説明

監視システム

【課題】小型で安価な河川の増水を検出する監視システムを提供する。
【解決手段】受信した電波を電力に変換するエネルギー変換部およびそのエネルギー変換部で発生した電力を利用して記憶部に記憶したID情報を送信するID送信部を備えたID送信装置2と、河川の流水に向けて垂設され、所定の間隔を保持してID送信装置2が配設された増水検出チューブと、電波を発信するとともにID送信装置2から送信されたID情報を受信する無線通信部および前記無線通信部で受信したID情報を記憶する記憶部を備えた増水/強風検出装置1とを設け、その増水/強風検出装置が浸水していないID送信装置2から受信したID情報から導いた河川の増水位を示す情報を監視端末4へ送信し、その監視端末4が受信した河川の増水位を示す情報に基づいて警報を表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の増水による災害を防止するため、その増水の発生を遠隔監視する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、豪雨による河川の増水が頻繁に発生するようになり、鉄道等の公共輸送機関では、増水による事故や危険を回避するため、必要以上に列車の運行を休止させているのが現状である。
このような状況の下、従来の監視システムは、最寄の国土交通省の水位・流量の観測所の観測データに基づいて増水による河川に架かる鉄橋の危険度を判定するようにしていた。また、橋脚の上端部に設置された超音波レベル計等の水位計から河川の水面に向けて信号を発信し、その水面から反射する信号を受信して河川の水位を検出するようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−271402号公報(段落「0026」〜段落「0027」、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、河川の水位を検出する水位計に超音波レベル計等を採用しているため、その水位計が大型な装置となり、また高価なものとなり、すべての鉄橋付近の河川の増水を検出することが困難であるという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、小型で安価な河川の増水を検出する監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのため、本発明は、受信した電波を電力に変換するエネルギー変換部およびそのエネルギー変換部で発生した電力を利用して記憶部に記憶したID情報を送信するID送信部を備えたID送信装置と、河川の流水に向けて垂設され、所定の間隔を保持して前記ID送信装置が配設されたID送信装置固定部材と、電波を発信するとともに浸水していない前記ID送信装置から送信されたID情報を受信する無線通信部および前記無線通信部で受信したID情報を記憶する記憶部を備えた増水検出装置とを設け、前記増水検出装置が前記ID送信装置から受信したID情報から導いた河川の増水位を示す情報を監視端末へ送信し、該監視端末が受信した該情報に基づいて警報を表示するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
このようにした本発明は、小型で安価な河川の増水を検出する監視システムを構成することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して本発明による監視システムの実施例を説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は第1の実施例における監視システムの構成を示すブロック図である。
図1において、1は増水/強風検出装置であり、また2はID送信装置であり、河川の水位の上昇および強風の発生を監視する監視箇所に設置されるものである。
ID送信装置2は自己を識別するための識別コードであるID情報(ID番号)を無線通信で送信することができる安価なICタグ等のRFID(Radio Frequency IDentification)タグで構成されたものである。
【0008】
このID送信装置2は、河川の水位を監視する監視箇所に設置された管状の増水検出チューブの内部に所定の間隔を保持して複数内蔵され、河川の水位の上昇により浸水するとその水流により発信した電波が反射・吸収され、ID情報を送信することができなくなるようになっている。
このID送信装置2に備えられたRFIDタグは、例えばUHF帯の通信周波数を利用し、数mの範囲で無線通信が可能な小型なものとする。したがって、後述する増水検出チューブの内側に所定の間隔で配設することができるようになっている。
【0009】
増水/強風検出装置1は、所定の範囲内に設置されたID送信装置2から無線通信で発信されたID情報を受信することができるものである。
本実施例では、増水/強風検出装置1は各監視箇所に1台、ID送信装置2は増水検出チューブの内部に複数配設されたものとして説明する。
4は監視端末であり、各監視箇所に設置された増水/強風検出装置1を集中して監視する集中監視センタ等に設置されるものである。この監視端末4は、CPU(Central Processing Unit)等の演算および制御手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段(記憶部)、キーボード、マウス等の入力手段、液晶ディスプレイ等の表示手段および通信手段等を備えるものである。
【0010】
また、この監視端末4は通信回線3および図示しないサーバ等を介して増水/強風検出装置1等の他の装置と相互に通信可能に接続され、増水/強風検出装置1から受信した通知(情報)に基づいて警報等を表示手段に表示する。
なお、記憶手段は各監視箇所に存在するすべてのID送信装置2のID情報を予め記憶しているものとする。
【0011】
このように監視システムは、増水/強風検出装置1、ID送信装置2、および監視端末4等で構成されている。
次に、増水/強風検出装置1の構成を図2の第1の実施例における増水/強風検出装置の構成を示すブロック図に基づいて説明する。
図2において、11は強風検出部であり、受けた風を回転運動に変換する風車111、その風車111の回転運動から風速を検知する風速計112で構成され、所定の風速を超えた強風が発生したことを検出するものである。
【0012】
12は無線通信部であり、図示しない電源部に蓄えた電力を利用し、アンテナ121を介してID送信装置2へ電力を供給するための電波を発信し、またその電波を受けたID送信装置2が送信したID情報を受信するものである。
13は記憶部であり、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段である。この記憶部13は増水/強風検出装置1が設置された監視箇所に存在するすべてのID送信装置2のID情報を予め記憶し、また増水/強風検出装置1全体の動作を制御する制御プログラム(ソフトウェア)等を記憶する。
【0013】
さらに、記憶部13はID送信装置2から受信したID情報を記憶する。
14は通信部であり、通信回線3を介して監視端末4等との間で行う通信を制御するものである。
15は制御部であり、CPU等の演算および制御手段等で構成されたものである。この制御部15は強風検出部11、無線通信部12、記憶部13、および通信部14を含めて増水/強風検出装置1全体の動作を記憶部13に格納された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて制御する。
【0014】
なお、本実施例では、増水/強風検出装置1として説明するが、強風検出部11を備えることなく、無線通信部12、記憶部13、および通信部14で構成された増水検出装置としてもよい。
また、増水/強風検出装置1は、予め充電された蓄電池を備えた電源部を有するものとするが、図示しない電源装置から電力が供給されるように構成してもよい。
【0015】
次に、ID送信装置2の構成を図3の第1の実施例におけるID送信装置の構成を示すブロック図に基づいて説明する。
図3において、21はエネルギー変換部であり、増水/強風検出装置1の無線通信部12から発信された電波を受信すると、例えば電磁誘導作用等を利用し、その電波を電気エネルギーに変換してID送信装置2全体に電力を供給する。これによりID送信装置2は動作が可能な状態になる。
【0016】
22はID送信部であり、エネルギー変換部21により供給された電力を利用して記憶部に記憶された固有のID情報を送信する。
23は記憶部であり、ID送信部22が送信する固有のID情報を予め記憶し、またID送信装置2全体の動作を制御する制御プログラム(ソフトウェア)等を記憶する。
24は制御部であり、CPU等の演算および制御手段等で構成されたものである。この制御部24はエネルギー変換部21、ID送信部22、および記憶部23を含めてID送信装置2全体の動作を記憶部23に格納された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて制御する。
【0017】
このように構成された増水/強風検出装置1およびID送信装置2は例えば図4に示すように設置される。図4は第1の実施例における増水/強風検出装置およびID送信装置の設置例を示す説明図であり、増水が発生することを監視する監視箇所を列車が通過する鉄橋付近にしたものである。
図4において、41は列車が通過する鉄橋を示し、その付近に1台の増水/強風検出装置1と複数のID送信装置2が所定の間隔を保持して配設されたID送信装置固定部材としての増水検出チューブ31が設置されている。
【0018】
増水検出チューブ31は、河川の水位を監視するため、例えば鉄橋の橋梁から河川の流水の水面や水底に向けて垂設され、両端部が開口した管状(円筒状)のものであり、その内部に所定の間隔(例えば、10cm間隔、20cm間隔、または30cm間隔等)を保持して異なるID情報を記憶する複数のID送信装置2が所定の順序で固着されているものである。例えば、この増水検出チューブ31の内部には、図4に示すように上部から下部に向けてID情報が「1」のID送信装置2、ID情報が「2」のID送信装置2、ID情報が「3」のID送信装置2、ID情報が「4」のID送信装置2、・・・、ID情報が「X」のID送信装置2がそれぞれ固着されている。
【0019】
また、増水検出チューブ31は、内部に固着されたID送信装置2との間に間隙が形成され、その間隙が水路となるように構成されている。例えば、ID送信装置2を板状や直方体状に形成して増水検出チューブ31の内部に固着するものとする。
河川の水位の上昇により増水検出チューブ31内のID送信装置2が浸水するとその水流により発信した電波が反射・吸収されるため、浸水したID送信装置2は、増水/強風検出装置1へID情報を送信することができなくなるようになっている。したがって、増水/強風検出装置1は浸水していないID送信装置2との間で無線通信が可能になっている。
【0020】
増水検出チューブ31内の浸水していない複数のID送信装置2は増水/強風検出装置1との間で無線通信可能な通信範囲42内に設置され、増水/強風検出装置1の無線通信部12から発信された電波を受信したID送信装置2は記憶部23に記憶されたID情報を送信し、増水/強風検出装置1の無線通信部12はそのID情報を受信することができるものとする。また、増水/強風検出装置1は通信回線3を介して監視端末4と通信可能に接続されている。
【0021】
一方、鉄橋41付近で増水が発生すると増水/強風検出装置1は、増水検出チューブ31内の浸水したID送信装置2との間で無線通信することができなくなる。
例えば、増水検出チューブ31内にID情報が「1」のID送信装置2、ID情報が「2」のID送信装置2、ID情報が「3」のID送信装置2、ID情報が「4」のID送信装置2、・・・、ID情報が「X」のID送信装置2がそれぞれ固着されている場合において、「1」から「3」までのID情報を受信し、「4」から「X」までのID情報が受信できないとき、増水検出チューブ31内のID情報が「4」のID送信装置2が配設された位置まで浸水(増水)していることを検出することができる。
【0022】
なお、ID送信装置2はRFIDタグ等で構成されているため、増水検出チューブ31を小型化することができ、鉄橋41の橋脚や入口付近等の設置場所に限定されることなく設置することができる。
上述した構成の作用について説明する。
図5は第1の実施例における増水検出処理を示すフローチャートであり、図中Sで表すステップにしたがって説明する。
【0023】
なお、各実施例において以下に説明する各部の動作は、図示しないメモリや磁気ディスク等の記憶手段に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない中央処理装置等の制御手段により制御される。
S1a、S2a:集中監視センタの監視端末4は、例えば気象庁からの警報や注意情報により増水の可能性があると判断された監視箇所の増水/強風検出装置1へ増水の監視を開始させるための動作開始指示を送信する。
【0024】
S3a:増水/強風検出装置1が動作開始指示を受信すると制御部15の指示により無線通信部12は電波を発信する。
S4a、S5a:監視箇所に設置されたそれぞれのID送信装置2のエネルギー変換部21はその電波を受信し、受信した電波を電気エネルギーに変換して装置全体に電力を供給する。
【0025】
S6a:受信した電波を電気エネルギーに変換して動作可能になったID送信装置2の制御部24の指示によりID送信部22は記憶部23に予め記憶したID情報を送信する。
ここで、増水により浸水したID送信装置2は増水/強風検出装置1へID情報を送信するができない。
【0026】
S7a、S8a:増水/強風検出装置1の制御部15の指示により無線通信部12がそれぞれのID送信装置2からID情報を受信すると制御部15は受信したID情報を順次記憶部13に記憶させる。
増水/強風検出装置1の無線通信部12は浸水していないそれぞれのID送信装置2からID情報を受信し、そのID情報を記憶部13に記憶させることができ、一方、浸水したID送信装置2からID情報を受信することができないためそのID情報は記憶部13に記憶されない。
【0027】
S9a:増水/強風検出装置1の制御部15は所定の時間が経過するまでそれぞれのID送信装置2から受信したID情報を記憶部13に記憶させる。
なお、この所定の時間は通信範囲に存在するすべてのID送信装置2からID情報を受信するのに充分な時間を確保してあるものとする。
S10a:所定の時間が経過すると増水/強風検出装置1の制御部15は記憶部13に記憶させたID情報の順列である通信可能ID番号列を生成する。
【0028】
S11a:増水/強風検出装置1の制御部15の指示により通信部14は生成した通信可能ID番号列を河川の増水位を示す情報として集中監視センタの監視端末4へ送信する。
S12a:監視端末4は受信した通信可能ID番号列と予め記憶部に記憶しておいた監視箇所に設置したID送信装置2の通信可能ID番号列とを比較し、その通信可能ID番号列に変動があるか否かを判定する。
【0029】
S13a:通信可能ID番号列に変動があると判定すると監視端末4はその変動数に応じて増水による危険度(例えば変動数が大きいと危険度が高く、少ないと危険度は低い等)を判定し、その危険度に応じた警報、例えば列車の停止指令や徐行指令等を表示部に表示させる。
一方、通信可能ID番号列に変動がないと判定すると監視端末4は警報等の表示を行うことなく処理を終了する。
【0030】
ここで、監視端末4は、受信した通信可能ID番号列が所定の順序でない場合、増水以外の外乱(ID送信装置2の故障や脱落等)が発生していることを検知するようにし、高い精度で増水を検出することができる。
例えば、増水検出チューブ31の内部に、図4に示すように上部から下部に向けてID情報が「1」のID送信装置2、ID情報が「2」のID送信装置2、ID情報が「3」のID送信装置2、ID情報が「4」のID送信装置2、・・・、ID情報が「X」のID送信装置2が順に固着されている場合において、通信可能ID番号列が、ID情報「1」、ID情報「3」、ID情報「4」、・・・、ID情報「X」のとき、すなわちID情報「2」だけが受信できないとき、増水でなく外乱による通信可能ID番号列の変動と判定し、一方通信可能ID番号列が、ID情報「1」、ID情報「2」、ID情報「3」のとき、ID情報が「4」のID送信装置2まで浸水(増水)したことによる通信可能ID番号列の変動と判定する。
【0031】
なお、本実施例では、監視端末4の記憶部に予め記憶する通信可能ID番号列を監視箇所に設置したときの増水検出チューブ31内に配設されたID送信装置2のID番号列とするが、ID送信装置2から受信したID番号列で順次更新して前回の処理で通信可能であったID番号列とするようにしてもよい。
以上説明したように、第1の実施例では、増水の発生を監視する監視場所に設置されたID送信装置は小型で安価なRFIDタグ等で構成するようにし、またID送信装置から増水/強風検出装置が受信した通信可能ID番号列に応じて増水による危険度を判定するようにしたことにより、小型で安価な監視システムを構成することができるという効果が得られる。
【0032】
また、ID送信装置はRFIDタグ等で構成されているため、小型化することができ、設置場所が限定されることなく、監視箇所のあらゆる場所に設置することが可能になり、局所的に発生する増水をも検出することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0033】
第2の実施例の構成は、監視箇所に設置した増水検出チューブ31内に配設されたID送信装置2のID番号列を増水/強風検出装置1の記憶部13に予め記憶しておくように構成したことが第1の実施例の構成と異なる。なお、上述した第1の実施例と同様な部分は同一の符号を付してその説明を省略する。
図6は第2の実施例における増水/強風検出装置の構成を示すブロック図である。
【0034】
図6において、131は、ID送信装置2のID番号列であり、記憶部13に予め記憶されるものである。このID送信装置2のID番号列131は、監視箇所に設置した増水検出チューブ31内に配設されたID送信装置2のID番号を順列にしたがって記憶するものである。
例えば、監視箇所に設置した増水検出チューブ31の内部に、図4に示すように上部から下部に向けてID情報が「1」のID送信装置2、ID情報が「2」のID送信装置2、ID情報が「3」のID送信装置2、ID情報が「4」のID送信装置2、・・・、ID情報が「X」のID送信装置2が順に固着されている場合、ID番号列131は、ID情報=「1」、ID情報=「2」、ID情報=「3」、ID情報=「4」、・・・、ID情報=「X」の順序でID送信装置2のID番号列131を記憶するものとする。
【0035】
上述した構成の作用について説明する。
図7は第2の実施例における増水検出処理を示すフローチャートであり、図中Sで表すステップにしたがって説明する。
S1b〜S10b:図5におけるS1a〜S10aと同様なのでその説明を省略する。
S11b:増水/強風検出装置1の制御部15は生成した通信可能ID番号列と予め記憶部13に記憶しておいた監視箇所に設置したID送信装置2のID番号列131とを比較し、その列に変動があるか否かを判定する。
【0036】
S12b:通信可能ID番号列に変動があると判定すると制御部15はその変動数に応じて増水による危険度(例えば変動数が大きいと危険度が高く、少ないと危険度は低い等)を判定し、制御部15の指示により通信部14はその危険度を河川の増水位を示す情報として警報を表示することを依頼する通知を集中監視センタの監視端末4へ送信する。
S13b:監視端末4は受信した通知にしたがって警報、例えば列車の停止指令や徐行指令等を表示部に表示させる。
【0037】
なお、S11bにおいて通信可能ID番号列に変動がないと判定すると制御部15は警報を表示することを依頼する通知の送信を指示することなく処理を終了する。
ここで、増水/強風検出装置1の制御部15は、生成した通信可能ID番号列が所定の順序でない場合、増水以外の外乱(ID送信装置2の故障や脱落等)が発生していることを検知するようにし、高い精度で増水を検出することができる。
【0038】
例えば、増水検出チューブ31の内部に、図4に示すように上部から下部に向けてID情報が「1」のID送信装置2、ID情報が「2」のID送信装置2、ID情報が「3」のID送信装置2、ID情報が「4」のID送信装置2、・・・、ID情報が「X」のID送信装置2が順に固着されている場合において、通信可能ID番号列が、ID情報「1」、ID情報「3」、ID情報「4」、・・・、ID情報「X」のとき、すなわちID情報「2」だけが受信できないとき、増水でなく外乱による通信可能ID番号列の変動と判定し、一方通信可能ID番号列が、ID情報「1」、ID情報「2」、ID情報「3」のとき、ID情報が「4」のID送信装置2まで浸水(増水)したことによる通信可能ID番号列の変動と判定する。
【0039】
なお、本実施例では、ID送信装置2のID番号列131を監視箇所に設置したときの増水検出チューブ31内に配設されたID送信装置2のID番号列としたが、ID送信装置2から受信したID番号列で順次更新して前回の処理で通信可能であったID番号列とするようにしてもよい。
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、監視箇所に設置した増水検出チューブ内に配設されたID送信装置のID番号列を増水/強風検出装置の記憶部に予め記憶し、増水/強風検出装置が増水を検出したときのみに集中監視センタの監視端末へ増水による危険度を通知するようにしたことにより、通信回線上のトラフィック量や集中監視センタ側の負荷を大幅に低減させることができるという効果が得られる。
【実施例3】
【0040】
第3の実施例の構成は、第1の実施例および第2の実施例の構成と増水検出チューブの構成が異なるものである。なお、上述した第1の実施例と同様な部分は同一の符号を付してその説明を省略する。
図8および図9は、第3の実施例における増水検出チューブの構成を示す説明図である。
【0041】
図8(a)は増水検出チューブ31の平面図、図8(b)は増水検出チューブ31の側断面図であり、板状に形成されたID送信装置2の両端部が管状に形成された増水検出チューブ31(管状体)の内周面に固定されている。
32は管状体としての増水検出チューブ31の側部に形成された開口部であり、33はその管状体としての増水検出チューブ31の内部に埋め込まれ、開口部32を閉塞する遮蔽部材である。この遮蔽部材33は、増水検出チューブ31の端部(上端部または下端部)から引き出すことができるように構成されており、増水検出チューブ31から引き出すと開口部32を開放する。
【0042】
26a、26bはID送信装置2の両側部に設けられたアンテナである。アンテナ26a、26bは、回転軸27a、27bを回転支点として回動自在になっており、また図示しないバネやスプリング等の付勢部材でID送信装置2の外側に向けて付勢されている。
なお、本実施例では、アンテナはID送信装置2の両側部に設けたものとして説明するが、一方の側部に設けるようにしてもよい。
【0043】
図8は増水検出チューブ31の内部に遮蔽部材33が埋め込まれた状態を示しており、開口部32はその遮蔽部材33により閉塞されるとともにID送信装置2のアンテナ26a、26bは遮蔽部材33に当接して増水検出チューブ31の内部に収納されている。
このように増水検出チューブ31の内部に遮蔽部材33を埋め込むことにより、UHF帯を利用する場合のように十数センチメートル程度のアンテナを必要とする場合であってもID送信装置2のアンテナ26a、26bを増水検出チューブ31の内部に収納することができ、増水検出チューブ31を設置場所まで容易に輸送することができるようになる。
【0044】
図9(a)は遮蔽部材33を引き出した増水検出チューブ31の平面図、図9(b)はその増水検出チューブ31の側断面図であり、ID送信装置2のアンテナ26a、26bが増水検出チューブ31の開口部32から外側に突出した状態を示している。
遮蔽部材33を増水検出チューブ31から引き出すと開口部32が開放されるとともにその遮蔽部材33に当接していたID送信装置2のアンテナ26a、26bは図示しない付勢部材により図中矢印Aおよび矢印Bが示す方向へ回動して増水検出チューブ31の開口部32から外側に突出する。
【0045】
このように構成された増水検出チューブ31は、設置場所まで輸送した後、遮蔽部材33が引き出されることにより、ID送信装置2のアンテナ26a、26bを増水検出チューブ31の外側に突出させることができ、増水/強風検出装置1はID送信装置2との間で通信が可能になる。
なお、第3の実施例における増水検出処理は第1の実施例および第2の実施例と同様なのでその説明を省略する。
【0046】
以上説明したように、第3の実施例では、増水検出チューブはID送信装置のアンテナを内部に収納することができるようにしたことにより、その増水検出チューブを設置場所まで容易に輸送することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施例における監視システムの構成を示すブロック図
【図2】第1の実施例における増水/強風検出装置の構成を示すブロック図
【図3】第1の実施例におけるID送信装置の構成を示すブロック図
【図4】第1の実施例における増水/強風検出装置およびID送信装置の設置例を示す説明図
【図5】第1の実施例における増水検出処理を示すフローチャート
【図6】第2の実施例における増水/強風検出装置の構成を示すブロック図
【図7】第2の実施例における増水検出処理を示すフローチャート
【図8】第3の実施例における増水検出チューブの構成を示す説明図
【図9】第3の実施例における増水検出チューブの構成を示す説明図
【符号の説明】
【0048】
1 増水/強風検出装置
2 ID送信装置
3 通信回線
4 監視端末
11 強風検出部
111 風車
12 無線通信部
121 アンテナ
13 記憶部
14 通信部
15 制御部
21 エネルギー変換部
22 ID送信部
23 記憶部
24 制御部
26a、26b アンテナ
31 増水検出チューブ
32 開口部
33 遮蔽部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した電波を電力に変換するエネルギー変換部およびそのエネルギー変換部で発生した電力を利用して記憶部に記憶したID情報を送信するID送信部を備えたID送信装置と、
河川の流水に向けて垂設され、所定の間隔を保持して前記ID送信装置が配設されたID送信装置固定部材と、
電波を発信するとともに浸水していない前記ID送信装置から送信されたID情報を受信する無線通信部および前記無線通信部で受信したID情報を記憶する記憶部を備えた増水検出装置とを設け、
前記増水検出装置が前記ID送信装置から受信したID情報から導いた河川の増水位を示す情報を監視端末へ送信し、該監視端末が受信した該情報に基づいて警報を表示するようにしたことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1の監視システムにおいて、
前記増水検出装置は、前記ID送信装置から受信したID情報の順列を前記河川の増水位を示す情報として前記監視端末へ送信するようにしたことを特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項1の監視システムにおいて、
前記増水検出装置は、予め記憶部に記憶した前記ID送信装置固定部材に配設されたID送信装置のID情報の順列と、前記ID送信装置から受信したID情報とを比較して導いた河川の増水位を示す情報を前記監視端末へ送信するようにしたことを特徴とする監視システム。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の監視システムにおいて、
前記ID送信装置固定部材を、所定の間隔を保持して前記ID送信装置を内部に固着するとともに前記ID送信装置との間に間隙を形成する管状体としたことを特徴とする監視システム。
【請求項5】
請求項4の監視システムにおいて、
前記ID送信装置固定部材は、管状体の側部に形成された開口部と、前記開口部を開閉させる遮蔽部材を前記管状体の内部に引き出し可能に備え、
前記ID送信装置は、前記開口部から外側へ突出するように付勢されたアンテナを備え、
前記遮蔽部材を管状体から引き出して前記開口部を開放させ、前記ID送信装置のアンテナを前記開口部から突出させるようにしたことを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−97504(P2010−97504A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269116(P2008−269116)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(591089556)株式会社 沖情報システムズ (276)
【Fターム(参考)】