説明

発光装置用基板及びその製造方法

【課題】 同一基板内に、平滑な個所と規則的な凹凸が形成されている発光装置用基板とその製造方法を提供する発光装置用基板とその製造方法を提供する。
【解決手段】
表面に凹凸部分と平滑部分とを有する樹脂が、金属薄板上に形成された発光装置用基板であって、前記凹凸部分の凹凸は曲面形状であり、且つ、隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比が1.0〜1.3、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.0〜2.0、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士の間隔が0.1〜15.0μm、凹凸高さが0.1〜6.0μm、平滑部分の粗さの変位は0.1μm未満である発光装置用基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置用基板に関するものであり、特に、有機EL、無機EL、LEDを発光源に用いた自発光型の表示装置、例えば、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイや照明に利用される発光装置用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパーやフレキシブルディスプレイに用いられるディスプレイ用基板として、ガラス、プラスチックまたは金属薄板を用いるものが知られている。これらのディスプレイの駆動方式は、導線を格子状に配置した単純マトリクス方式と薄膜トランジスタ(以下TFTと略記する)をスイッチング素子としたアクティブマトリクス方式があり、後者の方がコントラストが高く、反応速度が速い。
このTFTは高い寸法精度で電極材料・絶縁膜・アモルファスシリコン(以下、チャンネル層)を高温で繰り返し積層し、フォトエッチングによりパターニングする。このとき基板と積層膜の熱膨張差が大きい場合、基板が歪みパターンの位置合わせ精度が低下するといった問題があるため基板には低熱膨張性が求められる。
【0003】
また、基板表面に急峻で大きな凹凸があると、TFTのリーク電流の増加や駆動回路の断線が起こる惧れがあり、従って基板には平滑性が要求される。更に、基板上には駆動回路を形成するため絶縁性を有する必要がある。
これらの低熱膨張性・平滑性・絶縁性を兼ね備えた材料の一つがガラスであり、ディスプレイ用基板として広く普及している。
【0004】
しかし、ディスプレイを携帯する需要が増加し、落下などの衝撃に耐え得る耐衝撃性や薄型・軽量・フレキシブル性が要求されるようになり、ガラスに取って代わるディスプレイ用基板の検討が急務となっており、このような携帯性に優れた基板は、付加的に薄型・軽量・フレキシブル性・耐衝撃性の4つの特性を兼ね備えたものが求められる。
例えばディスプレイ用基板として、本出願人も特開2004−191463号(特許文献1参照)、特開2005−195771号(特許文献2参照)、特開2006−3775号公報(特許文献3参照)や特開2006−243199(特許文献4参照)として、薄型化・軽量化・耐衝撃性・フレキシブル性・低熱膨張特性・絶縁性・耐熱性・平滑性を兼ね備えた薄型ディスプレイ用途に使用される基板を提案した。
また、自発光型表示装置用基板に凹凸を形成して、発光効率等の性能を向上させた公知例として、特開2003−36969号公報(特許文献5参照)がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−191463号公報
【特許文献2】特開2005−195771号公報
【特許文献3】特開2006−3775号公報
【特許文献4】特開2006−243199号公報
【特許文献5】特開2003−36969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1〜4は、ガラス基板では実現不可能な耐衝撃性・フレキシブル性を金属薄板と表面が平滑な樹脂層との組み合わせにより実現している。しかし、特許文献1〜4のディスプレイ用基板を自発光型のディスプレイ用基板として使用する場合、発光量が少なく、輝度が小さいと言った問題がある。
一方、特許文献5は、発光デバイスの基板に凹凸を形成することにより、デバイスの光取出し効率を高めたものである。この方法は、基板に凹凸を形成することで、発光層で発光した光を散乱させて、外部への光取り出し効率を高めている。しかし、この方法も凹凸が尖った形状であり、基板に積層する発光層や電極にピンホールが発生し易いと言った問題があるため、この基板上にさらに平坦化層を形成している。
上述したように、従来の発光装置用基板においては、全面が平滑であるか、或いは全面に凹凸形状が付与されているかの何れかであった。例えば基板上にTFTのチャンネル層部分を形成しようとすると、その個所は平滑であることが望ましく、また、外部への光取り出し効率に加え、発光層の表面積増大による発光量増大や発光量のムラの低減を期待しようとすると、その個所は規則的な凹凸が形成されることが望まれる。
本発明の目的は、同一基板内に、平滑な個所と規則的な凹凸が形成されている発光装置用基板とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものである。
即ち本発明は、表面に凹凸部分と平滑部分とを有する樹脂が、金属薄板上に形成された発光装置用基板であって、前記凹凸部分の凹凸は曲面形状であり、且つ、隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比が1.0〜1.3、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.0〜〜2.0、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士の間隔が0.1〜15.0μm、凹凸高さが0.1〜6.0μm、平滑部分の粗さの変位は0.1μm未満である発光装置用基板である。
【0008】
上述の樹脂は、熱分解温度が200℃以上であり、凹凸形状の隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の対向する2つの頂点を直線で結んだ時、何れの凹凸構造の断面形状とも(1)式で近似される正弦波状の曲線が連続的につながっており、凹凸高さの半値を表すAが0.05μm≦A≦3.0μm、山間隔の変数を表すBが0.4μm−1≦B≦62.8μm−1、凹凸高さの半値Aと山間隔の変数Bの積ABが0.6≦AB≦4.7、近似式(1)と実形状の高さ方向のズレを表す平均誤差Mが式(2)で表される発光装置用基板である。
y=A×sin(Bx)…(1)
M≦A×0.5…(2)
また、本発明において好ましくは、上述の樹脂の厚みは2μm〜15μmであり、金属薄板の厚みは20〜150μm、30℃〜300℃迄の熱膨張係数が1〜10×10−6/℃である発光装置用基板である。
【0009】
また、上述の本発明の発光装置用基板の製造方法は、金属薄板上に熱分解温度が200℃以上である樹脂を被覆した基板素材の樹脂表面を、樹脂のガラス転移温度以上に加熱した後、樹脂表面に形成する凹凸部分と平滑部分とを有する型を前記樹脂に圧着し、剥離することにより、樹脂に凹凸部分と平滑部分を形成する発光装置用基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光装置用基板は、表面に凹凸部分と平滑部分とを有する樹脂が、金属薄板上に形成されているため、例えば、ディスプレイ用基板として用いる場合は、TFTのチャンネル層部分を平滑部分に形成すれば、スイッチング電流であるドレイン電流の減少が少ないため、TFTの応答速度を高速化でき、また、規則的な凹凸部分によって、外部への光取り出し効果に加え、発光量の増大や発光量のムラの低減が期待できるため、これを用いて成る発光装置は高い発光量を奏することが可能となり、従来にはない画期的な発光装置用基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上述したように、本発明の重要な特徴は、表面に凹凸部分と平滑部分とを併せ持つ樹脂が、金属薄板上に形成されていることにある。以下に本発明を詳しく説明する。
本発明で金属薄板を用いた理由は、金属は構成元素と組成によって熱膨張率を調節できることから、所望の熱膨張特性に合わせた材質の選定の自由度が高く、塑性加工によって薄くし易く、重量も軽量であること、薄くするとフレキシブル性を有し、衝撃に強いことなど、薄型・軽量・耐衝撃性、低熱膨張性を確保するのに最適であり、基板表面に規則的に配列した凹凸部分や平滑部分を有する基板である、発光装置の基体として適した素材だからである。
【0012】
本発明では、基板表面が凹凸部分と平滑部分を有する。
例えば、平滑部上にTFTを設けようとした場合、スイッチング素子であるTFTは、図1に示す様に、基板(1)上にゲート電極(2)、ゲート絶縁膜(3)、チャンネル層(4)、保護膜(5)、層間絶縁膜(6)、ソース電極(7)、ドレイン電極(8)が積層及びパターニングされた構造である。これにアノード電極(9)、発光層(10)およびカソード電極(11)が接続され発光素子が形成される。この時、TFTのスイッチング電流であるドレイン電流の減少を防ぐことが望まれる。
上述のドレイン電流の減少は、TFTのソース電極(7)とドレイン電極(8)間における、チャンネル層(4)の平面方向長さが長くなると、起こり易くなる。もし、基板表面のチャンネル層形成部分に凹凸が形成されていれば、ソース電極とドレイン電極間の平面方向長さが長くなるので、ドレイン電流が減少し、TFT応答速度の遅延が生じる。従って、チャンネル長の増加による、TFT応答速度の遅延を防止するには、平滑部分の形成が必要となる。
なお、上記のTFT応答速度の遅延を防止するに必要な平滑部分の粗さ(高さ)の変位は、0.1μm未満であり、平滑部分の粗さの変位が0.1μm以上となると、TFT応答速度の低下が顕著となる。この範囲であれば、ドレイン電流は減少せず、TFTの応答速度が遅くなることを防止できる。平滑部分の凹凸高さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定できる。
【0013】
次に凹凸部分は、例えば、発光装置では、基板表面に凹凸が形成されていれば、発光層にも凹凸が反映されるため、表面積の増加により、発光量も増加する。しかし、凹凸が過度に不規則に形成されていれば、発光面積が一定しないので、デバイスを作製した際に、発光量にムラを生じたりする。これを防止するには、基板表面の凹凸の配列はほぼ規則的になるように配列する必要がある。
最も表面積を広げるには、隣り合う凸部の4つ頂点を四角形となるように、直線で結んだ時に隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.7の菱形状に近い形状とするのが良い。しかし、この形状とするに必要な型の作製が困難である。そこで、現実的には、凹凸部分では、できる限り表面積を広く確保しつつ、隣り合う凸部の4つ頂点を四角形となるように、直線で結んだ時には正方形に近づけるように配列を行い、更に、直線で結んだ隣り合う頂点同士の間隔もある程度の距離を確保し、且つ凸部の高さ、凹部の深さを有る程度確保して、効率良く光を外部へ取り出す形状とするのが良い。
【0014】
具体的に説明すると、樹脂表面の凹凸形状は、凹凸の隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比が1.0〜1.3(好ましくは1.0〜1.2、更に好ましくは1.0〜1.1)、隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.0〜2.0(好ましくは1.0〜1.9、更に好ましくは1.0〜1.8)とする、規則的な凹凸形状である。
これに加えて、更に、凹凸高さが0.1〜6.0μm(好ましくは0.1〜3.0μm、更に好ましくは0.1〜1.5μm)、山間隔が0.1〜15.0μm(好ましくは0.1〜10.0μm、更に好ましくは0.1〜5.0μm)として、凹凸形状の規則化をはかる。
この形状であれば、基板の表面積が十分確保できる上、効率良く光を外部に取り出すことができ、発光量のムラを低減できる上、基板表面のチャンネル層を形成する部分を平滑にすることで、応答速度の速いディスプレイを作製できるが、凹凸の隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比、隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比、凹凸高さ及び山間隔の何れかの値が本発明で規定する範囲外となるようであれば、発光量にムラが生じて、光を外部に取り出す効果が不十分となる。
【0015】
上述の直線の長さの測定を図2にて説明すると、図2(a)は本発明の発光装置用基板の凹凸部分の表面電子顕微鏡写真であり、凹凸を分かり易くするために30°の傾斜をかけている。白く光る個所が凸部(12)でその最も高い個所が頂点である。
まず、この隣り合う凸部(12)の4つの頂点を直線で結び四角形ABCDを作製する。次に、この四角形の4辺の長さ(AB、BC、CD、DA)を測定し、最短長さ及び最長長さを決定する。同様に、対向する2つの頂点同士を結んだ直線(AC、BD)の長さを測定し、短い方の直線及び長い方の直線を決定し、それぞれの比を求める。
なお、前述の凹凸の隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比、隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比、凹凸高さ及び山間隔の測定は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定できる。
また、図2に示すような形態であることを確認するためには、ランダムに少なくとも5〜10視野を選び、測定を行って、表面形状を確認することが望ましい。
【0016】
また、本発明において、より一層、発光層の表面積を増加させて発光量を増大させたり、光取り出し効果を増大させるには、基板表面の凹凸の断面形状を調整するのが良い。
ディスプレイ用基板では、基板上に上述の複数の薄膜を形成するが、何れの薄膜も数百nmの薄さであるので、凹凸が急峻な形状である場合、膜にピンホールが発生したり、TFTのリーク電流の増加や駆動回路の断線が起こる惧れがある。そのため、凹凸は緩やかに形成することが重要であり、凹凸を曲面形状、つまり断面形状が正弦波に近似するような、正弦波状の曲線が連続的につながった凹凸をディスプレイ用基板の発光層を形成する部分に形成して発光装置用基板とすることが好ましい。
上述した発光装置用基板の凹凸部分の断面形状は、次の(1)式で近似される正弦波状の曲線が連続的につながっていることが好ましい。
y=A×sin(Bx)…(1)
更に凹凸の高さ及び山間隔は、凹凸高さの半値を表すAが0.05μm≦A≦3.0μm、山間隔の変数を表すBが0.4μm−1≦B≦62.8μm−1、凹凸高さの半値Aと山間隔の変数Bの積ABが0.3≦AB≦4.7、そして更に、近似式(1)と実形状の高さ方向のズレを表す平均誤差Mが式(2)表される形状に規定した。
M≦A×0.5…(2)
これは、凹凸高さの半値を表すA、山間隔の変数を表すB、凹凸高さの半値Aと山間隔の変数Bの積AB、近似式(1)と実形状の高さ方向のズレを表す平均誤差Mの何れもが本発明で規定する範囲外となると、所望の反応層の光取り出し効果が十分得られない場合があるためである。
【0017】
なお、高さ方向のズレを表す平均誤差は、樹脂表面に形成された凹凸構造の断面形状が、実形状は正確な正弦波になっていない場合があるために規定したものである。平均誤差とは、ある測定範囲における、近似値と実測値の誤差の絶対値の平均値(JIS Z 8103)であり、次式により計算される。
但し、測定点の間隔は0.01μm以下とし、15μm以上の区間を測定するものとする。
【0018】
【数1】

【0019】
また、凹凸形状が、(1)式を満たす場合でも、ABが0.3以下では、発光量の増大効果が十分得られず、ABが4.7以上では、発光層にクラック、ピンホールやリーク電流が発生しやすくなるため、0.3≦AB≦4.7とする。この範囲であれば、山間隔に対する凹凸高さの比が0.1〜1.5となり、所望の光取り出し効果と発光量の増大効果が得られる。
【0020】
上述の正弦波状の曲線の測定を図2にて説明する。
図2(a)は白く光る個所が凸部(12)でその最も高い個所を頂点とする。この隣り合う凸部(12)の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つ頂点を直線(図2(b)で示す)で結んだ時の断面形状にて正弦波状の曲線の測定を行う。
なお、図3は隣り合う凸部(12)の4つの頂点を線で結んだ四角形(ABCD)の対向する2つ頂点を直線(図2(b)で示すACまたはBD)で結んだ時の断面形状の模式図であり、本発明で言う凹凸高さとは図3に示すように、正弦波の山(最高部)と谷(低底部)の高さ方向の距離のことを言い、山間隔とは、隣り合う山同士の平面方向の距離のことを言う。断面形状も、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。
【0021】
ところで、本発明で用いる樹脂は、熱分解温度が200℃以上である樹脂を用いるのが好ましい。
例えば、金属薄板/樹脂という発光装置用基板上にTFTを形成する場合においては、ゲート電極、ゲート絶縁膜、アモルファスシリコン(チャンネル層)、保護膜を高温で積層する。特に、チャンネル層の積層は、プラズマCVDを用いて基板を300℃以上に加熱することがある。この時の加熱により発光装置用基板を構成する樹脂が分解すると、分解ガスがチャンネル層内に不純物として取り込まれ、スイッチング特性が低下し、画面が正常に表示されなくなる惧れがある。このため本発明で用いる樹脂の熱分解温度は200℃以上とする必要があり、好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上である。
本発明で規定する熱分解温度を満たす樹脂には、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドエーテルイミド、ポリエーテルサルフォンなどがある。
なお、本発明で言う熱分解温度とは5%質量減少温度のことを指し、差動型示差熱天秤を用いて測定できる。
【0022】
次に樹脂の厚みを規定した理由を説明する。
本発明の発光装置用基板は、基板上に駆動回路を形成するため、絶縁性が必要であり、樹脂被覆により絶縁性を付与する。ディスプレイ用基板の場合における絶縁性の要求値はディスプレイの精細度によって異なるが、例えば紙媒体の印刷物に近い精細度である600ppiであれば、20Vの電圧を印加した際にリーク電流が10−10A/cm以下であると良く、これを満足するための樹脂の樹脂の厚みは2μm以上あれば良い。
また、凹凸形成のプロセスの詳細は後述するが、凹凸形成のプロセス上、樹脂の厚みが厚いほど凹凸を形成し易いが、厚すぎる場合コストアップに繋がるため、樹脂の厚みの上限は15μmであれば十分である。好ましい樹脂の厚みは3μm〜8μmである。
【0023】
本発明で用いる金属薄板は、従来のディスプレイ用基板として用いられているガラス基板と同等の熱膨張特性を有する材料を用いることが好ましい。
上述したようにディスプレイの製造プロセス上300℃以上に加熱されるため、熱膨張の大きな材料を用いた場合、例えばTFTの各積層膜をパターニングする際の位置合わせ精度が悪くなりディスプレイの高精細化は難しくなる。
また、用いられるガラスの種類によっても熱膨張特性(特に熱膨張係数)は若干異なるが、低熱膨張性が求められるため20℃〜300℃までの熱膨張係数が1〜10×10−6/℃以下と規定する。好ましくは2〜6×10−6/℃の範囲である。
このような範囲の熱膨張係数を持つ金属材料には、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金、鉄−ニッケル−クロム系合金があり、薄板化し易いことや、入手のし易さ等を考えると、安価な鉄−ニッケル系合金を用いるのが良い。
また、凹凸付金属基板に用いる金属薄板の厚みとしては、軽量化、薄型化のためには薄いほど好ましい。しかし、薄すぎる場合、曲げ強度が低いため搬送・保持でき難くなること、及び圧延の精度の問題や工数の増大によるコスト上昇が発生することから、厚みは20〜150μmであることが好ましい。
【0024】
次に本発明の発光装置用基板の製造方法について説明する。
発光装置用基板の凹凸の形成法には、熱転写、光転写、エッチング、サンドブラスト等がある。これらの方法の内、エッチングを用いる方法は、対象物の結晶配向や結晶粒の大きさによって凹凸の形状、山間隔が支配されるため形状制御が難しく、光取り出し効果に寄与しない凹凸も多数形成されるため、効果が小さい。またサンドブラストでも凹凸形状を制御することが困難である。
一方、熱転写、光転写は比較的自由な形状を樹脂などの表面に形成でき、優れた方法である。しかし、光転写は樹脂材料に高価な感光性樹脂を用いる必要があり、コストアップになるため、熱転写法で凹凸を形成することが好ましい。本発明のディスプレイ用基板の製造方法を図4を用いて以下に説明する。
【0025】
本発明の場合、金属薄板(13)上に樹脂(14)を被覆した基板素材(15)を用意する。
本発明で適用する熱転写法ではまず、上記の(1)式で近似される凹凸部分(16)と平滑部分(17)を有する型(18)を樹脂のガラス転移温度以上に加熱して、樹脂に圧着する(図4(a),(b))。この圧着時に置いては、20MPa以上で樹脂に圧着を行うと、型の凹凸を確実に樹脂側に転写することが可能である。
また、本発明で使用する型は、型の凹凸部分と平滑部分の配置がそのまま樹脂に転写されるので、ディスプレイ用基板に用いる場合は、凹凸部分と平滑部分の配置(発光層とチャンネル層の配置)に対応させて、型の凹凸部分(16)と平滑部分(17)を配置させる。なお、用いる型は例えば電鋳法で作製することができる。
また、微小凹凸の形成時には、予め型も基板と同時にガラス転移温度以上に加熱しておくと良い。型を加熱しておけば、樹脂と型の温度差による転写不良を防ぐことができる。
その後、型を剥離することにより、樹脂表面に型の形状を転写させて、凹凸部分(16)と平滑部分(17)を形成し、発光装置用基板(19)とする(図4(c))。
この方法であれば、型の位置をずらして(a)〜(c)を繰り返すことで、大面積の発光装置用基板を製造できる。
【実施例】
【0026】
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明する。
4.3×10−6/℃の熱膨張係数を持った厚さ100μmの鉄−42質量%ニッケル系合金薄板を準備し、アルカリ性脱脂液及び希塩酸を用いて洗浄した。その後、スピンコーターを用いて鉄−ニッケル系合金薄板にポリイミド樹脂を被覆し、硬化・乾燥させて基板素材を作製した。
被覆した樹脂の厚みは8μmであり、熱分解温度を測定したところ、500℃であった。
次に、樹脂表面に形成する凹凸部分と平滑部分を有する型を準備し、型と基板素材を樹脂のガラス転移温度以上に加熱した。
その後、30MPaで金型を樹脂表面に押し当てた後、樹脂のガラス転移温度以下に冷却し、型を剥離して発光装置用基板とした。
樹脂表面に形成した凹凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM;パシフィック ナノテクノロジー社製、Nano−Rシステム)を用いて5視野の測定を行い、四角形ABCDの4辺の長さ、対向する2つの頂点を結んだ直線の長さを測定し、最短長さの辺に対する最長長さの辺の比を求めると表1のようになった。
【0027】
【表1】

【0028】
次に凹凸高さ及び凹凸間隔を測定したところ、それぞれ0.7μm、1.4μmであった。この断面形状を正弦波で近似すると、y=0.35×sin(4.5x)であり、A=0.35μm、B=4.5μm−1、AB=1.6、高さ方向のズレを表す平均誤差Mが0.07μmであった。
また、平滑部分の粗さ(高さ)の変位を同様の方法で5視野を測定したところ、0.05μm〜0.03μmであった。
【0029】
本実施例で示した発光装置用基板は、基板表面に規則的な凹凸部分と平滑部分を形成することにより、高い光取出し効果と発光量の増加が期待できるため、これを用いてなる発光装置は高輝度と速い応答速度を奏することが期待できる。
なお、基板表面の凹凸部分は、正弦波の凹凸であるため、発光材料薄膜のクラックやピンホールを防止ことも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明を用いることにより、低熱膨張で規則的な凹凸部分と平滑部分を有する発光装置用基板が得られるので、高輝度・高速応答を発揮する発光装置を作製できるため、今後需要の増大が予想される本分野にとって、欠くことのできない技術となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】発光素子模式図である。
【図2】本発明の発光装置用基板でなる凹凸部分の表面電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の発光装置用基板でなる凹凸部分の断面形状を示す模式図である。
【図4】本発明の発光装置用基板の製造方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
1.発光装置用基板
2.ゲート電極
3.ゲート絶縁膜
4.チャンネル層
5.保護膜
6.層間絶縁膜
7.ソース電極
8.ドレイン電極
9.アノード電極
10.発光層
11.カソード電極
12.凸部
13.金属薄板
14.樹脂
15.基板素材
16.凹凸部分
17.平滑部分
18.型
19.発光装置用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸部分と平滑部分とを有する樹脂が、金属薄板上に形成された発光装置用基板であって、前記凹凸部分の凹凸は曲面形状であり、且つ、隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比が1.0〜1.3、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.0〜2.0、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士の間隔が0.1〜15.0μm、凹凸高さが0.1〜6.0μm、平滑部分の粗さの変位は0.1μm未満であることを特徴とする発光装置用基板。
【請求項2】
樹脂は、熱分解温度が200℃以上であり、凹凸形状の隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の対向する2つの頂点を直線で結んだ時、何れの凹凸構造の断面形状とも(1)式で近似される正弦波状の曲線が連続的につながっており、凹凸高さの半値を表すAが0.05μm≦A≦3.0μm、山間隔の変数を表すBが0.4μm−1≦B≦62.8μm−1、凹凸高さの半値Aと山間隔の変数Bの積ABが0.3≦AB≦4.7、近似式(1)と実形状の高さ方向のズレを表す平均誤差Mが式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の発光装置用基板。
y=A×sin(Bx)…(1)
M≦A×0.5…(2)
【請求項3】
樹脂の厚みは2μm〜15μmであり、金属薄板の厚みは20〜150μm、30℃〜300℃迄の熱膨張係数が1〜10×10−6/℃であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の発光装置用基板。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の発光装置用基板の製造方法であって、金属薄板上に被覆した樹脂表面を、樹脂のガラス転移温度以上に加熱した後、樹脂表面に形成する凹凸部分と平滑部分とを有する型を前記樹脂に圧着し、剥離することにより、樹脂に凹凸部分と平滑部分を形成することを特徴とする発光装置用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−146856(P2008−146856A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329327(P2006−329327)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】