説明

異なるサブバンド領域同士の間の通過によるデータ処理方法

本発明は、第1の個数Lのサブバンド成分から第2の個数Mのサブバンド成分への、異なるサブバンド領域同士の間の通過によるデータ処理に関する。第3の個数K、すなわち、第1の個数Lと第2の個数Mとの間の最小公倍数を求めた後に、a)KがLと異なっていると、このデータ処理は、p2個の多相成分ベクトル(p2=KL)を得るために、ブロック内で、直列/並列変換によって、入力ベクトルX(z)を配置することにあり、b)出力ベクトルY(z)を形成するp1個の多相成分ベクトル(ただし、p1=K/M)を得るために、p2個の多相成分ベクトルに次元K×Kの正方行列フィルタリングT(z)を適用し、および第3の個数Kが第2の個数Mと異なると、出力ベクトルY(z)を得るために、並列/直列変換によるブロックを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、しかし限定されるものではないが、2つのタイプの圧縮符号化/復号の間のトランス符号化(transcoding)のために、異なるサブバンド領域同士の間の切替によるデータの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチメディア信号のディジタル符号化フォーマットの最近の発展は、著しく大きな圧縮率を可能にしている。さらに、転送ネットワークおよびアクセスネットワークの容量の増加が、現在、ディジタルマルチメディアコンテンツ(音声、オーディオ、イメージ、ビデオなど)の一般大衆による毎日の使用を保証している。このコンテンツの使用は、さまざまなタイプの端末(コンピュータ、移動端末、パーソナルアシスタント(PDA)、テレビジョンデコーダ端末(「セットトップボックス」)など)上で、さまざまなタイプのネットワーク(IP、ADSL、DVB、UMTSなど)を介して行われる。マルチメディアコンテンツへのユーザによるこのアクセスは、これらのさまざまな端末上で、かつこれらのさまざまなネットワークにわたってトランスペアレントな形で行われなければならない概略図が図1に描かれている、「マルチメディアコンテンツへのユニバーサルアクセス」または「Universal Multimedia Access(ユニバーサルマルチメディアアクセス)」を表す「UMA」について話す。
【0003】
端末の異質性に起因する主な問題の1つは、端末が解釈できる符号化フォーマットの多様性に関する。1つの考えられる解決策は、互換フォーマットでコンテンツを配信する前に、端末の能力を回復することであろう。この解決策は、当該マルチメディアコンテンツの配信のシナリオ(ダウンロード、ストリーミング、または放送)に従って、多かれ少なかれ有効であることがわかることがある。この解決策は、放送またはマルチキャストモードでのストリーミングなど、ある場合に適用不能になる。したがって、トランス符号化(または符号化フォーマットの変更)という概念が、重要であることがわかる。この動作は、伝送チェーンのさまざまなレベルで現れることができる。この動作は、たとえばデータベースに以前に格納されたコンテンツのフォーマットを変更するためにサーバレベルで現れることができ、あるいは、ネットワーク等内のゲートウェイで発生することなどができる。
【0004】
トランス符号化の直接、かつ通常の方法は、コンテンツを復号することと、新しい符号化フォーマットでの表現を入手するためにそのコンテンツを記録することとにある。この方法は、一般に、かなりの計算能力を使用し、処理に起因するアルゴリズム的遅延が増え、時々、マルチメディア信号の認識品質をさらに劣化させるという欠点を有する。これらのパラメータは、マルチメディアの用途では非常に重要である。それらの改善(複雑さおよび遅延の減少と品質の維持)は、これらの用途の成功のための重要な要因である。この要因は実施の必須条件になることが多い。
【0005】
これらのパラメータを改善するために、いわゆる「インテリジェントな」トランス符号化という原理が現れつつある。このタイプのトランス符号化は、新しい符号化フォーマットの再構成を可能にするパラメータを抽出するための、最初の符号化フォーマットの、最小限の部分的復号を実行することにある。したがって、この方法の成功は、アルゴリズム的複雑さおよびアルゴリズム的遅延を減らし、知覚(perceptual)品質を維持し、または高めさえするその能力によって測定される。
【0006】
イメージおよびビデオの符号化では、トランス符号化に関する大きい努力が実行されてきた。本明細書では、たとえば、CIFからQCIFへのイメージサイズの、またはMPEG−2フォーマットからMPEG−4フォーマットへの変更を例に挙げる。通常、電話通信での音声信号のトランス符号化について、符号化フォーマットに関する問題を解決するための努力がなされている。その一方で、オーディオ信号の処理には、非常に少ないかほとんど取り組んでいない。この既存の努力は、同じフォーマット内でまたは非常に似た構造のある種の符号化フォーマットの間で切り替える時のビットレートを小さくする場合に限定されたままである。主な理由は、最も広く使用されているオーディオコーダが、変換(またはサブバンド)タイプであり、一般に、これらのコーダは異なる複数の変換または複数のフィルタバンクを使用するということにある。したがって、これらの変換またはフィルタバンクの領域での信号の表現同士の間で変換するシステムを実現することは、オーディオの分野でのインテリジェントなトランス符号化に関する他の問題に取り組むことができるようになる前に克服されなければならない最初の問題であることが理解されるであろう。
【0007】
オーディオトランス符号化と、知覚オーディオサブバンド符号化の原理の短い注意の後に生じる主な問題の定義を以下に示す。
【0008】
さまざまなタイプの用途のために、および広範囲のビットレートおよび品質のために設計された非常に多様なオーディオコーダが存在する。これらのコーダは、コンストラクタ(すなわち「所有者」)に固有であるか、国際組織の決定によって標準化される場合がある。さらに、これらのコーダのすべてが、共通の基本構造を有し、類似する原理に基づいている。
【0009】
知覚周波数オーディオ符号化の基本原理は、人間の聴覚系の特性を利用することによって、情報のビットレートを下げることにある。オーディオ信号の直接には関連しない成分は除去される。この動作は、いわゆる「マスキング」という現象を使用している。このマスキング作用の説明は、主に周波数領域で行われるので、信号の表現は、周波数領域で実行される。
【0010】
より具体的には、符号化・復号システムの基本方式が図2aおよび2bに示されている。図2aを参照すると、ディジタルオーディオ入力信号Seは、まず、解析フィルタのバンク20によって分解される。その結果得られたスペクトル成分はその後、モジュール22によって量子化され、そして符号化される。この処理から生じる雑音が聴こえないように、この量子化は知覚モデル24の結果を使用する。最後に、符号化されたさまざまなパラメータの多重化が、モジュール26によって実行され、したがって、オーディオフレームScが構成される。
【0011】
図2bを参照すると、復号は二重に実行される。モジュール21による、オーディオフレームの多重分離の後に、これらさまざまなパラメータが復号され、モジュール23によって信号のスペクトル成分が逆量子化される。
【0012】
最後に、時間オーディオ信号が合成フィルタのバンク25によって再構成される。
【0013】
したがって、知覚オーディオ符号化システムの第1のステージは、時間/周波数変換に使用される解析フィルタのバンク20からなる。広範囲のフィルタバンクおよび変換が、開発され、オーディオコーダで使用されてきた。例に過ぎないが、擬似QMFフィルタバンク、ハイブリッドフィルタバンク、MDCT変換バンクに言及する。MDCT変換は、現在、これに関して最も有効であることがわかりつつある。MDCT変換は、MPEG−4 AAC、TwinVQ、およびBSACに使用されるアルゴリズム、Dolby AC−3標準規格、France Telecom社のTDACコーダ/デコーダ(「Time Domain Aliasing Cancellation」を表す)で使用されるアルゴリズム、UIT−T標準規格G.722.1で使用されるアルゴリズムなどの、最も最近の効果的なオーディオ符号化アルゴリズムの基礎である。
【0014】
これらのさまざまな変換は、別々に開発されてきたが、類似する一般的な数学的手法によって、さまざまな観点、すなわち、変調されたコサインフィルタバンク(modulated cosine filter bank)、重複直交変換(lapped orthogonal transform)(または「LOT」)、およびより一般的に、最大デシメーション(maximal decimation)すなわちクリティカルサンプリング(critical sampling)を用いるフィルタバンクについて、説明する。フィルタバンクのためのクリティカルサンプリングの特性が、サブサンプリング/オーバーサンプリング係数がサブバンドの個数と等しいことにあることを思い起こされたい。
【0015】
図3aおよび3bはそれぞれ、第1の符号化フォーマットに従うコーダCO1と第2の符号化フォーマットに従うデコーダDEC2との間の、通信チェーン内の従来のトランス符号化方式およびインテリジェントトランス符号化方式を示している。従来のトランス符号化の場合、完全なデコード動作は、第1のフォーマットに従うデコーダモジュールDEC1(図3a)と、それに続く、第2のフォーマットに従うコーダモジュールCO2による記録によって実行され、最終的に第2の符号化フォーマットで終わる。
【0016】
図3bの場合、図3aの2つのブロックDEC1およびCO2は一方、「インテリジェントな」トランス符号化モジュールと呼ばれる統合されたモジュール31に置換される。
【0017】
図4には、インテリジェントなトランス符号化の実施によって合併される複数の動作の詳細が示されている。これは、従来のトランス符号化の、合成フィルタバンクBS1の機能ブロックおよび解析フィルタバンクBA2の機能ブロックを、モジュール31内で、サブバンド領域同士間の直接変換のためのシステムになるように、統合することを主に含む。
【0018】
さまざまなタイプのフィルタバンク(特にサブバンドの個数に関して異なるサイズの、および異なる構造の)をコーダによって使用することは、克服すべき第1の、そして主要な問題である。したがって、これは、フレームのサンプルの全セットを、第1のフィルタバンクの領域から宛先フィルタバンクの領域に入れ替えること含む。この入れ替えは、インテリジェントなオーディオトランス符号化システムで行われなければならない最初の動作である。
【0019】
下記の表1は、最もよく知られた変換ベースのオーディオコーダで使用されるフィルタバンクのタイプならびにその特性に関する要約を示している。わかるように、最も広く使用されている1つであるMDCT変換に加えて、複数の擬似QMFバンクがある。さらに、これらはすべて、完全な再構成という特性を正確にまたはほとんど満たす、最大デシメーションバンクおよび変調されたコサインバンクのファミリーの一部を形成している。
【0020】
【表1】

【0021】
AACフォーマットとAC−3フォーマットとの間の切替が現在、多くの関心を喚起していることが示されている。
【0022】
下記の表2は、表1のサブバンド符号化のうちのあるタイプを、それらの応用例のいくつかを詳細に示しつつ、再び述べている。
【0023】
【表2】

【0024】
オーディオトランス符号化における公知の従来技術では、米国特許第6134523号が、MPEG−1レイヤ1または2によって符号化されたオーディオ信号の、符号化された領域でビットレートを下げる方法を提示している。この方法は、オーディオトランス符号化プロセスに似通ってはいるが、符号化フォーマット間の変更を一切実行せず、サブバンドの信号は、同じ変換された領域の表現すなわち、擬似QMFフィルタバンクの表現に留まる。ここで、信号は、ビットの新しい割振りに従って非常に単純に再量子化される。
【0025】
さらに、米国特許出願第2003/0149559号文書では、トランス符号化動作中に心理音響モデルの複雑さを減らす方法が提案されている。したがって、トランス符号化中にマスキング閾値を計算する動作に頼る必要をなくすために、この新しいシステムは、歪みテンプレートのデータベースに格納された値を使用する。この方法はトランス符号化の問題を扱ってはいるが、フィルタバンク領域同士間の切替に関する目的からは程遠いままである。
【0026】
米国特許出願第2003/014241号文書では、MPEG−1レイヤ2オーディオ符号化フォーマットとMPEG−1レイヤ3オーディオ符号化フォーマットとの間のトランス符号化のシステムが提案されている。具体的に言うと、MPEG−1レイヤ2フォーマットは、擬似QMF解析フィルタバンクを使用し、MPEG−1レイヤ3フォーマットは、同じフィルタバンクと、それに続く、前記バンクの出力サブバンド信号に適用されるサイズ18のMDCT変換とを使用する。「ハイブリッドフィルタバンク」について話す。この文書で提案された変換システムは、MPEG−1レイヤ2フレームのサブバンドの複数のサンプルの逆量子化の後にこの変換を適用することにある。したがって、このシステムは、この2つの符号化フォーマットの間の類似性から利益を得る。
【0027】
本発明の趣旨の範囲内で追求される目的に関して、次の点に留意する。
【0028】
この従来技術の技術は、トランス符号化のこの特定の場合にしか適用できない。
【0029】
この技術は、新しい異なるサブバンド領域での変換を真に処理してはいない。この技術は単に、新しい、欠けている解析フィルタバンクをカスケード接続することを含み、このことは、周波数分解能を高めることを可能にする。
【0030】
変換された領域でのマルチレート処理およびフィルタリングは、イメージおよび/またはビデオデータ処理の別の文脈で、特に参考文献:「2−D Transform−Domain Resolution Translation」、J.−B.Lee and A.Eleftheriadis、IEEE Trans.on Circuit and Systems for Video Technology、Vol.10、No.5、200年8月、を通じて既に公知である。
【0031】
この文献は、変換された領域での線形フィルタリング(「変換領域フィルタリング(Transform−Domain Filtering)」を表すTDF)方法の一般化を記述している。より具体的に言うと、この一般化は、第1の変換(逆)
【0032】
【数1】

【0033】
および第2の変換(直接)
【0034】
【数2】

【0035】
が同じサイズである場合に確立される。この一般化は、まず、この方法を、変換が同じサイズでない場合に拡張することにある。したがって、このプロセスを、「非均一TDF」(すなわちNTDF)と呼ぶ。その後、この方法を、フィルタリングに加えて、マルチレート処理動作(サブサンプリングおよびオーバーサンプリング)が変換された領域で追加され、「マルチレートTDF」(MTDF)が得られる場合に拡張する。
【0036】
応用例として提案されているのが、変換がDCT(「離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform)」を表す)である、特にイメージ応用例およびビデオ応用例(CIFイメージフォーマットとQCIFイメージフォーマットとの間の変換)についての、変換領域での分解能の変更である(「変換領域分解能変換(Transform−Domain Resolution Translation)」を表すTDRT)。したがって、この参考文献は、変換された領域でのフィルタリングだけに関心を持っている。記載された方法は、DCT、DSTなど、オーバーラップのない変換の場合だけに限定されるが、通常は、MLT(「変調された重複変換(Modulated Lapped Transform)」を表す)などのオーバーラップを伴う変換には適用できず、より一般的に、最大デシメーションを有するタイプのフィルタバンクには適用できず、これらのフィルタが、おそらくは、さらに、有限インパルス応答または無限インパルス応答を有する。
【0037】
やはりイメージおよびビデオのトランス符号化の、異なるサイズのDCT領域同士の間の変換に関して、次の参考文献「Direct Transform to Transform Computation」、A.N.Skodras、IEEE Signal Processing Letters、Vol.6、No.8、1999年8月、202〜204頁、を引用することができる。
【0038】
この文書では、DCT領域でのイメージサブサンプリングのための、異なるサイズのDCT変換同士の間で切り替える方法が提案されている。この方法の応用例の1つはトランス符号化であろう。さらに、この方法は、それぞれがサイズN/2の2つの隣接する変換されたベクトルからのサイズNの変換されたベクトルの構成に限定される。
【0039】
MDCT領域内の信号の表現とDFT領域(離散フーリエ変換)内の信号の表現との間で変換する方法が米国特許出願第2003/0093282号文書に提示されている。
【0040】
この方法は、オーディオ信号を簡単に変更できる表現に変換するという目的で開発された。具体的に言うと、TDACフィルタバンクは、DFTフィルタバンクと異なって、より実用的であり、オーディオコーダにおいてより多く使用されている。さらに、この変換領域の信号の成分に対する処理または変更の実行は、スペクトルエイリアス成分の存在のために、適切でも十分に柔軟でもない。他方、DFT表現は、タイムスケールの変更またはピッチのシフトなど、オーディオ信号に対して変更が行われる時に、より有用である。したがって、この参考文献は、逆MDCTによる時間信号の合成およびその後のDFTの適用にある従来の方法を適用するのではなく、MDCT領域とDFT領域の間で変換する直接方法を提案するものである。したがって、この方法は、符号化された領域で直接に変更を行うことを可能にする。この文書は、DFT領域とMDCT領域との間で変換する二重方法も提案しており、この二重方法は、変更後にオーディオ信号を再符号化する必要がある場合に有用であろう。
【0041】
この参考文献では、複雑さに関する従来の変換方法との比較は低下を示さない。さらに、データの格納を可能にする、メモリの小さな増加が実証されている。
【0042】
しかし、
・この参考文献に示された方法は特定の場合を扱う。この方法は、MDCT領域とDFT領域との間で変換する場合およびその逆の場合だけに限定される。
・この方法は、この2つのフィルタバンクが同じサイズである場合に限定される。
【0043】
刊行物「An Efficient VLSI/FPGA Architecture for Combining an Analysis Filter Bank following a Synthesis Filter Bank」、Ravindra Sande,Anantharaman Balasubramanian、IEEE International Symposium on Circuits and Systems、カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー、2004年5月23〜26日も引用することができる。
【0044】
この刊行物は、L個のサブバンドを有する合成フィルタバンクと、それに続くM個のサブバンドを有する解析フィルタバンクとからなり、MとLは互いの倍数であるシステムを実施する効率的な構造を開示している。この構造は、VLSI集積テクノロジ(「超大規模集積回路」)またはFPGA(「フィールドプログラマブルゲートアレイ」)または並列プロセッサで実施するのに効率的である。この構造は、より少ない論理ブロック、より低い電力消費を必要とし、並列度を拡張することを可能にしている。提案された方法は、サブバンドに基づく1つの処理が、別のサブバンド処理に続き、中間合成信号が不要である状況に適用可能である。
【0045】
しかし、
・上記した方法は、当該フィルタバンクが変調され、多相構造に分解されるという限定的な仮定をしている。
・この方法は、MおよびLが互いの倍数である特定の場合だけに限定される。
【0046】
サブバンド領域同士間で変換する方式の構造が、特に「Multirate Systems and Filter Banks」、P.P.Vaidyanathan、Prentice Hall、米国ニュージャージー州エングルウッドクリフ、1993年、148〜151頁で提示されたトランスマルチプレクシング(trans−multiplexing)の問題の構造とのある種の類似性を示すことも指摘しなければならない。
【0047】
具体的に言うと、TDMからFDMへ(「時間領域多重化から周波数領域多重化へ)のトランスマルチプレクシングにおいて、合成フィルタバンクが使用される。インターレースされた時間信号を再構成するために(すなわち、FDMからTDMへの逆トランスマルチプレクシング動作を実行するために)、解析フィルタバンクが使用される。したがって、TDM→FDM→TDMシステムの構造は、合成フィルタバンクおよび解析フィルタバンクのカスケード接続になり、これは、従来のトランス符号化システムでも使用されるものによく対応する。これらのトランスマルチプレクシングシステムで一般に提起される問題は、TDM→FDM→TDM動作の後にひずみのない元の信号を再構成することである。これは、これらのフィルタバンク内に、完全ではない帯域フィルタの使用から生じるクロストークという現象に起因するひずみを除去することを主として含む。同じ参考文献「Multirate Systems and Filter Banks」、P.P.Vaidyanathan、Prentice Hall、米国ニュージャージー州エングルウッドクリフ、1993年、259〜266頁、に示された、合成フィルタおよび解析フィルタの賢明な設計が、この問題を克服することを可能にする。これらのフィルタに関する設計提案では、合成フィルタバンクと解析フィルタバンクとを合併し、これによってインテリジェントな変換システムを提案することになる方法が提示されている。
【0048】
しかし、
・この文書で提案された多重化構造では、合成フィルタバンクおよび解析フィルタバンクが同じ個数のバンドを有する(M=L)。
・トランス符号化におけるのと全く同じように合成フィルタバンクおよび解析フィルタバンクを合併するトランスマルチプレクシングシステムを構築する目的はない。これらの2つのフィルタバンクは、独立にカスケード接続されたままにされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
本発明は、上記した従来技術に関する状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0050】
このために、本発明は、第2の個数の各サブバンド成分Mを含む第2のベクトルを得るために、合成フィルタのバンクへ、そしてその後に解析フィルタのバンクへ、第1の個数Lの各のサブバンド成分を含む第1のベクトルへの適用を同じ処理内で圧縮することにある、異なるサブバンド領域の間で切り替えることによってデータを処理する、コンピュータリソースによって実施される方法を提案する。
【0051】
本発明の趣旨内の方法は、
第3の個数K、すなわち第1の個数Lと第2の個数Mとの間の最小公倍数の判定の後に、
a)第3の個数Kが第1の個数Lと異なる場合に、p2=K/Lであるp2個の多相成分ベクトルを得るために、第1のベクトルの直列/並列変換によってブロック毎に配置するステップと、
b)p1=K/Mである、第2のベクトルのp1個の多相成分ベクトルを得るために、次元K×Kの正方行列
【0052】
【数3】

【0053】
を含む、選択された行列フィルタリングをp2個の多相成分ベクトルへ適用するステップと、
c)第3の個数Kが第2の個数Mと異なる場合に、第2のベクトルを得るために、並列/直列変換によるブロック毎に配置するステップと
を有する。
【0054】
このように、本発明は、特に、以下でわかるように限定するものではなく、任意の第1タイプの符号化から任意の第2タイプの符号化へのトランス符号化を提案する。また、サブバンドの各個数MおよびLは任意の自然整数であり、ほとんどの一般的な場合に、必ずしも比例関係によって関係しないことが理解されるであろう。
【0055】
したがって、本発明の趣旨の範囲内の方法を、少なくとも1つの第2のタイプの圧縮符号化/復号への第1のタイプの圧縮符号化/復号グのトランス符号化へ有利なことに適用してもよい。この適用は、
第1の個数L個の各サブバンド成分を含む第1のベクトルの形態での、第1のタイプに従って少なくとも部分的にデコードされたデータを回復するステップと、
第1のベクトルを、第1のタイプによる合成フィルタのバンクに適用し、その後第2のタイプによる解析フィルタのバンクへ適用するステップと、
各々第2の個数Mのサブバンド成分を含み、第2のタイプによる後続のコーディングステップに適用できる第2のベクトルを回復するステップと
を同一処理内で構成することにある。
【0056】
本発明は、サーバ、ゲートウェイ、または端末などの、通信ネットワーク内の機器のメモリに格納されるようになっており、本発明において請求された方法のすべてまたは一部を実施するための命令を含むコンピュータプログラム製品も目的としている。
【0057】
本発明は、本発明において請求される方法を実施するコンピュータリソースを含む、サーバ、ゲートウェイ、または端末などの、通信ネットワーク用の機器をも目的としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付図面を調べる際に明らかになる。
【0059】
サブバンド領域同士間で変換する方法を、以下下で本発明の全般的な提示で説明する。
【0060】
第1の圧縮符号化システムによって使用され、Fk(z)、ただし0≦k≦L−1、と表されるそのフィルタによって定義されるLバンド合成バンクと、第2の圧縮システム内で使用され、Hn(z)、ただし0≦n≦M−1、と表されるそのフィルタによって定義されるMバンド解析フィルタバンクとを検討する。この2つの圧縮システムで使用される2つのフィルタバンクを、後でわかるように、優先的に最大デシメーションシステム(すなわち「クリティカルサンプリングシステム」)であると仮定する。
【0061】
【数4】

【0062】

【0063】
【数5】

【0064】
によって、それぞれ第1のフィルタバンクおよび第2のフィルタバンクの領域内の信号を表す、サブバンドの信号のベクトルを表す。
【0065】
サブバンド領域同士間の変換の原理を、図5aおよび5bによって示す。この原理は、合成バンクBS1および解析バンクBA2のカスケード接続(図5a)と等価な、サブバンド信号のベクトル
【0066】
【数6】

【0067】
の間で変換するシステム51(図5b)を見つけことを含む。その目的はアルゴリズムの複雑さ(すなわち、計算動作の回数および必要なメモリ)を減らすためにこれらの2つのフィルタバンクの間である種の数学計算動作を合併することである。したがって、他の目的は、この変換によって生じるアルゴリズム的遅延を最小限まで減らすことにある。
【0068】
マルチレートブロックを使用することによって、図5aの方式を、解析フィルタバンクが合成フィルタバンクに続く図6の方式によって表すことができる。L個のサブバンドを有する合成フィルタバンクは従来、各サブバンドk、ただし0≦k≦L−1、において、合成フィルタFk(z)によるフィルタリングが続く、L倍のオーバーサンプリングの動作から構成される。したがって、入力ベクトル
【0069】
【数7】

【0070】
のk番目の成分に対応するサブバンド信号は、まずオーバーサンプリングされ、次いで、フィルタFk(z)によってフィルタリングされる。この合成バンクの出力において合成される時間信号
【0071】
【数8】

【0072】
は、その後、0≦k≦L−1についてこれらのフィルタリングの結果を合計することによって得られる。
【0073】
この時間信号は、その後、M個のサブバンドを有する解析バンクの入力を構成する。この入力は、サブバンドn、ただし0≦n≦M−1、ごとに、解析フィルタHn(z)によるフィルタリングと、その後のM倍のオーバーサンプリング動作とを受ける。
【0074】
【数9】

【0075】
によるz変換の領域において表される、サブバンド信号の、サイズMのベクトルがつぎに、この解析バンクの出力において得られる。したがって、時間信号の合成は、本発明の趣旨の範囲内の、後で説明する変換システムと対照的に、この従来の変換システムでは一般に必要である。
【0076】
したがって、次に、本発明の趣旨の範囲内の変換システムを、一般表現に従って説明する。
【0077】
【数10】

【0078】
となるように、Kによって、MおよびLの最小公倍数を表し(すなわち、K=lcm(M,L))、p1およびp2によって自然整数を表す。
【0079】
信号ベクトル
【0080】
【数11】

【0081】
のp2個の多相成分への分解から生じるベクトル
【0082】
【数12】

【0083】
、信号ベクトル
【0084】
【数13】

【0085】
のp1個の多相成分への分解から生じるベクトル
【0086】
【数14】

【0087】
を考える。
【0088】
【数15】

【0089】
によって、合成フィルタと解析フィルタとの間の積を一緒にまとめるサイズM×Lの行列を表す。したがって、この行列の要素は、
【0090】
【数16】

【0091】
と書くことができ、行列形式では
【0092】
【数17】

【0093】
と書くことができ、ここで、
【0094】
【数18】

【0095】

【0096】
【数19】

【0097】
は、それぞれ、第2のフィルタバンクの解析フィルタのベクトルおよび第1のフィルタバンクの合成フィルタのベクトルである。
【0098】
サブバンド領域同士間の変換は、次の式によって与えられる。
【0099】
【数20】

【0100】
変換行列
【0101】
【数21】

【0102】
は、K×Kのサイズである。その式は、
【0103】
【数22】

【0104】
によって与えられ、ここで、
【0105】
【数23】

【0106】
は、要素が
【0107】
【数24】

【0108】
と定義される、サイズp1×p2の行列である。
【0109】
演算
【0110】
【数25】

【0111】
は、
【0112】
【数26】

【0113】
となるクロネッカ積を表す。
【0114】
演算
【0115】
【数27】

【0116】
が、K個のサンプルのうちの1つのサンプルだけが保持されるサブサンプリングに対応する、K倍のデシメーションを表すことを想起されたい。
【0117】
本変換システムを、後でわかるように、このシステムが有利なことにいわゆる「線形周期時間変動(Linear Periodically Time Varying)」システム、すなわちLPTVシステムであることを示す図7に示されているように、図式化することができる。
【0118】
図7では、進み
【0119】
【数28】

【0120】
と遅延のチェーンとからなる、P2倍のデシメーション72_p2−1から72_0が続く入力ブロック71は、
【0121】
【数29】

【0122】
と表されるp2個の入力ベクトルの各一続きを、サイズKの単一のベクトル
【0123】
【数30】

【0124】
内のブロックとして配置する機構と解釈することができる。後者のベクトル
【0125】
【数31】

【0126】
は、その後、フィルタリング行列
【0127】
【数32】

【0128】
に適用され(モジュール74)、その結果は、ベクトル
【0129】
【数33】

【0130】
と同じサイズのベクトル
【0131】
【数34】

【0132】
である。
【0133】
当業者にとって慣例として、表記
【0134】
【数35】

【0135】
が、単にそのz変換によるベクトル
【0136】
【数36】

【0137】
の式に関し、一方、表記
【0138】
【数37】

【0139】
が、時間領域のベクトル
【0140】
【数38】

【0141】
の式に関することを想起されたい。
【0142】
図7の最後のブロック73_p1−1から73_0は、最終的に、ベクトル
【0143】
【数39】

【0144】
の、サイズMのp1個の連続したサブベクトルを、出力としてベクトル
【0145】
【数40】

【0146】
を生じるように直列にすることを可能にする。
【0147】
図7の入力ブロックおよび出力ブロックは最終的に、本発明の趣旨の範囲内の方法の主要なステップを要約した図8のブロックに配置する機構81およびその後に直列に置く機構82とほとんど異ならない。
【0148】
有利なことに、本発明の趣旨の範囲内の変換システムは最小限の遅延を有する。
【0149】
具体的に言うと、このサブバンド領域変換システムの目的の1つは、生じるアルゴリズム的遅延を最小にすることである。したがって、遅延を減らすために進みを導入することが必要である。
−合成フィルタバンクの入力において進み/遅延
【0150】
【数41】

【0151】
を加え、
−2つのフィルタバンクの間で進み/遅延
【0152】
【数42】

【0153】
を加えると、上記の式(5)は、
【0154】
【数43】

【0155】
になる。
【0156】
指数eij=aL+b+(iM−jL)、ただし0≦i≦p1−1,0≦j≦p2−1は、次の2つの極値の間で変動する。
【0157】
【数44】

【0158】
行列
【0159】
【数45】

【0160】
の要素フィルタは、
【0161】
【数46】

【0162】
である場合に限って、すべてが因果関係(causal)を示す。
【0163】
したがって、本発明の趣旨の範囲内の変換システムは、さまざまな遅延を用いて、パラメータaおよびbに関する異なる選択を行うことによって、しかし不等式(12)が優先的に満たされるという条件付きで、構成することができる。
【0164】
したがって、パラメータaおよびbは、サブバンド領域同士間で変換するシステムによって生じるアルゴリズム的遅延に作用することを可能にする調整パラメータと考えることができる。
【0165】
最小限のアルゴリズム的遅延を有する変換システムでは、最大の考えられる進みを導入することが適当である。したがって、aおよびbの選択は、
【0166】
【数47】

【0167】
になるように優先的に行われる。
この選択では、式(8)は、
【0168】
【数48】

【0169】
さもなくば
【0170】
【数49】

【0171】
になり、ここで、
【0172】
【数50】

【0173】
は、その要素が
【0174】
【数51】

【0175】
と定義される行列である。
【0176】
したがって、関係(16)は、本発明の趣旨の範囲内の変換システムによって生じるアルゴリズム的遅延を最小限まで減らすことを可能にする、変換行列
【0177】
【数52】

【0178】
の一般式である。
【0179】
次では、最小限の遅延を有する変換システムの場合を検討する。
【0180】
表記eij=M−1+(iM−jL)、ただし、0≦i≦p1−1、かつ0≦j≦p2−1、を使用すると、行列
【0181】
【数53】

【0182】
の行列要素
【0183】
【数54】

【0184】
の次の解釈を、式(15)に基づいて与えることができる。
【0185】
【数55】

【0186】
関係(18)において考慮される多相成分が、たとえば前述の参考文献
「Multirate Systems and Filter Banks」、P.P.Vaidyanathan、Prentice Hall、米国ニュージャージー州エングルウッドクリフ、1993年、に記載された、1から次数Kまでのタイプの分解に対応することに留意されたい。
【0187】
したがって、この解釈は、積フィルタGnk(z)=Hn(z)Fk(z)、(0≦n≦M−1、かつ0≦k≦L−1)の、および遅延を追加することによって構成される対応するフィルタの1から次数Kまでのタイプの多相成分から直接、行列
【0188】
【数56】

【0189】
を構成することを可能にする。
【0190】
行列
【0191】
【数57】

【0192】
の要素をより明確に表すために、
【0193】
【数58】

【0194】
と書く。
したがって、行列
【0195】
【数59】

【0196】
の要素フィルタを、0≦m,l≦K−1について、
【0197】
【数60】

【0198】
と書くことができる。
【0199】
後者の式(20)で、整数i、nおよびj、kは、次のようにlおよびmに依存する。
【0200】
【数61】

【0201】
ここで、
【0202】
【数62】

【0203】
は、実数xの整数部分を表す。
【0204】
表記
【0205】
【数63】

【0206】
(ただし、0≦r≦K−1)は、1から次数Kまでのタイプの分解から生じる、フィルタGnk(z)の多相成分番号rを示す。
【0207】
多相成分
【0208】
【数64】

【0209】
(ただし、0≦r≦K−1)は、合成フィルタおよび解析フィルタが有限インパルス応答(すなわち「FIR」)を有する場合に、直接、求めることができる。フィルタバンクの一方または両方が、再帰型フィルタ(無限インパルス応答、すなわち「IIR」を有する)を使用する場合には、積フィルタGnk(z)も、無限インパルス応答を有する。そのような分解を実行する一般的な方法が、参考文献「Traitement du signal audio dans le domaine code:techniques et applications」[Audio signal processing in the coded domain:techniques and applications]、A.Benjelloun Touimi、e’cole nationale supe’rieure des te’le’communications de Parisからの博士論文、2001年5月からの付録A、題名「Polyphase decomposition of recursive filters」に記載されていることが示す。
【0210】
M=pLの特定の場合の、本発明の趣旨の範囲内の解決策を以下に示す。
【0211】
M=pLの場合、K=lcm(M,L)=M、かつp1=1であると同時にp2=pになる。そこで、式(4)は、
【0212】
【数65】

【0213】
になる。ここで
【0214】
【数66】

【0215】
は、信号
【0216】
【数67】

【0217】
のベクトルの次数pの多相成分のベクトルである。
【0218】
この場合の変換行列は、サイズがM×Mであり、次のように書くことができる。
【0219】
【数68】

【0220】
したがって、この行列は、合成フィルタおよび解析フィルタの積の、行列
【0221】
【数69】

【0222】
の、1から次数Mまでのタイプの分解による、一般インデックス(p−k)L−1(ただし、0≦k≦p−1)の多相成分からそれぞれがなる行ベクトルである。
【0223】
より明示的には、行列
【0224】
【数70】

【0225】
の要素フィルタは、
【0226】
【数71】

【0227】
と書くことができ、ここで、jおよびkは、関係
【0228】
【数72】

【0229】
によってlから得られる整数である。
【0230】
表記
【0231】
【数73】

【0232】
(ただし、0≦r≦M−1)は、次数Mまでの分解から生じる、フィルタGmj(z)の一般インデックスrの多相成分を目指している。
【0233】
この変換システムの方式を、この特定の場合において、マルチレート表現として図9に、およびフィルタリング方法の主なステップを示す図10に示す。
【0234】
L=pMの特定の場合における本発明の趣旨の範囲内の解決策を以下に示す。
【0235】
この特定の場合、K=lcm(M,L)=L、かつp1=pであると同時にp2=1になる。したがって、式(4)は、
【0236】
【数74】

【0237】
になる。ここで、
【0238】
【数75】

【0239】
は、信号
【0240】
【数76】

【0241】
のベクトルの次数pの多相成分のベクトルである。
【0242】
この場合の変換行列は、サイズがL×Lであり、次のように書くことができる。
【0243】
【数77】

【0244】
したがって、この行列は、合成フィルタおよび解析フィルタの積の、行列
【0245】
【数78】

【0246】
の、1から次数Lまでのタイプの分解による、一般インデックス(k+1)M−1(ただし、0≦k≦p−1)の多相成分からそれぞれがなる列ベクトルである。
【0247】
より明示的には、行列
【0248】
【数79】

【0249】
の要素フィルタは次のように書くことができる。
【0250】
【数80】

【0251】
ここで、iおよびkは、
【0252】
【数81】

【0253】
によってmから得られる整数である。
【0254】
表記
【0255】
【数82】

【0256】
(ただし0≦r≦L−1)は、次数Lまでの分解から生じる、フィルタGil(z)の一般インデックスrの多相成分を示す。
【0257】
パラメータaおよびbの考えられる選択は、a=0およびb=M−1を採用することにある。他の選択は、最小限の遅延を有するシステムで終わるように等式(14)が優先的に満たされるという条件で考えられる。
【0258】
変換システムのこの方式を、この場合において、マルチレート表現として図11に、およびL=pMであるこの特定の場合のフィルタリング方法の主なステップを示す図12に示す。
【0259】
ここで、本発明の趣旨の範囲内の変換システムを、線形周期時間変動システムの態様に従って説明する。この場合、合成バンクおよび解析バンクのフィルタが、優先的にクリティカルサンプリングフィルタであることを指摘しておく。
【0260】
図7によって与えられる変換システムの方式は、この方式が、参考文献
「Multirate Systems and Filter Banks」、P.P.Vaidyanathan、Prentice Hall、米国ニュージャージー州エングルウッドクリフ、1993年、セクション10.1、の趣旨の範囲内の線形周期時間変動システム、すなわち「LPTV」システムであることを示す。
【0261】
このシステムの周期を求め、この特性を明確に示すその等価な構造を見つけるために、まず、特定な場合L=pMおよびM=pLを以下に述べる。
【0262】
sによって、時間領域の信号のサンプリング周波数を表し、
【0263】
【数83】

【0264】
によって、それぞれ第1のフィルタバンクおよび第2のフィルタバンクの領域でのサンプリング周波数を表す。また、
【0265】
【数84】

【0266】
によって、それぞれ対応するサンプリング間隔を表す。これらのパラメータは、次の関係を満たす。
【0267】
【数85】

【0268】
L=pMである特定の場合に、図7の方式および変換行列の式(28)を考慮に入れて、これらから、変換システムが周期
【0269】
【数86】

【0270】
を有する線形周期時間変動であると推論することができる。これは、図13の構造によって表すことができる。この構造は、
【0271】
【数87】

【0272】
によって定義されるp個の転送行列
【0273】
【数88】

【0274】
の集合(ただし、0≦k≦p−1)を特徴とする。
【0275】
このシステムは、入力と出力で同じビットレートを有しない。入力でのビットレートは、
【0276】
【数89】

【0277】
であり、出力ビットレートは、
【0278】
【数90】

【0279】
である。転送行列
【0280】
【数91】

【0281】
は、サンプリング周波数
【0282】
【数92】

【0283】
で動作し、グローバルシステムは、このシステムの出力にあるスイッチ130(図13)が、環状に、やはり出力のこの同じ周波数
【0284】
【数93】

【0285】
で、ある行列ブロック
【0286】
【数94】

【0287】
から他の行列ブロックにトグルしているかのように動作する。
【0288】
このシステムの出力
【0289】
【数95】

【0290】
が、瞬間
【0291】
【数96】

【0292】
に、瞬間
【0293】
【数97】

【0294】
の行列
【0295】
【数98】

【0296】
の出力と等しいことにも留意されたい。
【0297】
M=pLである他の特定の場合に、この場合に適用される変換行列の式(24)を考慮に入れると、図7の方式は、図14の方式になる。
【0298】
この変換システムは、関係(33)によって定義され、それに続く、それらのすべての出力を合計することによって、したがって
【0299】
【数99】

【0300】
であるp個の行列
【0301】
【数100】

【0302】
の集合(ただし、0≦k≦p−1)を特徴とする、周期
【0303】
【数101】

【0304】
を有するLPTVシステムと見なすことができる。
【0305】
このシステムの入力でのビットレートは、
【0306】
【数102】

【0307】
であり、出力ビットレートは、
【0308】
【数103】

【0309】
である。転送行列
【0310】
【数104】

【0311】
は、サンプリング周波数
【0312】
【数105】

【0313】
で動作し、このシステムは、このシステムの入力にあるスイッチ140(図14)が、環状に、やはり入力のこの同じ周波数
【0314】
【数106】

【0315】
で、ある行列ブロック
【0316】
【数107】

【0317】
から他の行列ブロックにトグルしているかのように全体的に動作する。
【0318】
さらに、瞬間
【0319】
【数108】

【0320】
における、この変換システムの出力
【0321】
【数109】

【0322】
が、各瞬間
【0323】
【数110】

【0324】

【0325】
【数111】

【0326】
によって各々が供給される
【0327】
【数112】

【0328】
(ただし、0≦k≦p−1)の出力の合計と等しいことを指摘する。
【0329】
ここで、MおよびLが必ずしも比例関係によって関係しない一般的な場合でのこのシステムの動作方法を説明する。図7の方式の、関係(15)によって与えられる行列
【0330】
【数113】

【0331】
の形と、2つの特定の場合L=pMおよびM=pLについての上記の説明とを考慮に入れると、一般的な場合の変換システムを、図15に示されているように図式化することができる。この一般的なシステムは、それぞれ周期
【0332】
【数114】

【0333】
を有する、p1個の線形周期時間変動サブシステムを有する。この組からの次数i(ただし、0≦i≦p1−1)のLPTVサブシステムは、次のp2個の転送行列
【0334】
【数115】

【0335】
【数116】

【0336】
を特徴とする。
【0337】
このサブシステムの組全体は並列に動作し、それらの出力のうちの1つが、周期
【0338】
【数117】

【0339】
で、このシステムの出力として周期的に選択される。このグローバルシステムは、周期KTsの線形周期時間変動でもある。具体的に言うと、
【0340】
【数118】

【0341】
したがって、
【0342】
【数119】

【0343】
である。
【0344】
それぞれ図15の構造の入力および出力において表された2つのスイッチ151および152は、周波数
【0345】
【数120】

【0346】
で動作し、この周波数は、転送行列
【0347】
【数121】

【0348】
の動作周波数でもある。
【0349】
瞬間
【0350】
【数122】

【0351】
におけるこのシステムの出力
【0352】
【数123】

【0353】
は、瞬間
【0354】
【数124】

【0355】
、i=nmodp1であるLPTVサブシステム番号iの出力と等しい。瞬間
【0356】
【数125】

【0357】
におけるこのシステムの入力
【0358】
【数126】

【0359】
は、p1個のLPTVサブシステムの各々の番号j、ここで、j=kmodp2、の入力に向けられる。
【0360】
このシステムの入力におけるビットレートは、
【0361】
【数127】

【0362】
であり、出力ビットレートは、
【0363】
【数128】

【0364】
であり、これによって、本発明の趣旨の範囲内の変換システムによる入力データの即座の処理が可能になる。
【0365】
フィルタ
【0366】
【数129】

【0367】
(ただし、0≦n≦M−1かつ0≦k≦L−1)、すなわち転送行列
【0368】
【数130】

【0369】
の要素はeijに、したがってインデックスiおよびjに依存し、
【0370】
【数131】

【0371】

【0372】
【数132】

【0373】
と書くことができることを想起されたい。
【0374】
本発明の趣旨の範囲内の変換システムの有利な実施例を以下に説明する。
【0375】
1によって、フィルタFk(z)(ただし0≦k≦L−1)の長さを表し、N2によって、フィルタHn(z)(ただし0≦n≦L−1)の長さを表す。これらの表記は、これらのフィルタが有限インパルス応答を有し、2つのフィルタバンクの各々について同じ長さを有する場合にのみ使用される。
【0376】
次の式は、
【0377】
【数133】

【0378】
に基づく行列フィルタリングブロックの入力および出力のベクトルに使用される。
【0379】
【数134】

【0380】
および
【0381】
【数135】

【0382】
行列フィルタリングに基づく実施例は、式(4)から、および一般的な図8の変換システムを表す方式から直接、生じる。したがって、各信号Vm[k]、ただし0≦m≦K−1、すなわちベクトル
【0383】
【数136】

【0384】
の成分は、フィルタTml(z)による信号U1[k]、ただし0≦l≦K−1、のそれぞれのフィルタリングの結果の合計である。
【0385】
有限インパルス応答合成フィルタバンクおよび有限インパルス応答解析フィルタバンクの場合、行列
【0386】
【数137】

【0387】
のすべての要素フィルタも有限インパルス応答フィルタである。従来、この場合、畳込み乗算特性に基づく高速フィルタリングプロセスを使用することが可能である。
【0388】
無限インパルス応答フィルタの場合、実施中に行列
【0389】
【数138】

【0390】
の要素同士の間である分母を因数分解することが可能であることを指摘する。
【0391】
ここで、オーバーラップ変換を使用する実施例を説明する。ここでは、合成バンクおよび解析バンクのフィルタが、有限インパルス応答を有し、最大デシメーションタイプであると仮定する。
【0392】
変換行列
【0393】
【数139】

【0394】
は、次のように表される。
【0395】
【数140】

【0396】
ここで、
【0397】
【数141】

【0398】
はサイズがK×Kの行列であり、NはフィルタTml(z)、すなわち
【0399】
【数142】

【0400】
の要素の長さの最大値に対応する。
【0401】
この長さNは、ほとんどの一般的な場合に、次の式によって与えられる。
【0402】
【数143】

【0403】
ここで、r0は、
【0404】
【数144】

【0405】
によって与えられる。
【0406】
以下では、ケースバイケースで変動を考慮に入れて、長さNの次の定義を使用する。
【0407】
【数145】

【0408】
したがって、行列
【0409】
【数146】

【0410】
によるフィルタリングの動作は、次のように書くことができる。
【0411】
【数147】

【0412】
【数148】

【0413】
によって定義される、サイズがNK×Kの行列
【0414】
【数149】

【0415】
を考える。
【0416】
したがって、このシステムは、変換行列
【0417】
【数150】

【0418】
およびそれに続くオーバーラップを伴う加算演算によって構成することができる。この実施例は、特に「Signal Processing with Lapped Transforms」、H.S.Malvar、Artech House,Inc.、1992年、に記載されているように、オーバーラップ変換「LT」の合成部分に似ている。
【0419】
これは、図16に、N=3の特定の場合について示されている。行列
【0420】
【数151】

【0421】
を、「変換変換された行列(conversion transformed matrix)」と呼ぶ。
【0422】
サブバンド領域同士の間で変換する計算手順は、次のように要約することができる。
1.第1のフィルタバンクのサブバンド信号
【0423】
【数152】

【0424】
のベクトルに対応する、変換システムへのp2個の連続したベクトル入力に基づいたベクトル
【0425】
【数153】

【0426】
の作成。
2.ベクトル
【0427】
【数154】

【0428】
を得るために、変換変換された行列
【0429】
【数155】

【0430】
によるベクトル
【0431】
【数156】

【0432】
の変換。すなわち
【0433】
【数157】

【0434】
3.図16に示されている、N個の連続するベクトル
【0435】
【数158】

【0436】
のオーバーラップを伴った加算演算。この演算の出力は、ベクトル
【0437】
【数159】

【0438】
である。
4.第2のフィルタバンクの領域のサブバンド信号のベクトル
【0439】
【数160】

【0440】
を得るために、ベクトル
【0441】
【数161】

【0442】
の、サイズMの連続するサブベクトルを直列にすること。
【0443】
好ましい実施形態による、LPTVシステムを装ったシステムの表現に基づく実施例を以下に説明する。
【0444】
以下で述べる方法は、処理の並列性と、本方法を実施するためのコンピュータリソース(ソフトウェアまたはハードウェア)の効率的な使用とをもたらす。したがって、このシステムは、少なくとも有限インパルス応答フィルタバンクの場合の、現在好ましい実施形態である。
【0445】
上記で定義した転送行列
【0446】
【数162】

【0447】
の各々に関連する変換行列として、サイズがNM×Lの行列
【0448】
【数163】

【0449】
(ただし、0≦i≦p1−1かつ0≦j≦p2−1)を考える。これらの行列が、
【0450】
【数164】

【0451】
によって表され、行列
【0452】
【数165】

【0453】
がサイズM×Lであるとすると、行列
【0454】
【数166】

【0455】
を次のように定義することができる。
【0456】
【数167】

【0457】
各転送行列
【0458】
【数168】

【0459】
は、同じ長さのフィルタを含み、eijの値に依存するので、対応する行列
【0460】
【数169】

【0461】
もeijに依存する。行列
【0462】
【数170】

【0463】
は零部分行列を含み、その形は、次のように与えられる。
・0≦eij≦K−1の場合、
0≦eij≦r0−1ならば、
【0464】
【数171】

【0465】
0≦eij≦K−1ならば、
【0466】
【数172】

【0467】
・eij<0の場合、
0≦K+eij≦r0−1ならば、
【0468】
【数173】

【0469】
このケースは、K+emin≦r0−1の場合にのみ存在することに留意されたい。さて、emin=M+L−1−Kであり、その結果、このケースの存在条件は、r0≧M+Lになる。
【0470】
0≦K+eij≦K−1ならば、
【0471】
【数174】

【0472】
【数175】

【0473】
がサイズL×Mの零行列を表すことを想起されたい。
【0474】
有利なことに、行列
【0475】
【数176】

【0476】
の零ブロックは、この行列による入力ベクトルの変換中の演算の削減を可能にする。
【0477】
【数177】

【0478】
の部分行列
【0479】
【数178】

【0480】
nと部分行列
【0481】
【数179】

【0482】
との間の次の関係に気づく。
【0483】
【数180】

【0484】
サブバンド領域同士間で変換する計算手順が図17に示され、次のように行われる。
1.各新しい入力ベクトルX[k]が、0≦i≦p1−1で、j=kmodp2である変換行列
【0485】
【数181】

【0486】
を特徴とするサブシステムの共通メモリに向けられる。
2.0≦i≦p1−1である各一定のiについて、
a.j=kmodp2について、ベクトルX[k]への変換
【0487】
【数182】

【0488】
の適用。この変換中に、行列
【0489】
【数183】

【0490】
の零ブロックを有利に考慮する。
【0491】
b.j=0,…,p2−1について、ステップ2.aから生じるすべての変換されたベクトルを合計する。
【0492】
c.LPTVサブシステム番号iの出力
【0493】
【数184】

【0494】
を生成するために、ステップ2.bから生じる合計ベクトルに対してオーバーラップを伴う加算「OLA」(「Overlap and Add」を表す)。
3.この変換システムの出力
【0495】
【数185】

【0496】
は、i=nmodp1であるLPTVサブシステム番号iの出力
【0497】
【数186】

【0498】
に対応する。
【0499】
ステップ2.cのオーバーラップを伴う加算は、(N−1)M個の要素のオーバーラップを伴って、長さNMのベクトルに対して行われる。
【0500】
この手順が依然として、図15の方式の原理に基づくことに留意されたい。
【0501】
M=pLである特定の場合に、
【0502】
【数187】

【0503】
、ただし0≦j≦p−1と表し、
【0504】
【数188】

【0505】
によって、対応する変換された行列を表す。この行列は次の形を有する。
【0506】
【数189】

【0507】
図18に示された、サブバンド領域同士間で変換する計算ステップは、次のように行われる。
1.各新しい入力ベクトルX[k]が、j=kmodpである変換された行列
【0508】
【数190】

【0509】
を特徴とするサブシステムのメモリに向けられる。
2.j=kmodpについて、ベクトルX[k]への変換
【0510】
【数191】

【0511】
の適用。
3.0≦j≦p−1である、変換された行列
【0512】
【数192】

【0513】
を特徴とするサブシステムによって出力された、ステップ2から生じるベクトルを合計すること。
4.この変換システムの出力
【0514】
【数193】

【0515】
は、ステップ3から生じる合計ベクトルに対するオーバーラップを伴う加算の結果に対応する。
【0516】
L=pMである特定の場合に、
【0517】
【数194】

【0518】
と書き、
【0519】
【数195】

【0520】
によって、対応する変換された行列を表す。この行列は、次の形を有する。
【0521】
【数196】

【0522】
サブバンド領域同士間で変換する計算ステップは、図19に示されており、次のように優先的に行われる。
1.各新しい入力ベクトルX[k]が、転送行列
【0523】
【数197】

【0524】
、ただし0≦i≦p−1、を特徴とするすべてのサブシステムの共通メモリに向けられる。
2.0≦i≦p1−1である、一定のiのそれぞれについて、ベクトル
【0525】
【数198】

【0526】
を得るために、ベクトルX[k]への変換
【0527】
【数199】

【0528】
の適用およびその後のオーバーラップを伴う加算。
3.この変換システムの出力
【0529】
【数200】

【0530】
は、i=nmodpである転送行列
【0531】
【数201】

【0532】
を特徴とするサブシステムの出力
【0533】
【数202】

【0534】
に対応する。
【0535】
オーディオ符号化において最も広く使用されているフィルタバンクを以下に説明する。そのような符号化フォーマットを使用するフィルタバンク同士の間での切替のさまざまな場合の本変換システムのパラメータが、図27で与えられ、ここで、パラメータNが、上記の式(56)によって与えられることも示す。
【0536】
変調されたコサインFIRフィルタバンク同士の間の変換の場合、フィルタバンクは、解析フィルタおよび合成フィルタがロウパスプロトタイプフィルタH(z)のコサイン変調によって得られることを特徴とする。M個のバンドを有するフィルタバンクの場合、解析フィルタおよび合成フィルタのインパルス応答の式は、
【0537】
【数203】

【0538】
によって与えられ、ここで、0≦n≦N−1かつ
【0539】
【数204】

【0540】
であり、h[n]は、長さNのプロトタイプフィルタのインパルス応答である。
【0541】
この種のフィルタバンクは、さらに次の条件、
−フィルタの長さがN=2mMによって与えられ、ここで、mは整数であり、
−合成フィルタが、
【0542】
【数205】

【0543】
によって与えられ、
−プロトタイプフィルタが、直線位相h[n]=h[N−1−n]を有し、
−プロトタイプフィルタH(z)の次数2Mの多相成分が、さらに、パワーコンプリメンタリティ(power complementarity)条件を満たし、これによって、プロトタイプフィルタを設計することを可能になる。
が満たされる場合、完全な再構成という特性を有する。
【0544】
式(57)、(58)、および上記の条件は、変調されたコサインおよび完全再構成のフィルタバンクを完全に特徴づけることを可能にする。
【0545】
これらの変調されたコサインおよび完全再構成のフィルタバンクは、現代のオーディオコーダのすべてのフィルタバンクの基礎である。MPEG−1/2レイヤ1および2のコーダの擬似QMFフィルタバンクであっても、プロトタイプフィルタが、完全再構成が満たされることを考慮するように十分によく設計されているならば、このカテゴリに関連付けることができる。
【0546】
変調されたコサインおよび完全再構成のフィルタバンクの特定の場合を構成する、異なるサイズのMDCT変換同士間の変換では、例を、N=2Mおよびm=1のTDACフィルタバンクとすることができる。m=1は、名前MDCT(「Modified DCT」を表す)によっても知られているMLT変換(「Modulated Lapped Transform」を表す)と考えることができる。この変換は、大多数の現代の周波数オーディオコーダ(MPEG−2/4 AAC、PAC、MSAudio、TDACなど)で使用されている。
【0547】
合成フィルタバンクおよび解析フィルタバンクの式は、
【0548】
【数206】

【0549】
によって与えられる。
【0550】
完全な再構成を保証するために、ウィンドウh[n]は、対称性条件
【0551】
【数207】

【0552】
およびパワーコンプリメンタリティ条件
【0553】
【数208】

【0554】
を満たさなければならない。
【0555】
これらの条件を満たすプロトタイプフィルタの考えられる単純な選択は、次の正弦波ウィンドウによって与えられる。
【0556】
【数209】

【0557】
このウィンドウの選択は、TDACコーダおよびG.722.1コーダで使用されている。もう1つの選択は、MPEG−4 AACコーダ、BSACコーダ、Twin VQコーダ、およびAC−3コーダの場合と同様にKaiser−Besselウィンドウから導出される(すなわち「KBD」)ウィンドウを採用することにある。
【0558】
式(59)および(60)とウィンドウh[n]の選択とが、したがって、MDCT変換に対応するフィルタバンクを完全に定めることが理解されるであろう。
【0559】
MPEG−1のPQMFフィルタバンクとMDCTの間の変換に関する限り、MPEG−1/2レイヤ1および2のコーダのフィルタバンクが、M=32個のバンクを有する擬似QMFであることが示される。これらの解析フィルタおよび合成フィルタは、0≦k≦31および0≦n≦511について、
【0560】
【数210】

【0561】
と定義される。
【0562】
プロトタイプフィルタのインパルス応答の係数h[n]は、
「Introduction to Digital Audio and Standards」、M.Bosi,R.E.Goldberg、92〜93頁、Kluwer Academic Publishers(2002年)、に見ることができる。
【0563】
MPEG−1 Audio Layer I−II標準規格で与えられる値は、ウィンドウ(−1)lh(2lM+j)、ただし0≦j≦2M−1かつ0≦l≦m−1、に対応する。
【0564】
サブバンド領域同士間の変換がフィルタリング処理と組み合わされる、本発明の態様を以下に説明する。
【0565】
トランス符号化動作中に、復号された信号を新しいフォーマットで記録する前に、その信号に対する中間処理を実行することが可能である。マルチメディア信号処理(オーディオ、画像、およびビデオ)の複数のケースは線形フィルタリングに基づく。次の例を挙げることができる。
・再サンプリング(CIFフォーマットからQCIFフォーマットへの切替)のための画像フィルタリングまたはビデオフィルタリング。
・サウンドスペイシャライゼーション(sound spatialization)のためのHRTFフィルタ(「Head Related Transfer Function(頭部伝達関数)」)によるオーディオフィルタリング。これは、トランス符号化とスペイシャライゼーションを組み合わせることの興味深いケースの1つである。考えられる用途は、通常、テレビ会議オーディオブリッジでの処理になろう。
【0566】
図5aのブロック図に関して、フィルタ
【0567】
【数211】

【0568】
が、2つの合成フィルタバンクと解析フィルタバンクとの間に導入され、それに等価なシステムが見つかる。ブロック図が図20aおよび20bに示されている。
【0569】
フィルタリングと組み合わされた変換システムは、図5bに示されたものと同一タイプの方式によってモデル化することができる。しかし、この変換システムは、
【0570】
【数212】

【0571】
によって定義される新しいフィルタ行列
【0572】
【数213】

【0573】
を特徴とし、ここで、
【0574】
【数214】

【0575】
は、要素が
【0576】
【数215】

【0577】
によって与えられる、サイズがM×Lの行列である。
【0578】
上記の式(64)において、行列
【0579】
【数216】

【0580】
は、式(17)の定義に対応する。より明確には、式(64)を
【0581】
【数217】

【0582】
と書くことができる。
【0583】
ここで、サンプリング周波数の変更と組み合わされた、サブバンド領域同士間の変換を説明する。
【0584】
ここでは、サンプリング周波数の変更が、第2の解析バンクによって再解析される前に、合成された時間信号に対して実行される場合を検討する。したがって、本発明の趣旨の範囲内のシステムは、図21aおよび21bに示されているように、サブバンド領域同士間の変換とサンプリング周波数の変更とを組み合わせる。
【0585】
図21aにおいて、有理数の倍率
【0586】
【数218】

【0587】
によってサンプリング周波数を変更するシステムを考え、ここで、一般性を失わずに、
【数219】

【0588】
は、相対的に素と仮定される自然整数であり、したがって、gcd(Q,R)=1になる。
【0589】
このシステムでは、フィルタSPB(z)は、正規化された遮断周波数
【0590】
【数220】

【0591】
と、通過帯域利得Qを有するロウパスフィルタである。
【0592】
ここで、K’をQLおよびRMの最小公倍数として定義し(K’=lcm(QL,RM))、q1およびq2を、
【0593】
【数221】

【0594】
である2つの自然整数として定義する。q1およびq2が、相対的に素であることに留意されたい。
【0595】
このケースでは、信号ベクトル
【0596】
【数222】

【0597】
のq2個の多相成分への分解から生じるベクトル
【0598】
【数223】

【0599】
と、信号ベクトル
【0600】
【数224】

【0601】
のq1個の多相成分への分解から生じるベクトル
【0602】
【数225】

【0603】
を考える。
【0604】
サンプリング周波数の変更と組み合わされた変換システムは、図22の図によってモデル化することができる。このシステムは、
【0605】
【数226】

【0606】
と定義されるサイズq1M×q2Lのフィルタ行列
【0607】
【数227】

【0608】
を特徴とし、ここで、
【0609】
【数228】

【0610】
は、要素が
【0611】
【数229】

【0612】
によって与えられる、サイズがM×Lの行列であり、
【0613】
【数230】

【0614】
は、要素が
【0615】
【数231】

【0616】
と定義され、関係
【0617】
【数232】

【0618】
にも従う行列である。
【0619】
式(69)によれば、
【0620】
【数233】

【0621】
は、倍率RによってオーバーサンプリングされたフィルタHn(z)と、フィルタSPB(z)と、倍率QによってオーバーサンプリングされたフィルタFk(z)との畳込みの結果と解釈される。
【0622】
グローバルシステムの遅延を減らすために、要素が
【0623】
【数234】

【0624】
と定義される行列
【0625】
【数235】

【0626】
を選択することが可能であり、ここで、cmax=max{n∈N、ただしh≦RM−1かつnはgcd(L,R)によって割り切れる}である。
【0627】
同じ解釈は、上記で与えた行列
【0628】
【数236】

【0629】
の式に与えることができる。したがって、フィルタ
【0630】
【数237】

【0631】
、ただし0≦m≦q1M−1かつ0≦l≦q2L−1、すなわちこの行列の要素は、0≦m≦q1M−1および0≦l≦q2L−1について、次のように書くことができる。
【0632】
【数238】

【0633】
ただし、e’ij=cmax+iRM−jQLである。整数i、nおよびj、kは、
【0634】
【数239】

【0635】
によってlおよびmから直接、得られる。
【0636】
サブバンド領域同士間で変換するシステムについて与えられた同じ展開および説明は、行列
【0637】
【数240】

【0638】

【0639】
【数241】

【0640】
で置換し、それを特徴付けるパラメータを考慮に入れる時に、この新しい組み合わされたシステムについて有効である。その結果、このシステムは、線形周期時間変動システム(LPTV)の形をとる。上記で説明した実施例の好ましい方法およびある特定の場合でのこのシステムの単純化も、この応用例で考えることができる。しかし、本システムで区別される特定の場合が、RMおよびQLが互いの倍数である場合に関することに留意されたい。
【0641】
この場合、図23によるシステムは、
【0642】
【数242】

【0643】
であるように、行列
【0644】
【数243】

【0645】
を用いて動作する。
【0646】
好ましくは、合成フィルタバンクおよび解析フィルタバンクならびに再サンプリングに使用されるロウパスフィルタが有限インパルス応答を有し、その結果、
【0647】
【数244】

【0648】
になり、ここで、行列
【0649】
【数245】

【0650】
がサイズM×Lであるという仮定の下で、オーバーラップ変換を使用する実施例の場合、図24に示された行列
【0651】
【数246】

【0652】
の定義が次のように与られる。
【0653】
【数247】

【0654】
一般に、本発明が、信号の表現を1つのサブバンド領域(または変換)から他のサブバンド領域に変換する包括的解決策を与えることが理解されるであろう。この方法は、2つの圧縮システムによって使用されるフィルタバンクが、上記でわかるように最大デシメーションタイプである場合に関連して優先的に使用される。
【0655】
上記の詳細な説明は、本質的に、オーディオ符号化において本質的に重要であるが、説明された実施形態は、マルチメディア信号、特にビデオ、画像、音声符号化などに使用される信号のすべてのサブバンドコーダまたは変換ベースのコーダに対して意図されている。これらの実施形態は、合成バンクおよび解析バンクの縦続を示すすべてのデバイスで、特に次の例で実施することもできる。
・サブバンド音声(speech)とそれに続くサブバンドエコーキャンセルおよびその逆の品質の改善。
・エコーキャンセルアルゴリズムまたはサブバンド雑音抑制アルゴリズムとそれに続くサブバンドコーダ。
・サブバンドデコーダとそれに続くエコーキャンセルアルゴリズムまたはサブバンド抑制アルゴリズム。
・SBR(「Spectral Band Replication(スペクトル帯域複製)」を表す)などの方法によるオーディオ内の高周波帯を再構成する方法。というのは、この方法は、解析バンクを実施し、その入力が、オーディオデコーダからの出力であるからである。
【0656】
したがって、本発明の用途は、2つの異なる符号化フォーマットの間の単純なトランス符号化に決して限定されないことが理解されるであろう。
【0657】
それでも、オーディオトランス符号化への幾つかの適用を、以下に説明する。
【0658】
オーディオ符号化フォーマット同士の間のトランス符号化は、既存の端末、転送ネットワーク、およびアクセスネットワークの現在の多様性を考慮すれば、重要性が高まりつつある。
【0659】
オーディオコンテンツに対するサービスおよび配信のシナリオによれば、トランス符号化は、伝送チェーン内のさまざまな地点に現れることがある。次では、幾つかの考えられるケースを区別する。
【0660】
放送は、さまざまな種類のオーディオコーダを使用するディジタル放送システムに関する。したがって、欧州(DVB標準規格)では、MPEG−2 BCオーディオレイヤ2コーダが存在を示している。その一方で、米国では、Dolby AC−3コーダが支持されている。日本では、MPEG−2 AACコーダが選択されている。トランス符号化機構TRANSは、図25に示されているように、サーバSERから現れ、デコーダDEC1を備えた第1の端末TER1および別のデコーダDEC2を備えた別の端末TER2を宛先とするオーディオコンテンツを伝送するネットワークRES内のゲートウェイGWにおいて有利である。
【0661】
いわゆるマルチキャストストリーミングの用途では、単一のコンテンツが、転送ネットワークRES内の帯域幅最適化のために、幾つかの端末TER1、TER2に優先的に送信される。個人に合わせることは、各エンドユーザに対する、ネットワークの最終ノードのレベルで行われる。これらのユーザは、異なるデコーダをサポートする複数の端末を有することがあり、したがって、前述の図25に示されているように、ネットワークのノード内のトランス符号化の有用性を有することがある。
【0662】
ユニキャストストリーミングの場合、トランス符号化TRANS(図26)は、コンテンツを端末TER1、TER2の能力に合わせるようにサーバSERで行うことができる。端末の能力に関する情報は、サーバSERによって以前に受信され、分析されている。
【0663】
「ダウンロード」モードでは、オーディオコンテンツは、所与の符号化フォーマットで格納される。このコンテンツは、ダウンロードの前に、ユーザの各要求時に端末と適合するようにリアルタイムでトランス符号化される。
【0664】
グループ通信(テレビ会議、電話会議など)では、用いられる端末が、コーダ/デコーダに関して異なる能力を有することがある。オーディオブリッジを実施する集中テレビ会議アーキテクチャでは、トランス符号化がブリッジレベルで現れることがある。
【0665】
下記の表3は、アプリケーションの分野による、オーディオ符号化フォーマット同士の間の幾つかの考えられる有利なトランス符号化を示している。
【0666】
【表3】

【0667】
図27は、符号化フォーマットのこれらの特定の場合に対する、本発明の趣旨の範囲内の変換システムのパラメータを示している。
【図面の簡単な説明】
【0668】
【図1】マルチメディアコンテンツへのユニバーサルアクセス(UMA)の概念を概略的に示す図である。
【図2a】符号化時の知覚周波数オーディオ圧縮システムの基本方式を表す図である。
【図2b】復号時の知覚周波数オーディオ圧縮システムの基本方式を表す図である。
【図3a】従来のトランス符号化を使用する通信チェーンを概略的に示す図である。
【図3b】従来のインテリジェントトランス符号化を使用する通信チェーンを概略的に示す図である。
【図4】従来のトランス符号化(図の上側部分)およびインテリジェントトランス符号化(図の下側部分)を示すブロック図である。
【図5a】時間信号の合成とフィルタの新しいバンクを用いる解析との間の等価を定めるブロック図を概略的に表す図である。
【図5b】2つのサブバンド領域同士の間の直接変換を定めるブロック図を概略的に表す図である。
【図6】サブバンド領域同士間の従来の変換のマルチレートのブロック毎の表現を示す図である。
【図7】本発明の趣旨の範囲内の、サブバンド領域同士間で変換するシステムのマルチレートのブロック毎の表現を示す図である。
【図8】本発明の趣旨の範囲内の、変換システムでのフィルタリングの方法を概略的に要約した図である。
【図9】M=pLである特定の場合の、本発明の趣旨の範囲内の変換システムのマルチレートのブロック毎の表現を示す図である。
【図10】M=pLである特定の場合の、本発明の趣旨の範囲内の変換ステムでのフィルタリング方法を示す図である。
【図11】L=pMである特定の場合の、本発明の趣旨の範囲内の変換システムのマルチレートのブロック毎の表現を示す図である。
【図12】L=pMである特定の場合の、変換システムでのフィルタリング方法を示す図である。
【図13】出力ビットレートと異なる入力ビットレートを有する、LPTVシステムを装った、L=pMの場合の変換システムを示す図である。
【図14】出力ビットレートと異なる入力ビットレートを有する、LPTVシステムを装った、M=pLの場合の変換システムを示す図である。
【図15】MおよびLが、特定の比例関係によって関係していない一般的な場合の、LPTVシステムを装った、本発明の趣旨の範囲内の変換システムを示す図である。
【図16】N=3の場合の変換とオーバーラップを伴う加算(「Overlap and Add」を表すOLAと称する)の演算とによる、本発明の趣旨の範囲内の変換システムの実施例を示す図である。
【図17】即座の処理を可能にする効率的な実施のための変換とオーバーラップを伴う加算OLAとに対応する実施形態での、本発明の趣旨の範囲内の変換システムを示す図である。
【図18】M=pLである特定の場合の、即座の処理を可能にする効率的な実施のための変換およびオーバーラップを伴う加算OLAに対応する実施形態での、本発明の趣旨の範囲内の変換システムを示す図である。
【図19】L=pMである特定の場合の、即座の処理を可能にする効率的な実施のための変換およびオーバーラップを伴う加算OLAに対応する実施形態での、本発明の趣旨の範囲内の変換システムを示す図である。
【図20a】本発明の趣旨の範囲内の、サブバンド領域同士間の変換と組み合わされたフィルタリングを示す図である。
【図20b】本発明の趣旨の範囲内の等価なグローバルシステムを示す図である。
【図21a】従来の、サブバンド領域同士間の変換とのサンプリング周波数の変更(すなわち「再サンプリング」)の組合せを示す図である。
【図21b】本発明の趣旨の範囲内の、サブバンド領域間の変換とのサンプリング周波数の変更(すなわち「再サンプリング」)の組合せを示す図である。
【図22】再サンプリングと組み合わされた、サブバンド領域同士間の、本発明の趣旨の範囲内の変換のシステムのマルチレートのブロック毎の表現を示す図である。
【図23】再サンプリングと組み合わされた変換に適用される、LPTVシステムを装った、本発明の趣旨の範囲内のシステムを表す図である。
【図24】図23の変換システムの即座の処理を可能にする効率的な実施の変換およびオーバーラップを伴う加算OLAに対応する好ましい実施形態を表す図である。
【図25】本発明の考えられる応用例に対する、通信ネットワークのゲートウェイGWで行われるトランス符号化を表す図である。
【図26】サーバSERで直接行われるトランス符号化を表す図である。
【図27】符号化フォーマットの特定の場合に対する、本発明の趣旨の範囲内の変換システムのパラメータを示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の個数の各サブバンド成分Mを含む第2のベクトル
【数1】

を得るために、合成フィルタのバンクへ、そしてその後に解析フィルタのバンクへ、第1の個数Lの各サブバンド成分を含む第1のベクトル
【数2】

への適用を同一の処理内で圧縮することにある、異なるサブバンド領域同士の間で切り替えることによってデータを処理する、コンピュータリソースによって実施される方法において、
第3の個数K、すなわち前記第1の個数Lと前記第2の個数Mの最小公倍数を求めた後に、
a)前記第3の個数Kが前記第1の個数Lと異なる場合、p2=K/Lであるp2個の多相成分ベクトルを得るために、前記第1のベクトルの直列/並列変換によってブロック毎に配置するステップと、
b)p1=K/Mである、前記第2のベクトルのp1個の多相成分ベクトルを得るために、次元K×Kの正方形行列
【数3】

を含む、選択された行列フィルタリングを前記p2個の多相成分ベクトルへ適用するステップと、
c)前記第3の個数Kが前記第2の個数Mと異なる場合、前記第2のベクトルを得るために、並列/直列変換によってブロック毎に配置するステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップa)の前記直列/並列変換が、前記第1のベクトル
【数4】

への、進み
【数5】

の適用に対応し、前記p2個の多相成分ベクトルを得るために、この後の、係数p2によるサブサンプリングに伴う、一続きの遅延に続いて、前記第1のベクトル
【数6】

の、次数p2の分解に対応することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)の前記並列/直列変換が、次数p1の分解に対応する、前記p1個の多相成分ベクトルに適用される、係数p1のオーバーサンプリングを含み、前記成分が、前記第2のベクトル
【数7】

を形成することを意図していることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記正方行列
【数8】

が、それぞれが
【数9】

によって表されるp1×p2個の部分行列から構成される行列に適用される、係数Kのデシメーションから生じことを特徴とし、ここで、
xは、xの符号に応じた進みまたは遅延を表し、
iは0とp1−1との間にあり、
jは0とp2−1との間にあり、
【数10】

は積
【数11】

から生じる次元M×Lの行列であり、
【数12】

および
【数13】

は、解析フィルタおよび合成フィルタの前記バンクにそれぞれ関連する伝達関数のベクトルであり、表記
【数14】

が行列
【数15】

の転置を表す、
請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
それぞれが因果関係フィルタに対応し、一緒になって最小のアルゴリズム遅延を有する変換システムを定める、前記行列
【数16】

の要素を得るために、進みzM-1が、前記p1×p2個の部分行列のすべてにさらに適用されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記行列
【数17】

の前記要素が、Gnk(z)=Hn(z)Fk(z)によって与えられる積フィルタGnk(z)の次数Kまでの多相成分の関数として表され、
nは0とM−1との間にあり、kは0とL−1との間にあり、
n(z)およびFk(z)、すなわち前記伝達関数の前記ベクトルのn番目およびk番目の成分が、それぞれ解析フィルタの前記バンクおよび合成フィルタの前記バンクに関連する
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
合成フィルタの前記バンクと解析フィルタの前記バンクとの間に、補助フィルタ
【数18】

がさらに設けられている、請求項5に記載の方法において、前記行列
【数19】

の前記要素が、Gnk(z)=Hn(z)S(z)Fk(z)によって与えられる積フィルタGnk(z)の次数Kまでの多相成分の関数として表され、
nは0とM−1との間にあり、kは0とL−1との間にあり、
n(z)およびFk(z)、すなわち前記伝達関数の前記ベクトルのn番目およびk番目の成分が、それぞれ解析フィルタの前記バンクおよび合成フィルタの前記バンクに関連する
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記行列
【数20】

の要素フィルタTml(z)が、
【数21】

によって表されことを特徴とし、ここで、
前記表記
【数22】

において、xが、前記積フィルタGnk(z)の前記次数Kまでの分解から生じる多相成分番号に対応し、
iは比m/Mの整数部分に対応し、
jは比1/Lの整数部分に対応し、
前記数nはn=m−iMによって与えられ、
前記数kはk=l−jLによって与えられる、
ことを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の個数Mが前記第1の個数Lの倍数である場合、前記行列
【数23】

の前記要素フィルタTml(z)が、
【数24】

によって表され、mおよびlは0とM−1との間にあることを特徴とし、ここで、
p=M/Lであり、
kはl/Lの整数部分であり、
前記数jはj=l−kLによって与えられる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の個数Lが前記第2の個数Mの倍数である場合、前記行列
【数25】

の前記要素フィルタTml(z)が、
【数26】

によって表され、mおよびlが0とL−1との間にあることを特徴とし、ここで、
kはm/Mの整数部分であり、
前記数iはi=m−kMによって与えられる、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、線形の、周期的に時間が変動するタイプの、T=K.Ts、ただしTs=Ts1/L=Ts2/M、によって定められる周期Tの変換システムを利用することにあり、ここで、Ts1およびTs2は、クリティカルサンプリングの下での、合成フィルタの前記バンクおよび解析フィルタの前記バンクの領域での各のサンプリング周期であることを特徴とする、請求項1から10の一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、それぞれが周期p2.Ts1のp1個の線形周期時間変動サブシステムを利用することと、周期p1.Ts2で、連続する前記サブシステムの出力を周期的に選択することとにあることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
入力データを即座に処理するために、グローバル変換システムの入力でのビットレートが1/Ts1であり、その出力ビットレートが1/Ts2であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
0とp1−lの間にあるインデックスiの各サブシステムがp2個の転送行列Aij(z)を含み、jが、0とp2ー1の間にあり、前記転送行列Aij(z)の要素が
【数27】

であるようなフィルタAij,nk(z)であり、nが0とM−1との間にあり、kが0とL−1の間にある、
ことを特徴とする、請求項8と組み合わされた請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記合成バンクおよび前記解析バンクの前記フィルタが、有限インパルス応答を有する、請求項1から14の一項に記載の方法において、前記の選択された行列フィルタリングが、
【数28】

であるように、次元NK×Kの行列
【数29】

のオーバーラップ変換によって表され、部分行列
【数30】

が次元K×Kであり、前記行列
【数31】

と共に、関係
【数32】

を満たし、ここで、Nは、
【数33】

の前記要素フィルタの長さの最大値に対応することを特徴とする、請求項1から14の一項に記載の方法。
【請求項16】
【数34】

の前記要素フィルタの前記長さの前記最大値Nが、次式
【数35】

によって与えられ、ここで、
0は関係r0=(N1+N2−2)modKによって与えられ、
1およびN2は、それぞれ前記合成バンクの前記フィルタおよび前記解析バンクの前記フィルタの長さであり、
表記modnは、数nの剰余を表し、
表記
【数36】

は実数xの整数部分を表す
ことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
サブバンド領域同士間の変換のために、
合成フィルタの前記バンクの前記サブバンド領域において、p2個の第1の連続するベクトル
【数37】

に基づいてベクトル
【数38】

を構成するステップと、
ベクトル
【数39】

を得るために、変換された変換行列
【数40】

を前記ベクトル
【数41】

へ適用するステップと、
ベクトル
【数42】

を形成するために、N個の連続するベクトル
【数43】

をオーバーラップを伴って加算するステップと、
前記第2のベクトル
【数44】

を形成するために、前記ベクトル
【数45】

の、それぞれが、前記第2の個数Mに対応する次元である連続するサブベクトルを直列に配置するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
変換された行列
【数46】

含む前記サブシステムへ、合成フィルタの前記バンクの前記サブバンド領域で表された第1のベクトル
【数47】

を適用し、ここで、iが0とp1−1の間にあり、jがj=kmodp2であるステップと、
0からp1−1までの範囲である、一定のiのそれぞれについて、
*j=kmodp2について、ベクトル
【数48】

に、
【数49】

で表わされる行列
【数50】

の変換を適用し、
*j=0,…,p2−1についての前記変換から生じるすべてのベクトルを合計し、
*インデックスiの前記サブシステムの前記出力にベクトル
【数51】

を構成するために、前記合計から生じる複数のベクトルでのオーバーラップを伴って加算するステップと、
i=nmodp1で、前記表記modnが数nの剰余を表すインデックスiの前記サブシステムの前記ベクトル
【数52】

に対応する、前記グローバル変換システムの出力にベクトル
【数53】

を取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記行列
【数54】

が、
【数55】

であるような次元L×Mの零ブロックを含み、
ここで
*0L×Mは次元L×Mの零ブロックを表し、
【数56】

であり、ここで、
1およびN2は、前記合成バンクの前記フィルタおよび前記解析バンクの前記フィルタのそれぞれの長さであり、
前記表記modnは数nの剰余を表し、
表記
【数57】

は実数xの整数部分を表す
ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の個数Mが、M=pLであるように前記第2の個数Lの倍数である場合に、前記行列
【数58】


【数59】

になり、ここで、
0≦j≦p−1であり、
【数60】


【数61】

によって表される変換行列であり、
ここで、
【数62】

表記
【数63】

は、実数xの整数部分を表す
ことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
合成フィルタの前記バンクの前記サブバンド領域で表された第1のベクトル
【数64】

を、jがj=kmodpである変換された行列
【数65】

を含むサブシステムに適用するステップと、
0≦j≦p−1であるjについて、前記の変換された行列
【数66】

の前記適用から生じるベクトルを合計するステップと、
前記合計から生じる前記ベクトル上でのオーバーラップを伴なった加算によって、前記グローバル変換システムの前記出力に前記ベクトル
【数67】

を取得するステップと
を含み、
前記表記modnは数nの剰余を表す
ことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の個数Lが、L=pMであるような前記第1の個数Mの倍数である場合、前記行列
【数68】


【数69】

になり、ここで、
0≦i≦p−1であり、
【数70】


【数71】

によって表される変換行列であり、ここで、
【数72】

であり、表記
【数73】

は実数xの整数部分を表す
ことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
合成フィルタの前記バンクの前記サブバンド領域で表された第1のベクトル
【数74】

を、0≦i≦p−1である転送行列
【数75】

を含むサブシステムへ適用するステップと、
0≦i≦p−1である、固定された任意のiについて、出力ベクトル
【数76】

を得るために、行列
【数77】

の変換を、前記ベクトル
【数78】

へ適用し、およびオーバーラップを伴なった加算を行なうステップと、
Iがi=nmodpである前記ベクトル
【数79】

に対応する、前記グローバル変換システムの出力ベクトル
【数80】

を取得するステップと
をさらに含み、
前記表記modnは数nの剰余を表す
ことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記解析バンクおよび合成バンクの前記フィルタが、変調されたコサインおよび有限インパルス応答タイプである、請求項4から23の一項に記載の方法において、前記解析フィルタおよび/または合成フィルタが、ロウパスプロトタイプフィルタ
【数81】

のコサイン変調によって得られ、その結果、それぞれ伝達関数
【数82】

および/または
【数83】

のベクトルを構成する、前記解析フィルタおよび/または合成フィルタのインパルス応答が各々、M個のバンドを有するフィルタのバンクについて、
【数84】

によって表され、ここで、
【数85】

であり、
h[n]は長さNのプロトタイプフィルタのインパルス応答であり、
nは0≦n≦N−1である
ことを特徴とする、請求項4から23の一項に記載の方法。
【請求項25】
前記フィルタの前記長さNがN=2mMによって与えられ、ここで、mは整数であり、
前記合成フィルタが、
【数86】

によって与えられ、
前記プロトタイプフィルタが直線位相を有し、関係h[n]=h[N−1−n]を満たし、
前記プロトタイプフィルタH(z)の次数2Mの多相成分がパワーコンプリメンタリティ条件を満たす
ことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
N=2Mであり、前記合成フィルタバンクおよび解析フィルタバンクの式が、0≦k≦M−1および0≦n≦2M−1に対して、
【数87】

によって与えられ、
k[n]=fk[2M−1−n]であり、
前記プロトタイプフィルタの前記インパルス応答h[n]がさらに、条件
h[l]=h[2M−1−l]と
0と2M−1との間にあるlについてh2[l]+h2[l+M]=1
を満たす
ことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記プロトタイプフィルタの前記インパルス応答が、0≦n≦2M−1に対して、関係
【数88】

によって与えられることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
合成フィルタの前記バンクが、M=32バンドである、擬似QMFタイプのフォーマットを有し、解析フィルタの前記バンクが、MDCTタイプであり、またはその逆である、請求項27に記載の方法において、前記解析フィルタおよび合成フィルタが、0≦k≦31および0≦n≦511に対して、それぞれ
【数89】

によって定められることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
合成フィルタの前記バンクと解析フィルタの前記バンクとの間の有理数の倍率Q/Rによる再サンプリングの備えがさらになされている場合に、サイズq1M×q2Lのフィルタリング行列
【数90】

が、
【数91】

によって定められ、ここで、
【数92】

は、要素が
【数93】

によって与えられる、サイズM×Lの行列であり、
【数94】

は、要素が、
【数95】

によって優先的に定められる行列で、ここでcmax=max{n∈N、ただしh≦RM−1、かつnはgcd(L,R)によって割り切れる}であり、
PB(z)は優先的に、遮断周波数
【数96】

と通過帯域利得Qを有するロウパスフィルタである
ことを特徴とする、請求項4および5に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの第2のタイプの圧縮符号化/復号への第1のタイプの圧縮符号化/復号のトランス符号化への請求項1から29の一項に記載の方法の適用方法において、
第1の個数L個の各サブバンド成分を含む第1のベクトル
【数97】

の形態での、前記第1のタイプに従って少なくとも部分的に復号されたデータを回復するステップと、
前記第1のベクトルを、前記第1のタイプによる合成フィルタのバンクに適用し、その後前記第2のタイプによる解析フィルタのバンクへ適用するステップと、
各々第2の個数Mのサブバンド成分を含み、前記第2のタイプによる後続の符号化ステップに適用できる第2のベクトル
【数98】

を回復するステップと
を同一処理内で構成することにあることを特徴とする方法。
【請求項31】
サーバ、ゲートウェイ、または端末などの、通信ネットワーク内の機器のメモリに格納されるようになっているコンピュータプログラム製品において、
請求項1から29の一項に記載の方法のすべてまたは一部を実施するための命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項32】
サーバ、ゲートウェイ、または端末などの、通信ネットワーク用の機器において、請求項1から29の一項に記載の方法を実施するためのコンピュータリソースを含むことを特徴とする、通信ネットワーク用の機器。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2008−514071(P2008−514071A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531786(P2007−531786)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002127
【国際公開番号】WO2006/032740
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(591034154)フランス テレコム (290)
【Fターム(参考)】