説明

移動体検出装置

【課題】部品点数を増大させることなく窓ガラスに加わる衝撃の有無の検出と移動体の有無の検出との両方を実行することのできる移動体検出装置を提供する。
【解決手段】送波信号を発振する発振回路12と、超音波を送波する送波器10と、超音波が移動体A1に反射して生じる反射波、又は窓ガラスに衝撃が加えられた際に生じる超音波を受波して受波信号E0を出力する受波器11と、送波信号と同じ周波数の基準信号E1,E2と受波信号E0との周波数差に基づいてドップラー信号E3,E4を出力する位相検波回路14,15と、ドップラー信号に基づいて移動体A1の有無を判定する移動体判定部2と、ドップラー信号の振幅成分を演算し、当該振幅成分と予め設定された判定値とを比較することで衝撃の有無を判定する衝撃判定部3とを備え、各位相検波回路14,15に入力される基準信号E1,E2は、互いに位相が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視空間内を移動する物体の存否を検出する移動体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車内の備品を守る自動車用盗難防止装置として、衝撃検出器を用いた方式と、超音波移動物体検出器を用いた方式とが知られている。前者の衝撃検出器を用いた方式は、自動車の窓ガラス等に衝撃センサを取り付けておき、自動車内への侵入を意図して窓ガラスが割られたとき、その衝撃を衝撃センサで検出し、警報等を発するものである。後者の超音波移動物体検出器を用いた方式は、自動車の車室天井裏等に超音波センサを取り付けておき、窓ガラスを割って車内へ侵入するものがあるとこれを検出し、警報等を発するものである。
【0003】
そして、従来、衝撃検出器と、衝撃検出器によって衝撃が検出されたとき超音波の送信を開始して自動車内の移動物体の有無を検出する超音波移動物体検出器と、警報器とを具備した自動車用盗難防止装置が知られており、特許文献1に開示されている。
【0004】
また、従来から、ガラス割れセンサを侵入センサに機能的に一体化してなる車両用セキュリティセンサが知られており、特許文献2に開示されている。この特許文献2に記載の従来例は、セキュリティセンサを有し、車両の車室内に超音波を所定期間の間ずつ間欠的に送信し、当該超音波が車室内で反射されたときこの反射超音波を受信し、この受信反射超音波に基づき人の車室内への侵入の有無を検出する。また、セキュリティセンサは、超音波の非送信中毎に、ウインドウガラスの割れにより生ずる超音波を受信して、この受信超音波に基づきウインドウガラスの割れを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−135845号公報
【特許文献2】特開2001−253319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来例では、窓ガラスに加わる衝撃を検出しないと移動物体の有無の検出を開始しない。このため、例えば窓ガラスを割らずにドアをこじ開けた場合には窓ガラスを割ることなく自動車内に侵入できるが、特許文献1に記載の従来例ではこの場合に移動物体を検出することができないという問題があった。また、特許文献1に記載の従来例では、超音波物体移動検出器とは別に衝撃検出器を備える必要があるため、部品点数が増大するという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の従来例では、特許文献1に記載の従来例とは異なり、超音波を用いることで窓ガラスの割れの検出と移動体の有無の検出との両方を実行することができ、また、衝撃検出器を設ける必要がない。しかしながら、特許文献2に記載の従来例においても、窓ガラスが割られたことを検出するために、包絡線検波回路や比較回路といった移動物体を検出するための構成とは別の構成を備える必要があるため、部品点数が増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、部品点数を増大させることなく窓ガラスに加わる衝撃の有無の検出と移動体の有無の検出との両方を実行することのできる移動体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移動体検出装置は、所定の周波数の送波信号を発振する発振回路と、前記送波信号により超音波を監視空間に送波する送波器と、前記超音波が監視空間に存在する移動体に反射して生じる反射波、又は前記監視空間を構成するものに衝撃が加えられた際に生じる超音波を受波して受波信号を出力する受波器と、前記送波信号と同じ周波数の基準信号と前記受波信号との周波数差に基づいてドップラー信号を出力する位相検波回路と、前記ドップラー信号に基づいて前記移動体の有無を判定する移動体判定部と、前記ドップラー信号の振幅成分を演算し、当該振幅成分と予め設定された判定値とを比較することで衝撃の有無を判定する衝撃判定部とを備え、前記位相検波回路は複数設けられ、前記各位相検波回路に入力される前記基準信号は、互いに位相が異なることを特徴とする。
【0010】
この移動体検出装置において、前記位相検波回路は2つであって、前記各位相検波回路に入力される基準信号は互いに位相が90度ずれていることが好ましい。
【0011】
この移動体検出装置において、前記衝撃判定部は、前記各位相検波回路から出力される各ドップラー信号をそれぞれ2乗し、2乗した各信号を加算した和信号の振幅成分に基づいて衝撃の有無を判定することが好ましい。
【0012】
この移動体検出装置において、前記衝撃判定部は、互いに大きさの異なる2つの判定値と前記ドップラー信号の振幅成分とを比較することで衝撃の有無を判定することが好ましい。
【0013】
この移動体検出装置において、前記衝撃判定部は、前記移動体判定部において前記移動体が存在すると判定されていないときに衝撃の有無を判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、部品点数を増大させることなく窓ガラスに加わる衝撃の有無の検出と移動体の有無の検出との両方を実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る移動体検出装置の実施形態を示す概略図である。
【図2】同上の移動体検出装置が設置される車両の概略図である。
【図3】同上の移動体検出装置において、窓ガラスに加わる衝撃による超音波に基づく受波信号の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る移動体検出装置の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、検出部1と、移動体判定部2と、衝撃判定部3とを備える。なお、本実施形態は、総合判定部4と、本警報部5と、予備警報部6とを備えた車載警報装置と併せて用いられるため、以下では車載警報装置も含めて本実施形態として説明する。
【0017】
検出部1は、所謂超音波式のドップラーセンサであって、送波器10と、受波器11と、発振回路12と、移相回路13と、第1の位相検波回路14と、第2の位相検波回路15と、第1の増幅回路16と、第2の増幅回路17とを備える。発振回路12は、所定周波数の送波信号を発振する。送波器10は、発振回路12からの送波信号を受けて発振回路12の発振周波数と同じ周波数の超音波を監視空間に送波する。本実施形態は、例えば図2の黒点で示すように、車両B1内における前部座席上方の天井に設置され、車両B1の内部を監視空間とする。なお、本実施形態のうち車載警報器については、移動体検出装置とは別の場所に設置してもよい。受波器11は、図1に示すように、監視空間に存在する移動体A1に反射して生じる反射波、若しくは監視空間を構成するもの(本実施形態では、車両B1の窓ガラス)に加わる衝撃による超音波を受波して受波信号E0を出力する。
【0018】
第1の位相検波回路14は、受波信号E0と第1の基準信号E1とを混合(ミキシング)することで、受波信号E0と第1の基準信号E1との周波数差に基づくドップラー信号E3を出力する。また、第2の位相検波回路15は、受波信号E0と第2の基準信号E2とを混合することで、受波信号E0と第2の基準信号E2との周波数差に基づくドップラー信号E4を出力する。
【0019】
なお、本来、ドップラー信号E3,E4は移動体A1に反射して生じる反射波に基づく受波信号E0と、基準信号E1,E2との周波数差に基づいて生じるものである。一方、窓ガラスに加わる衝撃による超音波は、移動体A1からの反射波ではないので、通常、ドップラー効果に依らずとも基準信号E1,E2との間で周波数に差が生じる。したがって、本実施形態では、衝撃による超音波に基づく受波信号E0を各位相検波回路14,15で基準信号E1,E2と混合することで、ドップラー信号E3,E4として検出することができる。
【0020】
ここで、第1の基準信号E1及び第2の基準信号E2は、何れも発振回路12から出力される信号であるために発振回路12の発振周波数と同じ周波数である。しかしながら、第2の基準信号E2は、移相回路13を介して第2の位相検波回路15に入力されるため、第1の基準信号E1と第2の基準信号E2とは互いに位相が異なっている(本実施形態では、位相が90°異なっている)。したがって、各位相検波回路14,15から出力されるドップラー信号E3,E4も位相が互いに異なったものとなる。そして、各ドップラー信号E3,E4は、それぞれ第1の増幅回路16、第2の増幅回路17で増幅された後に後述する移動体判定部2に入力される。
【0021】
移動体判定部2は、サンプリング回路20と、メモリ21と、ベクトル回転角演算回路22と、回転角積算回路23と、閾値回路24とを備える。サンプリング回路20は、入力される1対のドップラー信号E3,E4を所定のサンプリング周期でサンプリングし、且つ量子化することでアナログ値からディジタル値に変換する。この変換したディジタル値は、不揮発性のメモリ21に順次格納される。
【0022】
ここで、一方のドップラー信号E3を変換したディジタル値をX、他方のドップラー信号E4を変換したディジタル値をY(nは正の整数)とし、二次元直交座標系の原点を始点し且つ(X,Y)を終点とするベクトルRを定義する。なお、ベクトルRの大きさは、各ドップラー信号E3,E4の振幅に対応している。
【0023】
ベクトル回転角演算回路22は、前回のサンプリングで得られてメモリ21に格納されているベクトルRn−1と、今回のサンプリングで得られたベクトルRとが成す角度(ベクトル回転角)φを演算する。なお、ベクトル回転角演算回路22は、下記に示す式でベクトル回転角φを演算している。
【0024】
φ=arctan{(Xn−1−Yn−1)/(Xn−1+Yn−1)}
したがって、移動体A1が近付く場合は、ベクトルRが反時計回りに回転するため、ベクトル回転角φの極性は正となり、移動体A1が遠ざかる場合は、ベクトルRが時計回りに回転するため、ベクトル回転角φの極性は負となる。
【0025】
回転角積算回路23は、ベクトル回転角演算回路22で求めたベクトル回転角φを積算する。この積算値(=φ+φ+・・・φ+・・・)が移動体A1の移動距離に比例することになる。閾値回路24は、回転角積算回路23で求めた積算値と所定の閾値とを比較し、積算値が当該閾値を上回ると検出信号を出力する。この検出信号は、後述する総合判定部4に入力される。
【0026】
衝撃判定部3は、1対のドップラー信号E3,E4の振幅成分をそれぞれ演算し、当該ドップラー信号E3,E4のうち何れか大きい方の振幅成分と予め設定された判定値との比較結果に基づいて窓ガラスに加わる衝撃の有無を判定する。すなわち、衝撃判定部3は、ドップラー信号E3,E4の振幅成分が判定値を上回ると衝撃があったと判定し、判定信号を出力する。本実施形態では、衝撃判定部3は互いに異なる2つの判定値を有し、小さい方の判定値を振幅成分が上回ると第1の判定信号を出力し、大きい方の判定値を振幅成分が上回ると第2の判定信号を出力する。このように2つの判定値を用いることで、衝撃判定部3において、窓ガラスに加わる衝撃を2段階で判定することができる。
【0027】
なお、小さい方の判定値は、窓ガラスに意図的に加えられ且つ窓ガラスが割られない程度の小さい衝撃を判定できるように、車両B1が揺れる等して生じる超音波による振幅成分よりも大きく設定するのが望ましい。また、大きい方の判定値は、窓ガラスが割れる程大きい衝撃を判定できるように設定するのが望ましい。
【0028】
ところで、窓ガラスに加わる衝撃による超音波に基づく受波信号E0は、図3において実線及び破線で示すように、発生する毎に位相にずれが生じる。また、衝撃による超音波が発生するタイミングは未知であるため、位相検波回路において当該超音波に基づく受波信号E0と基準信号とを混合する際に、基準信号との位相差も混合する度に異なる。更に、衝撃による超音波は衝撃の瞬間でのみ発生し、位相検波回路は、入力される信号のうち限られた周波数帯域の信号のみを通過させることで誤動作を防止する構成となっている。このため、基準信号と受波信号E0との位相差によって、得られるドップラー信号の振幅成分は大きく変動する。したがって、たとえ衝撃による超音波が発生していたとしても、得られるドップラー信号の振幅成分が小さい場合には、衝撃判定部3においてドップラー信号の振幅成分が判定値を上回らず、衝撃を検出し損ねる虞がある。
【0029】
そこで、位相検波回路を複数設け、各位相検波回路に入力される基準信号を周波数が同一で且つ互いに位相が異なるものとするのが望ましい。このように構成すれば、仮に何れか1つの位相検波回路で得られるドップラー信号の振幅成分が最小であったとしても、他の位相検波回路で得られるドップラー信号の振幅成分は少なくとも最小とはならない。したがって、衝撃による超音波が発生した際に、衝撃判定部3において、得られるドップラー信号の振幅成分が判定値を上回る確率を上げることができ、衝撃を検出し損ねる確率を下げることができる。
【0030】
特に、本実施形態では、位相検波回路を2つ設け、各位相検波回路14,15に互いに位相が90°ずれている基準信号E1,E2をそれぞれ入力している。この場合、仮に第1の位相検波回路14で得られるドップラー信号E3の振幅成分が最小であったとしても、第2の位相検波回路15で得られるドップラー信号E4の振幅成分が最大となる。すなわち、2つの位相検波回路14,15のみで衝撃を検出し損ねる確率を効果的に下げることができる。
【0031】
総合判定部4は、移動体判定部2から出力される検出信号と、衝撃判定部3から出力される第1の判定信号又は第2の判定信号とに基づいて、予備警報と本警報との何れを発報するかを判定する。ここで、「予備警報」とは、窓ガラスを割ろうとする不審者を威嚇するための警報を示し、「本警報」とは、不審者を威嚇するとともに周囲に異常の発生を知らせるための警報を示す。総合判定部4は、検出信号が入力されず、且つ第1の判定信号が入力された場合には、予備警報を発報すべきと判定し、予備警報部6に警報を発報する旨の指令信号を出力する。また、総合判定部4は、検出信号又は第2の判定信号が入力された場合には、本警報を発報すべきと判定し、本警報部5に警報を発報する旨の指令信号を出力する。
【0032】
本警報部5は、総合判定部4からの警報を発報する旨の指令信号が入力されると、例えば車両B1のホーンや、別途備え付けてあるサイレンを鳴動させることで本警報を発報する。また、予備警報部6は、総合判定部4からの警報を発報する旨の指令信号が入力されると、例えば車両B1のハザードランプを数回点滅させることで予備警報を発報する。
【0033】
ここで、予備警報としては、不審者のみを威嚇させれば足り、また周囲の人に極力迷惑をかけてはならないという性質上、ホーン等を鳴動させるのは好ましくない。勿論、上記のように予備警報としてハザードランプを点滅させた場合にも周囲の人に迷惑をかける虞があるが、ホーン等を鳴動させる場合と比較して迷惑ではなく、また周囲の人を車両B1に注目させるという二次的な効果も奏するため、望ましい。
【0034】
以下、本実施形態の動作について説明する。先ず、不審者が車両B1の窓ガラスを割ろうとする等して衝撃による超音波が発生すると、当該超音波に基づく受波信号E0が各位相検波回路14,15で基準信号E1,E2と混合されることで、1対のドップラー信号E3,E4が生じる。衝撃判定部3では、各ドップラー信号E3,E4のうち大きい方の振幅成分と判定値とを比較し、小さい方の判定値を振幅成分が上回った場合には第1の判定信号を出力し、大きい方の判定値を振幅成分が上回った場合には第2の判定信号を出力する。なお、不審者が窓ガラスを割ろうとする段階では、不審者は車両B1内に侵入していないため、移動体判定部2では不審者を移動体A1として判定せず、したがって閾値回路24からは検出信号は出力されない。
【0035】
総合判定部4は、第1の判定信号が入力された場合には、予備警報部6に警報を発報させるべく指令信号を出力する。そして、予備警報部6が予備警報を発報することで、不審者を威嚇する。この段階では、窓ガラスが割れる程の衝撃が生じていないため、予備警報によって不審者を威嚇することに成功すれば、窓ガラスを割られることなく車上盗難を未然に防止することができる。
【0036】
一方、第2の判定信号が入力された場合には、総合判定部4は本警報部5に本警報を発報させるべく指令信号を出力する。そして、本警報部5が本警報を発報することで、不審者を威嚇するとともに周囲に異常の発生を知らせる。この段階では、窓ガラスが割られる可能性も高いが、本警報によって不審者を威嚇することに成功すれば、車上盗難を未然に防止することができる。
【0037】
次に、不審者が車両B1の窓ガラスを割って車内に侵入すると、不審者は移動体A1として移動体判定部2で判定され、閾値回路24から検出信号が出力される。総合判定部4では、検出信号が入力されると本警報部5に警報を発報させるべく指令信号を出力する。そして、本警報部5が本警報を発報することで、不審者を威嚇するとともに周囲に異常の発生を知らせる。これにより、車両B1内に侵入した不審者を威嚇することに成功すれば、車上盗難を未然に防止することができる。
【0038】
ここで、総合判定部4を、検出信号が入力されると衝撃判定部3の判定処理を停止させるように構成してもよい。この場合、衝撃判定部3は、移動体判定部2が移動体A1を判定していないときだけ衝撃の有無を判定する。これにより、移動体判定部2が移動体A1を判定している間は衝撃判定部3の判定処理が邪魔することがないので、移動体判定部2の誤動作を防止することができる。また、衝撃判定部3に不要な処理をさせないことで消費電力を低減することができる。
【0039】
また、総合判定部4を上記のように構成する場合には、衝撃判定部3を、大きい方の判定値を用いずに小さい方の判定値のみで判定処理を行うように構成してもよい。この場合、衝撃があったと判定した際には予備警報のみが発報されるが、車上盗難を防止する効果は十分に期待することができる。
【0040】
上述のように、本実施形態では、移動体判定部2の他に衝撃判定部3を設けているので、窓ガラスに加わる衝撃の有無の検出と移動体の有無の検出との両方を実行することができる。したがって、例えば窓ガラスに加わる衝撃を検出した時点で警報の発報等により威嚇することで、窓ガラスを割られることなく車上盗難を未然に防止することができる。また、万一衝撃を検出し損ねた場合にも、移動体の検出も行うことができるので、窓ガラスを割られた後にも警報の発報等により威嚇することで、車上盗難を未然に防止することができる。
【0041】
更に、本実施形態の衝撃判定部3は、1対のドップラー信号E3,E4の振幅成分を演算し、振幅成分を判定値と比較する処理を行えばよいので、例えば移動体判定部2と併せてマイコンを用いてソフトウェア的に構成することが可能である。したがって、従来例と比較して部品点数を増やすことなく窓ガラスに加わる衝撃の有無の検出を実行することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、上述のように衝撃判定部3において1対のドップラー信号E3,E4のうち大きい方の振幅成分と判定値とを比較している。しかしながら、当該振幅成分は、衝撃による超音波の大きさが同じであったとしても衝撃のタイミングによって変動するため、衝撃による超音波の大きさと当該振幅成分とが1対1に対応しない。そこで、衝撃判定部3において、各ドップラー信号E3,E4をそれぞれ2乗変換部(図示せず)で2乗し、2乗した各信号を加算した和信号を求め、当該和信号の振幅成分と判定値とを比較することで衝撃の有無を判定してもよい。この場合、衝撃による超音波の大きさと和信号の振幅成分とが、衝撃のタイミングに依らず1対1に対応するため、衝撃の有無を安定して判定することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 送波器
11 受波器
12 発振回路
14 第1の位相検波回路
15 第2の位相検波回路
2 移動体判定部
3 衝撃判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の送波信号を発振する発振回路と、前記送波信号により超音波を監視空間に送波する送波器と、前記超音波が監視空間に存在する移動体に反射して生じる反射波、又は前記監視空間を構成するものに衝撃が加えられた際に生じる超音波を受波して受波信号を出力する受波器と、前記送波信号と同じ周波数の基準信号と前記受波信号との周波数差に基づいてドップラー信号を出力する位相検波回路と、前記ドップラー信号に基づいて前記移動体の有無を判定する移動体判定部と、前記ドップラー信号の振幅成分を演算し、当該振幅成分と予め設定された判定値とを比較することで衝撃の有無を判定する衝撃判定部とを備え、前記位相検波回路は複数設けられ、前記各位相検波回路に入力される前記基準信号は、互いに位相が異なることを特徴とする移動体検出装置。
【請求項2】
前記位相検波回路は2つであって、前記各位相検波回路に入力される基準信号は互いに位相が90度ずれていることを特徴とする請求項1記載の移動体検出装置。
【請求項3】
前記衝撃判定部は、前記各位相検波回路から出力される各ドップラー信号をそれぞれ2乗し、2乗した各信号を加算した和信号の振幅成分に基づいて衝撃の有無を判定することを特徴とする請求項2記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記衝撃判定部は、互いに大きさの異なる2つの判定値と前記ドップラー信号の振幅成分とを比較することで衝撃の有無を判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の移動体検出装置。
【請求項5】
前記衝撃判定部は、前記移動体判定部において前記移動体が存在すると判定されていないときに衝撃の有無を判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の移動体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−237674(P2012−237674A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107465(P2011−107465)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】