説明

発泡成形体の製造方法、発泡成形体の製造装置および発泡成形体

【課題】発泡成形体を高精度に形成すること。
【解決手段】キャビティ面21a、22aによって画成されたキャビティ23を備える製造装置20のキャビティ23は、発泡原料が供給される発泡開始空間24と、発泡開始空間24に連なり発泡開始空間24内の発泡原料が発泡することで到達して充満される発泡終端空間25とを備え、ガス抜き孔26が開口する開口キャビティ面21aの周縁部21eは、発泡終端空間25を画成し、開口キャビティ面21aに通気性部材3を配置してガス抜き孔26を覆わせる配置工程と、発泡開始空間24に発泡原料を供給する供給工程と、発泡原料を発泡終端空間25に到達させて該発泡終端空間25内が発泡原料で充満されるまで発泡させる発泡工程とを有し、配置工程は、前記周縁部21eに形成されたガス逃げ凹溝27に通気性部材3を接続させて開口キャビティ面21aに配置する発泡成形体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡原料が発泡することで形成された発泡体と、通気性部材と、が一体に固着されてなる発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法、発泡成形体の製造装置および発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の発泡成形体の製造方法として、例えば下記特許文献1に示されるような、複数の型部材の間にそれぞれのキャビティ面によって画成されたキャビティを備える発泡成形体の製造装置を用いる方法が知られている。前記キャビティは、発泡原料が供給される発泡開始空間と、該発泡開始空間に連なり、該発泡開始空間内の発泡原料が発泡することで到達する発泡終端空間と、を備えている。またこの方法は、キャビティ面のうち、ガス抜き孔が開口する開口キャビティ面に通気性部材を配置する配置工程と、発泡開始空間に発泡原料を供給する供給工程と、発泡原料を発泡終端空間に到達するまで発泡させ、発泡体を形成するとともに該発泡体と通気性部材とを一体に固着させる発泡工程と、を有している。
この製造方法では、発泡工程の際、キャビティ内で発泡原料を発泡させながら、キャビティ内の発泡ガスや空気などを、通気性部材を通してガス抜き孔から排気して、発泡成形体を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−358910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の発泡成形体の製造方法では、発泡工程の際、発泡終端空間内の発泡ガスや空気などが、ガス抜き孔から排気されずに溜まった状態で、発泡原料が発泡するおそれがあった。そのため、この製造方法で形成された発泡成形体では、発泡終端空間に溜まった発泡ガスや空気によって発泡体にエア溜りが形成され易く、前記製造方法では発泡成形体を高精度に形成することが困難であった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、発泡成形体を高精度に形成することができる発泡成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る発泡成形体の製造方法は、複数の型部材の間にそれぞれのキャビティ面によって画成されたキャビティを備える発泡成形体の製造装置を用いて、発泡原料が発泡することで形成された発泡体と、通気性部材と、が一体に固着されてなる発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法であって、前記キャビティは、前記発泡原料が供給される発泡開始空間と、該発泡開始空間に連なり、該発泡開始空間内の発泡原料が発泡することで到達して充満される発泡終端空間と、を備え、前記キャビティ面のうち、ガス抜き孔が開口する開口キャビティ面の周縁部は、前記発泡終端空間を画成するとともに、該開口キャビティ面の周縁部の内側は、前記発泡開始空間を画成し、前記開口キャビティ面に前記通気性部材を配置して前記ガス抜き孔を覆わせる配置工程と、前記発泡開始空間に前記発泡原料を供給する供給工程と、前記発泡原料を前記発泡終端空間に到達させて該発泡終端空間内が前記発泡原料で充満されるまで発泡させ、前記発泡体を形成するとともに該発泡体と前記通気性部材とを一体に固着させる発泡工程と、を有し、前記配置工程は、前記開口キャビティ面の周縁部に形成されたガス逃げ凹溝に前記通気性部材を接続させて前記開口キャビティ面に配置することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、配置工程の際、通気性部材をガス逃げ凹溝に接続させて開口キャビティ面に配置するので、発泡工程の際、発泡終端空間に溜まった発泡ガスや空気などを、ガス逃げ凹溝および通気性部材を通してガス抜き孔から排気することができる。これにより、発泡成形体を高精度に形成することができる。
【0008】
また配置工程の際、開口キャビティ面のうち、パーティング面に連なる周端縁よりも内側に通気性部材の外周縁が位置するように、開口キャビティ面に通気性部材を配置する場合には、通気性部材が、互いに突き合わされたパーティング面同士の間に挟みこまれるのを抑制することができる。
またこのように、配置工程の際、開口キャビティ面の周端縁よりも内側に通気性部材の外周縁が位置するように、開口キャビティ面に通気性部材を配置する場合には、発泡終端空間内での発泡部材の発泡が、通気性部材によって阻害されるのを抑制することができる。したがって、発泡部材の発泡により発泡終端空間内を確実に充填することが可能になり、発泡成形体をより高精度に形成することができる。
【0009】
また、本発明に係る発泡成形体の製造装置は、前記発泡成形体の製造方法に用いる発泡成形体の製造装置であって、前記ガス逃げ凹溝は、前記開口キャビティ面のうち、パーティング面に連なる周端縁から離間して配設されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ガス逃げ凹溝が、開口キャビティ面の周端縁から離間して配設されているので、発泡工程の際、ガス逃げ凹溝内で発泡する発泡原料が、ガス逃げ凹溝から、互いに突き合わされたパーティング面同士の間に侵入することがない。したがって、発泡体にバリが形成されるのを抑制することが可能になり、発泡成形体を確実に高精度に形成することができる。
【0011】
また、互いに突き合わされたパーティング面同士の間には、該パーティング面同士の間を封止するシール部材が配設されていても良い。
【0012】
この場合、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
すなわち、互いに突き合わされたパーティング面同士の間に前記シール部材が配設されているので、発泡工程の際、発泡終端空間に溜まった発泡ガスや空気などが、パーティング面の間を通して外部に排気され難い。しかしながら、これらの発泡ガスや空気などを、ガス逃げ凹溝および通気性部材を通してガス抜き孔から排気することができるので、発泡成形体をより確実に高精度に形成することができる。
【0013】
また、本発明に係る発泡成形体は、発泡原料が発泡することで形成された発泡体と、通気性部材と、が一体に固着されてなる発泡成形体であって、前記発泡成形体の製造方法で製造され、前記発泡体のうち、前記発泡終端空間によって形成された部分の表面には、前記ガス逃げ凹溝によって凸条部が形成され、該凸条部には、前記通気性部材が一体に固着されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前記発泡成形体の製造方法で製造されているので、発泡体にエア溜りが形成され難く、高精度なものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る発泡成形体の製造方法、および発泡成形体の製造装置によれば、発泡成形体を高精度に形成することができる。
また、本発明に係る発泡成形体によれば、高精度なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るシート用パッドを用いたシートの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシート用パッドを反転させた状態の斜視図である。
【図3】図2に示すA−A断面矢視図である。
【図4】図2に示すシート用パッドを形成する金型の断面図である。
【図5】図2に示すシート用パッドを形成するシート用パッドの製造方法を説明するための金型の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るシート用パッドを反転させた状態の平面図である。
【図7】図6に示すB−B断面矢視図である。
【図8】図6に示すシート用パッドを形成する金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係るシート用パッドを説明する。
図1に示すように、シート用パッド1A、1Bは、車両のシート1に用いられ、該車両の図示しないシートフレームに固定される。この種のシート用パッド1A、1Bとしては、車両におけるシート1の着座部となるクッションパッド(1A)、および車両におけるシート1の背もたれ部となるバックパッド(1B)が挙げられる。本実施形態のシート用パッド1Aは、前記クッションパッドとして用いられる。
なお以下では、シート用パッド1A、1Bが前記シートフレームに固定された状態で、鉛直上側を向く方向を上側といい、鉛直下側を向く方向を下側といい、車両の前方を向く方向を前側といい、車両の後方を向く方向を後側という。
【0018】
図2に示すように、このシート用パッド1Aは、発泡原料が発泡することで形成された発泡体2と、補強部材(通気性部材)3と、が一体に固着されてなる。
発泡体2は、発泡原料(例えば、ウレタン原料)を発泡することで形成され、例えばポリウレタンフォーム等で形成されている。この発泡体2は、上面が着座可能とされた本体部4と、本体部4の下面に突設された突設部5と、を備えている。
【0019】
突設部5は、本体部4の外周縁に沿ってほぼ全周にわたって延在しており、突設部5の端面には、外周縁に沿ってパーティングライン部6が形成されている。
突設部5の表面には、後述する金型(発泡成形体の製造装置)20のガス逃げ凹溝27によって形成された凸条部7が配設されている。この凸条部7は、パーティングライン部6から離間して配設されている。図3に示すように、凸条部7は、突設部5のうち、前側に位置する前方部分5aにおいて、本体部4の中央部側を向く内面から端面にわたって屈曲して延設されており、この前方部分5aに一定の間隔をあけて複数配設されている。この凸条部7の幅は、例えば約2mmとされ、凸条部7の突出高さは、例えば約2mmとされ、凸条部7同士の間隔は、例えば約20mmとなっている。
【0020】
ここでこの発泡体2では、本体部4と突設部5とによって本体部4の下面側に画成される凹部内に、車両の前記シートフレームが嵌め込み可能となっており、本体部4の下面および突設部5の内面は、シートフレームが取り付けられる取付け面8を構成している。
【0021】
補強部材3は、通気性を具備する膜状体であり、例えば、寒冷紗、粗毛フェルト、不織布などで形成されている。補強部材3は、発泡体2の取付け面8に一体に固着されており、本実施形態では、本体部4の下面に全面にわたって一体に固着されるとともに、突設部5の前方部分5aの内面および凸条部7に一体に固着されている。
【0022】
次に図4に示すように、このシート用パッド1Aを製造する金型20について説明する。
金型20は、上型21および下型22(複数の型部材)の間にそれぞれのキャビティ面21a、22aによって画成されたキャビティ23を備えている。本実施形態では、下型22のキャビティ面22aは、下型22の中央部に窪み形成されており、上型21のキャビティ面21aは、上型21の中央部に下型22に向けて突出するように形成されている。また、上型21においてキャビティ面21aの周端縁21cに連なるパーティング面21bは、下型22のパーティング面22bに突き合わされており、互いに突き合わされたパーティング面21b、22b同士の間には、該パーティング面21b、22b同士の間を封止するシール部材28が配設されている。
【0023】
キャビティ23は、発泡原料が供給される発泡開始空間24と、該発泡開始空間24に連なり、該発泡開始空間24内の発泡原料が発泡することで到達して充満される発泡終端空間25と、を備えている。図示の例では、発泡開始空間24は、発泡体2の本体部4を形成し、発泡終端空間25は、発泡体2の突設部5を形成する。
【0024】
発泡開始空間24は、上型21のキャビティ面21aの周縁部21eの内側21f、および下型22のキャビティ面22aの周縁部の内側によって画成されている。また発泡開始空間24には、キャビティ23内と外部とを連通するガス抜き孔26が開口している。ガス抜き孔26は、上型21のキャビティ面(開口キャビティ面)21aに複数形成されている。
発泡終端空間25は、発泡開始空間24の外周縁に沿ってほぼ全周にわたって延在している。この発泡終端空間25は、上型21のキャビティ面21aの周縁部21e、および下型22のキャビティ面22aの周縁部によって画成され、発泡終端空間25には、上型21のキャビティ面21aの周端縁21cが位置している。
【0025】
そして本実施形態では、上型21のキャビティ面21aの周縁部21eには、ガス逃げ凹溝27が形成されている。ガス逃げ凹溝27は、上型21のキャビティ面21aの周端縁21cから離間して配設されている。またガス逃げ凹溝27は、発泡開始空間24から発泡終端空間25に向かう発泡方向に延在している。
図示の例では、ガス逃げ凹溝27は、発泡終端空間25のうち、発泡体2の突設部5の前方部分5aを形成する部分に開口するように、上型21のキャビティ面21aに間隔をあけて複数配設されている。ガス逃げ凹溝27の幅は、例えば約2mmとされ、ガス逃げ凹溝27の深さは、例えば約2mmとされ、ガス逃げ凹溝27同士の間隔は、例えば約20mmとなっている。
【0026】
次に、この金型20を用いてシート用パッド1Aを形成するシート用パッドの製造方法について説明する。
まず図5に示すように、金型20を型開きした状態で、補強部材3を上型21のキャビティ面21aに配置してガス抜き孔26を覆わせる配置工程を行う。このとき、補強部材3をガス逃げ凹溝27に接続させて上型21のキャビティ面21aに配置する。さらに、上型21のキャビティ面21aの周端縁21cよりも内側に補強部材3の外周縁が位置するように、上型21のキャビティ面21aに補強部材3を配置する。
【0027】
また、発泡開始空間24に発泡原料を供給する供給工程を行う。この供給工程は、例えば、下型22のキャビティ面22aの内側のうち、発泡開始空間24の形成予定部の内側に発泡原料を投入した後、金型20を閉じることで行う。
【0028】
次に、発泡開始空間24内で発泡原料を発泡させる発泡工程を行う。すると発泡原料は前記発泡方向に発泡し、キャビティ23内が漸次、発泡原料で充満されていく。このとき、発泡開始空間24内の発泡ガスや空気は、通気性を具備する補強部材3を通してガス抜き孔26から排気される。また、発泡終端空間25内の発泡ガスや空気は、ガス逃げ凹溝27、補強部材3を通してガス抜き孔26から排気される。
【0029】
そして、発泡原料が発泡終端空間25に到達して発泡終端空間25内が発泡原料で充満され、発泡原料の発泡がおさまって発泡原料の樹脂化(樹脂反応)が進行し、キャビティ23内で発泡体2が形成されるとともに該発泡体2に補強部材3が一体に固着されて、定形を保持可能なシート用パッド1Aが形成されることで発泡工程が終了する。その後、金型20を型開きして、シート用パッド1Aを金型20から脱型する脱型工程を行うことにより、シート用パッド1Aを得ることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係るシート用パッドの製造方法によれば、配置工程の際、補強部材3をガス逃げ凹溝27に接続させて上型21のキャビティ面21aに配置するので、発泡工程の際、発泡終端空間25に溜まった発泡ガスや空気などを、ガス逃げ凹溝27および補強部材3を通してガス抜き孔26から排気することができる。これにより、シート用パッド1Aを高精度に形成することができる。
【0031】
また本実施形態のように、配置工程の際、上型21のキャビティ面21aの周端縁21cよりも内側に補強部材3の外周縁が位置するように、上型21のキャビティ面21aに補強部材3を配置する場合には、補強部材3が、互いに突き合わされたパーティング面21b、22b同士の間に挟みこまれるのを抑制することができる。
【0032】
またこのように、配置工程の際、上型21のキャビティ面21aの周端縁21cよりも内側に補強部材3の外周縁が位置するように、上型21のキャビティ面21aに補強部材3を配置する場合には、発泡終端空間25内での発泡部材の発泡が、補強部材3によって阻害されるのを抑制することができる。したがって、発泡部材の発泡により発泡終端空間25内を確実に充填することが可能になり、シート用パッド1Aをより高精度に形成することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る金型20によれば、ガス逃げ凹溝27が、上型21のキャビティ面21aの周端縁21cから離間して配設されているので、発泡工程の際、ガス逃げ凹溝27内で発泡する発泡原料が、ガス逃げ凹溝27から、互いに突き合わされたパーティング面21b、22b同士の間に侵入することがない。したがって、発泡体2にバリが形成されるのを抑制することが可能になり、シート用パッド1Aを確実に高精度に形成することができる。
【0034】
また本実施形態のように、互いに突き合わされたパーティング面21b、22b同士の間にシール部材28が配設されている場合、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
すなわち、互いに突き合わされたパーティング面21b、22b同士の間に前記シール部材28が配設されているので、発泡工程の際、発泡終端空間25に溜まった発泡ガスや空気などが、パーティング面21b、22bの間を通して外部に排気され難い。しかしながら、これらの発泡ガスや空気などを、ガス逃げ凹溝27および補強部材3を通してガス抜き孔26から排気することができるので、シート用パッド1Aをより確実に高精度に形成することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るシート用パッド1Aによれば、前記シート用パッドの製造方法で製造されているので、発泡体2にエア溜りが形成され難く、高精度なものとすることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るシート用パッドを説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態のシート用パッド1Bは、前記バックパッドとして用いられ、発泡体2の本体部4の前面には、車両の乗員の背中が当たる。
図6に示すように、発泡体2は、前記本体部4と、前記突設部5と、突設部5から本体部4の中央部側に向けて延設された折返し部9と、を備えている。折返し部9は、突設部5のうち、本体部4の両側縁から上縁にわたって延在する平面視逆U字状の上方部分5bに設けられており、この折返し部9の先端面に沿ってパーティングライン部6が形成されている。
【0038】
凸条部7a、7bは、折返し部9と、突設部5のうち、下側に位置する下方部分5cと、にそれぞれ配設されている。
図7に示すように、凸条部7a、7bのうち、折返し部9に配設された凸条部7aは、折返し部9において本体部4側を向く内面から端面にわたって屈曲して延設されており、折返し部9に一定の間隔をあけて複数配設されている。また凸条部7a、7bのうち、突設部5の下方部分5cに配設された凸条部7bは、下方部分5cの内面に一定の間隔をあけて直線状に複数配設されている。
【0039】
ここでこの発泡体2において、前記取付け面8は、本体部4の後面、突設部5および折返し部9の内面によって構成されている。
また本実施形態では、補強部材3は、本体部4の後面に全面にわたって一体に固着されるとともに、突設部5および折返し部9の内面、並びに凸条部7a、7bに一体に固着されている。
【0040】
次に図8に示すように、このシート用パッド1Bを製造する金型30について説明する。
本実施形態では、金型30は、前記上型21と、前記下型22と、上型21に取り付けられた中子型31と、を備えている。中子型31は、上型21および下型22の中央部同士の間に配置されるとともに、上型21の中央部に取り付けられている。
【0041】
中子型31のパーティング面31bは、上型21の中央部に形成されたパーティング面21dに突き合わされており、これらのパーティング面31b、21d同士の間には、前記シール部材28が配設されている。
前記ガス抜き孔26は、中子型31に複数設けられ、中子型31のキャビティ面(開口キャビティ面)31aに開口している。
前記発泡開始空間24は、中子型31のキャビティ面31aの周縁部31eの内側31f、および下型22のキャビティ面22aの周縁部の内側によって画成されている。
【0042】
前記発泡終端空間25a、25bのうち、突設部5の上方部分5bを形成する第1の発泡終端空間25aは、突設部5を形成する第1終端部32と、第1終端部32に連なり折返し部9を形成する第2終端部33と、を備えている。第2終端部33は、上型21のキャビティ面21a、および中子型31のキャビティ面31aの周縁部31eによって画成されており、この第2終端部33には、中子型31のキャビティ面31aの周端縁31cが位置している。そして、中子型31のキャビティ面31aの周縁部31eのうち、第2終端部33を画成する部分には、前記ガス逃げ凹溝27が形成されている。
【0043】
一方、前記発泡終端空間25a、25bのうち、突設部5の下方部分5cを形成する第2の発泡終端空間25bは、上型21のキャビティ面21a、下型22のキャビティ面22aの周縁部、および中子型31のキャビティ面31aの周縁部31eによって画成されており、この第2の発泡終端空間25bには、中子型31のキャビティ面31aの周端縁31cが位置している。そして中子型31のキャビティ面31aの周縁部31eうち、この第2の発泡終端空間25bを画成する部分には、前記ガス逃げ凹溝27が間隔をあけて複数配設されている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るシート用パッドの製造方法、金型30およびシート用パッド1Bによれば、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば前記各実施形態では、金型20、30のパーティング面21b、22b、31b、21d同士の間にシール部材28が配設されているものとしたが、シール部材28はなくても良い。
【0046】
また前記各実施形態では、金型20には、ガス抜き孔26およびガス逃げ凹溝27が複数形成されているものとしたが、1つであっても良い。
さらに前記各実施形態では、シート用パッド1A、1Bは、発泡体2に通気性を具備する補強部材3が一体に固着されてなるものとしたが、補強部材3に代えて、補強部材3とは異なる通気性部材を採用しても良い。
さらにまた、前記各実施形態では、発泡成形体としてシート用パッド1A、1Bを採用したが、発泡体と通気性部材とが一体に固着してなる構成であればこれに限られない。
【0047】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1A、1B シート用パッド(発泡成形体)
2 発泡体
3 補強部材
7、7a、7b 凸条部
20、30 金型(発泡成形体の製造装置)
21 上型(型部材)
21a、22a、31a キャビティ面
21b、21d、22b、31b パーティング面
21c、31c キャビティ面の周端縁
21e、31e キャビティ面の周縁部
21f、31f キャビティ面の周縁部の内側
22 下型(型部材)
23 キャビティ
24 発泡開始空間
25、25a、25b 発泡終端空間
26 ガス抜き孔
27 ガス逃げ凹溝
28 シール部材
31 中子型(型部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の型部材の間にそれぞれのキャビティ面によって画成されたキャビティを備える発泡成形体の製造装置を用いて、発泡原料が発泡することで形成された発泡体と、通気性部材と、が一体に固着されてなる発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法であって、
前記キャビティは、前記発泡原料が供給される発泡開始空間と、該発泡開始空間に連なり、該発泡開始空間内の発泡原料が発泡することで到達して充満される発泡終端空間と、を備え、
前記キャビティ面のうち、ガス抜き孔が開口する開口キャビティ面の周縁部は、前記発泡終端空間を画成するとともに、該開口キャビティ面の周縁部の内側は、前記発泡開始空間を画成し、
前記開口キャビティ面に前記通気性部材を配置して前記ガス抜き孔を覆わせる配置工程と、
前記発泡開始空間に前記発泡原料を供給する供給工程と、
前記発泡原料を前記発泡終端空間に到達させて該発泡終端空間内が前記発泡原料で充満されるまで発泡させ、前記発泡体を形成するとともに該発泡体と前記通気性部材とを一体に固着させる発泡工程と、を有し、
前記配置工程は、前記開口キャビティ面の周縁部に形成されたガス逃げ凹溝に前記通気性部材を接続させて前記開口キャビティ面に配置することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の発泡成形体の製造方法に用いる発泡成形体の製造装置であって、
前記ガス逃げ凹溝は、前記開口キャビティ面のうち、パーティング面に連なる周端縁から離間して配設されていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の発泡成形体の製造装置であって、
互いに突き合わされたパーティング面同士の間には、該パーティング面同士の間を封止するシール部材が配設されていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。
【請求項4】
発泡原料が発泡することで形成された発泡体と、通気性部材と、が一体に固着されてなる発泡成形体であって、
請求項1記載の発泡成形体の製造方法で製造され、
前記発泡体のうち、前記発泡終端空間によって形成された部分の表面には、前記ガス逃げ凹溝によって凸条部が形成され、
該凸条部には、前記通気性部材が一体に固着されていることを特徴とする発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−20464(P2012−20464A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159599(P2010−159599)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】