説明

皮膚の分画光治療のための方法と装置

レーザーを用いて組織(たとえば皮膚)の分画治療を提供する装置と方法。この方法では、壊死性組織と熱的に変化された組織の1以上の微視的治療ゾーンを生成し、微視的治療ゾーンを取り囲む成長する組織を意図的に残す。この装置は、微視的治療ゾーンを、予め決められたパターンで生成するための、1以上の光源と、出射システムを含む。微視的治療ゾーンは、たとえば、表皮、真皮に限定され、または、表皮真皮移行部にまたがり、さらに、微視的治療ゾーンの上の角質層が使用されなくてもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に、光エネルギーを用いて治療または手術をするための方法と装置に関し、より詳細には、光放射を用いて組織(たとえば皮膚)の分画治療を提供するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギー、特にレーザーエネルギーは、治療の対象の組織に所望の成果を達成するための、医学における多目的の機器として広く使用されている。たとえば、レーザーは、血管過多の損傷、色素沈着の損傷、アクネ傷、酒さ、毛の除去などの一般的な皮膚の問題を治療するために使用されてきた。さらに、レーザーは、しわのある皮膚の外観を改善するため、皮膚のリサーフェシングをすることにより、また、皮膚の異なる層を再構築(リモデル)することにより、よりよい見栄えを達成するための美容手術においても使用されている。一般に、皮膚のリサーフェシングは、化学薬品、機械的研磨またはレーザーを用いて皮膚の上層を完全に除去して、新しい、より若く見える皮膚の発展を促進し、新しい皮膚の生成と成長を刺激することであると理解されている。このレーザー皮膚リモデリングでは、レーザーエネルギーは、皮膚のより深い層に侵入し、皮膚の若々しい外観に寄与するコラーゲンなどの細胞外基質材料の生成を促進し、および/または、その構造を変えることを目的とする。伝統的なパルスCOレーザー・リサーフェシングでは、皮膚の表層は、真皮乳頭の下の層にまで完全に除去でき、熱拡散により生じた凝固が、元の皮膚表面の下の数百μmまで存在することがある。
【0003】
一般的には、皮膚への所望の効果は、レーザーにより誘起された組織の加熱により達成される。誘起された熱は、特定の温度と加熱時間の組み合わせにより細胞外基質の熱的凝固、細胞壊死、止血、溶解、溶融、除去および/または全体の変化を生じる。皮膚のリサーフェシングまたはリモデリングのためにレーザーを用いる間に、選ばれた皮膚のサイトの所望の治療エリアにわたって一様な治療をするという重要な目標の1つが達成される。一般に、医者だけにより、または、医者の判断と、皮膚治療システムに組み込まれた知識との組み合わせにより、皮膚の狙いの領域に未治療の組織を残すという注意がなされる。広く放射するパルス光線と、比較的小さいスポット寸法を作る、焦点で集められたレーザーのどちらかを使用して、全体の治療エリアをレーザーエネルギーにさらし、治療エリアにおける組織の全体を加熱し、所望の変化を生じるという目的が得られる。広く知られているが、そのような広いエリアの治療は、許容できない痛み、長引く紅斑、膨張、偶然的な傷、長い加熱時間、伝染などの望ましくない効果を生じる。
【0004】
エルビウムレーザーとCOレーザーは、通常、十分制御された深さまで熱的治療を生じる。対照的に、微細血管損傷の選択的な光放熱のために設計された黄色パルス色素レーザーは、種々の深さの微小血管の選択的な熱的治療を起こす(一般的に、MP GoldmanおよびRE Fitzpatrick編集のCutaneous Laser Surgery(皮膚のレーザー手術)、Mosby社発行(1999)参照)。使用されるレーザーの種類(CO、エルビウムなど)、使用のモード(連続波またはパルス)、パルス幅、および、エネルギー密度とパワーに依存して、異なる効果が達成される。図1は、レーザー皮膚リサーフェシングの従来の治療を示す。ここで、狙いの組織10は、第1に表皮(上皮)11である。従来のシステムを用いた典型的な皮膚のリサーフェシングは、狙いの表皮11を完全に除去する。
【0005】
微視的な着色組織の狙いの部分の治療に使用される1つのアプローチは、選択的に吸収される放射パルスを利用することである。選択的な光放熱は、微視的な着色組織または特定の発色団の、サイトに特定の熱的に仲介された外傷に達する。ここで、選択的な吸収は、微視的な着色組織および/または特定の発色団のレーザー吸収特性による。たとえば、レーザー波長は、典型的には、狙いのヘモグロビンまたはメラニンなどの着色発色団に選択される。
【0006】
皮膚のリサーフェシングまたは皮膚の中により深く位置されている解剖学的構造すなわち欠陥の選択的光放熱などの場合に典型的に、やけどまたは急性の傷がレーザーにより生じる。急性の傷について、皮膚は、図2に示されるように、3つの区別される「外傷に対する応答」により治る。初期の炎症段階202は、数分から数日続く期間をもち、1日から4日続く細胞増殖段階202になめらかに転移する。この細胞増殖段階202は、数週間から数ヶ月続く皮膚成熟段階206にゆっくりと変わる(たとえば、TB Fitzpatrick編集のDermatology in General Medicine(一般医学における皮膚科学)、第5版の中のR. Clark著、皮膚の傷の修復の機構(Mechanisms of cutaneous wound repair)(McGraw-Hill社、米国ニューヨーク州、1999年、327-42頁)参照)。
【0007】
一般に、外傷の大きさと完全な修復に要する時間との間には直接の相関が存在する。しかし、炎症段階202は、細胞壊死、特に表皮(すなわちケラチノサイト)壊死、の関数であり、直接の相関が、細胞壊死と炎症段階の間に存在する。増加される細胞壊死、特に表皮壊死は、炎症段階を長くする。炎症段階が長びくことおよび/または目立つことは、痛みの増加により、また、長びく傷の修復による診療の観点から望ましくなく、傷の修復のそれに続く段階を遅くすることがある。この炎症段階が長引く原因は、よく理解されていない。しかし、レーザー損傷は、真皮の傷の修復(たとえば脈管形成、繊維芽細胞の増殖、基質金属結合蛋白(MMP)発現)の初期のレベルや高いレベルに関連し、表皮のリサーフェシングを遅らせる(たとえば、Shafferらの論文、Comparison of Wound Healing Among Excisional, Laser Created and Standard Thermal Burn in Porcine Wounds of Equal Depth, Wound Rep. Reg. v5(1), pp51-61(1997)参照)。残念ながら、発色団の広い連続的エリアに影響する皮膚リサーフェシングの努力と選択的な光放熱治療の多くは、炎症段階202を長びかせ、際だたせるため、傷の修復の遅れなどの望ましくない結果を生じる。また、長引いた炎症段階202では、痛みが、皮膚リサーフェシングの処置を受ける多くの患者により経験される。望ましくない長びく炎症段階は、皮膚がレーザーエネルギーに曝されたエリアに残されたほとんどまたは全く健康的でない組織、特にケラチノサイト、の全体の加熱によるものであることがある。一様な治療が望まれていて、かつ、狙いの組織の全体が、狙いの部分内でどの組織も残さずにレーザーエネルギーにさらされるとき、表皮レーザー治療の痛み、膨張、液体損失、長びく再表皮形成および他の副作用が患者により共通に経験される。
【0008】
多くのシステムは、表皮の壊死を最小にするように工夫されてきた。1つのそのようなアプローチは、氷で満たされたプラスチック袋を皮膚表面の上に置いて、表皮表面をしばらく(たとえば約5分間)冷やすことと、照射の間に圧縮フレオンガス、または、照射されるエリアの上に直接に広げられる冷却水を使用することを含む。これらの方法のいくつかは、たとえば、A.J. Welchらの論文、「Evaluation of Cooling Techniques for the Protection of the Epidermis During ND-YAG Laser Irradiation of the Skin」、Neodymium-YAG Laser in Medicine (Stephen N. Joffe編集、1983)に説明されている。種々の装置やアプローチが、表皮領域を損傷することなく真皮組織領域を治療するために提案されてきた。皮膚の全体の加熱を最小にする1つのアプローチが、米国特許第6,120,497号公報に記載される。皮膚のしわを治療するためのこのアプローチにおいて、しわのない皮膚を作るため治療応答を引き出すための真皮領域が狙いの部分とされ、狙いの真皮領域の上の表皮領域は、同時に冷却される。他の例では、米国特許第5,814,040号公報は、レーザーを用いて生物の組織に選択的に埋め込まれた発色団の選択的光放熱を行う一方、表皮組織領域を冷却する。この冷却処理は、動的冷却として知られている。図3に示されるように、表皮組織領域は、予め決められた動的温度プロファイルを確立するために表皮11の表面の上に冷却剤302を散らすことにより冷却される。表皮11と、その下の真皮12の組織領域は、表示組織領域を実質的に傷つけないままで皮膚組織領域(すなわち変化された組織領域304)を熱的に治療するために、続いて照射される。
【0009】
レーザー処理の間に表皮を使わない他のアプローチは、皮膚に焦点を合わせたレーザー光で比較的広い組織表面の上にレーザーエネルギーを出射するレーザーシステムを含む(たとえば、Mucciniらの論文、"Laser Treatment of Solar Elastosis with Epithelial Preservation"、Lasers Surg. Med. 23:121-127,1998参照)。このシステムでは、空気が、皮膚表面で減少された温度を保つために冷却剤として使用される。また、レーザー光を焦点で集める光学装置は、空気が光学装置の上を流れて冷却するとき表面度を最小にするように、表面の上での熱伝導体として作用する。
【0010】
すべてのこれらのシステムは、冷却システムにより加わる複雑さのため、実用上の制限がある。したがって、真皮領域を治療しかつ冷却に伴う複雑さを避けるため、従来のシステムや方法を改善する必要がある。さらに、すべてのこれらのシステムは、本質的に巨視的である。すなわち、治療領域内の全体の皮膚表面を、レーザー照射(全体の加熱)と冷却にさらす。これらの全域の治療は、臨床の副作用を増加し、上述のように治療時間を長くする。したがって、従来の真皮領域と表皮領域を治療するシステムと方法において全域的な除去または非除去の治療に関連した副作用を減らす必要がある。副作用の減少は、より効率的な皮膚治療を提供するように医者が治療強度を高めることを可能にする。
【0011】
組織を切断、気化または凝固するためにレーザーが皮膚に作用するとき、レーザーエネルギーの衝撃が最高であるスポットを囲む複数の組織損傷の「ゾーン」、すなわち、組織が完全に、または、壊死される細胞の約90%以上などのしきい値を越えるレベルまで壊死される治療ゾーン、がある。これらのゾーンは図4に示される。通常は、壊死性ゾーン402の温度は、約70℃を越える値に達し、組織が主に細胞、ケラチノサイト、およびそれらの誘導体またはコラーゲンからなるのに応じて、それぞれ壊死されまたは変化される。この壊死性ゾーンの中心は、典型的には、治療光線の中心に近い。約1〜10ミリ秒のオーダーの治療時間の間に、細胞の壊死、凝固およびタンパク質変性が約65〜75℃またはそれ以上の範囲で起こる。壊死性エリアにすぐ隣接して、組織(clumping)の薄い熱的凝固ゾーンがあり(図示しない)、そこでは、変化されたタンパク質は、壊死性細胞、基材および細胞破片を含むエリアを構成する。このゾーンを囲んで、熱的に変化された組織であるが生育性の組織のより大きなゾーン、すなわち、熱ショックゾーン(HSZ)404があり、その中に、タンパク質と細胞は、短い間、超生理的温度まで加熱されているが、十分なパーセントが生理的なまま残っている。このHSZ部において、組織は、典型的には37℃〜45℃の範囲(ほぼ100%のセルが治療を生き延びる範囲)の温度にさらされる。これらのゾーンの大きさは、種々のレーザーのパラメータ(波長、パルスの期間、エネルギー密度など)、組織の成分の熱的および光学的性質、および、周囲温度に依存する。最近のデータは、HSZが後での生物学的効果について特別な重要性があることを示している(たとえば、A. CaponとS. Mordonの論文、"Can thermal lasers promote wound healing?"、Am. J. Cli. Dermatol. 4(1):1-12, 2003参照)。説明の目的のため、異なるゾーンの間の境界は突然の変化として示される。しかし、当業者が理解するように、1つのゾーンから他のゾーンへの変化は突然ではなく、なだらかである。熱的に変化された/HSZ404の外側で、本質的に変化されていない健康な組織406がある。壊死性ゾーン402とそれを囲むHSZ404は、ともに、熱的に変化された組織408を作る。組織内での約110℃を越える温度は、組織の中に蒸気を生じることがあり、これは破壊的効果を持つ。
【0012】
熱的に変化されたゾーン404における熱ショックは、細胞の生存とプログラムされた細胞の死の両方を引き起こす多重の信号経路(pathway)をトリガーする。1つの細胞が生きるか死ぬかについての最終的な結果は、前記の周囲の組織の「獲得されたストレス許容度」に依存する。軽い熱ショックとそれに続く回復期間は、その後の厳しい熱ショックと多くの他のストレスに対して細胞の抵抗を強くさせる。これは、細胞生存経路(すなわち、細胞外の信号により制御されるキナーゼ、ERKおよびアクトキナーゼ)の活性化と、熱ショックタンパク質(すなわちHSP72)に仲介される信号イベントを介したアポプトシス経路(すなわち、Jun terminalキナーゼ、Fas、caspase-8など)により達成される(たとえば、VL Gagai and MY Shermanの論文、"Interplay between molecular chaperones and signaling pathways in survival of heat shock"、J. Appl. Physiol. 92:1743-48, 2002参照)。
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,120,497号公報
【特許文献2】米国特許第5,814,040号公報
【非特許文献1】MP GoldmanおよびRE Fitzpatrick編集、Cutaneous Laser Surgery(皮膚のレーザー手術、Mosby社発行(1999)
【非特許文献2】TB Fitzpatrick編集の一般医学における皮膚科学(Dermatology in General Medicine)、第5版の中のR. Clark著、皮膚の傷の修復の機構(Mechanisms of cutaneous wound repair)(McGraw-Hill社、米国ニューヨーク州、1999年、327-42頁)
【非特許文献3】Shafferら、Comparisons of Wound Healing Among Excisional, Laser Created and Standard Thermal Burn in Porcine Wounds of Equal Depth, Wound Rep. Reg. v5(1), pp51-61(1997)
【非特許文献4】A.J. Welchら、「Evaluation of Cooling Techniques for the Protection of the Epidermis During ND-YAG Laser Irradiation of the Skin」、Neodymium-YAG Laser in Medicine (Stephen N. Joffe編集、1983)
【非特許文献5】Mucciniら、"Laser Treatment of Solar Elastosis with Epithelial Preservation"、Lasers Surg. Med. 23:121-127,1998
【非特許文献6】A. CaponとS. Mordon、"Can thermal lasers promote wound healing?"、Am. J. Cli. Dermatol 4(1):1-12, 2003
【非特許文献7】VL Gagai and MY Sherman、"Interplay between molecular chaperones and signaling pathways in survival of heat shock"、J. Appl. Physiol. 92:1743-48, 2002
【非特許文献8】F. Watt、"The Stem Cell Compartment in Human Interfollicular Epidermis"、J. Derm. Sci., 28, 173-180, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
凝固発色団領域の通常の皮膚リサーフェシングと選択的光放熱において、レーザーに曝された組織は、生育性の熱ショックゾーンの代わりに、壊死治療ゾーンが主要である。事実上、そのような通常の治療は、狙いの組織がレーザーエネルギーに曝されないまま残らないように、壊死領域を重複して、完全に、皮膚の面において狙いの組織を含むように設計される。通常の治療と対照的に、細胞の生存経路を促進し、アポプトシス経路を禁止するため、生育性組織を、壊死性ゾーンに比べて、レーザーに曝された組織の中でより多くすることが望ましい。狙いの組織において、生育性の組織の部分の割合を増加するレーザー治療の必要性はまだ満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一般に、本発明は、変化されない組織により囲まれる熱的に変化された組織のパターンを意図的に生成することにより、医学上の病気(たとえば皮膚科学の病気)の条件を治療するための方法、または、組織(たとえば皮膚)の外観を改善する方法を特徴とする。この熱的に変化された組織は、壊死性ゾーンを含んでいてもよい。このアプローチは、安全性と有効性について、既存のアプローチに対して多数の効果を持つ。この発明は、痛み、紅斑、膨張、液体損失、長い再表皮形成、感染および水疱形成などの、一般的にレーザー皮膚リサーフェシングに関連される、望ましくない副作用を最小にする。この発明の他の観点は、熱的に変化された組織のまわりの健康な組織を残して使わないことにより、組織の傷修復システムを刺激することである。これにより、修復過程はより確実に行える。この発明の他の特徴は、レーザー照射による組織の壊死の程度を制御することにより、組織への反復されるレーザー治療の副作用を減少または除去することである。
【0016】
本発明の1つの観点は、狙いの組織において有益な効果を生じる方法であり、この方法では、光の放射を用いて、壊死性ゾーンの幅と壊死性ゾーンの深さのアスペクト比が約1:2より大きな、より好ましくは1:4より大きな1以上の「微視的」治療ゾーンを生成して、狙いの組織を治療する。この微視的治療ゾーンは、予め決められた治療パターンで生成される。この発明の他の観点は、皮膚の組織において有益な効果を生じる方法である。この方法では、予め決められた治療パターンで複数の微視的治療ゾーンを生成するために、光放射により実質的に影響を受けていない狙いの組織が制御されるように皮膚の組織の狙いの部分を前記の光の放射にさらす。さらに、前記の複数の微視的治療ゾーンの体積の和の狙いの組織の体積に対する比は1より小さい。
【0017】
本発明の1つの観点では、前記微視的治療ゾーンは、0.4μmと12.0μmの範囲の波長のレーザーを用い、かつ、皮膚の中の狙いの領域にレーザーの放射を向け、かつ、壊死性組織の微視的治療ゾーンを生成することにより、生成される。これらの微視的治療ゾーンは、表皮領域または真皮領域の中にあってもよく、また、表皮領域から始まり、皮膚の真皮領域の中に及んでもよい。いくつかの実施の形態では、表皮の上層、たとえば角質層は、使われないで、実質的に無傷で残っている。個々の微視的ゾーンは、円筒、球または任意の他の形状をとってもよく、これらは、波長、パルス期間、パルス幅、光線プロファイル、パルス強度、接触チップの温度、接触チップの熱伝導度、接触ローション、合焦素子の開口数、光源の輝度および光源のパワーの適当な組み合わせにより生成できる。個々の微視的処理ゾーンは、一般的に、柱状であり、この形状は治療の目的に適している。微視的治療ゾーンは、光線の伝播方向に10μmと4000μmの間(深さ)、また、光線に垂直な方向で10μmと1000μmの間(直径)であってもよい。
【0018】
この発明のある観点は、生育性組織が複数の微視的処理ゾーンの間に点在できるように、壊死された組織の微視的処理ゾーンを生成する方法である。これにより、皮膚は、より確実に修復応答を行える。
【0019】
また、この発明は、光エネルギーで皮膚の中の狙いの組織を治療し、かつ、壊死性ゾーンの幅と壊死性ゾーンの深さのアスペクト比が約1:2より大きいように1以上の壊死性ゾーンを予め決められたパターンで生成することにより、共通の医療条件を治療する装置に関連する。この発明の他の観点は、光の放射を組織の狙いの部分に照射して、光放射により変化されないで残っている狙いの組織の部分が制御されるように、1以上の熱的に変化されたゾーンを生成する装置である。さらに、前記の複数の微視的治療ゾーンの体積の和の狙いの組織の体積に対する比は1以下である。
【0020】
本発明の装置のさらに他の観点では、予め決められた治療パターンを生成する装置は、光の放射を生成する少なくとも1つの光放射源と、この光放射源に接続され、予め決められたパターンで光の放射を組織に向ける出射システムとからなる。この予め決められたパターンは、複数の分離した微視的治療ゾーンからなる。この複数の分離した微視的治療ゾーンの部分集合は、少なくとも1:2のアスペクト比を有する複数の壊死性組織からなる分離した複数の微視的治療ゾーンを含む。光放射源は、1以上のレーザー、フラッシュランプまたはLEDを含んでいてもよい。出射システムは、レーザーアレイ、検流計を基にしたスキャナなどの、種々の光学システムおよび/またはスキャナシステムを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0021】
光放射を用いた生物組織の処理において、安全性と有効性を高める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態は、レーザーを用いた皮膚科学治療を含む、光放射での生物組織の処理の安全性と有効性を高める方法と装置を提供する。特に、本発明の異なる実施の形態は、火炎状母斑、毛細血管の血管腫、サクランボ色血管腫、静脈湖、シバットの多形皮膚萎縮症、角化血管腫、蜘蛛状血管腫、顔の毛細管拡張症および毛細管拡張の脚の静脈を含む病変、ほくろ、そばかす、伊藤母斑、太田母斑、堀の斑、角化症を含む着色病変、ボウエン病、光線性角化症、光線性口唇炎、葉状口腔乳頭腫症、脂漏性角化症、汗管腫、毛包表皮腫、毛根鞘腫、全身性黄色腫、アポクリン汗腺嚢腫、いぼ、脂線腫、角化血管腫、好酸球増加随伴性リンパ組織増殖症、真珠陰茎丘疹、静脈湖、酒さ、しわなどの種々の皮膚科学の条件を治療するのに適している。本発明の実施の形態は、組織を再構築(リモデル)するため(たとえば、コラーゲン・リモデリング)、および/または、組織の表面修復(リサーフェシング)をするため、使用できる。皮膚科学の条件の特定の例は上に述べられているが、本発明は、事実上、どの種類の皮膚科学条件を治療するためにも使用できることを意図している。さらに、本発明の実施の形態は、皮膚科学以外の他の医療分野にも応用できる。他の生物学的組織、特に、人の皮膚に似た構造を持つ組織は、本発明の実施の形態を用いて治療できる、たとえば、表皮とその下にある構造組織を備える組織、たとえば軟口蓋は、本発明の実施の形態を用いて治療できる。皮膚は、本発明の実施の形態を用いて治療された生物学的組織の1例としてこの明細書の多くの箇所で使用される。しかし、この発明が皮膚すなわち皮膚科学のみに限定されないことが理解されるべきである。
【0023】
本発明の第1の機構は、より大きな組織治療エリアの中で組織の複数部分を使わずにおいておくことである。すなわち、壊死性ゾーンとHSZの間にまたそれらの周囲に健康な組織を残しておくことは、本発明の種々の実施の形態により活用されている多数の有利な効果をもつ。もし隣接する壊死治療ゾーンを囲む複数のHSZが適当な間隔をあけられていれば、および/または、皮膚の傷が限定されていれば、熱的凝固ゾーンの境界をなす生育性組織は、細胞の死の産物からより少なく炎症を生じ、これにより、細胞の生存を消滅より有利にする。これらのエリアは、傷修復の再表皮形成段階、繊維増殖段階および続くリモデル段階をよりよく行えるようにする。この効果の1つの重要な理由は、HSZと、その境界にある、使われなかった組織が、表皮を再生させるのに責任がある幹細胞のサブポピュレーションを含むことである(たとえばF. Wattの論文、"The Stem Cell Compartment in Human Interfollicular Epidermis"、J. Derm. Sci., 28, 173-180, 2002参照)。人間では、幹細胞は皮膚の中で2つの場所、すなわち、1)基礎膜部と接触している、基部ケラチノサイト層の焦点の集まりの中と、2)毛包脂線ユニットの小胞隆起部の中にある。表皮の基部ケラチノサイト層は、典型的には、幹細胞から直接に得られる多数の一過性増殖(TA)細胞510で点在されている、小ポピュレーションの幹細胞512を含む。小胞の間の表皮幹細胞は、先端エリアで網の端の基部と、非先端エリアにおける皮膚乳頭の端に、集まる傾向がある。小胞の幹細胞区画514は、ある条件のもとで要求されるとき、小胞の間の表皮表面を再生する能力をもつことが示されている。そのような条件は、重いやけど、大きな厚さの分裂した表皮の負傷、および、表皮層を露出して表皮の幹細胞を残さない美容手術の過程(たとえば切除レーザー・リサーフェシング、化学的剥脱、皮膚摩擦、角膜切除など)を含む。そのような表皮層の露出は、図5に示され、ここでは、大きな寸法のレーザービーム502が表皮11の広いエリアを治療する。事実、周知のように、COのリサーフェシングは、レーザーの傷は皮膚の治癒を促進するけれども、鉄鋼のメスや電気外科メスによる切除に比べると、再表示形成を長引かせる(たとえば、Shafferらの論文、Comparisons of Wound Healing Among Excisional, Laser Created and Standard Thermal Burn in Porcine Wounds of Equal Depth, Wound Rep. Reg. v5(1), pp51-61(1997)参照)。表皮が除かれた傷の中で残っている小胞の幹細胞のポピュレーションと、その欠陥の縁での表皮幹細胞から、治癒が起こらねばならないので、そのような傷を修復する再表皮形成は、これらの状況では遅くなる。もし傷が毛包脂腺ユニットのレベルまで厚く存在していれば、表皮の治癒は前記の縁のみから起こるので、治癒はさらに遅くなる。
【0024】
表皮再形成の速度は、TA細胞と幹細胞の数と密度に直接比例する。小胞の幹細胞ポピュレーションの場合に、隆起部区画の平均密度が皮膚表面の単位面積あたりの毛包脂腺ユニットの数に依存する。最も密の毛髪のある皮膚(頭蓋)について、大人の毛髪の数は、100〜500本/cmの間であるが、顔などの表面は、その半分より小さい。顔の上では、非先端部の皮膚の中の各々の皮膚の乳頭のすぐ上の基礎細胞層にある、10〜100μm間隔の、表皮幹細胞の集まりの密度に基き、小胞の隆起部幹細胞に比べて少なくとも2または3のオーダーの大きさだけ密度が高い表皮幹細胞が存在する。
【0025】
図6は、本発明の実施の形態による分画レーザー治療を示す。もし狙いの組織の全体が治療されず、その一分画のみがレーザー光線602により治療され、複数の壊死性ゾーンの間の(典型的にはHSZと未治療の健康な組織を含む)生育性組織608の存在を可能にし、複数回の治療が行われるならば、巨視的エリアでの組織再生が、まわりの微視的HSZと使われなかった表皮表面の中に最大速度で起こって、狙いの治療エリア10の中に「分画傷修復領域」を生じる。そのような治療は、表皮の最上層、たとえば角質層、を大きな損傷を受けないように残すが、必ずしも、これに限られない。角質層をそのように残すことは、構造の一体性と角質層の保護性を維持することにより、治癒を促す。壊死性ゾーンの間に残されている表皮組織のエリアが、表皮幹細胞612とTA細胞のポピュレーション610を含むので、分画傷修復領域は、以前の技術と基本的に異なっている。こうして、壊死性ゾーンの再表皮形成は、伝統的なリサーフェシング過程の後で観察される副作用(痛み、持続的紅斑、水腫、液体派出など)が全くまたはほとんどなしに、早く進む。壊死性ゾーンの小さな(たとえば円断面で約250μmより小さい直径の)断面は、多数の幹細胞とTA細胞が治療ゾーンの深さまで治療ゾーンの中心に比較的近いことを意味する。これは、治癒の応答をさらに速くするので、実質的に完全な(たとえば完全の約75%より大きい)再表皮修復が、約250μmより小さい範囲内の壊死性ゾーンの幅に対して約36時間より短い後治療において生じる。好ましくは、約100μmより小さい範囲で、実質的に完全な再表皮修復が約24時間より短い後治療において生じる。典型的には、再表皮修復は、壊死性ゾーンの断面の幅に直接に比例する速度で起こる。別の例として、もし部分的レーザー治療ゾーンの間隔が500壊死性ゾーン/cmの平均密度(すなわち、狙いの治療エリア10の単位表面積あたりの壊死性ゾーンの数)を生じるならば、壊死性ゾーンと、もし必要なら、そのまわりのHSZの両方の小胞の間のリサーフェシングのために十分な表皮幹細胞が残っている。さらに、分画レーザー治療の後で、小胞の膨れた幹細胞のポピュレーションが無傷に残っているので、必要なら、傷の治療とリサーフェシングに関与する。治療の密度は、別の方法では、充満因子(すなわち、放射を受けるすなわち壊死される表面積の狙いに治療エリア10の全表面積との比)とともに記述できる。ここで、実施の形態についての典型的な充満因子は、約0.05と約0.95の間であり、より好ましくは、約0.1と約0.5の間である。
【0026】
持続性の紫外腺照射は、皮膚の中で、通常の表皮と真皮の構造を、弾性的真皮基質の構成要素の特徴的な萎縮と累積でゆっくりと置き換える機能障害の傷修復経路を引き起こす(たとえば、Kligmanの論文、"Prevention and Repair of Photoaging: Sunscreens and Retinoids"、Cutis. 1989(May)、43(5): 458-65参照)。現在、光老化の反転は、新しい皮膚のコラーゲンの形成を含む皮膚の傷を与えることにより試みられる。そのような皮膚の傷は、機械的手術過程(たとえば皮膚擦傷)、化学的手術過程(たとえば樹脂類似物と酸ではがすこと)またはレーザー手術過程を用いて達成される。予期されるのは、皮膚の傷が、上側の網様皮膚区画と乳頭皮膚区画の通常の繊維増殖応答を促進し、したがって、若返った皮膚を生じることである。たとえば、米国特許第6,120,497号明細書は、繊維芽細胞を活性化するため狙いの皮膚の領域におけるコラーゲンを熱的に傷つけることを記載している。次に、この繊維芽細胞が、細胞外基質の成分の量を増加する。しかし、図2に関して上で説明したように、表皮の傷は、炎症段階を促進し、炎症段階は、若がえり過程を禁止する。容易に想像されるように、皮膚擦傷は、機械的表面切除処理であるが、表皮の傷を生じる。したがって、皮膚区画の通常の繊維増殖応答を促進するための上述の現在使用されている方法は、これらの処理で起こる表皮の傷により、若返った皮膚を生じることが可能であるが、この若返り処理は妥協されている。
【0027】
非切除の光若返りの目的は、表皮区画を使わずに乳頭と上側の網様の真皮膚区画(皮膚の表面の下で約100〜400μm)における熱的傷修復応答を誘導することである。表皮を使わないため、典型的には低いフルエンス(レーザーエネルギー密度)を使用する。残念ながら、そのような低いレベルは、所望の皮膚の効果を起こすのに必要な種類の刺激を促進するのには一般的に不十分である。こうして、従来技術のアプローチは、最小の効果しか生じない。多くの場合、最小の皮膚基質リモデリングと最小の臨床応答(たとえばしわの減少、肌理の再生、色異常の減少、末梢血管拡張の除去)は、これらの処理により達成される(たとえば、Nelsonらの論文、"What is Nonablative Photorejuvenation of Human Skin", Seminars in Cutaneous Medicine and Surgery, Vol. 12, No. 4(Dec), 238-250, 2002と、D. Leffellの論文、"Clinical Efficasy of Devices of Nonablative Photorejuvenation", Arch. Dermatol. 138: 1503-1508, 2002参照))。したがって、表皮区画を使わずに、皮膚基質のリモデリングの臨床的に有効な刺激を十分に達成するという必要はまだ満たされていない。
【0028】
治癒を促進できる生育性組織(すなわち、熱により変化された生育性の組織と、しばしば、未処理の、変化されていない健康な組織)のゾーンにより囲まれた壊死性組織をもつ、分離された、非連続の(すなわち分離した)治療ゾーンを作ることにより、本発明は、「微小熱的傷修復領域」を作る組織再生の多数のサイトを誘起する。全体の狙いの部分が熱的に変化または損傷される通常の治療に対して、狙いの組織の複数の分画部分が熱的に変化されるので、この処理を「分画光治療」という。各領域は、典型的には、傷修復の複数の「ノード」からなる熱的に変化された数千のゾーン(HSZと)からなる。各ノードの治癒機構(たとえば幹細胞とTA細胞)は、そのノード部分を越えて拡大することが期待でき、これにより、隣のノードと合わさり、光で老化した組織の構成要素(たとえば日光弾力線維症、微細血管拡張、色素失調、表皮萎縮および異型性)を置き換え、そして、全体を処理する。したがって、狙いの組織の治癒を促進できる生育性組織のゾーンにより囲まれた壊死性組織を含む複数の処理ゾーンをもつ、分離された非連続の複数の組織を作る必要がある。本発明は、この必要に答える。
【0029】
さらに、本発明のいくつかの実施の形態は、表皮の角質層と最上層を切除、穿刺または他の大きな損傷から保護する。典型的には、これは、パルスエネルギーとパルス期間を選択する手段、治療中に組織に対して置かれた接触窓を用いる手段などにより、達成される。たとえば、サファイヤまたはダイヤモンドの窓は、それらの高い熱伝導率と、関連する波長での透過度のために使用できる。さらに、角質層は典型的には比較的少量の水を含むので、水に作用する波長を第1のまたは実質的に唯一の発色団として選択することは、角質層への損傷を限定することを助ける。これらの実施の形態の結果は、その物理的構造が無傷であるように、角質層の一体性を維持することである。これは、角質層が組織の下で組織を感染、脱水などから保護する通常の機能を継続することを可能にする。多くの組織にとって、発色団としての水は典型的には治療対象部分の中で連続的であり、水は組織の大きな部分を作っている。第1の発色団として水を用いる実施の形態のためのそのような組織において、選択的な光放熱は、典型的にはほとんど応用が無い。そして、複数の壊死性ゾーンを区画し、生育性の組織を壊死性ゾーンの間に残すのは光線の形状とパラメータである。接触窓は、本発明のすべての実施の形態において要求されない。たとえば、組織表面の上の一定の高さに設置される窓などの非接触の窓は使用できる。さらに、接触窓は、治療光線の波長で100%透明でなくてもよく、たとえば約75%より低く透明である。さらに、接触窓は、低い熱伝導率をもってもよい。そのような部分的に透明な、および/または、低熱伝導率の接触窓は、治療の一部として使用されて有益に熱を発生する。
【0030】
図6〜図9までは、本発明のいくつかの実施形態を示す。図6〜図9において、狙いの組織10は、治療の対象である熱的に変化された組織と変化されない組織とからなる組織である。図6と図7において、意図された治療は、患者の皮膚がより若くより健康に見えるような皮膚のリサーフェシングである。目的は、表皮11の一部を除去し、真皮領域12において若返り過程を刺激することである。図4に示されるように、熱的に変化された組織408は、治療ゾーン402とHSZ404とからなる。熱的に変化されない組織406は、組織の熱的に変化された組織408を取り囲む。治療ゾーン402と熱ショックゾーン(HSZ)404とからなる熱的に変化された組織408は、図7〜図9にさらに示される。図示のために、治療ゾーン402とHSZ404の間の境界は明瞭に示されている。当業者が理解するように、治療ゾーン402は、(たとえば、そのゾーンの中の本来生育性の細胞の約75%より多く、好ましくは、約90%より多くが後で壊死治療を受けるような)ほぼ完全に壊死された組織からなり、また、HSZ404は、(たとえばそのゾーン内で治療の前に生育性であった細胞の約50%より多くなお生育性であるような)熱的に変化された実質的に生育性の組織からなる。治療ゾーン402は、その固有の生物学的機能を失った組織からなり、典型的には、かなり長い間(すなわち1ミリ秒より長く)約70℃より高い温度を経験している。HSZ404は、壊死性ゾーン402を囲む組織volumeであり、典型的には、約1ミリ秒以下の熱暴露時間の間、37℃より高く、55℃〜65℃までの温度を経験している。この熱的に変化された組織は、生育性であり、誤りの少ない組織修復応答を行い助けることができる。当業者が理解するように、壊死領域の中心から外方向に温度傾斜があるので、境界領域は、明瞭には区画されない。細胞壊死の加熱と割合は、壊死性ゾーン402からHSZゾーン404へ減少する。壊死過程は、典型的にはアレニウスモデルにより記述される。ここで、熱損傷は累積的であり、非可逆的であり、暴露時間と加熱速度に関連される。
【0031】
図7に示す状況では、壊死性ゾーン402は、主に、表皮11の中にあり、生育性の組織704は、壊死性ゾーンの間にある。図6に示される本発明の効果において、ケラチノサイトの幹細胞の集まり612と基部のケラチノサイトを一過性増幅細胞610の大きな部分が使われていない。さらに、当業者が理解するように、治療ゾーン402とHSZ404は、表皮真皮境界で突然に終わることはなく、実質的に真皮の中にある。真皮の中への熱の拡がりが起こりやすい。熱の拡がりの大きさは、一般的に、パワー、パルス幅、多重レーザー照射の反復速度、レーザー光の波長、光学系の開口数と焦点深度、皮膚の表面と接触しておかれるチップの熱伝導と温度(すべて組織の散乱、吸収および熱伝導その特性の状況内で)の関数である。
【0032】
図8は、皮膚リモデリング治療を示し、ここで、狙いの組織10が真皮12の中で主要構成部分である。熱的に変化された組織802は、主に、真皮12に限定される。ふたたび、熱の拡がりが表皮の中で起こりやすいことが理解されるべきである。
【0033】
図9において、熱的に変化された組織802は、表皮11と真皮12にまたがる。ここに示す状況では、皮膚リサーフェシング、表皮11の部分的除去、真皮の中でのコラーゲンの縮小を希望する。さらに、図9は、エリア906での組織表面で角質層を使わないことを示す。
【0034】
図10は、本発明の別の実施形態を示す。ここで、複数の熱ショックゾーン1004は重なっている。複数の狙いのゾーン1002の中心は、ピッチ1006により分離されて得る。もしこのピッチがHSZ1004の直径より小さいなら、複数のHSZは重なる。重なるHSZ1004は、全体として、狙いの組織10が熱的に変化されない組織とともに残っているように、位置できる。HSZ1004が相互に重なることができる1つの方法は、レーザー光線が生じるスポットがどこにあるか(すなわち壊死性ゾーン1002の中心がどこにあるか)を調整することである。たとえば、2つのスポットが相互に100μmより近ければ、典型的にはそのような重なりが起こる。もし2以上の治療ゾーン1002が相互に近く設計され、そして、複数のスポットが速く続いて作られるならば、近くに位置される治療ゾーンによる温度の正味の上昇は、それぞれのHSZ1004の大きさを増加するのに十分である。この種の治療で重要なのは、空間的に増大されたHSZの作成に熱エネルギーを寄与している隣接する治療ゾーンからの熱エネルギーを熱拡散が除去するのを防止するのに十分短い時間で、HSZの生成に寄与する治療ゾーンが作られることである。もう1つの方法は、熱拡散と、空間的に増大されるHSZを作る熱的エネルギーの重なりとの組み合わせを用いる。留意されるべきことは、熱拡散係数は、組織の化学的成分(すなわち、骨、脂肪、腱など)、細胞構造の大きさ、水成分および熱を消費する血液流に依存することである。その結果、熱拡散係数は、無血管の表皮と高度に血管化された表皮で異なる。HSZ1004を重ねる別の方法は、HSZ1004を治療ゾーン1002よりかなり大きくすることである。HSZ1004を治療ゾーン1002よりかなり大きくする1つのアプローチは、高温領域が生成されるように、高エネルギー密度を用いて所望の治療ゾーンを生成することである。これらの高温ゾーンは、より大きなHSZ1004を生じることになるより大きな体積にわたって熱エネルギーを広げる。治療ゾーンを重なるように近くすることは、表皮真皮接合での水疱形成および/またはいちじるしい裂け目またはリフトオフを起こすことがあるので、種々の治療に対して有害であることがある。
【0035】
図11に示されるように、本発明の1つの重要な観点は、健康で、実質的に変化されていない組織1102を意図的に後に残す皮膚レーザー治療である。これにより、この実質的に変化されていない組織1102は、皮膚のリモデリングと治療ゾーン1104の傷修復を助ける。図11は、壊死性ゾーン1104、HSZ1106および熱的に変化されていない組織1102からなる狙いの組織10を示す。熱的に変化されていない組織1102は、典型的には、治療システムから直接にはレーザー光を受けない。治療システムからのレーザー光は、壊死性ゾーン1104内でのみ組織の表面を照射する。後で詳しく説明するように、治療ゾーンとその結果のHSZ1106の形状と大きさは、適当な治療パラメータと治療光線の間隔を選択することにより調整される。さらに、角質層は、保護でき、無傷に維持でき、または、希望の効果によって、治療の間に切除されまたは傷つけられる。後に説明する種々の実施の形態において、壊死性ゾーンとHSZは、予め決められたパターン(たとえば多角形格子パターン、円状パターン、らせんパターン、点の行列、破線、ダッシュ、線など)またはランダムなパターンに生成できる。もし予め決められたパターンが使用されるならば、そのパターンは、形状および/または間隔において一様でも非一様でもよく、ここの治療対象部分は、形状と大きさにおいて、実質的に一様でも、実質的に非一様でも、部分的に一様でもよい。より大きな治療エリア内で、壊死性ゾーンとHSZの複数の部分集合が重複できて、健康な組織のエリアを複数の集まりまたは線(たとえば約1cmより小さい破線)の間において、壊死性ゾーンの複数の集まりまたは線を生成する。さらに、異なる実施の形態は、予め決められたパターンまたはランダムなパターンを生成するため連続的にまたは順番を組み合わせて、同時にまたはランダムに光放射の治療光線を使用することを含む。
【0036】
治療ゾーンの形状と深さの制御
変化する深さと形状を持つ多様な治療ゾーンは、ここに説明される光学系を用いて作成できる。組織内に作成される壊死の領域の形状と、それを囲むHSZの形状とは、レーザーパラメータの適当な組み合わせを用いて調整できる。
【0037】
治療ゾーンの形状は、光の波長、光線の大きさと形状、光の焦点、皮膚表面の平らさ、およびレーザーパルスのパラメータ(たとえば、エネルギー、期間、周波数)の組み合わせにより影響される。光の波長は、組織の中の種々の成分の光吸収強度と組織の散乱強度のための値を選択する。これらの光輸送パラメータは、光エネルギーが組織の中でどこを通るかを決め、組織の中の空間的温度プロファイルを部分的に決定する。光線の大きさと形状と、レーザーの焦点と開口数は、組織の中での光線の全体の伝播性質を決定する。光線の大きさ(たとえば、円状の光線形状の直径、多角形または不規則形状の光線の断面の幅)と形状は、特に光線が組織に入るとき、典型的には、生じる壊死性ゾーンの形状に影響する。光線の形状の断面の幅は、断面の中心を含む線において、断面を通る最小の距離を意味する。断面の幅は、直径は円状光線の断面について単純に特定の例であるので、直径を含む。合焦または開口数(NA)は、組織の表面温度の、最も強く影響を受けたゾーンにおいて達せられるピーク温度に対する比を決定する重要な因子である。本発明の実施の形態は、与えられた治療ゾーンに当たる1以上の光線について可変のまたは交互の焦点深度を含んでもよい。たとえば、そのような実施の形態は、異なった深さに焦点を合わせた多数の光線を含んでいてもよく、または、治療ゾーンの中で深さを変えて焦点を合わす1つの光線を含んでいてもよい。温度プロファイルの強度は、部分的に、レーザーパルスのエネルギーにより決められる。
【0038】
治療ゾーンの形状と大きさは、その治療のために適当な温度範囲内の温度に達する組織の領域によりあらく決められる。こうして、たとえば、ある治療は、ゾーンA〜Dに分割できる。たとえば、ゾーンAは、ピーク温度が75℃以上に達する領域であり、ゾーンBは、ピーク温度が62〜75℃の範囲内にある領域であり、ゾーンCは、ピーク温度が45〜62℃の範囲内にある領域であり、ゾーンDは、ピーク温度が45℃より低い領域である。これらの温度範囲は、人の組織への熱の影響についての前の説明により、組織の中である1つの効果(所望の効果または所望しない効果)が主要である領域を区画するために、発明を実施する人により、設定できる。典型的には、約1〜2ミリ秒より長い加熱期間のため約70℃より高い温度について、組織は、凝固し、壊死し、タンパク質は変性される。熱ショックゾーンは、典型的には、約45〜50℃より低い組織温度について生成される。当業者が認識するように、(a)より多いゾーンまたはより少ないゾーンが、本発明の「分画」の観点を特徴づけている異なる温度範囲について決定でき、また、(b)治療ゾーンの定義は、ピーク温度よりはむしろ組織の生化学に基づいている。たとえば、壊死されるすべての細胞の約75%(好ましくは約90%)より高いレベルで細胞壊死を持つエリアは、ここでは壊死性ゾーンと考える。壊死は、たとえばヘマトキシリンとエオシン(H&E)の染色またはニトロ・ブルー塩化テトラゾリウム、ヒドロゲナーゼ乳酸塩(LDH)活性染色を含む種々の組織学的処理により決定できる。コラーゲンの熱変性による複屈折性の喪失は、たとえば、クロス分極光顕微鏡により評価できる。
【0039】
レーザーパルスエネルギーを用いた、熱により影響されるゾーンの制御の例は、平行化されたまたは弱く発散する入射光線の場合について説明される。この状況で、光線は、組織の内部で拡がり、皮膚の中にレーザーが入る点に中心を持つ同心のシェル形状に似た治療ゾーンを生じる。治療ゾーンの各々における「治療」は、そのゾーンで達成される温度範囲により区画される。皮膚表面冷却が無い場合、ゾーンは、皮膚表面に十分に広がることができ、この場合、皮膚のある部分は、通常は、最も強く影響されたゾーン(すなわち、最高の温度上昇をしたゾーン)の中にある。もしレーザーパルスエネルギーが小さければ、これらのゾーンは皮膚の中に深くは侵入しない。弱いレーザーパルスエネルギーでは、最も少ない治療ゾーン(たとえば前の段落でのゾーンC,D)が生じる。最も強い治療のためのゾーンは、弱いレーザーパワーでは存在しない。より高いレーザーパワーエネルギーでは、治療ゾーンは、皮膚の中により深く入り、より大きな治療レベルのゾーン(たとえば、前の段落でのゾーンBと次にA)が表面の近くに生じる。レーザーエネルギーがさらに高くなるにつれ、表面の近くのより小さなゾーンが皮膚の中により深く広がる。
【0040】
レーザーパワーと波長と外部の合焦を用いた、熱により影響されるゾーン(特に壊死性ゾーン)の制御の他の例は、強く焦点に光を集められた入射光線に場合について説明される。この状況で、光線の有効直径は、組織の内部で小さくなる傾向があり、合焦と光散乱の均衡により与えられる深さで最小直径(有効「焦点」)に達する。実際の焦点より深いレベルで、光線は球に広がる。1450nmの近くの波長領域で、吸収は、波長に強く依存する。この例では、吸収深さが実際の焦点の深さに等しくなるような波長を選択する。さらに、入射レーザー光線の焦点長さは、レーザー光線の軸上での強度が組織表面からの深さが増すにつれて大きくなり、実際の焦点またはその近くでピークに達し、次に減少するように、選択される。
【0041】
この例における状況のもとで、以下の有利な効果が得られる。すなわち、壊死性ゾーンは、典型的には、周囲のHSZと同様に、実質的に柱状の領域、すなわち、実際の焦点のまわりに中心がある柱状のシェル形状である。「実質的にシェル形状である」とは、治療の光軸にそってほぼ円筒対象であって、組織の中で幅より深さが深い形状を意味する。これは、回転楕円体(まるい)、楕円体(太った円筒)、円筒(正しい円筒)、双球体(はさまれた円筒)または円錐体(テーパー形状)のような形状を含む。柱状形状を表す他のことばは、葉巻型、上下に長い、円筒状、円錐状などである。「実質的に柱状である」は、円状形状(たとえば図12の(a)の1202)、楕円または細長い形状(たとえば図12の(b)の1208)、不規則形状(たとえば図12の(d)の1220)または多角形状(たとえば図12の(c)の1214)の断面(すなわち、治療光線の光軸に垂直な断面)を含む。図12の(g)に示されるように、また、壊死性ゾーン1240が生育性組織部分1242を囲むように、環状断面であってもよい。実質的に柱状の壊死治療ゾーンは、さらに、治療の光軸に平行な方向に長いと表現してもよい。「実質的に柱状である」は、さらに、光軸に関していずれかの方向に約40°(たとえば図12の(e)における角1230または図12の(f)における角1238)まで傾いた側面を含むけれども、治療の光軸に実質的に平行な側面すなわち横の外観を持つ壊死性ゾーンを含む。「実質的に柱状である」という用語は、必ずしも実際の焦点の下と上での対称性を含まず、また、さらに、ふくれたまたはぎざぎざの側面を含む。たとえば、この用語は、実際の焦点の上で半球状でありその下でテーパー形状の円錐形状であるものを含む。
【0042】
低いレーザーパルスエネルギーでは、最も弱い治療(たとえばゾーンDまたはC)に対応する1つのゾーンのみが作られる。この例で用いるパラメータゾーンでは、この形状は実質的に柱状である。パルスエネルギーがより大きくなると、ゾーンはより長くなり、少し幅広くなる。パルスエネルギーがさらに大きくなると、より強い治療に対応する新しいゾーンが、実際の焦点を中心とする小さな領域として現れる。パルスエネルギーがさらに大きくなると、ゾーンはすべて大きくなっていく。このようにして、最高レーザーパルスエネルギーでは、生成された最も強く影響を受けたゾーンは、組織の過剰治療(たとえば、炭化および/または切除)に対応するゾーンである。
【0043】
各々のこれらの例において、組織の温度履歴は典型的には関連する。熱輸送が照射の間に強くない短いレーザーパルスについて、組織内のどの位置での温度もそのピーク値に達し(こうして、その位置でのゾーンの種類を決定し)、次に、熱輸送の結果として周囲温度にまで低く戻っていく。温度が低くなる速度は、組織の水成分、組織の血管再生の程度、処理ゾーンの物理的大きさと形状および組織の中の実際の温度プロファイルを含むいくつかの因子に依存する。温度上昇の速度が温度上昇への組織の応答に大きく影響するという証拠がある。速い上昇は、遅い速度よりも強い反応を起こすことがある。また、前に処理されたことのある領域は、前に処理されたことのない領域とは異なって応答することがある。実際の温度履歴が大きい程度に、レーザーパルスの長さは、このパラメータを制御するために調整できる。再現性のある結果のために、好ましい実施の形態は、遅い温度上昇または起こりえる熱的前処理の影響が避けられるパルス長を選択する。熱的に変化された複数のゾーンの分離は、隣接する治療ゾーン加熱を避ける。これは、一般的には、約150μmより小さい壊死性ゾーンの断面の幅より短い(約25ミリ秒より短い)パルス長で達成される。しかし、このパルス長の推奨値は、この発明の限定として解釈されるべきではない。
【0044】
組織の光学的性質は、温度と生化学とともに変わることがある。たとえば、周知のように、皮膚の中の光吸収の性質は、温度とともに変わる。また、真皮の中の光散乱は、コラーゲンの熱変性の増加とともに、減少し、次に増加すると信じられている。これらの原因でありまたこれらの長所を利用するレーザーパラメータを調整することによるすべてのこれらの特徴の使用は、本発明の範囲内にある。
【0045】
この種の制御は、コンピュータモデルを用いて、また、人の組織での実験により、確認されている。このモデルと実験に基づいて、表皮治療とより深い真皮治療の一方または両方を達成するため、レーザー照射パラメータを設定できる。平衡化されたまたは拡散する入射光線について、シェルゾーンは皮膚表面の近くにあり、しばしばそれに接触する。そして、強く焦点に集められた入射ビームについて、柱状ゾーンの形状は、波長、外部の焦点パワー(ジオプター)または開口数、皮膚上での外圧、皮膚表面での接触板の存在と不存在、レーザーパルスのエネルギーと期間、レーザー光線の形状と大きさおよびパルスの反復周波数などの中の1以上のパラメータを調整することにより、上述のすべての形状の間で変えられる。いくつかの実施の形態は、治療ゾーンの形状と大きさを正確に制御するため、皮膚の中での吸収の性質の温度による変化を利用する。
【0046】
モデル化のガイダンス
ここで、発明の具体化において使用されるモデルを説明する。このモデルでは、加熱される領域の一般的な形状は、加熱領域のRMS半径がtとzの関数として以下のとおり近似される。
【数1】

ここで、zは表面からの深さであり、tは光パルスが始まってからの時間であり、Rは皮膚表面での光線の半径であり、fとwは、散乱がないときの光線のくびれ部(腰部)の位置と寸法である。散乱と熱拡散は、最後の2つの項により表される。ここで、b=1/3μ(1−<cosθ>)であり、Dは、組織の中での熱拡散率である。μは散乱係数であり、θは散乱角であり、<cosθ>は、散乱角の余弦の平均値である。このモデルの中で、組織の中での温度上昇は、レーザーパルスの最後で、rの関数として、以下のとおりである。
【数2】

ここで、αは組織の光吸収であり、Eは、皮膚に入るレーザーパルスエネルギーであり、Cは皮膚の比熱であり、ρは、t=τで光パルスの最後で評価される。このモデルの中で、治療ゾーンの間の境界は、パルスの最後での温度の大きさに依存することがある。
【0047】
光線の光軸(すなわちr=0)にそって、温度プロファイルは、組織の中での減少される直径と光吸収の間の競争によって決定される。光線の実際の焦点(ここでビームのくびれ部ρは最小である)は、散乱の結果として、典型的には、fより小さい深さzで起こる。実際の光線のくびれ部は、光パルスの初め(ここでt=0)で評価されるw=ρ(z)である。弱い吸収では、温度は深さzで最高である。一方、強い吸収では、加熱される領域は、皮膚の表面により近い。したがって、皮膚表面の下の温度上昇が最大値である吸収値がある。これは、次の式で与えられる。
【数3】

【0048】
表面での温度上昇と深さzでの温度上昇との比は次の通りである。
【数4】

が与えられると、これらの方程式は、適当な表面温度上昇を選択するために用いる光吸収と光線パラメータを示す。波長は、狙いの発色団に基づいて所望の吸収を達成するために選択される。一方、zと焦点距離fの関係は、散乱に依存する。専門家は、一般にこの散乱を制御するため最小限の能力を持っている。
【0049】
治療ゾーンの形状は、治療ゾーンの間の境界の位置により記述される。このモデルの中で、治療ゾーンは、「T(r,z)=一定」の関係式により与えられる。
【数5】

ここで、Kは、z=zでの治療ゾーンの境界の半径がKwであるような定数である。関心のある深さzが実際の焦点より深くても浅くても、ρ/wの比は、常に1より大きい。したがって、ρ/wは、実際の焦点の近くでz−zの4乗であるが、しかし、zより長い距離では、これより速く増加できる。こうして予想される境界は、上に説明した意味で、実質的に柱状である。
【0050】
当業者は、このモデルの下にある多くの仮定を認識する。このモデルは、光の屈折と回折、モンテカルロ光伝播、3次元空間における熱拡散、および、組織内の生化学過程の詳細な反応速度を含む、より詳細な計算により作られる。したがって、われわれは、このモデルを、本発明の専門家に、種々の治療ゾーンの制御のための適当なパラメータの選択において一般的な案内として提供する。
【0051】
光パルスが終わった後で、組織内の熱は、拡散し続けて、周囲の組織の温度を上げる。通常、1つの治療ゾーン(すなわち、壊死性ゾーンまたは熱的に変化されたゾーン)において、そのゾーンのための組織条件を達成するレベルへ組織の温度を上げるのに必要な最小量よりも多くの熱エネルギーがある。この余分のエネルギーは、周囲の領域の組織変化をさらに生じさせるのに使われる。熱拡散と他の既知のメカニズムは、この熱輸送を起こさせる。したがって、熱拡散は、その余剰熱エネルギーと病変の半径に依存する量だけ治療ゾーンを拡大する効果を持つ。熱拡散の正味の効果は、治療ゾーンを拡大し、より球形にしようとすることである。非常に大量の余剰エネルギーが組織に加えられるか、または、病変が大きな直径を持つのでなければ、この効果は一般的に小さい。
【0052】
レーザー光自体が組織内に侵入するよりもより深く熱が輸送されるような温度勾配が熱の輸送にとって好ましいという熱拡散の1つの重要な観点は、図13と図14において明らかである。熱拡散は、長手方向の熱輸送の結果として、200ミクロン以上まで治療ゾーンの深さまで追加できる。
【0053】
図13a〜図13cは、このモデルを用いた代表的な結果を示す。ここで、表面に入射する光線の合焦強度を調整することにより達成可能な治療ゾーンの範囲を示す。グラフ上の種々の等高線は、一定温度の等高線を示す。これらの代表的な結果は、本発明の実施の形態を人間に用いて得られた典型的な治療結果と矛盾しない。
【0054】
たとえば、図13aは、このモデルにより予想されるゾーン境界の種類を示す。パラメータは以下のように設定された。μ=100/cm、θ=100mrad、R=1mm、w=50μm、f=500μmおよびα=20/cm。実際の焦点は、z=495μmにあり、実際の光線のくびれ部は、81μmである。これは、組織表面から500ミクロンの点へのきつい合焦に対応する。
【0055】
図13bにおいて、パラメータは以下のように設定された。μ=100/cm、θ=100mrad、R=1mm、w=500μm、f=500μmおよびα=20/cm。実際の焦点は、z=495μmにあり、実際の光線のくびれ部は、504μmである。これは、組織表面から500ミクロンの点への弱い合焦に対応する。
【0056】
図13cにおいて、パラメータは以下のように設定された。μ=100/cm、θ=100mrad、R=1mm、w=950μm、f=500μmおよびα=20/cm。これは、平行にされた入力光線の使用に対応する。
【0057】
図14a、14b、14c、14d、14e、14fおよび14gは、さらに、本発明の実施形態により生成された熱的に変化された組織(すなわち壊死性ゾーン21とHSZ22)における異なる形状を示す。たとえば、図14aにおける治療ゾーンを作るために使用される治療パラメータは、表皮の中で最大の直径を持つ壊死性ゾーン21と、約200μmの直径を持つHSZ22を生じる。治療パラメータの異なる組み合わせが図14dにおける壊死性ゾーンを作るために使用される。これらのパラメータは、皮膚の中にかなり深く侵入し、皮膚の上の100μm内でかなり小さい半径を持つ壊死性ゾーンを作る。さらに、これらのパラメータは、図14aの対応するHSZよりかなり広くかつ深いHSZ22を作る。HSZは部分的に壊死性ゾーンにたまる熱エネルギーの熱拡散により生成されるので、治療ゾーンの形状は、大きな程度で、HSZの形状を決定する。壊死性ゾーンの形状は、レーザー光線のスポット径、フルエンス(単位面積あたりのエネルギー)、パルス期間、パルスあたりのエネルギー、レーザー波長、光線プロファイル、システム光学素子、ローション、接触チップ温度、表面冷却および接触チップの熱伝導度の中の1以上の適当な組み合わせにより制御できる。
【0058】
たとえば、単独モードのファイバーから出射1500nmの波長の円状のレーザー光線は、12mJのパルスエネルギー、12msの照射時間、1Wのピークエネルギー、約6:1の光倍率(すなわち、皮膚の中での代わりに空中で焦点に集められるときファイバーの出口での被写体と比較して焦点で6倍小さい)、および、光学的に透明な、屈折率を合わせたローションをとおして皮膚と接触する、受動的に冷却されるガラス板を用いて、皮膚の中で615μmの深さに合焦される。この光線は、図14Dに示されるように、ほぼ円筒状の壊死性ゾーン21で焦点に集められ。いくつかのそのような壊死性ゾーン21の断面が、図14a、14b、14c、14d、14e、14fおよび14gに示される。この種の治療にとって、生じた壊死性ゾーン21は、半径がほぼ100〜300μm(光線方向に垂直に)であり、光線方向の深さが約150〜900μmである。図14a、14b、14c、14d、14e、14fおよび14gは、さらに、レーザーパルス期間、パルスエネルギーおよび焦点深さの種々の組み合わせにより作ることができる、熱的に変化されたゾーンの形状と深さを示す。これらの図において、y軸は、熱的に変化されたゾーンの皮膚表面からの侵入の深さを示す。ここで、0は皮膚表面であり、−600は皮膚の中の600μmを示す。x軸は、半径方向での変化されたゾーンの大きさを示す。図14a、14b、14c、14e、14fおよび14gは、図14dについて使用されたのと同じパラメータ(ただし表1のようにパルス期間、パルスエネルギーおよび焦点深さを変更して)を用いて生成できる治療ゾーン21とHSZ22の形状を示す。図14cを調べると分かるように、非円筒状の壊死性ゾーンが作成できる。
【0059】
【表1】

【0060】
本発明の実施の形態を用いた治療のための典型的なアスペクト比は、典型的には約1:2(すなわち1対2)より大きく、好ましくは、約1:4より大きい。たとえば、1:2のアスペクト比は、壊死性ゾーンの直径の1ミクロンごとに2ミクロンの深さの壊死性ゾーンがあることを意味する。アスペクト比は、壊死性ゾーン(すなわち、典型的には治療ビームの光軸に垂直な方向で最も広い点での)の断面の幅(すなわち円状断面の直径)の、光放射の治療の光軸にそって測られた壊死性ゾーンの全深さに対する比である。断面の幅は、壊死性ゾーンの最大の断面エリアを横切って断面エリアの中心を含む線にそって測られ、この断面の幅は、断面エリアを横切って測られる。深さは、壊死性ゾーンの頂部から、壊死性ゾーンの底まで光放射の光軸にそって測られる。たとえば、図12hは、楕円断面エリア1244の例を示し、断面の幅は短軸1246である。アスペクト比は、HSZの直径と深さを含んで、同様に定義できる。
【0061】
実施の形態と例
図15は、この発明を実施するための装置の1つの実施の形態を示す。装置1500は、制御システム1530、光源1510および出射システム1520からなる。出射システム1520は、狙いの組織10に、所望の予め決められた治療パターンを出射する。制御システム1530は、使用時に、光源1510と供給システム1520に接続される。制御システム1530は、光学系と供給システムに対して別々の制御システム(図示しない)からなっていてもよい。ある用途では、光源1510は、多数のレーザー光源を含み、それらは、1次元アレイ、2次元アレイなどのアレイに配置できる。
【0062】
図16は、制御システム1530のブロック図である。制御システム1530は、使用時に、入力/出力部1602、光源1604、スキャン素子1606、光学素子1608および検出素子1610からなる。入力/出力部1602は、周知のタッチスクリーン素子などであってもよい。検出素子1610は、光センサ、機械センサ、電気センサ、または、光マウス、機械的マウス、容量センサアレイ、側面計などの検出器を含んでいてもよい。
【0063】
図17は、光源が1次元アレイ1720に配置されたレーザー光源(半導体レーザー)1740を含んでいる実施の形態を示す。レーザー光源は、光フルエンス、パワー、タイミング、パルス期間、パルス間隔、波長などの光パラメータをもつ1以上の光線を提供して、狙いの組織10の中に所望の皮膚科学的効果を生じることができる。波長は、典型的には、大きくは狙いの発色団(皮膚の中に自然に見出される発色団たとえば水、ヘモグロビン、メラニンなどや、発色団を組み込みあるいは付加した薬品などの注入などで加えられた発色団)に基づいて選ばれる。例で説明すると、レーザー光源は、1つの波長、約400nm〜12,000nmの間の波長範囲、好ましくは約500nm〜3,000nmの波長範囲、より好ましくは約1,000nm〜2,000nmの波長範囲、さらに好ましくは、約1,400nmから1,600nmの波長範囲を持つ光線を提供する。たとえば、狙いの部分10の真皮層の非切除凝固の目的のため、レーザー光源は、約1,500nmの波長と、約0.001J/cm2と100,000J/cm2の間、好ましくは約1J/cm2と1000J/cm2の間の皮膚の外表面に入射する光フルエンスを持つ光線を提供できる。エネルギーは、典型的には、約100ミリ秒より短いパルス期間の、約100mJ/cmより低い範囲内にある。ある用途では、光線のパルス期間は、ほぼ熱拡散時定数以下であり、この時定数は、所望の治療ゾーンに関連した、狙いの部分内での焦点スポットの直径の自乗に比例する。この熱拡散時定数より長いパルス期間は、より非効率的であることがあり、焦点スポットを熱拡散により、望ましくなく拡がらせまたは縮ませる。これは、図10に示されるように、複数のHSZを重複させるための1つのアプローチである。
【0064】
光源の例は、半導体レーザー、ダイオード励起固体レーザー、Er:YAGレーザー、Nd:YAGレーザー、Er:ガラスレーザー、アルゴンイオンレーザー、He−Neレーザー、二酸化炭素レーザー、エキシマレーザー、エルビウムファイバーレーザーなどのファイバーレーザー、ルビーレーザー、周波数逓倍レーザー、ラーマンシフトレーザー、光ポンプ半導体レーザー(OPSL)などであるが、これには限定されない。ある実施の形態では、レーザー光源は、好ましくは、赤外線半導体レーザーなどの半導体レーザーである。光源は、連続波であってもよく、パルスであってもよい。しかし、認識されるべきことは、光学系におけるレーザー光源の種類の選択は、皮膚科科学装置1500を用いて治療される皮膚科学的条件に依存することである。図17において、光源1710は、1つの波長また波長範囲を提供できる1種類のレーザー光源を含む。その代わり、光源1710は、2以上の異なる種類のレーザー光源を含んで、種々の波長または波長範囲を提供してもよい。異なる光源からの複数の光線は、個々にまたは同時に狙いの部分10に向けられる。さらに、当業者が認識するように、レーザー光源は、個々の説明された光源の好ましい実施の形態であるが、フラッシュランプ、光パラメトリックダイオード(OPO)または発光ダイオードなどの光源も使用できる。
【0065】
図18に示される別の実施の形態では、光出射システム1830は、光源(図示しない)と光学的に結合される光素子1808を含む。光学素子1808は、約0.005より大きな開口数をもち、コリメータと合焦素子のいずれかであり、光源から狙いの部分10へ光エネルギーを向けるように機能する。この実施の形態において、光学素子1808は、光エネルギーのパワーを狙いの組織10内で1以上の治療ゾーン1802に焦点に集めることにより、光エネルギーを狙いの部分10へ向ける。好ましくは、複数の治療ゾーンが光エネルギーに同時にまたは逐次的に露光される。複数の治療ゾーンは、分離した治療ゾーンを形成するように相互に分離されてもよい。その代わりに、または、これと組み合わせて、複数の治療ゾーンは、交わり、または、相互に重なる。
【0066】
この実施の形態において、光学素子1808は、出射システムと結合されて、光エネルギーを、不連続的パターン、微視的パターンなどのパターンに向け、このため、1以上の治療ゾーンは、逐次的にまたは同時に光エネルギーにさらされる。光エネルギーのパターンの使用は、光エネルギーにさらされる狙いの組織10の分画の制御を可能にして、処理の有効性を大きく高める。異なる複数のパターンは、種々の異なる熱的に変化されるゾーンを提供でき、1つのあるパターンは、治療されるべき皮膚科学的条件の種類に基づいて選択できる。たとえば、真皮黒皮症すなわち深い着色病変などの敏感な皮膚科学的条件の場合に、光エネルギーのパターンの使用は、複数の治療ゾーン内で治療の有効レベルを可能にする。同時に、狙いの分画10の光エネルギーにさらされる部分を制御することにより、痛み、免疫系の反応、トラウマなどの複雑化を減少できる。治療ゾーンを、健康で実質的に変化されていない細胞に隣接させることにより、修復過程の混雑と悪化の可能性が小さくなるので、狙いの分画10の治癒はより速くなる。また、光エネルギーのパターンの使用は、意味のある結果を作るために組み合わされて個々の分画治療をより安全にすることにより、複数の治療が所望の効果をつくることを容易にできる。これは、典型的には、患者に対してより穏和になり、危険を減らす。さらに、治療の可視の痕跡が、処理のパターンを用いることにより減少できる。ここで、個々の治療ゾーンは、皮膚自体の通常の可視の肌理または構成要素と同じか、より小さい大きさである。そのような小さくなった可視の痕跡が持ちうる意味は、壊死性ゾーンが表面の下にあり、または、皮膚の穴の大きさより小さい表面断面積の寸法をもつことである。そのような小さくされた可視の痕跡の意味は、また、個々の壊死性ゾーンが皮膚表面から3フィート以上離れて観察する人の裸眼にとって実質的に可視でないことである。あらかじめ決められたパターンは、組織の中で望まれる効果に基づいて選ばれる。そのようなパターンは、個々の治療ゾーンがそうであるように、一様であっても非一様であってもよい。予め決められたパターンは、多角形グリッド、円状パターン、らせん状パターン等を含む。そのようなパターンは、連続的なパターン、ランダムなパターンまたは順番を組み合わせた発光モードで放射する1以上の光源を用いて形成できる。得られたパターンは、交互であっても、ランダムであってもよい。
【0067】
図19に示す他の実施の形態では、操作者が手に持つハンドピース(hand-piece)1910は、本発明の種々の実施の形態により患者の皮膚を治療するときに操作者により使用されるような大きさと構成を備える。このハンドピースは、使用時に、制御ユニット1920と結合される。
【0068】
パラメータの選択
ここに説明した発明により、熱に影響されるゾーンは、光の合焦または光干渉などの他の手段により小さな領域に制限できるので、組織の表面の近くの治療のための照射パラメータの選択において大きな裁量がある。
【0069】
より深い治療のため、本発明の利点は、部分的に上述のモデルに基づいて概略が説明されたように、照射システムのための多数のパラメータのいずれかを用いて得られる。照射源に関して、波長は、組織の吸収と散乱とをともに最適化するように調整できる。たとえば、治療ゾーンが1mmの深さに中心を持つため、吸収係数が、もし散乱が低ければ約10/cmであり、より深い治療ではこれより低い。
【0070】
可視光範囲での人の組織内での吸収は、多くは特定の発色団(ヘモグロビン、メラニンなど)により、散乱は、一般に、より深い治療ゾーンのために与えられている条件にかなうには強すぎる。近赤外波長範囲では、水は、典型的には、唯一の発色団、または、最も重大な発色団である。近赤外領域での水の吸収係数は、約1450nm(すなわち約130/cmでの吸収係数)と約1950nm(すなわち約200/cmでの吸収係数)にピークを持ち、これらのピークの間で大きく10/cmより低く低下しない。1950nmのピークより上で、吸収は、小さな値に低下せず、Er:YAGレーザー光および/またはCOレーザー光の吸収と比較しうる極端に高い値に増加する。1000nmと1450nmの間で、吸収係数は、だんだんと増加し、2/cm以下である。約1000nmより下では、ヘモグロビンとメラニンなどの発色団は、より大きくなり、水の吸収は後退する。こうして、1000nmと2000nmの間の波長範囲において、皮膚の吸収は、数mm以下の深さへの効率的治療のため適当な範囲内にある。この波長範囲内で、皮膚の散乱強度(すなわち散乱定数)は、約100/cmであるが、散乱による有効消去(extinction)速度が実質的に減少され、光エネルギーを過剰に拡散せずに、数mmの深さまで焦点が合わされた光の大きな侵入を可能にするほど十分弱いように、前方ピークを持つ。この波長範囲での比較的弱い吸収と散乱の組み合わせは、数mmまでの深さでの柱状の治療ゾーンの形成にとって有利である。
【0071】
レーザーパワーは、皮膚の中に導入される光エネルギーが所望の壊死性ゾーンとHSZを生じるのにちょうど十分であるように調整される。過剰のエネルギーは、所望よりも大きいゾーンを生じるが、一方、十分なエネルギーがないと所望の治療ゾーンを作れないことがある。光パルスのパルス長には許容度(裁量範囲)がある。パルス長は、皮膚表面で過剰の強度を避けるのに十分長く、かつ、パルスのあいだの大きな熱輸送を避けるのに十分短く、選ばれる。寸法Lのゾーンについて、パルス長はL/Dに比例し、約L/4Dで最適化される。ここで、Dは有効拡散係数である。これは、典型的には、100ミクロンのゾーン寸法について約1ミリ秒に相当する。より長いパルス幅は、より大きな治療ゾーンを生じ、必要な最小限より大きなパルスエネルギーを必要とする。この点で、Qスイッチは、望ましくない組織損傷を生じることがある。しかし、もし高い強度が望ましいなら、Qスイッチされたレーザーシステムは、特に皮膚表面の100ミクロン以内の治療ゾーンについて、部分的治療を得るのに効果的である。
【0072】
治療ゾーンを制御するもう1つの手段は、複数の光源の使用である。そのような光源は、皮膚の同じ開口または別の開口を通して向けることができる。それらは、同時にまたは連続的に使用でき、または、いずれかの方法で順番を組み合わせて使用できる。各々の光源はそれ自身の温度プロファイルを生じるので、実際の温度プロファイルは、すべてに個々のプロファイルの総和である。こうして、いくつかの半導体レーザーで与えられるような1つの波長帯域は、細長い柱状ゾーンである治療ゾーンを作る。2波長の使用は、より深いゾーンとより浅いゾーンなどの組み合わせの治療ゾーンを作ることができる。さらに、周波数でチャープされたパルスも、このように使用できる。当業者が認識するように、異なる波長の複数の光源を用いて、または、適当な時間シーケンスで異なる開口を通して皮膚に向けることにより、治療ゾーンの形状と深さをより細かく調整できる。
【0073】
パルスが順番を変えて配置される本発明の実施の形態が提供する治療では、1つの波長の条件への組織の応答と、他の波長での増大された応答がある。たとえば、所定の波長、パルス期間、パルスエネルギーおよび光線の直径を持つ第1の治療光線が、組織を加熱するために使用される。次に、第2の治療光線が、第1の治療光線により起こされたより高い基礎温度で開始して加熱された組織を凝固するために使用される。別の方法では、第1治療光線は、1つの発色団を狙いとし、第2の治療光線は、第2の異なる発色団を狙いとする。
【0074】
また、当業者には明らかであるが、皮膚表面またはその下に希望のパターンのエネルギーを作るため、光を皮膚表面に向ける多くの光学的手段がある。これらは、レンズ、ミラー、ビームスプリッタ、ファイバー光学部品、回折格子、回折素子およびホログラフ素子を含むが、これに限定されない。そのような手段のいくつかまたはすべては、照射のパターンを作り、これにより治療ゾーンの形状を制御するため、個々にまたは相互に組み合わせて使用され、本発明の範囲内にある。特に、実質的に柱状の治療ゾーンを作る手段は、この発明の範囲内である。
【0075】
本発明の他の観点は、健康で、まだ変化されていない組織が、熱的に影響を受けたすなわち治療されたゾーンの間に残されるような、個々の治療ゾーンの配置である。個々の治療ゾーンのパターンを作る手段は、ハエの目のレンズ、音響光偏向器と光音響偏向器、回折素子、検流計、圧電装置、MEMSおよび回転スキャン素子を含むが、これに限定されない。スキャナ技術はよく発展していて、この機能に適用できる。スキャナ技術を用いる1つの実施形態が含む装置では、スキャン機能がハンドピースすなわち組織表面の上をゆっくり動くヘッドの中に含まれていて、個々のパルスが1つの治療ゾーンを作る多数のパルスを適用する。治療ゾーンの間の分離は、分画治療のための重要なパラメータであり、照射位置のパターンを正確に制御する技術を用いてもっともよく達成される。しかし、ヘッド内での光学部品の動きは、各パルスの有限のパルス幅と結合されて、光パルスが、照射の間に小さいが有限のみちにわたって、掃引させすなわちぼやけさせる。そのようなぼやけは、パルスの長さを短くすることにより、または、移動する光学部品の動きを遅くすることにより、または、ぼやけ過程の能動的制御(すなわち、ぼやけ解消)により制御できる。最初の2つのオプションは、単位時間当たりカバーできる患者の皮膚のエリアを制限するという結果となる。しかし、照射パターンのぼやけ解消は、単位時間あたり、皮膚のより広いエリアを治療可能にする。したがって、ぼやけ解消機能は、個々の治療ゾーンを鋭く保ちつつ患者の皮膚治療エリアでの速いスキャンを可能にするという点で、本発明の範囲内である。典型的には、そのような速いスキャンは、秒あたり約10cmまでのハンドピースまたは出射システム部の移動を含む。そのようなぼやけ解消を含む実施の形態は、同時係属の米国特許出願(2003年12月31日出願の第10/750,790号)に記載されている。
【0076】
別の実施の形態
当業者には明らかであるが、レーザー光源、光学部品、および、本発明による治療ゾーンの形状、位置およびパターンを制御する手段を提供するハードウェアの多くの可能な構成がある。以下の実施の形態と例は、ここに提供される教示を用いて人の組織における治療ゾーンを生じる手段を具体化する場合に種々の程度の洗練を表す。
【0077】
発明の1つの実施の形態は、光エネルギーの光源として、コンパクトな半導体レーザーまたはファイバーレーザーを利用することである。光源は、患者の近くに使い勝手よく位置され、光エネルギーは、光ファイバーを用いて治療エリアのすぐ近くに輸送される。一般に、光ファイバーから現れる光エネルギーは、実行される組織の治療により必要な光の性質のすべてではないとしてもいくつかの性質を持っている。光ファイバーの端は、治療エリアの上で使用者により持たれているハンドピースの中にある。ハンドピースの機能は、ここに説明された正しいパラメータを持つ光エネルギーの局所的で最終的な調整を行って、組織の中で所望の結果を得ることである。使用者は、治療ゾーンに1以上のパルスを加え、ハンドピースを他の治療エリアに移動して、パルスの使用を繰り返す。
【0078】
たとえば、光源は、1550nmで動作する半導体レーザーまたはファイバーレーザーである。図20に示されるように、レーザー2002は、光ファイバー2004の中に結合される。光ファイバー2004の端はハンドピース2006の中にある。ハンドピース2006は、レンズ2008または複数のレンズの組み合わせと光学的平板2020を収容する。平板2020は、使用者により組織表面のすぐ近くに置かれる。光は光ファイバー2004から現れ、レンズ2008を通り、次に板2010を通る。半導体レーザーは、正確に制御されたパワーとパルス長の光パルスを出射するように設定される。レンズ2008は、この光を平行にし、板2010は、レンズ2008と組織の間で小さな離隔部を提供するので、レンズ2008は常に組織表面2016から同じ距離にある。こうして、光は、正確に制御されて治療ゾーン2018を作る、この基本的設計の多数の変形が、当業者にとって明らかであり、また、本発明の複数の実施の形態である。これらは、NA=1.0またはそれ以上の高い開口数を得るために利用されるように、単レンズをレンズの組み合わせに代えることや、光学的平板を非常に薄くすることを含む。この高い開口数の構成は、ここに説明されたように柱状ゾーンを作るために使用できる。さらに、光学的平板は、単レンズまたはレンズの組み合わせが皮膚と直接に接触するように省略できる。ミラー、ホログラフ素子および位相板は、所望の皮膚治療を得るために必要な程度と範囲を作る均等手段のいくつかである。レーザーパルスは、典型的には、ハンドピースの上のボタンまたはその均等物または足ペダル(図示しない)を用いて使用者により制御される時間間隔で光ファイバーの中に出射される。その代わりに、連続波(CW)レーザー光線が、光ファイバーの中に出射され、そして、使用者の制御がこのシステムを光線がでる直前にファーバーの端で働くように、制御機構が、ファイバーの出力端に結合される。この実施の形態は、レーザーパルスを組織の上に1つの時間に1つのパルスと1つのゾーンで「発光する」。治療ゾーンのパターンは、パルスの間にハンドピースの位置を変えることにより使用者により決定される。その代わり、ハンドピースは、ユーザーの制御に基づいてまたは自動化システムにより、レーザーの発火のための一定の反復速度で、またはハンドピースの動きの基づく反復速度で、レーザーの間欠的発光を行う。
【0079】
図21aと図21bに示されるもう1つの実施形態では、レンズアレイを用いて多数のパルスの同時の発光を利用する。ファイバー2004からの光は、レンズ2108の密に配置されたアレイを通って、多数の治療ゾーン2118を同時に生じる。レンズアレイの1つの効果は、多数の治療ゾーンの位置を正確に定義し、治療される組織の分画部分を正確に固定することである。レンズアレイは、1つの透明板の中に切断またはエッチングにより得られた通常の屈折性レンズの単純なアレイとして製造できる。より大きな光効率は、位相板、フレネルレンズの形態のゾーン板などの回折性光学素子を用いて得られる。また、ホログラフのアプローチも知られている。レンズアレイは、多数のパルスを同時に発光する実施の形態を具体化する多くの手段の1つである。すべてのそのような手段は本発明の範囲内である。
【0080】
別のレンズアレイの実施形態は、速い治療が起こるように皮膚内で1つの光線を同時に小さな治療ゾーンのアレイに変換するシリコンレンズアレイの使用を含む。図21bに示されるように、これらのレンズは、皮膚と直接に接触して、または、深い真皮治療の場合のように、小さな治療ゾーンまたは高い角度が要求されるなら非常に高いNAのシステムを作るために接触窓または板を通して、皮膚と接触して、置くことができる。この実施の形態の第2の観点は、マイクロレンズアレイがアダプターチップの中に構成でき、このアダプターチップは、既存の医療レーザー装置を小さな治療ゾーン(<1mmの直径)を持つ装置に変換する。MEMSオプチカル社(米国アラバマ州ハンツビル)などの会社はエッチされたマイクロレンズアレイを作り、コーニング社(米国入ヨーク州)とライトパス・テクノロジーズ社(米国フロリダ州オーランド)は型によりガラスレンズアレイを作る。米国カリフォルニア州マウンテンビューのスペクトル・フィジックス社の米国コネチカット州ストラットフォードのオリエル・インスツルメンツ部により製造される紫外硬化エポキシなどの他の材料も、使用できる。また、米国マサチュセッツ州ハドソンのホログラフィクス社により製造されるような回折素子は、マイクロレンズ素子を作るために使用できる。さらに、米国カリフォルニア州リッチモンドのディコンファイバーオプティクス社により製造されるような小さなGRINレンズのアレイ、または、他の小さなレンズ(米国フロリダ州オーランドのライトパス・テクノロジーズ社)のアレイが、1つのアレイを作るためにともに結合できる。
【0081】
微視的レーザー治療のある用途では、狙いのエリアの表面に大きなエリアを持ち、レーザーシステムの焦点に小さなエリアを持つことが望ましい。これは、高い開口数を持つ本発明の実施の形態を用いて達成できる。もし複数のスポットが要求され、通常の負数の分離し近接したレンズ系が使用されるならば、複数のレンズ素子をどのように密接に配置するかについて制限がある。2つの個々のレンズは、光線を重ねることなしでは、端と端をくっつけるより近接できない。狙いの皮膚に対して垂直に入射するレンズアレイでは、これは、焦点スポットをどれだけ近くに置くかについて制限をする。図22に示されるように、本発明の1つの実施の形態は、皮膚の中に複数のスポットを近接して作るために、大きな単レンズを用いることを含む。この実施の形態は、レンズアレイの代わりに単レンズを用いて、複数のスポットを非常に近接して作るための設計を記載する。複数の光線(2204,2206,2208)は、大きな単レンズ2202に異なる角度で入射し、レンズはこれらの光線を皮膚の中の異なる場所で焦点に集め、1つの治療ゾーン2210を作る。複数の光線は、球状レンズの上に入射して、皮膚の中に異なるスポットを作ることができる。これらの光線は、レンズに異なる角度で入射するので、異なる焦点スポットに行く。本発明の別の実施の形態では、他のレンズ形状と光学的構成を用いる。
【0082】
本発明の他の実施の形態は、ハンドピースの中にレンズとともに取り付けられた半導体レーザーを使用する。複数の半導体レーザーからの光は、光線の形を変え、焦点に光を集め、またはその両方をする複数のレンズおよび/または複数のミラーのシステムにより、直接に組織に向けられる。複数の半導体レーザーの電気的および熱的条件は、主電源と冷却機構の主要部分がリモートで置かれることがあるので、典型的にはより複雑である。その代わりに、電源と冷却機構はハンドピースの中においてもよい。
【0083】
他の実施の形態は、レンズアレイの設計の変形であり、1つのレーザーからのレーザー光線を、連続的にスキャン装置により、1つのレンズから次のレンズへ、または、1つの放射サイトから次の放射サイトへ向けることを含む。こうして、すべてのレンズの同時照射の場合、レーザーパワーがそれらのレンズとサイトの間で分割されるのと対照的に、レーザーのパワーは、短い時間の間に各々のレンズへまたは各々のサイトへ向けられる。固定されたレーザーパワーとサイトあたりの治療エネルギーについて、レーザーが光エネルギーを放射している全体時間は、連続的な場合や同時の場合と同じである。しかし、いずれか1つのサイトの照射時間は連続的照射の場合、同時照射の場合にくらべてかなり短い。短いパルス時間は、しばしば、治療ゾーンの形状の制御にとって有利である。組織の中の多くの効果は治癒の速度または達成したピーク温度に依存するが、他の効果には、受け取った全エネルギーに依存するものがある。たとえば、侵害受容器細胞の電気的応答は、この後者のカテゴリーの中にある。こうして、パルス時間は、患者による痛みの経験に大きく影響することがある。すでに説明したように、パルス時間は、柱状ゾーンの直径を拡大するのに寄与する。もしパルス時間がこの(または他の)考慮により限定されないならば、連続的照射が、光源のパワーを減少する手段であり、これにより、照射ハードウェアの価格と大きさ(占有面積)を減少する。
【0084】
図23に示されるように、別の実施の形態は、レーザーをリモートに位置し、スキャナ2308と単レンズ2314を用いて光線を連続的にスキャンする。スキャナは、レンズと組織2310の間、または、レンズと光ファイバー2304の間にあってもよい。スキャナ2308は、光エネルギーを、予め決められたシーケンスで異なるサイトに向ける。スキャナは、音響光偏向器、MEMS装置、検流計により駆動されるミラーまたは回転ミラーなどの、レーザー光線の方向を変えるいずれかの適当な方法を使用できる。1つの実施の形態では、検流計により駆動される1対のミラーが、レーザービームが光ファイバーから現れた後で、皮膚の表面の下に鋭い焦点を作るレンズを通る前に、その方向を変える。位置、角度変化または光線中心の動きなどのスキャナのパラメータは、周知の光学公式により決定でき、当業者によく理解されている。スキャナが静的システムに対して持っている長所は、ハンドピースが皮膚の上を動くとき、ハンドピースの移動方向にそって治療ゾーンのぼけを修正するように設計できることである。ハンドピースの動きを記述するパラメータは、センサと光マウス技術を用いて得ることができる。特に、スキャナは、皮膚表面のうえでハンドピースを動かすとき、その動きをリアルタイムで修正するように構成できる。スキャナ2308は、1次元または2次元でもよい。また、スキャナは、このシステムの焦点深さのスキャンを作るように光軸に平行な軸にそって3次元にあってもよい。
【0085】
また、さらに他の実施の形態が当業者によりまたここでの説明により予想できる。たとえば、同時にまたは連続的にパルスを発生する複数のレーザーの使用は、多くのサイトの治療において平行を可能にする。また、治療のプロトコルにおいて使用される波長に変形を可能にする。たとえば、異なる複数の波長を用いて、治療ゾーンを細長くできる。図24に示されるように、もし多数のレーザーが使用されるならば、それらのレーザーが向けられている多数のサイトは、組織の上でのハンドピースの移動方向に垂直な線にそって配置できる。この「平行セット」におけるサイトは、実質的に同時に照射される。この「平行セット」の概念は、皮膚の上のハンドピースの移動方向に全体のサイトを1グループとして移動するスキャナと組み合わされると、そのようなスキャナは、ぼけの修正のためにも設計できる。相互に対し固定されるが、それらを結ぶ数学的な線に垂直な方向に1グループとしてスキャンする平行セットのこの組み合わせは、いくつかの効果を持ち、その1つは、スキャナにおける機械的加速を減少してレーザースポットのぼけを少なくすることである。また、この平行セットは、近接するサイトでの治療の間のそれらのサイトの間での熱消費のために、非連続的に、ランダムに、または、順番を変えて、照射される。
【0086】
本発明の別の実施の形態は、光学素子を通る1以上の光線が、所望の方向に変更され、および/または、焦点で集められるように、反対方向に回転する素子または輪とその反対方向回転素子の上のその光学素子を含む。そのようなシステムの例は、同時に係属している2つの米国特許出願(2003年12月31日出願の第10/750,790号と2003年12月23日出願の第10/751,041号)に記載されている。
【0087】
実験結果と組織学
以下の表(表2)は、本発明の実施の形態における種々のシステムパラメータの平均結果の例を示す。
【表2】

【0088】
表2において、深さと直径は壊死性ゾーンについてのものと平均についてである。このデータは、例として提供されるものであり、これらの値に限定されるものではない。治療の速度は、たとえば秒速10cmであり、好ましくは、約2cm/秒と6cm/秒の範囲内にある。角質層は、この実施の形態とこれらのパラメータを用いて、使わずに残すことができ、または、特にもし接触窓が除去され、および/または、波長が変えられるならば、損傷および/または除去できる。さらに、達成される治療の深さは、表2に平均として示される値より100〜200ミクロン深くできる。上述の別の実施の形態は、深さ、幅および開口数について同様な結果を生じることができる。しかし、各々の実施の形態は、異なる治療速度、パターンの密度、精度、使用の容易さと有効性をもつ。
【0089】
これらの実施の形態での典型的なシステムパラメータは以下を含む。約500nmと約4,000nmの間の範囲内の、好ましくは、約1,000nmと約2,000nmの間の範囲内の、さらに好ましくは約1,400nmと約1,600nmの間の範囲内の波長、パルスあたり約150mJまでの、好ましくはパルスあたり約50mJまでの範囲内のパルスエネルギー。約500ミクロンより小さい範囲内の、好ましくは約200ミクロンより小さい範囲内の組織表面での治療光線の断面の幅。約0.005と約2.0の間の範囲内の、好ましくは約0.01と約1.0の間の範囲内の本システムのための開口数。組織表面の上の約500ミクロンと組織表面の下の約2mmの間の範囲内の、好ましくは組織表面の上の約200ミクロンと組織表面の下の約1500ミクロンの間の範囲内の組織表面から測られた焦点深度、約50マイクロ秒と約100ミリ秒の間の範囲内の、好ましくは約400マイクロ秒と約10ミリ秒の間の範囲内のパルス期間。スキャン手段を含む実施の形態について、約10cm/秒より低い範囲内での、好ましくは約2cm/秒と約6cm/秒の間の範囲内での組織表面を横切るハンドピースまたは光線の移動速度。少なくとも約100治療ゾーン/秒の、好ましくは、約500治療ゾーン/秒と約2000治療ゾーン/秒の間の範囲内の、より好ましくは約1000治療ゾーン/秒と約1500治療ゾーン/秒の間の範囲内の、治療ゾーン(すなわち壊死性ゾーンとHSZ)の形成の速度。スキャナシステムにおいて、特にマウス制御を用いるインテリジェントロボット工学を用いる実施の形態において、ハンドピースの移動速度は、手の運動とは直接には関連されない。これらのパラメータを用いる実施の形態の典型的な結果は、以下を含む。表面より下の約4mmまでの治療の深さ、約1mmより小さい、好ましくは約500ミクロンより小さい、治療ゾーンの直径、少なくとも1:2の、好ましくは少なくとも約1:4の開口数、組織を通る装置の通過あたりでかつ平方センチメートルあたりで約2500治療ゾーンまでの、好ましくは約1000治療ゾーンまでの範囲内での、治療ゾーンの密度、および、少なくとも50ミクロンの、好ましくは少なくとも約150ミクロンの、近接する治療ゾーンの中心の間の分離。
【0090】
図25aと図25bに示されるように、本発明の実施の形態は、人の皮膚の上に、表皮真皮接合2510を横切り、角質層2502を使わずに残す、実質的に柱状の治療ゾーンを作るために使用される。異なるシステムパラメータは、角質層を使わないが、そのように角質層を使用しないことは、すべての実施の形態すなわち治療に対して要求されているのではない。以下のパラメータは図25aと図25bに示される組織の治療において使用された。1500nmの波長と5mJのパルスエネルギー。図25aは、治療後1時間以内での結果を示す。角質層2502は、無傷で残り、表皮2504は、十分似凝固され、壊死され、実質的に柱状の熱的傷2508が真皮2512内にみられる。真皮表皮接合2510における分離は、ときどき、ここに示されるようである。治療ゾーンの幅は、治療ゾーンの深さを通して大きく一様であり、約80〜100ミクロンと測定された。傷の深さは約200〜300ミクロンである。図25bは、治療後24時間後の治療の結果と治癒過程を示す。図25bにおいて、表皮2504は、治療されたエリア2514において大きく再表皮形成をしていて、真皮の修復は、熱的傷のエリア2516とその近傍で続いていて、しばしば、微視的表皮壊死破片(MEND)(図示しない)が角質層の下に形成される。MENDは、典型的には、治療からの壊死破片と表皮の色素からなる。MENDは、典型的には、約1週間までにはがれる。
【0091】
以上に説明した、レーザー手術のためのシステムと方法では、好ましくは、レーザー、LEDまたは非コヒーレント光源などの焦点に集められた光信号が作られて、微視的治療ゾーンを形成した。さらに、以上に説明した、レーザー手術のためのシステムと方法では、焦点で集められた光信号が、表皮領域を損なうことなく、表皮領域より下の領域を治療するために使用できる。当業者は、不当な実験なしに、または、本発明の精神または範囲から外れることなく、個々に説明した実施の形態を変形できる。すべてのそのような変形やずれは、添付の特許請求の範囲の中で解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】皮膚のリサーフェシングのための従来のシステムを用いて、レーザー光にさらされた皮膚の図
【図2】通常の傷の治癒の炎症段階、細胞増殖段階および皮膚成熟段階の図式的な図
【図3】皮膚のリモデリングのための従来のシステムを用いて、レーザー光にさらされた皮膚の図
【図4】熱治療のためレーザー放射に露光された皮膚とその結果の異なるゾーンを図式的に示す図
【図5】従来のシステムを用いたレーザー・リサーフェシングを示す図
【図6】本発明の1実施形態の図
【図7】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンの図式的な図
【図8】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンの図式的な図
【図9】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンの図式的な図
【図10】本発明の別の実施形態の図式的な図
【図11】本発明の別の実施形態の図式的な図
【図12】本発明の種々の実施形態により生成された種々の微視的な治療ゾーンの図式的な図
【図13a】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図13b】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図13c】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図14a】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図14b】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図14c】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図14d】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図14e】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図14f】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図14g】本発明の種々の実施形態により生成された異なる熱的に変化されたゾーンのグラフ
【図15】本発明の1実施形態の図式的な図
【図16】本発明の制御システムの1実施形態の図式的な図
【図17】本発明の装置の光学系の1実施形態の図
【図18】本発明の装置の出射システムの1実施形態の図
【図19】本発明の装置を使用する方法の図
【図20】本発明のシステムの1実施形態の図
【図21a】本発明のシステムの1実施形態の図
【図21b】本発明のシステムの1実施形態の図
【図22】本発明のシステムの1実施形態の図
【図23】本発明のシステムの1実施形態の図
【図24】本発明のシステムの1実施形態の図
【図25a】本発明の実施の形態を適用したレーザー治療からの組織学的結果の図
【図25b】本発明の実施の形態を適用したレーザー治療からの組織学的結果の図
【符号の説明】
【0093】
10 狙いの組織、 11 表皮、 12 真皮、 402 治療ゾーン、 404 HSZ、 406 熱的に変化されない組織、 408 熱的に変化された組織、 502 レーザービーム、 1500 1500、 1510 光源、 1520 出射システム、 1530 制御システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の中の狙いの組織に有益な効果を生じる方法であって、
予め決められた治療パターンで複数の微視的治療ゾーンを生成する光の放射を用いて狙いの組織を治療し、
前記の複数の微視的治療ゾーンの部分集合は、少なくとも1:2のアスペクト比を有する複数の壊死性組織からなる分離した複数の微視的治療ゾーンを含む
方法。
【請求項2】
前記の複数の微視的治療ゾーンは、熱的に変化されていない組織によって分離されていることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記の複数の微視的治療ゾーンは、生育可能組織からなる、熱的に変化された複数の熱ショックゾーンにより囲まれていることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項4】
前記の熱ショックゾーンが、熱的に変化されていない組織によって分離されていることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項5】
前記の微視的治療ゾーンが皮膚の表面から組織の中に4mmの深さまで存在することを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項6】
前記の微視的治療ゾーンが皮膚の表面から表皮真皮接合まで存在することを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項7】
前記の微視的治療ゾーンは、皮膚の表皮真皮接合から測った深さが真皮の中に約4mmまでの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項8】
前記の複数の壊死性組織が約10μmから約1000μmの範囲内の断面の幅を有することを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項9】
前記の複数の壊死性組織が約25μmから約750μmの範囲内の断面の幅を有することを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項10】
前記の複数の壊死性組織が約50μmから約500μmの範囲内の断面の幅を有することを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項11】
前記の熱ショックゾーンの断面の幅が前記の予め決められたパターンによって制御されていることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項12】
前記の複数の微視的治療ゾーンを生成するための前記の予め決められた治療パターンは、レーザー波長、発色団、レーザーエネルギー密度、パルスエネルギー、パルス期間、熱拡散定数およびレーザーエネルギーの時間的および空間的な分布の中から1以上の変数を選ぶことにより作られる、ことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項13】
前記の発色団は水であることを特徴とする、請求項12に記載された方法。
【請求項14】
前記のパルスエネルギーは150mJより低く、前記のパルス期間は約50マイクロ秒から約100ミリ秒の間の範囲内にあることを特徴とする、請求項12に記載された方法。
【請求項15】
前記のパルスエネルギーは50mJより低く、前記のパルス期間は約400マイクロ秒から約10ミリ秒の間の範囲内にあることを特徴とする、請求項12に記載された方法。
【請求項16】
前記の複数の微視的治療ゾーンの体積の和の狙いの組織の体積に対する比は1より小さいことを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項17】
前記の微視的治療ゾーンは物理的に無傷の角質層を有することを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項18】
前記の壊死性組織が実質的に柱状であることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項19】
前記のアスペクト比が約1:4であることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項20】
皮膚の組織において有益な効果を達成する方法であって、
皮膚の組織の狙いの部分を前記の光の放射に露出して、光放射により実質的に影響を受けないままである狙いの組織が制御されるように、予め決められた治療パターンで複数の微視的治療ゾーンを生成する方法。
【請求項21】
前記の制御は、光の放射を皮膚の中の所望の深さまで焦点で集めることによって達成されることを特徴とする、請求項20に記載された方法。
【請求項22】
各々の微視的治療ゾーンが前記の光への露光により熱的に変化されることを特徴とする請求項20に記載された方法。
【請求項23】
各々の微視的治療ゾーンが、生育可能な組織を含む熱ショックゾーンにより囲まれていることを特徴とする、請求項20に記載された方法。
【請求項24】
前記の微視的治療ゾーンは、約10μmと約1000μmの間の範囲内の断面の幅と光放射の方向に約4mmまでの深さとにより定義される壊死性組織を含む、ことを特徴とする、請求項20に記載された方法。
【請求項25】
さらに、狙いの領域にレーザーのエネルギーを出射するハンドピースを用いて、狙いの領域を選択することを含み、この狙いの領域の面積がハンドピースの断面積より大きいときに、その狙いの領域の上でハンドピースを動かすことにより狙いの領域が治療されることを特徴とする、請求項20に記載された方法。
【請求項26】
前記の複数の分離した微視的治療ゾーンの部分集合は、少なくとも1:2のアスペクト比を有する複数の壊死性組織からなる分離した複数の微視的治療ゾーンを含む、ことを特徴とする、請求項20に記載された方法。
【請求項27】
皮膚治療のためのシステムであって、
光の放射を生成する光源と、
皮膚の狙いの部分に光の放射を出射する出射手段と、
前記の光源と前記の伝達手段に接続される制御システムとからなり、
前記の制御システムは、光の放射に実質的に影響されないで残っている狙いの組織が制御されるように、光の放射の狙いの部分への出射を制御して、1以上の微視的治療ゾーンを生成する
システム。
【請求項28】
皮膚治療のためのシステムであって、
光の放射を生成する光源と、
前記の光源に接続され、予め決められたパターンで光の放射を組織の部分に向ける出射システムとからなり、
前記の予め決められたパターンは、複数の分離した微視的治療ゾーンからなり、
前記の複数の分離した微視的治療ゾーンの部分集合は、少なくとも1:2のアスペクト比を有する複数の壊死性組織からなる分離した複数の微視的治療ゾーンを含む
システム。
【請求項29】
さらに、前記の光源に接続される光源制御システムを備え、この光源制御システムは、前記の光源、前記の光の放射のパラメータを制御し、このパラメータは、波長、パルス期間、パルスエネルギー、パルス形状、光線のプロファイル、チャープおよび反復速度の中の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項30】
前記の光の放射は、約200ミクロンより小さい組織の表面の光線断面幅を有することを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項31】
さらに、前記の出射システムに接続される出射システム制御器を備え、この出射システム制御器は、開口、焦点距離および光の放射の方向を含む複数の出射システムパラメータの中の少なくとも1つを制御することを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項32】
前記の複数の出射システムパラメータは、さらに、スキャン速度、スキャン方向、ぼけ解消、同時に出射される光線の数、および、パターン形状を含むことを特徴とする、請求項31に記載されたシステム。
【請求項33】
さらに、前記の出射システムと前記の組織の間に位置され、このシステムの動作中に前記の組織と接触する接触窓を備える、ことを特徴とする請求項28に記載されたシステム。
【請求項34】
前記の接触窓は、光の放射に対して実質的に透明であって高い熱伝導度を有する材料からなることを特徴とする、請求項33に記載されたシステム。
【請求項35】
前記の出射システムと前記の接触窓は、組織の中の外皮領域の中の壊死的部分を生じ、外皮領域に隣接した角質層を実質的に使わないで残すことを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項36】
前記の出射システムは、さらに、少なくともミラー、レンズ、レンズアレイ、回折素子、ホログラフ素子および光ファイバー素子の中の少なくとも1つを含む光学系を備えることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項37】
前記の光学系は、約0.005より大きな開口と、組織表面の上での約500ミクロンと組織の表面の下での約1500ミクロンの間の範囲内に位置される焦点を有することを特徴とする、請求項36に記載されたシステム。
【請求項38】
前記の出射システムは、さらに、1次元スキャナと2次元スキャナの少なくとも1つを含むスキャナシステムを備える、ことを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項39】
前記のスキャナシステムは、音響光素子、圧電素子、検流計、マイクロ電気機械システム(MEMS)、回転ミラー、回転プリズム、光学的マウスおよび機械的マウスの中の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項38に記載されたシステム。
【請求項40】
前記の壊死性組織は組織の表面で約200ミクロンより小さい直径を有することを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項41】
前記の壊死性組織は200ミクロンの深さを有することを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項42】
前記の複数の分離した微視的治療ゾーンは物理的に無傷の角質層を有することを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項43】
前記の分離した微視的治療ゾーンは実質的に柱状であることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項44】
前記の複数の分離した微視的治療ゾーンのための壊死的ゾーンの中心は、少なくとも50ミクロンにより分離されていることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項45】
前記の予め決められたパターンは、複数の分離した微視的治療ゾーンからなる、ことを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項46】
前記の予め決められたパターンは、1平方cmあたり約2500までの範囲内の数の分離した微視的治療ゾーンを含むことを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項47】
前記の光の放射は、約400nmと約12000nmの間の範囲内の波長と、1パルスあたり約150mJまでのエネルギーと、約100ミリ秒までのパルス期間を有することを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項48】
前記の光の放射は、約900nmと約3000nmの間の範囲内の波長と、1パルスあたり約50mJまでのエネルギーと、約400ミリ秒と約10ミリ秒の間の範囲内のパルス期間を有することを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項49】
前記の個々の分離した微視的治療ゾーンは複数の熱ショックゾーンを含み、前記の個々の分離した微視的治療ゾーンのための熱ショックゾーンと壊死性組織は、実質的に円筒状の結合された部分を形成し、この結合部分は、少なくとも約1:1のアスペクト比を備えることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項50】
壊死性組織と熱ショックゾーンの表面積の和の、狙いの組織内の未治療組織の表面積の和に対する比は1より小さいことを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項51】
前記の光源は、ファイバー・レーザー、半導体レーザー、二酸化炭素レーザー、ダイオードポンプ固体レーザー、ルビーレーザー、光パラメトリックレーザーおよびエキシマレーザーのなかの1以上からなることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項52】
1平方cmあたり約0.001Jと約100000Jの間の範囲内で光のフルエンスを組織の表面に入射させることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項53】
前記のアスペクト比が約1:4であることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。
【請求項54】
前記の出射システムは、さらに、ハンドピースを備え、ハンドピースが1秒あたり約1cmと約6cmの間の速度範囲内で移動している間に、1平方cmあたり約2500までの範囲内の数の壊死性組織を作ることを特徴とする、請求項28に記載されたシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図14e】
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【図14f】
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【図14g】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25a】
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【図25b】
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【公表番号】特表2007−531544(P2007−531544A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520264(P2006−520264)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/022389
【国際公開番号】WO2005/007003
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504226009)リライアント・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】RELIANT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】