説明

皮膚外用剤及び食品

【課題】 天然物の新規抽出物について、皮膚外用剤や食品への用途を見出す。
【解決手段】 オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有する皮膚外用剤、細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤、脂肪蓄積抑制剤、アディポネクチン産生促進剤、血管新生抑制剤及び食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤及び食品に関し、より詳しくは、皮膚外用剤、細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤、脂肪蓄積抑制剤、アディポネクチン産生促進剤、血管新生抑制剤及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢に伴い、皮膚にはシワ、タルミ、シミ等の老化症状が見られる。皮膚のシワ及びタルミの原因としては、細胞の機能低下や、コラーゲン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックス成分の減少又は変性による皮膚の弾性低下が挙げられ、シミの原因としては、紫外線によるメラニン産生及び細胞の酸化傷害が挙げられる。
【0003】
このような皮膚の老化症状を防止又は改善するために、従来、様々な有効成分の検索及び皮膚外用剤や食品への配合検討がなされてきた。細胞賦活剤としてはポンカンのエッセンス(特許文献1参照)、コラーゲン産生促進剤としてはブナ科ブナ属植物の木の芽からの抽出物(特許文献2参照)、ヒアルロン酸産生促進剤としてはミカン科に属する植物の抽出物(特許文献3参照)、抗酸化剤としてはサルオガセ科サルオガセ属植物の抽出物(特許文献4参照)、メラニン産生抑制剤としてはダイウイキョウ(大茴香)のエッセンス(特許文献5参照)が知られている。
【0004】
また、近年、高血圧、高脂血症、糖尿病等の生活習慣病を引き起こす要因として注目されているメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の改善因子として、アディポネクチンが発見された。アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンであり、肝臓や骨格筋において脂肪酸の燃焼及び糖の取り込みを促進することにより、メタボリックシンドローム改善作用を有する。加えて、アディポネクチンは強力な抗癌作用をも有することが報告されている(非特許文献1参照)。
【0005】
そこで、メタボリックシンドロームや癌の予防又は治療のために、アディポネクチンの産生を促進する素材が求められている。これまでに知られているアディポネクチン産生促進剤としては、ショウガ科ウコン属直物の根茎の抽出物(特許文献6参照)がある。なお、メタボリックシンドローム改善作用を有する脂肪蓄積抑制剤としてクエルシトリンを有効成分とするもの(特許文献7参照)が知られており、抗癌作用を有する血管新生抑制剤としてL−アスコルビン酸誘導体を有効成分とするもの(特許文献8参照)が知られている。
【特許文献1】特開2001−131045号公報
【特許文献2】特開平10−203952号公報
【特許文献3】特開2000−096050号公報
【特許文献4】特開平10−182413号公報
【特許文献5】特開平11−302149号公報
【特許文献6】特開2005−60308号公報
【特許文献7】特開2000−344673号公報
【特許文献8】特開平06−219943号公報
【非特許文献1】「Canser Review」、日経メディカル、2006年、12月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、天然物や天然物由来の成分で各種機能を発揮させる試みがなされており、上記以外の天然物についても有効成分を探索して新たな機能を見出すことが期待されている。そこで、本発明の目的は、天然物の新規抽出物について、皮膚外用剤や食品への用途を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、種々の天然物について検討を行った結果、オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物に優れた細胞賦活剤作用、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、抗酸化作用、メラニン産生抑制作用、アディポネクチン産生促進作用、及び血管新生抑制作用を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物について、皮膚外用剤や食品への用途を提供する。すなわち、本発明は、オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有する皮膚外用剤、細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤、アディポネクチン産生促進剤、血管新生抑制剤及び食品を提供するものである。
【0008】
オオズキンカブリタケの抽出物としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、極性有機溶媒、超臨界流体及び亜臨界流体からなる群より選ばれる少なくとも1種でオオズキンカブリタケを抽出した抽出物が適用できる。
【0009】
なかでも、(1)常温常圧下、低級アルコール水溶液で抽出した抽出物、(2)高温高圧下、水で抽出した抽出物が好適である。低級アルコール水溶液や水で抽出した後、凍結乾燥等を行って水分を除去してもよい。
【0010】
更に、オオズキンカブリタケの抽出物としては、オオズキンカブリタケの子実体をエタノールによって抽出して得られる抽出物又はオオズキンカブリタケの子実体を熱水によって抽出して得られる抽出物であることが好ましい。
【0011】
細胞賦活剤、コラーゲン産生促進、ヒアルロン酸産生促進、抗酸化、メラニン産生抑制、アディポネクチン産生促進、及び血管新生抑制の効果がより優れることから、オオズキンカブリタケとしてオオズキンカブリタケの子実体の乾燥粉砕物を用いることが好ましい。
【0012】
オオズキンカブリタケの抽出物は、細胞賦活剤及びコラーゲン産生促進剤として機能することにより、抗老化効果を生じるものと考えられる。また、ヒアルロン酸産生促進剤として機能することにより、抗老化効果及び保湿効果を生じるものと考えられる。更に、DPPHラジカル消去剤として機能することにより抗酸化効果を生じ、メラニン産生抑制剤として機能することにより美白効果を生じ、脂肪蓄積抑制剤として機能することにより痩身効果及びメタボリックシンドローム改善効果を生じ、アディポネクチン産生促進剤として機能することにより、メタボリックシンドローム改善効果及び抗癌効果を生じ、血管新生抑制剤として機能することにより抗癌効果を生じるものと考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた効果を有する細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤、アディポネクチン産生促進剤、血管新生抑制剤を提供することができる。また、オオズキンカブリタケの抽出物を皮膚外用剤に配合することにより、シワ、タルミ、肌のハリ、シミ、クスミといった皮膚老化症状の防止又は改善に優れた効果を発揮する老化防止改善用皮膚外用剤や、メラニン産生抑制に優れた効果を発揮する美白用皮膚外用剤を提供することができる。更に、オオズキンカブリタケの抽出物を食品に配合することにより、美容、健康維持や栄養補給に優れた効果を発揮する食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明において用いられるオオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)は、アミガサタケ科オオズキンカブリタケ属の植物である。オオズキンカブリタケ(大頭巾被り茸)は、春に、開放的な広葉樹の林や河川敷の草地等、日当りの良い場所に発生し、これらの場所で入手可能である。
【0016】
オオズキンカブリタケの抽出物は、オオズキンカブリタケ原料(抽出の対象であるオオズキンカブリタケをいう。)を抽出して得られるものである。抽出には、オオズキンカブリタケのいずれの組織も利用できるが、抽出が容易且つ効率的になることから、オオズキンカブリタケの子実体を用いるとよい。オオズキンカブリタケは、生のままで抽出してもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕等の処理を施してから抽出することが好ましい。
【0017】
抽出方法としては、抽出溶媒に浸漬する方法か、超臨界流体又は亜臨界流体を用いる方法が適用できる。抽出効率を上げるため、撹拌しながら抽出するか、抽出溶媒中においてオオズキンカブリタケ原料をホモジナイザーやミキサー等によって均一化しながら抽出してもよい。
【0018】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール(炭素数6以下のアルコールをいう。);1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン等の溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。なお、水を除く上記抽出溶媒は極性有機溶媒に該当する。
【0019】
抽出溶媒としてはまた、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。更に、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニア等の1種又は2種以上の超臨界流体又は亜臨界流体を用いてもよい。すなわち、水、二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニア等を用いて、オオズキンカブリタケの超臨界抽出又は亜臨界抽出を行ってもよい。
【0020】
抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが適切である。
【0021】
また、抽出は常温(室温、例えば10〜40℃)、常圧(1気圧=約100kPa)で行うことも、オートクレーブ等を用いて高温(例えば、50℃〜200℃、好ましくは50〜150℃)高圧(例えば、100kPa超500kPa以下、好ましくは100kPa超300kPa以下)で行うこともできる。
【0022】
超臨界抽出、亜臨界抽出を行う際は、用いる流体の臨界温度以上且つ臨界圧力以上にて抽出することが好ましい。例えば、超臨界流体として二酸化炭素を用いる場合は、31℃以上且つ7.3MPa以上にて、メタノールを用いる場合は、239℃以上且つ8.1MPa以上にて、水を用いる場合は、374℃以上且つ22.1MPa以上にて抽出することが好ましい。
【0023】
オオズキンカブリタケの抽出として特に好ましいのは、常温常圧下における低級アルコール水溶液(例えば、メタノール水溶液又はエタノール水溶液、特には、エタノール水溶液)による抽出、高温(例えば、50〜200℃、好ましくは、50〜150℃、特には、120℃)高圧(例えば、100kPa超500kPa以下、好ましくは100kPa超300kPa以下)下における水による抽出である。このような抽出を行うことで、細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤、脂肪蓄積抑制剤、アディポネクチン産生促進剤及び血管新生抑制剤としての機能に優れた抽出物を効果的且つ確実に得ることができる。
【0024】
オオズキンカブリタケの抽出物としては、(1)オオズキンカブリタケの抽出液、(2)オオズキンカブリタケの抽出液を濃縮及び/又は乾固した後に水又は極性有機溶媒に再度溶解したもの、(3)オオズキンカブリタケの抽出液に生理作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理又はカラムクロマトグラフィー等による分画処理を施したもの、(4)オオズキンカブリタケの抽出液及び/又は上記処理を施したオオズキンカブリタケの抽出液を凍結乾燥し、使用時に水又は極性有機溶媒に再度溶解して用いられる状態にしたもの等が挙げられる。
【0025】
ここで、オオズキンカブリタケの抽出液とは、オオズキンカブリタケ原料から抽出された成分が抽出溶媒中に分散又は溶解した状態のものをいう。また、上記極性有機溶媒としては、上述した低級アルコール、多価アルコール、エーテル、エステル、ケトン等が挙げられる。
【0026】
オオズキンカブリタケの抽出物は、優れた細胞賦活作用、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、抗酸化作用、メラニン産生抑制作用、脂肪蓄積抑制作用、アディポネクチン産生促進作用及び血管新生抑制作用を有し、皮膚外用剤、細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤、脂肪蓄積抑制剤、アディポネクチン産生促進剤、血管新生抑制剤及び食品として利用することができる。
【0027】
オオズキンカブリタケの抽出物を皮膚外用剤に配合することにより、細胞賦活作用及びコラーゲン産生促進作用に基づき皮膚老化症状の防止又は改善に優れた効果を発揮する老化防止改善用の皮膚外用剤、ヒアルロン酸産生促進作用に基づき肌の保湿に優れた効果を発揮する保湿用皮膚外用剤、抗酸化作用に基づき皮膚の細胞傷害からの保護に優れた効果を発揮する皮膚保護用皮膚外用剤、メラニン産生抑制作用に基づき美白に優れた効果を発揮する美白用皮膚外用剤を得ることができる。皮膚外用剤に配合する際のオオズキンカブリタケの抽出物の配合量は、皮膚外用剤の種類や使用目的等によって調整することができるが、効果や安定性等の点から、皮膚外用剤全量基準で、固形分換算にて、0.0001〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは、0.001〜5.0質量%である。
【0028】
オオズキンカブリタケの抽出物を配合する皮膚外用剤(細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤等として適用できる皮膚外用剤)の剤形は任意であり、例えば、ローション等の可溶化系、クリームや乳液等の乳化系、カラミンローション等の分散系として提供することができる。更に、噴射剤と共に充填したエアゾール、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤形で提供することもできる。
【0029】
なお、オオズキンカブリタケの抽出物を配合する皮膚外用剤には、オオズキンカブリタケの抽出物の他に、必要に応じて、通常医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪用化粧料及び洗浄料に配合される、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、アルコール類等を適宜配合することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、アロマターゼ活性促進剤又はプロテアーゼ活性促進剤との併用も可能である。
【0030】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とする細胞賦活剤は、種々の細胞に対する細胞賦活作用を有するが、特に真皮線維芽細胞及び表皮角化細胞に対して優れた細胞賦活作用を有し、それに基づく抗老化効果を発揮する。細胞賦活剤に用いるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、エタノール水溶液による抽出により得られる抽出物(以下「エタノール抽出物」という。)又は高温高圧下における水による抽出により得られる抽出物(以下「熱水抽出物」という。)が好適である。
【0031】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とするコラーゲン産生促進剤は、種々の細胞において種々のコラーゲン産生促進作用を有するが、特に真皮線維芽細胞におけるコラーゲンI産生に対して優れたコラーゲン産生促進作用を有し、それに基づく抗老化効果を発揮する。コラーゲン産生促進剤に用いるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、エタノール抽出物又は熱水抽出物が好適である。
【0032】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とするヒアルロン酸産生促進剤は、種々の細胞に対するヒアルロン酸産生促進作用を有するが、特に真皮線維芽細胞に対して優れたヒアルロン酸産生促進作用を有し、それに基づく抗老化効果及び保湿効果を発揮する。ヒアルロン酸産生促進剤に用いられるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、特にエタノール抽出物が好適である。
【0033】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とする抗酸化剤は、DPPHラジカル消去作用に基づき優れた抗酸化効果を発揮する。抗酸化剤に用いられるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、エタノール抽出物又は熱水抽出物が好適である。
【0034】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とするメラニン産生抑制剤は、メラニン産生抑制作用に基づく美白作用によって、シミ・ソバカスといった色素沈着症状の改善に優れた効果を発揮する。メラニン産生抑制剤に用いられるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、エタノール抽出物又は熱水抽出物が好適である。
【0035】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とする脂肪蓄積抑制剤は、種々の細胞において種々の脂肪蓄積抑制作用を有するが、特に前駆脂肪細胞における中性脂肪に対して優れた脂肪蓄積抑制作用を有し、それに基づく痩身効果及びメタボリックシンドローム改善効果を発揮する。脂肪蓄積抑制剤に用いられるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、特に熱水抽出物が好適である。
【0036】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤は、種々の細胞に対してアディポネクチン産生促進作用を有するが、特に前駆脂肪細胞に対して優れたアディポネクチン産生促進作用を有し、それに基づくメタボリックシンドローム改善効果及び抗癌効果を発揮する。アディポネクチン産生促進剤に用いられるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、特に熱水抽出物が好適である。
【0037】
オオズキンカブリタケの抽出物を有効成分とする血管新生抑制剤は、優れた血管新生抑制作用を有し、それに基づく抗癌効果を発揮する。血管新生抑制剤に用いられるオオズキンカブリタケの抽出物としては、種々の抽出物が適用でき、エタノール抽出物又は熱水抽出物が好適であり、特にエタノール抽出物が好適である。
【0038】
また、オオズキンカブリタケの抽出物は、美容、健康維持や栄養補給を目的とする食品、飲料及び医薬品にも用いることができる。オオズキンカブリタケの抽出物を配合する食品、飲料及び医薬品の剤形は任意であり、例えば、ドリンク剤や点滴剤などの液剤、ガムや飴などの固形剤、又はカプセル、粉末、顆粒、錠剤などの一般的な剤形で提供することができる。
【0039】
なお、オオズキンカブリタケの抽出物を配合する食品、飲料及び医薬品には、オオズキンカブリタケの抽出物の他に、必要に応じて、通常食品、飲料、医薬品及び医薬部外品に配合される、糖類、塩類、アルコール類、アミノ酸、着色料、香料、甘味料、酸味料、防腐剤、増粘剤、薬剤等を適宜配合することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、アロマターゼ活性促進剤又はプロテアーゼ活性促進剤との併用も可能である。
【実施例】
【0040】
以下に、オオズキンカブリタケの抽出物の製造例、及び各作用を評価するための実験について更に詳細に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0041】
[製造例1] エタノール抽出物
オオズキンカブリタケの子実体の乾燥粉砕物に、質量比で20倍量のエタノール(25容量%、50容量%又は75容量%)を加え、室温にて撹拌しながら3時間抽出した。抽出液中の不溶物を濾過により取り除き、上清を減圧濃縮後、凍結乾燥して、オオズキンカブリタケの25容量%エタノール抽出物、50容量%エタノール抽出物又は75容量%エタノール抽出物を得た。
【0042】
[製造例2] 熱水抽出物
オオズキンカブリタケの子実体の乾燥粉砕物に、質量比で20倍量の精製水を加え、オートクレーブを用いて120℃にて20分間加熱抽出した。抽出液中の不溶物を濾過により取り除き、上清を凍結乾燥して、オオズキンカブリタケの熱水抽出物を得た。
【0043】
上記製造例によって得られたオオズキンカブリタケの抽出物を用いて、各作用を評価するための実験を行った。
【0044】
[実施例1] 真皮線維芽細胞に対する細胞賦活作用の評価実験
この評価実験には、製造例1に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの25容量%エタノール抽出物及び75%容量エタノール抽出物並びに製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト真皮線維芽細胞を1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間培養後、培地を、1質量%FBS添加DMEM培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液に交換し、更に48時間培養した。
【0045】
培養後、サンプル培養液を、MTT試薬を400μg/mL含有するように調整した培地に交換し、更に2時間培養した。MTT(3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)は、細胞内の脱水素酵素により還元されると、テトラゾリウム環が開環して青色の不溶性フォルマザンを生じる。そこで、生じたフォルマザンを2−プロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダーで550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差によって真皮線維芽細胞に対する細胞賦活作用を評価した。なお、サンプル培養液の代わりに1質量%FBS添加DMEM培地を用いたものを(ネガティブ)コントロールとし、5質量%FBS添加DMEM培地を用いたものをポジティブコントロールとした。
【0046】
表1は、オオズキンカブリタケの各抽出物における真皮線維芽細胞に対する細胞賦活作用を、(ネガティブ)コントロールにおける細胞賦活作用を100としたときの相対値として評価した結果を示すものである。表中、t検定における有意確率5%未満(P<0.05)を*で、1%未満(P<0.01)を**で表している。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示されるように、各抽出物において、試料濃度が高くなるにつれて細胞賦活作用が向上する傾向が見られた。特に、試料濃度0.06〜1mg/mLの25容量%エタノール抽出物、及び試料濃度0.25〜1mg/mLの熱水抽出物においては、コントロールと比較して危険率1%未満で有意な細胞賦活作用が認められた。このことから、オオズキンカブリタケのエタノール抽出物及び熱水抽出物は、真皮線維芽細胞に対する優れた細胞賦活作用及びそれに基づく抗老化効果を有することが明らかとなった。
【0049】
[実施例2] HaCaT(表皮角化細胞)に対する細胞賦活作用の評価実験
この評価実験には、製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。ヒト表皮角化細胞株HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間培養後、培地を、5質量%FBS添加DMEM培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液に交換し、更に24時間培養した。
【0050】
培養後、サンプル培養液を、MTT試薬を100μg/mL含有するように調整した培地に交換し、更に2時間培養した。生じたフォルマザンを2−プロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダーで550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差によってHaCaT(表皮角化細胞)に対する細胞賦活作用を評価した。なお、サンプル培養液の代わりに1質量%FBS添加DMEM培地を用いたものをコントロールとした。
【0051】
表2は、オオズキンカブリタケの熱水抽出物におけるHaCaT(表皮角化細胞)に対する細胞賦活作用を、コントロールにおける細胞賦活作用を100としたときの相対値として評価した結果を示すものである。表中、t検定における有意確率5%未満(P<0.05)を*で、1%未満(P<0.01)を**で表している。
【0052】
【表2】

【0053】
表2に示されるように、試料濃度が高くなるに連れて細胞賦活作用が向上した。特に、試料濃度0.5〜1%の熱水抽出物においては、コントロールと比較して危険率1%未満で有意な細胞賦活作用が認められた。このことから、オオズキンカブリタケの熱水抽出物は、HaCaT(表皮角化細胞)に対する優れた細胞賦活作用及びそれに基づく抗老化効果を有することが明らかとなった。
【0054】
[実施例3] I型コラーゲン産生促進作用の評価実験
この評価実験には、製造例1に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの50容量%エタノール抽出物及び製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト真皮線維芽細胞を1ウェル当たり2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間培養後、培地を、0.5質量%FBS添加DMEM培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液に交換し、更に24時間培養した。
【0055】
培養上清中に分泌されたI型コラーゲンの定量は、酵素免疫吸着測定法(ELISA法)を用いて行なった。ELISA法の最終工程で、標識されたペルオキシダーゼに対して、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニア塩(ABTS)及び過酸化水素を添加し反応させ、マイクロプレートリーダーにて405nmの吸光度を測定した。更に、PIERCE社製「BCA Protein Assay Kit」(商品名)にて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのI型コラーゲン産生量を求めることにより、I型コラーゲン産生促進作用を評価した。
【0056】
なお、サンプル培養液の代わりに0.5質量%FBS添加DMEM培地を用いたものを(ネガティブ)コントロールとし、50μMのL−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩(VCPMg)を含有する0.5質量%FBS添加DMEM培地を用いたものをポジティブコントロールとした。
【0057】
表3は、オオズキンカブリタケの各抽出物における真皮線維芽細胞に対するI型コラーゲン産生促進作用を、(ネガティブ)コントロールにおける単位タンパク量当りI型コラーゲン産生量を100としたときの相対値として評価した結果を示すものである。表中、t検定における有意確率5%未満(P<0.05)を*で、1%未満(P<0.01)を**で表している。
【0058】
【表3】

【0059】
表3に示されるように、各抽出物において、試料濃度が高くなるにつれてI型コラーゲン産生促進作用が向上した。特に、試料濃度1mg/mLの50容量%エタノール抽出物、及び試料濃度0.25〜1mg/mLの熱水抽出物においては、コントロールと比較して危険率1%未満で有意なI型コラーゲン産生促進作用が認められた。このことから、オオズキンカブリタケのエタノール抽出物及び熱水抽出物は、真皮線維芽細胞に対する優れたI型コラーゲン産生促進作用及びそれに基づく抗老化効果を有することが明らかとなった。
【0060】
[実施例4] ヒアルロン酸産生促進作用の評価実験
この評価実験には、製造例1に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの50容量%エタノール抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト真皮線維芽細胞を1ウェル当たり2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に0.5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間培養後、培地を、0.5質量%FBS添加DMEM培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液に交換し、更に5日間培養した。
【0061】
培養上清中に分泌されたヒアルロン酸の定量は、プロテオグリカンモノマーを用いた間接ELSA法によって行なった。間接ELISA法の最終工程で、標識されたペルオキシダーゼに対して、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニア塩(ABTS)及び過酸化水素を添加し反応させ、マイクロプレートリーダーにて405nmの吸光度を測定した。
【0062】
更に、BECKMAN社製「Coulter Counter」(商品名)にて各ウェルの細胞数を測定し、又はPIERCE社製「BCA Protein Assay Kit」(商品名)にて各ウェルのタンパク量を測定して、単位細胞数又は単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を求めることにより、ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。
【0063】
なお、サンプル培養液の代わりに0.5質量%FBS添加DMEM培地を用いたものを(ネガティブ)コントロールとし、5質量%FBS添加DMEM培地を用いたものをポジティブコントロールとした。
【0064】
表4は、オオズキンカブリタケの50容量%エタノール抽出物における真皮線維芽細胞に対するヒアルロン酸産生促進作用を、コントロールにおける単位細胞数又は単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を100としたときの相対値として評価した結果を示すものである。表中、t検定における有意確率5%未満(P<0.05)を*で表している。
【0065】
【表4】

【0066】
表4に示されるように、試料濃度が高くなるにつれてヒアルロン酸産生促進作用が向上した。特に、試料濃度0.13〜0.25mg/mLの熱水抽出物においては、コントロールと比較して危険率5%未満で有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。このことから、オオズキンカブリタケのエタノール抽出物は、真皮線維芽細胞に対する優れたヒアルロン酸産生促進作用並びにそれに基づく抗老化効果及び保湿効果を有することが明らかとなった。
【0067】
[実施例5] DPPHラジカル消去作用の評価実験
この評価実験には、製造例1に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの50容量%エタノール抽出物、及び製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。50容量%エタノールによって各試料濃度に調整したサンプル溶液を、96ウェルマイクロプレートに100μLずつ添加した。そこへ、0.2mMの1,1‐ジフェニル‐2‐ピクリルヒドラジル(DPPH)を含むエタノール溶液を100μLずつ添加し、よく混合した後、室温且つ暗所にて10分間又は24時間静置した。その後、DPPHラジカルに由来する516nmの吸光度を測定した。
【0068】
サンプル溶液の代わりに50容量%エタノールを添加した場合の吸光度を(A)、サンプル溶液を添加した場合の吸光度を(B)として、下記式によりラジカル消去率を求めた。
ラジカル消去率={1−(B)/(A)}×100
【0069】
表5は、オオズキンカブリタケの各抽出物におけるDPPHラジカル消去作用を、DPPHを添加してから10分後のラジカル消去率及びDPPHを添加してから24時間後のラジカル消去率によって評価した結果を示すものである。
【0070】
【表5】

【0071】
表5に示されるように、各抽出物におけるラジカル消去率は、DPPHを添加してから10分後よりも24時間後の方が高かった。また、試料濃度が高くなるにつれてラジカル消去率も高くなる傾向が見られた。試料濃度1〜10(mg/mL)の50容量%エタノール抽出物においては、DPPHを添加してから24時間後に、ラジカル消去率が75%以上という強い抗酸化効果が認められた。また、試料濃度1〜10(mg/mL)の熱水抽出物においても、DPPHを添加してから24時間後に、ラジカル消去率が50%以上となり、抗酸化効果が認められた。このことから、オオズキンカブリタケのエタノール抽出物及び熱水抽出物は、優れたDPPHラジカル消去作用及びそれに基づく抗酸化効果を有することが明らかとなった。
【0072】
[実施例6] メラニン産生抑制作用の評価実験
この評価実験には、製造例1に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの75容量%エタノール抽出物、及び製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。
B16マウスメラノーマ(B16F0)細胞を、1ディッシュ当たり18000個となるように90mmディッシュに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間培養後、培地を、5質量%FBS添加DMEM培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液に交換し、更に5日間培養した。
【0073】
サンプル培養液の代わりに5質量%FBS添加DEME培地を用いたものをネガティブコントロールとし、乳酸ナトリウムを50mMの濃度で含有する5質量%FBS添加DMEM培地を用いたものをポジディブコントロールとして培養した。
【0074】
培養終了後、トリプシン処理にて細胞を回収し、1.5mLマイクロチューブに移して遠心操作して細胞沈殿物を得た。得られた沈殿物の黒化状況を肉眼にて目視判定した。表6は、目視判定の基準を示すものである。なお、ネガディブコントロールを判定5、ポジディブコントロールを判定1とし、目視判定の基準とした。
【0075】
また、上記得られた沈殿物に組織溶解剤「Solvable」(商品名)を添加して煮沸した後、室温まで冷却し、分光光度計(HITACHI製分光光度計U−3010)により500nmの吸光度を測定した。表7は、オオズキンカブリタケの各抽出物におけるメラニン産生抑制作用を、上記判定及び500nm吸光度によって評価した結果を示すものである。
【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
表7に示されるように、各抽出物において、試料濃度が高くなるにつれて吸光度の値が減少し、判定結果はポジティブコントロールに近いものとなった。試料濃度0.1mg/mLの75容量%エタノール抽出物及び試料濃度1mg/mL熱水抽出物においては、ポジティブコントロールと比べて僅かな黒化しか見られなかった。このことから、オオズキンカブリタケのエタノール抽出物及び熱水抽出物は、優れたメラニン産生抑制作用及びそれに基づく美白効果を有することが明らかとなった。
【0079】
[実施例7] 中性脂肪蓄積抑制作用の評価実験
この評価実験には、製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。三光純薬株式会社製の皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞「Cryo HPRAD−SQ」(商品名)を1ウェル当り5.0×10個となるように96ウェルプレートに播種した。播種培地には、10質量%のFBS、2mMのL−グルタミン、100units/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを含むPGM培地を用いた。
【0080】
細胞が増殖して密集した状態(コンフリクト)になる直前に、培地交換を行なった。新たな培地としては、10μg/mLのインシュリン、1μMのデキサメタゾン、200μMのインドメタシン、及び500μMの3−イソブチル−1−メチルキサンチンを含むPGM−分化用培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液を用いた。ここで、サンプル培養液の代わりに試料無添加のPGM−分化用培地を用いたものをコントロールとした。
【0081】
この培地にて前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化誘導を開始し、コントロールの細胞が成熟して細胞内に多数の脂肪滴が蓄積されるまで、10日〜14日間培養した。細胞を回収し、10容量%中性緩衝ホルムアルデヒド液を用いて細胞を固定し、PBS(−)にて洗浄した。細胞に0.5質量対容量%のオイルレッドO溶液を添加して、37℃にて2時間培養し、脂肪を染色した。細胞をPBS(−)にて洗浄した後、メタノールによって色素を抽出した。
【0082】
抽出液について、マイクロプレートリーダーで550nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて中性脂肪蓄積量を求めた。更に中性脂肪蓄積量を基に中性脂肪蓄積抑制作用を評価した。表8は、オオズキンカブリタケの熱水抽出物における中性脂肪蓄積抑制作用を、コントロールにおける中性脂肪蓄積抑制作用を100としたときの相対値として評価した結果を示すものである。表中、t検定における有意確率1%未満(P<0.01)を**で表している。
【0083】
【表8】

【0084】
表8に示されるように、試料濃度1mg/mLの熱水抽出物においては、コントロールと比較して危険率1%未満で有意な中性脂肪蓄積抑制作用が認められた。このことから、オオズキンカブリタケの熱水抽出物は、優れた中性脂肪蓄積抑制作用並びにそれに基づく痩身効果及びメタボリックシンドローム改善効果を有することが明らかとなった。
【0085】
[実施例8] アディポネクチン産生促進作用の評価実験
この評価実験には、製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。三光純薬株式会社製の皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞「Cryo HPRAD−SQ」(商品名)を1ウェル当り5.0×10個となるように96ウェルプレートに播種した。播種培地には、10質量%のFBS、2mMのL−グルタミン、100units/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを含むPGM培地を用いた。
【0086】
2日間培養後、培地交換を行なった。新たな培地としては、10μg/mLのインシュリン、1μMのデキサメタゾン、200μMのインドメタシン、及び500μMの3−イソブチル−1−メチルキサンチンを含むPGM−分化用培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液を用いた。ここで、サンプル培養液の代わりに試料無添加のPGM−分化用培地を用いたものをコントロールとした。
【0087】
この培地にて前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化誘導を開始し、コントロールの細胞が成熟して細胞内に多数の脂肪滴が蓄積されるまで、10日〜14日間培養した。培養後、培養上清を回収し、R&D Systems社製「Human Adiponectin/Acrp 30 Immunoassay」(商品名)を用いて、上清中のアディポネクチンを定量した。表9は、オオズキンカブリタケの熱水抽出物におけるアディポネクチン産生促進作用を、コントロールにおけるアディポネクチン量を100としたときの相対値として評価した結果を示すものである。表中、t検定における有意確率5%未満(P<0.05)を*で、1%未満(P<0.01)を**で表している。
【0088】
【表9】

【0089】
表9に示されるように、試料濃度が高くなるにつれアディポネクチン産生促進作用が向上した。特に、試料濃度1mg/mLの熱水抽出物においては、コントロールと比較して危険率1%未満で有意なアディポネクチン産生促進作用が認められた。このことから、オオズキンカブリタケの熱水抽出物は、優れたアディポネクチン産生促進作用並びにそれに基づくメタボリックシンドローム改善効果及び抗癌効果を有することが明らかとなった。
【0090】
[実施例9] 血管新生抑制作用の評価実験
この評価実験には、製造例1に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの50容量%エタノール抽出物、及び製造例2に記載の製造方法によって得られたオオズキンカブリタケの熱水抽出物を試料として用いた。評価は、以下の手順で行った。24ウェルプレートで培養されたクラボウ(株)製の血管新生キットの培地を、血管新生専用培地にて各試料濃度に調整したサンプル培養液に交換し、11日間培養した。その間の4日目及び7日目にサンプル培養液の交換を行なった。培養後、70容量%エタノールにて細胞を固定し、1質量%FBSを含む緩衝液にてブロッキングを行なった。
【0091】
抗CD31を用いた酵素抗体法により管腔染色を行ない、画像処理によって、形成された管腔の面積及び長さを求めた。サンプル培養液の代わりに血管新生専用培地を用いたものを(ネガティブ)コントロールとし、10ng/mLのVEGF−Aを添加した血管新生専用培地を用いたものをポジティブコントロールとした。表10は、オオズキンカブリタケの50容量%エタノール抽出物及び熱水抽出物における管腔の面積及び長さを、(ネガティブ)コントロールにおける管腔の面積及び長さを100としたときの相対値として評価した結果を示すものである。
【0092】
【表10】

【0093】
表10に示されるように、試料濃度0.1mg/mLの50容量%エタノール抽出物においては、コントロールと比較して管腔の面積及び長さの値が著しく低下した。また、熱水抽出物においても、管腔の面積及び長さの値はコントロールよりも低い値を示し、その値は試料濃度が高くなるにつれて低下した。このことから、オオズキンカブリタケのエタノール抽出物及び熱水抽出物は、優れた血管新生抑制作用及びそれに基づく抗癌効果を有することが明らかとなった。
【0094】
実施例1〜9より、オオズキンカブリタケのエタノール抽出物又は熱水抽出物は、優れた細胞賦活作用、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、DPPHラジカル消去作用、メラニン産生抑制作用、脂肪蓄積抑制作用、アディポネクチン産生促進作用又は血管新生抑制作用を有し、それらに基づく抗老化効果、保湿効果、抗酸化効果、美白効果、痩身効果、メタボリックシンドローム改善効果又は抗癌効果を有することが明らかとなった。
【0095】
続いて、本発明に係るオオズキンカブリタケの抽出物を配合した皮膚外用剤(細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤等として適用できる皮膚外用剤)及び飲料の処方例を示す。なお、以下、特に明記しない限り、それぞれの成分の配合量は質量%を意味する。
【0096】
[処方例1]乳液
【表11】

【0097】
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、冷却を開始し、(11)と(12)を順次加え、均一に混合する。
【0098】
[処方例2]化粧水
【表12】

【0099】
[処方例3]クリーム
【表13】

【0100】
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、(11)を加え、冷却を開始し、40℃にて(12)を加え、均一に混合する。
【0101】
[処方例4]美容液
【表14】

【0102】
製法:(1)〜(6)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)〜(13)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、50℃にて(14)と(15)を加える。更に40℃まで冷却し、(16)を加え、均一に混合する。
【0103】
[処方例5]水性ジェル
【表15】

【0104】
製法:(1)を(2)に加え、均一に撹拌した後、(3)を加える。均一に撹拌した後,(4)に予め溶解した(5)を加える。均一に撹拌した後、予め混合しておいた(6)〜(8)を加え、均一に撹拌混合する。
【0105】
[処方例6]クレンジング料
【表16】

【0106】
製法:(1)と(2)を均一に溶解する。これに、(3)と(4)を順次加え、均一に混合する。
【0107】
[処方例7]洗顔フォーム
【表17】

【0108】
製法:(1)〜(4)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(5)〜(7)の水相成分を80℃にて加熱溶解し、油相成分と均一に混合撹拌する。冷却を開始し、40℃にて(8)を加え、均一に混合する。
【0109】
[処方例8]メイクアップベースクリーム
【表18】

【0110】
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(5)〜(7)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解し、これに(8)〜(10)の顔料を加え、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を加え、ホモミキサーにて乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、40℃にて(11)と(12)の成分を加え、均一に混合する。
【0111】
[処方例9]乳液状ファンデーション
【表19】

【0112】
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)〜(10)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解し、これに(11)〜(15)の顔料を加え、ホモミキサーにて均一に分散する。油相成分を加え、乳化を行う。乳化終了後に冷却を開始し、40℃にて(16)と(17)の成分を順次加え、均一に混合する。
【0113】
[処方例10]油中水型エモリエントクリーム
【表20】

【0114】
製法:(5)と(6)を(11)の一部に溶解して50℃とし、50℃に加熱した(4)に撹拌しながら徐々に加える。これを混合した後、70℃にて加熱溶解した(1)〜(3)に均一に分散する。これに(7)〜(10)を(11)の残部に70℃にて加熱溶解したものを撹拌しながら加え、ホモミキサーにて乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、40℃にて(12)を加え、均一に混合する。
【0115】
[処方例11]パック
【表21】

【0116】
製法:(2)と(3)を混合し、80℃に加温した後、80℃に加温した(1)に溶解する。均一に溶解した後、(4)と(5)を加え、撹拌しながら冷却を開始する。40℃まで冷却し、(6)と(7)を加え、均一に混合する。
【0117】
[処方例12]入浴剤
【表22】

【0118】
製法:(1)〜(4)を均一に混合する。
【0119】
[処方例13]ヘアーワックス
【表23】

【0120】
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解後する。一方、(7)〜(10)の水相成分を75℃にて加熱溶解し、前記油相成分を加え、ホモミキサーにて乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、40℃にて(11)と(12)の成分を加え、均一に混合する。
【0121】
[処方例14]ヘアートニック
【表24】

【0122】
製法:(1)〜(4)の成分を混合、均一化する。
【0123】
[処方例15]錠剤
【表25】

【0124】
製法:(1)〜(6)を均一に混合し、打錠機にて圧縮成型して、1錠200mgの錠
剤を得る。
【0125】
[処方例16]散剤
【表26】

【0126】
製法:(1)〜(3)の粉体を混合後、粉砕機にて粉砕し、均一に分散する。
【0127】
[処方例17]ドリンク剤
【表27】

【0128】
製法:(1)〜(9)を順次(10)に添加し、均質化する。
【0129】
以上に示したとおり、本発明によれば、優れた効果を有する細胞賦活剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、抗酸化剤、メラニン産生抑制剤、脂肪蓄積抑制剤、アディポネクチン産生促進剤及び血管新生抑制剤を提供することができる。また、オオズキンカブリタケの抽出物を皮膚外用剤に配合することにより、細胞賦活作用及びコラーゲン産生促進作用に基づき皮膚老化症状の防止又は改善に優れた効果を発揮する老化防止改善用の皮膚外用剤や、ヒアルロン酸産生促進作用に基づき肌の保湿に優れた効果を発揮する保湿用皮膚外用剤や、抗酸化作用に基づき皮膚の細胞傷害からの保護に優れた効果を発揮する皮膚保護用皮膚外用剤や、メラニン産生抑制作用に基づき美白に優れた効果を発揮する美白用皮膚外用剤を提供することができる。更に、オオズキンカブリタケの抽出物を食品、飲料及び医薬品に配合することにより、美容、健康維持や栄養補給に優れた効果を発揮する食品、飲料及び医薬品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とする細胞賦活剤。
【請求項3】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
【請求項4】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項5】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項6】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とするメラニン産生抑制剤。
【請求項7】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とする脂肪蓄積抑制剤。
【請求項8】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とするアディポネクチン産生促進剤。
【請求項9】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とする血管新生抑制剤。
【請求項10】
オオズキンカブリタケ(Ptychoverpa bohemica(Krombh.)Bond.)の抽出物を含有することを特徴とする食品。

【公開番号】特開2008−222664(P2008−222664A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65485(P2007−65485)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】