磁気抵抗効果素子及び磁気記録再生装置
【課題】本発明は、MR変化率の高い磁気抵抗効果素子及びそれを用いた磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】キャップ層と、磁化固着層と、前記キャップ層と前記磁化固着層との間に設けられた磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられたトンネル絶縁スペーサ層と、前記磁化固着層中、前記磁化固着層と前記トンネル絶縁スペーサ層との間、前記トンネル絶縁スペーサ層と前記磁化自由層との間、前記磁化自由層中、及び前記磁化自由層と前記キャップ層との間の何れかに設けられ、Zn、In、Sn、及びCdから選択される少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、及びNiから選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物を有する機能層と、を備えた積層体と、前記積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極と、を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【解決手段】キャップ層と、磁化固着層と、前記キャップ層と前記磁化固着層との間に設けられた磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられたトンネル絶縁スペーサ層と、前記磁化固着層中、前記磁化固着層と前記トンネル絶縁スペーサ層との間、前記トンネル絶縁スペーサ層と前記磁化自由層との間、前記磁化自由層中、及び前記磁化自由層と前記キャップ層との間の何れかに設けられ、Zn、In、Sn、及びCdから選択される少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、及びNiから選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物を有する機能層と、を備えた積層体と、前記積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極と、を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子及びそれを用いた磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子の品質を向上させる上で、MR変化率を増大させることが重要である。MR変化率を増大させる目的で、磁気抵抗効果素子の構成の改変やスペーサ層の材料の選択等が行われている。例えば、強磁性層の層中あるいは、これらと非磁性スペーサ層との界面に、酸化物あるいは窒化物からなる薄膜のスピンフィルター層(Spin Filter:SF)を挿入した磁気抵抗効果素子が提案されている。このSF層は、アップスピン電子又はダウンスピン電子の何れか一方の通電を阻害するスピンフィルター効果を有するために、MR(Magnetro Resistance)変化率を増大させることができる。このように、磁気抵抗効果素子に対して様々な改良がなされているものの、更なるMR変化率の増大が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−6589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、MR変化率の高い磁気抵抗効果素子及びそれを用いた磁気記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、キャップ層と、磁化固着層と、前記キャップ層と前記磁化固着層との間に設けられた磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられたトンネル絶縁スペーサ層と、前記磁化固着層中、前記磁化固着層と前記トンネル絶縁スペーサ層との間、前記トンネル絶縁スペーサ層と前記磁化自由層との間、前記磁化自由層中、及び前記磁化自由層と前記キャップ層との間の何れかに設けられ、Zn、In、Sn、及びCdから選択される少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、及びNiから選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物を有する機能層と、を備えた積層体と、前記積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図2】第1の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図3】第2の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図4】第3の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図5】第4の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図6】第5の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図7】第6の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図8】第2の実施形態に係る磁気ヘッドの構成を示す図。
【図9】磁気ヘッドの構成を示す図。
【図10】第3の実施形態に係る磁気記録再生装置の構成を示す図。
【図11】ヘッドスライダの構成を示す図。
【図12】ヘッドスタックアッセンブリの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。また、以下説明する図面において、符号が一致するものは、同様のものを示しており、重複した説明は省略する。
【0008】
本発明は、スピンバルブ膜を含むTMR(tunnelig magnetoresitance)素子を想定している。スピンバルブ膜とは、2層の強磁性層の間に非磁性スペーサ層を挟んだサンドイッチ構造を有する積層膜であり、抵抗変化を生ずる積層膜構造部位はスピン依存散乱ユニットとも呼ばれる。2層の強磁性層の一方の強磁性層(「ピン層」あるいは「磁化固定層」という)の磁化方向は反強磁性層などで固着される。他方の強磁性層(「フリー層」あるいは「磁化自由層」という)の磁化方向は外部磁界により変化可能である。スピンバルブ膜では、2層の強磁性層の磁化方向の相対角度の変化によって、大きな磁気抵抗効果が得られる。TMR素子では、スピンバルブ膜面に対して垂直方向から電流を流す。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の構成を示す図である。
【0010】
本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10は、磁気抵抗効果素子10を酸化等の劣化から防止するキャップ層19と、磁化が固着された磁化固着層(以下、ピン層と呼ぶ)14と、キャップ層19とピン層14との間に設けられた磁化が自由に回転する磁化自由層(以下、フリー層と呼ぶ)18と、ピン層14とフリー層18との間に設けられた非磁性絶縁体からなる中間層(以下、トンネル絶縁スペーサ層と呼ぶ)16と、トンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に設けられ、少なくともZn、In、Sn、及びCdの何れか1つの元素、並びに少なくともFe、Co、Niの何れか1つの元素を混合した酸化物を含む機能層21と、を備える。ここで、キャップ層19、フリー層18、機能層21、トンネル絶縁スペーサ層16、及びピン層14を含む構成要素が積層されたものを積層体と定義する。
【0011】
また、磁気抵抗効果素子10は、積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極(下電極11および上電極20)を備える。これらの電極は、それぞれ積層体の最も外側の層に接触しており、トンネル絶縁スペーサ層16を基準として、ピン層14側に位置する電極を下電極11と称し、フリー層18側に位置する電極を上電極20と称する。さらに、磁気抵抗効果素子10は、下電極11とピン層14との間に設けられ、ピン層14の磁化方向を固着するための反強磁性体からなるピニング層13、およびピニング層13と下電極11との間に設けられた下地層12を備える。
【0012】
下電極11および上電極20は、磁気抵抗効果素子10の膜面に対して垂直方向に電流を流す。下電極11と上電極20との間に電圧が印加されることで、磁気抵抗効果素子10の内部を膜面垂直方向に沿って電流が流れる。
【0013】
この電流が流れることで、磁気抵抗効果に起因する抵抗の変化を検出することができ、磁気の検知が可能となる。下電極11および上電極20としては、電流を磁気抵抗効果素子10に流すために、電気抵抗が比較的小さいCu、Au等が用いられる。
【0014】
下地層12は、例えば、バッファ層およびシード層が積層した構成をとる。ここで、バッファ層は下電極11側に位置し、シード層はピニング層13側に位置する。
【0015】
バッファ層は下電極11の表面の荒れを緩和し、バッファ層上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層としては、例えばTa、Ti、V、W、Zr、Hf、Cr又はこれらの合金を用いることができる。バッファ層の膜厚は1nm以上10nm以下が好ましく、2nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎるとバッファ効果が失われる。一方、バッファ層の厚さが厚すぎるとMR変化率に寄与しない直列抵抗を増大させることになる。なお、バッファ層上に形成されるシード層がバッファ効果を有する場合には、バッファ層を必ずしも設ける必要はない。好ましい一例として、Taを3nm形成することができる。
【0016】
シード層は、シード層上に積層される層の結晶配位向及び結晶粒径を制御する。シード層としては、fcc構造(face−centered cubic structure:面心立方格子構造)、hcp構造(hexagonal close−packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body−centered cubic structure:体心立方格子構造)を有する金属等が好ましい。
【0017】
例えば、シード層として、hcp構造を有するRuまたはfcc構造を有するNiFeを用いることにより、その上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。また、ピニング層13がIrMnの場合には良好なfcc(111)配向が実現され、ピニング層13がPtMnの場合には規則化したfct(111)構造(face−centered tetragonal structure:面心正方構造)が得られる。また、フリー層18及びピン層14としてfcc金属を用いたときには良好なfcc(111)配向を実現でき、フリー層18及びピン層14としてbcc金属を用いたときには、良好なbcc(110)配向とすることができる。結晶配向を向上させるシード層としての機能を十分発揮するために、シード層の膜厚としては、1nm以上5nm以下が好ましく、1.5nm以上3nm以下がより好ましい。好ましい一例として、Ruを2nm形成することができる。
【0018】
他にも、シード層として、Ruの代わりに、NiFeベースの合金(例えば、NixFe100−x(x=90%〜50%、好ましくは75%〜85%)や、NiFeに第3元素Xを添加して非磁性にした(NixFe100−x)100−yXy(X=Cr、V、Nb、Hf、Zr、Mo))を用いることもできる。NiFeベースのシード層では、良好な結晶配向性を得るのが比較的容易であり、ロッキングカーブの半値幅を3°〜5°とすることができる。
【0019】
シード層には、結晶配向を向上させる機能だけでなく、スピンバルブ膜の結晶粒径を制御する機能もある。具体的には、スピンバルブ膜の結晶粒径を5nm以上20nm以下に制御することができ、磁気抵抗効果素子のサイズが小さくなっても、特性のばらつきを招くことなく高いMR変化率を実現できる。
【0020】
なお、シード層の結晶粒径を5nm以上20nm以下にすることで、結晶粒界による電子乱反射及び非弾性散乱サイトが少なくなる。このサイズの結晶粒径を得るには、Ruを2nm形成する。また、(NixFe100−x)100−yZy(Z=Cr、V、Nb、Hf、Zr、Mo))の場合には、第3元素Xの組成yを0%〜30%程度として(yが0の場合も含む)、2nm形成することが好ましい。
【0021】
スピンバルブ膜の結晶粒径は、シード層とトンネル絶縁スペーサ層16との間に配置された層の結晶粒の粒径によって判別できる(例えば、断面TEMなどによって決定できる)。例えば、ピン層14がトンネル絶縁スペーサ層16よりも下層に位置するボトム型スピンバルブ膜の場合には、シード層の上に形成されるピニング層13(反強磁性層)や、ピン層14(磁化固着層)の結晶粒径によって判別することができる。
【0022】
ピニング層13は、その上に形成されるピン層14となる強磁性層に一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して磁化を固着する機能を有する。ピニング層13の材料としては、PtMn、PdPtMn、IrMn、又はRuRhMnなどの反強磁性材料を用いることができる。この内、高記録密度対応のヘッドの材料として、IrMnが有利である。IrMnは、PtMnよりも薄い膜厚で一方向異方性を印加することができ、高密度記録の為に必要な狭ギャップ化に適している。
【0023】
十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層13の膜厚を適切に設定する。ピニング層13の材料がPtMnやPdPtMnの場合には、膜厚として、8nm以上20nm以下が好ましく、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層13の材料がIrMnの場合には、PtMnなどより薄い膜厚でも一方向異方性を付与可能であり、4nm以上18nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下がより好ましい。好ましい一例として、Ir22Mn78を7nm形成することができる。
【0024】
ピニング層13として、反強磁性層の代わりに、ハード磁性層も用いることができる。ハード磁性層として、例えば、CoPt(Co=50%〜85%)、(CoxPt100−x)100−yCry(x=50%〜85%、y=0%〜40%)、FePt(Pt=40%〜60%)を用いることができる。ハード磁性層(特に、CoPt)は比抵抗が比較的小さいため、直列抵抗および面積抵抗RA(Resistance Area)の増大を抑制できる。
【0025】
ここで、面積抵抗RAとは、磁気抵抗効果素子10の積層膜の積層方向に対して垂直な断面積と磁気抵抗効果素子10の積層膜の膜面に垂直に電流を流したときに一対の電極から得られる抵抗との積を示す。
【0026】
スピンバルブ膜やピニング層13の結晶配向性は、X線回折により測定できる。スピンバルブ膜のfcc(111)ピーク、ピニング層13(PtMn)のfct(111)ピークまたはbcc(110)ピークでのロッキングカーブの半値幅を3.5°〜6°として、良好な配向性を得ることができる。なお、この配向の分散角は断面TEMを用いた回折スポットからも判別することができる。
【0027】
ピン層14は、ピニング層13側から下部ピン層141、磁気結合層142、及び上部ピン層143をこの順に積層した構成をとる。
【0028】
ピニング層13と下部ピン層141は一方向異方性(Unidirectional Anisotropy)を持つように交換磁気結合している。磁気結合層142を挟む下部ピン層141及び上部ピン層143は、磁化の向きが互いに反平行になるように強く結合している。
【0029】
下部ピン層141の材料としては、例えば、CoxFe100−x合金(x=0%〜100%)、NixFe100−x合金(x=0%〜100%)、またはこれらに非磁性元素を添加したものを用いることができる。また、下部ピン層141の材料として、Co、Fe、Niの単元素やこれらの合金を用いることもできる。または、(CoxFe100−x)100−YBX合金(x=0%〜100%、x=0%〜30%)を用いることもできる。(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いた場合、磁気抵抗効果素子の素子サイズが小さくなった場合に素子間のバラツキを抑える観点で好ましい。
【0030】
下部ピン層141の膜厚は2nm以上5nm以下が好ましい。ピニング層13による一方向異方性磁界強度および磁気結合層142を介した下部ピン層141と上部ピン層143との反強磁性結合磁界を強く保つためである。
【0031】
また、下部ピン層141が薄すぎると、MR変化率に影響を与える上部ピン層143も薄くしなければならなくなるため、MR変化率が小さくなる。一方、下部ピン層141が厚すぎるとデバイス動作に必要な十分な一方向性異方性磁界を得ることが困難になる。
【0032】
また、下部ピン層141の磁気膜厚(飽和磁化Bs×膜厚t(Bs・t積))を考慮する場合、上部ピン層143の磁気膜厚とほぼ等しいことが好ましい。つまり、上部ピン層143の磁気膜厚と下部ピン層141の磁気膜厚とが対応することが好ましい。
【0033】
例えば、上部ピン層143がFe40Co40B20[3nm]の場合、薄膜でのFe50Co50の飽和磁化が約1.75Tであるため、磁気膜厚は1.75T×3nm=5.25Tnmとなる。Co75Fe25の飽和磁化が約2.1Tなので、上記と等しい磁気膜厚を与える下部ピン層141の膜厚tは5.25Tnm/2.1T=2.5nmとなる。したがって、この場合、下部ピン層141の膜厚は約2.5nmのCo75Fe25を用いることが好ましい。
【0034】
ここで、‘/’は‘/’の左側に記載されたものから順に積層していることを示し、Au/Cu/Ruと記載された場合、Au層上にCu層を積層し、Cu層上にRu層を積層していることを示す。また、‘×2’とは、2層であることを示し、(Au/Cu)×2と記載された場合、Au層上にCu層を積層し、Cu層上にさらにAu層、Cu層と順次積層していることを示す。また、‘[ ]’はその材料の膜厚を示す。
【0035】
磁気結合層142は、磁気結合層142を挟む下部ピン層141及び上部ピン層143に反強磁性結合を生じさせてシンセティックピン構造を形成する機能を有する。磁気結合層142として、Ruを用いることができ、磁気結合層142の膜厚は0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。なお、磁気結合層142を挟む下部ピン層141及び上部ピン層143に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、Ru以外の材料を用いてもよい。磁気結合層142の膜厚は、RKKY(Ruderman−Kittel−Kasuya−Yosida)結合の2ndピークに対応する膜厚0.8nm以上1nm以下の代わりに、RKKY結合の1stピークに対応する膜厚0.3nm以上0.6nm以下を用いることもできる。ここでは、より高信頼性の結合を安定して特性が得られる、膜厚が0.9nmのRuが一例として挙げられる。
【0036】
上部ピン層143は、MR効果に直接的に寄与する磁性層であり、大きなMR変化率を得るために、この構成材料、膜厚の双方が重要である。特に、トンネル絶縁スペーサ層16との界面に位置する磁性材料は、スピン依存トンネリングに寄与する点で特に重要である。
【0037】
上部ピン層143としては、Fe50Co50を用いることができる。Fe50Co50は、bcc構造を有する磁性材料である。この材料は、スピン依存界面散乱効果が大きいため、大きなMR変化率を実現することができる。bcc構造をもつFeCo系合金として、FexCo100−x(x=30%〜100%)や、FexCo100−xに添加元素を加えたものが挙げられる。そのなかでも、諸特性をすべて満たしたFe40Co60〜Fe80Co20が使いやすい材料の一例である。
【0038】
上部ピン層143が、高MR変化率を実現しやすいbcc構造をもつ磁性層から形成されている場合には、この磁性層の全膜厚が1.5nm以上であることが好ましい。bcc構造を安定に保つためである。スピンバルブ膜に用いられる金属材料は、fcc構造またはfct構造であることが多いため、上部ピン層143のみがbcc構造を有することがあり得る。このため、上部ピン層143の膜厚が薄すぎると、bcc構造を安定に保つことが困難になり、高いMR変化率が得られなくなる。
【0039】
また、上部ピン層143の材料として、(CoxFe100−x)100−YBX合金(x=0%〜100%、x=0%〜30%)を用いることもできる。(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いた場合、磁気抵抗効果素子の素子サイズが小さくなった場合に懸念される結晶粒に起因した素子間のバラツキを抑える観点で好ましい。また、このようなアモルファス合金を用いた場合、上部ピン層143を平坦な膜にすることができるため、上部ピン層143の上に形成されるトンネル絶縁層を平坦化する効果がある。トンネル絶縁層の平坦化は、トンネル絶縁層の欠陥の頻度を減らすことができるため、低い面積抵抗で高いMR変化率を得るために重要である。特に、トンネル絶縁層材料としてMgOを用いる場合、(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いることでその上に形成されるMgO層の(100)配向性を強めることができる。MgO層の(100)配向性は高いMR変化率を得るために重要である。また、(CoxFe100−x)100−YBX合金はアニール時にMgO(100)面をテンプレートとして結晶化するため、MgOと(CoxFe100−x)100−YBX合金の良好な結晶整合を得ることが出来る。このような良好な結晶整合は高いMR変化率を得る観点で重要である。
【0040】
上部ピン層143の膜厚は、厚いほうが大きなMR変化率を得やすいが、大きなピン固着磁界を得るためには薄いほうが好ましく、トレードオフの関係が存在する。例えば、bcc構造をもつFeCo合金層を用いたときには、bcc構造を安定にする必要があるため、1.5nm以上の膜厚が好ましい。また、fcc構造のCoFe合金層を用いるときにも、大きなMR変化率を得るため、やはり1.5nm以上の膜厚が好ましい。一方、大きなピン固着磁界を得るためには、上部ピン層143の膜厚が最大でも、5nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましい。以上のように、上部ピン層143の膜厚は、1.5nm以上5nm以下が好ましく、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
【0041】
上部ピン層143には、bcc構造をもつ磁性材料の代わりに、従来の磁気抵抗効果素子で広く用いられているfcc構造を有するCo90Fe10合金や、hcp構造をもつCoや、Co合金を用いることができる。上部ピン層143として、Co、Fe、又はNiなどの単体金属、若しくはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料を用いることができる。上部ピン層143の磁性材料として、大きなMR変化率を得るのに有利なものは、bcc構造をもつFeCo合金材料、50%以上のコバルト組成をもつコバルト合金、50%以上のNi組成である。
【0042】
また、上部ピン層143として、Co2MnGe、Co2MnSi、Co2MnAlなどのホイスラー磁性合金層を用いることも可能である。
【0043】
トンネル絶縁スペーサ層16は、ピン層14とフリー層18との磁気的な結合を分断する。トンネル絶縁スペーサ層16は、Mg、Al、Ti、Zr、Hf及びZnから選択される少なくとも1つの元素を含む非磁性酸化物とすることができる。特に、MgOはコヒーレントなスピン依存トンネリング現象を示すため、高いMR変化率を得る観点で好ましい。また、トンネル絶縁スペーサ層16の膜厚は1nm以上4nm以下であることが好ましい。
【0044】
フリー層18は、磁化方向が外部磁界によって変化する強磁性体を有する層である。例えば、界面にCoFeを形成してNiFeを用いたCo90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]という二層構成を用いることができる。なお、NiFe層を用いない場合には、Co90Fe10[4nm]単層を用いることができる。また、CoFe/NiFe/CoFeなどの三層構成からなるフリー層18を用いても構わない。
【0045】
フリー層18には、CoFe合金のなかでも、軟磁気特性が安定であることから、Co90Fe10が好ましい。Co90Fe10近傍のCoFe合金を用いる場合には、膜厚を0.5nm以上4nm以下とすることが好ましい。その他、CoxFe100−x(x=70%〜90%)も用いることができる。
【0046】
また、上部ピン層143の材料として、(CoxFe100−x)100−YBX合金(x=0%〜100%、x=0%〜30%)を用いることもできる。(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いた場合、磁気抵抗効果素子の素子サイズが小さくなった場合に懸念される結晶粒に起因した素子間のバラツキを抑える観点で好ましい。また、スペーサ層にMgOを用いた場合には、(CoxFe100−x)100−YBX合金はアニール時にMgO(100)面をテンプレートとして結晶化するため、MgOと(CoxFe100−x)100−YBX合金の良好な結晶整合を得ることが出来る。このような良好な結晶整合は高いMR変化率を得る観点で重要である。
【0047】
また、フリー層18として、1nm以上2nm以下のCoFe層またはFe層と、0.1nm以上0.8nm以下の極薄Cu層とを、複数層交互に積層したものを用いてもよい。
【0048】
また、フリー層18の一部として、CoZrNbなどのアモルファス磁性層を用いても構わない。ただし、アモルファス磁性層を用いる場合でも、MR変化率に大きな影響を与えるスペーサ層16と接する界面は結晶構造を有する磁性層を用いることが必要である。フリー層18の構造としては、スペーサ層16側からみて、次のような構成が可能である。即ち、フリー層18の構造として、(1)結晶層のみ、(2)結晶層/アモルファス層の積層、(3)結晶層/アモルファス層/結晶層の積層、などが考えられる。ここで重要なことは、(1)〜(3)いずれでもスペーサ層16との界面は必ず結晶層が接するようにしていることである。
【0049】
キャップ層19は、スピンバルブ膜を保護する機能を有する。キャップ層19は、例えば、複数の金属層、例えば、Cu層とRu層の2層構造(Cu[1nm]/Ru[10nm])とすることができる。また、キャップ層19として、Ruをフリー層18側に配置したRu/Cu層なども用いることができる。この場合、Ruの膜厚は0.5nm以上2nm以下が好ましい。この構成のキャップ層19は、特に、フリー層18がNiFeからなる場合に好ましい。RuはNiと非固溶な関係にあるので、フリー層18とキャップ層19の間に形成される界面ミキシング層の磁歪を低減できるからである。
【0050】
キャップ層19が、Cu/RuやRu/Cuのいずれの場合も、Cu層の膜厚は0.5nm以上10nm以下が好ましく、Ru層の膜厚は0.5nm以上5nm以下とすることができる。Ruは比抵抗値が高いため、あまり厚いRu層を用いることは好ましくないため、このような膜厚範囲にしておくことが好ましい。
【0051】
キャップ層19として、Cu層やRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層19の構成は特に限定されず、キャップとしてスピンバルブ膜を保護可能なものであれば、他の材料を用いてもよい。但し、キャップ層の選択によってMR変化率や長期信頼性が変わる場合があるので、注意が必要である。CuやRuはこれらの観点からも好ましいキャップ層の材料の例である。
【0052】
機能層21は、アップスピン電子又はダウンスピン電子の透過を制御することができるスピンフィルター効果を有する。機能層21としては、Zn、In、Sn、及びCdの何れか少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、Niの何れか少なくとも1つの元素を混合した酸化物を含むことを特徴とする。具体的には、Fe50Co50とZnの混合酸化物を用いることができる。なお、Znは、In、Sn、及びCdの中でもFe、Co、及びNiと同周期であるために、Fe、Co、及びNiとの混合酸化物となった場合に磁性を帯びやすいので、機能層21の磁化を安定化させることができるので、より好ましい。
【0053】
これらの材料を用いることで、高いスピンフィルター効果と低い抵抗率の実現によるスピンフリップの低減を両立することができているため、磁気抵抗効果素子10のMR変化率を向上させることができる。
【0054】
ここで、低い抵抗率のスピンフィルタリング層を実現するためには、スピンフィルタリング層がZnO、In2O3、SnO2、ZnO、CdO、CdIn2O4、Cd2SnO4、Zn2SnO4などの上記したZn、In、Sn、及びCdを含む酸化物材料を含有することが有効である。これらの酸化物材料が低い抵抗率を示す理由の1つとして、次のことが考えられる。これらの酸化物半導体は、3eV以上のバンドギャップを持つ半導体であるが、化学量論組成から少し還元気味にずれることにより酸素空孔などの真性欠陥がドナー準位を形成するため、伝導電子密度が1018cm−3〜1019cm−3程度まで到達する。これらの導電性酸化物のバンド構造において、価電子帯は主として酸素原子の2p軌道で、伝導帯は金属原子のs軌道で構成されている。キャリア密度フェルミ準位が1018cm−3よりも増えると伝導帯に達し、縮退と呼ばれる状態になる。このような酸化物半導体はn型の縮退半導体と呼ばれ、伝導電子の十分な濃度と移動度を併せ持ち、低い抵抗率を実現する。なお、このような理論に当てはまらないものであっても、低い抵抗率を示すものであれば、そのような酸化物材料を使用することができる。
【0055】
一方、高いスピンフィルター効果を有するスピンフィルタリング層を実現するためには、スピンフィルタリング層が室温で磁性を有するCo、Fe、及びNiの酸化物を含有することが有効である。低い抵抗率を実現するのに有効なZn、In、Sn、及びCdを含む酸化物材料はバルクの特性として磁性を有していない。フリー層やピン層に極薄の酸化物層を挿入した場合、磁性を有していない酸化物材料も磁性を発現してスピンフィルター効果が得られることが特開2004−6589号に開示されているが、Co、Fe、及びNiの酸化物を含有したほうが酸化物層の膜厚の制限に縛られずに容易に磁性を発現して高いスピンフィルター効果が得られる。
【0056】
また、機能層21にさらに添加元素を加えても良い。Zn酸化物に添加元素としてAlを加えた場合、熱耐性があがることが報告されている。Alのほかにも、添加元素としては、B、Ga、In、C、Si、Ge、及びSn等があげられる。耐熱性が向上するメカニズムは完全に明らかとはなっていないが、化学量論組成から還元気味にずれたことにより形成されるZn酸化物中の酸素空孔の密度が、熱による再酸化の促進により減少して、キャリア密度が変わることが起因していると考えられる。他にも耐熱性が向上する理由として、上記したこれらの元素はIII族、またはIV族のドーパントにあたり、これらのドーパントは熱によるZn原子の再酸化の促進を防ぐために、機能層21中のキャリア密度の変化を抑えることができ、さらには熱に対する抵抗率の変化が抑えられるということが挙げられる。
【0057】
機能層21の膜厚は、十分なスピンフィルタリング効果を得るためには0.5nm以上とすることが好ましい。また、より均一な機能層21を得るためには、製造上の装置の依存性を考慮して、1nm以上にすることがさらに好ましい。一方、膜厚の上限は再生ヘッドのリードギャップを広げない観点で10nm以下とすることが好ましい。
【0058】
機能層21を設ける位置は、図1に示されるようなフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16との間だけに限定されない。例えば、図2から7に示されるような位置に挿入することができる。それぞれの詳細については変形例として後述する。
【0059】
なお、スピンの違いが電子の挙動に与える影響は、その電子が強磁性層(フリー層18およびピン層14)と非磁性層(トンネル絶縁スペーサ層16)との界面を通過するときに最も顕著となる。したがって、この界面に機能層21を設けることで、機能層21による効果を高めることができる。すなわち、図1または図4のように、機能層21を、トンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18またはピン層14との間に設けることが好ましい。また、図7のように、フリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16との間に機能層22を設け、且つトンネル絶縁スペーサ層16とピン層14との間に機能層21を設けることがより好ましい。
【0060】
機能層21をフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16の界面に形成する場合、フリー層18は、磁性化合物よりも軟磁気特性に優れる軟磁性膜を用いることにより、磁場応答性をよくすることができる。後述する変形例に示している、フリー層18内部、フリー層18とキャップ層19の界面に機能層21を設ける場合も同様である。フリー層18には、Co、Fe、Niなどの単体金属、またはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料はすべて用いることができる。特に、前述したように、界面にCoFeを形成してNiFeを用いたCo90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]という2層構成や、CoFe/NiFe/CoFeなどの3層構成、Co−Fe合金の単層などを用いることができる。
【0061】
機能層21をピン層14とトンネル絶縁スペーサ層16の界面、ピン層14内部、磁気結合層142とピン層14の界面に形成する場合、上部ピン層143に機能層21よりも一方向にピンされやすい材料を用いることにより、ピン特性をよくすることができる。上部ピン層143の材料としては、Co、Fe、Niなどの単体金属、またはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料はすべて用いることができる。
【0062】
機能層21をフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16の界面、ピン層14とトンネル絶縁スペーサ層6の界面に形成した場合、機能層21のスピンフィルタリング効果によるスピン依存トンネリング効果の増強によるMR変化率の増大を得ることができる。一方、機能層21をフリー層18中、フリー層18とキャップ層19の界面、ピン層14中、上部ピン層141と磁気結合層142の界面に設けた場合においても、機能層21のスピンフィルタリング効果によりスピン依存トンネリング効果を増強することができ、MR変化率を増強することができる。
【0063】
機能層21は、フリー層18またはピン層14に複数設けても良い。例えば、トンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18の界面とフリー層18内部に設けた場合、スピン依存トンネリング効果をさらに増強することができ、高いMR変化率を実現することができる。しかし、機能層21の挿入数が多すぎると、抵抗の増大を招き、スピンフリップが発生してしまうので、挿入数は適切な数に抑える必要がある。例えば、4層程度、フリー層18又はピン層18内に設けることができる。
【0064】
図1に示すように機能層21をフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16の界面に形成した場合、前述したように機能層21はスピン依存トンネリング効果に寄与する。
【0065】
次に、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の製造方法について説明する。
【0066】
本実施形態では、製造する際の形成方法として、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ等のスパッタ法、イオンビームスパッタ法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、およびMBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。
【0067】
最初に、基板上に下電極11を微細加工プロセスによって形成する。次に、下電極11上に、下地層12として例えばTa[1nm]/Ru[2nm]を形成する。Taは下電極11の荒れを緩和等するためのバッファ層に相当する。Ruはその上に形成されるスピンバルブ膜の結晶配向および結晶粒径を制御するシード層に相当する。
【0068】
その後、下地層12上にピニング層13を形成する。ピニング層13の材料としては、PtMn、PdPtMn、IrMn、又はRuRhMn等の反強磁性材料を用いることができる。
【0069】
その後、ピニング層13上にピン層14を形成する。ピン層14は、例えば、下部ピン層141(Co75Fe25[2.5nm])、磁気結合層142(Ru)、および上部ピン層143(Co50Fe50[1nm]/Co40Fe40B20[2nm])からなるシンセティックピン層とすることができる。
【0070】
その後、ピン層14上にトンネル絶縁スペーサ層16を形成する。トンネル絶縁スペーサ層16は、Mg、Al、Ti、Zr、Hf及びZnから選択される少なくとも1つの元素を含む非磁性酸化物を用いて形成される。
【0071】
その後、トンネル絶縁スペーサ層16上に機能層21を形成する。具体的には、上部ピン層143上にFe50Co50とZnの金属層を形成する。ここで、Fe50Co50とZnの金属層は、Fe50Co50/ZnやZn/Fe50Co50や(Fe50Co50/Zn)×2のようなFe50Co50層とZn層の積層体としても良いし、Zn50(Fe50Co50)50のような合金の単層としてもよい。ZnとFe50Co50を含む金属材料に酸化処理を施し、物機能層21を形成する。この変換処理は、希ガスなどのイオンビームまたはプラズマを金属材料層に照射しながら、酸素を供給して行う、イオンアシスト酸化(IAO:Ion assisted Oxidation)を用いることができる。また、上記のイオンアシスト変換処理において、酸素ガスをイオン化またはプラズマ化してもよい。イオンビームの照射による金属材料層へのエネルギーアシストにより、安定で均一な酸化物層を機能層21として形成することができる。また、一層の機能層21を形成するに当たり、上述した金属材料層の形成と変換処理を数回繰り返して行ってもよい。この場合、所定の膜厚の機能層21を一度の形成および変換処理で作成するのではなく、膜厚を分割して薄い膜厚の金属材料層に変換処理を行うほうが好ましい。また、ZnとFe50Co50を含む金属材料層を酸素雰囲気に晒す自然酸化を用いてもよい。ただし、安定な酸化物を形成するためには、エネルギーアシストを用いた酸化方法のほうが好ましい。また、ZnとFe50Co50の金属材料を積層体とした場合は、均一に混合されたZnとFe50Co50の機能層21を形成する上で、イオンビームの照射を行いながら酸化した場合のほうが好ましい。
【0072】
なお、エネルギーアシストの方法として、イオンビームの照射以外に加熱処理などを行ってもよい。この場合、たとえば、金属材料層を形成後に100℃〜300℃の温度で加熱しながら、酸素を供給してもよい。
【0073】
以下、機能層21を形成する場合の変換処理において、イオンビームアシスト処理を行った場合のビーム条件について説明する。変換処理により、機能層21を形成する際に前述した希ガスをイオン化またはプラズマ化して照射する場合、その加速電圧Vを30V〜130V、ビーム電流Ibを20mA〜200mAに設定することが好ましい。これらの条件は、イオンビームエッチングを行う場合の条件と比較すると著しく弱い条件である。イオンビームの換わりにRFプラズマなどのプラズマを用いても同様に機能層21を形成することができる。イオンビームの入射角度は、膜面に対して垂直に入射する場合を0°、膜面に平行に入射する場合を90°と定義して、0°〜80°の範囲で適宜変更する。この工程による処理時間は15秒〜1200秒が好ましく、制御性などの観点から30秒以上がより好ましい。処理時間が長すぎると、磁気抵抗効果素子の生産性が劣るため好ましくない。これらの観点から、処理時間は30秒から600秒が好ましい。
【0074】
イオン又はプラズマを用いた酸化処理の場合、酸素暴露量はIAOの場合には1×103〜1×104L(Langmiur、1L=1×10−6Torr×sec)が好ましい。自然酸化の場合には3×103L〜3×104Lが好ましい。
【0075】
その後、機能層21上にフリー層18を形成する。フリー層18としては、例えば、Fe50Co50[1nm]/Ni85Fe15[3.5nm]を形成する。
【0076】
その後、フリー層18上にキャップ層19を形成する。キャップ層19としては、例えば、Cu[1nm]/Ru[10nm]を形成する。
【0077】
その後、アニール処理を行う。
【0078】
最後に、キャップ層19上に磁気抵抗効果素子10へ垂直通電するための上電極20を形成する。
【0079】
(変形例1)
図2は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第1の変形例を示す図である。
【0080】
本変形例は、機能層21がフリー層18内に設けられている点で第1の実施形態と異なる。また、フリー層18は第1のフリー層18aと第2のフリー層18bからなる。なお、第1のフリー層18aは、トンネル絶縁スペーサ層16と機能層21との間に設けられ、第2のフリー層18bはキャップ層19と機能層21との間に設けられている。
【0081】
フリー層18内に機能層21を形成する場合、第1のフリー層18a上に、トンネル絶縁スペーサ層16、機能層21、第2のフリー層18bの順に形成する。
【0082】
このように、機能層21をフリー層18内に機能層21を設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21は、フリー層18と磁気結合をし、フリー層18と同様に磁化の方向が自由になるので、フリー層18の機能を阻害することなく、磁気抵抗効果素子10のMR変化率の向上に寄与する。さらに、機能層21に含まれる酸素がトンネル絶縁スペーサ層16に拡散することを少なくすることができるため、トンネル絶縁スペーサ層16中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるトンネル絶縁スペーサ層16中でのスピンフリップの発生を抑制して高いMR変化率を得ることができる。
【0083】
(変形例2)
図3は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第2の変形例を示す図である。
【0084】
本変形例は、機能層21がフリー層18とキャップ層19との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0085】
このように、機能層21をフリー層18とキャップ層19との間に設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21は、酸化物であるので、磁気抵抗効果素子10を酸化等の劣化から保護することができる。さらに、機能層21に含まれる酸素がスペーサ層16に拡散することを少なくすることができるため、スペーサ層16中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるスペーサ層16中でのスピンフリップの発生を抑制して高いMR変化率を得ることができる。
【0086】
(変形例3)
図4は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第3の変形例を示す図である。
【0087】
本変形例は、機能層21がピン層14とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0088】
このように、機能層21をピン層14とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けた場合、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21は、酸化物であるので、トンネル絶縁スペーサ層16を構成する材料とピン14層を構成する材料が混ざることを防ぐことができるので、トンネル絶縁スペーサ層16はスピンフリップを抑制させた状態で伝導電子を通過させ、ピン層14の磁化を安定して固着させることができる。
【0089】
(変形例4)
図5は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第4の変形例を示す図である。
【0090】
本変形例は、機能層21が上部ピン層143内に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0091】
このように、機能層21を上部ピン層143内に設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21をトンネル絶縁スペーサ層と接しない位置に配置した場合、機能層21に含まれる酸素のトンネル絶縁スペーサ層への拡散が少なくなるため、トンネル絶縁スペーサ層中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるトンネル絶縁スペーサ層中のスピンフリップを回避して高いMR変化率を得ることができる。
【0092】
(変形例5)
図6は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第5の変形例を示す図である。
【0093】
本変形例は、機能層21が上部ピン層143と磁気結合層142との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0094】
このように、機能層21を上部ピン層143と磁気結合層142との間に設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21をトンネル絶縁スペーサ層と接しない位置に配置した場合、機能層21に含まれる酸素のトンネル絶縁スペーサ層への拡散が少なくなるため、トンネル絶縁スペーサ層中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるトンネル絶縁スペーサ層中のスピンフリップを回避して高いMR変化率を得ることができる。
【0095】
(変形例6)
図7は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第6の変形例を示す図である。
【0096】
本変形例は、機能層21が上部ピン層143とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けられていることに加えて、更に2つ目の機能層22がトンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0097】
なお、機能層21の構成は機能層22と同様であるので説明は省略する。
【0098】
このように、機能層21を上部ピン層143とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けることに加えて、更に2つ目の機能層22をトンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に設けることで、2つの機能層のスピンフィルタリング効果の足し合わせた効果を得ることができるので1層の機能層を用いた場合に比べて高いMR変化率を得ることができる。
【0099】
なお、上記した変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10は、第1の実施形態で説明した磁気抵抗効果素子10の製造方法を用いることで製造することができるので、変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10の製造方法についての説明は省略する。
【0100】
(実施例)
第1の実施形態及び変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10を作製して、下電極11と上電極20間で垂直通電を行うことで磁気抵抗効果素子10のRA値、及び磁気抵抗効果素子10のMR変化率を評価した。
【0101】
(実施例1)
第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10を作製して、RA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図1に示すようにトンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0102】
機能層21の作製方法は、MgOからなるトンネル絶縁スペーサ層16上に、Fe50Co50を1nm形成し、その上にZnを0.6nm形成した。次に、IAOによりZnとFe50Co50の酸化物(以下、Zn−Fe50Co50−Oと表記する)へと変換行い機能層21を形成した。このときの機能層21の膜厚は1.8nmであった。このとき、IAOで用いる酸素曝露量は1.5×104Langmiurとして用いた。次に、機能層21上にFe50Co50[1nm]/Ni85Fe15[3.5nm]を形成してフリー層18を形成した。最後に、280℃で5時間アニール処理を行い、下電極11および上電極20を形成した。
【0103】
なお、機能層の形成方法は、以下の実施例では同様であるので説明は省略する。
【0104】
以下に、本実施例で形成した磁気抵抗効果素子10の構成を示す。
【0105】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18:Fe50Co50[0.5nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は63%であった。
【0106】
(実施例2)
変形例1に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図2に示すようにフリー層18内に機能層21を設けた構造を作製した。
【0107】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18A:(Fe50Co50)80B20[0.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18B:/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は59%であった。
【0108】
(実施例3)
変形例2に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図3に示すようにキャップ層19とフリー層18との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0109】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[1nm]/Ni85Fe15[3nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は54%であった。
【0110】
(実施例4)
変形例3に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図4に示すようにトンネル絶縁スペーサ層16と上部ピン層143との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0111】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[0.5nm]/(Fe50Co50)80B20[1nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[1nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は65%であった。
【0112】
(実施例5)
変形例4に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図5に示すように上部ピン層143内に機能層21を設けた構造を作製した。
【0113】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[0.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
ピン層143B:(Fe50Co50)80B20[1nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[2nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は60%であった。
【0114】
(実施例6)
変形例5に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図6に示すように、上部ピン層143と磁気結合層142との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0115】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
ピン層143B:(Fe50Co50)80B20[1.5nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[2nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は54%であった。
【0116】
(実施例7)
変形例6に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図7に示すように、フリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16との間に機能層22を設け、トンネル絶縁スペーサ層16と上部ピン層143との間にも機能層21を設けた構造を作製した。
【0117】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[0.5nm]/(Fe50Co50)80B20[1nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
機能層22:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[0.5nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は68%であった。
【0118】
(比較例1)
機能層を用いていない磁気抵抗効果素子を作製してRA値及びMR変化率を評価した。
【0119】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[2nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本比較例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は51%であった。
【0120】
実施例1〜7に係る磁気抵抗効果素子10のMR変化率は何れも、比較例1のMR変化率よりも大きな値を示しており、第1の実施形態及び変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10を用いることで、MRの変化率の向上をさせることができることがわかる。
【0121】
MR変化率が向上した理由として、機能層が高いスピンフィルター効果と低い抵抗率の実現によるスピンフリップの低減を両立することができているためと考えられる。酸化物のスピンフィルタリング層は、抵抗率の高い材料となりやすいため、抵抗が高くなりやすい。一般的に、抵抗が高い層を電子が通過する際には、スピン情報を失ってしまうスピンフリップが起こりやすく、スピンフリップが起こるとMR変化率を低減してしまう。酸化物のスピンフィルタリング層では、スピンフリップを低減することでさらにMR変化率を増大できる余地がある。
【0122】
(実施例8〜10)
機能層21の抵抗と、磁気抵抗効果素子10のMR変化率との間の関係を調べた。具体的には、機能層21のみのシート抵抗を測定し、この機能層21と同様に作製した機能層21を含む磁気抵抗効果素子10のMR変化率を測定し、これらの測定結果から、機能層21の抵抗が磁気抵抗効果素子10のMR変化率に与える影響を評価した。
【0123】
機能層21は次のように作製した。厚さ1nmのFeCoの層を形成した後、その上にZnを0.6nmを積層し、IAOによる処理を行って酸化物を形成させた。このサイクルを全部で30回繰り返すことで機能層21を作製した。ここで、IAOで用いる酸素曝露量を、3.0×104Langmiur(比較例3)、1.2×104Langmiur(実施例8)、1.5×104Langmiur(実施例9)または1.8×104Langmiur(実施例10)として4種の機能層21を作製した。
【0124】
一方、機能層21を含む磁気抵抗効果素子10は、以下の層を下電極11に対して順に積層することで作製した。
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[1nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
ここで、機能層21は、上記の単独で作製した機能層21と同様に作製した。すなわち、FeCo[1nm]/Zn[0.6nm]をIAOで処理するサイクルを30回行った。このとき、酸素曝露量を、3.0×104Langmiur(比較例3)、1.2×104Langmiur(実施例8)、1.5×104Langmiur(実施例9)または1.8×104Langmiur(実施例10)として4種の磁気抵抗効果素子10を作製した。
【0125】
単独で作製した機能層21について、シート抵抗を測定した。また、磁気抵抗効果素子10についてRA値およびMR変化率を測定した。それらの結果を、酸素曝露量とともに表1にまとめた。なお、表1には、比較例2として、機能層を設けない以外は実施例8〜10と同様に作製した磁気抵抗効果素子10のRA値およびMR変化率を示した。
【表1】
【0126】
表1からから機能層の抵抗率が5×104μΩcm未満の場合に、MR変化率が向上していることがわかる。
【0127】
上記の結果は、適正な酸素暴露量を用いて、低い抵抗率の機能層21を作製することにより、機能層21内部のスピンフリップを抑制することができたためと考えられる。
【0128】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10を用いた磁気ヘッドについて説明する。
【0129】
図8及び図9は、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10を磁気ヘッドに組み込んだ状態を示す図である。図8は、磁気記録媒体(図示せず)に対向する媒体対向面に対してほぼ平行な方向に磁気抵抗効果素子10を切断した断面図である。図9は、磁気抵抗効果素子10を媒体対向面ABSに対して垂直な方向に切断した断面図である。
【0130】
図8及び図9に例示した磁気ヘッドは、いわゆるハード・アバッテッド(hard abutted)構造を有する。磁気抵抗効果素子10の上下には、下電極11と上電極20とがそれぞれ設けられている。図8において、磁気抵抗効果素子10の両側面には、バイアス磁界印加膜41と絶縁膜42とが積層して設けられている。図9に示すように、磁気抵抗効果素子10の媒体対向面には保護層43が設けられている。
【0131】
磁気抵抗効果素子10に対するセンス電流は、その上下に配置された下電極11および上電極20によって矢印Aで示したように、膜面に対してほぼ垂直方向に通電される。また、左右に設けられた一対のバイアス磁界印加膜41により、磁気抵抗効果素子10にはバイアス磁界が印加される。このバイアス磁界により、磁気抵抗効果素子10のフリー層18の磁気異方性を制御して単磁区化することによりその磁区構造が安定化し、磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズ(Barkhausen noise)を抑制することができる。
【0132】
磁気抵抗効果膜10のS/N比が向上しているので、磁気ヘッドに応用した場合に高感度の磁気再生が可能となる。
【0133】
(第3の実施形態)
次に、本実施形態に係る磁気抵抗効素子10を用いた磁気記録再生装置および磁気ヘッドアセンブリについて説明する。
【0134】
図10は本実施形態に係る磁気記録再生装置を示す斜視図である。
【0135】
図10に示すように、本実施形態に係る磁気記録再生装置310は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。磁気記録媒体230は、スピンドルモータ330に設けられ、駆動制御部(図示せず)からの制御信号に応答するモータ(図示せず)により媒体移動方向270の方向に回転する。磁気記録再生装置310は、複数の磁気記録媒体230を備えてもよい。
【0136】
磁気記録媒体230に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ280は、図11に示すように、磁気抵抗効果素子10を備えた磁気ヘッド140がヘッドスライダ280に設けられる。ヘッドスライダ280は、Al2O3/TiCなどからなり、磁気ディスクなどの磁気記録媒体230の上を、浮上又は接触しながら相対的に運動できるように設計されている。
【0137】
ヘッドスライダ280は薄膜状のサスペンション350の先端に取り付けられている。ヘッドスライダ280は、磁気ヘッド140をヘッドスライダ280の先端付近に設けられている。
【0138】
磁気記録媒体230が回転すると、サスペンション350により押し付け圧力とヘッドスライダ280の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあう。ヘッドスライダ280の媒体対向面は、磁気記録媒体230の表面から所定の浮上量をもって保持される。ヘッドスライダ280が磁気記録媒体230と接触する「接触走行型」としてもよい。
【0139】
サスペンション350は、駆動コイル(図示せず)を保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム360の一端に接続されている。アクチュエータアーム360の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ370が設けられている。ボイスコイルモータ370は、アクチュエータアーム360のボビン部に巻き上げられた駆動コイル(図示せず)と、この駆動コイルを挟み込むように対向して設けられた永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路から構成することができる。
【0140】
アクチュエータアーム360は、軸受部380の上下2箇所に設けられたボールベアリング(図示せず)によって保持され、ボイスコイルモータ370により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気ヘッド140を磁気記録媒体230の任意の位置に移動可能となる。
【0141】
図12(a)は、本実施形態に係る磁気記録再生装置310の一部を構成するヘッドスタックアセンブリ390を示す。
【0142】
図12(b)は、ヘッドスタックアセンブリ390の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))400を示す斜視図である。
【0143】
図12(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ390は、軸受部380と、この軸受部380から延出したヘッドジンバルアセンブリ400と、軸受部380からヘッドジンバルアセンブリ400と反対方向に延出しているとともにボイスコイルモータのコイル410を支持した支持フレーム420を有する。
【0144】
図12(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ400は、軸受部380から延出したアクチュエータアーム360と、アクチュエータアーム360から延出したサスペンション350とを有する。
【0145】
サスペンション350の先端には、第2の実施形態で説明した磁気記録ヘッド140を有するヘッドスライダ280が設けられている。
【0146】
本実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))400は、第2の実施形態で説明した磁気記録ヘッド140と、磁気記録ヘッド140が設けられたヘッドスライダ280と、ヘッドスライダ280を一端に搭載するサスペンション350と、サスペンション350の他端に接続されたアクチュエータアーム360とを備える。
【0147】
サスペンション350は、信号の書き込み及び読み取り用、浮上量調整のためのヒータ用、STO10用のリード線(図示せず)を有し、このリード線とヘッドスライダ280に組み込まれた磁気記録ヘッド140の各電極とが電気的に接続される。電極パッド(図示せず)はヘッドジンバルアセンブリ400に設けられる。本実施形態では、電極パッドは8個設けられる。主磁極200のコイル用の電極パッドが2つ、磁気再生素子190用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、STO10用の電極パッドが2つ設けられている。
【0148】
信号処理部385(図示せず)が、図10に示す磁気記録再生装置310の図面中の背面側に設けられる。信号処理部385は、磁気記録ヘッド140を用いて磁気記録媒体230への信号の書き込みと読み出しを行う。信号処理部385の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ400の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッド140と電気的に結合される。
【0149】
本実施形態に係る磁気記録再生装置310は、磁気記録媒体230と、磁気記録ヘッド140と、磁気記録媒体230と磁気記録ヘッド140とを離間させ、又は、接触させた状態で対峙させながら相対的に移動可能とした可動部と、磁気記録ヘッド140を磁気記録媒体230の所定記録位置に位置あわせする位置制御部と、磁気記録ヘッド140を用いて磁気記録媒体230への書き込みと読み出しを行う信号処理部385とを備える。
【0150】
上記の磁気記録媒体230として、磁気記録媒体230が用いられる。上記の可動部は、ヘッドスライダ280を含むことができる。上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ400を含むことができる。
【0151】
磁気記録再生装置310は、磁気記録媒体230と、ヘッドジンバルアセンブリ400と、ヘッドジンバルアセンブリ400に搭載された磁気記録ヘッド140を用いて磁気記録媒体230への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部385とを備える。
【0152】
本発明の実施形態として上述した磁気ヘッドおよび磁気記録再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記録再生装置および磁気メモリも同様に本発明に係る磁気抵抗効果素子を用いることができる。
【0153】
本発明の実施形態では、ボトム型の磁気抵抗効果素子10について説明したが、ピン層14がスペーサ層16よりも上に形成されたトップ型の磁気抵抗効果素子10でも本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0154】
10…磁気抵抗効果素子、11…下電極、12…下地層、13…ピニング層、14…ピン層(磁化固着層)、16…トンネル絶縁スペーサ層、18…フリー層(磁化自由層)、18a…第1のフリー層、18b…第2のフリー層、19…キャップ層、20…上電極、21、22…機能層、41…バイアス磁界印加膜、42…絶縁膜、43…保護層、140…磁気ヘッド、141…下部ピン層、142…磁気結合層、143…上部ピン層、230…磁気記録媒体、270…媒体移動方向、280…ヘッドスライダ、290…空気流入側、300…空気流出側、310…磁気記録再生装置、330…スピンドルモータ、350…サスペンション、360…アクチュエータアーム、370…ボイスコイルモータ、380…軸受部、385…信号処理部、390…ヘッドスタックアセンブリ、400…磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))、410…コイル、420…支持フレーム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子及びそれを用いた磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子の品質を向上させる上で、MR変化率を増大させることが重要である。MR変化率を増大させる目的で、磁気抵抗効果素子の構成の改変やスペーサ層の材料の選択等が行われている。例えば、強磁性層の層中あるいは、これらと非磁性スペーサ層との界面に、酸化物あるいは窒化物からなる薄膜のスピンフィルター層(Spin Filter:SF)を挿入した磁気抵抗効果素子が提案されている。このSF層は、アップスピン電子又はダウンスピン電子の何れか一方の通電を阻害するスピンフィルター効果を有するために、MR(Magnetro Resistance)変化率を増大させることができる。このように、磁気抵抗効果素子に対して様々な改良がなされているものの、更なるMR変化率の増大が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−6589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、MR変化率の高い磁気抵抗効果素子及びそれを用いた磁気記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、キャップ層と、磁化固着層と、前記キャップ層と前記磁化固着層との間に設けられた磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられたトンネル絶縁スペーサ層と、前記磁化固着層中、前記磁化固着層と前記トンネル絶縁スペーサ層との間、前記トンネル絶縁スペーサ層と前記磁化自由層との間、前記磁化自由層中、及び前記磁化自由層と前記キャップ層との間の何れかに設けられ、Zn、In、Sn、及びCdから選択される少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、及びNiから選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物を有する機能層と、を備えた積層体と、前記積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図2】第1の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図3】第2の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図4】第3の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図5】第4の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図6】第5の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図7】第6の変形例に係る磁気抵抗効果素子の構成を示す図。
【図8】第2の実施形態に係る磁気ヘッドの構成を示す図。
【図9】磁気ヘッドの構成を示す図。
【図10】第3の実施形態に係る磁気記録再生装置の構成を示す図。
【図11】ヘッドスライダの構成を示す図。
【図12】ヘッドスタックアッセンブリの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。また、以下説明する図面において、符号が一致するものは、同様のものを示しており、重複した説明は省略する。
【0008】
本発明は、スピンバルブ膜を含むTMR(tunnelig magnetoresitance)素子を想定している。スピンバルブ膜とは、2層の強磁性層の間に非磁性スペーサ層を挟んだサンドイッチ構造を有する積層膜であり、抵抗変化を生ずる積層膜構造部位はスピン依存散乱ユニットとも呼ばれる。2層の強磁性層の一方の強磁性層(「ピン層」あるいは「磁化固定層」という)の磁化方向は反強磁性層などで固着される。他方の強磁性層(「フリー層」あるいは「磁化自由層」という)の磁化方向は外部磁界により変化可能である。スピンバルブ膜では、2層の強磁性層の磁化方向の相対角度の変化によって、大きな磁気抵抗効果が得られる。TMR素子では、スピンバルブ膜面に対して垂直方向から電流を流す。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の構成を示す図である。
【0010】
本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10は、磁気抵抗効果素子10を酸化等の劣化から防止するキャップ層19と、磁化が固着された磁化固着層(以下、ピン層と呼ぶ)14と、キャップ層19とピン層14との間に設けられた磁化が自由に回転する磁化自由層(以下、フリー層と呼ぶ)18と、ピン層14とフリー層18との間に設けられた非磁性絶縁体からなる中間層(以下、トンネル絶縁スペーサ層と呼ぶ)16と、トンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に設けられ、少なくともZn、In、Sn、及びCdの何れか1つの元素、並びに少なくともFe、Co、Niの何れか1つの元素を混合した酸化物を含む機能層21と、を備える。ここで、キャップ層19、フリー層18、機能層21、トンネル絶縁スペーサ層16、及びピン層14を含む構成要素が積層されたものを積層体と定義する。
【0011】
また、磁気抵抗効果素子10は、積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極(下電極11および上電極20)を備える。これらの電極は、それぞれ積層体の最も外側の層に接触しており、トンネル絶縁スペーサ層16を基準として、ピン層14側に位置する電極を下電極11と称し、フリー層18側に位置する電極を上電極20と称する。さらに、磁気抵抗効果素子10は、下電極11とピン層14との間に設けられ、ピン層14の磁化方向を固着するための反強磁性体からなるピニング層13、およびピニング層13と下電極11との間に設けられた下地層12を備える。
【0012】
下電極11および上電極20は、磁気抵抗効果素子10の膜面に対して垂直方向に電流を流す。下電極11と上電極20との間に電圧が印加されることで、磁気抵抗効果素子10の内部を膜面垂直方向に沿って電流が流れる。
【0013】
この電流が流れることで、磁気抵抗効果に起因する抵抗の変化を検出することができ、磁気の検知が可能となる。下電極11および上電極20としては、電流を磁気抵抗効果素子10に流すために、電気抵抗が比較的小さいCu、Au等が用いられる。
【0014】
下地層12は、例えば、バッファ層およびシード層が積層した構成をとる。ここで、バッファ層は下電極11側に位置し、シード層はピニング層13側に位置する。
【0015】
バッファ層は下電極11の表面の荒れを緩和し、バッファ層上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層としては、例えばTa、Ti、V、W、Zr、Hf、Cr又はこれらの合金を用いることができる。バッファ層の膜厚は1nm以上10nm以下が好ましく、2nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎるとバッファ効果が失われる。一方、バッファ層の厚さが厚すぎるとMR変化率に寄与しない直列抵抗を増大させることになる。なお、バッファ層上に形成されるシード層がバッファ効果を有する場合には、バッファ層を必ずしも設ける必要はない。好ましい一例として、Taを3nm形成することができる。
【0016】
シード層は、シード層上に積層される層の結晶配位向及び結晶粒径を制御する。シード層としては、fcc構造(face−centered cubic structure:面心立方格子構造)、hcp構造(hexagonal close−packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body−centered cubic structure:体心立方格子構造)を有する金属等が好ましい。
【0017】
例えば、シード層として、hcp構造を有するRuまたはfcc構造を有するNiFeを用いることにより、その上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。また、ピニング層13がIrMnの場合には良好なfcc(111)配向が実現され、ピニング層13がPtMnの場合には規則化したfct(111)構造(face−centered tetragonal structure:面心正方構造)が得られる。また、フリー層18及びピン層14としてfcc金属を用いたときには良好なfcc(111)配向を実現でき、フリー層18及びピン層14としてbcc金属を用いたときには、良好なbcc(110)配向とすることができる。結晶配向を向上させるシード層としての機能を十分発揮するために、シード層の膜厚としては、1nm以上5nm以下が好ましく、1.5nm以上3nm以下がより好ましい。好ましい一例として、Ruを2nm形成することができる。
【0018】
他にも、シード層として、Ruの代わりに、NiFeベースの合金(例えば、NixFe100−x(x=90%〜50%、好ましくは75%〜85%)や、NiFeに第3元素Xを添加して非磁性にした(NixFe100−x)100−yXy(X=Cr、V、Nb、Hf、Zr、Mo))を用いることもできる。NiFeベースのシード層では、良好な結晶配向性を得るのが比較的容易であり、ロッキングカーブの半値幅を3°〜5°とすることができる。
【0019】
シード層には、結晶配向を向上させる機能だけでなく、スピンバルブ膜の結晶粒径を制御する機能もある。具体的には、スピンバルブ膜の結晶粒径を5nm以上20nm以下に制御することができ、磁気抵抗効果素子のサイズが小さくなっても、特性のばらつきを招くことなく高いMR変化率を実現できる。
【0020】
なお、シード層の結晶粒径を5nm以上20nm以下にすることで、結晶粒界による電子乱反射及び非弾性散乱サイトが少なくなる。このサイズの結晶粒径を得るには、Ruを2nm形成する。また、(NixFe100−x)100−yZy(Z=Cr、V、Nb、Hf、Zr、Mo))の場合には、第3元素Xの組成yを0%〜30%程度として(yが0の場合も含む)、2nm形成することが好ましい。
【0021】
スピンバルブ膜の結晶粒径は、シード層とトンネル絶縁スペーサ層16との間に配置された層の結晶粒の粒径によって判別できる(例えば、断面TEMなどによって決定できる)。例えば、ピン層14がトンネル絶縁スペーサ層16よりも下層に位置するボトム型スピンバルブ膜の場合には、シード層の上に形成されるピニング層13(反強磁性層)や、ピン層14(磁化固着層)の結晶粒径によって判別することができる。
【0022】
ピニング層13は、その上に形成されるピン層14となる強磁性層に一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して磁化を固着する機能を有する。ピニング層13の材料としては、PtMn、PdPtMn、IrMn、又はRuRhMnなどの反強磁性材料を用いることができる。この内、高記録密度対応のヘッドの材料として、IrMnが有利である。IrMnは、PtMnよりも薄い膜厚で一方向異方性を印加することができ、高密度記録の為に必要な狭ギャップ化に適している。
【0023】
十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層13の膜厚を適切に設定する。ピニング層13の材料がPtMnやPdPtMnの場合には、膜厚として、8nm以上20nm以下が好ましく、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層13の材料がIrMnの場合には、PtMnなどより薄い膜厚でも一方向異方性を付与可能であり、4nm以上18nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下がより好ましい。好ましい一例として、Ir22Mn78を7nm形成することができる。
【0024】
ピニング層13として、反強磁性層の代わりに、ハード磁性層も用いることができる。ハード磁性層として、例えば、CoPt(Co=50%〜85%)、(CoxPt100−x)100−yCry(x=50%〜85%、y=0%〜40%)、FePt(Pt=40%〜60%)を用いることができる。ハード磁性層(特に、CoPt)は比抵抗が比較的小さいため、直列抵抗および面積抵抗RA(Resistance Area)の増大を抑制できる。
【0025】
ここで、面積抵抗RAとは、磁気抵抗効果素子10の積層膜の積層方向に対して垂直な断面積と磁気抵抗効果素子10の積層膜の膜面に垂直に電流を流したときに一対の電極から得られる抵抗との積を示す。
【0026】
スピンバルブ膜やピニング層13の結晶配向性は、X線回折により測定できる。スピンバルブ膜のfcc(111)ピーク、ピニング層13(PtMn)のfct(111)ピークまたはbcc(110)ピークでのロッキングカーブの半値幅を3.5°〜6°として、良好な配向性を得ることができる。なお、この配向の分散角は断面TEMを用いた回折スポットからも判別することができる。
【0027】
ピン層14は、ピニング層13側から下部ピン層141、磁気結合層142、及び上部ピン層143をこの順に積層した構成をとる。
【0028】
ピニング層13と下部ピン層141は一方向異方性(Unidirectional Anisotropy)を持つように交換磁気結合している。磁気結合層142を挟む下部ピン層141及び上部ピン層143は、磁化の向きが互いに反平行になるように強く結合している。
【0029】
下部ピン層141の材料としては、例えば、CoxFe100−x合金(x=0%〜100%)、NixFe100−x合金(x=0%〜100%)、またはこれらに非磁性元素を添加したものを用いることができる。また、下部ピン層141の材料として、Co、Fe、Niの単元素やこれらの合金を用いることもできる。または、(CoxFe100−x)100−YBX合金(x=0%〜100%、x=0%〜30%)を用いることもできる。(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いた場合、磁気抵抗効果素子の素子サイズが小さくなった場合に素子間のバラツキを抑える観点で好ましい。
【0030】
下部ピン層141の膜厚は2nm以上5nm以下が好ましい。ピニング層13による一方向異方性磁界強度および磁気結合層142を介した下部ピン層141と上部ピン層143との反強磁性結合磁界を強く保つためである。
【0031】
また、下部ピン層141が薄すぎると、MR変化率に影響を与える上部ピン層143も薄くしなければならなくなるため、MR変化率が小さくなる。一方、下部ピン層141が厚すぎるとデバイス動作に必要な十分な一方向性異方性磁界を得ることが困難になる。
【0032】
また、下部ピン層141の磁気膜厚(飽和磁化Bs×膜厚t(Bs・t積))を考慮する場合、上部ピン層143の磁気膜厚とほぼ等しいことが好ましい。つまり、上部ピン層143の磁気膜厚と下部ピン層141の磁気膜厚とが対応することが好ましい。
【0033】
例えば、上部ピン層143がFe40Co40B20[3nm]の場合、薄膜でのFe50Co50の飽和磁化が約1.75Tであるため、磁気膜厚は1.75T×3nm=5.25Tnmとなる。Co75Fe25の飽和磁化が約2.1Tなので、上記と等しい磁気膜厚を与える下部ピン層141の膜厚tは5.25Tnm/2.1T=2.5nmとなる。したがって、この場合、下部ピン層141の膜厚は約2.5nmのCo75Fe25を用いることが好ましい。
【0034】
ここで、‘/’は‘/’の左側に記載されたものから順に積層していることを示し、Au/Cu/Ruと記載された場合、Au層上にCu層を積層し、Cu層上にRu層を積層していることを示す。また、‘×2’とは、2層であることを示し、(Au/Cu)×2と記載された場合、Au層上にCu層を積層し、Cu層上にさらにAu層、Cu層と順次積層していることを示す。また、‘[ ]’はその材料の膜厚を示す。
【0035】
磁気結合層142は、磁気結合層142を挟む下部ピン層141及び上部ピン層143に反強磁性結合を生じさせてシンセティックピン構造を形成する機能を有する。磁気結合層142として、Ruを用いることができ、磁気結合層142の膜厚は0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。なお、磁気結合層142を挟む下部ピン層141及び上部ピン層143に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、Ru以外の材料を用いてもよい。磁気結合層142の膜厚は、RKKY(Ruderman−Kittel−Kasuya−Yosida)結合の2ndピークに対応する膜厚0.8nm以上1nm以下の代わりに、RKKY結合の1stピークに対応する膜厚0.3nm以上0.6nm以下を用いることもできる。ここでは、より高信頼性の結合を安定して特性が得られる、膜厚が0.9nmのRuが一例として挙げられる。
【0036】
上部ピン層143は、MR効果に直接的に寄与する磁性層であり、大きなMR変化率を得るために、この構成材料、膜厚の双方が重要である。特に、トンネル絶縁スペーサ層16との界面に位置する磁性材料は、スピン依存トンネリングに寄与する点で特に重要である。
【0037】
上部ピン層143としては、Fe50Co50を用いることができる。Fe50Co50は、bcc構造を有する磁性材料である。この材料は、スピン依存界面散乱効果が大きいため、大きなMR変化率を実現することができる。bcc構造をもつFeCo系合金として、FexCo100−x(x=30%〜100%)や、FexCo100−xに添加元素を加えたものが挙げられる。そのなかでも、諸特性をすべて満たしたFe40Co60〜Fe80Co20が使いやすい材料の一例である。
【0038】
上部ピン層143が、高MR変化率を実現しやすいbcc構造をもつ磁性層から形成されている場合には、この磁性層の全膜厚が1.5nm以上であることが好ましい。bcc構造を安定に保つためである。スピンバルブ膜に用いられる金属材料は、fcc構造またはfct構造であることが多いため、上部ピン層143のみがbcc構造を有することがあり得る。このため、上部ピン層143の膜厚が薄すぎると、bcc構造を安定に保つことが困難になり、高いMR変化率が得られなくなる。
【0039】
また、上部ピン層143の材料として、(CoxFe100−x)100−YBX合金(x=0%〜100%、x=0%〜30%)を用いることもできる。(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いた場合、磁気抵抗効果素子の素子サイズが小さくなった場合に懸念される結晶粒に起因した素子間のバラツキを抑える観点で好ましい。また、このようなアモルファス合金を用いた場合、上部ピン層143を平坦な膜にすることができるため、上部ピン層143の上に形成されるトンネル絶縁層を平坦化する効果がある。トンネル絶縁層の平坦化は、トンネル絶縁層の欠陥の頻度を減らすことができるため、低い面積抵抗で高いMR変化率を得るために重要である。特に、トンネル絶縁層材料としてMgOを用いる場合、(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いることでその上に形成されるMgO層の(100)配向性を強めることができる。MgO層の(100)配向性は高いMR変化率を得るために重要である。また、(CoxFe100−x)100−YBX合金はアニール時にMgO(100)面をテンプレートとして結晶化するため、MgOと(CoxFe100−x)100−YBX合金の良好な結晶整合を得ることが出来る。このような良好な結晶整合は高いMR変化率を得る観点で重要である。
【0040】
上部ピン層143の膜厚は、厚いほうが大きなMR変化率を得やすいが、大きなピン固着磁界を得るためには薄いほうが好ましく、トレードオフの関係が存在する。例えば、bcc構造をもつFeCo合金層を用いたときには、bcc構造を安定にする必要があるため、1.5nm以上の膜厚が好ましい。また、fcc構造のCoFe合金層を用いるときにも、大きなMR変化率を得るため、やはり1.5nm以上の膜厚が好ましい。一方、大きなピン固着磁界を得るためには、上部ピン層143の膜厚が最大でも、5nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましい。以上のように、上部ピン層143の膜厚は、1.5nm以上5nm以下が好ましく、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
【0041】
上部ピン層143には、bcc構造をもつ磁性材料の代わりに、従来の磁気抵抗効果素子で広く用いられているfcc構造を有するCo90Fe10合金や、hcp構造をもつCoや、Co合金を用いることができる。上部ピン層143として、Co、Fe、又はNiなどの単体金属、若しくはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料を用いることができる。上部ピン層143の磁性材料として、大きなMR変化率を得るのに有利なものは、bcc構造をもつFeCo合金材料、50%以上のコバルト組成をもつコバルト合金、50%以上のNi組成である。
【0042】
また、上部ピン層143として、Co2MnGe、Co2MnSi、Co2MnAlなどのホイスラー磁性合金層を用いることも可能である。
【0043】
トンネル絶縁スペーサ層16は、ピン層14とフリー層18との磁気的な結合を分断する。トンネル絶縁スペーサ層16は、Mg、Al、Ti、Zr、Hf及びZnから選択される少なくとも1つの元素を含む非磁性酸化物とすることができる。特に、MgOはコヒーレントなスピン依存トンネリング現象を示すため、高いMR変化率を得る観点で好ましい。また、トンネル絶縁スペーサ層16の膜厚は1nm以上4nm以下であることが好ましい。
【0044】
フリー層18は、磁化方向が外部磁界によって変化する強磁性体を有する層である。例えば、界面にCoFeを形成してNiFeを用いたCo90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]という二層構成を用いることができる。なお、NiFe層を用いない場合には、Co90Fe10[4nm]単層を用いることができる。また、CoFe/NiFe/CoFeなどの三層構成からなるフリー層18を用いても構わない。
【0045】
フリー層18には、CoFe合金のなかでも、軟磁気特性が安定であることから、Co90Fe10が好ましい。Co90Fe10近傍のCoFe合金を用いる場合には、膜厚を0.5nm以上4nm以下とすることが好ましい。その他、CoxFe100−x(x=70%〜90%)も用いることができる。
【0046】
また、上部ピン層143の材料として、(CoxFe100−x)100−YBX合金(x=0%〜100%、x=0%〜30%)を用いることもできる。(CoxFe100−x)100−YBXのようなアモルファス合金を用いた場合、磁気抵抗効果素子の素子サイズが小さくなった場合に懸念される結晶粒に起因した素子間のバラツキを抑える観点で好ましい。また、スペーサ層にMgOを用いた場合には、(CoxFe100−x)100−YBX合金はアニール時にMgO(100)面をテンプレートとして結晶化するため、MgOと(CoxFe100−x)100−YBX合金の良好な結晶整合を得ることが出来る。このような良好な結晶整合は高いMR変化率を得る観点で重要である。
【0047】
また、フリー層18として、1nm以上2nm以下のCoFe層またはFe層と、0.1nm以上0.8nm以下の極薄Cu層とを、複数層交互に積層したものを用いてもよい。
【0048】
また、フリー層18の一部として、CoZrNbなどのアモルファス磁性層を用いても構わない。ただし、アモルファス磁性層を用いる場合でも、MR変化率に大きな影響を与えるスペーサ層16と接する界面は結晶構造を有する磁性層を用いることが必要である。フリー層18の構造としては、スペーサ層16側からみて、次のような構成が可能である。即ち、フリー層18の構造として、(1)結晶層のみ、(2)結晶層/アモルファス層の積層、(3)結晶層/アモルファス層/結晶層の積層、などが考えられる。ここで重要なことは、(1)〜(3)いずれでもスペーサ層16との界面は必ず結晶層が接するようにしていることである。
【0049】
キャップ層19は、スピンバルブ膜を保護する機能を有する。キャップ層19は、例えば、複数の金属層、例えば、Cu層とRu層の2層構造(Cu[1nm]/Ru[10nm])とすることができる。また、キャップ層19として、Ruをフリー層18側に配置したRu/Cu層なども用いることができる。この場合、Ruの膜厚は0.5nm以上2nm以下が好ましい。この構成のキャップ層19は、特に、フリー層18がNiFeからなる場合に好ましい。RuはNiと非固溶な関係にあるので、フリー層18とキャップ層19の間に形成される界面ミキシング層の磁歪を低減できるからである。
【0050】
キャップ層19が、Cu/RuやRu/Cuのいずれの場合も、Cu層の膜厚は0.5nm以上10nm以下が好ましく、Ru層の膜厚は0.5nm以上5nm以下とすることができる。Ruは比抵抗値が高いため、あまり厚いRu層を用いることは好ましくないため、このような膜厚範囲にしておくことが好ましい。
【0051】
キャップ層19として、Cu層やRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層19の構成は特に限定されず、キャップとしてスピンバルブ膜を保護可能なものであれば、他の材料を用いてもよい。但し、キャップ層の選択によってMR変化率や長期信頼性が変わる場合があるので、注意が必要である。CuやRuはこれらの観点からも好ましいキャップ層の材料の例である。
【0052】
機能層21は、アップスピン電子又はダウンスピン電子の透過を制御することができるスピンフィルター効果を有する。機能層21としては、Zn、In、Sn、及びCdの何れか少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、Niの何れか少なくとも1つの元素を混合した酸化物を含むことを特徴とする。具体的には、Fe50Co50とZnの混合酸化物を用いることができる。なお、Znは、In、Sn、及びCdの中でもFe、Co、及びNiと同周期であるために、Fe、Co、及びNiとの混合酸化物となった場合に磁性を帯びやすいので、機能層21の磁化を安定化させることができるので、より好ましい。
【0053】
これらの材料を用いることで、高いスピンフィルター効果と低い抵抗率の実現によるスピンフリップの低減を両立することができているため、磁気抵抗効果素子10のMR変化率を向上させることができる。
【0054】
ここで、低い抵抗率のスピンフィルタリング層を実現するためには、スピンフィルタリング層がZnO、In2O3、SnO2、ZnO、CdO、CdIn2O4、Cd2SnO4、Zn2SnO4などの上記したZn、In、Sn、及びCdを含む酸化物材料を含有することが有効である。これらの酸化物材料が低い抵抗率を示す理由の1つとして、次のことが考えられる。これらの酸化物半導体は、3eV以上のバンドギャップを持つ半導体であるが、化学量論組成から少し還元気味にずれることにより酸素空孔などの真性欠陥がドナー準位を形成するため、伝導電子密度が1018cm−3〜1019cm−3程度まで到達する。これらの導電性酸化物のバンド構造において、価電子帯は主として酸素原子の2p軌道で、伝導帯は金属原子のs軌道で構成されている。キャリア密度フェルミ準位が1018cm−3よりも増えると伝導帯に達し、縮退と呼ばれる状態になる。このような酸化物半導体はn型の縮退半導体と呼ばれ、伝導電子の十分な濃度と移動度を併せ持ち、低い抵抗率を実現する。なお、このような理論に当てはまらないものであっても、低い抵抗率を示すものであれば、そのような酸化物材料を使用することができる。
【0055】
一方、高いスピンフィルター効果を有するスピンフィルタリング層を実現するためには、スピンフィルタリング層が室温で磁性を有するCo、Fe、及びNiの酸化物を含有することが有効である。低い抵抗率を実現するのに有効なZn、In、Sn、及びCdを含む酸化物材料はバルクの特性として磁性を有していない。フリー層やピン層に極薄の酸化物層を挿入した場合、磁性を有していない酸化物材料も磁性を発現してスピンフィルター効果が得られることが特開2004−6589号に開示されているが、Co、Fe、及びNiの酸化物を含有したほうが酸化物層の膜厚の制限に縛られずに容易に磁性を発現して高いスピンフィルター効果が得られる。
【0056】
また、機能層21にさらに添加元素を加えても良い。Zn酸化物に添加元素としてAlを加えた場合、熱耐性があがることが報告されている。Alのほかにも、添加元素としては、B、Ga、In、C、Si、Ge、及びSn等があげられる。耐熱性が向上するメカニズムは完全に明らかとはなっていないが、化学量論組成から還元気味にずれたことにより形成されるZn酸化物中の酸素空孔の密度が、熱による再酸化の促進により減少して、キャリア密度が変わることが起因していると考えられる。他にも耐熱性が向上する理由として、上記したこれらの元素はIII族、またはIV族のドーパントにあたり、これらのドーパントは熱によるZn原子の再酸化の促進を防ぐために、機能層21中のキャリア密度の変化を抑えることができ、さらには熱に対する抵抗率の変化が抑えられるということが挙げられる。
【0057】
機能層21の膜厚は、十分なスピンフィルタリング効果を得るためには0.5nm以上とすることが好ましい。また、より均一な機能層21を得るためには、製造上の装置の依存性を考慮して、1nm以上にすることがさらに好ましい。一方、膜厚の上限は再生ヘッドのリードギャップを広げない観点で10nm以下とすることが好ましい。
【0058】
機能層21を設ける位置は、図1に示されるようなフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16との間だけに限定されない。例えば、図2から7に示されるような位置に挿入することができる。それぞれの詳細については変形例として後述する。
【0059】
なお、スピンの違いが電子の挙動に与える影響は、その電子が強磁性層(フリー層18およびピン層14)と非磁性層(トンネル絶縁スペーサ層16)との界面を通過するときに最も顕著となる。したがって、この界面に機能層21を設けることで、機能層21による効果を高めることができる。すなわち、図1または図4のように、機能層21を、トンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18またはピン層14との間に設けることが好ましい。また、図7のように、フリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16との間に機能層22を設け、且つトンネル絶縁スペーサ層16とピン層14との間に機能層21を設けることがより好ましい。
【0060】
機能層21をフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16の界面に形成する場合、フリー層18は、磁性化合物よりも軟磁気特性に優れる軟磁性膜を用いることにより、磁場応答性をよくすることができる。後述する変形例に示している、フリー層18内部、フリー層18とキャップ層19の界面に機能層21を設ける場合も同様である。フリー層18には、Co、Fe、Niなどの単体金属、またはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料はすべて用いることができる。特に、前述したように、界面にCoFeを形成してNiFeを用いたCo90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]という2層構成や、CoFe/NiFe/CoFeなどの3層構成、Co−Fe合金の単層などを用いることができる。
【0061】
機能層21をピン層14とトンネル絶縁スペーサ層16の界面、ピン層14内部、磁気結合層142とピン層14の界面に形成する場合、上部ピン層143に機能層21よりも一方向にピンされやすい材料を用いることにより、ピン特性をよくすることができる。上部ピン層143の材料としては、Co、Fe、Niなどの単体金属、またはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料はすべて用いることができる。
【0062】
機能層21をフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16の界面、ピン層14とトンネル絶縁スペーサ層6の界面に形成した場合、機能層21のスピンフィルタリング効果によるスピン依存トンネリング効果の増強によるMR変化率の増大を得ることができる。一方、機能層21をフリー層18中、フリー層18とキャップ層19の界面、ピン層14中、上部ピン層141と磁気結合層142の界面に設けた場合においても、機能層21のスピンフィルタリング効果によりスピン依存トンネリング効果を増強することができ、MR変化率を増強することができる。
【0063】
機能層21は、フリー層18またはピン層14に複数設けても良い。例えば、トンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18の界面とフリー層18内部に設けた場合、スピン依存トンネリング効果をさらに増強することができ、高いMR変化率を実現することができる。しかし、機能層21の挿入数が多すぎると、抵抗の増大を招き、スピンフリップが発生してしまうので、挿入数は適切な数に抑える必要がある。例えば、4層程度、フリー層18又はピン層18内に設けることができる。
【0064】
図1に示すように機能層21をフリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16の界面に形成した場合、前述したように機能層21はスピン依存トンネリング効果に寄与する。
【0065】
次に、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の製造方法について説明する。
【0066】
本実施形態では、製造する際の形成方法として、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ等のスパッタ法、イオンビームスパッタ法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、およびMBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。
【0067】
最初に、基板上に下電極11を微細加工プロセスによって形成する。次に、下電極11上に、下地層12として例えばTa[1nm]/Ru[2nm]を形成する。Taは下電極11の荒れを緩和等するためのバッファ層に相当する。Ruはその上に形成されるスピンバルブ膜の結晶配向および結晶粒径を制御するシード層に相当する。
【0068】
その後、下地層12上にピニング層13を形成する。ピニング層13の材料としては、PtMn、PdPtMn、IrMn、又はRuRhMn等の反強磁性材料を用いることができる。
【0069】
その後、ピニング層13上にピン層14を形成する。ピン層14は、例えば、下部ピン層141(Co75Fe25[2.5nm])、磁気結合層142(Ru)、および上部ピン層143(Co50Fe50[1nm]/Co40Fe40B20[2nm])からなるシンセティックピン層とすることができる。
【0070】
その後、ピン層14上にトンネル絶縁スペーサ層16を形成する。トンネル絶縁スペーサ層16は、Mg、Al、Ti、Zr、Hf及びZnから選択される少なくとも1つの元素を含む非磁性酸化物を用いて形成される。
【0071】
その後、トンネル絶縁スペーサ層16上に機能層21を形成する。具体的には、上部ピン層143上にFe50Co50とZnの金属層を形成する。ここで、Fe50Co50とZnの金属層は、Fe50Co50/ZnやZn/Fe50Co50や(Fe50Co50/Zn)×2のようなFe50Co50層とZn層の積層体としても良いし、Zn50(Fe50Co50)50のような合金の単層としてもよい。ZnとFe50Co50を含む金属材料に酸化処理を施し、物機能層21を形成する。この変換処理は、希ガスなどのイオンビームまたはプラズマを金属材料層に照射しながら、酸素を供給して行う、イオンアシスト酸化(IAO:Ion assisted Oxidation)を用いることができる。また、上記のイオンアシスト変換処理において、酸素ガスをイオン化またはプラズマ化してもよい。イオンビームの照射による金属材料層へのエネルギーアシストにより、安定で均一な酸化物層を機能層21として形成することができる。また、一層の機能層21を形成するに当たり、上述した金属材料層の形成と変換処理を数回繰り返して行ってもよい。この場合、所定の膜厚の機能層21を一度の形成および変換処理で作成するのではなく、膜厚を分割して薄い膜厚の金属材料層に変換処理を行うほうが好ましい。また、ZnとFe50Co50を含む金属材料層を酸素雰囲気に晒す自然酸化を用いてもよい。ただし、安定な酸化物を形成するためには、エネルギーアシストを用いた酸化方法のほうが好ましい。また、ZnとFe50Co50の金属材料を積層体とした場合は、均一に混合されたZnとFe50Co50の機能層21を形成する上で、イオンビームの照射を行いながら酸化した場合のほうが好ましい。
【0072】
なお、エネルギーアシストの方法として、イオンビームの照射以外に加熱処理などを行ってもよい。この場合、たとえば、金属材料層を形成後に100℃〜300℃の温度で加熱しながら、酸素を供給してもよい。
【0073】
以下、機能層21を形成する場合の変換処理において、イオンビームアシスト処理を行った場合のビーム条件について説明する。変換処理により、機能層21を形成する際に前述した希ガスをイオン化またはプラズマ化して照射する場合、その加速電圧Vを30V〜130V、ビーム電流Ibを20mA〜200mAに設定することが好ましい。これらの条件は、イオンビームエッチングを行う場合の条件と比較すると著しく弱い条件である。イオンビームの換わりにRFプラズマなどのプラズマを用いても同様に機能層21を形成することができる。イオンビームの入射角度は、膜面に対して垂直に入射する場合を0°、膜面に平行に入射する場合を90°と定義して、0°〜80°の範囲で適宜変更する。この工程による処理時間は15秒〜1200秒が好ましく、制御性などの観点から30秒以上がより好ましい。処理時間が長すぎると、磁気抵抗効果素子の生産性が劣るため好ましくない。これらの観点から、処理時間は30秒から600秒が好ましい。
【0074】
イオン又はプラズマを用いた酸化処理の場合、酸素暴露量はIAOの場合には1×103〜1×104L(Langmiur、1L=1×10−6Torr×sec)が好ましい。自然酸化の場合には3×103L〜3×104Lが好ましい。
【0075】
その後、機能層21上にフリー層18を形成する。フリー層18としては、例えば、Fe50Co50[1nm]/Ni85Fe15[3.5nm]を形成する。
【0076】
その後、フリー層18上にキャップ層19を形成する。キャップ層19としては、例えば、Cu[1nm]/Ru[10nm]を形成する。
【0077】
その後、アニール処理を行う。
【0078】
最後に、キャップ層19上に磁気抵抗効果素子10へ垂直通電するための上電極20を形成する。
【0079】
(変形例1)
図2は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第1の変形例を示す図である。
【0080】
本変形例は、機能層21がフリー層18内に設けられている点で第1の実施形態と異なる。また、フリー層18は第1のフリー層18aと第2のフリー層18bからなる。なお、第1のフリー層18aは、トンネル絶縁スペーサ層16と機能層21との間に設けられ、第2のフリー層18bはキャップ層19と機能層21との間に設けられている。
【0081】
フリー層18内に機能層21を形成する場合、第1のフリー層18a上に、トンネル絶縁スペーサ層16、機能層21、第2のフリー層18bの順に形成する。
【0082】
このように、機能層21をフリー層18内に機能層21を設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21は、フリー層18と磁気結合をし、フリー層18と同様に磁化の方向が自由になるので、フリー層18の機能を阻害することなく、磁気抵抗効果素子10のMR変化率の向上に寄与する。さらに、機能層21に含まれる酸素がトンネル絶縁スペーサ層16に拡散することを少なくすることができるため、トンネル絶縁スペーサ層16中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるトンネル絶縁スペーサ層16中でのスピンフリップの発生を抑制して高いMR変化率を得ることができる。
【0083】
(変形例2)
図3は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第2の変形例を示す図である。
【0084】
本変形例は、機能層21がフリー層18とキャップ層19との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0085】
このように、機能層21をフリー層18とキャップ層19との間に設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21は、酸化物であるので、磁気抵抗効果素子10を酸化等の劣化から保護することができる。さらに、機能層21に含まれる酸素がスペーサ層16に拡散することを少なくすることができるため、スペーサ層16中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるスペーサ層16中でのスピンフリップの発生を抑制して高いMR変化率を得ることができる。
【0086】
(変形例3)
図4は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第3の変形例を示す図である。
【0087】
本変形例は、機能層21がピン層14とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0088】
このように、機能層21をピン層14とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けた場合、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21は、酸化物であるので、トンネル絶縁スペーサ層16を構成する材料とピン14層を構成する材料が混ざることを防ぐことができるので、トンネル絶縁スペーサ層16はスピンフリップを抑制させた状態で伝導電子を通過させ、ピン層14の磁化を安定して固着させることができる。
【0089】
(変形例4)
図5は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第4の変形例を示す図である。
【0090】
本変形例は、機能層21が上部ピン層143内に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0091】
このように、機能層21を上部ピン層143内に設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21をトンネル絶縁スペーサ層と接しない位置に配置した場合、機能層21に含まれる酸素のトンネル絶縁スペーサ層への拡散が少なくなるため、トンネル絶縁スペーサ層中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるトンネル絶縁スペーサ層中のスピンフリップを回避して高いMR変化率を得ることができる。
【0092】
(変形例5)
図6は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第5の変形例を示す図である。
【0093】
本変形例は、機能層21が上部ピン層143と磁気結合層142との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0094】
このように、機能層21を上部ピン層143と磁気結合層142との間に設けた場合においても、前述したように機能層21はスピン依存トンネリングに寄与する。また、機能層21をトンネル絶縁スペーサ層と接しない位置に配置した場合、機能層21に含まれる酸素のトンネル絶縁スペーサ層への拡散が少なくなるため、トンネル絶縁スペーサ層中に酸素元素が存在した場合に引き起こされるトンネル絶縁スペーサ層中のスピンフリップを回避して高いMR変化率を得ることができる。
【0095】
(変形例6)
図7は、第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第6の変形例を示す図である。
【0096】
本変形例は、機能層21が上部ピン層143とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けられていることに加えて、更に2つ目の機能層22がトンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0097】
なお、機能層21の構成は機能層22と同様であるので説明は省略する。
【0098】
このように、機能層21を上部ピン層143とトンネル絶縁スペーサ層16との間に設けることに加えて、更に2つ目の機能層22をトンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に設けることで、2つの機能層のスピンフィルタリング効果の足し合わせた効果を得ることができるので1層の機能層を用いた場合に比べて高いMR変化率を得ることができる。
【0099】
なお、上記した変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10は、第1の実施形態で説明した磁気抵抗効果素子10の製造方法を用いることで製造することができるので、変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10の製造方法についての説明は省略する。
【0100】
(実施例)
第1の実施形態及び変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10を作製して、下電極11と上電極20間で垂直通電を行うことで磁気抵抗効果素子10のRA値、及び磁気抵抗効果素子10のMR変化率を評価した。
【0101】
(実施例1)
第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10を作製して、RA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図1に示すようにトンネル絶縁スペーサ層16とフリー層18との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0102】
機能層21の作製方法は、MgOからなるトンネル絶縁スペーサ層16上に、Fe50Co50を1nm形成し、その上にZnを0.6nm形成した。次に、IAOによりZnとFe50Co50の酸化物(以下、Zn−Fe50Co50−Oと表記する)へと変換行い機能層21を形成した。このときの機能層21の膜厚は1.8nmであった。このとき、IAOで用いる酸素曝露量は1.5×104Langmiurとして用いた。次に、機能層21上にFe50Co50[1nm]/Ni85Fe15[3.5nm]を形成してフリー層18を形成した。最後に、280℃で5時間アニール処理を行い、下電極11および上電極20を形成した。
【0103】
なお、機能層の形成方法は、以下の実施例では同様であるので説明は省略する。
【0104】
以下に、本実施例で形成した磁気抵抗効果素子10の構成を示す。
【0105】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18:Fe50Co50[0.5nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は63%であった。
【0106】
(実施例2)
変形例1に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図2に示すようにフリー層18内に機能層21を設けた構造を作製した。
【0107】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18A:(Fe50Co50)80B20[0.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18B:/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は59%であった。
【0108】
(実施例3)
変形例2に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図3に示すようにキャップ層19とフリー層18との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0109】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[1nm]/Ni85Fe15[3nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は54%であった。
【0110】
(実施例4)
変形例3に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図4に示すようにトンネル絶縁スペーサ層16と上部ピン層143との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0111】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[0.5nm]/(Fe50Co50)80B20[1nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[1nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は65%であった。
【0112】
(実施例5)
変形例4に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図5に示すように上部ピン層143内に機能層21を設けた構造を作製した。
【0113】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[0.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
ピン層143B:(Fe50Co50)80B20[1nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[2nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は60%であった。
【0114】
(実施例6)
変形例5に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図6に示すように、上部ピン層143と磁気結合層142との間に機能層21を設けた構造を作製した。
【0115】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
ピン層143B:(Fe50Co50)80B20[1.5nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[2nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は54%であった。
【0116】
(実施例7)
変形例6に係る磁気抵抗効果素子10を作製してRA値及びMR変化率を評価した。すなわち、図7に示すように、フリー層18とトンネル絶縁スペーサ層16との間に機能層22を設け、トンネル絶縁スペーサ層16と上部ピン層143との間にも機能層21を設けた構造を作製した。
【0117】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[0.5nm]/(Fe50Co50)80B20[1nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
機能層22:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[0.5nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本実施例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.2Ωμm2、MR変化率は68%であった。
【0118】
(比較例1)
機能層を用いていない磁気抵抗効果素子を作製してRA値及びMR変化率を評価した。
【0119】
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[2nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
本比較例に係る磁気抵抗効果素子10のRAは1.1Ωμm2、MR変化率は51%であった。
【0120】
実施例1〜7に係る磁気抵抗効果素子10のMR変化率は何れも、比較例1のMR変化率よりも大きな値を示しており、第1の実施形態及び変形例1〜6に係る磁気抵抗効果素子10を用いることで、MRの変化率の向上をさせることができることがわかる。
【0121】
MR変化率が向上した理由として、機能層が高いスピンフィルター効果と低い抵抗率の実現によるスピンフリップの低減を両立することができているためと考えられる。酸化物のスピンフィルタリング層は、抵抗率の高い材料となりやすいため、抵抗が高くなりやすい。一般的に、抵抗が高い層を電子が通過する際には、スピン情報を失ってしまうスピンフリップが起こりやすく、スピンフリップが起こるとMR変化率を低減してしまう。酸化物のスピンフィルタリング層では、スピンフリップを低減することでさらにMR変化率を増大できる余地がある。
【0122】
(実施例8〜10)
機能層21の抵抗と、磁気抵抗効果素子10のMR変化率との間の関係を調べた。具体的には、機能層21のみのシート抵抗を測定し、この機能層21と同様に作製した機能層21を含む磁気抵抗効果素子10のMR変化率を測定し、これらの測定結果から、機能層21の抵抗が磁気抵抗効果素子10のMR変化率に与える影響を評価した。
【0123】
機能層21は次のように作製した。厚さ1nmのFeCoの層を形成した後、その上にZnを0.6nmを積層し、IAOによる処理を行って酸化物を形成させた。このサイクルを全部で30回繰り返すことで機能層21を作製した。ここで、IAOで用いる酸素曝露量を、3.0×104Langmiur(比較例3)、1.2×104Langmiur(実施例8)、1.5×104Langmiur(実施例9)または1.8×104Langmiur(実施例10)として4種の機能層21を作製した。
【0124】
一方、機能層21を含む磁気抵抗効果素子10は、以下の層を下電極11に対して順に積層することで作製した。
下地層12:Ta[1nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Ir22Mn78[7nm]
ピン層14:Co75Fe25[2.5nm]/Ru[0.9nm]/Fe50Co50[1nm]/(Fe50Co50)80B20[2nm]
トンネル絶縁スペーサ層16:MgO[1.5nm]
機能層21:Zn−Fe50Co50−O[1.8nm]
フリー層18:(Fe50Co50)80B20[1nm]/Ni85Fe15[3nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ta[2nm]/Ru[15nm]
ここで、機能層21は、上記の単独で作製した機能層21と同様に作製した。すなわち、FeCo[1nm]/Zn[0.6nm]をIAOで処理するサイクルを30回行った。このとき、酸素曝露量を、3.0×104Langmiur(比較例3)、1.2×104Langmiur(実施例8)、1.5×104Langmiur(実施例9)または1.8×104Langmiur(実施例10)として4種の磁気抵抗効果素子10を作製した。
【0125】
単独で作製した機能層21について、シート抵抗を測定した。また、磁気抵抗効果素子10についてRA値およびMR変化率を測定した。それらの結果を、酸素曝露量とともに表1にまとめた。なお、表1には、比較例2として、機能層を設けない以外は実施例8〜10と同様に作製した磁気抵抗効果素子10のRA値およびMR変化率を示した。
【表1】
【0126】
表1からから機能層の抵抗率が5×104μΩcm未満の場合に、MR変化率が向上していることがわかる。
【0127】
上記の結果は、適正な酸素暴露量を用いて、低い抵抗率の機能層21を作製することにより、機能層21内部のスピンフリップを抑制することができたためと考えられる。
【0128】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10を用いた磁気ヘッドについて説明する。
【0129】
図8及び図9は、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10を磁気ヘッドに組み込んだ状態を示す図である。図8は、磁気記録媒体(図示せず)に対向する媒体対向面に対してほぼ平行な方向に磁気抵抗効果素子10を切断した断面図である。図9は、磁気抵抗効果素子10を媒体対向面ABSに対して垂直な方向に切断した断面図である。
【0130】
図8及び図9に例示した磁気ヘッドは、いわゆるハード・アバッテッド(hard abutted)構造を有する。磁気抵抗効果素子10の上下には、下電極11と上電極20とがそれぞれ設けられている。図8において、磁気抵抗効果素子10の両側面には、バイアス磁界印加膜41と絶縁膜42とが積層して設けられている。図9に示すように、磁気抵抗効果素子10の媒体対向面には保護層43が設けられている。
【0131】
磁気抵抗効果素子10に対するセンス電流は、その上下に配置された下電極11および上電極20によって矢印Aで示したように、膜面に対してほぼ垂直方向に通電される。また、左右に設けられた一対のバイアス磁界印加膜41により、磁気抵抗効果素子10にはバイアス磁界が印加される。このバイアス磁界により、磁気抵抗効果素子10のフリー層18の磁気異方性を制御して単磁区化することによりその磁区構造が安定化し、磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズ(Barkhausen noise)を抑制することができる。
【0132】
磁気抵抗効果膜10のS/N比が向上しているので、磁気ヘッドに応用した場合に高感度の磁気再生が可能となる。
【0133】
(第3の実施形態)
次に、本実施形態に係る磁気抵抗効素子10を用いた磁気記録再生装置および磁気ヘッドアセンブリについて説明する。
【0134】
図10は本実施形態に係る磁気記録再生装置を示す斜視図である。
【0135】
図10に示すように、本実施形態に係る磁気記録再生装置310は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。磁気記録媒体230は、スピンドルモータ330に設けられ、駆動制御部(図示せず)からの制御信号に応答するモータ(図示せず)により媒体移動方向270の方向に回転する。磁気記録再生装置310は、複数の磁気記録媒体230を備えてもよい。
【0136】
磁気記録媒体230に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ280は、図11に示すように、磁気抵抗効果素子10を備えた磁気ヘッド140がヘッドスライダ280に設けられる。ヘッドスライダ280は、Al2O3/TiCなどからなり、磁気ディスクなどの磁気記録媒体230の上を、浮上又は接触しながら相対的に運動できるように設計されている。
【0137】
ヘッドスライダ280は薄膜状のサスペンション350の先端に取り付けられている。ヘッドスライダ280は、磁気ヘッド140をヘッドスライダ280の先端付近に設けられている。
【0138】
磁気記録媒体230が回転すると、サスペンション350により押し付け圧力とヘッドスライダ280の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあう。ヘッドスライダ280の媒体対向面は、磁気記録媒体230の表面から所定の浮上量をもって保持される。ヘッドスライダ280が磁気記録媒体230と接触する「接触走行型」としてもよい。
【0139】
サスペンション350は、駆動コイル(図示せず)を保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム360の一端に接続されている。アクチュエータアーム360の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ370が設けられている。ボイスコイルモータ370は、アクチュエータアーム360のボビン部に巻き上げられた駆動コイル(図示せず)と、この駆動コイルを挟み込むように対向して設けられた永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路から構成することができる。
【0140】
アクチュエータアーム360は、軸受部380の上下2箇所に設けられたボールベアリング(図示せず)によって保持され、ボイスコイルモータ370により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気ヘッド140を磁気記録媒体230の任意の位置に移動可能となる。
【0141】
図12(a)は、本実施形態に係る磁気記録再生装置310の一部を構成するヘッドスタックアセンブリ390を示す。
【0142】
図12(b)は、ヘッドスタックアセンブリ390の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))400を示す斜視図である。
【0143】
図12(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ390は、軸受部380と、この軸受部380から延出したヘッドジンバルアセンブリ400と、軸受部380からヘッドジンバルアセンブリ400と反対方向に延出しているとともにボイスコイルモータのコイル410を支持した支持フレーム420を有する。
【0144】
図12(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ400は、軸受部380から延出したアクチュエータアーム360と、アクチュエータアーム360から延出したサスペンション350とを有する。
【0145】
サスペンション350の先端には、第2の実施形態で説明した磁気記録ヘッド140を有するヘッドスライダ280が設けられている。
【0146】
本実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))400は、第2の実施形態で説明した磁気記録ヘッド140と、磁気記録ヘッド140が設けられたヘッドスライダ280と、ヘッドスライダ280を一端に搭載するサスペンション350と、サスペンション350の他端に接続されたアクチュエータアーム360とを備える。
【0147】
サスペンション350は、信号の書き込み及び読み取り用、浮上量調整のためのヒータ用、STO10用のリード線(図示せず)を有し、このリード線とヘッドスライダ280に組み込まれた磁気記録ヘッド140の各電極とが電気的に接続される。電極パッド(図示せず)はヘッドジンバルアセンブリ400に設けられる。本実施形態では、電極パッドは8個設けられる。主磁極200のコイル用の電極パッドが2つ、磁気再生素子190用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、STO10用の電極パッドが2つ設けられている。
【0148】
信号処理部385(図示せず)が、図10に示す磁気記録再生装置310の図面中の背面側に設けられる。信号処理部385は、磁気記録ヘッド140を用いて磁気記録媒体230への信号の書き込みと読み出しを行う。信号処理部385の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ400の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッド140と電気的に結合される。
【0149】
本実施形態に係る磁気記録再生装置310は、磁気記録媒体230と、磁気記録ヘッド140と、磁気記録媒体230と磁気記録ヘッド140とを離間させ、又は、接触させた状態で対峙させながら相対的に移動可能とした可動部と、磁気記録ヘッド140を磁気記録媒体230の所定記録位置に位置あわせする位置制御部と、磁気記録ヘッド140を用いて磁気記録媒体230への書き込みと読み出しを行う信号処理部385とを備える。
【0150】
上記の磁気記録媒体230として、磁気記録媒体230が用いられる。上記の可動部は、ヘッドスライダ280を含むことができる。上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ400を含むことができる。
【0151】
磁気記録再生装置310は、磁気記録媒体230と、ヘッドジンバルアセンブリ400と、ヘッドジンバルアセンブリ400に搭載された磁気記録ヘッド140を用いて磁気記録媒体230への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部385とを備える。
【0152】
本発明の実施形態として上述した磁気ヘッドおよび磁気記録再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記録再生装置および磁気メモリも同様に本発明に係る磁気抵抗効果素子を用いることができる。
【0153】
本発明の実施形態では、ボトム型の磁気抵抗効果素子10について説明したが、ピン層14がスペーサ層16よりも上に形成されたトップ型の磁気抵抗効果素子10でも本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0154】
10…磁気抵抗効果素子、11…下電極、12…下地層、13…ピニング層、14…ピン層(磁化固着層)、16…トンネル絶縁スペーサ層、18…フリー層(磁化自由層)、18a…第1のフリー層、18b…第2のフリー層、19…キャップ層、20…上電極、21、22…機能層、41…バイアス磁界印加膜、42…絶縁膜、43…保護層、140…磁気ヘッド、141…下部ピン層、142…磁気結合層、143…上部ピン層、230…磁気記録媒体、270…媒体移動方向、280…ヘッドスライダ、290…空気流入側、300…空気流出側、310…磁気記録再生装置、330…スピンドルモータ、350…サスペンション、360…アクチュエータアーム、370…ボイスコイルモータ、380…軸受部、385…信号処理部、390…ヘッドスタックアセンブリ、400…磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))、410…コイル、420…支持フレーム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ層と、
磁化固着層と、
前記キャップ層と前記磁化固着層との間に設けられた磁化自由層と、
前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられたトンネル絶縁スペーサ層と、
前記磁化固着層中、前記磁化固着層と前記トンネル絶縁スペーサ層との間、前記トンネル絶縁スペーサ層と前記磁化自由層との間、前記磁化自由層中、及び前記磁化自由層と前記キャップ層との間の何れかに設けられ、Zn、In、Sn、及びCdから選択される少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、及びNiから選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物を有する機能層と、
を備えた積層体と、
前記積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記機能層の抵抗率が5×104μΩcm未満であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記機能層の膜厚が1nm以上10nm以下であるとこを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記機能層がさらにAl、B、Ga、In、C、Si、Ge、及びSnから選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記トンネル絶縁スペーサ層はMg、Al、Ti、Zr、Hf及びZnから選択される少なくとも1つの元素を含む非磁性酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
磁気記録媒体と、
請求項1に記載の磁気抵抗効果素子を備えた磁気記録ヘッドと、
前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、
を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項1】
キャップ層と、
磁化固着層と、
前記キャップ層と前記磁化固着層との間に設けられた磁化自由層と、
前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられたトンネル絶縁スペーサ層と、
前記磁化固着層中、前記磁化固着層と前記トンネル絶縁スペーサ層との間、前記トンネル絶縁スペーサ層と前記磁化自由層との間、前記磁化自由層中、及び前記磁化自由層と前記キャップ層との間の何れかに設けられ、Zn、In、Sn、及びCdから選択される少なくとも1つの元素、並びにFe、Co、及びNiから選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物を有する機能層と、
を備えた積層体と、
前記積層体の膜面に垂直に電流を流すための一対の電極と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記機能層の抵抗率が5×104μΩcm未満であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記機能層の膜厚が1nm以上10nm以下であるとこを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記機能層がさらにAl、B、Ga、In、C、Si、Ge、及びSnから選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記トンネル絶縁スペーサ層はMg、Al、Ti、Zr、Hf及びZnから選択される少なくとも1つの元素を含む非磁性酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
磁気記録媒体と、
請求項1に記載の磁気抵抗効果素子を備えた磁気記録ヘッドと、
前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、
を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−228545(P2011−228545A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98191(P2010−98191)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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