説明

皮膚殺菌洗浄剤組成物

【課題】多忙な現場での実手洗い時間を考慮した、短時間の使用であっても十分な程度の高い殺菌性を発揮することができる皮膚殺菌洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】(a)成分:トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の殺菌剤、(b)成分:炭素数4〜12の炭化水素基を有するグリセリルエーテル、並びに(c)成分:下記一般式(1)
R−O−(CH2CH2O)n−SO3M (1)で示されるアニオン界面活性剤を0.5〜15.0重量%含有する皮膚殺菌洗浄剤組成物であって、25℃におけるpHが5.5以下である、皮膚殺菌洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短時間の使用であっても高い殺菌効果を発揮する皮膚殺菌洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院、介護施設、食品加工現場及び厨房等において、手指を介して病原菌が伝播感染することを防止する目的で、手洗いの励行が推進されている。このような現場においては、より確実に皮膚の殺菌洗浄を行うために、各種の皮膚殺菌洗浄剤組成物が用いられている。例えば、皮膚(手指)殺菌洗浄料中の殺菌剤を多量に配合した組成物や、エタノールなどの殺菌効果の高い溶剤を配合した組成物がある。
【0003】
特許文献1では、特定のアニオン界面活性剤とトリクロサン、イソプロピルフェノール及び/又はパラクロロキシレノールとの併用により高い殺菌効果が得られ、第三成分としてグリセリルエーテルを含有することにより起泡性、低温安定性に優れる液体殺菌洗浄剤組成物を提案している。
【0004】
また、特許文献2では、物品の表面を殺菌するために、25℃以上の温度でグリセリルエーテルを含有する混合物を使用することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−138027号公報
【特許文献2】特開2004−315537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような現場では、作業者は多忙なことが多く、手洗いに長い時間を割くことは実用的でない。従って本発明の課題は、多忙な現場での実手洗い時間を考慮した、短時間の使用であっても十分な程度の高い殺菌性を発揮することができる皮膚殺菌洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、皮膚殺菌洗浄剤組成物に関する種々の要素について検討した結果、皮膚殺菌洗浄剤組成物のpHを中性域から敢えて酸性域に変更することによって、意外にもより短時間で十分な殺菌性が発揮されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 (a)成分:トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の殺菌剤、(b)成分:炭素数4〜12の炭化水素基を有するグリセリルエーテル、並びに(c)成分:下記一般式(1)
R−O−(CH2CH2O)n−SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜16の脂肪族基であり、nは平均付加モル数を示し、n=0〜3であり、Mはトリエタノールアミン、アンモニウム又はナトリウムである。)で示されるアニオン界面活性剤を0.5〜15.0重量%含有する皮膚殺菌洗浄剤組成物であって、当該組成物(25℃)のpHが5.5以下である、皮膚殺菌洗浄剤組成物;並びに
〔2〕 ハンドソープ、ボディーシャンプー又はヘアーシャンプーに用いられる、前記〔1〕に記載の皮膚殺菌洗浄剤組成物、に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は、洗浄性の効果を有し、かつ短時間の使用であっても高い殺菌性を発揮するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(a)成分>
本発明に用いられる(a)成分は、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の殺菌剤である。本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物中の(a)成分の含有量は、0.05〜1.0重量%が好ましく、0.1〜0.6重量%がより好ましい。殺菌効果を十分に発揮させる観点から、当該含有量は0.05重量%以上が好ましく、組成物の安定性を確保する観点から、当該含有量は1.0重量%以下が好ましい。
【0011】
また、これらの殺菌剤は殺菌性能の点から2種併用するのが好ましく、原料臭の点からトリクロサンとイソプロピルフェノールとを併用することがより好ましい。この場合、トリクロサン/イソプロピルフェノール=5/1〜1/1(重量比)であることが好ましく、4/1〜1/1(重量比)がより好ましい。
【0012】
<(b)成分>
本発明に用いられる(b)成分は、炭素数4〜12の炭化水素基、好ましくは、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するグリセリルエーテルであり、炭素数8〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するモノアルキル体が好ましい。
【0013】
当該アルキル基としては、例えば、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基が挙げられ、好ましくは、炭素数8〜12のアルキル基であり、具体的には2−エチルヘキシル基、イソデシル基が挙げられる。
【0014】
グリセリルエーテルの具体例としては、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル等が挙げられる。(b)成分のグリセリルエーテルは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
皮膚殺菌洗浄剤組成物に(b)成分を配合することによって、洗浄剤組成物の油脂汚れに対する洗浄効果を低下させることなく、大腸菌等の細菌に対する殺菌効果をより一層発揮させるという効果が奏される。
【0016】
皮膚殺菌洗浄剤組成物中の(b)成分の含有量は、0.25〜7.5重量%が好ましく、1.0〜5.0重量%がより好ましい。油脂汚れに対する洗浄効果を低下させることなく、大腸菌等の細菌に対する殺菌効果を発揮させる観点から、当該含有量は0.25重量%以上が好ましく、製品安定性の観点から、当該含有量は7.5重量%以下が好ましい。
【0017】
<(c)成分>
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物における(c)成分は、下記一般式(1)
R−O−(CH2CH2O)n−SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜16の脂肪族基であり、飽和又は不飽和の炭素数8〜16の脂肪族基が好ましく、nは平均付加モル数を示し、n=0〜3であり、Mはトリエタノールアミン、アンモニウム又はナトリウムである。)で示されるアニオン界面活性剤である。Rの炭素数としては、10〜16が好ましい。平均付加モル数nとしては0〜3のものが用いられるが、殺菌性能の観点から、0〜1が好ましい。また、Mで示される対イオンとしては、トリエタノールアミン、アンモニウム又はナトリウムであるが、殺菌性能の観点からアンモニウムが好ましい。
【0018】
具体的な(c)成分としては、ポリオキシエチレン(0)アルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン(アルキル硫酸トリエタノールアミン)、ポリオキシエチレン(0)アルキルエーテル硫酸アンモニウム(アルキル硫酸アンモニウム)、ポリオキシエチレン(0)アルキルエーテル硫酸ナトリウム(アルキル硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレン(1)アルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレン(1)アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレン(2)アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレン(2)アルキルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、泡立ちと殺菌性能、皮膚刺激性の観点から、ポリオキシエチレン(1)アルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン及びポリオキシエチレン(1)アルキルエーテル硫酸アンモニウムが好ましい。なお、本明細書において、これらの化合物のかっこ内の数値はエチレンオキシドの平均付加モル数を意味する。(c)成分として、これらの化合物の一種類を単独で用いてもよく、又は複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物中の(c)成分の含有量は0.5〜15.0重量%であり、3.0〜10.0重量%が好ましい。起泡性、洗浄性を十分に発揮させる観点から、当該含有量は0.5重量%以上が好ましく、(a)成分による殺菌効果を十分に発揮させる観点から、当該含有量は15.0重量%以下が好ましい。
【0020】
(c)成分と(b)成分との重量比としては、(c)/(b)=1/1〜8/1が好ましく、1/1〜5/1がより好ましく、1/1〜4/1がさらに好ましい。油脂汚れに対する洗浄効果を低下させることなく、大腸菌等の細菌に対する殺菌効果を発揮させる観点から、当該重量比は1/1以上が好ましく、製品安定性の観点から、当該重量比は8/1以下が好ましい。
【0021】
<(d)成分>
本発明においては、(d)成分として、安息香酸塩、ソルビン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩及びデヒドロ酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物をさらに含有することが好ましい。(d)成分の含有量としては、殺菌性能のさらなる向上を図る観点から、本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物の0.01〜1.0重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましく、0.1〜0.4重量%がさらに好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0022】
(d)成分を含むことにより、本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物の殺菌性能がさらに向上する点についてのメカニズムは明らかではないが、本発明の組成物のpHがより低くなるほど、(d)成分においては非解離型分子の割合が増加するものと考えられ、本発明の組成物(25℃)のpHが5.5以下となった時に、この非解離型分子が、(a)成分、(b)成分及び/又は(c)成分による殺菌性能に何らかの寄与をするものと推定される。
【0023】
<皮膚殺菌洗浄剤組成物>
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は、水を媒体とする液状であることが望ましい。水の量は、各成分の量に応じて適宜設定することができる。
【0024】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物(25℃)のpHは5.5以下である。pHは、本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物の原液(25℃)を測定することによって求めることができる。従来の皮膚殺菌洗浄剤組成物の多くは、皮膚に対する刺激を抑制する観点から、そのpHを中性域(例えば6〜8)としているが、本発明においては、組成物のpHを敢えて5.5以下に低下させることによって、組成物の殺菌性能のさらなる向上を図っている。皮膚殺菌洗浄剤組成物を酸性域とすることにより、皮膚に対する悪影響(刺激感や手あれ等)が生じることも考えられるが、本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は殺菌性能に優れているので、本発明の組成物の短時間の使用で十分な殺菌性能を発揮することができ、結果的にかかる悪影響を大きく緩和することができる。
【0025】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物(25℃)のpHは、殺菌性向上と皮膚への低刺激とを両立させる観点から、3.0〜5.5が好ましく、3.5〜5.2がより好ましく、4.0〜5.0がさらに好ましい。
【0026】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物(25℃)のpHを5.5以下とすることにより、短時間の使用であっても高い殺菌性を確保できるというメカニズムについて、詳細は明らかではないが、殺菌剤成分が系中のグリセリルエーテルにより菌体表面へ吸着し作用する際、pHが殺菌剤の菌体内部への浸透性に何らかの影響を及ぼしているのではないかと想定される。
【0027】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物のpHを所望の範囲に調整するために用いられるpH調整剤としては、本発明の技術分野において公知のpH調整剤が挙げられるが、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などのヒドロキシ酸が好ましい。
【0028】
さらに本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は、通常の皮膚殺菌洗浄剤組成物に用いられる成分、例えばエタノール等の低級アルコール類;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類;グアーガム等の植物由来の多糖類;キサンタンガム等の微生物由来の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類;染料、顔料等の着色剤;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類;植物エキス類;防腐剤;キレート剤;ビタミン剤;香料;抗炎症剤;酸化防止剤;保湿剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
【0029】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は、通常使用されている容器に充填して使用することが可能であるが、フォーマー容器に充填することにより、起泡性が良く、泡の安定性も良好となるため、フォーマー容器に充填することがより好ましい。
【0030】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は常法に従って製造することができる。例えば(b)成分に(a)成分を溶解させた後、(c)成分、水、(d)成分を添加し、pH調整剤で皮膚殺菌洗浄剤組成物(25℃)のpHが5.5以下になるように製造することができる。各成分の配合量は、上記の各成分の含有量の記載をそのまま配合量の記載として適用することができる。
【0031】
さらに本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は、身体用の液体殺菌洗浄剤として、例えばハンドソープ等の手指用の洗浄剤、ボディーシャンプー及びヘアーシャンプーとして用いられるのが好ましく、ハンドソープ等の手指用の洗浄剤として用いられるのがより好ましく、その適用現場として、病院、介護施設、厨房用途に用いられることが、さらに好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例等における各成分の含有量は有効分を基準として、表1及び表2に重量%で示した。なお、表中の成分比率(c成分/b成分)の数値については、分母(/1)を省略して記載した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
各表中の(c)成分は次のとおりである。
1:ラウリル硫酸アンモニウム
2:ラウリル硫酸トリエタノールアミン
3:ポリオキシエチレン(1)アルキル(C10〜C16)エーテル硫酸アンモニウム
4:ポリオキシエチレン(1)アルキル(C10〜C16)エーテル硫酸トリエタノールアミン
5:ポリオキシエチレン(2)アルキル(C10〜C16)エーテル硫酸アンモニウム
6:ポリオキシエチレン(2)アルキル(C10〜C16)エーテル硫酸ナトリウム
【0036】
(殺菌効果の試験方法と評価基準)
供試菌として、大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を用いた。予め、SCD培地〔日本製薬(株)製〕にて前培養した培養液を準備した。培養液0.1mL(109〜1010cell/mL)を、滅菌水で所定の濃度(組成物希釈倍率×1、×3、×10、×40)に希釈された2mLの各組成物の希釈溶液に接種した。一定時間(15秒、30秒)毎に、各希釈溶液から一白金耳をとり、1mLの生育用液体培地(SCDLP培地〔日本製薬(株)製〕)に接種した。生育用液体培地を37℃で24時間培養した後、菌の生育の有無を観察した。
【0037】
菌の生育の有無の判定は目視で行った。即ち、培養後の培地に濁りが見られた場合、菌が生育したと判定した。一種類の皮膚殺菌洗浄剤組成物につき、4つの希釈濃度と2つの接触時間で殺菌効果の試験を行ったため、合計8の生育用培地に対して目視判定を行った。殺菌効果の判定は、菌の生育が認められなかった生育用培地の個数に応じて次のように行った。菌の生育が全く認められなかった場合(即ち、8の生育用培地の全てについて全く菌の生育が認められなかった場合)を最高点(満点)の8とし、全希釈濃度、全反応時間の生育用培地の全てについて菌の生育が認められた場合を最低点の0とした。即ち、0〜8の間で値が高いほど、当該皮膚殺菌洗浄剤組成物の殺菌効果が高いことを意味する。結果については、一試料について三回試験を行い、得られた値の平均値を殺菌性能として示した。
【0038】
(洗浄効果の試験方法と評価基準)
下記の試料1及び試料2を油脂汚れのモデルとした。
試料1の油脂試料を0.5mL取り、掌に均一に塗布した。各組成物の1mLで手を洗い(洗浄、すすぎ各15秒、水温約30℃、水道水、水量一定)油脂試料の残留感触により以下のように評価した。続いて試料2も同様な方法で評価した。
試料1:スクアラン(深海鮫肝臓抽出油)、試薬、〔東京化成工業(株)製〕
試料2:綿実油、試薬、〔関東化学(株)製〕
【0039】
洗浄効果の評価は5名のパネラーが行った。パネラーには、全ての組成物について、手洗い操作を同様に行うように指示し、各組成物のどれが本発明品でどれが比較品に該当するかを知らせなかった。油脂汚れが完全に落ちた場合を5とし、全く落ちなかったものを1として、1〜5の間の整数で洗浄効果を官能評価した。値が高いほど当該組成物の油脂汚れに対する洗浄効果が高いことを意味する。数値は試料1と試料2の平均値で判定した。
【0040】
実施例1及び比較例1
表1及び表2に示す組成の組成物を常法に従い調製し、殺菌効果の試験と洗浄効果の試験を行った。殺菌効果の試験の結果を表1及び表2に示す。洗浄効果については、本発明品、比較品の全てにおいて、4〜5の範囲であり、これらの組成物は優れた洗浄効果を発揮することが示された。
【0041】
このように、本発明品は実手洗いを想定した極めて短時間(例えば15秒以内)の接触で、大腸菌及び黄色ブドウ球菌を効果的に殺滅していることが分かった。
【0042】
一方、比較品を検討すれば、組成物のpHが酸性域であっても、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の少なくとも一成分を欠いていれば、短時間で十分な殺菌性を発揮できないことが分かった(比較品1、2、4、5及び7)。さらに、pHが中性域の例では、短時間で十分な殺菌性を発揮できず(比較品3及び6)、加えて(a)成分、(b)成分及び(c)成分が含有されていても、所定のpHの範囲外であれば、短時間で十分な殺菌性を発揮できないことが分かった(比較品6)。このように、本発明の構成を完全に満たすことによって初めて、短時間で十分な殺菌効果を発揮する皮膚殺菌洗浄剤組成物が提供できることが分かった。
【0043】
実施例2 (ハンドソープ)
以下に示す組成のハンドソープを常法により製造した。得られたハンドソープの液(25℃)のpHは5.0(25℃)であり、洗浄性に優れかつ殺菌効果の高いものであった。さらに、5名のパネラーが、2週間かけて通常用いるようにして手指を洗浄したところ、全てのパネラーが、刺激感や手あれは生じなかったと回答した。
【0044】
・ポリオキシエチレン(1)アルキル(C10〜C16)エーテル硫酸アンモニウム:5.0(重量%)
・2−エチルヘキシルグリセリルエーテル:2.0(重量%)
・トリクロサン:0.3(重量%)
・イソプロピルメチルフェノール:0.1(重量%)
・プロピレングリコール:5.0(重量%)
・安息香酸ナトリウム:0.3(重量%)
・pH調整剤(クエン酸):適量(ハンドソープがpH5.0となる量)
・精製水:バランス
・合計:100(重量%)
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の皮膚殺菌洗浄剤組成物は、殺菌剤を増量することなく、短い使用時間で高い殺菌効果が奏されるため、病院、介護施設、食品加工現場及び厨房等の現場での使用に好適に適用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の殺菌剤、(b)成分:炭素数4〜12の炭化水素基を有するグリセリルエーテル、並びに(c)成分:下記一般式(1)
R−O−(CH2CH2O)n−SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜16の脂肪族基であり、nは平均付加モル数を示し、n=0〜3であり、Mはトリエタノールアミン、アンモニウム又はナトリウムである。)で示されるアニオン界面活性剤を0.5〜15.0重量%含有する皮膚殺菌洗浄剤組成物であって、25℃におけるpHが5.5以下である、皮膚殺菌洗浄剤組成物。
【請求項2】
(d)成分:安息香酸塩、ソルビン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩及びデヒドロ酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有する、請求項1に記載の皮膚殺菌洗浄剤組成物。
【請求項3】
(c)成分と(b)成分との重量比が(c)/(b)=1/1〜8/1である、請求項1又は2に記載の皮膚殺菌洗浄剤組成物。
【請求項4】
該組成物(25℃)のpHが3.0〜5.5である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚殺菌洗浄剤組成物。
【請求項5】
ハンドソープ、ボディーシャンプー又はヘアーシャンプーに用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚殺菌洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−215570(P2010−215570A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65095(P2009−65095)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】