説明

直動回転アクチュエータおよびシステム

【課題】トルクや推力を増大させることができる直動回転アクチュエータを提供する。
【解決手段】界磁とする永久磁石や鉄心歯を備えた可動子と、回転θ方向に極ピッチλの回転磁界を発生するθ電機子巻線と直動X方向に極ピッチγの進行磁界を発生するX電機子巻線を備えた固定子とで構成されるとともに、θ電機子巻線とX電機子巻線に電流を通電し、θ方向にトルク、X方向に推力を発生させて可動子の回転動作と直動動作を行う直動回転アクチュエータにおいて、可動子の界磁に、複数のN極を磁極表面に有する複N極円筒部211aと、複数のS極を磁極表面に有する複S極円筒部211bを備え、複N極円筒部のN極と複S極円筒部のS極の磁極間隔がX方向にγ、θ方向にλとなるように複N極円筒部と複S極円筒部を配置するとともに、複N極円筒部と複S極円筒部の間にX方向を磁化方向とする永久磁石を配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのアクチュエータで、回転と移動の2つのモーションを精密に行う直動回転アクチュエータおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直動回転アクチュエータとして、以下の3つの構成がある。
(1)回転モータで回転軸にトルクを発生させ、回転モータとボールネジとの組合せによる直動機構で直動軸に推力を発生させる。回転軸と直動軸を軸受で結合し、回転軸と直動軸のどちらかを出力軸として回転動作と直動動作を行う。回転用と直動用の2つの回転モータを直動方向に並べて配置する。(例えば、特許文献1、特許文献2)
(2)回転モータの回転軸にリニアモータを結合し、リニアモータの推力を発生する直動軸を出力軸として回転動作と直動動作を行う。回転モータの内側にリニアモータを取り付ける構成となるため、直動方向にモータを並べて配置することがなく、(1)に比べ小形化することができる。(例えば、特許文献3)
(3)回転モータとリニアモータの電機子巻線を同心円状に重ね合わせ、出力軸に直接トルクと推力を発生させ回転動作と直動動作を行う。(1)や(2)のように軸受を結合した複雑な機構を持たないために、さらに小形化でき、組立を容易にすることができる。(例えば、特許文献4、特許文献5)
以下、最も特徴的に優れる上記(3)の構成を例に、従来技術の詳細を説明する。
【0003】
図15は従来技術を示す直動回転アクチュエータの側面から見た断面図である。図16は可動子の界磁部を側面から見た断面図とX方向から見た断面図である。なお、X方向から見た断面図は、側面から見た断面図のA、B部における断面図となっている。また、図中の矢印(→)は永久磁石の磁化方向を表しており、極性はS→Nとなっている。固定子100は、円筒状のモータフレーム101、電機子コア102、θ電機子巻線103、X電機子巻線104が同心円状に設けられている。さらに、モータフレーム101の上部にはθ電機子巻線103とX電機子巻線104に外部から電力を供給するためのモータ端子105が設けられ、モータフレーム101の左端にはLブラケット107、右端には反Lブラケット108が取り付けられている。Lブラケット107と反L側ブラケット108にはそれぞれスライドロータリーブッシュ106が取り付けられている。一方、可動子200は、出力軸201、界磁部202から構成されている。界磁部202は、円筒状の界磁ヨーク203の外周に複数のブロック状の永久磁石(以下、ブロック磁石と呼ぶ)250a、250bが設けられている。なお、ブロック磁石250aは外周側N極、内周側S極に磁化されており、ブロック磁石250bはその逆に磁化されている。ブロック磁石250a、250bは空隙を介してX電機子巻線104と対向している。出力軸201は、スライドロータリーブッシュ106により支持され、固定子100に対し回転θ方向と直動X方向に移動可能となっている。また、出力軸201に負荷(図示しない)を取り付けることができ、負荷をθ方向とX方向に自在に移動させることができるようになっている。
【0004】
図17は、図16における電機子巻線と永久磁石の配置関係を示した展開図である。ブロック磁石250aと250bは各6個で構成されている。ブロック磁石250aはθ方向に2λ(λはθ方向極ピッチ=電気角180度)ごとに配置され、同じくブロック磁石250bもθ方向に2λごとに配置されている。さらに、ブロック磁石250aと250bはθ方向にλ、X方向にγ(γはX方向極ピッチ=電気角180度)だけずれて配置されている。よって、界磁の磁極数はθ方向が12極、X方向が2極となっている。θ電機子巻線103とX電機子巻線104は、ブロック磁石250a、250bと空隙を介して、黒太線で模擬的に示したような配置となっている。θ電機子巻線103は、コイルエンド部が円弧状の形をした集中巻きのコイル(以下、俵形コイル103aと呼ぶ)がU、V、W相各々3個ずつ、計12個により構成されている。俵形コイル103aがθ方向に配置される間隔はλ×4/3(電気角240度)である。同相同士の俵形コイル103aの間隔は電気角720度となっているので、3個の同相の俵形コイル103aは電流の向きが3個とも同じ向きとなるように結線されている。一方、X電機子巻線104は、円筒状に集中巻きされたリング形コイル104aがU、V、W相各々4個ずつ、計12個により構成されている。リング形コイル104aのX方向に配置される間隔はγ/3(電気角60度)であり、X電機子巻線104のX方向全体の長さは4γ(=γ/3×12個)である。同相同士のリング形コイル104aの間隔はγ(電気角180度)となっているので、4個の同相のリング形コイル104aは電流の向きが正、逆、正、逆となるように結線されている。
【0005】
このように構成された直動回転アクチュエータは、θ電機子巻線103に電流を流すことによりブロック磁石250a、250bの作る磁界との作用で可動子200にトルクを発生し、また、X電機子巻線104に電流を流すことによりブロック磁石250a、250bの作る磁界との作用で可動子200に推力が発生する。図16は、θ電機子巻線103やX電機子巻線104にそれぞれU相が最大となる位相で電流を通電した図であり、図示した矢印方向に電流が流れることで、ローレンツ力が発生し、可動子200はθ+方向にトルク、X+方向に推力を発生する。このようにして、可動子200は回転と直動の両方向の動作を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3360023号公報(第6頁、図1)
【特許文献2】特開2003−111351号公報(第5頁、図1)
【特許文献3】特開2004−364348号公報(第3頁、図1)
【特許文献4】特開2004−343903号公報(第4頁、図1)
【特許文献5】特開2005−20885号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記(1)〜(3)の従来の直動回転アクチュエータには、以下の問題があった。
(1)回転軸と直動軸を軸受で結合し、回転軸と直動軸のどちらかを出力軸として回転動作と直動動作を行う構成となっているため、機構が複雑となり、組立が困難であった。また、回転用と直動用の2つの回転モータを直動方向に並べて配置するため、直動回転アクチュエータの体格が大きくなった。
(2)回転モータの内側にリニアモータを取り付ける構成となっているため(1)に比べ小形化することができるが、回転軸と直動軸を軸受で結合する機構には代わりが無く、(1)同様、機構が複雑となり組立が困難であった。
(3)(1)や(2)のような軸受を結合する複雑な機構でないために、組立を容易にすることができる。しかし、これにも以下のような問題があった。
・同極のブロック磁石を大きな空隙をあけて2λごとに配置させ、さらに異極のブロック磁石をλずらして配置させているため、磁極表面に現れるギャップ磁束密度が小さく、大きなトルクと推力を得ることができなかった。
・一般に、ブロック磁石の取り付けは接着で行う。しかし、高速回転の場合にはブロック磁石に発生する遠心力が接着力に打ち勝ち、ブロック磁石が飛散する恐れがあった。
・ブロック磁石は円筒状の界磁ヨークの表面に接着して固定されるが、多数あるために接着時に位置ずれが生じた。その結果、推力リプルやトルクリプルが生じた。
・可動子の角度θや位置Xを検出する検出器を備えていないために、実際の角度θや位置Xの値を用いた速度、位置フィードバック制御による駆動ができなかった。実際の角度θと位置Xを得るには、θ方向とX方向の動作範囲内で検出可能な検出器が必要となる。しかし、従来からあるθ方向の検出器やX方向の検出器は、検出方向と異なる方向の動作に対する検出可能範囲が非常に狭かった。そのため、θ方向の検出器とX方向の検出器を単に組み合わせただけの構成では、θ方向とX方向の広い動作範囲内で角度θと位置Xを同時に検出することができなかった。その結果、可動子の精密な回転動作と直動動作を実現することができなかった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、トルクや推力を大きくすることが可能な直動回転アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
本発明の一態様に係る直動回転アクチュエータは、界磁とする永久磁石もしくは鉄心歯を備えた可動子と、回転θ方向に極ピッチλの回転磁界を発生するθ電機子巻線と直動X方向に極ピッチγの進行磁界を発生するX電機子巻線を備えた固定子とで構成されるとともに、前記θ電機子巻線と前記X電機子巻線に電流を通電し、θ方向にトルク、X方向に推力を発生させて前記可動子の回転動作と直動動作を行う直動回転アクチュエータであって、前記可動子の界磁に、複数のN極を磁極表面に有する複N極円筒部と、複数のS極を磁極表面に有する複S極円筒部を備え、前記複N極円筒部のN極と前記複S極円筒部のS極の磁極間隔がX方向にγ、θ方向にλとなるように前記複N極円筒部と前記複S極円筒部を配置するとともに、前記複N極円筒部と前記複S極円筒部の間にX方向を磁化方向とする永久磁石を配置したものである。
例えば、前記複N極円筒部と前記複S極円筒部の表面に永久磁石を配置してもよい。
また、前記複N極円筒部と前記複S極円筒部の表面に軟磁性材の鉄心を設け、前記鉄心に永久磁石を埋め込んでもよい。これにより、高速回転の場合でも、永久磁石の飛散を防ぐことができる。また、鉄心形状や永久磁石の多極着磁によって精度良く磁極位置が決まるので、従来のブロック磁石の位置ずれによる推力リプルやトルクリプルの発生を抑制できる。
また、本発明の他の態様に係る直動回転アクチュエータは、界磁とする永久磁石もしくは鉄心歯を備えた可動子と、回転θ方向に極ピッチλの回転磁界を発生するθ電機子巻線と直動X方向に極ピッチγの進行磁界を発生するX電機子巻線を備えた固定子とで構成されるとともに、前記θ電機子巻線と前記X電機子巻線に電流を通電し、θ方向にトルク、X方向に推力を発生させて前記可動子の回転動作と直動動作を行う直動回転アクチュエータであって、前記可動子の界磁に、N極のみを磁極表面に有する単N極円筒部と、S極のみを磁極表面に有する円筒部と、N極とS極の両方を磁極表面に有する単S極円筒部を備え、前記単N極円筒部のN極と前記単S極円筒部のS極の磁極間隔がX方向にγとなるように配置するとともに、前記多極円筒部のN極とS極の磁極間隔をθ方向にλとしたものである。
例えば、前記単N極円筒部と前記単S極円筒部の間に、X方向を磁化方向とする永久磁石を配置してもよい。
また、前記単N極円筒部、前記単S極円筒部、前記多極円筒部の表面に永久磁石を配置してもよい。
また、前記単N極円筒部、前記単S極円筒部、前記多極円筒部の表面に軟磁性材の鉄心を設け、前記鉄心に永久磁石を埋め込んでもよい。これにより、高速回転の場合でも、永久磁石の飛散を防ぐことができる。また、鉄心形状や永久磁石の多極着磁によって精度良く磁極位置が決まるので、従来のブロック磁石の位置ずれによる推力リプルやトルクリプルの発生を抑制できる。
また、前記可動子または前記固定子の少なくともいずれかの一端に、回転方向と直動方向に一定間隔に設けた回転目盛と直動目盛を有する円筒状の直動回転スケールと、前記固定子または前記可動子のいずれかの一端に、前記回転目盛と前記直動目盛から前記可動子の回転角度と移動位置を検出する直動回転検出器を対向するように備えてもよい。これにより、可動子が回転動作や移動動作をしたとしても、回転角度と移動位置を検出することができる。
また、前記直動回転アクチュエータと、前記直動回転検出器により検出した回転角度と移動位置をもとに、前記可動子の回転位置と移動位置を制御するコントローラと、を備えた直動回転アクチュエータシステムであってもよい。これにより、実際の回転角度や移動位置の値を用いた速度および位置フィードバック制御により、可動子の精密な回転動作と移動動作を簡素な機構で実現することができる。
また、前記直動回転スケールは、前記回転目盛の直動方向長さLθと前記可動子の直動方向動作範囲Lの関係を
θ ≧ L
とし、
前記直動目盛の回転方向開角βθと前記可動子の回転方向動作範囲βの関係を
β<360(度)の場合、 β ≦ βθ < 360(度)
β≧360(度)の場合、 βθ= 360(度)
としたものであってもよい。これにより、可動子が回転動作や移動動作をしたとしても、回転角度と移動位置を検出することができる。
また、前記直動回転スケールは、前記回転目盛と前記直動目盛を格子状に形成されたものであってもよい。これにより、θ目盛とX目盛を格子状に交差させているので、θXスケールの寸法を短小化でき、直動回転アクチュエータを小形化することができる。
また、前記直動回転検出器は、光学式検出器からなるものであってもよい。これにより、可動子が回転動作や移動動作をしたとしても、回転角度と移動位置を検出することができる。
また、前記回転目盛と前記直動目盛を、凹凸の形状もしくは明暗の印刷パターンにより形成するとともに、前記直動回転検出器に光学式検出手段を設けたものであってもよい。これにより、精密に刻まれた目盛を光学式検出手段を用いているので、高精度な角度と位置を検出することができる。
また、前記回転目盛と前記直動目盛を、N極とS極が一定間隔に磁化された永久磁石により形成するとともに、前記直動回転検出器に磁気式検出手段を設けたものであってもよい。これにより、検出手段が磁気式やレゾルバであるので、周囲温度が高い用途でも使用することができる。
また、前記回転目盛と前記直動目盛を、凹凸の形状もしくは滑らかな山谷形状を設けた軟磁性材により形成するとともに、前記直動回転検出器にインダクタンス変化を検出する手段を設けたものであってもよい。これにより、検出手段が磁気式やレゾルバであるので、周囲温度が高い用途でも使用することができる。
また、前記回転目盛と前記直動目盛を前記直動回転スケールの回転方向全周にわたって形成するとともに、前記回転目盛と前記直動目盛を直動方向に直列に配置したものであってもよい。これにより、円筒の外周全体にわたって回転目盛と直動目盛が施されているので、多回転の動作を実現できる。
また、前記回転目盛と前記直動目盛を前記直動回転スケールの回転方向半周内にわたって形成するとともに、前記回転目盛と前記直動目盛を直動方向に並列に配置したものであってもよい。これにより、円筒の半周分に回転目盛を、もう半周分に直動目盛が施されているので、半回転内の動作をする用途に適用すれば、直動回転スケールの寸法を短くでき、直動回転アクチュエータを小形化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁極表面でのギャップ磁束密度が増大し、その結果、トルクや推力を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1を示す直動回転アクチュエータの断面図
【図2】本発明の実施例1を示す界磁部の断面図
【図3】本発明の実施例1における電機子巻線と永久磁石の配置関係を示す展開図
【図4】本発明の実施例2を示す界磁部の断面図
【図5】本発明の実施例3を示す界磁部の断面図
【図6】本発明の実施例4を示す界磁部の断面図
【図7】本発明の実施例5を示す界磁部の断面図
【図8】本発明の実施例5における電機子巻線と永久磁石の配置関係を示す展開図
【図9】本発明の実施例6を示す界磁部の断面図
【図10】本発明の実施例7の直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図
【図11】本発明の実施例8の直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図
【図12】本発明の実施例9の直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図
【図13】本発明の実施例10の直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図
【図14】本発明の実施例11の直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図
【図15】従来技術を示す直動回転アクチュエータの断面図
【図16】従来技術を示す界磁部の断面図
【図17】従来技術における電機子巻線と永久磁石の配置関係を示す展開図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0013】
<実施例1>
図1は本発明の実施例1を示す直動回転アクチュエータを側面から見た断面図である。本発明の構成要素が従来技術と同じものについては同一符号を付して説明する。固定子100のモータ側は、円筒状のモータフレーム101、電機子コア102、θ電機子巻線103、X電機子巻線104が同心円状に設けられている。さらに、モータフレーム101の上部にはθ電機子巻線103とX電機子巻線104に外部から電力を供給するためのモータ端子105が設けられ、モータフレーム101の左端にはLブラケット107、右端には反Lブラケット108が取り付けられている。Lブラケット107と反L側ブラケット108にはそれぞれスライドロータリーブッシュ106が取り付けられている。固定子100の検出器側は、検出器フレーム133と直動回転検出器130から構成されている。さらに、検出器フレーム133の上部には直動回転検出器130に外部から電力を供給し、かつ、角度θと位置Xの検出信号を出力する検出器端子134が設けられている。モータ側と検出器側が一体となるように、検出器フレーム133は反Lブラケット108に取り付けられている。
一方、可動子200は、出力軸201、界磁部202から構成されている。界磁部202と一体になった出力軸201は、スライドロータリーブッシュ106により支持され、固定子100に対しθ方向とX方向に移動可能となっている。さらに、出力軸201の反L側では、円筒状に形成された直動回転スケール230が取り付けられている。出力軸には負荷(図示しない)が取り付けられ、負荷をθ方向とX方向に自在に移動させることができるようになっている。また、可動子200の動作範囲は従来技術と同じあり、回転動作範囲がβ=360(度)、移動動作範囲がL=2γである。
【0014】
このような構成において、本発明が従来技術と異なる点は、界磁部202の構造を改良している点と、直動回転検出器130および直動回転スケール230を設けている点である。
なお、界磁部については実施例1〜6で説明し、直動回転検出器および直動回転スケールについては実施例7〜11で説明する。
【0015】
図2は実施例1の可動子の界磁部を側面から見た断面図とX方向から見た断面図である。なお、X方向から見た断面図は、側面から見た断面図のA、B、C部における断面図となっている。また、図中の矢印(→)は永久磁石の磁化方向を表しており、極性はS→Nとなっている。界磁部202は、複数のN極を形成する円筒部(複N極円筒部211a)と、複数のS極を形成する円筒部(複S極円筒部211b)、X方向を磁化方向とする永久磁石(以下、X磁石251cと呼ぶ)から構成されている。複N極円筒部211aおよび複S極円筒部211bは、従来例と同じく、円筒状の界磁ヨーク203の外周に複数のブロック磁石251a、251bを配置して構成されている。
【0016】
図3は、図2における電機子巻線と永久磁石の配置関係を示した展開図である。ブロック磁石251aと251bは各6個で構成されている。なお、ブロック磁石251aは外周側N極、内周側S極に磁化されており、ブロック磁石251bはその逆に磁化されている。ブロック磁石251aはθ方向に2λ(λはθ方向極ピッチ=電気角180度)ごとに配置され、同じくブロック磁石251bもθ方向に2λごとに配置されている。さらに、ブロック磁石251aと251bはθ方向にλ、X方向にγ(γはX方向極ピッチ=電気角180度)だけずれて配置されている。ブロック磁石251aと251bの間には、ブロック磁石251a側をN極、251b側をS極とするX磁石251cが配置されている。X磁石251cは、複N極円筒部211aや複S極円筒部211bの外形と同じになるように円筒状に形成されている。ここで、複N極円筒部211a上に現れるN極と複S極円筒部211b上に現れるS極の磁極間隔がX方向にγだけずれるように、ブロック磁石251a、251b、X磁石251cのX方向長さが調整されている。また、従来例に比べ、ブロック磁石251a、251bの厚さが大きく、界磁ヨーク203の厚さは小さくなっている。ここで、θ電機子巻線103とX電機子巻線104は、ブロック磁石251a、251bおよびX磁石251cと空隙を介して、黒太線で模擬的に示したような配置となっている。界磁の磁極数は、従来例と同じく、θ方向が12極、X方向が2極となっている。θ電機子巻線103とX電機子巻線104の構成も従来例と同じであるので、電機子巻線の説明は省略する。
【0017】
次に動作原理について説明する。実施例1の力発生原理は、従来例と同じく、ブロック磁石251a、251b、X磁石251cの作る磁界との作用で、θ電機子巻線103に電流を流せば可動子200にトルクを発生し、X電機子巻線104に電流を流せば可動子200に推力が発生するものである。図3は、θ電機子巻線103やX電機子巻線104にそれぞれU相が最大となる位相で電流を通電した図であり、図示した矢印方向に電流が流れることで、ローレンツ力が発生し、可動子200はθ+方向にトルク、X+方向に推力が発生する。このようにして、可動子200は回転と直動の両方向の動作を実現している。
【0018】
このように構成された直動回転アクチュエータは、従来例と異なる磁石磁束の流れ方をする。つまり、実施例1の磁石磁束は、磁石磁束がブロック磁石251bの外周S極から入り、ブロック磁石251bの内部を通って円筒磁石251cのS極に入り、円筒磁石251cのN極からブロック磁石251aの内部を通って外周N極から出る。ほとんどの磁石磁束が磁石内部を通ることから、永久磁石の厚さが等価的に大きくなり、界磁起磁力が増大する。よって、複N極円筒部211aと複S極円筒部211bの磁極表面に現れるギャップ磁束密度を大きくし、トルクや推力を増大することができる。さらに、界磁ヨーク203にはほとんど磁石磁束が通らないので、界磁ヨーク203を薄くし、その分、ブロック磁石251a、251b、X磁石251cを厚くすることができる。つまり、界磁起磁力をさらに増大させることができ、トルクと推力を大幅に増大することができる。
【0019】
<実施例2>
次に第2の実施例について説明する。図4は、実施例2の可動子の界磁部を側面から見た断面図とX方向から見た断面図である。実施例1と異なる点は、複N極円筒部と複S極円筒部に鉄心を設け、鉄心の内部に永久磁石を埋め込んだ点である。複N極円筒部212aおよび複S極円筒部212bは、軟磁性材の円筒鉄心262a、262bとブロック磁石252a、252bから構成されている。円筒鉄心262aと262bの内部にはブロック磁石252aと252bがそれぞれ6個埋め込まれている。ブロック磁石252aは外周側にN極、252bは外周側にS極となるように埋め込まれているので、円筒鉄心262aの外周表面でN極が6個、円筒鉄心262bの外周表面でS極が6個の磁極が現れる。また、円筒鉄心262aと262bの間には、円筒鉄心262a側をN極、262b側をS極となったX方向に磁化されたX磁石252cが設けられている。X磁石252cは、円筒鉄心261a、262bの外形と同じになるように円筒状に形成されている。このように構成された複N極円筒部212aと複S極円筒部212bをθ方向にλだけずらして配置することで、複N極円筒部212aと複S極円筒部212bの外周表面には、実施例1と同様の磁極を形成することになる。つまり、電機子巻線と磁極の配置関係は図3と同じになる。
【0020】
このように構成された直動回転アクチュエータは、実施例1同様、X磁石252cにより界磁起磁力が大きくなり、複N極円筒部212aと複S極円筒部212bの磁極表面に現れるギャップ磁束密度が大きくなる。その結果、トルクや推力を増大させることができる。また、ブロック磁石が円筒鉄心の内部に埋め込まれた構造となっているため、実施例1とは異なり、遠心力によるブロック磁石の飛散を防ぐことができる。さらに、円筒鉄心に設けられた四角穴にブロック磁石が埋め込まれる磁極構造であるため、磁極位置が精度良く決まり、推力リプルやトルクリプルの発生を抑制できる。
【0021】
<実施例3>
次に第3の実施例について説明する。図5は、実施例3の可動子の界磁部を側面から見た断面図とX方向から見た断面図である。実施例3が実施例2と異なる点は、円筒鉄心から磁極を形成する鉄心歯を有した鉄心(以下、クローポール鉄心と呼ぶ)に変更した点、さらに、ブロック磁石を除いた点である。界磁部202の複N極円筒部213aおよび複S極円筒部213bは、軟磁性材のクローポール鉄心263a、263bから構成されている。クローポール鉄心263aはその外周でN極となる鉄心歯が2λおききに計6個形成されており、そのX方向端面で円板状の鉄心と一体になっている。クローポール鉄心263bはその外周でS極となる鉄心歯が2λおきに計6個形成されており、同じく、そのX方向端面で円板状の鉄心と一体になっている。また、クローポール鉄心263aと263bは、周方向にλだけずれ、鉄心歯の先端が対向するように向き合って配置されている。クローポール鉄心263aと263bの内側には、クローポール鉄心263a側をN極、263b側をS極に磁化されたX磁石253が配置されている。なお、X磁石253はクローポール鉄心263a、263bの鉄心歯の内周に沿った円筒状となっている。このように構成された界磁部202は、クローポール鉄心263aと263bの鉄心歯表面において、実施例1の図3で示すものと同じような磁極が現れる。
【0022】
このように構成された直動回転アクチュエータは、一体となった円筒状の永久磁石がクローポール鉄心の内部に埋め込まれているので、遠心力による永久磁石の飛散を防ぐことができる。さらに、クローポール鉄心に設けられた磁極歯により磁極位置が精度良く決まり、推力リプルやトルクリプルの発生を抑制できる。
【0023】
<実施例4>
次に第4の実施例について説明する。図6は実施例4の可動子の界磁部を側面から見た断面図とX方向から見た断面図である。実施例4が実施例3と異なる点は、クローポール鉄心の内部にさらに界磁起磁力を増大させる円筒状の永久磁石を設けた点である。複N極円筒部214aおよび複S極円筒部214bは、軟磁性材のクローポール鉄心264a、264b、さらに、外周を単極のN極もしくはS極とする円筒状の永久磁石(以下、単極円筒磁石と呼ぶ)254a、254bから構成されている。クローポール鉄心264aの内側には外周N極の単極円筒磁石254a、クローポール鉄心264bの内側には外周S極の単極円筒磁石254bが配置されている。さらに、単極円筒磁石254a側をN極、254b側をS極とするようにX方向に磁化されたX磁石254cが中央に配置されている。また、クローポール鉄心264a、264bの直動方向の端面にあたる側面の鉄心の厚さは、実施例3のものに比べ薄くなっており、その薄くなった分、単極円筒磁石254aと254b、X磁石254cの幅が広がっている。このように構成された界磁部202は、クローポール鉄心264aと264bの鉄心歯表面において、実施例1の図3で示すものと同じような磁極が現れる。
【0024】
このように構成された直動回転アクチュエータは、実施例3同様、遠心力による永久磁石の飛散や推力リプル、トルクリプルの発生を防ぐことができる。さらに、実施例1と同様にほとんどの磁石磁束が磁石内部を通ることから界磁起磁力が増大し、また、単極円筒磁石から出る磁石磁束がそのままクローポール鉄心の鉄心歯に入ることから漏れ磁束も少ない。つまり、実施例3に比べ、トルクや推力をさらに増大させることができる。
【0025】
<実施例5>
次に第5の実施例について説明する。図7は、実施例5の可動子の界磁部を側面から見た断面図とX方向から見た断面図である。実施例5が実施例1〜4と異なる点は、複N極円筒部や複S極円筒部で構成するのではなく、単極の円筒部や多極の円筒部で構成した点である。界磁部202は外周全体がN極およびS極の単極となっている単N極円筒部215aと単S極円筒部215b、外周がN極とS極の多極となっている多極円筒部215cから構成されている。単N極円筒部215aは外周全体がN極に磁化された単極円筒磁石255a、単S極円筒部215bは外周全体がS極に磁化された単極円筒磁石255b、多極円筒部215cは回転方向にN極とS極が交互に磁化された多極円筒磁石255cから構成されている。なお、これら円筒状の永久磁石は、円筒状に一体成形されたものが各々の磁化方向に着磁して構成されたものである。単極円筒磁石255a、255b、多極円筒磁石255cの内周側は、円筒状の界磁ヨーク203が配置されている。外周N極の単極円筒磁石255aと外周S極の単極円筒磁石255bは、X方向にγだけずれて配置されている。また、多極円筒磁石255cは、θ方向にλごとにN極とS極が現れるように磁化されている。
【0026】
図8は、図7における電機子巻線と永久磁石の配置関係を示した展開図である。θ電機子巻線103とX電機子巻線104の構成は従来例と同じであるので、説明を省略する。θ電機子巻線103とX電機子巻線104は、単極円筒磁石255a、255bおよび多極円筒磁石255cと空隙を介して、黒太線で模擬的に示したような配置となっている。単極円筒磁石255a、255bの磁極の並びはX電機子巻線と平行しており、多極円筒磁石255cの磁極の並びはθ電機子巻線と平行している。
【0027】
次に動作原理について説明する。実施例5の力発生原理は、単極円筒磁石255a、255b、多極円筒磁石255cの作る磁界との作用で、θ電機子巻線103に電流を通電すれば可動子200にトルクを発生し、X電機子巻線104に電流を通電すれば可動子200に推力が発生するものである。実施例1〜4と異なる点は、単N極円筒部215aと単S極円筒部215bが推力のみを発生し、多極円筒部215cがトルクのみを発生する点である。図8は、θ電機子巻線103やX電機子巻線104にそれぞれU相が最大となる位相で電流を通電した図であり、図示した矢印方向に電流が流れることで、ローレンツ力が発生し、可動子200はθ+方向にトルク、X+方向に推力が発生する。このようにして、可動子200は回転と直動の両方向の動作を実現している。
【0028】
このように構成された直動回転アクチュエータは、実施例1〜4と異なり、単N極円筒部と単S極円筒部が推力のみを発生し、多極円筒部がトルクのみを発生する界磁構造であり、磁極間に大きな空隙がなく有効的に永久磁石を配置させているため、磁極表面でのギャップ磁束密度を向上させ、トルクや推力をより増大させることができる。さらに、単極円筒磁石や多極円筒磁石は円筒状に一体成形された後に各々の磁化方向に精度良く着磁されているので、遠心力による永久磁石の飛散を防ぐことができるとともに、磁極ずれによる推力リプルやトルクリプルの発生を抑制することができる。
【0029】
<実施例6>
次に第6の実施例について説明する。図9は実施例6の可動子の界磁部を側面から見た断面図とX方向から見た断面図である。実施例6が実施例5と異なる点は、外周N極の単極円筒磁石256aと外周S極の単極円筒磁石256bの間にX方向を磁化方向とするX磁石256dを追加し、多極円筒磁石を極異方性に磁化した多極円筒磁石256cにより構成した点である。また、実施例5に比べ、これら永久磁石の厚さが大きく、界磁ヨーク203の厚さは小さくなっている。
【0030】
このように構成された直動回転アクチュエータは、実施例5に比べ、界磁起磁力が大きくなり、単N極円筒部216aや単S極円筒部216b、さらには多極円筒部216cのすべての磁極表面においてギャップ磁束密度が向上し、トルクや推力を増大させることができる。
【0031】
<実施例7>
図10は第7の実施例を示す直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図である。直動回転スケール230aは回転目盛231aと直動目盛232aから構成されている。直動回転検出器130aは、回転目盛231aと空隙を介して対向して回転検出器131aが配置され、直動目盛232aと対向して直動検出器132aが配置された構成となっている。回転目盛231aと直動目盛232aはX方向に直列に配置されており、それに合わせ、回転検出部131aと直動検出部132aも配置されている。回転目盛231aと直動目盛232aは、エッチングなどで製作された微小間隔の凹凸の目盛で構成されており、その目盛は全周にわたって施されている。一方、回転検出部131aと直動検出部132aには、直動回転スケール230aにレーザ光を照射し、凹凸の目盛を介して反射されたレーザ光を検知して、角度θや位置Xを読み取る光学式検出手段を備えている。ここで、可動子に合わせ直動回転スケール230aが回転および直動すると、直動回転検出器130aは角度θと位置Xを得ることができる。
このような構成において、本発明ではθ目盛231のX方向長さLθと可動子200の移動動作範囲Lは式1の関係となる。
θ ≧ L(1)
また、X目盛232のθ方向開角βθと可動子200の回転動作範囲βは式2および式3の関係となる。
β<360(度)の場合、 β ≦ βθ < 360(度) (2)
β≧360(度)の場合、 βθ= 360(度) (3)
としている。実施例1における動作範囲は、従来技術で示したものと同じであるため、回転動作範囲がβ=360度、移動動作範囲がL=2γである。従って、θ目盛231のX方向長さLθとX目盛232のθ方向開角βθは式4および式5に設定されている。
θ ≧ 2γ (4)
βθ = 360 (度) (5)
次にθX検出器の回転角度および移動位置の検出原理について説明する。θXスケール230のθ目盛231とX目盛232は、ステンレス製円筒の表面に刻まれたスリットにより構成されている。一方、検出器フレーム133に配置されたθ検出部131とX検出部132は、レーザー光を照射し反射光を読み取る光学式検出器である。θXスケール230のθ方向スリットとX方向スリットの有無の差が、反射光の差として現れ、その差をθ検出部131とX検出部132が回転角度および移動位置として検出する。
【0032】
このように構成された直動回転アクチュエータは、円筒状に回転目盛と直動目盛を形成した直動回転スケールにより、可動子が回転動作や直動動作をしたとしても、角度θと位置Xを検出することができる。その結果、実際の角度θや位置Xの値を用いた速度および位置フィードバック制御により、可動子の回転動作と直動動作を簡素な機構で実現することができる。また、回転目盛や直動目盛が円筒状の直動回転スケールの全周にわたって施されているので、可動子の多回転の検出が可能である。また、精密に刻まれた凹凸の目盛を光学式手段により検出するので、高精度な角度と位置を検出することができ、実際の回転角度や移動位置の値は、図示しないコントローラへ入力され、速度および位置フィードバック制御が行われ、可動子の精密な回転動作と移動動作を簡素な機構で実現することができる。
【0033】
<実施例8>
次に第8の実施例について説明する。図11は実施例8を示す直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図である。実施例8が実施例7と異なる点は、直動回転スケール230bをN極とS極が一定間隔に磁化された永久磁石により構成し、直動回転検出器130bに磁気式検出手段を設けた点である。回転目盛231bの永久磁石の表面には、θ方向にN極とS極の磁極が一定間隔に磁化されており、直動目盛232bの永久磁石の表面にはX方向にN極とS極の磁極が一定間隔に磁化されている。この磁極の強弱と極性を磁気式検出手段によって検出する。
【0034】
このように構成された直動回転アクチュエータは、実施例7同様、可動子が回転動作や直動動作をしたとしても、角度θと位置Xを検出することができる。その結果、実際の角度θや位置Xの値を用いた速度および位置フィードバック制御により、可動子の回転動作と直動動作を簡素な機構で実現することができる。また、回転目盛や直動目盛が円筒状の直動回転スケールの全周にわたって施されているので、可動子の多回転の検出が可能である。さらに、光学式よりも耐熱性の高い磁気式による検出手段を用いているため、周囲温度が高い用途でも使用することができる。
【0035】
<実施例9>
次に第9の実施例について説明する。図12は実施例9を示す直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図である。実施例9が実施例7、8と異なる点は、直動回転スケール230cを凹凸にかたどられた軟磁性材により構成し、直動回転検出器130cに励磁巻線と検出巻線を有するいわゆるレゾルバの原理で検出する手段を設けた点である。回転目盛231cの表面はθ方向に凹凸が一定間隔に設けられており、直動目盛232cの表面はX方向に凹凸が一定間隔に設けられている。この凹凸によりできるギャップ長の変化をインダクタンス変化として検出する。
【0036】
このように構成された直動回転アクチュエータは、実施例7、8同様、可動子が回転動作や直動動作をしたとしても、角度θと位置Xを検出することができる。その結果、実際の角度θや位置Xの値を用いた速度および位置フィードバック制御により、可動子の精密な回転動作と直動動作を簡素な機構で実現することができる。また、回転目盛や直動目盛が円筒状の直動回転スケールの全周にわたって施されているので、可動子の多回転の検出が可能である。さらに、光学式よりも耐熱性の高いレゾルバ式による検出手段のため、周囲温度が高い用途でも使用することができる。
【0037】
<実施例10>
次に第10の実施例について説明する。図13は実施例10を示す直動回転検出器と直動回転スケールの斜視図である。実施例10が実施例7〜9と異なる点は、直動回転スケール230dの回転目盛231dと直動目盛232dを半周内に施し、回転目盛231dと直動目盛232dを直動方向に並列に配置させた点である。
【0038】
このように構成された直動回転アクチュエータは、実施例7〜9と異なり、回転動作が半周内に制約される用途において、直動回転スケールを短小化させ、直動回転アクチュエータを小形化できる。
【0039】
<実施例11>
次に本発明の実施例11について説明する。図14は、実施例11のθX検出器とθXスケールの斜視図である。実施例11が実施例7から10と異なる点は、θ目盛231eとX目盛232eを格子状に交差させた点である。また、θ検出部131eとX検出部132eは、交差させたθ目盛231eとX目盛232eの位置に合わせ、θ方向にずらして配置させている。
次にθX検出器の回転角度および移動位置の検出原理について説明する。θXスケール230eのθ目盛231eとX目盛232eは、ステンレス製円筒の表面に格子状に交差して刻まれたスリットにより構成されている。一方、検出器フレーム133eに配置されたθ検出部131eとX検出部132eは、レーザー光を照射して反射光を読み取る光学式検出器であるが、格子状に交差したスリットを検出できるように、三角格子光学系等の回折干渉現象を利用したものとなっている。θXスケール230eのθ方向スリットとX方向スリットの有無の差が、反射光の差として現れ、その差をθ検出部131eとX検出部132eが回転角度および移動位置として検出する。
【0040】
このような構成により、実施例7で記載したように、実際の回転角度や移動位置の値は、図示しないコントローラへ入力され、速度および位置フィードバック制御が行われ、可動子の精密な回転動作と移動動作を簡素な機構で実現することができる。また、θXスケールがθ目盛とX目盛を一体化した構成にしたことで、θXスケールの長さを短くでき、直動回転アクチュエータを小形化することができる。
【0041】
なお、実施例1〜6では、X方向の磁極数を2として構成したが、同様の界磁構造を直動方向に並べて構成することで2以上の磁極数で構成しても良い。また、実施例5、6では、磁極表面が永久磁石となるように構成したが、実施例2〜4と同様に、鉄心を設けその内部に永久磁石を埋め込む構造としたり、鉄心の間に永久磁石を挟み込む構造としても良い。また、円筒磁石、単極円筒磁石、多極円筒磁石は一体に成形された永久磁石で説明したが、ブロック磁石をつないで構成しても良い。また、磁極を形成するのに永久磁石を用いて説明したが、鉄心歯で構成するようにしても良い。また、実施例7〜11では、界磁と直動回転スケールを可動子、電機子巻線と直動回転検出器を固定子に配置する構成で示したが、その逆であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、1つのアクチュエータで、大きなトルクと推力を発生し、精密な回転動作と直動動作を実現する直動回転アクチュエータを提供することができる。よって、直動と回転の2自由度動作が要求されるチップマウンタ装置のマウンタヘッドや各種検査装置の検査ヘッドなどの用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100 固定子
101 モータフレーム
102 電機子コア
103、104 θ電機子巻線、X電機子巻線
103a、104a 俵形コイル、リング形コイル
105 モータ端子
106 スライドロータリーブッシュ
107、108 L側ブラケット、反L側ブラケット
130、130a、130b、130c、130d 直動回転検出器
131、131a、131b、131c、131d、131e 回転検出部
132、132a、132b、132c、132d、132e 直動検出部
133 検出器フレーム
134 検出器端子
200 可動子
201 出力軸
202 界磁部
203 界磁ヨーク
230、230a、230b、230c、230d、230e 直動回転スケール
231a、231b、231c、231d、231e 回転目盛
232a、232b、232c、232d、232e 直動目盛
211a、212a、213a、214a 複N極円筒部
211b、212b、213b、214b 複S極円筒部
215a、216a 単N極円筒部
215b、216b 単S極円筒部
215c、216c 多極円筒部
250a、250b、251a、251b、252a、252b ブロック磁石
251c、252c、253c、254c、256d X磁石
254a、254b、255a、255b、256a、256b 単極円筒磁石
255c、256c 多極円筒磁石
262a、262b 円筒鉄心
263a、263b、264a、264b クローポール鉄心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界磁とする永久磁石もしくは鉄心歯を備えた可動子と、回転θ方向に極ピッチλの回転磁界を発生するθ電機子巻線と直動X方向に極ピッチγの進行磁界を発生するX電機子巻線を備えた固定子とで構成されるとともに、前記θ電機子巻線と前記X電機子巻線に電流を通電し、θ方向にトルク、X方向に推力を発生させて前記可動子の回転動作と直動動作を行う直動回転アクチュエータであって、
前記可動子の界磁に、複数のN極を磁極表面に有する複N極円筒部と、複数のS極を磁極表面に有する複S極円筒部を備え、
前記複N極円筒部のN極と前記複S極円筒部のS極の磁極間隔がX方向にγ、θ方向にλとなるように前記複N極円筒部と前記複S極円筒部を配置するとともに、前記複N極円筒部と前記複S極円筒部の間にX方向を磁化方向とする永久磁石を配置したことを特徴とする直動回転アクチュエータ。
【請求項2】
前記複N極円筒部と前記複S極円筒部の表面に永久磁石を配置したことを特徴とする請求項1記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項3】
前記複N極円筒部と前記複S極円筒部の表面に軟磁性材の鉄心を設け、前記鉄心に永久磁石を埋め込んだことを特徴とする請求項1記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項4】
界磁とする永久磁石もしくは鉄心歯を備えた可動子と、回転θ方向に極ピッチλの回転磁界を発生するθ電機子巻線と直動X方向に極ピッチγの進行磁界を発生するX電機子巻線を備えた固定子とで構成されるとともに、前記θ電機子巻線と前記X電機子巻線に電流を通電し、θ方向にトルク、X方向に推力を発生させて前記可動子の回転動作と直動動作を行う直動回転アクチュエータであって、
前記可動子の界磁に、N極のみを磁極表面に有する単N極円筒部と、S極のみを磁極表面に有する円筒部と、N極とS極の両方を磁極表面に有する単S極円筒部を備え、
前記単N極円筒部のN極と前記単S極円筒部のS極の磁極間隔がX方向にγとなるように配置するとともに、前記多極円筒部のN極とS極の磁極間隔をθ方向にλとしたことを特徴とする直動回転アクチュエータ。
【請求項5】
前記単N極円筒部と前記単S極円筒部の間に、X方向を磁化方向とする永久磁石を配置したことを特徴とする請求項4記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項6】
前記単N極円筒部、前記単S極円筒部、前記多極円筒部の表面に永久磁石を配置したことを特徴とする請求項4または5記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項7】
前記単N極円筒部、前記単S極円筒部、前記多極円筒部の表面に軟磁性材の鉄心を設け、前記鉄心に永久磁石を埋め込んだことを特徴とする請求項4または5記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項8】
前記可動子または前記固定子の少なくともいずれかの一端に、回転方向と直動方向に一定間隔に設けた回転目盛と直動目盛を有する円筒状の直動回転スケールと、前記固定子または前記可動子のいずれかの一端に、前記回転目盛と前記直動目盛から前記可動子の回転角度と移動位置を検出する直動回転検出器を対向するように備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項9】
請求項8記載の直動回転アクチュエータと、
前記直動回転検出器により検出した回転角度と移動位置をもとに、前記可動子の回転位置と移動位置を制御するコントローラと、を備えた直動回転アクチュエータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−85527(P2012−85527A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269068(P2011−269068)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2006−278583(P2006−278583)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】