説明

眼鏡レンズの製造装置及びこの製造装置用の検出子

【課題】溝やヤゲン等の加工の際に高い精度で加工を行うことを可能にすると共に、研削後のレンズの形状や寸法を検出することを可能にする、眼鏡レンズの製造装置を提供する。
【解決手段】眼鏡レンズとなるレンズ100の加工を行うレンズ加工部と、レンズ100の外形形状及び/又は寸法を検出する検出部とを有し、検出部が一対の測定子を備えた製造装置を構成する。そして、測定子11は、検出子本体13と、検出子本体13に取り付けられ、互いに接続された、第1の部材15及び第2の部材16を有する。さらに、これら第1の部材15及び第2の部材16の接続部に、レンズ100の凹面又は凸面の端縁を引っ掛けることにより、レンズ100の外形形状及び/又は寸法の測定がなされる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの製造装置に係る。また、本発明は、眼鏡レンズの製造装置に用いられ、レンズの外形形状や寸法を検出するための検出子に係わる。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズをワイヤー等でフレームに固定した構成の眼鏡が知られている。
この構成では、眼鏡レンズのコバ面(レンズの切削面)に、ワイヤー等を入れるための溝を形成している。
また、フレームに眼鏡レンズをはめ込むために、コバ面にヤゲンを形成することもある。
【0003】
このとき、溝の深さや形成位置、もしくは、ヤゲンの高さや形成位置は、高い精度を有していることが望まれる。
そのため、眼鏡レンズの位置精度や寸法(コバ厚等)の精度が高い状態で、溝やヤゲンを形成する加工を行うことが望ましい。
【0004】
従来は、レンズに対して研削加工やその他の加工を行う前に、レンズのコバ厚(コバ面におけるレンズの厚さ)等の寸法を測定している(特許文献1〜特許文献3参照)。
また、寸法測定用の測定子として、様々な構成が提案されている(特許文献4〜特許文献6参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−86456号公報
【特許文献2】特開2006−305698号公報
【特許文献3】特開2003−145400号公報
【特許文献4】特開平3−259710号公報
【特許文献5】特開2000−314617号公報
【特許文献6】特開2001−47343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レンズのコバ厚等の寸法を測定したときのレンズの保持状態と、溝やヤゲンを形成する加工を行うときのレンズの保持状態とで、レンズホルダに対するレンズの位置(水平方向のx及びy、傾斜角度θ等)が異なる場合には、溝の深さやヤゲンの高さが一様に形成されないことがある。
【0007】
従来は、測定器を有する装置においてレンズの周長、形状等を測定した後、レンズを加工用の別の装置に移して、加工を行っていた。
そのため、装置によってレンズの保持状態が異なっており、その影響によって加工により形成される溝やヤゲンの位置がずれてしまい精度が低下することがある。
特に、最近の眼鏡フレームのデザインの多様化に伴い、ヤゲンを設けたり、ナイロンフレームに対応した溝掘りを行ったりする等、様々な工程を行うようになっている。そのため、1台の装置で全ての工程を行うよりも、それぞれの加工工程に適した装置で加工を行う機会が増えてきている。
【0008】
また、前記特許文献2や前記特許文献3に記載されている寸法測定方法では、コバ厚を直接測定せずに、コバ面よりも凹面や凸面の内側の部分で、レンズの厚さを測定している。そのため、測定したレンズの厚さと、設計した凹面及び凸面の曲面形状から、コバ厚を推定していると考えられる。このとき、設計した曲面形状と実際の曲面形状とにずれがあると、正しいコバ厚を得ることができない。
【0009】
そして、従来提案されている測定子は、いずれも、未加工のレンズを測定する等、レンズを研削する加工を行う前に測定を行っていたことから、測定によりレンズを傷つけたとしても、傷の部分が研削されて除去されてしまうため、傷についての対策は特になされていなかった。未加工のレンズは、その後、粗摺り加工及び玉摺り加工といった研削加工が行われるため、測定を行ったコバ面や凹面・凸面が研削される。
しかしながら、従来提案されている測定子を、研削後のレンズの寸法測定に適用したとすると、レンズの凹面や凸面に細かい傷がついてしまう可能性がある。そのため、傷をつけることなく測定を行うための対策が求められる。
【0010】
上述した問題の解決のために、本発明においては、溝やヤゲン等の加工の際に高い精度で加工を行うことを可能にすると共に、研削後のレンズの形状や寸法を検出することを可能にする、眼鏡レンズの製造装置及びこの製造装置用の検出子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の眼鏡レンズの製造装置は、眼鏡レンズとなるレンズの加工を行うレンズ加工部と、レンズの外形形状及び/又は寸法を検出する検出部とを有し、検出部は、前記レンズの外形形状及び/又は寸法を検出するための一対の検出子を備えている。
そして、一対の検出子は、レンズの凹面の縁に引っ掛ける一方の検出子と、レンズの凸面の縁に引っ掛ける他方の検出子であり、各検出子は、検出子本体と、検出子本体に取り付けられており、レンズの凹面又は凸面に対向する第1の部材と、検出子本体に取り付けられており、レンズのコバ面に対向する第2の部材とを有し、第1の部材及び第2の部材が互いに接続されている。さらに、これら第1の部材と第2の部材との接続部に、レンズの凹面又は凸面の端縁を引っ掛けることにより、レンズの外形形状及び/又は寸法の検出がなされる構成である。
【0012】
上記本発明の眼鏡レンズの製造装置において、検出子の第2の部材の水平面に対する傾斜角が、検出する対象のレンズの平摺り角よりも大きい角度である構成とすることが可能である。
【0013】
本発明の検出子は、眼鏡レンズとなるレンズの外形形状及び/又は寸法を検出するための検出子であって、検出子本体と、検出子本体に取り付けられており、レンズの凹面又は凸面に対向する第1の部材と、検出子本体に取り付けられており、レンズのコバ面に対向する第2の部材とを有し、これら第1の部材及び第2の部材が、互いに接続されている。そして、レンズの外形形状及び/又は寸法の検出を行う際には、第1の部材と第2の部材との接続部に、レンズの凹面又は凸面の端縁が引っ掛けられる構成である。
【0014】
上記本発明の検出子において、第1の部材が略円錐形状であり、第2の部材が断面円形の棒状であり、第1の部材の頂部に設けられた孔を貫通して第2の部材が延びている構成とすることが可能である。
上記本発明の検出子において、検出子本体に形成された溝に、第2の部材がはめ込まれている構成とすることが可能である。
上記本発明の検出子において、第2の部材の水平面に対する傾斜角が、検出する対象の前記レンズの平摺り角よりも大きい角度である構成とすることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
上述の本発明の眼鏡レンズの製造装置によれば、眼鏡レンズとなるレンズの加工を行うレンズ加工部と、レンズの外形形状及び/又は寸法を検出する検出部とを有することにより、検出部でレンズの外形形状及び/又は寸法を検出した後に、レンズ加工部によりレンズの加工を行うことが可能になる。
これにより、装置毎のレンズの保持位置の違いによる誤差を生じることなく、レンズの加工を行う位置の精度を高めることができる。
従って、本発明の眼鏡レンズの製造装置により、高い精度でレンズの加工を行うことができる。
そして、眼鏡レンズの製造歩留まりを向上することや、高い品質の眼鏡レンズを安定して大量生産することを可能にする。
【0016】
また、本発明の眼鏡レンズの製造装置及び検出子によれば、検出子が、レンズの凹面又は凸面に対向する第1の部材と、レンズのコバ面に対向する第2の部材とを有し、第1の部材及び第2の部材が互いに接続されていて、測定の際には、第1の部材と第2の部材との接続部に、レンズの凹面又は凸面の端縁を引っ掛けられる。これにより、第1の部材及び第2の部材がレンズの凹面・凸面やコバ面に当たることがなく、第1の部材及び第2の部材の接続部(境界)で検出子をレンズに引っ掛けることができる。
従って、レンズ100のコバ面や凹面・凸面に傷をつけることなく、レンズの外形形状や寸法の測定を行うことができ、研削した後のレンズに対しても外形形状や寸法の測定を行って、その後の加工工程の精度を高めることができる。
さらに、別々の部品である第1の部材及び第2の部材を組み合わせてできる接続部(境界)を、1つの部品に2つの面を形成した場合の面の境界部分と比較して、シャープに形成することができ、レンズが測定子から外れるといった不具合が生じにくくなる。
さらにまた、第1の部材と第2の部材とが別々の部品になっていることにより、各部品の作製が容易になる利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の眼鏡レンズの製造装置の一実施の形態の概略構成図を、図1及び図2に示す。
図1は装置の長手方向に垂直な方向から見た側面図であり、図2は装置の長手方向から見た側面図である。
【0018】
この装置は、眼鏡レンズとなるレンズを固定するためのレンズ固定部、レンズの形状及び寸法を検出するための検出部、レンズに溝掘り加工を行うためのレンズ加工部、の各部から構成されている。
【0019】
レンズ固定部は、眼鏡レンズとなるレンズ100を左右から挟んで固定するためのレンズチャック31,32を備えている。
左のレンズチャック31はレンズ100の凸面に当接するように構成され、右のレンズチャック32はレンズ100の凹面に当接するように構成されている。
【0020】
検出部は、図1に示すように、レンズ100のコバ面の縁に引っ掛けて測定を行うための測定子11,12と、これら測定子11,12を保持する2本の支持棒24と、測定子11,12を移動させるための左右のモータ23と、測定子11,12の移動量からコバ面の位置を測定する左右のコバ位置センサ21,22とを備えている。
また、検出部は、図2に示すように、検知センサ27と、倣い用バネ28とを備えている。
【0021】
左右の各コバ位置センサ21,22は、固定されたレール25と、このレール25に沿ってスライドして移動するセンサ本体26とから成る。
各コバ位置センサ21,22のセンサ本体26は、支持棒24と連動して移動する。
【0022】
詳細の図示は省略するが、モータ23の駆動により、支持棒24が水平方向にスライドするように構成されている。これにより、支持棒24に保持された測定子11,12を左右に移動させることができる。このとき、支持棒24と連動するコバ位置センサ21,22により、測定子11,12の移動量を測定することができる。
【0023】
レンズ加工部は、レンズ100のコバ面に溝を掘る加工を行う、溝掘りツール41を備えている。
この溝掘りツール41は、軸を中心に回転することにより、溝を掘る加工を行うことができる構成となっている。
【0024】
また、本発明の検出子の一実施の形態として、図1に示した測定子11,12の詳細について、以下に説明する。
図1に示した測定子11,12の拡大図を、図3及び図4に示す。
図3は、図1の左側にある、凹面を測定する測定子11を示している。図3Aは断面図を示し、図3Bは正面図を示し、図3Cは、上面図を示している。
図4は、図1の右側にある、凸面を測定する測定子12を示している。図4Aは断面図を示し、図4Bは正面図を示し、図4Cは、上面図を示している。
【0025】
それぞれの測定子11,12は、強度を確保するための厚く形成された測定子本体13と、薄い部材14と、略円錐形状の第1の部材15と、細い棒状の第2の部材16とを有する。
測定子本体13には、測定子11,12の支持棒24への取り付け用の孔や、棒状の第2の部材16をはめ込む溝13A,13Bが、設けられている。薄い部材14は、測定子本体13上に形成され、棒状の第2の部材16を支持している。
略円錐形状の第1の部材15は、その円錐の頂部に、棒状の第2の部材16を差し込む孔を有している。そして、この第1の部材15の孔を貫通して、第2の部材16が延びている。
また、棒状の第2の部材16は、測定子本体13の溝13A,13Bにはめ込まれており、かつ、水平面に対して傾斜している。さらに、この棒状の第2の部材16は、レンズ100と接する表面(測定面)が曲面となるような断面形状(断面円形、もしくは、その断面形状が半円形、楕円形、半楕円形等)を有する。
そして、第1の部材15と第2の部材16との接続部(境界)に、レンズ100のコバ面の端縁を引っ掛ける。これにより、第1の部材15の表面の円錐面がレンズ100の凹面又は凸面に対向し、第2の部材16の表面がレンズ100のコバ面に対向する。
【0026】
各測定子11,12は、測定子本体13の厚さを例えば1mm〜5mm程度、棒状の第2の部材16の直径を例えば0.2mm〜1.0mm程度とする。
【0027】
第1の部材15が略円錐形状であり、第2の部材16がレンズ100と接する測定面が曲面を有する細い棒状(断面形状が、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形等)であることから、これら2つの部材15,16のレンズ100に当たる部分が曲面となっており、第1の部材15及び第2の部材16にそれぞれレンズ100が接する面積を最小限に抑えることができる。これにより、レンズ100に当たる部分が平面である構成と比較して、さらにレンズ100に傷が付きにくくすることができると共に、さらに精度良くレンズ100の形状に測定子11,12を追従させることができる。
【0028】
凹面を測定する測定子11では、第1の部材15の円錐面の立ち上げ角度(上方向に対する角度)を30°としている。また、第2の部材16に、レンズ100の平摺り角度0°〜2.5°よりも深い、5°の傾斜角(水平面に対する傾斜角)を付けている。
一方、凸面を測定する測定子12では、第1の部材15の円錐面の立ち上げ角度(上方向に対する角度)を45°としている。これにより、直径60mmのレンズに対して、凸面カーブの曲率半径45mmまで測定が可能になる。また、第2の部材16に、レンズ100の平摺り角度0°〜2.5°よりも深い、5°の傾斜角(水平面に対する傾斜角)を付けている。
【0029】
各測定子11,12の第1の部材15の円錐面の立ち上げ角度と第2の部材16の傾斜角を上述のように設定していることにより、第1の部材15及び第2の部材16がレンズ100のコバ面や凹面・凸面に当たることがなく、第1の部材15及び第2の部材16の接続部(境界)で測定子11,12をレンズ100に引っ掛けることができる。
これにより、レンズ100のコバ面や凹面・凸面に傷をつけることなく、レンズ100のコバ厚(コバ面におけるレンズ100の厚さ)の測定を行うことができる。
【0030】
次に、図5及び図6を参照して、測定の際の装置の動作を説明する。図5は、右の測定子12を、レンズ100のコバ面の凸面側の縁に引っ掛けた状態を示している。図6は、左の測定子11を、レンズ100のコバ面の凹面側の縁に引っ掛けた状態を示している。
【0031】
図5及び図6のいずれの場合も、レンズ100のコバ面のエッジに測定子11,12を引っ掛け、矢印で示すように常に倣い用バネ28による上方向及びモータ23による左右方向へのテンションを加えた状態で、測定を行う。そして、この状態で、レンズチャック31,32のシャフト33を回転させることにより、レンズ100を回転させて、レンズ100の全周について測定を行う。
このとき、レンズ100が回転すると同時に、周長測定機で測定したレンズ100の外形形状データに倣ってレンズ100のコバ面が上下動する。
【0032】
測定子11,12から加えるテンションの大きさは、上方向の力(コバ面への押し付け力)を1.5〜2.5[N]とし、左右方向の力(引き付け力)を0.4〜1.0[N]とすることが好ましい。
【0033】
眼鏡レンズは、レンズ100の厚さやレンズ100の凹面及び凸面の大きさにおいて、大幅な違いがないため、測定子11,12から加えるテンションの大きさを上述の範囲とすれば、各種のレンズ100に対して良好に測定を行うことができる。
【0034】
左右の測定子11,12を用いた各測定の結果から、レンズ100のコバ厚を求める(算出する)ことができる。
また、シャフト33の回転によってレンズ100を回転させているので、レンズ100のコバ面全体の厚さ分布と凹面及び凸面の外形形状とを得ることができる。
なお、レンズ100の凹面及び凸面の外形形状は、予め周長測定機で測定しておいて、測定された外形形状データ通りにレンズ100が動くように制御する。そして、シャフト33の回転によってレンズ100を回転させているので、レンズ100のチャック時までに僅かなずれが生じた場合には、測定子11,12がチャックされたレンズ100に沿って動く。このとき、右の測定子12の上下動に伴う支持棒24の上下動を、図2に示した検知センサ27で検出することにより、レンズチャック31,32によるレンズ100のチャックの状態のずれを検知することができる。
この検知センサ27は、図1及び図2では右の測定子12の支持棒24に対してのみ設けられているが、左右両方の測定子11,12の支持棒24に対して検知センサを設けても、左の測定子11の支持棒24に対してのみ検知センサを設けても良い。
【0035】
なお、図5及び図6の各測定は、同時に行うことはできないため、どちらかの測定を先に行う。どちらの測定を先に行っても構わない。
【0036】
また、図5及び図6に示した各測定において、測定を行っていない測定子12,11は、測定を行っている測定子11,12の妨げにならない場所へ収納される。
【0037】
続いて、図1及び図2に示す装置を使用して、眼鏡レンズを製造する方法について説明する。
まず、従来と同様に、レンズ100をカットして、凹面及び凸面、並びにコバ面の各面を形成する。
次に、レンズ100をカットした後、図1及び図2に示す装置に移す前に、カットしたレンズ100の周長及び外形形状を、周長測定機により測定しておく。
次に、図1及び図2に示す装置に移して、レンズチャック31,32の間にレンズ100を固定する。
次に、上述したような手順により、測定子11,12を用いて、レンズ100のコバ厚を測定すると共に、周長測定機で測定した外形形状データと本装置にチャックした状態との誤差を測定する。
次に、周長測定機での外形形状の測定結果とのずれをフィードバックして、レンズ加工部の溝掘りツール41をずれの量に対応する位置に設定する。このように溝掘りツール41をずれの量に対応する位置に設定することにより、正確な位置に精度良く溝を形成することが可能になる。なお、このとき、レンズチャック31,32によるレンズ100の保持状態は、レンズ100のコバ厚及び外形形状を測定したときと同じ保持状態に維持する。
そして、溝掘りツール41を使用して、所定の深さの溝をレンズ100のコバ面に掘る加工を行う。
このようにして、コバ面に溝を形成したレンズ100を製造することができる。
【0038】
上述の本実施の形態の装置によれば、溝堀り加工を行うレンズ加工部と、レンズ100のコバ厚や外形形状を測定する検出部とを備えているので、検出部によりレンズ100のコバ厚や外形形状を測定したときと同じ保持状態でレンズ100を維持して、レンズ加工部により溝堀り加工を行うことができる。
これにより、装置毎のレンズ100の保持位置の違いによる誤差を生じることなく、一様な溝深さで精度良く溝堀り加工を行うことができる。
【0039】
従って、本実施の形態の装置により、高い精度でレンズ100に溝を形成する加工を行うことができる。
そして、眼鏡レンズの製造歩留まりを向上することや、高い品質の眼鏡レンズを安定して大量生産することを可能にする。
【0040】
また、本実施の形態の装置によれば、シャフト33の回転により、レンズ100を回転させながら測定子11,12による測定を行うため、レンズ100のコバ面の位置とレンズ100の外形形状とを、同時に測定することができる。これにより、測定に要する時間を短縮することが可能である。
【0041】
また、上述した測定子11,12によれば、レンズ100の凹面又は凸面に対向する円錐面を有する第1の部材15と、レンズ100のコバ面に対向する第2の部材16とを設けて、これら2つの部材15,16の接続部(境界)にレンズ100を引っ掛けて測定が行われる構成としている。
これにより、第1の部材15及び第2の部材16がレンズ100の凹面・凸面やコバ面に当たることがなく、第1の部材15及び第2の部材16の接続部(境界)で測定子11,12をレンズ100に引っ掛けることができる。
これにより、レンズ100のコバ面や凹面・凸面に傷をつけることなく、レンズ100の外形形状やコバ厚の測定を行うことができる。
そして、各測定子11,12の第1の部材15の円錐面の立ち上げ角度と第2の部材16の傾斜角を前述したように設定することにより、確実にレンズ100の凹面・凸面やコバ面に傷をつけることなく、レンズ100のコバ厚の測定を行うことができる。
【0042】
特に、各測定子11,12の第2の部材16の傾斜角を、測定の対象であるレンズ100の平摺り角よりも大きい角度としたことにより、第2の部材16がレンズ100のコバ面に当たることなく、確実にレンズ100のコバ面に傷をつけることなく測定を行うことができる。
【0043】
また、各測定子11,12において、レンズ100の凹面又は凸面に対向する第1の部材15と、レンズ100のコバ面と対向する第2の部材16とが、別々の部品となっている。
これにより、別々の部品である第1の部材15及び第2の部材16を組み合わせてできる接続部(境界)を、1つの部品に2つの面を形成した場合の面の境界部分と比較して、シャープに形成することができる。そのため、レンズ100が測定子11,12から外れるといった不具合が生じにくくなる。
さらに、各測定子11,12の第1の部材15と第2の部材16とが別々の部品になっているため、作製しやすい。
【0044】
また、第1の部材15の円錐面がレンズ100の凹面又は凸面に対向し、棒状の第2の部材16の表面がレンズ100のコバ面と対向しており、第1の部材15及び第2の部材16のレンズ100の面と対向する各面が、共に曲面となっている。
これにより、第1の部材15及び第2の部材16にそれぞれレンズ100が接する面積を最小限に抑えることができるため、更にレンズ100に傷が付きにくくすることができる。さらに、レンズ100が鋭角部を有する場合でも、レンズ100に対向する面が平面である構成と比較して、さらに精度良くレンズ100のコバ面形状に測定子11,12を追従させることができる。
従って、バイフォーカルレンズ(遠用視と近用視の2つのレンズを組み合わせた、二重焦点レンズ)のように、突起部のあるレンズ100に対しても、レンズの突起部と測定子11,12が当たることなく、測定を行うことができる。
【0045】
なお、測定子11,12の第1の部材15の円錐面の立ち上げ角は、図3及び図4に示した立ち上げ角(45°及び30°)に限定されるものではない。測定対象のレンズ100の面(凹面或いは凸面)の形状(曲率等)に対応して、第1の部材15が測定対象の面(凹面或いは凸面)に当たらないように対向する、ある角度以上とする。測定対象の面に対応させるため、通常は、凹面用の測定子11の方が第1の部材15の円錐面の立ち上げ角が小さくなり、円錐が比較的平たくなる。
また、レンズ100が測定子11,12に引っ掛かるようにするために、第1の部材15の円錐面の水平面に対する傾斜角(=立ち上げ角の余角)を、第2の部材16の傾斜角(例えば5°)よりも充分に大きくする。
従って、各測定子11,12の第1の部材15の円錐面の立ち上げ角は、上述の両方の条件を満たす範囲内の角度から選定することになる。
【0046】
上述の実施の形態の装置では、測定子11,12及びコバ位置測定センサ21,22を使用して、レンズ100のコバ厚を測定していた。
本発明においては、レンズのコバ厚を測定する代わりに、レンズのコバ厚が所定の範囲内にあるかどうかを検出するように、製造装置の検出部を構成しても構わない。
このようにレンズのコバ厚が所定の範囲内にあるかどうかを検出する場合に、例えば、図1に示した測定子11,12及びコバ位置測定センサ21,22を、検出子及びコバ位置検出センサとして使用することも可能である。このとき、コバ位置検出センサが、予め決められた設計値を基準として所定の範囲内にあるかどうか検出するように、コバ位置検出センサの制御部や制御プログラム等を構成すればよい。
【0047】
上述の実施の形態の装置では、装置のレンズ加工部が、溝掘りツール41を備えて、レンズ100に溝を形成する溝掘り加工を行う構成であった。
本発明装置では、レンズにヤゲンを形成する構成のレンズ加工部や、レンズにその他の加工を行う構成のレンズ加工部とすることも可能である。
【0048】
上述の実施の形態の装置では、検出子として測定子11,12を有する検出部で、レンズ100の外形形状及びコバ厚を測定していた。
本発明は、レンズの外形形状及びコバ厚を測定する構成に限定されるものではなく、レンズの外形形状及び/又は寸法を、測定又は検出する、その他の構成とすることも可能である。
【0049】
上述の実施の形態の測定子11,12では、第1の部材15が略円錐形状、第2の部材16が断面円形の棒状であった。
本発明において、検出子の構成は上述の実施の形態の測定子11,12の構成に限定されるものではなく、その他の構成とすることも可能である。
【0050】
本発明において、検出子は、レンズの凹面又は凸面に対向する第1の部材と、レンズのコバ面に対向する第2の部材とを有していて、これら2つの別々の部材がそれぞれ測定子本体に取り付けられており、かつこれら2つの部材が互いに接続されていて、その接続部にレンズの凹面又は凸面の端縁を引っ掛けて検出が行われる構成であれば良い。
このような構成とすることにより、別々の部品である第1の部材及び第2の部材を組み合わせてできる接続部(境界)を、1つの部品に2つの面を形成した場合の面の境界部分と比較して、シャープに形成することができ、レンズが測定子から外れるといった不具合が生じにくくなる。さらに、第1の部材と第2の部材とが別々の部品になっていることにより、各部品の作製が容易になる利点を有している。
【0051】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の眼鏡レンズの製造装置の一実施の形態の概略構成図(側面図)である。
【図2】図1の装置の長手方向から見た側面図である。
【図3】A〜C 図1の左側の凹面を測定する測定子の拡大図である。
【図4】A〜C 図1の右側の凸面を測定する測定子の拡大図である。
【図5】図1の右側の測定子で測定を行っている状態を説明する図である。
【図6】図1の左側の測定子で測定を行っている状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
11 (レンズ凹面用の)測定子、12 (レンズ凸面用の)測定子、13 測定子本体、15 第1の部材、16 第2の部材、21,22 コバ位置測定センサ、23 モータ、27 検知センサ、28 倣い用バネ、31,32 レンズチャック、41 溝堀りツール、100 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの製造装置であって、
前記眼鏡レンズとなるレンズの加工を行うレンズ加工部と、
前記レンズの外形形状及び/又は寸法を検出する検出部とを有し、
前記検出部は、前記レンズの外形形状及び/又は寸法を検出するための一対の検出子を備え、
前記一対の検出子は、前記レンズの凹面の縁に引っ掛ける一方の検出子と、前記レンズの凸面の縁に引っ掛ける他方の検出子であり、
各前記検出子は、検出子本体と、前記検出子本体に取り付けられており、前記レンズの凹面又は凸面に対向する第1の部材と、前記検出子本体に取り付けられており、前記レンズのコバ面に対向する第2の部材とを有し、前記第1の部材及び前記第2の部材が、互いに接続されており、
前記第1の部材と前記第2の部材との接続部に、前記レンズの凹面又は凸面の端縁を引っ掛けることにより、前記レンズの外形形状及び/又は寸法の検出がなされる
眼鏡レンズの製造装置。
【請求項2】
前記検出子の前記第2の部材の水平面に対する傾斜角が、検出する対象の前記レンズの平摺り角よりも大きい角度である請求項1に記載の眼鏡レンズの製造装置。
【請求項3】
眼鏡レンズとなるレンズの外形形状及び/又は寸法を検出するための検出子であって、
検出子本体と、
前記検出子本体に取り付けられており、前記レンズの凹面又は凸面に対向する第1の部材と、
前記検出子本体に取り付けられており、前記レンズのコバ面に対向する第2の部材とを有し、
前記第1の部材及び前記第2の部材が、互いに接続されており、
前記レンズの外形形状及び/又は寸法の検出を行う際には、前記第1の部材と前記第2の部材との接続部に、前記レンズの凹面又は凸面の端縁が引っ掛けられる
検出子。
【請求項4】
前記第1の部材が略円錐形状であり、前記第2の部材が断面円形の棒状であり、前記第1の部材の頂部に設けられた孔を貫通して前記第2の部材が延びている、請求項3に記載の検出子。
【請求項5】
前記検出子本体に形成された溝に、前記第2の部材がはめ込まれている、請求項3に記載の検出子。
【請求項6】
前記第2の部材の水平面に対する傾斜角が、検出する対象の前記レンズの平摺り角よりも大きい角度である請求項3に記載の検出子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−248239(P2009−248239A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98533(P2008−98533)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】