説明

移動体位置検出システムおよび方法

【課題】撮像した画像が照合用のデータベースにない場合でも位置検出を円滑に継続できる移動体位置検出システムおよび方法を提供する。
【解決手段】平面12上を移動する移動体16の位置を検出する移動体位置検出システム10であって、平面12上に配置された複数のドットからなるドットパターン14と、移動体16に備えられ、移動体16が位置する平面12上の領域を撮像する撮像手段20と、撮像手段20が時間的に連続して取得した2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて、2画像間の位置および方向関係を求め、移動体16の現在位置および方向を推定する推定手段28と、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体位置検出システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平面上に配置したパターン(模様)を利用して、平面上を移動する移動体の位置の検出を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これに対し、本発明者内の一部を含む発明者らは、既に特願2008−274680号および特願2008−274681号の移動体位置検出システムを提案している。
【0004】
この移動体位置検出システムは、図19および図20に示すように、既知のドットパターン3が描画してある床面2上に配置した移動体4から床面2を撮像し、撮像した画像中にあるドット5のドットパターン3の特徴量を、床面2全体のドットパターン3の特徴量が格納されたデータベース6と照合することで、撮像した画像中のドットが床面2上のどのドットに相当するのかを割り出し、床面2上における移動体4の位置を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−141061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の特願2008−274680号および特願2008−274681号の移動体位置検出システムは、平面上に配置した点群分布模様のデータを予めデータベース6に格納しておき、移動体により撮像した模様をこのデータベース6と照合することで位置検出を行う。このため、データベース6にないゴミなどが多数存在する場所を移動体4が通過するときに、その位置検出が不能となる。最悪の場合には、そこを通過後、ゴミの少ない場所へ移動してもこの位置検出が不能な状態が継続する場合もある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、撮像した画像が照合用のデータベースにない場合でも位置検出を円滑に継続できる移動体位置検出システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る移動体位置検出システムは、平面上を移動する移動体の位置を検出する移動体位置検出システムであって、前記平面上に配置された複数のドットからなるドットパターンと、前記移動体に備えられ、前記移動体が位置する平面上の領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が時間的に連続して取得した2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて、前記2画像間の位置および方向関係を求め、前記移動体の現在位置および方向を推定する推定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る移動体位置検出システムは、上述した請求項1において、前記ドットパターンにおける個々のドットと前記個々のドットの周辺に位置する複数のドットとの位置関係を算出し、前記位置関係と前記個々のドットの前記平面上における座標値とを対応付けて基準特徴量とし、これを基準特徴量データベースに格納する基準特徴量格納手段と、前記撮像手段が取得した画像中の複数のドットから所定のドットを選択し、選択したドットと、このドットの周辺に位置する複数のドットとの位置関係を、選択したドットの検出特徴量として算出する検出特徴量算出手段と、前記検出特徴量を前記基準特徴量データベースと照合することにより、前記基準特徴量データベースから前記検出特徴量と最も一致度の高い基準特徴量を選択し、選択した基準特徴量の座標値を、前記平面上における移動体の現在位置として検出する特徴量照合手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る移動体位置検出方法は、平面上を移動する移動体の位置を検出する移動体位置検出方法であって、前記平面上には複数のドットからなるドットパターンが配置され、前記移動体には前記移動体が位置する平面上の領域を撮像する撮像手段が備えられ、前記撮像手段が時間的に連続して取得した2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて、前記2画像間の位置および方向関係を求め、前記移動体の現在位置および方向を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平面上を移動する移動体の位置を検出する移動体位置検出システムであって、前記平面上に配置された複数のドットからなるドットパターンと、前記移動体に備えられ、前記移動体が位置する平面上の領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が時間的に連続して取得した2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて、前記2画像間の位置および方向関係を求め、前記移動体の現在位置および方向を推定する推定手段と、を備える。このため、推定手段で移動体の現在位置および方向を推定することにより、撮像手段で撮像した画像がドットパターン照合用のデータベースにない場合でも、移動体の位置検出を円滑に継続することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る移動体位置検出システムの実施例を示す構成図である。
【図2】図2は、ドットパターンと取得画像の一例を示す図である。
【図3】図3は、取得画像から位置を検出する概念を説明する図である。
【図4】図4は、2画像から位置を推定する概念を説明する図である。
【図5】図5は、画像点群A、Bを示す図である。
【図6】図6は、ポールスター特徴量を説明する図である。
【図7】図7は、ポールスタービットを説明する図である。
【図8】図8は、距離行列A、Bを示す図である。
【図9】図9は、相対位置関係が一致する組み合わせを求める説明図である。
【図10】図10は、2画像間の移動量が少ない場合を示した図である。
【図11】図11は、2画像間の移動量が多い場合を示した図である。
【図12】図12は、従来の在庫ロケーション管理(1)を示す平面図である。
【図13】図13は、従来の在庫ロケーション管理(2)、(3)を示す側面図である。
【図14】図14は、従来の在庫ロケーション管理(2)、(3)を示す平面図である。
【図15】図15は、従来の在庫ロケーション管理(2)、(3)を示す平面図である。
【図16】図16は、本発明に係る移動体位置検出システムを在庫ロケーション管理に応用した場合の斜視図である。
【図17】図17は、本発明に係る移動体位置検出システムを在庫ロケーション管理に応用した場合の平面図である。
【図18】図18は、本発明に係る移動体位置検出システムを在庫ロケーション管理に応用した場合の斜視図である。
【図19】図19は、従来の移動体位置検出システムの概略構成図である。
【図20】図20は、従来の移動体位置検出システムのドットパターンと取得画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る移動体位置検出システムおよび方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、本発明に係る移動体位置検出システム10は、建物内の床面(平面)12上に配置されたドットパターン14と、移動体16に備えられ、移動体16とともに床面12上を移動する移動体位置検出装置18とから構成されている。ここで、移動体16とは、例えば搬送台車、ロボット、人間等である。ドットパターン14は、印刷や描画等の手段によって床面12上にランダムに配置されている。
【0015】
移動体位置検出装置18は、移動体16が位置する床面12上の領域を撮像する撮像手段20と、基準特徴量格納手段22と、検出特徴量算出手段24と、特徴量照合手段26と、撮像手段20によって撮像した画像に基づいて移動体16の位置を推定する推定手段28と、を備える。
【0016】
撮像手段20は、CCDカメラ等の画像取得装置である。撮像手段20は移動体16に固定されており、移動体16とともに移動しながら、移動体16の位置する床面12上の領域を所定の時間間隔で撮像し、図2に示したような画像を取得する。本実施の形態では、高速度カメラを用いて、例えば10ms程度の時間間隔で画像を取得している。また、図1に示すように、撮像手段20と床面12との間の距離は数センチメートルであり、照明30を用いることで、外乱光の影響の少ない画像を取得することができる。
【0017】
基準特徴量格納手段22は、図3に示すように、移動体16の検出を行う前に、床面12上のドットパターン14におけるすべてのドット32の特徴量を予め算出し、これを基準特徴量データベース34(照合用のデータベース)に格納するためのものである。この特徴量は、ドットパターン14における個々のドット32と、個々のドット32の周辺に位置する複数のドット32との位置関係を算出し、算出した位置関係を個々のドット32の床面12上における座標値と対応付けたものである。以下では、これを「基準特徴量」とよぶことにする。
【0018】
検出特徴量算出手段24は、移動体16とともに移動する際に、自身が位置する床面12上の領域を撮像手段20で撮像し、取得した画像中の複数のドット32から所定のドット32aを選択し、このドット32aの特徴量を算出するためのものである。この特徴量は、画像中のドット32aと、ドット32aの周辺に位置する複数のドット32b(例えばドット32b〜32b)との位置関係を算出したものである。以下では、これを「検出特徴量」とよぶことにする。
【0019】
特徴量照合手段は、取得画像中のドット32aの検出特徴量を、予め作成した基準特徴量データベース34と照合し、基準特徴量データベース34から最も一致度の高い基準特徴量を選択し、選択した基準特徴量の座標値を、床面12上における移動体16の現在位置として検出するためのものである。
【0020】
推定手段28は、図4に示すように、移動体16が連続的に位置検出を行いながら移動している場合に、撮像手段20によって時間的に連続して撮像された2画像(その位置検出時の取得画像Bと、その前の位置検出時の取得画像A)中に共通して含まれるドットパターンの位置関係を利用して、2画像間の相対的な位置・方向関係を求める。そして、前の位置検出時に取得した画像により検出された位置および姿勢に積算することで移動体16の床面12上での現在位置および方向を推定するというものである。
【0021】
具体的には、前後の2画像A、B中に共通して含まれる複数のドット(図4中、○印で囲ってあるドット)とその対応関係(ドットパターン)を取得し、そのXY位置関係から、移動体16の並進変位と回転変位を求め、前の画像取得時の移動体16の位置および方向に積算することで移動体16の床面12上での絶対位置および方向を推定する。
【0022】
このようにすれば、移動体16の位置検出時に、床面12上にデータベース34にないゴミなどによるドットパターンが発生していても移動体16の現在位置を推定することができ、その位置検出が不能とならない。
【0023】
次に、推定手段28による移動体の位置の推定手順の一例について具体的に説明する。
ここで、位置の推定のアルゴリズムとしてはポールスターアルゴリズムを用いている。
【0024】
まず、このポールスターアルゴリズムの概要について説明する。
宇宙空間で宇宙機の姿勢同定に使われる機器としてスターセンサーがある。これは、宇宙機に搭載されたカメラで天空を撮像し、撮像領域の恒星点の配列を既知の恒星配置図(スターマップ)と照合することによりカメラの向いている姿勢を特定するセンサーである。ポールスターアルゴリズムは、このセンサーで使われる撮像恒星点群のスターマップへの照合アルゴリズムとして用いられている。恒星の配置は自然発生的であり必ずしも均一に点は分布していないが、ポールスターアルゴリズムは、このような対象に対しても有効に照合が実現できる。ポールスターアルゴリズムに関する参考文献としては、「E. SILANI, M. LOVERA : Ploitecnico di Milano Italy, “Star Identification Algorithms : Novel Approach & Comparison Study”, IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems, Vol.42, No.4 October 2006」がある。
【0025】
次に、ポールスターアルゴリズムを用いた移動体の位置の推定手順について説明する。
図5に示すように、画像点群Aと画像点群Bが時間的に連続してこの順に取得されたものとする。まず、画像点群Aおよび画像点群Bについて、それぞれポールスタービットを求める。
【0026】
ここで、ポールスタービットとは、ポールスター特徴量をビット表現したものである。
ポールスター特徴量とは、図6に例示してあるように、ある点(Pn)を中心として規定の範囲Rに存在する周辺点までの直線の長さ(以下、アーム長という。)を求め、アーム長を単位長さDで分割してインデックス化したものである(以下、アーム長インデックスという。)。
【0027】
ai=fix(ri/D)+1
amax=fix(R/D)+1
ここで、ri:アーム長、ai:アーム長インデックス、D:インデックス単位長さ、R:分布半径、amax:最大アーム長インデックスである。また、fixは小数点以下を切り捨てて整数値を返す演算子である。
【0028】
ポールスタービットは、図7に例示してあるように、最大アーム長インデックスのビット列を用意し、ポールスター特徴量のアーム長インデックスに対応するピットを1に、その他を0にすることで、ビット表現したものである。
【0029】
いま、図5に示される画像点群Aのポールスタービット行列(以下、PSビット行列という。)PSBa、画像点群BのPSビット行列PSBbはそれぞれ以下のように表される。
【0030】
【数1】

【数2】

【0031】
これらの行列を用いて次の演算を行う。
Mch=PSBb×PSBa
【0032】
【数3】

【0033】
ここで、Mchの各列の最大値をとる行が、画像点群Aの各点の画像点群Bでの対応候補となる。これより、対応する候補点間の距離を、図8に示すような距離行列A、Bによるテーブルで表す。
【0034】
距離行列Aと距離行列Bの各要素の差を求めて、その差が規定の範囲内の場合には1を、その他の場合には0となる行列を作成する。ここで、行列中、NAの部分は0とする。
【0035】
図9(a)、(b)に示すように、各列方向に和をとることで、各点間の組について距離が一致する数をカウントすることができる。図9(c)に示すように、最も少ないカウント数の点を除き、再度各列方向に和をとる。これを全てのカウント数が同一になるまで繰り返す。残った点数−1がカウント数になっていれば、画像点群A、Bに画像点群の相対位置関係が一致する組み合わせが残ったことになる。
【0036】
図9(d)においては、画像点群Aのa1、a2、a4、a5の4点と、画像点群Bのb1、b2、b5、b6の4点が各画像に共通して含まれるように残っており、残った点数は4、全てのカウント数は3となっている。この結果、画像点群A、Bにおける各点の対応関係は、a1がb1に、a2がb2に、a4がb5に、a5がb6にそれぞれ対応している。
【0037】
こうして残った点の組み合わせを用いて、以下の演算式により、画像点群Aからみた画像点群Bの位置と方向を表す同次変換行列を求める。
【0038】
【数4】

ここで、「+」は、疑似逆行列を示す。
【0039】
画像点群Aの位置・方向からの移動体16の並進変位と回転変位は、以下の演算式により算定することができる。
並進変位=[x,y]
回転変位θ=tan−1((−c1×c2/s1×s2)1/2
【0040】
このように、移動体16の並進変位と回転変位を求め、前の画像点群A取得時の移動体の位置および方向に積算することで、画像点群B取得時(現在)の移動体16の床面12上での絶対位置および方向を推定することができる。
【0041】
なお、連続した2画像間の相対的な位置・方向関係を求めるアルゴリズムを応用した従来の技術としては、光学式マウスの移動方向の検出や、粒子流れの解析などが知られている。これらで用いられる画像相関法や均配法などのアルゴリズムは、図10に示すように、2画像間の相対的な移動量がドット分布密度に比べて小さい場合に有効である。
【0042】
一方、本発明のような建物内の床面上の移動体の位置検出では、図11に示すように、ドット分布密度に比べて2画像間の相対的な移動量が大きい場合も想定されることから、上記の従来のアルゴリズムをそのまま適用できない。このため、本発明の移動体位置検出システム10では、時間的に連続する2画像で共通に撮像されているドットの画像中での相対位置関係は変化しないことを利用して、移動体の位置および方向を推定する。
【0043】
このように、本発明の移動体位置検出システムおよび方法によれば、基準特徴量データベース34にない検出特徴量として認識され得る多数のゴミがある箇所を移動体16が通過する場合にも、2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて移動体16の現在位置を推定するので、その位置検出を円滑に継続できる。
【0044】
また、タイル目地等への対応が可能となる。つまり、タイル等の複数の板材を並設して構成される床や壁等の平面では、板材間の目地が基準特徴量データベース34にないドット(検出特徴量)として認識され、移動体16の位置検出が不能となるおそれがある。しかしながら、本発明の移動体位置検出システム10によれば、このような目地付近を移動体16が通過する場合にもその位置検出を円滑に継続できる。
【0045】
また、移動体16の初期位置が既知であれば、基準特徴量データベース34にある基準特徴量を参照せずとも、相対変位を積算することで移動体16の現在位置を推定することができる。
【0046】
次に、本発明の応用例1、応用例2について説明する。本発明に係る移動体位置検出システム10は、病院や工場等における搬送システムに応用可能である。
【0047】
[本発明の応用例1]
まず、本発明の応用例1として、ロボットを用いた病院デリバリーサービスに応用する場合について説明する。
【0048】
まず、従来技術の課題について説明する。従来、病院の入院患者が雑誌などの商品を購入したい場合には、通常、患者自身が病院内の売店に移動して購入するが、大型病院においては、患者が居る病室から売店までの距離が遠い場合があり、患者にとって利便性が低い。また、患者が自力で移動できない場合もある。こうした環境下にある患者に対応するために、売店での購入・配達を代行するデリバリーサービスを導入している病院がある。しかし、このような病院においては、サービスに係る人件費が発生したり、サービスを享受できる人数に限りがあり、患者に迅速に配達できないなどの問題があった。
【0049】
そこで、本発明に係る移動体位置検出システム10をこのデリバリーサービスに応用し、患者に対する新たなサービスを提供する。具体的には、移動体位置検出システム10における移動体16を商品配達ロボットして用い、患者は、病室のベッドサイドに設けた端末機器からデリバリーしたい商品を注文する。すると、売店のロボットは、注文を受けた商品を、端末機器の置かれたベッドサイドまで配達するように移動する。この移動は、例えば、売店から端末機器までの移動ルートを、床面上に描いたドットパターンを用いて端末機器毎に紐付けしておき、所定の端末機器からの注文信号を受けた際に、その所定の端末機器にロボットが自動的に移動するように設定しておくことで可能である。これにより、病室のベッドサイドまでロボットが入って行くことができる。なお、ロボットの移動ルートや移動に関するルールは適宜自由に設定してもよい。
【0050】
このように、本発明を病院内のデリバリーサービスに適用すると、ロボットを床面に描いたドットパターンで誘導することができる。このため、従来必要であった配達ロボットを誘導するための誘導線を廊下、病室内に敷設する大掛かりな工事は必要なくなる。また、床面に描いたドットパターンで誘導することから、将来的な建物内のレイアウト変更にも柔軟に対応することができる。また、人ではなくロボットが配達することから、従来の病院内のデリバリーサービスに比べて人件費が掛からず、ランニングコストを抑えることができる。さらに、ロボットによる配達距離を短くすることで、リードタイムを短縮でき、患者の満足度を向上することができる。
【0051】
[本発明の応用例2]
次に、本発明の応用例2として、平倉庫フリーロケーション管理に応用する場合について説明する。
【0052】
まず、従来技術の課題について説明する。従来、平倉庫において固定棚を用いずにパレット等を保管する場合の在庫ロケーション管理方法として主に以下の技術が知られている。
【0053】
(1)図12に示すように、床にライン50を引き、エリアを区画して柱52に合わせた柱番号などで保管エリアIDを認識し、荷物と紐付けを行う。
【0054】
(2)図13に示すように、決められた荷姿の荷物60(パレットなど)に合わせてグリッドを設定し、その天井に固有のIDを発信する超音波発信器62を設置する。フォークリフト70で荷物60をグリッドに置いたときのその天井にある超音波発信器62から発信されるIDを、フォークリフト70に設置したリーダー64でロケーションを読み取り、荷物と紐付けを行う。
(3)上記の(2)と同様であるが、図13に示すように、超音波発信器62でなく床にパッシブ式RFID66を埋め込み、フォークリフト70に設置したリーダー68でIDを読み取る。
【0055】
しかし、上記の(1)では、エリアには複数の荷物が存在するので、荷物の詳細な位置を迅速に把握することができない。また、人手による作業を伴うので人為的ミスによるロケーションの間違いが発生するおそれがある。
【0056】
また、上記の(2)、(3)では、図14(a)に示すように、荷物を一定方向に向けて配置する必要がある。荷物60とフォークリフト70に取り付けたリーダー64(68)の位置に差があるためである。図14(b)に示すように、横から置くと超音波発信器62やRFID66の位置とリーダー64、68に位置ずれが生じ対応できなくなる。さらに、図15(a)に示すように、荷物の荷姿が同じ形態でなければならず、図15(b)に示すように、超音波発信器62やRFID66の配置に対して、異なる寸法のパレットの混在やパレットとカゴ車など別の種類の荷物には対応できない。
【0057】
そこで、本発明に係る移動体位置検出システム10をこの平倉庫フリーロケーション管理に応用する。具体的には、図16および図17に示すように、移動体位置検出システム10における移動体16をフォークリフト70や人として、カメラ(撮像手段20)をこれらに取り付ける。一方、床面または天井面にドットパターン32を描画して、カメラ20が撮像した画像によりフォークリフト70や人の位置や向きを検出し、平倉庫のどこに荷物を置いたかを自動的に認識する。
【0058】
また、荷物60の平面中心とカメラ20の距離を予め所定の値に設定しておき、カメラ20の撮像画像によって荷物の中心を認識させることで、図18(a)、(b)に示すように、どの方向からも荷物の位置を認識できるようになり、形態が異なる荷物を様々な方向から平倉庫内に置くことができる。このため、平倉庫の利用態様の自由度が高まり、入出庫作業の効率化が図れる。また、上記の従来技術においては、施工時にパレットの数だけ超音波発信器またはRFIDを設置して、IDとロケーションを登録する必要があったが、これをする必要がなくなる。
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、平面上を移動する移動体の位置を検出する移動体位置検出システムであって、前記平面上に配置された複数のドットからなるドットパターンと、前記移動体に備えられ、前記移動体が位置する平面上の領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が時間的に連続して取得した2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて、前記2画像間の位置および方向関係を求め、前記移動体の現在位置および方向を推定する推定手段と、を備える。このため、推定手段で移動体の現在位置および方向を推定することにより、撮像手段で撮像した画像がドットパターン照合用のデータベースにない場合でも、移動体の位置検出を円滑に継続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明に係る移動体位置検出システムおよび方法は、建物内の床面上などの平面上に配置した移動体の位置検出に有用であり、特に、ゴミなどが多数存在し、位置検出が不能となるおそれがある場所を移動体が通過する場合に、移動体の位置検出を円滑に継続するのに適している。
【符号の説明】
【0061】
10 移動体位置検出システム
12 床面(平面)
14 ドットパターン
16 移動体
18 移動体位置検出装置
20 撮像手段
22 基準特徴量格納手段
24 検出特徴量算出手段
26 特徴量照合手段
28 推定手段
30 照明
32 ドット
34 基準特徴量データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上を移動する移動体の位置を検出する移動体位置検出システムであって、
前記平面上に配置された複数のドットからなるドットパターンと、
前記移動体に備えられ、前記移動体が位置する平面上の領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が時間的に連続して取得した2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて、前記2画像間の位置および方向関係を求め、前記移動体の現在位置および方向を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とする移動体位置検出システム。
【請求項2】
前記ドットパターンにおける個々のドットと前記個々のドットの周辺に位置する複数のドットとの位置関係を算出し、前記位置関係と前記個々のドットの前記平面上における座標値とを対応付けて基準特徴量とし、これを基準特徴量データベースに格納する基準特徴量格納手段と、
前記撮像手段が取得した画像中の複数のドットから所定のドットを選択し、選択したドットと、このドットの周辺に位置する複数のドットとの位置関係を、選択したドットの検出特徴量として算出する検出特徴量算出手段と、
前記検出特徴量を前記基準特徴量データベースと照合することにより、前記基準特徴量データベースから前記検出特徴量と最も一致度の高い基準特徴量を選択し、選択した基準特徴量の座標値を、前記平面上における移動体の現在位置として検出する特徴量照合手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の移動体位置検出システム。
【請求項3】
平面上を移動する移動体の位置を検出する移動体位置検出方法であって、
前記平面上には複数のドットからなるドットパターンが配置され、
前記移動体には前記移動体が位置する平面上の領域を撮像する撮像手段が備えられ、
前記撮像手段が時間的に連続して取得した2画像中に共通して含まれるドットパターンの位置関係に基づいて、前記2画像間の位置および方向関係を求め、前記移動体の現在位置および方向を推定することを特徴とする移動体位置検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−203224(P2011−203224A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73606(P2010−73606)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】