説明

発振回路、異常発振検査方法、高周波受信機、及び高周波送信機

【課題】複数の電圧制御発振器を有するにもかかわらず異常発振の有無検査の検査時間を短縮することができる発振回路を提供する。
【解決手段】動作電流がそれぞれ異なる値である第1から第n(nは2以上の自然数)の電圧制御発振器VCO1〜VCOnと、1つの基準電圧生成回路RV0と、第1から第n(nは2以上の自然数)のスイッチSW1〜SWnとを備え、すべてのk(k=1〜n)について、第kの電圧制御発振器VCOkの直流バイアス入力端子T_kと基準電圧生成回路RV0の直流バイアス出力端子T_0との間に第kのスイッチSWkが設けられており、第kのスイッチSWkがオン状態のときに基準電圧生成回路RV0から第kの電圧制御発振器VCOkの差動トランジスタにベースバイアス電圧が供給される発振回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電圧制御発振器を有する発振回路、その発振回路の異常発振を検査する方法、並びにその発振回路を有する高周波受信機及び高周波送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
広い帯域に多数のチャンネルが存在する衛星放送用受信機やケーブルテレビ用受信機で用いられる発振器は、広い発振周波数レンジでかつ低位相雑音であることが要求される。このような発振器を小型で実現する方法としてチューニング電圧により発振周波数を可変することができる電圧制御発振器を用いた方法が一般的である。しかしながら、1つの電圧制御発振器で広い発振周波数レンジをカバーしようとするとチューニング電圧に対する発振周波数の感度が高くなるため位相雑音特性の劣化を招く。
【0003】
このため、広い発振周波数レンジにおいて低位相雑音を実現する方法として、複数の電圧制御発振器を設ける方法が考案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。複数の電圧制御発振器を有する発振回路は、発振周波数帯域が異なる電圧制御発振器を複数設けることによって広い発振周波数レンジをカバーすることができ、個々の電圧制御発振器においては発振周波数レンジが狭いため位相雑音特性の劣化が起こりにくい。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−136142号公報
【特許文献2】特開昭62−166619号公報
【特許文献3】特開平9−102752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、複数の電圧制御発振器を有する従来の発振回路の構成例を図5に示す。トランジスタTr1_1、Tr1_2、・・・、Tr1_nは基準電圧生成回路の構成要素である。トランジスタTr1_1と差動トランジスタTr2_1及びTr3_1とはカレントミラーで接続され、以下同様に、トランジスタTr1_2と差動トランジスタTr2_2及びTr3_2とがカレントミラーで接続され、・・・、トランジスタTr1_nと差動トランジスタTr2_n及びTr3_nとがカレントミラーで接続されている。また、差動トランジスタTr2_1及びTr3_1の各面積をトランジスタTr1_1の面積のN1倍とし、以下同様に、差動トランジスタTr2_2及びTr3_2の各面積をトランジスタTr1_2の面積のN2倍とし、・・・、差動トランジスタTr2_n及びTr3_nの各面積をトランジスタTr1_nの面積のNn倍としているため、差動トランジスタTr2_1及びTr3_1に流れるコレクタ電流は基準電圧生成回路のトランジスタTr1_1に流れるコレクタ電流I1のN1倍となり、以下同様に、差動トランジスタTr2_2及びTr3_2に流れるコレクタ電流は基準電圧生成回路のトランジスタTr1_2に流れるコレクタ電流I2のN2倍となり、・・・、差動トランジスタTr2_n及びTr3_nに流れるコレクタ電流は基準電圧生成回路のトランジスタTr1_nに流れるコレクタ電流InのNn倍となる。
【0006】
図5に示す従来の発振回路が有する電圧制御発振器VCO1’の発振周波数、すなわち、インダクタL1_1及びL2_1と可変容量素子C1_1及びC2_1とからなる共振回路の共振周波数f1は、下記の(1)式で表される。ただし、Cは可変容量素子C1_1及びC2_1の各容量値であり、LはインダクタL1_1及びL2_1の各インダクタンスである。
【数1】

【0007】
ところで、バイポーラトランジスタでは、図6に示すようにエミッタ−ベース間空間電荷領域において一般的に存在する結晶歪みなどにより、少数キャリアと多数キャリアとのランダムな再結合が起こることがある。このランダムな再結合が発生すると、バイポーラトランジスタのベース電流が揺らぎ、微小電流ノイズINOISEが発生する。
【0008】
図5に示す従来の発振回路が有する電圧制御発振器VCO1’において、図7に示すように微小電流ノイズINOISEが基準電圧生成回路のトランジスタTr1_1で発生した場合、ポイントP1の電圧には微小電流ノイズINOISEと抵抗R1_1との積が余計に現れる。このため、トランジスタTr1_1で発生した微小電流ノイズINOISEのN1倍のベース電流が差動トランジスタTr2_1及びTR3_1のベースに流れ込み、結果的に差動トランジスタTr2_1及びTR3_1のコレクタ電流I2_1及びI3_1にもトランジスタTr1_1のコレクタ電流に含まれるノイズ電流と同じ割合のノイズ電流が含まれる。ノイズ電流が含まれたコレクタ電流I2_1及びI3_1が流れると、ポイントP2及びP3の直流成分電圧はコレクタ電流I2_1及びI3_1に含まれるノイズ電流に応じて揺らぐため、可変容量素子C1_1及びC2_1の各容量値も±CNOISE揺らぐ。
【0009】
したがって、微小電流ノイズINOISEが基準電圧生成回路のトランジスタTr1_1で発生した場合の図5に示す従来の発振回路が有する電圧制御発振器VCO1’の発振周波数、すなわち、微小電流ノイズINOISEが基準電圧生成回路のトランジスタTr1_1で発生した場合のインダクタL1_1及びL2_1と可変容量素子C1_1及びC2_1とからなる共振回路の共振周波数f1'は、下記の(2)式で表される。
【数2】

【0010】
つまり、基準電圧生成回路のバイポーラトランジスタに微小電流ノイズが発生すると、発振周波数が揺らぎ異常発振することがわかる。上記の説明においては、電圧制御発振器VCO1’の場合を例に挙げて説明したが、電圧制御発振器VCO2’、・・・、VCOn’でも同じ現象が発生する可能性があるため、異常発振の有無検査はすべての電圧制御発振器で行う必要があり、その検査に時間がかかっていた。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、複数の電圧制御発振器を有するにもかかわらず異常発振の有無検査の検査時間を短縮することができる発振回路、その発振回路の異常発振を検査する方法、並びにその発振回路を有する高周波受信機及び高周波送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係る発振回路は、動作電流がそれぞれ異なる値である第1から第n(nは2以上の自然数)の電圧制御発振器と、1つの基準電圧生成回路と、第1から第n(nは2以上の自然数)のスイッチとを備え、すべてのk(k=1〜n)について、第kの電圧制御発振器と前記基準電圧生成回路との間に第kのスイッチが設けられており、第kのスイッチがオン状態のときに前記基準電圧生成回路から第kの電圧制御発振器の差動トランジスタにベースバイアス電圧が供給される構成としている。
【0013】
このような構成によると、第1から第nの電圧制御発振器の差動トランジスタにベースバイアス電圧を供給する基準電圧生成回路が1つであるので、ベースバイアス電圧が揺らいだときに生じる発振周波数の揺らぎ量は、動作電流が最も大きい電圧制御発振器が最も多くなる。したがって、第1から第nの電圧制御発振器のうち動作電流が最も大きい電圧制御発振器についてのみ異常発振の有無を検査すれば十分であるので、複数の電圧制御発振器を有するにもかかわらず異常発振の有無検査の検査時間を短縮することができる。
【0014】
また、上記構成の発振回路において、第1から第nの電圧制御発振器はそれぞれ発振周波数帯域が異なる電圧制御発振器であり、第1から第nのスイッチのうち1つのみをオン状態にして第1から第nの電圧制御発振器のうち1つのみを選択し発振動作をさせるようにしてもよい。
【0015】
このような構成によると、広い発振周波数レンジにおいて低位相雑音を実現することができる。
【0016】
また、上記各構成の発振回路において、すべてのk(k=1〜n)について、第kの電圧制御発振器の差動トランジスタと前記基準電圧生成回路のトランジスタとがカレントミラーで接続されているようにしてもよい。
【0017】
このような構成によると、電圧制御発振器の差動トランジスタと基準電圧生成回路のトランジスタとがカレントミラーで接続されているので、電圧制御発振器の差動トランジスタと基準電圧生成回路のトランジスタとの面積比を電圧制御発振器毎に変えることで、無駄なく発振余裕度に応じた動作電流を各電圧制御発振器に与えることができる。
【0018】
また、上記各構成の発振回路において、前記基準電圧生成回路を中心にしてその周辺に第1から第nの電圧制御発振器を配置し、前記基準電圧生成回路と第1から第nの電圧制御発振器それぞれとの距離が略等しいようにしてもよい。
【0019】
このような構成によると、基準電圧生成回路と電圧制御発振器それぞれとの間の配線抵抗が略等しくなるので、電圧制御発振器それぞれの差動トランジスタの入力ベース抵抗が略等しくなる。これにより、第1から第nの電圧制御発振器それぞれの動作電流の大小関係が設計と異なってしまう事態を回避することができる。
【0020】
また、上記目的を達成するために本発明に係る異常発振検査方法は、上記いずれかの構成の発振回路における異常発振の有無を検査する異常発振検査方法であって、前記発振回路が有する第1から第nの電圧制御発振器のうち動作電流が最も大きい電圧制御発振器についてのみ異常発振の有無を検査するようにしている。
【0021】
このような異常発振検査方法によると、第1から第nの電圧制御発振器のうち動作電流が最も大きい電圧制御発振器についてのみ異常発振の有無を検査しているので、複数の電圧制御発振器を有する発振回路の異常発振検査にもかかわらず検査時間を短縮することができる。
【0022】
また、上記目的を達成するために本発明に係る高周波受信機は、上記いずれかの構成の発振回路を備え、前記発振回路から出力される局部発振信号を用いて、高周波受信信号のダウンコンバートを行うようにしている。
【0023】
また、上記目的を達成するために本発明に係る高周波送信機は、上記いずれかの構成の発振回路を備え、前記発振回路から出力される局部発振信号を用いて、高周波送信信号へのアップコンバートを行うようにしている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、第1から第nの電圧制御発振器の差動トランジスタにベースバイアス電圧を供給する基準電圧生成回路が発振回路内に1つであるので、ベースバイアス電圧が揺らいだときに生じる発振周波数の揺らぎ量は、動作電流が最も大きい電圧制御発振器が最も多くなる。したがって、第1から第nの電圧制御発振器のうち動作電流が最も大きい電圧制御発振器についてのみ異常発振の有無を検査すれば十分であるので、発振回路が複数の電圧制御発振器を有するにもかかわらず異常発振の有無検査の検査時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明に係る発振回路の構成例を図1に示す。
【0026】
図1に示す本発明に係る発振回路は、動作電流がそれぞれ異なる値である第1から第n(nは2以上の自然数)の電圧制御発振器VCO1〜VCOnと、1つの基準電圧生成回路RV0と、第1から第n(nは2以上の自然数)のスイッチSW1〜SWnとを備えている。そして、すべてのk(k=1〜n)について、第kの電圧制御発振器VCOkの直流バイアス入力端子T_kと基準電圧生成回路RV0の直流バイアス出力端子T_0との間に第kのスイッチSWkが設けられており、第kのスイッチSWkがオン状態のときに基準電圧生成回路RV0から第kの電圧制御発振器VCOkの差動トランジスタ(図1において不図示)にベースバイアス電圧が供給される。
【0027】
図1に示す本発明に係る発振回路は、第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnの差動トランジスタにベースバイアス電圧を供給する基準電圧生成回路RV0が1つであるので、ベースバイアス電圧が揺らいだときに生じる発振周波数の揺らぎ量は、動作電流が最も大きい電圧制御発振器が最も多くなる。したがって、第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnのうち動作電流が最も大きい電圧制御発振器についてのみ異常発振の有無を検査すれば十分であるので、複数の電圧制御発振器を有するにもかかわらず異常発振の有無検査の検査時間を短縮することができる。
【0028】
図1に示す本発明に係る発振回路は、例えば、広い帯域に多数のチャンネルが存在する衛星放送用受信機やケーブルテレビ用受信機で用いられる場合、広い周波数帯域から1つのチャンネルを選択する動作を受信機が行う必要があるため、広い発振周波数レンジが要求される。第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnをそれぞれ発振周波数帯域が異なる電圧制御発振器とし、第1から第nのスイッチSW1〜SWnのうち1つのみをオン状態にして第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnをのうち1つのみを選択し発振動作をさせることにより、上記要求を満たすことができる。
【0029】
次に、図1に示す本発明に係る発振回路の具体的な回路構成例を図2に示す。
【0030】
基準電圧生成回路RV0は、トランジスタTr1_0と、定電圧VCが印加される端子とトランジスタTr1_0のコレクタとの間に設けられる直流電流源1_0と、トランジスタTr1_0のエミッタとグランドとの間に設けられる抵抗R4_0と、トランジスタTr1_0のベースに一端が接続されトランジスタTr1_0のコレクタ、直流電流源1_0、及び直流バイアス出力端子T_0に他端が接続される抵抗R1_0とによって構成されている。
【0031】
第1の電圧制御発振器VCO1は、差動トランジスタTr2_1及びTr3_1と、差動トランジスタTr2_1のコレクタに一端が接続され定電圧VCが印加される端子に他端が接続されるインダクタL1_1と、一端が差動トランジスタTr3_1のコレクタに接続され他端が定電圧VCが印加される端子に接続されるインダクタL2_1と、差動トランジスタTr2_1のコレクタに一端が接続されチューニング電圧VTが印加される端子に他端が接続される可変容量素子C1_1と、差動トランジスタTr3_1のコレクタに一端が接続されチューニング電圧VTが印加される端子に他端が接続される可変容量素子C2_1と、差動トランジスタTr2_1のコレクタに一端が接続され差動トランジスタTr3_1のベースに他端が接続される固定コンデンサC3_1と、差動トランジスタTr3_1のコレクタに一端が接続され差動トランジスタTr2_1のベースに他端が接続される固定コンデンサC4_1と、差動トランジスタTr2_1のベースに一端が接続され直流バイアス入力端子T_1に他端が接続される抵抗R2_1と、差動トランジスタTr3_1のベースに一端が接続され直流バイアス入力端子T_1に他端が接続される抵抗R3_1と、差動トランジスタTr2_1及びTr3_1のエミッタとグランドとの間に設けられる抵抗R5_1とによって構成されている。第2から第nの電圧制御発振器VCO2〜VCOnの構成は、第1の電圧制御発振器VCO1の構成と基本的に同じであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0032】
第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnをそれぞれ発振周波数帯域が異なる電圧制御発振器とした場合、電圧制御発振器毎に発振余裕度が異なり必要とする動作電流が異なる。一般的に発振周波数が高い電圧制御発振器ではより多くの動作電流を必要とする。
【0033】
従来の発振回路においては図5に示したように電圧制御発振器毎に基準電圧生成回路が独立しているため、電圧制御発振器の差動トランジスタに供給されるベースバイアス電圧を電圧制御発振器毎に個別に調整し、電圧制御発振器毎に動作電流を個別に調整すればよかった。これに対して、本発明に係る発振回路においては図1及び図2に示したように基準電圧生成回路RV0が1つであるため電圧制御発振器の差動トランジスタに供給されるベースバイアス電圧を電圧制御発振器毎に個別に調整することはできない。
【0034】
しかしながら、図2に示す回路構成では、第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnの差動トランジスタと基準電圧生成回路RV0のトランジスタとがカレントミラーで接続されているので、第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnの差動トランジスタと基準電圧生成回路RV0のトランジスタとの面積比を電圧制御発振器毎に変えることで、無駄なく発振余裕度に応じた動作電流を各電圧制御発振器に与えることができる。
【0035】
第1の電圧制御発振器VCO1の発振周波数帯域が最も高く、第2の電圧制御発振器VCO2、第3の電圧制御発振器VCO3、・・・となるに従って発振周波数帯域が低くなっていく設定にした場合、発振余裕度の問題から第1の電圧制御発振器VCO1に最も大きい動作電流が必要となること及び低消費電力化を図ることを考慮し、基準電圧生成回路RV0のトランジスタに対する第1の電圧制御発振器VCO1の差動トランジスタの面積比N1が最も大きく、基準電圧生成回路RV0のトランジスタに対する第2の電圧制御発振器VCO2の差動トランジスタの面積比N2、基準電圧生成回路RV0のトランジスタに対する第3の電圧制御発振器VCO3の差動トランジスタの面積比N3、・・・となるに従って小さくなるようにすること、すなわち、N1>N2>・・・>Nnとなるようにすることが望ましい。
【0036】
また、第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnの差動トランジスタと基準電圧生成回路RV0のトランジスタとがカレントミラーで接続されているので、上記面積比に応じて、抵抗R2_1及びR3_1の抵抗値をそれぞれ抵抗R1_0の抵抗値をN1で除した値、抵抗R5_1の抵抗値を抵抗R4_0の抵抗値を(2×N1)で除した値とし、以下同様に、抵抗R2_2及びR3_2の抵抗値をそれぞれ抵抗R1_0の抵抗値をN2で除した値、抵抗R5_2の抵抗値を抵抗R4_0の抵抗値を(2×N2)で除した値とし、・・・、抵抗R2_n及びR3_nの抵抗値をそれぞれ抵抗R1_0の抵抗値をNnで除した値、抵抗R5_nの抵抗値を抵抗R4_0の抵抗値を(2×Nn)で除した値とすることが望ましい。
【0037】
次に、本発明に係る発振回路の回路配置例を図3に示す。図3に示す回路配置では、基準電圧生成回路RV0を中心にしてその周辺に第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnを配置し、基準電圧生成回路RV0と第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnそれぞれとの距離を略等しくしている。より詳細には、基準電圧生成回路RV0の直流バイアス出力端子T_0と第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnそれぞれの直流バイアス入力端子T_1〜T_nとの距離を略等しくしている。
【0038】
このような回路配置によると、基準電圧生成回路RV0と第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnそれぞれとの間の配線抵抗が略等しくなるので、第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnそれぞれの差動トランジスタの入力ベース抵抗が略等しくなる。これにより、第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnそれぞれの動作電流の大小関係が設計と異なってしまう事態を回避することができる。なお、基準電圧生成回路RV0と第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnそれぞれとの距離はでき得る限り短くし、基準電圧生成回路RV0と第1から第nの電圧制御発振器VCO1〜VCOnそれぞれとの間の配線抵抗をでき得る限り小さくすることが望ましい。
【0039】
次に、本発明に係る電圧制御発振器を備えた高周波送受信機の構成例を図4に示す。
図4に示す高周波送受信機は、アンテナ11と、スイッチ12と、LNA(Low Noise Amplifier)13及び23と、ミキサ14及び22と、可変利得アンプ15と、バンドパスフィルタ16及び21と、アンプ17と、復調器18と、変調器20と、本発明に係る発振回路19とを備えており、スイッチ12の接点選択切り替えにより、受信動作と送信動作とを切り替える。
【0040】
受信時には、アンテナ11から入力された高周波受信信号は、LNA13にて増幅された後、ミキサ14で本発明に係る発振回路19から出力される局部発振信号とのミキシングによりダウンコンバートされ、その後可変利得アンプ15にて増幅され、バンドパスフィルタ16で不要な周波数成分がカットされ、さらにアンプ17にて増幅されて復調器18に送られる。逆に、送信時には、変調器20から送出された送信信号は、バンドパスフィルタ21で不要な周波数成分がカットされ、ミキサ22にて本発明に係る発振回路19から出力される局部発振信号とのミキシングにより高周波送信信号へとアップコンバートされ、パワーアンプにて電力増幅された後アンテナ11から送信される。
【0041】
図4に示す高周波送受信機は、本発明に係る発振回路19を局部発振回路として利用しているので、本発明に係る発振回路19内の電圧制御発振器の選択を切り替えることで、広い局部発振周波数レンジをカバーすることができ、個々の電圧制御発振器においては発振周波数レンジが狭いため位相雑音特性の劣化が起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】は、本発明に係る発振回路の構成例を示す図である。
【図2】は、図1に示す本発明に係る発振回路の具体的な回路構成例を示す図である。
【図3】は、本発明に係る発振回路の回路配置例を示す図である。
【図4】は、本発明に係る電圧制御発振器を備えた送受信機の構成例を示す図である。
【図5】は、複数の電圧制御発振器を有する従来の発振回路の構成例を示す図である。
【図6】は、バイポーラトランジスタのエネルギーバンド図である。
【図7】は、図5に示す従来の発振回路の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
11 アンテナ
12 スイッチ
13 LNA
14、22 ミキサ
15 可変利得アンプ
16、21 バンドパスフィルタ
17 アンプ
18 復調器
19 本発明に係る発振回路
20 変調器
23 パワーアンプ
RV0 基準電圧生成回路
SW1〜SWn 第1から第nのスイッチ
T_0 直流バイアス出力端子
T_1〜T_n 直流バイアス入力端子
VCO1〜VCOn 第1から第nの電圧制御発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作電流がそれぞれ異なる値である第1から第n(nは2以上の自然数)の電圧制御発振器と、1つの基準電圧生成回路と、第1から第n(nは2以上の自然数)のスイッチとを備え、
すべてのk(k=1〜n)について、第kの電圧制御発振器と前記基準電圧生成回路との間に第kのスイッチが設けられており、第kのスイッチがオン状態のときに前記基準電圧生成回路から第kの電圧制御発振器の差動トランジスタにベースバイアス電圧が供給されることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
第1から第nの電圧制御発振器はそれぞれ発振周波数帯域が異なる電圧制御発振器であり、
第1から第nのスイッチのうち1つのみをオン状態にして第1から第nの電圧制御発振器のうち1つのみを選択し発振動作をさせる請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
すべてのk(k=1〜n)について、第kの電圧制御発振器の差動トランジスタと前記基準電圧生成回路のトランジスタとがカレントミラーで接続されている請求項1又は請求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記基準電圧生成回路を中心にしてその周辺に第1から第nの電圧制御発振器を配置し、前記基準電圧生成回路と第1から第nの電圧制御発振器それぞれとの距離が略等しい請求項1〜3のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発振回路における異常発振の有無を検査する異常発振検査方法であって、
前記発振回路が有する第1から第nの電圧制御発振器のうち動作電流が最も大きい電圧制御発振器についてのみ異常発振の有無を検査することを特徴とする異常発振検査方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発振回路を備え、前記発振回路から出力される局部発振信号を用いて、高周波受信信号のダウンコンバートを行うことを特徴とする高周波受信機。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発振回路を備え、前記発振回路から出力される局部発振信号を用いて、高周波送信信号へのアップコンバートを行うことを特徴とする高周波送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−152704(P2009−152704A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326679(P2007−326679)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】