説明

磁気マッピング装置ならびにその位置決め方法

【課題】簡単、かつ、短時間で正規の取付位置に位置決めすることができる磁気マッピング装置並びにその位置決め方法を提供する。
【解決手段】 移動ステージ31を備えた磁気マッピング装置であって、レーザー光照射方向前方で磁気マッピング装置の設置の際の基準となる基準線L上の位置に取り付けられたヘッドアップディスプレイ2と、このヘッドアップディスプレイ2の前方で基準線Lの延長上に設置されたターゲットボード4とを含み、ヘッドアップディスプレイ2は基準線L上にシンボルマークを表示させ、ターゲットボードは基準線の延長上にターゲットマークを表示させ、レーザー照射器5から照射させたレーザー光をシンボルマークとターゲットマークとに合致するように移動ステージを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドモーショントラッカの使用空間にて磁気マッピング(磁気分布を計測することを磁気マッピングという)を行う磁気マッピング装置に関し、さらに詳細には磁気マッピングを行う際に、磁気マッピング装置を正規の取付位置に設置することができる機能を備えた磁気マッピング装置並びにその位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば航空機のパイロットは、発見した目標物体を見失うことのないように、頭部装着型表示装置により表示される照準画像と、目標物体とが対応したとき、目標物体の位置をロックオンし、それ以後は、演算により目標物体の位置を追尾することが行なわれている。この演算を行うには、航空機の経度、緯度、高度、姿勢に加えて、航空機に対するパイロットの頭部の向きと位置とを測定することが必要となる。
【0003】
また、航空機の搭乗員訓練施設等でバーチャルリアリティ空間を体験させる場合、頭部装着型表示装置の使用者に、その頭部の動きに応じて変化する画像を見せることが要求されるが、その際に、頭部の向きと位置とを測定することが必要となる。
【0004】
一般に、頭部装着型表示装置を使用する者の3次元空間における頭部の向きや位置を計測するための機器として、ヘッドモーショントラッカが使用されている。
そして、このヘッドモーショントラッカのひとつに、磁気ソースを用いて周囲の空間に磁界を発生させておき、頭部装着型表示装置に固定した磁気センサにより磁気を測定し、測定された磁気データから頭部の向きと位置とを算出する交流磁気方式のものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−81904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交流磁気方式のヘッドモーショントラッカでは、周囲に存在する金属の影響を受けて頭部の向きや位置に関する出力結果に測定誤差が生じることを防ぐため、磁気マッピング装置により正確な磁気分布を予め調べて、磁気マッピングを行っている。
磁気マッピング装置は、三次元方向に移動可能な移動ステージを備えており、磁気マッピングを行う際に、磁気センサをこの移動ステージを用いて移動させ、空間内の多数の測定点で磁気データを採取する。そして、採取した各測定点の磁気データに基づいて磁気マッピングを行う。
【0006】
ところで、測定対象空間の磁気マッピングを誤差なく正確に行うためには、測定対象空間に磁気マッピング装置を取り付ける際に、測定対象空間の基準となる方向(基準線方向)に、磁気マッピング装置側の基準方向を誤差なく正確に合わせることが前提となる。しかし、この取付作業は、磁気マッピング装置の現在の取付位置および取付方向を正確に把握して、適正位置に調整するための作業(アライメント作業)を行う必要があり、精密な位置測定機器や水平器等の器具を別途必要とする。また、取付作業は大変面倒であって時間がかかり、また一人で取付位置の位置決め作業を行うことが困難であるといった問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解消し、一人で簡単に、かつ、短時間で磁気マッピング装置を正規の取付位置に設置することができる磁気マッピング装置並びにその位置決め方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明にかかる磁気マッピング装置は、三次元方向に移動可能な移動ステージに磁気センサを取り付け、磁気センサを移動することにより空間の磁気分布を測定する磁気マッピング装置であって、移動ステージに固定したレーザー照射器と、レーザー光照射方向前方で磁気マッピング装置を設置する際の基準となる基準線上の位置に取り付けられたヘッドアップディスプレイと、このヘッドアップディスプレイの前方で基準線の延長上に設置されたターゲットボードとを含み、ヘッドアップディスプレイは基準線上にシンボルマークを表示させ、ターゲットボードは基準線の延長上にターゲットマークを表示させ、レーザー照射器から照射させたレーザー光をシンボルマークとターゲットマークとに合致するように移動ステージを設置することにより磁気マッピング装置を適正取付位置に位置決めするようにしている。
【0009】
上記発明において、レーザー照射器が、図形マークを照射するレーザー墨出器であり、シンボルマーク並びにターゲットマークはレーザー墨出器から照射される図形マークと同じ図形で形成されるようにしてもよい。
【0010】
また、上記発明において、磁気マッピング装置の移動ステージに固定したレーザー照射器からのレーザー光照射方向前方で磁気マッピング装置の設置の際の基準となる基準線上に取り付けられたヘッドアップディスプレイにシンボルマークを表示させ、ヘッドアップディスプレイの前方で基準線の延長上に設置されたターゲットボードにターゲットマークを表示させ、レーザー照射器から照射させたレーザー光を前記シンボルマークとターゲットマークとに合致するように移動ステージを設置することにより磁気マッピング装置を位置決めするようにしてもよい。
たことを特徴とする磁気マッピング装置の位置決め方法。
レーザー照射器が、図形を照射するレーザー墨出器であり、シンボルマーク並びにターゲットマークは、レーザー墨出器から照射される図形と同じ図形で形成するのが好ましい。
【0011】
また、別の観点からなされた本発明の磁気マッピング装置の位置決め方法は、移動ステージに磁気センサを取り付けて磁気センサを移動することにより空間の磁気分布を測定する磁気マッピング装置の移動ステージに固定したレーザー照射器からレーザー光を照射し、レーザー光照射方向前方に取り付けられたヘッドアップディスプレイにおいて、磁気マッピング装置を設置する際の基準となる基準線上にシンボルマークを表示させ、ヘッドアップディスプレイの前方に設置されたターゲットボードにおいて、基準線の延長上にターゲットマークを表示させ、レーザー照射器から照射させたレーザー光をシンボルマークとターゲットマークとに合致するように移動ステージを調整することにより磁気マッピング装置を位置決めするようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザー照射器から照射させたレーザー光をシンボルマークとターゲットマークとに合致するように移動ステージを移動調整する。シンボルマークとターゲットマークとは、それぞれ基準線、基準線の延長上に存在することから、これらに合致させることにより、レーザー照射器の出射点も基準線上に配置されることになる。このようにしてレーザー照射器の位置を定めることにより、レーザー照射器を固定している移動ステージも基準線上に合わせることができる。このようにして、一人で簡単に、且つ、短時間で磁気マッピング装置を正規の取付位置に修正することが可能となる。殊に、航空機ではコクピットに設置されているヘッドアップディスプレイと、このヘッドアップディスプレイを正規の位置に取り付けるときに使用された取り付け校正用のターゲットボードを利用することができるので、従来のような精密な位置測定機器等の器具を使用することなく、一人で容易に修正作業をおこなうことができるといった優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の詳細を図に示した実施例に基づき説明する。図1は本発明にかかるマッピング装置を航空機のコクピットに取り付けた側面図であって、ターゲットボードを航空機前方に配置した状態を示し、図2はその側面図、図3はコクピット部分の概略的な平面図であり、図4はアライメント作業時のレーザー光の軌跡を示す説明図であり、図5はレーザー光をシンボルマークとターゲットマークに合致させた状態を示す説明図である。
【0014】
図1〜図3において、符号Aは航空機の機体Bにおけるコクピット部分を示すものであって、機体Bの前後方向に延びるセンターラインL(基準線)に沿って搭乗者座席1が設置されており、搭乗者座席1の前方にはヘッドアップディスプレイ2が設置されている。
このヘッドアップディスプレイ2は、その表示画面21の左右方向の中心が前記センターラインLの線上となるように配置されている。すなわち、搭乗者の座席がひとつあるいは一列に並ぶ航空機では、一般に、ヘッドアップディスプレイ2はセンターラインLに合わせて設置され、表示画面の中心がセンターラインL上にくるようにしてある。
【0015】
そして、搭乗者座席1とヘッドアップディスプレイ2との間に、磁気マッピング装置3が取り付けられている。この磁気マッピング装置3は、3次元方向に移動可能な移動ステージ31に磁気センサが取り付けてあり、交流磁気測定方式ヘッドモーショントラッカを使用する際、周囲の金属の影響による測定誤差を取り除くために、実際にヘッドモーショントラッカを使用するに先だって、ヘッドモーショントラッカを使用する空間に一時的に取り付けて、X、Y、Zの直交する各軸方向において磁気センサを一定間隔毎に位置決めし、各位置での磁気データを収集するものである。
【0016】
この磁気マッピング装置3の移動ステージ31上に、図形マークを照射するレーザー照射器5が取り付けられている。本実施例では、このレーザー照射器5は、中心に交点を有するプラス図形(十字マーク)をプラス形の出射口から照射するレーザー墨出器で形成されている。
【0017】
更に、前記センターラインLの延長線上で航空機の機体B前方の位置(例えば10m程度前方の位置)に、ターゲットボード4が設置される。このターゲットボード4は、ヘッドアップディスプレイ2の表示画面(コンバイナ)21を、コクピットの適正位置(センターラインLに沿った位置)に取り付けるときに指標として使用されるものであって、ヘッドアップディスプレイ2を機体Bに設置する際に、センターラインLの線上で航空機の機体Bの下部に着脱自在に取り付けられた第2のレーザー照射器6から照射されるレーザー光を基準としてセンターラインLの延長線上の位置に設置して使用されるものである。従って、ヘッドアップディスプレイ設置時と同様の方法によりターゲットボード4をセンターラインLの延長線上に設置することができる。
【0018】
このターゲットボード4には、レーザー照射器5から照射される図形マークと同じプラス図形のターゲットマーク4aが形成され、また、ヘッドアップディスプレイ2の表示画面(コンバイナ)21には同様にプラス図形のターゲットマーク21aが表示されるように形成されている。そしてレーザー照射器5から照射されたレーザー光のプラス図形が、図5に示すようにヘッドアップディスプレイ2の表示装置(コンバイナ)21を通過してシンボルマーク21aとターゲットマーク4aの図形と完全に合致した位置が、マッピング装置3の正規の取付位置となるように設定され、レーザー出射位置を基準に移動ステージの原点を定めて磁気マッピングが行われるようになる。
【0019】
今、磁気マッピング装置3の移動ステージ31が図3に示すように正規の取付位置から少しずれた位置に取り付けられていたとする。これをレーザー照射器5から照射されるレーザー光の軌跡でみると、例えば図4に示すようにレーザー光の図形がヘッドアップディスプレイ2のシンボルマーク21aとターゲットボード4のターゲットマーク4aに対しその交点が少し外れた位置となる。従って、レーザー光の図形を図5のように、シンボルマーク21aとターゲットマーク4aの図形に完全に合致するまで移動ステージ31を移動調整することにより、磁気マッピング装置3を正規の取付位置並びに姿勢に簡単に修正することができる。移動ステージをXYZ方向に移動するだけでは合致させることができない場合は、回転方向のずれが生じているので、移動ステージを回転させる調整機構を備えている場合は、回転調整機構を作動させて調整する。回転調整機構を備えていないときは磁気マッピング装置自体を回転させる。
【0020】
レーザー照射器5から照射されるレーザー光の図形及びシンボルマーク21aやターゲットマーク4aの図形は、上記したような交点を有するプラス図形に限るものでなく、レーザー光の焦点を両マークの同一点で正確に合致させることができる図形であればどのようなものであってもよく、また点であってもよい。
【0021】
上記実施形態は、航空機のコクピットの場合であるが、これに限らず、例えばパイロット訓練用のバーチャルリアリティ空間のシミュレーション装置についての磁気マッピングなどにおいても同様の方法で磁気マッピング装置を位置決めすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、交流磁気測定方式のヘッドモーショントラッカを使用する際に、磁気補正データ取得領域にて磁気マッピングを行う磁気マッピング装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかるマッピング装置を航空機のコクピットに取り付けた状態を示す側面図であって、ターゲットボードを航空機前方に配置した状態を示す。
【図2】図1の状態の平面図。
【図3】コクピット部分の概略的な拡大平面図。
【図4】アライメント作業時のレーザー光の軌跡を示す説明図。
【図5】レーザー光をシンボルマークとターゲットマークに合致させた状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0024】
A コクピット
B 航空機の機体
1 搭乗者席
2 ヘッドアップディスプレイ
21 表示画面
21a シンボルマーク
3 磁気マッピング装置
31 移動ステージ
4 ターゲットボード
4a ターゲットマーク
5 レーザー照射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元方向に移動可能な移動ステージに磁気センサを取り付け、磁気センサを移動することにより空間の磁気分布を測定する磁気マッピング装置であって、移動ステージに固定したレーザー照射器と、レーザー光照射方向前方で磁気マッピング装置を設置する際の基準となる基準線上の位置に取り付けられたヘッドアップディスプレイと、このヘッドアップディスプレイの前方で基準線の延長上に設置されたターゲットボードとを含み、ヘッドアップディスプレイは基準線上にシンボルマークを表示させ、ターゲットボードは基準線の延長上にターゲットマークを表示させ、レーザー照射器から照射させたレーザー光をシンボルマークとターゲットマークとに合致するように移動ステージを設置することにより磁気マッピング装置を適正取付位置に位置決めするようにしたことを特徴とする磁気マッピング装置。
【請求項2】
前記レーザー照射器が、図形マークを照射するレーザー墨出器であり、前記シンボルマーク並びにターゲットマークはレーザー墨出器から照射される図形マークと同じ図形で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気マッピング装置。
【請求項3】
移動ステージに磁気センサを取り付けて磁気センサを移動することにより空間の磁気分布を測定する磁気マッピング装置の移動ステージに固定したレーザー照射器からレーザー光を照射し、レーザー光照射方向前方に取り付けられたヘッドアップディスプレイにおいて、磁気マッピング装置を設置する際の基準となる基準線上にシンボルマークを表示させ、ヘッドアップディスプレイの前方に設置されたターゲットボードにおいて、基準線の延長上にターゲットマークを表示させ、レーザー照射器から照射させたレーザー光をシンボルマークとターゲットマークとに合致するように移動ステージを調整することにより磁気マッピング装置を位置決めするようにしたことを特徴とする磁気マッピング装置の位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−225291(P2007−225291A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43320(P2006−43320)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】