説明

発光ダイオード

【課題】十分な発光量を確保しつつ小型化が図れ、且つ良好な生産性・歩留りを実現できる発光ダイオードを提供する。
【解決手段】発光ダイオード100は、基板30と、基板30上に配設される金属配線層31と、金属配線層31上に設けられる半導体発光素子10と、を有し、半導体発光素子10は、1辺が100μm以上250μm以下であり、基板30側から順に、第1半導体層5、活性層4、第2半導体層3を備えた半導体発光層6と、半導体発光層6の基板30側に設けられる透明絶縁膜7と、透明絶縁膜7の基板30側に離間領域18,19を介して設けられ、金属配線層31と電気的に接続される第1電極部16及び第2電極部17と、を有し、第1電極部16は、透明絶縁膜7を貫通して設けられる第1コンタク卜部12により第1半導体層5と電気的に接続され、第2電極部17は、透明絶縁膜7、第1半導体層5、及び活性層4を貫通して設けられる第2コンタクト部11により第2半導体層3と電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードに関し、更に詳しくは、半導体発光素子側の電極と基板側の配線とが、バンプを用いることなく貼り合せされた新規な構造を有する発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子である発光ダイオード(以下、LED)は、結晶品質の向上によって高い光・電気変換効率が実現されている(例えば、特許文献1〜3参照)。発光効率が高くなり、発熱の影響も少なくなって、大電流での使用が可能となったことから、表示用LEDに比べて高輝度が要求される照明用の光源への応用が広がっている。
一方、表示用LEDに対しては、照明用LEDで要求される大電流での使用や高輝度に代わって、わずかな電力での駆動、発光を実現する、いわゆる小型・省電力化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−324213号公報
【特許文献2】特開2008−78225号公報
【特許文献3】特開2009−200178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、小型・省電力化を行うことと、LEDの十分な輝度・発光量を確保することとは、トレードオフの関係にあり、双方を実現することは困難であった。例えば、特許文献1のようなボンディングワイヤを用いた実装方法では、LEDの小型化に従い、LED上に占めるボンディングパッドのサイズが大きくなってしまい、LEDからの光取出し効率が低下するという問題がある。
【0005】
また、特許文献2のようなバンプを用いたフリップチップ実装では、ワイヤボンディング方式に比べLEDを小型化しても光取出し効率の低下を抑えられる。しかし、フリップチップ実装では、1つのLEDを実装するために、多数のバンプを形成する必要があり、バンプの量やバンプ高さの制御、バンプヘのLED実装の位置合わせ及び接合は容易ではなく、生産性や歩留りの改善が難しいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、十分な発光量を確保しつつ小型化が図れるとともに、良好な生産性・歩留りを実現できる発光ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、基板と、前記基板上に配設される金属配線層と、前記金属配線層上に設けられる半導体発光素子と、を有し、
前記半導体発光素子は、1辺が100μm以上250μm以下であり、
前記基板側から順に、第1半導体層、活性層、第2半導体層を備えた半導体発光層と、前記半導体発光層の前記基板側に設けられる透明絶縁膜と、前記透明絶縁膜の前記基板側に離間領域を介して設けられ、前記金属配線層と電気的に接続される第1電極部及び第2電極部と、を有し、
前記第1電極部は、前記透明絶縁膜を貫通して設けられる第1コンタク卜部により前記第1半導体層と電気的に接続され、前記第2電極部は、前記透明絶縁膜、前記第1半導体
層、及び前記活性層を貫通して設けられる第2コンタクト部により前記第2半導体層と電気的に接続される、発光ダイオードである。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様の発光ダイオードにおいて、前記金属配線層上には、複数の前記半導体発光素子が設けられている。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の発光ダイオードにおいて、前記第1電極部及び/又は前記第2電極部は、金属反射層を備えている。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれかの発光ダイオードおいて、前記第1電極部及び前記第2電極部は貼り合わせ層を有し、前記貼り合せ層を介して前記金属配線層と接合されている。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかの発光ダイオードにおいて、前記第2半導体層の上記活性層側とは反対側の面は、粗面化加工された光取出し面である。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の態様のいずれかの発光ダイオードにおいて、前記第2コンタク卜部は、前記第2電極部上に設けられ、前記第1半導体層及び前記活性層に対して絶縁するための絶縁材料と、前記絶縁材料に覆われるように設けられるAu系材料とからなる。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1〜第6の態様のいずれかの発光ダイオードにおいて、前記金属配線層は、複数の前記半導体発光素子を直列接続するパターンに形成されている。
【0014】
本発明の第8の態様は、第1〜第7の態様のいずれかの発光ダイオードにおいて、前記基板に貫通孔が形成され、前記貫通孔に導電性材料が設けられることで前記金属配線層に電気的に接続される裏面コンタクト部が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、十分な発光量を確保しつつ小型化が図れるとともに、良好な生産性・歩留りを実現できる発光ダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の発光ダイオードにおける複数の半導体発光素子の接続関係を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードを製造する製造工程の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードを製造する製造工程の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードを製造する製造工程の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードを製造する製造工程の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る発光ダイオードにおける複数の半導体発光素子の接続関係を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る発光ダイオードを示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る発光ダイオードを示す断面図である。
【図10】本発明の一実施例の発光ダイオードにおける複数の半導体発光素子の接続関係を示す図である。
【図11】本発明の実施例及び比較例において、素子サイズと光束との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例及び比較例において、素子サイズと光束との関係を示すグラフである。
【図13】複数の半導体発光素子を有する比較例の構成を示す断面図である。
【図14】複数の半導体発光素子を有する比較例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る発光ダイオードの一実施形態を図面を用いて説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1に、本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードを示す。
本実施形態の発光ダイオード100は、基板30と、基板30上に配設される金属配線層31と、金属配線層31上に設けられる複数の半導体発光素子10と、を有する。
半導体発光素子10は、基板30側から順に、第1半導体層5、活性層4、第2半導体層3を備えた半導体発光層6と、半導体発光層6の基板30側に設けられる透明絶縁膜7と、透明絶縁膜7の基板30側に離間領域18を介して設けられる第1電極部16及び第2電極部17と、を有する。
第1電極部16及び第2電極部17は、基板30側に貼り合せ層15を備え、第1電極部16及び第2電極部17は貼り合せ層15により金属配線層31と接合されている。第1電極部16は、透明絶縁膜7を貫通して設けられる第1コンタクト部12により第1半導体層5と電気的に接続されている。第2電極部17は、透明絶縁膜7、第1半導体層5、活性層4を貫通して設けられる第2コンタクト部11により第2半導体層3と電気的に接続されている。
特に、半導体発光素子10は、チップサイズが100μm以上250μm以下の小型サイズとなっている。
【0019】
本実施形態では、第1電極部16及び第2電極部17は、透明絶縁膜7側から反射金属層13、拡散抑止層14、貼り合せ層15を順次積層して構成されている。また、金属配線層31は、基板30側から密着層32、接合用金属層33を順次積層して構成されている。
金属反射層13は、活性層4で発光し透明絶縁膜7側に出射された光を半導体発光層6側に反射して、光取り出し効率を向上させるための層であり、発光波長の光に対して高い反射率を有する、例えばAu、Ag、Cu、Al等の金属、若しくはこれらの金属を少なくとも1つ含む合金が用いられる。
拡散抑止層14は、金属反射層13の基板30側から貼り合せ層15等を構成する材料が金属反射層13に拡散することを抑制して、金属反射層13の反射特性の低下を抑制する層であり、例えばTi、Ptなどが用いられる。
【0020】
第1電極部16及び第2電極部17は貼り合わせ層15を介して金属配線層31に接合されている。第1電極部16及び第2電極部17の貼り合せ層(接合用金属層)15と、金属配線層31の接合用金属層33とは、例えば、熱圧着接合や共晶接合などによって接合される。貼り合せ層15及び接合用金属層33の材料には、一例として、AuやAu共晶合金などが用いられる。ほぼ同一の平面上に位置する複数の第1電極部16及び第2電極部17の貼り合せ層15の表面(貼り合せ面、接合面)と、ほぼ同一の平面上に位置する複数の金属配線層31の接合用金属層33の表面(貼り合せ面、接合面)とを、熱圧着などによって接合する面接合方式(貼り合せ方式)であるため、バンプを用いたフリップチップ実装(図14参照)に比べて、接合は容易となり、接合不良の発生を抑えることができる。
【0021】
第2半導体層3の活性層4側とは反対側の面は、粗面化加工された光取出し面3aとなっている。半導体発光素子10の光取出し面3aには、電極が形成されていないので、光取出し効率が高い。
【0022】
本実施形態では、基板30上に配設される金属配線層31は、図2に示すように、複数の半導体発光素子10を直列接続するパターンに形成されている。即ち、例えば、図2において、左右方向に並ぶ3個の半導体発光素子10のうち、左端の半導体発光素子10から、中央の半導体発光素子10を経て、右端の半導体発光素子10へと電流が流れる。具体的には、各半導体発光素子10の第1電極部16に接続された金属配線層31から供給された電流は、第1電極部16、第1コンタクト部12を通じて第1半導体層5に供給され、第1半導体層5、活性層4及び第2半導体層3を通って第2コンタクト部11より第2電極部17に流れ、第2電極部17から金属配線層31を通じて当該半導体発光素子10の右隣の半導体発光素子10の第1電極部16へと流れる。なお、基板30上の金属配線層31のパターンは、半導体発光素子10の電極部・金属配線層構造を適宜変更することで、直列接続のみならず、並列接続、直列及び並列接続とすることもできる。
【0023】
本実施形態の発光ダイオード100によれば、面接合方式(貼り合せ方式)により、半導体発光素子10の第1電極部16及び第2電極部17を基板30上の金属配線層31に貼り合せているため、光取出し面3a側に影となる電極(遮蔽物)が存在せず、光取出し効率が高い。また、上記面接合方式によって第1電極部16及び第2電極部17と金属配線層31とを接合する構成を採用することで、複数の半導体発光素子10を有する発光ダイオード100であっても、接合不良の発生を抑えることができると共に、接合の容易化が図れ、発光ダイオードの生産性・歩留りの向上を実現できる。さらに、半導体発光素子10で発生した熱を第1電極部16及び第2電極部17から金属配線層31を介して基板30側に効率よく逃がすことができ、半導体発光素子10への通電量を増加して輝度・発光量の増大を図ることも可能である。また、複数個の半導体発光素子10を直列に設けることで、容易に電流値と輝度とを調節することができる。また、本実施形態の発光ダイオードは、光取出し効率が高く、放熱性も良好であるので、小型・省電力で、しかも十分な輝度・発光量を確保でき、表示用の発光ダイオードとして好適である。
【0024】
上記実施形態の半導体発光素子10の素子サイズを、1辺が100μm以上250μm以下の小型サイズとしたのは、次の理由からである。素子サイズを100μmより小さくすると、素子分離・貼り合せ工程において、高い精度が要求され、現状の技術では、工程時間が長くなり、コスト増を招く。一方、素子サイズを250μmより大きくすることも勿論可能であるが、従来の上下電極タイプのLED(図13参照)との優位性などを考慮すると、貼り合わせを用いた本発明の構成が光取出し効率の向上等の観点から、より有効な範囲とするために、素子サイズの上限を250μmとした。
【0025】
以下に、本実施形態の発光ダイオードの製造工程と共に、本実施形態の発光ダイオードを更に詳細に説明する。図3〜図6に本実施形態に係る発光ダイオード100を製造する製造工程の一例を示す。
【0026】
(基板上への金属配線層の形成工程)
基板(支持基板)30としては、光に対する透明性は必要としない。例えば、サファイア、Si、GaN、AlN、ZnO、SiC、BN、ZnSなどの単結晶基板、Al、AIN、BN、MgO、ZnO、SiC、C等のセラミクスやこれらの混合物などからなる基板を用いることができる。特に、基板30の材料には、高抵抗で熱伝導性が高い材料が望ましい。
金属配線層31は、図3(a)に示すように、基板30上に密着層32と接合用金属層33とを順次形成し、フォトリソグラフィ法、エッチング法により配線パターンを形成す
ることが望ましい。密着層32としては、TiやPtを1nm以上50nm以下の厚さで形成するのがよい。接合用金属層33としては、AuやAu共晶合金などを用い、0.5
μm〜2.0μmの厚さに形成するのがよい。
【0027】
(成長用基板上へのエピタキシャル層の形成工程)
半導体発光素子10は、III−V族化合物半導体であるAlGaInP系のエピタキシ
ャル層を形成する場合、図3(b)に示すように、まず、成長用基板として、例えば厚さ300μm、Siドープのn型GaAs基板1を用い、n型GaAs基板1上に、MOVPE(有機金属気相成長)法により、GaInPエッチングストップ層2と、第2半導体層としてのSiドープのn型AlGaInPクラッド層3と、活性層としての量子井戸構造を含んで形成されるアンドープのAlGaInP活性層4と、第1半導体層としてのMgドープのp型AlGaInPクラッド層5とを順次成長させ、エピタキシャルウェハを形成する。なお、上記エピタキシャル層以外にも、例えば、p型AlGaInPクラッド層5上にp型GaP等からなるp型コンタクト層を形成するなどしてもよい。
更に具体的には、ピーク波長が630nm付近の赤色光を発するAlGaInP系の半導体発光素子では、活性層4は、一例として、アンドープの(Al0.1Ga0.90.
In0.5P層を形成する。また、n型クラッド層3は、Si、Se等のn型ドーパン
トを所定の濃度含む、n型(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層を形成し、p型クラッド層5は、Zn、Mg等のp型ドーパントを所定の濃度含む、p型(Al0.7Ga
0.30.5In0.5P層を形成する。
【0028】
(第1コンタクト部、第2コンタクト部の形成工程)
次に、図3(c)に示すように、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、第2コンタクト部としてのn型コンタクト部11を形成するために、p型AlGaInPクラッド層5及びAlGaInP活性層4を貫通する孔8を形成するとともに、エピタキシャルウェハの全面に透明絶縁膜として、例えばSiO膜7を形成する。透明絶縁膜の材料には、SiO以外に、SiNなどを用いてもよい。
更に、透明絶縁膜であるSiO膜7に対して、n型コンタクト部11、第1コンタクト部としてのp型コンタクト部12を形成するための孔9がそれぞれ形成される。このとき、n型コンタクト部11用の孔8の側面に、p型クラッド層5及び活性層4に対し絶縁をとるための絶縁膜を形成する。
なお、孔8が形成されるエピタキシャル層の厚さ1μm程度であるのに対し、孔8の直径は5〜10μm程度(孔8のアスペクト比が0.1〜0.2程度)の大きさを有するので、n型コンタクト部11を形成する金属等の導電層の周囲に絶縁膜を形成しなくても、n型コンタクト部11を形成する導電層とp型クラッド層5及び活性層4との間の短絡を防止することは可能である。
【0029】
次に、n型コンタクト部11によるn型クラッド層3への電気的接続、及びp型コンタクト部12によるp型クラッド層5への電気的接続は、図4(a)に示すように、これらの孔8,9にAu系の金属を設けることで行う。n型コンタクト部11は、一例として、n型クラッド層3側からAuGe層(オーミックコンタクト層)/Ni層(拡散防止層)/Au層(接合層)が積層されて形成される。p型コンタクト部12は、一例として、p型クラッド層5側からAuBe層(オーミックコンタクト層)/Ni層(拡散防止層)/Au層(接合層)が積層されて形成される。
透明絶縁膜7と、n型コンタクト部11、p型コンタクト部12とにより、電流狭窄構造が形成される。n型コンタクト部11、p型コンタクト部12は、図2に示すようにドット状に複数個形成しても、或いは、環状や枝状に連続して形成しても良い。
【0030】
(第1電極部、第2電極部の形成工程)
次に、透明絶縁膜7、n型コンタクト部11及びp型コンタクト部12の上に、図4(
b)に示すように、第1電極部であるp側電極部16及び第2電極部であるn側電極部17を構成するための電極層として、例えばAuからなる反射金属層13と、Tiからなる拡散抑止層14と、Auからなる接合用金属層15とを蒸着法などで形成する。
更に、エピタキシャルウェハの透明絶縁膜7上において、p側電極部16となる領域とn側電極部17となる領域とが導通しないように、反射金属層13、拡散抑止層14及び接合用金属層15に対して、離間領域となる電極分離用溝18と素子分離用溝19を形成する。これにより、p側電極部16とn側電極部17が分離されて形成される。
なお、SiOからなる透明絶縁膜7とAuからなる反射金属層13との間には、密着層を形成しても良い。密着層としてはNi層やAl層がよく、例えば、厚さ1〜10nmに形成される。
また、本実施形態のように複数の半導体発光素子10を直列に設ける場合は、隣り合う半導体発光素子10の間の反射金属層13、拡散抑止層14及び接合用金属層15を残すように素子分離を行うこともできる。半導体発光素子10間の反射金属層13や接合用金属層15を残すことで、導電性や放熱性の向上が得られる。一方で、半導体発光素子10間の反射金属層13や接合用金属層15を残す箇所と、除去する箇所を有することで、フォトリソグラフィ工程において工数が増加する。これらは、求められる発光ダイオードの特性により適宜選択すればよい。
【0031】
(貼り合せ工程)
図3(a)に示す金属配線層31を形成した基板(支持基板)30と、図4(b)に示すp側電極部16及びn側電極部17を有する半導体発光素子10が形成されたエピタキシャルウェハとを、図5(a)に示すように、張り合わせて貼り合せウェハを作製する。
具体的には、マイクロマシーン用の位置合わせ機能付きの貼り合せ装置を用い、金属配線層31とp側電極部16及びn側電極部17との位置合わせを行い、金属配線層31の接合用金属層33とp側電極部16及びn側電極部17の接合用金属層15とを密接させて熱圧着により張り合わせる。具体的には、貼り合せ装置内に支持基板30とエピタキシャルウェハをそれぞれセットし、高真空下において、350℃まで昇温するとともに加圧して密着状態にする。この状態を1時間保持した後、室温まで降温するとともに、加圧を開放し、大気圧まで戻すことで、貼り合せウェハを得る。なお、基板30とエピタキシャルウェハとの貼り合せは、熱圧着による接合以外にも、共晶接合などで行っても良い。
【0032】
(成長用基板の除去、粗面化加工の工程)
貼り合せウェハの成長用基板1を除去するために、貼り合せウェハの成長用基板1側が表になるように研磨板に貼り付け、ラッピングにより成長用基板1を研磨していく。そして成長用基板1の残り厚さが所定の厚さ、例えば30μmとなったところで研磨をやめ、貼り合せウェハを研磨板から取り外し、貼り合せウェハから貼り付け用のワックスを除去後、エッチングに拠り完全に成長用基板1を除去する。なお、成長用基板1の除去は、上記のようにラッピングとエッチングとを組み合わせて行う方法に限らず、ラッピングのみによって行うこともできるし、エッチングのみによって行っても良い。
成長用基板1としてGaAsを用いている場合、GaAs用のエッチング液にはアンモニア水と過酸化水素水との混合液などを用いることができる。エッチングストップ層2を成長用基板1との界面に形成しておくことで、複雑な管理を必要とすることなく成長用基板1を完全に除去することができる。成長用基板であるGaAs基板1を除去した後、エッチング液を代えてエッチングストップ層2を除去する(図5(b))。エッチングストップ層2がGaInPにより形成される場合、塩酸系のエッチング溶液を用いると良い。
【0033】
GaAs基板1及びエッチングストップ層2を除去後、露出したn型クラッド層3の表面である光取出し面3aに対して粗面化を行う。粗面化には、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて、図6(a)に示すように、n型クラッド層3の光取出し面3aに鋭角の先端部を有する錐伏の凹凸を形成するとよい。これにより半導体発光素子10の外部への
光取出し効率の向上が図れる。なお、n型クラッド層3の錐伏の凹凸を有する光取出し面3a上に、n型クラッド層3の屈折率よりも低い屈折率を有するSiO等の透明膜を形成してもよい。SiO等の透明膜を設けることで、光取出し面3aが保護されると共に、光取出し面3aの最表面がなだらかな波型の曲面になるので、レンズ効果による光取出し効率も向上する。
【0034】
(素子分離及びダイシング工程)
次に、第1電極部16と第2電極部17との間に形成された素子分離用溝19の上方に位置する、半導体発光層6及び透明絶縁膜7をフォトリソグラフィ法およびエッチング法により除去し、素子分離用溝20を形成して、所定サイズの複数の半導体発光素子10に素子分離する。また、金属配線層31上に、パッド電極を形成する場合には、パッド電極を形成する領域の半導体発光層6等もエッチングして金属配線層31を露出させる。
各半導体発光素子10に分離した後、所定個数の半導体発光素子10を有する発光ダイオードとなるように、エッチングにより、所定の形状に半導体発光層6等に切断用の溝(図示せず)を形成し、この切断用の溝の位置でダイシングブレードによって基板30等の切断を行い、所定サイズの発光ダイオードに切り分ける。なお、半導体発光素子10の側面に低屈折率の透明絶縁膜を形成することで、半導体発光素子10の側面を保護すると共に、光取出し効率の向上を図るようにしてもよい。この透明絶縁膜には、例えば、SiO、SiNなどが用いられる。
その後、発光ダイオードをステム等に搭載する際に確実に固定できるようにするために、基板30の裏面にダイボンディング用の密着層34を形成する。
【0035】
[他の実施形態]
上記第1の実施形態では、複数の半導体発光素子10を直列に接続した発光ダイオード100について説明したが、複数の半導体発光素子10を並列に接続したり、或いは直列と並列を組み合わせて接続したりしても良い。図7(a)には、3個の半導体発光素子10が並列に接続された電極部・配線構造の例を示す。また、図7(b)には、図中、右側の直列接続の2つの半導体発光素子10と、左側の直列接続の2つの半導体発光素子10とが、並列に接続された電極部・配線構造の例を示す。
【0036】
上記実施形態では、複数の半導体発光素子10を直列や並列に接続した発光ダイオードについて説明したが、本発明の発光ダイオードは、図8に示すように、基板30上に1個の半導体発光素子10が形成された1素子タイプの発光ダイオードでも勿論よい。
【0037】
また、図9に示すように、基板30に貫通孔(スルーホール)を形成し、当該貫通孔に導電性材料を充填することで、金属配線層31に電気的に接続される裏面コンタクト部35を形成しても良い。裏面コンタクト部35を採用することで、金属配線層31にパッド電極の領域を設ける必要がなくなり、発光ダイオードの小型化に寄与する。また、発光ダイオードを小型化すると精度の良いワイヤボンディングが必要となるが、裏面コンタクト部35を有する構造では、ワイヤボンディングの工程が不要となり、電極部や配線の構造・接続のさらなる簡略化が可能となり、1素子タイプの発光ダイオードでも、その取り扱いが容易となる。
【0038】
また、上記実施形態の発光ダイオードは、基板上にAlGaInP系の半導体発光素子が形成されたものであったが、窒化ガリウム系の半導体発光素子が形成された発光ダイオードにも適用できる。この場合、例えば、成長用基板にサファイアを用いて、窒化ガリウム系の半導体発光層を形成する。
また、上記実施形態において、半導体発光層6のn型、p型の導電型を逆にして構成しても良い。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0040】
本発明の上記第1の実施形態に係る発光ダイオードの構造に基づいて、実施例に係る発光ダイオードを製造した。
図10に、実施例の発光ダイオードにおける複数の半導体発光素子の接続関係を示す。実施例では、支持基板30上に形成された金属配線層31に対して、7個の半導体発光素子10を直列接続に配置した。具体的には、図10に示すように、矩形状の支持基板30上の対角配置にある2つの金属配線層31にパッド電極40を形成し、この2つのパッド電極40、40間に電圧を加え、金属配線層31を通じて、7個のS字状に直列接続された半導体発光素子10に電流が流れるように構成した。
【0041】
半導体発光素子10は、n型のAlGaInPからなるn型クラッド層と、量子井戸構造からなる活性層(発光層)と、p型のAlGaInPからなるp型クラッド層とを有し、透明絶縁膜は、SiO膜から形成した。また、p型コンタクト部には、p型クラッド層側からAuBe層/Ni層/Au層を設けて形成した。n型コンタク卜部としては、n型クラッド層側から、AuGe層/Ni層/Au層を設けて形成した。なお、n型コンタク卜部は、p型クラッド層及び活性層との側面側にSiOによる絶縁膜を備えることで、p型クラッド層、活性層との絶縁を実現している。n側電極部及びp側電極部は、金属反射層としてはAu層を用い、拡散防止層(合金化抑止層)としてTi層を用い、接合用金属層としてAu層を用いた。
上記半導体発光素子10と接合された、金属配線層31を有する支持基板30としては、100μm厚の高抵抗の絶縁性Si基板を用いた。また、金属配線層31の密着層としてTi層を用い、接合用金属層としてAu層を用いた。
【0042】
半導体発光素子10の素子サイズと発光出力などの関係を調べるために、半導体発光素子10の素子サイズが異なる4種の発光ダイオード(実施例1〜実施例4)を作製した。実施例1の半導体発光素子10の素子サイズは、100μm×100μmとし、実施例2の半導体発光素子10の素子サイズは、150μm×150μmとし、実施例3の半導体発光素子10の素子サイズは、200μm×200μmとし、実施例4の半導体発光素子10の素子サイズは、250μm×250μmとした。実施例1〜実施例4の発光ダイオードにおいて、半導体発光素子10に流れる電流密度が同じになるように通電電流を設定し、発光出力を測定した。
【0043】
(比較例1〜4)
実施例の発光ダイオードと比較するために、図13に示すような、上部電極211、下部電極212を有する上下電極構造の7個の半導体発光素子(LEDチップ)210を、ワイヤボンディング213により直列接続した比較例1〜4の発光ダイオードを作製した。
比較例1〜4の半導体発光素子210の各素子サイズは、実施例1〜4に合わせて、それぞれ100μm×l00μm(比較例1)、150μm×150μm(比較例2)、200μm×200μm(比較例3)、250μm×250μm(比較例4)とした。また、実施例1〜4と同様に、これら比較例1〜4の半導体発光素子210に流れる電流密度が同じになるように通電電流を設定し、発光出力を測定した。
【0044】
図11に、各素子サイズの実施例1〜4及び比較例1〜4に対し、測定された光束(lm)の測定結果を示す。また、表1に、実施例1〜4及び比較例1〜4における通電電流(mA)、光束(lm)、動作電圧(V)、および発光効率(lm/W)を示す。
【表1】

【0045】
図11及び表1に示すように、素子サイズ250μmの半導体発光素子10を用いた実施例4では、半導体発光素子10の表面に上部電極が無いことで、上部電極211を有する半導体発光素子210の比較例4に比べて、光束のアップ率は約20%向上した。この光束増大の効果は、発光素子サイズが小さくなるにつれて大きくなり、素子サイズ200μmの実施例3では、比較例3よりも58%アップし、素子サイズ150μmの実施例2では、比較例2よりも100%アッブし、更に素子サイズ100の実施例1では、比較例1よりも430%アップと顕著な効果を示した。また同様に、表1に示すように比較例1〜4に比べて、実施例1〜4では、発光効率が大幅に向上した。
【0046】
(比較例5〜8)
また、実施例の発光ダイオードと比較するために、図14に示すような、チップ片面に設けられた2つの電極221,222上にバンプ223が形成されたフリップチップ構造の半導体発光素子(LEDチップ)220を用い、金属配線224上にバンプ223を介して半導体発光素子220を実装し、7個の半導体発光素子220を直列接続とした比較例5〜8の発光ダイオードを作製した。
比較例5〜8の半導体発光素子220の各素子サイズは、実施例1〜4に合わせて、それぞれ100μm×l00μm(比較例5)、150μm×150μm(比較例6)、200μm×200μm(比較例7)、250μm×250μm(比較例8)とした。また、実施例1〜4と同様に、これら比較例5〜8の半導体発光素子220に流れる電流密度が同じになるように通電電流を設定し、発光出力を測定した。
【0047】
図12に、各素子サイズの実施例1〜4及び比較例5〜8に対し、測定された光束(光束の平均値及びばらつき)の測定結果を示す。また、表2に、実施例1〜4及び比較例5〜8における光束の平均値、最大値及び最小値を示す。
【表2】

【0048】
同一の素子サイズの実施例1〜4及び比較例5〜8を比較すると、図12、表2に示すように、測定された光束の値は、実施例1〜4よりも比較例5〜8の方が低くなっているが、どちらも半導体発光素子の表面に上部電極が無いことから、上下電極構造の半導体発光素子210を用いた比較例1〜4に比べて、大幅な差は生じなかった。しかし、光束のばらつきに関しては、バンプを用いたフリップチップ構造の比較例5〜8の方が光束が小さい半導体発光素子220が発生し、半導体発光素子220の光束のばらつきが大きくなっていることがわかった。光束の低い半導体発光素子220を調べてみると、発光にムラが生じており、バンプ接続が良好でないことがわかった。
【符号の説明】
【0049】
1 成長用基板
3 第2半導体層(n型クラッド層)
3a 光取出し面
4 活性層
5 第1半導体層(p型クラッド層)
6 半導体発光層
7 透明絶縁膜(SiO膜)
10 半導体発光素子
11 第2コンタクト部(n型コンタクト部)
12 第1コンタクト部(p型コンタクト部)
13 金属反射層
14 拡散防止層
15 貼り合せ層(接合用金属層)
16 第1電極部(p側電極部)
17 第2電極部(n側電極部)
18 離間領域(電極分離用溝)
19 離間領域(素子分離用溝)
30 基板
31 金属配線層
33 接合用金属層
35 裏面コンタクト部
100 発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配設される金属配線層と、
前記金属配線層上に設けられる半導体発光素子と、を有し、
前記半導体発光素子は、
1辺が100μm以上250μm以下であり、
前記基板側から順に、第1半導体層、活性層、第2半導体層を備えた半導体発光層と、
前記半導体発光層の前記基板側に設けられる透明絶縁膜と、
前記透明絶縁膜の前記基板側に離間領域を介して設けられ、前記金属配線層と電気的に接続される第1電極部及び第2電極部と、を有し、
前記第1電極部は、前記透明絶縁膜を貫通して設けられる第1コンタク卜部により前記第1半導体層と電気的に接続され、
前記第2電極部は、前記透明絶縁膜、前記第1半導体層、及び前記活性層を貫通して設けられる第2コンタクト部により前記第2半導体層と電気的に接続される、
ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記金属配線層上には、複数の前記半導体発光素子が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記第1電極部及び/又は前記第2電極部は、金属反射層を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記第1電極部及び前記第2電極部は貼り合わせ層を有し、前記貼り合せ層を介して前記金属配線層と接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記第2半導体層の上記活性層側とは反対側の面は、粗面化加工された光取出し面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記第2コンタク卜部は、前記第2電極部上に設けられ、前記第1半導体層及び前記活性層に対して絶縁するための絶縁材料と、前記絶縁材料に覆われるように設けられるAu系材料とからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記金属配線層は、複数の前記半導体発光素子を直列接続するパターンに形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記基板に貫通孔が形成され、前記貫通孔に導電性材料が設けられることで前記金属配線層に電気的に接続される裏面コンタクト部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−54422(P2012−54422A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196080(P2010−196080)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】