磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置
【課題】ノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、再生部を備えた磁気ヘッドが提供される。再生部は、磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する。再生部は、積層膜と、磁界印加部と、を含む。積層膜は、第1磁化固着層と、磁化自由層と、を含む。第1磁化固着層は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着されている。磁化自由層は、第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する。磁界印加部は、積層膜と第1軸に沿って積層され、第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を積層膜に加える。第1磁化固着層から磁化自由層へ、磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、媒体磁界に応じて積層膜の抵抗が変化する。
【解決手段】実施形態によれば、再生部を備えた磁気ヘッドが提供される。再生部は、磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する。再生部は、積層膜と、磁界印加部と、を含む。積層膜は、第1磁化固着層と、磁化自由層と、を含む。第1磁化固着層は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着されている。磁化自由層は、第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する。磁界印加部は、積層膜と第1軸に沿って積層され、第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を積層膜に加える。第1磁化固着層から磁化自由層へ、磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、媒体磁界に応じて積層膜の抵抗が変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置において、ハードディスクドライブ等の磁気記録媒体に保存された情報が、磁気抵抗効果型の磁気ヘッドによって読み出される。記録密度を向上したときに、磁気ノイズが特に問題となる。記録密度の向上のためにノイズを抑制することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−294376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、ノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、再生部を備えた磁気ヘッドが提供される。前記再生部は、磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する。前記再生部は、積層膜と、磁界印加部と、を含む。前記積層膜は、第1磁化固着層と、磁化自由層と、を含む。前記第1磁化固着層は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着されている。前記磁化自由層は、前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する。前記磁界印加部は、前記積層膜と前記第1軸に沿って積層され、前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を前記積層膜に加える。前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ、前記磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、前記媒体磁界に応じて前記積層膜の抵抗が変化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る磁気ヘッドを示す模式的斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る磁気ヘッドを搭載するヘッドスライダを示す模式的斜視図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を示す模式図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を示すグラフ図である。
【図7】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図10】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図11】第2の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図12】第3の実施形態に係る磁気記録再生装置を示す模式的斜視図である。
【図13】図13(a)及び図13(b)は、第3の実施形態に係る磁気記録装置の一部を示す模式的斜視図である。
【図14】第4の実施形態に係る磁気記録再生装置を示す模式図である。
【図15】第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を示すグラフ図である。
【図16】第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
図3は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドを搭載するヘッドスライダの構成を例示する模式的斜視図である。
図1は、図2のA1−A2線断面図である。
まず、本実施形態に係る磁気ヘッドの構成の概要と動作の概要について、図2及び図3を用いて説明する。
【0009】
図2に表したように、磁気ヘッド110は、再生部70(再生ヘッド部)を備える。さらに、磁気ヘッド110は、書き込み部60(書き込みヘッド部)を備えることができる。
【0010】
書き込み部60は、例えば、主磁極61と、書き込み部リターンパス62と、を含む。なお、磁気ヘッド110において、書き込み部60は、スピントルク発振子10(STO:spin torque oscillator)などの書き込み動作に関してアシストする部分をさらに含むことができる。すなわち、磁気ヘッド110の書き込み部60は、任意の構成を有することができる。
【0011】
再生部70は、例えば、積層膜71と、第1磁気シールド72aと、第2磁気シールド72bとを含む。積層膜71は、例えば磁気抵抗効果素子である。
【0012】
積層膜71は、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間に設けられている。後述するように、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bは必要に応じて設けられ、場合によっては省略できる。
【0013】
上記の再生部70の各要素、及び、上記の書き込み部60の各要素は、図示しない、例えばアルミナの絶縁体により分離される。
【0014】
図3に表したように、磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ3に搭載される。ヘッドスライダ3には、例えばAl2O3/TiCなどが用いられる。
ヘッドスライダ3は、磁気ディスクなどの磁気記録媒体80の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体80に対して相対的に運動する。
【0015】
ヘッドスライダ3は、例えば、空気流入側3Aと空気流出側3Bとを有する。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ3の空気流出側3Bの側面などに配置される。これにより、ヘッドスライダ3に搭載された磁気ヘッド110は、磁気記録媒体80の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体80に対して相対的に運動する。
【0016】
図2に表したように、磁気記録媒体80は、例えば媒体基板82と、媒体基板82の上に設けられた磁気記録層81と、を有する。書き込み部60から印加される磁界により、磁気記録層81の磁化83が制御され、これにより書き込み動作が実施される。このとき、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85に沿って、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。
【0017】
再生部70は、磁気記録媒体80に対向して配置される。磁気記録媒体80は、媒体移動方向85に沿って、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。再生部70は、磁気記録層81の磁化83の方向を検出する。これにより、再生動作が実施される。
【0018】
例えば、磁気記録媒体80から再生部70に向かう方向の軸をZ軸とする。Z軸に対して垂直な1つの軸をX軸とする。Z軸とX軸とに対して垂直な軸をY軸とする。X軸を第1軸とし、Z軸を第2軸とし、Y軸を第3軸とする。第Z軸方向は、ハイト方向である。X軸方向は、例えば、磁気記録媒体80の記録トラック進行方向に対応する。Y軸方向は、例えば、磁気記録媒体80の記録トラック幅方向に対応する。
【0019】
図1は、再生部70の構成を例示している。
図1に表したように、本実施形態に係る磁気ヘッド110は、再生部70を備える。再生部70は、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界(磁化83)を検出する。再生部70は、磁気記録媒体80に対向する媒体対向面70s(ABS:Air Bearing Surface)を有する。
【0020】
再生部70は、積層膜71と、磁界印加部75と、を含む。既に説明したように、再生部70は、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bを含むことができる。
【0021】
本具体例では、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間に積層膜71及び磁界印加部75が配置される。例えば、第1磁気シールド72aと磁界印加部75との間に積層膜71が配置される。例えば、積層膜71と第2磁気シールド72bとの間に磁界印加部75が配置される。
【0022】
積層膜71は、第1磁化固着層31と、磁化自由層32と、を含む。第1磁化固着層31から磁化自由層32に向かう方向の軸が、X軸(第1軸)とされる。
【0023】
第1磁化固着層31は、垂直磁気異方性を有する。第1磁化固着層31の磁化(第1磁化固着層磁化31h)は、固着されている。第1磁化固着層31の磁化の方向は、固着されている。
【0024】
本願明細書において、垂直磁気異方性は、磁化の膜面垂直方向(膜厚方向に対して平行方向)に、磁化が向きやすい性質のことを言う(膜面垂直方向に磁化が向くと磁気エネルギーが低下する)。すなわち、垂直磁気異方性を有する第1磁化固着層31においては、X軸に沿った磁化(第1磁化固着層磁化31h)が、Y軸に沿った磁化よりも大きく、Z軸に沿った磁化よりも大きい。
【0025】
磁化自由層32は、第1磁化固着層31とX軸に沿って積層される。磁化自由層32においては、スピントルク発振する。本具体例では、第1磁気シールド72aと磁化自由層32との間に第1磁化固着層31が配置される。磁化自由層32は、例えば、磁界検出層として機能する。
【0026】
本願明細書においては、「積層」とは、直接重ねられる場合の他に、他の要素が間に挿入されて重ねられる場合も含む。
【0027】
本具体例では、積層膜71は、中間層34(スピントルク伝達層)をさらに含む。中間層34は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に設けられる。中間層34は、第1磁化固着層31のスピントルクを磁化自由層32に伝達する機能を有する。
【0028】
本具体例では、積層膜71は、下地層33をさらに含む。第1磁気シールド72aと第1磁化固着層31との間に下地層33が配置される。
【0029】
本具体例では、磁界印加部75は、第2磁化固着層22と、非磁性層(第2非磁性層21)と、を含む。積層膜71の磁化自由層32と、第2磁気シールド72bと、の間に第2磁化固着層22が配置される。積層膜71の磁化自由層32と、第2磁化固着層22と、の間に第2非磁性層21が配置される。
【0030】
すなわち、第2磁化固着層22は、積層膜71とX軸に沿って積層される。第2磁化固着層22は、垂直磁気異方性を有する。第2磁化固着層22の磁化(第2磁化固着層磁化22h)は、第1磁化固着層31の磁化の方向に固着されている。第2磁化固着層22の磁化の方向は、第1磁化固着層31の磁化の方向と同じである。
【0031】
第2非磁性層21は、積層膜71と第2磁化固着層22との間に設けられる。第2非磁性層21には、非磁性材料が用いられる。第1磁化固着層31と第2非磁性層21との間に磁化自由層32が配置される。
【0032】
例えば第1磁気シールド72aの上に下地層33が形成される。下地層33の上に第1磁化固着層31が形成される。第1磁化固着層31の上に中間層34が形成される。中間層34の上に磁化自由層32が形成される。磁化自由層32の上に第2非磁性層21が形成される。第2非磁性層21の上に第2磁化固着層22が形成される。第2磁化固着層22の上に第2磁気シールド72bが形成される。第2非磁性層21は、例えばキャップ層である。
【0033】
このように、磁界印加部75は、積層膜71とX軸に沿って積層される。磁界印加部75は、X軸に沿う成分を有するバイアス磁界Hbを積層膜71に加える。
【0034】
再生部70において、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、X軸に沿って電流I1を流すことができる。すなわち、実施形態に係る磁気ヘッド110の再生部70においては、磁気抵抗効果膜の膜面に対して垂直方向にセンス電流が流れる。第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流I1が流れるときには、磁化自由層32から第1磁化固着層31に、電子電流が流れる。
【0035】
例えば、第1磁化固着層31と磁化自由層32に電気的に接続された第1電流供給部75aが接続される。本具体例では、第1電流供給部75aは、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとに電気的に接続される。電流I1は、第1磁気シールド72a、第2磁気シールド72b及び磁界印加部75を介して、第1磁化固着層31及び磁化自由層32に(積層膜71に)供給される。
【0036】
再生部70において、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、磁化自由層32がスピントルク発振する値(しきい値)以上の電流I1が流されたときに、磁気記録媒体80の媒体磁界(磁化83)に応じて、積層膜71の抵抗が変化する。すなわち、磁気記録媒体80の媒体磁界の大きさ及び向きの少なくともいずれかに応じて、積層膜71の抵抗が変化する。積層膜71の抵抗は、積層膜71のX軸に沿った抵抗である。積層膜71の抵抗は、少なくとも、第1磁化固着層31と磁化自由層32との両端の抵抗を含む。
【0037】
第1磁化固着層31から磁化自由層32に、スピントルクが注入される。第1磁化固着層31は、スピン注入層として機能する。この例では、第1磁化固着層31のスピントルクが、中間層34を介して磁化自由層32に伝達される。磁化自由層32の磁化(磁化自由層磁化32h)は、伝達されたスピントルクにより、層面内で大回転する。
【0038】
上記のように、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bは、電極として機能することができる。第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bには、例えばNiFeなどが用いられる。
【0039】
この例では、電流I1は、磁界印加部75を介して積層膜71に流れる。すなわち、磁界印加部75は、電極として機能することができる。
【0040】
下地層33には、例えば、Ta、Ru、Cu及びTiなどの単層膜、または、積層膜を用いることが望ましい。下地層33の厚さは、薄いことが望ましい。これにより、再生分解能が高まる。積層膜71の膜質向上と再生分解能との観点から、下地層33の厚さは適切に設定される。
【0041】
第1磁化固着層31には、例えば、Co/Ni人工格子膜を用いることが望ましい。これにより、高いMR比(高分極)と、大きな垂直磁気異方性と、の両方が得られる。
【0042】
第1磁化固着層31には、例えば、大きな垂直磁気異方性を有するCoPt、FePt、Co/Pd人工格子、及び、Co/Pt人工格子等を用いることができる。この場合には、例えば、第1磁化固着層31と中間層34との間の界面に、薄い高分極率材料層を挿入することが望ましい。高分極率材料層の厚さは、例えば0.5ナノメートル(nm)以上3nm以下である。高分極材料層には、例えば、FeCo、FeCo/Cu/FeCo積層膜、または、スピン拡散長の短いホイスラー規則化合金(FeCoAlSi及びCoMnGeなど)及びFeCoGe、FeCoAl、FeCoSiなどの層を用いることができる。スピン拡散長が短いと、薄くても十分な分極が可能となる。これにより、磁化自由層32(磁界検出層)へのスピントルク伝達効率が向上できる。高分極材料層が厚いと、第1磁化固着層31の全体の垂直磁気異方性が弱まる。このため、高分極材料層の厚みは薄く設定される。
【0043】
中間層34には、例えば、Cu及びAgなどが用いられる。これにより、高いMR比と、高いスピントルク伝達効率が得られる。すなわち、高い電流密度が投入可能で低い抵抗が得られる。中間層34の厚みは、薄いことが望ましい。中間層34は必要に応じて設けられる。中間層34は省略しても良い。また、中間層34として、ZnO及びMgOなどの酸化物層と、その酸化物層内に分散した導電部と、を含むハイブリッド型の層を用いることもできる。これにより、抵抗は高くなるがMR比を向上できる。
【0044】
磁化自由層32には、例えば、FeCo系合金、及び、ホイスラー系合金などを用いることができる。これにより、高いMR比が得られる。磁化自由層32の厚さは、高分解能の観点から、10nm以下が望ましい。磁化自由層32の厚さは、MR比の向上のためには、厚いことが望ましい。磁化自由層32の厚さは、これらの観点から適切に設定される。磁化自由層32は、面内に磁化が向きやすいことが望ましい。面内磁気異方性においては、膜面に対して垂直方向よりも膜面に対して平行な方向に磁化が向きやすい。磁化自由層32が面内磁気異方性を有することにより、磁化自由層32における発振が安定化する。
【0045】
もし、磁化自由層32の厚さ(X軸に沿った幅)が、Y軸に沿った幅またはZ軸に沿った幅と同程度になると、反磁界によって、膜面内の磁化安定化が困難となる。その場合には、Fe/Co積層膜のような負の垂直磁気異方性を、磁化自由層32の少なくとも一部に用いることが望ましい。また、磁化自由層32において、膜面内での磁化安定化のために、Ru層を介して反強磁性結合した磁性層/Ru層/磁性層のような積層構成を用いることができる。
【0046】
第1磁化固着層31のY軸に沿った幅(トラック幅方向の幅)は、磁化自由層32のY軸に沿った幅よりも大きいことが望ましい。第1磁化固着層31のZ軸に沿った幅(ハイト方向の幅)は、磁化自由層32のZ軸に沿った幅よりも大きいことが望ましい。すなわち、X軸に対して垂直な軸に沿った第1磁化固着層31の幅は、X軸に対して垂直なその軸に沿った磁化自由層32の幅よりも大きいことが望ましい。
【0047】
これにより、磁化自由層32からの反作用スピントルクによる磁化の乱れが抑制できる。さらに、狭トラック幅の媒体磁界を実際に検出する磁化自由層32を超微細形状にパターニングすることがプロセス的に容易になる。すなわち、磁化自由層32のY軸に沿った幅の加工において、Y軸に沿った幅とエッチング深さとを同程度にできる。さらに、再生部70の抵抗が低減できる。
【0048】
Y軸(磁気記録媒体80から再生部70に向かう方向のZ軸と、X軸と、に対して垂直な軸)に沿った磁化自由層32の幅は、磁気記録媒体80の記録トラック幅と、実質的に同じに設定される。
【0049】
Z軸(X軸に対して垂直で磁気記録媒体80から再生部70に向かう方向の軸)に沿った磁化自由層32の幅は、Y軸(X軸とZ軸とに対して垂直な軸)に沿った磁化自由層32の幅以下に設定することが望ましい。磁化自由層32のZ軸に沿った幅を、磁化自由層32のY軸に沿った幅よりも小さく設定することで、例えば、再生の分解能が向上できる。
【0050】
第2非磁性層21には、例えば、スピントルクの伝達を遮断する材料が用いられる。第2非磁性層21には、例えば、Ta及びRuなどを用いることが望ましい。
【0051】
第2磁化固着層22には、例えば、飽和磁化が大きく垂直磁気異方性を有する材料を用いることが望ましい。これにより、強い垂直磁界を発生することができる。第2磁化固着層22には、例えば、Co/Ni人工格子、及び、CoPt合金などを用いることができる。
【0052】
垂直磁気異方性を安定化するために、第2磁化固着層22と第2非磁性層21との間に、別の下地層を設けても良い。この別の下地層には、例えば、Ru、Cu及びTiなどを用いることができる。
【0053】
以下、磁気ヘッド110の特性の測定結果の例を説明する。
以下の試料においては、積層膜71のY軸に沿った幅は、約50nmであり、Z軸に沿った幅は約50nmである。第1磁化固着層31として、X軸に沿って交互に積層されたFeCo層とNi層とを用いた。FeCo層の厚さは、0.2nmである。Ni層の厚さは、0.6nmである。FeCo層の数は25であり、Ni層の数は25である。
【0054】
磁化自由層32には、FeCoSi層を用いた。磁化自由層32の厚さは約10nmである。磁化自由層32の飽和磁化Bsは、約1.5テスラ(T)である。
【0055】
図4(a)〜図4(c)、及び、図5(a)〜図5(c)は第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図4(a)〜図4(c)は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間の電圧Vaが約10ミリボルト(mV)の場合の特性に対応する。すなわち、これらの図は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に流れる電流がしきい値よりも小さい場合に対応する。図5(a)〜図5(c)は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間の電圧Vaが約80ミリボルト(mV)の場合の特性に対応する。すなわち、これらの図は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に流れる電流がしきい値よりも大きい場合に対応する。
【0056】
図4(a)及び図5(a)は、特性の測定結果を例示するグラフ図である。これらの図において、横軸は、素子に印加される磁界Hである。磁界Hは、X軸に沿う磁界である。磁界Hは、例えば、検出すべき、磁気記録媒体80の媒体磁界に対応する。縦軸は、素子の抵抗変化dRである。
【0057】
図4(b)、図4(c)、図5(b)及び図5(c)は、第1磁化固着層31及び磁化自由層32の磁化の状態を模式的に例示している。図4(b)は、図4(a)に例示した第1状態ST1(電圧Va=10mV、磁界H=0kOe)に対応する。図4(c)は、図4(a)に例示した第2状態ST2(電圧Va=10mV、磁界H=6kOe)に対応する。図5(b)は、図5(a)に例示した第3状態ST3(電圧Va=80mV、磁界H=6kOe)に対応する。図5(c)は、図5(a)に例示した第4状態ST4(電圧Va=80mV、磁界H=9kOe)に対応する。
【0058】
図4(a)に表したように、電圧Vaが10mVの場合、磁界Hが0kOeのときの抵抗は高い。そして、磁界Hの絶対値が大きくなると抵抗が低下する。
【0059】
図4(b)に表したように、磁界Hが0kOeである第1状態ST1においては、磁化自由層磁化32hは、第1磁化固着層31からの漏洩磁界の影響により、X軸に対して傾斜する。すなわち、磁化自由層磁化32hは、膜面内から膜面直方向に若干傾く。その結果、第1磁化固着層磁化31hと磁化自由層磁化32hとの間の角度は、90度に近い。
【0060】
電圧Vaが10mVのときは、スピントルクが微弱である、このため、磁界Hの絶対値を増大すると、抵抗は減少する。磁界Hが約3kOe〜4kOeにおいて、抵抗は実質的に一定となる。
【0061】
図4(c)に表したように、第2状態ST2においては、磁化自由層磁化32hは、第1磁化固着層磁化31hと実質的に同じ方向に向く。すなわち、磁化自由層磁化32hは、X軸に沿う。
【0062】
図4(a)〜図4(c)に例示した電流が小さい状態においては、磁界Hが大きい場合においても、スピントルク発振が生じていない。
【0063】
図5(a)に表したように、電圧Vaが80mVのときは、磁界Hの絶対値が6kOe以上10kOe以下の領域においては、磁界Hの絶対値が増大すると、抵抗は減少する。この領域においては、磁界Hの絶対値と、抵抗変化dRと、の関係は概ね線形である。
【0064】
図5(b)に表したように、磁界Hが6kOeの第3状態ST3のときは、第1磁化固着層磁化31hと磁化自由層磁化32hとの間の角度は、90度に近い。第3状態ST3は、高抵抗状態である。
【0065】
図5(c)に表したように、磁界Hが9kOeの第4状態ST4のときは、第1磁化固着層磁化31hと磁化自由層磁化32hとの間の角度は、減少し、0度に近づく。第4状態ST4は、低抵抗状態である。
【0066】
図5(a)〜図5(c)に例示した電流が大きい状態においては、磁界Hが大きい場合(磁界Hが6kOe以上の場合)に、スピントルク発振が生じている。このような、抵抗が略線形に変化する領域における発振周波数は、約20GHz以上約25GHz以下であった。
【0067】
実施形態に係る磁気ヘッド110においては、抵抗が略線形に変化する特性が利用される。
すなわち、第1磁化固着層31から磁化自由層32へしきい値(磁化自由層32がスピントルク発振するためのしきい値)以上の電流I1が流されたときに(上記の例では80mVの電圧Vaを印加したときに)、媒体磁界に応じて積層膜71の抵抗が変化する。そして、この抵抗の変化を検出することで、媒体磁界が検出される。すなわち、磁気記録媒体80に記録された磁化83の方向が検出され、記録された情報が読み出される。
【0068】
スピントルク発振子(STO)に関して、その発振特性についての多くの研究開発が行われている。しかしながら、STOの抵抗の磁界による変化を磁気ヘッドの再生部に応用する発想は見られなかった。
【0069】
発明者が行った上記の独自の実験により、発明者は、図5(a)に例示したようにSTOの抵抗が磁界によって変化することを見出した。そして、その変化は、実質的に線形である(例えば磁界H=6kOe〜10kOeの領域)。この初めて見出された知見に基づいて、実施形態に係る磁気ヘッドの構成が構築された。
【0070】
一般に、素子サイズが減少するとマグノンの発生が抑制され、スピントルクによる均一発振が起こり易くなることが理論から予想されている。実験でも、素子サイズが大きくなると、図5(a)に例示したような線形の磁界−抵抗特性は得難くなる。逆に素子サイズが小さくなると、均一な発振により磁化の熱揺らぎノイズの抑制効果が期待される。
【0071】
一方、X軸に沿って、媒体磁界に相当する大きさの10kOeの磁界を外部から加えても、図5(a)に例示した磁界−抵抗特性に変化は無かった。
【0072】
例えば、参考例の再生ヘッドにおいては、磁気抵抗効果膜の膜面内方向の媒体磁界(例えばZ軸方向の媒体磁界)が検出される。
これに対し、実施形態に係る磁気ヘッド110においては、媒体磁界の、積層膜71の膜面に対して垂直な成分(例えば媒体磁界のX軸方向成分)が検出される。その結果、この特性により、磁気シールドの間隔(第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間の距離)が広くても、狭い記録ビット長の再生が可能になる。
【0073】
実施形態においては、X軸に沿う(積層膜71の膜面に対して垂直な軸に沿う)適度なバイアス磁界Hbと、第1磁化固着層31(垂直磁化スピン注入層)からのスピン注入と、により、磁化自由層32(磁界検出層)の膜面内で、10GHz以上の高周波で磁化が360度大回転する特異なスピントルク発振状態が可能となる。
【0074】
磁化自由層32が超微細化すると熱揺らぎが大きくなる傾向がある。しかし、実施形態におけるスピントルク発振においては、磁化自由層32が超微細化された場合においても、磁化の乱れは少なく、磁化は均一である。
【0075】
さらに、実施形態におけるスピントルク発振状態においては、磁気記録媒体80の媒体磁界の媒体膜面垂直方向成分(例えばZ軸方向成分)に対しては、積層膜71の抵抗は実質的に変化せず、磁気記録媒体80の媒体磁界の媒体膜面内方向成分(例えばX軸方向成分)に対して積層膜71の抵抗が概ね線形に変化する。この現象は、発明者の実験により見出された。
【0076】
この現象は、第1磁化固着層31の磁化と、磁化自由層32の磁化と、の間の角度が、媒体膜面内方向成分磁場(積層膜71の膜面垂直方向磁場であり、例えばX軸方向の磁場)に基づいて変化するためである。この磁場の方向が、第1磁化固着層31の磁化の方向と同じときは、抵抗が減少する。この磁場の方向が、第1磁化固着層31の磁化の方向と逆のときは、抵抗が増大する。
【0077】
従来の構成の場合は、超微細な磁性層においては、磁化の熱揺らぎの抑制と高感度な再生出力との両立は原理的に回避困難と考えられていた。これに対し、実施形態に係る磁気ヘッドによれば、超微細な磁性層においても、磁化の熱揺らぎの抑制と高感度な再生出力との両立が実現できる。
【0078】
従来の再生ヘッドにおいては、媒体膜面内方向成分(例えばX軸方向成分)の媒体磁界は、利用が困難であった。これに対し、実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、媒体膜面内方向成分の媒体磁界が、垂直磁化媒体の磁化の方向が変化する遷移領域に集中するので、高い分解能の再生が可能となる。
【0079】
熱揺らぎの抑制が可能になると、磁化自由層32のX軸に沿う長さが縮小できる。これにより、高い分解能の再生が可能となる。
【0080】
なお、媒体磁界に数10GHzの高周波を重畳すると、磁気記録媒体80の磁化83が反転し易くなることが知られている。この現象に基づく高周波アシスト記録の方法も知られている。
【0081】
実施形態に係る磁気ヘッド110においても、STO(例えば積層膜71)が発振すると高周波が発生する。この高周波が、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態を乱すことが懸念される。この問題が発生しないように、実施形態に係る磁気ヘッド110は適切に設計される。
【0082】
図6は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
同図の横軸は、STO(具体的には磁化自由層32)におけるスピントルク発振の周波数fsである。縦軸は、媒体保磁力低減効果Hcdである。媒体保磁力低減効果Hcdは、印加される高周波によって磁気記録媒体80の保磁力が低減する程度を表す。図6において、媒体保磁力低減効果Hcdは、相対値である。媒体保磁力低減効果Hcdが0のときは、保磁力が低減しないことに対応する。媒体保磁力低減効果Hcdが0から1に向かうと、保磁力を低減する効果が大きくなる。媒体保磁力低減効果Hcdが0よりも1の側の領域において、磁気記録媒体80の磁化が変化され易くなる。
【0083】
図6に表したように、STOのスピントルク発振の周波数fsが0から上昇すると、媒体保磁力低減効果Hcdは大きくなる。そして、周波数fsが媒体固有周波数fmのときに媒体保磁力低減効果Hcdが最大となる。媒体固有周波数fmは、例えば磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数である。そして、周波数fsが周波数f1以上になると、媒体保磁力低減効果Hcdは0になり、効果が得られない。なお、STOを高周波アシスト記録に利用する場合は、周波数fsが媒体固有周波数fmに近い条件が採用される。
【0084】
実施形態に係る磁気ヘッド110においては、例えば、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、媒体固有周波数fmよりも高く設定される。具体的には、例えば、周波数fsは、媒体保磁力低減効果Hcdが実質的に0となる周波数f1以上(第1周波数範囲fr1)に設定される。または、周波数fsは、媒体固有周波数fmよりも低く設定される。周波数fsは、特に、媒体固有周波数fmよりも著しく低い値(第2周波数範囲fr2)に設定される。
【0085】
すなわち、実施形態においては、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁気記録媒体80の磁化83が反転し易い周波数を避けた領域の値に設定される。
【0086】
磁気記録媒体80の磁化83の反転が容易となる周波数は、概ね、磁気記録媒体80の磁気異方性磁界Hkとジャイロ磁気定数γとの積の2/3程度である。一方、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、概ね、外部磁界(バイアス磁界Hb)とγとの積である。
【0087】
例えば、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsが、磁気記録媒体80の磁化83の反転周波数から遠ざかるように、バイアス磁界Hbが設定される。特に、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsを磁気記録媒体80の磁化83の反転周波数よりも高くすることが望ましい。これにより、磁化自由層32のスピントルク発振によって、磁気記録媒体80の磁化83が不安定になることが抑制される。
【0088】
このように、実施形態においては、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数(媒体固有周波数fm)よりも高いことが望ましい。周波数fsは、例えば、磁気記録媒体80の磁気異方性磁界Hkとジャイロ磁気定数γとの積よりも高く設定される。
【0089】
または、周波数fsは、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数よりも低いことが望ましい。周波数fsは、例えば、磁気異方性磁界Hkとジャイロ磁気定数γとの積よりも低く設定される。
【0090】
磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁化自由層32に流される電流I1に対して実質的に比例する。従って、磁気ヘッド110において、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に流される電流値は、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsを、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数よりも高くする値に設定されることが望ましい。
【0091】
図7は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。 図7に表したように、実施形態に係る磁気ヘッド111においては、磁化自由層32は、第1磁性層32aと、第2磁性層32bと、非磁性層(第1非磁性層32c)と、を含む。
【0092】
第2磁性層32bは、第1磁性層32aとX軸に沿って積層される。第2磁性層32bは、第1磁性層32aの磁化の方向とは反対の方向の磁化を有する。すなわち、第2磁性層32bの磁化の位相は、第1磁性層32aの位相と180度異なる。
【0093】
第1非磁性層32cは、第1磁性層32aと第2磁性層32bとの間に設けられる。
磁気ヘッド111におけるこの他の構成は、例えば磁気ヘッド110の構成と同様とすることができるので説明を省略する。
【0094】
磁気ヘッド111においては、第1磁性層32a及び第2磁性層32bは、スピントルク発振する。第1磁性層32aと第2磁性層32bとは、互いに反強磁性結合しており、位相が互いに180度異なる。位相が180度異なるので、高周波磁界がキャンセルされる。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が不安定になることが抑制できる。
【0095】
さらに、磁化自由層32のスピントルク発振により発生する高周波磁界によって、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態を安定化させるために、磁化自由層32の磁気膜厚を所定の値よりも小さく設定することが有効である。
【0096】
実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110及び111、並びに、それらの変形)においては、例えば、磁化自由層32の磁気膜厚は、5ナノメートル・テスラ(nmT)未満に設定される。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が不安定になることが抑制できる。なお、高周波アシスト記録においては、STOの磁気膜厚は、20nmT以上である。
【0097】
なお、磁化自由層32の磁気膜厚は、例えば電子顕微鏡観察により求めた磁化自由層32の厚さと、材料組成によって決まる飽和磁化と、の積である。
【0098】
HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)の信号再生には、膜面垂直方向に電流を通電するTMRヘッド(Tunneling MagnetoResistive Head)が使用されている。今後、記録密度の向上に伴い再生素子が微細化される。このために、単位断面積当たりの抵抗が小さい磁気抵抗効果素子の実現が要求される。
【0099】
例えば、1平方インチ面積あたり2テラビット(2Tb/in2)の面記録密度の実現には、約20nm角の通電断面積を有する再生素子が必要になると予想される。このために、約0.3Ωμm2、または、それ以下の面積抵抗(RA:通電断面積×抵抗)が必要であると考えられる。TMRヘッドでは、トンネルバリアを通じて電流を流すので、抵抗低減には物理限界が存在する。
【0100】
また、2Tb/in2以上の面記録密度の実現には、高分解再生を実現するために、再生シールド間隔が20nm以下であることが必要であると考えられる。狭トラック幅密度の再生を実現するためにTMRの磁化自由層の幅は20nm程度が必要とされる。
【0101】
しかし、現在のTMRヘッドにおいては、例えば、反強磁性膜(IrMn合金)、磁化固着層、中間絶縁層及び磁化自由層の積層膜が設けられるため、それらの合計の厚みを20nm以下にすることは困難である。このため、再生シールド間にTMRヘッドを配置することが困難である。20nm以下に磁化自由層の幅を狭めると、熱揺らぎに起因する磁気ノイズが顕在化して、高SN比の再生が困難になる。さらに、20nm程度に素子を微細化すると、スピントランスファートルクに起因する磁気ノイズが小さな電流でも発生し易くなると考えられる。再生出力は、MR比と投入電流との積に比例する。従って、MR比の増大に加えて、スピントランスファートルクの抑制が、高感度な再生ヘッドの実現に望まれる。
【0102】
すなわち、例えば、記録密度が2Tb/in2以上に増大すると、低抵抗で、高MR比で、高分解能で、低磁気ノイズであることが望まれる。
【0103】
実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110及び111、並びに、それらの変形)においては、抵抗が低く、MR比が高く、分解能が高く、磁気ノイズが低い。これにより、例えば、記録密度が2Tb/in2以上の高密度記録が実現できる。
【0104】
なお、2層の磁化自由層を、中間層を介して積層した構成の参考例の磁気ヘッド(Tri-layer方式)が考えられる。また、2組の磁気抵抗効果素子を重ね、それぞれの磁界自由層の間隔で分解能を規定する参考例(差動型方式)も考えられる。しかし、このような参考例においては、磁気ノイズの改善が困難であると考えられる。これに対し、実施形態によれば、磁気ノイズが抑制できる。
【0105】
さらに、再生素子として、STO素子の発振周波数の位相検波を利用する参考例も考えられる。この場合には、位相検波のための回路が必要である。これに対し、実施形態においては、この回路を必要としない。このため、コストが低減できる。
【0106】
実施形態においては、図5(a)に例示したように、例えば、磁化自由層32の面内の磁場が1kOe程度と小さい場合は、抵抗が実質的に変化しない。このため、例えば、磁気記録媒体80からの磁場の、磁化自由層32の膜面に対して垂直な方向の成分(X軸方向成分)が検出される。これにより、例えば、シールドを設けない場合においても、高い分解能で、狭いビット長の再生が可能になる。
【0107】
また、十分強いスピントルクトランスファによって、磁化自由層32の磁化の均一な面内大回転が実現できる。これにより、スピントルクトランスファエネルギーによるランダムな磁化の熱揺らぎが抑制できる。これにより、SN比が高い再生信号が得られる。
【0108】
そして、実施形態においては、一般的な磁気ヘッドの再生部と同様に、抵抗変化が再生信号として検出される。このため、特別な検出回路が不要である。これにより、コストは上昇しない。
【0109】
実施形態によれば、今後の高記録密度HDDの情報再生において課題となる、熱揺らぎノイズ及びスピントランスファートルク起因の磁気ノイズを抑制できる。これにより、ノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッドが提供できる。例えば、低抵抗、高MR比、高分解能及び低磁気ノイズの新たな磁気抵抗効果ヘッドが提供できる。
【0110】
このように、実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、磁化が概ね膜面垂直方向に配列したスピン注入層(第1磁化固着層31)と、スピン注入層から注入された電子によりスピントルク発振する磁界検出層(磁化自由層32)と、を含む積層膜71が設けられる。積層膜71は、例えばSTOである。そして、積層膜71の膜面垂直方向に(X軸に沿って)バイアス磁界Hbを加える磁界印加部75がさらに設けられる。そして、積層膜71に、膜面垂直方向に、しきい値(磁化自由層32がスピントルク発振するためのしきい値)以上の電流I1が流される。この状態において、積層膜71の抵抗が、磁気記録媒体80の信号磁界(媒体磁界)に応じて変化する。そして、この変化が検出され、再生動作が行われる。
【0111】
積層膜71にバイアス磁界Hbを印加する方法は、任意である。
図1に例示した磁気ヘッド110においては、磁界印加部75は、積層膜71に積層され垂直磁気異方性を有し第1磁化固着層31の磁化の方向に磁化が固着された第2磁化固着層22と、積層膜71と第2磁化固着層22との間に設けられた第2非磁性層21と、を含む。そして、第1磁化固着層31と第2非磁性層21との間に磁化自由層32が配置される。
【0112】
すなわち、積層膜71の磁化自由層32の側に第2非磁性層21を介して設けられた第2磁化固着層22が、磁界印加部75として用いられる。第2磁化固着層22は、垂直磁化膜である。第2磁化固着層22の磁化は、スピン注入層の磁化と、同方向に着磁されている。
【0113】
図8は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。 図8に表したように、実施形態に係る磁気ヘッド113においては、磁界印加部75は、第3磁化固着層23を含む。第3磁化固着層23は、磁化自由層32と、強い交換結合磁界が加わるように非磁性層を介すること無く接する。第3磁化固着層23の磁化(第3磁化固着層磁化23h)は、第1磁化固着層31の磁化の方向とは反対の方向に固着されている。第1磁化固着層31と第3磁化固着層23との間に磁化自由層32が配置される。
【0114】
例えば、第1磁化固着層31の磁化が−X軸方向に沿うときは、第3磁化固着層23の磁化は、+X軸方向に沿う。第1磁化固着層31の磁化が+X軸方向に沿うときは、第3磁化固着層23の磁化は、−X軸方向に沿う。
【0115】
磁化自由層32は、第3磁化固着層23と直接的に磁気交換結合される。これにより、積層膜71に、強いバイアス磁界Hbが印加される。
【0116】
このように、磁気ヘッド113においては、積層膜71の磁化自由層32の側に、磁化自由層32に接して設けられる第3磁化固着層23が、磁界印加部75として用いられる。第3磁化固着層23は、垂直磁化膜である。第3磁化固着層23の磁化は、スピン注入層の磁化と、逆方向に着磁される。
【0117】
さらに、センス電流(電流I1)の方向は、図1とは反対方向に通電する。その結果、磁化自由層32の磁化がスピントルクによる大回転して、媒体磁界により磁気抵抗効果膜(積層膜71)の抵抗が変化する。
【0118】
第3磁化固着層23には、第1磁化固着層31と同様な垂直磁気異方性を有する材料を用いることができる。
【0119】
なお、本具体例において、磁界印加部75は、第2非磁性層21(キャップ層)をさらに有することができる。磁化自由層32と第2非磁性層21との間において、磁化自由層32に接して第3磁化固着層23が設けられる。
【0120】
さらに、後述するように、磁界印加部75として電磁石を用いても良い。
【0121】
実施形態において、分解能を向上するために、一対のシールド(第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72b)を設けることができる。この場合には、このシールドが電極として機能することが望ましい。これにより、さらに分解能が向上する。すなわち、実施形態に係る磁気ヘッドは、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとをさらに備えることができる。第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間に積層膜71及び磁界印加部75が配置される。電流I1は、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bを介して流される。
【0122】
図9は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。 図9に表したように、実施形態に係る磁気ヘッド114においては、積層膜71とX軸に沿って積層された電極73をさらに備える。電極73は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、スピントルク発振のためのしきい値以上の電流を流す。電極73は、例えば、第1電極73a及び第2電極73bを含むことができる。第1電極73aと第2電極73bとの間に積層膜71が配置される。
【0123】
なお、電極73を設け、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bをさらに設けても良い。
【0124】
図10は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。
図10に表したように、実施形態に係る別の磁気ヘッド115においては、磁界印加部75として、電磁石部74が用いられる。電磁石部74は、バイアス磁界Hbを積層膜71に加える。
【0125】
電磁石部74は、積層膜71に並置される電磁石74aを含む。電磁石74aの周りにコイル75cが巻かれている。コイル75cには、第2電流供給部75bが接続されている。第2電流供給部75bから供給される電流により、電磁石74a(電磁石部74)からバイアス磁界Hbが、積層膜71に印加される。これにより、上記の動作が実施される。
【0126】
本具体例では、電磁石部74は、電磁石74aと対向する再生部リターンパス74bをさらに含む。すなわち、電磁石74aと再生部リターンパス74bが対向する磁気ギャップ内に、積層膜71が配置される。
【0127】
電磁石74aの媒体対向面70sとは反対側の部分と、再生部リターンパス74bの媒体対向面70sとは反対側の部分と、の間に、電気抵抗調整層74dを設けることができる。例えば、電気抵抗調整層74dは電流をシャントさせ、静電気による劣化が抑制される。
【0128】
本具体例では、積層膜71は、第2非磁性層21(例えばキャップ層)をさらに含む。第2非磁性層21は必要に応じて設けられ、場合によっては省略しても良い。
【0129】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。
図11に表したように、本実施形態に係る磁気ヘッド121は、電磁石65aと、再生部70と、を備える。
【0130】
電磁石65aは、磁気記録媒体80に情報を記録する書き込み動作において、磁気記録媒体80に記録磁界を印加する。電磁石65aは、主磁極61として機能する。電磁石65aは、例えば、書き込み部60の一部である。
【0131】
再生部70は、電磁石65aと並置される。再生部70は、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界(磁化83)を検出する。
【0132】
この場合も、再生部70は、積層膜71を含む。積層膜71は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層31と、第1磁化固着層31と第1軸(X軸)に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層32と、を含む。
【0133】
磁気記録媒体80に記録された媒体磁界を検出する再生動作において、電磁石65aからZ軸に沿う成分を有するバイアス磁界Hbが、積層膜に加えられる。そして、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、磁化自由層32がスピントルク発振する値以上の電流I1が流されたときに、媒体磁界に応じて積層膜71の抵抗が変化する。
【0134】
すなわち、書き込み動作においては、電磁石65aが主磁極61として機能する。そして再生動作においては、電磁石65aが磁界印加部75として機能する。これにより、第1実施形態に関して説明した再生動作が実施される。磁気ヘッド121により、再生時のノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッドが得られる。
【0135】
本具体例においては、積層膜71において、順次積層された下地層33、第1磁化固着層31、中間層34、磁化自由層32及び第2非磁性層21(キャップ層)が設けられている。
【0136】
また、磁気ヘッド121においては、電磁石65aと対向するリターンパス65bが設けられている。すなわち、電磁石65aとリターンパス65bが対向する磁気ギャップ内に、積層膜71が配置されている。また、電磁石65aの一部とリターンパス65bの一部との間に電気抵抗調整層74dが設けられている。
【0137】
図11に表したように、本具体例の磁気ヘッド121は、加熱部65eをさらに備える。加熱部65eは、電磁石65aと並置される。加熱部65eは、書き込み動作の際に磁気記録媒体80を局所的に加熱する。すなわち、加熱部65eによる熱アシストにより、書き込み動作がアシストされる。
【0138】
この例では、加熱部65eは、導波路層65cと、近接場光発生部65dと、を含む。 導波路層65cは、電磁石65aと並置される。導波路層65cは、光を導波する。光は、例えばレーザ光である。
【0139】
近接場光発生部65dは、電磁石65aと導波路層65cとの間に設けられる。近接場光発生部65dは、書き込み動作の際に、導波路層65cを導波された光に基づいて、磁気記録媒体80を局所的に加熱する近接場光を発生する。
【0140】
磁気ヘッド121においては、再生部70のための磁界印加部75として、書き込み部60の主磁極61として機能する電磁石65aが用いられる。これにより、再生時のノイズが抑制されることに加え、構成が簡単になり、小型化が可能になる。
【0141】
第1及び第2の実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界に応じて、積層膜71の抵抗が変化する。この抵抗の変化は、磁気ヘッドに接続された検出回路により検出される。
【0142】
(第3の実施の形態)
上記で説明した第1及び第2実施形態に係る磁気ヘッドは、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録再生装置に搭載することができる。なお、実施形態に係る磁気記録再生装置は、再生機能のみを有することもできるし、記録機能と再生機能の両方を有することもできる。
【0143】
図12は、第3の実施形態に係る磁気記録再生装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図13(a)及び図13(b)は、第3の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図12に表したように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着される。記録用媒体ディスク180は、図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。このモータは、例えば図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。
【0144】
記録用媒体ディスク180に格納される情報の記録再生が、ヘッドスライダ3により行われる。ヘッドスライダ3は、既に例示した構成を有する。ヘッドスライダ3は、サスペンション154の先端に取り付けられている。サスペンション154は、薄膜状である。ヘッドスライダ3の先端付近に、例えば、既に説明した実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110〜114)のいずれかが搭載される。
【0145】
記録用媒体ディスク180が回転すると、ヘッドスライダ3は、記録用媒体ディスク180の表面の上方に保持される。すなわち、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ3の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がつりあう。これにより、ヘッドスライダ3の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の距離は、所定の値に保持される。実施形態において、ヘッドスライダ3が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」を用いても良い。
【0146】
サスペンション154は、アクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155は、例えば、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有する。アクチュエータアーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、例えば、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、図示しない駆動コイル及び磁気回路を含むことができる。駆動コイルは、例えば、アクチュエータアーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、例えば、図示しない永久磁石及び対向ヨークを含むことができる。永久磁石及び対向ヨークは、互いに対向し、これらの間に駆動コイルが配置される。
【0147】
アクチュエータアーム155は、例えば、図示しないボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、例えば、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アクチュエータアーム155は、ボイスコイルモータ156により、回転摺動が自在にできる。その結果、磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動できる。
【0148】
図13(a)は、磁気記録再生装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
また、図13(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0149】
図13(a)に表したように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延出する。支持フレーム161は、軸受部157からHGAとは反対方向に延出している。支持フレーム161は、ボイスコイルモータのコイル162を支持する。
【0150】
図13(b)に示したように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、アクチュエータアーム155とサスペンション154とを含む。アクチュエータアーム155は、軸受部157から延出する。サスペンション154は、アクチュエータアーム155から延出する。
【0151】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ3が取り付けられている。そして、ヘッドスライダ3には、実施形態に係る磁気ヘッドのいずれかが搭載される。
【0152】
すなわち、実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが搭載されたヘッドスライダ3と、ヘッドスライダ3を一端に搭載するサスペンション154と、サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備える。
【0153】
サスペンション154は、信号の書き込み及び読み取り用、及び、浮上量調整のためのヒーター用などのためのリード線(図示しない)を有する。これらのリード線と、ヘッドスライダ3に組み込まれた磁気ヘッドの各電極と、が電気的に接続される。
【0154】
また、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190が設けられる。
【0155】
信号処理部190は、例えば、図12に例示した磁気記録再生装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に結合される。
【0156】
すなわち、信号処理部190は、磁気ヘッドに電気的に接続される。
磁気記録媒体80に記録された媒体磁界に応じた、磁気ヘッドの積層膜71の抵抗の変化は、例えば、信号処理部190により検出される。
【0157】
このように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、磁気記録媒体と、上記の実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とした可動部と、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定の記録位置に位置合わせする位置制御部と、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備える。
【0158】
すなわち、上記の磁気記録媒体80として、記録用媒体ディスク180が用いられる。 上記の可動部は、ヘッドスライダ3を含むことができる。
また、上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ158を含むことができる。
【0159】
このように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリと、磁気ヘッドアセンブリに搭載された磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190と、を備える。
【0160】
本実施形態に係る磁気記録再生装置150によれば、上記の実施形態に係る磁気ヘッドを用いることで、ノイズを抑制した再生が可能になる。さらに、低抵抗、高MR比及び高分解能の再生が可能になる。
【0161】
実施形態に係る磁気記録再生装置150において、記録用媒体ディスク180(磁気記録媒体80)の記録トラック幅は、30nm以下であることが望ましい。これにより、特に、スピントランスファートルクの抑制効果が発現される。すなわち、記録トラック幅が30nm以下である場合には、磁化自由層32の幅が30nm以下に設定される。この条件において、スピントランスファートルクの抑制効果がより明確に発揮される。
【0162】
(第4の実施の形態)
図14は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の構成を例示する模式図である。
すなわち、図14には、磁気記録再生装置に含まれる磁気ヘッドの要部の断面が模式的に例示され、制御部が模式的に例示されている。
【0163】
図14に表したように、本実施形態に係る磁気記録再生装置151は、磁気記録媒体80と、磁気ヘッド131と、制御部195と、を備える。磁気記録再生装置151において、磁気ヘッド131が搭載されるヘッドスライダ3、ヘッドジンバルアセンブリ158及びヘッドスタックアセンブリ160などの構成は、既に説明したものと同様とすることができるので説明を省略する。磁気記録再生装置151の全体構成は、図12に関して説明した磁気記録再生装置150と同様である。
【0164】
例えば、磁気記録再生装置151において、磁気記録媒体80として、記録用媒体ディスク180を用いることができる。
【0165】
磁気記録再生装置151における制御部195は、磁気記録再生装置150における信号処理部190と類似の構成を有することができる。
【0166】
図14に表したように、磁気ヘッド131は、電磁石66aと、積層膜71と、を含む。電磁石66aは、磁気記録媒体80に対向する。
【0167】
積層膜71は、電磁石66aと並置される。積層膜71は、第1磁化固着層31と磁化自由層32とを含む。第1磁化固着層31は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着されている。磁化自由層32は、第1磁化固着層31と第1軸(X軸)に沿って積層される。磁化自由層32は、スピントルク発振する。
【0168】
電磁石66a(及び積層膜71)は、磁気記録媒体80に対向する媒体対向面70sを有する。
【0169】
電磁石66aの周りにコイル75cが巻かれている。コイル75cには、第2電流供給部75bが接続されている。第2電流供給部75bから供給される電流により、電磁石66aから磁界が発生する。
【0170】
本具体例では、電磁石66aと対向する対向部66bがさらに設けられている。電磁石66aと対向部66bとが対向するギャップ内に、積層膜71が配置される。
【0171】
電磁石66a及び対向部66bは、積層膜71に電流I1を流す電極として機能することができる。ただし、実施形態はこれに限らず、例えば、電磁石66aとは別に電極を設けても良い。
【0172】
電磁石66aと対向部66bとに第1電流供給部75aが接続される。これにより、第1電流供給部75aから、第1磁化固着層31及び磁化自由層32に電流が供給される。
【0173】
本具体例においては、積層膜71において、順次積層された下地層33、第1磁化固着層31、中間層34、磁化自由層32及び第2非磁性層21(キャップ層)が設けられている。
【0174】
制御部195は、磁気ヘッド131に接続される。制御部195は、例えば、制御信号部196と、第1電流供給部75aと、第2電流供給部75bと、を含む。制御部195は、例えば、図12中の背面側に設けられる。制御部195の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッド131と電気的に結合される。
【0175】
制御信号部196は、第1電流供給部75aの動作及び第2電流供給部75bの動作を制御する。制御信号部196は、例えば、第1電流供給部75aの動作及び第2電流供給部75bの動作を制御する信号を、第1電流供給部75a及び第2電流供給部75bに供給する。制御信号部196は、アナログ回路及びデジタル回路の少なくともいずれかを含む。制御信号部196による第1電流供給部75a及び第2電流供給部75bの制御には、例えばコンピュータプログラムに基づく制御が用いられる。
【0176】
磁気記録媒体80に情報を記録する書き込み動作において、以下が行われる。
制御部195は、電磁石66aに、磁気記録媒体80に記録磁界を印加させる。さらに、制御部195は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流を流して、磁化自由層32をスピントルク発振させて高周波磁界を発生させる。この高周波磁界は、記録磁界が印加されている磁気記録媒体80に印加される。これにより、スピントルク発振による高周波磁界を用いた高周波アシスト記録が行われる。
【0177】
さらに、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界を検出する再生動作においては以下が行われる。
制御部195は、電磁石66aに、第1軸(X軸)に沿う成分を有するバイアス磁界Hbを積層膜71に印加させる。このときのバイアス磁界Hbは、書き込み動作における記録磁界よりも小さい絶対値を有する磁界である。さらに、制御部195は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流を流して、磁化自由層32を、書き込み動作における高周波磁界よりも低い周波数でスピントルク発振させる。すなわち、制御部195は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流I1を流す。このときの電流I1の電流値は、磁化自由層32がスピントルク発振するためのしきい値以上の電流値である。これにより、磁化自由層32をスピントルク発振させる。この磁化自由層32のスピントルク発振の周波数は、書き込み動作における高周波磁界の周波数よりも低い。そして、再生動作において、積層膜71の抵抗は、媒体磁界に応じて変化する。この変化を検出することで磁気記録媒体80に記録された情報が再生できる。この検出は、例えば制御部195(信号処理部190)により実施される。
【0178】
このように、本実施形態に係る磁気ヘッド131の電磁石66aは、書き込み動作と、再生動作と、の両方において用いられる。すなわち、磁気ヘッド131は記録再生一体型の磁気ヘッドである。磁気ヘッド131において、書き込み動作においては、積層膜71におけるスピントルク発振を用いた高周波アシスト記録が行われる。そして、磁気ヘッド131において、再生動作においては、スピントルク発振する積層膜71における抵抗変化が利用される。
【0179】
実施形態に係る磁気記録再生装置151においては、第1実施形態に関して説明したのと同様に、積層膜71における均一なスピントルク発振に基づく特性が利用される。これにより、例えば熱揺らぎによるノイズを低減できる。これにより、ノイズを抑制した磁気記録再生装置が得られる。
【0180】
さらに、磁気記録再生装置151においては、第1実施形態に関して説明したのと同様に、分解能も高い。そして、構成が簡単になり、磁気ヘッドの厚さ(再生部70及び書き込み部60の厚さ)が薄くできる。そして、再生シールドを省略できる。
【0181】
なお、磁気ヘッドの記録ギャップ内に水平磁化膜のMRセンサ(例えばAMRセンサまたはGMRセンサなど)を配置する参考例が考えられる。しかし、この参考例の構成においては、記録ギャップ内部の漏洩磁界が外乱となる。このため、媒体磁界を検出するとノイズが大きく、動作が不安定である。例えば、この参考性の構成においては、数kOeのギャップ磁界が印加されると再生動作が不安定になる。
【0182】
これに対し、実施形態においては、垂直磁化膜を有する積層膜71が記録ギャップ内に配置される。そして、垂直磁化膜型の構成におけるスピントルク発振が用いられる。このスピントルク発振した状態において、記録ギャップ磁界を利用することで、安定した動作が実現できる。
【0183】
図15は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を例示するグラフ図である。 図15の横軸は、積層膜71(STO)に印加される磁界Haである。磁界Haは、垂直磁界である。磁界Haの大きさは、例えば、電磁石66aの周りのコイル75cに流れるコイル電流の大きさに対応する。磁界Haの大きさは、例えば、磁気記録媒体80に印加される記録磁界の大きさと連動する。図15の縦軸は、積層膜71の抵抗RRである。
【0184】
図15に表したように、書き込み動作WOにおいては、磁界Haは比較的大きい。書き込み動作WOの際の磁界Haの大きさは、例えば、約10kOeである。
【0185】
一方、再生動作ROにおいては、積層膜71に印加される磁界Haの大きさは、書き込み動作WOのときの磁界Haよりも小さい。そして、この状態において、磁気記録媒体80の媒体磁界80hが積層膜71に印加される。そして、媒体磁界80hに応じて積層膜71の抵抗RRが変化する。この例では、第1抵抗R1と第2抵抗R2との間で、抵抗RRが変化する。そして、既に説明したように、抵抗RRの変化は、媒体磁界80hに対して実質的に線形である。
【0186】
図16は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を例示するグラフ図である。 同図の横軸は、STO(具体的には磁化自由層32)におけるスピントルク発振の周波数fsである。縦軸は、印加される高周波によって磁気記録媒体80の保磁力が低減する程度を表す媒体保磁力低減効果Hcdである。
【0187】
図16に表したように、書き込み動作WOにおけるスピントルク発振の周波数fsは、媒体固有周波数fmに近い値(書き込み動作時周波数範囲fw)に設定される。そして、再生動作ROにおけるスピントルク発振の周波数fsは、媒体固有周波数fmよりも著しく低い(再生時周波数範囲fr)に設定される。このように、磁気記録再生装置151においては、再生動作ROにおける磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、書き込み動作WOにおける高周波磁界の周波数よりも低い。これにより、再生動作RO時に磁気記録媒体80に記録されている媒体磁界が乱されることが抑制される。
【0188】
例えば、再生動作ROにおける磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数(媒体固有周波数fm)よりも低い。
【0189】
本実施形態に係る磁気記録再生装置151において、磁化自由層32は、第1磁性層32aと、第1磁性層32aと第1軸(X軸)に沿って積層され、第1磁性層32aの磁化の方向とは反対の方向の磁化を有する第2磁性層32bと、第1磁性層32aと第2磁性層32bとの間に設けられた第1非磁性層32cと、を含むことができる。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が不安定になることが抑制できる。
【0190】
磁気記録再生装置151にいて、磁化自由層32の磁気膜厚は、5nmT未満に設定することが望ましい。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が安定化する。
【0191】
磁気記録再生装置151において、第1軸に対して垂直な軸に沿った第1磁化固着層31の幅は、第1軸に対して垂直なその軸に沿った磁化自由層32の幅よりも大きいことが望ましい。これにより、磁化自由層32からの反作用スピントルクによる磁化の乱れが抑制できる。また、磁化自由層32のパターニングが容易になる。再生部70の抵抗が低減できる。
【0192】
実施形態によれば、ノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置が提供される。
【0193】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0194】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気ヘッドに含まれる再生部、積層膜、磁化固着層、磁化自由層、磁性層、非磁性層及び書き込み部など、並びに、磁気ヘッドアセンブリに含まれるヘッドスライダ、サスペンション及びアクチュエータアーム、並びに、磁気記録再生装置に含まれる磁気記録媒体などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。例えば、上記実施形態の中で説明した材料、組成、膜厚なども一例であり、種々の選択が可能である。
【0195】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0196】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0197】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0198】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0199】
3…ヘッドスライダ、 3A…空気流入側、 3B…空気流出側、 4…スピンドルモータ、 10…スピントルク発振子、 21…第2非磁性層、 22…第2磁化固着層、 22h…第2磁化固着層磁化、 23…第3磁化固着層、 23h…第3磁化固着層磁化、 31…第1磁化固着層、 31h…第1磁化固着層磁化、 32…磁化自由層、 32a…第1磁性層、 32b…第2磁性層、 32c…第1非磁性層、 32h…磁化自由層磁化、 33…下地層、 34…中間層、 60…書き込み部(書き込みヘッド部)、 61…主磁極、 62…書き込み部リターンパス、 65a…電磁石、 65b…リターンパス、 65c…導波路層、 65d…近接場光発生部、 65e…加熱部、 66a…電磁石、 66b…対向部、 70…再生部(再生ヘッド部)、 70s…媒体対向面、 71…積層膜、 72a…第1磁気シールド、 72b…第2磁気シールド、 73…電極、 73a…第1電極、 73b…第2電極、 74…電磁石部、 74a…電磁石、 74b…再生部リターンパス、 74d…電気抵抗調整層、 75…磁界印加部、 75a…第1電流供給部、 75b…第2電流供給部、 75c…コイル、 80…磁気記録媒体、 80h…媒体磁界、 81…磁気記録層、 82…媒体基板、 83…磁化、 85…媒体移動方向、 110、111、113、114、115、121、131…磁気ヘッド、 150、151…磁気記録再生装置、 154…サスペンション、 155…アクチュエータアーム、 156…ボイスコイルモータ、 157…軸受部、 158…ヘッドジンバルアセンブリ、 160…ヘッドスタックアセンブリ、 161…支持フレーム、 162…コイル、 180…記録用媒体ディスク、 190…信号処理部、 195…制御部、 196…制御信号部、 A…矢印、 H…磁界、 Ha…磁界、 Hb…バイアス磁界、 Hcd…媒体保持力低減効果、 I1…電流、 R1、R2…第1、第2抵抗、 RO…再生動作、 RR…抵抗、 ST1〜ST4…第1〜第4状態、 Va…電圧、 WO…書き込み動作、 dR…抵抗変化、 f1…周波数、 fm…媒体固有周波数、 fr…再生時周波数範囲、 fr1、fr2…第1及び第2周波数範囲、 fs…周波数、 fw…書き込み動作時周波数範囲
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置において、ハードディスクドライブ等の磁気記録媒体に保存された情報が、磁気抵抗効果型の磁気ヘッドによって読み出される。記録密度を向上したときに、磁気ノイズが特に問題となる。記録密度の向上のためにノイズを抑制することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−294376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、ノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、再生部を備えた磁気ヘッドが提供される。前記再生部は、磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する。前記再生部は、積層膜と、磁界印加部と、を含む。前記積層膜は、第1磁化固着層と、磁化自由層と、を含む。前記第1磁化固着層は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着されている。前記磁化自由層は、前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する。前記磁界印加部は、前記積層膜と前記第1軸に沿って積層され、前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を前記積層膜に加える。前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ、前記磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、前記媒体磁界に応じて前記積層膜の抵抗が変化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る磁気ヘッドを示す模式的斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る磁気ヘッドを搭載するヘッドスライダを示す模式的斜視図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を示す模式図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を示すグラフ図である。
【図7】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図10】第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図11】第2の実施形態に係る別の磁気ヘッドを示す模式的断面図である。
【図12】第3の実施形態に係る磁気記録再生装置を示す模式的斜視図である。
【図13】図13(a)及び図13(b)は、第3の実施形態に係る磁気記録装置の一部を示す模式的斜視図である。
【図14】第4の実施形態に係る磁気記録再生装置を示す模式図である。
【図15】第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を示すグラフ図である。
【図16】第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
図3は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドを搭載するヘッドスライダの構成を例示する模式的斜視図である。
図1は、図2のA1−A2線断面図である。
まず、本実施形態に係る磁気ヘッドの構成の概要と動作の概要について、図2及び図3を用いて説明する。
【0009】
図2に表したように、磁気ヘッド110は、再生部70(再生ヘッド部)を備える。さらに、磁気ヘッド110は、書き込み部60(書き込みヘッド部)を備えることができる。
【0010】
書き込み部60は、例えば、主磁極61と、書き込み部リターンパス62と、を含む。なお、磁気ヘッド110において、書き込み部60は、スピントルク発振子10(STO:spin torque oscillator)などの書き込み動作に関してアシストする部分をさらに含むことができる。すなわち、磁気ヘッド110の書き込み部60は、任意の構成を有することができる。
【0011】
再生部70は、例えば、積層膜71と、第1磁気シールド72aと、第2磁気シールド72bとを含む。積層膜71は、例えば磁気抵抗効果素子である。
【0012】
積層膜71は、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間に設けられている。後述するように、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bは必要に応じて設けられ、場合によっては省略できる。
【0013】
上記の再生部70の各要素、及び、上記の書き込み部60の各要素は、図示しない、例えばアルミナの絶縁体により分離される。
【0014】
図3に表したように、磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ3に搭載される。ヘッドスライダ3には、例えばAl2O3/TiCなどが用いられる。
ヘッドスライダ3は、磁気ディスクなどの磁気記録媒体80の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体80に対して相対的に運動する。
【0015】
ヘッドスライダ3は、例えば、空気流入側3Aと空気流出側3Bとを有する。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ3の空気流出側3Bの側面などに配置される。これにより、ヘッドスライダ3に搭載された磁気ヘッド110は、磁気記録媒体80の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体80に対して相対的に運動する。
【0016】
図2に表したように、磁気記録媒体80は、例えば媒体基板82と、媒体基板82の上に設けられた磁気記録層81と、を有する。書き込み部60から印加される磁界により、磁気記録層81の磁化83が制御され、これにより書き込み動作が実施される。このとき、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85に沿って、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。
【0017】
再生部70は、磁気記録媒体80に対向して配置される。磁気記録媒体80は、媒体移動方向85に沿って、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。再生部70は、磁気記録層81の磁化83の方向を検出する。これにより、再生動作が実施される。
【0018】
例えば、磁気記録媒体80から再生部70に向かう方向の軸をZ軸とする。Z軸に対して垂直な1つの軸をX軸とする。Z軸とX軸とに対して垂直な軸をY軸とする。X軸を第1軸とし、Z軸を第2軸とし、Y軸を第3軸とする。第Z軸方向は、ハイト方向である。X軸方向は、例えば、磁気記録媒体80の記録トラック進行方向に対応する。Y軸方向は、例えば、磁気記録媒体80の記録トラック幅方向に対応する。
【0019】
図1は、再生部70の構成を例示している。
図1に表したように、本実施形態に係る磁気ヘッド110は、再生部70を備える。再生部70は、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界(磁化83)を検出する。再生部70は、磁気記録媒体80に対向する媒体対向面70s(ABS:Air Bearing Surface)を有する。
【0020】
再生部70は、積層膜71と、磁界印加部75と、を含む。既に説明したように、再生部70は、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bを含むことができる。
【0021】
本具体例では、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間に積層膜71及び磁界印加部75が配置される。例えば、第1磁気シールド72aと磁界印加部75との間に積層膜71が配置される。例えば、積層膜71と第2磁気シールド72bとの間に磁界印加部75が配置される。
【0022】
積層膜71は、第1磁化固着層31と、磁化自由層32と、を含む。第1磁化固着層31から磁化自由層32に向かう方向の軸が、X軸(第1軸)とされる。
【0023】
第1磁化固着層31は、垂直磁気異方性を有する。第1磁化固着層31の磁化(第1磁化固着層磁化31h)は、固着されている。第1磁化固着層31の磁化の方向は、固着されている。
【0024】
本願明細書において、垂直磁気異方性は、磁化の膜面垂直方向(膜厚方向に対して平行方向)に、磁化が向きやすい性質のことを言う(膜面垂直方向に磁化が向くと磁気エネルギーが低下する)。すなわち、垂直磁気異方性を有する第1磁化固着層31においては、X軸に沿った磁化(第1磁化固着層磁化31h)が、Y軸に沿った磁化よりも大きく、Z軸に沿った磁化よりも大きい。
【0025】
磁化自由層32は、第1磁化固着層31とX軸に沿って積層される。磁化自由層32においては、スピントルク発振する。本具体例では、第1磁気シールド72aと磁化自由層32との間に第1磁化固着層31が配置される。磁化自由層32は、例えば、磁界検出層として機能する。
【0026】
本願明細書においては、「積層」とは、直接重ねられる場合の他に、他の要素が間に挿入されて重ねられる場合も含む。
【0027】
本具体例では、積層膜71は、中間層34(スピントルク伝達層)をさらに含む。中間層34は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に設けられる。中間層34は、第1磁化固着層31のスピントルクを磁化自由層32に伝達する機能を有する。
【0028】
本具体例では、積層膜71は、下地層33をさらに含む。第1磁気シールド72aと第1磁化固着層31との間に下地層33が配置される。
【0029】
本具体例では、磁界印加部75は、第2磁化固着層22と、非磁性層(第2非磁性層21)と、を含む。積層膜71の磁化自由層32と、第2磁気シールド72bと、の間に第2磁化固着層22が配置される。積層膜71の磁化自由層32と、第2磁化固着層22と、の間に第2非磁性層21が配置される。
【0030】
すなわち、第2磁化固着層22は、積層膜71とX軸に沿って積層される。第2磁化固着層22は、垂直磁気異方性を有する。第2磁化固着層22の磁化(第2磁化固着層磁化22h)は、第1磁化固着層31の磁化の方向に固着されている。第2磁化固着層22の磁化の方向は、第1磁化固着層31の磁化の方向と同じである。
【0031】
第2非磁性層21は、積層膜71と第2磁化固着層22との間に設けられる。第2非磁性層21には、非磁性材料が用いられる。第1磁化固着層31と第2非磁性層21との間に磁化自由層32が配置される。
【0032】
例えば第1磁気シールド72aの上に下地層33が形成される。下地層33の上に第1磁化固着層31が形成される。第1磁化固着層31の上に中間層34が形成される。中間層34の上に磁化自由層32が形成される。磁化自由層32の上に第2非磁性層21が形成される。第2非磁性層21の上に第2磁化固着層22が形成される。第2磁化固着層22の上に第2磁気シールド72bが形成される。第2非磁性層21は、例えばキャップ層である。
【0033】
このように、磁界印加部75は、積層膜71とX軸に沿って積層される。磁界印加部75は、X軸に沿う成分を有するバイアス磁界Hbを積層膜71に加える。
【0034】
再生部70において、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、X軸に沿って電流I1を流すことができる。すなわち、実施形態に係る磁気ヘッド110の再生部70においては、磁気抵抗効果膜の膜面に対して垂直方向にセンス電流が流れる。第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流I1が流れるときには、磁化自由層32から第1磁化固着層31に、電子電流が流れる。
【0035】
例えば、第1磁化固着層31と磁化自由層32に電気的に接続された第1電流供給部75aが接続される。本具体例では、第1電流供給部75aは、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとに電気的に接続される。電流I1は、第1磁気シールド72a、第2磁気シールド72b及び磁界印加部75を介して、第1磁化固着層31及び磁化自由層32に(積層膜71に)供給される。
【0036】
再生部70において、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、磁化自由層32がスピントルク発振する値(しきい値)以上の電流I1が流されたときに、磁気記録媒体80の媒体磁界(磁化83)に応じて、積層膜71の抵抗が変化する。すなわち、磁気記録媒体80の媒体磁界の大きさ及び向きの少なくともいずれかに応じて、積層膜71の抵抗が変化する。積層膜71の抵抗は、積層膜71のX軸に沿った抵抗である。積層膜71の抵抗は、少なくとも、第1磁化固着層31と磁化自由層32との両端の抵抗を含む。
【0037】
第1磁化固着層31から磁化自由層32に、スピントルクが注入される。第1磁化固着層31は、スピン注入層として機能する。この例では、第1磁化固着層31のスピントルクが、中間層34を介して磁化自由層32に伝達される。磁化自由層32の磁化(磁化自由層磁化32h)は、伝達されたスピントルクにより、層面内で大回転する。
【0038】
上記のように、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bは、電極として機能することができる。第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bには、例えばNiFeなどが用いられる。
【0039】
この例では、電流I1は、磁界印加部75を介して積層膜71に流れる。すなわち、磁界印加部75は、電極として機能することができる。
【0040】
下地層33には、例えば、Ta、Ru、Cu及びTiなどの単層膜、または、積層膜を用いることが望ましい。下地層33の厚さは、薄いことが望ましい。これにより、再生分解能が高まる。積層膜71の膜質向上と再生分解能との観点から、下地層33の厚さは適切に設定される。
【0041】
第1磁化固着層31には、例えば、Co/Ni人工格子膜を用いることが望ましい。これにより、高いMR比(高分極)と、大きな垂直磁気異方性と、の両方が得られる。
【0042】
第1磁化固着層31には、例えば、大きな垂直磁気異方性を有するCoPt、FePt、Co/Pd人工格子、及び、Co/Pt人工格子等を用いることができる。この場合には、例えば、第1磁化固着層31と中間層34との間の界面に、薄い高分極率材料層を挿入することが望ましい。高分極率材料層の厚さは、例えば0.5ナノメートル(nm)以上3nm以下である。高分極材料層には、例えば、FeCo、FeCo/Cu/FeCo積層膜、または、スピン拡散長の短いホイスラー規則化合金(FeCoAlSi及びCoMnGeなど)及びFeCoGe、FeCoAl、FeCoSiなどの層を用いることができる。スピン拡散長が短いと、薄くても十分な分極が可能となる。これにより、磁化自由層32(磁界検出層)へのスピントルク伝達効率が向上できる。高分極材料層が厚いと、第1磁化固着層31の全体の垂直磁気異方性が弱まる。このため、高分極材料層の厚みは薄く設定される。
【0043】
中間層34には、例えば、Cu及びAgなどが用いられる。これにより、高いMR比と、高いスピントルク伝達効率が得られる。すなわち、高い電流密度が投入可能で低い抵抗が得られる。中間層34の厚みは、薄いことが望ましい。中間層34は必要に応じて設けられる。中間層34は省略しても良い。また、中間層34として、ZnO及びMgOなどの酸化物層と、その酸化物層内に分散した導電部と、を含むハイブリッド型の層を用いることもできる。これにより、抵抗は高くなるがMR比を向上できる。
【0044】
磁化自由層32には、例えば、FeCo系合金、及び、ホイスラー系合金などを用いることができる。これにより、高いMR比が得られる。磁化自由層32の厚さは、高分解能の観点から、10nm以下が望ましい。磁化自由層32の厚さは、MR比の向上のためには、厚いことが望ましい。磁化自由層32の厚さは、これらの観点から適切に設定される。磁化自由層32は、面内に磁化が向きやすいことが望ましい。面内磁気異方性においては、膜面に対して垂直方向よりも膜面に対して平行な方向に磁化が向きやすい。磁化自由層32が面内磁気異方性を有することにより、磁化自由層32における発振が安定化する。
【0045】
もし、磁化自由層32の厚さ(X軸に沿った幅)が、Y軸に沿った幅またはZ軸に沿った幅と同程度になると、反磁界によって、膜面内の磁化安定化が困難となる。その場合には、Fe/Co積層膜のような負の垂直磁気異方性を、磁化自由層32の少なくとも一部に用いることが望ましい。また、磁化自由層32において、膜面内での磁化安定化のために、Ru層を介して反強磁性結合した磁性層/Ru層/磁性層のような積層構成を用いることができる。
【0046】
第1磁化固着層31のY軸に沿った幅(トラック幅方向の幅)は、磁化自由層32のY軸に沿った幅よりも大きいことが望ましい。第1磁化固着層31のZ軸に沿った幅(ハイト方向の幅)は、磁化自由層32のZ軸に沿った幅よりも大きいことが望ましい。すなわち、X軸に対して垂直な軸に沿った第1磁化固着層31の幅は、X軸に対して垂直なその軸に沿った磁化自由層32の幅よりも大きいことが望ましい。
【0047】
これにより、磁化自由層32からの反作用スピントルクによる磁化の乱れが抑制できる。さらに、狭トラック幅の媒体磁界を実際に検出する磁化自由層32を超微細形状にパターニングすることがプロセス的に容易になる。すなわち、磁化自由層32のY軸に沿った幅の加工において、Y軸に沿った幅とエッチング深さとを同程度にできる。さらに、再生部70の抵抗が低減できる。
【0048】
Y軸(磁気記録媒体80から再生部70に向かう方向のZ軸と、X軸と、に対して垂直な軸)に沿った磁化自由層32の幅は、磁気記録媒体80の記録トラック幅と、実質的に同じに設定される。
【0049】
Z軸(X軸に対して垂直で磁気記録媒体80から再生部70に向かう方向の軸)に沿った磁化自由層32の幅は、Y軸(X軸とZ軸とに対して垂直な軸)に沿った磁化自由層32の幅以下に設定することが望ましい。磁化自由層32のZ軸に沿った幅を、磁化自由層32のY軸に沿った幅よりも小さく設定することで、例えば、再生の分解能が向上できる。
【0050】
第2非磁性層21には、例えば、スピントルクの伝達を遮断する材料が用いられる。第2非磁性層21には、例えば、Ta及びRuなどを用いることが望ましい。
【0051】
第2磁化固着層22には、例えば、飽和磁化が大きく垂直磁気異方性を有する材料を用いることが望ましい。これにより、強い垂直磁界を発生することができる。第2磁化固着層22には、例えば、Co/Ni人工格子、及び、CoPt合金などを用いることができる。
【0052】
垂直磁気異方性を安定化するために、第2磁化固着層22と第2非磁性層21との間に、別の下地層を設けても良い。この別の下地層には、例えば、Ru、Cu及びTiなどを用いることができる。
【0053】
以下、磁気ヘッド110の特性の測定結果の例を説明する。
以下の試料においては、積層膜71のY軸に沿った幅は、約50nmであり、Z軸に沿った幅は約50nmである。第1磁化固着層31として、X軸に沿って交互に積層されたFeCo層とNi層とを用いた。FeCo層の厚さは、0.2nmである。Ni層の厚さは、0.6nmである。FeCo層の数は25であり、Ni層の数は25である。
【0054】
磁化自由層32には、FeCoSi層を用いた。磁化自由層32の厚さは約10nmである。磁化自由層32の飽和磁化Bsは、約1.5テスラ(T)である。
【0055】
図4(a)〜図4(c)、及び、図5(a)〜図5(c)は第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図4(a)〜図4(c)は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間の電圧Vaが約10ミリボルト(mV)の場合の特性に対応する。すなわち、これらの図は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に流れる電流がしきい値よりも小さい場合に対応する。図5(a)〜図5(c)は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間の電圧Vaが約80ミリボルト(mV)の場合の特性に対応する。すなわち、これらの図は、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に流れる電流がしきい値よりも大きい場合に対応する。
【0056】
図4(a)及び図5(a)は、特性の測定結果を例示するグラフ図である。これらの図において、横軸は、素子に印加される磁界Hである。磁界Hは、X軸に沿う磁界である。磁界Hは、例えば、検出すべき、磁気記録媒体80の媒体磁界に対応する。縦軸は、素子の抵抗変化dRである。
【0057】
図4(b)、図4(c)、図5(b)及び図5(c)は、第1磁化固着層31及び磁化自由層32の磁化の状態を模式的に例示している。図4(b)は、図4(a)に例示した第1状態ST1(電圧Va=10mV、磁界H=0kOe)に対応する。図4(c)は、図4(a)に例示した第2状態ST2(電圧Va=10mV、磁界H=6kOe)に対応する。図5(b)は、図5(a)に例示した第3状態ST3(電圧Va=80mV、磁界H=6kOe)に対応する。図5(c)は、図5(a)に例示した第4状態ST4(電圧Va=80mV、磁界H=9kOe)に対応する。
【0058】
図4(a)に表したように、電圧Vaが10mVの場合、磁界Hが0kOeのときの抵抗は高い。そして、磁界Hの絶対値が大きくなると抵抗が低下する。
【0059】
図4(b)に表したように、磁界Hが0kOeである第1状態ST1においては、磁化自由層磁化32hは、第1磁化固着層31からの漏洩磁界の影響により、X軸に対して傾斜する。すなわち、磁化自由層磁化32hは、膜面内から膜面直方向に若干傾く。その結果、第1磁化固着層磁化31hと磁化自由層磁化32hとの間の角度は、90度に近い。
【0060】
電圧Vaが10mVのときは、スピントルクが微弱である、このため、磁界Hの絶対値を増大すると、抵抗は減少する。磁界Hが約3kOe〜4kOeにおいて、抵抗は実質的に一定となる。
【0061】
図4(c)に表したように、第2状態ST2においては、磁化自由層磁化32hは、第1磁化固着層磁化31hと実質的に同じ方向に向く。すなわち、磁化自由層磁化32hは、X軸に沿う。
【0062】
図4(a)〜図4(c)に例示した電流が小さい状態においては、磁界Hが大きい場合においても、スピントルク発振が生じていない。
【0063】
図5(a)に表したように、電圧Vaが80mVのときは、磁界Hの絶対値が6kOe以上10kOe以下の領域においては、磁界Hの絶対値が増大すると、抵抗は減少する。この領域においては、磁界Hの絶対値と、抵抗変化dRと、の関係は概ね線形である。
【0064】
図5(b)に表したように、磁界Hが6kOeの第3状態ST3のときは、第1磁化固着層磁化31hと磁化自由層磁化32hとの間の角度は、90度に近い。第3状態ST3は、高抵抗状態である。
【0065】
図5(c)に表したように、磁界Hが9kOeの第4状態ST4のときは、第1磁化固着層磁化31hと磁化自由層磁化32hとの間の角度は、減少し、0度に近づく。第4状態ST4は、低抵抗状態である。
【0066】
図5(a)〜図5(c)に例示した電流が大きい状態においては、磁界Hが大きい場合(磁界Hが6kOe以上の場合)に、スピントルク発振が生じている。このような、抵抗が略線形に変化する領域における発振周波数は、約20GHz以上約25GHz以下であった。
【0067】
実施形態に係る磁気ヘッド110においては、抵抗が略線形に変化する特性が利用される。
すなわち、第1磁化固着層31から磁化自由層32へしきい値(磁化自由層32がスピントルク発振するためのしきい値)以上の電流I1が流されたときに(上記の例では80mVの電圧Vaを印加したときに)、媒体磁界に応じて積層膜71の抵抗が変化する。そして、この抵抗の変化を検出することで、媒体磁界が検出される。すなわち、磁気記録媒体80に記録された磁化83の方向が検出され、記録された情報が読み出される。
【0068】
スピントルク発振子(STO)に関して、その発振特性についての多くの研究開発が行われている。しかしながら、STOの抵抗の磁界による変化を磁気ヘッドの再生部に応用する発想は見られなかった。
【0069】
発明者が行った上記の独自の実験により、発明者は、図5(a)に例示したようにSTOの抵抗が磁界によって変化することを見出した。そして、その変化は、実質的に線形である(例えば磁界H=6kOe〜10kOeの領域)。この初めて見出された知見に基づいて、実施形態に係る磁気ヘッドの構成が構築された。
【0070】
一般に、素子サイズが減少するとマグノンの発生が抑制され、スピントルクによる均一発振が起こり易くなることが理論から予想されている。実験でも、素子サイズが大きくなると、図5(a)に例示したような線形の磁界−抵抗特性は得難くなる。逆に素子サイズが小さくなると、均一な発振により磁化の熱揺らぎノイズの抑制効果が期待される。
【0071】
一方、X軸に沿って、媒体磁界に相当する大きさの10kOeの磁界を外部から加えても、図5(a)に例示した磁界−抵抗特性に変化は無かった。
【0072】
例えば、参考例の再生ヘッドにおいては、磁気抵抗効果膜の膜面内方向の媒体磁界(例えばZ軸方向の媒体磁界)が検出される。
これに対し、実施形態に係る磁気ヘッド110においては、媒体磁界の、積層膜71の膜面に対して垂直な成分(例えば媒体磁界のX軸方向成分)が検出される。その結果、この特性により、磁気シールドの間隔(第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間の距離)が広くても、狭い記録ビット長の再生が可能になる。
【0073】
実施形態においては、X軸に沿う(積層膜71の膜面に対して垂直な軸に沿う)適度なバイアス磁界Hbと、第1磁化固着層31(垂直磁化スピン注入層)からのスピン注入と、により、磁化自由層32(磁界検出層)の膜面内で、10GHz以上の高周波で磁化が360度大回転する特異なスピントルク発振状態が可能となる。
【0074】
磁化自由層32が超微細化すると熱揺らぎが大きくなる傾向がある。しかし、実施形態におけるスピントルク発振においては、磁化自由層32が超微細化された場合においても、磁化の乱れは少なく、磁化は均一である。
【0075】
さらに、実施形態におけるスピントルク発振状態においては、磁気記録媒体80の媒体磁界の媒体膜面垂直方向成分(例えばZ軸方向成分)に対しては、積層膜71の抵抗は実質的に変化せず、磁気記録媒体80の媒体磁界の媒体膜面内方向成分(例えばX軸方向成分)に対して積層膜71の抵抗が概ね線形に変化する。この現象は、発明者の実験により見出された。
【0076】
この現象は、第1磁化固着層31の磁化と、磁化自由層32の磁化と、の間の角度が、媒体膜面内方向成分磁場(積層膜71の膜面垂直方向磁場であり、例えばX軸方向の磁場)に基づいて変化するためである。この磁場の方向が、第1磁化固着層31の磁化の方向と同じときは、抵抗が減少する。この磁場の方向が、第1磁化固着層31の磁化の方向と逆のときは、抵抗が増大する。
【0077】
従来の構成の場合は、超微細な磁性層においては、磁化の熱揺らぎの抑制と高感度な再生出力との両立は原理的に回避困難と考えられていた。これに対し、実施形態に係る磁気ヘッドによれば、超微細な磁性層においても、磁化の熱揺らぎの抑制と高感度な再生出力との両立が実現できる。
【0078】
従来の再生ヘッドにおいては、媒体膜面内方向成分(例えばX軸方向成分)の媒体磁界は、利用が困難であった。これに対し、実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、媒体膜面内方向成分の媒体磁界が、垂直磁化媒体の磁化の方向が変化する遷移領域に集中するので、高い分解能の再生が可能となる。
【0079】
熱揺らぎの抑制が可能になると、磁化自由層32のX軸に沿う長さが縮小できる。これにより、高い分解能の再生が可能となる。
【0080】
なお、媒体磁界に数10GHzの高周波を重畳すると、磁気記録媒体80の磁化83が反転し易くなることが知られている。この現象に基づく高周波アシスト記録の方法も知られている。
【0081】
実施形態に係る磁気ヘッド110においても、STO(例えば積層膜71)が発振すると高周波が発生する。この高周波が、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態を乱すことが懸念される。この問題が発生しないように、実施形態に係る磁気ヘッド110は適切に設計される。
【0082】
図6は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
同図の横軸は、STO(具体的には磁化自由層32)におけるスピントルク発振の周波数fsである。縦軸は、媒体保磁力低減効果Hcdである。媒体保磁力低減効果Hcdは、印加される高周波によって磁気記録媒体80の保磁力が低減する程度を表す。図6において、媒体保磁力低減効果Hcdは、相対値である。媒体保磁力低減効果Hcdが0のときは、保磁力が低減しないことに対応する。媒体保磁力低減効果Hcdが0から1に向かうと、保磁力を低減する効果が大きくなる。媒体保磁力低減効果Hcdが0よりも1の側の領域において、磁気記録媒体80の磁化が変化され易くなる。
【0083】
図6に表したように、STOのスピントルク発振の周波数fsが0から上昇すると、媒体保磁力低減効果Hcdは大きくなる。そして、周波数fsが媒体固有周波数fmのときに媒体保磁力低減効果Hcdが最大となる。媒体固有周波数fmは、例えば磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数である。そして、周波数fsが周波数f1以上になると、媒体保磁力低減効果Hcdは0になり、効果が得られない。なお、STOを高周波アシスト記録に利用する場合は、周波数fsが媒体固有周波数fmに近い条件が採用される。
【0084】
実施形態に係る磁気ヘッド110においては、例えば、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、媒体固有周波数fmよりも高く設定される。具体的には、例えば、周波数fsは、媒体保磁力低減効果Hcdが実質的に0となる周波数f1以上(第1周波数範囲fr1)に設定される。または、周波数fsは、媒体固有周波数fmよりも低く設定される。周波数fsは、特に、媒体固有周波数fmよりも著しく低い値(第2周波数範囲fr2)に設定される。
【0085】
すなわち、実施形態においては、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁気記録媒体80の磁化83が反転し易い周波数を避けた領域の値に設定される。
【0086】
磁気記録媒体80の磁化83の反転が容易となる周波数は、概ね、磁気記録媒体80の磁気異方性磁界Hkとジャイロ磁気定数γとの積の2/3程度である。一方、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、概ね、外部磁界(バイアス磁界Hb)とγとの積である。
【0087】
例えば、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsが、磁気記録媒体80の磁化83の反転周波数から遠ざかるように、バイアス磁界Hbが設定される。特に、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsを磁気記録媒体80の磁化83の反転周波数よりも高くすることが望ましい。これにより、磁化自由層32のスピントルク発振によって、磁気記録媒体80の磁化83が不安定になることが抑制される。
【0088】
このように、実施形態においては、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数(媒体固有周波数fm)よりも高いことが望ましい。周波数fsは、例えば、磁気記録媒体80の磁気異方性磁界Hkとジャイロ磁気定数γとの積よりも高く設定される。
【0089】
または、周波数fsは、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数よりも低いことが望ましい。周波数fsは、例えば、磁気異方性磁界Hkとジャイロ磁気定数γとの積よりも低く設定される。
【0090】
磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁化自由層32に流される電流I1に対して実質的に比例する。従って、磁気ヘッド110において、第1磁化固着層31と磁化自由層32との間に流される電流値は、磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsを、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数よりも高くする値に設定されることが望ましい。
【0091】
図7は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。 図7に表したように、実施形態に係る磁気ヘッド111においては、磁化自由層32は、第1磁性層32aと、第2磁性層32bと、非磁性層(第1非磁性層32c)と、を含む。
【0092】
第2磁性層32bは、第1磁性層32aとX軸に沿って積層される。第2磁性層32bは、第1磁性層32aの磁化の方向とは反対の方向の磁化を有する。すなわち、第2磁性層32bの磁化の位相は、第1磁性層32aの位相と180度異なる。
【0093】
第1非磁性層32cは、第1磁性層32aと第2磁性層32bとの間に設けられる。
磁気ヘッド111におけるこの他の構成は、例えば磁気ヘッド110の構成と同様とすることができるので説明を省略する。
【0094】
磁気ヘッド111においては、第1磁性層32a及び第2磁性層32bは、スピントルク発振する。第1磁性層32aと第2磁性層32bとは、互いに反強磁性結合しており、位相が互いに180度異なる。位相が180度異なるので、高周波磁界がキャンセルされる。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が不安定になることが抑制できる。
【0095】
さらに、磁化自由層32のスピントルク発振により発生する高周波磁界によって、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態を安定化させるために、磁化自由層32の磁気膜厚を所定の値よりも小さく設定することが有効である。
【0096】
実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110及び111、並びに、それらの変形)においては、例えば、磁化自由層32の磁気膜厚は、5ナノメートル・テスラ(nmT)未満に設定される。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が不安定になることが抑制できる。なお、高周波アシスト記録においては、STOの磁気膜厚は、20nmT以上である。
【0097】
なお、磁化自由層32の磁気膜厚は、例えば電子顕微鏡観察により求めた磁化自由層32の厚さと、材料組成によって決まる飽和磁化と、の積である。
【0098】
HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)の信号再生には、膜面垂直方向に電流を通電するTMRヘッド(Tunneling MagnetoResistive Head)が使用されている。今後、記録密度の向上に伴い再生素子が微細化される。このために、単位断面積当たりの抵抗が小さい磁気抵抗効果素子の実現が要求される。
【0099】
例えば、1平方インチ面積あたり2テラビット(2Tb/in2)の面記録密度の実現には、約20nm角の通電断面積を有する再生素子が必要になると予想される。このために、約0.3Ωμm2、または、それ以下の面積抵抗(RA:通電断面積×抵抗)が必要であると考えられる。TMRヘッドでは、トンネルバリアを通じて電流を流すので、抵抗低減には物理限界が存在する。
【0100】
また、2Tb/in2以上の面記録密度の実現には、高分解再生を実現するために、再生シールド間隔が20nm以下であることが必要であると考えられる。狭トラック幅密度の再生を実現するためにTMRの磁化自由層の幅は20nm程度が必要とされる。
【0101】
しかし、現在のTMRヘッドにおいては、例えば、反強磁性膜(IrMn合金)、磁化固着層、中間絶縁層及び磁化自由層の積層膜が設けられるため、それらの合計の厚みを20nm以下にすることは困難である。このため、再生シールド間にTMRヘッドを配置することが困難である。20nm以下に磁化自由層の幅を狭めると、熱揺らぎに起因する磁気ノイズが顕在化して、高SN比の再生が困難になる。さらに、20nm程度に素子を微細化すると、スピントランスファートルクに起因する磁気ノイズが小さな電流でも発生し易くなると考えられる。再生出力は、MR比と投入電流との積に比例する。従って、MR比の増大に加えて、スピントランスファートルクの抑制が、高感度な再生ヘッドの実現に望まれる。
【0102】
すなわち、例えば、記録密度が2Tb/in2以上に増大すると、低抵抗で、高MR比で、高分解能で、低磁気ノイズであることが望まれる。
【0103】
実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110及び111、並びに、それらの変形)においては、抵抗が低く、MR比が高く、分解能が高く、磁気ノイズが低い。これにより、例えば、記録密度が2Tb/in2以上の高密度記録が実現できる。
【0104】
なお、2層の磁化自由層を、中間層を介して積層した構成の参考例の磁気ヘッド(Tri-layer方式)が考えられる。また、2組の磁気抵抗効果素子を重ね、それぞれの磁界自由層の間隔で分解能を規定する参考例(差動型方式)も考えられる。しかし、このような参考例においては、磁気ノイズの改善が困難であると考えられる。これに対し、実施形態によれば、磁気ノイズが抑制できる。
【0105】
さらに、再生素子として、STO素子の発振周波数の位相検波を利用する参考例も考えられる。この場合には、位相検波のための回路が必要である。これに対し、実施形態においては、この回路を必要としない。このため、コストが低減できる。
【0106】
実施形態においては、図5(a)に例示したように、例えば、磁化自由層32の面内の磁場が1kOe程度と小さい場合は、抵抗が実質的に変化しない。このため、例えば、磁気記録媒体80からの磁場の、磁化自由層32の膜面に対して垂直な方向の成分(X軸方向成分)が検出される。これにより、例えば、シールドを設けない場合においても、高い分解能で、狭いビット長の再生が可能になる。
【0107】
また、十分強いスピントルクトランスファによって、磁化自由層32の磁化の均一な面内大回転が実現できる。これにより、スピントルクトランスファエネルギーによるランダムな磁化の熱揺らぎが抑制できる。これにより、SN比が高い再生信号が得られる。
【0108】
そして、実施形態においては、一般的な磁気ヘッドの再生部と同様に、抵抗変化が再生信号として検出される。このため、特別な検出回路が不要である。これにより、コストは上昇しない。
【0109】
実施形態によれば、今後の高記録密度HDDの情報再生において課題となる、熱揺らぎノイズ及びスピントランスファートルク起因の磁気ノイズを抑制できる。これにより、ノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッドが提供できる。例えば、低抵抗、高MR比、高分解能及び低磁気ノイズの新たな磁気抵抗効果ヘッドが提供できる。
【0110】
このように、実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、磁化が概ね膜面垂直方向に配列したスピン注入層(第1磁化固着層31)と、スピン注入層から注入された電子によりスピントルク発振する磁界検出層(磁化自由層32)と、を含む積層膜71が設けられる。積層膜71は、例えばSTOである。そして、積層膜71の膜面垂直方向に(X軸に沿って)バイアス磁界Hbを加える磁界印加部75がさらに設けられる。そして、積層膜71に、膜面垂直方向に、しきい値(磁化自由層32がスピントルク発振するためのしきい値)以上の電流I1が流される。この状態において、積層膜71の抵抗が、磁気記録媒体80の信号磁界(媒体磁界)に応じて変化する。そして、この変化が検出され、再生動作が行われる。
【0111】
積層膜71にバイアス磁界Hbを印加する方法は、任意である。
図1に例示した磁気ヘッド110においては、磁界印加部75は、積層膜71に積層され垂直磁気異方性を有し第1磁化固着層31の磁化の方向に磁化が固着された第2磁化固着層22と、積層膜71と第2磁化固着層22との間に設けられた第2非磁性層21と、を含む。そして、第1磁化固着層31と第2非磁性層21との間に磁化自由層32が配置される。
【0112】
すなわち、積層膜71の磁化自由層32の側に第2非磁性層21を介して設けられた第2磁化固着層22が、磁界印加部75として用いられる。第2磁化固着層22は、垂直磁化膜である。第2磁化固着層22の磁化は、スピン注入層の磁化と、同方向に着磁されている。
【0113】
図8は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。 図8に表したように、実施形態に係る磁気ヘッド113においては、磁界印加部75は、第3磁化固着層23を含む。第3磁化固着層23は、磁化自由層32と、強い交換結合磁界が加わるように非磁性層を介すること無く接する。第3磁化固着層23の磁化(第3磁化固着層磁化23h)は、第1磁化固着層31の磁化の方向とは反対の方向に固着されている。第1磁化固着層31と第3磁化固着層23との間に磁化自由層32が配置される。
【0114】
例えば、第1磁化固着層31の磁化が−X軸方向に沿うときは、第3磁化固着層23の磁化は、+X軸方向に沿う。第1磁化固着層31の磁化が+X軸方向に沿うときは、第3磁化固着層23の磁化は、−X軸方向に沿う。
【0115】
磁化自由層32は、第3磁化固着層23と直接的に磁気交換結合される。これにより、積層膜71に、強いバイアス磁界Hbが印加される。
【0116】
このように、磁気ヘッド113においては、積層膜71の磁化自由層32の側に、磁化自由層32に接して設けられる第3磁化固着層23が、磁界印加部75として用いられる。第3磁化固着層23は、垂直磁化膜である。第3磁化固着層23の磁化は、スピン注入層の磁化と、逆方向に着磁される。
【0117】
さらに、センス電流(電流I1)の方向は、図1とは反対方向に通電する。その結果、磁化自由層32の磁化がスピントルクによる大回転して、媒体磁界により磁気抵抗効果膜(積層膜71)の抵抗が変化する。
【0118】
第3磁化固着層23には、第1磁化固着層31と同様な垂直磁気異方性を有する材料を用いることができる。
【0119】
なお、本具体例において、磁界印加部75は、第2非磁性層21(キャップ層)をさらに有することができる。磁化自由層32と第2非磁性層21との間において、磁化自由層32に接して第3磁化固着層23が設けられる。
【0120】
さらに、後述するように、磁界印加部75として電磁石を用いても良い。
【0121】
実施形態において、分解能を向上するために、一対のシールド(第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72b)を設けることができる。この場合には、このシールドが電極として機能することが望ましい。これにより、さらに分解能が向上する。すなわち、実施形態に係る磁気ヘッドは、第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとをさらに備えることができる。第1磁気シールド72aと第2磁気シールド72bとの間に積層膜71及び磁界印加部75が配置される。電流I1は、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bを介して流される。
【0122】
図9は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。 図9に表したように、実施形態に係る磁気ヘッド114においては、積層膜71とX軸に沿って積層された電極73をさらに備える。電極73は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、スピントルク発振のためのしきい値以上の電流を流す。電極73は、例えば、第1電極73a及び第2電極73bを含むことができる。第1電極73aと第2電極73bとの間に積層膜71が配置される。
【0123】
なお、電極73を設け、第1磁気シールド72a及び第2磁気シールド72bをさらに設けても良い。
【0124】
図10は、第1の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。
図10に表したように、実施形態に係る別の磁気ヘッド115においては、磁界印加部75として、電磁石部74が用いられる。電磁石部74は、バイアス磁界Hbを積層膜71に加える。
【0125】
電磁石部74は、積層膜71に並置される電磁石74aを含む。電磁石74aの周りにコイル75cが巻かれている。コイル75cには、第2電流供給部75bが接続されている。第2電流供給部75bから供給される電流により、電磁石74a(電磁石部74)からバイアス磁界Hbが、積層膜71に印加される。これにより、上記の動作が実施される。
【0126】
本具体例では、電磁石部74は、電磁石74aと対向する再生部リターンパス74bをさらに含む。すなわち、電磁石74aと再生部リターンパス74bが対向する磁気ギャップ内に、積層膜71が配置される。
【0127】
電磁石74aの媒体対向面70sとは反対側の部分と、再生部リターンパス74bの媒体対向面70sとは反対側の部分と、の間に、電気抵抗調整層74dを設けることができる。例えば、電気抵抗調整層74dは電流をシャントさせ、静電気による劣化が抑制される。
【0128】
本具体例では、積層膜71は、第2非磁性層21(例えばキャップ層)をさらに含む。第2非磁性層21は必要に応じて設けられ、場合によっては省略しても良い。
【0129】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る別の磁気ヘッドの構成を例示する模式的断面図である。
図11に表したように、本実施形態に係る磁気ヘッド121は、電磁石65aと、再生部70と、を備える。
【0130】
電磁石65aは、磁気記録媒体80に情報を記録する書き込み動作において、磁気記録媒体80に記録磁界を印加する。電磁石65aは、主磁極61として機能する。電磁石65aは、例えば、書き込み部60の一部である。
【0131】
再生部70は、電磁石65aと並置される。再生部70は、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界(磁化83)を検出する。
【0132】
この場合も、再生部70は、積層膜71を含む。積層膜71は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層31と、第1磁化固着層31と第1軸(X軸)に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層32と、を含む。
【0133】
磁気記録媒体80に記録された媒体磁界を検出する再生動作において、電磁石65aからZ軸に沿う成分を有するバイアス磁界Hbが、積層膜に加えられる。そして、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ、磁化自由層32がスピントルク発振する値以上の電流I1が流されたときに、媒体磁界に応じて積層膜71の抵抗が変化する。
【0134】
すなわち、書き込み動作においては、電磁石65aが主磁極61として機能する。そして再生動作においては、電磁石65aが磁界印加部75として機能する。これにより、第1実施形態に関して説明した再生動作が実施される。磁気ヘッド121により、再生時のノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッドが得られる。
【0135】
本具体例においては、積層膜71において、順次積層された下地層33、第1磁化固着層31、中間層34、磁化自由層32及び第2非磁性層21(キャップ層)が設けられている。
【0136】
また、磁気ヘッド121においては、電磁石65aと対向するリターンパス65bが設けられている。すなわち、電磁石65aとリターンパス65bが対向する磁気ギャップ内に、積層膜71が配置されている。また、電磁石65aの一部とリターンパス65bの一部との間に電気抵抗調整層74dが設けられている。
【0137】
図11に表したように、本具体例の磁気ヘッド121は、加熱部65eをさらに備える。加熱部65eは、電磁石65aと並置される。加熱部65eは、書き込み動作の際に磁気記録媒体80を局所的に加熱する。すなわち、加熱部65eによる熱アシストにより、書き込み動作がアシストされる。
【0138】
この例では、加熱部65eは、導波路層65cと、近接場光発生部65dと、を含む。 導波路層65cは、電磁石65aと並置される。導波路層65cは、光を導波する。光は、例えばレーザ光である。
【0139】
近接場光発生部65dは、電磁石65aと導波路層65cとの間に設けられる。近接場光発生部65dは、書き込み動作の際に、導波路層65cを導波された光に基づいて、磁気記録媒体80を局所的に加熱する近接場光を発生する。
【0140】
磁気ヘッド121においては、再生部70のための磁界印加部75として、書き込み部60の主磁極61として機能する電磁石65aが用いられる。これにより、再生時のノイズが抑制されることに加え、構成が簡単になり、小型化が可能になる。
【0141】
第1及び第2の実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界に応じて、積層膜71の抵抗が変化する。この抵抗の変化は、磁気ヘッドに接続された検出回路により検出される。
【0142】
(第3の実施の形態)
上記で説明した第1及び第2実施形態に係る磁気ヘッドは、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録再生装置に搭載することができる。なお、実施形態に係る磁気記録再生装置は、再生機能のみを有することもできるし、記録機能と再生機能の両方を有することもできる。
【0143】
図12は、第3の実施形態に係る磁気記録再生装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図13(a)及び図13(b)は、第3の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図12に表したように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着される。記録用媒体ディスク180は、図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。このモータは、例えば図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。
【0144】
記録用媒体ディスク180に格納される情報の記録再生が、ヘッドスライダ3により行われる。ヘッドスライダ3は、既に例示した構成を有する。ヘッドスライダ3は、サスペンション154の先端に取り付けられている。サスペンション154は、薄膜状である。ヘッドスライダ3の先端付近に、例えば、既に説明した実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110〜114)のいずれかが搭載される。
【0145】
記録用媒体ディスク180が回転すると、ヘッドスライダ3は、記録用媒体ディスク180の表面の上方に保持される。すなわち、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ3の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がつりあう。これにより、ヘッドスライダ3の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の距離は、所定の値に保持される。実施形態において、ヘッドスライダ3が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」を用いても良い。
【0146】
サスペンション154は、アクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155は、例えば、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有する。アクチュエータアーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、例えば、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、図示しない駆動コイル及び磁気回路を含むことができる。駆動コイルは、例えば、アクチュエータアーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、例えば、図示しない永久磁石及び対向ヨークを含むことができる。永久磁石及び対向ヨークは、互いに対向し、これらの間に駆動コイルが配置される。
【0147】
アクチュエータアーム155は、例えば、図示しないボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、例えば、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アクチュエータアーム155は、ボイスコイルモータ156により、回転摺動が自在にできる。その結果、磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動できる。
【0148】
図13(a)は、磁気記録再生装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
また、図13(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0149】
図13(a)に表したように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延出する。支持フレーム161は、軸受部157からHGAとは反対方向に延出している。支持フレーム161は、ボイスコイルモータのコイル162を支持する。
【0150】
図13(b)に示したように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、アクチュエータアーム155とサスペンション154とを含む。アクチュエータアーム155は、軸受部157から延出する。サスペンション154は、アクチュエータアーム155から延出する。
【0151】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ3が取り付けられている。そして、ヘッドスライダ3には、実施形態に係る磁気ヘッドのいずれかが搭載される。
【0152】
すなわち、実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが搭載されたヘッドスライダ3と、ヘッドスライダ3を一端に搭載するサスペンション154と、サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備える。
【0153】
サスペンション154は、信号の書き込み及び読み取り用、及び、浮上量調整のためのヒーター用などのためのリード線(図示しない)を有する。これらのリード線と、ヘッドスライダ3に組み込まれた磁気ヘッドの各電極と、が電気的に接続される。
【0154】
また、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190が設けられる。
【0155】
信号処理部190は、例えば、図12に例示した磁気記録再生装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に結合される。
【0156】
すなわち、信号処理部190は、磁気ヘッドに電気的に接続される。
磁気記録媒体80に記録された媒体磁界に応じた、磁気ヘッドの積層膜71の抵抗の変化は、例えば、信号処理部190により検出される。
【0157】
このように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、磁気記録媒体と、上記の実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とした可動部と、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定の記録位置に位置合わせする位置制御部と、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備える。
【0158】
すなわち、上記の磁気記録媒体80として、記録用媒体ディスク180が用いられる。 上記の可動部は、ヘッドスライダ3を含むことができる。
また、上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ158を含むことができる。
【0159】
このように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリと、磁気ヘッドアセンブリに搭載された磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190と、を備える。
【0160】
本実施形態に係る磁気記録再生装置150によれば、上記の実施形態に係る磁気ヘッドを用いることで、ノイズを抑制した再生が可能になる。さらに、低抵抗、高MR比及び高分解能の再生が可能になる。
【0161】
実施形態に係る磁気記録再生装置150において、記録用媒体ディスク180(磁気記録媒体80)の記録トラック幅は、30nm以下であることが望ましい。これにより、特に、スピントランスファートルクの抑制効果が発現される。すなわち、記録トラック幅が30nm以下である場合には、磁化自由層32の幅が30nm以下に設定される。この条件において、スピントランスファートルクの抑制効果がより明確に発揮される。
【0162】
(第4の実施の形態)
図14は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の構成を例示する模式図である。
すなわち、図14には、磁気記録再生装置に含まれる磁気ヘッドの要部の断面が模式的に例示され、制御部が模式的に例示されている。
【0163】
図14に表したように、本実施形態に係る磁気記録再生装置151は、磁気記録媒体80と、磁気ヘッド131と、制御部195と、を備える。磁気記録再生装置151において、磁気ヘッド131が搭載されるヘッドスライダ3、ヘッドジンバルアセンブリ158及びヘッドスタックアセンブリ160などの構成は、既に説明したものと同様とすることができるので説明を省略する。磁気記録再生装置151の全体構成は、図12に関して説明した磁気記録再生装置150と同様である。
【0164】
例えば、磁気記録再生装置151において、磁気記録媒体80として、記録用媒体ディスク180を用いることができる。
【0165】
磁気記録再生装置151における制御部195は、磁気記録再生装置150における信号処理部190と類似の構成を有することができる。
【0166】
図14に表したように、磁気ヘッド131は、電磁石66aと、積層膜71と、を含む。電磁石66aは、磁気記録媒体80に対向する。
【0167】
積層膜71は、電磁石66aと並置される。積層膜71は、第1磁化固着層31と磁化自由層32とを含む。第1磁化固着層31は、垂直磁気異方性を有し磁化が固着されている。磁化自由層32は、第1磁化固着層31と第1軸(X軸)に沿って積層される。磁化自由層32は、スピントルク発振する。
【0168】
電磁石66a(及び積層膜71)は、磁気記録媒体80に対向する媒体対向面70sを有する。
【0169】
電磁石66aの周りにコイル75cが巻かれている。コイル75cには、第2電流供給部75bが接続されている。第2電流供給部75bから供給される電流により、電磁石66aから磁界が発生する。
【0170】
本具体例では、電磁石66aと対向する対向部66bがさらに設けられている。電磁石66aと対向部66bとが対向するギャップ内に、積層膜71が配置される。
【0171】
電磁石66a及び対向部66bは、積層膜71に電流I1を流す電極として機能することができる。ただし、実施形態はこれに限らず、例えば、電磁石66aとは別に電極を設けても良い。
【0172】
電磁石66aと対向部66bとに第1電流供給部75aが接続される。これにより、第1電流供給部75aから、第1磁化固着層31及び磁化自由層32に電流が供給される。
【0173】
本具体例においては、積層膜71において、順次積層された下地層33、第1磁化固着層31、中間層34、磁化自由層32及び第2非磁性層21(キャップ層)が設けられている。
【0174】
制御部195は、磁気ヘッド131に接続される。制御部195は、例えば、制御信号部196と、第1電流供給部75aと、第2電流供給部75bと、を含む。制御部195は、例えば、図12中の背面側に設けられる。制御部195の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッド131と電気的に結合される。
【0175】
制御信号部196は、第1電流供給部75aの動作及び第2電流供給部75bの動作を制御する。制御信号部196は、例えば、第1電流供給部75aの動作及び第2電流供給部75bの動作を制御する信号を、第1電流供給部75a及び第2電流供給部75bに供給する。制御信号部196は、アナログ回路及びデジタル回路の少なくともいずれかを含む。制御信号部196による第1電流供給部75a及び第2電流供給部75bの制御には、例えばコンピュータプログラムに基づく制御が用いられる。
【0176】
磁気記録媒体80に情報を記録する書き込み動作において、以下が行われる。
制御部195は、電磁石66aに、磁気記録媒体80に記録磁界を印加させる。さらに、制御部195は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流を流して、磁化自由層32をスピントルク発振させて高周波磁界を発生させる。この高周波磁界は、記録磁界が印加されている磁気記録媒体80に印加される。これにより、スピントルク発振による高周波磁界を用いた高周波アシスト記録が行われる。
【0177】
さらに、磁気記録媒体80に記録された媒体磁界を検出する再生動作においては以下が行われる。
制御部195は、電磁石66aに、第1軸(X軸)に沿う成分を有するバイアス磁界Hbを積層膜71に印加させる。このときのバイアス磁界Hbは、書き込み動作における記録磁界よりも小さい絶対値を有する磁界である。さらに、制御部195は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流を流して、磁化自由層32を、書き込み動作における高周波磁界よりも低い周波数でスピントルク発振させる。すなわち、制御部195は、第1磁化固着層31から磁化自由層32へ電流I1を流す。このときの電流I1の電流値は、磁化自由層32がスピントルク発振するためのしきい値以上の電流値である。これにより、磁化自由層32をスピントルク発振させる。この磁化自由層32のスピントルク発振の周波数は、書き込み動作における高周波磁界の周波数よりも低い。そして、再生動作において、積層膜71の抵抗は、媒体磁界に応じて変化する。この変化を検出することで磁気記録媒体80に記録された情報が再生できる。この検出は、例えば制御部195(信号処理部190)により実施される。
【0178】
このように、本実施形態に係る磁気ヘッド131の電磁石66aは、書き込み動作と、再生動作と、の両方において用いられる。すなわち、磁気ヘッド131は記録再生一体型の磁気ヘッドである。磁気ヘッド131において、書き込み動作においては、積層膜71におけるスピントルク発振を用いた高周波アシスト記録が行われる。そして、磁気ヘッド131において、再生動作においては、スピントルク発振する積層膜71における抵抗変化が利用される。
【0179】
実施形態に係る磁気記録再生装置151においては、第1実施形態に関して説明したのと同様に、積層膜71における均一なスピントルク発振に基づく特性が利用される。これにより、例えば熱揺らぎによるノイズを低減できる。これにより、ノイズを抑制した磁気記録再生装置が得られる。
【0180】
さらに、磁気記録再生装置151においては、第1実施形態に関して説明したのと同様に、分解能も高い。そして、構成が簡単になり、磁気ヘッドの厚さ(再生部70及び書き込み部60の厚さ)が薄くできる。そして、再生シールドを省略できる。
【0181】
なお、磁気ヘッドの記録ギャップ内に水平磁化膜のMRセンサ(例えばAMRセンサまたはGMRセンサなど)を配置する参考例が考えられる。しかし、この参考例の構成においては、記録ギャップ内部の漏洩磁界が外乱となる。このため、媒体磁界を検出するとノイズが大きく、動作が不安定である。例えば、この参考性の構成においては、数kOeのギャップ磁界が印加されると再生動作が不安定になる。
【0182】
これに対し、実施形態においては、垂直磁化膜を有する積層膜71が記録ギャップ内に配置される。そして、垂直磁化膜型の構成におけるスピントルク発振が用いられる。このスピントルク発振した状態において、記録ギャップ磁界を利用することで、安定した動作が実現できる。
【0183】
図15は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を例示するグラフ図である。 図15の横軸は、積層膜71(STO)に印加される磁界Haである。磁界Haは、垂直磁界である。磁界Haの大きさは、例えば、電磁石66aの周りのコイル75cに流れるコイル電流の大きさに対応する。磁界Haの大きさは、例えば、磁気記録媒体80に印加される記録磁界の大きさと連動する。図15の縦軸は、積層膜71の抵抗RRである。
【0184】
図15に表したように、書き込み動作WOにおいては、磁界Haは比較的大きい。書き込み動作WOの際の磁界Haの大きさは、例えば、約10kOeである。
【0185】
一方、再生動作ROにおいては、積層膜71に印加される磁界Haの大きさは、書き込み動作WOのときの磁界Haよりも小さい。そして、この状態において、磁気記録媒体80の媒体磁界80hが積層膜71に印加される。そして、媒体磁界80hに応じて積層膜71の抵抗RRが変化する。この例では、第1抵抗R1と第2抵抗R2との間で、抵抗RRが変化する。そして、既に説明したように、抵抗RRの変化は、媒体磁界80hに対して実質的に線形である。
【0186】
図16は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の動作を例示するグラフ図である。 同図の横軸は、STO(具体的には磁化自由層32)におけるスピントルク発振の周波数fsである。縦軸は、印加される高周波によって磁気記録媒体80の保磁力が低減する程度を表す媒体保磁力低減効果Hcdである。
【0187】
図16に表したように、書き込み動作WOにおけるスピントルク発振の周波数fsは、媒体固有周波数fmに近い値(書き込み動作時周波数範囲fw)に設定される。そして、再生動作ROにおけるスピントルク発振の周波数fsは、媒体固有周波数fmよりも著しく低い(再生時周波数範囲fr)に設定される。このように、磁気記録再生装置151においては、再生動作ROにおける磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、書き込み動作WOにおける高周波磁界の周波数よりも低い。これにより、再生動作RO時に磁気記録媒体80に記録されている媒体磁界が乱されることが抑制される。
【0188】
例えば、再生動作ROにおける磁化自由層32のスピントルク発振の周波数fsは、磁気記録媒体80の強磁性共鳴周波数(媒体固有周波数fm)よりも低い。
【0189】
本実施形態に係る磁気記録再生装置151において、磁化自由層32は、第1磁性層32aと、第1磁性層32aと第1軸(X軸)に沿って積層され、第1磁性層32aの磁化の方向とは反対の方向の磁化を有する第2磁性層32bと、第1磁性層32aと第2磁性層32bとの間に設けられた第1非磁性層32cと、を含むことができる。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が不安定になることが抑制できる。
【0190】
磁気記録再生装置151にいて、磁化自由層32の磁気膜厚は、5nmT未満に設定することが望ましい。これにより、磁気記録媒体80の磁化83の記録状態が安定化する。
【0191】
磁気記録再生装置151において、第1軸に対して垂直な軸に沿った第1磁化固着層31の幅は、第1軸に対して垂直なその軸に沿った磁化自由層32の幅よりも大きいことが望ましい。これにより、磁化自由層32からの反作用スピントルクによる磁化の乱れが抑制できる。また、磁化自由層32のパターニングが容易になる。再生部70の抵抗が低減できる。
【0192】
実施形態によれば、ノイズを抑制した磁気抵抗効果型の磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置が提供される。
【0193】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0194】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気ヘッドに含まれる再生部、積層膜、磁化固着層、磁化自由層、磁性層、非磁性層及び書き込み部など、並びに、磁気ヘッドアセンブリに含まれるヘッドスライダ、サスペンション及びアクチュエータアーム、並びに、磁気記録再生装置に含まれる磁気記録媒体などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。例えば、上記実施形態の中で説明した材料、組成、膜厚なども一例であり、種々の選択が可能である。
【0195】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0196】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録再生装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0197】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0198】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0199】
3…ヘッドスライダ、 3A…空気流入側、 3B…空気流出側、 4…スピンドルモータ、 10…スピントルク発振子、 21…第2非磁性層、 22…第2磁化固着層、 22h…第2磁化固着層磁化、 23…第3磁化固着層、 23h…第3磁化固着層磁化、 31…第1磁化固着層、 31h…第1磁化固着層磁化、 32…磁化自由層、 32a…第1磁性層、 32b…第2磁性層、 32c…第1非磁性層、 32h…磁化自由層磁化、 33…下地層、 34…中間層、 60…書き込み部(書き込みヘッド部)、 61…主磁極、 62…書き込み部リターンパス、 65a…電磁石、 65b…リターンパス、 65c…導波路層、 65d…近接場光発生部、 65e…加熱部、 66a…電磁石、 66b…対向部、 70…再生部(再生ヘッド部)、 70s…媒体対向面、 71…積層膜、 72a…第1磁気シールド、 72b…第2磁気シールド、 73…電極、 73a…第1電極、 73b…第2電極、 74…電磁石部、 74a…電磁石、 74b…再生部リターンパス、 74d…電気抵抗調整層、 75…磁界印加部、 75a…第1電流供給部、 75b…第2電流供給部、 75c…コイル、 80…磁気記録媒体、 80h…媒体磁界、 81…磁気記録層、 82…媒体基板、 83…磁化、 85…媒体移動方向、 110、111、113、114、115、121、131…磁気ヘッド、 150、151…磁気記録再生装置、 154…サスペンション、 155…アクチュエータアーム、 156…ボイスコイルモータ、 157…軸受部、 158…ヘッドジンバルアセンブリ、 160…ヘッドスタックアセンブリ、 161…支持フレーム、 162…コイル、 180…記録用媒体ディスク、 190…信号処理部、 195…制御部、 196…制御信号部、 A…矢印、 H…磁界、 Ha…磁界、 Hb…バイアス磁界、 Hcd…媒体保持力低減効果、 I1…電流、 R1、R2…第1、第2抵抗、 RO…再生動作、 RR…抵抗、 ST1〜ST4…第1〜第4状態、 Va…電圧、 WO…書き込み動作、 dR…抵抗変化、 f1…周波数、 fm…媒体固有周波数、 fr…再生時周波数範囲、 fr1、fr2…第1及び第2周波数範囲、 fs…周波数、 fw…書き込み動作時周波数範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する再生部を備え、
前記再生部は、
垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層と、
前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層と、
を含む積層膜と、
前記積層膜と前記第1軸に沿って積層され、前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を前記積層膜に加える磁界印加部と、
を含み、
前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ、前記磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、前記媒体磁界に応じて前記積層膜の抵抗が変化することを特徴とすることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
磁気記録媒体に情報を記録する書き込み動作において前記磁気記録媒体に記録磁界を印加する電磁石と、
前記電磁石と並置され、前記書き込み動作の際に前記磁気記録媒体を局所的に加熱する加熱部と、
前記電磁石と並置され、前記磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する再生部と、
を備え、
前記再生部は、
垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層と、
前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層と、
を含む積層膜と、
を含み、
前記磁気記録媒体に記録された前記媒体磁界を検出する再生動作において、前記電磁石から前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界が前記積層膜に加えられ、前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ、前記磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、前記媒体磁界に応じて前記積層膜の抵抗が変化することを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項3】
前記加熱部は、
前記電磁石と並置された光を導波する導波路層と、
前記電磁石と前記導波路層との間に設けられ、前記書き込み動作の際に、前記導波路層を導波された前記光に基づいて前記磁気記録媒体を局所的に加熱する近接場光を発生する近接場光発生部と、
を含むことを特徴とする請求項2記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記磁化自由層は、
前記第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1軸に沿って積層され、前記第1磁性層の磁化の方向とは反対の方向の磁化を有する第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記磁化自由層の磁気膜厚は、5ナノメートル・テスラ未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記磁化自由層の前記スピントルク発振の周波数は、前記磁気記録媒体の強磁性共鳴周波数よりも高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記磁化自由層の前記スピントルク発振の周波数は、前記磁気記録媒体の強磁性共鳴周波数よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記第1軸に対して垂直な軸に沿った前記第1磁化固着層の幅は、前記第1軸に対して垂直な前記軸に沿った前記磁化自由層の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記磁界印加部は、
前記積層膜に積層され、垂直磁気異方性を有し、前記第1磁化固着層の前記磁化の方向に磁化が固着された第2磁化固着層と、
前記積層膜と前記第2磁化固着層との間に設けられた第2非磁性層と、
を含み、
前記第1磁化固着層と前記第2非磁性層との間に前記磁化自由層が配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
前記磁界印加部は、
前記磁化自由層と接し、前記第1磁化固着層の前記磁化の方向とは反対の方向に磁化が固着された第3磁化固着層を含み、
前記第1磁化固着層と前記第3磁化固着層との間に前記磁化自由層が配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
前記磁界印加部は、前記バイアス磁界を前記積層膜に加える電磁石部を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを一端に搭載するサスペンションと、
前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、
を備えたことを特徴とする磁気ヘッドアセンブリ。
【請求項13】
請求項12記載の磁気ヘッドアセンブリと、
前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気ヘッドを用いて情報が再生される前記磁気記録媒体と、
を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項14】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対向する電磁石と、
前記電磁石と並置された積層膜であって、
垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層と、
前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層と、
を含む積層膜と、
を含む磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドに接続された制御部と、
を備え、
前記磁気記録媒体に情報を記録する書き込み動作において、
前記制御部は、
前記電磁石に、前記磁気記録媒体に記録磁界を印加させ、
前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ電流を流して、前記磁化自由層をスピントルク発振させて高周波磁界を発生させ、
前記磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する再生動作において、
前記制御部は、
前記電磁石に、前記書き込み動作における前記記録磁界よりも小さい絶対値を有し、前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を前記積層膜に印加させ、
前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ電流を流して、前記磁化自由層を、前記書き込み動作における前記高周波磁界よりも低い周波数でスピントルク発振させ、
前記再生動作において、前記積層膜の抵抗は前記媒体磁界に応じて変化することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項1】
磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する再生部を備え、
前記再生部は、
垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層と、
前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層と、
を含む積層膜と、
前記積層膜と前記第1軸に沿って積層され、前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を前記積層膜に加える磁界印加部と、
を含み、
前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ、前記磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、前記媒体磁界に応じて前記積層膜の抵抗が変化することを特徴とすることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
磁気記録媒体に情報を記録する書き込み動作において前記磁気記録媒体に記録磁界を印加する電磁石と、
前記電磁石と並置され、前記書き込み動作の際に前記磁気記録媒体を局所的に加熱する加熱部と、
前記電磁石と並置され、前記磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する再生部と、
を備え、
前記再生部は、
垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層と、
前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層と、
を含む積層膜と、
を含み、
前記磁気記録媒体に記録された前記媒体磁界を検出する再生動作において、前記電磁石から前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界が前記積層膜に加えられ、前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ、前記磁化自由層がスピントルク発振する値以上の電流が流されたときに、前記媒体磁界に応じて前記積層膜の抵抗が変化することを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項3】
前記加熱部は、
前記電磁石と並置された光を導波する導波路層と、
前記電磁石と前記導波路層との間に設けられ、前記書き込み動作の際に、前記導波路層を導波された前記光に基づいて前記磁気記録媒体を局所的に加熱する近接場光を発生する近接場光発生部と、
を含むことを特徴とする請求項2記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記磁化自由層は、
前記第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1軸に沿って積層され、前記第1磁性層の磁化の方向とは反対の方向の磁化を有する第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記磁化自由層の磁気膜厚は、5ナノメートル・テスラ未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記磁化自由層の前記スピントルク発振の周波数は、前記磁気記録媒体の強磁性共鳴周波数よりも高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記磁化自由層の前記スピントルク発振の周波数は、前記磁気記録媒体の強磁性共鳴周波数よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記第1軸に対して垂直な軸に沿った前記第1磁化固着層の幅は、前記第1軸に対して垂直な前記軸に沿った前記磁化自由層の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記磁界印加部は、
前記積層膜に積層され、垂直磁気異方性を有し、前記第1磁化固着層の前記磁化の方向に磁化が固着された第2磁化固着層と、
前記積層膜と前記第2磁化固着層との間に設けられた第2非磁性層と、
を含み、
前記第1磁化固着層と前記第2非磁性層との間に前記磁化自由層が配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
前記磁界印加部は、
前記磁化自由層と接し、前記第1磁化固着層の前記磁化の方向とは反対の方向に磁化が固着された第3磁化固着層を含み、
前記第1磁化固着層と前記第3磁化固着層との間に前記磁化自由層が配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
前記磁界印加部は、前記バイアス磁界を前記積層膜に加える電磁石部を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを一端に搭載するサスペンションと、
前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、
を備えたことを特徴とする磁気ヘッドアセンブリ。
【請求項13】
請求項12記載の磁気ヘッドアセンブリと、
前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気ヘッドを用いて情報が再生される前記磁気記録媒体と、
を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項14】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対向する電磁石と、
前記電磁石と並置された積層膜であって、
垂直磁気異方性を有し磁化が固着された第1磁化固着層と、
前記第1磁化固着層と第1軸に沿って積層されスピントルク発振する磁化自由層と、
を含む積層膜と、
を含む磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドに接続された制御部と、
を備え、
前記磁気記録媒体に情報を記録する書き込み動作において、
前記制御部は、
前記電磁石に、前記磁気記録媒体に記録磁界を印加させ、
前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ電流を流して、前記磁化自由層をスピントルク発振させて高周波磁界を発生させ、
前記磁気記録媒体に記録された媒体磁界を検出する再生動作において、
前記制御部は、
前記電磁石に、前記書き込み動作における前記記録磁界よりも小さい絶対値を有し、前記第1軸に沿う成分を有するバイアス磁界を前記積層膜に印加させ、
前記第1磁化固着層から前記磁化自由層へ電流を流して、前記磁化自由層を、前記書き込み動作における前記高周波磁界よりも低い周波数でスピントルク発振させ、
前記再生動作において、前記積層膜の抵抗は前記媒体磁界に応じて変化することを特徴とする磁気記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−203916(P2012−203916A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64252(P2011−64252)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願、「平成21年度、経済通算省、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究 「超高密度ナノビット磁気記録技術(グリーンITプロジェクト)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願、「平成21年度、経済通算省、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究 「超高密度ナノビット磁気記録技術(グリーンITプロジェクト)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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