説明

発光モジュール

【課題】発光素子を備えた発光モジュールにおいて、放熱性を確保しつつ長期における信頼性を確保することは困難であった。
【解決手段】発光モジュール10において、実装基板14は、アルミナ、AlN、またはSiにより形成され、半導体発光素子12が実装される。放熱基板16は、実装基板14を支持する。放熱基板16は、Cuより熱膨張率の低い金属およびCuからなる複合材料により形成される。実装基板14は、融点が450℃以下の金属接合材料であるはんだ18によって放熱基板16に接合される。放熱基板16は、CuとMoとを積層させたクラッド材、またはMoにCuを含浸させた複合材により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光モジュールに関し、特に発光素子および発光素子を支持する実装基板を備えた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや高信頼性などへの要求から、LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子の用途が急激に拡大している。しかし、例えば車両用前照灯などにこのような発光素子を用いる場合、高輝度、高光度を実現するために発光素子に大きな電流を供給する必要が生じ、発生する熱も膨大なものとなる。このような熱は発光素子の寿命に影響を与え得るため、放熱対策が非常に重要となる。ここで、LEDをサブマウントに実装し、サブマウントを金属板に取り付けた発光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−87668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載される発光装置では、サブマウントを形成する材料としてAlNが例示されており、また、金属板を形成する材料としてCuが例示されている。しかしながら、このようなAlNとCuとでは材料が線膨張係数の違いが大きく、両者の間で発生する熱応力も大きくなる。このため、基板におけるクラックの発生を回避して長期における信頼性を確保することは容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、放熱性を確保しつつ、長期における信頼性を確保した発光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光モジュールは、アルミナ、AlN、またはSiにより形成され、発光素子が実装される実装基板と、実装基板を支持する放熱基板と、を備える。放熱基板は、Cuより熱膨張率の低い金属およびCuからなる複合材料により形成される。このとき放熱基板は、CuとMoとを積層させたクラッド材、またはMoにCuを含浸させた複合材により形成されてもよい。
【0007】
発明者による研究開発の結果、Cuより熱膨張率の低い金属およびCuからなる複合材料は、Cuと同等のレベルの熱伝導率を達成しつつ、熱膨張率をCuより小さくできることが判明した。したがってこの態様によれば、放熱性を確保しつつ、長期における信頼性を確保した発光モジュールを提供することができる。
【0008】
実装基板は、融点が450℃以下の金属接合材料であるはんだによって放熱基板に接合されてもよい。発明者による研究開発の結果、このような接合材料は実装基板と放熱基板との間の熱膨張係数の差が小さいため、高い放熱性を確保しつつ熱応力に起因するクラックの発生を抑制することができる。なお、実装基板は、熱伝導率が3W/m・K以上の材料からなる接着剤によって放熱基板に接合されてもよい。これにより、放熱性能を確保しながら、長期における信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放熱性を確保しつつ、長期における信頼性を確保した発光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る発光モジュールの側面図である。
【図2】図1における領域Pの拡大図である。
【図3】各材料の線膨張係数と熱伝導率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る発光モジュール10の側面図である。発光モジュール10は、半導体発光素子12、実装基板14、および放熱基板16を備える。実装基板14には、複数の(本実施形態では4つ)の半導体発光素子12が直線状に並ぶよう実装されている。なお、半導体発光素子12の数が4つに限られないことは勿論である。また、実装基板14は平面的に分散して配置されるよう実装基板14に実装されてもよい。
【0013】
半導体発光素子12の各々には、LEDが採用される。LEDは、青色LEDでもよく、紫外線LEDでもよく、また他の色の光を発光するLEDであってもよい。半導体発光素子12の各々は、1mm角の正方形状に形成される。なお、半導体発光素子12として、LEDに代えて例えばレーザダイオードなど略点状に面発光する他の素子状の半導体発光素子が採用されてもよい。
【0014】
実装基板14は、複数の半導体発光素子12の各々を電気的に並列または直列に接続するための導電性部材が表面に設けられている。半導体発光素子12の各々は、この導電性部材と自身の電極が接続されるよう、実装基板14に取り付けられる。半導体発光素子12の各々は、いわゆるフリップチップタイプのものが採用されている。したがって半導体発光素子12の各々は、Auバンプを介して自身の電極が実装基板14の導電性部材に接続され、実装基板14に実装されている。
【0015】
実装基板14の上面には、導電性材料によって形成された一対の外部給電端子20が設けられている。外部給電端子20は、実装基板14上の導電性部材に接続されっている。一対の外部給電端子20の各々には、同じく導電性材料によって形成された外部接続用部材22が接続されている。この外部接続用部材22を介して、複数の半導体発光素子12に発光のための電力が供給される。
【0016】
なお、半導体発光素子12の各々はフリップチップタイプに限られず、例えば垂直チップタイプ、またはフェイスアップタイプのものが採用されてもよい。この場合、半導体発光素子12は実装基板14に導電性ワイヤや導電性リボンなどの導電性部材によって接続される。
【0017】
このように、本実施形態では、いわゆるサブマウント基板を介することなく、半導体発光素子12が実装基板14に直接実装される。これにより、例えば導電性ワイヤや導電性リボンなどの導電性部材でサブマウント基板と実装基板とを接続する必要がなくなるため、実装基板14においてこのような接続のためのスペースを抑制することができる。また、このような導電性部材に要するコストを抑制することができる。
【0018】
実装基板14は、アルミナ、AlN、またはSiにより形成される。放熱基板16は、実装基板14を支持する。このように実装基板14を放熱基板16に取り付けることによって、例えば半導体発光素子12をAlNなどによって形成されたサブマウント基板を介して、同じくAlNなどによって形成された実装基板に取り付ける場合などに比べ、放熱性を向上させることができる。なお、放熱基板16は、実装基板14よりも面積が大きくなるよう設けられている。これにより、一般的に高価な実装基板14を小さくしつつ、放熱性の低下を抑制することができる。
【0019】
本実施形態では、放熱基板16は、Cuより熱膨張率、すなわち線膨張係数の低い金属およびCuからなる複合材料により形成される。具体的には、放熱基板16は、CuとMoとを積層させたクラッド材により形成されている。以下、このクラッド材を「CMC(Cu/Mo/Cu)」という。CMCは、Cu板とMo板とをホットプレスにより拡散接合させることにより形成される。Moは、Cuよりも低い線膨張係数を有する。このようなクラッド材を放熱基板16の材料として採用することによって、Cuと同等のレベルの熱伝導率を達成しつつ、熱膨張率、すなわち線膨張係数をCuより小さくすることが可能となる。このため、実装基板との線膨張係数の差を抑制することができ、放熱基板16および実装基板14の両者の間に生じる熱応力に起因する放熱基板16または実装基板14へのクラックの発生を抑制することができる。
【0020】
図2は、図1における領域Pの拡大図である。図2に示すように、放熱基板16は、3層のCuの間に2層のMoの各々が挟まれるよう、CuとMoとが積層され構成されている。なお、放熱基板16におけるCuとMoの積層数などがこの態様に限られないことは勿論である。
【0021】
図3は、各材料の線膨張係数と熱伝導率を示す図である。このようにCMCを放熱基板16に用いることによって、実装基板14を形成するAlNまたはSiに対して、線膨張係数を近い値としつつ高い熱伝導率を実現することができる。
【0022】
図1に戻る。放熱基板16の材質はCMCに限られず、例えばMoを粉末形成したものにCuを含浸させCu−Mo粉末複合材料が採用されてもよい。また、このCu−Mo粉末複合材料をCu板で挟んだ特殊クラッド材が採用されてもよい。この特殊クラッド材は、Cu−Mo粉末複合材料をCu板で挟み、熱間圧延させることにより形成される。また、Cuよりも線膨張係数が低いインバー(Invar)金属をCu板で挟んだクラッド材が採用されてもよい。なおインバー金属は、NiとFeからなる合金である。
【0023】
実装基板14は、融点が450℃以下の金属接合材料であるはんだ18によって放熱基板16に接合される。このような接合材料は実装基板14と放熱基板16との間の熱膨張係数の差が小さいため、高い放熱性を確保しつつ熱応力に起因するクラックの発生を抑制することができる。なお、実装基板14は、熱伝導率が3W/m・K以上の材料からなる接着剤によって放熱基板16に接合されてもよい。これにより、放熱性能を確保しながら長期における信頼性を向上させることができる。
【0024】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を本実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0025】
10 発光モジュール、 12 半導体発光素子、 14 実装基板、 16 放熱基板、 18 はんだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ、AlN、またはSiにより形成され、発光素子が実装される実装基板と、
前記実装基板を支持する放熱基板と、
を備え、
前記放熱基板は、Cuより熱膨張率の低い金属およびCuからなる複合材料により形成されることを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記放熱基板は、CuとMoとを積層させたクラッド材、またはMoにCuを含浸させた複合材により形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−103353(P2011−103353A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257394(P2009−257394)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】