説明

硬化性組成物、それを用いて形成されたフィルム、ならびに該フィルムを有する偏光板及び液晶表示装置

【課題】光学異方性を自在に制御できる新規な硬化性組成物、及び光学補償シート等として有用なフィルムを提供する。
【解決手段】無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子を含有する硬化性組成物、好ましくは、さらに硬化可能な材料を含有する硬化性組成物である。また、該硬化性組成物を硬化させて形成したフィルム、又は該硬化性組成物を硬化させて形成した層を有するフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ分野、オプトエレクトロニクス分野、フォトニクス分野において有用な新規な硬化性組成物、及びそれを用いて形成された、偏光板保護フィルム、光学補償フィルム等として有用なフィルム、ならびにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高度な情報化社会の進展に伴い、情報の伝送、処理、及び記録に対して光技術を用いる試みが多数なされている。そのような状況において、分子の配向状態の変化を利用することにより光を自在にマニピュレートできる液晶は、極めて有用な材料として多くの注目が集まっている。
【0003】
液晶を利用した光学素子としては、文字や画像を表示するためのディスプレイが代表的なものであるが、その他にも、空間光変調器、調光材料、光学補償板、非線形光学材料等が知られており、また、光学機能の他にも特異な物性を反映して、導電性材料、光伝導性材料、高強度材料、トライボロジー材料、電気粘性流体等への応用が期待されている。
【0004】
また高分子材料は、従来より産業の広い領域において極めて有用なものとして活用されている。近年、画像を表示するためのディスプレイ分野においては、フラットパネルディスプレイ(FPD)と呼ばれる、液晶表示素子(LCD)、プラズマ表示素子(PDP)が広く用いられるようになってきた。液晶表示装置においては、その軽量化、製造コスト低減のために液晶セルの薄膜化やセル内の液晶の改良が行われている。そのために光学補償シートをはじめとする光学フィルムの重要性が増し、光学フィルムの性能発現のために、光学的異方性(Re:フィルム面内のレターデーション値、Rth:フィルム厚み方向におけるレターデーション値)をコントロールする必要性が生じている。LCDの画質に対する要求が高まるにつれ、さらにより広い領域(例えば、より高いReとより低いRth)を自在にコントロールすることが可能な方法が必要とされるようになってきた。
【0005】
そのような要求に応じて、特許文献1及び2などに、光学フィルムのレターデーション上昇剤等が開示されているが、更なる優れた方法の実現が求められている。
【特許文献1】欧州特許公開EP0911656A2号公報
【特許文献2】特開2003−344655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光学異方性を自在に制御可能であり、種々の光学材料の原料として有用な、新規な硬化性組成物を提供することを課題とする。特に、ディスプレイ分野において有用な、硬化性組成物及びかかる硬化性組成物を用いて作製されたフィルム、ならびにかかるフィルムを有する偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
[1] 無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子を含有する硬化性組成物。
[2] 硬化可能な材料の少なくとも一種を含有することを特徴とする[1]の硬化性組成物。
[3] 前記硬化可能な材料が活性エネルギー線硬化性材料である[2]の硬化性組成物。
[4] 前記硬化可能な材料がゼラチン系高分子である[2]の硬化性組成物。
[5] 前記分子が液晶分子である[1]〜[4]のいずれかの硬化性組成物。
[6] 前記分子が硬化可能な材料と親和性を有する置換基をさらに有する[2]〜[5]のいずれかの硬化性組成物。
[7] 前記分子を吸着させた無機微粒子として、又は前記分子を吸着させた無機微粒子の他に、重合性基を有する分子を吸着させた無機微粒子を含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの硬化性組成物。
前記無機微粒子が、重合性基を有する分子を吸着させた無機微粒子であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの硬化性組成物。
[8] 前記重合性基を有する分子が液晶分子である[1]〜[8]のいずれかの硬化性組成物。
[9] 液晶性組成物であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかの硬化性組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれかの硬化性組成物を硬化して形成されたフィルム。
[11] 支持体上に、[1]〜[9]のいずれかの硬化性組成物を硬化して形成される層を有するフィルム。
[12] 前記硬化性組成物を硬化させて形成されるフィルム又は層が、光学異方性である[10]又は[11]のフィルム。
[13] 偏光層と該偏光層を挟持する2枚のフィルムとを有する偏光板であって、前記フィルムのうち少なくとも一方が[10]〜[12]のいずれかのフィルムであることを特徴とする偏光板。
[14] [10]〜[12]のいずれかのフィルムを少なくとも一枚有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を無機微粒子に吸着した状態で硬化性組成物中に存在させて、異方性に由来して発現する配向性を利用することにより、従来の技術と比較してより自在に光学異方性を制御することを可能にしている。即ち、本発明によれば、光学異方性を広範囲に制御可能な硬化性組成物を提供することができる。本発明の硬化性組成物を用いることにより、所望の光学特性を示すフィルムを容易に作製することができる。かかるフィルムは、光学異方性フィルムとしてディスプレイ用途に有用である。
【発明の実施の形態】
【0009】
以下に本発明の組成物について詳しく説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
[硬化性組成物]
本発明は、無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子を含有する硬化性組成物に関する。
本発明の一態様(第1の態様)は、前記所定の分子を吸着させた無機微粒子とともに、硬化可能な材料を含有する硬化性組成物である。本態様では、前記所定の分子は、前記硬化可能な材料に対する親和性を有する基を有しているのが好ましい。
また、本発明の他の態様(第2の態様)は、前記無機微粒子に重合性基を有する分子が吸着している態様である。本態様では、前記所定の基を有する分子が重合性基を有していてもよいし、前記所定の基を有する分子の他に、重合性基を有する分子が吸着していてもよいし、双方の無機微粒子が混合していてもよい。
なお、本明細書において「硬化性組成物」とは、新たに結合が形成されることによって硬化する組成物を意味し、ここでいう「硬化」には、例えば、ポリマー溶液等を乾燥すると溶媒が蒸発して、膜となるような、化学結合を伴わない現象は含まれない。硬化に寄与する化学結合は、硬化可能な材料の分子間で形成される結合であってもよいし、無機微粒子に吸着した分子が重合反応して形成される結合であってもよいし、無機微粒子に吸着した分子と硬化可能な材料中の分子との間で形成される結合であってもよい。また、それらの二種以上の結合が硬化に寄与していてもよい。
【0011】
本発明では、無機微粒子に吸着した状態の液晶性化合物のコア部となり得る基を存在させて、その異方性に由来して発現する配向性を利用して、光学異方性を制御し、その後、硬化させることにより、所望の光学特性を示す膜等の構造体を安定的に得ることができる。本発明によれば、例えば、芳香族環を含む有機化合物等を添加して光学異方性を制御する従来の技術(例えば、上記特許文献1及び2)と比較して、より自在に光学異方性を制御することが可能であり、光学異方性を広範囲に制御可能である。また、本発明に従えば光学異方性の発現には、特開2005−218889、特開2005−220157、特開2005−288214、特開2005−288215、特開2005−306992に記載されているような、電界等の印加を必ずしも必要とはしない。
【0012】
本発明の硬化性組成物は、所定の基を有する有機化合物及び無機化合物の両者を一体化した形で同時に含むので、それぞれ単独で含む組成物(無機微粒子と、該無機微粒子に吸着していない状態の所定の基を有する有機化合物とを含有する組成物)と比較して、それらの組合せによる組合せ後の異方性が明確化でき、より多様な屈折率異方性、屈折率(差)波長分散を発現可能である。所望の屈折率異方性、屈折率波長分散性を発現するために、無機微粒子の形状、それに吸着した分子の形状、吸着の態様、無機微粒子とそれに吸着した分子の屈折率や屈折率波長分散の大小関係等を、選択して組み合わせる。
例えば、本発明の硬化性組成物の例として、前記所定の基を有する棒状分子を吸着させた棒状の無機微粒子と、硬化可能な材料とを含有する硬化性組成物;及び前記所定の基とともに重合性基を有する棒状分子を吸着させた棒状の無機微粒子を含有する硬化性組成物が挙げられる。前記棒状分子は、その分子末端で、無機微粒子の棒側面に吸着しているのが好ましい。無機微粒子の長軸方向の屈折率がそれと直交する方向の屈折率よりも大きく、無機微粒子の屈折率異方性が吸着している棒状分子の屈折率異方性よりも充分に大きく、且つ無機微粒子の屈折率異方性の波長分散が、吸着している棒状分子のそれよりも充分に小さい組み合わせであるとする。この態様の硬化性組成物を硬化させて膜を形成すると、作製される膜の面内レターデーションRe及び厚さ方向のレターデーションRthのいずれも正であり、且つRe及びRthの波長分散を逆波長分散に制御可能であると考えられる。
【0013】
また、本発明の硬化性組成物の他の例として、前記所定の基を有する円盤状分子を吸着させた棒状の無機微粒子と、硬化可能な材料とを含有する硬化性組成物;及び前記所定の基とともに重合性基を有する円盤状分子を吸着させた棒状の無機微粒子を含有する硬化性組成物;が挙げられる。前記円盤状分子は、その分子面で、無機粒子の棒側面に吸着しているのが好ましい。無機微粒子の長軸方向の屈折率がそれと直交する方向の屈折率よりも小さく、無機微粒子の屈折率が吸着している円盤状分子の屈折率とほぼ同じで、且つ無機微粒子の屈折率の波長分散が、吸着している円盤状分子のそれよりも充分に小さい組み合わせであるとする。この態様の硬化性組成物を硬化させて膜を作製すると、作製される膜のReを正でその波長分散は順分散、Rthをほぼ0に制御することも可能であると予想される。
【0014】
また、円盤状又は平板状の無機微粒子を用いた場合には、吸着させる分子の形状や、双方の屈折率異方性の大小関係を選択すること等により、作製するフィルムがCプレートとしての性質を満足したものとすることもできるし、又はCプレートとしての正負、波長分散の順逆を制御可能であると考えられる。さらに、吸着の面選択性技術を利用して、Reは正でその波長分散は逆分散、Rthは正でその波長分散は順分散のものを形成することも可能になると考えられる。
【0015】
以下、本発明の組成物の調製に用いられる種々の材料について説明する。
[無機微粒子]
本発明に用いる無機微粒子は、粒径が一般にnm〜μmのオーダーのものが好ましい。より具体的には、投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子の平均粒径が5〜500nmであるのがより好ましく、8〜300nmであるのがさらに好ましい。粒径分布及び/又は形状の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは100nm以下であるのが好ましく、より好ましくは75nm以下である。形状には異方性があることが好ましく、針状あるいは棒状であることがより好ましい。針状及び棒状の微粒子は、一般的には、アスペクト比が3〜20であり、5〜15であるのがより好ましい。また、円盤状又は平板状の無機微粒子を用いてもよく、これらの形状は、アスペクト比で示すと、一般的にはアスペクト比2〜50であり、好ましくは5〜20となる粒子である。
また、無機微粒子としては形状異方性を有するのが好ましく、さらに加えて複屈折性を有することがより好ましく、長軸方向(無機粒子の最も長い方向)と短軸方向(長軸方向と垂直な軸のうち最も短い方向)の屈折率差としては、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。
【0016】
無機微粒子としては、金、銀、白金、パラジウム、シリコン、ゲルマニウムのような単体金属、III−V系化合物半導体、金属のカルコゲナイド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物、又はそれらの複合物等)、ペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等)、リン酸塩(第三リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カルシウム、第一リン酸アルミニウム、ホスフィン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸マグネシウム等)、金属フッ化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等)等を使用することができる。
【0017】
好ましい金属のカルコゲナイドとして、アルミニウム、珪素、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン又はビスマスの硫化物;カドミウム又は鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物;等が挙げられる。さらには、Mxyz又はM1x2yz(M、M1及びM2はそれぞれ金属元素、Oは酸素、x、y及びzは価数が中性になる組み合わせの数を表す)の様な複合物も好ましく用いることができる。また、好ましい化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム−ヒ素又は銅−インジウムのセレン化物;銅−インジウムの硫化物;等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いる無機微粒子の好ましい具体例は、Si、SiC、BeO、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、As2Se3、LiNbO3、BaTiO3、SrTiO3、SrCO3、CaF2、MgF2、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、KH2PO4等の微粒子であり、より好ましくはSiC、BeO、Al23、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、ZnS、PbS、As2Se3、LiNbO3、BaTiO3、SrTiO3、SrCO3、CaF2、MgF2、InP、GaAs又はKH2PO4の微粒子である。
【0019】
さらに、複屈折性が顕著である点でより好ましい無機微粒子の具体例としては、SiC、BeO、Al23、TiO2、SnO2、ZnS、PbS、As2Se3、LiNbO3、BaTiO3、SrTiO3、SrCO3、MgF2又はKH2PO4の微粒子が挙げられる。特に、コランダムのAl23、ルチル型或いはアナタ−ゼ型のTiO2、アンチモンをドープしたSnO2、LiNbO3、BaTiO3、SrCO3又はKH2PO4の微粒子が好ましい。
これらのうち、例えば、アナタ−ゼ型の針状TiO2微粒子を用いた場合には、長軸方向がそれと直交する方向の屈折率よりも大きいために、TiO2微粒子を面内配向させることにより、厚み方向のレターデーション(Rth)を増加させることが可能であり、ある一軸方向に配向させることにより、その方向の屈折率を増加することが可能である。また、例えば、針状SrCO3微粒子を用いた場合には、長軸方向がそれと直交する方向の屈折率よりも小さいために、SrCO3微粒子を面内配向させることにより、厚み方向のレターデーション(Rth)を減少させることが可能であり、ある一軸方向に配向させることにより、その方向の屈折率を増加することが可能である。ここで、粒子をある一軸方向に配向させるための手段としては、後述するフィルムの延伸処理が好ましい例として挙げられる。
【0020】
無機微粒子の種類も異なる2種以上の混合であってもよい。2種以上の微粒子を混合して使用する場合、1種はTiO2、ZnO、Nb25、SrCO3、及びSrTiO3から選択されるのが好ましい。また、他の1種はSnO2、Fe23及びWO3から選択されるのが好ましい。さらに好ましい組み合わせとしては、ZnOとSnO2、ZnOとWO3又はZnO、SnO2とWO3などの組み合わせを挙げることができる。2種以上の微粒子を混合して用いる場合、それぞれの粒径及び/又は形状が異なっていてもよい。
【0021】
本発明に用いる無機微粒子の調製方法については特に限定されないが、ゾル−ゲル法又はゲル−ゾル法により作製された微粒子であるのが好ましい。中でも、作花済夫の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法;杉本忠夫の「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ,第35巻,第9号,1012〜1018頁(1996年)に記載のゲル−ゾル法;が好ましい。またDegussa社が開発した、塩化物を酸水素塩中で高温加水分解することにより酸化物の微粒子を作製する方法も好ましい。
【0022】
無機微粒子が酸化チタン(TiO2)の場合、上記ゾル−ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法及び塩素法を用いることもできる。さらにゾル−ゲル法として、Barbeらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、Burnsideらのケミストリー・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0023】
[無機粒子に吸着させる有機化合物]
本発明の組成物は、有機化合物の分子を吸着させた無機微粒子を含有する。ここで、無機粒子に吸着している分子は有機化合物の分子であって、吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する。該有機化合物の例には、液晶性化合物が含まれるとともに、液晶形成をしない、即ち非液晶性化合物であっても、液晶化合物の分子のコア部となり得る部分構造を有している化合物も含まれる。
液晶化合物の分子のコア部を形成し得る基についてさらに説明する。本発明において、液晶分子のコア部とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基であり、一般的に、メソゲンとも称される構造のことをいう。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。前記液晶分子のコア部を形成し得る基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁〜第16頁の記載、及び、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。好ましくは、サーモトロピック液晶の残基であり、さらに好ましくは、棒状液晶及びディスコティック液晶の残基である。棒状液晶ではネマティック相及びスメクティックA相を示す液晶の残基がより好ましく、ディスコティック液晶ではディスコティックネマティック相を示す液晶の残基がより好ましい。
ディスコティック液晶の残基の好ましい例には、ベンゼン、トリフェニレン、トルキセン、トリオキサトルキセン、アントラキノン、フタロシアニンまたはポリフィリン、マクロサイクレン、ビス(1,3−ジケトン)銅錯体、テトラアリールビピラニリデン、テトラチアフルバレン、及びイノシトールが含まれる。
【0024】
液晶化合物の分子のコア部を形成し得る基は、棒状液晶の残基であるのがより好ましい。棒状液晶のメソゲン基あるいはコア部と呼ばれる剛直な液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格としては、一般式(I)で示される基が挙げられる。
【0025】
一般式(I)
【化1】

上記一般式(I)中、L1およびL2は単結合または二価の連結基を表す。二価の連結基としては−O−、−S−、−CO−、−NR−(Rは水素原子(H)、メチル基及びエチル基より選ばれる置換基を表す)、−CH=N−、−N=N−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
二価の鎖状基としては、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基が好ましい。これらは分岐または置換基を有していてもよい。より好ましい炭素数としては2〜8であり、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、2−メチル−テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2−ブテニレン基、2−ブチニレン基が好適な例として挙げられる。
二価の環状基の例としては、後述するCy1〜Cy3と同様である。
【0026】
上記一般式(I)中、Cy1、Cy2およびCy3はそれぞれ独立に二価の環状基を表す。5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。単環でも縮合環でもよく、単環が好ましい。芳香族環、脂肪族環および複素環のいずれでもよい。このうち、芳香族環としては、ベンゼン環(特に1,4−フェニレン基)、ナフタレン環(特にナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基)が好ましい例として挙げられ、脂肪族環としては、シクロヘキサン環(特に1,4−シクロへキシレン基)、ビシクロ[2.2.2]オクタン環が好ましい例として挙げられ、複素環としては、ピリジン環(特にピリジン−2,5−ジイル基)、ピリミジン環(特にピリミジン−2,5−ジイル基)、チオフェン環(特にチオフェン−2,5−ジイル基)、ジオキサン環が好ましい例として挙げられる。また、Cy1、Cy2およびCy3はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数が2〜6のアシルアミノ基が挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)中、mは0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのL2及びCy2はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
棒状液晶の残基の好ましい例には、ビフェニル基、フェニレンカルボニルオキシビフェニル基、カルボニルオキシビフェニル基、ターフェニル基、ナフチレンカルボニルオキシフェニル基、フェニレンエテニレンカルボニルオキシビフェニル基、フェニレンエチニレンフェニル基、安息香酸フェニルエステル基、ベンジリデンアニリン基、アゾベンゼン基、アゾキシベンゼン基、スチルベン基、フェニレンエチニレンカルボニルオキシビフェニル基、ナフチレンビフェニル基、及びそれらのベンゼン環が飽和になったものあるいは複素環に置き換わったものが含まれる。
【0029】
本発明では、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子は、無機微粒子に吸着した状態で組成物中に含有される。従って、該分子が有する前記吸着基は、無機微粒子に容易に吸着し得る官能基であるのが好ましい。この官能基の好ましい例は、無機微粒子の種類(金属種)等により異なるが、例えば、無機微粒子が金を含む材料からなる場合は、メルカプト基、ジスルフィド基が好ましい例として挙げられる。また、無機微粒子が酸化物(例えば金属酸化物)からなる場合は、COOH基、OH基、SO3H基、及び後述する一般式(1)又は(2)で表される基のような酸性基、アミノ基あるいはオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート又はα−ケトエノレートのようなキレート化基、後述する一般式(3)で表される基、及び後述する一般式(4)、(5)又は(6)で表される基が好ましい例として挙げられ、COOH基またはその塩及び後述する一般式(1)、(2)、又は(3)で表される基がより好ましい例として挙げられる。また、無機微粒子が金属炭酸塩からなる場合は、吸着基は、後述する一般式(4)、(5)又は(6)で表される基、COOH基またはその塩、或いは後述する一般式(1)又は(2)で表される基が好ましい例として挙げられ、COOH基またはその塩、或いは後述する一般式(1)又は(2)で表される基がより好ましい例として挙げられる。
【0030】
好ましい吸着基の例として、下記一般式(1)で表されるホスホン酸基もしくはその塩、下記一般式(2)で表されるリン酸モノエステル基もしくはその塩、又は下記一般式(3)で表される基が挙げられる。
一般式(1)
−PO3m
一般式(2)
−OPO3m
一般式(3)
−Si(R13-n(OR2n
【0031】
上記一般式(1)及び(2)中、Xはそれぞれ独立に、水素原子、あるいは1価もしくは2価の有機又は無機カチオンを表し、mは1又は2であるが、mが1の場合は、Xは2価の有機又は無機カチオンであり、mが2の場合は、2個のXはそれぞれ水素原子あるいは1価の有機又は無機カチオンである。
前記式中、mが2であり、2つのXがともに1価の有機又は無機カチオンの場合、双方は同一であっても異なっていてもよいが、コスト上、同一のものが好ましい。
【0032】
1価の有機又は無機カチオンとしては、リン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の有機カチオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、ジ(ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオンなどが例として挙げられ、この中でもテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオンが好ましく、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオンが更に好ましい。また、1価の無機カチオンとしては、アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが例として挙げられ、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンが更に好ましい。
【0033】
2価の有機又は無機カチオンとしては、リン酸の塩を形成し得るものであればよく、2価の有機カチオンとしては、上記有機アンモニウムがメチレン基、アルキルエーテル等の連結基で連結したものが例として挙げられる。また、2価の無機カチオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオンなどが例として挙げられ、この中でもカルシウムイオンが好ましい。
【0034】
上記一般式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。前記アルキル基の例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基及びn−ブチル基が含まれる。nは2又は3が好ましく、3であることがより好ましい。
【0035】
前記吸着基が上記一般式(3)で表される基である場合、無機微粒子としては金属のカルコゲナイドであることが、高い吸着性を示すという点で好ましい。金属のカルコゲナイドの好ましい例としては前記した通りである。金属のカルコゲナイドの中でも特に金属酸化物(SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25等)がより好ましい。金属酸化物として、好ましくは、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2、ZnO、Nb25、より好ましくは、TiO2、ZrO2、SnO2、ZnO、Nb25、更に好ましくはTiO2、ZrO2、ZnOである。
【0036】
また、下記一般式(4)、(5)及び(6)で表される吸着基も好ましい。
【0037】
【化2】

【0038】
式(4)〜(6)中、*は、液晶のコア部となり得る基に直接又は連結基を介して結合する部位を示す。
上記一般式(4)中、R3は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。前記アルキル基の例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基及びn−ブチル基が含まれ、i−プロピル基がよりさらに好ましい。
【0039】
前記吸着基と、液晶化合物のコア部を形成し得る基との間に連結基が存在してもよい。連結基としては、例えば、炭素数1〜18、好ましくは1〜6の置換もしくは無置換の直鎖あるいは分岐アルキレン;炭素数1〜18、好ましくは1〜6のエーテル結合が介在する直鎖あるいは分岐アルキレン;炭素数6〜18、好ましくは6〜12の置換もしくは無置換のアリーレン;O、NH、S、CONH、NHCO、及び5又は6員複素環が挙げられる。
【0040】
前記第1の態様では、前記無機微粒子に吸着させる分子は、併用する硬化可能な材料との親和性を有する置換基をさらに有しているのが好ましい。例えば、硬化可能な材料が一種又は二種以上の重合性モノマーを含有する場合は、該置換基と硬化可能な材料との親和性については、硬化可能な材料と該置換基のそれぞれの溶解度パラメータ(SP値)を参考に推測することができ、SP値がお互いに近いことが好ましい。ここで、SP値の計算は例えばJournal of Paint Technology誌,42巻,76頁,1970年に記載のHoyらによる方法を参照することができる。また、高分子材料のSP値は、以下の式
SP=a1×SP1+a2×SP2+a3×SP3+…
に従い計算により求めることができる。ここで、式中のSP1、SP2およびSP3は、前記硬化可能な材料に含まれる単量体を単独で重合した際に得られるそれぞれのホモポリマーのSP値を表し、「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」に記載されている値を引用した値である。また、上記式中のa1、a2およびa3は単量体のそれぞれの質量分率を表す。
【0041】
該置換基の好ましい例は、当然のことながら用いる硬化可能な材料によって異なる。多くの場合、直鎖あるいは分岐アルキル基が有効に機能する場合が多いが、例えば、前記硬化可能な材料が、DPHAなどのアクリル系化合物を含む場合には、CO基、COO基を置換基として有するものが好ましく、前記硬化可能な材料が、ゼラチン系ポリマーの場合には、アミド基を置換基として有するもの、アミノ酸誘導体を置換基として有するものが好ましい。
【0042】
前記第2の態様では、無機微粒子に吸着させる分子は、重合性基を有しているのが好ましい。勿論、前記第1の態様においても、重合性基を有する分子が吸着した無機微粒子を用いてもよい。重合性基としては、同種官能基間で結合を形成し得るもの、異種官能基間で結合し得るもののいずれでもよい。例えばS.R.サンドラーおよびW. カロー(S.R.Sandler,W.Karo)著、オーガニック ファンクショナルグループ プレパレーションズ(Oragnic Functional Group Preparations )第1巻および第2巻(アカデミックプレス社、ニューヨーク、ロンドン 1968年刊)に記載の置換基を挙げることができる。それらのうち好ましくは、多重結合(構成原子は、炭素原子、非炭素原子のいずれでもよい)およびオキシラン、アジリジンなどの複素小員環であり、さらに好ましくはR.A.M.Hikmetらの研究報告〔Macromolecules, 25巻,4194頁(1992年)〕及び〔Polymer,34巻,8号,1736頁(1993年)〕、D.J.Broer らの研究報告〔Macromolecules, 26巻,1244頁(1993年)〕に記載されているように、二重結合すなわちアクリロイル基、ビニルオキシ基およびエポキシ基である。好ましくは、重合開始剤等の存在下、光及び/又は熱の供与によって重合反応を開始し得る基である。その例には、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基等が含まれる。
【0043】
以下に重合性基の例を示す。
【0044】
【化3】

【0045】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0046】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0047】
【化4】

【0048】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記(M−1)〜(M−6)のなかでも、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)が最も好ましい。
【0049】
開環重合性基として好ましいのは、環状エーテル基であり、中でもエポキシ基またはオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0050】
以下に本発明に使用可能な、無機粒子への吸着基と、液晶化合物のコア部を形成し得る基とを有する有機化合物の具体例を示すが、本発明の範囲はこれらのみに限られるものではない。なお、下記には、前記有機化合物の具体例として、液晶性化合物とともに、例示化合物C−4及びC−5のように非液晶性化合物も例示する。また、無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基とともに、重合性基を有する有機化合物の具体例はC−2、C−23及びC−11である。
【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
【化12】

【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
[吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子]
本発明において、吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子の無機微粒子への吸着の態様については限定されず、物理的吸着及び化学的吸着の双方の態様、及びその中間的な態様のいずれも含まれる。中でも、化学的吸着が好ましい。該化合物を吸着させた無機微粒子は、具体的には、無機微粒子と該化合物とを混合して、接触させ、結果として該化合物を無機微粒子に物理吸着及び/又は化学吸着させることによって得られる。混合及び接触の際には溶媒を用いることもでき、また、下記硬化可能な材料ドープ液の状態で行うことができる。無機微粒子の該化合物の吸着の有無については、紫外可視吸収スペクトル、赤外吸収スペクトル、熱分析を測定することにより確認できる。無機微粒子に対する該化合物の吸着は、単層での被覆であることが好ましい。吸着量は、粒子のサイズにより単位質量当りの表面積が変化するので、好ましい量はそれに依存して変化するが、10〜300質量%であるのが好ましく、20〜150質量%であるのがより好ましい。
なお、本発明の硬化性組成物をドープや塗布液等として調製し、異方性フィルム等の形成に用いる場合は、ドープ及び塗布液中において有機化合物の分子が無機微粒子に吸着していなくてもよく、例えば、ドープを流延又は塗布液を塗布等した後、乾燥する過程において、有機化合物の分子の無機微粒子への吸着が進行してもよい。
【0063】
なお、前記所定の基を有する分子を無機微粒子に吸着させる際に、分子の特定位置に吸着基を導入することにより、無機微粒子上に端部で吸着する、あるいは、面で吸着することを制御することができる。また吸着基種と粒子面の特性とを組み合わせることにより無機粒子の特定部位に分子を吸着させることもできる。
【0064】
本発明の硬化性組成物における、所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子の好ましい含有量は、組成物の用途によって変動するが、光学フィルムを作製する場合は、良好な成型性及び光学異方性の発現の観点から、一般的には、組成物中に0.5〜20質量%であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。
【0065】
[硬化可能な材料]
前記第1の態様の硬化性組成物は、硬化可能な材料を含有する。前記硬化可能な材料は、例えば、電子線等の粒子線、X線や紫外線等の電磁波等、活性エネルギー線により硬化する材料が挙げられる。また、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等の結合が熱的化学反応によって形成し硬化する材料が挙げられる。前者としては、紫外線硬化性のものが好ましく、例えば、光ラジカル重合性の化合物や光イオン重合性化合物を含む組成物が挙げられる。後者としては、求核性官能基と求電子性官能基を組合せて用いるものや高分子材料が好ましく、例えば、イソシアナートとアミン、イソシアナートとアルコール、オキシランとカルボン酸の組合せ、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、セルロース誘導体等とそれらの官能基を利用した硬化剤との組合せが挙げられる。
【0066】
光ラジカル重合性の化合物や光イオン重合性化合物を含む組成物としては、好ましくは多官能アクリル系モノマーあるいはオリゴマーが挙げられる。具体例として、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を有する1〜2官能モノマーが挙げられる。これらは液晶性を有するものであってもよい。
【0067】
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリラート、ポリウレタン(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0068】
分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリラート、グリセロールトリ(メタ)アクリラート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリラート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリラート(DPHA)、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリラート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリラート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリラート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリロイル基を有する1官能モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、ラウリル(メタ)アクリラート、ステアリル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリラート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリラート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリラート、トリシクロデカニル(メタ)アクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラート、メトキシエチル(メタ)アクリラート、エトキシエチル(メタ)アクリラート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリラート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリラート、フェノキシエチル(メタ)アクリラート、フェノキシプロピル(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0070】
(メタ)アクリロイル基を有する2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリラート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコール変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、ビス−(2−メタアクリロイルオキシエチル)フタラートが挙げられる。
【0071】
硬化可能な材料は高分子材料であってもよく、その例としては、上記のアクリラート誘導体のほか、高分子材料とともに架橋性剤を含有し、高分子材料中に複数個存在する、適当な官能基を架橋剤により架橋する材料も挙げられる。例えば、ゼラチン誘導体等アミノ酸由来の高分子と、該高分子が有するアミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、ヒドロキシ基などと反応し得る、2官能以上の置換基を有する架橋剤とを含有する組成物;セルロース誘導体等糖由来の高分子やポリビニルアルコール誘導体と、該高分子等が有するヒドロキシ基と反応し得る、2官能以上の置換基を有する架橋剤とを含有する組成物;なども硬化可能な材料として使用可能である。この例以外にも、例えば、活性ハロゲンを有する官能基、活性エステルを有する官能基、Mickael付加可能な官能基、オキシラニル基を有する官能基、イソシアナート基を有する官能基、イソチオシアナート基を有する官能基、ホウ酸誘導体を有する官能基を同種、異種に関わらず、複数個有する高分子材料を用いることができる。
【0072】
前記硬化可能な材料がゼラチンを含有する場合は、ゼラチンに対しては、銀塩写真の領域で硬膜剤と称して用いられていた化合物群から選択される少なくとも一種を併用するのが好ましい。これに関しては、リサーチディスクロージャー(RD)17643 26ページ、RD18716 651ページ左欄、RD307105 874〜875ページの記載を参考にすることができる。具体的には、例えば、シアヌル酸ジクロリド、ジビニルスルホン誘導体が挙げられる。
【0073】
前記硬化可能な材料に用いられるゼラチンは、アルカリ処理、酸処理、酵素処理のいずれかを施したものであってもよいし、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。またゼラチンに、例えば酸ハライド、酸無水物、イソシアネート類、ブロモ酢酸、アルカンサルトン酸、ビニルスルホンアミド類、マレインイミド化合物類、ポリアルキレンオキシド類、エポキシ化合物類等種々の化合物を反応させて得られるゼラチン誘導体を用いてもよい。ゼラチン誘導体の具体例は米国特許2,614,928号、同3,132,945号、同3,186,846号、同3,312,553号、英国特許861,414号、同1,033,189号、同1,005,784号、特公昭42−26845号等に記載されている。
【0074】
[重合開始剤]
前記硬化可能な材料としてアクリラート誘導体など前述の重合性化合物を用いる場合は、本発明の硬化性組成物は、以下に述べる重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応や電子線照射による重合反応等活性エネルギー線を用いる場合が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、活性エネルギー線を用いる、光重合反応または電子線照射による重合反応が好ましく、特に光重合反応が好ましい。
【0075】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、本発明の硬化性組成物の全質量(塗布液として調製する場合はその固形分)の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0076】
本発明の硬化性組成物は、該組成物の所望の物性発現を損なわない限り、以下の他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子(所定の基を有する分子が吸着していない微粒子)及び光学特性調整剤等が含まれる。また、光感応性異性化基を有する化合物を含むことも可能である。これらについては、高分子、41(12)、(1992年)p884、「クロミック材料と応用」(シーエムシー刊)p221、「メカノケミストリー」(丸善刊)p21、「高分子論文集147巻10号」(1991年)p771等にも具体的に記載されている。
【0077】
[光学異方性の発現]
本発明の硬化性組成物は光学異方性膜等の光学材料の作製に有用である。例えば、本発明の硬化性組成物が液晶性を示す場合、一度液晶相形成温度まで加熱し、それと同時にもしくはその後に、その配向状態を維持したまま硬化反応を進行させることにより、その液晶状態における配向形態を損なうことなく固定化して、光学異方性膜を作製することができる。加熱又は冷却等、温度を調整する以外にも、例えば、本発明の硬化性組成物が塗布液等の流体として調製された場合は、支持体等の表面に塗布し、該硬化性組成物を塗布する際に剪断力を与えたり、塗布時の組成物の流動により、該組成物中の成分を配向させて、光学異方性を発現させてもよい。また、該組成物を支持体の表面等に塗布して、塗布層とした後、乾燥する際に圧縮させ、該圧縮の作用によって組成物中の成分を配向させて、光学異方性を発現させてもよい。本発明の硬化性組成物が、硬化可能な材料としてゼラチンを含有する場合は、ゼラチンは乾燥の過程で収縮する傾向があるので、それに伴い塗布層の膜厚が減少する。この作用を利用すると、例えば、塗布層の膜厚が減少するとともに、棒状の吸着無機微粒子を膜面に対して平行方向に配向させて、光学異方性を発現させることができる。
【0078】
本発明の硬化性組成物を用いて光学異方性膜や層を形成する場合は、配向膜を利用するのが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
本発明の硬化性組成物に所望の配向を付与できるのであれば、配向膜としてはどのような層でもよいが、本発明においては、ラビング処理もしくは、光照射により形成される配向膜が好ましい。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがさらに好ましい。
【0079】
[フィルム]
本発明は、前記硬化性組成物を硬化させて形成した層を有するフィルムにも関する。該フィルムは、光学補償フィルム、偏光膜用保護フィルム等の種々の光学フィルムとして有用である。本発明のフィルムの一態様は、高分子フィルム等からなる支持体の表面に、本発明の硬化性組成物を硬化させて形成した層、例えば、光学異方性層、を有するフィルムである。支持体と光学異方性層との間には、前述の配向膜が配置されていてもよい。
なお、本発明の硬化性組成物を硬化させて形成された膜が、自己支持性を有する場合は、本発明のフィルムは該膜のみからなっていてもよい。
【0080】
本発明のフィルムの作製方法の一例は、本発明の硬化性組成物を、高分子フィルム等からなる支持体の表面に塗布し、好ましくは、組成物中の成分の配向を調整して所望の光学異方性を発現した後、重合反応を進行させて硬化させて、層を形成する方法がある。
支持体上に本発明の組成物を塗布する方法としては、該組成物そのものが流動性である場合は、そのものを塗布する方法、該組成物を適切な溶媒に溶解して、塗布液として調製して塗布する方法などが採用される。後者の塗布方法では溶媒を除去するために乾燥工程を実施してもよい。塗布する方式としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が採用される。
【0081】
本発明の硬化性組成物が光重合反応によって硬化可能な組成物である態様では、重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。光照射は非偏光でも偏光でもよく、偏光を用いる場合は直線偏光を用いることが好ましい。さらに、フィルターや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0082】
硬化可能な材料としてゼラチン等を利用した態様では、組成物の乾燥とともに、光学異方性層の発現及び硬化が進行する。従って、本態様では、光照射等を行わなくても、乾燥することにより、例えば所望により加熱乾燥することにより、光学異方性の発現と硬化とを同時に進行させて、光学異方性層等を容易に作製することができる。
【0083】
本発明のフィルムは、前記硬化性組成物を硬化して形成した層を支持するための支持体を有していてもよい。支持体は、平坦性の優れたものが好ましい。例えば、金属基板、シリコン基板、透明基板等が挙げられる。金属基板の好ましい例としては、金、銀、銅、アルミ等の基板が挙げられ、透明基板の好ましい例としては、ガラス基板や高分子フィルム等が挙げられる。前記支持体は、高分子フィルムであるのが好ましい。高分子フィルムの材料については特に制限されず、フィルム状に成型可能な高分子材料であればいずれの使用することができ、例えば、セルロース誘導体、ポリカーボナート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、シンジオタクチックポリステレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリラート、ポリエステルスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン系樹脂、ブロム化フェノキシ樹脂等が挙げられる。中でも、COC、COPと呼ばれる環状ポリオレフィン系樹脂、及びセルロース誘導体が好ましい。
【0084】
〔フィルムの光学特性〕
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0085】
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
【0086】
【数1】

式(2)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
注記:
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
【0087】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0088】
本発明の組成物から形成されたフィルムを、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置の視野角を広くするための光学フィルムとして使用する場合は、フィルムのRe(λ)値及びRth(λ)値は、それぞれ、以下の式(a)及び(b)を満たすのが好ましい。また特に前記フィルムが、偏光板の液晶セル側の保護膜に用いられる場合に好ましい。
式(a): 0nm≦Re(590)≦200nm
式(b): 0nm≦Rth(590)≦400nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。)
下記式(a−1)及び(b−1)を満たすのが、さらに好ましい。
式(a−1): 30nm≦Re(590)≦150nm
式(b−1): 30nm≦Rth(590)≦300nm
【0089】
本発明の組成物から形成されたフィルムをVAモードに使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚使用する形態(2枚型)と、セルの上下のいずれか一方の側にのみ使用する形態(1枚型)の2通りがある。
2枚型の場合、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
【0090】
[用途(偏光板)]
本発明のフィルムの用途について説明する。
本発明のフィルムは、偏光板保護膜用として有用である。偏光板は一般的には偏光膜の両面に保護膜を有する。双方の保護膜が本発明のフィルムであってもよいし、一方のみが本発明のフィルムであってもよい。なお、本発明のフィルムが高分子フィルムからなる支持体と前記光学異方性層とを有する場合は、偏光膜の表面と、前記高分子フィルムの表面とを貼り合せるのが好ましいが、この態様に限定されるものではない。かかる偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護膜処理面と偏光膜を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0091】
本発明の偏光板は、一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、前記フィルムを適用した偏光板保護膜はどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護膜には透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護膜をこの部分に用いることが特に好ましい。
【0092】
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の組成物から形成されたフィルムは、様々な用途に用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして特に有効である。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
【0093】
[液晶表示装置]
本発明のフィルムは、種々のモードの液晶表示装置に、光学補償フィルム等として用いることができる。前記フィルムの配置、例えば、表示面側及びバックライト側のいずれに配置するか、又はフィルムが面内遅相軸を有する場合は、偏光膜の透過軸とどのような関係で配置するか等、については、液晶表示装置のモードに応じて決定することができる。液晶表示装置は、一般的に、二枚の電極基板の間に液晶を挟んでなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光膜、及び該液晶セルと該偏光膜との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。本発明のフィルムを、この光学補償フィルムとして組み込んでもよいし、偏光膜の保護膜として組み込んでもよい。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、好ましくは50μm〜2mmの厚さを有する。
【0094】
本発明のフィルムは、様々な表示モードの液晶表示装置の光学部材(例えば、光学補償フィルム及び偏光膜の保護膜等)として用いることができる。具体的には、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)等の表示モードが挙げられる。また、上記表示モードを配向分割した表示モードにおいても用いることができる。また、前記フィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。
【0095】
(TN型液晶表示装置)
本発明のフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)の記載に従って作製することができる。
【0096】
(STN型液晶表示装置)
本発明のフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報の記載に従って作製することができる。
【0097】
(VA型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
【0098】
(IPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、IPSモード及びECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体、又は偏光板の保護膜としても有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において前記フィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に前記フィルムを用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーション値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
【0099】
(OCB型液晶表示装置及びHAN型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーション値の絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質及び光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)の記載に従って作製することができる。
【0100】
(反射型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シート等としても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開WO98/48320号パンフレット、特許登録第3022477号公報の記載に従って作製することができる。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開WO00/65384号パンフレットの記載に従って作製することができる。
【0101】
(その他の液晶表示装置)
本発明のフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シート等としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))の記載に従って作製することができる。
【0102】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のフィルムは、また、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムに好ましく用いることができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、前記フィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、前記フィルムを好ましく用いることができる。
【0103】
本発明の硬化性組成物は、上記用途に限定されず、ディスプレイ材料を始め、オプトエレクトロニクス材料、フォトニクス材料等の作製に用いられる。
【実施例】
【0104】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0105】
[実施例1]
(針状二酸化チタン粒子の製造)
J.Am.Chem.Soc誌、第125巻、10518頁、2003年に記載の方法(ゾル−ゲル法)に順じて、針状二酸化チタンの粒子を形成した。粒子の粒子サイズ、アスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から求めた。その結果、粒子サイズは300nm、アスペクト比は5であった。
【0106】
[実施例2]
(異方性炭酸塩粒子の製造)
金属イオン源としての0.2mol/Lの水酸化ストロンチウム懸濁液1,000mL(水600mL、メタノール400mL)に、炭酸源としての0.1mol/Lの炭酸アンモニウム水溶液600mLを攪拌混合して反応させた。反応液中のpHは12.7であった。
次いで、反応液を攪拌しながら、炭酸源としての炭酸ガスを、金属イオン源より過剰に供給し、反応液中に白色沈殿を形成した。
この反応液中に、2−エチルヘキサン酸(シグマ・アルドリッチ・ジャパン株式会社製)(以下、表面処理剤1ともいう。)0.5gを100mLのメタノールに溶解させてから添加し、約30分間攪拌させることにより表面処理を行った。充分に水洗を繰り返した後、濾過を行った。得られた沈殿は、充分に乾燥をさせ、メノウ乳鉢でこれを粉砕させて、異方性無機粒子としての炭酸ストロンチウム結晶T−1を得た。粒子の粒子サイズ、アスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から求めた。その結果、粒子サイズは300nm、アスペクト比は5であった。
【0107】
[実施例3]
(所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子の調製−1)
等質量の無機微粒子と無機粒子への吸着基と液晶化合物の場合のコア部を形成し得る基を有する化合物、又は高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する化合物とを、100倍容量部の溶媒に分散し、30分間超音波処理した。得られた分散物を減圧濃縮し溶媒を除去し、前記それぞれの化合物の分子が吸着した無機微粒子を得た。前記化合物の分子の吸着の有無は、紫外可視吸収スペクトルにより確認した。調製したものを表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
(ゼラチン分散液の調製)
ゼラチン 10g、前記分子吸着無機微粒子No.1 3g、硬膜剤(ジビニルスルホニルメタン) 0.5g、水 200mlからなる分散液を調製した。
(多官能アクリラートDPHA分散液の調製)
DPHA 5g、前記分子吸着無機微粒子No.2 5g、イルガキュア907 0.5g、カヤキュアDETX 0.1g、MEK 40mlからなる分散液を調製した。
(液晶性粒子分散液の調製)
前記分子吸着無機微粒子No.3 5g、DPHA 1g、イルガキュア907 0.05g、カヤキュアDETX 0.01g、MEK 40mlからなる分散液を調製した。
【0110】
[実施例4]
(塗布膜の作製−1)
前記ゼラチン分散液を、ガラス板上に乾燥後に約1.5g/mになるようにバー塗
布し、乾燥して硬化させ、ガラス板上にフィルムを形成した。この膜について、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表2に示す。
【0111】
[実施例5]
(塗布膜の作製−2)
前記ゼラチン分散液を、三酢酸セルロース(TAC)フィルム上に乾燥後に約1.5g/mになるようにバー塗布し、乾燥して硬化させ、TACフィルム上に層を形成
した。乾燥後、得られたフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表2に示す。
【0112】
[実施例6]
(塗布膜の作製−3)
前記DPHA分散液を、ポリビニルアルコール(PVA205)を下塗りした三酢酸セルロース(TAC)フィルム上に乾燥後に約1.5g/mになるようにバー塗布
し、乾燥した。乾燥後、さらに同温度を維持しつつ、366nmの発光を有するUVランプで1分間膜面を照射して硬化させて、TACフィルム上に層を形成した。得られたフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表2に示す。
【0113】
[比較例]
実施例4〜実施例6において、前記分子吸着無機微粒子に替えて有機化合物のみの添加あるいは前記分子非吸着の場合につき、同様にフィルムを作製した。得られたフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表2に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
表2の結果から分かるように、本発明の実施例4〜6では、大きなRthを示すフィルムが得られた。そのRth発現の程度は、有機化合物を非吸着の状態で添加した比較例4A〜6Aと比較して、及び非吸着無機微粒子を添加した比較例4B〜6Bと比較して、格段に大きく、実施例は比較例と比較して、フィルムのRth(590)の発現における優位性が認められた。また、実施例4〜6で得られたフィルムは、非吸着無機微粒子を添加した比較例4B〜6Bで観察されたヘーズの上昇もなく、液晶表示装置の光学フィルムとして適していることが理解できる。
【0116】
[実施例7]
(塗布膜の作製−4)
前記液晶性粒子分散液を、ポリイミド(日立化成デュポン社製 LX1400)を下塗りし、右半分はフィルムの長手方向に、左半分はそれとは直交した方向にラビングしたガラス板上に乾燥後に約1.5g/mになるようにバー塗布し、200℃で5
分間保持し、乾燥した。乾燥後、さらに同温度を維持しつつ、366nmの発光を有するUVランプで1分間膜面を照射した。得られたフィルムについて、右半分と左半分につきそれぞれ、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表3に示す。
【0117】
【表3】

【0118】
表3の結果から分かるように、本発明の実施例7では、大きなRthを示すフィルムが得られた。また、実施例7で得られたフィルムは、非吸着無機微粒子を添加した比較例7Aで観察されたヘーズの上昇もなく、液晶表示装置の光学フィルムとして適していることが理解できる。また、ラビング方向に依存して吸着無機微粒子の配向が誘起され、パターニングの可能性が示された。
【0119】
これらのことから、無機粒子への吸着基と液晶化合物の場合のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子を含有する実施例の硬化性組成物を用いれば、同一の分子を、無機粒子に吸着させない状態で添加した比較例の硬化性組成物を用いた場合、及び有機化合物が吸着していない無機微粒子を単に添加した比較例の硬化性組成物を用いた場合には実現できなかった、より大きなレターデーションが発現されたフィルムを作製できることが確認された。
【0120】
以上記載した通り、本発明の硬化性組成物は、自在に光学異方性を制御が可能であり、種々の光学特性のフィルム等を作製するのに有用である。本発明の硬化性組成物を用いて作製されたフィルムは、透明性も良好であり、液晶表示装置用光学フィルム、例えば、光学補償シート、偏光板保護フィルム等、に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
硬化可能な材料の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化可能な材料が活性エネルギー線硬化性材料であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記硬化可能な材料がゼラチン系高分子であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記分子が液晶分子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記分子が硬化可能な材料と親和性を有する置換基を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記分子を吸着させた無機微粒子として、又は前記分子を吸着させた無機微粒子の他に、重合性基を有する分子を吸着させた無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記重合性基を有する分子が液晶分子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
液晶性組成物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化して形成されたことを特徴とするフィルム。
【請求項11】
支持体上に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化して形成される層を有することを特徴とするフィルム。
【請求項12】
前記硬化性組成物を硬化させて形成されるフィルム又は層が、光学異方性であることを特徴とする請求項10または11に記載のフィルム。
【請求項13】
偏光層と該偏光層を挟持する2枚のフィルムとを有する偏光板であって、前記フィルムのうち少なくとも一方が請求項10〜12のいずれか1項に記載のフィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のフィルムを少なくとも一枚有することを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−156479(P2008−156479A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347154(P2006−347154)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】