説明

発振回路

【課題】従来の発振回路は、発振信号を増幅させる電流等の影響で発振周波数の高速化が制限されるという問題があった。
【解決手段】本発明にかかる差動発振回路は、帰還ループ回路を備えた差動型の発振回路であって、帰還ループ回路上に縦続接続され、入力された一対の差動入力信号を遅延させて一対の差動出力信号として出力する遅延回路2〜5と、発振回路が発振起動状態か安定状態のいずれかにあるかを検出し、検出結果を示す検出信号VSTPを出力する発振起動検出回路7と、を備える。さらに遅延回路2〜5は、発振起動検出回路7から出力された検出信号VSTPに基づいて、差動出力信号の出力電流値を制御する。このような回路構成により、発振周波数の高速化が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路に関し、特に発振回路の高速化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路のCPUやメモリI/Fの高速化が進んでいる。高速動作可能な発振回路は、マイクロプロセッサのクロック生成から携帯電話等のキャリア生成に及ぶ広い範囲で使用されている。このように、高速動作可能な発振回路は、大規模かつ高速なデータ転送やデータ処理に必要不可欠である。しかし、発振起動時の電流の影響等により発振回路の高速動作が妨げられている。しかも、発振回路に流れる電流の制御は非常に困難である。そこで、発振回路の高速動作を可能にするために、発振回路に流れる電流を容易に制御可能な技術が求められている。
【0003】
特許文献1に記載された発振回路を図7に示す。また、図7の発振回路を構成する遅延回路の回路構成を図8に示す。遅延回路18は、トランジスタ(Pチャネル型MOSトランジスタ)25を共有する増幅器(Nチャネル型MOSトランジスタ)26および増幅器(Nチャネル型MOSトランジスタ)27と、トランジスタ(Pチャネル型MOSトランジスタ)28を共有する増幅器(Nチャネル型MOSトランジスタ)29および増幅器(Nチャネル型MOSトランジスタ)30と、増幅器26、27、29、30の電流量を制御する可変電流源(Pチャネル型MOSトランジスタ)31および可変電流源(Nチャネル型MOSトランジスタ)32により構成される。ここで、Cs1(33)、Cs2(34)は遅延回路18の出力端子と次段の入力端子の間に寄生する容量を示している。
【0004】
増幅器26、30と、トランジスタ25、28は、Vin1、Vin2から入力される信号によりCs1、Cs2に対して充放電を行なう。そして、これらの入力信号と位相の反転した信号をVout1、Vout2端子に出力する。この出力信号を相互接続するように、増幅器27、29により構成される正帰還回路が挿入される。増幅器27のゲートは、トランジスタ28のドレインと増幅器30のドレインとが接続される出力ノードに接続される。増幅器29のゲートは、トランジスタ25のドレインと増幅器30のドレインとが接続される出力ノードに接続される。
【0005】
それにより、この正帰還回路において、増幅器27は増幅器30が出力する信号の微小な電位差を増幅し増幅器26の出力端子に出力する。同様に、増幅器29は増幅器26が出力する信号の微小な電位差を増幅し増幅器30の出力端子に出力する。また、可変電流源31は、電源電圧VDDとトランジスタ25のソース及びトランジスタ26のソースとの間に接続される。可変電流源32は、接地電圧GNDとトランジスタ26、27、29、30との間に接続される。ここで、Vcontpの電圧に基づいて可変電流源31に流れる電流を制御する。また、Vcontnの電圧に基づいて可変電流源32に流れる電流を制御する。それにより、遅延回路18は、信号の入力から出力までの遅延値を制御することができる。
【0006】
このように、Vin1、Vin2から入力される信号の電位差が微小な場合でも、増幅器27、29が信号差を検出して信号振幅を増幅する。そして、差動対出力(Vout1、Vout2)を強制的に電源側またはグランド側(接地電圧側)の電圧値まで動作させる。このように、遅延回路一段あたりの利得を高めることが可能である。例えば、仮に差動対の入力であるVin1、Vin2が共にグランドレベルであっても、デバイスノイズ等により差動対出力に生じた微小な電位差を増幅する。そして、差動対出力が逆相出力を示すように動作する。また、増幅器26、27がトランジスタ25を共有する。増幅器29、30が負荷トランジスタ28を共有する。それにより、6トランジスタで4つの増幅器が構成できるため、遅延回路一段あたりの負荷容量を小さくすることが可能である。
【0007】
次に図7の構成を説明する。図7は、図8の遅延回路18−d、18−e、18−f、18−gを縦続接続する。そして、最終段の遅延回路18−gの出力端子Vout1を遅延回路18−dの入力端子Vin2に接続する。また、遅延回路18−gの出力端子Vout2を遅延回路18−dの入力端子Vin1に接続する。
【0008】
次に図7の動作を説明する。例えば、18−dのVin1がハイレベル、Vin2がロウレベルであった場合、18−d、18−e、18−fおよび18−gの出力端子Vout1はハイレベルを示す。また、18−d、18−e、18−fおよび18−gの出力端子Vout2はロウレベルを示す。ここで、18−gの出力信号は、交差して18−dの入力端子に帰還される。つまり、18−gの出力端子Vout1は、18−dの入力端子Vin2に接続される。また、18−gの出力端子Vout2は、18−dの入力端子Vin1に接続される。したがって、18−dのVin1はハイレベルからロウレベルに遷移し、18−dのVin2はロウレベルからハイレベルに遷移する。
【0009】
これにより、18−d、18−e、18−fおよび18−gは、順次、出力端子Vout1がロウレベル、出力端子Vout2がハイレベルに遷移する。さらに、帰還により18−dのVin1はロウレベルからハイレベルに遷移し、18−dのVin2はハイレベルからロウレベルに遷移する。これを繰り返すことにより発振動作を行う。ここで、VcontpおよびVcontnの電圧を変更することにより、各遅延回路の可変電流源の電流を制御することができる。それにより、各遅延回路の遅延値を制御することが可能である。つまり、発振回路の発振周波数を制御することが可能である。
【0010】
ここで、図7に示す特許文献1の発振回路において、例えば、遅延回路18−dの出力端子Vout1および出力端子Vout2が共にロウレベルを示した場合を考える。このとき、遅延回路18−eの出力端子Vout1および出力端子Vout2は共にハイレベル、遅延回路18−fの出力端子Vout1および出力端子Vout2は共にロウレベル、遅延回路18−gの出力端子Vout1および出力端子Vout2は共にハイレベルを示す。つまり、発振回路が発振しない起動状態(発振停止状態)を示してしまう。
【0011】
以下、発振停止状態を回避するための設定を図8の遅延回路を用いて説明する。入力端子Vin1及び入力端子Vin2が共にロウレベルの場合、トランジスタ25とトランジスタ28がオンする。それにより、トランジスタ27、29のゲートにハイレベルの信号が供給される。そのため、トランジスタ27、29はオンする。このような場合に、出力端子Vout1と出力端子Vout2が互いに逆相出力を示すような回路構造にする必要がある。すなわち、発振停止状態から発振起動するために、第3の増幅器を構成するトランジスタ27と第4の増幅器を構成するトランジスタ29は、大きな差動ゲインをもつ必要がある。つまり、微小な信号の電位差に対しても敏感に反応可能なトランジスタ構造を持つ必要がある。この場合、トランジスタ27、29は、十分な電流能力を有するために大きなトランジスタサイズで構成される必要がある。
【0012】
ここで、発振停止状態から発振起動するための差動増幅器を構成するトランジスタ27、29は、発振起動後に発振動作が安定している場合にも動作する。しかし、上述のように、トランジスタ27、29は、十分な電流能力を有するトランジスタによって構成されるため、発振動作の高速化を妨げてしまう。
【0013】
以下、上記の問題が発生するメカニズムについて図9を用いて説明する。図9は、特許文献1の発振回路を構成する遅延回路において、電流の流れを示したものである。電流Is1は、トランジスタ25に流れる電流を示す。電流Is2は、トランジスタ27に流れる電流を示す。Ioutは出力端子Vout2に流れる出力電流を示す。また、Vin1、Vin2は遅延回路の入力端子を示す。Vout1、Vout2は遅延回路の出力端子を示す。ここで、図8のトランジスタ31、32は、動作に影響がないため説明を省略する。また、便宜上、トランジスタ25、トランジスタ28のソース側に接続された端子をVPPとし、トランジスタ26、トランジスタ27、トランジスタ29、トランジスタ30のソース側に接続された端子をGNDとする。
【0014】
トランジスタ27がオンしている場合、電流Is2が流れる。このとき、出力端子Vout2に流れる出力電流Ioutは減少する。つまり、出力電流Ioutは、電流Is1−電流Is2で表すことができる。図9の例では、Vout2の信号がロウレベルからハイレベルに遷移するとき、即ち、Vout1の信号がハイレベルからロウレベルに遷移するときに流れる電流Is2によって、出力電流Ioutは減少する。
【0015】
ここで、発振回路1の発振周波数は、出力電流Ioutに比例し、容量Cs1に反比例することが一般的に知られている。したがって、電流Is2が大きいほど発振周波数の上限は低下する。つまり、電流Is2が大きいほど発振回路1の発振周波数の高速化が制限される。ここで、電流Is2を小さくするために、トランジスタ27のチャネル幅Wを小さくする対策が考えられる。しかし、トランジスタ27の電流能力を低下させてしまうと、発振起動時における発振停止状態を回避することが困難である。
【0016】
以上のように、図8に示す遅延回路では、発振動作が安定している場合にもトランジスタ27、29に多くの電流が流れる。そのため、発振動作の高速化が妨げられる。一方、発振動作の高速化を実現するために、トランジスタ27、29のトランジスタサイズを小さくして電流能力を下げる対策が考えられる。しかし、その場合は、発振起動時における発振停止状態を回避することが困難である。
【特許文献1】特開2001−358565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、従来の発振回路は、発振信号を増幅させる電流等の影響で発振周波数の高速化が制限されるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる差動発振回路は、帰還ループ回路を備えた差動型の発振回路であって、前記帰還ループ回路上に縦続接続され、入力された一対の差動入力信号を遅延させて一対の差動出力信号として出力する遅延回路と、前記発振回路が発振起動状態か安定状態のいずれかにあるかを検出し、検出結果を示す検出信号を出力する発振起動検出回路と、を備え、前記遅延回路は、前記発振起動検出回路から出力された検出信号に基づいて、前記差動出力信号の出力電流値を制御する発振回路である。
【0019】
上述のような回路構成により、発振周波数の高速化が可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、発振周波数の高速化が可能な発振回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0022】
発明の実施の形態1
本発明の実施の形態1について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態1における差動発振回路(発振回路)のブロック図である。図1の差動発振回路は、同一の半導体基板上に形成された発振回路1と、差動シングルエンド変換回路6と、発振起動を検出するための発振起動検出回路7と、を備えた回路構成を採用している。発振回路1の差動出力である遅延回路5の出力端子Vout1は、差動シングルエンド変換回路6の入力端子VIN1Iに接続される。発振回路1の差動出力である遅延回路5の出力端子Vout2は、差動シングルエンド変換回路6の入力端子VIN2Iに接続される。
【0023】
差動シングルエンド変換回路6の出力端子VOUTは、発振起動検出回路7の入力端子VINに接続される。発振起動検出回路7の出力端子VSTPOは、発振回路1に備えられた遅延回路2と、遅延回路3と、遅延回路4と、遅延回路5と、のそれぞれの入力端子(低電位側電源端子)VSTPIに接続される。電源電圧端子VDDは、トランジスタMP0のソースに接続される。トランジスタMP0は、例えばPチャネル型MOSトランジスタである。トランジスタMP0のドレインは、発振回路1に備えられた遅延回路2と、遅延回路3と、遅延回路4と、遅延回路5と、のそれぞれの入力端子(高電位側電源端子)VPPに入力される。トランジスタMP0のゲートは、発振回路1の入力端子CONTに接続される。外部からの電圧制御信号CNTが、発振回路1の入力端子CONTに入力される。
【0024】
発振回路1は、遅延回路2、3、4および5を縦続接続した構成である。遅延回路2の出力端子Vout1は遅延回路3の入力端子Vin1に接続される。遅延回路2の出力端子Vout2は遅延回路3の入力端子Vin2に接続される。遅延回路3の出力端子Vout1は遅延回路4の入力端子Vin1に接続される。遅延回路3の出力端子Vout2は遅延回路4の入力端子Vin2に接続される。遅延回路4の出力端子Vout1は遅延回路5の入力端子Vin1に接続される。遅延回路4の出力端子Vout2は遅延回路5の入力端子Vin2に接続される。遅延回路5の出力端子Vout1は遅延回路2の入力端子Vin2に接続される。遅延回路5の出力端子Vout2は遅延回路2の入力端子Vin1に接続される。
【0025】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明の実施の形態1では、発振回路1に4つの遅延回路を備えた例を示すが、これに限られない。発振信号を出力可能であれば遅延回路の数はいくつでも良い。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1の遅延回路であり、図1の遅延回路2、3、4および5の回路構成を示す。図3の回路は、トランジスタMP1と、MP2と、MN1と、MN2と、MN3と、MN4と、MN5と、MN6と、MN7と、MN8と、を有する。ここで、MP1と、MP2と、は例えばPチャネル型MOSトランジスタである。また、MN1と、MN2と、MN3と、MN4と、MN5と、MN6と、MN7と、MN8と、は例えばNチャネル型MOSトランジスタである。トランジスタMP1とトランジスタMN1により第1の増幅器(第1のインバータ)が構成される。トランジスタMP2とトランジスタMN8により第2の増幅器(第2のインバータ)が構成される。トランジスタMN2(第1のトランジスタ)とトランジスタMN3(第3のトランジスタ)により第3の増幅器が構成される。トランジスタMN5(第2のトランジスタ)とトランジスタMN7(第4のトランジスタ)により第4の増幅器が構成される。トランジスタMN4は、第3の増幅器の能力切り替えスイッチ(第1のスイッチ素子)である。また、トランジスタMN6は、第4の増幅器の能力切り替えスイッチ(第2のスイッチ素子)である。
【0027】
ここで、トランジスタMN3、MN7は、発振を持続させるための発振持続用差動増幅器である。つまり、発振動作が安定している場合(安定状態)に用いられる増幅器である。また、トランジスタMN2、MN5は、発振起動を補助するための発振起動補助用差動増幅器である。つまり、発振停止状態から発振起動する場合(発振起動状態)に用いられる増幅器である。入力端子Vin1はトランジスタMP1のゲートと、トランジスタMN1のゲートとにそれぞれ接続される。トランジスタMP1のソースは、高電位側電源端子VPPに接続される。トランジスタMN1のソースは、接地電圧端子GNDに接続される。トランジスタMP1のドレインとトランジスタMN1のドレインは共通の出力ノードを介して出力端子Vout2に接続される。
【0028】
入力端子Vin2はトランジスタMP2のゲートと、トランジスタMN8のゲートとにそれぞれ接続される。トランジスタMP2のソースは、高電位側電源端子VPPに接続される。トランジスタMN8のソースは、接地電圧端子GNDに接続される。トランジスタMP2のドレインとトランジスタMN8のドレインは共通の出力ノードを介して出力端子Vout1に接続される。トランジスタMP1のドレインとトランジスタMN1のドレインとの共通の出力ノードは、さらにトランジスタMN5のゲートと、トランジスタMN7のゲートと、トランジスタMN3のドレインと、トランジスタMN2のドレインと、に接続される。トランジスタMP2のドレインとトランジスタMN8のドレインとの共通の出力ノードは、さらにトランジスタMN2のゲートと、トランジスタMN3のゲートと、トランジスタMN7のドレインと、トランジスタMN5のドレインと、に接続される。
【0029】
トランジスタMN3のソースと、トランジスタMN7のソースと、トランジスタMN4のソースと、トランジスタMN6のソースと、は接地電圧端子GNDに接続される。トランジスタMN4のドレインは、ノードN104を介してトランジスタMN2のソースに接続される。トランジスタMN4のゲートは、低電位側電源端子VSTPIに接続される。トランジスタMN6のドレインは、ノードN105を介してトランジスタMN5のソースに接続される。トランジスタMN6のゲートは、低電位側電源端子VSTPIに接続される。また、容量Cs1は出力端子Vout2と次段の入力端子の間に寄生する容量を示している。容量Cs2は出力端子Vout1と次段の入力端子の間に寄生する容量を示している。
【0030】
図2に発振起動検出回路7のタイミングチャートを示す。電源電圧VDDが立ち上がった時刻をT0とする。VCOOUT(発振起動検出回路7の入力端子VINに入力される信号)の発振が十分に安定するときの時刻をT1とする。電源電圧VDDが立ち上がってから発振が十分に安定するまでの時間をT2とする。図2の例に示すように、発振起動検出回路7は、VCOOUTの立ち上がりをトリガとして時刻T1をカウントする一般的な同期カウンタである。
【0031】
図1、図2及び図3を用いて本発明の実施の形態1の動作を説明する。まず、図1の発振回路が、発振起動時において発振停止状態を回避するための前提条件について、図3を用いて説明する。図3の入力端子Vin1及び入力端子Vin2が共にロウレベルの場合、トランジスタMP1とトランジスタMP2がオンする。それにより、トランジスタMN2、トランジスタMN3、トランジスタMN5、トランジスタMN7のゲートにハイレベルの信号が供給される。そのため、トランジスタMN2、トランジスタMN3、トランジスタMN5、トランジスタMN7はオンする。
【0032】
このような場合に、出力端子Vout1と出力端子Vout2が互いに逆相出力を示すような回路構造にする必要がある。すなわち、発振停止状態から発振起動するために、第3の増幅器を構成するトランジスタMN2とトランジスタMN3、及び第4の増幅器を構成するトランジスタMN5とトランジスタMN7は、大きな差動ゲインをもつ必要がある。つまり、微小な信号の電位差に対しても敏感に反応可能なトランジスタ構造を持つ必要がある。この場合、例えばトランジスタMN2、MN5は、十分な電流能力を有するために大きなトランジスタサイズで構成される必要がある。その際、通常は10倍程度のトランジスタサイズで構成される。
【0033】
次に、図1の発振回路の発振動作について説明する。図1の発振回路1は、電源電圧VDD印加直後に起動検出信号VSTP(発振起動検出回路7の出力端子VSTPOの出力信号)がハイレベルを示す。そのため、遅延回路2〜5(図3参照)に備えられた第3、第4の増幅器の能力切り替えスイッチであるトランジスタMN4、MN6がオンする。ここで、遅延回路2〜5(図3参照)の第3の増幅器としてトランジスタMN2、トランジスタMN3が動作する。また、第4の増幅器としてトランジスタMN5、トランジスタMN7が動作する。つまり、第3及び第4の増幅器は発振起動するために必要な電流能力を有する。したがって、発振回路1は、発振停止状態から微小な電位差を増幅して発振起動することができる。
【0034】
図1において、発振回路1が発振を開始すると、差動シングルエンド変換回路6はシングルエンド信号に変換した発振信号VCOOUTを出力する。図2に示すように、発振を開始した時刻T0から、発振が安定するまでの時間T2を経て時刻T1に達する。このとき、発振起動検出回路7は、発振が安定したことを検出してロウレベルの起動検出信号VSTPを出力する。それにより、図3に示すトランジスタMN4とトランジスタMN6がオフする。したがって、トランジスタMN2とトランジスタMN5もオフする。つまり、トランジスタMN2を流れる電流Is2Aはゼロを示す。同様に、トランジスタMN5に流れる電流Is2Bはゼロを示す。そのため、第3の増幅器はトランジスタMN3のみがオンした状態である。同様に、第4の増幅器はトランジスタMN7のみがオンした状態である。
【0035】
時刻T1において、例えば、図1に示す遅延回路2の入力端子Vin1の電圧がハイレベル、入力端子Vin2の電圧がロウレベルを示す場合を考える。このとき、遅延回路2、遅延回路3、遅延回路4および遅延回路5の出力端子Vout1の電圧はそれぞれハイレベルを示す。また、遅延回路2、遅延回路3、遅延回路4および遅延回路5の出力端子Vout2の電圧はそれぞれロウレベルを示す。ここで、遅延回路5の出力端子Vout1が遅延回路2の入力端子Vin2に接続される。遅延回路5の出力端子Vout2が遅延回路2の入力端子Vin1に接続される。そのため、遅延回路2のVin1はハイレベルからロウレベルに遷移し、遅延回路2のVin2の電圧はロウレベルからハイレベルに遷移する。
【0036】
これにより、遅延回路2、遅延回路3、遅延回路4および遅延回路5は、順次、出力端子Vout1の電圧がロウレベル、出力端子Vout2の電圧がハイレベルに遷移する。さらに、帰還により遅延回路2の入力端子Vin1は、再びロウレベルからハイレベルに遷移し、遅延回路2の入力端子Vin2は、再びハイレベルからロウレベルに遷移する。発振回路1はこの遷移を繰り返すことにより発振動作を行う。また、このように発振回路1によって生成された発振信号に基づいた信号VCOOUTが差動シングルエンド変換回路6から出力される。
【0037】
このように、本発明の実施の形態1にかかる発振回路は、発振回路1を構成する遅延回路2〜5において、発振起動を補助するための発振起動補助用差動増幅器(トランジスタMN2、MN5)と、発振を持続させるための発振持続用差動増幅器(トランジスタMN3、MN7)とが並列接続された回路構成の差動増幅器を有する。また、発振起動検出回路7から出力されるVSTP信号により、発振起動補助用差動増幅器の導通状態を制御する能力切り替えスイッチ(トランジスタMN4、MN6)のオンオフが制御される。それにより、発振起動時(発振起動状態)と発振持続時(安定状態)において流れる電流を切替制御することが可能である。つまり、従来技術の課題であった発振起動用の差動増幅器の動作電流によって高速化が制限されるという問題を解決することができる。
【0038】
従来技術の問題点を解決するメカニズムについて、図3を用いて説明する。図3に示すように、電流Is1はトランジスタMP1のドレイン電流である。電流Is2AはトランジスタMN2のドレイン電流である。電流Is2BはトランジスタMN5のドレイン電流である。電流Is3はトランジスタMN3のドレイン電流である。出力電流Ioutは出力端子Vout2に流れる出力電流である。
【0039】
トランジスタMN3は、例えばトランジスタMN2の1/10程度のトランジスタサイズになるように構成する。ここで、トランジスタサイズが大きいほど十分な電流能力を有するものとする。それにより、電流値がIs2A>>Is3の状態を示す。同様に、トランジスタMN7は、例えばトランジスタM5の1/10程度のトランジスタサイズになるように構成する。なお、出力端子Vout1に流れる出力電流は、出力端子Vout2に流れる出力電流Ioutの場合と同様であるため説明を省略する。
【0040】
ここで、発振回路1(図1参照)の発振周波数は、出力電流Ioutと容量Cs1で決定される。一般的には、周波数は電流に比例して高くなり、容量に反比例して高くなる。図3の遅延回路の場合、第3の増幅器(トランジスタMN2、MN3)がオンしている場合、電流(Is2A+Is3)が流れる。このとき、出力端子Voutに流れる出力電流Ioutは減少する。つまり、出力電流Ioutは、電流Is1−(Is2A+Is3)で表すことができる。図3の例では、出力端子Vout2の電圧がロウレベルからハイレベルに遷移するとき、即ち、出力端子Vout1の電圧がハイレベルからロウレベルに遷移するときに流れる電流(Is2A+Is3)によって、出力電流Ioutは減少する。ここで、第3の増幅器に流れる電流が大きいほど、発振周波数の上限は低下する。つまり、発振周波数の高速化が制限される。
【0041】
図1において、発振回路1が発振を開始すると、差動シングルエンド変換回路6はシングルエンド信号に変換した発振周波数を有する発振信号VCOOUTを出力する。図2に示すように、発振を開始した時刻T0から、発振が安定するまでの時間T2を経て時刻T1に達する。このとき、発振起動検出回路7は、発振が安定したことを検出してロウレベルの起動検出信号VSTPを出力する。それにより、図3に示すトランジスタMN4、MN6がオフする。したがって、トランジスタMN2、MN5もオフする。
【0042】
出力端子Vout1の電圧がハイレベルからロウレベルに変化する際、トランジスタMN4はオフしているため、トランジスタMN2を流れる電流Is2Aはゼロである。このとき、第3の増幅器において接地電圧端子GNDに流れる電流は、トランジスタMN3の電流Is3のみとなる。つまり、第3の増幅器には、トランジスタMN2の1/10程度の電流のみが流れる。したがって、出力端子Vout2がロウレベルからハイレベルに遷移する際、電流値がIs1>>Is3の状態を示す。つまり、出力端子Vout2には、実質的に電流Is1と同等の値の電流Ioutが流れる。このように、安定した発振動作時において、トランジスタMN4をオフに制御することにより、従来技術に比べて第3の増幅器に流れる電流を抑えることが可能である。したがって、発振周波数の上限値を引き上げることができる。つまり、発振周波数の高速化が可能である。
【0043】
発明の実施の形態2
図4は、本発明の実施の形態2の差動発振回路(発振回路)である。図4は本発明の実施の形態1の差動発振回路に発振停止検出回路8を付加した回路構成である。発振停止検出回路8において、入力端子REFIに基準信号REFが入力される。また、リセット端子STBYIに発振停止検出回路8に備えられたフリップフロップ回路の初期化用のリセット信号STBYが入力される。ここで、基準信号REFは、位相を合わせるためにPLL等で用いられる基準信号である。発振停止検出回路8の出力端子RESETOは、発振起動検出回路7の入力端子RESETIに接続される。なお、発振停止検出回路8の出力端子RESETOから出力される信号をRESETとする。差動シングルエンド変換回路6の出力VOUTは、発振起動検出回路7の入力端子VINに加え、発振停止検出回路8の入力端子VCOOUTIに接続される。
【0044】
上記以外の回路構成は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。発振停止検出回路8の回路構成は、例えば図5に示す回路構成により容易に実現できる。図5に発振停止検出回路8の一例を示す。図5の回路は、発振停止確認するために必要な5個のフリップフロップFF50、FF51、FF52、FF53、FF1000と、NOR回路200(以下、NOR200と称す)と、AND回路201(以下、AND201と称す)と、OR回路202(以下、OR202と称す)と、2分周回路9と、を有する。なお、このような回路構成は、実施の形態の一例を示したに過ぎず、趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更が可能である。例えば、本実施の形態では、発振停止検出回路8は、5個のフリップフロップを有する回路構成の例を示しているが、これに限られない。例えば、設計仕様等により決定された所定のクロックサイクルに応じた数のフリップフロップを有する回路構成も適用可能である。
【0045】
入力端子REFIは、フリップフロップFF50の入力端子CLK、フリップフロップFF51の入力端子CLK、フリップフロップFF52の入力端子CLK、フリップフロップFF53の入力端子CLK、FF1000の入力端子CLKに接続される。入力端子STBYIは、フリップフロップFF50のリセット端子R、フリップフロップFF51のリセット端子R、フリップフロップFF52のリセット端子R、フリップフロップFF53のリセット端子R、FF1000のリセット端子Rに接続される。
【0046】
入力端子VCOOUTIは2分周回路9の入力端子INに接続される。2分周回路9の出力端子FBOはフリップフロップFF50の入力端子Dに接続される。なお、2分周回路9は一般的に用いられる2分周回路である。この2分周回路9により、差動シングルエンド変換回路6から出力される信号VCOOUTを2分周して出力する。ここで、2分周回路9から出力された信号をFB信号とする。フリップフロップFF50の出力端子Qは、フリップフロップFF51の入力端子Dに接続される。フリップフロップFF51の出力端子Qは、フリップフロップFF52の入力端子Dに接続される。フリップフロップFF52の出力端子Qは、フリップフロップFF53の入力端子Dに接続される。フリップフロップFF53の出力端子Qは、フリップフロップFF1000の入力端子Dに接続される。
【0047】
また、フリップフロップFF50の出力端子Q、フリップフロップFF51の出力端子Q、フリップフロップFF52の出力端子Q、フリップフロップFF53の出力端子Q、フリップフロップFF1000の出力端子Qは、それぞれNOR200の入力端子とAND201の入力端子に接続される。NOR200の出力端子は、OR202の一方の入力端子に接続される。AND201の出力端子は、OR202の他方の入力端子に接続される。OR202の出力端子は出力端子RESETOに接続される。
【0048】
本発明の実施の形態2の動作について図5及び図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態2の差動発振回路のタイミングチャートである。ここで、2分周回路9の出力信号FBは、差動シングルエンド変換回路6の出力信号VCOOUTの立ち上がりエッジをトリガとして出力される。
【0049】
半導体チップに発生するノイズや半導体チップ外からのノイズ(以下、外来ノイズと称す)等の影響により、図4に示す発振回路1の発振が停止した時刻をTXとする。また、発振停止確認するために必要なクロックサイクル数(本実施例では5クロックサイクル)をフリップフロップFF50、FF51、FF52、FF53、FF1000によりカウントする。カウント後、出力信号RESETがハイレベル(発振停止)を示す時刻をT3とする。そして、再び発振回路1が発振起動した後、基準クロックである基準信号REFの立ち下りエッジにより、2分周回路9の出力信号FBをロウレベルのデータとして読みこんだ時刻をT4とする。その後、2分周回路9の出力信号をハイレベルのデータとして読みこんだ時刻をT5とする。なお、時刻T4、T5を検出することにより、発振回路1が再び発振動作を開始したことを認識することができる。そして、発振が安定するまでの所定の時間経過後、発振起動検出回路7の出力信号VSTPがロウレベルを示す時刻をT6とする。
【0050】
外来ノイズ等の影響で発振回路1の発振が停止した場合、図4に示す差動シングルエンド変換回路6の出力信号VCOOUTがロウレベルまたはハイレベルのいずれかに固定されてしまう。このとき、2分周回路9の出力信号FBがロウレベルまたはハイレベルに固定された状態を示す。
【0051】
まず2分周回路9の出力信号FBがロウレベルに固定された場合の動作について説明する。なお、この例では、基準クロックREFの5クロックサイクル分、出力信号FBがロウレベルまたはハイレベルに固定された状態を示した場合、発振動作が停止したものとしている。図5に示すように、出力信号FBがロウレベルに固定されることにより、フリップフリップFF50の入力端子Dにロウレベルの信号が入力される。フリップフリップFF50の出力端子Qからはロウレベルの信号が出力される。フリップフリップFF51の入力端子Dにロウレベルの信号が入力される。同様に、フリップフロップFF51、FF52、FF53、FF1000の出力端子Qからは、ロウレベルの信号が出力される。これにより、NOR200からハイレベルの信号が出力される。
【0052】
このように、発振停止検出回路8に備えられた各フリップフロップの出力端子Qからはロウレベルの信号が出力される。そのため、AND201からロウレベルの信号が出力される。それにより、OR202からハイレベルの信号が出力される。すなわち、発振停止検出回路8の出力信号RESETはハイレベルを示す(図6における時刻T3)。図4に示すように、このハイレベルの出力信号RESETにより発振起動検出回路7が初期化される。発振起動検出回路7が初期化されたことにより、信号VSTPは再びハイレベルを示す。つまり、遅延回路2〜5(図3参照)に備えられたトランジスタMN4、MN6がオンする。このことにより、第3の増幅器を構成するトランジスタMN2にドレイン電流Is2Aが流れる。同様に、第4の増幅器を構成するトランジスタMN5にドレイン電流Is2Bが流れる。つまり、第3及び第4の増幅器は発振起動するために必要な電流能力を再び有する。したがって、発振回路1は、発振停止状態から微小な電位差を増幅して再び発振起動することができる。
【0053】
発振回路1の発振起動が開始されると、差動シングルエンド変換回路6の出力信号VCOOUTも発振を開始する。ロウレベルに固定されていた2分周回路9の出力信号FBもハイレベルを示す(図6における時刻T5)。フリップフリップFF50の入力端子Dにハイレベルの信号が入力される。フリップフロップFF50の出力端子Qからは、ハイレベルの信号が出力される。これにより、NOR200からロウレベルの信号が出力される。また、発振開始後において、信号FBは基準クロックREFの立ち下がりエッジ毎にハイレベルとロウレベルを交互に出力する。そのため、NOR200に入力される信号のうち、いずれかの信号はハイレベルを示す。
【0054】
したがって、NOR200から常にロウレベルの信号が出力される。同様に、AND201に入力される信号のうち、いずれかの信号はロウレベルを示す。したがって、AND201から常にロウレベルの信号が出力される。それにより、OR202からロウレベルの信号が出力される。すなわち、発振停止検出回路8の出力信号RESETはロウレベルを示す(図6における時刻T6)。このように、外来ノイズ等の影響で発振回路1の発振が停止した場合でも、発振動作の再起動が可能である。
【0055】
まず2分周回路9の出力信号FBがハイレベルに固定された場合の動作について説明する。図5に示すように、出力信号FBがハイレベルに固定されることにより、フリップフリップFF50の入力端子Dにハイレベルの信号が入力される。フリップフリップFF50の出力端子Qからはハイレベルの信号が出力される。フリップフリップFF51の入力端子Dにハイレベルの信号が入力される。同様に、フリップフロップFF51、FF52、FF53、FF1000の出力端子Qからは、ハイレベルの信号が出力される。これにより、NOR200からロウレベルの信号が出力される。
【0056】
このように、発振停止検出回路8に備えられた各フリップフロップの出力端子Qからはハイレベルの信号が出力される。そのため、AND201からハイレベルの信号が出力される。それにより、OR202からハイレベルの信号が出力される。すなわち、発振停止検出回路8の出力信号RESETはハイレベルを示す(図6における時刻T3)。図4に示すように、このハイレベルの出力信号RESETにより発振起動検出回路7が初期化される。発振起動検出回路7が初期化されたことにより、信号VSTPは再びハイレベルを示す。つまり、遅延回路2〜5(図3参照)に備えられたトランジスタMN4、MN6がオンする。このことにより、第3の増幅器を構成するトランジスタMN2にドレイン電流Is2Aが流れる。同様に、第4の増幅器を構成するトランジスタMN5にドレイン電流Is2Bが流れる。つまり、第3及び第4の増幅器は発振起動するために必要な電流能力を再び有する。したがって、発振回路1は、発振停止状態から微小な電位差を増幅して再び発振起動することができる。
【0057】
発振回路1の発振起動が開始されると、差動シングルエンド変換回路6の出力信号VCOOUTも発振を開始する。ハイレベルに固定されていた2分周回路9の出力信号FBもロウレベルを示す(図6における時刻T5)。フリップフリップFF50の入力端子Dにロウレベルの信号が入力される。フリップフロップFF50の出力端子Qからは、ロウレベルの信号が出力される。発振開始後において、信号FBは基準クロックREFの立ち下がりエッジ毎にハイレベルとロウレベルを交互に出力する。そのため、NOR200に入力される信号のうち、いずれかの信号はハイレベルを示す。したがって、NOR200から常にロウレベルの信号が出力される。同様に、AND201に入力される信号のうち、いずれかの信号はロウレベルを示す。したがって、AND201から常にロウレベルの信号が出力される。それにより、OR202からロウレベルの信号が出力される。すなわち、発振停止検出回路8の出力信号RESETはロウレベルを示す(図6における時刻T6)。このように、外来ノイズ等の影響で発振回路1の発振が停止した場合でも、発振の再起動が可能である。
【0058】
以上のように、本発明の実施の形態2における差動発振回路は、図4に示す発振停止検出回路8によって、差動シングルエンド変換回路6の出力信号VCOOUTが発振しているか停止しているかの検知を行う。ここで、発振停止が検出された場合、発振起動検出回路7を初期化することにより、VSTP信号を再びハイレベルにする。それにより、図3に示すトランジスタMN4及びトランジスタMN6が再びオンする。つまり、トランジスタMN2に電流Is2Aが流れる。同様に、トランジスタMN5に電流Is2Bが流れる。つまり、遅延回路2〜5に備えられた第3及び第4の増幅器は、発振起動するために必要な電流能力を再び有する。したがって、発振回路1は、発振停止状態から微小な電位差を増幅して再び発振起動することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、発振回路1に備えられた遅延回路2〜5は、第3及び第4の増幅器の一方の端子が接地電圧端子GNDに接続された場合の例について説明したが、これに限られない。例えば、第3及び第4の増幅器の一方の端子が高電位側電源端子VPPに接続された場合の回路構成も可能である。あるいは、一方の端子が接地電圧端子GNDに接続された第3及び第4の増幅器に加え、一方の端子が高電位側電源端子VPPに接続された第5及び第6の増幅器をさらに備えた回路構成も適用可能である。なお、その場合、第5及び第6の増幅器は、第3及び第4の増幅器と同様の回路構成である。
【0060】
また、本発明の上記実施の形態では、第3の増幅器としてトランジスタMN2、MN3を有し、第4の増幅器としてトランジスタMN5、MN7を有した回路構成の例について説明したが、これに限られない。例えば、第3の増幅器としてトランジスタMN2のみを有し、第4の増幅器としてトランジスタMN5のみを有した回路構成も適用可能である。これにより、発振起動後の安定した発振動作時(安定状態)において、電流Ioutが実質的に電流Is1のみの状態を示す。したがって、発振周波数の上限値を引き上げることができる。つまり、発振周波数の高速化が可能である。
【0061】
また、本発明の上記実施の形態では、第3の増幅器の能力切り替えスイッチとしてトランジスタMN4を、第4の増幅器の能力切り替えスイッチとしてトランジスタMN6を有した回路構成の例について説明したが、これに限られない。例えば、第3及び第4の増幅器を共通に能力切り替えする1個のスイッチ素子(例えば、Nチャネル型トランジスタ)を備えた場合の回路構成も適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる差動発振回路を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる差動発振回路のタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる遅延回路を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる差動発振回路を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる発振停止検出回路を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる差動発振回路のタイミングチャートである。
【図7】従来技術の発振回路を示す図である。
【図8】従来技術の遅延回路を示す図である。
【図9】従来技術の遅延回路における電流の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 発振回路
2 遅延回路
3 遅延回路
4 遅延回路
5 遅延回路
6 差動シングルエンド変換回路
7 発振起動検出回路
8 発振停止検出回路
9 2分周回路
200 NOR回路
201 AND回路
202 OR回路
Cs1 容量
Cs2 容量
FF50 フリップフロップ
FF51 フリップフロップ
FF52 フリップフロップ
FF53 フリップフロップ
FF1000 フリップフロップ
GND 接地電圧端子
MP0 トランジスタ
MP1 トランジスタ
MP2 トランジスタ
MN1 トランジスタ
MN2 トランジスタ
MN3 トランジスタ
MN4 トランジスタ
MN5 トランジスタ
MN6 トランジスタ
MN7 トランジスタ
MN8 トランジスタ
N104 ノード
N105 ノード
VDD 電源電圧端子
VPP 高電位側電源端子
VSTPI 低電位側電源端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帰還ループ回路を備えた差動型の発振回路であって、
前記帰還ループ回路上に縦続接続され、入力された一対の差動入力信号を遅延させて一対の差動出力信号として出力する遅延回路と、
前記発振回路が発振起動状態か安定状態のいずれかにあるかを検出し、検出結果を示す検出信号を出力する発振起動検出回路と、を備え、
前記遅延回路は、前記発振起動検出回路から出力された検出信号に基づいて、前記差動出力信号の出力電流値を制御する発振回路。
【請求項2】
前記遅延回路は、
前記差動入力信号を反転させて出力する一対の第1及び第2のインバータと、
第1のインバータの出力ノードと電源電圧端子との間に接続され、第2のインバータの出力ノードの電圧に基づいてオンオフが制御される第1のトランジスタと、
第2のインバータの出力ノードと電源電圧端子との間に接続され、第1のインバータの出力ノードの電圧に基づいてオンオフが制御される第2のトランジスタと、
前記第1のインバータの出力ノードと電源電圧端子との間において前記第1のトランジスタに直列に接続され、前記第2のインバータの出力ノードと電源電圧端子との間において前記第2のトランジスタに直列に接続され、前記検出信号に基づいてオンオフが制御されるスイッチ回路と、を備えた請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記遅延回路は、
前記発振回路が発振起動状態を示す場合には、前記検出信号により前記スイッチ回路をオンにするように制御し、前記発振回路が安定状態を示す場合には、前記検出信号により前記スイッチ回路をオフにするように制御することを特徴とする請求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記遅延回路は、
第1のインバータの出力ノードと電源電圧端子との間に接続され、第2のインバータの出力ノードの電圧に基づいてオンオフが制御され、前記第1のトランジスタよりもオン抵抗の大きい第3のトランジスタと、
第2のインバータの出力ノードと電源電圧端子との間に接続され、第1のインバータの出力ノードの電圧に基づいてオンオフが制御され、前記第2のトランジスタよりもオン抵抗の大きい第4のトランジスタと、をさらに備えた請求項2又は3に記載の発振回路。
【請求項5】
前記スイッチ回路は、
前記第1のトランジスタに直列に接続され、前記検出信号に応じてオンオフが制御される第1のスイッチ素子と、
前記第2のトランジスタに直列に接続され、前記検出信号に応じてオンオフが制御される第2のスイッチ素子と、を備えた請求項2〜4のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項6】
前記電源電圧端子は低電位側電源電圧端子であって、
前記第1〜前記第4のトランジスタと、前記第1及び前記第2のスイッチ素子は、いずれもNチャネル型MOSトランジスタであることを特徴とする請求項5に記載の発振回路。
【請求項7】
前記電源電圧端子は高電位側電源電圧端子であって、
前記第1〜前記第4のトランジスタと、前記第1及び前記第2のスイッチ素子は、いずれもPチャネル型MOSトランジスタであることを特徴とする請求項5に記載の発振回路。
【請求項8】
前記発振回路の発振が停止したことを検出し、リセット信号を出力する発振停止検出回路をさらに備え、
前記発振起動検出回路は、前記リセット信号に基づいて前記発振回路が発振起動状態であるという検出結果を前記検出信号として出力することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−154253(P2010−154253A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330485(P2008−330485)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】