磁気測定装置および磁気測定方法
【課題】微弱な磁場信号を増強して測定する。
【解決手段】測定対象部位Pに送信焦点fを設定して超音波プローブ11から超音波uを送信した状態で、超伝導磁気測定装置20により微弱な磁気信号を測定する。そして、磁気画像Gmと超音波画像Guと両者を合成し、磁気・超音波画像Gxとを得る。
【効果】測定対象部位Pの磁気発生源が超音波uの周波数近傍で振動するため、振動させない場合に比べて、観測される微弱な磁気信号が増強される。
【解決手段】測定対象部位Pに送信焦点fを設定して超音波プローブ11から超音波uを送信した状態で、超伝導磁気測定装置20により微弱な磁気信号を測定する。そして、磁気画像Gmと超音波画像Guと両者を合成し、磁気・超音波画像Gxとを得る。
【効果】測定対象部位Pの磁気発生源が超音波uの周波数近傍で振動するため、振動させない場合に比べて、観測される微弱な磁気信号が増強される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気測定装置および磁気測定方法に関し、更に詳しくは、微弱な磁場信号を増強して測定することが出来る磁気測定装置および磁気測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳磁場信号のような微弱な磁気信号を測定する場合にノイズを抑制する方法として、バンドパスフィルタやノッチフィルタを利用するフィルタ法や、刺激に同期して磁気を測定することを多数回繰り返してデータを加算平均する加算平均法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】原宏・栗城真也共著「脳磁気科学、−SQUID計測と医学応用−」オーム社出版局、平成9年1月25日、p.50−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のフィルタ法および加算平均法では、磁気信号自体は微弱なままで測定している。
そこで、本発明の目的は、微弱な磁場信号を増強して測定することが出来る磁気測定装置および磁気測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、測定対象部位(P)に超音波(u)を送信するための超音波送信手段(10)と、前記測定対象部位(P)に超音波(u)を送信した時の磁気強度を測定するための磁気強度測定手段(20)とを具備したことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第1の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)に存在する磁気発生源が超音波(u)の周波数で振動するため、観測される微弱な磁気信号が増強される。従って、超音波(u)で振動させない場合よりも強い磁気信号を測定することが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、超音波(u)の周波数帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来のフィルタ法では、脳磁場信号の周波数帯域だけを取り出すための0.1Hz〜300Hzのバンドパスフィルタを用いたり、商用電源に起因する50Hzや60Hzのノイズをカットするノッチフィルタなどを用いている。しかし、0.1Hz〜300Hzの周波数帯域に広がっているノイズ(例えば電子回路のノイズ)を抑制できない問題点がある。また、ノッチフィルタの周波数帯域が脳磁場信号の周波数帯域と重なるため、脳磁場信号の波形を歪ませる問題点がある。
そこで、上記第2の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)に存在する磁気発生源を超音波(u)の周波数で振動させて微弱な磁気信号を超音波(u)の周波数で変調する。これにより、超音波(u)の周波数が例えば5MHzなら磁気信号の周波数帯域も5MHz近傍へシフトすることになる。一方、電子回路や商用電源は超音波(u)の影響を受けないから、それらに起因するノイズは5MHzよりずっと低い低周波数帯域のままにとどまる。よって、5MHz近傍の周波数帯域を取り出すことにより、ノイズの影響を抑制して微弱な磁場信号を好適に測定することが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1の観点による磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、送信する超音波(u)と同一周波数・同一位相の信号(f)と磁気センサ(22)で得た信号(Ss)とを乗算する乗算手段(231)を含むことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来のフィルタ法では、脳磁場信号の周波数帯域だけを取り出すための0.1Hz〜300Hzのバンドパスフィルタを用いたり、商用電源に起因する50Hzや60Hzのノイズをカットするノッチフィルタなどを用いている。しかし、0.1Hz〜300Hzの周波数帯域に広がっているノイズ(例えば電子回路のノイズ)を抑制できない問題点がある。また、ノッチフィルタの周波数帯域が脳磁場信号の周波数帯域と重なるため、脳磁場信号の波形を歪ませる問題点がある。
そこで、上記第3の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)に存在する磁気発生源を超音波(u)の周波数で振動させて微弱な磁気信号を超音波(u)の周波数で変調する。これにより、超音波(u)の周波数が例えば5MHzなら磁気信号の周波数帯域も5MHz近傍へシフトすることになる。一方、電子回路や商用電源は超音波(u)の影響を受けないから、それらに起因するノイズは5MHzよりずっと低い低周波数帯域のままにとどまる。また、仮に超音波(u)の周波数のノイズが存在しても位相が一致する確率は非常に低い。よって、超音波(u)と同一周波数・同一位相の信号(f)と磁気センサ(22)で得た信号(Ss)とを乗算すれば、ノイズの影響を抑制して微弱な磁場信号を好適に測定することが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来の加算平均法では、視覚などの感覚を通して脳に刺激を与えている。しかし、例えば肝臓などの臓器に対しては、刺激を与える適当な方法が無いという問題点がある。
そこで、上記第4の観点による磁気測定装置では、超音波パルスが測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定する。これにより、例えば肝臓などの臓器に対しても、超音波パルスを刺激とする磁場信号を測定することが出来る。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第4の観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信することを複数回繰り返し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを複数回繰り返して得られたデータを加算平均することを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来の加算平均法では、視覚などの感覚を通して脳に刺激を与えている。しかし、例えば肝臓などの臓器に対しては、刺激を与える適当な方法が無いという問題点がある。
そこで、上記第5の観点による磁気測定装置では、超音波パルスが測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを繰り返して得られたデータを加算平均する。これにより、例えば肝臓などの臓器に対しても、加算平均法を適用することが出来る。
【0009】
第6の観点では、本発明は、前記第1から前記第5のいずれかの観点による磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)が、複数のSQUID(21)により磁気を測定し磁気画像(Gm)を出力する超伝導磁気測定装置(20)であることを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第6の観点による磁気測定装置では、観測される微弱な磁気信号が増強されるため、磁気画像(Gm)の画質を向上することが出来る。
【0010】
第7の観点では、本発明は、前記第1から第6のいずれかの観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は2次元領域をカバーするように超音波ビームの位置を変えて超音波パルスを送信すると共に、前記超音波ビームの位置と前記超音波パルスを送信した後の磁気強度の時間変化とから磁気画像(Gm)を作成する磁気画像作成手段(70)を具備したことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第6の観点による磁気測定装置では、Bモード超音波画像を作成するのと同様の方法によって磁気画像(Gm)を作成することが出来る。
【0011】
第8の観点では、本発明は、前記第6または第7の観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)が、超音波(u)の送信に対応して受信した超音波エコーから超音波画像(Gu)を出力する超音波診断装置(10)であることを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第8の観点による磁気測定装置では、画質を向上した磁気画像(Gm)に加えて、超音波画像(Gu)を得ることが出来る。
【0012】
第9の観点では、本発明は、前記第7または第8の観点による磁気測定装置において、前記磁気画像(Gm)と前記超音波画像(Gu)とを合成した磁気・超音波画像(Gx)を作成する画像合成手段(40)を具備したことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第9の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)のどの部分で微弱な磁気信号が発生しているのかを超音波画像(Gu)上で視認することが出来る。
【0013】
第10の観点では、本発明は、前記第1から前記第9のいずれかの観点による磁気測定装置を用いて、磁気マーカーを注入した生体(K)の臓器を前記測定対象部位(P)として、磁気を測定することを特徴とする磁気測定方法を提供する。
上記第10の観点による磁気測定方法では、例えばガン細胞に付着しやすい物質に結合した磁気マーカーを生体(K)に注入すると、生体(K)の臓器におけるガン細胞の位置や大きさを知ることが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の磁気測定装置および磁気測定方法によれば、測定対象部位に存在する磁気発生源が超音波の周波数で振動するため、発生する微弱磁場が増強され、超音波で振動させない場合よりも強い磁気信号を測定することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1に係る磁気測定装置100の構成説明図である。
磁気測定装置100は、生体Kに超音波uを送信する超音波診断装置10と、生体Kで発生した磁場信号を測定する超伝導磁気測定装置20と、超音波プローブ11の3次元位置・姿勢PuおよびSQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを検出する3次元位置検出装置30と、超伝導磁気測定装置20で撮影した磁気画像Gmと超音波診断装置10で撮影した超音波画像Guとを合成して磁気・超音波画像Gxを作成する画像合成装置40と、磁気画像Gmと超音波画像Guと磁気・超音波画像Gxのいずれかを選択する画像選択スイッチ50と、磁気画像Gmや超音波画像Guや磁気・超音波画像Gxを表示する画像表示装置60とを具備している。
【0017】
超音波診断装置10は、多数の超音波振動子を2次元配列した超音波プローブ11と、超音波uの送信や超音波エコーの受信を制御する超音波送受信部12と、受信した超音波エコーから超音波画像Guを作成し出力する超音波画像出力部13とを具備している。
なお、超音波uは、連続波でもよいし、パルス波でもよい。超音波画像Guを作成する場合や、後述する測定時間帯域Btを設ける場合は、パルス波とする。
【0018】
超伝導磁気測定装置20は、多数のSQUID21を2次元配列したSQUIDセンサ部22と、SQUID21により磁気強度を測定する磁気強度測定部23と、測定した磁気強度から磁気画像Gmを作成し出力する磁気画像出力部24とを具備している。
【0019】
3次元位置検出装置30は、超音波プローブ11のの3次元位置・姿勢Puを検出するための3次元位置検出アーム31と、SQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを検出するための3次元位置検出アーム32と、検出した超音波プローブ11の3次元位置・姿勢PuおよびSQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを出力する3次元位置データ出力部33とを具備している。
【0020】
画像合成装置40は、超音波プローブ11の3次元位置・姿勢PuおよびSQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを基に、超音波画像Guに合わせて磁気画像Gmを変形する。そして、その変形した磁気画像Gmを超音波画像Guに重ね合わせて磁気・超音波画像Gxを作成する。なお、磁気画像Gmに合わせて超音波画像Guを変形し、その変形した超音波画像Guを磁気画像Gmに重ね合わせて磁気・超音波画像Gxを作成してもよい。
【0021】
図2は、ノイズの周波数特性Nfと測定周波数帯域Bfの関係を示す概念図である。
ノイズは、低周波数帯域では電子回路や商用電源に起因するノイズが含まれるため強くなり、高周波帯域では白色ノイズだけになるため弱くなるような周波数特性Nfを有している。
一方、磁気強度測定部23では、例えばバンドパスフィルタを用いて、超音波uの周波数Fu近傍を測定周波数帯域Bfとしている。
【0022】
図1に示すように、測定対象部位Pに送信焦点fを設定して超音波uを送信すると、測定対象部位Pの磁気発生源が超音波uの周波数Fu近傍で振動する。このため、振動させない場合に比べて、観測される微弱な磁気信号が増強される。また、観測される微弱な磁気信号の周波数帯域が超音波uの周波数Fu近傍にシフトする。
従って、測定対象部位Pから発生する微弱な磁気信号を、ノイズの影響を抑制して、好適に測定することが出来る。
【0023】
図3は、超音波uをパルス波で送信した場合に観測される微弱な磁気信号の時間変化Dtを示す説明図である。
観測される微弱な磁気信号は、超音波プローブ11から送信時刻tsに発射した超音波パルスが遅延時間τ後に測定対象部位Pに到達すると増強され、その後、元の強度に戻るような時間変化Dtを示している。
一方、磁気強度測定部23では、例えばタイミング回路を用いて、超音波パルスの送信時刻tsから遅延時間τ後の数秒間を測定時間帯域Btとしている。
従って、超音波パルスを刺激として、加算平均法を適用することが可能になる。
【0024】
図4は、例えば測定対象部位Pを肝臓のような臓器とし、ガン細胞に付着しやすい物質(例えばモノクロナール抗体)に結合した磁気マーカーを臓器へ向かう血液中に注入して、超伝導磁気測定装置20により得た磁気画像Gmを示す模式図である。
この磁気画像Gmでは、磁気発生源Mfがあることからガン細胞が存在していることが判る。
【0025】
図5は、磁気画像Gmを得た後に超伝導診断装置10により撮影した超音波画像Guを示す模式図である。
この超音波画像Guでは、臓器の形状が判る。
【0026】
図6は、超音波画像Guに合わせて磁気画像Gmを変形し両者を重ね合わせて作成した磁気・超音波画像Gxを示す模式図である。
この磁気・超音波画像Gxでは、臓器のどの部分に磁気発生源Mfすなわちガン細胞が存在しているか、どの程度の大きさかなどが判る。
【0027】
実施例1の磁気測定装置100によれば、次の効果が得られる。
(1)超音波uで振動させない場合よりも強い磁気信号を測定することが出来る。
(2)ノイズの影響を抑制して微弱な磁場信号を測定することが出来る。
(3)超音波パルスを刺激とする磁場信号を測定することが出来る。
(4)例えば肝臓などの臓器に対しても加算平均法を適用することが出来る。
(5)磁気画像Gmの画質を向上することが出来る。
(6)超音波画像Guも得ることが出来る。
(7)どの部分で微弱な磁気信号が発生しているのかを超音波画像Gu上で視認することが出来る。
(8)例えばガン細胞に付着しやすい物質に結合した磁気マーカーを生体Kに注入すると、ガン細胞の位置や大きさを知ることが出来る。
【実施例2】
【0028】
図7は、実施例2に係る磁気測定装置200の構成説明図である。
この磁気測定装置200は、実施例1に係る磁気測定装置100と基本的に同じ構成であるが、磁気強度測定部23の構成が異なっている。
【0029】
図8に示すように、磁気強度測定部23は、乗算器231と、スイッチ232と、タイミング回路233とを含んでいる。
タイミング回路233は、図3に示す測定時間帯域Btの期間だけスイッチ232を実線の接続とし、他の期間は破線の接続とする。従って、図3に示す測定時間帯域Btの期間は、超音波プローブ11から送信する超音波uと同一周波数・同一位相の信号fが乗算器231に入力され、他の期間は「0」が乗算器231に入力される。
乗算器231は、測定時間帯域Btの期間は、超音波プローブ11から送信する超音波uと同一周波数・同一位相の信号fとSQUIDセンサ部22で得た信号Ssとを乗算した積信号を出力信号Sdとして出力し、他の期間は「0」を出力信号Sdとして出力する。
【0030】
実施例2の磁気測定装置200によれば、図2に示す測定周波数帯域Bfのノイズがあっても超音波プローブ11から送信する超音波uと位相が異なれば抑制することが出来る。
【実施例3】
【0031】
図9は、実施例3に係る磁気測定装置300の構成説明図である。
磁気測定装置300は、生体Kに超音波パルスpを送信する超音波診断装置10と、生体Kで発生した磁場信号を測定する超伝導磁気測定装置25と、超音波パルスpの送信時刻tsからの経過時間τと超音波パルスpの送信方向θと磁気信号強度とに基づいて磁気画像Gmを作成する磁気画像作成装置70と、磁気画像作成装置70で作成した磁気画像Gmと超音波診断装置10で撮影した超音波画像Guとを合成して磁気・超音波画像Gxを作成する画像合成装置45と、磁気画像Gmと超音波画像Guと磁気・超音波画像Gxのいずれかを選択する画像選択スイッチ50と、磁気画像Gmや超音波画像Guや磁気・超音波画像Gxを表示する画像表示装置60とを具備している。
【0032】
超音波診断装置10は、多数の超音波振動子を2次元配列した超音波プローブ11と、超音波パルスpの送信や超音波エコーの受信や超音波ビームの電子走査を制御する超音波送受信部12と、受信した超音波エコーから超音波画像Guを作成し出力する超音波画像出力部13とを具備している。
【0033】
超伝導磁気測定装置25は、1個または複数個のSQUID21を配設したSQUIDセンサ部26と、SQUID21により磁気強度を測定する磁気強度測定部23とを具備している。
【0034】
磁気画像作成装置70は、Bモード超音波画像の作成方法と同様の方法により磁気画像Gmを作成する。この磁気画像Gmの作成方法については後述する。
【0035】
画像合成装置45は、磁気画像Gmと超音波画像Guとを重ね合わせて磁気・超音波画像Gxを作成する。この磁気・超音波画像Gxの作成方法については後述する。
【0036】
図10に示すように、磁気強度測定部23は、超音波プローブ11から送信する超音波uと同一周波数・同一位相の信号fとSQUIDセンサ部26で得た信号Ssとを乗算した積信号を出力信号Sdとして出力する。
【0037】
図11の(a)は、超音波エコー強度Utの時間変化を示す模式図である。
超音波パルスpの送信時刻tsから経過時間τ×2の超音波エコー強度は、超音波パルスpが時間τで到達した部位の密度情報を表している。これは、超音波エコー信号を反射する部位の密度が高いほど強く反射するからである。但し、超音波は進行中に減衰するため、平均的には、超音波パルスpの送信時刻tsから経過時間に応じて超音波エコー強度は小さくなる。超音波パルスpの送信方向θと超音波パルスpの送信時刻tsからの経過時間τと超音波エコー強度とから、図12の(a)に示す如きBモード超音波画像Guを作成する方法は公知である。
【0038】
図11の(b)は、観測される磁気信号強度Sdの時間変化を示す模式図である。
超音波パルスpの送信時刻tsから経過時間τに観測される磁気強度は、超音波パルスpが時間τで到達した部位の磁気情報を表している。これは、超音波パルスpにより振動させられた部位に存在する磁気発生源からの磁気信号が、他の磁気発生源からの磁気信号よりも増強されて観測されるからである。そこで、Bモード超音波画像を作成方法と同様に、超音波パルスpの送信方向θに、超音波パルスpの送信時刻tsからの経過時間τの順に観測された磁気強度を並べることを、電子走査による異なる多数の送信方向θについて行うことで、図12の(b)に示す如き磁気画像Guを作成することが出来る。
【0039】
図12の(c)は、超音波画像Guと磁気画像Gmを重ね合わせて作成した磁気・超音波画像Gxを示す模式図である。
【0040】
実施例3の磁気測定装置300によれば、実施例1よりも構成を簡単化できる。また、超音波プローブ11から送信する超音波uと周波数または位相が異なるノイズを抑制することが出来る。
【0041】
なお、実施例3では、セクタ型またはコンベックス型の電子走査を想定したが、リニア型の電子走査でもよいし、メカニカル走査でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
生体の微弱な磁気分布を測定する装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1に係る磁気測定装置の構成説明図である。
【図2】ノイズの周波数特性と測定周波数帯域の説明図である。
【図3】観測される微弱な磁気信号の時間変化と測定時間帯域の説明図である。
【図4】磁気画像の一例を示す模式図である。
【図5】超音波画像の一例を示す模式図である。
【図6】磁気・超音波画像の一例を示す模式図である。
【図7】実施例2に係る磁気測定装置の構成説明図である。
【図8】実施例2に係る磁気強度測定部の構成説明図である。
【図9】実施例3に係る磁気測定装置の構成説明図である。
【図10】実施例3に係る磁気強度測定部の構成説明図である。
【図11】超音波エコーと観測される微弱な磁気信号の時間変化を示す説明図である。
【図12】磁気画像、超音波画像および磁気・超音波画像の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10 超音波診断装置
20,25 超伝導磁気測定装置
30 3次元位置検出装置
40,45 画像合成装置
50 画像切替スイッチ
60 画像表示装置
70 磁気画像作成装置
100,200,300 磁気測定装置
231 乗算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気測定装置および磁気測定方法に関し、更に詳しくは、微弱な磁場信号を増強して測定することが出来る磁気測定装置および磁気測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳磁場信号のような微弱な磁気信号を測定する場合にノイズを抑制する方法として、バンドパスフィルタやノッチフィルタを利用するフィルタ法や、刺激に同期して磁気を測定することを多数回繰り返してデータを加算平均する加算平均法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】原宏・栗城真也共著「脳磁気科学、−SQUID計測と医学応用−」オーム社出版局、平成9年1月25日、p.50−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のフィルタ法および加算平均法では、磁気信号自体は微弱なままで測定している。
そこで、本発明の目的は、微弱な磁場信号を増強して測定することが出来る磁気測定装置および磁気測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、測定対象部位(P)に超音波(u)を送信するための超音波送信手段(10)と、前記測定対象部位(P)に超音波(u)を送信した時の磁気強度を測定するための磁気強度測定手段(20)とを具備したことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第1の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)に存在する磁気発生源が超音波(u)の周波数で振動するため、観測される微弱な磁気信号が増強される。従って、超音波(u)で振動させない場合よりも強い磁気信号を測定することが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、超音波(u)の周波数帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来のフィルタ法では、脳磁場信号の周波数帯域だけを取り出すための0.1Hz〜300Hzのバンドパスフィルタを用いたり、商用電源に起因する50Hzや60Hzのノイズをカットするノッチフィルタなどを用いている。しかし、0.1Hz〜300Hzの周波数帯域に広がっているノイズ(例えば電子回路のノイズ)を抑制できない問題点がある。また、ノッチフィルタの周波数帯域が脳磁場信号の周波数帯域と重なるため、脳磁場信号の波形を歪ませる問題点がある。
そこで、上記第2の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)に存在する磁気発生源を超音波(u)の周波数で振動させて微弱な磁気信号を超音波(u)の周波数で変調する。これにより、超音波(u)の周波数が例えば5MHzなら磁気信号の周波数帯域も5MHz近傍へシフトすることになる。一方、電子回路や商用電源は超音波(u)の影響を受けないから、それらに起因するノイズは5MHzよりずっと低い低周波数帯域のままにとどまる。よって、5MHz近傍の周波数帯域を取り出すことにより、ノイズの影響を抑制して微弱な磁場信号を好適に測定することが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1の観点による磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、送信する超音波(u)と同一周波数・同一位相の信号(f)と磁気センサ(22)で得た信号(Ss)とを乗算する乗算手段(231)を含むことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来のフィルタ法では、脳磁場信号の周波数帯域だけを取り出すための0.1Hz〜300Hzのバンドパスフィルタを用いたり、商用電源に起因する50Hzや60Hzのノイズをカットするノッチフィルタなどを用いている。しかし、0.1Hz〜300Hzの周波数帯域に広がっているノイズ(例えば電子回路のノイズ)を抑制できない問題点がある。また、ノッチフィルタの周波数帯域が脳磁場信号の周波数帯域と重なるため、脳磁場信号の波形を歪ませる問題点がある。
そこで、上記第3の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)に存在する磁気発生源を超音波(u)の周波数で振動させて微弱な磁気信号を超音波(u)の周波数で変調する。これにより、超音波(u)の周波数が例えば5MHzなら磁気信号の周波数帯域も5MHz近傍へシフトすることになる。一方、電子回路や商用電源は超音波(u)の影響を受けないから、それらに起因するノイズは5MHzよりずっと低い低周波数帯域のままにとどまる。また、仮に超音波(u)の周波数のノイズが存在しても位相が一致する確率は非常に低い。よって、超音波(u)と同一周波数・同一位相の信号(f)と磁気センサ(22)で得た信号(Ss)とを乗算すれば、ノイズの影響を抑制して微弱な磁場信号を好適に測定することが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来の加算平均法では、視覚などの感覚を通して脳に刺激を与えている。しかし、例えば肝臓などの臓器に対しては、刺激を与える適当な方法が無いという問題点がある。
そこで、上記第4の観点による磁気測定装置では、超音波パルスが測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定する。これにより、例えば肝臓などの臓器に対しても、超音波パルスを刺激とする磁場信号を測定することが出来る。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第4の観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信することを複数回繰り返し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを複数回繰り返して得られたデータを加算平均することを特徴とする磁気測定装置を提供する。
従来の加算平均法では、視覚などの感覚を通して脳に刺激を与えている。しかし、例えば肝臓などの臓器に対しては、刺激を与える適当な方法が無いという問題点がある。
そこで、上記第5の観点による磁気測定装置では、超音波パルスが測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを繰り返して得られたデータを加算平均する。これにより、例えば肝臓などの臓器に対しても、加算平均法を適用することが出来る。
【0009】
第6の観点では、本発明は、前記第1から前記第5のいずれかの観点による磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)が、複数のSQUID(21)により磁気を測定し磁気画像(Gm)を出力する超伝導磁気測定装置(20)であることを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第6の観点による磁気測定装置では、観測される微弱な磁気信号が増強されるため、磁気画像(Gm)の画質を向上することが出来る。
【0010】
第7の観点では、本発明は、前記第1から第6のいずれかの観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は2次元領域をカバーするように超音波ビームの位置を変えて超音波パルスを送信すると共に、前記超音波ビームの位置と前記超音波パルスを送信した後の磁気強度の時間変化とから磁気画像(Gm)を作成する磁気画像作成手段(70)を具備したことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第6の観点による磁気測定装置では、Bモード超音波画像を作成するのと同様の方法によって磁気画像(Gm)を作成することが出来る。
【0011】
第8の観点では、本発明は、前記第6または第7の観点による磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)が、超音波(u)の送信に対応して受信した超音波エコーから超音波画像(Gu)を出力する超音波診断装置(10)であることを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第8の観点による磁気測定装置では、画質を向上した磁気画像(Gm)に加えて、超音波画像(Gu)を得ることが出来る。
【0012】
第9の観点では、本発明は、前記第7または第8の観点による磁気測定装置において、前記磁気画像(Gm)と前記超音波画像(Gu)とを合成した磁気・超音波画像(Gx)を作成する画像合成手段(40)を具備したことを特徴とする磁気測定装置を提供する。
上記第9の観点による磁気測定装置では、測定対象部位(P)のどの部分で微弱な磁気信号が発生しているのかを超音波画像(Gu)上で視認することが出来る。
【0013】
第10の観点では、本発明は、前記第1から前記第9のいずれかの観点による磁気測定装置を用いて、磁気マーカーを注入した生体(K)の臓器を前記測定対象部位(P)として、磁気を測定することを特徴とする磁気測定方法を提供する。
上記第10の観点による磁気測定方法では、例えばガン細胞に付着しやすい物質に結合した磁気マーカーを生体(K)に注入すると、生体(K)の臓器におけるガン細胞の位置や大きさを知ることが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の磁気測定装置および磁気測定方法によれば、測定対象部位に存在する磁気発生源が超音波の周波数で振動するため、発生する微弱磁場が増強され、超音波で振動させない場合よりも強い磁気信号を測定することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1に係る磁気測定装置100の構成説明図である。
磁気測定装置100は、生体Kに超音波uを送信する超音波診断装置10と、生体Kで発生した磁場信号を測定する超伝導磁気測定装置20と、超音波プローブ11の3次元位置・姿勢PuおよびSQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを検出する3次元位置検出装置30と、超伝導磁気測定装置20で撮影した磁気画像Gmと超音波診断装置10で撮影した超音波画像Guとを合成して磁気・超音波画像Gxを作成する画像合成装置40と、磁気画像Gmと超音波画像Guと磁気・超音波画像Gxのいずれかを選択する画像選択スイッチ50と、磁気画像Gmや超音波画像Guや磁気・超音波画像Gxを表示する画像表示装置60とを具備している。
【0017】
超音波診断装置10は、多数の超音波振動子を2次元配列した超音波プローブ11と、超音波uの送信や超音波エコーの受信を制御する超音波送受信部12と、受信した超音波エコーから超音波画像Guを作成し出力する超音波画像出力部13とを具備している。
なお、超音波uは、連続波でもよいし、パルス波でもよい。超音波画像Guを作成する場合や、後述する測定時間帯域Btを設ける場合は、パルス波とする。
【0018】
超伝導磁気測定装置20は、多数のSQUID21を2次元配列したSQUIDセンサ部22と、SQUID21により磁気強度を測定する磁気強度測定部23と、測定した磁気強度から磁気画像Gmを作成し出力する磁気画像出力部24とを具備している。
【0019】
3次元位置検出装置30は、超音波プローブ11のの3次元位置・姿勢Puを検出するための3次元位置検出アーム31と、SQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを検出するための3次元位置検出アーム32と、検出した超音波プローブ11の3次元位置・姿勢PuおよびSQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを出力する3次元位置データ出力部33とを具備している。
【0020】
画像合成装置40は、超音波プローブ11の3次元位置・姿勢PuおよびSQUIDセンサ部22の3次元位置・姿勢Pmを基に、超音波画像Guに合わせて磁気画像Gmを変形する。そして、その変形した磁気画像Gmを超音波画像Guに重ね合わせて磁気・超音波画像Gxを作成する。なお、磁気画像Gmに合わせて超音波画像Guを変形し、その変形した超音波画像Guを磁気画像Gmに重ね合わせて磁気・超音波画像Gxを作成してもよい。
【0021】
図2は、ノイズの周波数特性Nfと測定周波数帯域Bfの関係を示す概念図である。
ノイズは、低周波数帯域では電子回路や商用電源に起因するノイズが含まれるため強くなり、高周波帯域では白色ノイズだけになるため弱くなるような周波数特性Nfを有している。
一方、磁気強度測定部23では、例えばバンドパスフィルタを用いて、超音波uの周波数Fu近傍を測定周波数帯域Bfとしている。
【0022】
図1に示すように、測定対象部位Pに送信焦点fを設定して超音波uを送信すると、測定対象部位Pの磁気発生源が超音波uの周波数Fu近傍で振動する。このため、振動させない場合に比べて、観測される微弱な磁気信号が増強される。また、観測される微弱な磁気信号の周波数帯域が超音波uの周波数Fu近傍にシフトする。
従って、測定対象部位Pから発生する微弱な磁気信号を、ノイズの影響を抑制して、好適に測定することが出来る。
【0023】
図3は、超音波uをパルス波で送信した場合に観測される微弱な磁気信号の時間変化Dtを示す説明図である。
観測される微弱な磁気信号は、超音波プローブ11から送信時刻tsに発射した超音波パルスが遅延時間τ後に測定対象部位Pに到達すると増強され、その後、元の強度に戻るような時間変化Dtを示している。
一方、磁気強度測定部23では、例えばタイミング回路を用いて、超音波パルスの送信時刻tsから遅延時間τ後の数秒間を測定時間帯域Btとしている。
従って、超音波パルスを刺激として、加算平均法を適用することが可能になる。
【0024】
図4は、例えば測定対象部位Pを肝臓のような臓器とし、ガン細胞に付着しやすい物質(例えばモノクロナール抗体)に結合した磁気マーカーを臓器へ向かう血液中に注入して、超伝導磁気測定装置20により得た磁気画像Gmを示す模式図である。
この磁気画像Gmでは、磁気発生源Mfがあることからガン細胞が存在していることが判る。
【0025】
図5は、磁気画像Gmを得た後に超伝導診断装置10により撮影した超音波画像Guを示す模式図である。
この超音波画像Guでは、臓器の形状が判る。
【0026】
図6は、超音波画像Guに合わせて磁気画像Gmを変形し両者を重ね合わせて作成した磁気・超音波画像Gxを示す模式図である。
この磁気・超音波画像Gxでは、臓器のどの部分に磁気発生源Mfすなわちガン細胞が存在しているか、どの程度の大きさかなどが判る。
【0027】
実施例1の磁気測定装置100によれば、次の効果が得られる。
(1)超音波uで振動させない場合よりも強い磁気信号を測定することが出来る。
(2)ノイズの影響を抑制して微弱な磁場信号を測定することが出来る。
(3)超音波パルスを刺激とする磁場信号を測定することが出来る。
(4)例えば肝臓などの臓器に対しても加算平均法を適用することが出来る。
(5)磁気画像Gmの画質を向上することが出来る。
(6)超音波画像Guも得ることが出来る。
(7)どの部分で微弱な磁気信号が発生しているのかを超音波画像Gu上で視認することが出来る。
(8)例えばガン細胞に付着しやすい物質に結合した磁気マーカーを生体Kに注入すると、ガン細胞の位置や大きさを知ることが出来る。
【実施例2】
【0028】
図7は、実施例2に係る磁気測定装置200の構成説明図である。
この磁気測定装置200は、実施例1に係る磁気測定装置100と基本的に同じ構成であるが、磁気強度測定部23の構成が異なっている。
【0029】
図8に示すように、磁気強度測定部23は、乗算器231と、スイッチ232と、タイミング回路233とを含んでいる。
タイミング回路233は、図3に示す測定時間帯域Btの期間だけスイッチ232を実線の接続とし、他の期間は破線の接続とする。従って、図3に示す測定時間帯域Btの期間は、超音波プローブ11から送信する超音波uと同一周波数・同一位相の信号fが乗算器231に入力され、他の期間は「0」が乗算器231に入力される。
乗算器231は、測定時間帯域Btの期間は、超音波プローブ11から送信する超音波uと同一周波数・同一位相の信号fとSQUIDセンサ部22で得た信号Ssとを乗算した積信号を出力信号Sdとして出力し、他の期間は「0」を出力信号Sdとして出力する。
【0030】
実施例2の磁気測定装置200によれば、図2に示す測定周波数帯域Bfのノイズがあっても超音波プローブ11から送信する超音波uと位相が異なれば抑制することが出来る。
【実施例3】
【0031】
図9は、実施例3に係る磁気測定装置300の構成説明図である。
磁気測定装置300は、生体Kに超音波パルスpを送信する超音波診断装置10と、生体Kで発生した磁場信号を測定する超伝導磁気測定装置25と、超音波パルスpの送信時刻tsからの経過時間τと超音波パルスpの送信方向θと磁気信号強度とに基づいて磁気画像Gmを作成する磁気画像作成装置70と、磁気画像作成装置70で作成した磁気画像Gmと超音波診断装置10で撮影した超音波画像Guとを合成して磁気・超音波画像Gxを作成する画像合成装置45と、磁気画像Gmと超音波画像Guと磁気・超音波画像Gxのいずれかを選択する画像選択スイッチ50と、磁気画像Gmや超音波画像Guや磁気・超音波画像Gxを表示する画像表示装置60とを具備している。
【0032】
超音波診断装置10は、多数の超音波振動子を2次元配列した超音波プローブ11と、超音波パルスpの送信や超音波エコーの受信や超音波ビームの電子走査を制御する超音波送受信部12と、受信した超音波エコーから超音波画像Guを作成し出力する超音波画像出力部13とを具備している。
【0033】
超伝導磁気測定装置25は、1個または複数個のSQUID21を配設したSQUIDセンサ部26と、SQUID21により磁気強度を測定する磁気強度測定部23とを具備している。
【0034】
磁気画像作成装置70は、Bモード超音波画像の作成方法と同様の方法により磁気画像Gmを作成する。この磁気画像Gmの作成方法については後述する。
【0035】
画像合成装置45は、磁気画像Gmと超音波画像Guとを重ね合わせて磁気・超音波画像Gxを作成する。この磁気・超音波画像Gxの作成方法については後述する。
【0036】
図10に示すように、磁気強度測定部23は、超音波プローブ11から送信する超音波uと同一周波数・同一位相の信号fとSQUIDセンサ部26で得た信号Ssとを乗算した積信号を出力信号Sdとして出力する。
【0037】
図11の(a)は、超音波エコー強度Utの時間変化を示す模式図である。
超音波パルスpの送信時刻tsから経過時間τ×2の超音波エコー強度は、超音波パルスpが時間τで到達した部位の密度情報を表している。これは、超音波エコー信号を反射する部位の密度が高いほど強く反射するからである。但し、超音波は進行中に減衰するため、平均的には、超音波パルスpの送信時刻tsから経過時間に応じて超音波エコー強度は小さくなる。超音波パルスpの送信方向θと超音波パルスpの送信時刻tsからの経過時間τと超音波エコー強度とから、図12の(a)に示す如きBモード超音波画像Guを作成する方法は公知である。
【0038】
図11の(b)は、観測される磁気信号強度Sdの時間変化を示す模式図である。
超音波パルスpの送信時刻tsから経過時間τに観測される磁気強度は、超音波パルスpが時間τで到達した部位の磁気情報を表している。これは、超音波パルスpにより振動させられた部位に存在する磁気発生源からの磁気信号が、他の磁気発生源からの磁気信号よりも増強されて観測されるからである。そこで、Bモード超音波画像を作成方法と同様に、超音波パルスpの送信方向θに、超音波パルスpの送信時刻tsからの経過時間τの順に観測された磁気強度を並べることを、電子走査による異なる多数の送信方向θについて行うことで、図12の(b)に示す如き磁気画像Guを作成することが出来る。
【0039】
図12の(c)は、超音波画像Guと磁気画像Gmを重ね合わせて作成した磁気・超音波画像Gxを示す模式図である。
【0040】
実施例3の磁気測定装置300によれば、実施例1よりも構成を簡単化できる。また、超音波プローブ11から送信する超音波uと周波数または位相が異なるノイズを抑制することが出来る。
【0041】
なお、実施例3では、セクタ型またはコンベックス型の電子走査を想定したが、リニア型の電子走査でもよいし、メカニカル走査でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
生体の微弱な磁気分布を測定する装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1に係る磁気測定装置の構成説明図である。
【図2】ノイズの周波数特性と測定周波数帯域の説明図である。
【図3】観測される微弱な磁気信号の時間変化と測定時間帯域の説明図である。
【図4】磁気画像の一例を示す模式図である。
【図5】超音波画像の一例を示す模式図である。
【図6】磁気・超音波画像の一例を示す模式図である。
【図7】実施例2に係る磁気測定装置の構成説明図である。
【図8】実施例2に係る磁気強度測定部の構成説明図である。
【図9】実施例3に係る磁気測定装置の構成説明図である。
【図10】実施例3に係る磁気強度測定部の構成説明図である。
【図11】超音波エコーと観測される微弱な磁気信号の時間変化を示す説明図である。
【図12】磁気画像、超音波画像および磁気・超音波画像の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10 超音波診断装置
20,25 超伝導磁気測定装置
30 3次元位置検出装置
40,45 画像合成装置
50 画像切替スイッチ
60 画像表示装置
70 磁気画像作成装置
100,200,300 磁気測定装置
231 乗算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象部位(P)に超音波(u)を送信するための超音波送信手段(10)と、前記測定対象部位(P)に超音波(u)を送信した時の磁気強度を測定するための磁気強度測定手段(20)とを具備したことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、超音波(u)の周波数帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置(100)。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、送信する超音波(u)と同一周波数・同一位相の信号(f)と磁気センサ(22)で得た信号(Ss)とを乗算する乗算手段(231)を含むことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信することを複数回繰り返し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを複数回繰り返して得られたデータを加算平均することを特徴とする磁気測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)が、複数のSQUID(21)により磁気を測定し磁気画像(Gm)を出力する超伝導磁気測定装置(20)であることを特徴とする磁気測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は2次元領域をカバーするように超音波ビームの位置を変えて超音波パルスを送信すると共に、前記超音波ビームの位置と前記超音波パルスを送信した後の磁気強度の時間変化とから磁気画像(Gm)を作成する磁気画像作成手段(70)を具備したことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)が、超音波(u)の送信に対応して受信した超音波エコーから超音波画像(Gu)を出力する超音波診断装置(10)であることを特徴とする磁気測定装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の磁気測定装置において、前記磁気画像(Gm)と前記超音波画像(Gu)とを合成した磁気・超音波画像(Gx)を作成する画像合成手段(40)を具備したことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の磁気測定装置を用いて、磁気マーカーを注入した生体(K)の臓器を前記測定対象部位(P)として、磁気を測定することを特徴とする磁気測定方法。
【請求項1】
測定対象部位(P)に超音波(u)を送信するための超音波送信手段(10)と、前記測定対象部位(P)に超音波(u)を送信した時の磁気強度を測定するための磁気強度測定手段(20)とを具備したことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、超音波(u)の周波数帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置(100)。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)は、送信する超音波(u)と同一周波数・同一位相の信号(f)と磁気センサ(22)で得た信号(Ss)とを乗算する乗算手段(231)を含むことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを特徴とする磁気測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は超音波パルスを送信することを複数回繰り返し、前記磁気強度測定手段(20)は、前記超音波パルスが前記測定対象部位(P)に到達する時間帯域の磁気強度を選択的に測定することを複数回繰り返して得られたデータを加算平均することを特徴とする磁気測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の磁気測定装置において、前記磁気強度測定手段(20)が、複数のSQUID(21)により磁気を測定し磁気画像(Gm)を出力する超伝導磁気測定装置(20)であることを特徴とする磁気測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)は2次元領域をカバーするように超音波ビームの位置を変えて超音波パルスを送信すると共に、前記超音波ビームの位置と前記超音波パルスを送信した後の磁気強度の時間変化とから磁気画像(Gm)を作成する磁気画像作成手段(70)を具備したことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の磁気測定装置において、前記超音波送信手段(10)が、超音波(u)の送信に対応して受信した超音波エコーから超音波画像(Gu)を出力する超音波診断装置(10)であることを特徴とする磁気測定装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の磁気測定装置において、前記磁気画像(Gm)と前記超音波画像(Gu)とを合成した磁気・超音波画像(Gx)を作成する画像合成手段(40)を具備したことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の磁気測定装置を用いて、磁気マーカーを注入した生体(K)の臓器を前記測定対象部位(P)として、磁気を測定することを特徴とする磁気測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−288714(P2006−288714A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113271(P2005−113271)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]