磁束センサおよび磁束センサを備えた平面ステージ
【課題】サーフェスモータステージ装置等を使った平面ステージにおいて、移動体の移動距離を測定するために、軽量安価でかつ構造が簡単な磁束センサを備えた平面ステージを提供すること。
【解決手段】磁性体からなる凸極が等間隔で形成されたプラテン8と、プラテン8上に浮上して移動する移動体2と、移動体2を制御する制御部9とを備えた平面ステージ1において、移動体2に、磁性体からなり、プラテン8の凸極のピッチの整数倍のピッチを有し、かつ前記凸極の幅と同じ幅を有する複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段とを備え、前記櫛歯状部の凸部をプラテン8に対向するように配置した磁束センサ7を設け、制御部9は、前記磁束測定手段で測定された出力に基づいて、移動体2の移動距離を算出することを特徴とする平面ステージである。
【解決手段】磁性体からなる凸極が等間隔で形成されたプラテン8と、プラテン8上に浮上して移動する移動体2と、移動体2を制御する制御部9とを備えた平面ステージ1において、移動体2に、磁性体からなり、プラテン8の凸極のピッチの整数倍のピッチを有し、かつ前記凸極の幅と同じ幅を有する複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段とを備え、前記櫛歯状部の凸部をプラテン8に対向するように配置した磁束センサ7を設け、制御部9は、前記磁束測定手段で測定された出力に基づいて、移動体2の移動距離を算出することを特徴とする平面ステージである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束センサおよび磁束センサを備えた平面ステージに係わり、特に、プラテン上に非接触で移動する移動体の移動距離を非接触で測定する磁束センサを備えた平面ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1および特許文献2に示すように、碁盤目状に強磁性体の凸極が設けられている平面状のプラテン上に、移動体をエアーにより浮上させ、移動体に磁力を印加して、移動体とプラテンの凸極との間の磁力を変化させることにより移動体を移動するように構成した平面ステージが知られている。
上記平面ステージにおいて、移動体の一方の面は、ワークを載置するためのワークステージとなるため、精度良く平面加工されている。他方の面には、直交する座標軸の各軸方向に移動磁界を発生する磁極と、エアーを吹き出すエアーパッドが設けられている。
移動体の磁極とエアーパッドはプラテンの凸極に向き合うように配置され、移動体はエアーの作用により浮上する。この状態で移動体の磁極に移動磁界を発生させ、磁極とプラテンの凸極との間の磁界を変化させることにより、移動体がプラテン上を移動する。
なお、このような構成を有する装置は、サーフェスモータステージ装置やソーヤモータステージ装置などと称されることもある。
【0003】
このような平面ステージは、従来のボールネジを用いた構成のステージ装置などとは異なり、Xステージ、Yステージおよびθステージと複数のステージを重ね合わせることなく、プラテンの平面よりなる1つのステージ上において移動体をXY方向の移動およびXY平面に垂直な軸の周りを回転させることができる。
そのため、近年、複数の露光領域に分割されたワークを分割された領域順に移動して露光する逐次(ステップ・アンド・リピート)露光装置のワークステージに適用することが検討されている。ワークステージとして平面ステージを用いた露光装置においては、ワークステージの構成が単純なものとなることから、装置の小型軽量化を図ることができると期待されている。
【0004】
上記平面ステージの動作原理を、図6および図7を用いて簡単に説明する。図6は、平面ステージを構成する複数の凸極を有するプラテン10と磁極を有する移動子20を示す断面図、図7は、移動子20の磁極に巻かれたコイルに流す電流のタイミングチャートである。なお、図7の±はコイルに流す電流方向を示しており、また、図7の電流のパターンは一例であり、正弦波で表わされるような滑らかに電流を変えるものでもよい。
図6に示すように、プラテン10は、平面板状であり、また、強磁性体の凸極11,12,…が碁盤目状に設けられている。凸極と凸極の間は非磁性体10aで埋められている。移動子20の磁路中には、永久磁石21が取り付けられており、これにより移動子20に設けられた4つの磁極22a〜22dには、NまたはSの磁極が発生する。
磁極22a〜22dには、コイル23a,23bが巻かれており、電流が流されると各磁極22a〜22dは電磁石となる。永久磁石21の作る磁界と電磁石が作る磁界の方向が同じであれば、磁力は強め合う。永久磁石21の作る磁界と電磁石が作る磁界が反対であれば、磁力は打ち消される。
【0005】
磁極22aと磁極22bとではコイル23aが反対方向に巻かれている。そのため、磁極22aにおいて永久磁石21の作る磁界と同じ方向の磁界が発生し、磁力が強め合う場合、磁極22bには、永久磁石21の作る磁界と反対方向の磁界が発生し、磁力は打ち消される。磁極22cと磁極22dも同様である。 移動子20の磁極22a〜22dは、プラテン10の凸極11,12,…に対向して置かれる。移動子20はエアーを吹き出すエアーパッドの作用により、プラテン10から浮き上がっているが、図6においてはエアーパッドは省略されている。
移動子20の上面がワークを載置する面となる。移動子20に直接ワークを載置する場合もあるが、移動子20の上面に平面のワークステージを置き、その上にワークを載置する場合もある。
【0006】
磁極22a〜22dに巻かれた各コイル23a,23bに図示しない駆動回路から、以下の順序で電流を流すことにより移動磁界が発生し、図6において、移動子20が左右方向に移動する。以下に、移動子20が図面右方向に移動する動作原理について説明する。
【0007】
(1)STEP1:移動子20の磁極22a,22b側のコイル23aに、図7に示すように、磁極22aの磁力を強めるように電流を流す。磁極22c,22dのコイル23bには電流を流さない。磁極22aは磁力が強められるので、プラテン10の凸極11と強く引き合い、磁極22aと凸極11とが対向する位置になる。磁極22bは磁力が打ち消され、凸極12と凸極13の間の非磁性体上に位置する。磁極22cと磁極22dは、それぞれ斜め方向の凸極14、16と引き合う。
【0008】
(2)STEP2:図7に示すように磁極22a,22bのコイル23aの電流を止め、磁極22c,22d側のコイル23bに、磁極22dの磁力を強めるように電流を流す。磁極22dは凸極16と強く引き合い、磁極22cは磁力を打ち消され、凸極14と引き合わなくなる。そのため、磁極22dが凸極16と対向するように、移動子20は同図右方向に移動する。磁極22aと磁極22bは、それぞれ斜め方向の凸極11、13と引き合う。
【0009】
(3)STEP3:図7に示すように磁極22c,22dのコイル23bの電流を止め、磁極22a,22b側のコイル23aに、今度は磁極22bの磁力を強めるように電流を流す。磁極22bは凸極13と強く引き合い、磁極22aは磁力を打ち消され、凸極11と引き合わなくなる。磁極22bが凸極13と対向するように、移動子20は同図右方向に移動する。
【0010】
(4)STEP4:図7に示すように磁極22a,22bのコイル23aの電流を止め、磁極22c,22d側のコイル23bに、磁極22cの磁力を強めるように電流を流す。磁極22cは凸極15と強く引き合い、磁極22dは磁力を打ち消され、凸極16と引き合わなくなる。磁極22cが凸極15と対向するように、移動子20は同図右方向に移動する。
なお、STEP4の位置に移動後、図7のSTEP4に示すようにコイル23bに電流を流し続けることで、移動子20をSTEP4の位置に保持させることができる。
【0011】
図8に示すように、プラテン10に形成された凸極の間隔をaとすると、各磁極22a〜22dに形成された凸極の間隔はa、磁極22aと磁極22bおよび磁極22cと磁極22dの間隔は2a、磁極22bと磁極22cの間隔は2.5aである。このように構成することにより、図6に示したように、磁極22aと磁極22bがプラテン20の凸極と対向しているとき、磁極22cと磁極22dの一部(この例では1/2)がプラテン10の凸極と対向している。
【0012】
図9は、直交するXY方向に移動できるように4個の移動子20a〜20dをワークステージなどの移動体30に設けた場合の構成を示す図であり、図9(a)は、プラテン10上を移動する移動体30をプラテン10と対向する面側から見た図、図9(b)は、移動体30をプラテン10の平面と平行な方向、すなわち、図9(a)のP−P方向から見た図である。なお、これらの図においては、移動子20を凸極の連続体として示しているが、実際には図6や図8に示した構成を有している。また、図9(b)では、プラテン10に設けられた凸極は省略されている。
図9(a)に示すように、移動体30の四隅にはエアーを吹き出すエアーパッド40が設けられている。このエアーパッド40から吹き出すエアーがプラテン10の表面に当たり、移動体30がプラテン10に対して浮上する。
【0013】
図9(a)に示すように、移動子20a〜20dは、移動体30の中心から直交するXY方向の4ケ所に設けられている。移動子20a,20bは、移動体30をX方向(図9(a)の左右方向)に移動させるための移動子であり、Y軸上の2ケ所(同図上下)に設けられる。移動子20c,20dは、移動体30をY方向(図9(a)の上下方向)に移動させるための移動子でありX軸上の2ケ所(同図左右)に設けられる。
各移動子20a〜20dは、X方向移動用の移動子20a,20bの磁極には図中左右方向に移動させるための磁界が発生し、両移動子20a,20bにおける磁界の移動方向が同じであれば、移動体30はX方向に移動する。また、Y方向移動用の移動子20c,20dの磁極には図中上下方向に移動させるための磁界が発生し、両移動子20c,20dにおける磁界の移動方向が同じであれば、移動体30はY方向に移動する。
【0014】
このような移動体30を有するステージを、逐次露光装置のワークステージとして使用する場合には、XY方向の移動のみでは不十分で、ステージをステージ面に垂直な軸の回りに回転させる(このような回転を以下θ回転という)ことが必要である。
移動体30をθ回転させるためには、例えば、移動体30の移動子20cと移動子20dの磁界の移動方向を逆方向にする。そうすると、移動体30の移動子20c側と移動子20d側とでは、移動方向が反対になるので、移動体30はθ回転する。移動子20aと移動子20bの磁界の移動方向を逆方向しても、同様に移動体30をθ回転させることができる。
【0015】
上記に示した平面ステージは、例えば、露光装置のワークステージとして利用される。その場合、例えば、移動体の上に真空吸着機構を設け、ウエハやプリント基板等のワークを載置して保持し、移動体を逐次移動させることにより、ワーク上の露光位置を変えて露光する処理が行われる。
このように、平面ステージが、露光装置のワークステージとして用いられる場合、ワークを載置した移動体を正確に精度よく移動させなければならない。そのために、移動体の移動距離をセンサーで測定して、移動体の移動距離をフイードバック制御しなければならない。
【0016】
移動体の移動距離を測定する手段にはいろいろな方法があるが、サーフェスモータステージ装置(ソーヤモータステージ装置)は、移動体がプラテンに対してエアー浮上しており非接触で、摺動部がないため低発塵ということが特徴を有しているので、移動距離を測定するセンサも非接触式のものが使われる。従来、このようなセンサとして測長用レーザが用いられてきた。
【0017】
図10および図11に、移動体の移動距離を測定するセンサとして測長用レーザを用いた場合のワークステージ(平面ステージ)の構成を示す。図10(a)はワークステージの斜視図、図10(b)はワークステージの側面図、図11は図10(a),(b)に示すスワークステージを上から見た平面図である。なお、図11においてはワークは省略されており、また、図10(a),(b)および図11においてはプラテンが省略されている。
これらの図に示すように、移動体30の下面には移動子20が取り付けられている。移動体30の上部には、ウエハやプリント基板等のワーク70を吸着保持する真空吸着溝51が形成されたワーク保持ステージ50が取り付けられている。また、ワーク保持ステージ50の表面には、平面ミラー61が平面方向(XY両方向)に設けられている。さらに、平面ステージ(ワークステージ)外の基準位置にレーザ測長器62が固定して設けられ、レーザ測長器62から、ワーク保持ステージ50の平面ミラー61に向かって測長レーザを出射し、平面ミラー61からの反射光をレーザ測長器62に入射して距離を測定する。
レーザ測長器62は、レーザ測長器62から出射するレーザ光と、対象物から反射して戻って来て再入射するレーザ光の位相のずれにより、対象物までの距離を測定するものであり、一般に市販されている。レーザ光源としては主としてHe−Neレーザが用いられる。
【0018】
ワークステージは、移動体30の移動後、レーザ測長器62によりX方向とY方向の移動距離が測定され、測定された移動距離情報がフィードバックされることにより、移動距離の誤差を修正する制御が行われる。
なお、特許文献3には、上記に示すような構成の平面ステージをワークステージとして備えた露光装置が示されている。同文献には、上記のような、ワークステージにミラーが取り付けられ、ワークステージとは独立した位置からレーザ光をミラーに対して出射し、測長する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−23689号公報
【特許文献2】特開2006−149051号公報
【特許文献3】特開平7−226354号公報
【特許文献4】特開2006−194672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記に示すような測長用レーザ62を用いる方法には、次のような問題がある。ワーク保持ステージ50上に設けられる平面ミラー61の長さは、移動体30のストローク(移動する距離)分だけ長くする必要がある。一方、例えば、露光処理を行うワークは、大型のプリント基板や液晶パネルの場合、ウエハに比べて大きく、これをステップ&リピートで露光する場合、ワーク保持ステージ50は大きくなり、移動体30の移動距離も長くなる。したがって、大型のワークをステップ&リピートで露光する装置のワーク保持ステージ50に平面ミラー61を設けるとなると、平面ミラー61はその分長くなって重くなり、そのためワークステージ全体も重くなる。ワークステージの重さが重くなると、ワークステージはステップ&リピートのための素早い移動や、素早い位置決めが困難になる。また大型の移動機構や移動制御装置が必要になる。
【0020】
なお、特許文献4 には、移動体側に軽量の測長用レーザを設けることが示されているが、測長用レーザを反射するための、移動ステージのストロークに対応した長さのミラーが必要となり、ミラーの表面は高精度の平面性も要求されるので、ミラーの製造コストがかかる。また、測長用レーザは、He−Neレーザの場合も、特許文献4に記載の半導体レーザの場合も、やや高価であり、装置のコストアップにつながる。
非接触式のセンサとして、静電センサはレーザ測長器に比べて小型軽量であるので、静電センサを用いることも考えられるが、測長センサとして用いるためには、高周波電源や高周波電流測定器が必要となり、構造が複雑になる問題がある。
【0021】
本発明の目的は、移動体の移動距離を測定するために、軽量安価でかつ構造が簡単な磁束センサを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、サーフェスモータステージ装置(ソーヤモータステージ装置)を使った平面ステージにおいて、移動体の移動距離を測定するために、軽量安価でかつ構造が簡単な磁束センサを備えた平面ステージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、磁性体からなる複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段と、を備えたことを特徴とする磁束センサである。
第2の手段は、磁性体からなる凸極が等間隔で形成されたプラテンと、該プラテン上に浮上して移動する移動体と、該移動体を制御する制御部とを備えた平面ステージにおいて、前記移動体に、磁性体からなり、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍のピッチを有し、かつ前記凸極の幅と同じ幅を有する複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段とを備え、前記櫛歯状部の凸部を前記プラテンに対向するように配置した磁束センサを設け、前記制御部は、前記磁束測定手段で測定された出力に基づいて、前記移動体の移動距離を算出することを特徴とする平面ステージである。
第3の手段は、第2の手段において、前記磁束センサが、前記移動体が移動する方向に2個配列され、該2個の磁束センサの櫛歯状部間が、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍でない距離隔てられていることを特徴とする平面ステージである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、移動体の移動距離を測定するために、軽量安価でかつ構造が簡単な磁束センサを実現することができる。
請求項2に記載の発明によれば、磁束センサにより移動距離の測定は、平面ステージの移動体を移動させるために形成されているプラテンの凸極を利用して行うので、移動体の距離測定用のセンサに対応して、新たな部品をステージやステージに搭載する装置を設ける必要がなく、距離測定用のために、磁束センサ以外の構成が増えることを防ぎ、かつ平面ステージの軽量化、低コスト化を図ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、磁束センサにより移動距離の測定を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図1ないし図5を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係る平面ステージの概略構成を示す図であり、図1(a)は平面ステージの側面図、図1(b)は平面ステージの平面図である。
これらの図において、1は平面ステージ、2はプラテン8上を移動する移動体、3は移動体3の下面にプラテン8に対向するように設けられる移動子、4はプラテン8に対して移動体2をエアー浮上するために設けられるエアー吹出部、5はワーク10を保持するワーク保持ステージ、6はワーク保持ステージ5の上面に設けられワーク10を吸着保持するために設けられた真空吸着溝、7は移動体2のX方向およびY方向の両側面にそれぞれ取り付けられた移動体2の移動距離を測定するための磁束センサ、8はプラテン、9は磁束センサ7で測定された出力に基づいて、移動体2の移動距離を算出し、移動体2の移動距離をフィードバック制御する制御部、10はワークである。
【0025】
これらの図に示すように、平面ステージ1は大凡移動体2とプラテン8とから構成され、移動体2の移動方向であるX方向とY方向とに、移動体2のそれぞれの方向の移動距離を測定するための磁束センサ7が取り付けられている。また、制御部9は、移動体2を所定の距離移動する移動指令信号を移動体2に出力し、移動体2を移動させる。また、制御部9は移動体2に取り付けられた磁束センサ7からの出力信号を入力し、移動体2の移動距離を算出し、移動体2の移動をフィードバック制御する。
【0026】
図2は、移動体2に取り付けられる磁束センサ7とプラテン8の構成を拡大して示した図であり、図2(a)はその側面図、図2(b)はその斜視図である。なお、図2(b)に示されるプラテン8は1軸移動の場合のプラテンの構成を示しており、2軸移動の場合のプラテンは格子状溝で構成される。
同図において、71,72はそれぞれ磁束センサ7を構成する第1の磁束センサおよび第2の磁束センサ、11は材質が、例えば、鉄などの磁性体からなる櫛歯状部、12は、永久磁石または電磁石で構成され、櫛歯状部11に磁束を発生させる磁束発生部、13は、ホール素子などで構成され、櫛歯状部11の磁束を測定する磁束測定部、14は櫛歯状部11の端部に形成される凸部、15はプラテン8上面に形成される凸極、16は凸極15間に形成される非磁性体からなる樹脂部である。
【0027】
これらの図に示すように、第1および第2の磁束センサ71,72は、それぞれ主として櫛歯状部11、磁束発生部12、および磁束測定部13の3つの部分から構成される。櫛歯状部11は、プラテン8の凸極15のピッチdと同じピッチであり、かつ凸極15の幅と同じ幅で設けられた複数の凸部14を有する。凸部14は、プラテン8の凸極15と対向して設けられる。なお、櫛歯状部11の凸部14のピッチは、プラテン8の凸極15のピッチdの整数倍(2倍、3倍…)でもよい。磁束測定部13で用いられるホール素子は、磁力を電圧に変換して出力するセンサであり、磁力が大きくなる(磁気抵抗が小さくなる)と出力電圧は大きくなり、磁力が小さくなる(磁気抵抗が大きくなる)と出力電圧は小さくなる。このようなホール素子は櫛歯状部11の磁路中に埋め込まれる。
【0028】
磁束センサ7は第1および第2の磁束センサ71,72の2個を1組として、移動体2に、移動体2が移動する1方向に対して取り付けられる。即ち、移動体2がX方向とY方向に直交移動するなら、X方向とY方向とにそれぞれ取り付けられる。なお、ここで、磁束センサの個数の考え方は、櫛歯状部と磁束発生部と磁束測定部とが一式になったものを1個として考える。具体的には、磁束測定部、例えばホール素子の数が、磁束センサの個数に対応する。第1および第2の磁束センサ71,72の櫛歯状部11の間隔Dは、プラテン8の凸極15のピッチdに対してずらした距離であり、プラテン8の凸極15のピッチの整数倍でない間隔を空けて設けられる。例えば、図2(a)に示すように、D=0.75×dである。
なお、磁束センサ7は、移動体2を移動させるために、移動体2の下面に取り付けられている移動子の磁気に影響されないように、移動子から離れた位置である移動体2の外側に設けられる。移動体2がプラテン8上を移動すると、磁束センサ7もプラテン8上を移動する。
【0029】
次に、移動体2の移動距離の測定原理について説明する。
図3(a)、(b)は、移動体2の移動に伴って磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14と、プラテン8の凸極15の位置関係の変化を示す図である。
なお、同図においては、1軸方向の移動のみを示しており、移動体2が2軸方向に移動する場合は、磁束センサ7はこれと直交する方向(紙面手前奥方向)にも設けられる。
これらの図に示すように、磁束センサ7は移動体2に取り付けられ、移動体2の移動に伴いプラテン8上を移動する。磁束センサ7の櫛歯状部11には磁束発生部12が設けられ磁束を発生している。なお、磁束センサ7の櫛歯状部11は簡略化して2個の凸部14が設けられており、そのピッチはプラテン8の凸極15のピッチの2倍である。
【0030】
図3(a)は、櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の凸極15と対向している状態を示している。このとき、磁束を発生している櫛歯状部11の凸部14は、プラテン8の凸極15と引き合い、両者の間で強い磁力が発生する。即ち、櫛歯状部11およびプラテン8を含む磁路中の磁気抵抗は低くなり、櫛歯状部11に設けられた磁束測定部13で測定される磁束は大きくなり出力電圧は大きくなる。
図3(b)は、移動体2が図面右方向に移動し、櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の樹脂部16と対向している状態を示している。このとき、櫛歯状部11の凸部14は磁性体でない樹脂部16とは引き合わないので、両者間の磁力は弱くなる。即ち、櫛歯状部11およびプラテン8を含む磁路中の磁気抵抗は大きくなり、櫛歯状部11に設けた磁束測定部13で測定される磁束は小さくなり出力電圧は小さくなる。
【0031】
即ち、磁束センサ7の磁束測定部13からの出力電圧は、図3(a)の櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の凸極15と完全に対向しているとき最大となり、図3(b)の櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の樹脂部16と完全に対向しているとき最小となる。また、櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の凸極15と樹脂部16の中間(図3(a)と図3(b)の中間)にあるとき、磁束測定部13から出力される出力電圧は図3(a)のときの出力と図3(b)のときの出力の中間となる。
従って、磁束センサ7の磁束測定部13からの出力電圧を記録し、仮に、電圧が最大なる位置から最小になる位置までの移動体2が移動したとすれば、その移動距離は、プラテン8の凸極15のピッチの半分の距離ということになる。また、同様に、電圧が最大の位置から最小の位置を通り越して再び最大になる位置まで移動体が移動したとすれば、移動体2は、プラテン8の凸極15のピッチ分移動したということになる。
【0032】
次に、移動する磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14と、プラテン8の凸極15との位置関係の変化を図4を用いて具体的に説明する。なお、ここでは、プラテン8は、2軸移動の場合を示しており、凸極15は格子状に形成されている。
図4(a)は、X方向の磁束を測定する磁束センサ7をX方向から見た側面図であり、図4(b)は前記磁束センサ7をY方向から見た側面図である
図4(a)に示すように、プラテン8の凸極15のピッチd1は5mmであり、凸極15と樹脂部16の幅w1は2.5mmである。一方、櫛歯状部11の凸部14のピッチd2は、プラテン8の凸極15のピッチを合わせた5mmであり、また、櫛歯状部11の凸部14の幅wxは、磁束センサ7が移動距離を測定する方向(X方向)に対して、プラテン8の凸極15の幅w1と同じ2.5mmである。このように、櫛歯状部11の凸部14のピッチd2と幅wxを、プラテン8の凸極15のピッチd1と幅w1に合わせることが必須である。
一方、図4(b)に示すように、櫛歯状部11の凸部14の幅について、移動距離を測定する方向(X方向)に対して直交方向(Y方向)に対しては、プラテン8の凸極15の幅と樹脂部16の幅を足した5mm(1ピッチ分)である。その理由は、移動体2がその磁束センサ7が移動距離を測定しない方向に移動するとき、磁束センサ7からの出力に変化が生じないようにするためである。
【0033】
次に、磁束センサ7に磁束測定部13から出力される出力電圧の最大値と最小値を通過しないような微小な移動の際の移動距離測定について説明する。
図5は、図2において、移動体2の移動に伴う磁束センサ7の移動に伴って、第1の磁束センサ71に設けられた磁束測定部13および第2の磁束センサ72の磁束測定部13から出力される出力電圧を示す図である。
ここで、予め磁束測定部13からの出力電圧が、例えば、最大値である+0.5V時は0mm、0V時は1.25mm、最小値である−0.5V時は2.5mmというように、磁束測定部13からの出力電圧に対する位置データを、平面ステージ1の制御部9に記憶させておくことによって、磁束測定部13からの出力電圧に基づいて、移動体2の位置を求めることができる。
【0034】
しかし、図5から分かるように、磁束センサ7が1個であると、例えば、磁束測定部13からの出力電圧が0Vの時の位置データは1.25mmと3.75mmとが存在するため、磁束測定部13からの出力電圧に対して移動体2の位置が1個所に決まらない。
そのため、図2に示すように、磁束センサ7を、移動体2の一軸方向に第1および第2の磁束センサ71,72を設ける。この2個の磁束センサ71,72の櫛歯状部11間の間隔Dを、プラテン8の凸極15のピッチdに対してずらして、プラテン8の凸極15のピッチの整数倍ではない距離隔てて設ける。
磁束センサ7をこのように構成することにより、2個の磁束センサ71,72の磁束測定部13から出力される出力電圧に位相差が生じる。2個の磁束センサ71,72の磁束測定部13の出力電圧に位相差が生ずれば、2つの出力電圧を比較することにより、位置が1個所に決まる。
【0035】
例えば、第1の磁束センサ71の磁束測定部13からの出力電圧が0Vであり、その値の時の位置データが1.25mmと3.75mmの2つがあっても、第2の磁束センサ72の磁束測定部13からの出力電圧は、位置データが1.25mmであれば、+0.5V、3.75mmであれば−0.5Vと異なる。従って、第1および第2の磁束センサ71,72のそれぞれの磁束測定部13からの出力電圧に対する位置データを、予め平面ステージ1の制御部9に記憶させておけば、位置を1個所に決定することができる。
その結果、第1の磁束センサ71の磁束測定部13からの出力電圧が0Vの時、第2の磁束センサ72の磁束測定部13からの出力電圧がプラスなら、位置は1.25mmであり、第1の磁束センサ71の磁束測定部13の出力電圧が0Vの時、第2の磁束センサ72の磁束測定部13からの出力電圧がマイナスなら、位置は3.75mmとなる。
【0036】
平面ステージ1の制御部9は、移動体2を所定の距離移動させる移動指令信号を出力し、移動体2を移動する。移動体2が移動すると、制御部9は、磁束センサ7からの出力信号に基づいて、上記のようにして移動体2の移動距離を求める。求められた移動距離に基づき、移動体2の移動をフィードバック制御する。
なお、上記では、X方向の移動について説明したが、Y方向の移動についても、Y方向の移動距離を測定する磁束センサ7により、同様にして移動距離を求めることができる。その際、上記したように、X方向の移動距離を測定する磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14の幅は、Y方向については、プラテン8の凸極15と樹脂部16の幅を足したものである。そのため、移動体2がY方向に移動する時は、X方向の移動距離を測定する磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14は、常にプラテン8の凸極15と向かい合っており磁束に変化を生じず、磁束センサ7からの出力は変化しない。
このように構成することにより、例えば、移動体2がY方向に移動している時、X方向の移動距離を測定する磁束センサ7からの出力が変化すると、制御部9がX方向にも移動していると誤検出することがあるので、これを防ぐことができる。
【0037】
上記のごとく、本実施形態の発明によれば、磁束センサにより移動距離の測定は、平面ステージの移動体(移動子)を移動させるために形成されているプラテンの凸極を利用して行っている。即ち、プラテンを移動体(移動子)の移動と移動距離の測定に共用したことに特徴がある。従って、移動体の距離測定用のセンサに対応して、新たな部品をステージやステージに搭載する装置を設ける必要がない。先にも述べたように、従来の側長レーザを用いる場合はレーザを反射する反射ミラーが必要になる。しかし、本発明によれば、側長レーザによる方式で必要とされるミラーに対応する部品を新たに設ける必要がない。従って、距離測定用のために、磁束センサ以外の構成が増えることを防ぎ、かつ平面ステージの軽量化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る平面ステージの概略構成を示す図である。
【図2】移動体2に取り付けられる磁束センサ7とプラテン8の構成を拡大して示した図である。
【図3】移動体2の移動に伴って磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14と、プラテン8の凸極15の位置関係の変化を示す図である。
【図4】X方向の磁束を測定する磁束センサ7をX方向およびY方向から見た図である
【図5】図2において、移動体2の移動に伴う磁束センサ7の移動に伴って、第1の磁束センサ71に設けられた磁束測定部13および第2の磁束センサ72の磁束測定部13から出力される出力電圧を示す図である。
【図6】平面ステージを構成する複数の凸極を有するプラテン10と磁極を有する移動子20を示す断面図である。
【図7】移動子20の磁極に巻かれたコイルに流す電流のタイミングチャートである。
【図8】移動子20の磁極の構成を示す図である。
【図9】直交するXY方向に移動できるように4個の移動子20a〜20dをワークステージなどの移動体30に設けた場合の構成を示す図である。
【図10】移動体の移動距離を測定するセンサとして測長用レーザを用いた場合のワークステージ(平面ステージ)の構成を示す斜視図および側面図である。
【図11】移動体の移動距離を測定するセンサとして測長用レーザを用いた場合のワークステージ(平面ステージ)の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 平面ステージ
2 移動体
3 移動子
4 エアー吹出部
5 ワーク保持ステージ
6 真空吸着溝
7 磁束センサ
71 第1の磁束センサ
72 第2の磁束センサ
8 プラテン
9 制御部
10 ワーク
11 櫛歯状部
12 磁束発生部
13 磁束測定部
14 櫛歯状部11の端部に形成される凸部
15 プラテン8上面に形成される凸極
16 凸極15間に形成される樹脂部
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束センサおよび磁束センサを備えた平面ステージに係わり、特に、プラテン上に非接触で移動する移動体の移動距離を非接触で測定する磁束センサを備えた平面ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1および特許文献2に示すように、碁盤目状に強磁性体の凸極が設けられている平面状のプラテン上に、移動体をエアーにより浮上させ、移動体に磁力を印加して、移動体とプラテンの凸極との間の磁力を変化させることにより移動体を移動するように構成した平面ステージが知られている。
上記平面ステージにおいて、移動体の一方の面は、ワークを載置するためのワークステージとなるため、精度良く平面加工されている。他方の面には、直交する座標軸の各軸方向に移動磁界を発生する磁極と、エアーを吹き出すエアーパッドが設けられている。
移動体の磁極とエアーパッドはプラテンの凸極に向き合うように配置され、移動体はエアーの作用により浮上する。この状態で移動体の磁極に移動磁界を発生させ、磁極とプラテンの凸極との間の磁界を変化させることにより、移動体がプラテン上を移動する。
なお、このような構成を有する装置は、サーフェスモータステージ装置やソーヤモータステージ装置などと称されることもある。
【0003】
このような平面ステージは、従来のボールネジを用いた構成のステージ装置などとは異なり、Xステージ、Yステージおよびθステージと複数のステージを重ね合わせることなく、プラテンの平面よりなる1つのステージ上において移動体をXY方向の移動およびXY平面に垂直な軸の周りを回転させることができる。
そのため、近年、複数の露光領域に分割されたワークを分割された領域順に移動して露光する逐次(ステップ・アンド・リピート)露光装置のワークステージに適用することが検討されている。ワークステージとして平面ステージを用いた露光装置においては、ワークステージの構成が単純なものとなることから、装置の小型軽量化を図ることができると期待されている。
【0004】
上記平面ステージの動作原理を、図6および図7を用いて簡単に説明する。図6は、平面ステージを構成する複数の凸極を有するプラテン10と磁極を有する移動子20を示す断面図、図7は、移動子20の磁極に巻かれたコイルに流す電流のタイミングチャートである。なお、図7の±はコイルに流す電流方向を示しており、また、図7の電流のパターンは一例であり、正弦波で表わされるような滑らかに電流を変えるものでもよい。
図6に示すように、プラテン10は、平面板状であり、また、強磁性体の凸極11,12,…が碁盤目状に設けられている。凸極と凸極の間は非磁性体10aで埋められている。移動子20の磁路中には、永久磁石21が取り付けられており、これにより移動子20に設けられた4つの磁極22a〜22dには、NまたはSの磁極が発生する。
磁極22a〜22dには、コイル23a,23bが巻かれており、電流が流されると各磁極22a〜22dは電磁石となる。永久磁石21の作る磁界と電磁石が作る磁界の方向が同じであれば、磁力は強め合う。永久磁石21の作る磁界と電磁石が作る磁界が反対であれば、磁力は打ち消される。
【0005】
磁極22aと磁極22bとではコイル23aが反対方向に巻かれている。そのため、磁極22aにおいて永久磁石21の作る磁界と同じ方向の磁界が発生し、磁力が強め合う場合、磁極22bには、永久磁石21の作る磁界と反対方向の磁界が発生し、磁力は打ち消される。磁極22cと磁極22dも同様である。 移動子20の磁極22a〜22dは、プラテン10の凸極11,12,…に対向して置かれる。移動子20はエアーを吹き出すエアーパッドの作用により、プラテン10から浮き上がっているが、図6においてはエアーパッドは省略されている。
移動子20の上面がワークを載置する面となる。移動子20に直接ワークを載置する場合もあるが、移動子20の上面に平面のワークステージを置き、その上にワークを載置する場合もある。
【0006】
磁極22a〜22dに巻かれた各コイル23a,23bに図示しない駆動回路から、以下の順序で電流を流すことにより移動磁界が発生し、図6において、移動子20が左右方向に移動する。以下に、移動子20が図面右方向に移動する動作原理について説明する。
【0007】
(1)STEP1:移動子20の磁極22a,22b側のコイル23aに、図7に示すように、磁極22aの磁力を強めるように電流を流す。磁極22c,22dのコイル23bには電流を流さない。磁極22aは磁力が強められるので、プラテン10の凸極11と強く引き合い、磁極22aと凸極11とが対向する位置になる。磁極22bは磁力が打ち消され、凸極12と凸極13の間の非磁性体上に位置する。磁極22cと磁極22dは、それぞれ斜め方向の凸極14、16と引き合う。
【0008】
(2)STEP2:図7に示すように磁極22a,22bのコイル23aの電流を止め、磁極22c,22d側のコイル23bに、磁極22dの磁力を強めるように電流を流す。磁極22dは凸極16と強く引き合い、磁極22cは磁力を打ち消され、凸極14と引き合わなくなる。そのため、磁極22dが凸極16と対向するように、移動子20は同図右方向に移動する。磁極22aと磁極22bは、それぞれ斜め方向の凸極11、13と引き合う。
【0009】
(3)STEP3:図7に示すように磁極22c,22dのコイル23bの電流を止め、磁極22a,22b側のコイル23aに、今度は磁極22bの磁力を強めるように電流を流す。磁極22bは凸極13と強く引き合い、磁極22aは磁力を打ち消され、凸極11と引き合わなくなる。磁極22bが凸極13と対向するように、移動子20は同図右方向に移動する。
【0010】
(4)STEP4:図7に示すように磁極22a,22bのコイル23aの電流を止め、磁極22c,22d側のコイル23bに、磁極22cの磁力を強めるように電流を流す。磁極22cは凸極15と強く引き合い、磁極22dは磁力を打ち消され、凸極16と引き合わなくなる。磁極22cが凸極15と対向するように、移動子20は同図右方向に移動する。
なお、STEP4の位置に移動後、図7のSTEP4に示すようにコイル23bに電流を流し続けることで、移動子20をSTEP4の位置に保持させることができる。
【0011】
図8に示すように、プラテン10に形成された凸極の間隔をaとすると、各磁極22a〜22dに形成された凸極の間隔はa、磁極22aと磁極22bおよび磁極22cと磁極22dの間隔は2a、磁極22bと磁極22cの間隔は2.5aである。このように構成することにより、図6に示したように、磁極22aと磁極22bがプラテン20の凸極と対向しているとき、磁極22cと磁極22dの一部(この例では1/2)がプラテン10の凸極と対向している。
【0012】
図9は、直交するXY方向に移動できるように4個の移動子20a〜20dをワークステージなどの移動体30に設けた場合の構成を示す図であり、図9(a)は、プラテン10上を移動する移動体30をプラテン10と対向する面側から見た図、図9(b)は、移動体30をプラテン10の平面と平行な方向、すなわち、図9(a)のP−P方向から見た図である。なお、これらの図においては、移動子20を凸極の連続体として示しているが、実際には図6や図8に示した構成を有している。また、図9(b)では、プラテン10に設けられた凸極は省略されている。
図9(a)に示すように、移動体30の四隅にはエアーを吹き出すエアーパッド40が設けられている。このエアーパッド40から吹き出すエアーがプラテン10の表面に当たり、移動体30がプラテン10に対して浮上する。
【0013】
図9(a)に示すように、移動子20a〜20dは、移動体30の中心から直交するXY方向の4ケ所に設けられている。移動子20a,20bは、移動体30をX方向(図9(a)の左右方向)に移動させるための移動子であり、Y軸上の2ケ所(同図上下)に設けられる。移動子20c,20dは、移動体30をY方向(図9(a)の上下方向)に移動させるための移動子でありX軸上の2ケ所(同図左右)に設けられる。
各移動子20a〜20dは、X方向移動用の移動子20a,20bの磁極には図中左右方向に移動させるための磁界が発生し、両移動子20a,20bにおける磁界の移動方向が同じであれば、移動体30はX方向に移動する。また、Y方向移動用の移動子20c,20dの磁極には図中上下方向に移動させるための磁界が発生し、両移動子20c,20dにおける磁界の移動方向が同じであれば、移動体30はY方向に移動する。
【0014】
このような移動体30を有するステージを、逐次露光装置のワークステージとして使用する場合には、XY方向の移動のみでは不十分で、ステージをステージ面に垂直な軸の回りに回転させる(このような回転を以下θ回転という)ことが必要である。
移動体30をθ回転させるためには、例えば、移動体30の移動子20cと移動子20dの磁界の移動方向を逆方向にする。そうすると、移動体30の移動子20c側と移動子20d側とでは、移動方向が反対になるので、移動体30はθ回転する。移動子20aと移動子20bの磁界の移動方向を逆方向しても、同様に移動体30をθ回転させることができる。
【0015】
上記に示した平面ステージは、例えば、露光装置のワークステージとして利用される。その場合、例えば、移動体の上に真空吸着機構を設け、ウエハやプリント基板等のワークを載置して保持し、移動体を逐次移動させることにより、ワーク上の露光位置を変えて露光する処理が行われる。
このように、平面ステージが、露光装置のワークステージとして用いられる場合、ワークを載置した移動体を正確に精度よく移動させなければならない。そのために、移動体の移動距離をセンサーで測定して、移動体の移動距離をフイードバック制御しなければならない。
【0016】
移動体の移動距離を測定する手段にはいろいろな方法があるが、サーフェスモータステージ装置(ソーヤモータステージ装置)は、移動体がプラテンに対してエアー浮上しており非接触で、摺動部がないため低発塵ということが特徴を有しているので、移動距離を測定するセンサも非接触式のものが使われる。従来、このようなセンサとして測長用レーザが用いられてきた。
【0017】
図10および図11に、移動体の移動距離を測定するセンサとして測長用レーザを用いた場合のワークステージ(平面ステージ)の構成を示す。図10(a)はワークステージの斜視図、図10(b)はワークステージの側面図、図11は図10(a),(b)に示すスワークステージを上から見た平面図である。なお、図11においてはワークは省略されており、また、図10(a),(b)および図11においてはプラテンが省略されている。
これらの図に示すように、移動体30の下面には移動子20が取り付けられている。移動体30の上部には、ウエハやプリント基板等のワーク70を吸着保持する真空吸着溝51が形成されたワーク保持ステージ50が取り付けられている。また、ワーク保持ステージ50の表面には、平面ミラー61が平面方向(XY両方向)に設けられている。さらに、平面ステージ(ワークステージ)外の基準位置にレーザ測長器62が固定して設けられ、レーザ測長器62から、ワーク保持ステージ50の平面ミラー61に向かって測長レーザを出射し、平面ミラー61からの反射光をレーザ測長器62に入射して距離を測定する。
レーザ測長器62は、レーザ測長器62から出射するレーザ光と、対象物から反射して戻って来て再入射するレーザ光の位相のずれにより、対象物までの距離を測定するものであり、一般に市販されている。レーザ光源としては主としてHe−Neレーザが用いられる。
【0018】
ワークステージは、移動体30の移動後、レーザ測長器62によりX方向とY方向の移動距離が測定され、測定された移動距離情報がフィードバックされることにより、移動距離の誤差を修正する制御が行われる。
なお、特許文献3には、上記に示すような構成の平面ステージをワークステージとして備えた露光装置が示されている。同文献には、上記のような、ワークステージにミラーが取り付けられ、ワークステージとは独立した位置からレーザ光をミラーに対して出射し、測長する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−23689号公報
【特許文献2】特開2006−149051号公報
【特許文献3】特開平7−226354号公報
【特許文献4】特開2006−194672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記に示すような測長用レーザ62を用いる方法には、次のような問題がある。ワーク保持ステージ50上に設けられる平面ミラー61の長さは、移動体30のストローク(移動する距離)分だけ長くする必要がある。一方、例えば、露光処理を行うワークは、大型のプリント基板や液晶パネルの場合、ウエハに比べて大きく、これをステップ&リピートで露光する場合、ワーク保持ステージ50は大きくなり、移動体30の移動距離も長くなる。したがって、大型のワークをステップ&リピートで露光する装置のワーク保持ステージ50に平面ミラー61を設けるとなると、平面ミラー61はその分長くなって重くなり、そのためワークステージ全体も重くなる。ワークステージの重さが重くなると、ワークステージはステップ&リピートのための素早い移動や、素早い位置決めが困難になる。また大型の移動機構や移動制御装置が必要になる。
【0020】
なお、特許文献4 には、移動体側に軽量の測長用レーザを設けることが示されているが、測長用レーザを反射するための、移動ステージのストロークに対応した長さのミラーが必要となり、ミラーの表面は高精度の平面性も要求されるので、ミラーの製造コストがかかる。また、測長用レーザは、He−Neレーザの場合も、特許文献4に記載の半導体レーザの場合も、やや高価であり、装置のコストアップにつながる。
非接触式のセンサとして、静電センサはレーザ測長器に比べて小型軽量であるので、静電センサを用いることも考えられるが、測長センサとして用いるためには、高周波電源や高周波電流測定器が必要となり、構造が複雑になる問題がある。
【0021】
本発明の目的は、移動体の移動距離を測定するために、軽量安価でかつ構造が簡単な磁束センサを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、サーフェスモータステージ装置(ソーヤモータステージ装置)を使った平面ステージにおいて、移動体の移動距離を測定するために、軽量安価でかつ構造が簡単な磁束センサを備えた平面ステージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、磁性体からなる複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段と、を備えたことを特徴とする磁束センサである。
第2の手段は、磁性体からなる凸極が等間隔で形成されたプラテンと、該プラテン上に浮上して移動する移動体と、該移動体を制御する制御部とを備えた平面ステージにおいて、前記移動体に、磁性体からなり、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍のピッチを有し、かつ前記凸極の幅と同じ幅を有する複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段とを備え、前記櫛歯状部の凸部を前記プラテンに対向するように配置した磁束センサを設け、前記制御部は、前記磁束測定手段で測定された出力に基づいて、前記移動体の移動距離を算出することを特徴とする平面ステージである。
第3の手段は、第2の手段において、前記磁束センサが、前記移動体が移動する方向に2個配列され、該2個の磁束センサの櫛歯状部間が、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍でない距離隔てられていることを特徴とする平面ステージである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、移動体の移動距離を測定するために、軽量安価でかつ構造が簡単な磁束センサを実現することができる。
請求項2に記載の発明によれば、磁束センサにより移動距離の測定は、平面ステージの移動体を移動させるために形成されているプラテンの凸極を利用して行うので、移動体の距離測定用のセンサに対応して、新たな部品をステージやステージに搭載する装置を設ける必要がなく、距離測定用のために、磁束センサ以外の構成が増えることを防ぎ、かつ平面ステージの軽量化、低コスト化を図ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、磁束センサにより移動距離の測定を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図1ないし図5を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係る平面ステージの概略構成を示す図であり、図1(a)は平面ステージの側面図、図1(b)は平面ステージの平面図である。
これらの図において、1は平面ステージ、2はプラテン8上を移動する移動体、3は移動体3の下面にプラテン8に対向するように設けられる移動子、4はプラテン8に対して移動体2をエアー浮上するために設けられるエアー吹出部、5はワーク10を保持するワーク保持ステージ、6はワーク保持ステージ5の上面に設けられワーク10を吸着保持するために設けられた真空吸着溝、7は移動体2のX方向およびY方向の両側面にそれぞれ取り付けられた移動体2の移動距離を測定するための磁束センサ、8はプラテン、9は磁束センサ7で測定された出力に基づいて、移動体2の移動距離を算出し、移動体2の移動距離をフィードバック制御する制御部、10はワークである。
【0025】
これらの図に示すように、平面ステージ1は大凡移動体2とプラテン8とから構成され、移動体2の移動方向であるX方向とY方向とに、移動体2のそれぞれの方向の移動距離を測定するための磁束センサ7が取り付けられている。また、制御部9は、移動体2を所定の距離移動する移動指令信号を移動体2に出力し、移動体2を移動させる。また、制御部9は移動体2に取り付けられた磁束センサ7からの出力信号を入力し、移動体2の移動距離を算出し、移動体2の移動をフィードバック制御する。
【0026】
図2は、移動体2に取り付けられる磁束センサ7とプラテン8の構成を拡大して示した図であり、図2(a)はその側面図、図2(b)はその斜視図である。なお、図2(b)に示されるプラテン8は1軸移動の場合のプラテンの構成を示しており、2軸移動の場合のプラテンは格子状溝で構成される。
同図において、71,72はそれぞれ磁束センサ7を構成する第1の磁束センサおよび第2の磁束センサ、11は材質が、例えば、鉄などの磁性体からなる櫛歯状部、12は、永久磁石または電磁石で構成され、櫛歯状部11に磁束を発生させる磁束発生部、13は、ホール素子などで構成され、櫛歯状部11の磁束を測定する磁束測定部、14は櫛歯状部11の端部に形成される凸部、15はプラテン8上面に形成される凸極、16は凸極15間に形成される非磁性体からなる樹脂部である。
【0027】
これらの図に示すように、第1および第2の磁束センサ71,72は、それぞれ主として櫛歯状部11、磁束発生部12、および磁束測定部13の3つの部分から構成される。櫛歯状部11は、プラテン8の凸極15のピッチdと同じピッチであり、かつ凸極15の幅と同じ幅で設けられた複数の凸部14を有する。凸部14は、プラテン8の凸極15と対向して設けられる。なお、櫛歯状部11の凸部14のピッチは、プラテン8の凸極15のピッチdの整数倍(2倍、3倍…)でもよい。磁束測定部13で用いられるホール素子は、磁力を電圧に変換して出力するセンサであり、磁力が大きくなる(磁気抵抗が小さくなる)と出力電圧は大きくなり、磁力が小さくなる(磁気抵抗が大きくなる)と出力電圧は小さくなる。このようなホール素子は櫛歯状部11の磁路中に埋め込まれる。
【0028】
磁束センサ7は第1および第2の磁束センサ71,72の2個を1組として、移動体2に、移動体2が移動する1方向に対して取り付けられる。即ち、移動体2がX方向とY方向に直交移動するなら、X方向とY方向とにそれぞれ取り付けられる。なお、ここで、磁束センサの個数の考え方は、櫛歯状部と磁束発生部と磁束測定部とが一式になったものを1個として考える。具体的には、磁束測定部、例えばホール素子の数が、磁束センサの個数に対応する。第1および第2の磁束センサ71,72の櫛歯状部11の間隔Dは、プラテン8の凸極15のピッチdに対してずらした距離であり、プラテン8の凸極15のピッチの整数倍でない間隔を空けて設けられる。例えば、図2(a)に示すように、D=0.75×dである。
なお、磁束センサ7は、移動体2を移動させるために、移動体2の下面に取り付けられている移動子の磁気に影響されないように、移動子から離れた位置である移動体2の外側に設けられる。移動体2がプラテン8上を移動すると、磁束センサ7もプラテン8上を移動する。
【0029】
次に、移動体2の移動距離の測定原理について説明する。
図3(a)、(b)は、移動体2の移動に伴って磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14と、プラテン8の凸極15の位置関係の変化を示す図である。
なお、同図においては、1軸方向の移動のみを示しており、移動体2が2軸方向に移動する場合は、磁束センサ7はこれと直交する方向(紙面手前奥方向)にも設けられる。
これらの図に示すように、磁束センサ7は移動体2に取り付けられ、移動体2の移動に伴いプラテン8上を移動する。磁束センサ7の櫛歯状部11には磁束発生部12が設けられ磁束を発生している。なお、磁束センサ7の櫛歯状部11は簡略化して2個の凸部14が設けられており、そのピッチはプラテン8の凸極15のピッチの2倍である。
【0030】
図3(a)は、櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の凸極15と対向している状態を示している。このとき、磁束を発生している櫛歯状部11の凸部14は、プラテン8の凸極15と引き合い、両者の間で強い磁力が発生する。即ち、櫛歯状部11およびプラテン8を含む磁路中の磁気抵抗は低くなり、櫛歯状部11に設けられた磁束測定部13で測定される磁束は大きくなり出力電圧は大きくなる。
図3(b)は、移動体2が図面右方向に移動し、櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の樹脂部16と対向している状態を示している。このとき、櫛歯状部11の凸部14は磁性体でない樹脂部16とは引き合わないので、両者間の磁力は弱くなる。即ち、櫛歯状部11およびプラテン8を含む磁路中の磁気抵抗は大きくなり、櫛歯状部11に設けた磁束測定部13で測定される磁束は小さくなり出力電圧は小さくなる。
【0031】
即ち、磁束センサ7の磁束測定部13からの出力電圧は、図3(a)の櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の凸極15と完全に対向しているとき最大となり、図3(b)の櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の樹脂部16と完全に対向しているとき最小となる。また、櫛歯状部11の凸部14がプラテン8の凸極15と樹脂部16の中間(図3(a)と図3(b)の中間)にあるとき、磁束測定部13から出力される出力電圧は図3(a)のときの出力と図3(b)のときの出力の中間となる。
従って、磁束センサ7の磁束測定部13からの出力電圧を記録し、仮に、電圧が最大なる位置から最小になる位置までの移動体2が移動したとすれば、その移動距離は、プラテン8の凸極15のピッチの半分の距離ということになる。また、同様に、電圧が最大の位置から最小の位置を通り越して再び最大になる位置まで移動体が移動したとすれば、移動体2は、プラテン8の凸極15のピッチ分移動したということになる。
【0032】
次に、移動する磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14と、プラテン8の凸極15との位置関係の変化を図4を用いて具体的に説明する。なお、ここでは、プラテン8は、2軸移動の場合を示しており、凸極15は格子状に形成されている。
図4(a)は、X方向の磁束を測定する磁束センサ7をX方向から見た側面図であり、図4(b)は前記磁束センサ7をY方向から見た側面図である
図4(a)に示すように、プラテン8の凸極15のピッチd1は5mmであり、凸極15と樹脂部16の幅w1は2.5mmである。一方、櫛歯状部11の凸部14のピッチd2は、プラテン8の凸極15のピッチを合わせた5mmであり、また、櫛歯状部11の凸部14の幅wxは、磁束センサ7が移動距離を測定する方向(X方向)に対して、プラテン8の凸極15の幅w1と同じ2.5mmである。このように、櫛歯状部11の凸部14のピッチd2と幅wxを、プラテン8の凸極15のピッチd1と幅w1に合わせることが必須である。
一方、図4(b)に示すように、櫛歯状部11の凸部14の幅について、移動距離を測定する方向(X方向)に対して直交方向(Y方向)に対しては、プラテン8の凸極15の幅と樹脂部16の幅を足した5mm(1ピッチ分)である。その理由は、移動体2がその磁束センサ7が移動距離を測定しない方向に移動するとき、磁束センサ7からの出力に変化が生じないようにするためである。
【0033】
次に、磁束センサ7に磁束測定部13から出力される出力電圧の最大値と最小値を通過しないような微小な移動の際の移動距離測定について説明する。
図5は、図2において、移動体2の移動に伴う磁束センサ7の移動に伴って、第1の磁束センサ71に設けられた磁束測定部13および第2の磁束センサ72の磁束測定部13から出力される出力電圧を示す図である。
ここで、予め磁束測定部13からの出力電圧が、例えば、最大値である+0.5V時は0mm、0V時は1.25mm、最小値である−0.5V時は2.5mmというように、磁束測定部13からの出力電圧に対する位置データを、平面ステージ1の制御部9に記憶させておくことによって、磁束測定部13からの出力電圧に基づいて、移動体2の位置を求めることができる。
【0034】
しかし、図5から分かるように、磁束センサ7が1個であると、例えば、磁束測定部13からの出力電圧が0Vの時の位置データは1.25mmと3.75mmとが存在するため、磁束測定部13からの出力電圧に対して移動体2の位置が1個所に決まらない。
そのため、図2に示すように、磁束センサ7を、移動体2の一軸方向に第1および第2の磁束センサ71,72を設ける。この2個の磁束センサ71,72の櫛歯状部11間の間隔Dを、プラテン8の凸極15のピッチdに対してずらして、プラテン8の凸極15のピッチの整数倍ではない距離隔てて設ける。
磁束センサ7をこのように構成することにより、2個の磁束センサ71,72の磁束測定部13から出力される出力電圧に位相差が生じる。2個の磁束センサ71,72の磁束測定部13の出力電圧に位相差が生ずれば、2つの出力電圧を比較することにより、位置が1個所に決まる。
【0035】
例えば、第1の磁束センサ71の磁束測定部13からの出力電圧が0Vであり、その値の時の位置データが1.25mmと3.75mmの2つがあっても、第2の磁束センサ72の磁束測定部13からの出力電圧は、位置データが1.25mmであれば、+0.5V、3.75mmであれば−0.5Vと異なる。従って、第1および第2の磁束センサ71,72のそれぞれの磁束測定部13からの出力電圧に対する位置データを、予め平面ステージ1の制御部9に記憶させておけば、位置を1個所に決定することができる。
その結果、第1の磁束センサ71の磁束測定部13からの出力電圧が0Vの時、第2の磁束センサ72の磁束測定部13からの出力電圧がプラスなら、位置は1.25mmであり、第1の磁束センサ71の磁束測定部13の出力電圧が0Vの時、第2の磁束センサ72の磁束測定部13からの出力電圧がマイナスなら、位置は3.75mmとなる。
【0036】
平面ステージ1の制御部9は、移動体2を所定の距離移動させる移動指令信号を出力し、移動体2を移動する。移動体2が移動すると、制御部9は、磁束センサ7からの出力信号に基づいて、上記のようにして移動体2の移動距離を求める。求められた移動距離に基づき、移動体2の移動をフィードバック制御する。
なお、上記では、X方向の移動について説明したが、Y方向の移動についても、Y方向の移動距離を測定する磁束センサ7により、同様にして移動距離を求めることができる。その際、上記したように、X方向の移動距離を測定する磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14の幅は、Y方向については、プラテン8の凸極15と樹脂部16の幅を足したものである。そのため、移動体2がY方向に移動する時は、X方向の移動距離を測定する磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14は、常にプラテン8の凸極15と向かい合っており磁束に変化を生じず、磁束センサ7からの出力は変化しない。
このように構成することにより、例えば、移動体2がY方向に移動している時、X方向の移動距離を測定する磁束センサ7からの出力が変化すると、制御部9がX方向にも移動していると誤検出することがあるので、これを防ぐことができる。
【0037】
上記のごとく、本実施形態の発明によれば、磁束センサにより移動距離の測定は、平面ステージの移動体(移動子)を移動させるために形成されているプラテンの凸極を利用して行っている。即ち、プラテンを移動体(移動子)の移動と移動距離の測定に共用したことに特徴がある。従って、移動体の距離測定用のセンサに対応して、新たな部品をステージやステージに搭載する装置を設ける必要がない。先にも述べたように、従来の側長レーザを用いる場合はレーザを反射する反射ミラーが必要になる。しかし、本発明によれば、側長レーザによる方式で必要とされるミラーに対応する部品を新たに設ける必要がない。従って、距離測定用のために、磁束センサ以外の構成が増えることを防ぎ、かつ平面ステージの軽量化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る平面ステージの概略構成を示す図である。
【図2】移動体2に取り付けられる磁束センサ7とプラテン8の構成を拡大して示した図である。
【図3】移動体2の移動に伴って磁束センサ7の櫛歯状部11の凸部14と、プラテン8の凸極15の位置関係の変化を示す図である。
【図4】X方向の磁束を測定する磁束センサ7をX方向およびY方向から見た図である
【図5】図2において、移動体2の移動に伴う磁束センサ7の移動に伴って、第1の磁束センサ71に設けられた磁束測定部13および第2の磁束センサ72の磁束測定部13から出力される出力電圧を示す図である。
【図6】平面ステージを構成する複数の凸極を有するプラテン10と磁極を有する移動子20を示す断面図である。
【図7】移動子20の磁極に巻かれたコイルに流す電流のタイミングチャートである。
【図8】移動子20の磁極の構成を示す図である。
【図9】直交するXY方向に移動できるように4個の移動子20a〜20dをワークステージなどの移動体30に設けた場合の構成を示す図である。
【図10】移動体の移動距離を測定するセンサとして測長用レーザを用いた場合のワークステージ(平面ステージ)の構成を示す斜視図および側面図である。
【図11】移動体の移動距離を測定するセンサとして測長用レーザを用いた場合のワークステージ(平面ステージ)の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 平面ステージ
2 移動体
3 移動子
4 エアー吹出部
5 ワーク保持ステージ
6 真空吸着溝
7 磁束センサ
71 第1の磁束センサ
72 第2の磁束センサ
8 プラテン
9 制御部
10 ワーク
11 櫛歯状部
12 磁束発生部
13 磁束測定部
14 櫛歯状部11の端部に形成される凸部
15 プラテン8上面に形成される凸極
16 凸極15間に形成される樹脂部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなる複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、
前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、
前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段と、
を備えたことを特徴とする磁束センサ。
【請求項2】
磁性体からなる凸極が等間隔で形成されたプラテンと、該プラテン上に浮上して移動する移動体と、該移動体を制御する制御部とを備えた平面ステージにおいて、
前記移動体に、
磁性体からなり、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍のピッチを有し、かつ前記凸極の幅と同じ幅を有する複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段とを備え、前記櫛歯状部の凸部を前記プラテンに対向するように配置した磁束センサを設け、
前記制御部は、前記磁束測定手段で測定された出力に基づいて、前記移動体の移動距離を算出することを特徴とする平面ステージ。
【請求項3】
前記磁束センサは、前記移動体が移動する方向に2個配列され、該2個の磁束センサの櫛歯状部間が、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍でない距離隔てられていることを特徴とする請求項2に記載の平面ステージ。
【請求項1】
磁性体からなる複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、
前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、
前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段と、
を備えたことを特徴とする磁束センサ。
【請求項2】
磁性体からなる凸極が等間隔で形成されたプラテンと、該プラテン上に浮上して移動する移動体と、該移動体を制御する制御部とを備えた平面ステージにおいて、
前記移動体に、
磁性体からなり、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍のピッチを有し、かつ前記凸極の幅と同じ幅を有する複数の凸部を有する櫛歯状部が形成された磁性体本体と、前記櫛歯状部に磁束を発生させる磁束発生手段と、前記櫛歯状部の磁束の変化を測定し、その結果を出力する磁束測定手段とを備え、前記櫛歯状部の凸部を前記プラテンに対向するように配置した磁束センサを設け、
前記制御部は、前記磁束測定手段で測定された出力に基づいて、前記移動体の移動距離を算出することを特徴とする平面ステージ。
【請求項3】
前記磁束センサは、前記移動体が移動する方向に2個配列され、該2個の磁束センサの櫛歯状部間が、前記プラテンの凸極のピッチの整数倍でない距離隔てられていることを特徴とする請求項2に記載の平面ステージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−145140(P2008−145140A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329815(P2006−329815)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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