発光装置およびプロジェクター
【課題】放射パターンが良好で、高出力かつ小型化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる発光装置を提供する。
【解決手段】第1利得領域160は垂線Pに対して一方側に傾いて第1面130と接続され、第2利得領域170は垂線Pに対して他方側に傾いて第1面130と接続され、第3利得領域180は第1利得領域160または第2利得領域170に沿って形成されている。第1利得領域160および第2利得領域170は、同じ傾きで第2面132と接続され、第1利得領域160の端面190と第2利得領域170の端面192とは、第1面130において重なり、第1利得領域160は第1の曲率を備えた第1利得部分162を有し、第2利得領域170は第2の曲率を備えた第2利得部分172を有し、第3利得領域180において共振する光は、第1利得領域160または第2利得領域170を導波する光に結合し第2面132から出射される。
【解決手段】第1利得領域160は垂線Pに対して一方側に傾いて第1面130と接続され、第2利得領域170は垂線Pに対して他方側に傾いて第1面130と接続され、第3利得領域180は第1利得領域160または第2利得領域170に沿って形成されている。第1利得領域160および第2利得領域170は、同じ傾きで第2面132と接続され、第1利得領域160の端面190と第2利得領域170の端面192とは、第1面130において重なり、第1利得領域160は第1の曲率を備えた第1利得部分162を有し、第2利得領域170は第2の曲率を備えた第2利得部分172を有し、第3利得領域180において共振する光は、第1利得領域160または第2利得領域170を導波する光に結合し第2面132から出射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode、以下「SLD」ともいう)は、通常の発光ダイオード同様にインコヒーレント性を示し、かつ広帯域なスペクトル形状を示しながら、光出力特性では半導体レーザー同様に単一の素子で数百mW程度までの出力を得ることが可能な半導体発光素子である。
【0003】
SLDは、例えばプロジェクターの光源として用いられるが、小型かつ高輝度なプロジェクターを実現するためには、光出力が大きくかつエテンデュの小さな光源を用いる必要がある。それには、複数の利得領域から出射される光が、同一の方向に進むことが望ましい。特許文献1では、直線状の形状を有する利得領域と、円弧の形状を有する利得領域と、を組合せることによって、2つの利得領域の出射面から出射される光を、同一の方向に進行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−192603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学系の損失低減と部品点数の削減とのため、SLDをライトバルブの直下に配置し、レンズアレイを用いて集光と均一照明とを同時に行う方式のプロジェクターが提案されている。このような方式のプロジェクターでは、レンズアレイの間隔に合わせて、出射面を配置する必要がある。
【0006】
特許文献1に記載された技術において、レンズアレイに合わせて、2つの出射面の間隔を大きく形成する方法としては、例えば、直線状の利得領域を出射面の垂線に対して大きく傾けることが考えられる。しかしながら、このような方法では、直線状の利得領域に発生する光の出射面に対する入射角が大きくなり、放射パターンが悪化することがある。その結果、ライトバルブを均一に照明することが困難となることがある。
【0007】
また、2つの出射面の間隔を大きく形成する別の方法として、利得領域の全長を大きくすることが考えられる。しかしながら、利得領域の全長が大きくなると、一般的に、高出力化を図ることはできるが、反転分布を得るために多大な電流を流さなくてはならず、その結果、所定の光出力以上で用いなければ、高効率化を図ることができない。すなわち、所定の光出力未満では発光効率が低下する。発光効率が悪化すると、発光装置から排熱することが難しくなるため、例えば小型のプロジェクターの実現が困難となる。さらに、利得領域の全長が大きくなると、素子全体の面積が大きくなり、資源の無駄や製造コストの増大などの問題が生じる。
【0008】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、複数の出射面の間隔を大きく形成することができる発光装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記発光装置を有するプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる発光装置は、第1層、第2層、および前記第1層と前記第2層とに挟まれた第3層を有する積層体を含み、前記第3層は、光を発生させ、かつ光が導波する、第1利得領域、第2利得領域および第3利得領域を有し、前記第1層および前記第2層は、前記第1利得領域、第2利得領域および前記第3利得領域に発生する光の漏れを抑制する層であり、前記第3層は、前記積層体の外形を形成し、互いに対向する第1面および第2面を有し、前記第1利得領域および前記第2利得領域に発生する光の波長帯において、前記第1面の反射率は、前記第2面の反射率よりも高く、前記第1利得領域および前記第2利得領域は、前記第1面から前記第2面まで設けられ、前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記第1面の垂線に対して一方側に傾いて前記第1面と接続し、前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記垂線に対して他方側に傾いて前記第1面と接続し、前記第1利得領域と前記第2利得領域とは、前記積層体の積層方向から見て、同じ傾きで傾いて前記第2面と接続し、前記第1利得領域の前記第1面側の端面と、前記第2利得領域の前記第1面側の端面とは、前記第1面において重なっており、前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第1の曲率を備えた第1利得部分を有し、前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第2の曲率を備えた第2利得部分を有し、前記第1利得領域または前記第2利得領域に沿って、第3利得領域が形成され、前記第3利得領域を導波する前記光は、前記第3利得領域内で共振し、前記第3利得領域内で共振する前記光は、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光に結合して、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波し、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光は、前記第1利得領域または前記第2利得領域の前記第2面側の端面から出射されることを特徴とする。
【0011】
このような発光装置によれば、第1利得領域および第2利得領域を導波する光の第2面に対する入射角を大きくすることなく、第1利得領域の第2面側の端面と、第2利得領域の第2面側の端面と、の間隔(出射面の間隔)を大きく形成することができる。これにより、出射光の放射パターンが歪むことを抑制することができ、例えば発光装置をプロジェクターの光源に用いた場合に、ライトバルブを均一に照明することができる。
【0012】
さらに、このような発光装置によれば、第1面から第2面まで直線状である利得領域を用いた例に比べて、出射面の間隔を大きく形成するために、利得領域の全長を大きくしなくてよい。そのため、多大な電流を流す必要はなく、消費電力を抑えることができる。これにより、発光装置からの排熱も容易となるため、例えばプロジェクターの光源に用いた場合に、プロジェクターの筐体サイズの小型化を図ることができる。さらに、利得領域の全長を大きくしなくてよいので、発光装置全体の小型化を図ることができる。そのため、資源が無駄となることもなく、製造コストを抑えることができる。
【0013】
さらに、このような発光装置によれば、第1利得領域または第2利得領域に沿って、第3利得領域が形成されている。第3利得領域に発生した光は、第3利得領域において共振する間に、第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合する。この結合した光は、第1利得領域および第2利得領域を導波し、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射される。すなわち、第3利得領域を形成しない場合と同じ出射面間隔でありながら、第3利得領域を形成しない場合と比較して、高出力化を図ることができる。そのため、例えばプロジェクターの光源に用いた場合に、プロジェクターの高輝度化を図ることができる。
【0014】
以上のように、このような発光装置では、放射パターンが良好で、小型化かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0015】
[適用例2]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域は、前記垂線に対して第1角度で傾いて前記第1面と接続し、前記第2利得領域は、前記垂線に対して第2角度で傾いて前記第1面と接続し、前記第1角度と前記第2角度とは、臨界角以上であって、同じ大きさであることが好ましい。
【0016】
このような発光装置によれば、第1面は、第1利得領域および第2利得領域に発生する光を、全反射させることができる。したがって、第1面における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。
【0017】
[適用例3]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域は、前記第1利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第3利得部分を有し、前記第2利得領域は、前記第2利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第4利得部分を有することが好ましい。
【0018】
このような発光装置によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0019】
[適用例4]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域は、前記第1面から前記第1利得部分まで、直線状に設けられた第5利得部分を有し、前記第2利得領域は、前記第1面から前記第2利得部分まで、直線状に設けられた第6利得部分を有することが好ましい。
【0020】
このような発光装置によれば、第1利得領域において発生し第1面において反射する光を、より確実に第2利得領域に入射させ、第2利得領域において発生し第1面において反射する光を、より確実に第1利得領域に入射させることができる。
【0021】
[適用例5]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得部分および前記第2利得部分は、前記積層体の積層方向から見て、円弧の形状を有することが好ましい。
【0022】
このような発光装置によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0023】
[適用例6]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、端面反射型の光共振器であってもよい。
【0024】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光を、第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合させ、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0025】
[適用例7]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、分布帰還型の光共振器であってもよい。
【0026】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光を、より確実に第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合させ、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0027】
[適用例8]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、分布反射型の光共振器であってもよい。
【0028】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する多数の共振モードの光を、より確実に第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合させ、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化すると同時に、インコヒーレント性の向上を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0029】
[適用例9]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、前記第1利得領域または前記第2利得領域との距離は一定であることが好ましい。
【0030】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光は、効率よく第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合することができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0031】
[適用例10]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域と、前記第1利得領域または前記第2利得領域とは平行であることが好ましい。
【0032】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光は、効率よく第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合することができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0033】
[適用例11]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、複数形成されていることが好ましい。
【0034】
このような発光装置によれば、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0035】
[適用例12]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有することが好ましい。
【0036】
このような発光装置によれば、第3利得領域において発生する光を、より確実に第3利得領域において共振させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0037】
[適用例13]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域および前記第2利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有することが好ましい。
【0038】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振し、第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合した光を、より確実に第1利得領域および第2利得領域を導波させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0039】
[適用例14]上記適用例にかかる発光装置において、前記第2層の前記第3層側とは反対側に第4層が形成され、前記第1層に電気的に接続された第1電極と、前記第2層に電気的に接続され、前記第4層と接する第2電極とを有し、前記第1利得領域、前記第2利得領域および前記第3利得領域の形状は、前記第4層と前記第2電極との接触面の形状と同じであり、前記第4層は、前記第2電極とオーミックコンタクトする層であることが好ましい。
【0040】
このような発光装置によれば、発光装置の抵抗を小さくすることができる。これにより、消費電力を抑えることができ、発光装置からの排熱が容易となる。そのため、例えばプロジェクターの光源に用いた場合に、プロジェクターの筐体サイズの小型化を図ることができる。
【0041】
なお、本発明に係る記載では、「電気的に接続」という文言を、例えば、「特定の部材(以下「A部材」という)に「電気的に接続」された他の特定の部材(以下「B部材」という)」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、A部材とB部材とが、直接接して電気的に接続されているような場合と、A部材とB部材とが、他の部材を介して電気的に接続されているような場合とが含まれるものとして、「電気的に接続」という文言を用いている。
【0042】
[適用例15]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1面は、劈開面であることが好ましい。
【0043】
このような発光装置によれば、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって形成する場合に比べて、精度よく第1面を形成することができ、端面における光散乱を小さくすることができる。したがって、第1面における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。
【0044】
[適用例16]本適用例にかかるプロジェクターは、上記適用例に記載の発光装置と、前記発光装置から出射された光を集光するマイクロレンズと、前記マイクロレンズによって集光された光を、画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置によって形成された画像を投射する投射装置と、を含むことを特徴とする。
【0045】
このようなプロジェクターの構成によれば、小型かつ高輝度化が図られたプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図2】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係る発光装置の溝部を模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態の第1変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図7】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図8】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図11】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図12】本実施形態の第4変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図13】本実施形態の第4変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図14】本実施形態の第3変形例に係る発光装置と本実施形態の第4変形例に係る発光装置から出力される光のスペクトル形状を模式的に示す図。
【図15】本実施形態の第5変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図16】本実施形態の第6変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図17】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【図18】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【図19】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す図。
【図20】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す断面図。
【図21】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す断面図。
【図22】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
(1.発光装置)
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す図1のII−II線断面図である。図3は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示し、図1の溝部を説明する断面図である。なお、図1では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0049】
以下では、発光装置100がInGaAlP系(赤色)の発光素子である場合について説明する。発光装置100は、SLDを構成する領域と、光共振器を構成する領域とからなる。SLDは、半導体レーザーと異なり、広帯域な発光スペクトルを有することにより、スペックルノイズを低減することができる。
【0050】
発光装置100は、図1および図2に示すように、積層体120と、第1電極112と、第2電極114と、を含むことができる。
【0051】
積層体120は、基板102と、第1層104(以下「第1クラッド層104」ともいう)と、第3層106(以下「活性層106」ともいう)と、第2層108(以下「第2クラッド層108」ともいう)と、第4層110(以下「コンタクト層110」ともいう)と、絶縁層116と、を有することができる。積層体120の形状は、例えば直方体(立方体である場合を含む)などである。
【0052】
基板102としては、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaAs基板などを用いることができる。
【0053】
第1クラッド層104は、基板102上に形成されている。第1クラッド層104としては、例えば、n型のInGaAlP層などを用いることができる。なお、図示はしないが、基板102と第1クラッド層104との間に、バッファー層が形成されていてもよい。バッファー層としては、例えば、n型のGaAs層、AlGaAs層、InGaP層などを用いることができる。バッファー層は、その上方に形成される層の結晶性を向上させることができる。
【0054】
活性層106は、第1クラッド層104上に形成されている。活性層106は、第1クラッド層104と第2クラッド層108とに挟まれている。活性層106は、例えば、InGaPウェル層とInGaAlPバリア層とから構成される量子井戸構造を3つ重ねた多重量子井戸(MQW)構造を有する。
【0055】
活性層106の形状は、例えば直方体(立方体である場合を含む)などである。活性層106の平面形状は、例えば、積層体120の平面形状と同じである。活性層106は、図1に示すように、第1面130、第2面132、第3面134、および第4面136を有することができる。面130,132,134,136は、活性層106の面のうち、第1クラッド層104または第2クラッド層108と面状には接していない面であり、積層体120の外形を形成している面である。面130,132,134,136は、活性層106の側面ともいえ、平坦な面である。第1面130および第2面132は、互いに対向しており、図示の例では平行である。第3面134および第4面136は、第1面130および第2面132に接続する面であって、互いに対向しており、図示の例では平行である。
【0056】
第1面130は、劈開によって形成された劈開面である。第2面132は、第1面130に対向していれば、形成方法は特に限定されないが、例えば第2面132も劈開面とすることで、容易に第1面130に対向させることができる。
【0057】
活性層106の一部は、第1利得領域160、第2利得領域170および第3利得領域180を構成している。利得領域160,170,180は、光を発生させることができる。利得領域160,170において発生した光は、利得領域160,170内を、利得を受けつつ導波することができる。利得領域180において発生した光は、利得領域180内で共振する間に、利得領域160,170を導波する光に結合し、利得領域160,170内を導波することができる。
【0058】
利得領域160,170は、図1に示すように、第1面130から第2面132まで設けられている。すなわち、第1利得領域160は、第1面130に設けられた第1端面190と、第2面132に設けられた第2端面191と、を有する。第2利得領域170は、第1面130に設けられた第3端面192と、第2面132に設けられた第4端面193と、を有する。
【0059】
第1利得領域160の第1端面190と、第2利得領域170の第3端面192とは、第1面130において重なっている。図示の例では、第1端面190と第3端面192とは、完全に重なっている。一方、第1利得領域160の第2端面191と、第2利得領域170の第4端面193とは、第2面132において、間隔Dで離間している。
【0060】
第1利得領域160は、図1に示すように積層体120の積層方向から見て(平面視において)、第1面130の垂線Pに対して一方側(例えば第3面134側)に傾いて第1面130と接続している。より具体的には、第1利得領域160は、垂線Pに対して、第1角度α1で傾いて第1面130と接続している。第2利得領域170は、平面視において、垂線Pに対して他方側(例えば第4面136側)に傾いて第1面130と接続していている。より具体的には、第2利得領域170は、垂線Pに対して、第2角度α2で傾いて第1面130と接続している。
【0061】
なお、第1角度α1は、第1利得領域160に発生する光の第1面130に対する入射角であるともいえ、第2角度α2は、第2利得領域170に発生する光の第1面130に対する入射角であるともいえる。
【0062】
図示の例では、第1角度α1と第2角度α2とは、同じ大きさの鋭角であり、臨界角以上である。これにより、第1面130は、利得領域160,170に発生する光を、全反射させることができる。
【0063】
第1利得領域160と第2利得領域170とは、同じ傾きで傾いて第2面132と接続している。より具体的には、利得領域160,170は、垂線Pに対して第3角度βで傾いて第2面132と接続している。第3角度βは、鋭角であって臨界角より小さい角度であれば、0度であってもよい。これにより、第1利得領域160の第2端面191から出射される光20と、第2利得領域170の第4端面193から出射される光22とは、同一の方向に進むことができる。端面191,193は、出射面であるといえる。
【0064】
なお、第3角度βは、利得領域160,170に発生する光の第2面132に対する入射角であるともいえる。
【0065】
以上のとおり、角度α1,α2を臨界角以上とし、角度βを臨界角より小さくすることにより、利得領域160,170に発生する光の波長帯において、第1面130の反射率を、第2面132の反射率より高くすることができる。すなわち、第1面130は、反射面となることができ、第2面132は、出射面となることができる。
【0066】
なお、図示はしないが、例えば、第1面130を反射膜で覆い、第2面132を反射防止膜で覆ってもよい。これにより、利得領域160,170に発生する光の波長帯において、第1面130の反射率を、第2面132の反射率より高くすることもできる。反射膜および反射防止膜としては、SiO2層、Ta2O5層、Al2O3層、TiN層、TiO2層、SiON層、SiN層や、これらの多層膜などを用いることができる。
【0067】
さらに、第3角度βが0度より大きい角度であるか、第2面132が反射防止膜で覆われているか、少なくともいずれかであることができる。これにより、第2端面191と第4端面193との間で、利得領域160,170に発生する光を、多重反射させないことができる。その結果、直接的な共振器を構成させないことができるため、利得領域160,170に発生する光のレーザー発振を抑制または防止することができる。すなわち、利得領域160および170は、SLD領域を構成することができる。仮に、第3角度βが0度かつ第2面が反射防止膜で覆われていない場合、第1面130を経由して、端面191,193間で、光が多重反射し、共振器が構成される場合がある。
【0068】
第1利得領域160は、第1利得部分162を有する。同様に、第2利得領域170は、第2利得部分172を有する。
【0069】
第1利得部分162および第2利得部分172は、例えば、第1面130と接続している。すなわち、第1利得部分162は、第1利得領域160の第1端面190を構成し、第2利得部分172は、第2利得領域170の第3端面192を構成している。
【0070】
第1利得部分162は、図1に示すように平面視において、第1の曲率を備えた形状である。第2利得部分172は、平面視において、第2の曲率を備えた形状である。第1の曲率と第2の曲率とは、同じ値であってもよし、異なる値であってもよい。図示の例では、第1利得部分162および第2利得部分172は、円弧の形状を有し、同じ曲率半径を有している。第2利得部分172の円弧の長さは、図1に示すように、第1利得部分162の円弧の長さより小さくてもよい。例えば、第1利得部分162は、点O1を中心とする円弧の形状を有し、第2利得部分172は、点O2を中心とする円弧の形状を有する。点O1は、端面190,192を通る垂線Pに対して、第4面136側に位置し、点O2は、該垂線Pに対して、第3面134側に位置している。
【0071】
利得領域160,170に発生する光は、利得部分162,172を含む積層体120の垂直断面の有効屈折率(以下、単に「利得部分162,172の有効屈折率」という)と、利得領域160,170を避けた積層体120の垂直断面の有効屈折率(以下、単に「利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率」という)と、の差により、円弧状の利得部分162,172内を進行することができる。
【0072】
利得部分162,172の曲率半径は、利得部分162,172の有効屈折率と、利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差によるが、例えば、800μm以上である。利得部分162,172の曲率半径が、800μm未満であると、効率よく利得部分162,172内の光を導波させることができない場合がある。好ましくは、利得部分162,172の曲率半径は、1600μm程度である。これにより、不必要に発光装置100全体を大きく形成することなく、効率よく利得部分162,172内の光を導波させることができる。
【0073】
第1利得領域160は、さらに、第3利得部分164を有することができる。同様に、第2利得領域170は、さらに、第4利得部分174を有することができる。
【0074】
第3利得部分164は、第1利得部分162から第2面132まで、直線状に設けられている。すなわち、第3利得部分164は、第1利得領域160の第2端面191を構成している。第3利得部分164は、円弧状の第1利得部分162と滑らかに接続されている。例えば、第3利得部分164は、利得部分162,164の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。第3利得部分164は、垂線Pに対して、第3角度β(0度を含む)で傾斜している。
【0075】
第4利得部分174は、第2利得部分172から第2面132まで、直線状に設けられている。すなわち、第4利得部分174は、第2利得領域170の第4端面193を構成している。第4利得部分174は、円弧状の第2利得部分172と滑らかに接続されている。例えば、利得部分174は、利得部分172,174の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。第4利得部分174は、垂線Pに対して、第3角度β(0度を含む)で傾斜している。第3利得部分164および第4利得部分174は、互いに平行である。第4利得部分174の長さは、図1に示すように、第3利得部分164の長さより大きくてもよい。
【0076】
第3利得領域180は、第1利得領域160の第3利得部分164、または第2利得領域170の第4利得部分174に沿って、第5端面195から第6端面196まで直線状に設けられている。図1の例では、2つの第3利得領域180が形成されているが、その数は特に限定されない。図1の例では、第1利得領域に沿って、積層体120の積層方向から見て(平面視において)第1利得領域の第4面側と、第2利得領域に沿って第2利得領域の第3面側とに、第3利得領域180が形成されている。
【0077】
第5端面195および第6端面196は、少なくとも後述のコンタクト層110および第2クラッド層108の一部から構成される面である。第5端面195および第6端面196は、第1溝部150および第2溝部152を作製することにより、形成されることができる。第3利得領域180において発生する光は、第3利得領域180の有効屈折率と、第1溝部および第2溝部を含む積層体120の垂直断面における有効屈折率(以下、単に「溝部150,152の有効屈折率」という)と、の差により、反射されることができる。
【0078】
第5端面195および第6端面196は、積層体120の積層方向から見て(平面視において)、第3利得領域180の延伸方向に対して垂直に形成されていることができる。これにより、第5端面195と第6端面196との間で、第3利得領域180に発生する光を、多重反射させることができる。すなわち、第3利得領域180は、光共振器を構成することができる。第3利得領域180において発生した光は、利得領域180内で共振する間に、利得領域160,170を導波する光に結合し、利得領域160,170内を導波することができる。
【0079】
なお、第5端面195と第6端面196との間で効率よく光を共振させるためには、第5端面195および第6端面196の反射率が高いことが望ましい。第3利得領域の有効屈折率と、溝部150,152の有効屈折率と、の間に所定の差を設けることにより、光を反射させていることを考慮すると、第5端面195は、コンタクト層110および第2クラッド層108だけでなく、活性層106、第1クラッド層104、および基板102の一部からも構成されていることが望ましい。
【0080】
図1の例では、第3利得領域180は、第2面132に対して、第3利得部分164および第4利得部分174と、同じ傾きで傾いて形成されている。言い換えれば、第3利得領域180は、第3利得部分164および第4利得部分174に平行に設けられている。より具体的には、利得領域180は、第2面の垂線Pに対して第3角度β(0度を含む)で傾いて形成されている。これにより、第3利得領域180で発生し、第3利得領域180内で共振する光は、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に、効率よく結合することができる。
【0081】
なお、第3利得領域180内で共振する光を、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に、効率よく結合させるためには、第1利得領域160および第2利得領域170と、それに沿って形成される第3利得領域180と、の間の距離Lは、利得領域および利得領域を避けた部分の有効屈折率にも依るが、例えば100nmから利得領域の幅(数μmから数十μm)の2倍程度である。例えば、距離Lが100nmより小さいと、第1利得領域および第2利得領域内を進行している光も、共振してしまう場合がある。距離Lが利得領域の幅の2倍よりも大きいと、十分な結合が生じない場合がある。
【0082】
結合した光は、利得領域160,170内を、利得を受けつつ導波し、第2面132に設けられた第2端面191および第4端面193から出射することができる。すなわち、第2面132は、第1利得領域160および第2利得領域170に発生する光の出射面であると同時に、第3利得領域180に発生する光の出射面となることができる。
【0083】
なお、第3利得領域180は、第1利得領域160の第3面側や第2利得領域170の第4面側に形成されていてもよい。また、第3利得領域は、1つしか形成されていなくてもよいし、第1利得領域160および第2利得領域のそれぞれに沿って、第3面側と第4面側の両方に形成されていてもよい。複数の第3利得領域を形成することで、発光装置100を高出力化することができる。
【0084】
第1利得領域160に沿って形成される第3利得領域の数と、第2利得領域170に沿って形成される第3利得領域の数とは、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、複数の第3利得領域の長さは、互いに異なっていてもよいし、全て同一の長さであってもよい。第1利得領域160に沿って形成される第3利得領域の数および長さと、第2利得領域170に沿って形成される第3利得領域の数および長さを等しくすることにより、第2端面191から出射される光20の強度と、第4端面193から出射される光22の強度を近づけることができる。
【0085】
第2クラッド層108は、図2に示すように、活性層106上に形成されている。第2クラッド層108としては、例えば、第2導電型(例えばp型)のInGaAlP層などを用いることができる。
【0086】
例えば、p型の第2クラッド層108、不純物がドーピングされていない活性層106、およびn型の第1クラッド層104により、pinダイオードが構成される。第1クラッド層104および第2クラッド層108の各々は、活性層106よりも禁制帯幅が大きく、屈折率が小さい層である。活性層106は、光を発生させ、かつ光を増幅しつつ導波させる機能を有する。第1クラッド層104および第2クラッド層108は、活性層106を挟んで、注入キャリア(電子および正孔)並びに光を閉じ込める機能(光の漏れを抑制する機能)を有する。
【0087】
発光装置100は、第1電極112と第2電極114との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、活性層106の利得領域160,170,180において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。この生じた光を起点として、連鎖的に誘導放出が起こり、利得領域160,170,180内で光の強度が増幅される。
【0088】
例えば、図1に示すように、第1利得領域160に生じる光の一部10は、第1利得領域160内で増幅された後、第1面130において反射して、第2利得領域170の第4端面193から光22として出射されるが、反射後の第2利得領域170内においても光強度が増幅される。同様に、第2利得領域170に生じる光の一部は、第2利得領域170内で増幅された後、第1面130において反射して、第1利得領域160の第2端面191から光20として出射されるが、反射後の第1利得領域160内においても光強度が増幅される。
【0089】
なお、第1利得領域160に発生する光には、直接、第2端面191から光20として出射されるものもある。同様に、第2利得領域170に発生する光には、直接、第4端面193から光22として出射されるものもある。これらの光も同様に各利得領域160,170内において増幅される。
【0090】
また、第1利得領域160に沿って形成された第3利得領域180に発生する光は、第3利得領域180内において、第5端面195と第6端面196の間で多重反射を繰り返しつつ増幅された後、第1利得領域160内を導波する光に結合する。結合した光の一部は、第1利得領域160内で増幅された後、第1面130において反射して、第2利得領域170の第4端面193から光22として出射されるが、反射後の第2利得領域170内においても光強度が増幅される。結合した光には、第2端面191から光20として出射されるものもあるが、これらの光も同様に第1利得領域160内において増幅される。
【0091】
同様に、第2利得領域170に沿って形成された第3利得領域180に発生する光は、第3利得領域180内において、第5端面195と第6端面196の間で多重反射を繰り返しつつ増幅された後、第2利得領域170内を導波する光に結合する。結合した光の一部は、第2利得領域170内で増幅された後、第1面130において反射して、第1利得領域160の第2端面191から光20として出射されるが、反射後の第1利得領域160内においても光強度が増幅される。結合した光には、第4端面193から光22として出射されるものもある。これらの光も同様に第2利得領域170内において増幅される。
【0092】
コンタクト層110は、図2に示すように、第2クラッド層108上に形成されている。すなわち、コンタクト層110は、第2クラッド層108の活性層106側とは反対側に形成されているといえる。コンタクト層110は、第2電極114とオーミックコンタクトすることができる。コンタクト層110の上面113は、コンタクト層110と第2電極114との接触面であるといえる。コンタクト層110としては、例えば、p型のGaAs層などを用いることができる。
【0093】
コンタクト層110と、第2クラッド層108の一部とは、柱状部111を構成することができる。柱状部111の平面形状は、利得領域160,170,180の平面形状と同じである。すなわち、コンタクト層110の上面113の平面形状は、利得領域160,170,180の平面形状と同じであるといえる。例えば、柱状部111の平面形状によって、電極112,114間の電流経路が決定され、その結果、利得領域160,170,180の平面形状が決定される。なお、図示はしないが、柱状部111の側面を傾斜させることもできる。
【0094】
絶縁層116は、第2クラッド層108上であって、柱状部111の側方に形成されている。絶縁層116は、柱状部111の側面に接していることができる。絶縁層116の上面は、例えば、コンタクト層110の上面113と連続している。絶縁層116としては、例えば、SiN層、SiO2層、SiON層、Al2O3層、ポリイミド層などを用いることができる。
【0095】
絶縁層116として上記の材料を用いた場合、電極112,114間の電流は、絶縁層116を避けて、該絶縁層116に挟まれた柱状部111を流れることができる。絶縁層116は、活性層106の屈折率よりも小さい屈折率を有することができる。この場合、絶縁層116を形成した部分の垂直断面の有効屈折率は、絶縁層116を形成しない部分、すなわち、柱状部111が形成された部分の垂直断面の有効屈折率よりも小さくなる。これにより、平面方向において、利得領域160,170,180内に効率良く光を閉じ込めることができる。なお、図示はしないが、絶縁層116を設けないこともできる。絶縁層116が空気であると解釈してもよい。
【0096】
第1電極112は、基板102の下の全面に形成されている。第1電極112は、該第1電極112とオーミックコンタクトする層(図示の例では基板102)と接していることができる。第1電極112は、基板102を介して、第1クラッド層104と電気的に接続されている。第1電極112は、発光装置100を駆動するための一方の電極である。第1電極112としては、例えば、基板102側からCr層、AuGe層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。
【0097】
なお、第1クラッド層104と基板102との間に、第2コンタクト層(図示せず)を設け、ドライエッチングなどにより該第2コンタクト層を露出させ、第1電極112を第2コンタクト層上に設けることもできる。これにより、片面電極構造を得ることができる。この形態は、基板102が絶縁性である場合に特に有効である。
【0098】
第2電極114は、コンタクト層110の上面113に接して形成されている。さらに、第2電極114は、図2に示すように、絶縁層116上に形成されていてもよい。第2電極114は、コンタクト層110を介して、第2クラッド層108と電気的に接続されている。第2電極114は、発光装置100を駆動するための他方の電極である。第2電極114としては、例えば、コンタクト層110側からCr層、AuZn層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。
【0099】
以上、本実施形態に係る発光装置100の一例として、InGaAlP系の場合について説明したが、発光装置100は、発光利得領域が形成可能なあらゆる材料系を用いることができる。半導体材料であれば、例えば、AlGaN系、GaN系、InGaN系、GaAs系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、ZnCdSe系などの半導体材料を用いることができる。
【0100】
また、以上の例では、いわゆる屈折率導波型の発光装置100について説明した。発光装置100は、いわゆる利得導波路型でもよい。より具体的には、利得領域160,170,180のうちの一つまたは全てが利得導波路型であってもよい。ただし、利得部分162,172の有効屈折率と、利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、に所定の差を設けることを考慮すると、少なくとも曲率を有する利得部分162,172については、屈折率導波型の構造を有することが望ましい。
【0101】
本実施形態に係る発光装置100は、例えば、プロジェクター、ディスプレイ、照明装置、計測装置などの光源に適用されることができる。
【0102】
本実施形態に係る発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0103】
発光装置100によれば、第1利得領域160は、第1の曲率を備えた第1利得部分162を有し、第2利得領域170は、第2の曲率を備えた第2利得部分172を有する。そのため、利得領域160,170に発生する光の第2面132に対する入射角βを大きくすることなく、第1利得領域160の第2端面191と、第2利得領域170の第4端面193と、の間隔D(出射面の間隔D)を大きく形成することができる。これにより、出射光の放射パターンが歪むことを抑制することができ、例えば発光装置をプロジェクターの光源に用いた場合に、ライトバルブを均一に照明することができる。
【0104】
さらに、発光装置100によれば、第1面から第2面まで直線状である利得領域を用いた例に比べて、間隔Dを大きく形成するために、利得領域の全長を大きくしなくてよい。そのため、多大な電流を流す必要はなく、消費電力を抑えることができる。さらに、利得領域の全長を大きくしなくてよいので、装置全体の小型化を図ることができる。そのため、資源が無駄となることもなく、製造コストを抑えることができる。
【0105】
以上のように、発光装置100では、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、間隔Dを大きく形成することができる。より具体的には、発光装置100では、出射面の間隔Dを0.262mm以上1.909mm以下とし、角度βを5度以下とし(0度を含む)、利得領域160,170の全長を1.5mm以上3mm以下とすることができる。
【0106】
発光装置100によれば、第1利得領域160は、垂線Pに対して第1角度α1で傾いて第1面130と接続し、第2利得領域170は、垂線Pに対して第2角度α2で傾いて第1面130と接続することができる。そして、第1角度α1と第2角度α2とは、臨界角以上であって、同じ大きさであることができる。そのため、第1面130は、利得領域160,170に発生する光を、全反射させることができる。したがって、発光装置100では、第1面130における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。さらに、第1面130に反射膜を形成する工程が不要となるので、製造コストおよび製造に必要な材料・資源を削減することができる。
【0107】
発光装置100によれば、第3利得領域180は光共振器であることができる。そのため、第3利得領域180に発生する光は、第3利得領域において共振する間に、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に結合して、第2端面191および第4端面193から出射されることができる。すなわち、第3利得領域180を形成しない場合と同じ出射面間隔でありながら、第3利得領域を形成しない場合と比較して、高出力化することができる。
【0108】
発光装置100によれば、第1面130は、劈開によって形成された劈開面であることができる。そのため、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって形成する場合に比べて、精度よく第1面130を形成することができ、端面における光散乱を小さくすることができる。したがって、発光装置100では、第1面130における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。
【0109】
(2.発光装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る発光装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図であって、図2に対応している。図5は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図であって、図2に対応している。
【0110】
図4に示すように、基板102上に、第1クラッド層104、活性層106、第2クラッド層108、およびコンタクト層110を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。
【0111】
図5に示すように、コンタクト層110および第2クラッド層108をパターニングする。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて行われる。本工程により、柱状部111を形成することができる。
【0112】
次に、図3に示すように、コンタクト層110、第2クラッド層108、活性層106、第1クラッド層104、及び基板102をパターニングすることにより、第1溝部150および第2溝部152を形成する。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて行われる。溝部150,152の底面の位置は、活性層106の下面の位置より下に設けられていることが望ましい。本実施形態に係る発光装置100においては、溝部150,152の底面の位置は、基板102の上面の位置より下である。
【0113】
続いて、図2に示すように、柱状部111の側面を覆うように絶縁層116を形成する。具体的には、まず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、塗布法などにより、第2クラッド層108の上方(コンタクト層110上を含む)に絶縁部材(図示せず)を成膜する。次に、例えば、エッチング技術などを用いて、コンタクト層110の上面113を露出させる。以上の工程により、絶縁層116を形成することができる。なお、本工程において、第1溝部150および第2溝部152を絶縁層で埋め込むこともできる。また、例えば、溝部150,152の領域をレジスト膜(図示しない)等で覆うことにより、溝部150,152に絶縁層を埋め込まないこともできる。
【0114】
次に、コンタクト層110上および絶縁層116上に第2電極114を形成する。第2電極114は、例えば、フォトリソグラフィー技術によりレジスト膜(図示しない)等で所定の領域を覆った後、真空蒸着法およびリフトオフ法を行うことにより、所望の形状に形成されることができる。なお、溝部150,152が形成された領域は、溝部に電極材料が入り込むことで短絡しないよう、例えば、溝部150,152より広い領域をレジスト膜等で覆うことが望ましい。
【0115】
次に、基板102の下面下に第1電極112を形成する。第1電極112は、例えば、真空蒸着法により形成される。なお、第1電極112および第2電極114の形成順序は、特に限定されない。
【0116】
以上の工程により、本実施形態に係る発光装置100を製造することができる。
【0117】
発光装置100の製造方法によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、複数の出射面の間隔を大きく形成することができる発光装置100を得ることができる。
【0118】
(3.発光装置の変形例)
次に、本実施形態の変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。以下、本実施形態の変形例に係る発光装置において、本実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0119】
(3.1.第1変形例に係る発光装置(直線導波路を介して反射端面に入射))
まず、本実施形態の第1変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200を模式的に示す平面図である。なお、図6では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0120】
発光装置100の例では、図1に示すように、曲率を有する利得部分162,172が、第1面130と接続していた。これに対し、発光装置200では、図6に示すように、直線状の利得部分166,176が第1面130と接続している。
【0121】
すなわち、第1利得領域160は、第1面130から第1利得部分162まで、直線状に設けられた第5利得部分166を有する。つまり、第5利得部分166は、第1利得領域160の第1端面190を構成している。第5利得部分166は、垂線Pに対して一方側(例えば第3面134側)に第1角度α1で傾いている。第5利得部分166は、円弧状の第1利得部分162と滑らかに接続されている。例えば、第5利得部分166は、第1利得部分162の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。
【0122】
第2利得領域170は、第1面130から第2利得部分172まで、直線状に設けられた第6利得部分176を有する。つまり、第6利得部分176は、第2利得領域170の第3端面192を構成している。第6利得部分176は、垂線Pに対して他方側(例えば第4面136側)に第2角度α2で傾いている。第6利得部分176は、円弧状の第2利得部分172と滑らかに接続されている。例えば、第6利得部分176は、第2利得部分172の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。利得部分166,176は、垂線Pに関して対称に配置されていてもよい。
【0123】
発光装置200によれば、上述のように、直線状の利得部分166,176が、第1面130に設けられた端面190,192を構成している。そのため、発光装置200では、発光装置100の例に比べて、より確実に、第1利得領域において発生し第1面130において反射する光を第2利得領域に入射させ、第2利得領域において発生し第1面130において反射する光を第1利得領域に入射させることができる。
【0124】
(3.2.第2変形例に係る発光装置(曲がり部深堀り))
次に、本実施形態の第2変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す平面図である。図8は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す断面図であって、図7のVII−VII線断面図である。図9は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す断面図であって、図7のVIII−VIII線断面図である。なお、図7では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0125】
発光装置100の例では、図2に示すように、柱状部111は、コンタクト層110と、第2クラッド層108の一部と、によって構成されていた。これに対し、発光装置300では、図8に示すように、利得部分162,172の平面形状を形成する柱状部111は、コンタクト層110と、第2クラッド層108と、活性層106と、第1クラッド層104と、基板102の一部と、によって構成されている。
【0126】
なお、図示はしないが、利得部分162,172の平面形状を形成する柱状部111は、例えば、コンタクト層110、第2クラッド層108、活性層106、第1クラッド層104から構成されていてもよい。
【0127】
絶縁層116としては、上述のように、SiN層、SiO2層、SiON層、Al2O3層などの誘電体絶縁層や、ポリイミド層などの紫外線硬化樹脂層または熱硬化樹脂層を用いることができ、これらを積層させて絶縁層116としてもよい。なお、利得部分162,172の有効屈折率と、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、に所定の差を設けることを考慮すると、絶縁層116として、柱状部111との屈折率差の大きい誘電体絶縁層を用いることが望ましい。例えば、まず、誘電体絶縁層をCVD法やスパッタ法で成膜した後、ポリイミド層を塗布法により形成して、絶縁層116としてもよい。これにより、誘電体絶縁層を厚く成膜して絶縁層116とする場合に比べて、容易に(短時間で)絶縁層116を形成することができる。
【0128】
発光装置300によれば、発光装置100に比べて、利得部分162,172の有効屈折率と、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差を大きくすることができ(所望の値にすることができ)、より効率よく利得部分162,172内の光を導波させることができる。
【0129】
なお、直線状の利得部分164,174の平面形状を形成する柱状部111は、図9に示すように、コンタクト層110と、第2クラッド層108の一部と、によって構成されていることが望ましい。仮に、利得部分164,174の平面形状を形成する柱状部111を、図8に示すように、コンタクト層110と、第2クラッド層108と、活性層106と、第1クラッド層104と、基板102の一部と、によって構成すると、利得領域160,170を、高次のモード(利得領域を横断する方向(水平面内で、伝播方向に垂直な方向)の波数がより大きなモード)が伝播し、放射パターンが悪化することがある。
【0130】
また、絶縁層116を設けないこともできる。絶縁層116を空気であると解釈してもよい。絶縁層116を設けない場合、利得部分162,172の有効屈折率と、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差を大きくすることはできる(空気の屈折率は約1.0、SiNの屈折率は約2.1)。しかし、その分、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、図9における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差も大きくなり、例えば、第3利得部分164から第1利得部分162へ光が入射する際に、反射する光の割合が大きくなる場合がある。そのため、光損失が大きくなる場合がある。したがって、SiN層等からなる絶縁層116を設けることが望ましい。
【0131】
(3.3.第3変形例に係る発光装置(DFBタイプ))
次に、本実施形態の第3変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400を模式的に示す平面図である。図11は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400を模式的に示す断面図であって、図10のXII−XII線断面図である。なお、図10では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0132】
発光装置100の例では、第3利得領域180の光共振器は、図1に示すように、溝部150,152を作製することによって、第5端面195,第6端面196が形成され、第3利得領域180において発生する光は、第3利得領域の有効屈折率と、溝部の有効屈折率と、の差により反射される、端面反射型の光共振器であった。これに対し、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400の第3利得領域180の光共振器は、図10に示すように、分布帰還型(DFB型ともいう)の光共振器であることができる。
【0133】
より具体的には、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400においては、図11に示すように、第5端面および第6端面に挟まれた領域の、第1クラッド層、活性層および第2クラッド層のうちの、少なくとも一つの層に、高屈折率領域440と低屈折率領域442とが第3利得領域の延伸方向(導波方向)に向かって周期的に形成されている。これにより、第3利得領域において発生し、第3利得領域を伝播する光は、高屈折率領域と低屈折率領域との各界面において、180度方向(導波方向と逆方向)に向かって回折されることができる。この導波方向と逆方向に回折された光は、再び導波方向(元の進行方向)に向かって回折されることができる。すなわち、第3利得領域は、高屈折率領域440と低屈折率領域442との各界面において、回折によって光が多重反射する、分布帰還型の光共振器であることができる。
【0134】
このような、分布帰還型の光共振器を形成するためには、高屈折率領域440および低屈折率領域442の延伸方向の長さdH,dLが適切に設計されている必要がある。具体的には、活性層の発生する光の中心波長をλ、高屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnH、低屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnLとして、例えば、dH=(2mH+1)λ/(4nH)、dL=(2mL+1)λ/(4nL)程度とすることができる。mH,mLは、0以上の整数である。これにより、λの近傍の多くとも2つの波長λR1,λR2で共振することができる。例えば、mH=mL=0の場合は、2nLλ/(nH+nL)<λR1,λR2<2nHλ/(nH+nL)を満たす波長λR1,λR2で共振することができる。具体的な共振波長λR1,λR2は、転送行列法、FDTD(Finite Difference Time Domain)法、平面波展開法等の数値解析を行うことにより、解析することができる。高屈折率領域および低屈折率領域の延伸方向の長さdH,dLは、共振波長λR1,λR2が活性層の発生する光の波長帯域(発光材料にも依るが、通常λ±数十nm程度)に入る範囲で、数値解析により適宜調整することができる。
【0135】
高屈折率領域440および低屈折率領域442は、例えば以下に述べる方法によって作製することができる。まず、MOCVD法などにより、第1クラッド層および活性層を成長した後、後に成長する第2クラッド層よりも高屈折率な層を成長する。次いで、干渉露光技術、液浸露光技術、EBリソグラフィー技術、またはナノインプリントリソグラフィー技術と、エッチング技術によりパターニングして、後に高屈折率領域となる部分以外の活性層を露出させる。そして、再度MOCVD法などにより、第2クラッド層およびコンタクト層を成長する。これにより、積層体120の、第2クラッド層よりも高屈折率な層を残した部分の垂直断面における有効屈折率は、第2クラッド層よりも高屈折率な層エッチングした部分の垂直断面における有効屈折率よりも高くなる。以降の工程は、発光装置100を作製する方法と同様である。以上により、高屈折率領域と低屈折率領域を作製することができる。
【0136】
なお、高屈折率領域440および低屈折率領域442を作製する方法は、これに限定されず、例えば、第1クラッド層、活性層、第2クラッド層を成長した後に、第2クラッド層をパターニングすることによって形成されていてもよい。発光材料やクラッド層の種類、高屈折率領域および低屈折率領域の長さdH,dL、高屈折率領域および低屈折率領域の屈折率nH,nLなどにより、適宜変更することができる。
【0137】
発光装置100においては、第3利得領域180は端面反射型の光共振器であった。そのため、第5端面および第6端面において反射した光は、第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合して、第2端面または第4端面から出射されるが、第5端面および第6端面において透過した光は、損失となっていた。これに対し、発光装置400においては、第3利得領域180は分布帰還型の光共振器である。そのため、多重反射により、より多くの光が、第3利得領域の端面195,196に到達する前に、第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合し、第2端面または第4端面から出射される。すなわち、端面における透過損失を低減することができる。すなわち、発光装置100と比較して高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0138】
(3.4.第4変形例に係る発光装置(DBRタイプ・エッチングDBRも含む))
次に、本実施形態の第4変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図12は、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500を模式的に示す平面図である。図13は、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500を模式的に示す断面図であって、図12のXIII−XIII線断面図である。なお、図12では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0139】
発光装置100の例では、第3利得領域180の光共振器は、図1に示すように、溝部150,152を作製することによって、第5端面195,第6端面196が形成され、第3利得領域180において発生する光は、第3利得領域の有効屈折率と、溝部の有効屈折率と、の差により反射される、端面反射型の光共振器であった。これに対し、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500の第3利得領域180の光共振器は、図12に示すように、第5端面195,第6端面196の外側に、分布ブラッグ反射型ミラー(DBRともいう)を形成した、分布反射型の光共振器であることができる。
【0140】
より具体的には、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500においては、図13に示すように、第5端面および第6端面に挟まれた領域の外側の、第1クラッド層、活性層および第2クラッド層のうちの、少なくとも一つの層に、高屈折率領域540と低屈折率領域542とが第3利得領域の延伸方向(導波方向)に向かって周期的に形成されている。これにより、第3利得領域において発生し、第5端面に向かって第3利得領域を伝播する光は、第5端面の外側の高屈折率領域と低屈折率領域との各界面において、180度方向(導波方向と逆方向)に向かって回折されることができる。この導波方向と逆方向に回折された光の一部は、第6端面に向かって第3利得領域内を伝播することができる。また、導波方向と逆方向に回折された光の一部は、再び伝播導波方向(元の進行方向)に向かって回折されることもできる。このように、第5端面に向かって第3利得領域を伝播する光は、高屈折率領域540と低屈折率領域542との各界面において、回折によって多重反射を繰り返しながら、最終的にほぼ全ての光が第6端面方向に反射される。すなわち、高屈折率領域540と低屈折率領域542はDBRを構成することができる。同様に、第3利得領域において発生し、第6端面に向かって第3利得領域を伝播する光は、高屈折率領域540と低屈折率領域542との各界面において、回折によって多重反射を繰り返しながら、最終的にほぼ全ての光が第5端面方向に反射される。すなわち、第3利得領域は、第5端面の外側に形成されたDBRと第6端面の外側に形成されたDBRとの間で光が多重反射する、分布反射型の光共振器であることができる。
【0141】
このような、分布反射型の光共振器を形成するためには、高屈折率領域540および低屈折率領域542の延伸方向の長さdH,dLが適切に設計されている必要がある。具体的には、活性層の発生する光の中心波長をλ、高屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnH、低屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnLとして、例えば、dH=(2mH+1)λ/(4nH)、dL=(2mL+1)λ/(4nL)程度とすることができる。mH,mLは、0以上の整数である。これにより、活性層の発生する光の波長幅をΔλ、第3利得領域の長さをL3とすると、λ−Δλ/2≦λ≦λ+Δλ/2を満たす、多数の共振波長λRm=2nL3/m(nは第3利得領域の有効屈折率、mは正の整数)で共振することができる。Δλは、発光材料にも依るが数十nm程度である。
【0142】
高屈折率領域540および低屈折率領域542は、例えば、発光装置100における、溝部150,152と同様の方法によって作製することができる。具体的には、溝部150,152と同様に、低屈折率領域542となる領域をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることにより、低屈折率領域542を形成することができる。このとき、周期的に形成された低屈折率領域542の間の、エッチングされずに残された領域が、高屈折率領域540となる。低屈折率領域542は、溝部150,152と同様に、絶縁層116を形成する際に、絶縁層116によって埋め込むこともできるし、レジスト膜(図示しない)等で覆うことにより、絶縁層で埋め込まないこともできる。
【0143】
なお、高屈折率領域540および低屈折率領域542を作製する方法は、これに限定されず、例えば、第3変形例と同様に、パターニングには、高屈折率領域および低屈折率領域の長さdH,dLにも依るが、干渉露光技術、液浸露光技術、EBリソグラフィー技術、またはナノインプリントリソグラフィー技術などを適用することもできる。また、溝部150,152と同様に溝部を形成した後に、CVD法、スパッタ法、斜方蒸着法などによって、側面から高屈折率材料と低屈折材料を交互に積層することによって、高屈折率領域540および低屈折率領域542を形成してもよい。発光材料やクラッド層の種類、高屈折率領域および低屈折率領域の長さdH,dL、高屈折率領域および低屈折率領域の屈折率nH,nLなどにより、適宜変更することができる。
【0144】
発光装置100においては、第3利得領域180は端面反射型の光共振器であった。そのため、第5端面および第6端面において反射した光は、第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合して、第2端面または第4端面から出射されるが、第5端面および第6端面において透過した光は、損失となっていた。これに対し、発光装置500においては、高屈折率領域540と低屈折率領域542との各界面において、回折によって多重反射を繰り返しながら、最終的にほぼ全ての光を反射させることができるため、透過損失を低減させることができる。すなわち、発光装置500は、発光装置100と比較して高出力化を図りつつ、出射面間隔を大きく形成することができる。
【0145】
図14(a)、(b)は発光装置から出力される光のスペクトル形状を模式的に表現したグラフであり、縦軸に出力光強度、横軸に波長を示している。
発光装置400においては、第3利得領域180は分布帰還型の光共振器であった。そのため、多くとも2つの波長λR1,λR2においてのみ共振しており、発光装置400の第2端面および第4端面から出射される光20,22のスペクトル形状は、SLD領域において発生する光と合わせて、模式的には図14(a)のような形状となると考えられる。これに対し、発光装置500においては、第3利得領域180は分布反射型の光共振器である。そのため、λ−Δλ/2≦λ≦λ+Δλ/2を満たす、多数の共振波長λRm=2nL3/m(nは第3利得領域の有効屈折率、mは正の整数)で共振することができる。したがって、発光装置500の第2端面および第4端面から出射される光20,22のスペクトル形状は、SLD領域において発生する光と合わせて、模式的には図14(b)のような形状となると考えられる。したがって、特定の共振波長の光強度のみが強い発光装置400の場合と比較して、発光装置500の場合は、多数の共振波長の光を含むことができ、インコヒーレント性を向上させることができる。すなわち、発光装置500は、発光装置400と比較してスペックルノイズを低減させつつ、出射面間隔を大きく形成することができる。
【0146】
(3.5.第5変形例に係る発光装置(曲線部にも第3利得領域))
次に、本実施形態の第5変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図15は、本実施形態の第5変形例に係る発光装置600を模式的に示す平面図である。
【0147】
発光装置100の例では、図1に示すように、第1利得領域および第2利得領域の直線状の利得部分である、第3利得部分164および第4利得部分174に沿って、第3利得領域180が設けられていた。より具体的には、第3利得領域180は、第3利得部分164または第4利得部分174に沿って、平行に、直線状に設けられていた。これに対し、本実施形態の第5変形例に係る発光装置600においては、図15に示すように、第1利得領域および第2利得領域の曲率を備えた利得部分である、第1利得部分162および第2利得部分172に沿って、第3利得領域180が設けられている。より具体的には、発光装置600における第3利得領域180は曲率を備えており、その接線方向に沿って引いた中心線と、第1利得部分162または第2利得部分172の接線方向に沿って引いた中心線と、の間の距離が一定となるように、第3利得領域180は設けられている。第3利得領域と、第1利得部分または第2利得部分と、の間の距離Lは、利得領域および利得領域を避けた部分の有効屈折率にも依るが、例えば100nmから利得領域の幅(数umから数十um)の2倍程度である。
【0148】
第3利得領域180の形状は、例えば、第1利得部分および第2利得部分172が円弧の形状を有する場合、第1利得部分162または第2利得部分172と同心円状の円弧の形状であることができる。より具体的には、第1利得部分162が、点O1を中心とする円弧の形状を有し、第2利得部分172が、点O2を中心とする円弧の形状を有する場合、第3利得領域180は、点O1または点O2を中心とした曲率半径の異なる、円弧の形状を有することができる。
【0149】
発光装置600においても、第5端面195および第6端面196は、第3利得領域の延伸方向に垂直に形成されていることができる。例えば、第3利得領域が円弧の形状を有する場合、第5端面195および第6端面196は、半径方向に平行に形成されていることができる。これにより、第5端面195と第6端面196との間で、第3利得領域180に発生する光を、多重反射させることができる。すなわち、第3利得領域180は、光共振器を構成することができる。
【0150】
このような、曲率を備えた第3利得領域180を用いた場合も、発光装置100と同様に、第3利得領域180で発生し、第3利得領域180内で共振する光は、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に、効率よく結合することができる。この結合した光は、発光装置100の場合と同様に、第2端面191および第4端面193から出射されることができる。すなわち、第3利得領域180を形成しない場合と同じ出射面間隔でありながら、第3利得領域を形成しない場合と比較して、高出力化することができる。
【0151】
発光装置600においては、第3利得領域180は曲率を備えており、第1利得部分または第2利得部分に沿って形成されている。そのため、第1利得領域および第2利得領域における、第1利得部分または第2利得部分の長さが、第3利得部分または第4利得部分の長さと比較して大きい場合、発光装置100よりも容易に第3利得領域180の長さを大きく形成することができる。したがって、このような場合、発光装置100と比較して、容易に高出力化することができる。
【0152】
(3.6.第6変形例に係る発光装置(アレイ))
次に、本実施形態の第6変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図16は、本実施形態の第6変形例に係る発光装置700を模式的に示す平面図である。なお、図16では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0153】
発光装置100の例では、図1に示すように、第1利得領域160および第2利得領域170は、1つずつ設けられており、この第1利得領域160または第2利得領域170に沿って、第3利得領域180が設けられていた。これに対し、発光装置700では、図16に示すように、第1利得領域160および第2利得領域170の各々が、複数設けられており、これら複数の第1利得領域160または複数の第2利得領域170に沿って、第3利得領域180も設けられている。
【0154】
すなわち、第1利得領域160、第2利得領域170および第3利得領域180は、利得領域群750を構成することができ、発光装置700においては、複数の利得領域群750が設けられている。図示の例では、3つの利得領域群750が設けられているが、その数は特に限定されない。
【0155】
複数の利得領域群750は、垂線Pの延びる方向と直交する方向に沿って、配列されている。より具体的には、隣り合う利得領域群750において、一方の利得領域群750の第4端面193と、他方の利得領域群750の第2端面191と、の間隔がDとなるように(出射面の間隔となるように)配列されている。これにより、後述するレンズアレイに、容易に光20,22を入射させることができる。
【0156】
発光装置700によれば、発光装置100の例に比べて、高出力化を図ることができる。
【0157】
(4.プロジェクター)
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。図18は、本実施形態に係るプロジェクター900の一部を模式的に示す図である。なお、図17では、便宜上、プロジェクター900を構成する筐体を省略し、さらに光源800を簡略化して図示している。また、図18では、便宜上、光源800、レンズアレイ902、および液晶ライトバルブ904について図示し、さらに光源800を簡略化して図示している。
【0158】
プロジェクター900は、図17に示すように、赤色光、緑色光、青色光を出射する赤色光源800R,緑色光源800G、青色光源800Bを含む。光源800R,800G,800Bは、本発明に係る発光装置を有する。以下の例では、本発明に係る発光装置として発光装置700を有する光源800R,800G,800Bについて説明する。
【0159】
図19は、本実施形態に係るプロジェクター900の光源800を模式的に示す図である。図20は、本実施形態に係るプロジェクター900の光源800を模式的に示す図19のXVII−XVII線断面図である。
【0160】
光源800は、図19および図20に示すように、発光装置700と、ベース810と、サブマウント820と、を有することができる。
【0161】
2つの発光装置700と、サブマウント820とは、構造体830を構成することができる。構造体830は、複数設けられ、図19に示すように、発光装置700の出射面となる端面191,193の配列方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に配列している。構造体830は、X軸方向の出射面の間隔と、Y軸方向の出射面の間隔と、が同じになるように、配列されることができる。これにより、発光装置700から出射される光を、容易に、レンズアレイ902に入射させることができる。
【0162】
構造体830を構成する2つの発光装置700は、サブマウント820を挟んで配置されている。図19および図20に示す例では、2つの発光装置700は、サブマウント820を介して第2電極114同士が対向するように配置されている。サブマウント820の第2電極114と接する面には、例えば、配線が形成されている。これにより、複数の第2電極114の各々に、個別に電圧を供給することができる。サブマウント820の材質としては、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0163】
ベース810は、構造体830を支持している。図20に示す例では、ベース810は、複数の発光装置700の第1電極112と接続されている。これにより、ベース810は、複数の第1電極112の共通電極として機能することができる。ベース810の材質としては、例えば、銅、アルミニウムが挙げられる。図示はしないが、ベース810は、ペルチェ素子を介して、ヒートシンクと接続されていてもよい。
【0164】
なお、構造体830の形態は、図19および図20に示す例に限定されない。例えば、図21に示すように、構造体830を構成する2つの発光装置700は、サブマウント820を介して、一方の発光装置700の第1電極112と、他方の発光装置700の第2電極114とが対向するように配置されていてもよい。また、図22に示すように、2つの発光装置700の第1電極112が、共通電極となるように配置されていてもよい。
【0165】
図17に示すように、プロジェクター900は、さらに、レンズアレイ902R,902G,902Bと、透過型の液晶ライトバルブ(光変調装置)904R,904G,904Bと、投写レンズ(投射装置)908と、を含む。
【0166】
光源800R,800G,800Bから出射された光は、各レンズアレイ902R,902G,902Bに入射する。図18に示すように、レンズアレイ902は、光源800側に、出射面191,193から出射される光20,22が入射する平坦面901を有することができる。平坦面901は、複数の出射面191,193に対応して複数設けられ、等間隔で配置されている。平坦面901によって、光20,22の光軸を、液晶ライトバルブ904の照射面905に対して、直交させることができる。
【0167】
レンズアレイ902は、液晶ライトバルブ904側に、凸曲面903を有することができる。凸曲面903は、複数の平坦面901に対応して複数設けられ、等間隔で配置されている。平坦面901において光軸が変換された光20,22は、凸曲面903によって、集光される、または拡散角を小さくされることにより、重畳(一部重畳)されることができる。これにより、均一性よく液晶ライトバルブ904を照射することができる。
【0168】
以上のように、レンズアレイ902は、光源800から出射される光20,22の光軸を制御して、光20,22を集光させることができる。
【0169】
図17に示すように、各レンズアレイ902R,902G,902Bによって集光された光は、各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bに入射する。各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bは、入射した光をそれぞれ画像情報に応じて変調する。そして、投写レンズ908は、液晶ライトバルブ904R,904G,904Bによって形成された像を拡大してスクリーン(表示面)910に投射する。
【0170】
また、プロジェクター900は、液晶ライトバルブ904R,904G,904Bから出射された光を合成して投写レンズ908に導くクロスダイクロイックプリズム(色光合成手段)906を、含むことができる。
【0171】
各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。このプリズムは、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投写光学系である投写レンズ908によりスクリーン910上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0172】
プロジェクター900によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、複数の出射面の間隔を所望の値に設計することができる発光装置700を有する。そのため、プロジェクター900では、レンズアレイ902のアライメントが容易で、均一性よく液晶ライトバルブ904を照射することができる。そして、小型かつ高輝度化が図られたプロジェクターを提供することができる。
【0173】
なお、上述の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)が挙げられる。また、投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0174】
また、光源800を、光源800からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置(プロジェクター)の光源装置にも適用することが可能である。
【0175】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0176】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0177】
10…光の一部、20…光、22…光、100…発光装置、102…基板、104…第1層(第1クラッド層)、106…第3層(活性層)、108…第2層(第2クラッド層)、110…第4層(コンタクト層)、111…柱状部、112…第1電極、113…第4層の上面、114…第2電極、116…絶縁層、120…積層体、130…第1面、132…第2面、134…第3面、136…第4面、150…第1溝部、152…第2溝部、160…第1利得領域、162…第1利得部分、164…第3利得部分、166…第5利得部分、170…第2利得領域、172…第2利得部分、174…第4利得部分、176…第6利得部分、180…第3利得領域、190…第1端面、191…第2端面、192…第3端面、193…第4端面、195…第5端面、196…第6端面、200,300,400…発光装置、440…高屈折率領域、442…低屈折率領域、500…発光装置、540…高屈折率領域、542…低屈折率領域、600,700…発光装置、750…利得領域群、800…光源、810…ベース、820…サブマウント、830…構造体、900…プロジェクター、901…平坦面、902…レンズアレイ、903…凸曲面、904…液晶ライトバルブ、905…照射面、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投写レンズ、910…スクリーン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode、以下「SLD」ともいう)は、通常の発光ダイオード同様にインコヒーレント性を示し、かつ広帯域なスペクトル形状を示しながら、光出力特性では半導体レーザー同様に単一の素子で数百mW程度までの出力を得ることが可能な半導体発光素子である。
【0003】
SLDは、例えばプロジェクターの光源として用いられるが、小型かつ高輝度なプロジェクターを実現するためには、光出力が大きくかつエテンデュの小さな光源を用いる必要がある。それには、複数の利得領域から出射される光が、同一の方向に進むことが望ましい。特許文献1では、直線状の形状を有する利得領域と、円弧の形状を有する利得領域と、を組合せることによって、2つの利得領域の出射面から出射される光を、同一の方向に進行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−192603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学系の損失低減と部品点数の削減とのため、SLDをライトバルブの直下に配置し、レンズアレイを用いて集光と均一照明とを同時に行う方式のプロジェクターが提案されている。このような方式のプロジェクターでは、レンズアレイの間隔に合わせて、出射面を配置する必要がある。
【0006】
特許文献1に記載された技術において、レンズアレイに合わせて、2つの出射面の間隔を大きく形成する方法としては、例えば、直線状の利得領域を出射面の垂線に対して大きく傾けることが考えられる。しかしながら、このような方法では、直線状の利得領域に発生する光の出射面に対する入射角が大きくなり、放射パターンが悪化することがある。その結果、ライトバルブを均一に照明することが困難となることがある。
【0007】
また、2つの出射面の間隔を大きく形成する別の方法として、利得領域の全長を大きくすることが考えられる。しかしながら、利得領域の全長が大きくなると、一般的に、高出力化を図ることはできるが、反転分布を得るために多大な電流を流さなくてはならず、その結果、所定の光出力以上で用いなければ、高効率化を図ることができない。すなわち、所定の光出力未満では発光効率が低下する。発光効率が悪化すると、発光装置から排熱することが難しくなるため、例えば小型のプロジェクターの実現が困難となる。さらに、利得領域の全長が大きくなると、素子全体の面積が大きくなり、資源の無駄や製造コストの増大などの問題が生じる。
【0008】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、複数の出射面の間隔を大きく形成することができる発光装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記発光装置を有するプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる発光装置は、第1層、第2層、および前記第1層と前記第2層とに挟まれた第3層を有する積層体を含み、前記第3層は、光を発生させ、かつ光が導波する、第1利得領域、第2利得領域および第3利得領域を有し、前記第1層および前記第2層は、前記第1利得領域、第2利得領域および前記第3利得領域に発生する光の漏れを抑制する層であり、前記第3層は、前記積層体の外形を形成し、互いに対向する第1面および第2面を有し、前記第1利得領域および前記第2利得領域に発生する光の波長帯において、前記第1面の反射率は、前記第2面の反射率よりも高く、前記第1利得領域および前記第2利得領域は、前記第1面から前記第2面まで設けられ、前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記第1面の垂線に対して一方側に傾いて前記第1面と接続し、前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記垂線に対して他方側に傾いて前記第1面と接続し、前記第1利得領域と前記第2利得領域とは、前記積層体の積層方向から見て、同じ傾きで傾いて前記第2面と接続し、前記第1利得領域の前記第1面側の端面と、前記第2利得領域の前記第1面側の端面とは、前記第1面において重なっており、前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第1の曲率を備えた第1利得部分を有し、前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第2の曲率を備えた第2利得部分を有し、前記第1利得領域または前記第2利得領域に沿って、第3利得領域が形成され、前記第3利得領域を導波する前記光は、前記第3利得領域内で共振し、前記第3利得領域内で共振する前記光は、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光に結合して、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波し、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光は、前記第1利得領域または前記第2利得領域の前記第2面側の端面から出射されることを特徴とする。
【0011】
このような発光装置によれば、第1利得領域および第2利得領域を導波する光の第2面に対する入射角を大きくすることなく、第1利得領域の第2面側の端面と、第2利得領域の第2面側の端面と、の間隔(出射面の間隔)を大きく形成することができる。これにより、出射光の放射パターンが歪むことを抑制することができ、例えば発光装置をプロジェクターの光源に用いた場合に、ライトバルブを均一に照明することができる。
【0012】
さらに、このような発光装置によれば、第1面から第2面まで直線状である利得領域を用いた例に比べて、出射面の間隔を大きく形成するために、利得領域の全長を大きくしなくてよい。そのため、多大な電流を流す必要はなく、消費電力を抑えることができる。これにより、発光装置からの排熱も容易となるため、例えばプロジェクターの光源に用いた場合に、プロジェクターの筐体サイズの小型化を図ることができる。さらに、利得領域の全長を大きくしなくてよいので、発光装置全体の小型化を図ることができる。そのため、資源が無駄となることもなく、製造コストを抑えることができる。
【0013】
さらに、このような発光装置によれば、第1利得領域または第2利得領域に沿って、第3利得領域が形成されている。第3利得領域に発生した光は、第3利得領域において共振する間に、第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合する。この結合した光は、第1利得領域および第2利得領域を導波し、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射される。すなわち、第3利得領域を形成しない場合と同じ出射面間隔でありながら、第3利得領域を形成しない場合と比較して、高出力化を図ることができる。そのため、例えばプロジェクターの光源に用いた場合に、プロジェクターの高輝度化を図ることができる。
【0014】
以上のように、このような発光装置では、放射パターンが良好で、小型化かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0015】
[適用例2]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域は、前記垂線に対して第1角度で傾いて前記第1面と接続し、前記第2利得領域は、前記垂線に対して第2角度で傾いて前記第1面と接続し、前記第1角度と前記第2角度とは、臨界角以上であって、同じ大きさであることが好ましい。
【0016】
このような発光装置によれば、第1面は、第1利得領域および第2利得領域に発生する光を、全反射させることができる。したがって、第1面における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。
【0017】
[適用例3]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域は、前記第1利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第3利得部分を有し、前記第2利得領域は、前記第2利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第4利得部分を有することが好ましい。
【0018】
このような発光装置によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0019】
[適用例4]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域は、前記第1面から前記第1利得部分まで、直線状に設けられた第5利得部分を有し、前記第2利得領域は、前記第1面から前記第2利得部分まで、直線状に設けられた第6利得部分を有することが好ましい。
【0020】
このような発光装置によれば、第1利得領域において発生し第1面において反射する光を、より確実に第2利得領域に入射させ、第2利得領域において発生し第1面において反射する光を、より確実に第1利得領域に入射させることができる。
【0021】
[適用例5]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得部分および前記第2利得部分は、前記積層体の積層方向から見て、円弧の形状を有することが好ましい。
【0022】
このような発光装置によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0023】
[適用例6]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、端面反射型の光共振器であってもよい。
【0024】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光を、第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合させ、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0025】
[適用例7]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、分布帰還型の光共振器であってもよい。
【0026】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光を、より確実に第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合させ、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0027】
[適用例8]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、分布反射型の光共振器であってもよい。
【0028】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する多数の共振モードの光を、より確実に第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合させ、第1利得領域または第2利得領域の第2面側の端面から出射させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化すると同時に、インコヒーレント性の向上を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0029】
[適用例9]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、前記第1利得領域または前記第2利得領域との距離は一定であることが好ましい。
【0030】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光は、効率よく第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合することができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0031】
[適用例10]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域と、前記第1利得領域または前記第2利得領域とは平行であることが好ましい。
【0032】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振する光は、効率よく第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合することができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0033】
[適用例11]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、複数形成されていることが好ましい。
【0034】
このような発光装置によれば、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0035】
[適用例12]上記適用例にかかる発光装置において、前記第3利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有することが好ましい。
【0036】
このような発光装置によれば、第3利得領域において発生する光を、より確実に第3利得領域において共振させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0037】
[適用例13]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1利得領域および前記第2利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有することが好ましい。
【0038】
このような発光装置によれば、第3利得領域において共振し、第1利得領域および第2利得領域を導波する光に結合した光を、より確実に第1利得領域および第2利得領域を導波させることができる。したがって、放射パターンが良好で、小型かつ高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0039】
[適用例14]上記適用例にかかる発光装置において、前記第2層の前記第3層側とは反対側に第4層が形成され、前記第1層に電気的に接続された第1電極と、前記第2層に電気的に接続され、前記第4層と接する第2電極とを有し、前記第1利得領域、前記第2利得領域および前記第3利得領域の形状は、前記第4層と前記第2電極との接触面の形状と同じであり、前記第4層は、前記第2電極とオーミックコンタクトする層であることが好ましい。
【0040】
このような発光装置によれば、発光装置の抵抗を小さくすることができる。これにより、消費電力を抑えることができ、発光装置からの排熱が容易となる。そのため、例えばプロジェクターの光源に用いた場合に、プロジェクターの筐体サイズの小型化を図ることができる。
【0041】
なお、本発明に係る記載では、「電気的に接続」という文言を、例えば、「特定の部材(以下「A部材」という)に「電気的に接続」された他の特定の部材(以下「B部材」という)」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、A部材とB部材とが、直接接して電気的に接続されているような場合と、A部材とB部材とが、他の部材を介して電気的に接続されているような場合とが含まれるものとして、「電気的に接続」という文言を用いている。
【0042】
[適用例15]上記適用例にかかる発光装置において、前記第1面は、劈開面であることが好ましい。
【0043】
このような発光装置によれば、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって形成する場合に比べて、精度よく第1面を形成することができ、端面における光散乱を小さくすることができる。したがって、第1面における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。
【0044】
[適用例16]本適用例にかかるプロジェクターは、上記適用例に記載の発光装置と、前記発光装置から出射された光を集光するマイクロレンズと、前記マイクロレンズによって集光された光を、画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置によって形成された画像を投射する投射装置と、を含むことを特徴とする。
【0045】
このようなプロジェクターの構成によれば、小型かつ高輝度化が図られたプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図2】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係る発光装置の溝部を模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態の第1変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図7】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図8】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図11】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図12】本実施形態の第4変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図13】本実施形態の第4変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図14】本実施形態の第3変形例に係る発光装置と本実施形態の第4変形例に係る発光装置から出力される光のスペクトル形状を模式的に示す図。
【図15】本実施形態の第5変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図16】本実施形態の第6変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図17】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【図18】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【図19】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す図。
【図20】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す断面図。
【図21】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す断面図。
【図22】本実施形態に係るプロジェクターの光源を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
(1.発光装置)
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す図1のII−II線断面図である。図3は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示し、図1の溝部を説明する断面図である。なお、図1では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0049】
以下では、発光装置100がInGaAlP系(赤色)の発光素子である場合について説明する。発光装置100は、SLDを構成する領域と、光共振器を構成する領域とからなる。SLDは、半導体レーザーと異なり、広帯域な発光スペクトルを有することにより、スペックルノイズを低減することができる。
【0050】
発光装置100は、図1および図2に示すように、積層体120と、第1電極112と、第2電極114と、を含むことができる。
【0051】
積層体120は、基板102と、第1層104(以下「第1クラッド層104」ともいう)と、第3層106(以下「活性層106」ともいう)と、第2層108(以下「第2クラッド層108」ともいう)と、第4層110(以下「コンタクト層110」ともいう)と、絶縁層116と、を有することができる。積層体120の形状は、例えば直方体(立方体である場合を含む)などである。
【0052】
基板102としては、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaAs基板などを用いることができる。
【0053】
第1クラッド層104は、基板102上に形成されている。第1クラッド層104としては、例えば、n型のInGaAlP層などを用いることができる。なお、図示はしないが、基板102と第1クラッド層104との間に、バッファー層が形成されていてもよい。バッファー層としては、例えば、n型のGaAs層、AlGaAs層、InGaP層などを用いることができる。バッファー層は、その上方に形成される層の結晶性を向上させることができる。
【0054】
活性層106は、第1クラッド層104上に形成されている。活性層106は、第1クラッド層104と第2クラッド層108とに挟まれている。活性層106は、例えば、InGaPウェル層とInGaAlPバリア層とから構成される量子井戸構造を3つ重ねた多重量子井戸(MQW)構造を有する。
【0055】
活性層106の形状は、例えば直方体(立方体である場合を含む)などである。活性層106の平面形状は、例えば、積層体120の平面形状と同じである。活性層106は、図1に示すように、第1面130、第2面132、第3面134、および第4面136を有することができる。面130,132,134,136は、活性層106の面のうち、第1クラッド層104または第2クラッド層108と面状には接していない面であり、積層体120の外形を形成している面である。面130,132,134,136は、活性層106の側面ともいえ、平坦な面である。第1面130および第2面132は、互いに対向しており、図示の例では平行である。第3面134および第4面136は、第1面130および第2面132に接続する面であって、互いに対向しており、図示の例では平行である。
【0056】
第1面130は、劈開によって形成された劈開面である。第2面132は、第1面130に対向していれば、形成方法は特に限定されないが、例えば第2面132も劈開面とすることで、容易に第1面130に対向させることができる。
【0057】
活性層106の一部は、第1利得領域160、第2利得領域170および第3利得領域180を構成している。利得領域160,170,180は、光を発生させることができる。利得領域160,170において発生した光は、利得領域160,170内を、利得を受けつつ導波することができる。利得領域180において発生した光は、利得領域180内で共振する間に、利得領域160,170を導波する光に結合し、利得領域160,170内を導波することができる。
【0058】
利得領域160,170は、図1に示すように、第1面130から第2面132まで設けられている。すなわち、第1利得領域160は、第1面130に設けられた第1端面190と、第2面132に設けられた第2端面191と、を有する。第2利得領域170は、第1面130に設けられた第3端面192と、第2面132に設けられた第4端面193と、を有する。
【0059】
第1利得領域160の第1端面190と、第2利得領域170の第3端面192とは、第1面130において重なっている。図示の例では、第1端面190と第3端面192とは、完全に重なっている。一方、第1利得領域160の第2端面191と、第2利得領域170の第4端面193とは、第2面132において、間隔Dで離間している。
【0060】
第1利得領域160は、図1に示すように積層体120の積層方向から見て(平面視において)、第1面130の垂線Pに対して一方側(例えば第3面134側)に傾いて第1面130と接続している。より具体的には、第1利得領域160は、垂線Pに対して、第1角度α1で傾いて第1面130と接続している。第2利得領域170は、平面視において、垂線Pに対して他方側(例えば第4面136側)に傾いて第1面130と接続していている。より具体的には、第2利得領域170は、垂線Pに対して、第2角度α2で傾いて第1面130と接続している。
【0061】
なお、第1角度α1は、第1利得領域160に発生する光の第1面130に対する入射角であるともいえ、第2角度α2は、第2利得領域170に発生する光の第1面130に対する入射角であるともいえる。
【0062】
図示の例では、第1角度α1と第2角度α2とは、同じ大きさの鋭角であり、臨界角以上である。これにより、第1面130は、利得領域160,170に発生する光を、全反射させることができる。
【0063】
第1利得領域160と第2利得領域170とは、同じ傾きで傾いて第2面132と接続している。より具体的には、利得領域160,170は、垂線Pに対して第3角度βで傾いて第2面132と接続している。第3角度βは、鋭角であって臨界角より小さい角度であれば、0度であってもよい。これにより、第1利得領域160の第2端面191から出射される光20と、第2利得領域170の第4端面193から出射される光22とは、同一の方向に進むことができる。端面191,193は、出射面であるといえる。
【0064】
なお、第3角度βは、利得領域160,170に発生する光の第2面132に対する入射角であるともいえる。
【0065】
以上のとおり、角度α1,α2を臨界角以上とし、角度βを臨界角より小さくすることにより、利得領域160,170に発生する光の波長帯において、第1面130の反射率を、第2面132の反射率より高くすることができる。すなわち、第1面130は、反射面となることができ、第2面132は、出射面となることができる。
【0066】
なお、図示はしないが、例えば、第1面130を反射膜で覆い、第2面132を反射防止膜で覆ってもよい。これにより、利得領域160,170に発生する光の波長帯において、第1面130の反射率を、第2面132の反射率より高くすることもできる。反射膜および反射防止膜としては、SiO2層、Ta2O5層、Al2O3層、TiN層、TiO2層、SiON層、SiN層や、これらの多層膜などを用いることができる。
【0067】
さらに、第3角度βが0度より大きい角度であるか、第2面132が反射防止膜で覆われているか、少なくともいずれかであることができる。これにより、第2端面191と第4端面193との間で、利得領域160,170に発生する光を、多重反射させないことができる。その結果、直接的な共振器を構成させないことができるため、利得領域160,170に発生する光のレーザー発振を抑制または防止することができる。すなわち、利得領域160および170は、SLD領域を構成することができる。仮に、第3角度βが0度かつ第2面が反射防止膜で覆われていない場合、第1面130を経由して、端面191,193間で、光が多重反射し、共振器が構成される場合がある。
【0068】
第1利得領域160は、第1利得部分162を有する。同様に、第2利得領域170は、第2利得部分172を有する。
【0069】
第1利得部分162および第2利得部分172は、例えば、第1面130と接続している。すなわち、第1利得部分162は、第1利得領域160の第1端面190を構成し、第2利得部分172は、第2利得領域170の第3端面192を構成している。
【0070】
第1利得部分162は、図1に示すように平面視において、第1の曲率を備えた形状である。第2利得部分172は、平面視において、第2の曲率を備えた形状である。第1の曲率と第2の曲率とは、同じ値であってもよし、異なる値であってもよい。図示の例では、第1利得部分162および第2利得部分172は、円弧の形状を有し、同じ曲率半径を有している。第2利得部分172の円弧の長さは、図1に示すように、第1利得部分162の円弧の長さより小さくてもよい。例えば、第1利得部分162は、点O1を中心とする円弧の形状を有し、第2利得部分172は、点O2を中心とする円弧の形状を有する。点O1は、端面190,192を通る垂線Pに対して、第4面136側に位置し、点O2は、該垂線Pに対して、第3面134側に位置している。
【0071】
利得領域160,170に発生する光は、利得部分162,172を含む積層体120の垂直断面の有効屈折率(以下、単に「利得部分162,172の有効屈折率」という)と、利得領域160,170を避けた積層体120の垂直断面の有効屈折率(以下、単に「利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率」という)と、の差により、円弧状の利得部分162,172内を進行することができる。
【0072】
利得部分162,172の曲率半径は、利得部分162,172の有効屈折率と、利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差によるが、例えば、800μm以上である。利得部分162,172の曲率半径が、800μm未満であると、効率よく利得部分162,172内の光を導波させることができない場合がある。好ましくは、利得部分162,172の曲率半径は、1600μm程度である。これにより、不必要に発光装置100全体を大きく形成することなく、効率よく利得部分162,172内の光を導波させることができる。
【0073】
第1利得領域160は、さらに、第3利得部分164を有することができる。同様に、第2利得領域170は、さらに、第4利得部分174を有することができる。
【0074】
第3利得部分164は、第1利得部分162から第2面132まで、直線状に設けられている。すなわち、第3利得部分164は、第1利得領域160の第2端面191を構成している。第3利得部分164は、円弧状の第1利得部分162と滑らかに接続されている。例えば、第3利得部分164は、利得部分162,164の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。第3利得部分164は、垂線Pに対して、第3角度β(0度を含む)で傾斜している。
【0075】
第4利得部分174は、第2利得部分172から第2面132まで、直線状に設けられている。すなわち、第4利得部分174は、第2利得領域170の第4端面193を構成している。第4利得部分174は、円弧状の第2利得部分172と滑らかに接続されている。例えば、利得部分174は、利得部分172,174の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。第4利得部分174は、垂線Pに対して、第3角度β(0度を含む)で傾斜している。第3利得部分164および第4利得部分174は、互いに平行である。第4利得部分174の長さは、図1に示すように、第3利得部分164の長さより大きくてもよい。
【0076】
第3利得領域180は、第1利得領域160の第3利得部分164、または第2利得領域170の第4利得部分174に沿って、第5端面195から第6端面196まで直線状に設けられている。図1の例では、2つの第3利得領域180が形成されているが、その数は特に限定されない。図1の例では、第1利得領域に沿って、積層体120の積層方向から見て(平面視において)第1利得領域の第4面側と、第2利得領域に沿って第2利得領域の第3面側とに、第3利得領域180が形成されている。
【0077】
第5端面195および第6端面196は、少なくとも後述のコンタクト層110および第2クラッド層108の一部から構成される面である。第5端面195および第6端面196は、第1溝部150および第2溝部152を作製することにより、形成されることができる。第3利得領域180において発生する光は、第3利得領域180の有効屈折率と、第1溝部および第2溝部を含む積層体120の垂直断面における有効屈折率(以下、単に「溝部150,152の有効屈折率」という)と、の差により、反射されることができる。
【0078】
第5端面195および第6端面196は、積層体120の積層方向から見て(平面視において)、第3利得領域180の延伸方向に対して垂直に形成されていることができる。これにより、第5端面195と第6端面196との間で、第3利得領域180に発生する光を、多重反射させることができる。すなわち、第3利得領域180は、光共振器を構成することができる。第3利得領域180において発生した光は、利得領域180内で共振する間に、利得領域160,170を導波する光に結合し、利得領域160,170内を導波することができる。
【0079】
なお、第5端面195と第6端面196との間で効率よく光を共振させるためには、第5端面195および第6端面196の反射率が高いことが望ましい。第3利得領域の有効屈折率と、溝部150,152の有効屈折率と、の間に所定の差を設けることにより、光を反射させていることを考慮すると、第5端面195は、コンタクト層110および第2クラッド層108だけでなく、活性層106、第1クラッド層104、および基板102の一部からも構成されていることが望ましい。
【0080】
図1の例では、第3利得領域180は、第2面132に対して、第3利得部分164および第4利得部分174と、同じ傾きで傾いて形成されている。言い換えれば、第3利得領域180は、第3利得部分164および第4利得部分174に平行に設けられている。より具体的には、利得領域180は、第2面の垂線Pに対して第3角度β(0度を含む)で傾いて形成されている。これにより、第3利得領域180で発生し、第3利得領域180内で共振する光は、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に、効率よく結合することができる。
【0081】
なお、第3利得領域180内で共振する光を、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に、効率よく結合させるためには、第1利得領域160および第2利得領域170と、それに沿って形成される第3利得領域180と、の間の距離Lは、利得領域および利得領域を避けた部分の有効屈折率にも依るが、例えば100nmから利得領域の幅(数μmから数十μm)の2倍程度である。例えば、距離Lが100nmより小さいと、第1利得領域および第2利得領域内を進行している光も、共振してしまう場合がある。距離Lが利得領域の幅の2倍よりも大きいと、十分な結合が生じない場合がある。
【0082】
結合した光は、利得領域160,170内を、利得を受けつつ導波し、第2面132に設けられた第2端面191および第4端面193から出射することができる。すなわち、第2面132は、第1利得領域160および第2利得領域170に発生する光の出射面であると同時に、第3利得領域180に発生する光の出射面となることができる。
【0083】
なお、第3利得領域180は、第1利得領域160の第3面側や第2利得領域170の第4面側に形成されていてもよい。また、第3利得領域は、1つしか形成されていなくてもよいし、第1利得領域160および第2利得領域のそれぞれに沿って、第3面側と第4面側の両方に形成されていてもよい。複数の第3利得領域を形成することで、発光装置100を高出力化することができる。
【0084】
第1利得領域160に沿って形成される第3利得領域の数と、第2利得領域170に沿って形成される第3利得領域の数とは、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、複数の第3利得領域の長さは、互いに異なっていてもよいし、全て同一の長さであってもよい。第1利得領域160に沿って形成される第3利得領域の数および長さと、第2利得領域170に沿って形成される第3利得領域の数および長さを等しくすることにより、第2端面191から出射される光20の強度と、第4端面193から出射される光22の強度を近づけることができる。
【0085】
第2クラッド層108は、図2に示すように、活性層106上に形成されている。第2クラッド層108としては、例えば、第2導電型(例えばp型)のInGaAlP層などを用いることができる。
【0086】
例えば、p型の第2クラッド層108、不純物がドーピングされていない活性層106、およびn型の第1クラッド層104により、pinダイオードが構成される。第1クラッド層104および第2クラッド層108の各々は、活性層106よりも禁制帯幅が大きく、屈折率が小さい層である。活性層106は、光を発生させ、かつ光を増幅しつつ導波させる機能を有する。第1クラッド層104および第2クラッド層108は、活性層106を挟んで、注入キャリア(電子および正孔)並びに光を閉じ込める機能(光の漏れを抑制する機能)を有する。
【0087】
発光装置100は、第1電極112と第2電極114との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、活性層106の利得領域160,170,180において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。この生じた光を起点として、連鎖的に誘導放出が起こり、利得領域160,170,180内で光の強度が増幅される。
【0088】
例えば、図1に示すように、第1利得領域160に生じる光の一部10は、第1利得領域160内で増幅された後、第1面130において反射して、第2利得領域170の第4端面193から光22として出射されるが、反射後の第2利得領域170内においても光強度が増幅される。同様に、第2利得領域170に生じる光の一部は、第2利得領域170内で増幅された後、第1面130において反射して、第1利得領域160の第2端面191から光20として出射されるが、反射後の第1利得領域160内においても光強度が増幅される。
【0089】
なお、第1利得領域160に発生する光には、直接、第2端面191から光20として出射されるものもある。同様に、第2利得領域170に発生する光には、直接、第4端面193から光22として出射されるものもある。これらの光も同様に各利得領域160,170内において増幅される。
【0090】
また、第1利得領域160に沿って形成された第3利得領域180に発生する光は、第3利得領域180内において、第5端面195と第6端面196の間で多重反射を繰り返しつつ増幅された後、第1利得領域160内を導波する光に結合する。結合した光の一部は、第1利得領域160内で増幅された後、第1面130において反射して、第2利得領域170の第4端面193から光22として出射されるが、反射後の第2利得領域170内においても光強度が増幅される。結合した光には、第2端面191から光20として出射されるものもあるが、これらの光も同様に第1利得領域160内において増幅される。
【0091】
同様に、第2利得領域170に沿って形成された第3利得領域180に発生する光は、第3利得領域180内において、第5端面195と第6端面196の間で多重反射を繰り返しつつ増幅された後、第2利得領域170内を導波する光に結合する。結合した光の一部は、第2利得領域170内で増幅された後、第1面130において反射して、第1利得領域160の第2端面191から光20として出射されるが、反射後の第1利得領域160内においても光強度が増幅される。結合した光には、第4端面193から光22として出射されるものもある。これらの光も同様に第2利得領域170内において増幅される。
【0092】
コンタクト層110は、図2に示すように、第2クラッド層108上に形成されている。すなわち、コンタクト層110は、第2クラッド層108の活性層106側とは反対側に形成されているといえる。コンタクト層110は、第2電極114とオーミックコンタクトすることができる。コンタクト層110の上面113は、コンタクト層110と第2電極114との接触面であるといえる。コンタクト層110としては、例えば、p型のGaAs層などを用いることができる。
【0093】
コンタクト層110と、第2クラッド層108の一部とは、柱状部111を構成することができる。柱状部111の平面形状は、利得領域160,170,180の平面形状と同じである。すなわち、コンタクト層110の上面113の平面形状は、利得領域160,170,180の平面形状と同じであるといえる。例えば、柱状部111の平面形状によって、電極112,114間の電流経路が決定され、その結果、利得領域160,170,180の平面形状が決定される。なお、図示はしないが、柱状部111の側面を傾斜させることもできる。
【0094】
絶縁層116は、第2クラッド層108上であって、柱状部111の側方に形成されている。絶縁層116は、柱状部111の側面に接していることができる。絶縁層116の上面は、例えば、コンタクト層110の上面113と連続している。絶縁層116としては、例えば、SiN層、SiO2層、SiON層、Al2O3層、ポリイミド層などを用いることができる。
【0095】
絶縁層116として上記の材料を用いた場合、電極112,114間の電流は、絶縁層116を避けて、該絶縁層116に挟まれた柱状部111を流れることができる。絶縁層116は、活性層106の屈折率よりも小さい屈折率を有することができる。この場合、絶縁層116を形成した部分の垂直断面の有効屈折率は、絶縁層116を形成しない部分、すなわち、柱状部111が形成された部分の垂直断面の有効屈折率よりも小さくなる。これにより、平面方向において、利得領域160,170,180内に効率良く光を閉じ込めることができる。なお、図示はしないが、絶縁層116を設けないこともできる。絶縁層116が空気であると解釈してもよい。
【0096】
第1電極112は、基板102の下の全面に形成されている。第1電極112は、該第1電極112とオーミックコンタクトする層(図示の例では基板102)と接していることができる。第1電極112は、基板102を介して、第1クラッド層104と電気的に接続されている。第1電極112は、発光装置100を駆動するための一方の電極である。第1電極112としては、例えば、基板102側からCr層、AuGe層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。
【0097】
なお、第1クラッド層104と基板102との間に、第2コンタクト層(図示せず)を設け、ドライエッチングなどにより該第2コンタクト層を露出させ、第1電極112を第2コンタクト層上に設けることもできる。これにより、片面電極構造を得ることができる。この形態は、基板102が絶縁性である場合に特に有効である。
【0098】
第2電極114は、コンタクト層110の上面113に接して形成されている。さらに、第2電極114は、図2に示すように、絶縁層116上に形成されていてもよい。第2電極114は、コンタクト層110を介して、第2クラッド層108と電気的に接続されている。第2電極114は、発光装置100を駆動するための他方の電極である。第2電極114としては、例えば、コンタクト層110側からCr層、AuZn層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。
【0099】
以上、本実施形態に係る発光装置100の一例として、InGaAlP系の場合について説明したが、発光装置100は、発光利得領域が形成可能なあらゆる材料系を用いることができる。半導体材料であれば、例えば、AlGaN系、GaN系、InGaN系、GaAs系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、ZnCdSe系などの半導体材料を用いることができる。
【0100】
また、以上の例では、いわゆる屈折率導波型の発光装置100について説明した。発光装置100は、いわゆる利得導波路型でもよい。より具体的には、利得領域160,170,180のうちの一つまたは全てが利得導波路型であってもよい。ただし、利得部分162,172の有効屈折率と、利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、に所定の差を設けることを考慮すると、少なくとも曲率を有する利得部分162,172については、屈折率導波型の構造を有することが望ましい。
【0101】
本実施形態に係る発光装置100は、例えば、プロジェクター、ディスプレイ、照明装置、計測装置などの光源に適用されることができる。
【0102】
本実施形態に係る発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0103】
発光装置100によれば、第1利得領域160は、第1の曲率を備えた第1利得部分162を有し、第2利得領域170は、第2の曲率を備えた第2利得部分172を有する。そのため、利得領域160,170に発生する光の第2面132に対する入射角βを大きくすることなく、第1利得領域160の第2端面191と、第2利得領域170の第4端面193と、の間隔D(出射面の間隔D)を大きく形成することができる。これにより、出射光の放射パターンが歪むことを抑制することができ、例えば発光装置をプロジェクターの光源に用いた場合に、ライトバルブを均一に照明することができる。
【0104】
さらに、発光装置100によれば、第1面から第2面まで直線状である利得領域を用いた例に比べて、間隔Dを大きく形成するために、利得領域の全長を大きくしなくてよい。そのため、多大な電流を流す必要はなく、消費電力を抑えることができる。さらに、利得領域の全長を大きくしなくてよいので、装置全体の小型化を図ることができる。そのため、資源が無駄となることもなく、製造コストを抑えることができる。
【0105】
以上のように、発光装置100では、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、間隔Dを大きく形成することができる。より具体的には、発光装置100では、出射面の間隔Dを0.262mm以上1.909mm以下とし、角度βを5度以下とし(0度を含む)、利得領域160,170の全長を1.5mm以上3mm以下とすることができる。
【0106】
発光装置100によれば、第1利得領域160は、垂線Pに対して第1角度α1で傾いて第1面130と接続し、第2利得領域170は、垂線Pに対して第2角度α2で傾いて第1面130と接続することができる。そして、第1角度α1と第2角度α2とは、臨界角以上であって、同じ大きさであることができる。そのため、第1面130は、利得領域160,170に発生する光を、全反射させることができる。したがって、発光装置100では、第1面130における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。さらに、第1面130に反射膜を形成する工程が不要となるので、製造コストおよび製造に必要な材料・資源を削減することができる。
【0107】
発光装置100によれば、第3利得領域180は光共振器であることができる。そのため、第3利得領域180に発生する光は、第3利得領域において共振する間に、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に結合して、第2端面191および第4端面193から出射されることができる。すなわち、第3利得領域180を形成しない場合と同じ出射面間隔でありながら、第3利得領域を形成しない場合と比較して、高出力化することができる。
【0108】
発光装置100によれば、第1面130は、劈開によって形成された劈開面であることができる。そのため、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって形成する場合に比べて、精度よく第1面130を形成することができ、端面における光散乱を小さくすることができる。したがって、発光装置100では、第1面130における光損失を抑制することができ、効率よく光を反射させることができる。
【0109】
(2.発光装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る発光装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図であって、図2に対応している。図5は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図であって、図2に対応している。
【0110】
図4に示すように、基板102上に、第1クラッド層104、活性層106、第2クラッド層108、およびコンタクト層110を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。
【0111】
図5に示すように、コンタクト層110および第2クラッド層108をパターニングする。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて行われる。本工程により、柱状部111を形成することができる。
【0112】
次に、図3に示すように、コンタクト層110、第2クラッド層108、活性層106、第1クラッド層104、及び基板102をパターニングすることにより、第1溝部150および第2溝部152を形成する。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて行われる。溝部150,152の底面の位置は、活性層106の下面の位置より下に設けられていることが望ましい。本実施形態に係る発光装置100においては、溝部150,152の底面の位置は、基板102の上面の位置より下である。
【0113】
続いて、図2に示すように、柱状部111の側面を覆うように絶縁層116を形成する。具体的には、まず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、塗布法などにより、第2クラッド層108の上方(コンタクト層110上を含む)に絶縁部材(図示せず)を成膜する。次に、例えば、エッチング技術などを用いて、コンタクト層110の上面113を露出させる。以上の工程により、絶縁層116を形成することができる。なお、本工程において、第1溝部150および第2溝部152を絶縁層で埋め込むこともできる。また、例えば、溝部150,152の領域をレジスト膜(図示しない)等で覆うことにより、溝部150,152に絶縁層を埋め込まないこともできる。
【0114】
次に、コンタクト層110上および絶縁層116上に第2電極114を形成する。第2電極114は、例えば、フォトリソグラフィー技術によりレジスト膜(図示しない)等で所定の領域を覆った後、真空蒸着法およびリフトオフ法を行うことにより、所望の形状に形成されることができる。なお、溝部150,152が形成された領域は、溝部に電極材料が入り込むことで短絡しないよう、例えば、溝部150,152より広い領域をレジスト膜等で覆うことが望ましい。
【0115】
次に、基板102の下面下に第1電極112を形成する。第1電極112は、例えば、真空蒸着法により形成される。なお、第1電極112および第2電極114の形成順序は、特に限定されない。
【0116】
以上の工程により、本実施形態に係る発光装置100を製造することができる。
【0117】
発光装置100の製造方法によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、複数の出射面の間隔を大きく形成することができる発光装置100を得ることができる。
【0118】
(3.発光装置の変形例)
次に、本実施形態の変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。以下、本実施形態の変形例に係る発光装置において、本実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0119】
(3.1.第1変形例に係る発光装置(直線導波路を介して反射端面に入射))
まず、本実施形態の第1変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200を模式的に示す平面図である。なお、図6では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0120】
発光装置100の例では、図1に示すように、曲率を有する利得部分162,172が、第1面130と接続していた。これに対し、発光装置200では、図6に示すように、直線状の利得部分166,176が第1面130と接続している。
【0121】
すなわち、第1利得領域160は、第1面130から第1利得部分162まで、直線状に設けられた第5利得部分166を有する。つまり、第5利得部分166は、第1利得領域160の第1端面190を構成している。第5利得部分166は、垂線Pに対して一方側(例えば第3面134側)に第1角度α1で傾いている。第5利得部分166は、円弧状の第1利得部分162と滑らかに接続されている。例えば、第5利得部分166は、第1利得部分162の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。
【0122】
第2利得領域170は、第1面130から第2利得部分172まで、直線状に設けられた第6利得部分176を有する。つまり、第6利得部分176は、第2利得領域170の第3端面192を構成している。第6利得部分176は、垂線Pに対して他方側(例えば第4面136側)に第2角度α2で傾いている。第6利得部分176は、円弧状の第2利得部分172と滑らかに接続されている。例えば、第6利得部分176は、第2利得部分172の境界上の点における接線と平行となるように設けられている。利得部分166,176は、垂線Pに関して対称に配置されていてもよい。
【0123】
発光装置200によれば、上述のように、直線状の利得部分166,176が、第1面130に設けられた端面190,192を構成している。そのため、発光装置200では、発光装置100の例に比べて、より確実に、第1利得領域において発生し第1面130において反射する光を第2利得領域に入射させ、第2利得領域において発生し第1面130において反射する光を第1利得領域に入射させることができる。
【0124】
(3.2.第2変形例に係る発光装置(曲がり部深堀り))
次に、本実施形態の第2変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す平面図である。図8は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す断面図であって、図7のVII−VII線断面図である。図9は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す断面図であって、図7のVIII−VIII線断面図である。なお、図7では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0125】
発光装置100の例では、図2に示すように、柱状部111は、コンタクト層110と、第2クラッド層108の一部と、によって構成されていた。これに対し、発光装置300では、図8に示すように、利得部分162,172の平面形状を形成する柱状部111は、コンタクト層110と、第2クラッド層108と、活性層106と、第1クラッド層104と、基板102の一部と、によって構成されている。
【0126】
なお、図示はしないが、利得部分162,172の平面形状を形成する柱状部111は、例えば、コンタクト層110、第2クラッド層108、活性層106、第1クラッド層104から構成されていてもよい。
【0127】
絶縁層116としては、上述のように、SiN層、SiO2層、SiON層、Al2O3層などの誘電体絶縁層や、ポリイミド層などの紫外線硬化樹脂層または熱硬化樹脂層を用いることができ、これらを積層させて絶縁層116としてもよい。なお、利得部分162,172の有効屈折率と、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、に所定の差を設けることを考慮すると、絶縁層116として、柱状部111との屈折率差の大きい誘電体絶縁層を用いることが望ましい。例えば、まず、誘電体絶縁層をCVD法やスパッタ法で成膜した後、ポリイミド層を塗布法により形成して、絶縁層116としてもよい。これにより、誘電体絶縁層を厚く成膜して絶縁層116とする場合に比べて、容易に(短時間で)絶縁層116を形成することができる。
【0128】
発光装置300によれば、発光装置100に比べて、利得部分162,172の有効屈折率と、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差を大きくすることができ(所望の値にすることができ)、より効率よく利得部分162,172内の光を導波させることができる。
【0129】
なお、直線状の利得部分164,174の平面形状を形成する柱状部111は、図9に示すように、コンタクト層110と、第2クラッド層108の一部と、によって構成されていることが望ましい。仮に、利得部分164,174の平面形状を形成する柱状部111を、図8に示すように、コンタクト層110と、第2クラッド層108と、活性層106と、第1クラッド層104と、基板102の一部と、によって構成すると、利得領域160,170を、高次のモード(利得領域を横断する方向(水平面内で、伝播方向に垂直な方向)の波数がより大きなモード)が伝播し、放射パターンが悪化することがある。
【0130】
また、絶縁層116を設けないこともできる。絶縁層116を空気であると解釈してもよい。絶縁層116を設けない場合、利得部分162,172の有効屈折率と、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差を大きくすることはできる(空気の屈折率は約1.0、SiNの屈折率は約2.1)。しかし、その分、図8における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、図9における利得領域160,170を避けた部分の有効屈折率と、の差も大きくなり、例えば、第3利得部分164から第1利得部分162へ光が入射する際に、反射する光の割合が大きくなる場合がある。そのため、光損失が大きくなる場合がある。したがって、SiN層等からなる絶縁層116を設けることが望ましい。
【0131】
(3.3.第3変形例に係る発光装置(DFBタイプ))
次に、本実施形態の第3変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400を模式的に示す平面図である。図11は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400を模式的に示す断面図であって、図10のXII−XII線断面図である。なお、図10では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0132】
発光装置100の例では、第3利得領域180の光共振器は、図1に示すように、溝部150,152を作製することによって、第5端面195,第6端面196が形成され、第3利得領域180において発生する光は、第3利得領域の有効屈折率と、溝部の有効屈折率と、の差により反射される、端面反射型の光共振器であった。これに対し、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400の第3利得領域180の光共振器は、図10に示すように、分布帰還型(DFB型ともいう)の光共振器であることができる。
【0133】
より具体的には、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400においては、図11に示すように、第5端面および第6端面に挟まれた領域の、第1クラッド層、活性層および第2クラッド層のうちの、少なくとも一つの層に、高屈折率領域440と低屈折率領域442とが第3利得領域の延伸方向(導波方向)に向かって周期的に形成されている。これにより、第3利得領域において発生し、第3利得領域を伝播する光は、高屈折率領域と低屈折率領域との各界面において、180度方向(導波方向と逆方向)に向かって回折されることができる。この導波方向と逆方向に回折された光は、再び導波方向(元の進行方向)に向かって回折されることができる。すなわち、第3利得領域は、高屈折率領域440と低屈折率領域442との各界面において、回折によって光が多重反射する、分布帰還型の光共振器であることができる。
【0134】
このような、分布帰還型の光共振器を形成するためには、高屈折率領域440および低屈折率領域442の延伸方向の長さdH,dLが適切に設計されている必要がある。具体的には、活性層の発生する光の中心波長をλ、高屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnH、低屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnLとして、例えば、dH=(2mH+1)λ/(4nH)、dL=(2mL+1)λ/(4nL)程度とすることができる。mH,mLは、0以上の整数である。これにより、λの近傍の多くとも2つの波長λR1,λR2で共振することができる。例えば、mH=mL=0の場合は、2nLλ/(nH+nL)<λR1,λR2<2nHλ/(nH+nL)を満たす波長λR1,λR2で共振することができる。具体的な共振波長λR1,λR2は、転送行列法、FDTD(Finite Difference Time Domain)法、平面波展開法等の数値解析を行うことにより、解析することができる。高屈折率領域および低屈折率領域の延伸方向の長さdH,dLは、共振波長λR1,λR2が活性層の発生する光の波長帯域(発光材料にも依るが、通常λ±数十nm程度)に入る範囲で、数値解析により適宜調整することができる。
【0135】
高屈折率領域440および低屈折率領域442は、例えば以下に述べる方法によって作製することができる。まず、MOCVD法などにより、第1クラッド層および活性層を成長した後、後に成長する第2クラッド層よりも高屈折率な層を成長する。次いで、干渉露光技術、液浸露光技術、EBリソグラフィー技術、またはナノインプリントリソグラフィー技術と、エッチング技術によりパターニングして、後に高屈折率領域となる部分以外の活性層を露出させる。そして、再度MOCVD法などにより、第2クラッド層およびコンタクト層を成長する。これにより、積層体120の、第2クラッド層よりも高屈折率な層を残した部分の垂直断面における有効屈折率は、第2クラッド層よりも高屈折率な層エッチングした部分の垂直断面における有効屈折率よりも高くなる。以降の工程は、発光装置100を作製する方法と同様である。以上により、高屈折率領域と低屈折率領域を作製することができる。
【0136】
なお、高屈折率領域440および低屈折率領域442を作製する方法は、これに限定されず、例えば、第1クラッド層、活性層、第2クラッド層を成長した後に、第2クラッド層をパターニングすることによって形成されていてもよい。発光材料やクラッド層の種類、高屈折率領域および低屈折率領域の長さdH,dL、高屈折率領域および低屈折率領域の屈折率nH,nLなどにより、適宜変更することができる。
【0137】
発光装置100においては、第3利得領域180は端面反射型の光共振器であった。そのため、第5端面および第6端面において反射した光は、第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合して、第2端面または第4端面から出射されるが、第5端面および第6端面において透過した光は、損失となっていた。これに対し、発光装置400においては、第3利得領域180は分布帰還型の光共振器である。そのため、多重反射により、より多くの光が、第3利得領域の端面195,196に到達する前に、第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合し、第2端面または第4端面から出射される。すなわち、端面における透過損失を低減することができる。すなわち、発光装置100と比較して高出力化を図りつつ、出射面の間隔を大きく形成することができる。
【0138】
(3.4.第4変形例に係る発光装置(DBRタイプ・エッチングDBRも含む))
次に、本実施形態の第4変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図12は、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500を模式的に示す平面図である。図13は、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500を模式的に示す断面図であって、図12のXIII−XIII線断面図である。なお、図12では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0139】
発光装置100の例では、第3利得領域180の光共振器は、図1に示すように、溝部150,152を作製することによって、第5端面195,第6端面196が形成され、第3利得領域180において発生する光は、第3利得領域の有効屈折率と、溝部の有効屈折率と、の差により反射される、端面反射型の光共振器であった。これに対し、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500の第3利得領域180の光共振器は、図12に示すように、第5端面195,第6端面196の外側に、分布ブラッグ反射型ミラー(DBRともいう)を形成した、分布反射型の光共振器であることができる。
【0140】
より具体的には、本実施形態の第4変形例に係る発光装置500においては、図13に示すように、第5端面および第6端面に挟まれた領域の外側の、第1クラッド層、活性層および第2クラッド層のうちの、少なくとも一つの層に、高屈折率領域540と低屈折率領域542とが第3利得領域の延伸方向(導波方向)に向かって周期的に形成されている。これにより、第3利得領域において発生し、第5端面に向かって第3利得領域を伝播する光は、第5端面の外側の高屈折率領域と低屈折率領域との各界面において、180度方向(導波方向と逆方向)に向かって回折されることができる。この導波方向と逆方向に回折された光の一部は、第6端面に向かって第3利得領域内を伝播することができる。また、導波方向と逆方向に回折された光の一部は、再び伝播導波方向(元の進行方向)に向かって回折されることもできる。このように、第5端面に向かって第3利得領域を伝播する光は、高屈折率領域540と低屈折率領域542との各界面において、回折によって多重反射を繰り返しながら、最終的にほぼ全ての光が第6端面方向に反射される。すなわち、高屈折率領域540と低屈折率領域542はDBRを構成することができる。同様に、第3利得領域において発生し、第6端面に向かって第3利得領域を伝播する光は、高屈折率領域540と低屈折率領域542との各界面において、回折によって多重反射を繰り返しながら、最終的にほぼ全ての光が第5端面方向に反射される。すなわち、第3利得領域は、第5端面の外側に形成されたDBRと第6端面の外側に形成されたDBRとの間で光が多重反射する、分布反射型の光共振器であることができる。
【0141】
このような、分布反射型の光共振器を形成するためには、高屈折率領域540および低屈折率領域542の延伸方向の長さdH,dLが適切に設計されている必要がある。具体的には、活性層の発生する光の中心波長をλ、高屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnH、低屈折率領域を構成する部分の積層体120の垂直断面の有効屈折率をnLとして、例えば、dH=(2mH+1)λ/(4nH)、dL=(2mL+1)λ/(4nL)程度とすることができる。mH,mLは、0以上の整数である。これにより、活性層の発生する光の波長幅をΔλ、第3利得領域の長さをL3とすると、λ−Δλ/2≦λ≦λ+Δλ/2を満たす、多数の共振波長λRm=2nL3/m(nは第3利得領域の有効屈折率、mは正の整数)で共振することができる。Δλは、発光材料にも依るが数十nm程度である。
【0142】
高屈折率領域540および低屈折率領域542は、例えば、発光装置100における、溝部150,152と同様の方法によって作製することができる。具体的には、溝部150,152と同様に、低屈折率領域542となる領域をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることにより、低屈折率領域542を形成することができる。このとき、周期的に形成された低屈折率領域542の間の、エッチングされずに残された領域が、高屈折率領域540となる。低屈折率領域542は、溝部150,152と同様に、絶縁層116を形成する際に、絶縁層116によって埋め込むこともできるし、レジスト膜(図示しない)等で覆うことにより、絶縁層で埋め込まないこともできる。
【0143】
なお、高屈折率領域540および低屈折率領域542を作製する方法は、これに限定されず、例えば、第3変形例と同様に、パターニングには、高屈折率領域および低屈折率領域の長さdH,dLにも依るが、干渉露光技術、液浸露光技術、EBリソグラフィー技術、またはナノインプリントリソグラフィー技術などを適用することもできる。また、溝部150,152と同様に溝部を形成した後に、CVD法、スパッタ法、斜方蒸着法などによって、側面から高屈折率材料と低屈折材料を交互に積層することによって、高屈折率領域540および低屈折率領域542を形成してもよい。発光材料やクラッド層の種類、高屈折率領域および低屈折率領域の長さdH,dL、高屈折率領域および低屈折率領域の屈折率nH,nLなどにより、適宜変更することができる。
【0144】
発光装置100においては、第3利得領域180は端面反射型の光共振器であった。そのため、第5端面および第6端面において反射した光は、第1利得領域または第2利得領域を導波する光に結合して、第2端面または第4端面から出射されるが、第5端面および第6端面において透過した光は、損失となっていた。これに対し、発光装置500においては、高屈折率領域540と低屈折率領域542との各界面において、回折によって多重反射を繰り返しながら、最終的にほぼ全ての光を反射させることができるため、透過損失を低減させることができる。すなわち、発光装置500は、発光装置100と比較して高出力化を図りつつ、出射面間隔を大きく形成することができる。
【0145】
図14(a)、(b)は発光装置から出力される光のスペクトル形状を模式的に表現したグラフであり、縦軸に出力光強度、横軸に波長を示している。
発光装置400においては、第3利得領域180は分布帰還型の光共振器であった。そのため、多くとも2つの波長λR1,λR2においてのみ共振しており、発光装置400の第2端面および第4端面から出射される光20,22のスペクトル形状は、SLD領域において発生する光と合わせて、模式的には図14(a)のような形状となると考えられる。これに対し、発光装置500においては、第3利得領域180は分布反射型の光共振器である。そのため、λ−Δλ/2≦λ≦λ+Δλ/2を満たす、多数の共振波長λRm=2nL3/m(nは第3利得領域の有効屈折率、mは正の整数)で共振することができる。したがって、発光装置500の第2端面および第4端面から出射される光20,22のスペクトル形状は、SLD領域において発生する光と合わせて、模式的には図14(b)のような形状となると考えられる。したがって、特定の共振波長の光強度のみが強い発光装置400の場合と比較して、発光装置500の場合は、多数の共振波長の光を含むことができ、インコヒーレント性を向上させることができる。すなわち、発光装置500は、発光装置400と比較してスペックルノイズを低減させつつ、出射面間隔を大きく形成することができる。
【0146】
(3.5.第5変形例に係る発光装置(曲線部にも第3利得領域))
次に、本実施形態の第5変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図15は、本実施形態の第5変形例に係る発光装置600を模式的に示す平面図である。
【0147】
発光装置100の例では、図1に示すように、第1利得領域および第2利得領域の直線状の利得部分である、第3利得部分164および第4利得部分174に沿って、第3利得領域180が設けられていた。より具体的には、第3利得領域180は、第3利得部分164または第4利得部分174に沿って、平行に、直線状に設けられていた。これに対し、本実施形態の第5変形例に係る発光装置600においては、図15に示すように、第1利得領域および第2利得領域の曲率を備えた利得部分である、第1利得部分162および第2利得部分172に沿って、第3利得領域180が設けられている。より具体的には、発光装置600における第3利得領域180は曲率を備えており、その接線方向に沿って引いた中心線と、第1利得部分162または第2利得部分172の接線方向に沿って引いた中心線と、の間の距離が一定となるように、第3利得領域180は設けられている。第3利得領域と、第1利得部分または第2利得部分と、の間の距離Lは、利得領域および利得領域を避けた部分の有効屈折率にも依るが、例えば100nmから利得領域の幅(数umから数十um)の2倍程度である。
【0148】
第3利得領域180の形状は、例えば、第1利得部分および第2利得部分172が円弧の形状を有する場合、第1利得部分162または第2利得部分172と同心円状の円弧の形状であることができる。より具体的には、第1利得部分162が、点O1を中心とする円弧の形状を有し、第2利得部分172が、点O2を中心とする円弧の形状を有する場合、第3利得領域180は、点O1または点O2を中心とした曲率半径の異なる、円弧の形状を有することができる。
【0149】
発光装置600においても、第5端面195および第6端面196は、第3利得領域の延伸方向に垂直に形成されていることができる。例えば、第3利得領域が円弧の形状を有する場合、第5端面195および第6端面196は、半径方向に平行に形成されていることができる。これにより、第5端面195と第6端面196との間で、第3利得領域180に発生する光を、多重反射させることができる。すなわち、第3利得領域180は、光共振器を構成することができる。
【0150】
このような、曲率を備えた第3利得領域180を用いた場合も、発光装置100と同様に、第3利得領域180で発生し、第3利得領域180内で共振する光は、第1利得領域160および第2利得領域170を導波する光に、効率よく結合することができる。この結合した光は、発光装置100の場合と同様に、第2端面191および第4端面193から出射されることができる。すなわち、第3利得領域180を形成しない場合と同じ出射面間隔でありながら、第3利得領域を形成しない場合と比較して、高出力化することができる。
【0151】
発光装置600においては、第3利得領域180は曲率を備えており、第1利得部分または第2利得部分に沿って形成されている。そのため、第1利得領域および第2利得領域における、第1利得部分または第2利得部分の長さが、第3利得部分または第4利得部分の長さと比較して大きい場合、発光装置100よりも容易に第3利得領域180の長さを大きく形成することができる。したがって、このような場合、発光装置100と比較して、容易に高出力化することができる。
【0152】
(3.6.第6変形例に係る発光装置(アレイ))
次に、本実施形態の第6変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図16は、本実施形態の第6変形例に係る発光装置700を模式的に示す平面図である。なお、図16では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0153】
発光装置100の例では、図1に示すように、第1利得領域160および第2利得領域170は、1つずつ設けられており、この第1利得領域160または第2利得領域170に沿って、第3利得領域180が設けられていた。これに対し、発光装置700では、図16に示すように、第1利得領域160および第2利得領域170の各々が、複数設けられており、これら複数の第1利得領域160または複数の第2利得領域170に沿って、第3利得領域180も設けられている。
【0154】
すなわち、第1利得領域160、第2利得領域170および第3利得領域180は、利得領域群750を構成することができ、発光装置700においては、複数の利得領域群750が設けられている。図示の例では、3つの利得領域群750が設けられているが、その数は特に限定されない。
【0155】
複数の利得領域群750は、垂線Pの延びる方向と直交する方向に沿って、配列されている。より具体的には、隣り合う利得領域群750において、一方の利得領域群750の第4端面193と、他方の利得領域群750の第2端面191と、の間隔がDとなるように(出射面の間隔となるように)配列されている。これにより、後述するレンズアレイに、容易に光20,22を入射させることができる。
【0156】
発光装置700によれば、発光装置100の例に比べて、高出力化を図ることができる。
【0157】
(4.プロジェクター)
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。図18は、本実施形態に係るプロジェクター900の一部を模式的に示す図である。なお、図17では、便宜上、プロジェクター900を構成する筐体を省略し、さらに光源800を簡略化して図示している。また、図18では、便宜上、光源800、レンズアレイ902、および液晶ライトバルブ904について図示し、さらに光源800を簡略化して図示している。
【0158】
プロジェクター900は、図17に示すように、赤色光、緑色光、青色光を出射する赤色光源800R,緑色光源800G、青色光源800Bを含む。光源800R,800G,800Bは、本発明に係る発光装置を有する。以下の例では、本発明に係る発光装置として発光装置700を有する光源800R,800G,800Bについて説明する。
【0159】
図19は、本実施形態に係るプロジェクター900の光源800を模式的に示す図である。図20は、本実施形態に係るプロジェクター900の光源800を模式的に示す図19のXVII−XVII線断面図である。
【0160】
光源800は、図19および図20に示すように、発光装置700と、ベース810と、サブマウント820と、を有することができる。
【0161】
2つの発光装置700と、サブマウント820とは、構造体830を構成することができる。構造体830は、複数設けられ、図19に示すように、発光装置700の出射面となる端面191,193の配列方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に配列している。構造体830は、X軸方向の出射面の間隔と、Y軸方向の出射面の間隔と、が同じになるように、配列されることができる。これにより、発光装置700から出射される光を、容易に、レンズアレイ902に入射させることができる。
【0162】
構造体830を構成する2つの発光装置700は、サブマウント820を挟んで配置されている。図19および図20に示す例では、2つの発光装置700は、サブマウント820を介して第2電極114同士が対向するように配置されている。サブマウント820の第2電極114と接する面には、例えば、配線が形成されている。これにより、複数の第2電極114の各々に、個別に電圧を供給することができる。サブマウント820の材質としては、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0163】
ベース810は、構造体830を支持している。図20に示す例では、ベース810は、複数の発光装置700の第1電極112と接続されている。これにより、ベース810は、複数の第1電極112の共通電極として機能することができる。ベース810の材質としては、例えば、銅、アルミニウムが挙げられる。図示はしないが、ベース810は、ペルチェ素子を介して、ヒートシンクと接続されていてもよい。
【0164】
なお、構造体830の形態は、図19および図20に示す例に限定されない。例えば、図21に示すように、構造体830を構成する2つの発光装置700は、サブマウント820を介して、一方の発光装置700の第1電極112と、他方の発光装置700の第2電極114とが対向するように配置されていてもよい。また、図22に示すように、2つの発光装置700の第1電極112が、共通電極となるように配置されていてもよい。
【0165】
図17に示すように、プロジェクター900は、さらに、レンズアレイ902R,902G,902Bと、透過型の液晶ライトバルブ(光変調装置)904R,904G,904Bと、投写レンズ(投射装置)908と、を含む。
【0166】
光源800R,800G,800Bから出射された光は、各レンズアレイ902R,902G,902Bに入射する。図18に示すように、レンズアレイ902は、光源800側に、出射面191,193から出射される光20,22が入射する平坦面901を有することができる。平坦面901は、複数の出射面191,193に対応して複数設けられ、等間隔で配置されている。平坦面901によって、光20,22の光軸を、液晶ライトバルブ904の照射面905に対して、直交させることができる。
【0167】
レンズアレイ902は、液晶ライトバルブ904側に、凸曲面903を有することができる。凸曲面903は、複数の平坦面901に対応して複数設けられ、等間隔で配置されている。平坦面901において光軸が変換された光20,22は、凸曲面903によって、集光される、または拡散角を小さくされることにより、重畳(一部重畳)されることができる。これにより、均一性よく液晶ライトバルブ904を照射することができる。
【0168】
以上のように、レンズアレイ902は、光源800から出射される光20,22の光軸を制御して、光20,22を集光させることができる。
【0169】
図17に示すように、各レンズアレイ902R,902G,902Bによって集光された光は、各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bに入射する。各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bは、入射した光をそれぞれ画像情報に応じて変調する。そして、投写レンズ908は、液晶ライトバルブ904R,904G,904Bによって形成された像を拡大してスクリーン(表示面)910に投射する。
【0170】
また、プロジェクター900は、液晶ライトバルブ904R,904G,904Bから出射された光を合成して投写レンズ908に導くクロスダイクロイックプリズム(色光合成手段)906を、含むことができる。
【0171】
各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。このプリズムは、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投写光学系である投写レンズ908によりスクリーン910上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0172】
プロジェクター900によれば、放射パターンが良好で、小型化を図りつつ、複数の出射面の間隔を所望の値に設計することができる発光装置700を有する。そのため、プロジェクター900では、レンズアレイ902のアライメントが容易で、均一性よく液晶ライトバルブ904を照射することができる。そして、小型かつ高輝度化が図られたプロジェクターを提供することができる。
【0173】
なお、上述の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)が挙げられる。また、投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0174】
また、光源800を、光源800からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置(プロジェクター)の光源装置にも適用することが可能である。
【0175】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0176】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0177】
10…光の一部、20…光、22…光、100…発光装置、102…基板、104…第1層(第1クラッド層)、106…第3層(活性層)、108…第2層(第2クラッド層)、110…第4層(コンタクト層)、111…柱状部、112…第1電極、113…第4層の上面、114…第2電極、116…絶縁層、120…積層体、130…第1面、132…第2面、134…第3面、136…第4面、150…第1溝部、152…第2溝部、160…第1利得領域、162…第1利得部分、164…第3利得部分、166…第5利得部分、170…第2利得領域、172…第2利得部分、174…第4利得部分、176…第6利得部分、180…第3利得領域、190…第1端面、191…第2端面、192…第3端面、193…第4端面、195…第5端面、196…第6端面、200,300,400…発光装置、440…高屈折率領域、442…低屈折率領域、500…発光装置、540…高屈折率領域、542…低屈折率領域、600,700…発光装置、750…利得領域群、800…光源、810…ベース、820…サブマウント、830…構造体、900…プロジェクター、901…平坦面、902…レンズアレイ、903…凸曲面、904…液晶ライトバルブ、905…照射面、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投写レンズ、910…スクリーン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層、第2層、および前記第1層と前記第2層とに挟まれた第3層を有する積層体を含み、
前記第3層は、光を発生させ、かつ前記光が導波する、第1利得領域、第2利得領域および第3利得領域、を有し、
前記第1層および前記第2層は、前記第1利得領域、前記第2利得領域および前記第3利得領域に発生する前記光の漏れを抑制する層であり、
前記第3層は、前記積層体の外形を形成し、互いに対向する第1面および第2面を有し、
前記第1利得領域および前記第2利得領域に発生する前記光の波長帯において、前記第1面の反射率は、前記第2面の反射率よりも高く、
前記第1利得領域および前記第2利得領域は、前記第1面から前記第2面まで設けられ、
前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記第1面の垂線に対して一方側に傾いて前記第1面と接続し、
前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記垂線に対して他方側に傾いて前記第1面と接続し、
前記第1利得領域と前記第2利得領域とは、前記積層体の積層方向から見て、同じ傾きで傾いて前記第2面と接続し、
前記第1利得領域の前記第1面側の端面と、前記第2利得領域の前記第1面側の端面とは、前記第1面において重なっており、
前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第1の曲率を備えた第1利得部分を有し、
前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第2の曲率を備えた第2利得部分を有し、
前記第1利得領域または前記第2利得領域に沿って、前記第3利得領域が形成され、
前記第3利得領域を導波する前記光は、前記第3利得領域内で共振し、
前記第3利得領域内で共振する前記光は、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光に結合して、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波し、
前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光は、前記第1利得領域または前記第2利得領域の前記第2面側の端面から出射される、ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第1利得領域は、前記垂線に対して第1角度で傾いて前記第1面と接続し、
前記第2利得領域は、前記垂線に対して第2角度で傾いて前記第1面と接続し、
前記第1角度と前記第2角度とは、臨界角以上であって、同じ大きさである、ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、
前記第1利得領域は、
前記第1利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第3利得部分を有し、
前記第2利得領域は、
前記第2利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第4利得部分を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1利得領域は、
前記第1面から前記第1利得部分まで、直線状に設けられた第5利得部分を有し、
前記第2利得領域は、
前記第1面から前記第2利得部分まで、直線状に設けられた第6利得部分を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1利得部分および前記第2利得部分は、前記積層体の積層方向から見て、円弧の形状を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、端面反射型の光共振器である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、分布帰還型の光共振器である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、分布反射型の光共振器である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域と、前記第1利得領域または前記第2利得領域との距離は一定である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域と、前記第1利得領域または前記第2利得領域とは平行である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、複数形成されている、ことを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1利得領域および前記第2利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第2層の前記第3層側とは反対側に第4層が形成され、
前記第1層に電気的に接続された第1電極と、
前記第2層に電気的に接続され、前記第4層と接する第2電極とを有し、
前記第1利得領域および前記第2利得領域の形状は、前記第4層と前記第2電極との接触面の形状と同じであり、
前記第4層は、前記第2電極とオーミックコンタクトする層である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1面は、劈開面である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の発光装置と、
前記発光装置から出射された光を集光するマイクロレンズと、
前記マイクロレンズによって集光された光を、画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置によって形成された画像を投射する投射装置と、
を含む、ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項1】
第1層、第2層、および前記第1層と前記第2層とに挟まれた第3層を有する積層体を含み、
前記第3層は、光を発生させ、かつ前記光が導波する、第1利得領域、第2利得領域および第3利得領域、を有し、
前記第1層および前記第2層は、前記第1利得領域、前記第2利得領域および前記第3利得領域に発生する前記光の漏れを抑制する層であり、
前記第3層は、前記積層体の外形を形成し、互いに対向する第1面および第2面を有し、
前記第1利得領域および前記第2利得領域に発生する前記光の波長帯において、前記第1面の反射率は、前記第2面の反射率よりも高く、
前記第1利得領域および前記第2利得領域は、前記第1面から前記第2面まで設けられ、
前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記第1面の垂線に対して一方側に傾いて前記第1面と接続し、
前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、前記垂線に対して他方側に傾いて前記第1面と接続し、
前記第1利得領域と前記第2利得領域とは、前記積層体の積層方向から見て、同じ傾きで傾いて前記第2面と接続し、
前記第1利得領域の前記第1面側の端面と、前記第2利得領域の前記第1面側の端面とは、前記第1面において重なっており、
前記第1利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第1の曲率を備えた第1利得部分を有し、
前記第2利得領域は、前記積層体の積層方向から見て、第2の曲率を備えた第2利得部分を有し、
前記第1利得領域または前記第2利得領域に沿って、前記第3利得領域が形成され、
前記第3利得領域を導波する前記光は、前記第3利得領域内で共振し、
前記第3利得領域内で共振する前記光は、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光に結合して、前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波し、
前記第1利得領域および前記第2利得領域を導波する前記光は、前記第1利得領域または前記第2利得領域の前記第2面側の端面から出射される、ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第1利得領域は、前記垂線に対して第1角度で傾いて前記第1面と接続し、
前記第2利得領域は、前記垂線に対して第2角度で傾いて前記第1面と接続し、
前記第1角度と前記第2角度とは、臨界角以上であって、同じ大きさである、ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、
前記第1利得領域は、
前記第1利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第3利得部分を有し、
前記第2利得領域は、
前記第2利得部分から前記第2面まで、直線状に設けられた第4利得部分を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1利得領域は、
前記第1面から前記第1利得部分まで、直線状に設けられた第5利得部分を有し、
前記第2利得領域は、
前記第1面から前記第2利得部分まで、直線状に設けられた第6利得部分を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1利得部分および前記第2利得部分は、前記積層体の積層方向から見て、円弧の形状を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、端面反射型の光共振器である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、分布帰還型の光共振器である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、分布反射型の光共振器である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域と、前記第1利得領域または前記第2利得領域との距離は一定である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域と、前記第1利得領域または前記第2利得領域とは平行である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、複数形成されている、ことを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第3利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1利得領域および前記第2利得領域は、屈折率導波型の導波路構造を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第2層の前記第3層側とは反対側に第4層が形成され、
前記第1層に電気的に接続された第1電極と、
前記第2層に電気的に接続され、前記第4層と接する第2電極とを有し、
前記第1利得領域および前記第2利得領域の形状は、前記第4層と前記第2電極との接触面の形状と同じであり、
前記第4層は、前記第2電極とオーミックコンタクトする層である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1面は、劈開面である、ことを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の発光装置と、
前記発光装置から出射された光を集光するマイクロレンズと、
前記マイクロレンズによって集光された光を、画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置によって形成された画像を投射する投射装置と、
を含む、ことを特徴とするプロジェクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図14】
【公開番号】特開2012−222061(P2012−222061A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84251(P2011−84251)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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