説明

神経疾患治療用の新規化合物

本発明は、式1のプロリルエンドペプチダーゼの新規阻害剤に関するものである。
W-KCONH-X-CON-Y-CO-Z (1)
(式中、K、W、X、Y、及びZは、本明細書中で規定したものである。)。
該化合物は、軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、及びハンチントン病などの疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、プロリルエンドペプチダーゼ(PEP, EC 3.4.21.26)及びPEP-様酵素の阻害剤としてのヘテロアリール-カルボニル化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
プロリルエンドペプチダーゼ(PEP;EC 3.4.21.26;プロリルオリゴペプチダーゼとも呼ばれる)は、オリゴペプチダーゼ活性を特徴とするセリンペプチダーゼである。これは、SC族の酵素ファミリーS9A、プロリルオリゴペプチダーゼに付けられた名前である(*1(*は参考文献を意味する。))。SC族に属する酵素は、一次配列において、構造により、及び触媒作用的な3組の残基のオーダーにより、トリプシン-又はスブチリシン-型セリンペプチダーゼと異なる(*2;*3)。PEPの3次元構造が2つのドメイン構成を表していることが、最近報告された(*4)。該触媒ドメインは、触媒作用的な3組(Ser554, His680, Asp641)が、いわゆるβ-プロペラドメインにより覆われたα/β加水分解酵素フォールドを示す。おそらく、該プロペラドメインは、該酵素の活性成分への可能な基質の接近を制御し、かつ30個よりも多いアミノ酸数を有するペプチドを排除する。
【0003】
PEPの酵素特性、及び構造特性の深遠な知識にもかかわらず、この酵素の生物学的機能は、全くわかっていない(*5;*6)。哺乳類において、高度に保存されたPEPは、遍在的に分布され、脳内で高濃度に発生する(*7)。近年、特異的PEP阻害剤の処置により認識促進が誘発されたことが報告されたために、該酵素が医薬対象として注目された。スコポラミン-誘発健忘症を示すラットにおいて、PEP阻害剤は、前頭葉及び海馬において、アセチルコリン放出を引き起こした(*8)。さらに、中大脳動脈閉鎖ラットにおいて、PEP阻害剤の投与が、受動的回避潜伏期(passive avoidance latency)を延長し、かつモリス水迷路課題において、長い脱出潜伏期(prolonged escape latency)を減少させた(*9)。PEP阻害剤の抗痴呆薬としての潜在性は、神経保護作用の報告により、さらに確認された。PEP阻害剤の存在下、小脳顆粒細胞における神経変性の誘発は、ニューロンの生存を増加させ、かつ神経突起伸長を増強させる(*10)。さらに、m3-ムスカリン性アセチルコリン受容体のレベルが、PEP阻害剤後に増加されることが発見された。これは、ホスホイノシチド代謝回転刺激において生じた。
【0004】
これらの効果は、PEPによる神経ペプチド生物活性の変調のためであると仮定されている(*11)。インビトロにおいて、PEPは、基質P及びアルギニン-バソプレシン(AVP)を含む幾つかの神経ペプチドを、タンパク質限定加水分解により迅速に不活性化することができる(*12;*13)。基質P又はAVPなどの神経ペプチドは、学習、及び記憶に作用することが知られている(*14;*15)。基質Pの投与は、学習及び記録の定着されたパラメーターである長期増強(LTP)を誘発することができる(*16)。基質Pのニューロキニン1受容体への結合は、G-タンパク質を介在したIP3濃度の増加、及び小胞体(ER)内の細胞内貯蔵からのCa2+の放出を刺激する(*17;*18)。これらの貯蔵からのCa2+放出は、LTPの誘発、並びに学習及び記憶に関係していることが定着しているが、基質Pに対しては試験されていない(*19)。シナプス後細胞において、LTPは、IP3受容体の阻害剤により抑制され、この学習及び記憶モデルにおけるIP3形成、及びCa2+放出に不可欠な役割を示している(*20)。しかし、PEPは主に細胞質ゾルに局在している(*21)が、一方、該神経ペプチドとそれらの受容体とが、該細胞表面上で相互作用することに注意すべきである。近年、Hasebeらは、細胞質プロリルエンドペプチダーゼが、骨髄性細胞内のp40-フォックススプライス変異タンパク質(p40-phox splice variant protein)の分解に関与していることを発見した(*22)。
【0005】
EP 0 172 458は、抗健忘症薬として有用なN-フェニルアルカノイルピロリジン誘導体を開示している。
EP 0 359 547は、プロリルエンドペプチダーゼ活性を阻害し、かつ健忘症の治療に有用なピリジン化合物を開示している。
US 5,340,832は、健忘症治療用のプロリルエンドペプチダーゼの阻害剤として有用なN-置換カルバモイル-アルカノイル-プロリナール誘導体を開示している。
【0006】
US 5,763,576は、セリン及びシステインプロテアーゼの選択的阻害剤及び全阻害剤としてのテトラペプチドアルファ-ケトアミドを開示している。これらの化合物は、組織障害及び疱疹などの様々な炎症状態の治療、並びに虚血、脳卒中、及びアルツハイマー病などの神経変性仕官の治療に有用である。また、該化合物は、血液凝固酵素の阻害剤であり、かつ血栓症治療のための有用な抗凝固剤である。
【0007】
WO 91/18891は、プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤としての芳香族ピロリジン、及びチアゾリジンアミドを開示している。これは、例えばアルツハイマー病;健忘症;痴呆;不安;虚血;及び脳卒中により生じた障害の疾患に関連した、様々な記憶又は学習機能障害などのCNS障害の治療に有用である。
【0008】
WO 94/12474は、プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤としての環状ケトン化合物を開示している。該化合物は、カルボニル基が結合した、2つの窒素を含有した複素環を含む。これらの化合物は、TRH、基質P、ニューロテンシン、及びバソプレシンの分解及び非活性化を阻害する。これらは、健忘症及びアルツハイマー病を含む痴呆の治療及び抑制に有用である。
【0009】
WO 95/03277は、例えばアルツハイマー病の記憶障害、及び自己免疫疾患などの治療に有用な、プロテアーゼ(特にPEP)阻害剤としてのN-置換ピロリジニル-オキソ-アセトアミド化合物を開示している。
WO 95/15310は、プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤としてのプロリルペプチド誘導体を開示している。これらの化合物は、知能、再認知事象に対する能力、及び学習運動活動を改善するように、記憶促進薬として使用され得る。従って、WO 95/15310の化合物は、失語症、失行症、失認、又は幾つかの種類の健忘症、良性健忘症、及びコルサコフ症候群の患者に使用され得る。また、該化合物は、記憶障害を抑制するか、又は遅らせるように使用され得る。
【0010】
WO 97/07116は、急性事象(例えば虚血、及び低酸素症など)の治療、並びにアルツハイマー病、AIDS痴呆、及びハンチントン舞踏病を含む進行性神経変性障害の治療に使用するPEP阻害剤を開示している。
WO 98/35960は、加齢に伴う認知障害の治療に有用な記憶促進作用、及び抗貧血作用、並びに、急性事象(虚血/低酸素症)、及びアルツハイマー病、AIDS関連痴呆、及びハンチントン舞踏病などの進行性神経変性障害の治療に有用な神経保護作用を有する、向知性薬としてのPEP阻害剤を開示している。
【0011】
WO 00/09542は、セリン プロテアーゼの酵素活性を阻害するアルファ-ケト複素環を開示している。該化合物は、微生物増殖の阻害、術中の失血の減少、移植組織もしくは臓器の保存、癌細胞増殖もしくは腫瘍進行又は腫瘍転移もしくは浸潤の阻害、肺血管疾患, 再狭窄又は肺高血圧症心筋炎, 気管支肺異形成症, 心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患, アテローム性動脈硬化症, 再潅流傷害, アルツハイマー病, 低酸素症, 虚血, 及び血液凝固障害の治療に使用され得る。
【0012】
US 5,547,978は、ピロリジン-2-イルカルボニル複素環をベースとしたPEP阻害剤を開示している。これらは、医薬作用のために哺乳類の脳内のPEPを阻害するように使用され得る。
US 2005/0171112は、PEP阻害剤 ZW215を開示している。
【0013】
(参考文献)
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【0014】
(定義)
用語"PEP-阻害剤"、又は"プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤"は、当業者に一般に知られており、プロリルエンドペプチダーゼ(PEP, プロリルオリゴペプチダーゼ, POP)の触媒活性を阻害する酵素阻害剤を意味する。
"PEP活性"は、ペプチド又はタンパク質のプロリン後結合を加水分解することができるエンドプロテアーゼの触媒活性として規定される。該プロリンは、ペプチド又はタンパク質基質のN末端から数えて、アミノ酸位置3以上の位置に存在する。
【0015】
"PEP-様酵素"は、酵素的に活性なタンパク質又はペプチドであり、PEP活性を有し、従って、PEP阻害剤により阻害される。
本明細書中に使用される用語"医薬として許容し得る"は、ヒト及び獣医使用を包含する:例えば、用語"医薬として許容し得る"は、獣医学的に許容し得る化合物、又はヒト医学及び医療に許容し得る化合物を包含する。
本明細書及び本請求項の全体にわたって、表現"アシル"は、特に限定されない限り、C1-12アシル残基、好ましくはC1-8アシル残基、特に好ましくはC1-4アシル残基を示す。アシルの例を挙げると、下記のアルカノイル基、及びベンゾイルがある。
【0016】
本明細書及び本請求項の全体にわたって、表現"アルキル"は、特に限定されない限り、C1-12アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基を示す。アルキル基は、直鎖、又は分岐鎖であってもよい。適切なアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル(例えばn-プロピル、及びイソプロピル)、ブチル(例えばn-ブチル、tert-ブチル、及びsec-ブチル)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル(例えばn-ヘプチル)、及びオクチル(例えばn-オクチル)を含む。例えば表現"アルコキシ(alkoxy)"における表現"アルク(alk)"、及び例えば"アルカノイル(alkanoyl)"における表現"アルカン(alkan)"は、"アルキル"の規定に従って解釈されるべきである。典型的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、ブトキシ(例えばn-ブトキシ)、ヘプチルオキシ(例えばn-ヘプチルオキシ)、及びオクチルオキシ(例えばn-オクチルオキシ)を含む。典型的なアルカノイル(すなわちアシル基)は、エタノイル(すなわちアセチル)、プロピオニル、及びブチリルを含む。
【0017】
表現"アルケニル"は、特に限定されない限り、C2-12アルケニル基、好ましくは、C2-6アルケニル基を示し、任意の所望の位置に少なくとも1つの二重結合を含む。アルケニル基は、直鎖、又は分岐鎖であってもよい。典型的なアルケニル基は、エテニル、プロペニル、及びブテニルを含む。
【0018】
表現"アルキニル"は、特に限定されない限り、C2-12アルキニル基、好ましくは、C2-6アルキニル基を示し、任意の所望の位置に少なくとも1つの三重結合を含む。アルキニル基は、直鎖、又は分岐鎖であってもよい。典型的なアルキニル基は、エチニル、プロピニル、及びブチニルを含む。
【0019】
表現"シクロアルキル"は、特に限定されない限り、C3-12シクロアルキル基、一般的にはC3-8シクロアルキル基を示す。典型的なシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルを含む。シクロアルキル基は、炭素数が該成分中の全炭素数を示す場合、分岐鎖であってもよい。また、シクロペンチルメチル(アルキレンに結合したシクロアルキル基を含む)などの基は、炭素数が該成分中の全炭素数を示す場合、"シクロアルキル"の規定により包含される。
【0020】
アルケニル、アルキニル、及びシクロアルキル基に加えて、アルコキシなどの誘導体を含むアルキル基は、任意に、例えばフルオロ置換などのようにハロゲン置換されていてもよい。例えば、ハロ置換アルキル基は、トリフルオロメチルを含み、かつハロ置換アルコキシ基は、トリフルオロメトキシを含む。
用語"ハロゲン"は、フッ素(-F)、塩素(-Cl)、臭素(-Br)、及びヨウ素(-I)を含む。
【0021】
表現"炭素環(carbocyclic)"、又は"炭素環(carbocycle)"は、特に限定されない限り、3〜12個の炭素原子、一般的に3〜8個の炭素原子を含む炭素環基を示し、任意に分岐鎖であってもよい。本明細書中に使用される炭素環基は、アリール又はヘテロ原子を含まない炭素原子環を少なくとも1個含むシクロアルキル以外の基を意味する。炭素環基の例を挙げると、架橋環系(例えばビシクロ[2.2.1]ヘプテニル)、及び部分的不飽和環系(例えばシクロヘキセニル)がある。前記基は、任意に、例えばアルキル、ハロ、オキソ、又はヒドロキシルで置換されていてもよい。
【0022】
表現"複素環(heterocyclic)"、又は"複素環(heterocycle)"は、特に限定されない限り、1個以上(例えば1、2、又は3個)の環原子が、N、S、又はOから選択されたヘテロ原子で置換された、シクロアルキル残基又は炭素環残基を示す。1個のヘテロ原子を含む典型的な複素環基は、ピロリジン、テトラヒドロフラン、及びピペリジンを含む。2個のヘテロ原子を含む典型的な複素環基は、モルフォリン、及びピペラジンを含む。前記基は、任意に、アルキル(例えばメチル)、ハロ、オキソ、又はヒドロキシルで置換されていてもよい。
【0023】
複素環基のさらなる例を挙げると、オキシラン(オキサシクロプロパン)、アジリジン (アザシクロプロパン)、チイラン、オキセタン、アゼチジン、チエタン、チオラン、1,3-ジオキソラン、チアゾリジン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、ピラゾリジン、テトラヒドロピラン、及びピペラジンがある。複素環の他の例は、ウロトロピンである。他の複素環基は、ラクタム、ラクトン、環状イミド、及び環状無水物を含む。置換複素環基の例を挙げると、1,1-ジオキソ-チオラン、N-メチル-ピペラジン、2-(N-メチル)-N'-ピペラジニル)-エチル、4-N-(2'-ヒドロキシエチル)-1-N-ピペラジニル、及び2-(N-モルフォリノ)-エチルがある。
【0024】
表現"アリール"は、特に限定されない限り、C6-12アリール基、好ましくはC6-8アリール基を示す。アリール基は、少なくとも1つの芳香環(例えば、1、2、又は3つの環)を含むであろう。しかし、部分的不飽和環又は全不飽和環を含んでいてもよい。1つの芳香環を有するアリール基の例は、フェニルである。2つの芳香環を有する芳香族基の例を挙げると、ナフチル(例えば1-ナフチル-、又は2-ナフチル-)がある。他のアリール基は、1-アントラセニル-、2-アントラセニル-、及び3-アントラセニル-を含む。部分的不飽和環又は全不飽和環を含むアリール基の例を挙げると、テトラリン、及びインデンがある。最も典型的なアリール基は、フェニルである。
【0025】
表現"ヘテロアリール"は、特に限定されない限り、1個以上(例えば1、2、3、又は4個、好ましくは1、2、又は3個)の環原子が、N、S、及びOから選択されたヘテロ原子で置換されたアリール残基、或いは、N、S、及びOから選択された、1個以上(例えば1、2、3、又は4個、好ましくは1、2、又は3個)の環原子を含む5員環芳香環を示す。下記に示すように、ヘテロアリール基は、任意に置換されていてもよい。典型的なヘテロアリール基は、下記のものを含む:ピリジン (例えば2-、3-、又は4-ピリジン)、ピリミジン、キノリン、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、ピラゾール、ベンゾジオキソラン(ベンゾジオキソール)、ベンゾジオキサン、ベンゾチオフェン、ベンゾジオキセピン、及びチアゾール、イミダゾール(例えば1-、2-、又は4-イミダゾール)、イソオキサゾール、イソチアゾール、3-ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、ピリダジン、ピラジン、インダゾール、インドール(例えば6-インドール)、ベンゾイミダゾール、イソキノリン、プリン、カルバゾール、及びアクリジン基である。最も一般的なヘテロアリール基は、ピリジンである。
【0026】
上記アリール、及びヘテロアリール基は、適切な場合、1以上(e.g. 1、2、又は3、通常1、又は2)の一価又は多価官能基で任意に置換されていてもよい。適切な置換基は、下記のものを含む:アルキル、シクロアルキル、フェニル、ピリジル、フリル、炭素環、複素環、アルコキシ、シクロアルコキシ、フェニルオキシ、炭素環オキシ、複素環オキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルケニル、アルキニル、アルカノイル、アルコキシアルカノイル、アルコキシアルキル、ニトロ、-S-アルキル(例えばメチルチオ)、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード)、シアノ、ヒドロキシル、-SO2アルキル、-SO2シクロアルキル、-SO2複素環、-CO2H、-CO2アルキル、-NH2、-NHアルキル、-N(アルキル)2 (例えばジメチルアミノ)、-CO-N(アルキル)2、及び-CO-NH(アルキル)である。最も一般的な置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロ、ニトロ、及びヒドロキシルから選択されたものである。
【0027】
置換アリール基の例を挙げると、4-フルオロ-フェニル、3-フルオロ-フェニル、ペンタフルオロ-フェニル、4-ヒドロキシフェニル-、3-ニトロ-フェニル-、4-(トリフルオロメチル)-フェニル-、4-アニリニル-、2-ビフェニリル-、3-ビフェニリル-、及び4-ビフェニリル-がある。置換ヘテロアリール基の例を挙げると、N-メチル-2-ピロリル、2-メチル-1-ピロリル、3-メチル-2-ピロリル、及び3-フェニル-1-ピロリルがある。
【0028】
-アルキルアリールの例を挙げると、下記のものがある:フェニルメチル-(すなわちベンジル)及びフェニルエチル、2-フェニルエタ-1-イル、p-トリル-メチル-、p-トリル-エチル-、m-トリル-メチル-、m-トリル-エチル-、O-トリル-メチル-、O-トリル-エチル-、2-(4-エチル-フェニル)-エタ-1-イル-、2,3-ジメチル-フェニル-メチル-、2,4-ジメチル-フェニル-メチル-、2,5-ジメチル-フェニル-メチル-、2,6-ジメチル-フェニル-メチル-、3,4-ジメチル-フェニル-メチル-、3,5-ジメチル-フェニル-メチル-、2,4,6-トリメチル-フェニル-メチル-、2,3-ジメチル-フェニル-エチル-、2,4-ジメチル-フェニル-エチル-、2,5-ジメチル-フェニル-エチル-、2,6-ジメチル-フェニル-エチル-、3,4-ジメチル-フェニル-エチル-、3,5-ジメチル-フェニル-エチル-、2,4,6-トリメチル-フェニル-エチル-、ベンズヒドリル(すなわちジフェニル-メチル)、ジフェニル-エチル、トリチル(すなわちトリフェニル-メチル)、トリフェニル-エチル、クミル(すなわち1-メチル-1-フェニルエチル)、2-エチル-フェニル-メチル-、3-エチル-フェニル-メチル-、4-エチル-フェニル-メチル-、2-エチル-フェニル-エチル-、3-エチル-フェニル-エチル-、4-エチル-フェニル-エチル-、2-フルオロ-ベンジル、1-メチル-2-フルオロ-フェン-6-イル-メチル-、1-メチル-2-フルオロ-フェン-4-イル-メチル-、1-メチル-2-フルオロ-フェン-6-イル-エチル-、1-メチル-2-フルオロ-フェン-4-イル-エチル-、1H-インデニル-メチル-、2H-インデニル-メチル-、1H-インデニル-エチル-、2H-インデニル-エチル-、インダニル-メチル-、インダン-1-オン-2-イル-メチル-、インダン-1-オン-2-イル-エチル-、テトラリニル-メチル-、テトラリニル-エチル-、フルオレニル-メチル-、フルオレニル-エチル-、ジヒドロナフタリニル-メチル-、ジヒドロナフタリニル-エチル-、又は(4-シクロヘキシル)-フェニル-メチル-、(4-シクロヘキシル)-フェニル-エチル-である。最も一般的な-アルキルアリール基は、フェニルメチル-である。
【0029】
-アルキルヘテロアリールの例を挙げると、下記のものがある:ピリジニルメチル-(例えば2-ピリジニルメチル)、N-メチル-ピロール-2-メチル- N-メチル-ピロール-2-エチル-、N-メチル-ピロール-3-メチル-、N-メチル-ピロール-3-エチル-、2-メチル-ピロール-1-メチル-、2-メチル-ピロール-1-エチル-、3-メチル-ピロール-1-メチル-、3-メチル-ピロール-1-エチル-、4-ピリジノ-メチル-、4-ピリジノ-エチル-、2-(チアゾール-2-イル)-エチル-、テトラヒドロイソシノリニル-メチル-、テトラヒドロイソシノリニル-エチル-、2-エチル-インドール-1-メチル-、2-エチル-インドール-1-エチル-, 3-エチル-インドール-1-メチル-、3-エチル-インドール-1-エチル-、4-メチル-ピリジン-2-メチル-、4-メチル-ピリジン-2-イル-エチル-、4-メチル-ピリジン-3-メチル、4-メチル-ピリジン-3-エチルである。最も一般的な-アルキルヘテロアリール基は、ピリジニルメチル-である。
【0030】
(アミノ酸)
本発明に使用され得るアミノ酸は、例えばα-、β-、又はω-アミノ酸であり得る(α-アミノ酸が好ましい)、L及びD-アミノ酸、N-アルキル化アミノ酸、N-メチル-アミノ酸、アロ-及びトレオ-型のIle及びThrである。
【0031】
アミノ酸の例は、下記のものである:
アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu)、アルギニン (Arg)、リシン (Lys)、ヒスチジン (His)、グリシン (Gly)、セリン (Ser)、システイン (Cys)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln)、チロシン (Tyr)、アラニン (Ala)、プロリン (Pro)、バリン (Val)、イソロイシン (Ile)、ロイシン (Leu)、メチオニン (Met)、フェニルアラニン (Phe)、トリプトファン (Trp)、ヒドロキシプロリン (Hyp)、ベータ-アラニン (ベータ-Ala)、2-アミノオクタン酸 (Aoa)、アセチジン-(2)-カルボン酸 (Ace)、ピペコリン酸 (Pip)、3-アミノプロピオン酸、及び4-アミノ酪酸など、アルファ-アミノイソ酪酸 (Aib)、サルコシン (Sar)、オルニチン (Orn)、シトルリン (Cit)、ホモアルギニン (Har)、t-ブチルアラニン (t-ブチル-Ala)、t-ブチルグリシン (t-ブチル-Gly)、N-メチルイソロイシン (N-MeIle)、フェニルグリシン (Phg)、シクロヘキシルアラニン (Cha)、ノルロイシン (Nle)、システイン酸 (Cya)、及びメチオニン スルホキシド (MSO)、アセチル-Lys、ホスホリル-セリン (Ser(P)), ベンジル-セリン (Ser(Bzl)), 及びホスホリル-チロシン (Tyr(P))などの修飾アミノ酸、2-アミノ酪酸 (Abu)、アミノエチルシステイン (AECys)、カルボキシメチルシステイン (Cmc)、デヒドロアラニン (Dha)、デヒドロアミノ-2-酪酸 (Dhb)、カルボキシグルタミニン酸 (Gla)、ホモセリン (Hse)、ヒドロキシリシン (Hyl)、シス-ヒドロキシプロリン (cisHyp)、トランス-ヒドロキシプロリン (transHyp)、イソバリン (Iva)、ピログルタミン酸 (Pyr)、ノルバリン (Nva)、2-アミノ安息香酸 (2-Abz)、3-アミノ安息香酸 (3-Abz)、4-アミノ安息香酸 (4-Abz)、4-(アミノメチル)安息香酸 (Amb)、4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸 (4-Amc)、ペニシルアミン (Pen)、2-アミノ-4-シアノ酪酸 (Cba)、シクロアルカン-カルボン酸である。ω-アミノ酸の例は、例えば、下記のものである:5-Ara (アミノラレリック酸(aminoraleric acid))、6-Ahx (アミノヘキサン酸)、8-Aoc (アミノオクタン酸)、9-Anc (アミノバノイック酸(aminovanoic acid))、10-Adc (アミノデカン酸)、11-Aun (アミノウンデカン酸)、12-アド(アミノドデカン酸)である。さらなるアミノ酸は、下記のものである:インダニルグリシン (Igl)、インドリン-2-カルボン酸 (Idc)、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸 (Oic)、ジアミノプロピオン酸 (Dpr)、ジアミノ酪酸 (Dbu)、ナフチルアラニン (1-Nal)及び(2-Nal)、4-アミノフェニルアラニン (Phe(4-NH2))、4-ベンゾイルフェニルアラニン (Bpa)、ジフェニルアラニン (Dip)、4-ブロモフェニルアラニン (Phe(4-Br))、2-クロロフェニルアラニン (Phe(2-Cl))、3-クロロフェニルアラニン (Phe(3-Cl))、4-クロロフェニルアラニン (Phe(4-Cl))、3,4-クロロフェニルアラニン (Phe (3,4-Cl2))、3-フルオロフェニルアラニン (Phe(3-F))、4-フルオロフェニルアラニン (Phe(4-F))、3,4-フルオロフェニルアラニン (Phe(3,4-F2))、ペンタフルオロフェニルアラニン (Phe(F5))、4-グアニジノフェニルアラニン (Phe(4-グアニジノ))、ホモフェニルアラニン (hPhe)、3-ジョードフェニルアラニン (Phe(3-J))、4-ジョードフェニルアラニン (Phe(4-J))、4-メチルフェニルアラニン (Phe(4-Me))、4-ニトロフェニルアラニン (Phe-4-NO2))、ビフェニルアラニン (Bip)、4-ホスホノメチルフェニルアラニン (Pmp)、シクロヘキシルグリシン (Ghg)、3-ピリジニルアラニン (3-Pal)、4-ピリジニルアラニン (4-Pal)、3,4-デヒドロプロリン (A-Pro)、4-ケトプロリン (Pro(4-ケト))、チオプロリン (Thz)、イソニペコチン酸 (Inp)、1,2,3,4,-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸 (Tic)、プロパルギルグリシン (Pra)、6-ヒドロキシノルロイシン (NU(6-OH))、ホモチロシン (hTyr)、3-ジョードチロシン (Tyr(3-J))、3,5-ジジョードチロシン (Tyr(3,5-J2))、メチルチロシン (Tyr(Me))、2',6-ジメチルチロシン (Dmt), 3-NO2-チロシン (Tyr(3-NO2))、ホスホチロシン (Tyr(PO3H2))、アルキルグリシン、1-アミノインダン-1-カルボン酸、2-アミノインダン-2-カルボン酸 (Aic)、4-アミノ-メチルピロール-2-カルボン酸 (Py)、4-アミノ-ピロリジン-2-カルボン酸 (Abpc)、2-アミノテトラリン-2-カルボン酸 (Atc)、ジアミノ酢酸 (Gly(NH2))、ジアミノ酪酸 (Dab)、1,3-ジヒドロ-2H-イソイノール-カルボン酸 (Disc)、ホモシクロヘキシルアラニン (hCha)、ホモフェニルアラニン (hPhe又はHof)、トランス-3-フェニル-アゼチジン-2-カルボン酸、4-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸、5-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸、3-ピリジルアラニン (3-Pya)、4-ピリジルアラニン (4-Pya)、スチリルアラニン、テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸 (Tiq)、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸 (Tpi)、β-(2-チエンリル)-アラニン (Tha)である。
【0032】
"アザ-アミノ酸"は、キラルα-CH基が窒素原子で置換されたアミノ酸として規定される。
また、遺伝暗号にコードされる他のアミノ酸置換基を、本発明の範囲内のペプチド化合物を含むことができ、かつこの一般的スキーム内に分類され得る。タンパク質構成アミノ酸は、天然タンパク質誘導α-アミノ酸(例えば20個の共通の天然L-アミノ酸、すなわち:L-Asp (アスパラギン酸)、L-Glu (グルタミン酸)、L-Arg (アルギニン)、L-Lys (リシン)、L-His (ヒスチジン)、Gly (グリシン)、L-Ser (セリン)、L-Cys (システイン)、L-Thr (トレオニン)、L-Asn (アスパラギン)、L-Gln (グルタミン)、L-Tyr (チロシン)、L-Ala (アラニン)、L-Pro (プロリン)、L-Val (バリン)、L-Ile (イソロイシン)、L-Leu (ロイシン)、L-Met (メチオニン)、L-Phe (フェニルアラニン)、L-Trp (トリプトファン))として規定される。非タンパク質構成アミノ酸は、共通の天然タンパク質の基礎単位ではない、他の全てのアミノ酸として規定される。
【0033】
非環状アミノ酸は、Pro及びその様々な誘導体(例えば3,4-デヒドロプロリン (A-Pro)、4-ケトプロリン (Pro(4-ケト))、及びチオプロリン (Thz))などの環状アミノ酸を除く、上記アミノ酸を含む。非環状アザアミノ酸は、Proのアザ誘導体及びその様々な誘導体(例えば3,4-デヒドロプロリン (A-Pro)、4-ケトプロリン (Pro(4-ケト))、及びチオプロリン (Thz)のアザ誘導体)などの環状アザアミノ酸を除く、前記アミノ酸のアザ誘導体を含む。
【0034】
(立体異性体)
本請求項の化合物の可能な全ての立体異性体は、本発明内に含まれる。本発明の化合物が、少なくとも1個のキラル中心を有する場合、それに応じて、これらは鏡像異性体として存在し得る。該化合物が2個以上のキラル中心を有する場合、これらは、さらに、ジアステレオマーとして存在し得る。全ての前記異性体、及びそれらの混合物が、本発明の範囲内に含まれることが理解される。
【0035】
(医薬として許容し得る塩)
遊離化合物と、これらの塩形態の化合物との間の密接な関係を考慮して、化合物が本文脈において言及される場合、対応する塩形態が可能であるか又は条件下で適切であるならば、常に、その対応する塩も意図される。
【0036】
医薬として許容し得る塩は、塩基性側鎖が、無機酸又は有機酸でプロトン化された形態を取り得る。代表的な有機酸又は無機酸は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、パモン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、サッカリン酸、又はトリフルオロ酢酸を含む。あるいは、医薬として許容し得る塩は、酸性側鎖が、金属イオン(例えばナトリウムイオン、及びカリウムイオンなど)、又はアンモニウムなどの他の陽イオンで塩を形成した形態を取り得る。前記化合物の全ての医薬として許容し得る酸付加塩形態は、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0037】
(多形体結晶形、及び溶媒和物)
さらに、幾つかの結晶形の前記化合物は、2種以上の多形相で存在し得る。そのようなものとして、全ての形体が、本発明に含まれることが意図される。さらに、該化合物の幾つかは、水の溶媒和物(すなわち水和物)、又は一般的な有機溶媒の溶媒和物を形成することができる。該溶媒和物も、本発明に含まれることが意図される。また、これらの塩を含む該化合物は、これらの水和物形態中に得られ得るか、又はこれらの結晶化に使用した他の溶媒を含み得る。
【0038】
(プロドラッグ)
さらに、本発明は、本発明の化合物のプロドラッグを、その範囲内に含む。一般に、前記プロドラッグは、インビボにおいて所望の治療効果のある化合物に容易に変換される、該化合物の官能性誘導体であろう。従って、本発明の治療方法の場合において、用語"投与"は、本請求項の1以上の化合物のプロドラッグ種を用いて、記載された様々な疾患を治療することを含む。該プロドラッグ種は、対象への投与後に、インビボにおいて上記特定化合物に変換する。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製の従来の手順は、例えば「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985、及び特許出願DE 198 28 113、DE 198 28 114、WO 99/67228、及びWO 99/67279に記載され、これらは引用により本明細書中に全て取り込まれている。
本明細書中に使用される用語"組成物"は、治療的有効量の本請求項の化合物を含む製品、並びに、本請求項の化合物の組合せから直接的又は間接的に生じる全ての製品を包含することが意図される。
【発明の開示】
【0039】
(本発明の要旨)
本発明は、プロリルエンドペプチダーゼ(PEP, EC 3.4.21.26)、及びPEP-様酵素の阻害剤として作用する化合物を提供する。これらの化合物は、これらの医薬として許容し得る塩及びその立体異性体とともに、一般式1で表される。
【化1】

(式中、Wは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、カルボシクリル、アリール、-アルキルアリール、又は-アルキルヘテロアリールを表し;
Kは、O、NH、又はCH2を表し;
又はKは存在せず、かつW-COは、アミノ酸、又はアザ-アミノ酸の成分を表し;
NH-X-COは、非環状アミノ酸、又は非環状アザ-アミノ酸の成分を表し、ここで、NH-X-COがAsp、又はGluの成分を表す場合、前記Asp、又はGluの酸側鎖は、ペプチド結合を介して、他のアミノ酸、又はアザ-アミノ酸に任意に結合することができ;
N-Y-CO-は、式2a、2b、2c、2d、2e、2f、及び2gの成分から選択され:
【化2】

(式中、R1〜R15、及びR17〜R19は、独立に、H、又はアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキニル鎖, シクロアルキル、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、又はハロゲン、アミノ、-CONH2、CONH(アルキル)、-CON(アルキル)2、ニトロ、ヒドロキシル、-CN、及びSCNから選択された基であり;
又はその他に、R2/R3、R4/R5、R6/R7、R9/R10、R11/R12は、結合している炭素原子とともに、独立にオキソを表し;
又はその他に、R3とR5とが結合し、アゼチジン環に縮合したベンゼン環を形成する(この場合、R2、及びR4は存在せず)か、又はR10とR11とが結合し、ピペリジン環に縮合したベンゼン環を形成し(この場合、R9、及びR12は存在せず);
R16は、アミノ酸成分の側鎖であり;
X1は、CR20R21、O、S、SO、SO2、又はNR22であり;
X2は、CR23R24、O、S、SO、SO2、又はNR25であり;
X3は、CR26R27、O、S、SO、SO2、又はNR28であり;
R22、R25、及びR28は、互いに独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、又はヘテロアリール-アルキル基であり;
R20、R21、R23、R24、R26、及びR27は、互いに独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、ヘテロアリール-アルキル基、又はカルバルデヒド(-CHO)、ケトン基(-CO-R29)、ボロン酸基(-B(OH)2)、シアノ基(-C≡N)、カルボン酸基(-COOH)、カルボン酸エステル基(-COOR30)、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-R31)、ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OH))、N-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NR32(OH))、O-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OR33))、カルボキサミド基(-CO-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換カルボン酸アミド基(-CO-NHR34;-CO-NR35R36)、アミド基(-HN-CO-R37)、スルホン酸基(-SO3H)、スルホンアミド基(-SO2-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換スルホンアミド基(-SO2-NHR38;-SO2-NR39R40)、アミドスルホン基(-NH-SO2-R41)、スルホン基(-SO2-R42)、リン酸基(-OP(=O)(OH)2)、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR43)(OR44))、ホスホン酸基(-P(=O)(OH)2)、ホスホン酸エステル基(-P(=O)(OR45)(OR46))、ハロゲノ基、トリフルオロメチル基(-CF3)、チオール基(-SH);チオエーテル基(-S-R47)、ヒドロキシ基(-OH);アルコキシ基(-O-R48)、テトラゾール基、アミノ基(-NH2)、又はN-置換もしくはN,N-二置換アミノ基(-NHR49;-NR50R51)であり;又は
X1がCR20R21である場合、R6、及びR20が結合し、ピロリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R7、及びR21は存在せず)、又はX2がCR22R23である場合、R20、及びR22が結合し、ピロリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R21、及びR23は存在せず);又は
X3がCR26R27である場合、R11、及びR26が結合し、ピペリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R12、及びR27は存在せず)、又はR27、及びR13が結合し、ピペリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R26、及びR14は存在せず);
置換基R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、及びR51は、互いに独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル-、又はヘテロアリール-アルキル-であり;あるいは、組合せR35R36、R39R40、及びR50R51は、互いに独立に、結合している窒素とともに、複素環の一部を形成することができ(例えばピロリジン、ピペリジン、又はモルフォリン);又は組合せR43/R44、R45/R46は、C1-4アルキレン鎖を形成するように結合することができ;
X4は、CR52、又はNであり;
X5は、CR53、又はNであり;
R52、及びR53は、互いに独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、ヘテロアリール-アルキル、アリール-ヘテロアルキル、ヘテロアリール-ヘテロアルキル基、又はカルバルデヒド(-CHO)、ケトン基(-CO-R54)、ボロン酸基(-B(OH)2)、シアノ基(-C≡N)、カルボン酸基(-COOH)、カルボン酸エステル基(-COOR55)、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-R56)、ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OH))、N-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NR57(OH))、O-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OR58))、カルボキサミド基(-CO-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換カルボン酸アミド基(-CO-NHR59;-CO-NR60R61)、アミド基(-HN-CO-R62)、スルホン酸基(-SO3H)、スルホンアミド基(-SO2-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換スルホンアミド基(-SO2-NHR63;-SO2-NR64R65)、アミドスルホン基(-NH-SO2-R66)、スルホン基(-SO2-R67)、リン酸基(-OP(=O)(OH)2)、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR68)(OR69))、ホスホン酸基(-P(=O)(OH)2)、ホスホン酸エステル基(-P(=O)(OR70)(OR71))、ハロゲノ基、トリフルオロメチル基(-CF3)、チオール基(-SH);チオエーテル基(-S-R72)、ヒドロキシ基(-OH);アルコキシ基(-O-R73)、テトラゾール基、アミノ基(-NH2)、又はN-置換もしくはN,N-二置換アミノ基(-NHR74;-NR75R76)であり;
置換基R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、及びR76は、互いに独立に、H、又はアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、ヘテロアリール-アルキル基であり;かつ
あるいは、組合せR52/R53は、存在する場合、結合している炭素原子とともに、複素環、又は炭素環の一部を形成することができ;又は組合せR60R61、R64R65、及びR75R76は、互いに独立に、結合している窒素とともに、複素環の一部を形成することができ(例えばピロリジン、ピペリジン、又はモルフォリン);又は組合せR68/R69、及びR70/R71は、C1-4アルキレン鎖を形成するように結合することができ;
mは、整数0〜2を表し;
nは、整数0〜2を表す。);
Zは、ヘテロアリールであり、
但し、下記化合物は、式1から除かれる。)。
【化3】

【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(本発明の詳細な説明)
好ましくは、Wは、-アルキルアリール(例えば-メチルアリール)、-アルキルヘテロアリール(例えばメチルヘテロアリール)、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はシクロアルキルを表す。さらに好ましくは、Wは、アルケニル-(例えばC2-6アルケニル)、アルキル-(例えばC2-6アルキル)、又はアリールアルキル-(例えばアリールメチル-)、特にアリールアルキル-(例えばアリールメチル)を表す。W基において、アリールは、例えば、任意にアルキル及び/又はハロ置換されたフェニルを表すことができる。W基において、ヘテロアリールは、例えば、任意にアルキル及び/又はハロ置換されたピリジルを表すことができる。
【0041】
Kが存在せず、かつW-COが、アミノ酸、又はアザアミノ酸の成分を表す場合、W-COは、例えば、L-Phe(すなわちWが-CH(NH2)(CH2Ph))、又はL-Tyr(すなわちWがCH(NH2)(CH2PhOH))の成分を表すことができる。
好ましくは、KがO、又はCH2、特にOを表す。
最も好ましくは、W-K-COが、アリルオキシカルボニル(Aloc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、又はベンジルオキシカルボニル(Cbz)、特にベンジルオキシカルボニルを表す。
【0042】
NH-X-COは、好ましくは非環状アミノ酸、さらに好ましくはタンパク質構成アミノ酸、最も好ましくはL-Ala(すなわちXがCH(Me))、L-Arg(すなわちXがCH(CH2CH2CH2NHC(=NH2)NH2)、L-Asp (すなわちXがCH(CH2COOH))、又はL-Phe(すなわちXがCH2Ph)、特にL-Ala、L-Arg、又はL-Pheの成分を表す。さらなる例は、L-Lys(すなわちXが(CH2)4NH2))である。
典型的に、R16は、タンパク質構成アミノ酸の側鎖を表すであろう。R16基の例を挙げると、H、メチル、-CH2OH、-CH(Me)OH, CHMe2、CH2CHMe2、CH(Me)CH2Me、CH2CH2CONH2、-CH2COOH、-CH2CONH2、及びCH2CH2COOHがある。
【0043】
本発明の1つの実施態様において、N-Y-COは、式2a、2e、2f、又は2gの成分を表す。本発明の他の実施態様において、N-Y-COは、式2b、又は2cの成分を表す。本発明の他の実施態様において、N-Y-COは、式2dの成分を表し、特にR16は、アルキル、例えばメチル(すなわちAlaの成分、特にL-Ala)を表す。
【0044】
好ましくは、N-Y-COは、式2h、又は2iの成分を表す:
【化4】

(式中、X1、X2、及びX3は、上記で規定したものであり;かつ
R77、及びR78は、独立に、H、ハロゲン、CN、又はアルキル、例えば、H、CN、又はMeを表す。)。例えば、R77、及びR78は、独立にCNを表すことができる。あるいは、これらは、独立にMeを表すことができる。好ましくは、これらは、独立にHを表す。
【0045】
さらに好ましくは、N-Y-COは、式2j、又は2kの成分を表す:
【化5】

(式中、R77、及びX1は、上記で規定したものであり、かつR80、及びR81は、独立にH、又はフロオロである。)。
【0046】
最も好ましくは、N-Y-COは、ピロリジン環が任意にメチルで置換されたL-Pro、例えば、R77がH又はメチルを表し、かつX1がCH2を表す式2jの成分であり、特に非置換L-Proである。
好ましくは、R1〜R15、及びR17〜R19は、独立に、H、ハロゲン(例えばF)、CN、又はアルキル(例えばMe)を表し、例えばH、CN、又はMe、特にHを表す。
【0047】
最も好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R17、R18、及びR19は、ハロゲン(例えばF)、又はHであり、特にHである。
好ましくは、R20、R21、R23、R24、R26、R27、R28、R52、及びR53は、Hである。
【0048】
好ましくは、R29〜R51基は、Hを表す。
好ましくは、R54〜R76基は、Hを表す。
好ましくは、X1は、CH2、又はCHMeを表し、特にCH2を表す。
好ましくは、X2は、CH2、又はCHMeを表し、特にCH2を表す。
【0049】
好ましくは、X3は、CH2、又はCHMeを表し、特にCH2を表す。
好ましくは、X4は、CH、又はCMeを表し、特にCHを表す。
好ましくは、X5は、CH、又はCMeを表し、特にCHを表す。
好ましくは、nは、0、又は1を表し、特に0を表す。
好ましくは、mは、0、又は1を表し、特に0を表す。
【0050】
好ましくは、Zは、任意にベンゼン環に縮合した5員環ヘテロアリール環を表し、
(特に、5員環ヘテロアリール環を介して、該分子の残部に結合した場合)、さらに好ましくは、2-フラン、2-イミダゾール、2-チアゾール、4-チアゾール、5-チアゾール、2-チオフェン、3-チオフェン、2-オキサゾール、4-オキサゾール、5-オキサゾール、2-ピロール、3-ピロール、2-ベンゾ[d]イミダゾール、2-ベンゾ[d]チアゾール、2-ベンゾ[b]チオフェン、3-ベンゾ[b]チオフェン、2-ベンゾ[d]オキサゾール、2-インドール、3-インドール、又は式3a、3b、3c、3d、又は3eの成分から選択される:
【化6】

(式中、R82、R83、R84、R85、及びR86は、独立に、H、又はアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキニル鎖, シクロアルキル、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、或いは、ハロゲン、アミノ、-CONH2、CONH(アルキル)、-CON(アルキル)2、ニトロ、ヒドロキシル、オキソ、-CN、及び-SCNから選択された基である。)。
【0051】
R82、R83、R84、R85、及びR86基は、典型的に、H、又はアルキル(例えばメチル)であり、さらに典型的にHである。
さらに好ましくは、Zは、2-イミダゾール、2-チアゾール、4-チアゾール、5-チアゾール、2-チオフェン、3-チオフェン、2-オキサゾール、4-オキサゾール、5-オキサゾール、3-ピラゾール、4-ピラゾール、5-ピラゾール、2-ピロール、3-ピロール、3-トリアゾール、2-ベンゾ[d]イミダゾール、2-ベンゾ[d]チアゾール、2-ベンゾ[b]チオフェン、3-ベンゾ[b]チオフェン、2-ベンゾ[d]オキサゾール、2-インドール、又は3-インドールであり、特に2-チアゾール、又は2-ベンゾ[d]チアゾールである。特に関心のある他の基は、ピロール、例えば2-ピロールである。
【0052】
本発明の1つの特定の実施態様に従って、本発明者らは、式1の化合物を提供する。但し、下記化合物は式1から除かれる。
【化7】

この化合物は、US 2005/0171112に開示されている。
【0053】
本発明のPEP-阻害剤は、意外にも、ヒトグリア細胞におけるインターロイキン-6 (IL-6)の基礎レベルの調節に有効であることが示されている。これらの化合物は、IL-6分泌の有意な抑制を示す。これは、先行技術に記載された全てのPEP-阻害剤で、知られていないことである。
【0054】
多面的サイトカインであるIL6は、特に炎症、癌、感染、及び自己免疫疾患における、多くの神経病理学的及び病態生理学的プロセスの一因となる。IL-6の過剰発現は、多発性骨髄腫、固形腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、神経癌、キャッスルマン病、炎症、心筋梗塞、パジェット病、虚血、喘息、関節リウマチ、乾癬、アルツハイマー病、多発性硬化症、髄膜炎、脳卒中、骨粗鬆症、インスリン抵抗性、肥満症、耐糖能異常、2型糖尿病、癌関連摂食障害、及び悪液質、並びに多剤耐性の病理に関係している。従って、本明細書中に記載した化合物による病理学的IL-6濃度の低下は、例えば上記のIL-6関連疾患の治療に有用であり得る。
【0055】
さらに、本発明のPEP阻害剤は、意外にも、種々のヒト細胞株、例えば神経細胞におけるβ-アミロイドペプチド、特にAβ1-40及びAβ1-42の基礎レベルの調節という点で効果的であることが示されている。本発明の化合物は、β-アミロイドペプチド分泌の有意な増加を示す。これは、先行技術に記載された全てのPEP-阻害剤で、知られていないことである。
【0056】
β-アミロイドペプチドは、MCI (軽度認識障害)、アルツハイマー病 (AD)、及びMCIからADへの進行に直面している患者の神経変性、及び神経細胞死の原因であると考えられる。近年、MCI及びADの発症に関与するβ-アミロイド種が、細胞内に形成されることが示された。さらに、ペプチドAβ1-40、及びAβ1-42の全長ではなく、β-アミロイドペプチドのN-末端切断型及びN-末端改質型、例えば、Aβ3-40、Aβ3-42、pGlu-Aβ3-40、pGlu-Aβ3-42、Aβ11-42、及びpGlu-Aβ11-42が、毒性形態として議論されている(Picciniらの論文, J. Biol. Chem. 280 (40), 2005, pp. 34186-34192)。
【0057】
従って、本発明の化合物は、N-末端切断及び改質前の全長Aβ1-40及びAβ1-42の分泌亢進による、神経毒性β-アミロイドペプチド、例えばAβ3-40、Aβ3-42、pGlu-Aβ3-40、pGlu-Aβ3-42、Aβ11-42、及びpGlu-Aβ11-42の形成を抑制することに有用である。
【0058】
本発明者らは、プロテアーゼが、基質を、該ペプチド鎖のシステイン残基の後で切断できることを初めて示した。さらに、本発明者らは、該ペプチドヒューマニンが、PEPに対する基質であることを示している。具体的に、本発明者らは、プロリルエンドペプチダーゼが、該ペプチドヒューマニンを、該ペプチド配列の2つの位置、位置3のプロリン残基の後及び位置8のシステイン残基の後で切断できることを示している。この切断パターンは、特異的PEP阻害剤の使用により、完全に阻害され得る。
【0059】
ヒューマニンは、当初、FAD(家族性アルツハイマー病)及びAβ誘発神経細胞死を抑制する遺伝子の不偏性機能的スクリーニング方法により発見された(それぞれ、*30、32)。該ペプチドは、ミトコンドリア16SリボソームRNAの異常な75 bp遺伝子産物である(*27、30)。この遺伝子産物の細胞発現の証拠は、ペプチド抗体を用いたウエスタンブロットにより得られた(*33)。生理活性の詳細な分析により、ヒューマニンコア領域の存在が示された(残基3〜19)(*34、*35)。特に、Pro(3);Cys(8);Leu(9);Leu(12);Thr(13);Ser(14)、及びPro(19)など、7つの残基の保存が必要であることがわかった(*34、35)。アラニンによるこれらの残基の置換、又は該コア配列の省略は、ヒューマニンのアポトーシス救出能の損失を生じる。
【0060】
近年、ヒューマニンは、Bcl2-関連Xタンパク質(Bax)と相互作用することによるアポトーシス抑制能のためにハイライトされた(*27)。インスリン様成長因子結合タンパク質-3(IGFBP-3)とさらに相互作用することにより、グリア芽細胞の該IGFBP-3誘発細胞死を阻害し、ヒューマニンの細胞生存促進能を支持する(*28)。その24アミノ酸のペプチドは、プリオン-ペプチド又はアミロイド-β誘発傷害から皮質ニューロンを保護し(*28、*39)、代謝活性異常を改善し、かつ血清欠乏ヒトリンパ球の生存を延長する(*31)ことができる。
【0061】
従って、PEP-阻害剤は、システイン後切断により分解され得るペプチド基質、例えばペプチドヒューマニンの分解の抑制に有用である。さらに、本発明は、システイン後切断により分解され得るペプチド基質、例えばペプチドヒューマニンの分解の抑制方法を提供する。式(1)の化合物は、本方法の使用にとって特に好適である。
【0062】
本発明の化合物は、幾つかの固有の特性、及び意外な特性を有し、かつ神経変性疾患、例えばMCI、AD、ダウン症、パーキンソン病、及びハンチントン病の治療に有用であることが予想される。
式1の化合物の製造方法を、スキーム1に提示し、かつスキーム2、スキーム3、及びスキーム4、並びに「一般法」において詳細に示した。従って、スキーム1の経路1を参照して、式1の化合物の製造方法は、式Aの化合物と式Bの化合物とを、メタル化条件下で反応させることを含む。式Aのジペプチドは、活性化分子(ワインレブアミド)であり、式Bの化合物の有機金属(例えば例えば有機リチウム)誘導体と反応することができる。式Aのジペプチドは、式Cのジペプチド(通常、例えば混合無水物として活性化される)と式Dの化合物(ワインレブ活性化基)との反応により製造され得る。式Cの化合物(C末端のないジペプチド)は、式Eの化合物(エステル)の加水分解により製造され得る。式Eの化合物は、式Fの化合物(N-保護アミノ酸誘導体)(通常、例えば混合無水物として活性化される)と式Gの化合物(C-保護アミノ酸誘導体)との反応により製造され得る。あるいは、スキーム1の経路2を参照して、式1の化合物の製造方法は、式Hのアルコールとして特徴付けられる前駆体化合物の酸化を含む。式Hの化合物は、式Jの化合物(N-末端のないZ-成分)からカップリング反応を介して到達することができる。式Jの化合物は、典型的に、式Kの保護誘導体の脱保護により得られる。式Kの化合物(N-保護Z成分)は、式Lの化合物から開始して、アルコールの還元(式La)、及び続く対応アルデヒド(式Lb)への酸化を介して到達することができる。次に、このアルデヒド化合物を、成分Zの有機リチウム誘導体(例えば式Bの化合物)と反応させることができる。最後に、スキーム1の経路3を参照して、式1の化合物の製造方法は、式Qのグリニャール試薬を式Eの化合物と反応させるアリール化を含む。式Qの化合物は、該アリール化合物H-Zと市場から入手可能なグリニャール試薬MeMgBrとから容易に製造され得る。
【0063】
【化8】

スキーム1.式1を含む化合物の逆合成経路。Rx=ワインレブ活性化基、すなわちN(CH3)OCH3、Ry=アルコキシ、例えばOMe、RZ=アミン保護基、例えばBoc。*は、基が、例えば混合無水物として活性化されるのに適し得る。式B、D、G、及びLの化合物は、市場で入手することが可能であり、又は公知の方法で製造され得る。
スキーム1において、式G、及びLの化合物は、式HN-Y-COOH(式M)の化合物から容易に製造され得る。
【0064】
式Mの化合物の出発物質の具体的な合成経路、及び合成スキームは、当業者に周知である。例えば、Yが2a、2c、2e、2f、2g、2h、2i、2jである場合のこれらの化合物(又は類似体)の合成経路、及び合成スキームを開示している引用文献を、表1に示した。これらの引用文献は、その全体において、本明細書中に引用により取り込まれ、かつYが2a、2c、2e、2f、2g、2h、2i、2j、及び2kである場合の式Mの化合物の合成に関しては、本発明の一部分である。
式Mの他の化合物、並びに式B、D、及びFの化合物は公知であり、又はそれ自体公知の従来法により製造され得る。
また、式1の化合物は、式1の保護化合物を脱保護することにより製造され得る。
【0065】
従って、本発明の態様として、本発明者らは、下記工程を含む、式(1)の化合物の製造方法を提供する:
(a)式Aの化合物又はその保護誘導体と、式Bの化合物又はその保護誘導体とを反応させること:
【化9】

(式中、W、K、X、及びYは、上記で規定したのものであり、かつRxは、ワインレブ活性化基を表す。);
【化10】

(式中、Zは、上記で規定したのものである。);又は
(b)式Hの化合物又はその保護誘導体を酸化すること;
【化11】

(式中、W、K、X、Y、及びZは、上記で規定したのものである。);
及び必要に応じて、その生成物を脱保護して、式(1)の化合物を得ることである。
式(1)の化合物への別経路として、グリニャール試薬を用いたアリール化により、式Eの中間体化合物を、式(1)の化合物に直接変換することができる(スキーム4を参照)。
【0066】
従って、本発明のさらなる態様として、本発明者らは、下記工程を含む、式(1)の化合物の製造方法を提供する:
(c)式Eの化合物又はその保護誘導体と、式Qの化合物又はその保護誘導体とを反応させること:
【化12】

(式中、W、K、X、及びYは、上記で規定したものであり、かつRyは、アルコキシ基、例えばOMeなどのOC1-4アルキルを表す。);
【化13】

(式中、Zは、上記で規定したものであり、かつXは、Brなどのハロゲンを表す。);続いて、水又は水性緩衝液で後処理することである。
【0067】
式Qの化合物は、ヘテロアリール化合物Zと、MeMgBrなどの適切なアルキルマグネシウムハライド化合物とを反応させることにより製造され得る。
グリニャール試薬(Q)を用いた反応の適切な条件は、当業者に公知である。
【0068】
【表1】


【0069】
本発明は、薬剤として使用される式1の化合物を提供する。
式1の化合物は、PEP及びPEP-様酵素の阻害剤である。
さらに、本発明は、下記からなる群から選択された疾患の治療用薬剤を製造するための、式1のPEP及びPEP-様酵素の阻害剤の使用を提供する:
アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝のホメオスタシス制御障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、制御障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、摂食障害、うつ病を含む不安関連疾患、癲癇,薬の離脱症状,及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害,痴呆,失語症,失行症,失認,又は幾つかの種類の健忘症,軽度認識障害(MCI),良性健忘症,及びコルサコフ症候群を含む神経変性障害、肺血管疾患、再狭窄又は肺高血圧症心筋炎、気管支肺異形成症、心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害、低酸素症、虚血、及び血液凝固障害である。
【0070】
また、本発明は、下記からなる群から選択された疾患の治療に使用するための、式1のPEP及びPEP-様酵素の阻害剤を提供する:
アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝のホメオスタシス制御障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、制御障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、摂食障害、うつ病を含む不安関連疾患、癲癇,薬の離脱症状,及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害,痴呆,失語症,失行症,失認,又は幾つかの種類の健忘症,軽度認識障害(MCI),良性健忘症,及びコルサコフ症候群を含む神経変性障害、肺血管疾患、再狭窄又は肺高血圧症心筋炎、気管支肺異形成症、心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害、低酸素症、虚血、及び血液凝固障害である。
【0071】
また、本発明は、治療有効量の式1の化合物の少なくとも1種を、哺乳類、好ましくはヒトに投与することを含む、下記からなる群から選択された疾患の治療方法を提供する:
アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝のホメオスタシス制御障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、制御障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、摂食障害、うつ病を含む不安関連疾患、癲癇,薬の離脱症状,及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害,痴呆,失語症,失行症,失認,又は幾つかの種類の健忘症,軽度認識障害(MCI),良性健忘症,及びコルサコフ症候群を含む神経変性障害、肺血管疾患、再狭窄又は肺高血圧症心筋炎、気管支肺異形成症、心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害、低酸素症、虚血、及び血液凝固障害である。
【0072】
最も好ましくは、本発明は、治療有効量の式1の化合物の少なくとも1種を、哺乳類、好ましくはヒトに投与することを含む、軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、及びハンチントン病からなる群から選択された疾患の治療方法、及び対応する使用を提供する。
さらなる実施態様において、式1の化合物は、微生物増殖の阻害、術中の失血の減少、移植組織もしくは臓器の保存、癌細胞増殖もしくは腫瘍進行又は腫瘍転移もしくは浸潤の阻害に有用である。
【0073】
(組合せ)
さらなる実施態様において、本発明は、下記からなる群から選択された化合物の少なくとも1種を任意に組合せた、式1の化合物の少なくとも1種を含む組成物、好ましくは医薬組成物を提供する:
グルタミニルシクラーゼ(QC)の阻害剤、LiCl、ジペプチジルアミノペプチダーゼの阻害剤、好ましくはDP IV又はDP IV-様酵素の阻害剤、NPY-受容体リガンド、NPYアゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤、タンパク質イソアスパラギン酸カルボキシメチルトランスフェラーゼ(PIMT)エンハンサー、ベータセクレターゼの阻害剤、ガンマセクレターゼの阻害剤、中性エンドペプチダーゼの阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4 (PDE-4)の阻害剤、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤、TNFアルファ阻害剤、アミロイドタンパク又はアミロイドペプチド沈着阻害剤、シグマ-1受容体阻害剤、及びヒスタミンH3アンタゴニストである。
【0074】
これらの組合せは、行動状態に特に有益な効果を提供し、従って、前記組合せは、下記からなる群から選択された疾患の治療に効果的かつ有用であることが示される:
アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝のホメオスタシス制御障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、制御障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、摂食障害、うつ病を含む不安関連疾患、癲癇,薬の離脱症状,及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害,痴呆,失語症,失行症,失認,又は幾つかの種類の健忘症,軽度認識障害(MCI),良性健忘症,及びコルサコフ症候群を含む神経変性障害、肺血管疾患、再狭窄又は肺高血圧症心筋炎、気管支肺異形成症、心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害、低酸素症、虚血、及び血液凝固障害である。
本発明の組合せは、さらに、微生物増殖の阻害、術中の失血の減少、移植組織もしくは臓器の保存、癌細胞増殖もしくは腫瘍進行又は腫瘍転移もしくは浸潤の阻害に有用である。
【0075】
(医薬組成物)
本発明は、1種以上の治療的に許容し得る希釈剤又は担体とともに、上記組合せの薬剤の少なくとも1種を任意に組合せた、式1の化合物の少なくとも1種を含む医薬組成物を提供する。該有効成分は、従来の医薬配合技術に従って、医薬の希釈剤、又は担体と完全に混合される。該希釈剤、又は担体は、投与、例えば経口又は筋肉内などの非経口に所望される製剤形態により、様々な形態を取り得る。経口剤形の該組成物の製造において、通常の全ての医薬媒体を使用することができる。従って、例えば懸濁液、エリキシル剤、及び溶液、などの液体経口製剤にとって、適切な担体、及び添加剤は、水、グリコール、オイル、アルコール、香料、防腐剤、及び着色剤などを含み;例えば粉末、カプセル、ジェルキャップ、及び錠剤などの固体経口製剤にとって、適切な担体及び添加剤は、でんぷん、糖、希釈剤、顆粒剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤などを含む。投与におけるこれらの容易性のために、錠剤、及びカプセルは、最も有利な経口投与単位形態であり、この場合は当然、固体医薬担体が使用される。必要に応じて、錠剤を、標準的技術により、糖衣されたもの、又は腸溶性コーティングされたものとすることができる。非経口投与にとって、通常、該担体は滅菌水を含むが、例えば溶解性補助の目的又は保存のために、他の成分が含まれてもよい。
【0076】
標的化可能な薬剤担体としての溶解性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミド-フェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリルリシンを含むことができる。
【0077】
さらに、本発明の化合物は、薬剤の制御放出を達成するのに有用なポリ乳酸、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーなどの一連の生分解性ポリマーに結合されていてもよい。
【0078】
適切な結合剤は、でんぷん、ゼラチン、グルコース又はベータラクトースなどの天然糖、コーン甘味料、アカシア,トラガカントなどの天然及び合成ゴム、又はオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどを含むが、限定されない。
崩壊剤は、でんぷん、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、及びキサンタンガムなどを含むが、限定されない。
【0079】
また、注射用懸濁液を製造することができ、この場合、適切な液体担体、及び懸濁剤などが使用され得る。本明細書中の医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、粉末、注射、及び茶さじ一杯などの投与単位あたり、上記有効量を運ぶのに必要な量の有効成分を含むであろう。本明細書中の医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、粉末、注射、坐薬、及び茶さじ一杯などの投与単位あたり、約0.03 mg〜100 mg/kg(好ましくは0.1〜30 mg/kg)を含み、かつ1日あたり約0.1〜300 mg/kg(好ましくは1日あたり1〜50 mg/kg)の各有効成分又はその組合せの投与量で投与され得る。しかし、該投与量は、患者の条件、治療される症状の重症度、及び使用される化合物により変更され得る。毎日投与、又は周期的後投与(post-periodic dosing)の使用が採用され得る。
【0080】
好ましくはこれらの組成物は、経口、非経口、経鼻、舌下、又は直腸投与用の、或いは吸入又は注入用の、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒剤、無菌非経口溶液又は懸濁液、定量エアロゾル又は液体スプレー、ドロップ、アンプル、自己注射器、又は坐薬などの単位剤形である。あるいは、該組成物は、週1回投与又は月1回投与に適切な形態で存在し得る;例えば、デカン酸塩などの活性化合物の不溶性塩を適合させ、筋肉内注射用持続性製剤を提供することができる。錠剤などの固体組成物の製造のために、主成分を、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、又はゴムなどの従来の錠剤成分、及び水などの他の医薬希釈剤を医薬担体と混合し、本発明の化合物又はその医薬として許容し得る塩の均一混合物を含む固体予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物を均一と呼ぶ場合、該組成物を錠剤、丸剤、及びカプセルなどの同等に有効な剤形に細分することができるように、有効成分が、該組成物全体にわたって均等に分散されていることを意味する。その結果、この固体予備処方組成物は、0.1〜約500 mgの本発明の各有効成分又はその組合せを含む、上記の種類の単位剤形に細分される。
【0081】
本発明の組成物の錠剤又は丸剤を、被覆するか又は配合して、延長作用の利点を与える剤形を提供することができる。例えば、該錠剤又は丸剤は、内部用量成分(inner dosage component)及び外部用量成分(outer dosage component)を含むことができ、後者は、前者の全体を包む形態である。2つの成分は、胃内での分解に耐える働きをし、かつ該内部成分を完全な状態で十二指腸内に移行するか又は放出を遅延する腸溶性層で分離され得る。前記腸溶性層又は被覆に、様々な物質を使用することができる。前記物質は、シェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの物質とともに多くの重合体酸(polymeric acid)を含む。
【0082】
本発明の組成物が経口投与、又は注射により取り込まれ得る液体形態は、水溶液、適切に風味を付けたシロップ、水性又は油性懸濁液、及び綿実油、ゴマ油、ヤシ油、又はピーナッツ油などの食用油を有する香料エマルジョン、並びにエリキシル、及び類似の医薬ビヒクルを含む。水性懸濁液に適切な分散剤又は懸濁剤は、トラガカント、アカシアなどの合成及び天然ゴム、アルギン酸塩又はエステル、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチンを含む。
【0083】
本発明の化合物の製造方法が立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体を、分離用クロマトグラフィーなどの従来技術により分離することができる。該化合物を、ラセミ形態で製造することができ、又は個々の鏡像異性体を、エナンチオ特異的合成、又は分割により製造することができる。例えば、該化合物を、(-)-ジ-p-トルオイル-d-酒石酸及び/又は(+)-ジ-p-トルオイル-l-酒石酸のような光学活性酸を用いた塩形成によるジアステレオマー対の形成、続く分別結晶、及び遊離塩基の再生などの標準的技術により、これらの成分鏡像異性体に分割することができる。また、該化合物を、ジアステレオマーエステル又はアミドの形成、続くクロマトグラフィー分離、及びキラル補助基の除去により分割することができる。あるいは、該化合物を、キラルHPLCカラムを用いて分割することができる。
【0084】
有利な点において、本発明の化合物を、1日1回の投与量で投与することができる、又は1日あたりの総量を、1日2、3、4回の投与量に分割して投与することができる。さらに、本発明の化合物を、当業者に周知の適切な経鼻投与ビヒクルの局所使用を介する経鼻投与形態で、又は経皮的皮膚用パッチ剤を介して投与することができる。経皮的輸送システムの形態で投与されるために、該投与は、当然、投与療法中、断続的よりもむしろ継続的であろう。
【0085】
例えば、錠剤又はカプセルの形態における経口投与のために、該活性薬剤成分を、エタノール、グリセロール、及び水などの、経口的な無毒の医薬として許容し得る不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望又は必要とされる場合、適切な結合剤;潤滑剤、崩壊剤、及び着色剤を、該混合物中に組み合わせることもできる。適切な結合剤は、でんぷん、ゼラチン、グルコース又はベータラクトースなどの天然糖、コーン甘味料、アカシア,トラガカントなどの天然及び合成ゴム、又はオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどを含むが、限定されない。崩壊剤は、でんぷん、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、及びキサンタンガムなどを含むが、限定されない。
【0086】
例えばトラガカント、アカシアのような合成及び天然ゴム、及びメチルセルロースなどの適切な香料懸濁剤又は分散剤における液体形態。非経口投与にとって、無菌懸濁液及び溶液が所望される。静脈内投与が所望される場合、一般に無菌防腐剤を含む等張性製剤が使用される。
【0087】
また、本発明の化合物又は組合せを、小さい単層ベシクル、大きい単層ベシクル、及び多層ベシクルなどのリポソーム輸送システムの形態で投与することができる。リポソームを、コレステロール、ステアリルアミン、又はホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0088】
また、本発明の化合物又は組合せを、該化合物分子が結合する個々の担体としてモノクローナル抗体の使用により輸送することができる。また、本発明の化合物を、標的化可能な薬剤担体として可溶性ポリマーと結合させることができる。前記ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミド-フェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリルリシンを含み得る。さらに、本発明の化合物は、薬剤の制御放出を達成するのに有用なポリ乳酸、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーなどの一連の生分解性ポリマーに結合されていてもよい。
【0089】
前記疾患の治療が必要とされる場合、本発明の化合物又は組合せを、前記組成物のいずれかで、技術的に確立された投与療法に従って投与することができる。
前記生産物の1日投与量を、哺乳類に対して1日あたり0.01〜1.000 mgの広範囲に渡って変更することができる。経口投与にとって、該組成物は、治療される患者への投与量の症状的調整のために、各有効成分又はその組合せを0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、150、200、250、及び500ミリグラム含む錠剤の形態で提供される。通常、有効量の該薬剤は、1日あたり約0.1 mg/kg〜約300 mg/kg体重の投与量で供給される。好ましくは、その範囲は、1日あたり約1〜50 mg/kg体重である。該化合物又は組合せは、1日あたり1〜4回の療法で投与され得る。
【0090】
投与されるべき最適な投与量は、当業者により容易に決定され得て、かつ使用される特定の化合物、投与様式、製剤の効果、投与様式、及び疾患状態の前進により変更されるであろう。さらに、患者の年齢、体重、食事制限、及び投与時間を含む、治療される特定患者に関連する要因により、投与量調整の必要が生じる。
【0091】
適切には、本発明の組合せの場合において、本発明の治療により提供される特に有益な効果は、本発明の組合せでの治療可能比が、該組合せのうちの1つの化合物を単独で又は本発明の組合せと同等の効果を提供する投与量で使用される場合の治療可能比と比較して改善されることである。
【0092】
好ましい態様において、本発明の治療により提供される特に有益な効果は、個々の活性薬剤の効果から予測されるコントロールと比較して、相乗効果があるために示される。
本発明のさらなる態様において、好ましくは、少なくとも1種の式1の化合物と本明細書中の組合せで規定したような少なくとも1種の薬剤との組合せ投与が、該組合せにおける薬剤に使用される薬剤単独の二回投与で達成され得るものよりもより有益な効果を生じるであろう。
【0093】
好ましい態様において、本発明の治療に従って使用される場合の該活性薬剤の各々の投与量は、神経症状時の単に付加的な効果から要求されているであろうものよりも小さいだろう。
理論により限定されることなく、また、本発明の治療が、個々の薬剤と比較して、pGlu-アミロイド-ベータ-ペプチドの細胞内沈着を減少させ、結果、哺乳類の脳内、好ましくはヒトの脳内のプラーク形成を格段に減速し、改善をもたらすであろう。
【0094】
さらなる態様において、また、本発明は、任意に本明細書中の組合せで規定した少なくとも1種の薬剤と組み合わせた、少なくとも1種の式1の化合物又はその医薬として許容し得る担体を含む、医薬組成物の製造方法を提供する。該方法は、式1の化合物と前記任意薬剤と医薬として許容し得る希釈剤又は担体とを混合することを含む。
該組成物は、好ましくは、当該1日投与量に適切な量の単位剤形である。
【0095】
特に単位投与量を含む下記化合物の適切な投与量は、英国及び米国薬局方、「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(Mack Publishing Co.)、マーティンデール特別薬局方(Martindale The Extra Pharmacopoeia)(London, The Pharmaceutical Press) (例えば、第31版の341ページ、及びそこに引用されたページ)、又は上記公報に記載又は参照されている化合物の単位投与量を含む、公知の投与量を包含する:式1、QC-阻害剤、LiCl、ジペプチジルアミノペプチダーゼの阻害剤、好ましくはDP IV又はDP IV-様酵素の阻害剤、NPY-受容体リガンド、NPYアゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤、PIMTエンハンサー、ベータセクレターゼの阻害剤、ガンマセクレターゼの阻害剤、中性エンドペプチダーゼの阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4 (PDE-4)の阻害剤、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤、TNFアルファ阻害剤、アミロイドタンパク又はアミロイドペプチド沈着阻害剤、シグマ-1 受容体阻害剤、及びヒスタミンH3アンタゴニストである。
【0096】
式1の好ましい化合物は、IC50値又はKi値を有するものであり、好ましくは、1×10-6未満、特に1×10-7未満、特に1×10-7未満のIC50値又はKi値を有するものである。
式1の好ましい化合物は、2000 Da未満、特に1000 Da未満、特に600Da未満、例えば500 Da未満の分子量を有する。
【0097】
本発明の化合物及び組合せは、例えば、哺乳類の脳内において、先行技術の他の化合物よりも、効果があり、選択的であり、副作用が少なく、よりよい配合及び安定性を有し、よりよい薬物動態学的特性を有し、生物学的利用能が高く、血液脳関門を通過することができ、かつより効果的であり、他の薬剤との組合せにおける適合性又は効果があり、又はより容易に合成されるという利点を有することができる。
本発明は、上記で挙げた群の好ましい群、より好ましい群、及び実施態様の組合せを包含する。
【実施例】
【0098】
(生物学的評価、PEP-阻害剤のIC50-、及びKi-値の測定)
測定に組換えヒトプロリルオリゴペプチダーゼを使用した。最先端技術において他に記載されているように、標準的条件下、E.コリ中で組換え発現を行った。活性測定のために、50 mM HEPES、200 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM DTT、0.006 % Brij35を含むHEPES緩衝液pH 7.6中の色素産生基質Cbz-Gly-L-Pro-pNAを使用した。測定を30℃で行った。pNAの放出を405nmで連続的にモニターした。
【0099】
IC50値は、単基質濃度(0.15 mM)、及び0.1 mMから開始する阻害剤の11―15段階希釈を用いて測定した。IC50値は、4-パラメーター式への非線形回帰を用いて計算した(Prism 4.0, GraphPad)。
Ki測定のために、4つの濃度の基質(0.15 mM、0.08 mM、0.04 mM、0.02 mM)、及び適切な範囲の7つの濃度の阻害剤を使用した。計算は、GraFit 5.0ソフトウェア(Erithacus Software)を用いて、競合的阻害剤のための式に対して複合非線形回帰分析により行った。
【0100】
(IL-6 ELISA)
IL-6の基礎分泌を分析するために、ヒトグリアU-343細胞を、6ウェルプレート(1.5×106 細胞/ウェル, Greiner)中で培養し、かつ示したような特異的PEP阻害剤(各々20 μM)を用いて、24時間、無血清D-MEM培地(invitrogen)中で処置した。培養上清の分割量40 μlを使用して、製造業者の説明書指示の後にヒト特異的IL-6 ELISA (Biosource)により、分泌されたIL-6の量を定量した。全てのデータを、4組において得た。PEP-阻害剤処置後の細胞培養液中のIL-6濃度の計算のために、未処置細胞試料の細胞培養液の基礎IL-6濃度を100%とした。PEP阻害剤処置細胞を用いたIL-6濃度の測定結果を、未処置細胞試料の%として示した。
【0101】
(β-アミロイドELISA)
(細胞培養)
ヒトグリオーマ細胞株U-343、及びヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yを、ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に維持し、37℃、5% CO2雰囲気下で保温した。一般に、培地は、60 μg/mlゲンタマイシン(gentamycin)(Gibco BRL, Karlsruhe, ドイツ)を含ませた。
【0102】
(代謝ラベリング)
代謝ラベリングアプローチのために、35 mm培養皿中に5×105細胞を播種し、適切な培地中で40時間成長させた。洗浄後に、細胞を、[35S]メチオニン(1 μCi/ml, ICN Biomedicals, Eschwege, ドイツ)とともに、L-メチオニン、L-システイン、及びL-シスチンを含まないDMEM(ICN Biochemicals)中で2時間保温した。PEP阻害剤Fmoc-Ala-Pyrr-CN (5 μM) 含有/非含有を、無血清培地中、37℃で24時間追跡した。追跡培地中の放射標識化タンパク質を、8%(w/v) TCA-溶液で沈殿させ、かつ15500×gで10分間、遠心分離した。洗浄後に、該タンパク質ペレットを、1 ml蒸留水で再懸濁化し、かつTri-carb2100TR-シンチレーションカウンター(Packard, Dreieich, ドイツ)で放射能を測定した。全ての測定は、少なくとも4組で行い、かつ該実験を4回繰り返した。
【0103】
(β-アミロイドELISA)
β-アミロイドペプチド1-40及び1-42の細胞内及び細胞外濃度を定量するために、U-343及びSH-SY5Y細胞を、6ウェルプレート中(1.5×106 細胞/ウェル)で培養し、かつ特異的PEP阻害剤(各々20 μM)で24時間処置した。分泌されたβ-アミロイドペプチドの定量化のために、培養上清を回収し、かつ凍結乾燥で濃縮した。同様に、細胞数/ウェルの測定(casy cell counter I, Schrfe System、Reutlingen, ドイツ)後、細胞を細胞抽出緩衝液(Biosource, Solingen, ドイツ)で、製造業者のプロトコルに従って溶解させた。該タンパク質濃度をブラッドフォード法(1976)で測定した。分割量100μlを使用して、β-アミロイドペプチド1-40及び1-42を、製造業者の説明書指示の後にELISA(IBL, Hamburg, ドイツ)により、4組において定量した。全ての得られた細胞内及び細胞外濃度を、それぞれ、細胞数及びタンパク質濃度に対して規格化した。
【0104】
PEP阻害剤処置後の細胞培地中のβ-アミロイドペプチド1-40及び1-42の濃度計算のために、未処置細胞試料の培地中のβ-アミロイドペプチド1-40及び1-42の基礎濃度を100%とした。PEP阻害剤処置細胞を用いたβ-アミロイドペプチド1-40及び1-42の濃度測定結果を、未処置細胞試料の%として示した。
本発明の好ましいPEP阻害剤は、IL-6濃度の有意な低下、及びβ-アミロイド分泌増加、特にβ-アミロイド1-40及び1-42の分泌増加を示す(図1及び図2に示した結果を参照)。
【0105】
(組換えヒトプロリルエンドペプチダーゼによる、ペプチドヒューマニンのシステイン後切断の阻害)
分解実験を、組換えヒトプロリルエンドペプチダーゼ(rhPEP)を用いて行った。ペプチドヒューマニンを基質として使用した。ペプチドヒューマニンは、下記配列の24アミノ酸を含む:
MAPRGFSCLLLLTSEIDLPVKRRA
rhPEPは、ヒューマニンを該ペプチド配列中の2つの位置で切断することができる:位置3のプロリン残基の後及び位置8のシステイン残基の後で切断できることである。
PEPによるヒューマニンの切断を、式(1)の特異的PEP阻害剤で阻害することができる。式(1)の阻害剤は、ヒューマニン配列中のプロリン後、及び次のシステイン後の切断を抑制する。
【0106】
(実験内容)
全ての阻害剤を100% DMSO中に溶解する。ストック溶液中の該阻害剤の最終濃度は、2 mMである。該DMSOストック溶液を、−20℃で保存する。ヒューマニンペプチドを、最初、100% DMSO中に溶解し、次にPEP緩衝液を用いて、DMSO濃度がこの溶液の10%を超えないように注意しながら、最終濃度が1mg/mlになるまで希釈した。ヒューマニンストック溶液を、−20℃で保存する。酵素反応を、270 mM HEPES (ROTH)、1080 mM NaCl (ROTH)、5.4 mM EDTA (MP Biomedicals)、0,03% 30-35 w/v BRIJ(登録商標)、7.96 mM DTT (シグマ)ならなるPEP緩衝液中で行う。該酵素を、50% エチレングリコール ストック溶液中、−20℃で保存する。
【0107】
(反応混合物)
rhPEPストック溶液を、PEP緩衝液で1:20に希釈する。
該阻害剤ストック溶液を、水で1:10〜1:20に希釈する。その後、該阻害剤溶液を、等量の1mg/ml ヒューマニン ストック溶液(PEP緩衝液中)と混合する。
【0108】
次に、90μlの該阻害剤/基質溶液を、10μlの酵素溶液と混合する。該混合物を、反応終了時間を越えるまで、37℃で保温する。該阻害剤及び基質の最終濃度は、それぞれ、80 μM (阻害剤)及び0.45 mg/ml (ヒューマニン)である。
該反応を、10μlの反応混合物と10μlの0.1%TFA水溶液との混合により、下記反応時間点で停止する:10、30、60、120、240、480、1440分である。
【0109】
酵素的加水分解から生じた異なる生成物の同一性及び量を、マトリックス支援レーザー脱離質量分析により評価した。図3は、PEP存在下でのヒューマニン切断産物HN 9-24の生成を示す。図4、及び図5は、HN 9-24が、PEP阻害剤存在時に、PEPの存在下で生成しないことを示す。
【0110】
(実施例の化合物)
【表2】


【0111】
(出発物質及び実施例の化合物の一般的合成方法)
実施例の化合物を、経路1、経路2、又は経路3を介して製造した。
経路1の出発物質:保護アミノ酸誘導体(W-KCONH-X-COOH, HN-Y-CORy、Ryは通常OMeを表す。)を、Bachemから購入した。ジペプチド (W-KCONH-X-CON-Y-COOH)を、文献23の手順に従って、方法A及び方法B(中間体E I、II、及びC I、II)を介して製造した。中間体A IVの出発物質を、Bachemから購入した。N-メトキシ-N-メチル誘導体(*25)(中間体A III、IV、及びV)を、方法Aを介して製造した。実施例:中間体A III、IV、及びV (ワインレブアミド)を、n-BuLi溶液で処置することにより、実施例1、2、4、9、10の化合物に、及び方法Cを介してそれぞれの芳香族複素環化合物に変換した(*26)。該芳香族複素環化合物を、FLUKA、又はALDRICHから購入した。図をスキーム2に提供する。
【0112】
【化14】

スキーム2.中間体E I, II (C-保護ジペプチド)、中間体C I, II (ジペプチド)、中間体 A III, IV, 及びV (ワインレブアミド)、及び実施例1、2、4、9、10の化合物の合成。方法A:混合無水物;方法B:けん化;方法C:n-BuLi, H-Z:ヘテロアリール化合物。
【0113】
経路2の出発物質:保護アミノ酸誘導体(Boc-NY-COOH)をBachemから購入し、かつ方法Dを介してそれを還元して、中間体La I及びIIを得た(*24)。方法Eを介してスワーン酸化により、中間体La I及びIIを、対応する中間体Lb I及びII (アルデヒド)に酸化した(*24)。中間体K I及びIIを、方法Fを介して製造した(US 5,547,978)。中間体K I及びIIを、方法Gを介して脱保護した(*23)。中間体J I及びIIを、方法Hを介してW-KCO-NH-X-COOHと結合させた。実施例:方法Eを介してスワーン酸化により、中間体H I-Vを、実施例3、5、6、7の化合物に変換した(スキーム3)。酸化後に、方法Gを介して脱保護により、実施例8の化合物を得た。
【0114】
【化15】

スキーム3.中間体La I, II (アルコール)、中間体Lb I, II (アルデヒド)、中間体 K I, II(保護ヘテロアリール化合物成分)、中間体J I, II (脱保護ヘテロアリール化合物成分)、中間体H I-V (ヘテロアリール-アルコール)、及び実施例3、5、6、7、及び8の化合物の合成。方法D:1.)無水物を混合、2.)LiAlH4;方法E:スワーン酸化;方法F:n-BuLi, H-Z:ヘテロアリール化合物;方法G:TFA, TIPS;方法H:カップリング反応、アミノ酸リシン成分に対してR = Boc。経路3の出発物質:中間体E Iを、スキーム2に記載するように製造した。
【0115】
実施例:方法Jを介して、グリニャール試薬を用いたアリール化により、中間体E Iを実施例11の化合物に変換した(*36)(スキーム4)。
【化16】

スキーム4.実施例11の化合物の合成。方法J:EtO中のMeMgBr、ピロール;ZMgBrを、その場(in situ)で形成した。
【0116】
(略語)
Aloc アリルオキシカルボニル
Boc tert.-ブチルオキシカルボニル
n-BuLi n-ブチルリチウム
Cbz ベンジルオキシカルボニル
EE 酢酸エチル
EtOH エタノール
Et2O ジエチル エーテル
LiAlH4 水素化アルミニウムリチウム
NEt3 トリエチルアミン
NMM 4-メチルモルフォリン
pNA 4-ニトロアニリド
TFA トリフルオロ酢酸
TIPS トリイソプロピルシラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0117】
(分析方法)
NMRスペクトルを、ブルカーAM 400、及びVarian Unity 500分光計で行った。下記略語を使用した:s (一重線)、d (二重線)、dd (二重線の二重線)、t (三重線)、及びm (多重線)である。ESI-MS:質量スペクトルを、Ionspray(商標)インターフェースを備えたMDS Sciex API 365質量分析計でとった(MDS Sciex;Thorn Hill、ON, カナダ)。装置設定、データ収集、及び処理を、Windows NT(商標)用のApplied Biosystems (Foster City, CA, USA) Analyst(商標)ソフトウェアにより制御した。ピークを累積する陽イオン化Q1スキャンモードにより、50〜100スキャンを行った。試料溶液を、0.5%ギ酸の50%メタノールで希釈し、濃度を約10 μg/mlにした。各試料溶液は、注入ポンプを通してマイクロシリンジ(1mL)により直接導入し(Havard Apperatus 22;Havard Instruments;Holliston, MA, USA)、かつ20 μl/分の速度でシリカキャピラリーチューブを融合した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Macherey Nagel Polygram(登録商標) SIL G/UV245を用いて行った。254 nm のUV光の手段で視覚化し、過マンガン酸カリウム、又はCer-Molybdate-溶液で染色した。使用前に溶媒を希釈した。商業的に入手可能な全ての試薬は、さらに精製することなく使用した。Aloc-L-Phe-OMe、及び他のアミノ酸誘導体を、Bachemから購入した。後処理手順で使用するpH7の緩衝溶液を、水(1 L)に二水素リン酸カリウム(85.0 g)及び水酸化ナトリウム(14.5 g)を溶解することにより製造した。分析用HPLCは、Merck-Hitachi装置(アセトニトリル-水(流速:1 ml min-1)、カラム:LiChrosphere 5um RP18e, 125×4.0 mm (Merck)、ポンプ:L-7100 Merck-Hitachiを使用)を用いて行った。勾配Aを、実施例の精製化合物の検出に使用した。勾配Aの特性:t = 0分でアセトニトリル-水(5/95)から開始して、20分以内でアセトニトリル-水(60/40)、さらに10分後にアセトニトリル-水(95/5)。勾配Bの特性:t = 0分でアセトニトリル-水(20/80)から開始して、30分以内でアセトニトリル-水(95/5)。
【0118】
(出発物質及び特定化合物の具体的な合成及び分析情報)
(一般法)
方法A(カルボン酸の混合無水物への変換):N-保護アミノ酸(W-KCONH-X-COOH又はW-KCONH-X-CON-Y-COOH、1.0当量)を、乾燥THFに溶解し、−15℃に冷却した。NMM(1.0当量)を加えた。クロロギ酸イソブチル(1.0当量)を滴下して加えた。方法は、中間体 E I, II、及びA III, IV, Vを生成する。
【0119】
方法B(エステル加水分解):エステル(中間体E I, II;1.0当量)をEtOHに溶解し、かつ1 M NaOH(2.3当量)を加えた。反応混合物を室温で撹拌し、かつ変換をTLCで確認した。変換終了時に、該混合物のpHを、1 N HClで2〜3に調節した。有機物質を、EEで5回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗化合物を、フラッシュクロマトグラフィーで精製し、中間体C I, IIを得た。
【0120】
方法C(メタル化及びアルキル化):乾燥THF溶液中の該ヘテロアリール化合物(H−Z, 3.0当量)の撹拌溶液を−50℃に冷却した。n-BuLi (3.0当量)を滴下して加えた。10分後に、乾燥THF中の(中間体A III, IV;1.0当量)の溶液を滴下して加えた。該混合物を30分間撹拌し、その後、該混合物を、pH7の緩衝溶液で希釈した。生成物をEEで抽出した。溶媒をNa2SO4で乾燥し、濾過し、かつ減圧下で蒸発させた。粗化合物を、フラッシュクロマトグラフィーで精製し、実施例1、2、4、9、及び10の化合物を得た。
【0121】
方法D(カルボン酸のアルコールへの還元):保護アミノ酸誘導体(1.0 当量)の混合無水物を、方法Aに従って製造し、アルゴン雰囲気下で濾過し、かつ−20℃に冷却した。LiAlH4(1.5当量)を、反応促進制御のために分割して加えた。該混合物を−20℃で1時間、及び室温で2時間撹拌した。該反応混合物を、0℃で1 M KHSO4溶液を用いて加水分解した。室温に温めた後、粗生成物をEEで抽出し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、かつ減圧下で蒸発させた。中間体La I, IIを、さらなる精製なしに使用した。方法は中間体La I, IIを生成する。
【0122】
方法E(アルコールのアルデヒドへのスワーン酸化):乾燥CH2Cl2中の塩化オキサリル(1.2当量)の撹拌溶液を、−70℃に冷却した。DMSO(2.6当量)を滴下して加え、該混合物を30分間撹拌した。乾燥CH2Cl2中の該アルコール(中間体La I, II)の溶液を滴下して加え、かつ該混合物を2時間撹拌した。NEt3(5.0当量)を加え、かつ該混合物を室温に温めた。該反応混合物を水で希釈した。層分離後に、有機層を水及びブラインで洗浄し、かつNa2SO4で乾燥させた。濾過後に、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗化合物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、中間体Lb I, II、N、及び実施例3、5、6、7の化合物を得た。
【0123】
方法F(メタル化及びアリール化):乾燥THF溶液中の該ヘテロアリール化合物(H−Z)(1.1当量)の撹拌溶液を−78℃に冷却した。n-BuLi (1.15当量)を滴下して加えた。10分後に、乾燥THF中の中間体Lb I, II (1.0当量)の溶液を滴下して加えた。該混合物を30分間撹拌し、その後、該混合物を、pH7の緩衝溶液で希釈した。生成物をEEで抽出した。溶媒をNa2SO4で乾燥し、濾過し、かつ減圧下で蒸発させた。粗化合物を、フラッシュクロマトグラフィーで精製し、中間体K I, IIを得た。
【0124】
方法G(保護基の脱保護):TFA(7.5 ml)を、乾燥CH2Cl2(10 ml)中の該保護化合物(中間体 K I, II;1.0当量)、及びTIPS(2.5当量)の混合物に加えた。この溶液を室温で2時間撹拌し、その後、トルオールで希釈した。溶媒を減圧下で除去し、かつ得られた残渣を、その不安定性のためにさらに精製することなく使用し、中間体J I, IIを得た。この方法を使用して、実施例8の化合物を生成した。方法H(カップリング反応):保護アミノ酸誘導体(W-KCONH-X-COOH)(1.0当量)を、乾燥DMF中に溶解した。この混合物に、HATU(1.0当量)、HOAt (1.0当量)、中間体J I, II(1.0当量)、及びN-エチルジイソプロピルアミン(2.0当量)を加え、かつ混合物の全体を一晩撹拌した。オイルポンプを用いて、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた粗化合物をEEに溶解し、1 N HCl、水、NaHCO3水溶液、水、及びブラインで洗浄し、かつNa2SO4で乾燥させた。濾過後に、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗化合物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、中間体H I、II、III、IV、及びVを得た。
【0125】
方法J(グリニャール試薬を用いたアリール化):トルエン(15 ml)中のメチルマグネシウムブロミド(Et2O中3.0M, 8.0当量)を−30℃に冷却し、かつZ-H (ピロール)(12当量)で処置した。−30℃で10分間撹拌した後、溶液を0℃に温め、かつ30分間撹拌し、次に−60℃に冷却した。この調製グリニャール溶液を、−60℃に冷却したトルエン(3 ml)中の中間体E Iの溶液に加えた。該混合物を一晩撹拌し、かつ室温に温めた。該混合物を、pH7の緩衝溶液で希釈し、EEで希釈し、かつ濾過した。層分離後に、水層をEE(2×)で抽出し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、かつ減圧下で蒸発させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、実施例11の化合物を得た。
【0126】
(中間体)
中間体 E I: Cbz-L-Phe-L-Pro-OMe
混合無水物を方法Aに従って製造した(W-KCONH-X-COOH: Cbz-L-Phe-OH)。15分間撹拌後に、乾燥THF中の1.0当量のHCl・H-L-Pro-OMe、及びNMM(1.0当量)を加えた。該混合物を一晩、室温に温まる時間中撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、かつ得られた残渣をEEに溶解し、1 N HCl、水、NaHCO3水溶液、水、及びブラインで洗浄し、かつNa2SO4で乾燥させた。濾過後に、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗化合物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、中間体E Iを得た。精製化合物の収率72%。
【0127】
中間体E II:Cbz-L-Ala-L-Pro-OMe
中間体E IIを、上記中間体E I(W-KCONH-X-COOH: Cbz-L-Ala-OH;HN-Y-CORy: HCl・H-L-Pro-OMe)に記載したように製造した。精製化合物の収率92%。
中間体C I:Cbz-L-Phe-L-Pro-OH
中間体C Iを、方法Bに従って製造した。精製化合物の収率94%。
中間体C II:Cbz-L-Ala-L-Pro-OH
中間体C IIを、方法Bに従って製造した。精製化合物の収率:91%。
【0128】
中間体A III:Cbz-L-Phe-L-Pro-N(CH3)OCH3
混合無水物を方法Aに従って製造した(W-KCONH-X-CON-Y-COOH:Cbz-L-Phe-L-Pro-OH)。15分間撹拌後に、乾燥THF中の1.0当量のHCl・HN(CH3)OCH3、及びNMM(1.0当量)を加えた。該混合物を一晩、室温に温まる時間中撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、かつ得られた残渣をEEに溶解し、1 N HCl、水、NaHCO3水溶液、水、及びブラインで洗浄し、かつNa2SO4で乾燥させた。濾過後に、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗化合物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、中間体A IIIを得た。精製化合物の収率81%。
【0129】
中間体A IV:Cbz-L-Ala-L-Pro-N(CH3)OCH3
中間体A IVを、上記中間体A III(W-KCONH-X-CON-Y-COOH:Cbz-L-Ala-L-Pro-OH;H-Rx:HCl・HN(CH3)OCH3)に記載したように製造した。精製化合物の収率98%。
中間体A V:Boc-L-Phe-L-Pro-N(CH3)OCH3
中間体A Vを、上記中間体A III(W-KCONH-X-CON-Y-COOH:Boc-L-Phe-L-Pro-OH (Bachemから購入)に記載したように製造した。精製化合物の収率59%。
【0130】
中間体La I:Boc-L-アラニノール
中間体La Iを、生成アルコールをさらに精製することなく使用する方法Dに従って製造した。精製化合物の収率48%。
中間体La II:Boc-L-Prolinol
中間体La IIを、生成アルコールをさらに精製することなく使用する方法Dに従って製造した。精製化合物の収率79%。
【0131】
中間体Lb I:Boc-L-Ala-アルデヒド
中間体Lb Iを方法Eに従って製造し、フラッシュクロマトグラフィーで精製した。精製化合物の収率60%。
中間体Lb II:Boc-L-Pro-アルデヒド
中間体Lb IIを方法Eに従って製造し、フラッシュクロマトグラフィーで精製した。精製化合物の収率58%。
【0132】
中間体K I:tert-ブチル(2S)-1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-1-ヒドロキシプロパン-2-イルカルバマート
中間体K Iを方法Fに従って製造した。精製化合物の収率30%。
中間体K II:(S)-tert-ブチル-2-((R)-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)(ヒドロキシ)メチル)-ピロリジン-1-カルボキシラート
中間体K IIを方法Fに従って製造した。精製化合物の収率49%。
【0133】
中間体J I:(2S)-2-アミノ-1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)プロパン-1-オール
中間体J Iを方法Gに従って製造した。不安定性のために、該化合物をさらに精製することなく使用した。
中間体J II:(R)-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)((S)-ピロリジン-2-イル)メタノール
中間体J IIを方法Gに従って製造した。不安定性のために、該化合物をさらに精製することなく使用した。
【0134】
中間体H I:ベンジル(1S)-1-((2R)-1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-1-ヒドロキシプロパン-2-イルカルバモイル)-2-フェニルエチルカルバマート
中間体H Iを、Cbz-L-Phe-OH (W-KCONH-X-COOH)及び中間体J Iをカップリングする方法Hに従って製造した。精製化合物の収率29%。
中間体H II:ベンジル(1S)-1-((S)-2-((R)-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)(ヒドロキシ)-メチル)ピロリジン-1-イル)-1-オキソヘキシルグアニル-2-イルカルバマート
中間体H IIを、Cbz-L-Arg-OH (W-KCONH-X-COOH)及び中間体J IIをカップリングする方法Hに従って製造した。精製化合物の収率50%。
【0135】
中間体H III:ベンジル(1S)-1-(((2R)-1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)(ヒドロキシ)メチル)-ピロリジン-1-イル)-2-カルボキシエチルカルバマート
中間体H IIIを、Cbz-L-Asp(OtBu)-OH (W-KCONH-X-COOH)及び中間体J IIをカップリングする方法H(精製化合物の収率:46%)、続いて中間体H IIIを生成する方法G(精製化合物の収率:35%)に従って製造した。
中間体H IV:アリル(1S)-1-(((2R)-1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)(ヒドロキシ)メチル)-ピロリジン-1-イル)-2-フェニルエチルカルバマート
中間体H IVを、Aloc-L-Phe-OH (W-KCONH-X-COOH)及び中間体J Iをカップリングする方法Hに従って製造した。精製中間体H IVの収率71%。
【0136】
中間体H V:ベンジル(1S)-1-(((2R)-1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)(ヒドロキシ)メチル)-ピロリジン-1-イル)-2-(4-tert-ブチルオキシカルボニルアミノブチル)-カルバマート
中間体H Vを、Z-L-Lys(Boc)-OH (W-KCONH-X-COOH)及び中間体J IIをカップリングする方法Hに従って製造した。精製中間体H Vの収率33%。
中間体N:ベンジル(1S)-1-(((2R)-1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)(オキシメチル)-ピロリジン-1-イル)-2-(4-tert-ブチルオキシカルボニルアミノブチル)-カルバマート
中間体Nを方法Eに従って製造した。精製中間体Nの収率24%。
【0137】
(実施例)
実施例1:2-[Cbz-L-Phe-L-Pro]ベンゾチアゾール
実施例1の化合物は、中間体E I、中間体C I、中間体A III、及び方法Cを介する経路1に従って製造した(H-Z:ベンゾチアゾール、精製化合物の収率:82%)。
実施例2:2-[Cbz-L-Ala-L-Pro]ベンゾチアゾール
実施例2の化合物は、中間体E II、中間体C II、中間体A IV、及び方法Cを介する経路1に従って製造した(H-Z:ベンゾチアゾール、精製化合物の収率:17%)。
実施例3:2-[Cbz-L-Phe-L-Ala]ベンゾチアゾール
実施例3の化合物は、中間体La I、中間体Lb I、中間体K I、中間体J I、中間体H I、方法Eを介する経路2に従って製造した(精製化合物の収率:28%)。
【0138】
実施例4:2-[Cbz-L-Phe-L-Pro]チアゾール
実施例4の化合物は、中間体E I、中間体C I、中間体A III、及び方法Cを介する経路1に従って製造した(H-Z:チアゾール、精製化合物の収率:19%)。
実施例5:2-[Cbz-L-Arg-L-Pro]ベンゾチアゾール
実施例5の化合物は、中間体La II、中間体Lb II、中間体K II、中間体J II、中間体H II、方法Eを介する経路2に従って製造した(精製化合物の収率:38%)。
実施例6:2-[Cbz-L-Asp-L-Pro]ベンゾチアゾール
実施例6の化合物は、中間体La II、中間体Lb II、中間体K II、中間体J II、中間体H III、方法Eを介する経路2に従って製造した(精製化合物の収率:24%)。
【0139】
実施例7:2-[Aloc-L-Phe-L-Pro]ベンゾチアゾール
実施例7の化合物は、中間体La II、中間体Lb II、中間体K II、中間体J II、中間体H IV、及び方法Eを介する経路2に従って製造した(精製化合物の収率:20%)。
実施例8:2-[Cbz-L-Lys-L-Pro]ベンゾチアゾール
実施例8の化合物は、中間体La II、中間体Lb II、中間体K II、中間体J II、中間体H V、中間体N、及び方法Gを介する経路2に従って製造した(方法Gの合成工程に対する精製化合物の収率:100%)。
実施例9:2-[Boc-L-Phe-L-Pro]ベンゾチアゾール
実施例9の化合物は、ジペプチド中間体A V、及び方法Cを介する経路1に従って製造した(H-Z:ベンゾチアゾール、精製化合物の収率:24%)。
【0140】
実施例10:2-[Cbz-L-Ala-L-Pro]チアゾール
実施例10の化合物は、中間体E II、中間体C II、中間体A IV、及び方法Cを介する経路1に従って製造した(H-Z:チアゾール、精製化合物の収率:7%)。
実施例11:2-[Cbz-L-Ala-L-Pro]ピロール
実施例11の化合物は、中間体E I、及び方法Jを介する経路3に従って製造した(精製化合物の収率:35%)。
【0141】
本明細書、及び伴う請求項を通して、該文脈が他に要求しない限り、用語"含む(
comprise)"、並びに"含む(comprises)"及び"含む(comprising)"などの変形は、規定された整数、工程、整数グループ、又は工程グループの包含を意味し、他の整数、工程、整数グループ、又は工程グループの除外を意味することではないことが理解されるであろう。
上記の全ての特許、及び特許出願は、本明細書中に引用により、その全体において取り込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】種々のPEP阻害剤で処置したヒトグリアU-343細胞中の基礎培地IL-6の定量化。24時間に渡ってPEP阻害剤を処置したヒトグリアU-343細胞の培養上清は、未処置コントロール試料中で測定されたIL-6量の15%〜60%のみのIL-6量を含んでいた。値は、4組のウェルの平均±SDとして示し、かつ不対t検定(***p<0.001)により統計学的有意性に対して分析した。
【図2】種々のPEP阻害剤で処置したヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Y細胞の基礎Aβ1-42値の定量化。24時間に渡ってPEP阻害剤を処置したヒトグリアU-343細胞の培養上清は、未処置コントロール試料中で測定されたAβ1-42量の87.5%〜546%のAβ1-42量を含んでいた。値は、4組のウェルの平均±SDとして示し、かつ不対t検定(***p<0.001)により統計学的有意性に対して分析した。
【図3】ヒューマニンのPEP触媒分解−阻害剤を含まないポジティブコントロール。切断産物を、マトリックス支援レーザー脱離質量分析計で測定した。HN 1-24は、ヒューマニンの全長を表す。HN 9-24は、システイン後切断化ヒューマニン9-24を表す。
【図4】ヒューマニンのPEP触媒分解−実施例2に示すPEP阻害剤。切断産物を、マトリックス支援レーザー脱離質量分析計で測定した。HN 1-24は、ヒューマニンの全長を表す。HN 9-24は、システイン後切断化ヒューマニン9-24を表す。
【図5】ヒューマニンのPEP触媒分解−実施例2に示すPEP阻害剤。切断産物を、マトリックス支援レーザー脱離質量分析計で測定した。HN 1-24は、ヒューマニンの全長を表す。HN 9-24は、システイン後切断化ヒューマニン9-24を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その全ての立体異性体及び多形体を含む、一般式1の化合物、又はその医薬として許容し得る塩:
【化1】

(式中、Wは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、カルボシクリル、アリール、-アルキルアリール、又はアルキルヘテロアリールを表し;
Kは、O、NH、又はCH2を表し;
又はKは、存在せず、かつW-COは、アミノ酸、又はアザ-アミノ酸の成分を表し;
NH-X-COは、非環状アミノ酸、又は非環状アザ-アミノ酸の成分を表し、ここで、NH-X-COがAsp、又はGluの成分を表す場合、前記Asp、又はGluの酸側鎖は、ペプチド結合を介して、他のアミノ酸、又はアザ-アミノ酸に任意に結合することができ;
N-Y-CO-は、式2a、2b、2c、2d、2e、2f、又は2gの成分から選択され:
【化2】

(式中、R1〜R15、及びR17〜R19は、独立に、H、又はアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキニル鎖, シクロアルキル、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、又はハロゲン、アミノ、-CONH2、CONH(アルキル)、-CON(アルキル)2、ニトロ、ヒドロキシル、-CN、及びSCNから選択された基であり;
又はその他に、R2/R3、R4/R5、R6/R7、R9/R10、R11/R12は、結合している炭素原子とともに、独立にオキソを表し;
又はその他に、R3とR5とが結合し、アゼチジン環に縮合したベンゼン環を形成する(この場合、R2、及びR4は存在せず)か、又はR10とR11とが結合し、ピペリジン環に縮合したベンゼン環を形成し(この場合、R9、及びR12は存在せず);
R16は、アミノ酸成分の側鎖であり;
X1は、CR20R21、O、S、SO、SO2、又はNR22であり;
X2は、CR23R24、O、S、SO、SO2、又はNR25であり;
X3は、CR26R27、O、S、SO、SO2、又はNR28であり;
R22、R25、及びR28は、互いに独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、又はヘテロアリール-アルキル基であり;
R20、R21、R23、R24、R27、及びR28は、互いに独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、ヘテロアリール-アルキル基、又はカルバルデヒド(-CHO)、ケトン基(-CO-R29)、ボロン酸基(-B(OH)2)、シアノ基(-C≡N)、カルボン酸基(-COOH)、カルボン酸エステル基(-COOR30)、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-R31)、ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OH))、N-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NR32(OH))、O-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OR33))、カルボキサミド基(-CO-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換カルボン酸アミド基(-CO-NHR34;-CO-NR35R36)、アミド基(-HN-CO-R37)、スルホン酸基(-SO3H)、スルホンアミド基(-SO2-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換スルホンアミド基(-SO2-NHR38;-SO2-NR39R40)、アミドスルホン基(-NH-SO2-R41)、スルホン基(-SO2-R42)、リン酸基(-OP(=O)(OH)2)、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR43)(OR44))、ホスホン酸基(-P(=O)(OH)2)、ホスホン酸エステル基(-P(=O)(OR45)(OR46))、ハロゲノ基、トリフルオロメチル基(-CF3)、チオール基(-SH);チオエーテル基(-S-R47)、ヒドロキシ基(-OH);アルコキシ基(-O-R48)、テトラゾール基、アミノ基(-NH2)、又はN-置換もしくはN,N-二置換アミノ基(-NHR49;-NR50R51)であり;又は
X1がCR20R21である場合、R6、及びR20が結合し、ピロリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R7、及びR21は存在せず)、又はX2がCR22R23である場合、R20、及びR22が結合し、ピロリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R21、及びR23は存在せず);又は
X3がCR26R27である場合、R11、及びR26が結合し、ピペリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R12、及びR27は存在せず)、又はR27、及びR13が結合し、ピペリジン環に縮合したベンゼン環を形成することができ(この場合、R26、及びR14は存在せず);
置換基R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、及びR51は、互いに独立に、H、又はアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル-、又はヘテロアリール-アルキル-基であり;かつ
あるいは、組合せR35R36、R39R40、及びR50R51は、互いに独立に、結合している窒素とともに、複素環の一部を形成することができ(例えばピロリジン、ピペリジン、又はモルフォリン);又は組合せR43/R44、R45/R46は、結合して、C1-4アルキレン鎖を形成することができ;
X4は、CR52、又はNであり;
X5は、CR53、又はNであり;
R52、及びR53は、互いに独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、ヘテロアリール-アルキル、アリール-ヘテロアルキル、ヘテロアリール-ヘテロアルキル基、又はカルバルデヒド(-CHO)、ケトン基(-CO-R54)、ボロン酸基(-B(OH)2)、シアノ基(-C≡N)、カルボン酸基(-COOH)、カルボン酸エステル基(-COOR55)、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-R56)、ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OH))、N-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NR57(OH))、O-置換ヒドロキサム酸基(-CO-NH(OR58))、カルボキサミド基(-CO-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換カルボン酸アミド基(-CO-NHR59;-CO-NR60R61)、アミド基(-HN-CO-R62)、スルホン酸基(-SO3H)、スルホンアミド基(-SO2-NH2)、N-置換もしくはN,N-二置換スルホンアミド基(-SO2-NHR63;-SO2-NR64R65)、アミドスルホン基(-NH-SO2-R66)、スルホン基(-SO2-R67)、リン酸基(-OP(=O)(OH)2)、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR68)(OR69))、ホスホン酸基(-P(=O)(OH)2)、ホスホン酸エステル基(-P(=O)(OR70)(OR71))、ハロゲノ基、トリフルオロメチル基(-CF3)、チオール基(-SH);チオエーテル基(-S-R72)、ヒドロキシ基(-OH);アルコキシ基(-O-R73)、テトラゾール基、アミノ基(-NH2)、又はN-置換もしくはN,N-二置換アミノ基(-NHR74;-NR75R76)であり;
置換基R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、及びR76は、互いに独立に、H、又はアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、ヘテロアリール-アルキル基であり;かつ
あるいは、組合せR52/R53は、存在する場合、結合している炭素原子とともに、複素環、又は炭素環の一部を形成することができ;又は組合せR60R61、R64R65、及びR75R76は、互いに独立に、結合している窒素とともに、複素環の一部を形成することができ(例えばピロリジン、ピペリジン、又はモルフォリン);又は組合せR68/R69、及びR70/R71は、結合して、C1-4アルキレン鎖を形成することができ;
mは、整数0〜2を表し;
nは、整数0〜2を表す。);
Zは、ヘテロアリールであり;
但し、下記化合物は、式1から除かれる。):
【化3】


【請求項2】
R1〜R15、及びR17〜R19が、独立に、H、ハロゲン、CN、又はアルキルを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1〜R15、及びR17〜R19が、Hである、請求項1、又は2記載の化合物。
【請求項4】
X1、X2、及びX3が、独立に、CH2、又はCHMeを表す、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
X4、及びX5が、独立に、CH、又はCMeを表す、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R20、R21、R23、R24、R26、R27、R28、R52、及びR53が、Hである、請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
m、及びnが、独立に、0、又は1を表す、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
m、及びnが、0である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
Wが、-アルキルアリール、-アルキルヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はシクロアルキルを表す、請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
Wが、アルケニル-、アルキル-、又はアリールアルキル-を表す、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Wが、アリールアルキル-である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
Wが、-メチルアリール、メチルヘテロアリール、C2-6アルケニル、及びC2-6アルキルからなる群から選択された、請求項9記載の化合物。
【請求項13】
アリールが、アルキル、及び/又はハロにより任意に置換されたフェニルを表す、請求項9〜12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
ヘテロアリールが、アルキル、及び/又はハロにより任意に置換されたピリジルを表す、請求項9、又は12記載の化合物。
【請求項15】
W-K-COが、アリルオキシカルボニル(Aloc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、又はベンジルオキシカルボニル(Cbz)を表す、請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
W-K-COが、ベンジルオキシカルボニルである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
Kが、O、又はCH2、特にOを表す、請求項1〜16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
NH-X-COが、非環状アミノ酸の成分を表す、請求項1〜17のいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
NH-X-COが、タンパク質構成アミノ酸を表す、請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
NH-X-COが、L-Ala、L-Arg、L-Asp、及びL-Pheからなる群から選択された、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
N-Y-COが、式2dの成分を表す、請求項1〜20記載の化合物。
【請求項22】
R16が、タンパク質構成アミノ酸の側鎖を表す、請求項1〜21記載の化合物。
【請求項23】
R16が、H、メチル、-CH2OH、-CH(Me)OH,CHMe2、CH2CHMe2、CH(Me)CH2Me、CH2CH2CONH2、-CH2COOH、-CH2CONH2、又はCH2CH2COOHを表す、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
R16が、アルキルを表す、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
R16が、メチルである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
N-Y-COが、式2a、2e、2f、又は2gの成分を表す、請求項1〜20のいずれか1項記載の化合物。
【請求項27】
N-Y-COが、式2b、又は2cの成分を表す、請求項1〜20のいずれか1項記載の化合物。
【請求項28】
N-Y-COが、式2h、又は2iの成分を表す、請求項1〜20のいずれか1項記載の化合物:
【化4】

(式中、R77、及びR78は、独立に、H、ハロゲン、CN、又はアルキルを表す。)。
【請求項29】
N-Y-COが、式2j、又は2kの成分を表す、請求項1〜20のいずれか1項記載の化合物:
【化5】

(式中、R77は、H、ハロゲン、CN、又はアルキルを表し、かつ
R80、及びR81は、独立に、H、又はフルオロである。)。
【請求項30】
R77、及びR78が、独立に、メチルである、請求項28、又は29記載の化合物。
【請求項31】
R77、及びR78が、独立に、CNである、請求項28、又は29記載の化合物。
【請求項32】
R77、及びR78が、独立に、Hである、請求項28、又は29記載の化合物。
【請求項33】
X1が、CH2を表す、請求項1〜32のいずれか1項記載の化合物。
【請求項34】
Zが、任意にベンゼン環に縮合した5員環ヘテロアリールを表す、請求項1〜33記載の化合物。
【請求項35】
Zが、2-フラン、2-イミダゾール、2-チアゾール、4-チアゾール、5-チアゾール、2-チオフェン、3-チオフェン、2-オキサゾール、4-オキサゾール、5-オキサゾール、2-ピロール、3-ピロール、2-ベンゾ[d]イミダゾール、2-ベンゾ[d]チアゾール、2-ベンゾ[b]チオフェン、3-ベンゾ[b]チオフェン、2-ベンゾ[d]オキサゾール、2-インドール、3-インドールからなる群から選択された、あるいは式3a、3b、3c、3d、又は3eの成分から選択された、請求項34記載の化合物:
【化6】

(式中、R82、R83、R84、R85、及びR86は、独立に、H、又はアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキニル鎖, シクロアルキル、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、又はハロゲン、アミノ、-CONH2、CONH(アルキル)、-CON(アルキル)2、ニトロ、ヒドロキシル、オキソ、-CN、及び-SCNから選択された基である。)。
【請求項36】
R82、R83、R84、R85、及びR86が、H、又はアルキルである、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
R82、R83、R84、R85、及びR86が、Hである、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
実施例1に相当する、請求項1記載の化合物、或いは、その医薬塩、立体異性体、又は多形体:
【化7】


【請求項39】
実施例2〜7のいずれか1つに相当する、請求項1記載の化合物、或いは、その医薬塩、立体異性体、又は多形体:
【化8】


【請求項40】
請求項8〜11のいずれか1つに相当する、請求項1記載の化合物、或いは、その医薬塩、立体異性体、又は多形体:
【化9】


【請求項41】
医薬として使用される、請求項1〜40のいずれか1項記載の化合物。
【請求項42】
1種以上の治療的に許容し得る希釈剤又は担体とともに、請求項1〜40のいずれか1項記載の化合物の少なくとも1種を含む、医薬組成物。
【請求項43】
非経口、経腸、又は経口投与用の、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項44】
QC-阻害剤、LiCl、ジペプチジルアミノペプチダーゼの阻害剤、好ましくはDP IV又はDP IV-様酵素の阻害剤、NPY-受容体リガンド、NPYアゴニスト、ACE阻害剤、PIMTエンハンサー、ベータセクレターゼの阻害剤、ガンマセクレターゼの阻害剤、中性エンドペプチダーゼの阻害剤、PDE-4阻害剤、MAO阻害剤、TNFアルファ阻害剤、アミロイドタンパク又はアミロイドペプチド沈着阻害剤、シグマ-1 受容体阻害剤、及びヒスタミンH3アンタゴニストからなる群から選択された化合物の少なくとも1種をさらに含む、請求項42、又は43記載の医薬組成物。
【請求項45】
下記からなる群から選択された疾患の治療用薬剤を調製するための、請求項1〜40のいずれか1項記載の化合物の使用、又は請求項42〜44のいずれか1項記載の医薬組成物の使用:
アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝のホメオスタシス制御障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、制御障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、摂食障害、うつ病を含む不安関連疾患、癲癇,薬の離脱症状,及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害,痴呆,失語症,失行症,失認,又は幾つかの種類の健忘症,軽度認識障害(MCI),良性健忘症,及びコルサコフ症候群を含む神経変性障害、肺血管疾患、再狭窄又は肺高血圧症心筋炎、気管支肺異形成症、心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害、低酸素症、虚血、及び血液凝固障害。
【請求項46】
下記からなる群から選択された疾患の治療方法であって、有効量の、請求項1〜40のいずれか1項記載の式1の化合物、又は請求項42〜44のいずれか1項記載の医薬組成物を、哺乳類に投与することを含む、前記方法:
アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝のホメオスタシス制御障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、制御障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、摂食障害、うつ病を含む不安関連疾患、癲癇,薬の離脱症状,及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害,痴呆,失語症,失行症,失認,又は幾つかの種類の健忘症,軽度認識障害(MCI),良性健忘症,及びコルサコフ症候群を含む神経変性障害、肺血管疾患、再狭窄又は肺高血圧症心筋炎、気管支肺異形成症、心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害、低酸素症、虚血、及び血液凝固障害。
【請求項47】
下記からなる群から選択された疾患の治療に使用するための、請求項1〜40のいずれか1項記載の化合物、又は請求項42〜44のいずれか1項記載の医薬組成物:
アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝のホメオスタシス制御障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、制御障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、摂食障害、うつ病を含む不安関連疾患、癲癇,薬の離脱症状,及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害,痴呆,失語症,失行症,失認,又は幾つかの種類の健忘症,軽度認識障害(MCI),良性健忘症,及びコルサコフ症候群を含む神経変性障害、肺血管疾患、再狭窄又は肺高血圧症心筋炎、気管支肺異形成症、心筋壊死又は心臓移植後冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害、低酸素症、虚血、及び血液凝固障害。
【請求項48】
軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、及びハンチントン病からなる群から選択されたニューロン疾患の治療のための、請求項45〜47のいずれか1項記載の化合物、組成物、使用、又は方法。
【請求項49】
微生物増殖の阻害薬剤の調製、術中の失血の減少、移植組織もしくは臓器の保存、癌細胞増殖もしくは腫瘍進行又は腫瘍転移もしくは浸潤の阻害のための、請求項1〜40のいずれか1項記載の化合物の使用、又は請求項42〜44のいずれか1項記載の医薬組成物の使用。
【請求項50】
微生物増殖の阻害、術中の失血の減少、移植組織もしくは臓器の保存、癌細胞増殖もしくは腫瘍進行又は腫瘍転移もしくは浸潤の阻害に使用するための、請求項1〜40のいずれか1項記載の化合物、又は請求項42〜44のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項51】
微生物増殖の阻害のための治療、術中の失血の減少、移植組織もしくは臓器の保存、癌細胞増殖もしくは腫瘍進行又は腫瘍転移もしくは浸潤の阻害の方法であって、有効量の、請求項1〜40のいずれか1項記載の式1の化合物、又は請求項42〜44のいずれか1項記載の医薬組成物を哺乳類に投与することを含む、前記方法。
【請求項52】
請求項1〜40のいずれか1項記載の式(1)の化合物の製造方法であって:
(a)式Aの化合物又はその保護誘導体と、式Bの化合物又はその保護誘導体とを反応させること;
【化10】

(式中、W、K、X、及びYは、請求項1〜40のいずれか1項記載のものであり、かつRxは、ワインレブ活性化基を表す。);
【化11】

(式中、Zは、請求項1〜40のいずれか1項記載のものである。);
(b)式Hの化合物を酸化すること;
【化12】

(式中、W、K、X、Y、及びZは、、請求項1〜40のいずれか1項記載のものである。);
及び必要に応じて、その生成物を脱保護して、式(1)の化合物を得ることを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−521853(P2008−521853A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543765(P2007−543765)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012765
【国際公開番号】WO2006/058720
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(505403119)プロビオドルグ エージー (39)
【Fターム(参考)】