説明

発泡樹脂成形品及びその成形方法

【課題】ヘッドレスト穴などの穴の縁部の変形が防止される発泡樹脂成形品と、その成形方法を提供する。
【解決手段】シートパッド1のヘッドレスト穴4の周囲に高強度樹脂が付着されて高強度とされている。高強度樹脂は、シートパッドにスプレー等によって付着されてもよく、発泡成形用金型のキャビティ面に付着しておいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シートパッドとして好適な穴を有した発泡樹脂成形品に係り、特に穴の周囲を高強度化した発泡樹脂成形品に関する。また、本発明は、この発泡樹脂成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に用いられる車両用シートパッドは、通常ポリウレタンフォームにて構成されている。部分的に異硬度としたシートパッドとして、特開平1−249312には、ポリエチレン発泡体を金型内面に保持させておき、ポリウレタンフォームを発泡させて異硬度パッドを成形するインサート成形方法が記載されている。
【0003】
特開2005−304976には、ヘッドレスト穴の内周面に補強布を一体化させたシートパッドが記載されている。
【特許文献1】特開平1−249312
【特許文献2】特開2005−304976
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡成形された軟質ポリウレタンフォームよりなるシートパッドに表皮材を被着させると、表皮材の張力によってヘッドレスト穴の縁部が撫で肩状に丸みを帯びた形状に変形する。
【0005】
なお、従来は、ウレタンフォームよりなるシートパッドがこのように変形して丸くなることを見越して金型を作成したり、補修用ウレタンフォームを成形後作業員が手で張っていた。また、それでも補修ができない場合にはシートパッドをNGとして廃棄処分しており、コスト高の一因となっている。
【0006】
本発明は、このヘッドレスト穴などの穴の縁部の変形が防止される発泡樹脂成形品と、その成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の発泡樹脂成形品は、外面から凹陥するか又は貫通する穴を有した発泡樹脂成形品において、該穴の周囲に、該発泡樹脂よりも高強度の樹脂が付着されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発泡樹脂成形品は、請求項1において、前記発泡樹脂は軟質ポリウレタンフォームであり、前記高強度樹脂は、ウレタン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及びポリスチレンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発泡樹脂成形品は、請求項1又は2において、自動車用内装品であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発泡樹脂成形品は、請求項1ないし3のいずれか1項において、シートパッドであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発泡樹脂成形品は、請求項4において、前記穴はヘッドレスト穴であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明(請求項6)の発泡樹脂成形品の成形方法は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品を成形する方法であって、成形された発泡樹脂成形品の周囲に高強度樹脂を付着させることを特徴とするものである。
【0013】
本発明(請求項7)の発泡樹脂成形品の成形方法は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品を金型によって成形する方法であって、該金型はキャビティ面から突出する、前記穴を形成するためのピンを備えており、該ピン又はその近傍に高強度樹脂を付着させておき、該金型内で前記発泡材料を発泡させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡樹脂成形品では、穴の周囲に発泡樹脂よりも高強度の樹脂を付着させているので、表皮材を被着したときの穴縁部の変形が防止ないし抑制(以下、単に防止という。)される。
【0015】
また、これにより、補修のためのウレタンフォーム張り、金型の作成等の手当てが必要ではなくなり、工数の減少を図ることができる。また、NG品が減少することによりコストダウンにもつながる。
【0016】
発泡樹脂がシートパッドの如く軟質ポリウレタンフォームである場合、高強度樹脂としては、ウレタン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の1種又は2種以上が好適である。
【0017】
本発明は、シートパッドなど自動車用内装品に適用するのに好適であり、シートパッドのヘッドレスト穴の周囲を高強度とする場合に特に好適である。
【0018】
穴周囲を高強度とするには、発泡成形された発泡樹脂の穴周囲に高強度樹脂を付着させてもよい。発泡樹脂を金型によって発泡成形する場合、穴を形成するためのピン又はその近傍に高強度樹脂を付着させておき、金型内で形成された発泡体に対し高強度樹脂を付着ないし浸透させるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0020】
第1図はヘッドレストを備えた実施の形態に係るシートパッド(この実施の形態ではシートバックパッド)の正面図、第2図はシートパッドの第1図のII−II線に沿う断面図、第3図は第2図の一部の拡大図、第4図はシートパッドの成形用の金型の断面図である。
【0021】
このシートパッド1は、軟質ポリウレタンフォームよりなる。このシートパッド1の上部には、ヘッドレスト2のステー3が挿入されるヘッドレスト穴4が設けられている。
【0022】
このシートパッド1の背面は、不織布等よりなるサポータ材(図示略)で覆われている。
【0023】
このシートパッド1を成形するための金型10は、上型11と、下型12と、中子13とを有する。中子13は上型11に取り付けられている。中子13から、ヘッドレスト穴4を形成するためのピン15が突設されている。
【0024】
シートパッド1の発泡成形を行うには、まずサポータ材を中子13に沿って配設し、マグネット等によって仮固定する。
【0025】
その後、下型12内にウレタン原液を供給し、型閉めし、ウレタンを加熱発泡させる。発泡後、キュアさせ、型開きし、脱型する。サポータ材は発泡成形品よりなるシートパッド1と一体となっており、中子13からスムーズに離型する。
【0026】
本発明の一態様にあっては、脱型した発泡成形品よりなるシートパッド1のヘッドレスト穴4の周囲aと、好ましくは更にヘッドレスト穴4の上部側の内周面bに二液反応性の高強度樹脂の反応初期の原料をスプレー等によって付着させ、次いで反応を進行させ、終了させる。これにより、ヘッドレスト穴の周囲が高強度となる。そのため、このシートパッド1に表皮材を被着させたときにヘッドレスト穴周囲が表皮材によって圧迫されてもその変形が防止される。
【0027】
なお、表皮材装着後にヘッドレストのステーをガイドするためのホルダと称される筒状部材をヘッドレスト穴4に挿入して装着することがあるが、ヘッドレスト穴周囲が高強度となっているので、このホルダをヘッドレスト穴に嵌め入れる際にヘッドレスト穴周囲が変形することが防止される。
【0028】
本発明の別の一態様にあっては、金型10のキャビティ面のうち、上記領域a好ましくは領域a,bを形成する部位に硬化樹脂の溶液又は分散液を付着させておき、発泡成形を行う。具体的には、ピン15の先端部や、ピン15の先端と対峙するキャビティ面A付近に二液反応性硬化樹脂の反応初期の原料をスプレー等によって付着させる。この付着した硬化樹脂が、金型10内で形成されたポリウレタンフォームに付着ないし浸透し、ヘッドレスト穴周囲が高強度となる。
【0029】
上記の高強度樹脂としては、ウレタン系エラストマー、ポリエチレン等が好適である。
【0030】
高強度樹脂の付着量は、樹脂固形分として、シートパッド表面1cm当り0.15〜0.5mg程度が好適である。
【0031】
上記の領域aの外縁は、ヘッドレスト穴4に装着される筒状部材(ホルダ)の外周面から10mm以上かつ30mm以内に位置するのが好適である。bの下端については、ヘッドレスト穴4の上端から2mm以上6mm以内に位置するのが好適である。
【0032】
上記実施の形態は車両用シートパッドに関するものであるが、シートパッド以外の車両用内装材であってもよく、車両用以外の座席用のパッド材であってもよい。また、天井材、寝具、家具、スポーツ用品、文房具、医療器具、建築用資材などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ヘッドレストを備えた実施の形態に係るシートパッドの正面図である。
【図2】第1図のシートパッドのII−II線に沿う断面図である。
【図3】第2図の上部の拡大図である。
【図4】シートパッド成形用金型の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 シートパッド
4 ヘッドレスト穴
10 金型
11 上型
12 下型
13 中子
15 ヘッドレスト穴形成用ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面から凹陥するか又は貫通する穴を有した発泡樹脂成形品において、
該穴の周囲に、該発泡樹脂よりも高強度の樹脂が付着されていることを特徴とする発泡樹脂成形品。
【請求項2】
請求項1において、前記発泡樹脂は軟質ポリウレタンフォームであり、
前記高強度樹脂は、ウレタン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及びポリスチレンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする発泡樹脂成形品。
【請求項3】
請求項1又は2において、自動車用内装品であることを特徴とする発泡樹脂成形品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、シートパッドであることを特徴とする発泡樹脂成形品。
【請求項5】
請求項4において、前記穴はヘッドレスト穴であることを特徴とする発泡樹脂成形品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品を成形する方法であって、成形された発泡樹脂成形品の周囲に高強度樹脂を付着させることを特徴とする発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品を金型によって成形する方法であって、
該金型はキャビティ面から突出する、前記穴を形成するためのピンを備えており、
該ピン又はその近傍に高強度樹脂を付着させておき、
該金型内で前記発泡材料を発泡させることを特徴とする発泡樹脂成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−36351(P2010−36351A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198247(P2008−198247)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】