剤に比べ無機添加剤となる窒化ホウ素の含有率が高いことを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、複数並置された作像ユニットの内、上記使用頻度の高い作像ユニットは端部に並置されていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、圧縮成型された像担持体保護剤は、上記脂肪酸金属塩以外の組成物の含有率が10%以上40%以内であることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、溶融成型された増担持体保護剤は上記脂肪酸金属塩以外の組成物の含有率が1%以上15%以内であることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1、2又は3の画像形成装置において、上記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項1、2、3、4又は5の画像形成装置において、上記保護層形成手段は、上記像担持体と上記像担持体保護剤の双方に接触して該像担持体保護剤を削り取りながら、該像担持体に該像担持体保護剤を供給する供給部材を備えることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5又は6の画像形成装置において、上記保護層形成手段は、上記像担持体上に付与された上記像担持体保護剤を押圧し被膜化する被膜化手段を備えることを特徴とするものである。
請求項8の発明は、請求項1、2、3、4、5、6又は7の画像形成装置において、上記転写手段よりも像担持体移動方向下流側、且つ上記保護層形成手段よりも像担持体移動方向上流側に、上記像担持体表面に残留したトナーを除去するクリーニング手段を備えることを特徴とするものである。
請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8の画像形成装置において、上記像担持体は、熱硬化性樹脂を含む最表層を備えることを特徴とするものである。
請求項10の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9の画像形成装置において、上記像担持体が感光体であることを特徴とするものである。
請求項11の発明は、請求項10の画像形成装置において、上記像担持体表面に接触又は近接して該像担持体表面を一様に帯電する帯電手段を備えることを特徴とするものである。
請求項12の発明は、請求項11の画像形成装置において、上記帯電手段は、交流成分を有する電圧を印加する電圧印加手段を備えることを特徴とするものである。
請求項13の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の画像形成装置において、上記転写媒体が中間転写媒体であって、該中間転写媒体上に少なくとも脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含む像担持体保護層を形成する保護層形成手段を備えることを特徴とするものである。
請求項14の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13の画像形成装置において、上記トナー像は、円形度(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)が0.93以上1.00以下であるトナーより形成されることを特徴とするものである。
請求項15の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14の画像形成装置において、上記トナー像は、重量平均(D4)と個数平均(D1)の比(D4/D1)が1.00以上、1.40以下であるトナーより形成されることを特徴とするものである。
請求項16の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の画像形成装置において、少なくとも上記像担持体と上記保護層形成手段とが、画像形成装置本体から一体に着脱可能に構成されるプロセスカートリッジに組み込まれることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、使用頻度が互いに異なる複数の作像ユニットで、成型方法と窒化ホウ素の含有量とが互いに異なる像担持体保護剤を用いる。すなわち、使用頻度の高い作像ユニットには、像担持体保護剤に添加される無機添加剤の中でも、放電によって特性が変化し難く、放電を受けても脂肪酸金属塩に比べて潤滑性が失われにくい窒化ホウ素を使用頻度の低い作像ユニットに比べ多く含有させる。そのため、使用頻度の高い作像ユニットでは、窒化ホウ素等の無機添加物を多く含有しても比較的硬くなりにくい圧縮成型により作製された像担持体保護剤を用いる。圧縮成型された像担持体保護剤は、消費率(作像枚数に対する像担持体保護剤の削れ量)の変動が大きいものの、その不都合を補うだけの量の窒化ホウ素等の無機添加剤を含有させることができる。圧縮成型された像担持体保護剤は、初期において消費率が高すぎ、脂肪酸金属塩自体が像担持体とこれに当接する当接部材との間をすり抜け、すり抜けた脂肪酸金属塩自体が像担持体に接触又は近接して配設される帯電部材を汚染してしまうことがある。しかし、窒化ホウ素等の無機添加剤の添加によって脂肪酸金属塩自体のすり抜ける絶対量を減らすことができ、帯電部材の汚染も抑制することができる。また、豊富に添加された窒化ホウ素等の無機添加剤によって、潤滑性の維持効果も大きい。これにより、作像ユニットの使用頻度が高くても、像担持体や帯電装置の長寿命化を図ることができる。一方、使用頻度の低い作像ユニットの保護層形成手段には、溶融形成された像担持体保護剤を用いる。溶融成型された像担持体保護剤は、窒化ホウ素等の無機添加剤が多くなりすぎると硬くなりやすく保護層の形成が困難となるため、圧縮成型によるほどの無機添加剤を添加できない。しかし、溶融成型された像担持体保護剤は、無機添加剤の添加量が少なくても比較的安定した消費率を維持できるため、使用頻度の低い作像ユニットには十分である。また、溶融成型された像担持体保護剤は、圧縮成型された像担持体保護剤に比べ消費率も小さいため、像担持体保護装置に搭載する容量が少なくてすむ利点があり、省スペース化を図ることが可能である。このように、本発明においては、複数の作像ユニット毎に帯電装置や保護層塗布装置の構成を変更する必要がなく、保護層塗布装置に備える像担持体保護剤を変更するだけで、使用頻度の高い作像ユニットの寿命を他の作像ユニットよりも延ばすことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、使用頻度が異なる作像ユニットを複数備える画像形成装置であっても、作像ユニット毎の構成を大幅に変更することなく、使用頻度の高い作像ユニットの寿命を他の作像ユニットよりも延ばすことができる画像形成装置を提供できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係るプリンタの要部構成を示す構成図。
【図2】同プリンタのブラック作像ユニットの構成を示す構成図。
【図3】同プリンタのシアン作像ユニットの構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を電子写真方式の画像形成装置であるカラープリンタに適用した実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタの要部構成を示す構成図である。このプリンタにおいては、図1に示すように、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する4つの作像ユニット10C、10Y、10M、10Kが、水平に延在する中間転写ベルト8に沿って所定の間隔で並置されている。以下、添字C、Y、M、Kはシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの各色をそれぞれ示すが、一部添字を省略して説明する。この作像ユニット10C、10Y、10M、10Kは、矢印A方向に回転する像担持体たる感光体1C、Y、M、Kを備え、その周囲にそれぞれ帯電ローラ2C、Y、M、K、現像装置4C、Y、M、K、転写ローラ5C、Y、M、K、クリーニングブレード6C、Y、M、K、保護層形成ユニット7C、Y、M、Kが順に配置されている。また、この作像ユニット10の下方には、露光装置3を備えている。上記帯電ローラ2は、感光体1表面に接触或いは近接して配置され、バイアスを印加することによって感光体1を所定の極性、所定の電位に帯電する。上記露光装置3は、発光素子としてLD或いはLEDを使用し、帯電ローラ2によって帯電された感光体1に画像データに基づいて変調した光を照射して、感光体1に静電潜像を形成する。現像装置4は、回転自在の現像スリーブ4aとその内部に固定されたマグネットローラとを備えており、現像剤を現像スリーブ4a上に担持している。本実施形態では現像剤としてトナーとキャリアからなる二成分現像剤を用いた二成分磁気ブラシ現像を用いているが、その他の現像方式としてキャリアを用いない一成分現像方式を用いてもよい。現像スリーブ4aには現像バイアス電源から電圧が印加される。この現像バイアスと像担持体1表面に形成された静電潜像の電位との電位差により、現像領域における静電潜像に帯電したトナーを付着させて現像が行われる。上記転写ローラ5は、転写時に感光体1表面に所定の押圧力で接触し、電圧を印加することにより感光体1と転写ローラ5との間の転写ニップ部で感光体1表面のトナー像を中間転写ベルト8に転写するものである。クリーニングブレード6は、後述するように、転写後の感光体1上に残留する転写残トナーや放電により劣化した保護剤等の残留物を除去するものである。また、保護層形成ユニット7は、後述するように、感光体1上に少なくとも脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含有する保護層を形成するものである。
【0012】
上記中間転写ベルト8は駆動ローラを含む複数の搬送ローラによって張架され、図中矢印B方向に移動可能に構成されている。各作像ユニット10に対して中間転写ベルト8の移動方向下流側に二次転写ローラ9が配置されている。各作像ユニット10C、Y、M、Kで現像された感光体1上のトナー像は転写ローラ5により転写電圧が印加された中間転写ベルト8に順次転写される。中間転写ベルト8上に多重転写されたイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像は、二次転写ローラ9によって用紙Pにまとめて転写される。用紙P上の多重トナー像は図示しない定着装置によって定着される。
【0013】
なお、上記作像ユニット10は、感光体1と、帯電ローラ2、現像装置4、転写ローラ5、クリーニングブレード6、保護層形成ユニット7等を一体的に備えたプロセスカートリッジとして、装置本体から着脱可能に構成されている。また、作像ユニット10全体を交換できるように構成するだけではなく、感光体1、帯電ローラ2、現像装置4、転写ローラ5、クリーニングブレード6、保護層形成ユニット7のような単位でそれぞれ新しいものと交換できるような構成であってもよい。
【0014】
次に、上記作像ユニット10C、10Y、10M、10Kの構成について詳細に説明する。図2は、ブラック用作像ユニットの構成を示す構成図である。図3は、シアン用作像ユニットの構成を示す構成図である。なお、図3では、シアン用作像ユニットの構成を示したが、イエロー、マゼンタにおいても現像装置4に備えるトナー色が異なる以外は構成が同一である。図2及び図3に示すように、作像ユニット10C、10Y、10M、10Kでは、上述したように、トナー色が異なる以外は、感光体1と、帯電ローラ2、現像装置4、転写ローラ5、クリーニングブレード6の構成は同一である。しかし、ブラック用作像ユニット10Kにおける保護層形成ユニット7Kで使用される保護剤ブロック14Kと、シアン、イエロー、マゼンタ用(カラー用)の作像ユニット10C、Y、Mにおける保護層形成ユニット7C、Y、Mで使用される保護剤ブロック14C、Y、Mとでは、その成型方法及び容量が異なる。
【0015】
まず、上記保護層形成ユニット7Kの構成について説明する。図2に示すように、この保護層形成ユニット7Kは、後述する保護剤ブロック14K、感光体1Kに保護剤を供給する塗布ブラシ15K、感光体1K上に供給された保護剤を均する均しブレード16K等を備えている。この塗布ブラシ15Kは、不図示の回転数制御可能な駆動モータによって回転速度が制御され、感光体1Kに対して所定の線速差を持ちながら回転駆動され、保護剤ブロック14を削り取り微粉化しながら感光体1Kに供給する。この塗布ブラシ15Kとしては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものを用いることができる。このとき、保護剤ブロック14Kは、押圧スプリング17Kにより塗布ブラシ15Kに対して図中矢印方向に押圧されている。押圧スプリング17Kにより押圧する力は、感光体1K上に保護剤が延展し保護層の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。また、塗布ブラシ15Kによって感光体1に供給された保護剤は、供給時に十分な保護層にならない場合があるため、より均一な保護層を形成するために、均しブレード16Kを設置することが好ましい。この均しブレード16Kは、感光体1Kの回転方向に対してトレーディング支持され、感光体1表面の保護剤を均して緻密な塗布状態とする。
【0016】
ここで、上記保護層形成ユニット7Kに用いられる保護剤ブロック14Kは、次のようにして得られるものである。本実施形態で用いる保護剤ブロック14Kは、少なくとも脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含み、圧縮成型されたものである。圧縮成型では、脂肪酸金属塩と窒化ホウ素を主体とする粉体を混合後、この混合した粉体を成型型に投入し、型内で圧力をかけることで保護剤ブロック14を得る。本実施形態に係る保護剤ブロック14Kにおいては、脂肪酸金属塩以外の窒化ホウ素等の組成物の含有率が10%以上40%以内、より好ましくは15〜35%である。圧縮成型による保護剤ブロックは、溶融成型に比べ、窒化ホウ素等の無機添加剤の添加によって保護剤ブロックが硬くなりすぎることを防ぐことができるため、多量の窒化ホウ素等の無機添加剤を添加できる。よって、保護層形成ユニット7Kのように、長寿命化を図りたい場合には、圧縮成型が好ましい。しかし、圧縮成型による保護剤ブロック14Kは消費率の制御が困難である。そのため、大容量の保護剤ブロック14Kを用意する必要があるが、ブラック用の作像ユニット10Kは、複数並置された作像ユニットのうち、端部に配設されるのが一般的である。本実施形態では中間転写ベルト8の移動方向最下流側に配設される。そのため、ブラック用の作像ユニット10Kでは、大容量の保護剤ブロック14Kのためのスペースを作るのが容易であり、大容量の保護剤ブロック14Kの設置により高寿命化を図ることが可能である。
【0017】
次に、上記保護層形成ユニット7C、Y、Mの構成について説明する。図3に示すように、この保護層形成ユニット7C、Y、Mは、後述する保護剤ブロック14C、Y、M、感光体1C、Y、Mに保護剤を供給する塗布ブラシ15C、Y、M、感光体1C、Y、M上に供給された保護剤を均する均しブレード16C、Y、M等を備えている。この塗布ブラシ15C、Y、Mは、不図示の回転数制御可能な駆動モータによって回転速度が制御され、感光体1C、Y、Mに対して所定の線速差を持ちながら回転駆動され、保護剤ブロック14C、Y、Mを削り取り微粉化しながら感光体1C、Y、Mに供給する。この塗布ブラシ15C、Y、Mとしては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものを用いることができる。このとき、保護剤ブロック14C、Y、Mは、押圧スプリング17C、Y、Mにより塗布ブラシ15C、Y、Mに対して図中矢印方向に押圧されている。押圧スプリング17により押圧する力は、感光体1C、Y、M上に保護剤が延展し保護層の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。また、塗布ブラシ15C、Y、Mによって感光体1C、Y、Mに供給された保護剤は、供給時に十分な保護層にならない場合があるため、より均一な保護層を形成するために、均しブレード16C、Y、Mを設置することが好ましい。この均しブレード16C、Y、Mは、感光体1の回転方向に対してトレーディング支持され、感光体1表面の保護剤を均して緻密な塗布状態とする。
【0018】
ここで、上記保護層形成ユニット7C、Y、Mに用いられる保護剤ブロック14C、Y、Mは、次のようにして得られるものである。本実施形態で用いる保護剤ブロック14C、Y、Mは、少なくとも脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含み、溶融成型されたものである。溶融成型では、脂肪酸金属塩と窒化ホウ素を主体とする粉体を混合後、この混合した粉体を加熱して溶融し、これを成型型の中に流し込み、次いで冷却して保護剤ブロック14を得る。本実施形態に係る保護剤ブロック14C、Y、Mにおいては、脂肪酸金属塩以外の窒化ホウ素等の組成物の含有率が1%以上15%以内、より好ましくは3〜12%である。溶融成型による保護剤ブロック14C、Y、Mの場合には、脂肪酸金属塩以外の窒化ホウ素等の組成物の含有量が12%を超えると、保護剤ブロック14が硬くなりすぎ、かえって感光体1C、Y、Mを摩耗させてしまい好ましくない。しかし、溶融成型によれば、窒化ホウ素等の添加剤の添加量がある程度以下であれば、窒化ホウ素等の添加剤を添加した場合であっても、保護剤ブロックの消費率の変動を抑えることができる。よって、使用頻度の低いシアン、イエロー、マゼンタ用の保護層形成ユニット7C、Y、Mでは、小容量で済む溶融成型による保護剤ブロック14C、Y、Mを用いる。これにより、作像ユニット10C、Y、Mでは、保護層形成ユニット7C、Y、Mのためのスペースを保護層形成ユニット7Kのように広げる必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0019】
なお、本実施形態のように、保護剤を均する均しブレード16を設置する場合には、この均しブレード16がクリーニング部材の機能を兼ねてもよいが、感光体1上の残留物を除去するクリーニング機能と、感光体1上の保護層を均する均し機能とは、適切な部材の摺擦状態が異なることがあるため、機能を分離することが好ましい。そして、より確実に均一な保護層を形成するためには、予めクリーニングブレード6にて感光体1上のトナーを主成分とする残留物を除去し、残留物が保護層内に混入しない方が好ましい。よって、本実施形態では、図2及び図3に示すように、保護層形成ユニット7よりも感光体移動方向上流側にクリーニングブレード6を設けている。
【0020】
上記保護層形成ユニット7の保護剤ブロック14に用いる脂肪酸金属塩の例としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレインサン銅、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプリン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カドミウム及びそれらの混合物があるが、これに限るものではない。また、これらを混合して使用してもよい。
【0021】
上述した脂肪酸金属塩のうち、特にステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。これはステアリン酸亜鉛が、他の脂肪酸金属塩と比較してクリーニング性及び感光体保護性(感光体上での伸展性)に優れている。また、ステアリン酸は、高級脂肪酸の中で最も安価であり、その中でも亜鉛の塩は疎水性に優れた非常に安定な物質である。
【0022】
また、保護剤ブロック14に用いる脂肪酸金属塩以外の組成物としては、窒化ホウ素を含有することを必須とするが、他の無機添加剤、例えば、潤滑剤成分としてマイカ、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、グラファイト、研磨剤成分としてシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、フェライト及びマグネタイト等を含有していてもよい。なお、これら無機添加剤の潤滑剤成分と研磨剤成分との保護剤ブロック14の硬さに影響する度合いは同じである。
【0023】
また、上記保護層形成ユニット7の塗布ブラシ15には、感光体1表面への機械的ストレスを抑制するためには、可撓性を持つブラシ繊維を用いることが好ましい。可撓性をもつブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用することができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して使用しても良い。
【0024】
また、塗布ブラシ15のブラシ繊維は、繊維径10〜500μm程度、ブラシの繊維の長さは1〜15mm、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107〜4.5×108本)のものが好ましく用いられる。また、塗布ブラシには、供給の均一性やその安定性の面から、極カブラシ密度の高いものを使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
【0025】
また、塗布ブラシ15の表面には、必要に応じてブラシの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定されることなく使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
【0026】
また、上記保護層形成ユニット7に用いる均しブレード16の材料は、特に制限されるものではなく、例えばクリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独又はブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、感光体1との接点部部分を低摩擦係数材料でコーティングや含浸処理しても良い。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散しても良い。
【0027】
これらの材料からなる均しブレード16は、自由端が感光体1表面へ押圧当接できるように、ホルダに接着や融着等の任意の方法によって固定される。均しブレード16のブレード厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1〜3mm程度であればさらに好ましく使用できる。また、均しブレードのホルダから突き出し撓みを持たせることができる長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2〜10mm程度であればさらに好ましく使用できる。
【0028】
均しブレード16の他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の表面層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、さらに必要であれば表面研摩等を施して用いても良い。弾性金属ブレードの厚みは、0.05〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1〜1mm程度であればより好ましく使用できる。また、弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施しても良い。表面層を形成する材料としては、PFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂や、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマー等を、必要により充填剤と共に、用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0029】
次に、本発明において好適に用いられる感光体1について説明する。本発明で用いられる感光体1は、導電性支持体の上に感光層が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、或いは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、或いは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に保護層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0030】
本発明で用いられる感光体1の導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状或いは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0031】
本発明で用いられる感光体1の下引層としては、樹脂或いは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的或いは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種或いは多種の混合物を例示することができる。
【0032】
本発明で用いられる感光体1の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種或いは多種混合して使用することができる。下引層は、一層であっても、複数の層で構成しても良い。
【0033】
本発明で用いられる感光体1の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種或いは多種を混合して使用することができる。
【0034】
上記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂或いは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。
【0035】
また、本発明で用いられる感光体1の各層に使用される酸化防止剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
モノフェノール系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
ビスフェノール系化合物;2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
高分子フェノール系化合物;1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
パラフェニレンジアミン類;N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
ハイドロキノン類;2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
有機硫黄化合物類;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
有機燐化合物類;トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0036】
また、本発明で用いられる感光体1の各層に使用される可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0037】
また、本発明で用いられる感光体1の電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー或いはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
【0038】
本発明で用いられる感光体1の表面層は、前述のように、感光体1の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。表面層に用いる高分子は、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、何れの高分子であっても良いが、熱硬化性高分子は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高いためたいへん好ましい。表面層は薄い膜厚であれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させるか、保護層に用いる高分子に電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。感光層と表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により保護層が磨耗し消失すると、すぐに感光層は磨耗してしまうため、表面層を設ける場合には、表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、0.01〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとすることが好ましい。表面層の膜厚が0.1μm以下では、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μm以上では、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
【0039】
上記表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが望ましく、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの高分子は熱可塑性高分子であっても良いが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性高分子とすることで、表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
【0040】
上述したように、感光体1の表面層は電荷輸送能力を有していることが好ましく、表面層に電荷輸送能力を持たせるためには、表面層に用いる高分子と前述の電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する高分子を表面層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができ好ましい。
【0041】
次に、本発明において好適に用いられる中間転写媒体について説明する。図1においては中間転写媒体として中間転写ベルト8を用いたが、ベルト状に限定されるものではなく、円筒状であってもよい。この中間転写媒体に用いられるものとしては、体積抵抗10〜1011Ω・cmの導電性を示すものが好ましい。体積抵抗が10Ω・cmを下回る場合には、感光体から中間転写媒体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、1011Ω・cmを上回る場合には、中間転写媒体から紙などの転写媒体へトナー像を転写した後に、中間転写媒体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
【0042】
上記中間転写媒体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独又は併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成型したベルト状或いは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成型を行い、無端ベルト状の中間転写媒体を得ることもできる。中間転写媒体に表面層を設ける際には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
【0043】
次に、本発明において好適に用いられるトナーについて説明する。まず、本発明で用いられるトナーは、平均円形度が0.93〜1.00であることが好ましい。下記式(1)より得られた値を円形度と定義する。この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
・・・式1
【0044】
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。また、トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。さらに、トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
【0045】
次に、円形度の測定方法について説明する。
円形度は、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、さらに測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
【0046】
また、本発明で用いるトナーは、重量平均径D4が3〜10μmであることが好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。重量平均径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。重量平均径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
【0047】
また、本発明で用いるトナーは、重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることが好ましい。(D4/D1)の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。よって、重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に且つ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
【0048】
次に、トナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。
【0049】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均径D4、個数平均径D1を求めることができる。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0050】
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させて製造されるトナーが好ましい。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
【0051】
トナーの製造に使用できる変性ポリエステル系樹脂から成るプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長或いは架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0052】
上記ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)及び3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、ジオール(1−1)単独、又はジオール(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0053】
上記ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)及び3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、ジカルボン酸(2−1)単独、及びジカルボン酸(2−1)と少量の3価以上のポリカルボン酸(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0054】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;及びこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0056】
上記アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
【0057】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、及びそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0058】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満では、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア変性ポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0059】
これらの反応により、トナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)を作成できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステル(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0060】
また、本発明においては、ウレア変性ポリエステル(i)の単独使用だけでなく、このウレア変性ポリエステル(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。変性されていないポリエステル(ii)を併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。変性されていないポリエステル(ii)としては、前記ウレア変性ポリエステル(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものもウレア変性ポリエステル(i)と同様である。また、変性されていないポリエステル(ii)は、無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。ウレア変性ポリエステル(i)と変性されていないポリエステル(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、ウレア変性ポリエステル(i)のポリエステル成分と変性されていないポリエステル(ii)は、類似の組成が好ましい。変性されていないポリエステル(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。ウレア変性ポリエステル(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0061】
変性されていないポリエステル(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。変性されていないポリエステル(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。変性されていないポリエステル(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0062】
本発明において、結着樹脂のガラス転移点温度Tgは通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cmとなる温度TG’が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度Tηが、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、温度TG’は温度Tηより高いことが好ましい。言い換えると温度TG’と温度Tηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、温度Tηと温度Tgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
【0063】
結着樹脂は以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらにプレポリマー(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。ポリイソシアネート(3)を反応させる際及びプレポリマー(A)とアミン類(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)及びエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で変性されていないポリエステル(ii)を製造し、これを前記ウレア変性ポリエステル(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0064】
また、本発明で用いるトナーは概ね以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、アミン類(B)と反応させて形成しても良いし、予め製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、予めトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させた方がより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、帯電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0065】
ここで用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
【0066】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0067】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いた方が、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0068】
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
【0069】
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αーオレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやNーアルキルーN,Nージメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0070】
またフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3一[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ〕ー1ーアルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3ー[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)一Nーエチルアミノ]ー1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、NープロピルーN一(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)ーNーエチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンSー111、S−112、Sー113(旭硝子社製)、フロラードFCー93、FCー95、FCー98、FCーl29(住友3M社製)、ユニダインDS一101、DSーl02、(タイキン工莱社製)、メガファックFーll0、Fーl20、F一113、Fー191、Fー812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF一102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0071】
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級或いは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6一C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンSーl21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDSー202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEFーl32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF一300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0072】
また水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。
【0073】
また高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、αーシアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸又は無水マレイン酸などの酸類、或いは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β一ヒドロキシエチル、メタクリル酸β一ヒドロキシエチル、アクリル酸βーヒドロキシプロビル、メタクリル酸β一ヒドロキシプロピル、アクリル酸γーヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ一ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3ークロロー2一ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、Nーメチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、又はビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド或いはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、又はその複素環を有するものなどのホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0074】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能なものを用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残留したままとすることもできるが、伸長及び/又は架橋反応後、洗浄除去する方がトナーの帯電面から好ましい。
【0075】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いた方が粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独或いは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒及び塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長及び/又は架橋反応後、常圧又は減圧下にて加温し除去する。
【0076】
伸長及び/又は架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0077】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。或いは、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合わせて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
【0078】
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。勿論乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、又は粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、又は粗粒子はウェットの状態でも構わない。用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0079】
得られた乾燥後のトナーの粉体を離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子と共に混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えるたりすることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
【0080】
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0081】
また、該トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独或いは混合して用いることができる。
【0082】
さらに、必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類、鉄、コバルト、ニッケル等の金属或いは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独又は混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用/併用することもできる。
【0083】
また、本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均径は0.5μm以下であることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。トナー中の着色剤の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。個数平均径が0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、個数平均径が0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、個数平均径が0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。さらに、個数平均径が0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下であることが好ましく、5個数%以下であることがより好ましい。
【0084】
また、着色剤を結着樹脂の一部或いは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行われ、着色剤の分散粒径が小さくなり、特に良好な透明性を得ることができる。予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤や水が、着色剤の分散性の面から好ましい。中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から、特に好ましい。この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより特に良くなる。
【0086】
この他、本発明の構成をとる限り、トナー中に結着樹脂や着色剤と共にワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。離型剤としては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
【0087】
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);及びジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。これら離型剤の融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0088】
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、電荷制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンPー51、オキシナフトエ酸系金属錯体のEー82、サリチル酸系金属錯体のEー84、フェノール系縮合物のEー89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTPー302、TP一415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRAー901、ホウ素錯体であるLRー147(日本カ一リット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0089】
本発明において帯電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂と共に溶融混練した後溶解分散させることもできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
【0090】
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0091】
さらに、トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5μm〜2μmであることが好ましく、特に5μm〜500μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0092】
この他高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0093】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0094】
また、感光体や中間転写媒体に残留する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0095】
これらのトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。しかしながら、転写装置にて用紙等の転写媒体もしくは中間転写媒体に転写されず、感光体上に残存してしまったトナーは、その微細さや転動性の良さのために、クリーニング装置による除去が困難で通過してしまうことがある。トナーを感光体から完全に除去するには、例えばクリーニングブレードのようなトナー除去部材を像担持体に対して強力に押し付ける必要がある。この様な負荷は、感光体やクリーニング装置の寿命を短くするだけでなく、余計なエネルギーを使用してしまうことになる。感光体に対する負荷を軽減した場合には、感光体上のトナーや小径のキャリアの除去が不十分となり、これらはクリーニング装置を通過する際に、像担持体表面を傷つけ、画像形成装置の性能を変動させる要因となる。
【0096】
本発明の画像形成装置は、前述の如く、感光体1表面状態の変動、特に低抵抗部位の存在に対しての許容範囲に優れ、感光体1への帯電性能変動等を、高度に抑制した構成であるため、上記構成のトナーと併用することにより、極めて高画質な画像を、長期に亘って安定して得ることができるものである。
【0097】
また、本発明の画像形成装置は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成のトナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、装置寿命を大幅に延ばすことは言うまでもない。このような、粉砕法によるトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
【0098】
粉砕法によるトナーに使用される一般的な結着剤樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体やその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられ、単独或いは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではない。中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種以上であることが、電気特性、コスト面等から、より好ましいものである。さらには、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂及び/又はポリオール系樹脂の使用が特に好ましい。
【0099】
粉砕法によるトナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作成すれば良く、また、必要により前述の外添成分を、適宜、添加混合すれば良い。
【0100】
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。まず、下記の表1に示す配合条件と成型方法による保護剤ブロックをブラック用の作像ユニット(以下、ブラックユニットという)と、シアン、イエロー、マゼンタ用の作像ユニット(以下、カラーユニットという)にそれぞれ搭載した(比較例1乃至10、実施例1乃至4)。保護剤ブロックは、リコー製 imagio MP C4500の作像部において、図2及び図3に示す保護層形成ユニット7の位置から供給した。そして、A4版、画像面積率5%原稿1万枚の連続通紙試験を行い、クリーニング性(トナーのすり抜け)、帯電ローラの汚れ、感光体保護性を評価した。その評価結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0101】
表2の結果から以下のことが確認された。
[比較例1]
ブラック・カラーユニットで保護剤に窒化ホウ素が添加されていないため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が悪い。
[比較例2]
ブラック・カラーユニットで保護剤にステアリン酸亜鉛以外を使用したため、比較例1よりも感光体保護性が少し悪化している。
[比較例3]
ブラック・カラーユニットで保護剤に炭素数の異なる複数の脂肪酸金属塩を使用したため、比較例1よりもクリーニング性が悪化している。
[比較例4]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されていないため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が悪い。カラーユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されており、さらに溶融成型であるため、長期に亘ってクリーニング性と帯電部材汚染を抑えることができている。
[比較例5]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されていないため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が悪い。カラーユニットは、保護剤に窒化ホウ素が添加されているが、圧縮成型であるため、経時で保護剤が少なくなり機能が低下している。
[比較例6]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されているが、溶融成型で窒化ホウ素の添加量が多いため、保護剤が硬く感光体に供給されがたいため、感光体を保護することができていない。カラーユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されていないため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が悪い。
[比較例7]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されているが、溶融成型で窒化ホウ素の添加量が多いため、保護剤が硬く感光体に供給されがたいため、感光体を保護することができていない。カラーユニットは、保護剤に窒化ホウ素が添加されており、さらに溶融成型であるため、長期に亘ってクリーニング性と帯電部材汚染を抑えることができている。
[比較例8]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されているが、溶融成型で窒化ホウ素の添加量が多いため、保護剤が硬く感光体に供給されがたいため、感光体を保護することができていない。カラーユニットは、保護剤に窒化ホウ素が添加されているが、圧縮成型であるため、経時で像担持体保護剤が少なくなり機能が低下している。
[比較例9]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されており、圧縮成型で窒化ホウ素の添加量が多いため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が非常に良い。消費量は不安定であるが、保護剤の容量が大きくとれるため問題がない。カラーユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されていないため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が悪い。
[比較例10]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されており、圧縮成型で窒化ホウ素の添加量が多いため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が非常に良い。消費量は不安定であるが、保護剤の容量が大きくとれるため問題がない。カラーユニットは、体保護剤に窒化ホウ素が添加されているが、圧縮成型であるため、経時で像担持体保護剤が少なくなり機能が低下している。
【0102】
[実施例1乃至4]
ブラックユニットは保護剤に窒化ホウ素が添加されており、圧縮成型で窒化ホウ素の添加量が多いため、クリーニング性及び帯電部材汚染の程度が非常に良い。消費量は不安定であるが、保護剤の容量が大きくとれるため問題がない。ただし、実施例2では窒化ホウ素の添加量が少ないため帯電部材汚染の程度が少しだけ悪くなっており、実施例4では、窒化ホウ素の添加量が多いため、保護剤が多少硬くなり、感光体保護性が少しだけ悪くなっている。これらから、ブラックユニットにおける圧縮成型された保護剤への窒化ホウ素の添加量は15〜35%程度がより好ましいことがわかる。
一方、カラーユニットは、保護剤に窒化ホウ素が添加されており、さらに溶融成型であるため、長期に亘ってクリーニング性と帯電部材汚染を抑えることができている。ただし、実施例1では窒化ホウ素の添加量が少ないため帯電部材汚染の程度が少しだけ悪くなっており、実施例4では、窒化ホウ素の添加量が多いため、保護剤が多少硬くなり、感光体保護性が少しだけ悪くなっている。これらから、カラーユニットにおける溶融成型された保護剤への窒化ホウ素の添加量は3〜12%程度がより好ましいことがわかる。
【0103】
以上、本実施形態に係る画像形成装置たるプリンタは、使用頻度の高いブラック用の作像ユニット10Kでは、脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含む圧縮成型された像担持体保護剤たる保護剤ブロック14Kを用いている。これにより、作像ユニット10Kでは、窒化ホウ素を多く含有する保護剤ブロック14を用いることができるため、トナーのすり抜け、帯電部材の汚染、感光体の摩耗・フィルミングを確実に防止することができ、装置の高寿命化を図ることが可能である。一方、使用頻度の低いシアン、イエロー、マゼンタ用の作像ユニット10C、Y、Mでは、脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含む溶融成型された保護剤ブロック14C、Y、Mを用いている。これにより、作像ユニット10C、Y、Mでは、窒化ホウ素の含有量が比較的少ない保護剤ブロック14C、Y、Mでも比較的安定した消費率を維持でき、保護剤ブロック14C、Y、Kの容量が少なくてすみ、省スペース化を図ることが可能である。
【0104】
また、本実施形態に係るプリンタは、使用頻度の高いブラック用の作像ユニット10Kが、中間転写ベルト8の移動方向最下流側である端部に配置されている。圧縮成型による保護剤ブロック14Kは消費量が不安定であるが、保護剤ブロック14Kの容量が大きくなっても、保護剤ブロック14Kのスペースを広げることが容易であるため問題ない。
また、本実施形態に係るプリンタは、作像ユニット10Kにおいて、脂肪酸金属塩に対する窒化ホウ素の含有率が10%以上40%以内であって、且つ圧縮成型されたものを用いている。圧縮成型された脂肪酸金属塩を主成分とする保護剤ブロック14は、消費量が不安定あるものの、その不具合を打ち消すだけの窒化ホウ素等の組成物が含有されている。なお、圧縮成型された保護剤ブロック14であれば、窒化ホウ素等の組成物の添加によっても硬くなりすぎることを防ぐことができるが、40%を超えると圧縮成型であっても硬くなり、かえって感光体を保護できなくなり好ましくない。
また、本実施形態に係るプリンタは、作像ユニット10C、Y、Mにおいて、脂肪酸金属塩中に対する窒化ホウ素の含有率が1%以上15%以内であって、且つ溶融成型された保護剤ブロック14C、Y、Mを用いている。溶融形成された脂肪酸金属塩を主成分とする保護剤ブロック14は窒化ホウ素の含有量が比較的少なくても比較的安定して感光体に保護剤を供給することができる。なお、溶融成型された保護剤ブロック14は、窒化ホウ素等の組成物の含有率が12%を超えると、保護剤ブロックが硬くなりすぎ、かえって感光体を保護できなくなり好ましくない。
また、本実施形態係るプリンタは、保護剤ブロック14の脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛を用いている。ステアリン酸亜鉛はその他の脂肪酸金属塩と比較してクリーニング性及び感光体保護性に優れている。また、高級脂肪酸の中でステアリン酸は最も安価であり、その中でも亜鉛の塩は疎水性に優れた非常に安定な物質である。
また、本実施形態に係るプリンタの保護層形成ユニット7においては、供給部材である塗布ブラシ15を介して保護剤が感光体1表面に供給される。保護剤は感光体1表面に付着し膜化することにより保護効果を発現するものであるため、比較的塑性変形しやすいものである。従って、塊状の保護剤ブロック14を直接感光体1表面へ押し付けて保護層を形成させようとした場合、供給が過剰になり保護層形成効率が良くないばかりでなく、保護層が多層化し静電潜像を形成する際等の露光工程で光の透過を阻害する要因となることがあるため、使用できる保護剤の種類が制限されることとなる。これに対して、本実施形態に係る保護層形成ユニット7のように、保護剤ブロック14と感光体1の間に塗布ブラシ15を介させることにより、軟質な保護剤ブロック14を用いた場合にでも、感光体1表面へ均等に供給することができる。
また、本実施形態に係るプリンタの保護層形成ユニット7においては、被膜化手段である均しブレード16によって、感光体1上に均一な保護層が形成される。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、転写ローラ5よりも感光体移動方向下流側、且つ保護層形成ユニット7よりも感光体移動方向上流側に、感光体1上の残留物を除去するクリーニングブレード6を備えている。保護層形成ユニット7に保護剤を皮膜化する均しブレード16を設ける場合、この均しブレード16がクリーニング部材を兼ねても良いが、より確実に保護層を形成するには、予めクリーニングブレード6にて感光体1上のトナーを主成分とする残留物を除去し、残留物が保護層内に混入しないようにするのが好ましい。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、感光体1上に熱硬化性樹脂を含む最表層が形成されている。電気的にストレスによる感光体1の劣化を上記保護剤で防止することにより、熱硬化性樹脂を含む感光体1の機械的ストレスに対する耐久性を長期間に亘り持続的に発現させることが可能となる。これにより、感光体1は実質無交換で使用できるレベルまで耐久性を引き上げることが可能となる。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、感光体1表面に接触又は近接して配設された帯電ローラ2によって感光体1が一様に帯電される。放電領域が感光体1のごく近傍に存在するため、感光体1への電気的ストレスが大きくなりがちであるが、上述した保護層によって感光体1を電気的ストレスにさらすことなく使用できる。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、交流成分を有する電圧を印加する電圧印加手段たる電源を有する帯電ローラ2を備えている。帯電ローラ2に汚れが付着しても交流成分の重畳により、接触帯電ローラ方式で直流成分のみの電圧を印加する場合に比べ、異常帯電の発生が減少する。また、交流成分の重畳により感光体1表面への電気的ストレスが大きくなりがちであるが、上述した保護層によって感光体1を電気的ストレスにさらすことなく使用できる。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、中間転写ベルト8上にも、保護層形成ユニット20及びクリーニングブレード21を設置し、中間転写ベルト8上にも脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含む保護層を形成してもよい。これにより、中間転写ベルト8のクリーニング性及び耐久性の向上を図ることが可能である。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、円形度が0.93以上1.00以下である球形のトナーが用いられている。クリーニングの良否が感光体1表面の状態変化に対して敏感に変動してしまうような円形度が大きい球形のトナーであっても、上述した保護層によって長期間に亘り安定したクリーニング性能を維持することができる。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、重量平均(D4)と個数平均(D1)の比(D4/D1)が1.00以上、1.40以下であるような粒径が揃っているトナーが用いられている。クリーニングの良否が感光体1表面の状態変化に対して敏感に変動してしまうような粒径の揃ったトナーであっても、上述した保護層によって長期間に亘り安定したクリーニング性能を維持することができる。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、少なくとも上記感光体1と保護層形成ユニット7が装置本体から一体に着脱可能に構成されるプロセスカートリッジに組み込まれている。上述したように、長期に亘り感光体1表面の潤滑性を高く維持することができるため、電気的ストレスに対する耐久性が向上し、プロセスカートリッジの交換間隔を極めて長く設定することが可能となり、ランニングコストの低減、及び廃棄物量の大幅な削減を図ることができる。特に、感光体1表面に熱硬化性樹脂を含む層が形成される場合には、機械的ストレスに対する耐久性も長期間に亘り持続的に発現させることが可能となる。また、前述のように、保護剤は金属成分を実質的に含んでいないため、接触又は近接して配設された帯電ローラ2を、金属酸化物等で汚染することなく、帯電ローラ2の経時変化を小さくできる。さらに、このため、感光体1や帯電ローラ2等のプロセスカートリッジ構成部品の再使用も容易となり、更なる廃棄物量削減も可能となる。
【符号の説明】
【0105】
1 感光体
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニングブレード
7 保護層形成ユニット
8 中間転写ベルト
9 二次転写ローラ
10 作像ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特開2008−70813号公報
【特許文献2】特開2006−350240号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、該像担持体上のトナー像を転写媒体に転写する転写手段と、トナー像が該転写媒体に転写された後の該像担持体表面に少なくとも脂肪酸金属塩と無機添加剤とを含む像担持体保護層を形成する保護層形成手段とがそれぞれ配設される作像ユニットを複数備え、該作像ユニットの使用頻度が互いに異なる画像形成装置において、
使用頻度の高い作像ユニットに配設された保護層形成手段には圧縮成型された像担持体保護剤を用い、使用頻度の低い作像ユニットに配設された保護層形成手段には溶融成型された像担持体保護剤を用い、且つ圧縮成型された像担持体保護剤は、溶融成型された像担持体保護剤に比べ無機添加剤となる窒化ホウ素の含有率が高いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
複数並置された作像ユニットの内、上記使用頻度の高い作像ユニットは端部に並置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
圧縮成型された像担持体保護剤は、上記脂肪酸金属塩以外の組成物の含有率が10%以上40%以内であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2の画像形成装置において、
溶融成型された増担持体保護剤は上記脂肪酸金属塩以外の組成物の含有率が1%以上15%以内であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1、2又は3の画像形成装置において、
上記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5の画像形成装置において、
上記保護層形成手段は、上記像担持体と上記像担持体保護剤の双方に接触して該像担持体保護剤を削り取りながら、該像担持体に該像担持体保護剤を供給する供給部材を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6の画像形成装置において、
上記保護層形成手段は、上記像担持体上に付与された上記像担持体保護剤を押圧し被膜化する被膜化手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7の画像形成装置において、
上記転写手段よりも像担持体移動方向下流側、且つ上記保護層形成手段よりも像担持体移動方向上流側に、上記像担持体表面に残留したトナーを除去するクリーニング手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8の画像形成装置において、
上記像担持体は、熱硬化性樹脂を含む最表層を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9の画像形成装置において、
上記像担持体が感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10の画像形成装置において、
上記像担持体表面に接触又は近接して該像担持体表面を一様に帯電する帯電手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11の画像形成装置において、
上記帯電手段は、交流成分を有する電圧を印加する電圧印加手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の画像形成装置において、
上記転写媒体が中間転写媒体であって、該中間転写媒体上に少なくとも脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを含む像担持体保護層を形成する保護層形成手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13の画像形成装置において、
上記トナー像は、円形度(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)が0.93以上1.00以下であるトナーより形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14の画像形成装置において、
上記トナー像は、重量平均(D4)と個数平均(D1)の比(D4/D1)が1.00以上、1.40以下であるトナーより形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の画像形成装置において、
少なくとも上記像担持体と上記保護層形成手段とが、画像形成装置本体から一体に着脱可能に構成されるプロセスカートリッジに組み込まれることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−63517(P2012−63517A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206699(P2010−206699)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】