説明

発光素子及び画像表示装置

【課題】高効率で発光し、薄型に適した発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】発光素子1は、紫外光放射部15と蛍光体層21とからなり、ZnOをベースとし、Ga、Pが添加された半導体材料で形成された紫外発光層11と、ZnOをベースとするp型半導体層12とがpn接合され、紫外発光層11に第1電極13が、p型半導体層12に第2電極14が接続されている。第1電極13と第2電極との間に電圧を印加することによって、紫外発光層11からピーク波長が400nm以下の紫外光が放射される。蛍光体層21は、紫外光放射部15から放射される紫外光を吸収し可視光に変換する。この可視光は基板22を透過して外部に出射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光素子を備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を用いた発光素子は、ランプや画像表示装置などに利用されており、軽量、薄型で、効率よく可視光を発光できる発光素子を実現することが求められている。
また、画像表示装置においては、大きな画面サイズを備えると共に、軽量、薄型で、且つ優れた画像品位で表示できるものが要求されている。これら全ての要求を十分に満足させることは、なかなか難しいが、新しい画像表示装置の実現を目指して開発が進められている。
【0003】
例えば特許文献1には、次世代の軽量、薄型の表示装置として、電界放出素子(フィールド・エミッション・デバイス FED)の一種である表面伝導型電子放出装置(SED)について記載されている。
特許文献1に開示されているSEDは、所定間隔をおいて対向配置された第1基板および第2基板を備え、これらの基板は矩形状の側壁を介して周辺部を互いに接合することにより真空外囲器が構成され、第1基板の内面には3色の蛍光体層が形成され、第2基板の内面には、蛍光体を励起する電子放出源として、多数の電子放出素子が配列されている。そして、第1基板および第2基板間に作用する大気圧荷重を支持し基板間の隙間を維持するため、両基板間に、複数のスペーサが配置されている。
【0004】
また、基板には、それぞれ電子放出素子から放出された電子ビームが通過する複数の電子ビーム通過孔が形成されている。
このようなFEDによって、画像表示装置の大型化及び高精細化を実現できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−93036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、FEDは、電子を電界放出によって真空中に放出して蛍光体に衝突させて発光する機構であるため、製造上、真空外囲器を設けて、その中を真空排気する工程などが必要となる。また、真空外囲器の中を一定状態に維持するために、真空外囲器内に使用する材料も制限される。
従って、画像表示装置において、真空外囲器を用いることなく、大型化及び高精細化を実現することも望まれる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、軽量、薄型で発光効率の優れた発光素子を提供すること目的とし、さらに、画像表示装置において、画質が高品位で大画面のものを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するため、本発明にかかる発光素子は、紫外光放射性の半導体材料からなる紫外発光体と、紫外発光体に対して電気的に接続された第1電極および第2電極とを備え、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって紫外発光体が紫外光を放射する紫外光放射部と、紫外光放射部からの紫外光放射領域に蛍光体が配設されてなり、紫外光放射部から放射される紫外光を波長変換して放射する蛍光体部とを設けることとした。
【0009】
ここでいう「紫外光」は、スペクトルにおけるピーク波長が400nm以下の電磁波を指す。
上記紫外発光体は、酸化亜鉛をベースとする半導体材料で形成することが好ましい。
具体的には、紫外発光体を、酸化亜鉛をベースとするn型半導体からなる紫外発光層と、酸化亜鉛をベースとするp型半導体層とを積層して構成し、第1電極をp型半導体層側に、第2電極を紫外発光層側に接続することが好ましい。
【0010】
ここで紫外発光層は、亜鉛化合物に、アルミニウム、ガリウム、インジウムから選択された元素を含む添加物と、リンを含む添加物が添加された材料で形成することが好ましい。
上記発光素子を、複数個、基板上に配列して画像表示装置を構成することができる。
また上記目的を達成するために、本発明にかかる画像表示装置は、基板上に、ストライプ状に伸長して配された複数の第1電極と、ストライプ状に伸長し第1電極に対して立体交差して配された複数の第2電極とを設け、第1電極と第2電極が立体交差する各箇所に、紫外光放射性の半導体材料が成形されてなる紫外発光層を介在させ、各紫外発光体に対して蛍光体層を配設し、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって、紫外発光体が紫外光を放射し、対応する蛍光体層で紫外光を波長変換して放射することによって画像を表示することとした。
【0011】
基板上に、上記発光素子を、1以上設けて発光パネルを構成することができる。
上記発光素子を封止体で封止して発光素子パッケージを構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光素子によれば、紫外光放射部において、第1電極と第2電極との間に電圧を印加すると紫外発光体からピーク波長が400nm以下の紫外光が放射される。そして、蛍光体部では、紫外光放射部から放射された紫外光を蛍光体で可視光などに波長変換して放射する。なお、可視光は、波長400nm〜780nmの電磁波を指す。
ここで、上記紫外発光体は、紫外光放射性の半導体材料が成形されて構成されているので、真空外囲器を必要とせず、軽量、薄型の発光素子を実現することができる。
【0013】
また、蛍光体部において用いる蛍光体の種類を変えることによって、発光色を変えることができる。
また、上記発光素子を、複数個、基板上に配列することによって、軽量で薄型の画像表示装置を実現することもできる。
また、画像表示装置を、基板上に、ストライプ状に伸長する複数の第1電極と、ストライプ状に伸長し第1電極に対して立体交差する複数の第2電極とを設け、第1電極と第2電極が立体交差する各箇所に、紫外光放射性の半導体材料が成形されてなる紫外発光層を介在させ、各紫外発光体に対して蛍光体層を配設し、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって、紫外発光体が紫外光を放射し、対応する蛍光体層で紫外光を波長変換して放射することによって画像を表示する構成とすることによっても、軽量で薄型の画像表示装置を実現することができる。
【0014】
基板上に、上記発光素子を、1以上設けることによって、軽量で薄型の発光パネルを実現することができる。
また、上記発光素子を樹脂体で封止して発光素子パッケージを実現することもできる。
上記発光素子において、紫外発光体は、酸化亜鉛をベースとする半導体材料で形成することによって良好に実現できる。具体的には、紫外発光体を、酸化亜鉛をベースとするn型半導体からなる紫外発光層と、酸化亜鉛をベースとするp型半導体層とを積層して構成し、第1電極をp型半導体層側に、第2電極を紫外発光層側に接続することによって、紫外発光特性の良好な紫外発光体を実現することができる。
ここで紫外発光層を、亜鉛化合物に、アルミニウム、ガリウム、インジウムから選択された元素を含む添加物と、リンを含む添加物が添加された材料で形成することによって、紫外発光特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態にかかる画像表示装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】紫外発光層11とZn1-xNixOからなるp型半導体層12とをヘテロ接合した素子において、紫外発光層11及びp型半導体層12のエネルギレベルを示す図である。
【図3】紫外発光体にp型半導体層を形成する方法の一形態を示す図である。
【図4】実施例1にかかる画像表示装置2の主要部を模式的に示す平面図である。
【図5】画像表示装置2の断面を示す図である。
【図6】実施例2にかかる平面発光パネル3の外観及び構造を示す図である。
【図7】実施例3にかかる砲弾型発光素子4の構造を示す概略断面図である。
【図8】添加物を加えていない酸化亜鉛と、Znに対してGa及びPを添加したZnOについて、PL発光のスペクトルを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発光素子の基本的な構成]
基本的な発光素子1の構成、効果について説明する。
図1は、発光素子1の概略構成を示す断面図である。
基板10上に、ZnOをベースとするn型半導体材料が成形されてなる紫外発光層11と、この紫外発光層11の直上に形成されたp型半導体層12が設けられ、紫外発光層11とp型半導体層12を挟むように第1電極13及び第2電極14が設けられて紫外光放射部15が形成され、第1電極13と第2電極14との間に駆動電圧を印加することによって紫外発光層11から紫外光を放射する。この紫外光は、スペクトルにおけるピーク波長が400nm以下の電磁波である。
【0017】
第1電極13は例えばAlで形成し、第2電極は例えばITOで形成する。なお、紫外発光層11と第1電極13との間に、電子注入層を設けてもよい。
また、発光素子1においては、紫外光放射部15に隣接して蛍光体層21が形成され、この蛍光体層21は、透明な基板22で覆われている。
蛍光体層21は、上記紫外光放射部15からの紫外光を受けて可視光に変化して放射する。放射された可視光は、基板22を透過して外部に出射される。
【0018】
[紫外発光層11の材料]
紫外発光層11には、ZnOをベースとするn型の紫外発光材料が用いられる。この材料について説明する。
通常のZnO粉末に、種々の化合物粉末を単独、あるいは複合添加し、種々の条件下で熱処理してその発光特性を評価した結果、特定の元素を組み合わせてZnOに添加することによって、無添加のZnO粉末と比べて、紫外発光特性が飛躍的に改善されることを見出し、その知見に基づいて、紫外発光層11の材料として、酸化亜鉛をベースとし、第1添加物としてアルミニウム、ガリウム、インジウムの一種類以上、第二の添加物としてリンを添加したものを用いることとした。
【0019】
第1添加物は、酸化亜鉛における緑色発光を抑制し、紫外域発光をある程度改善する。また第1添加物は、酸化亜鉛の電気抵抗率を低下させる。これは、酸化亜鉛の2価の亜鉛のサイトが3価のアルミニウム、ガリウム、インジウムにより置換される事によって、伝導体直下の禁制帯中にドナーレベルが形成されるためと考えられる。
従って、第1添加物であるアルミニウム,ガリウム,インジウムは、酸化亜鉛中の亜鉛と置換される必要があり、単なる混合物では、紫外発光特性の改善効果は認められない。
【0020】
このように置換された酸化亜鉛は、電気抵抗率が、通常の酸化亜鉛と比較して1桁〜数桁低いため、発光素子に適している。
これらの3種類の元素の中で、最も亜鉛を置換しやすいのはガリウムであり、アルミニウムやインジウムは置換しにくい。その点で、ガリウムは、最も特性向上効果が現れやすく望ましい。一方、コスト面からは、アルミニウムが最も安価であり、ガリウムやインジウムは、アルミニウムに比べて希少で高価である。よってコスト面ではアルミニウムが最も望ましい。ガリウムやアルミニウムに比較すると、インジウムを用いるメリットは少ない。
【0021】
第1添加物は、単独で添加しても、紫外発光輝度の改善効果は少ないが、第1添加物に加えて、第二の添加物であるリンを添加することによって、飛躍的に紫外発光輝度が向上する。
リンの添加による発光輝度改善のメカニズムは明らかではないが、リン単独の添加では輝度改善の効果がほとんど認められないこと、リンの添加によって、アルミニウム、ガリウム、インジウムのZnサイトへの置換が促進される傾向が認められるため、アルミニウム、ガリウム、インジウムがZnのサイトを置換する事によって生じる電気的中性のくずれを、リンが陰イオンとしてZnOの酸素サイトに置換することによって防ぎ、結果として、アルミニウム、ガリウム、インジウムの置換を促進し、紫外発光輝度が向上するものと考えられる。
【0022】
上記第1添加物及び第2添加物は、酸化亜鉛の紫外発光輝度を改善する添加物であって、主成分はあくまで酸化亜鉛(亜鉛と酸素)である。すなわち、亜鉛が陽イオン中の80%以上であり、酸素が陰イオン中の80%以上であり、より望ましくは90%以上である。
第一添加物であるアルミニウムとガリウムとインジウムの合計量は、亜鉛に対して、0.03at%以上3.0at%以下とするのは、これ以下ではその効果が顕著ではなく、これ以上添加しても、さらなる輝度向上が認めらないので無駄になるためである。ただし、この合計量が0.03at%未満でも、3at%を越えても、輝度向上効果は得られる。
【0023】
亜鉛に対するリンの添加量を0.03at%以上3.0at%以下とするのが好ましい理由も同様である。なお、上記考察から、リンの添加量は、アルミニウム、ガリウム、インジウムの合計量と同程度であることが望ましいと考えられる。
以上の第一添加物及び第2添加物に加えて、さらに第三添加物として、タングステンを併用してもよい。タングステンを併用することよって、緑色発光を抑制し、紫外域における発光輝度がさらに向上する。ただし、酸化タングステンの添加による輝度向上のメカニズムは、現時点では明確とは言えない。
【0024】
なお、酸化タングステンは、緑色発光するZnO:Zn蛍光体においても、緑色発光の輝度向上や、輝度劣化防止の効果がある添加物として知られているが、その効果が発現される理由は、酸化亜鉛表面が、炭酸ガスや水分によって汚染されるのを防ぐためと考えられており、これは、緑色発光を抑制し紫外域発光を改善する本実施形態の効果と全く逆である。
【0025】
また本発明者等が検討した結果、炭酸ガスや水分を含まない窒素中で焼成した場合にはタングステンを添加しても輝度向上が認められないが、これは、タングステン併用によって輝度が向上するメカニズムが、炭酸ガスや水分で汚染されるのを防ぐことによってZnO:Znの緑色発光が向上するメカニズムとは異なることを示している。
本発明者等が検討した結果によれば、酸化タングステンの存在は、紫外発光蛍光体の合成時に作用効果を発現しているものと考えられる。
【0026】
合成時における酸化タングステンによる作用として、一つは、タングステンが、最大6価と高価数となる金属であり、且つその価数が変動しやすく、同時に拡散速度が大きいために、酸素量の調整剤として働いていることが考えられる。
また、一つの作用として、合成時に、酸化リチウム,酸化ナトリウム,酸化カリウムといったアルカリ金属酸化物が存在すると、そのアルカリ金属酸化物は、酸化亜鉛に置換固溶しその紫外発光を抑制してしまう不純物となるが、酸化タングステンが、拡散速度が大きく、且つアルカリ金属酸化物と容易に化合物を形成するので、アルカリ金属酸化物が酸化亜鉛に置換固溶するのを防ぐ作用があると考えられる。
【0027】
このように、タングステン添加による作用は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン添加による作用効果とは異なる。この作用を得るのにタングステンが酸化亜鉛に固溶している必要はなく、実際、固溶している証拠も得られていない。
亜鉛に対するタングステンの添加量を0.01at%以上1.0at%以下とするのが好ましいのは、0.01at%未満では紫外発光輝度向上効果が顕著ではなく、1.0at%を超えると紫外発光輝度が低下し始めるためである。このように輝度が低下するのは、タングステンが表面に濃縮されやすいためと考えられる。
【0028】
なお、紫外発光材料は、酸化亜鉛と、上述した2種類または3種類の添加物を含めば良いが、その特性を損なわない範囲内で、他の成分を含む事も可能である。
例えば、酸化マグネシウムは、酸化亜鉛に少量固溶し、そのバンドギャップを大きくする(すなわち、発光波長を短波長側にシフトさせる)効果があるが、この酸化亜鉛−酸化マグネシウム固溶系に対しても、上述の2種類または3種類の添加物を用いる事によって、緑色発光を抑制し、紫外発光強度を改善する効果がある。この場合、主成分としての陽イオンの量は、亜鉛とマグネシウムの合計量である。
【0029】
図8は、A(Znに対してGa及びPを1.0at%づつ添加したZnO)と、B(添加物を加えていないZnO)について、PL発光のスペクトルを測定した結果を示す図である。
当図に示すように、A(Ga,Pを添加したZnO)は、380nm付近に強い発光ピークを持っている。一方、B(無添加のZnO)は500nm付近に大きな発光ピークを持っている。
【0030】
このように、Ga,Pを添加したZnOは、400nm以下に発光ピークを持つ紫外光を効率よく発光することがわわかる。
[紫外発光材料の合成方法、紫外発光層11の成膜方法]
上記の紫外発光材料を合成する出発原料は、亜鉛化合物と、第1添加物であるアルミニウム、ガリウム、インジウムから選択された元素の化合物と、第2添加物であるリンの化合物である。
【0031】
亜鉛化合物については、酸化亜鉛ZnO、水酸化亜鉛Zn(OH)2、炭酸亜鉛ZnCO3等を用いれば良く、一般的にはZnOで良い。
第1添加物(アルミニウム、ガリウム、インジウムの1種以上)の化合物についても、それぞれ酸化物、水酸化物、炭酸塩等を出発物質として用いれば良く、一般には酸化物で良い。
【0032】
第2添加物(リン)の化合物については、酸化物を出発物質として用いることも可能であるが、一般的なリンの酸化物P25は、吸湿性が高く水分と激しく反応するため、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸塩を用いれば良い。これらのアンモニウム塩は、加熱すると、低温でアンモニアと水を放出してP25となるため、直接P25を用いるのと同じ効果が得られる。
【0033】
なお、リンの酸化物や塩を用いても、リンの酸化物自体が昇華性があり、ZnOと反応させるために加熱すると、反応前に昇華する場合があり、目的の材料組成物が得られにくいので、これを防ぐために、リンを必要量以上に過剰に添加する方法や、あるいは、予めリンと亜鉛の化合物である、リン酸亜鉛を合成して用いれば良い。
さらに望ましくは、第1添加物と第2添加物の両方を含む化合物を用いることが好ましい。その具体例として、例えば、リン化アルミニウムAlP、リン化ガリウムGaP、リン化インジウムInPが挙げられる。
【0034】
ただし、これらのリン化合物は、一般に高価であり、また水分と反応して毒性の高いリン化水素を発生する可能性もあるので、より望ましい化合物として、リン酸アルミニウム、リン酸ガリウム、リン酸インジウムが挙げられる。
このように第1添加物及び第2添加物を含む化合物を用いると、比較的少量の添加物量でも、輝度向上が顕著となる。これは、リンの蒸発が抑えられるとともに、アルミニウム、ガリウム、インジウムの最近傍にリンが存在するために、ZnOへの固溶が促進されるためと考えられる。
【0035】
上記の出発物質から紫外発光体を合成し成膜する形態として、固相法、液相法、気相法が挙げられる。
固相法では、それぞれの金属を含む原料粉末(金属酸化物、金属炭酸塩等)を混合し、混合物を、ある程度以上の温度で熱処理して反応させることによってZnOをベースとした紫外発光材料を得る。そして、この材料を溶剤に分散させて、分散液を第2電極14上に塗布することによって、紫外発光層11の成膜を行う。
【0036】
液相法では、各金属を含む溶液を作り、この溶液から固相を沈殿させる。そして、得られた固相を、第1電極13上に塗布することによって紫外発光層11の成膜を行う。
あるいは、各金属を含む溶液を、塗布した後、乾燥して、ある程度以上の温度で熱処理等を行うことによって固相とする方法で紫外発光層11の成膜を行う。
気相法では、上記の原料粉末の混合物を、蒸着、スパッタリング、CVD等の方法によって、第2電極14上に薄膜状に成膜する。
【0037】
上記いずれの方法を用いてもよいが、粉末形態の材料で紫外発光層11を形成する場合は、固相法を用いることが、比較的製造コストが低く且つ大量に製造することも容易な点で適している。
紫外発光材料を固相法で合成する場合、原料の混合物を熱処理して反応させる。また液相法や気相法で合成した場合でも、その結晶性を改善し、紫外発光輝度をより向上させるために、熱処理を行った方が良い場合が多い。
【0038】
この際、熱処理を、酸素を多く含む雰囲気で行うと、紫外発光強度が改善されにくいため、酸素を多く含む酸化性のある大気中ではなく、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガス等の中性の雰囲気下で熱処理する事が望ましい。
通常は安価な窒素ガス中で熱処理すれば良い。窒素ガスに含まれる酸素濃度としては100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより望ましい。
【0039】
紫外発光材料を合成する別の方法として、ZnO粒子にGa,Pを注入することによって、Ga,Pが添加されたZnO粒子を作製する方法もある。
そして、この方法で製造された紫外発光材料の粒子を、第1電極13上に塗布することによって、紫外発光層11を形成することもできる。
さらに、紫外発光層11を形成する別の方法として、第1電極13上にZnOを薄膜形成し、そのZnO膜にGa,Pを注入することによって、Ga,Pが添加されたZnOからなる紫外発光層11を形成する方法もある。
【0040】
[p型半導体層12の材料]
p型半導体層12は、Zn、M,Oからなるp型半導体材料で形成する(Mは、3d電子を最外殻に持ち4s軌道よりも3d軌道のエネルギレベルが高い元素であって、具体的には、Ni,Cuである)。
このp型半導体材料は、低温での成膜性に優れるので、500℃以下の比較的低い温度でも、基板上あるいはn型半導体層の上に低抵抗の薄膜を形成することができる。
【0041】
そして、このp型半導体材料を、ZnO層の上に積層することによって、p型半導体材料層とn型のZnO層とをヘテロ接合した素子を形成することができ、青色領域から紫外領域までの発光素子を形成できる。
p型半導体材料の薄膜を形成するには、ZnOとMOの混合材料を、スパッタターゲットとして、基板上あるいはZnO層などの上にスパッタリングすればよい。
【0042】
なお、この薄膜形成は、還元雰囲気で行うとn型になりやすいので、酸化性雰囲気下で行うことがp型半導体膜を形成することが好ましい。
上記組成の材料がp型半導体の性質を持つのは、3d電子を最外殻に持ち4s軌道よりも3d軌道のエネルギレベルが高い元素は、ZnOと混合されることによって、その4s軌道にホールを形成しやすいためと考えられる。
【0043】
上記p型半導体材料は、組成が、Zn1-xxO(ただし、Mは、3d電子を最外殻に持ち4s軌道よりも3d軌道のエネルギレベルが高い元素。0<x<1)で表わされるものが好ましい。Zn1-xxOは、ZnOとMOが混ざり合った酸化物であって、xは、ZnとMの合計モル数に対するMのモル数の比率である。
このp型半導体材料は、非結晶状態であってもかまわないが、優れた特性を得るために、結晶性化合物であることが望ましい。
【0044】
結晶性化合物の場合、ZnO結晶におけるZnが部分的にMに置き換わった混晶、あるいは、MO結晶におけるMが部分的にZnに置き換わった混晶でもよいし、ZnO結晶とMO結晶とが混ざり合った結晶混合体であってもよい。
p型半導体層12を形成する材料の具体例として、(1)Zn1-xNixOと(2)Zn1-xCuxOについて、以下に説明する。
【0045】
(1)Zn1-xNixOは、ZnOとNiOとが混ざり合った酸化物であって、xは、ZnとNiの合計モル数に対するNiモル数の比率である。
Zn1-xNixOは、ZnOにおけるZnが部分的にNiに置き換わった化合物、あるいは、NiOにおけるNiが部分的にZnに置き換わった化合物ということもできる。
Zn1-xNixOの結晶形としては、ZnOの結晶(ウルツ型)とNiOの結晶(NaCl型)が混合された混合形でもよいし、ZnOの結晶構造をもった混晶、あるいは、NiOの結晶構造を持った混晶であってもよい。
【0046】
Zn1-xNixO系材料は、低温で薄膜形成が可能なp型半導体であって、ZnO層の上で優れたヘテロ接合を形成することができる。
図2は、Zn1-xNixOからなるp型半導体層12とn型ZnOからなる紫外発光層11とをヘテロ接合した素子において、紫外発光層11及びp型半導体層12のエネルギレベルを示す図である。
【0047】
紫外発光層11の価電子帯トップに対して、p型半導体層12の価電子帯トップはエネルギレベルが高い(価電子帯トップがオフセットしている)。ここで、p型半導体層12を構成するZn1-xNixOにおけるxの値を大きくするほど、このオフセット量も大きくなる。
そして、このオフセット量が大きくなると、pn接合素子におけるホール注入効率や逆バイアスの耐圧が低下するので、xの値は0.65以下に設定して、価電子帯トップのオフセット量を1eV以内に抑えることが好ましく、xの値は小さい方が好ましい。
【0048】
一方、電気伝導タイプをp型とし、電気抵抗を低く抑えることを考慮すると、Zn1-XNixOにおけるXの値は0.13以上であることが好ましい。
(2)Zn1-xCuxOは、ZnOとCuOとが混合された酸化物であって、xは、ZnとCuの合計モル数に対するCuモル数の比率である。
Zn1-xCuxOは、ZnOにおけるZnが部分的にCuに置き換わった化合物ということもできる。
【0049】
Zn1-xCuxOの結晶形としては、ZnOの結晶とCuOの結晶が混ざりあった混合形でもよいし、ZnOの結晶構造をもった混晶、あるいは、CuOの結晶構造を持った混晶であってもよい。
Zn1-xCuO材料は、低温で薄膜形成が可能なp型半導体であって、ZnO層の上に優れたヘテロ接合を形成することができる。
【0050】
Zn1-xCuxO材料は、xの値が大きいほど、ZnOに対する価電子帯トップのオフセット量が大きくなり、ZnO層とpn接合素子を形成したときにホール注入効率や逆バイアスの耐圧が低下する。また、Zn1-xCuxO材料は、xの値が大きいほどバンドギャップも狭くなる。
従って、これらを良好に保つ観点からxの値を0.10以下に設定してZnOに対する価電子帯トップのオフセット量を1eV以内に抑えることが好ましく、xの値は小さい方が好ましい。
【0051】
一方、電気伝導タイプをp型にすることと、電気抵抗を小さくすることを考慮すると、Zn1-xCuxOにおけるXの値は0.05以上であることが好ましい。
なお、p型半導体層12の材料は、ZnOをベースとするp型半導体材料で形成することが好ましいが、価電子帯トップのオフセット量が1eV以内であるGaNなどのp型半導体材料であっても構わない。
【0052】
また、価電子帯トップのオフセット量が1eV以上であるNiOなどのp型半導体材料と、ZnOをベースとするn型半導体材料を形成した発光素子であっても、ホール注入効率や発光効率は低下するが、発光を確認することができる。
[p型半導体層12の形成方法]
上記のように、紫外発光層11を、粒子の塗布あるいは薄膜形成によって形成した後に、紫外発光層11の上にp型半導体層12を積層形成するが、p型半導体層12を形成する方法も、p型半導体材料をスパッタなどの方法で薄膜形成する方法と、p型半導体材料を溶媒に分散させた液を塗布して乾燥する方法とがある。
【0053】
また、その他に、以下に説明するように、イオン注入でp型半導体層12を形成する方法もある。
図3(a),(b)は、p型半導体層12をイオン注入で形成する方法を説明する図である。
図3(a)に示すように、基板10の上に第1電極13を形成し、第1電極13の上に、紫外発光材料(ZnOに、第1添加物であるアルミニウム、ガリウム、インジウムの化合物と、第2添加物であるリン化合物が含まれる)の粒子を塗布することによって紫外発光材料層11aを形成する。あるいは、紫外発光材料を薄膜形成することによって紫外発光材料層11aを形成する。
【0054】
そして、形成した紫外発光材料層11aの表面部分に、図3(a)に示すようにM(NiあるいはCu)をイオン注入する。それによって図3(b)に示すように、紫外発光材料層11aの表面部分におけるZnOのZが一部Mに置換されて、p型半導体層12が形成される。
形成されたp型半導体層12には、Zn1-xxOに、第1添加物であるアルミニウム、ガリウム、インジウムと、第2添加物であるリンが添加されている。
【0055】
また、紫外発光材料層11aのうち、Mが注入された表面部分を除く領域は、紫外発光層11となる。
なお、紫外発光材料の粒子を塗布する方法で紫外発光材料層11aを形成した場合は、p型半導体層12も粒子が凝集した形態で形成され、薄膜形成法で紫外発光材料層11aを形成した場合は、p型半導体層12も薄膜形態で形成される。
【0056】
そして、p型半導体層12の上に第2電極14などを形成することによって、発光素子1を作製することができる。
[発光素子1による効果]
発光素子1は、ZnOをベースとした紫外発光層11に、p型半導体層12がpnヘテロ接合した構造の紫外光放射部15を有し、紫外領域の光を高効率で放射することができる。
【0057】
特に、紫外発光層11を、ZnOに第1添加物(アルミニウム、ガリウム、インジウムの一種類以上)及び第二の添加物(リン)を添加した材料で形成し、p型半導体層1212をZnOをベースとしたp型半導体材料で形成することによって、紫外光を高効率で発光することができる。
そして、蛍光体層でこの紫外光を可視光に変換するので、用いる蛍光体層の種類によって幅広い色の可視光を出すことができる。
【0058】
また、紫外発光層11の価電子帯トップに対するp型半導体層12の価電子帯トップのオフセット量を1eV以内に抑えることによって駆動電圧を低く抑え、ホール注入効率や発光効率を良好に保ち、逆バイアスに対する耐圧も良好にすることができる。
また、発光素子1を構成する各層は、500℃以下の低温でも形成することができるので、基板10としてガラス基板を用いることができる。従って、発光素子1は大面積の素子に適している。
【0059】
[p型半導体層を各ZnO粒子の表面上に形成する形態]
上記図1に示したように、p型半導体層12は紫外発光層11の上に積層して形成する形態が好ましいが、紫外発光層11を構成する各ZnO粒子の表面を取り囲むようにp型半導体層を形成する形態も考えられる。
すなわち、図3(c)に示すように、ZnOをベースとする紫外発光材料からなる粒子粉末を準備して、各紫外発光粒子11cの表面にp型半導体層12aを形成する。このp型半導体層12aを形成する方法としては、ZnOをベースとする粉末バルクに対して、p型半導体材料Zn1-xxOでをスパッタリングして各紫外発光粒子11cの表面に薄膜形成してもよいし、上記粉末バルクに、M(NiあるいはCu)をイオン注入する方法で各紫外発光粒子11cの表面にp型半導体層12aを形成してもよい。
【0060】
そして、表面にp型半導体層12aを形成した紫外発光粒子11cを、第1電極13の上に塗布することによって、図3(d)に示すように、p型半導体層12a付きの紫外発光粒子11cからなる紫外発光層16を形成する。
この紫外発光層16の上に、第2電極14などを形成することによって、発光素子1を作製することができる。
【0061】
紫外発光層11、p型半導体層12と第1電極13との間にホール輸送層を設け、紫外発光層11と第2電極との間に電子輸送層を設けてもよい。
ホール輸送層、電子輸送層を設ける場合も、これらの層を微粒子(粉体)で構成してもよいし、成膜しても良い。
紫外発光層11の上にp型半導体層12を形成する代わりに、紫外発光材料からなる粒子の周囲を、Zn1-xxOで被覆し、そして、被覆した粒子を、第2電極14の上に塗布して、焼結することによって、Zn1-xxOで被覆された紫外発光材料からなる粒子で形成された紫外発光層ができる。
【0062】
[紫外発光層11が基板を兼ねる変形例]
図1に示す発光素子1において、紫外発光層11の材料となるZnO粒子(第1添加物であるアルミニウム、ガリウム、インジウム、及び第2添加物であるリンを添加したもの)を、基板状に成形すれば、紫外発光層11が基板の役割も果たすので、基板10を省略することもできる。
【0063】
例えば、上記第1添加物、第2添加物を含むZnO粒子を、加圧成型した後、焼結することによって、板状に形成する。
こうして作製された基板状の紫外発光層11の背面に第1電極13を形成し、上面にp型半導体層12及び第2電極14を形成することによって、紫外光放射部15を形成することもできる。
【実施例】
【0064】
以下に発光素子1を画像表示装置に適用した実施例1、平面発光パネルに適用した実施例2、発光素子パッケージに適用した実施例3を紹介する。
[実施例1] 画像表示装置
画像表示装置2の構成:
図4は、実施例1にかかる画像表示装置2の主要部を模式的に示す平面図であって、蛍光体層は省略して描いている。
【0065】
図5は、画像表示装置2の断面を示す図である。
画像表示装置2は、基板30の上に、横方向に伸長する第2電極34がストライプ状に設けられ、これと直交する方向に伸長するストライプ状の第1電極33が設けられ、その交差部には、紫外発光層31及びp型半導体層32が介挿されている。
このようにして、基板30上に紫外発光層31、p型半導体層32、第1電極33および第2電極34からなる紫外光放射部35が、マトリクス状に配置された構成となっている。
【0066】
紫外発光層31は、上記紫外発光層11と同様、ZnOをベースとし、第1添加物としてアルミニウム、ガリウム、インジウムの一種類以上、第二の添加物としてリンを添加した半導体材料を成膜して形成する。
p型半導体層32は、上記p型半導体層12と同様、ZnOをベースとするp型半導体材料を成膜して形成する。
【0067】
また、p型半導体層12に積層された第2電極14、及び紫外発光層11に積層された第1電極13を備える。第1電極33は、例えばAlを真空プロセスで成膜して形成し、第2電極34は、例えばITOを真空プロセスで成膜して形成する。
そして、第1電極13と第2電極14との間に駆動電圧を印加することによって紫外発光層11が波長400nm以下の紫外光を放射する。
【0068】
図5に示すように、紫外光放射部35を被覆する蛍光体層41が配設されている。
蛍光体層41は、複数種類(例えば青,緑,赤の3種類)の蛍光体の中いずれかが設けられている。
すなわち、マトリクス状に配置された紫外発光素子の各列に対して、赤色発光を行う蛍光体、緑色発光を行う蛍光体または青色発光を行う蛍光体が順に配設されている。
【0069】
各色蛍光体の例としては、次のものが挙げられる。
青 BaMgA1117:Eu2+
緑 BaO・6Al23:Mn
赤 (Y,Gd)BO3:Eu
そして、3つの紫外発光層31及び3色の蛍光体層を1組として、画像の基本単位である画素が構成されている。
【0070】
基板30は、非導電性の材料、例えば合成石英ガラスや透明なプラスチックなどの硬質材料で形成する。基板30の大きさ、厚み、形状などは、画像表示装置の目的に応じて設定すればよい。
カバー基板42は、透光性を有する材料で形成され、各蛍光体層41を覆っている。 カバー基板42には、隣り合う蛍光体層41同士を仕切る隔壁42aが設けられ、各蛍光体層41の周囲は隔壁42aによって取り囲まれている。
【0071】
画像表示装置2の駆動方法:
画像表示装置2の第1電極33及び第2電極34には、駆動部(不図示)接続され、画像表示装置2を駆動する時には、駆動部が、入力される画像データに基づいて、第2電極34に負電圧を順次印加しながら、複数の第1電極33に選択的に正電圧を印加することによって、マトリックス駆動を行う。
【0072】
それに伴って、画像表示装置2においては、画像データに基づいて、各画素の紫外発光層31で紫外光が放射され、蛍光体層41で可視光に波長変換されて、各色の可視光が放射される。このように画像表示装置2において、各画素において各色の光が発光されることによって画像表示がなされる。
画像表示装置2の製造方法:
基板30上に、第1電極33を形成し、その上に、紫外発光層31,p型半導体層32,第2電極34を順に重ねて形成することによって紫外光放射部35を形成する。
【0073】
各紫外光放射部35を覆うように蛍光体層41を形成する。
蛍光体層41は、各色蛍光体のペーストを、各紫外発放射部35上にスクーリーン印刷法、インクジェット法などで塗布し乾燥することによって形成することができる。
蛍光体層41の上からカバー基板42を覆い被せて接合することによって、画像表示装置2ができあがる。
【0074】
なお、上記製法では、各紫外光放射部35の上に蛍光体ペーストを塗布する方法で蛍光体層41を形成してカバー基板42を被せたが、カバー基板42の裏面に蛍光体ペーストを塗布する方法で蛍光体層41を形成し、それを、基板30上の紫外光放射部35の上に被せる方法で画像表示装置2を作製することもできる。
画像表示装置2による効果:
画像表示装置2によれば、各画素において、紫外光放射性の半導体材料によって紫外発光体が形成されているので、外囲器は必要なく、大画面、軽量、薄型の画像表示装置を実現できる。
【0075】
また、紫外光放射部35を、ZnOをベースとするn型半導体からなる層と、ZnOをベースとするp型半導体層とを積層して構成しているので、紫外発光特性が良好であり、良好な画像表示を実現することができる。
[実施例2] 平面発光パネル
図6(a),(b)は、実施例2にかかる平面発光パネル3の外観及び構造を示す図である。
【0076】
平面発光パネル3は、ガラスあるいは樹脂からなる基板50の上に、Al等からなる金属電極53,紫外発光層51,p型半導体層52、ITO等からなる透明電極54が順に積層されて紫外光放射部55が形成され、この紫外光放射部55を覆う透明な封止カバー56が設けられて構成されている。そして、封止カバー56の内面には蛍光体層57が配設されている。
【0077】
紫外発光層51は、上記紫外発光層11と同様、ZnOをベースとし、第1添加物としてアルミニウム、ガリウム、インジウムの一種類以上、第二の添加物としてリンを添加した半導体材料を成膜して形成し、p型半導体層52は、上記p型半導体層12と同様、ZnOをベースとするp型半導体材料を成膜して形成する。
封止カバー56は、透明電極54,紫外発光層51,p型半導体層52,金属電極53をカバーし、これらを封止している。封止カバー56の外周部には、金属電極53及び透明電極54から外方に伸びる導電リード層58,59が形成され、この導電リート゛層58,59を介して、外部から金属電極53と透明電極54との間に電力を供給できるようになっている。この導電リード層58,59は、封止カバー56の表面に、金属材料を鍍金あるいは蒸着することによって形成することができる。
【0078】
蛍光体層57は、蛍光体が封止カバー56の内面に塗布されて形成された層であって、紫外発光層51から放射される紫外光を受けて、各種発光色の可視光を放射する。
蛍光体層57を形成する蛍光体としては、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体を混ぜ合わせた混合物を用いて、白色光を放射するようにしてもよいし、単色の蛍光体を用いてもよい。
【0079】
なお、平面発光パネル3を補強するために、基板50の周縁や裏面側に、樹脂あるいは金属の枠体を設けてもよい。
平面発光パネル3の動作及び効果:
平面発光パネル3において、点灯回路(不図示)から導電リード層58と導電リード層59の間に電圧を印加すると、紫外光放射部55から紫外光が放射され、蛍光体層57で可視光に変換されて放射される。
【0080】
この平面発光パネル3によれば、紫外光放射性の半導体材料によって紫外光放射部55が形成されているので、軽量、薄型の平面発光パネルを実現できる。
また、紫外光放射部55において、ZnOをベースとするn型半導体からなる紫外発光層51と、ZnOをベースとするp型半導体層52とが積層されているので、紫外発光特性が良好であり、発光パネルとしての特性も良好なものを実現できる。
【0081】
平面発光パネル3の変形例:
上記平面発光パネル3においては、一基板上に1つの発光素子を形成したが、一基板上に複数の発光素子をマトリックス状に配列させてもよい。
その場合、複数の発光素子において共通の蛍光体を用いて同じ色を発光するようにしてもよいが、各発光素子において、別々の色を発光させてもよい。例えば、各発光素子において、赤色光、緑色光、青色光のいずれかを発光させて、全体で白色光が放射されるようにしてもよい。
【0082】
複数の発光素子を設ける場合、複数の素子同士を互いに直列接続して、点灯回路部から複数の発光素子にまとめて電流を流して点灯させることもできる。
[実施例3] 発光素子パッケージ
発光素子パッケージの一例として砲弾型発光素子について説明する。
図7は、実施例3にかかる砲弾型発光素子4の構造を示す概略断面図である。
【0083】
図7に示すように、砲弾型発光素子4は、リードワイヤ61,62を備え、リードワイヤ61の上部に反射カップ部61aが形成されている。
そして、この反射カップ部61aの凹部内に、紫外光放射部60が装着されている。
紫外光放射部65は、上で説明した紫外光放射部15と同様の構造のLEDチップであって、ZnOをベースとする紫外発光層及びp型半導体層が一対の電極で挟まれて構成されている。
【0084】
そして、紫外光放射部65の一方の電極が、ボンディングワイヤ63によって反射カップ部61aと電気接続され、他方の電極がボンディングワイヤ64によって、リードワイヤ62に電気接続されている。
反射カップ部61aの凹部には、蛍光体が分散された透明樹脂が充填されて封止部66が形成されている。この封止部66は、紫外光放射部65の周りを全体的に被覆している。
【0085】
さらに、反射カップ部61a、封止部66、リードワイヤ62の上部を覆うように、封止部67が設けられている。封止部67は、透明な樹脂が砲弾形に成形されたもので、先端部がレンズ形状となっている。
上記封止部66,67を形成する封止体としては、シリコーン樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂あるいはガラス等の透明材料であっても良い。封止部66,67には同種の樹脂を用いることが、製造の容易さ及び接着性の面で好ましい。
【0086】
砲弾型発光素子4による効果:
リードワイヤ61,62の間に電圧を印加すると、紫外光放射部60から紫外光が放射され、蛍光体層57で可視光に変換されて砲弾型発光素子4の外に放射される。
この砲弾型発光素子4によれば、紫外光放射部65を、ZnOをベースとするn型半導体からなる層と、ZnOをベースとするp型半導体層とを積層して構成しているので、紫外発光特性が良好であり、砲弾型発光素子4における発光特性も良好なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように本発明による発光素子は、画像表示装置、平面発光パネル、砲弾型発光素子などに利用できる。特に、画像表示装置に適用することによって、軽量、大画面、薄型で、且つ高品位画質で画像表示できる装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 発光素子
2 画像表示装置
3 平面発光パネル
4 砲弾型発光素子
10 基板
11 紫外発光層
11a 紫外発光材料層
11c 紫外発光粒子
12 p型半導体層
13 第1電極
14 第2電極
15 紫外光放射部
30 基板
31 紫外発光層
32 p型半導体層
33 第1電極
34 第2電極
35 紫外光放射部
41 蛍光体層
42 カバー基板
42a 隔壁
50 基板
51 紫外発光層
52 p型半導体層
53 金属電極
54 透明電極
55 紫外光放射部
56 封止カバー
57 蛍光体層
60 紫外光放射部
61,62 リードワイヤ
61a 反射カップ部
65 紫外光放射部
66,67 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光放射性の半導体材料からなる紫外発光体と、前記紫外発光体に対して電気的に接続された第1電極および第2電極とを備え、前記第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって前記紫外発光体が紫外光を放射する紫外光放射部と、
前記紫外光放射部からの放射領域に蛍光体が配設されてなり、前記紫外光放射部から放射される紫外光を波長変換して放射する蛍光体部とを備える発光素子。
【請求項2】
前記紫外発光体は、
p型半導体層と、酸化亜鉛をベースとするn型半導体材料からなる紫外発光層とが積層されて構成され、
前記第1電極は前記p型半導体層側に、前記第2電極は前記n型半導体層側に接続されている請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
前記紫外発光層は、酸化化合物に、アルミニウム、ガリウム、インジウムから選択された元素を含む添加物と、リンを含む添加物が添加された材料で形成されている請求項2記載の発光素子。
【請求項4】
前記p型半導体層は、
酸化亜鉛をベースとするp型半導体材料で形成されている請求項2記載の発光素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の発光素子が、複数個、基板上に配列されてなる画像表示装置。
【請求項6】
基板上に、ストライプ状に伸長して配された複数の第1電極と、ストライプ状に伸長し前記第1電極に対して立体交差して配された複数の第2電極とを備え、
前記第1電極と第2電極が立体交差する各箇所に、紫外光放射性の半導体材料が成形されてなる紫外発光層が介在し、各紫外発光体に対して蛍光体層が配設され、
前記第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって、前記紫外発光体が紫外光を放射し、対応する蛍光体層で紫外光を波長変換して放射することによって画像を表示する画像表示装置。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜4のいずれか記載の発光素子が、1以上設けられてなる発光パネル。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか記載の発光素子が封止体で封止されてなる発光素子パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−4530(P2013−4530A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130467(P2011−130467)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】