発光モジュール
【課題】YAG溶接を用いることなく調芯固定して実装することができる機能を有し、また安価に製造可能なレンズ部品と、その実装構造を備えたキャリア部品からなる発光モジュールを提供する。
【解決手段】サブマウントに搭載された半導体レーザ14と、該半導体レーザから出射される光を集光するレンズ部品16とが実装されたキャリア13を、パッケージ内に収納してなる発光モジュールであって、レンズ部品16はメタライズ加工部19を有し、キャリア13の実装面にメタライズ加工部を半田付け17して固定される。レンズ部品のメタライズ加工部は、キャリアの実装面に対向する面と、該面に直交し連接するレンズ部に達しない範囲の前面および背面の3面のうち、少なくとも1面に形成される。
【解決手段】サブマウントに搭載された半導体レーザ14と、該半導体レーザから出射される光を集光するレンズ部品16とが実装されたキャリア13を、パッケージ内に収納してなる発光モジュールであって、レンズ部品16はメタライズ加工部19を有し、キャリア13の実装面にメタライズ加工部を半田付け17して固定される。レンズ部品のメタライズ加工部は、キャリアの実装面に対向する面と、該面に直交し連接するレンズ部に達しない範囲の前面および背面の3面のうち、少なくとも1面に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザと、該半導体レーザから出射される光を集光するレンズを搭載した発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信における信号光源や光ファイバ増幅用の励起光源として、半導体レーザからの光を信号源とする発光モジュールが用いられている。この発光モジュールは、半導体レーザから出射される光を、レンズを用いて光ファイバに光学的に結合するもので、レーザ光と光ファイバとの光結合に際しては、通常、最大の光結合効率が得られるようにレンズの位置を調芯して固定される。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体レーザから出射された光を平行光に変換するレンズの位置を、赤外線カメラ等を用いて調芯した後、保持具を介してキャリア上に固定している。レンズの固定は、YAG溶接を用いて行うが、溶接時の位置ズレを抑制するために保持具の溶接部分を薄肉化するなど、溶接部の形状を最適化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−14257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズ部品をYAG溶接で固定する場合、レンズ材料であるガラス自体はYAGで溶接固定することはできないため、レンズ部品の外周部が金属製の筐体(ホルダ)により覆われた構造とする必要がある。このため、レンズの成形後にレンズを金属筺体に嵌め込むなどして固定するか、若しくは、金属筺体上でレンズを成形するなどのレンズ単体と金属製の筐体を組み合わせる工程が必要で、加工プロセスが複雑となり、コストの高いレンズ部品となる。
【0006】
また、レンズは、半導体レーザに対して3軸方向での調芯が必要であり、実装面に対して垂直方向に対する調芯が必要なため、特許文献1に開示のような断面U字状のような金属製の保持具が必要となる。このため、キャリアも金属製となり、レンズの保持固定は、レンズ筺体と保持具をYAG溶接し、さらに保持具のキャリアへの固定もYAG溶接で行う構造となる。この構造は、溶接する部品間のクリアランスが大きいと位置ズレが生じやすく、高精度の加工が必要となり、コストの高い部品となる。
【0007】
また、レンズの調芯は、パッケージ内に実装された状態の半導体レーザを基準にして行われる。このため、YAG固定に用いるYAG溶接のレーザ入射角を考慮した十分なパッケージ内空間が必要とされ、パッケージの設計に対して制約が生じる。YAG溶接レーザの入射角はキャリア部品の実装面に対して30度から60度程度の角度で設計される。YAG溶接する箇所を基準として、前述の入射角の範囲はYAG溶接レーザが干渉されないよう解放された空間が必要となるため、幅の広いパッケージ設計が必要となる。
【0008】
一方、光トランシーバ等の通信機器では小型化の要求が強く、発光モジュールも小型設計となるため大きな制約となる。また、波長多重の光モジュールを設計するうえで、中心波長が異なる半導体レーザを列状に並べて実装する構造のものにおいては、レンズの大きさ及びYAG溶接の制約から、YAG溶接を用いた組立方式では小型化対応の設計が困難となる。
【0009】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、YAG溶接を用いることなく調芯固定して実装することができる機能を有し、また安価に製造可能なレンズ部品と、その実装構造を備えたキャリア部品からなる発光モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による発光モジュールは、サブマウントに搭載された半導体レーザと、該半導体レーザから出射される光を集光するレンズ部品とが実装されたキャリアを、パッケージ内に収納してなる発光モジュールであって、レンズ部品はメタライズ加工部を有し、キャリアの実装面にメタライズ加工部を半田付けして固定されていることを特徴とする。
【0011】
レンズ部品のメタライズ加工部は、キャリアの実装面に対向する面と、該面に直交し連接するレンズ部に達しない範囲の前面および背面の3面のうち、少なくとも1面に形成されていることが好ましい。また、レンズ部品のメタライズ加工部と反対側の部分に、搬送用の把持部が設けられていることが好ましい。なお、レンズ部品は、例えば、ウエハにマトリックス状に一体形成した後、分割加工された矩形形状で形成される。
【0012】
また、前記のキャリアが電気絶縁体で形成され、その実装面に前記レンズ部品のメタライズ加工部を半田付けするための金属層が形成され、該金属層の近傍に、半田材を加熱するヒータ機能を搭載するようにしてもよい。
上記のヒータ機能は、キャリアがセラミック材の場合は、セラミック基板からなるキャリアの実装面側に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、ヒータ部の上に電気絶縁層を介して、上記の金属層が形成されている。
【0013】
また、キャリアが半導体材の場合は、半導体基板からなるキャリアの実装面側に設けられた第1の電気絶縁層上に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、ヒータ部の上に第2の電気絶縁層を介して、上記の金属層が形成されている。
なお、ヒータ部が形成されている領域で、キャリアの実装面側と反対の面側に凹部を有する形状としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レンズ部品を安価に形成することができ、また、キャリア上に半田付けで固定することができるので、レンズ部品の調芯設備の設計が容易で、且つ位置ズレを抑制することができると共に、発光モジュールの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による発光モジュールの外観を示す図である。
【図2】本発明によるレンズ部品等の実装例を説明する図である。
【図3】本発明によるレンズ部品の一例とその製造例を説明する図である。
【図4】本発明によるレンズ部品の他の例とその製造例を説明する図である。
【図5】本発明によるレンズ部品のその他の例とその製造例を説明する図である。
【図6】本発明によるレンズ部品のその他の例を示す図である。
【図7】本発明による電気絶縁体からなるキャリアの例を示す図である。
【図8】図7に示すヒータ機能の一例を示す図である。
【図9】図7に示すヒータ機能の他の例を示す図である。
【図10】図8,9の変形例を示す図である。
【図11】本発明による波長多重の発光モジュールの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1,2において、10は発光モジュール、11はパッケージ、12はスリーブ、13はキャリア、13aはサブマウントの実装領域、13bはレンズ部品の実装領域、14は半導体レーザ(LD)、15はサブマウント、16はレンズ部品、17は半田材、17aは半田フィレット、18はレンズ部、19はメタライズ加工部を示す。
【0017】
本発明による発光モジュール10(半導体レーザモジュールともいう)は、図1に示すように、パッケージ11にスリーブ12を結合した形状で形成される。パッケージ11は、例えば、箱型の矩形状に形成され、内部にサブマウント15に搭載された半導体レーザ14(以下、LDという)と、このLD14から出射される光を集光するレンズ部品16とが実装されたキャリア13が収納される。スリーブ12は、光ファイバを結合保持するためのもので、レンズ部品16で集光されたLD14からの信号光が、前記の光ファイバに入射される。
【0018】
パッケージ11内には、上記の他に、LD14の温度調節をする電子冷却装置等の温調モジュール、サーミスタ、光信号の反射戻り光を阻止するアイソレータ、LD14を駆動制御するIC部品等が実装されていてもよい。なお、図1では省略してあるが、パッケージ11には、外部回路や外部電源への接続のための端子が設けられている。また、パッケージ11内への部品の実装状態を示すために、上部が解放された状態で示しているが、上部の開口は蓋部材で閉塞され密閉状態とされる。密閉空間は窒素置換された雰囲気となる気密封止された状態となり、LDなどの光デバイスの信頼性を向上させる。
【0019】
パッケージ内に収納されるキャリア13上には、図2に示すように、LD14とレンズ部品16が実装される。LD14は、セラミック等の電気絶縁材からなるサブマウント15を介して、金属または電気絶縁体からなるキャリア13の実装領域13a上に実装される。LD14のサブマウント15上への実装、サブマウント15のキャリア13上への実装は、半田材を用いて行われる。この半田材としては、比較的融点の高い半田材料である金ゲルマニウム半田、金錫半田、錫銀銅半田など考えられるが、そのうち金錫半田がよく用いられる。
【0020】
レンズ部品16は、光通信に用いる波長帯に対して透明となるレンズ単体からなり、そのレンズの一部には半田などのロウ付け固定可能なように、メタライズ加工部19を有する。他方、キャリア13のレンズの実装領域13b上には、レンズ部品16を半田などのロウ付け固定できるように金属層を有し、予め成形された板状の半田材17を用いてレンズ部品16とキャリア13は半田付けして固定される。
【0021】
レンズ部品16の実装は、LD14を実装した後、LD14に外部から給電し、その出射光を赤外線カメラ等でモニタするか、光ファイバで受けた光出力をモニタしながら3軸方向に調整しながら所望の性能が得られるよう最適点となる位置に調芯する。この場合、レンズ部品16をコレット等で把持して半田材17を溶融しながら上記の調芯を行い、レンズ部品16を最適位置に保持した後、半田材を冷却・硬化させる。半田材料が酸化の影響を受けにくくするため、窒素雰囲気もしくは酸化を除去する還元雰囲気で半田を加熱できる装置を用いるのがよい。
【0022】
なお、レンズ部品16の半田付けに先だって、キャリア13および半田材を加熱しておき、この後、レンズ部品16をコレット等で把持して調芯を行い、レンズ部品16を最適位置に保持して半田材を冷却・硬化させるようにしてもよい。なお、半田材が完全に硬化した後に、コレットによるレンズ保持を解除するのが望ましく、これにより、半田材の硬化収縮による位置ズレの影響を低減することができる。
【0023】
また、半田材17の加熱時は、半田材の融点を超える温度に設定されるが、冷却時は半田材の融点より少し低い温度に一旦強制冷却し、半田材が液相から固相に十分変化した後、常温まで自然冷却で冷却するのが好ましい。半田の液相状態から常温に急激に冷却すると、半田材の相変化による収縮と半田の線膨張係数に依存する収縮が同時に生じる。このため、レンズ部品が半田材に引っ張られてレンズ部品の位置ズレが大きくなる虞がある。
【0024】
レンズ部品16用の半田材17は、LD14およびサブマウント15の実装に用いた半田材よりも融点の低い半田材を用いるのが好ましい。これにより、レンズ部品16の半田付け時に、LD14およびサブマウント15の半田接合部分に影響が及ぶのを抑制することができる。なお、レンズ部品16用の半田材17には、金錫半田、錫銀銅半田、錫銅半田、錫アンチモン半田、錫亜鉛半田、錫ビスマス半田などが考えられるが、LDなどの実装に金錫半田を用いている場合は、錫銀半田や錫銀銅半田などの金錫半田の次に融点が低い半田材料を用いるのがよい。
【0025】
なお、半田材17は、予めキャリア13上に形成されていてもよく、また、図に示すように、ペレット状の半田材17を用いるようにしてもよい。半田材17は、レンズ部品を3軸調芯するため、キャリアのレンズ部品の実装領域13aとレンズ部品16の下端面に生じる隙間を満たして、かつレンズ部品のメタライズ加工部19まで半田が濡れ上がる必要がある。半田材17をキャリア13上にあらかじめ形成する場合は、半田材料の実装面方向の大きさをレンズ部品の実装領域13aと同じ面積として、厚さを上記の隙間に対して1〜3倍と設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるよう十分な体積が得られるようにするのが望ましい。
【0026】
なお、上記の隙間よりも薄い半田厚さとする場合は、レンズ部品の実装領域13aの面積に対して1〜2倍となるように設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるように十分な体積が得られていることが望ましい。
ペレット形状の半田材17についても同様に、レンズ部品の実装領域13aと同じ面積として、厚さを上記の隙間に対して1〜3倍と設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるよう十分な体積が得られるよう設計するか、レンズ部品の実装領域13aの面積に対して1〜2倍となるように設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるよう十分な体積が得られるようにするのが望ましい。
【0027】
図3〜図6は、本発明で使用されるレンズ部品16の構造例とその製造方法の例を説明する図である。図において、16a〜16fはレンズ部品、20はレンズ基体、20aは前面、20bは背面、20cは下端面、20dは上端面、21〜21dはメタライズ層、22は孔、23a〜23cは把持部、25a〜25cはレンズウエハ、26a,26bはダイシングライン、を示す。
【0028】
レンズ部品16a〜16fは、図に示すように、外形が矩形状のレンズ基体20の中央部にレンズ部18を有し、下部側にメタライズ加工部19が形成された構造とするのが望ましい。レンズ部品を矩形状とすることにより、レンズ基板となるウエハにマトリックス状に多数のレンズ部18とメタライズ加工部19とを一括形成した後、ダイシング加工等によりそれぞれの個片に分割することで、安価で大量のレンズ部品を製造することが可能となる。
【0029】
レンズ部18は、ドーム状にレンズ基体20の前面20a又は背面20bから膨出した形状で、金型による成形、もしくはフォトリソ加工により形成される。成形の場合は、レンズの曲率に応じて金型に凹みを形成し、レンズの材料を金型に投入した後、金型をプレスすることで金型のレンズ曲率を含む形状がレンズ材料に転写されて、レンズが形成される。フォトリソ加工の場合は、レンズ基体にマスク材を加工する。マスク材はレンズ形状に応じてドーム型に形成し、レンズ部以外のレンズ基材を加工した後、マスクを除去することでレンズが形成される。
【0030】
メタライズ加工部19は、レンズ基体20の表面にPVD(物理的蒸着)やCVD(化学的蒸着)により形成され、レンズ基体20の下部側で、キャリアの実装面に対向する下端面20cと、該面に直交し連接するレンズ部18に達しない範囲の前面20a及び背面20bの3面のうち、少なくとも1面に形成される。
【0031】
図3(A)に示すレンズ部品16aは、レンズ基体20の下端面20cを除いて、下部側の前面20aと背面20bの2つの面に、レンズ部18に達しない範囲でメタライズ層21aと21bを形成し、メタライズ加工部19とした例である。メタライズ層21aと21bは、キャリアの実装面と直交し、レンズ基体20の下端面20cからはみ出す半田フィレットによりレンズ部品16aをキャリア面上に固定する。
【0032】
上記のレンズ部品16aは、例えば、図3(B)に示すように、マトリックス状に多数個のレンズ部18を専用の金型により一括成形、若しくはフォトリソ加工により、レンズウエハ25a上に形成して製造される。レンズウエハ25aの材料としては、多成分ガラス、石英ガラス、シリコンなどの半導体材料等が用いられる。なお、レンズ部18には、反射防止膜を形成し、レンズ面での反射損失の少ない光結合を可能とするようにしてもよい。
【0033】
また、メタライズ加工部19となるメタライズ層21を横方向のダイシングライン26aに沿って一括形成する。メタライズ層21は、Ni/AuやTi/Pt/Au等の層構成をもち、レンズウエハ材との接合強度と半田濡れ性を両立できる構成とされる。メタライズ層21の形成後、レンズウエハ25aを、ダイシングライン26a,26bに沿ってそれぞれの個片に分割することで、レンズ部品16aが得られる。
【0034】
図4(A)に示すレンズ部品16bは、メタライズ加工部19のメタライズ層は、レンズ基体20の前面20aと背面20bのメタライズ層21a,21bに加えて、キャリアの実装面と対向する下端面20cにも、メタライズ層21cを設けた例である。このレンズ部品16bは、半田フィレットによる接続に加えて、下端面20cのメタライズ層21cにより、キャリアの実装面と面接合による半田付けで半田接合面積を増加させることができ、その接着強度を高めレンズ部品の固定を確実なものとすることができる。
【0035】
このメタライズ層21cを有するレンズ部品16bは、図4(B)に示すように、一列のレンズ基体20からなるレンズウエハ25bの実装面側の3面を覆うようにメタライズ層21を形成し、ダイシングライン26bで切断して形成される。なお、図4(B)のレンズウエハ25bは、図3(B)のレンズウエハ25aを横方向のダイシングライン26aで切断した状態で得ることができる。
【0036】
図5(A)に示すレンズ部品16cは、メタライズ加工部19のメタライズ層は、レンズ基体20の前面20aと背面20bのメタライズ層21a,21bに加えて、キャリアの実装面と対向する下端面20cに断面が半円状の凹部を設け、該凹部の壁面にも、メタライズ層21dを設けた例である。このレンズ部品16cは、半田フィレットによる接続に加えて、凹部に設けられたメタライズ層21dとキャリア面との間で半田接続を形成し、その接着強度を高めレンズ部品の固定を確実なものとすることができる。
【0037】
このメタライズ層21dを有するレンズ部品16cは、図3(B)に示したのと同様なマトリックス状に多数個のレンズ部20aを有するレンズウエハ25cを準備する。そして、図5(B)に示すように、メタライズ加工部19を形成する下部側で、1本おきの横方向のダイシングライン26a上にレンズ基体20毎に、例えば、2つの孔22を形成する。次いで、孔22を含むようにダイシングライン26aの両側に、図3(B)で説明したのと同様なメタライズ層21を一括形成する。この際、孔22の内壁面にもメタライズ層21が形成されるよう加工を施すことが重要となる。この後、レンズウエハ25cを、ダイシングライン26a,26bに沿ってそれぞれの個片に分割することで、レンズ部品16cが得られる。
【0038】
図6(A)〜図6(C)に示すレンズ部品は、レンズ部品をキャリアの搭載位置に搬送し、且つ搭載位置の調芯を行うために把持する把持部を有する例を示すものである。図6(A)に示すレンズ部品16dは、レンズ基体20の上端面20dの両側に、傾斜面23aを形成した例である。このレンズ部品16dは、一対の傾斜面をコレット両端に有する吸着コレットからなる搬送装置を用いる場合に適した形状で、両側の傾斜面23aとコレット側の傾斜面が一致するよう設計されたコレットにより吸着することにより、レンズ部品16dを精度よく保持して正確な搬送と位置決めを行うことができる。
【0039】
図6(B)に示すレンズ部品16eは、レンズ基体20の上端面20dの両側に段部23bを形成した例である。このレンズ部品16eは、ペンチ状のコレットで把持する搬送装置を用いる場合に適した形状で、両側の段部23bを挟むことにより、レンズ部品16eを精度よく保持して正確な搬送と位置決めを行うことができる。
また、図6(C)に示すレンズ部品16fは、レンズ基体20の上端面20d近くの両側面に溝23cで形成した例である。このレンズ部品16fは、ニッパ状のコレットで把持する搬送装置を用いる場合に適した形状で、両側の溝23cを把持することにより、レンズ部品16eを精度よく保持して正確な搬送と位置決めを行うことができる。
【0040】
図7は、キャリアの他の例を示す図である。この図に示すキャリア30は、電気絶縁材で形成した例で、LD14の放熱性を考慮して熱伝導性のよい窒化アルミニウム、アルミナ等のセラミックス材や、シリコン、窒化ガリウム等の半導体材を用いることができる。キャリア30上には、図2の例と同様に、LD14を搭載するサブマウント15を実装するための実装領域30aと、レンズ部品16を実装するための実装領域30bが設けられる。
【0041】
実装領域30a,30bには、Ni/AuやTi/Pt/Au等の層構成をもち、キャリア30との接合強度と半田濡れ性を両立できる金属層を直接形成することができる。レンズ部品16用の実装領域30bは、レンズ部品の下端面のサイズに対して、調芯代と半田フィレット形成代を加算したサイズとなるよう設計された金属層34が形成される。LDから出射される光を光ファイバに結合させる場合、レンズに許容される実装ずれは数μm程度となり、LDと光ファイバの部品設計に依存する光軸ずれ量は数十μmから百μm程度であり、調芯代は数百μm程度となる。この金属層34を必要以上に大きくすると、半田材が濡れ広がりすぎて、キャリアとレンズ部品間に半田フィレットが正しく形成されず、十分な実装強度が得られなくなる虞がある。
【0042】
また、耐熱性を有する電気絶縁体で形成したキャリア30には、半田材17を加熱溶融するためのヒータ機能を備えた構成とすることができる。このヒータ機能を備える構成としては、ヒータ部31aを、金属層34に近接して形成しておく。その場合、ヒータ部31aにより発生した熱を効率的に半田材17に伝わるよう、ヒータ部31aに対して金属層34と反対側は熱抵抗が高く設計されていることが望ましい。
ヒータ部31aへの給電用の配電部31b及び端子パッド32は、キャリア30上に形成しておき、該端子パッド32からの給電でヒータ部31aにより、金属層34付近を加熱する。この加熱により、半田材17を効果的に加熱・溶融してレンズ部品16を簡単に固定でき、作業性を向上することができる。
【0043】
図8は、キャリア30が窒化アルミニウム等のセラミックス材からなる場合の一例を示す図である。キャリア30がセラミックの電気絶縁体である場合は、図8(A)に示すように、キャリア30上のレンズ部品の実装領域に、ヒータ部31a及び配電部31bからなる配線層31、並びに端子パッド部32を直接形成する。ヒータ部31aの電気抵抗Rは、ヒータ部31aの配線長をL(m)、断面積をA(m2)、電気抵抗率をρ(Ωm)とすると、「R(Ω)=ρ(L/A)」で表すことができる。
【0044】
ヒータ部31aの材料としては、電気抵抗率ρが比較的高い金属材料を用いるのが好ましい。例えば、Ti(ρ=4.27×10−7Ωm)、Cr(ρ=1.29×10−7Ωm)、Pt(ρ=1.04×10−7Ωm)などを用いることができる。
これらの配線層31及び端子パッド部32は、マスク等を用いて、蒸着やスパッタリングなどで形成することができる。ヒータ部31aは、膜厚が一定であるとすると、線幅を細く、長く(蛇行状)することで抵抗値を高くすることができる。
【0045】
例えば、ヒータ部31aの材料をTiとして、ヒータ部の厚さを1μm、ヒータ線路の幅を100μm、ヒータ線路の長さを5mmとした場合、ヒータ部の電気抵抗Rは21.4Ωとなる。このヒータ部に1Aの電流を供給した場合の発熱量Qは、Q=I2R(W)より、21.35(W)となる。
【0046】
発生した熱量に対して、部品の温度差ΔTは、ΔT=Q×Rth(℃)で表すことができる。Rthは熱抵抗(℃/W)といい2つの測定点における熱の伝わりにくさを示す。例えば、ヒータ部31aの温度とキャリア30底部の温度差をΔT、ヒータ部とキャリア底部の熱抵抗を10(℃/W)と設計した場合、キャリア底部に対してヒータ部の温度差は213.5℃上昇させることができる。キャリアが室温25℃の場合、ヒータ部の温度は238.5℃となり、錫銀銅半田の融点217℃よりも高い温度となり、半田を溶融することが可能となる。
【0047】
なお、ヒータ部31aの電気抵抗率は、十分な発熱をえるために高いことが望ましい。他方、ヒータ部31aへの給電用の配電部31bは、抵抗値を低くしてロスを抑制することが望ましい。このため、配電部31bに対しては線幅を太くしたり、電気抵抗率の低いAl、Cu、Auなどを積層形成することで膜厚を厚くするなどして、抵抗値を低くするのが好ましい。
【0048】
次いで、図8(B)に示すように、ヒータ部31aとその外周辺を含むように、上記の金属層34に対して電気絶縁性を確保しつつヒータ部31aで生じた熱を効率的に伝えるよう適切な厚さに設計された電気絶縁層33を形成する。この電気絶縁層33も、マスク等を用いた蒸着やスパッタリングなどで形成することができる。この電気絶縁層33は、ヒータ部31aの熱を実装領域の金属層34に伝わりやすくするために、薄く且つ熱伝導率の良い材料(例えば、二酸化ケイ素SiO2)で形成するのがよい。
【0049】
電気絶縁層33の上には、前述したレンズ部品を実装する金属層34を形成する。この金属層34は、上記したように、例えば、Ni/AuやTi/Pt/Au等の層構成をもち、キャリア30との接合強度とレンズ部品の半田材と半田濡れ性のよい金属層とし、メッキ加工等で形成してもよい。
なお、上記の如く形成したヒータ機能の構成を断面的に示すと、図8(C)のようになる。
【0050】
図9は、キャリア30がシリコン、窒化ガリウムなどの半導体材からなる場合の一例を示す図である。キャリア30が半導体材である場合は、図9(A)に示すように、第1の電気絶縁層35(例えば、二酸化ケイ素SiO2 、ポリイミド )を形成する。次いで、第1の電気絶縁層35上に、図8(A)で説明したのと同様に、レンズ部品の実装領域に、ヒータ部31a及び配電部31bからなる配線層31を形成する。
【0051】
配線層31を形成した後、図9(B)に示すように、配線層31のほぼ全域を覆うように、上記の金属層34に対して電気絶縁性を確保しつつヒータ部31aで生じた熱を効率的に伝えるよう適切な厚さに設計された熱伝導率の良い材料(例えば、二酸化ケイ素SiO2)で第2の電気絶縁層36を形成する。なお、この第2の電気絶縁層36は、図8(B)の例と同様に、ヒータ部31aとその外周辺を含むように形成する形態であってもよい。
【0052】
次いで、第2の電気絶縁層36の上には、レンズ部品を実装する金属層34を形成する。また、第2の電気絶縁層36には、配線層31に給電するための端子パッド32を形成し、第2の電気絶縁層36にビアホールを設けて配電部31bの端部に、接続導体32aで電気的に接続する。
なお、上記の如く形成したヒータ機能の構成を断面的に示すと、図9(C)のようになる。
【0053】
キャリア30が熱伝導性のよい材料で形成されている場合、キャリアの熱抵抗が低くなり、ヒータ部31aで発熱した熱が、キャリア30の底部側から放熱されて、レンズ部品の半田付加熱に対する効率が低下する可能性がある。
このため、ヒータ部31aが形成されている上記の金属層34の近傍領域では、キャリア30およびキャリアを実装する部材に対してヒータ部31aの熱が拡散しにくくするため、熱抵抗が高くなるようにキャリア30の実装面側と反対の面側に凹部を有する形状としてもよい。
【0054】
図10は、上述したキャリア30の実装面側と反対の面側に凹部を有する形状の一例で、図8,9の変形例として示した図である。
本例では、例えば、ヒータ部31aが設けられた金属層34のキャリア30の下部側を部分的に除去して凹部37を形成し、ヒータ部の下部側には熱が伝導し難いようにしている。凹部37を設けることで、その部分は熱伝達率の低い空気となり、熱抵抗を上げることが可能となる。
【0055】
図10(A)は、図8のキャリアがセラミック材で形成されている場合に対応する例で、凹部37はセラミック材の成形時に容易に形成することができる。
図10(B),(C)は、図9のキャリアが半導体材で形成されている場合に対応する例で、凹部37はドライエッチングで矩形に形成するか異方性エッチングを用いて台形状に加工することができる。なお、本例では、キャリア上の第1及び第2の電気絶縁層が35,36の膜厚が厚く、強度的に十分な場合は、ヒータ部直下のキャリア材を完全に除去するようにしてもよい。
【0056】
図11は、1つのパッケージ内に複数のLDを搭載した、波長多重の発光モジュールの例を示す図である。図において、40は発光モジュール、41はパッケージ、42はスリーブ、43はキャリア、44は半導体レーザ(LD)、45はサブマウント、46a,46bはレンズ部品、47は半田材、48は光合波器、48aは光導波路を示す。
【0057】
この発光モジュール40は、中心波長が異なる半導体レーザ(LD)44を複数個搭載し、光合波部品48を用いて1本の光ファイバに光結合させるもので、波長の異なる複数の信号光を伝搬できるため、伝送速度の高速化を実現することができるものである。
発光モジュール40は、図1で説明した発光モジュールと同様に、パッケージ41にスリーブ42を結合した形状で形成される。
【0058】
パッケージ41は、図11(A)に示すように、例えば、箱型の矩形状に形成され、内部に搭載部品が実装されたキャリア43が収納される。キャリア43には、サブマウント45を介して搭載された複数の半導体レーザ(LD)44と、このLD44から出射される波長の異なる信号光をそれぞれ集光する複数の第1のレンズ部品46aと、複数のレンズ部品46aからの信号光を光導波路48aで導波して合波する光合波器48と、光合波器48からの合波された信号光を光ファイバに光結合する第2のレンズ部品46bが実装されている。スリーブ42は、光ファイバを結合保持するためのもので、第2のレンズ部品46bからの合波された信号光が、前記の光ファイバに入射される。
【0059】
パッケージ41内には、図1で説明したのと同様に、上記の他に、LD44の温度調節をする電子冷却装置等の温調モジュール、サーミスタ、光信号の反射戻り光を阻止するアイソレータ、LD44を駆動制御するIC部品等が実装されていてもよい。また、図11では省略してあるが、パッケージ41には、外部回路や外部電源への接続のための端子が設けられている。また、パッケージ41の実装状態を示すために、上部が解放された状態で示しているが、上部の開口は蓋部材で閉塞され密閉状態とされる。
【0060】
キャリア43上に実装されるレンズ部品46a,46bは、図2で説明したのと同様に、半田材47を用いて固定される。第1のレンズ部品46aは、中心波長が異なるLD44ごとに個別に調芯される。また、レンズ部品46a,46bは、図3〜図6で説明したのと同様な形状で、同様な方法で形成することができる。
また、図7〜10で説明したのと同様に、キャリア43に電気絶縁体を用いることができ、キャリア43に配設したヒータを用いて、レンズ部品46a,46bをそれぞれ効率よく半田付けすることができる。
【0061】
図11(B)で示すように、レンズ部品46aが狭い間隔で実装されている場合、それぞれのレンズをYAG溶接で固定するためのYAG溶接レーザを導入する空間を確保することができなくなる。
キャリア43に配設したヒータを用いてレンズ実装面を効率的に加熱することが可能となり、狭い間隔で実装されたレンズ部品46aの調芯固定が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
10,40…発光モジュール、11,41…パッケージ、12,42…スリーブ、13,30,43…キャリア、13a,13b,30a,30b…実装領域、14,44…半導体レーザ(LD)、15,45…サブマウント、16〜16f,46a,46b…レンズ部品、17,47…半田材、17a…半田フィレット、18…レンズ部、19…メタライズ加工部、20…レンズ基体、20a…前面、20b…背面、20c…下端面、20d…上端面、21〜21d…メタライズ層、22…孔、23a〜23c…把持部、25a〜25c…レンズウエハ、26a,26b…ダイシングライン、31…配線層、31a…ヒータ部、31b…配電部、32…端子パッド、32a…接続導体、33…電気絶縁層、34…金属層、35…第1の電気絶縁層、36…第2の電気絶縁層、37…凹部、48…光合波器、48a…光導波路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザと、該半導体レーザから出射される光を集光するレンズを搭載した発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信における信号光源や光ファイバ増幅用の励起光源として、半導体レーザからの光を信号源とする発光モジュールが用いられている。この発光モジュールは、半導体レーザから出射される光を、レンズを用いて光ファイバに光学的に結合するもので、レーザ光と光ファイバとの光結合に際しては、通常、最大の光結合効率が得られるようにレンズの位置を調芯して固定される。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体レーザから出射された光を平行光に変換するレンズの位置を、赤外線カメラ等を用いて調芯した後、保持具を介してキャリア上に固定している。レンズの固定は、YAG溶接を用いて行うが、溶接時の位置ズレを抑制するために保持具の溶接部分を薄肉化するなど、溶接部の形状を最適化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−14257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズ部品をYAG溶接で固定する場合、レンズ材料であるガラス自体はYAGで溶接固定することはできないため、レンズ部品の外周部が金属製の筐体(ホルダ)により覆われた構造とする必要がある。このため、レンズの成形後にレンズを金属筺体に嵌め込むなどして固定するか、若しくは、金属筺体上でレンズを成形するなどのレンズ単体と金属製の筐体を組み合わせる工程が必要で、加工プロセスが複雑となり、コストの高いレンズ部品となる。
【0006】
また、レンズは、半導体レーザに対して3軸方向での調芯が必要であり、実装面に対して垂直方向に対する調芯が必要なため、特許文献1に開示のような断面U字状のような金属製の保持具が必要となる。このため、キャリアも金属製となり、レンズの保持固定は、レンズ筺体と保持具をYAG溶接し、さらに保持具のキャリアへの固定もYAG溶接で行う構造となる。この構造は、溶接する部品間のクリアランスが大きいと位置ズレが生じやすく、高精度の加工が必要となり、コストの高い部品となる。
【0007】
また、レンズの調芯は、パッケージ内に実装された状態の半導体レーザを基準にして行われる。このため、YAG固定に用いるYAG溶接のレーザ入射角を考慮した十分なパッケージ内空間が必要とされ、パッケージの設計に対して制約が生じる。YAG溶接レーザの入射角はキャリア部品の実装面に対して30度から60度程度の角度で設計される。YAG溶接する箇所を基準として、前述の入射角の範囲はYAG溶接レーザが干渉されないよう解放された空間が必要となるため、幅の広いパッケージ設計が必要となる。
【0008】
一方、光トランシーバ等の通信機器では小型化の要求が強く、発光モジュールも小型設計となるため大きな制約となる。また、波長多重の光モジュールを設計するうえで、中心波長が異なる半導体レーザを列状に並べて実装する構造のものにおいては、レンズの大きさ及びYAG溶接の制約から、YAG溶接を用いた組立方式では小型化対応の設計が困難となる。
【0009】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、YAG溶接を用いることなく調芯固定して実装することができる機能を有し、また安価に製造可能なレンズ部品と、その実装構造を備えたキャリア部品からなる発光モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による発光モジュールは、サブマウントに搭載された半導体レーザと、該半導体レーザから出射される光を集光するレンズ部品とが実装されたキャリアを、パッケージ内に収納してなる発光モジュールであって、レンズ部品はメタライズ加工部を有し、キャリアの実装面にメタライズ加工部を半田付けして固定されていることを特徴とする。
【0011】
レンズ部品のメタライズ加工部は、キャリアの実装面に対向する面と、該面に直交し連接するレンズ部に達しない範囲の前面および背面の3面のうち、少なくとも1面に形成されていることが好ましい。また、レンズ部品のメタライズ加工部と反対側の部分に、搬送用の把持部が設けられていることが好ましい。なお、レンズ部品は、例えば、ウエハにマトリックス状に一体形成した後、分割加工された矩形形状で形成される。
【0012】
また、前記のキャリアが電気絶縁体で形成され、その実装面に前記レンズ部品のメタライズ加工部を半田付けするための金属層が形成され、該金属層の近傍に、半田材を加熱するヒータ機能を搭載するようにしてもよい。
上記のヒータ機能は、キャリアがセラミック材の場合は、セラミック基板からなるキャリアの実装面側に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、ヒータ部の上に電気絶縁層を介して、上記の金属層が形成されている。
【0013】
また、キャリアが半導体材の場合は、半導体基板からなるキャリアの実装面側に設けられた第1の電気絶縁層上に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、ヒータ部の上に第2の電気絶縁層を介して、上記の金属層が形成されている。
なお、ヒータ部が形成されている領域で、キャリアの実装面側と反対の面側に凹部を有する形状としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レンズ部品を安価に形成することができ、また、キャリア上に半田付けで固定することができるので、レンズ部品の調芯設備の設計が容易で、且つ位置ズレを抑制することができると共に、発光モジュールの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による発光モジュールの外観を示す図である。
【図2】本発明によるレンズ部品等の実装例を説明する図である。
【図3】本発明によるレンズ部品の一例とその製造例を説明する図である。
【図4】本発明によるレンズ部品の他の例とその製造例を説明する図である。
【図5】本発明によるレンズ部品のその他の例とその製造例を説明する図である。
【図6】本発明によるレンズ部品のその他の例を示す図である。
【図7】本発明による電気絶縁体からなるキャリアの例を示す図である。
【図8】図7に示すヒータ機能の一例を示す図である。
【図9】図7に示すヒータ機能の他の例を示す図である。
【図10】図8,9の変形例を示す図である。
【図11】本発明による波長多重の発光モジュールの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1,2において、10は発光モジュール、11はパッケージ、12はスリーブ、13はキャリア、13aはサブマウントの実装領域、13bはレンズ部品の実装領域、14は半導体レーザ(LD)、15はサブマウント、16はレンズ部品、17は半田材、17aは半田フィレット、18はレンズ部、19はメタライズ加工部を示す。
【0017】
本発明による発光モジュール10(半導体レーザモジュールともいう)は、図1に示すように、パッケージ11にスリーブ12を結合した形状で形成される。パッケージ11は、例えば、箱型の矩形状に形成され、内部にサブマウント15に搭載された半導体レーザ14(以下、LDという)と、このLD14から出射される光を集光するレンズ部品16とが実装されたキャリア13が収納される。スリーブ12は、光ファイバを結合保持するためのもので、レンズ部品16で集光されたLD14からの信号光が、前記の光ファイバに入射される。
【0018】
パッケージ11内には、上記の他に、LD14の温度調節をする電子冷却装置等の温調モジュール、サーミスタ、光信号の反射戻り光を阻止するアイソレータ、LD14を駆動制御するIC部品等が実装されていてもよい。なお、図1では省略してあるが、パッケージ11には、外部回路や外部電源への接続のための端子が設けられている。また、パッケージ11内への部品の実装状態を示すために、上部が解放された状態で示しているが、上部の開口は蓋部材で閉塞され密閉状態とされる。密閉空間は窒素置換された雰囲気となる気密封止された状態となり、LDなどの光デバイスの信頼性を向上させる。
【0019】
パッケージ内に収納されるキャリア13上には、図2に示すように、LD14とレンズ部品16が実装される。LD14は、セラミック等の電気絶縁材からなるサブマウント15を介して、金属または電気絶縁体からなるキャリア13の実装領域13a上に実装される。LD14のサブマウント15上への実装、サブマウント15のキャリア13上への実装は、半田材を用いて行われる。この半田材としては、比較的融点の高い半田材料である金ゲルマニウム半田、金錫半田、錫銀銅半田など考えられるが、そのうち金錫半田がよく用いられる。
【0020】
レンズ部品16は、光通信に用いる波長帯に対して透明となるレンズ単体からなり、そのレンズの一部には半田などのロウ付け固定可能なように、メタライズ加工部19を有する。他方、キャリア13のレンズの実装領域13b上には、レンズ部品16を半田などのロウ付け固定できるように金属層を有し、予め成形された板状の半田材17を用いてレンズ部品16とキャリア13は半田付けして固定される。
【0021】
レンズ部品16の実装は、LD14を実装した後、LD14に外部から給電し、その出射光を赤外線カメラ等でモニタするか、光ファイバで受けた光出力をモニタしながら3軸方向に調整しながら所望の性能が得られるよう最適点となる位置に調芯する。この場合、レンズ部品16をコレット等で把持して半田材17を溶融しながら上記の調芯を行い、レンズ部品16を最適位置に保持した後、半田材を冷却・硬化させる。半田材料が酸化の影響を受けにくくするため、窒素雰囲気もしくは酸化を除去する還元雰囲気で半田を加熱できる装置を用いるのがよい。
【0022】
なお、レンズ部品16の半田付けに先だって、キャリア13および半田材を加熱しておき、この後、レンズ部品16をコレット等で把持して調芯を行い、レンズ部品16を最適位置に保持して半田材を冷却・硬化させるようにしてもよい。なお、半田材が完全に硬化した後に、コレットによるレンズ保持を解除するのが望ましく、これにより、半田材の硬化収縮による位置ズレの影響を低減することができる。
【0023】
また、半田材17の加熱時は、半田材の融点を超える温度に設定されるが、冷却時は半田材の融点より少し低い温度に一旦強制冷却し、半田材が液相から固相に十分変化した後、常温まで自然冷却で冷却するのが好ましい。半田の液相状態から常温に急激に冷却すると、半田材の相変化による収縮と半田の線膨張係数に依存する収縮が同時に生じる。このため、レンズ部品が半田材に引っ張られてレンズ部品の位置ズレが大きくなる虞がある。
【0024】
レンズ部品16用の半田材17は、LD14およびサブマウント15の実装に用いた半田材よりも融点の低い半田材を用いるのが好ましい。これにより、レンズ部品16の半田付け時に、LD14およびサブマウント15の半田接合部分に影響が及ぶのを抑制することができる。なお、レンズ部品16用の半田材17には、金錫半田、錫銀銅半田、錫銅半田、錫アンチモン半田、錫亜鉛半田、錫ビスマス半田などが考えられるが、LDなどの実装に金錫半田を用いている場合は、錫銀半田や錫銀銅半田などの金錫半田の次に融点が低い半田材料を用いるのがよい。
【0025】
なお、半田材17は、予めキャリア13上に形成されていてもよく、また、図に示すように、ペレット状の半田材17を用いるようにしてもよい。半田材17は、レンズ部品を3軸調芯するため、キャリアのレンズ部品の実装領域13aとレンズ部品16の下端面に生じる隙間を満たして、かつレンズ部品のメタライズ加工部19まで半田が濡れ上がる必要がある。半田材17をキャリア13上にあらかじめ形成する場合は、半田材料の実装面方向の大きさをレンズ部品の実装領域13aと同じ面積として、厚さを上記の隙間に対して1〜3倍と設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるよう十分な体積が得られるようにするのが望ましい。
【0026】
なお、上記の隙間よりも薄い半田厚さとする場合は、レンズ部品の実装領域13aの面積に対して1〜2倍となるように設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるように十分な体積が得られていることが望ましい。
ペレット形状の半田材17についても同様に、レンズ部品の実装領域13aと同じ面積として、厚さを上記の隙間に対して1〜3倍と設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるよう十分な体積が得られるよう設計するか、レンズ部品の実装領域13aの面積に対して1〜2倍となるように設計し、レンズ部品のメタライズ加工部19まで濡れ上がるよう十分な体積が得られるようにするのが望ましい。
【0027】
図3〜図6は、本発明で使用されるレンズ部品16の構造例とその製造方法の例を説明する図である。図において、16a〜16fはレンズ部品、20はレンズ基体、20aは前面、20bは背面、20cは下端面、20dは上端面、21〜21dはメタライズ層、22は孔、23a〜23cは把持部、25a〜25cはレンズウエハ、26a,26bはダイシングライン、を示す。
【0028】
レンズ部品16a〜16fは、図に示すように、外形が矩形状のレンズ基体20の中央部にレンズ部18を有し、下部側にメタライズ加工部19が形成された構造とするのが望ましい。レンズ部品を矩形状とすることにより、レンズ基板となるウエハにマトリックス状に多数のレンズ部18とメタライズ加工部19とを一括形成した後、ダイシング加工等によりそれぞれの個片に分割することで、安価で大量のレンズ部品を製造することが可能となる。
【0029】
レンズ部18は、ドーム状にレンズ基体20の前面20a又は背面20bから膨出した形状で、金型による成形、もしくはフォトリソ加工により形成される。成形の場合は、レンズの曲率に応じて金型に凹みを形成し、レンズの材料を金型に投入した後、金型をプレスすることで金型のレンズ曲率を含む形状がレンズ材料に転写されて、レンズが形成される。フォトリソ加工の場合は、レンズ基体にマスク材を加工する。マスク材はレンズ形状に応じてドーム型に形成し、レンズ部以外のレンズ基材を加工した後、マスクを除去することでレンズが形成される。
【0030】
メタライズ加工部19は、レンズ基体20の表面にPVD(物理的蒸着)やCVD(化学的蒸着)により形成され、レンズ基体20の下部側で、キャリアの実装面に対向する下端面20cと、該面に直交し連接するレンズ部18に達しない範囲の前面20a及び背面20bの3面のうち、少なくとも1面に形成される。
【0031】
図3(A)に示すレンズ部品16aは、レンズ基体20の下端面20cを除いて、下部側の前面20aと背面20bの2つの面に、レンズ部18に達しない範囲でメタライズ層21aと21bを形成し、メタライズ加工部19とした例である。メタライズ層21aと21bは、キャリアの実装面と直交し、レンズ基体20の下端面20cからはみ出す半田フィレットによりレンズ部品16aをキャリア面上に固定する。
【0032】
上記のレンズ部品16aは、例えば、図3(B)に示すように、マトリックス状に多数個のレンズ部18を専用の金型により一括成形、若しくはフォトリソ加工により、レンズウエハ25a上に形成して製造される。レンズウエハ25aの材料としては、多成分ガラス、石英ガラス、シリコンなどの半導体材料等が用いられる。なお、レンズ部18には、反射防止膜を形成し、レンズ面での反射損失の少ない光結合を可能とするようにしてもよい。
【0033】
また、メタライズ加工部19となるメタライズ層21を横方向のダイシングライン26aに沿って一括形成する。メタライズ層21は、Ni/AuやTi/Pt/Au等の層構成をもち、レンズウエハ材との接合強度と半田濡れ性を両立できる構成とされる。メタライズ層21の形成後、レンズウエハ25aを、ダイシングライン26a,26bに沿ってそれぞれの個片に分割することで、レンズ部品16aが得られる。
【0034】
図4(A)に示すレンズ部品16bは、メタライズ加工部19のメタライズ層は、レンズ基体20の前面20aと背面20bのメタライズ層21a,21bに加えて、キャリアの実装面と対向する下端面20cにも、メタライズ層21cを設けた例である。このレンズ部品16bは、半田フィレットによる接続に加えて、下端面20cのメタライズ層21cにより、キャリアの実装面と面接合による半田付けで半田接合面積を増加させることができ、その接着強度を高めレンズ部品の固定を確実なものとすることができる。
【0035】
このメタライズ層21cを有するレンズ部品16bは、図4(B)に示すように、一列のレンズ基体20からなるレンズウエハ25bの実装面側の3面を覆うようにメタライズ層21を形成し、ダイシングライン26bで切断して形成される。なお、図4(B)のレンズウエハ25bは、図3(B)のレンズウエハ25aを横方向のダイシングライン26aで切断した状態で得ることができる。
【0036】
図5(A)に示すレンズ部品16cは、メタライズ加工部19のメタライズ層は、レンズ基体20の前面20aと背面20bのメタライズ層21a,21bに加えて、キャリアの実装面と対向する下端面20cに断面が半円状の凹部を設け、該凹部の壁面にも、メタライズ層21dを設けた例である。このレンズ部品16cは、半田フィレットによる接続に加えて、凹部に設けられたメタライズ層21dとキャリア面との間で半田接続を形成し、その接着強度を高めレンズ部品の固定を確実なものとすることができる。
【0037】
このメタライズ層21dを有するレンズ部品16cは、図3(B)に示したのと同様なマトリックス状に多数個のレンズ部20aを有するレンズウエハ25cを準備する。そして、図5(B)に示すように、メタライズ加工部19を形成する下部側で、1本おきの横方向のダイシングライン26a上にレンズ基体20毎に、例えば、2つの孔22を形成する。次いで、孔22を含むようにダイシングライン26aの両側に、図3(B)で説明したのと同様なメタライズ層21を一括形成する。この際、孔22の内壁面にもメタライズ層21が形成されるよう加工を施すことが重要となる。この後、レンズウエハ25cを、ダイシングライン26a,26bに沿ってそれぞれの個片に分割することで、レンズ部品16cが得られる。
【0038】
図6(A)〜図6(C)に示すレンズ部品は、レンズ部品をキャリアの搭載位置に搬送し、且つ搭載位置の調芯を行うために把持する把持部を有する例を示すものである。図6(A)に示すレンズ部品16dは、レンズ基体20の上端面20dの両側に、傾斜面23aを形成した例である。このレンズ部品16dは、一対の傾斜面をコレット両端に有する吸着コレットからなる搬送装置を用いる場合に適した形状で、両側の傾斜面23aとコレット側の傾斜面が一致するよう設計されたコレットにより吸着することにより、レンズ部品16dを精度よく保持して正確な搬送と位置決めを行うことができる。
【0039】
図6(B)に示すレンズ部品16eは、レンズ基体20の上端面20dの両側に段部23bを形成した例である。このレンズ部品16eは、ペンチ状のコレットで把持する搬送装置を用いる場合に適した形状で、両側の段部23bを挟むことにより、レンズ部品16eを精度よく保持して正確な搬送と位置決めを行うことができる。
また、図6(C)に示すレンズ部品16fは、レンズ基体20の上端面20d近くの両側面に溝23cで形成した例である。このレンズ部品16fは、ニッパ状のコレットで把持する搬送装置を用いる場合に適した形状で、両側の溝23cを把持することにより、レンズ部品16eを精度よく保持して正確な搬送と位置決めを行うことができる。
【0040】
図7は、キャリアの他の例を示す図である。この図に示すキャリア30は、電気絶縁材で形成した例で、LD14の放熱性を考慮して熱伝導性のよい窒化アルミニウム、アルミナ等のセラミックス材や、シリコン、窒化ガリウム等の半導体材を用いることができる。キャリア30上には、図2の例と同様に、LD14を搭載するサブマウント15を実装するための実装領域30aと、レンズ部品16を実装するための実装領域30bが設けられる。
【0041】
実装領域30a,30bには、Ni/AuやTi/Pt/Au等の層構成をもち、キャリア30との接合強度と半田濡れ性を両立できる金属層を直接形成することができる。レンズ部品16用の実装領域30bは、レンズ部品の下端面のサイズに対して、調芯代と半田フィレット形成代を加算したサイズとなるよう設計された金属層34が形成される。LDから出射される光を光ファイバに結合させる場合、レンズに許容される実装ずれは数μm程度となり、LDと光ファイバの部品設計に依存する光軸ずれ量は数十μmから百μm程度であり、調芯代は数百μm程度となる。この金属層34を必要以上に大きくすると、半田材が濡れ広がりすぎて、キャリアとレンズ部品間に半田フィレットが正しく形成されず、十分な実装強度が得られなくなる虞がある。
【0042】
また、耐熱性を有する電気絶縁体で形成したキャリア30には、半田材17を加熱溶融するためのヒータ機能を備えた構成とすることができる。このヒータ機能を備える構成としては、ヒータ部31aを、金属層34に近接して形成しておく。その場合、ヒータ部31aにより発生した熱を効率的に半田材17に伝わるよう、ヒータ部31aに対して金属層34と反対側は熱抵抗が高く設計されていることが望ましい。
ヒータ部31aへの給電用の配電部31b及び端子パッド32は、キャリア30上に形成しておき、該端子パッド32からの給電でヒータ部31aにより、金属層34付近を加熱する。この加熱により、半田材17を効果的に加熱・溶融してレンズ部品16を簡単に固定でき、作業性を向上することができる。
【0043】
図8は、キャリア30が窒化アルミニウム等のセラミックス材からなる場合の一例を示す図である。キャリア30がセラミックの電気絶縁体である場合は、図8(A)に示すように、キャリア30上のレンズ部品の実装領域に、ヒータ部31a及び配電部31bからなる配線層31、並びに端子パッド部32を直接形成する。ヒータ部31aの電気抵抗Rは、ヒータ部31aの配線長をL(m)、断面積をA(m2)、電気抵抗率をρ(Ωm)とすると、「R(Ω)=ρ(L/A)」で表すことができる。
【0044】
ヒータ部31aの材料としては、電気抵抗率ρが比較的高い金属材料を用いるのが好ましい。例えば、Ti(ρ=4.27×10−7Ωm)、Cr(ρ=1.29×10−7Ωm)、Pt(ρ=1.04×10−7Ωm)などを用いることができる。
これらの配線層31及び端子パッド部32は、マスク等を用いて、蒸着やスパッタリングなどで形成することができる。ヒータ部31aは、膜厚が一定であるとすると、線幅を細く、長く(蛇行状)することで抵抗値を高くすることができる。
【0045】
例えば、ヒータ部31aの材料をTiとして、ヒータ部の厚さを1μm、ヒータ線路の幅を100μm、ヒータ線路の長さを5mmとした場合、ヒータ部の電気抵抗Rは21.4Ωとなる。このヒータ部に1Aの電流を供給した場合の発熱量Qは、Q=I2R(W)より、21.35(W)となる。
【0046】
発生した熱量に対して、部品の温度差ΔTは、ΔT=Q×Rth(℃)で表すことができる。Rthは熱抵抗(℃/W)といい2つの測定点における熱の伝わりにくさを示す。例えば、ヒータ部31aの温度とキャリア30底部の温度差をΔT、ヒータ部とキャリア底部の熱抵抗を10(℃/W)と設計した場合、キャリア底部に対してヒータ部の温度差は213.5℃上昇させることができる。キャリアが室温25℃の場合、ヒータ部の温度は238.5℃となり、錫銀銅半田の融点217℃よりも高い温度となり、半田を溶融することが可能となる。
【0047】
なお、ヒータ部31aの電気抵抗率は、十分な発熱をえるために高いことが望ましい。他方、ヒータ部31aへの給電用の配電部31bは、抵抗値を低くしてロスを抑制することが望ましい。このため、配電部31bに対しては線幅を太くしたり、電気抵抗率の低いAl、Cu、Auなどを積層形成することで膜厚を厚くするなどして、抵抗値を低くするのが好ましい。
【0048】
次いで、図8(B)に示すように、ヒータ部31aとその外周辺を含むように、上記の金属層34に対して電気絶縁性を確保しつつヒータ部31aで生じた熱を効率的に伝えるよう適切な厚さに設計された電気絶縁層33を形成する。この電気絶縁層33も、マスク等を用いた蒸着やスパッタリングなどで形成することができる。この電気絶縁層33は、ヒータ部31aの熱を実装領域の金属層34に伝わりやすくするために、薄く且つ熱伝導率の良い材料(例えば、二酸化ケイ素SiO2)で形成するのがよい。
【0049】
電気絶縁層33の上には、前述したレンズ部品を実装する金属層34を形成する。この金属層34は、上記したように、例えば、Ni/AuやTi/Pt/Au等の層構成をもち、キャリア30との接合強度とレンズ部品の半田材と半田濡れ性のよい金属層とし、メッキ加工等で形成してもよい。
なお、上記の如く形成したヒータ機能の構成を断面的に示すと、図8(C)のようになる。
【0050】
図9は、キャリア30がシリコン、窒化ガリウムなどの半導体材からなる場合の一例を示す図である。キャリア30が半導体材である場合は、図9(A)に示すように、第1の電気絶縁層35(例えば、二酸化ケイ素SiO2 、ポリイミド )を形成する。次いで、第1の電気絶縁層35上に、図8(A)で説明したのと同様に、レンズ部品の実装領域に、ヒータ部31a及び配電部31bからなる配線層31を形成する。
【0051】
配線層31を形成した後、図9(B)に示すように、配線層31のほぼ全域を覆うように、上記の金属層34に対して電気絶縁性を確保しつつヒータ部31aで生じた熱を効率的に伝えるよう適切な厚さに設計された熱伝導率の良い材料(例えば、二酸化ケイ素SiO2)で第2の電気絶縁層36を形成する。なお、この第2の電気絶縁層36は、図8(B)の例と同様に、ヒータ部31aとその外周辺を含むように形成する形態であってもよい。
【0052】
次いで、第2の電気絶縁層36の上には、レンズ部品を実装する金属層34を形成する。また、第2の電気絶縁層36には、配線層31に給電するための端子パッド32を形成し、第2の電気絶縁層36にビアホールを設けて配電部31bの端部に、接続導体32aで電気的に接続する。
なお、上記の如く形成したヒータ機能の構成を断面的に示すと、図9(C)のようになる。
【0053】
キャリア30が熱伝導性のよい材料で形成されている場合、キャリアの熱抵抗が低くなり、ヒータ部31aで発熱した熱が、キャリア30の底部側から放熱されて、レンズ部品の半田付加熱に対する効率が低下する可能性がある。
このため、ヒータ部31aが形成されている上記の金属層34の近傍領域では、キャリア30およびキャリアを実装する部材に対してヒータ部31aの熱が拡散しにくくするため、熱抵抗が高くなるようにキャリア30の実装面側と反対の面側に凹部を有する形状としてもよい。
【0054】
図10は、上述したキャリア30の実装面側と反対の面側に凹部を有する形状の一例で、図8,9の変形例として示した図である。
本例では、例えば、ヒータ部31aが設けられた金属層34のキャリア30の下部側を部分的に除去して凹部37を形成し、ヒータ部の下部側には熱が伝導し難いようにしている。凹部37を設けることで、その部分は熱伝達率の低い空気となり、熱抵抗を上げることが可能となる。
【0055】
図10(A)は、図8のキャリアがセラミック材で形成されている場合に対応する例で、凹部37はセラミック材の成形時に容易に形成することができる。
図10(B),(C)は、図9のキャリアが半導体材で形成されている場合に対応する例で、凹部37はドライエッチングで矩形に形成するか異方性エッチングを用いて台形状に加工することができる。なお、本例では、キャリア上の第1及び第2の電気絶縁層が35,36の膜厚が厚く、強度的に十分な場合は、ヒータ部直下のキャリア材を完全に除去するようにしてもよい。
【0056】
図11は、1つのパッケージ内に複数のLDを搭載した、波長多重の発光モジュールの例を示す図である。図において、40は発光モジュール、41はパッケージ、42はスリーブ、43はキャリア、44は半導体レーザ(LD)、45はサブマウント、46a,46bはレンズ部品、47は半田材、48は光合波器、48aは光導波路を示す。
【0057】
この発光モジュール40は、中心波長が異なる半導体レーザ(LD)44を複数個搭載し、光合波部品48を用いて1本の光ファイバに光結合させるもので、波長の異なる複数の信号光を伝搬できるため、伝送速度の高速化を実現することができるものである。
発光モジュール40は、図1で説明した発光モジュールと同様に、パッケージ41にスリーブ42を結合した形状で形成される。
【0058】
パッケージ41は、図11(A)に示すように、例えば、箱型の矩形状に形成され、内部に搭載部品が実装されたキャリア43が収納される。キャリア43には、サブマウント45を介して搭載された複数の半導体レーザ(LD)44と、このLD44から出射される波長の異なる信号光をそれぞれ集光する複数の第1のレンズ部品46aと、複数のレンズ部品46aからの信号光を光導波路48aで導波して合波する光合波器48と、光合波器48からの合波された信号光を光ファイバに光結合する第2のレンズ部品46bが実装されている。スリーブ42は、光ファイバを結合保持するためのもので、第2のレンズ部品46bからの合波された信号光が、前記の光ファイバに入射される。
【0059】
パッケージ41内には、図1で説明したのと同様に、上記の他に、LD44の温度調節をする電子冷却装置等の温調モジュール、サーミスタ、光信号の反射戻り光を阻止するアイソレータ、LD44を駆動制御するIC部品等が実装されていてもよい。また、図11では省略してあるが、パッケージ41には、外部回路や外部電源への接続のための端子が設けられている。また、パッケージ41の実装状態を示すために、上部が解放された状態で示しているが、上部の開口は蓋部材で閉塞され密閉状態とされる。
【0060】
キャリア43上に実装されるレンズ部品46a,46bは、図2で説明したのと同様に、半田材47を用いて固定される。第1のレンズ部品46aは、中心波長が異なるLD44ごとに個別に調芯される。また、レンズ部品46a,46bは、図3〜図6で説明したのと同様な形状で、同様な方法で形成することができる。
また、図7〜10で説明したのと同様に、キャリア43に電気絶縁体を用いることができ、キャリア43に配設したヒータを用いて、レンズ部品46a,46bをそれぞれ効率よく半田付けすることができる。
【0061】
図11(B)で示すように、レンズ部品46aが狭い間隔で実装されている場合、それぞれのレンズをYAG溶接で固定するためのYAG溶接レーザを導入する空間を確保することができなくなる。
キャリア43に配設したヒータを用いてレンズ実装面を効率的に加熱することが可能となり、狭い間隔で実装されたレンズ部品46aの調芯固定が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
10,40…発光モジュール、11,41…パッケージ、12,42…スリーブ、13,30,43…キャリア、13a,13b,30a,30b…実装領域、14,44…半導体レーザ(LD)、15,45…サブマウント、16〜16f,46a,46b…レンズ部品、17,47…半田材、17a…半田フィレット、18…レンズ部、19…メタライズ加工部、20…レンズ基体、20a…前面、20b…背面、20c…下端面、20d…上端面、21〜21d…メタライズ層、22…孔、23a〜23c…把持部、25a〜25c…レンズウエハ、26a,26b…ダイシングライン、31…配線層、31a…ヒータ部、31b…配電部、32…端子パッド、32a…接続導体、33…電気絶縁層、34…金属層、35…第1の電気絶縁層、36…第2の電気絶縁層、37…凹部、48…光合波器、48a…光導波路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブマウントに搭載された半導体レーザと、前記半導体レーザから出射される光を集光するレンズ部品とが実装されたキャリアを、パッケージ内に収納してなる発光モジュールであって、
前記レンズ部品はメタライズ加工部を有し、前記キャリアの実装面に前記メタライズ加工部を半田付けして固定されていることを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記レンズ部品のメタライズ加工部は、前記キャリアの実装面に対向する面と、該面に直交し連接するレンズ部に達しない範囲の前面および背面の3面のうち、少なくとも1面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記レンズ部品のメタライズ加工部と反対側の部分に、搬送用の把持部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記レンズ部品は、ウエハにマトリックス状に一体形成した後、分割加工された矩形形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記キャリアが電気絶縁体で形成され、その実装面に前記レンズ部品のメタライズ加工部を半田付けするための金属層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記金属層の近傍に、半田材を加熱するヒータ機能が搭載されていることを特徴とする請求項5に記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記ヒータ機能は、セラミック基板からなるキャリアの実装面側に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、前記ヒータ部の上に電気絶縁層を介して、前記金属層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の発光モジュール。
【請求項8】
前記ヒータ機能は、半導体基板からなるキャリアの実装面側に設けられた第1の電気絶縁層上に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、前記ヒータ部の上に第2の電気絶縁層を介して、前記金属層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の発光モジュール。
【請求項9】
前記ヒータ部が形成されている領域で、前記キャリアの実装面側と反対の面側に凹部を有していることを特徴とする請求項7又は8に記載の発光モジュール。
【請求項1】
サブマウントに搭載された半導体レーザと、前記半導体レーザから出射される光を集光するレンズ部品とが実装されたキャリアを、パッケージ内に収納してなる発光モジュールであって、
前記レンズ部品はメタライズ加工部を有し、前記キャリアの実装面に前記メタライズ加工部を半田付けして固定されていることを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記レンズ部品のメタライズ加工部は、前記キャリアの実装面に対向する面と、該面に直交し連接するレンズ部に達しない範囲の前面および背面の3面のうち、少なくとも1面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記レンズ部品のメタライズ加工部と反対側の部分に、搬送用の把持部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記レンズ部品は、ウエハにマトリックス状に一体形成した後、分割加工された矩形形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記キャリアが電気絶縁体で形成され、その実装面に前記レンズ部品のメタライズ加工部を半田付けするための金属層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記金属層の近傍に、半田材を加熱するヒータ機能が搭載されていることを特徴とする請求項5に記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記ヒータ機能は、セラミック基板からなるキャリアの実装面側に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、前記ヒータ部の上に電気絶縁層を介して、前記金属層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の発光モジュール。
【請求項8】
前記ヒータ機能は、半導体基板からなるキャリアの実装面側に設けられた第1の電気絶縁層上に、Ti,Cr又はPtのいずれかによりヒータ部と配電部とからなる配線層で形成され、前記ヒータ部の上に第2の電気絶縁層を介して、前記金属層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の発光モジュール。
【請求項9】
前記ヒータ部が形成されている領域で、前記キャリアの実装面側と反対の面側に凹部を有していることを特徴とする請求項7又は8に記載の発光モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−80900(P2013−80900A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149113(P2012−149113)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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