説明

硬化性組成物および光学デバイス

【課題】高温環境下または高温高湿度環境下でも剥離等の不具合を起こすことなく、長期にわたり、光学デバイスの接着を実現出来る硬化性組成物、およびそれを用いた光学デバイスを提供する。
【解決手段】本発明は、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)と、上記(A−1)および(A−2)以外のカチオン重合性化合物(B)とを含有する硬化性組成物であって、当該硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が1.40以上1.60以下であることを特徴とする硬化性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物およびそれを用いた光学デバイスに関し、具体的には高温環境下または高温高湿度環境下でも剥離等の不具合を起こすことなく、長期にわたり、光学デバイスの接着を実現出来る硬化性組成物およびこれを用いた光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学デバイスの接着には透明性、速硬化性、および固定性の観点から、紫外線硬化型接着剤が広く用いられている。特に、光学デバイスに存在する凹凸形状の接着面の接着にはアクリル系紫外線硬化型接着剤が用いられてきたが、エステル基が加水分解することにより当該接着剤の接着力が低下するという問題があった。そのため近年、エポキシ/オキセタン系紫外線硬化型接着剤が用いられるようになっている。
【0003】
エポキシ/オキセタン系紫外線硬化型接着剤としては、高温環境下または高温高湿度環境下において、光学デバイスの透明性や固定性等を実現するため、一般的には剛性のある水添ビスフェノールA型エポキシ化合物が用いられている。
【0004】
また、エポキシ/オキセタン系紫外線硬化型接着剤には反応開始剤として、ヨードニウム塩やスルホニウム塩のようなオニウム塩系重合開始剤が用いられている(特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】WO2005/028537(2005年3月31日公開)
【特許文献2】特開平11−161136(1999年6月18日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した水添ビスフェノールA型エポキシ化合物を有するエポキシ/オキセタン系紫外線硬化型接着剤では、その硬化物が高温環境下または高温高湿度環境下におかれたときに、未反応のカチオン重合化合物が硬化するために、硬化物がさらに硬化する。このさらなる硬化に伴い、硬化物に働く収縮応力が増大する。
【0006】
ここで、上記紫外線硬化型接着剤の硬化物では、当該硬化物の柔軟性が乏しいので、上記収縮応力を緩和することができない。このため硬化物の接着界面に上記収縮応力を伝えてしまう。これにより当該硬化物の接着力が低下し、剥離する等の不具合を起こすという問題がある。
【0007】
また、従来のエポキシ/オキセタン系紫外線硬化型接着剤に用いられているカチオン重合系化合物は反応性が低いため、硬化物に未反応のカチオン重合系化合物が残存する。そして、高温環境下または高温高湿度環境下において上記未硬化のカチオン重合系化合物に起因して収縮応力が増大する。また、重合開始剤とNa,K等のアルカリ金属が反応し、異物が生じる。このような収縮応力の増大や異物発生によって、硬化物が剥離する等の不具合が引き起こされるという問題がある。
【0008】
さらに、上述したアデカオプトマーSP−150に代表されるオニウム塩系重合開始剤は、一般的には高沸点溶媒に溶解しているため、硬化物にも高沸点溶媒が含有されることになる。そのため、硬化物を高温環境下または高温高湿度環境下においた場合に、当該高沸点溶媒がキャリアとなり、オニウム塩系重合開始剤を上記硬化物内に拡散させる。そして、拡散した上記オニウム塩系重合開始剤によって、未反応のカチオン重合系化合物の硬化が広範囲に亘って促進されるため、硬化物の収縮応力の増大や、異物の発生が促進される。そして、これにより、硬化物が剥離する等の不具合を起こすという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温環境下または高温高湿度環境下でも剥離等の不具合を起こすことなく、長期にわたり、光学デバイスの接着を実現出来る硬化性組成物、およびそれを用いた光学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究したところ、(i)カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物を必須成分とする硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が、柔軟性および接着性に優れているという特性を有すること、(ii)硬化性組成物に脂環式エポキシ化合物および水酸基を有するオキセタン化合物を併用して配合することにより硬化が促進され硬化物に存在する未硬化物の量を減らすことが出来ること、(iii)硬化性組成物にカチオン重合剤として高沸点溶媒に溶解していないオニウム塩系重合開始剤を配合することにより、高温環境下または高温高湿度環境下において、上記オニウム塩系重合開始剤が硬化物内に拡散することを防ぐことが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の硬化性組成物は、上記課題を解決するために、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)と、上記(A−1)および(A−2)以外のカチオン重合性化合物(B)とを含有する硬化性組成物であって、当該硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が1.40以上1.60以下であることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の屈曲性と接着性および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物の屈曲性によって、硬化性組成物の硬化物の柔軟性と接着性を向上させることが出来る。従って、硬化物が高温環境下または高温高湿度環境下におかれた場合に、硬化物のさらなる硬化に伴う収縮応力の増加を緩和することが出来、当該硬化物の被接着体に対する接着力が低下することを防ぐことが出来る。そのため、硬化物と被接着体とを接着した場合に、硬化物の被接着体に対する接着力の低下や被接着体からの剥離を防ぐことが出来る。換言すれば、上記硬化性組成物の硬化物は、被接着体に対して、耐熱性および耐水性に優れた接着性を有している。
【0013】
上記カチオン重合性化合物(B)は、光硬化性に優れるので、上記硬化性組成物をより簡便に硬化させることが出来る。
【0014】
また、光学デバイスに用いられる部材は一般的に屈折率1.40〜1.60のガラスである。ここで、上記硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が1.40以上1.60以下であるので、上記硬化性組成物を光学デバイスに用いても、光学デバイスに使用される光信号を屈折させることや反射させることはない。それ故、上記硬化性組成物を用いて高性能の光デバイスを製造することができる。
【0015】
また、本発明の硬化性組成物では、上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)は、高沸点溶媒を含有していないことが好ましい。
【0016】
上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)が高沸点溶媒を含有し、且つカチオン重合開始剤を用いて硬化性組成物の硬化物を作成した場合、上記硬化物が高温環境下または高温高湿度環境下に晒されたときに、上記高沸点溶媒を媒体としてカチオン重合開始剤から生じた酸が硬化物内に拡散する。この拡散した酸と未重合のカチオン重合性化合物とが反応して、未重合のカチオン重合性化合物が硬化する。これによって、上記硬化物の収縮応力が増加するという問題が引き起こされる。さらに、アルカリ金属を含む被接着体に上記硬化物を用いた場合、上記酸とアルカリ金属とが反応して塩を形成する。この塩により、被接着体の光透過性が劣化してしまうという問題が引き起こされる。
【0017】
ここで、本発明の硬化性組成物では、上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)に高沸点溶媒が含まれていないので、硬化性組成物に含有される高沸点溶媒量をなくす、または減らすことができる。これにより、当該硬化性組成物の硬化物が、高温環境下または高温高湿度環境下に晒されたときに、当該硬化物内で酸が拡散することを防止することが出来るので上記問題を解決することが出来る。それ故、本発明の硬化性組成物は、被接着体の光透過性を維持できるという面でも非常に有用である。例えば、後述するように、本発明の硬化性組成物を光学デバイスの部材の接着剤として非常に有用に用いることが出来る。
【0018】
また、本発明の硬化性組成物では、上記カチオン重合性化合物(B)は、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物であることが好ましい。上記エポキシ化合物およびオキセタン化合物は、光カチオン重合性に優れる。それ故、光による上記硬化性組成物の硬化をより簡便に行うことが出来る。さらに、上記カチオン重合性化合物(B)は粘度が低く、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)やエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)の希釈性に優れるため、硬化性組成物の粘度を適正なものとすることが出来る。
【0019】
また、本発明の硬化性組成物では、上記カチオン重合性化合物(B)は、脂環式エポキシ化合物および水酸基を有するオキセタン化合物であることが好ましい。これにより、脂環式エポキシ化合物と水酸基を有するオキセタン化合物との間で協調的に硬化が起こるので硬化性組成物の硬化を促進することが出来る。その結果、硬化性組成物の硬化物に存在する未硬化物の量を減らすことが出来るため、高温環境下または高温高湿度環境下で収縮応力が増大することを防止することが出来る。
【0020】
また、本発明の硬化性組成物では、カチオン重合開始剤をさらに含有することが好ましい。これによれば、カチオン重合開始剤が予め硬化性組成物に含有されているので、硬化性組成物を硬化させる直前にカチオン重合開始剤と硬化性組成物とを混合する必要がない。このため、より簡便に硬化性組成物を硬化させることが出来る。
【0021】
また、本発明の硬化性組成物では、上記カチオン重合開始剤が、オニウム塩系光カチオン重合開始剤であることが好ましい。これにより、上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤が触媒となり光を照射することにより硬化性組成物の硬化を促進することが出来る。また、高温環境下または高温高湿度環境下においても、腐食性のアウトガスを発生することはない。それ故、上記硬化性組成物と金属とを接着しても、当該金属を腐食することなく、安定した接着を実現することが出来る。
【0022】
また、本発明の硬化性組成物では、上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤が高沸点溶媒に溶解していないことが好ましい。上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤が高沸点溶媒を含有している場合、上記硬化物が高温環境下または高温高湿度環境下に晒されたときに、上記高沸点溶媒を媒体としてオニウム塩系光カチオン重合開始剤から生じた酸が硬化物内に拡散する。この拡散した酸と未重合のカチオン重合性化合物とが反応して、未重合のカチオン重合性化合物が硬化する。
【0023】
これによって、上記硬化物の収縮応力が増加するという問題が引き起こされる。さらに、アルカリ金属を含む被接着体に上記硬化物を用いた場合、上記酸とアルカリ金属とが反応して塩を形成する。この塩により、被接着体の光透過性が劣化してしまうという問題が引き起こされる。
【0024】
ここで、本発明の硬化性組成物では、上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤に高沸点溶媒が含まれていないので、硬化性組成物に含有される高沸点溶媒量をなくす、または減らすことができる。これにより、当該硬化性組成物の硬化物が、高温環境下または高温高湿度環境下に晒されたときに、当該硬化物内で酸が拡散することを防止することが出来るので上記問題を解決することが出来る。それ故、本発明の硬化性組成物は、被接着体の光透過性を維持できるという面でも非常に有用である。例えば、後述するように、本発明の硬化性組成物を光学デバイスの部材の接着剤として非常に有用に用いることが出来る。
【0025】
また、本発明の硬化性組成物では、シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。シランカップリング剤とは無機材料または金属材料と、硬化性組成物またはその硬化物とを化学的に結合する性質を有するものである。それ故、本発明の硬化性組成物にシランカップリング剤を含有させることにより、本発明の硬化性組成物またはその硬化物の無機材料や金属材料に対する密着性を改良することが出来る。
【0026】
また、本発明の硬化性組成物では、上記硬化性組成物の硬化物の厚みが100μmであり、当該硬化物の1200nm以上1700nm以下における光透過率が、60%以上100%以下であることが好ましい。1200nm以上1700nm以下は、例えば、ファイバーアレイ、WDMモジュール、コリメータアレイ等の光デバイスに好適に用いられる光信号波長である。硬化物の厚みが100μmであり、当該硬化物の1200nm以上1700nm以下における光透過率が60%以上100%以下であれば、当該硬化物を通過する光信号はほとんど弱まることはないので、光信号を良好に伝えることが出来る。したがって、上記硬化性組成物を用いて高性能の光デバイスを製造することができる。
【0027】
また、本発明の光学デバイスは、上記硬化性組成物を用いて製造されていることを特徴としている。上述したように上記硬化性組成物の硬化物は、被接着体に対して、耐熱性および耐水性に優れた接着性を有している。そして、上記光学デバイスに上記硬化性組成物が用いられているので、上記光学デバイスは、優れた耐熱性、耐湿性を実現することが出来る。
【0028】
また、本発明の光学デバイスでは、上記光学デバイスは、2つ以上の部材を有することが好ましい。これによれば、上記硬化性組成物によって部材同士を接着させることができる。ここで、上記硬化性組成物の硬化物は、被接着体に対して、耐熱性および耐水性に優れた接着性を有している。それ故、高温度環境下または高温高湿度環境下で、部材同士が剥離することを防止することが出来る。よって、上記光学デバイスは、優れた耐熱性および耐湿性を実現することが出来る。
【0029】
また、本発明の光学デバイスでは、上記部材に用いられている材料が、有機材料または合成石英であることが好ましい。上記有機材料および合成石英は、光を透過することが出来るため、光を照射することにより上記部材を接着することが出来る。
【発明の効果】
【0030】
本発明の硬化性組成物は、以上のように、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)と、上記(A−1)および(A−2)以外のカチオン重合性化合物(B)とを含有する硬化性組成物であって、当該硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が1.40以上1.60以下である。
【0031】
それ故、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の屈曲性と接着性および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物の屈曲性よって、硬化性組成物の硬化物の柔軟性と接着性を向上させることが出来る。従って、硬化物が高温環境下または高温高湿度環境下におかれた場合に、硬化物のさらなる硬化に伴う収縮応力の増加を緩和することが出来、当該硬化物の被接着体に対する接着力が低下することを防ぐことが出来るという効果を奏する。そのため、硬化物と被接着体とを接着した場合に、硬化物の被接着体に対する接着力の低下や被接着体からの剥離を防ぐことが出来るという効果を奏する。
【0032】
上記カチオン重合性化合物(B)は、光硬化性に優れるので、上記硬化性組成物をより簡便に硬化させることが出来るという効果を奏する。
【0033】
また、光学デバイスに用いられる部材は一般的に屈折率1.40〜1.60のガラスである。ここで、上記硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が1.40以上1.60以下であるので、上記硬化性組成物を光学デバイスに用いても、光学デバイスに使用される光信号を屈折させることや反射させることはない。それ故、上記硬化性組成物を用いて高性能の光デバイスを製造することができるという効果を奏する。
【0034】
また、本発明の光学デバイスは、上記硬化性組成物を用いて製造されているものである。上述したように上記硬化性組成物の硬化物は、被接着体に対して、耐熱性および耐水性に優れた接着性を有している。そして、上記光学デバイスに上記硬化性組成物が用いられているので、上記光学デバイスは、優れた耐熱性、耐湿性を実現することが出来るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を詳述する。なお、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0036】
〔1:硬化性組成物〕
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、硬化によって硬化物を生じる組成物である。そして、上記硬化物は、被接着体と被接着体とを接着する性質を有するものである。すなわち、本発明の硬化性組成物を、被接着体と被接着体とを接着するための接着剤として用いることが出来る。
【0037】
具体的には、本発明の硬化性組成物は、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)と、上記(A−1)および(A−2)以外のカチオン重合性化合物(B)とを含有する硬化性組成物であって、当該硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が好ましくは1.40以上1.60以下、より好ましくは1.42以上1.58以下、さらに好ましくは1・45以上1.55以下である。上記の構成によれば、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の屈曲性と接着性および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物の屈曲性という作用によって、硬化物の柔軟性を向上させることが出来る。従って、硬化性組成物が硬化する時または、硬化物が高温環境下または高温高湿度環境下におかれた場合に、硬化物の収縮応力が増大することを低減することが出来、当該硬化物の被接着体に対する接着力が低下することを防ぐことが出来る。それ故、高温環境下または高温高湿度環境下においても、被接着体から剥離しにくい硬化物を提供することが出来る。
【0038】
また、光学デバイスに用いられる部材は一般的に屈折率1.40〜1.60のガラスである。ここで、当該硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が上記範囲であるので、上記硬化性組成物を光学デバイスに用いても、光学デバイスに使用される光信号を屈折させることや反射させることはない。それ故、上記硬化性組成物を用いて高性能の光デバイスを製造することができるという効果を奏する。
【0039】
本明細書において、「高温環境下」とは、温度が60℃以上の環境のことであり、「高温高湿度環境下」とは、温度が60℃以上であり、且つ湿度が60RH%以上である環境のことである。また、上記「収縮応力」とは、硬化物に発生する収縮しようとする力のことである。また、上記「被接着体」とは、本発明の硬化性組成物を用いて接着されることの出来るもののことであり、例えば、後述する光学デバイスの部材等が挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物とは、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴムとビスフェノールA型エポキシ樹脂との付加反応物のことである。その製造方法は特に限定されないが、例えば、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴムとビスフェノールA型エポキシ樹脂との付加反応により製造することが出来る。また、上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロンTSR−960(大日本インキ化学工業(株)社製)等を用いることができる。
【0041】
カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の添加比率は、特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは5重量部〜65重量部、より好ましくは15重量部〜55重量部、さらに好ましくは25重量部〜45重量部である。
【0042】
上記エポキシ化ポリブタジエン化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば、水酸基末端ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂との付加反応を行うことにより製造することが出来る。また、上記エポキシ化ポリブタジエン化合物としては、例えば、EPB−13(日本曹達(株)社製)等を用いることができる。
【0043】
エポキシ化ポリブタジエン化合物の添加比率は、特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは5重量部〜65重量部、より好ましくは15重量部〜55重量部、さらに好ましくは25重量部〜45重量部である。
【0044】
カチオン重合性化合物(B)としては特に限定されないが、例えば、エポキシ化合物またはオキセタン化合物等の従来公知のカチオン重合性化合物が挙げられる。このカチオン重合性化合物(B)を硬化性組成物に含有させることにより、カチオン重合をさらに促進することが出来る。
【0045】
エポキシ化合物とは、分子内に少なくとも1つ以上のエポキシ基を有する化合物の総称であり、例えば、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0046】
脂環式エポキシ化合物とは、分子内に脂環式エポキシ基を有する化合物のことである。ここで脂環式エポキシ基とは、脂環式構造の中にエポキシ結合を形成している基の総称であり、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの脂環式エポキシ化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0047】
芳香族エポキシ化合物とは、少なくとも1つのエポキシ基と、少なくとも1つの芳香環を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの芳香族エポキシ化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0048】
エポキシ化合物の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して、好ましくは5重量部〜50重量部、より好ましくは10重量部〜40重量部、さらに好ましくは15重量部〜35重量部である。
【0049】
オキセタン化合物とは、分子中に少なくとも1個のオキセタン環を有する化合物の総称であり、例えば、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、2−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、レゾルシノールビス(3−メチル−3−オキセタニルエチル)エーテル、m−キシリレンビス(3−エチル−3−オキセタニルエチルエーテル)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
さらに、本発明の硬化性組成物に含有されるオキセタン化合物としては、水酸基を有するオキセタン化合物であることがより好ましい。そのようなオキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−オキセタンメタノール等が挙げられるがこれらに限定されない。また、これらのオキセタン化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0051】
オキセタン化合物の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは5重量部〜50重量部、より好ましくは10重量部〜40重量部、さらに好ましくは15重量部〜35重量部である。
【0052】
上述したエポキシ化合物およびオキセタン化合物等のカチオン重合性化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。特に、脂環式エポキシ化合物と水酸基を有するオキセタン化合物とを併用することが好ましい。これにより、脂環式エポキシ化合物と水酸基を有するオキセタン化合物との間で協調的に硬化が起こるので、硬化性組成物の硬化を促進することが出来る。その結果、硬化物に存在する未硬化物の量を減らすことが出来るため、高温環境下または高温高湿度環境下で収縮応力が増大することを防止することが出来る。
【0053】
また、従来公知のカチオン重合性化合物は一般的には、高沸点溶媒を含有していないので、それ故、そのようなカチオン重合性化合物を用いることにより、高沸点溶媒を含有しない硬化性組成物を提供することが出来る。
【0054】
上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン化合物、およびカチオン重合性化合物(B)はカチオン重合性化合物であるため、本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、カチオン重合を好適に用いることが出来る。カチオン重合を行うときには、光カチオン重合開始剤または熱カチオン重合剤等のカチオン重合開始剤を用いることが好ましい。これにより、上記カチオン重合を活性化することができ、本発明の硬化性組成物の硬化を促進することが出来る。
【0055】
硬化性組成物とカチオン重合開始剤とは、硬化性組成物を硬化する際に混合されていれば良い。即ち、硬化性組成物にカチオン重合開始剤が、予め含有されていても良いし、カチオン重合開始剤と硬化性組成物とが別々になっていても良い。カチオン重合開始剤と硬化性組成物とが別々になっている場合は、硬化性組成物にカチオン重合開始剤を従来公知の方法で混合した後に、光または熱を加えることにより硬化性組成物を硬化する。
【0056】
上記光カチオン重合開始剤は、光エネルギーの作用によって開裂し、酸を放出する化合物である。例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等の各種オニウム塩系光カチオン重合開始剤が挙げられる。なお、上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤において、カチオン部分が芳香族スルホニウムであることが好ましい。これらのカチオンを用いることにより、安定なカチオン重合を行うことが出来る。
【0057】
また、上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤において、アニオン部分は、BF、AsF、SbF、PF、およびB(Cからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のアニオンであることが好ましい。上記アニオンは、硬化反応性に優れ、硬化性組成物の光による硬化反応をさらに促進することができる。
【0058】
上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤として、具体的には、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、フェニルチオピリジウム塩、CD−1012(商品名:SARTOMER社製)、PCI−019、PCI−021(商品名:日本化薬社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(商品名:ADEKA社製)等が挙げられるができるが、これらに限定されない。これらは単独でも2種以上を組み合わせても使用することもでき、1種以上の熱カチオン重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。
【0059】
光カチオン重合開始剤の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは0.5重量部〜10重量部、より好ましくは1重量部〜5重量部、さらに好ましくは1.5重量部〜3重量部である。
【0060】
上記熱カチオン重合開始剤は、熱の作用即ち温度の上昇によって開裂し、酸を放出する化合物である。例えば、各種オニウム塩系熱カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0061】
上記オニウム塩系熱カチオン重合開始剤として、具体的には、アデカオプトンCP−66、CP−77(商品名:以上ADEKA社製)、サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−180L(商品名:以上三新化学社製)、CI−2920、CI−2921、CI−2946、CI−2639、CI−2624、CI−2064(商品名:以上日本曹達社製)、FC−520(商品名:3M社製)等を用いることができ、これらは単独でも2種以上組み合わせても使用することもでき、1種以上の光カチオン重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。
【0062】
熱カチオン重合開始剤の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは0.5重量部〜10重量部、より好ましくは1重量部〜5重量部、さらに好ましくは1.5重量部〜3重量部である。
【0063】
ここで、本発明の硬化性組成物では、上記光カチオン重合開始剤、上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、およびエポキシ化ポリブタジエン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物は高沸点溶媒を含有していないことが好ましく、カチオン重合開始剤、上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、およびエポキシ化ポリブタジエン化合物が高沸点溶媒を含有していないことが最も好ましい。これによれば、高沸点溶媒を含有しない硬化性組成物を提供することが出来る。
【0064】
上述した光カチオン重合開始剤および熱カチオン重合開始剤等のカチオン重合開始剤は一般的には高沸点溶媒に溶解している。そのような高沸点溶媒に溶解しているカチオン重合開始剤を用いた場合、硬化性組成物の硬化物にも高沸点溶媒が含有されることになる。そして、上記硬化物が、高温環境下または高温高湿度環境下におかれたときに、その高沸点溶媒を媒体としてカチオン重合開始剤から生じた酸が硬化物内に拡散する。この拡散した酸と未重合のカチオン重合性化合物とが反応して、未重合のカチオン重合性化合物が硬化する。これによって、上記硬化物の収縮応力が増加するという問題が引き起こされる。
【0065】
また、アルカリ金属を有する被接着体に上記硬化性組成物を用いた場合には、上記酸とアルカリ金属とが塩を形成する。そのため、従来の硬化性組成物を用いることでアルカリ金属を含有する被接着体の光透過性が劣化してしまうという問題が引き起こされる。
【0066】
しかし、本発明の硬化性組成物では、硬化性組成物の硬化物に高沸点溶媒が存在しないため、当該硬化物が、高温環境下または高温高湿度環境下におかれたときに、当該硬化物内で酸が拡散することを防ぐことが出来るので上記問題を解決することが出来る。それ故、本発明の硬化性組成物は、被接着体の光透過性を維持できるという面でも非常に有用である。例えば、後述するように、本発明の硬化性組成物を光学デバイスの部材の接着剤として非常に有用に用いることが出来る。
【0067】
上記「高沸点溶媒を含有していないカルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物」は、例えば、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴムとビスフェノールA型エポキシ樹脂との付加反応を行うときに高沸点溶媒を用いなければ得ることが出来る。また、上記「高沸点溶媒を含有していないエポキシ化ポリブタジエン化合物」は、ポリブタジエンの酸化反応を行うときに高沸点溶媒を用いなければ得ることが出来る。
【0068】
上記高沸点溶媒とは、180℃以上の沸点を有する溶媒のことであり、例えば、プロピレンカーボネート、γ―ブチロラクトン、エチレングリコール等が挙げられるが、これに限定されない。また、「高沸点溶媒に溶解していない」とは、ヘッドスペース法で硬化性組成物を250℃15分間加熱し、内部標準を用いたガスクロマトグラフィー分析を行って高沸点溶媒の含有量を測定した場合に硬化性組成物100重量部に対して、好ましくは0重量部〜1重量部、より好ましくは0重量部〜0.5重量部、さらに好ましくは0重量部〜0.3重量部の高沸点溶媒が含まれていることを意味する。上記ヘッドスペース法は、例えば、‘JEOL MS Data Sheet、MS Tips、「パージ&トラップ−GC/MS による1,4−ジオキサンと揮発性有機化合物の同時分析」No.081、日本電子株式会社、分析機器 応用研究グループ、2006年、インターネット〈URL:http://www.jeol.co.jp/technical/ai/ms/mstips−081/index.htm〉’に記載の方法に従って実施すれば良いが、これに限定されない。
【0069】
また、本発明の硬化性組成物では、上記硬化性組成物の硬化物の厚みが100μmであり、当該硬化物の1200nm以上1700nm以下における光透過率が60%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがさらに好ましい。1200nm以上1700nm以下は、例えば、ファイバーアレイ、WDMモジュール、コリメータアレイ等の光デバイスに好適に用いられる光信号波長である。硬化物の厚みが100μmであり、当該硬化物の1200nm以上1700nm以下における光透過率が60%以上100%以下であれば、当該硬化物を通過する光信号はほとんど弱まることはないので、光信号を良好に伝えることが出来る。したがって、上記硬化性組成物を用いて高性能の光デバイスを製造することができる。
【0070】
硬化物の1200nm以上1700nm以下における光透過率が、上記範囲である硬化性組成物は、特に限定されないが、例えば、カチオン重合開始剤、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/または高沸点溶媒を含有していないエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)、カチオン重合性化合物(B)を空気が混入しないように混合することにより得ることが出来る。
【0071】
また、本発明の硬化性組成物では、その他の成分として、(1)カチオン重合開始剤の活性化剤、(2)シランカップリング剤、(3)無機充填剤等をさらに含有していても良い。上記(1)〜(3)について以下で説明する。
【0072】
(1)カチオン重合開始剤の活性化剤
カチオン重合開始剤の活性化剤を用いることにより、カチオン重合開始剤の活性を高めることが出来る。それ故、本発明の硬化性組成物にカチオン重合開始剤とカチオン重合開始剤の活性化剤と含有させることにより、本発明の硬化性組成物の硬化をより促進することが出来る。上記カチオン重合開始剤の活性化剤としては、例えば、増感剤、ラジカル重合開始剤等が挙げられるが、これらに限定されない。また、増感剤とラジカル重合開始剤とは別々に使用されても良いし、併用して使用されても良い。
【0073】
増感剤としては、例えば、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ペンゾフラビン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの増感剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。増感剤の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して、好ましくは0.5重量部〜10重量部、より好ましくは1重量部〜5重量部、さらに好ましくは1.5重量部〜3重量部である。
【0074】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルジメチルケタール類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。これらのラジカル開始剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。ラジカル重合開始剤の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して、好ましくは0.5重量部〜10重量部、より好ましくは1重量部〜5重量部、さらに好ましくは1.5重量部〜3重量部である。
【0075】
また、上記カチオン重合開始剤の活性化剤は一般的には、高沸点溶媒を含有していない。それ故、上記カチオン重合開始剤の活性化剤を用いることにより、高沸点溶媒を含有しない硬化性組成物を提供することが出来る。
【0076】
(2)シランカップリング剤
シランカップリング剤とは無機材料または金属材料と、硬化性組成物またはその硬化物とを化学的に結合する性質を有するものである。それ故、本発明の硬化性組成物にシランカップリング剤を含有させることにより、本発明の硬化性組成物またはその硬化物の無機材料または金属材料に対する密着性を改良することが出来る。
【0077】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、下記のシランカップリング剤を用いることができる:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、P−スチリルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン。シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。当該エポキシ基によって、無機材料または金属材料と、硬化性組成物またはその硬化物とを簡便に結合することができるからである。なお、シランカップリング剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0078】
また、上記例示したシランカップリング剤の中でも、無機材料または金属材料と、硬化性組成物またはその硬化物との化学結合がより強力であるという理由から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および/または2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0079】
シランカップリング剤の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは0.5重量部〜15重量部、より好ましくは1重量部〜10重量部、さらに好ましくは3重量部〜8重量部である。
【0080】
また、上記シランカップリング剤は一般的には、高沸点溶媒を含有していない。それ故、上記シランカップリング剤の活性化剤を用いることにより、高沸点溶媒を含有しない硬化性組成物を提供することが出来る。
【0081】
(3)無機充填剤
本発明の硬化性組成物に無機充填剤を含有させることにより、硬化性組成物の粘度または硬化時の体積収縮率を低減することが出来るだけでなく、さらに硬化性組成物の硬化物の熱耐久性も向上することが出来る。上記無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの無機充填剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0082】
無機充填剤の添加比率は、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは10重量部〜80重量部、より好ましくは20重量部〜70重量部、さらに好ましくは30重量部〜60重量部である。
【0083】
また、上記無機充填剤は一般的には、高沸点溶媒を含有していない。それ故、上記無機充填剤の活性化剤を用いることにより、高沸点溶媒を含有しない硬化性組成物を提供することが出来る。
【0084】
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の硬化性組成物は、例えば、上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物、ならびに、カチオン重合開始剤を攪拌する等の従来公知の方法を用いて混合することにより製造することが出来る。さらに必要に応じて、上記(1)〜(3)の各成分を混合しても良い。
【0085】
本発明の硬化性組成物の硬化物は、上述したように柔軟性に優れるため、高温環境下または高温高湿度環境下において部材から剥離しにくい等の特性を有する。従って、本発明の硬化性組成物は、そのような特性を活かして光学デバイス用や液晶などのディスプレイ用の接着剤、塗料、または金属、プラスチック等の各種材料に対するコーティング剤、シール剤、封止剤として用いることが出来る。
【0086】
以下では、本発明の硬化性組成物を用いた光学デバイスについて説明する。
【0087】
〔2:光学デバイス〕
<光学デバイス>
本発明の光学デバイスは、上述した本発明の硬化性組成物を用いて製造されているものである。「本発明の硬化性組成物を用いる」とは、特に限定されず、例えば、本発明の硬化性組成物を、本発明の光学デバイスの部材のコーティングに用いることや、本発明の光学デバイスの部材の接着に用いること等が挙げられる。また、本発明の光学デバイスが、2つ以上の部材を有していれば、上記硬化性組成物を用いて部材同士を接着させることができる。
【0088】
上記「本発明の硬化性組成物を、本発明の光学デバイスの部材のコーティングに用いる」とは、例えば、上記本発明の硬化性組成物をスピンコート法等の従来公知の方法を用いることにより部材に塗布することをいう。光学デバイスの部材としては、特に限定されないが、例えば、本発明の硬化性組成物が適用可能な材料が用いられている部材を挙げることができる。
【0089】
また、本発明の硬化性組成物を用いて部材同士を接着させる場合、硬化性組成物は、同じ材料のみが用いられている部材の接着に用いられても良いし、異なる材料が用いられている部材の接着に用いられても良い。
【0090】
本発明の硬化性組成物が適用可能な材料としては、例えば、石英、有機材料、金属等が挙げられるがこれらに限定はされない。上記石英としては、例えば、合成石英、溶解石英、ガラス等が挙げられるが、これらに限定されない。また、上記有機材料としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリプロピレン、ポリフェニレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等が挙げられるが、これらに限定されない。上記金属としては、例えば、アルミ、ステンレス鋼、電着塗装鋼、軟鉄鋼、黄銅鋼、炭素鋼、チタン、鉛、塩化ビニル鋼、アルミマグネシウム鋼等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
従来の硬化性組成物では、それに含有される光カチオン重合開始剤とアルカリ金属とが塩を形成していた。そのため、従来の硬化性組成物の硬化物と部材との間に不透明な異物が生じて、硬化物と部材とが剥離するという問題や、硬化物と部材との光透過性が劣化するという問題があった。一方、本発明の硬化性組成物が高沸点溶媒を含まない場合には、上述したように、光カチオン重合開始剤から放出される酸が硬化物内に拡散することを抑制することができるので、そのような問題を解決することが出来る。それ故、上記硬化性組成物は、硬化物と部材との剥離を抑制することや、硬化物と部材との光透過性を維持することができるという面でも非常に有用である。
【0092】
なお、本発明の硬化性組成物が、光カチオン重合開始剤を含有している場合、光を硬化性組成物に照射することにより硬化性組成物が硬化し、この硬化によって部材同士を接着させることが出来る。それ故、接着にすることが出来る部材の内の少なくとも一つは、上記石英や有機材料等の光を透過することの出来る材質を有する材料(以下、「光透過性材料」と記載する。)が備えられていることが好ましい。これにより、光透過性材料を通して硬化性組成物に光を照射することが出来る。上記光透過性材料として、例えば、合成石英、溶解石英、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
一方、本発明の硬化性組成物が、熱カチオン重合開始剤を含有している場合、当該硬化性組成物を加熱することにより、硬化することが出来、この硬化によって部材と部材とを接着することが出来る。それ故、接着される部材は加熱に耐えることのできる材質を有する材料(以下、「耐熱性材料」と記載する。)で構成されていることが好ましい。そのような耐熱性材料として、例えば、耐熱ガラスや、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等の耐熱性樹脂等があげられるが、これらに限定はされない。
【0094】
ここで、本発明の硬化性組成物の硬化物は、上述したように柔軟性と接着性に優れるため、収縮応力が増大しても良好な接着力を維持することができる。そのため、上記部材同士の接着界面が、凹凸形状であっても良好な接着性を実現することができる。
【0095】
「接着界面が、凹凸形状である」とは、接着界面が平坦ではなく起伏を有することを表す。接着する2以上の部材の内少なくとも1つの部材の接着面に窪みおよび/または突き出しがある場合に、部材同士の接着界面を凹凸形状にすることが出来る。上記窪みおよび突き出しの形状は、特に限定されず、平面のみで構成されていても良いし、曲面のみで構成されていても良いし、平面と曲面とで構成されていても良い。
【0096】
上記接着面に窪みおよび/または突き出しを有する部材としては、例えば、レンズ、光導波路、ファイバーアレイ、コリメータレンズアレイ等を挙げることが出来る。また、そのような部材を備えた光学デバイスとして、例えば、ファイバーアレイ、WDMモジュール、コリメータアレイ、光変調器、光増幅器、カメラ、顕微鏡、望遠鏡等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
以下、本発明の光学デバイスの一例を図1〜図3に基づいて説明する。ただし、本発明の光学デバイスは必ずしも図1〜図3に記載された形態に限られるものではない。
【0098】
図1は、ファイバーアレイの1実施の形態を示す模式図である。図1(a)は本発明の硬化性組成物を用いて接着する前のファイバーアレイ10の模式図であり、図1(b)は本発明の硬化性組成物を用いて接着した後の、ファイバーアレイ10の模式図である。
【0099】
図1(a)に示すように、ファイバーアレイ10は、表面が平坦な押さえ基板11およびリボンファイバー13を有するV溝基板12を備えている。上記リボンファイバー13は、1以上の光ファイバーにより形成されている。上記V溝基板12の表面には、1以上のV字の溝が形成されており、それらの溝にリボンファイバー13が配置されている。そのため、V溝基板12のリボンファイバー13が配置されている面には、窪みおよび突き出しが形成されている
図1(b)に示すように、ファイバーアレイ10では、上記押さえ基板11の面と上記V溝基板12のリボンファイバー13が配置されている面とが本発明の硬化性組成物14を用いて接着されている。本実施の形態では、V溝基板の溝はV字としたが、溝の形状は、特に限定されず、例えば、U字等を用いることが出来る。
【0100】
図2は、WDMモジュールの1実施の形態を示す模式図である。図2(a)は、本発明の硬化性組成物を用いて接着する前のWDWモジュール20の模式図であり、図2(b)は本発明の硬化性組成物を用いて接着した後の、WDWモジュール20の模式図である。
【0101】
図2(a)に示すように、WDMモジュール20には、第1ファイバーアレイ21、光導波路25、および第2ファイバーアレイ22が備えられている。上記第1ファイバーアレイ21には、当該ファイバーアレイ21の基板を貫通するように1本の光ファイバー23が設けられている。さらに、光ファイバー23が貫通している一方の面は垂直方向に対して傾斜している。また、上記第2ファイバーアレイ22では、当該ファイバーアレイ22の基板を貫通するように2本の光ファイバー23が設けられていること以外は第1ファイバーアレイと同様である。
【0102】
上記光導波路25には、当該光導波路25の基板を貫通するように2本の光ファイバー23が設けられており、さらに上記2本の光ファイバー23は上記基板の一方の面において1本に収束している。即ち、上記光導波路25の基板には、光ファイバーが1本形成されている面(以下、「面1」と記載する。)、および光ファイバーが2本形成されている面(以下、「面2」と記載する。)が存在する。また、上記面1の表面には、光ファイバー23を含むようにフィルタ26が形成されている。また、上記面1および面2は、第1ファイバーアレイ21および第2ファイバーアレイ22と接着したときに、WDMモジュール20が方形となるように垂直方法に対して傾斜している。
【0103】
WDMモジュール20では、第1ファイバーアレイ21、第2ファイバーアレイ22、および光導波路25の光ファイバー23が貫通しているそれぞれの面において、窪みおよび突き出しが形成されている。
【0104】
図2(b)に示すように、WDMモジュール20では、上記第1ファイバーアレイ21の傾斜面と上記光導波路25の面1とが、上記第2ファイバーアレイ22の傾斜面と上記光導波路25の面2とが本発明の硬化性組成物14を用いて接着されている。
【0105】
図3は、コリメータアレイの1実施の形態を示す模式図である。図3(a)は本発明の硬化性組成物14を用いて接着する前のコリメータアレイ30の模式図であり、図3(b)は本発明の硬化性組成物14を用いて接着した後の、コリメータアレイ30の模式図であり、図3(c)および図3(d)は、コリメータアレイ30の断面図である。
【0106】
図3(a)および(c)に示すように、コリメータアレイ30は、コリメータレンズアレイ35および上記ファイバーアレイ10を備えている。上記コリメータレンズアレイ35には、ファイバーアレイ10と接着したときに、ファイバーアレイ10に備えられているリボンファイバー13と1対1で対応するように複数のレンズ36が形成されている。上記レンズ36としては、例えば、ガラス、プラスチック、平板レンズ等が挙げられる。コリメータレンズアレイ35のレンズ36が形成されている面、およびファイバーアレイ10のリボンファイバー13が備えられている面において、窪みおよび突き出しが形成されている。
【0107】
図3(b)および(d)に示すように、コリメータアレイ30では、上記コリメータレンズアレイ35に形成されたレンズ36とファイバーアレイ10に形成されたリボンファイバー13とが1対1で対応するように、コリメータレンズアレイ35のレンズ36が形成されている面およびファイバーアレイ10のリボンファイバー13が備えられている面が、本発明の硬化性組成物14を用いて接着されている。
【0108】
<光学デバイスの製造方法>
本発明の光学デバイスの製造方法は、本発明の硬化性組成物を部材に塗布する塗布工程と、上記部材の硬化性組成物が塗布されている箇所に少なくとも1以上の部材を密着させる密着工程と、上記硬化性組成物を硬化させることにより部材同士を接着する接着工程とを含んでいれば良く、その他の工程は、光学デバイスを製造するための従来公知の方法を用いることが出来る。
【0109】
上記塗布工程において、本発明の硬化性組成物が塗布される部材として、上記<光学デバイス>に記載の部材を用いることが出来る。また、本発明の硬化性組成物を上記部材に塗布する方法は特に限定されず、例えば、スプレー、浸漬、スピンコート、ロールコーターを用いる方法等を用いることが出来る。本発明の硬化性組成物は、1つ以上の部材に塗布されていれば良い。
【0110】
また、硬化性組成物の塗布量も特に限定されず、部材と部材とを接着することが出来る量であれば良く、例えば、塗布によって生じる硬化性組成物層が、好ましくは0.1μm〜1000μm、より好ましくは1μm〜500μm、さらに好ましくは5μm〜100μmになるように塗布量を調節すれば良い。このような硬化性組成物層とするには硬化性組成物の25℃での粘度が好ましくは10〜2000mPa・s、より好ましくは30〜1500mPa・s、さらに好ましくは50〜1000mPa・sに調整すればよい。
【0111】
上記密着工程において、密着される部材は、上記硬化性組成物の内少なくとも1つ以上の部材に上記硬化性組成物が塗布されていれば良い。即ち、上記硬化性組成物が塗布されている1つ以上の部材に、硬化性組成物が塗布されていない1つ以上の部材を密着させても良いし、上記硬化性組成物が塗布されている1つ以上の部材に、硬化性組成物が塗布されている1つ以上の部材を密着させても良い。また、部材同士を密着させる方法としては、特に限定されず、例えば、一方の部材を固定し、それ以外の部材を接触させることにより密着させる方法が挙げられる。
【0112】
上記接着工程においては、本発明の硬化性組成物が、光カチオン重合開始剤を含有している場合、部材を通して硬化性組成物に光を照射することにより硬化性組成物を硬化させることが出来、部材同士を接着することが出来る。それ故、部材の内の少なくとも1つは、上述した光透過性部材であることが好ましい。
【0113】
上記光としては、例えば、紫外線、可視光、X線、電子線等を用いることが出来るが、紫外線を用いることが好ましい。紫外線はエネルギーが高いため、紫外線を硬化性組成物に照射することにより硬化反応を促進することが出来、硬化性組成物の硬化速度を速めることが出来ると共に、硬化物における未反応の硬化性組成物の量を低減することが出来る。
【0114】
可視光を硬化性組成物に照射する方法としては特に限定されず、例えば、白熱球、蛍光灯等を用いる方法が挙げられる。また、紫外線を硬化性組成物に照射する方法としては特に限定されず、例えば、低圧または高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯等を用いる方法が挙げられる。紫外線を使用する場合、その波長範囲は特に限定されないが、好ましくは150nm〜400nm、さらに好ましくは200nm〜380nmである。
【0115】
硬化性組成物の硬化状態は、フーリエ変換赤外分光分析装置や光化学反応熱量計等を用いて測定出来るので、硬化物が完全に硬化するための硬化条件(光の照射時間、光強度等)は適宜選定することが出来る。
【0116】
一方、本発明の硬化性組成物が、熱カチオン重合開始剤を含有している場合、当該硬化性組成物を加熱することにより硬化することが出来、この硬化によって部材同士を接着することが出来る。それ故、上記部材は上述した耐熱性素材を備えた部材であることが好ましい。これにより、加熱によって部材が変形することを防ぐことが出来る。硬化性組成物を加熱する方法としては、特に限定されず、ヒーター等の従来公知の加熱方法を用いることができる。
【0117】
硬化性組成物の硬化状態は、フーリエ変換赤外分光分析装置や光化学反応熱量計等を用いて測定出来るので、硬化物が完全に硬化するための硬化条件(加熱温度、加熱時間等)は適宜選定することが出来る。
【0118】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0119】
以下の実施例により、本発明をさらに、詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0120】
〔実施例1〕
<硬化性組成物の調製>
下記表1に示す割合で各成分を混合し、硬化性組成物を製造した。
【0121】
また、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物としてエピクロンTSR−960(大日本インキ化学工業(株)社製)、水添ビスフェノールA型エポキシとしてjERYX−8000(ジャパンエポキシレジン社製)、脂環式エポキシ化合物としてセロキサイド2021P(ダイセル化学工業(株)社製)、オキセタン化合物としてOXT−211(東亞合成(株)社製)、シランカップリング剤として、KBM−403(信越化学社製工業(株)社製)、オニウム塩として、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート50%プロピレンカーボネート溶液(サンアプロ(株)社製;CPI−100P)を使用した。
【0122】
<屈折率の測定>
50μmのPETフィルム上に、15mm×30mmの穴をあけた100μmのシリコンゴム型枠を置き、シリコンゴム型枠中に硬化性組成物を流し込んだ。その後、硬化性組成物層の上から50μmのPETフィルムを載せた状態で、高圧水銀ランプを用いて20mW/cmで400s間UV照射した。UV照射後、2枚のPETフィルムとシリコンゴム型枠を外すことで100μmの硬化物を得た。常温で24時間放置した後、100℃2時間ベークを行った。これにより屈折率の測定サンプルが得られた。この測定サンプルを、アタゴ社製アッベ式屈折計NAR−1Tを用いて、25℃、589nmでの屈折率を測定した。そして測定結果を表1に示した。
【0123】
<光透過率の測定>
50μmのPETフィルム上に、15mm×15mmの穴をあけた100μmのシリコンゴム型枠を置き、シリコンゴム型枠中に硬化性組成物を流し込んだ。その後、硬化性組成物層の上から50μmのPETフィルムを載せた状態で、高圧水銀ランプを用いて20mW/cmで400s間UV照射した。UV照射後、2枚のPETフィルムとシリコンゴム型枠を外すことで100μmの硬化物を得た。常温で24時間放置した後、100℃2時間ベークを行った。これにより屈折率の測定サンプルが得られた。この測定サンプルを、ニコレー社製赤外分光計MAGNA−IR 750を用いて1200nm以上1700nm以下の波長領域の光透過率を測定した。そして測定結果を表1に示した。
【0124】
<剥離強度測定およびヤング率の測定>
(サンプルの作成方法)
ホウケイ酸ガラス上に上記硬化性組成物を0.05g塗布し、60μmのシックネスゲージを介して、離形剤があらかじめ塗布されてあるスライドガラスを離形剤が樹脂に接するように置いた。その後、高圧水銀ランプを用いて、20mW/cmで400s間UV照射した後、スライドガラスを外すことで、ホウケイ酸ガラス上に接着された膜厚60μmの樹脂組成物を得た。常温で3時間放置した後、100℃2時間ベークを行った。その後常温で24時間放置した。これにより、高温高湿試験前の測定サンプルが得られた。高温高湿試験前の剥離強度およびヤング率はこのサンプルを用いて測定した。
【0125】
(高温高湿度環境試験)
上記作成方法によって得られたサンプルを121℃湿度100RH%環境下に30時間保持した後、常温で24時間放置した。これにより高温高湿度環境試験後のサンプルが得られた。
【0126】
(剥離強度試験)
高温高湿度環境試験前後のサンプルに対してダイプラウィンテス社製SAICASにて、BN切刃を用い、水平速度1μm/sの定速度モードで切刃を移動させた。この時の刃幅当たりの切刃が受ける水平力を剥離強度(kN/m)とした。そして高温高湿度環境試験前後における剥離強度を表2に示した。
【0127】
(ヤング率試験)
高温高湿度環境試験前後のサンプルに対して株式会社フィッシャーインストルメンツ製WIN−HCUにて、ビッカース圧子を用い、荷重増加モードで、速度1mN/sで針入および引き抜きを行った。このようにして、高温高湿度環境試験前後のサンプルのヤング率を測定した。そして、そのヤング率変化を表3に示した。
【0128】
〔実施例2〕
<硬化性組成物の調製>
カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の代わりにエポキシ化ポリブタジエン化合物としてEPB−13(日本曹達(株)社製)を用い、水酸基を有するオキセタン化合物としてOXT−101(東亞合成(株)社製)を加えたこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。
【0129】
<屈折率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
【0130】
<光透過率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0131】
<剥離強度測定およびヤング率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の剥離強度およびヤング率を測定した。その結果を表2および3にそれぞれ示す。
【0132】
〔実施例3〕
<硬化性組成物の調製>
水酸基を有するオキセタン化合物としてOXT−101(東亞合成(株)社製)を加えたこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。
【0133】
<屈折率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
【0134】
<光透過率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0135】
<剥離強度測定およびヤング率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の剥離強度およびヤング率を測定した。その結果を表2および3にそれぞれ示す。
【0136】
〔実施例4〕
<硬化性組成物の調製>
高沸点溶媒に溶解していないオキソニウム塩として、トリフェニルオニウムヘキサフルオロフォスフェート50%プロピレンカーボネート溶液(サンアプロ(株)社製;CPI−100P)の代わりに、高沸点溶媒に溶解しているオキソニウム塩として、トリフェニルオニウムヘキサフルオロフォスフェート(サンアプロ(株)社製;CPI−110P)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして硬化性組成物を調製した。
【0137】
<屈折率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
【0138】
<光透過率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0139】
<剥離強度測定およびヤング率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の剥離強度およびヤング率を測定した。その結果を表2および3にそれぞれ示す。
【0140】
〔比較例1〕
<硬化性組成物の調製>
カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。
【0141】
<屈折率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
【0142】
<光透過率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0143】
<剥離強度測定およびヤング率の測定>
上記硬化性組成物について、実施例1と同様にして硬化物の剥離強度およびヤング率を測定した。その結果を表2および3にそれぞれ示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表1は、実施例1〜4および比較例1の硬化性組成物の構成化合物の各成分の割合を重量部で示している。また、実施例1〜4および比較例1の硬化物の25℃における波長589nmの光の屈折率、波長1200〜1700nmの光透過率を示している。
【0146】
【表2】

【0147】
表2は、高温高湿度環境試験前後における実施例1〜4および比較例1の剥離強度を示している。
【0148】
表2において、実施例1〜4の硬化性組成物と比較例1の硬化性組成物とを比較することで、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシおよび/またはエポキシ化ポリブタジエンが含有されることにより、高温高湿試験後の剥離強度変化が小さくなっていることが分かる。また実施例3と4の硬化性組成物を比較することで、高沸点溶媒であるプロピレンカーボネートが存在しないことで、さらに高温高湿後の剥離強度変化が小さくなっていることが分かる。
【0149】
【表3】

【0150】
表3は、高温高湿度環境試験前後における実施例1〜4および比較例1のヤング率を示している。
【0151】
表3において、実施例1〜4および比較例1を比較することで、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシおよび/またはエポキシ化ポリブタジエンが含有されることにより、高温高湿度環境試験前のヤング率が比較例1に比べて低く、柔軟性が付与されていることが分かる。また、さきの剥離強度試験結果と合わせて考えると、実施例1〜4は柔軟性が付与されたことにより、高温高湿試験後の剥離強度の低下が小さくなり、耐剥離耐性が向上したことが分かる。
【0152】
さらに、実施例3および4の硬化性組成物を比較することで、実施例4は実施例3に比べて、高温高湿度環境試験後のヤング率の増加量が小さく、高温高湿度環境試験中に起こる余分な硬化反応が小さいことがわかる。さきの剥離強度試験結果と合わせて考えると、実施例4は高温高湿度環境試験中に起こる余分な硬化反応が小さく、それによって、剥離強度変化が小さいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の硬化性組成物の硬化物は、高温または高温高湿度下においても劣化することや剥がれることが無い。それ故、本発明の硬化性組成物を光学デバイスや液晶などの表示デバイスの接着剤、塗料、コーティング剤、シール剤、封止剤として好適に用いることが出来る。従って、本発明は、WDM(光波長多重通信)に用いられる光合分波器、コリメータ、光変調器、光増幅器、カメラ、顕微鏡、望遠鏡等の光学デバイス製造産業に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】(a)は本発明の硬化性組成物を用いて接着する前のファイバーアレイの模式図であり、(b)は本発明の硬化性組成物を用いて接着した後の、ファイバーアレイの模式図である。
【図2】(a)は本発明の硬化性組成物を用いて接着する前のWDWモジュールの模式図であり、(b)は本発明の硬化性組成物を用いて接着した後の、WDWモジュールの模式図である。
【図3】(a)は本発明の硬化性組成物を用いて接着する前のコリメータアレイの模式図であり、(b)は本発明の硬化性組成物を用いて接着した後の、コリメータアレイの模式図であり、(c)および(d)は、コリメータアレイの断面図である。
【符号の説明】
【0155】
10 ファイバーアレイ
11 押さえ基板
12 V溝基板
13 リボンファイバー
14 硬化性組成物
20 WDWモジュール
21 第1ファイバーアレイ
22 第2ファイバーアレイ
23 光ファイバー
25 光導波路
26 フィルタ
30 コリメータアレイ
35 コリメータレンズアレイ
36 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)と、
上記(A−1)および(A−2)以外のカチオン重合性化合物(B)とを含有する硬化性組成物であって、当該硬化性組成物の硬化物の25℃、589nmでの屈折率が1.40以上1.60以下であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
上記カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(A−1)および/またはエポキシ化ポリブタジエン化合物(A−2)は、高沸点溶媒を含有していないことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記カチオン重合性化合物(B)は、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記カチオン重合性化合物(B)は、脂環式エポキシ化合物および水酸基を有するオキセタン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
カチオン重合開始剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
上記カチオン重合開始剤が、オニウム塩系光カチオン重合開始剤であることを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
上記オニウム塩系光カチオン重合開始剤が高沸点溶媒に溶解していないことを特徴とする請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
シランカップリング剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
上記硬化性組成物の硬化物の厚みが100μmであり、当該硬化物の1200nm以上1700nm以下における光透過率が、60%以上100%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いて製造されていることを特徴とする光学デバイス。
【請求項11】
上記光学デバイスは、2つ以上の部材を有することを特徴とする請求項10に記載の光学デバイス。
【請求項12】
上記部材に用いられている材料が、有機材料または合成石英であることを特徴とする請求項10または11に記載の光学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−308588(P2008−308588A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157987(P2007−157987)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】