説明

直交型組付装置

【課題】大型化を招くことなく、ワークを移動させることのできる範囲を拡大可能な直交型組付装置を提供する。
【解決手段】レールとレールに沿って移動する移動部材からなるX軸、Y軸、Z軸ローダによって、ワークWを把持するワーク把持部16を移動させる。さらに、ワーク把持部16をワークWに接触して把持するマニュピレータ部16aと、このマニュピレータ部16aをX軸、Y軸、Z軸のうち少なくとも一つの軸方向へ移動させるマニュピレータ稼働部16bによって構成する。これにより、X軸、Y軸、Z軸ローダによってワークWを移動させることのできる範囲に加えて、マニュピレータ稼動部16bによる移動範囲を拡大できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに直交する3つの軸方向にワークを移動させる直交型組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、ワーク把持部にてワークを把持し、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3つの軸方向に把持したワークを移動させる3軸式の直交型組付装置が開示されている。さらに、特許文献1には、この直交型組付装置を、ワーク(部品)を組付対象物の所望の部位へ組み付ける組付手段として用いた例が開示されている。
【0003】
具体的には、特許文献1の直交型組付装置は、水平面上にX軸およびY軸を定義し、鉛直方向をZ軸と定義したときに、部品が載せられたパレットをY軸方向に移動させる平板面(ステージ)を有する移動ステージ機構、ワーク把持部をZ軸方向に移動させるZ軸ローダ、および、ワーク把持部およびZ軸ローダをX軸方向に移動させるX軸ローダを備えて構成されている。
【0004】
そして、組付手段として用いる際には、移動ステージ機構を作動させることによってパレット上に載せられた部品をワーク把持部が把持可能な位置へ移動させ、さらに、X軸ローダおよびZ軸ローダを作動させることによってワーク把持部を移動させて、把持された部品をパレットから組付対象物の所望の部位へ移動させている。
【0005】
なお、X軸ローダおよびZ軸ローダは、それぞれ軸方向に延びるレールを有し、レールの長手方向一端側から他端側へ至る範囲内で、ワーク把持部をレールに沿って移動させる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−64287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の直交型組付装置は、特許文献1にも記載されているように、複数台並べられて1つの製造ラインを形成するために用いられる。組付対象物には複数の部品が取り付けられるので、複数の直交型組付装置をそれぞれの部品を組み付ける専用組付手段として用いるとともに、それぞれの部品の組み付けと同時に、その他の加工(例えば、接着剤の塗布)を施す加工手段として直交型組付装置を用いることができるからである。
【0008】
ところが、特許文献1の直交型組付装置のように、部品が載せられたパレットをY軸方向に移動させる移動ステージ機構を採用すると、移動ステージ機構が稼動した際に他の直交型組付装置と干渉しないように、それぞれの直交型組付装置同士を間隔を開けて配置しなければならない。そのため、製造ライン全体として大型化してしまうことが問題となる。
【0009】
このような製造ライン全体としての大型化を抑制する手段として、移動ステージ機構を廃止して、X軸ローダおよびZ軸ローダと同様の構成のY軸ローダで、ワーク把持部をY軸方向に移動させる手段が考えられる。しかしながら、ローダの稼動範囲はレールの軸方向長さによって決定されてしまうため、ワーク把持部の移動範囲が狭くなり、ワーク把持部がワークを移動させることのできる範囲が狭くなってしまう点で問題となる。
【0010】
上記点に鑑み、本発明では、大型化を招くことなく、ワークを移動させることのできる範囲を拡大可能な直交型組付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ワーク(W)を把持するワーク把持部(16)と、ワーク把持部(16)を、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3つのうちX軸方向に移動させるX軸ローダ(13)と、ワーク把持部(16)を、Y軸方向へ移動させるY軸ローダ(14)と、ワーク把持部(16)を、Z軸方向へ移動させるZ軸ローダ(15)とを備える直交型組付装置であって、
ワーク把持部(16)は、ワーク(W)に接触して把持するマニュピレータ部(16a)、および、マニュピレータ部(16a)を前記X軸、前記Y軸、前記Z軸の3つのうち少なくとも一つの軸方向に移動させるマニュピレータ稼働部(16b)を有している直交型組付装置を特徴とする。
【0012】
これによれば、ワーク把持部(16)を、それぞれX軸、Y軸、Z軸ローダ(13、14、15)にて、移動させるので、複数の直交型組付装置を一方向に並べて配置して製造ラインを形成した際に、移動ステージ機構を採用する場合のように移動ステージ機構と他の直交型組付装置との干渉を考慮する必要がなく、それぞれの直交型組付装置を隣接配置できる。従って、製造ラインの大型化を抑制できる。
【0013】
さらに、ワーク把持部(16)がマニュピレータ稼働部(16b)を有しているので、マニュピレータ部(16a)に把持されたワーク(W)を移動させることのできる範囲をX軸、Y軸、Z軸のうち少なくとも一つの軸方向に拡大することができる。従って、大型化を招くことなく、ワーク(W)を移動させることのできる範囲を拡大することができる。
【0014】
なお、本請求項における「マニュピレータ部(16a)」には、複数の先端部によってワーク(W)を挟み込むように把持する機構、負圧を発生させてワーク(W)を吸着して把持する機構等、ワーク(W)と接触して把持する機構が広く含まれる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の直交型組付装置において、マニュピレータ部(16a)は、複数設けられており、マニュピレータ稼働部(16b)は、前記マニュピレータ部(16a)同士の距離を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、マニュピレータ部(16a)が複数設けられているので、同時に複数のワーク(W)を移動させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の直交型組付装置において、稼動部(16b)は、X軸、Y軸、Z軸の3つのうち少なくとも一つの軸方向にスライドさせるスライド機構によって構成されていてもよい。また、請求項4に記載の発明のように、請求項1または2に記載の直交型組付装置において、マニュピレータ稼働部(16b)は、X軸、Y軸、Z軸の3つのうちマニュピレータ部(16a)の移動方向とは異なる方向を中心軸として回転する回転機構によって構成されていてもよい。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の直交型組付装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施形態の直交型組付装置の上面図である。
【図3】第1実施形態のワーク把持部の正面図である。
【図4】第1実施形態の部品製造ラインの外観斜視図である。
【図5】第2実施形態のワーク把持部の外観斜視図である。
【図6】他の実施形態におけるマトリックストレイとワーク把持部に把持されるケースの順序を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図4を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の直交型組付装置10の外観斜視図であり、図2は、直交型組付装置10の上面図、すなわち図1のZ軸方向上方側から見た図である。直交型組付装置10は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3つの軸方向にワークWを移動させるものである。
【0021】
従って、直交型組付装置10は、ワークWを組付対象物に組み付ける部品組付手段として用いられるだけでなく、例えば、ワークWをパレットに収納する部品排出手段等として用いることもできる。つまり、本実施形態の「直交型組付装置」という用語は、部品組付手段という意味に限定されることなく、様々な用途に用いることのできる汎用装置の総称として用いられている。
【0022】
本実施形態の直交型組付装置10では、図1に示すように、水平面上に互いに直交するX軸およびY軸が定義され、鉛直方向(上下方向)にZ軸が定義される。直交型組付装置10は、略直方体状の金属製の筐体であるベース11を備え、このベース11に、コンベア12、X軸ローダ13、Y軸ローダ14、Z軸ローダ15およびワーク把持部16等が取り付けられることによって構成されている。
【0023】
まず、ベース11は、直交型組付装置10の下方側に位置付けられ、その上面(天盤面)11aは水平面を形成している。この上面11aは、コンベア12等が取り付けられる際、あるいは、複数のワークWを収納するマトリックスパレット17が配置される際の定盤となる。
【0024】
マトリックスパレット17は、平板状部材に複数の凹み部17aを形成したもので、それぞれの凹み部17aにワークWが1個ずつ収容される。また、マトリックスパレット17は、ベース11の後面側(図1ではX軸方向紙面奥側)に配置されるパレタイザ(パレット搬送装置)18によって、ベース11の上面11aに配置され、ワークWの取出あるいは収納の完了後、ベース11の上面11aから撤去される。
【0025】
また ベース11の内部には、コンベア12、X軸ローダ13、Y軸ローダ14、Z軸ローダ15およびワーク把持部16等の作動を制御する図示しない制御装置等が収容されている。さらに、ベース11の前面側(図1ではX軸方向紙面手前側)には、ユーザが操作信号を入力する操作信号入力手段および直交型組付装置10の作動状態を表示する作動状態表示手段としての機能を兼ね備える操作パネル11bが取り付けられている。
【0026】
なお、本実施形態のベース11のX軸方向の奥行寸法は、700〜800mm程度であり、Y軸方向の幅寸法は、200mm〜300mm程度であり、Z軸方向の高さ寸法は、700mm〜800mm程度である。
【0027】
次に、コンベア12は、ワークWあるいは組付対象物等をY軸方向に搬送して位置決めする搬送手段であり、ベース11の上面11a上に配置されている。本実施形態では、コンベア12として、樹脂あるいはゴム製の輪状のベルトを電動モータにて回転させることによって、当該ベルトの上に搬送用トレイ12aを載せて移動させる、いわゆるベルトコンベアを採用している。
【0028】
もちろん、駆動用のローラを電動モータで回転させることによって、ローラの上に載せられた平板状の搬送用トレイ12aをローラの回転方向に移動させるローラ型搬送機構を採用してもよい。
【0029】
なお、本実施形態のコンベア12では、ワークWあるいは組付対象物等をY軸方向に搬送するので、ローラの回転軸はX軸方向に平行となる。また、本実施形態では、2台のコンベア12b、12cをX軸方向に2台並べて配置している。もちろん、コンベア12の数はこれに限定されない。
【0030】
さらに、本実施形態の各コンベア12b、12cの搬送方向は、逆方向になっており、一方のコンベアは、搬送用トレイ12a上にワークWあるいは組付対象物等が載せられて部品組付用等に用いられ、他方のコンベアは、ワークWあるいは組付対象物等が回収された後の空になった搬送用トレイ12aを戻すリターン用に用いられている。もちろん、コンベア12b、12cの搬送方向を同一方向として、双方のコンベア12b、12cを部品組付用等に用いてもよい。
【0031】
また、ベース11の上面11aには、Z軸方向に向かって延びる支柱11cが設けられている。この支柱11cは、X軸ローダ13を支持する支持部材であり、本実施形態では、2本の支柱によってX軸ローダ13を支持している。
【0032】
X軸ローダ13は、X軸方向に延びるX軸方向ガイドレール13a、X軸方向ガイドレール13aに沿ってX軸方向に移動するX軸方向移動部材13b等を有して構成されている。より具体的には、X軸方向ガイドレール13aの内部には、電動モータ、この電動モータに直結されて回転駆動されるシャフト、シャフトを回転可能に支持する軸受部等(いずれも図示せず)が配置されている。
【0033】
さらに、シャフトの外表面にはネジ山が形成されており、X軸方向移動部材13bには、このシャフトが螺合されるネジ穴が形成されている。また、X軸方向移動部材13bは、X軸方向ガイドレール13aに嵌め込まれることによって、X軸周りの回転が規制されている。従って、電動モータがシャフトを回転させると、X軸方向移動部材13bをX軸方向ガイドレール13aに沿って移動させることができる。
【0034】
X軸ローダ13のX軸方向移動部材13bには、Y軸ローダ14が連結されている。Y軸ローダ14の基本的構成は、X軸ローダ13と同様である。従って、Y軸ローダ14も、Y軸方向に延びるY軸方向ガイドレール14a、Y軸方向ガイドレール14bに沿ってY軸方向に移動するY軸方向移動部材14b等を有して構成されている。
【0035】
さらに、Y軸ローダ14のY軸方向移動部材14bには、Z軸ローダ15が連結されている。Z軸ローダ15の基本的構成は、X軸、Y軸ローダ13、14と同様である。従って、Z軸ローダ15も、Z軸方向に延びるZ軸方向ガイドレール15a、Z軸方向ガイドレール15aに沿ってZ軸方向に移動するZ軸方向移動部材15b等を有して構成されている。
【0036】
Z軸ローダ15のZ軸方向ガイドレール15aの最下端部には、ワークWを把持するワーク把持部16が連結されている。従って、Z軸ローダ15は、ワーク把持部16をZ軸方向へ移動させる機能を果たし、X軸ローダ13は、ワーク把持部16をZ軸ローダ15とともにX軸方向へ移動させる機能を果たし、Y軸ローダ14は、ワーク把持部16をX軸、Z軸ロータ13、15とともにY軸方向へ移動させる機能を果たす。
【0037】
ワーク把持部16の詳細構成については、図3を用いて説明する。なお、図3は、ワーク保持部16を図1のX軸方向から見た正面図である。ワーク把持部16は、図3に示すように、ワークWに接触して把持する2つのマニュピレータ部16aと、2つのマニュピレータ部16aの少なくとも一方をX軸方向に移動させて、2つのマニュピレータ部16a同士のY軸方向距離を変化させるマニュピレータ稼働部16bを有している。
【0038】
マニュピレータ部16aは、複数個の先端爪部16cを有している。そして、これらの先端爪部16cを、マニュピレータ部16aの内部に配置された小型電動アクチュエータによって駆動し、先端爪部16c同士の相対距離を変化させることで、ワークWを把持し、あるいは、把持しているワークWを開放することができる。
【0039】
つまり、先端爪部16c同士の距離を拡大した状態で(すなわち、複数の先端爪部16cを開いた状態で)、先端爪部16cをワークWの外周側に移動させ、先端爪部16c同士の距離を縮小することで(すなわち、複数の先端爪部16cを閉じることで)、ワークWの外周側を摘んで把持することができる。さらに、ワークWを保持した状態で、先端爪部16c同士の距離を拡大することで、把持しているワークWを開放することができる。
【0040】
マニュピレータ稼働部16bは、その軸方向がY軸方向に平行な円筒状のシリンダ16d、シリンダ16の内部にY軸方向に移動可能に嵌挿されたピストン16e、および、シリンダ16d内部に配置されてピストン16eをシリンダ16dの内部に収容する方向に荷重を付加するスプリング等を有するスライド機構で構成されている。
【0041】
さらに、2つのマニュピレータ部16aのうち一方がシリンダ16dに連結され、他方がピストン16eに連結され、シリンダ16dの内部には、図示しない開閉弁を介して高圧空気が導入可能に構成されている。
【0042】
従って、開閉弁を開いてシリンダ16d内部に高圧空気が導入されることによって、図3の実線に示すように、スプリングの荷重に逆らってピストン16eがシリンダ16dの内部から外部側へ移動する。これにより、2つのマニュピレータ部16a同士のシリンダ16dの軸方向の距離、すなわちY軸方向距離を拡大させることができる。
【0043】
そして、シリンダ16d内部の高圧空気を開放すると、図3の破線に示すように、スプリングの荷重によってピストン16eがシリンダ16dの内部へ戻る。これにより、2つのマニュピレータ部16a同士のシリンダ16dの軸方向の距離が縮小させることができる。
【0044】
次に、図4を用いて、上記構成の直交型組付装置10を複数台並べて形成した部品製造ライン100について説明する。具体的には、本実施形態の部品製造ライン100は、4台の直交型組付装置10をY軸方向に並べて形成したものであり、内部に電子部品が組み付けられる基板を有するカップ状のケースに対して、電子部品である半導体チップを組み付ける電子部品組付製造ラインとして形成されている。
【0045】
なお、図4は、部品製造ライン100の外観斜視図であり、以下の説明では、4台の直交型組付装置10を区別するために、それぞれの直交型組付装置10を組付工程の順に第1〜第4直交型組付装置10a〜10dと表現する。
【0046】
部品製造ライン100において、第1〜第4直交型組付装置10a〜10dのコンベア12は、複数のローラを組み合わせて構成される連結部によって、連結されている。従って、コンベア12によって搬送される搬送用トレイ12aは、第1直交型組付装置10aのコンベア12→第2直交型組付装置10bのコンベア12→第3直交型組付装置10cのコンベア12→第4直交型組付装置10dのコンベア12の順に搬送される。
【0047】
まず、第1直交型組付装置10aでは、X軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、ベース11の上面11aに配置されたケース用のマトリックスパレット17に収納されているケースを把持できる位置へ、ワーク把持部16を移動させる。そして、2つのマニュピレータ部16aの先端爪部16cを開いた状態から閉じることにより、2つのマニュピレータ部16aが、それぞれ1個のケースを摘むように把持する。
【0048】
ここで、本実施形態のケースは、Z軸方向から見たときの外径が10mm〜30mm程度の大きさとなっており、ケース用のマトリックスパレット17に収納されたケースは、Y軸方向に60mm程度の間隔で収納されている。そこで、本実施形態では、マニュピレータ稼働部16bのシリンダ16d内部へ導入する高圧空気の量を調整して、2つのマニュピレータ部16aのY軸方向距離を、マトリックスパレット17に収納されたケースの間隔に適合する寸法に拡大させている。
【0049】
その後、再びX軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、搬送用トレイ12a上の所望の部位へ、ケースを把持した状態のワーク把持部16を移動させる。そして、2つのマニュピレータ部16aの先端爪部16cを開くことにより、それぞれのマニュピレータ部16aに把持されたケースが、コンベア12によって搬送される2つの搬送用トレイ12a上に配置される。
【0050】
この際、マニュピレータ稼働部16bのシリンダ16d内部へ導入する高圧空気の量を調整して、2つのマニュピレータ部16aのY軸方向距離を、2つの搬送用トレイ12aの間隔に適合する寸法に拡大させている。従って、双方の搬送用トレイ12aの所望の部位へ、それぞれのケースを配置することができる。
【0051】
上記の説明から明らかなように、本実施形態の第1直交型組付装置10aは、ワークWを所望の場所へ順次配置する部品投入手段として用いられている。さらに、第1直交型組付装置10aにおけるワークWはケースとなる。
【0052】
次に、第2直交型組付装置10bでは、X軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、ワーク把持部16を移動させることによって、予めベース11の上面11aに配置された接着剤容器に蓄えられている接着剤を、ワーク把持部16のマニュピレータ部16aのZ軸方向下方側の先端に設けられたスタンプ部に付着させる。
【0053】
その後、再びX軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、搬送用トレイ12a上のケース内の基板上の所望の部位へワーク把持部16を移動させる。これにより、スタンプ部に付着した接着剤をケース内の基板上の所望の部位へ塗布する。
【0054】
上記の説明から明らかなように、本実施形態の第2直交型組付装置10bは、搬送用トレイ12a上に配置されたケース内の基板上の所望の部位へ接着剤を塗布する接着剤塗布手段(加工手段)として用いられている。なお、本実施形態では、接着剤を塗布する際に、1つのケース内の基板上に接着剤を塗布しているが、もちろん、2つのマニュピレータ部16aの先端にそれぞれにスタンプ部を設け、2つのケース内の基板上に同時に接着剤を塗布してもよい。
【0055】
次に、第3直交型組付装置10cでは、X軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、ベース11の上面11aに配置された半導体チップ用のマトリックスパレット17に収納されている半導体チップを把持できる位置へ、ワーク把持部16を移動させる。そして、2つのマニュピレータ部16aの先端爪部16cを開いた状態から閉じることにより、2つのマニュピレータ部16aが、それぞれ1個のケースを摘むように把持する。
【0056】
ここで、本実施形態の半導体チップは、Z軸方向から見たときの外観が、1辺が2mm〜5mm程度の四角形となっている。このため、半導体チップ用のマトリックスパレット17に収納された半導体チップは、Y軸方向に30mm程度の間隔で収納されている。そこで、本実施形態では、マニュピレータ稼働部16bのシリンダ16d内部の高圧空気を開放して、2つのマニュピレータ部16aのY軸方向距離を、第1直交型組付装置10aよりも縮小させて、半導体チップの間隔に適合させている。
【0057】
その後、再びX軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、搬送用トレイ12a上の所望の部位へ、半導体チップを把持した状態のワーク把持部16を移動させる。そして、2つのマニュピレータ部16aの先端爪部16cを開くことにより、それぞれのマニュピレータ部16aに把持された半導体チップが、ケース内の基板上の所望の部位、すなわち第2直交型組付装置10bにて接着剤が塗布された部位に組み付けられる。
【0058】
この際、本実施形態では、マニュピレータ稼働部16bのシリンダ16d内部へ導入する高圧空気の量を調整して、2つのマニュピレータ部16aのY軸方向距離を、2つの搬送用トレイ12aの間隔に適合する寸法に拡大させている。従って、2つのケース内の基板上の所望の部位へ、同時に半導体チップを組み付けることができる。
【0059】
上記の説明から明らかなように、本実施形態の第3直交型組付装置10cは、ワークWを組付対象部の所望の部位へ順次組み付ける部品組付手段として用いられている。さらに、第3直交型組付装置10cにおけるワークWは半導体チップであり、組付対象物は、ケースとなる。
【0060】
次に、第4直交型組付装置10dでは、X軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、第3直交型組付装置10cにて、半導体チップが配置された2つの搬送用トレイ12a上のケースを把持できる位置へ、ワーク把持部16を移動させる。そして、2つのマニュピレータ部16aの先端爪部16cを開いた状態から閉じることにより、2つのマニュピレータ部16aが、それぞれ1個のケースを摘むように把持する。
【0061】
その後、再びX軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15を作動させて、パレタイザ18によって配置されたケース用のマトリックスパレット17の凹み部17a内へ移動させる。そして、2つのマニュピレータ部16aの先端爪部16cを開くことにより、それぞれのマニュピレータ部16aに把持された2つのケースが、ケース用のマトリックスパレット17の凹み部17a内に同時に収納される。
【0062】
この際、前述の如く、ケース用のマトリックスパレット17では、Y軸方向に60mm程度の間隔で凹み部17aにケースを収納するので、マニュピレータ稼働部16bのシリンダ16d内部へ導入する高圧空気の量を調整して、2つのマニュピレータ部16aのY軸方向距離を、ケース用のマトリックスパレット17の凹み部17aの間隔に適合する寸法に拡大させている。
【0063】
つまり、本実施形態の第4直交型組付装置10dは、ワークWを所望の場所へ順次収納する部品排出手段として用いられている。さらに、第4直交型組付装置10dにおけるワークWは半導体チップの組み付けられたケースとなる。
【0064】
さらに、第4直交型組付装置10dにおいて、複数のケースが収納されたマトリックスパレット17は、パレタイザ18によって第4直交型組付機10dの上面11aから撤去され、図示しない他の製造ラインへ移送される。
【0065】
本実施形態の直交型組付装置10は、上記の如く、部品投入手段、接着剤塗布手段、部品組付手段あるいは部品排出手段として用いることができる。さらに、本実施形態の直交型組付装置10では、以下のような優れた効果を得ることができる。
【0066】
すなわち、本実施形態の直交型組付装置10では、ワーク把持部16を、それぞれX軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15にて移動させるので、複数の直交型組付装置10a〜10dをY軸方向に並べて配置して部品製造ライン100を形成した際に、ワーク把持部16の移動手段として移動ステージ機構を採用する場合のように移動ステージ機構と他の直交型組付装置との干渉を考慮する必要がない。従って、それぞれの直交型組付装置10a〜10dを隣接配置できる。その結果、部品製造ライン100の大型化を抑制できる。
【0067】
さらに、ワーク把持部16が、マニュピレータ稼働部16bを有しているので、マニュピレータ部16aに把持されたワークWを移動させることのできる範囲を、Y軸ローダ14によって移動させることのできる範囲よりも、Y軸方向に拡大することができる。従って、大型化を招くことなく、ワークWを移動させることのできる範囲を拡大することができる。
【0068】
また、本実施形態の直交型組付装置10よれば、マニュピレータ部16aが2つ設けられているので、同時に複数のワークWを移動させることができる。しかも、マニュピレータ稼働部16bを有しているので、2つのマニュピレータ部16a同士のY軸方向距離を変化させることができる。
【0069】
このように、2つのマニュピレータ部16a同士の距離を変化させることができることは、上述の第1、第3、第4直交型組付装置10a、10c、10dで説明したように、ワーク把持部16にて把持するマトリックスパレット17に収納される2つのワークW同士の距離が異なって配置されていても、2つのワークWを容易に、かつ、同時に把持できる点で極めて有効である。
【0070】
さらに、ケースや電子部品のように異なる部品毎に専用のマトリックスパレット17を用いることができるので、例えば、電子部品用のマトリックスパレット17を不必要に大型化させる必要も生じない。
【0071】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図5に示すように、ワーク把持部16の構成を変更した例を説明する。なお、図5は、本実施形態のワーク把持部16の外観斜視図であり、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
【0072】
具体的には、本実施形態のワーク把持部16では、マニュピレータ稼働部16bとして、Z軸方向と平行な回転軸を中心に回転する電動モータ(例えば、ステッピングモータ)16fと、電動モータ16fのシャフトとマニュピレータ部16aと連結するギア部16gからなる回転機構を採用している。
【0073】
ギア部16gは、複数のギアあるいはベルトによって構成されて、電動モータ16fの回転を相殺するように、マニュピレータ部16aをZ軸周りに回転可能に支持するものである。さらに、ギア部16fは、電動モータ16fの回転軸とマニュピレータ部16aの回転軸とを偏心させて、マニュピレータ部16aを支持している。
【0074】
従って、電動モータ16fが回転すると、電動モータ16fの回転軸を中心にマニュピレータ16aが回転する。つまり、マニュピレータ16aがX軸方向およびY軸方向に移動する。この際、ギア部16fの機能によって、マニュピレータ16aの向き、および、マニュピレータ16aに把持されたワークWの向きは変化しない。
【0075】
すなわち、本実施形態では、マニュピレータ稼働部16bを、マニュピレータ16aの移動方向であるX軸方向およびY軸方向とは異なる方向であるZ軸方向を中心軸として回転する回転機構によって構成している。直交型組付装置10のその他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0076】
従って、本実施形態のワーク把持部16を採用しても、第1実施形態と同様に、大型化を招くことなく、ワークWを移動させることのできる範囲の稼動範囲を拡大することができる。
【0077】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0078】
(1)上述の実施形態では、水平面上に互いに直交するX軸およびY軸を定義し、鉛直方向(上下方向)にZ軸を定義しているが、各軸の方向はこれに限定されず、適宜定義することができる。また、マニュピレータ稼働部16bによって移動されるマニュピレータ部16aの移動方向についても、上述の実施形態におけるX軸方向あるいはY軸方向に限定されず、Z軸方向としてもよい。
【0079】
つまり、マニュピレータ稼働部16bによるマニュピレータ部16aの移動は、X軸、Y軸、Z軸ローダ13、14、15によるワーク把持部16の移動範囲を拡大するものであるから、マニュピレータ部16aの移動方向は、移動範囲を拡大させたい方向を適宜選択すればよい。
【0080】
(2)上述の各実施形態では、マニュピレータ部16aとして、複数の先端爪部16cによってワークWを挟み込むように把持する機構を採用しているが、マニュピレータ部16aはこれに限定されない。例えば、負圧を発生させてワークWを吸着して把持する吸引機構や、ワークWが磁性材であって残留磁束の影響が懸念されない場合には、電磁力を発生させてワークWを吸引する電磁石を採用してもよい。
【0081】
(4)上述の第1実施形態では、マニュピレータ部16aを2つ設けているが、第2実施形態の如く、マニュピレータ部16aを1つとしてもよい。この場合には、シリンダ16d側に連結されるマニュピレータ部16aを廃止して、ピストン16e側に連結されるマニュピレータ16aのみとすればよい。
【0082】
(5)上述の第1実施形態では、部品製造ライン100を形成する際に、第2直交型組付装置10bを接着剤塗布手段(加工手段)として用いているが、もちろん、接着剤塗布手段として本発明の直交型組付装置を採用することなく別の装置を採用してもよい。また、本発明の直交型組付装置は、部品投入手段、接着剤塗布手段、部品組付手段あるいは部品排出手段以外の用途に用いてもよい。
【0083】
(6)上述の第1実施形態では、ケース用のマトリックスパレット17として、Y軸方向に60mm程度の間隔でケースを収容する構成のものを採用しているが、ケース用のマトリックスパレット17はこれに限定されない。
【0084】
例えば、Y軸方向にケースの外径とほぼ同寸法の間隔で、ケースを収容するものを採用してもよい。これによれば、ケース用のマトリックスパレット17に収容できるケースの数を増加させて、部品製造ライン100の製造効率を向上させることができる。
【0085】
また、Y軸方向にケースの外径とほぼ同寸法の間隔で、ケースを収容するケース用のマトリックスパレット17を採用した際には、例えば、第1直交型組付装置10aのワーク把持部16にて、隣り合うケースを把持するのではなく、例えば、図6のα→β→γのように、2つおきに配置されたケースを順次把持するようにしてもよい。このことは、第4直交型組付装置10dにおいても同様とすることができる。
【0086】
また、半導体チップ用のマトリックスパレット17についても、Y軸方向に半導体チップの外形とほぼ同寸法の間隔で、半導体チップを収容するものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
13 X軸ローダ
14 Y軸ローダ
15 Z軸ローダ
16 ワーク把持部
16a マニュピレータ部
16b マニュピレータ稼動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)を把持するワーク把持部(16)と、
前記ワーク把持部(16)を、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3つのうちX軸方向に移動させるX軸ローダ(13)と、
前記ワーク把持部(16)を、前記Y軸方向へ移動させるY軸ローダ(14)と、
前記ワーク把持部(16)を、前記Z軸方向へ移動させるZ軸ローダ(15)とを備える直交型組付装置であって、
前記ワーク把持部(16)は、前記ワーク(W)に接触して把持するマニュピレータ部(16a)、および、前記マニュピレータ部(16a)を前記X軸、前記Y軸、前記Z軸の3つのうち少なくとも一つの軸方向に移動させるマニュピレータ稼働部(16b)を有していることを特徴とする直交型組付装置。
【請求項2】
前記マニュピレータ部(16a)は、複数設けられており、
前記マニュピレータ稼働部(16b)は、前記マニュピレータ部(16a)同士の距離を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の直交型組付装置。
【請求項3】
前記マニュピレータ稼働部(16b)は、前記X軸、前記Y軸、前記Z軸の3つのうち少なくとも一つの軸方向にスライドさせるスライド機構によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の直交型組付装置。
【請求項4】
前記マニュピレータ稼働部(16b)は、前記X軸、前記Y軸、前記Z軸の3つのうち前記マニュピレータ部(16a)の移動方向とは異なる方向を中心軸として回転する回転機構によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の直交型組付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115917(P2012−115917A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265449(P2010−265449)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】